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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ガイドレール
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/06 20060101AFI20231228BHJP
   E05F 11/54 20060101ALI20231228BHJP
   E05D 15/10 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B60J5/06 A
E05F11/54 A
E05D15/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021080228
(22)【出願日】2021-05-11
(65)【公開番号】P2022174437
(43)【公開日】2022-11-24
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】桐生 知仁
(72)【発明者】
【氏名】森田 康一
(72)【発明者】
【氏名】金杉 英明
(72)【発明者】
【氏名】金谷 俊助
(72)【発明者】
【氏名】羽山 暢夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佑介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 宣明
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-181330(JP,A)
【文献】実開昭61-009478(JP,U)
【文献】実開平02-030724(JP,U)
【文献】特開2000-145273(JP,A)
【文献】特開2021-001531(JP,A)
【文献】特開2010-195303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/06
E05F 11/54
E05D 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部を有する車体に設置され、前記ドア開口部を開閉するスライドドアの移動方向を規定するガイドレールであって、
前記スライドドアは、水平方向に延びる軸線回りに回転するロードローラ及び上下方向に延びる軸線回りに回転する2つのガイドローラを含むヒンジユニットを有するものであり、
前記ロードローラが転動する底壁を有し、前記スライドドアの自重を支える第1レールと、
2つの前記ガイドローラが転動する側壁を有し、前記スライドドアの移動方向を規定する第2レールと、
前記ロードローラの軸方向の移動を規制する第1規制部と、
2つの前記ガイドローラの軸方向の移動を規制する第2規制部と、を備え
前記第1レールと前記第2レールとは、上下方向に間隔をあけて配置されており、
上下方向に間隔をあけて配置されている前記第1規制部と前記第2規制部を、前記第1レール及び前記第2レールの延びる方向と直交する断面で見たとき、前記ロードローラの直径は、前記第1規制部と前記第2規制部との間隔よりも大きくなっている
ガイドレール。
【請求項2】
前記第1レールは、前記第1規制部として、前記底壁から前記底壁と交差する方向に延びる第1規制壁を有する
請求項1に記載のガイドレール。
【請求項3】
前記底壁は、板厚方向における平面視において、直線状に延びる直線部と、前記直線部の端部から円弧状に延びる湾曲部と、を有し、
前記第1規制壁は、前記底壁の前記湾曲部から延びる
請求項2に記載のガイドレール。
【請求項4】
前記第2レールに固定される補強レールを備え、
前記補強レールは、前記第2規制部を有する
請求項1~請求項3の何れか一項に記載のガイドレール。
【請求項5】
前記ドア開口部よりも上方に配置されるアッパレールとして適用される
請求項1~請求項の何れか一項に記載のガイドレール。
【請求項6】
前記第1レールは、前記第1規制部と、前記底壁から分岐する分岐壁と、を有し、
前記分岐壁は、前記車体に固定されるものであって、
前記第1レールは、前記底壁の板厚方向における平面視において、前記第1レールの延びる方向と直交する幅方向一端部に前記第1規制部を有しているとともに幅方向他端部に前記分岐壁を有している
請求項1~請求項5の何れか一項に記載のガイドレール。
【請求項7】
前記第1レールと前記第2レールとは別体に構成されており、
前記第1レールは前記第1規制部を備えるとともに、
前記第2レールは前記第2規制部を備える
請求項1~請求項6の何れか一項に記載のガイドレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドレールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドア開口部を有する車体と、ドア開口部を開閉するスライドドアと、を備える車両が開示されている。車体は、スライドドアの移動方向を規定するガイドレールとして、ロアレール、センターレール及びアッパレールを備える。スライドドアは、ロアレール、アッパレール及びセンターレールにそれぞれ係合するロアローラユニット、アッパローラユニット及びセンターローラユニットを備える。
【0003】
ロアローラユニットは、ロアレールに接した状態で回転するロアローラを有する。ロアローラは、スライドドアの自重を支えるロードローラと、スライドドアの幅方向の移動を規制するガイドローラと、を含む。ロードローラの回転軸線及びガイドローラの回転軸線は、直交している。同様に、センターローラユニットは、センターレールに接した状態で回転するセンターローラを有し、アッパローラユニットは、アッパレールに接した状態で回転するアッパローラを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-195303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような車両において、ロアローラ、センターローラ及びアッパローラが、ロアレール、センターレール及びアッパレールにそれぞれ係合することにより、スライドドアは車体に支持される。このため、スライドドアに大きな荷重が作用しても、ロアレール、センターレール及びアッパレールから、ロアローラ、センターローラ及びアッパローラがそれぞれ脱落しないことが要求される。言い換えれば、車体からスライドドアが脱落しないことが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するガイドレールは、ドア開口部を有する車体に設置され、前記ドア開口部を開閉するスライドドアの移動方向を規定するガイドレールであって、前記スライドドアは、水平方向に延びる軸線回りに回転するロードローラ及び上下方向に延びる軸線回りに回転する2つのガイドローラを含むヒンジユニットを有するものであり、前記ロードローラが転動する底壁を有し、前記スライドドアの自重を支える第1レールと、2つの前記ガイドローラが転動する側壁を有し、前記スライドドアの移動方向を規定する第2レールと、前記ロードローラの軸方向の移動を規制する第1規制部と、を備える。
【0007】
車両が事故に遭遇したとき、スライドドアに車両幅方向の荷重が作用することにより、ガイドレールに対して、ヒンジユニットのロードローラが軸方向に変位することがある。この点、上記構成のガイドレールは、ロードローラの軸方向への移動を規制する第1規制部を備える。したがって、ガイドレールは、スライドドアに荷重が作用するときに、車体からスライドドアが脱落することを抑制できる。
【0008】
上記ガイドレールにおいて、前記第1レールは、前記第1規制部として、前記底壁から前記底壁と交差する方向に延びる第1規制壁を有することが好ましい。
上記構成のガイドレールにおいて、第1規制壁と底壁とは一体に構成される。このため、ガイドレールを構成する部品点数が低減される。
【0009】
上記ガイドレールにおいて、前記底壁は、板厚方向における平面視において、直線状に延びる直線部と、前記直線部の端部から円弧状に延びる湾曲部と、を有し、前記第1規制壁は、前記底壁の前記湾曲部から延びることが好ましい。
【0010】
スライドドアが全閉位置に位置するとき、ロードローラは、底壁の湾曲部上に位置し、スライドドアが全開位置に位置するとき、ロードローラは、底壁の直線部上に位置する。その一方で、車両が事故に遭遇する場合には、スライドドアが全閉位置に位置している可能性が高い。この点、上記構成のガイドレールにおいて、第1規制壁は、底壁の湾曲部から延びる。つまり、ガイドレールは、底壁の必要な部位に第1規制壁を設けることができる。
【0011】
上記ガイドレールは、2つの前記ガイドローラの軸方向の移動を規制する第2規制部を備えることが好ましい。
上述したように、車両が事故に遭遇したとき、スライドドアに車両幅方向の荷重が作用することにより、ガイドレールに対して、ヒンジユニットのガイドローラが軸方向に変位することがある。この点、上記構成のガイドレールは、ガイドローラの軸方向への移動を規制する第2規制部を備える。したがって、ガイドレールは、スライドドアに荷重が作用するときに、車体からスライドドアが脱落することを抑制できる。
【0012】
上記ガイドレールは、前記第2レールに固定される補強レールを備え、前記補強レールは、前記第2規制部を有することが好ましい。
上記構成のガイドレールにおいて、第2規制部は、第2レールとは別体に構成される補強レールに設けられる。このため、第2レールに第2規制部を設ける場合に比較して、第2レールの構造が簡素化される。
【0013】
上記ガイドレールは、前記ドア開口部よりも上方に配置されるアッパレールとして適用されることが好ましい。
車両幅方向における外向きの荷重がスライドドアに作用すると、スライドドアが折れ曲がるように変形する場合がある。この場合、ドア開口部よりも上方に配置されるアッパレールに係合するヒンジユニットは、車両幅方向における外方かつ車両下方に斜めに変位しようとする。したがって、ヒンジユニットは、アッパレールの側壁から外れやすくなる。この点、上記構成のアッパレールは、第1規制部を備えるため、上記荷重がスライドドアに作用する場合に、ヒンジユニットが脱落することを効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
上記ガイドレールは、スライドドアに荷重が作用するときに、車体からスライドドアが脱落することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る車両の模式図。
図2】アッパレールとアッパヒンジユニットとドア駆動部との関係を示す斜視図。
図3】アッパレールとアッパヒンジユニットとドア駆動部との関係を示す斜視図。
図4】アッパレールの前端部の斜視図。
図5】アッパレールの前端部とアッパヒンジユニットとの平面図。
図6】アッパレールとアッパヒンジユニットとの係合関係を示す断面図。
図7】アッパレールとアッパヒンジユニットとの係合関係を示す断面図。
図8】変更例に係るアッパレールの前端部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、一実施形態に係るガイドレールを備える車両について説明する。
<車両10>
図1に示すように、車両10は、ドア開口部21を有する車体20と、ドア開口部21を開閉するスライドドア30と、スライドドア30を駆動するドア駆動部40と、を備える。
【0017】
以降の説明では、車両幅方向を「幅方向」ともいい、車両前後方向を「前後方向」ともいい、車両上下方向を「上下方向」ともいう。図中において、X軸は幅方向に延びる軸であり、Y軸は前後方向に延びる軸であり、Z軸は上下方向に延びる軸である。また、幅方向において、車両10の中心に向かう方向を幅方向における「内方」ともいい、当該内方の逆方向を「外方」ともいう。
【0018】
<車体20>
図1に示すように、ドア開口部21は、車体20の側面に開口している。幅方向における側面視において、ドア開口部21は、前後方向を短手方向とし、上下方向を長手方向とする矩形状をなしている。ドア開口部21は、車両10の右側面にだけ開口していてもよいし、車両10の左側面にだけ開口していてもよいし、車両10の両側面に開口していてもよい。
【0019】
図2に示すように、車体20は、ドア開口部21よりも上方に配置される第1パネル22及び第2パネル23を備える。図1に示すように、車体20は、ドア開口部21の周囲に設置されるアッパレール24、センターレール25及びロアレール26を備える。
【0020】
図2に示すように、第1パネル22及び第2パネル23は、幅方向を短手方向とし、前後方向を長手方向とする矩形板状をなしている。第1パネル22及び第2パネル23は、剛性を有する金属材料により構成されることが好ましい。車体20の側面を基準としたとき、第1パネル22及び第2パネル23は、車両10の幅方向における内方に向かって延びている。第1パネル22及び第2パネル23は、上下方向に間隔をあけて配置されている。第1パネル22及び第2パネル23の間の空間は、アッパレール24とドア駆動部40とを収容する空間となっている。
【0021】
図1に示すように、アッパレール24は、ドア開口部21の上方に配置され、センターレール25は、ドア開口部21の後方に配置され、ロアレール26は、ドア開口部21の下方に配置されている。また、センターレール25は、アッパレール24よりも下方であって、ロアレール26よりも上方に配置されている。アッパレール24、センターレール25及びロアレール26は、スライドドア30の移動方向を規定する「ガイドレール」の一例に相当する。
【0022】
図2及び図3に示すように、アッパレール24は、第1パネル22の上面に固定される第1レール50と、第2パネル23の下面に固定される第2レール60と、第2レール60を補強する補強レール70と、を有する。第1レール50、第2レール60及び補強レール70は、別体に構成されている。
【0023】
図4に示すように、第1レール50は、長尺の底壁51と、底壁51から分岐する分岐壁52と、底壁51から屈曲する第1規制壁53と、を有する。第1レール50は、例えば、金属板をプレス加工することにより成形される。
【0024】
図3及び図4に示すように、底壁51は、前方に向かって直線状に延びる直線部51Sと、直線部51Sの前端から前方に向かうにつれて幅方向における内方に向かって円弧状に延びる湾曲部51Cと、を含む。底壁51の上面は、後述するアッパヒンジユニット32のロードローラ86が転動する転動面となっている。このため、底壁51の上面は、長手方向に渡って平滑であることが好ましい。図4に示すように、分岐壁52は、底壁51の湾曲部51Cから底壁51の長手方向及び底壁51の板厚方向の両方向と交差する方向に延びている。
【0025】
第1規制壁53は、底壁51の湾曲部51Cから底壁51と交差する方向に延びている。言い換えれば、第1規制壁53は、底壁51の湾曲部51Cから上方に延びている。第1規制壁53は、底壁51の長手方向を長手方向とし、底壁51の板厚方向を短手方向とする矩形板状をなしている。一例として、第1規制壁53の長手方向における長さは、数cm~数十cm程度である。また、第1規制壁53の高さは、後述するアッパヒンジユニット32と干渉しない範囲で決定することが好ましい。第1規制壁53は、「第1規制部」の一例に相当している。
【0026】
図2に示すように、第1レール50は、第1パネル22の上面に固定される。詳しくは、第1レール50の底壁51は、接着テープなどを用いて車体20の第1パネル22に貼り付けられる。第1レール50の分岐壁52は、ボルトなどの締結部材又はピンによって車体20の第1パネル22に固定される。このとき、第1レール50の分岐壁52は、前後方向及び幅方向など、分岐壁52の板厚方向と直交する方向への移動が制限されていればよい。
【0027】
図3に示すように、第2レール60は、前方に向かって直線状に延びた後に、前方に向かうにつれて幅方向における内方に向かって湾曲している。以降の説明では、第2レール60において、前方に向かって直線状に延びる部分を直線部60Sともいい、直線部60Sの前端から前方に向かうにつれて幅方向における内方に向かって円弧状に延びる部分を湾曲部60Cともいう。第2レール60は、長手方向にわたって一様な断面形状となっている。
【0028】
図4に示すように、第2レール60は、上壁61と、上壁61から延びる2つの側壁62,63と、を有する。第2レール60は、例えば、金属材料を押出加工することにより成形される。上壁61及び2つの側壁62,63は、板状をなしている。第2レール60の長手方向と直交する断面視において、2つの側壁62,63は、上壁61の両端部からそれぞれ平行に延びている。
【0029】
図2に示すように、第2レール60は、第2パネル23の下面に固定される。詳しくは、第2レール60は、溶接を行ったり、ボルトなどの締結部材を用いたりすることにより、第2パネル23に固定される。第1パネル22及び第2パネル23に、第1レール50及び第2レール60が固定される状況下では、第1レール50の底壁51及び第2レール60の上壁61は上下方向に対向している。
【0030】
図3及び図4に示すように、補強レール70は、長尺部材である。補強レール70は、長手方向にわたって一様な断面形状となっている。補強レール70の長手方向における長さは、第2レール60の湾曲部60Cの長手方向における長さよりも短くなっている。一例として、補強レール70の長手方向における長さは、数cm~数十cm程度である。補強レール70は、例えば、金属材料を押出加工することにより成形したり、金属板をプレス加工することにより成形したりすればよい。
【0031】
図4に示すように、補強レール70は、第1固定壁71と、第1固定壁71から屈曲して延びる第2固定壁72と、第2固定壁72から屈曲して延びる第2規制壁73と、を有する。第1固定壁71、第2固定壁72及び第2規制壁73は、矩形板状をなしている。
【0032】
第1固定壁71の短手方向の長さは、第2レール60の上壁61の短手方向の長さと同等である。第2固定壁72の短手方向の長さは、第2レール60の側壁62の短手方向の長さよりも長くなっている。第2規制壁73の短手方向の長さは、第1固定壁71の短手方向の長さよりも短くなっている。第2規制壁73は、第1固定壁71と対向している。第2規制壁73は、「第2規制部」の一例に相当している。
【0033】
補強レール70は、第2レール60の湾曲部60Cに固定される。補強レール70が第2レール60に固定されると、第1固定壁71及び第2固定壁72が第2レール60の上壁61及び側壁62をそれぞれ覆う。第2規制壁73は、第2レール60の側壁62を避けつつ、第2レール60の上壁61に沿って延びる。こうして、第2規制壁73は、第2レール60の上壁61と対向している。
【0034】
説明を省略するが、センターレール25及びロアレール26は、アッパレール24と同等の構成である。ただし、センターレール25及びロアレール26は、少なくともアッパレール24の第2レール60に相当する構成を有していればよい。言い換えれば、センターレール25及びロアレール26は、第1規制壁53及び第2規制壁73を備えてもよいし、備えなくてもよい。
【0035】
<スライドドア30>
図1に示すように、スライドドア30は、ドア開口部21に応じた大きさのドア本体31と、車体20との連結部位となるアッパヒンジユニット32、センターヒンジユニット33及びロアヒンジユニット34と、を備える。
【0036】
アッパヒンジユニット32及びロアヒンジユニット34は、ドア本体31の前端付近に固定され、センターヒンジユニット33は、ドア本体31の後端付近に固定されている。また、アッパヒンジユニット32は、ドア本体31の上端部に固定され、ロアヒンジユニット34は、ドア本体31の下端部に固定されている。センターヒンジユニット33は、ドア本体31の上下方向における中央部に固定されている。
【0037】
図5に示すように、アッパヒンジユニット32は、ドア本体31に固定される固定ヒンジ81と、固定ヒンジ81に対して揺動可能に支持される可動ヒンジ82と、ドア駆動部40から動力が伝達されるベルトブラケット83と、を有する。また、アッパヒンジユニット32は、可動ヒンジ82に固定される第1支軸84及び2つの第2支軸85と、第1支軸84に回転可能に支持されるロードローラ86と、2つの第2支軸85に回転可能に支持される2つのガイドローラ87と、を有する。
【0038】
図5に示すように、可動ヒンジ82は、固定ヒンジ81に連結される基部821と、基部821から分岐して延びる第1分岐部822及び2つの第2分岐部823と、を有する。基部821は、平面視において、矩形板状をなしている。基部821において、可動ヒンジ82の揺動軸線は、上下方向に延びている。基部821には、ベルトブラケット83が固定されている。
【0039】
第1分岐部822は、基部821の長手方向における中央部から延びている。第1分岐部822は、基部821から垂直に延びる第1屈曲部824と、第1屈曲部824から垂直に延びる第2屈曲部825と、を含む。第1屈曲部824は、基部821から下方に延び、第2屈曲部825は、第1屈曲部824から固定ヒンジ81に向かって延びている。第1屈曲部824は、第1支軸84を支持している。このとき、第1支軸84の軸線は、水平方向に延びている。第2屈曲部825は、基部821と対向している。第2屈曲部825は、基部821とともに、固定ヒンジ81に連結されている。2つの第2分岐部823は、基部821の長手方向における両端部から延びている。2つの第2分岐部823は、基部821から第1支軸84の軸線に沿って延びている。2つの第2分岐部823は、2つの第2支軸85をそれぞれ支持している。このとき、2つの第2支軸85の回転軸線は、上下方向に延びている。
【0040】
ロードローラ86は、第1支軸84の先端に支持され、2つのガイドローラ87は、2つの第2支軸85の先端にそれぞれ支持されている。こうして、ロードローラ86及び2つのガイドローラ87は、第1支軸84及び2つの第2支軸85を介して、可動ヒンジ82に回転可能に支持されているといえる。また、ロードローラ86の回転軸線は、水平方向に延び、2つのガイドローラ87の回転軸線は、上下方向に延びている。ここで、車両10の製造及び組立に関する誤差などに起因して、ロードローラ86の回転軸線は水平方向に対して僅かに傾いていてもよいし、2つのガイドローラ87の回転軸線は上下方向に対して僅かに傾いていてもよい。
【0041】
図6に示すように、ロードローラ86が第1レール50の底壁51及び第2レール60の上壁61の間に配置され、2つのガイドローラ87が第2レール60の2つの側壁62,63の間に配置される。こうして、アッパヒンジユニット32がアッパレール24に支持される。このとき、ロードローラ86は、第1レール50の底壁51に接地し、2つのガイドローラ87は、第2レール60の一方の側壁62に接地している。こうして、第1レール50は、スライドドア30の自重を支え、第2レール60は、側壁62,63の板厚方向おけるスライドドア30の移動を規制している。
【0042】
図6に示すように、ロードローラ86の直径は、上下方向における第1レール50及び第2レール60の間隔よりも大きくなっている。詳しくは、ロードローラ86の直径は、第1レール50の第1規制壁53及び第2レール60の第2規制壁73の間隔よりも大きくなっている。また、2つのガイドローラ87の直径は、第2レール60の2つの側壁62,63の間隔よりも小さくなっている。一方、2つのガイドローラ87の直径は、第2レール60の一方の側壁63と第2規制壁73の先端との間隔よりも大きくなっている。このため、図6に示す断面視において、アッパレール24からアッパヒンジユニット32をロードローラ86の軸方向及び2つのガイドローラ87の軸方向に引き離そうとすると、ロードローラ86及び2つのガイドローラ87がアッパレール24に引っ掛かる。
【0043】
説明を省略するが、センターヒンジユニット33及びロアヒンジユニット34は、アッパヒンジユニット32と同等の構成である。ただし、センターレール25が第1レール50に相当する構成を備えない場合、センターヒンジユニット33は、ロードローラ86を備えなくてもよい。同様に、ロアレール26が第1レール50に相当する構成を備えない場合、ロアヒンジユニット34は、ロードローラ86を備えなくてもよい。
【0044】
こうして、アッパヒンジユニット32、センターヒンジユニット33及びロアヒンジユニット34が、アッパレール24、センターレール25及びロアレール26に、それぞれ支持される。そして、アッパヒンジユニット32、センターヒンジユニット33及びロアヒンジユニット34が、アッパレール24、センターレール25及びロアレール26に沿って、それぞれ移動することにより、スライドドア30が車体20に対して相対的に移動可能となる。例えば、アッパヒンジユニット32がアッパレール24に対して移動する場合には、ロードローラ86が第1レール50の底壁51に対して転動し、2つのガイドローラ87が第2レール60の側壁62に対して転動する。
【0045】
<ドア駆動部40>
図3に示すように、ドア駆動部40は、板状をなす支持フレーム41と、支持フレーム41に回転可能に支持される2つの従動プーリ42と、2つの従動プーリ42に巻き掛けられるベルト43と、ベルト43を駆動するモータユニット44と、を備える。図5に示すように、ドア駆動部40は、ベルト43とアッパヒンジユニット32のベルトブラケット83とを連結する連結具45と、を備える。
【0046】
図2に示すように、ドア駆動部40は、アッパレール24と隣り合うように第1パネル22上に設置されている。ドア駆動部40の平面視において、時計回りにベルト43が駆動される場合、連結具45は前方に移動する。この場合、アッパヒンジユニット32が前方に移動するため、スライドドア30は全閉位置に向かって閉作動する。一方、ドア駆動部40の平面視において、反時計回りにベルト43が駆動される場合、連結具45は後方に移動する。この場合、アッパヒンジユニット32が後方に移動するため、スライドドア30は全開位置に向かって開作動する。
【0047】
本実施形態の作用について説明する。
図6は、スライドドア30が全閉位置に位置するときのアッパレール24とアッパヒンジユニット32との位置関係を示している。図6に示すように、アッパヒンジユニット32のロードローラ86は、アッパレール24の第1レール50に接地し、アッパヒンジユニット32の2つのガイドローラ87は、アッパレール24の第2レール60に接地している。
【0048】
ここで、車両10が事故に遭遇することで、後席に乗車していた乗員又は後席に載せた物体がスライドドア30に強く当たった場合を考える。言い換えれば、スライドドア30の中央部に幅方向における外向きの荷重が強く作用する場合を考える。
【0049】
この場合、前方からの正面視において、スライドドア30の中央部が幅方向における外方に屈曲することで、スライドドア30の上端部が幅方向における外方かつ下方に変位し、スライドドア30の下端部が幅方向における外方かつ上方に変位する。つまり、アッパヒンジユニット32は、図6に白抜矢印で示す方向に引っ張られる。このため、第1規制壁53及び第2規制壁73を有しないアッパレールを備える比較例では、アッパレールからアッパヒンジユニット32が脱落するおそれがある。
【0050】
この点、図7に示すように、本実施形態のアッパレール24は、第1規制壁53及び第2規制壁73を有する。このため、上述したようにアッパヒンジユニット32が引っ張られる場合、アッパヒンジユニット32のロードローラ86は、アッパレール24の第1レール50の第1規制壁53に引っ掛かりやすい。同様に、アッパヒンジユニット32の2つのガイドローラ87は、アッパレール24の第2レール60の第2規制壁73に引っ掛かりやすい。このため、スライドドア30に作用する荷重によって、第1レール50及び第2レール60が変形することはあっても、第1レール50及び第2レール60からロードローラ86及び2つのガイドローラ87がそれぞれ脱落しにくくなる。言い換えれば、アッパレール24からアッパヒンジユニット32が脱落しにくくなる。
【0051】
なお、図7に示すように、第1規制壁53が変形する点で、ロードローラ86は、軸方向に僅かに変位する。同様に、第2規制壁73が変形する点で、2つのガイドローラ87は、軸方向に僅かに変位する。こうした点で、本実施形態の第1規制壁53及び第2規制壁73は、ロードローラ86の軸方向の変位及び2つのガイドローラ87の軸方向の変位を「0」にするものではない。つまり、第1規制壁53及び第2規制壁73は、ロードローラ86の軸方向における変位量及び2つのガイドローラ87の軸方向における変位量を低減する。
【0052】
本実施形態の効果について説明する。
(1)アッパレール24の第1レール50は、ロードローラ86の軸方向の変位を規制する第1規制壁53を備える。このため、スライドドア30に幅方向における外向きの荷重が作用しても、ロードローラ86が軸方向に変位しにくい。したがって、アッパレール24は、スライドドア30に荷重が作用するときに、車体20からスライドドア30が脱落することを抑制できる。
【0053】
(2)アッパレール24において、第1レール50は、ロードローラ86の軸方向の変位を規制する第1規制壁53と、ロードローラ86の転動面を含む底壁51と、を有する。詳しくは、底壁51と第1規制壁53とは一体に成形されている。このため、アッパレール24を構成する部品点数が低減される。
【0054】
(3)スライドドア30が全閉位置に位置するとき、ロードローラ86は、底壁51の湾曲部51C上に位置し、スライドドア30が全開位置に位置するとき、ロードローラ86は、底壁51の直線部51S上に位置する。その一方で、車両10が事故に遭遇する場合には、スライドドア30が全閉位置に位置している可能性が高い。この点、第1レール50において、第1規制壁53は、底壁51の湾曲部51Cから延びている。言い換えれば、第1レール50において、第1規制壁53は、底壁51の直線部51Sから延びていない。つまり、アッパレール24は、底壁51の必要な部位に第1規制壁53を設けることができる。また、アッパレール24は、第1レール50を軽量化したり、第1レール50を構成する材料を低減したりできる。
【0055】
(4)アッパレール24の第2レール60は、2つのガイドローラ87の軸方向の移動を規制する第2規制壁73を備える。このため、スライドドア30に幅方向における外向きの荷重が作用しても、2つのガイドローラ87が軸方向に変位しにくい。したがって、アッパレール24は、スライドドア30に荷重が作用するときに、車体20からスライドドア30が脱落することをより抑制できる。
【0056】
(5)アッパレール24において、第2規制壁73は、第2レール60とは別体に構成される補強レール70に設けられる。このため、第2レール60に第2規制壁73を設ける場合に比較して、第2レール60を成形しやすくなる。例えば、第2レール60を押出成形する場合には、第2レール60の湾曲部60Cだけに第2規制壁73を設けることが困難である。
【0057】
(6)アッパヒンジユニット32、センターヒンジユニット33及びロアヒンジユニット34のうち、スライドドア30に幅方向における外向きの荷重が作用したときに最もガイドレールから脱落しやすいヒンジユニットは、アッパヒンジユニット32である。この点、上記実施形態では、アッパレール24が第1規制壁53及び第2規制壁73を備える。このため、車体20からスライドドア30が脱落することを効果的に抑制できる。
【0058】
(7)アッパレール24の第1レール50において、第1パネル22に固定される分岐壁52と第1規制壁53とが近くに位置している。このため、スライドドア30に幅方向における外向きの荷重が作用する場合において、ロードローラ86が第2規制壁73を押す力を分岐壁52で受けることができる。言い換えれば、分岐壁52と第1規制壁53とが離れていないため、スライドドア30に上記荷重が作用するときに、第1レール50に作用するモーメントが小さくなりやすい。
【0059】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図8に示すように、アッパレール24Aの第2レール60Aは、第2規制壁64を備えてもよい。第2規制壁64は、第2レール60Aの側壁62から屈曲して延びている。第2規制壁64は、少なくとも第2レール60Aの湾曲部60Cに設けることが好ましい。
【0060】
・アッパレール24は、第1規制壁53を備えていれば、第2規制壁73を備えなくてもよい。この構成でも、上記実施形態の効果(1),(2)を得ることができる。
・第1レール50において、第1規制壁53は、底壁51と別体であってもよい。この場合、第1規制壁53は、第1パネル22に固定すればよい。また、第1規制壁53は、例えば、ブロック状をなしていてもよい。
【0061】
・第1レール50において、第1規制壁53は、底壁51の長手方向にわたって設けられていてもよい。
・第1レール50は、分岐壁52を備えなくてもよい。この場合、底壁51は、より強固に第1パネル22に固定されることが好ましい。
【0062】
・第1規制壁53は、ロードローラ86の回転軸線と直交する方向に延びていることが好ましい。ただし、第1規制壁53は、上記直交する方向に対して僅かに傾いた方向に延びていてもよい。同様に、第2規制壁73は、ガイドローラ87の回転軸線と直交する方向に延びていることが好ましい。ただし、第2規制壁73は、上記直交する方向に対して僅かに傾いた方向に延びていてもよい。
【0063】
・スライドドア30は、前方に移動することで開作動し、後方に移動することで閉作動するように構成してもよい。また、スライドドア30の開閉方向は、前後方向でなくてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…車両
20…車体
21…ドア開口部
24,24A…アッパレール(ガイドレールの一例)
30…スライドドア
31…ドア本体
32…アッパヒンジユニット(ヒンジユニットの一例)
40…ドア駆動部
50…第1レール
51…底壁
51C…湾曲部
51S…直線部
52…分岐壁
53…第1規制壁(第1規制部の一例)
60,60A…第2レール
60C…湾曲部
60S…直線部
61…上壁
62,63…側壁
64…第2規制壁
70…補強レール
73…第2規制壁(第2規制部の一例)
81…固定ヒンジ
82…可動ヒンジ
83…ベルトブラケット
86…ロードローラ
87…ガイドローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8