(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】防護柵用分割式支柱
(51)【国際特許分類】
E01F 7/04 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
E01F7/04
(21)【出願番号】P 2023145318
(22)【出願日】2023-09-07
【審査請求日】2023-09-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398054845
【氏名又は名称】株式会社プロテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】西田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】山本 満明
(72)【発明者】
【氏名】石井 太一
(72)【発明者】
【氏名】清野 雄貴
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-002023(JP,A)
【文献】特開平02-217543(JP,A)
【文献】特開平02-248558(JP,A)
【文献】特開2009-024479(JP,A)
【文献】特開平09-291598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
15/06
E04H 17/00
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部を支持面に埋設して立設する充填鋼管製の下部支柱と、前記下部支柱と同軸線上に配置して連結する充填鋼管製の上部支柱とからなる充填鋼管製の防護柵用分割式支柱であって、
前記下部支柱および上部支柱は外管内の充填材に複数の補強筋が埋設してあり、
同軸線上に配置した前記下部支柱と上部支柱の一端に形成したフランジ間を複数のボルト要素で連結してフランジ継手を形成し、
前記下部支柱または上部支柱の何れか一方の外管内に下部支柱の補強筋と上部支柱の補強筋を重合させて筒状に配置すると共に、
前記下部支柱または上部支柱の何れか一方の外管内に充填した連結用充填材で以て前記外管内に重合させて筒状に配置した補強筋群を位置決めして補強連結部を形成し
、
前記外管の中心部で軸方向に沿って金属製で断面が円形を呈する複数の内管を配置し、
前記複数の内管を外管内に充填した充填材で以て位置決めし、曲げモーメントが生じたときに前記内管が扁平状に変形するように構成したことを特徴とする、
防護柵用分割式支柱。
【請求項2】
前記下部支柱が外管内に配列した複数の第1補強筋を具備し、前記上部支柱が外管内に配列した複数の第2補強筋を具備し、前記第1補強筋または第2補強筋の何れか一方の補強筋が下部支柱または上部支柱の全長を超える長さを有することを特徴とする、請求項1に記載の防護柵用分割式支柱。
【請求項3】
前記第2補強筋が上部支柱の端面から突出し、前記下部支柱の上部に連結空間を形成し、前記連結空間内に第1補強筋および第2補強筋を重合させて筒状に配置したことを特徴とする、請求項2に記載の防護柵用分割式支柱。
【請求項4】
前記第1補強筋が下部支柱の端面から突出し、前記上部支柱の下部に連結空間を形成し、前記連結空間内に第1補強筋および第2補強筋を重合させて筒状に配置したことを特徴とする、請求項2に記載の防護柵用分割式支柱。
【請求項5】
外管内に配置する前記第1補強筋と第2補強筋が外管の中心から同一の半径で、かつ、均等の間隔で配置してあることを特徴とする、請求項2に記載の防護柵用分割式支柱。
【請求項6】
前記上部支柱の第2補強筋の径が下部支柱の第1補強筋と比べて小径であることを特徴とする、請求項2に記載の防護柵用分割式支柱
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は落石、土砂、雪崩等の崩落物を捕捉する防護柵用の支柱に関し、特に支柱を複数に分割して構成する分割式支柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に防護柵は、複数の支柱と、隣り合う支柱の間に取り付けた防護ネットを具備していて、防護ネットに作用した衝撃力を最終的に支柱の強度で支持している。
支柱には一般的に中空鋼管やH鋼等が用いられるが、高強度が要求される防護柵では、コンクリート充填鋼管製の支柱が用いられる。
【0003】
支柱は全長が比較的長く重量物であることから、車両輸送が困難な現場や、防護柵の設置現場が狭隘地である場合は、分割式の支柱が用いられる。
特許文献1には、支柱を上下二つに分割して支柱下部と支柱上部で構成する分割式の支柱が開示されている。
【0004】
図10を参照して従来の分割式の支柱50について説明する。
分割式の支柱50は支柱下部51と支柱上部52とからなる。
各支柱下部51と支柱上部52は充填鋼管製であり、鋼管53内に複数の補強筋54を配置しつつ、コンクリートやモルタル等の充填材55を充填してある。
各鋼管53の端部には環状のフランジ56が拡径方向に突設してある。
分割した形態で支柱下部51と支柱上部52を現場へ搬入した後に、フランジ56,56同士を突合せて複数のボルト要素57で連結して一本もの支柱50に組み立てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の分割式の支柱50にはつぎのような改善すべき点がある。
<1>分割式の支柱50は、支柱下部51と支柱上部52との間で補強筋54が分断されるので、連結部が塑性ヒンジとなって強度的に弱点となる。
そのため、分割式の支柱50は、分割しない一本ものの支柱と比べて、曲げ耐力が低くなる。
<2>分割式の支柱50は、ボルト要素57が破断すると、支柱50が連結箇所で折れてしまい、一瞬にして支柱機能を喪失してしまう。
<3>連結部の強度を高めるために、ボルト要素57の数を増やしたり、フランジ56と鋼管53の間に複数の補強リブ58を追加設置したりする対策が講じられているが、補強コストが高くつく。
<4>支柱下部51と支柱上部52との連結位置は、曲げモーメントの小さい支柱50の地上部のうちの上位位置に限定されて、支柱下部51と支柱上部52との連結位置を自由に選択できない。
【0007】
本発明の目的は以上の問題点を解決できる、防護柵用分割式支柱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下部を支持面に埋設して立設する充填鋼管製の下部支柱と、前記下部支柱と同軸線上に配置して連結する充填鋼管製の上部支柱とからなる充填鋼管製の防護柵用分割式支柱であって、前記下部支柱および上部支柱は外管内の充填材に複数の補強筋が埋設してあり、同軸線上に配置した前記下部支柱と上部支柱の一端に形成したフランジ間を複数のボルト要素で連結してフランジ継手を形成し、前記下部支柱または上部支柱の何れか一方の外管内に下部支柱の補強筋と上部支柱の補強筋を重合させて筒状に配置すると共に、前記下部支柱または上部支柱の何れか一方の外管内に充填した連結用充填材で以て前記外管内に重合させて筒状に配置した補強筋群を位置決めして補強連結部を形成し、前記外管の中心部で軸方向に沿って金属製で断面が円形を呈する複数の内管を配置し、前記複数の内管を外管内に充填した充填材で以て位置決めし、曲げモーメントが生じたときに前記内管が扁平状に変形するように構成したものである。
本発明の他の形態において、前記下部支柱が外管内に配列した複数の第1補強筋を具備し、前記上部支柱が外管内に配列した複数の第2補強筋を具備し、前記第1補強筋または第2補強筋の何れか一方の補強筋が下部支柱または上部支柱の全長を超える長さを有する。
本発明の他の形態において、前記第2補強筋が上部支柱の端面から突出し、前記下部支柱の上部に連結空間を形成し、前記連結空間内に第1補強筋および第2補強筋を重合させて筒状に配置する。
本発明の他の形態において、前記第1補強筋が下部支柱の端面から突出し、前記上部支柱の下部に連結空間を形成し、前記連結空間内に第1補強筋および第2補強筋を重合させて筒状に配置する。
本発明の他の形態において、外管内に配置する前記第1補強筋と第2補強筋が外管の中心から同一の半径で、かつ、均等の間隔で配置する。
本発明の他の形態において、前記上部支柱の第2補強筋の径が下部支柱の第1補強筋と比べて小径の寸法関係にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明は少なくとも次の一つの効果を奏する。
<1>本発明の分割式支柱は、分割式支柱に作用した曲げ力を、フランジ継手と補強連結部とに分散して支持する構造である。
そのため、フランジ継手が強度的な弱点にならずに済むため、地上に突出した地上部において、分割式支柱の連結位置を自由に選択することができる。
<2>本発明の分割式支柱は、補強連結部が大きな曲げ力に対抗するので、すべてのボルト要素が破断したとしても、分割支柱の曲げ耐力が急激に低下するのを効果的に防止できる。
そのため、ボルト要素が破断した後も、支柱機能を持続することができる。
<3>分割式支柱に作用した曲げ力を補強連結部が支持するために、フランジ継手の荷重負担を軽減できる。
そのため、フランジ継手に使用するボルト要素の設置数を削減できると共に、フランジと外管との間に補強リブを追加設置する必要がなくなる。
<4>補強連結部においける外管だけでなく、外管の内側で筒状に配置した複数の補強筋群等の複数の要素が連結結用充填材の拘束部材として機能する。
そのため、連結用充填材の拘束効果が高くなって、補強連結部の曲げ耐力が高くなる。
<5>下部支柱と上部支柱に跨って補強筋を配置することで、分割式支柱の全体で曲げ力を支持することができる。
<6>下部支柱と上部支柱の連結部に補強連結部を形成したことで、分割支柱の曲げ耐力が向上すると同時に、靭性の大幅な改善を図ることができる。
<7>外管の中心部に複数の内管を配置すると、内管が補強部材として機能するだけでなく、分割式支柱に曲げモーメントが生じたときに内管が扁平状に変形してエネルギーを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一部を省略した本発明の実施例1に係る分割式支柱の説明図
【
図9】
図8に示した下部支柱の断面図で、(A)は充填材の充填前における下部支柱の断面図、(B)充填材の充填後における下部支柱の断面図
【
図10】本発明が前提とする分割式の支柱の説明図で、(A)は連結前における分割式の支柱のモデル図、(B)は連結前後おける分割式の支柱のモデル図
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0012】
[実施例1]
<1>前提とする防護柵
本発明が前提とする防護柵は、雪崩対策用、崩落土砂対策用または落石対策用の防護柵であり、公知の所定の間隔で立設した支柱と、支柱間に横架した防護ネットを具備する。
【0013】
本発明に係る分割式支柱10は、防護柵に適用可能なコンクリート充填鋼管製の支柱であり、中間支柱と端末支柱を含む。
分割式支柱10はその下部をコンクリート基礎や土中に建て込み、地表に突出した分割式支柱10の地上部間に防護ネットを取り付けて使用する。
【0014】
防護ネットはワイヤロープまたは金網等のネット材の何れかひとつ、またはワイヤロープとネット材を組み合わせたものを含む。
さらに防護ネットは、隣り合う一対の分割式支柱10の間にスパン単位で横架する形態、または複数スパンに亘って連続して横架する形態を含む。
防護ネットは緩衝金具を具備する形態の他に、緩衝具を具備しない形態でもよい。
【0015】
分割式支柱10の地上部に防護ネットを取り付けるため、分割式支柱10の地上部の外周面の所定の位置に単数または複数のネット取付要素(例えばブラケット等)を設けておく。防護ネットに対応したネット取付要素は公知である。
【0016】
<2>分割式支柱の概要
本例では、分割式支柱10を縦向きにした状態を基本姿勢として説明する。
図1に例示した分割式支柱10について説明すると、分割式支柱10は下部支柱10Aと上部支柱10Bとを具備する。
下部支柱10Aと上部支柱10Bは、共に、鋼管製の外管11と、外管11内に配置した補強筋と、外管11内に充填したコンクリート等の充填材とからなる同径のコンクリート充填鋼管製である。
【0017】
なお、本例では、分割式支柱10を上下二つに分割した形態について説明するが、分割式支柱10の分割数は三つ以上であってもよい。
【0018】
<3>下部支柱
図2~4に例示した下部支柱10Aについて説明する。
本例の下部支柱10Aは、両端を開口した鋼管製の外管11と、外管11内に等間隔で配置した棒状を呈する複数の第1補強筋12aと、第1補強筋12aの内側に等間隔で配置した配置した複数の内管13と、複数の内管13の上位に配置したボイド管15と、外管11の内面と内管13の外面との間に充填した充填材14aと具備している。
下部支柱10Aの上部には、有底構造で上向きの連結空間Sを形成している。
【0019】
<3.1>外管
外管11は断面が円形を呈する鋼管である。
外管11の上端には拡径方向に突出した環状のフランジ16が一体に形成してある。
フランジ16には等間隔に複数のボルト孔を開設するが、本発明ではボルト孔の数は従来と比べて少なくてよく、さらに外管11とフランジ16の間に従来のような補強リブを設ける必要がない。
【0020】
<3.2>第1補強筋
外管11の内側で、複数の内管13の外方には、同心円状に複数の第1補強筋12aが配置してある。
第1補強筋12aは、外管11の全長とほぼ等しい長さを有する補強材であって、外管11内に等間隔に配置してある。
【0021】
<3.3>充填材
連結空間Sを除き、外管11内に充填材14aが充填されている。
連結空間Sの底部には充填材14aの上面が露出する。
【0022】
<3.4>連結空間
下部支柱10Aの上部には連結空間Sを形成していて、連結空間S内には複数の第1補強筋12aが露出している。
連結空間Sは、第1および第2補強筋12a,12bの配置空間であると共に、連結用の充填材14cの充填空間である。
連結空間Sの深さLは補強連結部20の曲げ耐力に応じて適宜選択する。
【0023】
<3.5>補強連結部
連結空間Sの全域に連結用の充填材14cを充填することで、補強連結部20を形成する(
図1)。
補強連結部20は、下部支柱10Aと上部支柱10Bとの間を連結する高剛性の柱体であり、下部支柱10Aの外管11と、並列に配置した第1および第2補強筋12a,12bと、連結用の充填材14cとにより構成する。
【0024】
<3.6>内管
複数の第1補強筋12aの内側であって、外管11の中心部には、複数の内管13が互いに近接して配置してある。
内管13は充填材14aが充填されていない中空構造の鋼管であり、補強部材として機能する。
【0025】
外管11と内管13の間に強度差が生じるように、内管13の肉厚が外管11の肉厚より薄い関係になっている。
両管11,13の間に強度差を設けるのは、受撃時に外管11に先行して複数の内管13群に扁平状の圧縮変形を生じさせて、下部支柱10Aの靭性を高るためである。
【0026】
なお、複数の内管13は必須ではなく、省略してもよい。
【0027】
<3.7>ボイド管
連結空間Sの中心部であって、複数の内管13の延長線上には、ボイド管15が配置してある。
ボイド管15は連結空間Sの全長に亘る長さを有する中空の管体または円柱体である。
ボイド管15の使用目的は、連結空間Sに現場で充填材14aを充填する際に空洞を形成して充填材14aの充填量を少なくするためである。
ボイド管15の素材は、特に制限がなく、樹脂製、紙製、発泡スチロール製等でもよい。
【0028】
ボイド管15は複数の内管13と組み合わせて使用するが、ボイド管15を省略する場合もある。
【0029】
<4>上部支柱
図5.6に例示した上部支柱10Bについて説明する。
本例の上部支柱10Bは、両端を開口した鋼管製の外管11と、外管11内に等間隔で配置した棒状を呈する複数の第2補強筋12bと、第2補強筋12bの内側に等間隔で配置した配置した複数の内管13と、外管11の内面と内管13の外面との間に充填した充填材14bと具備している。
【0030】
<4.1>外管
外管11は断面が円形を呈する鋼管であり、その下端に拡径方向に突出した環状のフランジ16が一体に形成してある。
【0031】
<4.2>充填材
充填材14bは上部支柱10Bを構成する外管11の全長に亘って充填されていて、外管11の底部端面に充填材14bが露出する。
【0032】
<4.3>第2補強筋
第2補強筋12bは外管11の全長より長い長さを有する補強材であり、外管11と複数の内管13との間に等間隔に配置してある。
第2補強筋12bの下半部は、充填材14bの底面から下方へ向けて突出している。
第2補強筋12bの下半部を下部支柱10Aの連結空間Sに内挿するためである。
第2補強筋12bの突出長は、連結空間Sの深さLに応じて適宜選択する。
【0033】
なお、本例では、第2補強筋12bを一本ものの鋼材で構成する形態について示しているが、第2補強筋12bの下半部を分割し、ジョイント具を介して現場で第2補強筋12bの分割体を連結して延長するようにしてもよい。
【0034】
<5>第1補強筋と第2補強筋
第1補強筋12aと第2補強筋12bについてさらに詳しく説明する。
【0035】
<5.1>複数の第1補強筋と複数の第2補強筋の配置ピッチと配置径
先に説明した複数の第1補強筋12aと複数の第2補強筋12bは、それぞれ同心円状に配置するが、複数の第1補強筋12aと複数の第2補強筋12bは外管11の中心から同一の半径で、かつ、均等の間隔で配置してある。
【0036】
このように構成したのは、
図9に示すように、連結空間S内において隣り合う第1補強筋12aの間に第2補強筋12bを位置させて、二種類の補強筋12a,12b群を同心円状に配置するためである。
【0037】
<5.2>第1補強筋と第2補強筋の径の関係
第1補強筋12aの径をd
1、第2補強筋12bの径をd
2とした場合、補強筋12bの径は同形の組み合わせ(d
1=d
2)としてもよいが、第2補強筋12bの径d
2を第1補強筋12aの径d
1より小径(d
2<d
1)としてもよい(
図9)。
【0038】
第2補強筋12bの径d2を第1補強筋12aの径d1より小径にすることで、経済的な配置が可能となる。
すなわち、衝撃により曲げ力が作用した場合、曲げ力は下部支柱10A側により大きくかかるため、下部支柱10A側の第1補強筋12aの径d1を太くし、上部支柱10B側の第2補強筋12bの径d2を細くしても曲げ力に耐えることができる。
【0039】
[分割式支柱の組立方法]
つぎに
図7~9を参照しながら分割式支柱10の組立方法について説明する。
【0040】
<1>分割式支柱の分割搬入
分割式支柱10を構成する下部支柱10Aと上部支柱10Bは予め工場等で製作しておき、これらの下部支柱10Aと上部支柱10Bを現場へ個別に搬入する。
【0041】
分割式支柱10の全長が長尺で、かつ、大重量であっても、分割式支柱10が複数に分割してあるので、現場への搬入が容易である。
【0042】
<2>下部支柱の立設
図7に示すように、分割式支柱10の立設予定位置に搬入した下部支柱10Aの下部をコンクリート基礎または地盤等の支持面Gに埋設して立設する。
【0043】
<3>上部支柱の搭載
つぎに
図8に示すように、下部支柱10Aの上部に上部支柱10Bを搭載する。
このとき、上部支柱10Bの底面から突出した第2補強筋14bを下部支柱10Aの連結空間Sに内挿する。
【0044】
図9(A)は連結空間S内に配置した第1および第2補強筋14a,14b群を示している。第1補強筋14aと第2補強筋14bとが交互に位置しつつ、筒状(環状)に配列する。
【0045】
<4>フランジ間のボルト連結(フランジ継手の形成)
図8に示すように、突き合せたフランジ16,16間を複数のボルト要素30で連結してフランジ継手を形成する。
ボルト要素30は普通ボルトでもよいが、ハイテンションボルトを使用すると、ボルト数をさらに削減できる。
【0046】
<5>充填材の注入(補強連結部の形成)
図1に示すように、連結空間S内に連結用の充填材14cを充填して補強連結部20を形成する。
前記したフランジ継手と補強連結部20を介して下部支柱10Aと上部支柱10Bとを一体に連結することで、一本ものの分割式支柱10を組み立てる。
【0047】
連結空間S内の充填材14cが硬化することで、複数の固結材14a,14b,14cの間に連続性が付与される。
【0048】
以上説明したように、分割式支柱10の全長が長尺であっても、分割した形態で組立てできるので、現地における分割式支柱10の組立作業を迅速で、かつ簡易に行うことができる。
【0049】
以降に連結用の充填材14cのいくつかの充填方法について説明するが、連結用の充填材14cの充填方法はこれらの例示した形態に限定されるものではない。
【0050】
<5.1>充填材の注入例(1)
連結用の充填材14cの充填方法としては、連結空間Sの底部と上部に注入孔と確認孔を設け、連結空間Sの底部に設けた注入孔を通じて連結用の充填材14cを注入し、連結空間Sの上部に設けた確認孔を通じて充填材14cのオーバーフローを確認したら充填作業を終了する。
連結用の充填材14cは第1および第2補強筋14a,14b群の周面間を通って連結空間Sの全域に充填される。
【0051】
なお、注入孔は確認孔と同じように連結空間Sの上部に設けてもよい。
【0052】
<5.2>充填材の注入例(2)
他の連結用の充填材14cの充填方法としては、予め下部支柱10Aの連結空間S内の全域に連結用の充填材14cを注入しておき、充填材14cを注入した連結空間S内に上部支柱10Bの第2補強筋14bを建て込んで連結することも可能である。
【0053】
[分割式支柱の特性]
つぎに分割式支柱10の特性について説明する。
【0054】
<1>内管の変形による曲げ力の減衰作用
本例で例示したしたように、下部支柱10Aおよび上部支柱10Bの内部に内管13が埋設してある場合は、分割式支柱10に曲げ力が作用すると、曲げ力が分割式支柱10を構成する外管11、充填材14a,14b,14c、及び複数の内管13へ夫々伝達され、これらの各部材に曲げモーメントを生じる。
【0055】
内管13の肉厚を薄厚にして外管11との間に強度差を設けてあることから、外管11に先行して複数の内管13群が扁平状に圧縮変形する。複数の内管13が圧縮変形する際にエネルギーが吸収される。
【0056】
<2>フランジ継手と補強連結部による荷重分散作用
本発明の分割式支柱10では、突き合せた下部支柱10Aおよび上部支柱10Bのフランジ16,16間を複数のボルト要素30で連結してフランジ継手を形成する。
【0057】
さらに本発明の分割式支柱10では、補強連結部20において、二種類の補強筋群(第1補強筋12aと第2補強筋12b)と連結用の充填材14cとの協働により、下部支柱10Aと上部支柱10Bの間を強固に連結している。
そのため、分割式支柱10に作用した曲げ力は、フランジ継手と補強連結部20とにそれぞれ分散して支持される。
フランジ継手の荷重負担が軽減されるため、ボルト要素30の設置数を削減できると共に、フランジ16と外管11との間に補強リブを追加設置する必要がなくなる。
【0058】
<3>フランジ継手が破損した場合
仮に、フランジ継手に大きな曲げ力が作用すると、ボルト要素30が破断する。
本発明では、次記するように補強連結部20が大きな曲げ力に対抗するので、すべてのボルト要素30が破断したとしても、分割支柱10の曲げ耐力が急激に低下するのを防止できる。
【0059】
<4>補強連結部による荷重分散作用
補強連結部20において、外管11が連結用の充填材14cの第1の拘束部材として機能する。
【0060】
さらに、外管11の内側で筒状に配置した複数の補強筋12a,12b群は、中心部に位置する連結用の充填材14cを拘束する第2の拘束部材として機能する。
すなわち、筒状に配置した複数の補強筋12a,12b群は疑似拘束材(拘束ソケット)として機能するため、外管11の中心部に位置する連結用の充填材14cを拘束する。
【0061】
さらに、外管11と筒状に配置された補強筋12a,12b群との間で筒状に形成された連結用の充填材14cが中心部に位置する連結結用の充填材14cを拘束する第3の拘束部材として機能する。
筒状に形成された連結用の充填材14cはその内外面を外管11と筒状に配置された補強筋12a,12b群によって挟持される。
そのため、外管11と補強筋12a,12b群との間で筒状に形成された連結用の充填材14cも、中心部に位置する連結用の充填材14cの拘束部材として機能する。
【0062】
このような複数の拘束部材によって、連結用の充填材14cの拘束効果が格段に高くなる。
したがって、補強連結部20の曲げ耐力が高くなる。
【0063】
補強連結部20はその全長に亘って荷重を分散できるだけでなく、第1補強筋12aと第2補強筋12bを通じて上部支柱10Bと下部支柱10Bの全長に亘って荷重を分散して伝達することができる。
したがって、分割支柱10の連結部に対する過大な応力集中を回避できて、分割式支柱10の全体で曲げ力を支持することができる。
このように本発明の分割支柱10は、曲げ耐力の向上と靭性の大幅改善を両立することができる。
【0064】
<5>分割式支柱の連結位置について
本発明の分割式支柱10では、分割式支柱10に作用した曲げ力を、フランジ16,16間をボルト要素30で連結したフランジ継手と補強連結部20とに分散して支持する構造である。
そのため、フランジ継手が強度的な弱点にならずに済むため、地上に突出した地上部において、分割式支柱10の連結位置を自由に選択することができる。
【0065】
[実施例2]
先の実施例1では、補強連結部20を下部支柱10A側に形成した形態について説明したが、補強連結部20を上部支柱10B側の下部に形成することも可能である。
【0066】
本例は
図1の上下を逆にした連結構造であり、第1補強筋12aを下部支柱10Aの上端面から突出し、上部支柱10Bの下部に連結空間を形成する。
連結空間S内で第1補強筋12aおよび第2補強筋12bを重合させて筒状に配置し、連結空間S内に連結用充填材14cを充填して重合させて筒状に配置した第1補強筋12aおよび第2補強筋12b群を位置決めする。
【0067】
要は、下部支柱10Aの上部側または上部支柱10Bの下部側の何れか一方に連結空間Sを形成し、この連結空間S内に二種類の補強筋12a,12bを配置した後に連結用の充填材14cを充填して補強連結部20が形成してあればよい。
【符号の説明】
【0068】
G・・・・・支持面
S・・・・・連結空間
10・・・・分割式支柱
10A・・・下部支柱
10B・・・上部支柱
11・・・・外管
12a・・・下部支柱の充填材
12b・・・上部支柱の充填材
13・・・・内管
14a・・・下部支柱の充填材
14b・・・上部支柱の充填材
14c・・・連結用の充填材
15・・・・ボイド管
16・・・・フランジ
20・・・・補強連結部
30・・・・ボルト要素
【要約】
【課題】分割式支柱の連結位置を自由に選択できて、分割支柱の曲げ耐力の向上と靭性の改善の両立が可能な防護柵用分割式支柱を提供すること。
【解決手段】
充填鋼管製の下部支柱10Aと、充填鋼管製の上部支柱10Bとからなり、下部支柱10Aおよび上部支柱10Bは外管11内の充填材14a,14bに複数の補強筋12a,12bが埋設してあり、下部支柱10Aと上部支柱10Bの一端に形成したフランジ16,16間を複数のボルト要素で連結してフランジ継手を形成し、下部支柱10Aまたは上部支柱10Bの何れか一方の外管内に下部支柱10Aの補強筋12aと上部支柱10Bの補強筋12bを重合させて筒状に配置すると共に、下部支柱10Aまたは上部支柱10Bの何れか一方の外管11内に充填した連結用充填材14cで以て筒状に配置した補強筋12a,12b群を位置決めして補強連結部20を形成した。
【選択図】
図1