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  • 特許-ロープ連結構造 図1
  • 特許-ロープ連結構造 図2
  • 特許-ロープ連結構造 図3
  • 特許-ロープ連結構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ロープ連結構造
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
E01F7/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023001645
(22)【出願日】2023-01-10
【審査請求日】2023-05-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398054845
【氏名又は名称】株式会社プロテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】西田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】山本 満明
(72)【発明者】
【氏名】石井 太一
(72)【発明者】
【氏名】清野 雄貴
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-206535(JP,A)
【文献】実開昭59-090643(JP,U)
【文献】特開2006-152718(JP,A)
【文献】特開平08-027735(JP,A)
【文献】実開平06-073499(JP,U)
【文献】実公昭45-014289(JP,Y1)
【文献】特開平10-331921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープ連結具を用いて直径の異なる2本のワイヤロープを交点で連結する、ロープ連結構造であって、
前記ロープ連結具は、
同一形状の2枚の支圧プレートを備え、
前記支圧プレートは、上面と平坦な底面を有するプレート本体と、前記底面の中央を横断する保持溝と、前記プレート本体の前記上面と前記底面を貫通する複数の挿通孔と、を有し、
前記保持溝の幅及び深さは、前記保持溝の全長にわたって等しく、
前記保持溝の幅が、太径の前記ワイヤロープの直径より大きく、
前記保持溝の深さが、細径の前記ワイヤロープの直径より小さく、
前記保持溝の幅が、前記細径のワイヤロープの前記保持溝内への変形を許容可能な幅であり、
前記太径のワイヤロープと、前記細径のワイヤロープと、を交点で直交させ、
前記交点を、第1の前記支圧プレートと、第2の前記支圧プレートと、で前記2本のワイヤロープの延在方向と直交する方向における両側から挟み、
前記第1の支圧プレートの保持溝内に、前記太径のワイヤロープを収容し、
前記第2の支圧プレートの保持溝内に、前記細径のワイヤロープを収容し、
前記第1の支圧プレートの挿通孔と、前記第2の支圧プレートの挿通孔とに締結具を連通して締結することで、前記太径のワイヤロープによって、前記細径のワイヤロープを、前記第2の支圧プレートの保持溝内に押し付け、前記細径のワイヤロープを断面視において扁平に変形させたことを特徴とする、
ロープ連結構造
【請求項2】
前記保持溝が、内面に突起状、溝状、峰状、及び/又は段差状の滑り止め手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載のロープ連結構造
【請求項3】
前記プレート本体が、平面視円形を呈し、4つの前記挿通孔を、前記プレート本体の中心から同一距離、かつ中心角90°ずつずれた位置に設けたことを特徴とする、請求項1に記載のロープ連結構造
【請求項4】
前記プレート本体が、平面視円形を呈し、2つの前記挿通孔を、前記プレート本体の中心から同一距離、かつ中心を挟んで対向する位置に設けたことを特徴とする、請求項1に記載のロープ連結構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、径の異なる2本のワイヤロープを交点で連結可能なロープ連結具及びロープ連結具を用いてなるロープ連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
砂防堰堤等の透過型捕捉構造物では、山間の渓谷や河川の間に、土石流による流下物を捕捉するための捕捉用ネットを展張する。また落石防護柵や雪崩防止柵では、間隔を隔てて立設した複数の支柱の間に、落石や落雪を捕捉するための捕捉用ネットを展張する。
捕捉用ネットは、ワイヤロープを連結具によって縦横に連結して構成する。主ロープに補助ロープを連結するような構造とする場合には、径の異なるワイヤロープ同士を交点で連結する必要がある。
特許文献1には、平板と2本のU字ボルトの組合せからなる連結具であって、平板に設けた2種類の溝を選択してワイヤロープを配置し、U字ボルトで締結することで、径の異なるワイヤロープを交差して連結可能な連結具が開示されている。
特許文献2には、受け金具と押え金具の組合せからなる連結具であって、径の異なる溝を設けた押え金具の面を選択することで、径の異なるワイヤロープを交差して連結可能な連結具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-8656号公報
【文献】特開2013-119711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には以下のような問題点がある。
<1>特許文献1の連結具は、2本のU字ボルトがワイヤロープの交点から外れた位置に配置され、交点を直接支圧できないため、締結力が弱く交点がずれやすい。また、ワイヤロープにU字ボルトを通して4点全てを締結しなければならないため、取付けに手間がかかり施工性が悪い。
<2>特許文献2の連結具は、受け金具と押え金具の構造が異なり個別に製造する必要があるため、製造コストが嵩む。また、現場での取付け時に、受け金具と押え金具の別と、押え金具の面をそれぞれ識別しなければならないため施工性が悪い。
【0005】
本発明の目的は、以上のような問題点を解決できる、ロープ連結具及びロープ連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロープ連結具は、同一形状の2枚の支圧プレートを備え、支圧プレートは、平坦な底面を有するプレート本体と、底面の中央を横断する保持溝と、プレート本体の両面を貫通する複数の挿通孔と、を有し、保持溝の幅が、太径のワイヤロープの直径より大きく、保持溝の深さが、細径のワイヤロープの直径より小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明のロープ連結具は、保持溝の断面積が、細径のワイヤロープの保持溝内への変形を許容可能な面積であってもよい。
【0008】
本発明のロープ連結具は、保持溝が、内面に突起状、溝状、峰状、及び/又は段差状の滑り止め手段を備えていてもよい。
【0009】
本発明のロープ連結具は、プレート本体が、平面視円形を呈し、4つの挿通孔を、プレート本体の中心から同一距離、かつ中心角90°ずつずれた位置に設けていてもよい。
【0010】
本発明のロープ連結具は、プレート本体が、平面視円形を呈し、2つの挿通孔を、プレート本体の中心から同一距離、かつ中心を挟んで対向する位置に設けていてもよい。
【0011】
本発明のロープ連結構造は、ロープ連結具を用いてなり、太径のワイヤロープと、細径のワイヤロープと、を交点で直交させ、交点を、第1の支圧プレートと、第2の支圧プレートと、で両側から挟み、第1の支圧プレートの保持溝内に、太径のワイヤロープを収容し、第2の支圧プレートの保持溝内に、細径のワイヤロープを収容し、第1の支圧プレートの挿通孔と、第2の支圧プレートの挿通孔とに締結具を連通して締結することで、太径のワイヤロープによって、細径のワイヤロープを、第2の支圧プレートの保持溝内に押し付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の捕捉構造物のロープ連結具及びロープ連結構造は、以上の構成を備えるため、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>同一形状の支圧プレートの組合せによって、径の異なるワイヤロープを連結できる。このため、支圧プレートの製造コストが安い。また、現場での組み立て時に2枚の支圧プレートの種類を識別する必要がないため、施工性が高い。
<2>太径ロープによって細径ロープを保持溝内に扁平に圧着し、太径ロープを支圧プレートの底面で両面から挟み込んで強力に拘束することで、太径ロープと細径ロープを交点で強力に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のロープ連結構造の説明図
図2】本発明のロープ連結具の説明図
図3】支圧プレートの説明図
図4】保持溝の説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の捕捉構造物のロープ連結具及びロープ連結構造について詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
<1>ロープ連結構造(図1
本発明のロープ連結構造Aは、径の異なる2本のワイヤロープBをロープ連結具1で交差して連結した構造である。
ロープ連結構造Aは、直交させた太径ロープB1と細径ロープB2の交点を、ロープ連結具1で連結してなる。
ロープ連結構造Aは、透過型捕捉構造物、落石防護柵、雪崩防止柵等の捕捉用ネットに適用することができる。
【0016】
<1.1>ワイヤロープ
ワイヤロープBは、太径ロープB1と細径ロープB2の組合せからなる。
本例では太径ロープB1の径を22mm、細径ロープB2の径を12mmとする。ここで、ワイヤロープBの「径」とは呼び径(公称径)である。
ただしワイヤロープBの組合せは上記に限らず、2本のワイヤロープBの径が異なっていれば、どのような径の組合せであってもよい。
【0017】
<2>ロープ連結具(図2
ロープ連結具1は、太径ロープB1と細径ロープB2を交点で連結する部材である。
ロープ連結具1は、2枚の支圧プレート10を少なくとも備える。
2枚の支圧プレート10は、複数の締結具20で固定する。締結具20は、本例では2組のボルト21と、ナット22と、複数のワッシャ23と、の組合せとする。
本発明のロープ連結具1は、同一形状の支圧プレート10の組合せによって、径の異なる2本のワイヤロープBを連結できる点に一つの特徴を有する。このため、支圧プレート10の製造コストが安価で、現場での組み立て時に2枚の支圧プレートの種類を区別する必要がないため、施工性が高い。
【0018】
<2.1>支圧プレート(図3
支圧プレート10は、ワイヤロープBの交点を挟み込んで支圧する部材である。
支圧プレート10は、平坦な底面11bを有するプレート本体11と、プレート本体11の底面11bの中央を横断する保持溝12と、プレート本体の両面を貫通する複数の挿通孔13と、を少なくとも備える。
本例ではプレート本体11として、平坦な天面11aを有する平面視略円形の鋼製プレートを採用する。ただしプレート本体11の形状はこれに限らず、例えば平面視矩形、平面視八角形、その他の多角形状を採用してもよい。
【0019】
<2.1.1>保持溝(図4
保持溝12は、内面でワイヤロープBを保持する溝である。
本例では、保持溝12の形状を、ワイヤロープBの外周に対応した湾曲凹状とする。ただしこれに限らず、断面V字状等であってもよい。
保持溝12の幅Wは、太径ロープB1の直径より大きい。
保持溝12の深さHは、細径ロープB2の直径より小さい。
保持溝12の断面積は、細径ロープB2の保持溝12内への変形を許容可能な面積であることが望ましい。ここで「断面積」とはワイヤロープBの交点の位置における断面積である。
本発明のロープ連結具1は、上記の寸法関係より、細径ロープB2に対して、後述する圧着拘束機能を発揮することができる。
【0020】
<2.1.2>挿通孔
挿通孔13は、締結具20を挿通する孔である。
本例では、4つの挿通孔13を、プレート本体11の中心から同一距離、かつ中心角90°ずつずれた位置に設ける。
これによって、捕捉用ネットの要求性能に応じて4本の締結具20による締結と、2本の締結具20による締結を選択できるため、ワイヤロープBの締結力と施工性とを両立できる。また、支圧プレート10の向きを90°廻して連結することで、太径ロープB1と細径ロープB2を直交方向だけでなく平行にも連結することができる。
なお挿通孔13の数は4つに限らず、例えば2つの挿通孔13を、プレート本体11の中心から同一距離、かつ中心を挟んで対向する位置に設けてもよい。
この場合、挿通孔13の位置を合わせて2枚の支圧プレート10を対向させると、必然的に2本の保持溝12が直交する向きになり、2枚の支圧プレートを自動的に正しい向きに合わせられるため、現場における施工性がさらに向上する。
【0021】
<2.1.3>滑り止め手段
滑り止め手段14は、ワイヤロープBの滑動を防止するための手段である。
本例では滑り止め手段14として、保持溝12の内周面において、保持溝12の湾曲方向に沿って形成した複数の峰状体を採用する。
滑り止め手段14によって、ワイヤロープBの滑動に対する摩擦抵抗力を高めて、支圧プレート10の支圧によるワイヤロープBの拘束力を強化することができる。
なお、滑り止め手段14の構造は峰状に限らず、突起状、溝状、段差状、又はこれらの組合せであってもよい。
【0022】
<3>ワイヤロープの連結
本発明のロープ連結具1を用いて、2本のワイヤロープBを例えば以下の手順で連結する。
交差する2本の太径ロープB1と細径ロープB2の交点を、2つの支圧プレート10で両側から挟む。
詳細には、太径ロープB1と細径ロープB2の交点の両側から、太径ロープB1の外周に一方の支圧プレート10の保持溝12を嵌め込み、細径ロープB2の外周に他方の支圧プレート10の保持溝12を嵌め込む。
続いて、2枚の支圧プレート10を、締結具20で締結する。
詳細には、例えば2枚の支圧プレート10における、中心を挟んで対向する2つの挿通孔13内にボルト21を連通し、ボルト21にワッシャ23を挿通してナット22を螺着する。なお、4つの挿通孔13全てに締結具20を挿通して締結してもよい。
【0023】
<3.1>圧着拘束機能(図4
本発明のロープ連結構造Aは、保持溝12内に細径ロープB2を扁平に圧着させた、圧着拘束機能に一つの特徴を有する。
ロープ連結具1は、保持溝12の幅Wが太径ロープB1の直径より大きく、すなわち細径ロープB2の直径より大きいため、保持溝12内に細径ロープB2を配置した状態において、細径ロープB2の両側に変形空間Sが構成される。
また、保持溝12の深さHが細径ロープB2の径より小さいため、細径ロープB2を保持溝12内に配置した状態において、細径ロープB2の一部が保持溝12の外側、すなわち底面11bより下方に突起する。
上記の寸法関係において、締結具20を締結すると、太径ロープB1の外周が細径ロープB2の外周を支圧し、細径ロープB2を保持溝12内に押し付ける。この際、細径ロープB2の両側には細径ロープB2の圧縮変形を許容する変形空間Sが確保されているため、細径ロープB2が断面視において両側の変形空間S内へ膨らんで扁平に変形する。
このように細径ロープB2を扁平に変形させた状態で2枚の支圧プレート10を固定することで、細径ロープB2の外周を保持溝12の内面に面状に圧着して強力に拘束することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 ロープ連結具
10 支圧プレート
11 プレート本体
11a 天面
11b 底面
12 保持溝
13 挿通孔
14 滑り止め手段
20 締結具
21 ボルト
22 ナット
23 ワッシャ
A ロープ連結構造
B ワイヤロープ
B1 太径ロープ
B2 細径ロープ
S 変形空間
【要約】
【課題】径の異なる2本のワイヤロープを交点で連結可能なロープ連結具及びロープ連結構造を提供すること。
【解決手段】本発明のロープ連結具1は、同一形状の2枚の支圧プレート10を備え、支圧プレート10は、平坦な底面11bを有するプレート本体11と、底面11bの中央を横断する保持溝12と、プレート本体11の両面を貫通する複数の挿通孔13と、を有し、保持溝12の幅が、太径のワイヤロープBの直径より大きく、保持溝12の深さが、細径のワイヤロープBの直径より小さいことを特徴とする。本発明のロープ連結構造Aは、ロープ連結具1を用い、太径のワイヤロープBと、細径のワイヤロープBと、を交点で直交させたことを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4