(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】金属製のワークピースを誘導式に硬化させる装置、誘導式の硬化方法及び装置の使用
(51)【国際特許分類】
C21D 1/667 20060101AFI20231228BHJP
C21D 1/42 20060101ALI20231228BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20231228BHJP
C21D 9/28 20060101ALI20231228BHJP
C21D 9/32 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C21D1/667
C21D1/42 H
C21D1/18 K
C21D9/28 B
C21D9/32 B
C21D9/32 A
C21D9/28 A
(21)【出願番号】P 2020529339
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(86)【国際出願番号】 EP2018000532
(87)【国際公開番号】W WO2019105581
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】102017011048.4
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507253015
【氏名又は名称】エンラックス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】エッカート・ダーフィト
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203546080(CN,U)
【文献】独国実用新案第29908375(DE,U1)
【文献】西独国特許出願公開第03842372(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0134997(KR,A)
【文献】特開2008-202102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/02-1/84
C21D 9/28
C21D 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のワークピース(6)を硬化させる誘導ユニット(2)と、急冷ユニット(3)とを有する、金属製のワークピースを誘導式に硬化させる装置(1)であって、装置(1)がドラムユニット(4)を備えており、ドラムユニットは、その回転軸線が垂直に向けられているとともに、それぞれ1つのワークピース(6)のための複数のワークピース収容部(5)を備えており、急冷ユニット(3)が、ドラムユニット(4)に
設けられているとともに、
ドラムユニット(4)に対して径方向内方へ向けられた少なくとも2つの急冷スプリンクラー(7,7’,7
”)を備えており、
少なくとも1つの別の急冷スプリンクラー(8,8’,8”
)が各ワークピース収容部(5)に
設けられているとともにドラムユニットと共に回転し、誘導ユニット(2)がドラムユニット(4)の周囲に沿った第1の位置に位置固定して配置されており、急冷ユニット(3)がドラムユニット(4)の周囲に沿った第2の位置に位置固定して配置されており、急冷ユニット(3)が、誘導ユニット(2)に対して90°よりも小さな角度だけドラムユニット(4)の回転方向(R)へずらして配置され
ていることを特徴とする装置。
【請求項2】
急冷ユニット(3)がドラムユニット(4)の周囲に沿って3つの急冷スプリンクラー(7,7’,7”)を備えており、及び/又は誘導ユニット(2)と
誘導ユニット(2)に最も近い第1の急冷スプリンクラー(7)の間の角度ずれが、ドラムユニット(4)の回転方向(R)において10~20°の範囲に
あることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ドラムユニット(4)が各ワークピース収容部(5)において少なくとも1つの急冷スプリンクラー(8)を備えており、該急冷スプリンクラーは、ワークピース収容部(5)に対して径方向内方へずらして配置されているとともに、そのノズルが径方向外方へ向けられていること、及び/又はドラムユニット(4)が各ワークピース収容部(5)において2つの急冷スプリンクラー(8’,8”)を備えており、該2つの急冷スプリンクラーは、ワークピース収容部(5)に対して側方に配置されているとともに、そのノズルが互いに対向していることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
装置(1)が長さ測定システム(9)を含んでおり、長さ測定システム(9)が、ワークピースの長さ及び位置を検出する少なくとも1つのセンサユニットを備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
長さ測定システム(9)が、誘導ユニット(2)の位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
装置(1)が装着・取外し装置(10)を含んでおり、装着・取外し装置は、
ワークピース(6)を、ドラムユニット(4)におけるワークピース収容部(5)
にはめ込み、あるいは
ワークピース収容部(5)から取り外すために形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
装着・取外し装置(10)と誘導ユニット(2)の間の
角度ずれが、
ドラムユニット(4)の回転方向(R)において90~200°の範囲にあ
ることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか1項による装置を用いた誘導式の硬化方法であって、
-初期位置において、装着・取外し装置を用いて、ドラムユニット(4)におけるワークピース収容部(5)にワークピース(6)をはめ込むステップと、
-ドラムユニット(4)を硬化位置へあらかじめ規定された回転角度だけ回転させ、これにより、ワークピース(6)を誘導ユニット(2)へ供給するステップと、
-誘導ユニット(2)においてワークピース(6)を誘導式に硬化させるステップと、
-ドラムユニット(4)を急冷位置へ更にあらかじめ規定された回転角度だけ回転させ、これにより、ワークピース(6)を急冷
ユニット(3)へ供給するステップと、
-急冷位置への回転中に、
ワークピース収容部(5)に設けられた急冷スプリンクラー(8)と、急冷ユニット(3)の少なくとも2つの急冷スプリンクラー(7,7’)とを始動させ、これにより、急冷媒体-カーテンを生じさせるステップと、
-急冷位置の通過時に、急冷
ユニット(3)を用いて誘導式に加熱されたワークピース(6)を急冷するステップと、
-ワークピース(6)の急冷がなされた後、ドラムユニット(4)を初期位置へ更に回転させ、硬化されたワークピース(6)をワークピース収容部(5)から取り外すステップと
を含む硬化方法。
【請求項9】
誘導位置において、
-長さ測定システム(9)を用いて、誘導ユニットにおけるワークピースの長さ及び/又は位置の実際値を検出するステップと、
-実際値をデータ処理ユニット(12)へ供給するステップと、
-検出された実際値がワークピース(6)の長さ及び/又は位置の目標値と異なる場合に、データ処理ユニット(12)を用いて位置信号を生成し、制御ユニット(11)へ伝達するステップと、
-誘導ユニット(2)におけるワークピース(6)の位置を補正するステップと
を含む請求項8に記載の硬化方法。
【請求項10】
金属製のワークピースを誘導式に硬化させ、硬化された金属製のワークピースを製造する装置の使用において、
装置が、請求項1~7
のいずれか1項に記載の、金属製のワークピースを誘導式に硬化させる装置(1)であることを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のワークピースを誘導式に硬化させる装置と、当該装置を用いた誘導式の硬化方法と、誘導式に硬化させる装置の使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製のワークピースを誘導式に硬化させる装置が従来技術から知られており、水平なドラム装置が、ワークピースを収容し、ワークピースを誘導ユニットへ供給し、加熱されたワークピースは、急冷のために浸漬槽へ移される。
【0003】
特許文献1には、誘導式に硬化させる装置が記載されており、金属製のワークピースは、磁場を用いて誘導式に加熱され、その後、適切な急冷媒体によって再び冷却される。
【0004】
このために適切な、特にラックの硬化に適切な誘導子は、特許文献2及び特許文献3から知られている。これら文献には、例えばラックのような細長いワークピースを硬化するための誘導子の形状が記載されている。
【0005】
急冷は、硬化後時間遅延をもって行われる。なぜなら、ワークピースは、まず誘導子から取り出され、その後急冷ユニットへ入れられる必要があるためである。これにより、急冷が遅延することとなり、これにより、硬化の品質が損なわれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102011108875号明細書
【文献】独国特許出願公開第102012014765号明細書
【文献】欧州特許第2135485号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当該従来技術を基礎として、本発明の課題は、急冷が硬化過程後すぐに行われる、金属製のワークピースを誘導式に硬化させる改善された装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当該課題は、請求項1の特徴を有する装置によって解決される。
【0009】
別の課題である、金属製のワークピースを硬化させる、より単純かつより良好な方法の提案は、独立請求項9の特徴を有する、装置を用いた誘導式の硬化方法によって解決される。
【0010】
また、単純に構成され、改善された硬化を可能とする、誘導式の硬化装置の適切な使用を提供するという課題は、独立請求項11の特徴を有する、誘導式の硬化装置の使用によって解決される。
【0011】
装置、方法及び使用の発展形成は、従属請求項において説明されている。
【0012】
硬化装置の第1の実施形態は、金属製のワークピースを硬化させる誘導ユニットと、誘導ユニットに割り当てられた急冷ユニットとを有する、金属製のワークピースを誘導式に硬化させる装置に関するものである。本発明によれば、装置はドラムユニットを備えており、ドラムユニットの回転軸線は垂直に向けられており、ドラムユニットは、それぞれ1つのワークピースのための多数のワークピース収容部を備えている。ここで、急冷ユニットは、ドラムユニットに割り当てられているとともに、少なくとも2つの急冷スプリンクラーを備えており、当該急冷スプリンクラーのうち少なくとも1つが各ワークピース収容部に割り当てられており、その結果、当該急冷スプリンクラーはドラムユニットと共に回転する。
【0013】
ドラムユニットの回転方向は、硬化装置がどのように構成されているか、及び個々の構成要素がどのくらいスペースを有するかに応じて、反時計回りであっても、また時計回りであってもよい。回転方向に応じて、硬化装置は、それぞれ他の回転方向に対応する硬化装置に対してミラー反転状に構成されている。
【0014】
本発明の別の実施形態では、誘導ユニットがドラムユニットの周囲に沿った第1の位置に位置固定して配置されることができ、急冷ユニットがドラムユニットの周囲に沿った第2の位置に位置固定して配置されることができ、急冷ユニットは、誘導ユニットに対して90°よりも小さな角度だけドラムユニットの回転方向へずらして配置されている。また、急冷ユニットは、ドラムユニットに対して径方向内方へ向けられた2つ又はより多くの急冷スプリンクラーを備えている。
【0015】
有利には、これにより、改善された急冷を可能とすることができる。急冷は、ドラムユニットが更に回転しなければならずまた急冷装置に到達する時間の経過後に初めて行われるのではなく、急冷を、誘導過程直後に開始することが可能である。誘導を用いて硬化するのに適した金属製のワークピース、ラック、カルダン軸又はスプロケットのような歯車のような、特に鋼製の細長いワークピース全体を装置によって硬化させることができる。
【0016】
以下で角度ずれについて説明するときには、誘導ユニットは、装置の個々の構成要素の互いに対する配置についての初期点を形成する。
【0017】
装置の発展形成では、急冷ユニットは、ドラムユニットの周囲に沿って3つの急冷スプリンクラーを備えることが可能である。誘導ユニットと第1の急冷スプリンクラーの間の角度ずれは、ドラムユニットの回転方向Rにおいて20~40°の範囲にあってよく、特に30°であってよい。また、誘導ユニットと第の急冷スプリンクラーの間の角度ずれは、30~50°の範囲にあってよく、好ましくは45°であってよく、誘導ユニットと第3の急冷スプリンクラーの間の角度ずれは、50~90°の範囲であってよく、好ましくは60°であってよい。したがって、スプリンクラーは、所定の角度ずれに沿って均等に分配されているとともに、ワークピースを容易に通過させることができる、急冷媒体による一種の「カーテン」を可能とするものである。
【0018】
本発明は、ドラムユニットが各ワークピース収容部において1つ又は複数の急冷スプリンクラーを備えているように構成されており、急冷スプリンクラーは、ワークピース収容部に対して径方向内方へずらして配置されているとともに、そのノズルは、径方向外方へ向けられている。当該スプリンクラーは、ドラムユニットの近傍に固定されているわけではなく、ドラムユニットと共に回転し、各ワークピース収容部の後方には、このような「共に回転する」スプリンクラーが設けられている。したがって、ワークピースは、急冷と同時に外部から他の側からも、したがってドラムユニットの内部からも急冷されることが可能である。これに代えて、又はこれに加えて、ドラムユニットは、各ワークピース収容部において2つの急冷スプリンクラーを備えることができ、これら急冷スプリンクラーは、ワークピース収容部に対して側方に配置されているとともに、そのノズルは互いに対向している。これにより、加熱直後及びドラムユニットの回転中に急冷されることが可能である。
【0019】
スプリンクラーは、ケース形状で形成されているとともに、スプリンクラーノズルが配置されたスプリンクラープレートを備えている。スプリンクラープレートは、複数の点状ノズルを生じさせる複数の孔を備えている。ここで、スプリンクラー孔の数は、ワークピース、ワークピースの大きさあるいは寸法に依存するとともに、各用途に適合させることが可能である。急冷媒体として、水性のポリマ溶液又は他の適切な流体を用いることが可能である。
【0020】
本発明の他の発展形成では、急冷ユニットには後スプリンクラーが割り当てられることができ、誘導ユニットに対する後スプリンクラーの角度ずれは、100~160°の範囲にあり、好ましくは120°である。これにより、ワークピースが取外しユニットを用いてドラムユニットから取り除かれる前に、再度急冷媒体でワークピースに負荷を与えることができるとともに、ワークピースを室温に近づけることが可能である。
【0021】
ワークピースを収容するワークピース収容部が、ワークピースを収容することが可能な2つの先端部、すなわち上側の先端部と下側の先端部を備えるように、硬化装置を構成することができる。下側の先端部は固定して支持されており、上側の先端部は重さの負荷を受けるように支持されている。重さの負荷により、ワークピースは、熱に起因して膨張する(延びる)ことが可能である。ここで、ワークピースに作用する力はほぼ同一のままである。なぜなら、一定の重さが持ち上げられるためである。このことは、有利には、硬化後に生じる、ワークピース収容部により低減される同心度誤差に影響を与える。
【0022】
また、装置は長さ測定システムを含むことができ、長さ測定システムは、ワークピースの長さ及び位置を検出する1つ又は複数のセンサユニットを備えている。したがって、測定システムにより、加熱されたワークピースの長さ変化を検出することが可能である。このデータは、機械制御部によって処理され、(Z)軸線の位置信号として供給されることが可能である。当該軸線を用いて、ワークピースあるいは誘導子を誘導ユニットにおいて位置決めすることが可能である。これにより、誘導子は、ワークピースに対して、一方では心合わせされて、他方では長さに関して常に正確に位置決めされて向き調整されることが可能である。
【0023】
このために、本発明によれば、測定システムが誘導ユニットの位置に配置されているように構成されることが可能である。しかし、測定システムの位置は、ドラムユニットの周囲に沿った他の箇所に存在することも可能である。
【0024】
また、装置は、装着・取外し装置を含むことができ、当該装着・取外し装置は、ドラムユニットの収容部を装着し、あるいは取り外すために形成されている。これにより、ワークピースをドラムユニットあるいは対応するワークピース収容部へはめ込むとともに、再び取り出すことが可能である。
【0025】
本発明の一発展形成では、装着・取外し装置と誘導ユニットの間の間隔は、90~200°の範囲にあって好ましくは140°であるドラムユニットの回転角度に対応し得る。有利には、硬化されるべきワークピースの装着及び取外しは、硬化させるためのサブ処理時間においてなされ得る。
【0026】
また、本発明は、本発明による装置を用いた誘導式の硬化方法に関するものであり、当該方法は、
-初期位置において、装着・取外し装置を用いてドラムユニットを装着し、ワークピースをワークピース収容部へはめ込むステップと、
-ドラムユニットを硬化位置へあらかじめ規定された回転角度だけ回転させ、これにより、ワークピースを誘導ユニットへ供給するステップと、
-誘導ユニットにおいてワークピースを誘導式に加熱するステップと、
-ドラムユニットを急冷位置へ更にあらかじめ規定された回転角度だけ回転させ、これにより、ワークピースを急冷装置へ供給するステップと、
-急冷位置への回転中に、急冷スプリンクラーと、急冷ユニットの少なくとも2つの急冷スプリンクラーとを始動させ、これにより、急冷媒体-カーテンを生じさせるステップと、
-急冷位置の通過時に、急冷装置を用いて誘導式に加熱されたワークピースを急冷するステップと、
-ワークピースの急冷がなされた後、ドラムユニットを初期位置へ更に回転させ、硬化されたワークピースをワークピース収容部から取り外すステップと
を含む。
【0027】
ドラムユニットがワークピースを誘導ユニットへ供給したか、あるいは回転した場合、誘導子がワークピースへ走行し、ワークピースをドラムユニットにおいて加熱するように方法を構成することが可能である。加熱がなされた後、誘導子は戻り、ドラムユニットは再び回転することができる。ドラムユニットの回転方向は、本発明による装置の構成及び局所的な必要スペースに応じて、反時計回り又は時計回りになされることが可能である。
【0028】
本発明による方法は、連続的に進行するか、又は段階的に進行することが可能である。
急冷ユニットのスプリンクラー及び各ワークピース収容部の共に回転するスプリンクラーが同期して動作し、その結果、ワークピースが誘導ユニットから出るように回転されるとすぐにワークピースが急冷ユニットへ更に回転されるように、本発明による方法が構成されている。
【0029】
方法の一発展形態では、ドラムユニットが誘導位置にある間、長さ測定システムを用いて、誘導ユニットにおけるワークピースの長さあるいは位置の実際値を検出することが可能である。当該実際値は、データ処理ユニットへ供給される。実際値は、あらかじめ規定された目標値と比較される。検出された実際値がワークピースの長さあるいは位置のあらかじめ規定された目標値と異なる場合には、データ処理ユニットを用いて位置信号が生成され制御ユニットへ伝達される。最終的に、誘導ユニットにおけるワークピースの位置あるいは位置が適合又は補正されることが可能である。これにより、常に、誘導ユニットの誘導子がワークピースに対して心合わせして、あるいはワークピースの長さに関して正確に位置決めされて向き調整されることを達成することが可能である。
【0030】
金属製のワークピースを誘導式に硬化させる、すなわち金属製のワークピースを製造する装置の本発明による使用は、本発明による装置を用いてワークピースを生じさせる。これにより、従来技術に比して改善された硬化を受ける、装置によって硬化されたワークピースを生じさせることが可能である。ワークピースの両側からの迅速な急冷により、より単純で迅速な急冷が可能となる。
【0031】
硬化装置の別の実施形態と、当該実施形態及び別の実施形態に関連する利点のうちいくつかは、添付の図面を参照した以下の詳細な説明によって明らかであるとともにより良好に理解可能である。本質的に同一又は類似の同一の対象又は部分には同一の符号が付され得る。各図は、本発明の様々な実施形態の単に概略的な図示である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明による硬化装置の第1の実施形態を概略的に示す図である。
【
図2】本発明による硬化装置の別の実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明による装置は、誘導式の硬化装置1に関するものである。
図1では、装置1は、1つ又は複数の誘導子を有する誘導ユニット2を示している。誘導ユニット2は、データ処理ユニット12に接続された制御ユニット11を用いて制御される。誘導ユニット2を用いて硬化されるべきワークピース6を正確に位置決めするために、長さ測定システム9が設けられており、当該長さ測定システムは、硬化されるべきワークピース6の長さ及び位置を適切なセンサを用いて検出することが可能である。そして、検出された値は、データ処理ユニット12へ供給され、これに基づき、誘導ユニット2の誘導子をワークピースに対して正確に位置決めするために、場合によっては位置信号が算出される。
【0034】
また、装置1はドラムユニット4を備えており、当該ドラムユニットは、回転可能に支持されているとともに、回転方向R(
図1における反時計回り)に回転可能であり、その回転軸線Aは垂直に向けられている。ドラムユニット4は、それぞれ1つのワークピース6について多数のワークピース収容部5を備えている。ワークピース6は、ワークピース収容部5において保持されることができるとともに、ドラムユニット4が誘導ユニット2の位置へ至ると、誘導ユニット2の誘導子に動作可能に接続されることができる。動作可能に接続とは、誘導ユニット2の誘導子及び供給されたワークピースが互いに接触し、ワークピース6を硬化させるために誘導子が操作されることを意味している。
図1によれば、誘導子がワークピース6に供給される。ワークピース6の加熱がなされた後、誘導子は戻り、ドラムユニット4は回転することができる。
【0035】
誘導ユニット2は、ドラムユニット4の周囲に沿って、第1の位置、すなわち加熱位置に配置されているとともに、装置1の個々の構成要素の配置のための初期位置を形成している。急冷ユニット(焼入れユニット)3は、ドラムユニット4の周囲に沿った第2の位置に位置固定して配置されており、急冷ユニット3は、ドラムユニット4の回転方向Rへ誘導ユニット2に対して90°より小さな角度だけずらして配置されている。急冷ユニット3は、互いに並んで配置された3つの急冷スプリンクラー7,7’,7”を備えており、当該急冷スプリンクラーのノズルは、ドラムユニット4に対して径方向内方へ向けられており、したがってワークピース6に急冷媒体で負荷を与えることが可能である。
【0036】
誘導ユニット2と第1の急冷スプリンクラー7の間の角度ずれは、ドラムユニット4の回転方向Rにおいて20~40°の範囲にあり、特に30°である。また、誘導ユニット2と第2の急冷スプリンクラー7’の間の角度ずれは、30~50°の範囲にあってよく、好ましくは45°であってよく、誘導ユニット2と第3の急冷スプリンクラー7”の間の角度ずれは、50~90°の範囲であってよく、好ましくは60°であってよい。したがって、スプリンクラー7,7’,7”は、所定の角度ずれに沿って均等に分配されているとともに、ワークピース収容部5において保持されたワークピース6を容易に通過させることができる、急冷媒体による一種の「カーテン」を可能とするものである。
【0037】
また、各ワークピース収容部5の後方には別の急冷スプリンクラー8が配置されており、当該別の急冷スプリンクラーは、ワークピース収容部5に対して径方向内方へずらされており、そのノズルは径方向外方へ向けられている。急冷ユニット3の回転方向Rにおける後方には後スプリンクラー13が配置されており、必要であれば、当該後スプリンクラーによって、ワークピース6の更なる急冷(焼入れ)を行うことが可能である。
【0038】
ドラムユニット4にワークピース6を装着することができるように、及びワークピースの硬化が行われた後にワークピースを再び取り外すことができるように、装置1は、装着・取外しユニット10を備えている。
【0039】
図2には硬化装置1が示されており、ドラムユニット4は、各ワークピース収容部5において2つの急冷スプリンクラー8’,8”を備えている。当該急冷スプリンクラー8’,8”はワークピース収容部5に対して側方に配置されているため、そのノズルは互いに対向している。これにより、加熱直後及びドラムユニット4の回転中に急冷されることが可能である。当該硬化装置では、
図1に基づく固定されたスプリンクラーを省略することも可能である。
【0040】
図1に図示されているような装置1により行われる硬化方法は、以下のように進行し得る:
まず、初期位置においてドラムユニット4が装着・取外し装置10を用いて装着され、このとき、ワークピース6がワークピース収容部5へはめ込まれる。その後、ドラムユニット4は、あらかじめ規定された回転角度だけ加熱位置へ回転され、これにより、ワークピース6が誘導ユニット2へ供給される。誘導ユニット2では、ワークピース6が誘導式に加熱される。硬化後、ドラムユニット4は、更にあらかじめ規定された回転角度だけ急冷位置へ回転され、これにより、ワークピース6が急冷装置3へ供給される。ドラムユニット4が急冷位置へ回転される間に、急冷スプリンクラー8及び急冷ユニット3の急冷スプリンクラー7,7’,7”が始動され、これにより、ワークピース6が通過する急冷媒体-カーテンが生じる。これにより、誘導式に硬化されたワークピース6の急冷は、急冷装置3を用いて、急冷位置の通過時に行われる。ワークピース6の急冷がなされた後、ドラムユニット4は、初期位置へ再び回転子、硬化されたワークピース6がワークピース収容部5から取り外される。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.金属製のワークピース(6)を硬化させる誘導ユニット(2)と、急冷ユニット(3)とを有する、金属製のワークピースを誘導式に硬化させる装置(1)において、
装置(1)がドラムユニット(4)を備えており、ドラムユニットは、その回転軸線が垂直に向けられているとともに、それぞれ1つのワークピース(6)のための複数のワークピース収容部(5)を備えており、急冷ユニット(3)が、ドラムユニット(4)に割り当てられているとともに、少なくとも2つの急冷スプリンクラー(7,7’,7”,8,8’,8”)を備えており、急冷スプリンクラー(8,8’,8”)のうち少なくとも1つが各ワークピース収容部(5)に割り当てられていることを特徴とする装置。
2.誘導ユニット(2)がドラムユニット(4)の周囲に沿った第1の位置に位置固定して配置されており、急冷ユニット(3)がドラムユニット(4)の周囲に沿った第2の位置に位置固定して配置されており、急冷ユニット(3)が、誘導ユニット(2)に対して90°よりも小さな角度だけドラムユニット(4)の回転方向(R)へずらして配置されており、急冷ユニット(3)が、ドラムユニット(4)に対して径方向内方へ向けられた少なくとも2つの急冷スプリンクラー(7,7’)を備えていることを特徴とする上記1.に記載の装置(1)。
3.急冷ユニット(3)がドラムユニット(4)の周囲に沿って3つの急冷スプリンクラー(7,7’,7”)を備えており、及び/又は誘導ユニット(2)と第1の急冷スプリンクラー(7)の間の角度ずれが、ドラムユニット(4)の回転方向(R)において10~20°の範囲にあり、好ましくは15°であることを特徴とする上記2.に記載の装置。
4.ドラムユニット(4)が各ワークピース収容部(5)において少なくとも1つの急冷スプリンクラー(8)を備えており、該急冷スプリンクラーは、ワークピース収容部(5)に対して径方向内方へずらして配置されているとともに、そのノズルが径方向外方へ向けられていること、及び/又はドラムユニット(4)が各ワークピース収容部(5)において2つの急冷スプリンクラー(8’,8”)を備えており、該2つの急冷スプリンクラーは、ワークピース収容部(5)に対して側方に配置されているとともに、そのノズルが互いに対向していることを特徴とする上記1.~3.のいずれか1つに記載の装置。
5.装置(1)が長さ測定システム(9)を含んでおり、長さ測定システム(9)が、ワークピースの長さ及び位置を検出する少なくとも1つのセンサユニットを備えていることを特徴とする上記1.~4.のいずれか1つに記載の装置。
6.測定システム(9)が、誘導ユニット(2)の位置に配置されていることを特徴とする上記5.に記載の装置。
7.装置(1)が装着・取外し装置(10)を含んでおり、装着・取外し装置は、ワークピース収容部(5)をドラムユニット(4)において装着し、あるいは取り外すために形成されていることを特徴とする上記1.~6.のいずれか1つに記載の装置。
8.装着・取外し装置(10)と誘導ユニット(2)の間の間隔が、90~200°の範囲にある、好ましくは140°である、ドラムユニット(4)の回転方向(R)における角度ずれに対応していることを特徴とする上記1.~7.のいずれか1つに記載の装置。
9.上記1.~8.のうち少なくともいずれか1つによる装置を用いた誘導式の硬化方法であって、
-初期位置において、装着・取外し装置を用いてドラムユニット(4)を装着し、ワークピース(6)をワークピース収容部(5)へはめ込むステップと、
-ドラムユニット(4)を硬化位置へあらかじめ規定された回転角度だけ回転させ、これにより、ワークピース(6)を誘導ユニット(2)へ供給するステップと、
-誘導ユニット(2)においてワークピース(6)を誘導式に硬化させるステップと、
-ドラムユニット(4)を急冷位置へ更にあらかじめ規定された回転角度だけ回転させ、これにより、ワークピース(6)を急冷装置(3)へ供給するステップと、
-急冷位置への回転中に、急冷スプリンクラー(8)と、急冷ユニット(3)の少なくとも2つの急冷スプリンクラー(7,7’)とを始動させ、これにより、急冷媒体-カーテンを生じさせるステップと、
-急冷位置の通過時に、急冷装置(3)を用いて誘導式に加熱されたワークピース(6)を急冷するステップと、
-ワークピース(6)の急冷がなされた後、ドラムユニット(4)を初期位置へ更に回転させ、硬化されたワークピース(6)をワークピース収容部(5)から取り外すステップと
を含む硬化方法。
10.誘導位置において、
-長さ測定システム(9)を用いて、誘導ユニットにおけるワークピースの長さ及び/又は位置の実際値を検出するステップと、
-実際値をデータ処理ユニット(12)へ供給するステップと、
-検出された実際値がワークピース(6)の長さ及び/又は位置の目標値と異なる場合に、データ処理ユニット(12)を用いて位置信号を生成し、制御ユニット(11)へ伝達するステップと、
-誘導ユニット(2)におけるワークピース(6)の位置を補正するステップと
を含む上記9.に記載の硬化方法。
11.金属製のワークピースを誘導式に硬化させ、硬化された金属製のワークピースを製造する装置の使用において、
装置が、上記1.~8.の少なくともいずれか1つに記載の、金属製のワークピースを誘導式に硬化させる装置(1)であることを特徴とする使用。
【符号の説明】
【0041】
1 装置
2 誘導ユニット
3 急冷ユニット
4 ドラムユニット
5 ワークピース収容部
6 ワークピース
7,7’,7” 急冷スプリンクラー
8,8’,8” 急冷スプリンクラー
9 長さ測定システム
10 装着・取外しユニット
11 制御ユニット
12 データ処理ユニット
13 後スプリンクラー
A 回転軸線
R 回転方向