(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】STAT3阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07C 311/29 20060101AFI20231228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20231228BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231228BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20231228BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231228BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20231228BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20231228BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231228BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231228BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231228BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20231228BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231228BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231228BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20231228BHJP
A61P 3/12 20060101ALI20231228BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20231228BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20231228BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231228BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20231228BHJP
A61K 31/18 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C07C311/29 CSP
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P35/04
A61P35/02
A61P31/18
A61P31/12
A61P3/00
A61P11/06
A61P17/06
A61P1/04
A61P25/00
A61P27/02
A61P37/06
A61P1/18
A61P21/00
A61P31/04
A61P13/12
A61P9/00
A61P11/00
A61P31/06
A61P31/04 171
A61P43/00 171
A61P3/12
A61P5/00
A61P31/00
A61P17/02
A61P19/00
A61P5/14
A61P1/16
A61P25/36
A61K31/18
(21)【出願番号】P 2020558021
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 US2019028135
(87)【国際公開番号】W WO2019204614
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-14
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520400449
【氏名又は名称】トゥヴァルディ セラピューティクス,インク.
(73)【特許権者】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ウィード,ソフィア,デ アシャバル
(72)【発明者】
【氏名】バウタ,ウィリアム,イー.
(72)【発明者】
【氏名】カントレル,ウィリアム,アール.,ジュニア.
(72)【発明者】
【氏名】トゥワーディ,デビッド,ジョン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/083719(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102766103(CN,A)
【文献】特表2004-521068(JP,A)
【文献】特表2013-512248(JP,A)
【文献】国際公開第2009/149192(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/010106(WO,A1)
【文献】Titov E. A. et al.,UkrainskiiKhimicheskii Zhurnal (Russian Edition),1972年,pp.73-76
【文献】RESISTRY(STN)[online],2003.05.21[検索日 2023.01.25] RN 518302-82-4,518302-80-2, 518302-79-9, 518302-76-6, 518302-75-5, 518302-74-4, 518302-73-3,518302-69-7, 518302-68-6, 518302-67-5, 518302-66-4, 518302-64-2, 518054-64-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式
IIIの化合物、
またはその薬学的に許容可能な塩、および
(b)薬学的に許容される担体または希釈剤、
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
被験体の高増殖性疾患または障害の処置に使用するための、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記高増殖性疾患が、頭頸部癌、肺癌、肝臓癌、乳癌、皮膚癌、腎臓癌、精巣癌、大腸癌、直腸癌、胃癌、転移性黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、骨癌、脾臓癌、胆嚢癌、脳癌、膵臓癌、胃癌、肛門癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、移植後リンパ増殖性疾患、再狭窄、骨髄異形成症候群、白血病、およびリンパ腫からなる群から選択される、請求項
2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記高増殖性疾患が、頭頸部癌、肺癌、肝臓癌、乳癌、卵巣癌、大腸癌、多発性骨髄腫、白血病、および膵臓癌からなる群から選択される、請求項
2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
被験体の線維症の処置に使用するための、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記線維症が、肺線維症、骨髄線維症、腸線維症、膵臓線維症、関節線維症、肝線維症、後腹膜線維症、骨髄線維症、真皮線維症、非アルコール性脂肪肝疾患、脂肪性肝炎、および全身性硬化症からなる群から選択される疾患または障害に関連する、請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記線維症が、肺線維症、非アルコール性脂肪肝疾患、脂肪性肝炎、および全身性硬化症からなる群から選択される疾患または障害に関連する、請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
被験体の炎症性疾患または障害の処置に使用するための、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記炎症性疾患または障害が、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、乾癬、ブドウ膜炎、胸膜炎、多発性硬化症、膵炎、および喘息からなる群から選択される、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記炎症性疾患または障害が、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、乾癬、および喘息からなる群から選択される、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
被験体の化学療法誘発末梢神経障害、糖尿病性神経障害、または家族性アミロイドポリニューロパチーの処置に使用するための、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
被験体の悪質液の処置に使用するための、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
被験体のアナフィラキシーの処置に使用するための、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記化合物が、シグナル伝達性転写因子3(STAT3)を阻害する、請求項
2から
13のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年4月19日出願の米国仮出願第62/659,872号、および2019年1月17日出願の米国仮出願第62/793,491号に基づく利益と優先権を主張するものであり、これらの内容は、その全体を参照することで本明細書に引用される。
【0002】
参照による組み込み
本明細書中に引用される特許、特許出願、および刊行物はすべて、本明細書に記載される発明の日付の時点で当業者に公知の技術の状況を十分に記述するために、全体を参照することで本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本発明は全体として、医薬品科学分野に関連する。より具体的に本発明は、STAT3を阻害するための医薬品として有用な化合物と組成物に関する。さらに具体的に本発明は、癌、慢性炎症、線維症などの疾病を処置するための方法における化合物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
シグナル伝達性転写因子3(STAT3)は、STATタンパク質ファミリーの7つのメンバーのうち1つである。前記メンバーは、多くのサイトカインおよび成長因子の作用を仲介するシグナル伝達中間体である。さらに、STAT3は癌遺伝子である。Bromberg,J.,STAT3 as an oncogene,Cell,1998,295-303;published erratum appears in Cell,1999 Oct.15,1999(2),239を参照。STAT3は、前立腺癌、乳癌、肺癌、頭頸部の扁平上皮癌、多発性骨髄腫、大腸癌、肝細胞癌、および大顆粒リンパ球性白血病を含む多くの様々な癌において恒常的に活性である。さらに、マウスでのヒト腫瘍異種移植研究では、STAT3を標的とすることで、腫瘍増殖の減少、腫瘍細胞中のアポトーシス誘導による動物生存の改善、血管新生の阻害、抗腫瘍免疫媒介細胞毒性の増強という遺伝的または薬理学的な結果が得られたことが、繰り返し実証されている。例えば、Redell,M.S.,et al.,Targeting transcription factors in cancer:Challenges and evolving strategies,DRUG DISCOVERY TODAY,TECHNOLOGIES,2006 3(3):261-267;Kato,T.,et al.,Proteolytic Conversion of STAT3{alpha}to STAT3{gamma}in Human Neutrophils:Role of Granule derived Serine Proteases,J.Biol.Chem.,2004,279(30):31076-31080;Dunn,G.P.,et al.,Cancer immunoediting:from immunosurveillance to tumor escape,NAT.IMMUNOL.,2002,3(11):991-998を参照。ゆえに、STAT3は、癌を処置する薬剤の開発のための潜在的な標的として同定されている。
【0005】
筋肉消耗は、慢性腎疾患(CKD)、糖尿病、癌、または重篤な感染症を含む異化状態の衰弱性合併症である。CKDを患うマウスでは、ミオスタチンの阻害によりIL-6とTNFαの循環レベルが低下した。このことは、臨床研究で報告されたように炎症と筋肉消耗との関連性を示唆している。Carrero,J.J.,et al.,Muscle atrophy,inflammation and clinical outcome in incident and prevalent dialysis patients,CLINNUTR.,2008,27,557-564を参照。STAT3は、サイトカインのIL-6ファミリーにより活性化されることが判明している。このことは、STAT3経路が筋肉量の損失に関連する可能性があることを示唆している。Hirano,T.,et al.,Signaling mechanisms through gp 130:a model of the cytokine system,CYTOKINE GROWTH FACTOR REV.,1997,8,241-2を参照。
【0006】
線維症は、組織に過剰な細胞外マトリクスが蓄積することを含む病理学的プロセスであり、これにより組織損傷および臓器機能不全が生じ、臓器不全や死に進行するおそれがある。全身性硬化症、すなわち特発性線維症疾患を引き起こすものは、組織損傷、成長因子の産生、炎症促進性および線維性サイトカイン、ならびに筋線維芽細胞の蓄積を引き起こす自己免疫応答であると仮定される。筋線維芽細胞を引き起こし得る2つの原因は、局所線維芽細胞の分化、および上皮間葉転換(EMT)のプロセスである。IL-6は、筋線維芽細胞の蓄積に寄与する場合がある線維症の重要な媒介物質として徐々に認識されている、炎症促進性および線維症促進性サイトカインである。IL-6はその受容体に係合した後、STAT3を介してシグナルを伝達する。ゆえにSTAT3は、線維症を処置する標的に対して潜在的に重要なタンパク質を表す。
【0007】
喘息
喘息は、世界人口の10%に影響を及ぼすものであり、その有病率はここ10年にわたり増加している。Akinbami LJ,Moorman JE,Bailey C,Zahran HS,King M,Johnson CA,et al.,Trends in asthma prevalence,health care use,and mortality in the United States,2001-e2010,NCHS DATA BRIEF,No 94,HYATTSVILLE,MD:NATIONAL CENTER FOR HEALTH STATISTICS,2012を参照。喘息は、複数の変異体を伴う異種疾患であり、その中で最も広く認識されているものは、アトピー、好酸球増加症、およびステロイドへの応答を特徴とするTh2-表現型である。例えば、Fahy J.V.,Eosinophilic and neutrophilic inflammation in asthma:insights from clinical studies,PROC AM THORAC SOC 2009,6(3)256-9;Wenzel S.E.,Asthma:defining of the persistent adult phenotypes,LANCET 2006,368(9537):804-13;Lin T,Poon AH,Hamid Q.,Asthma phenotypes and endotypes,CURR OPIN PUML MED.2013,19(1):18-23を参照。しかし、患者の10%が、非アトピー性、好中球性、およびステロイド耐性である喘息のTh17-表現型を有しており(“Proceedings of the ATS workshop on refractory asthma:current understanding,recommendations,and unanswered questions,” AM J RESPIR CRIT CARE MED 2000;162(6):2341-51;Al-Ramili W,Prefontaine D,Chouiali F,Martin JG,Olivenstein R,Lemiere C,et al.,T(H)17-associated cytokines (IL-17A and IL-17F) in severe asthma,J ALLERGY CLIN IMMUNOL 2009;123(5):1185-7;McKinley L,Alcorn JF,Peterson A,Dupont RB,Kapadia S,Logar A,et al.,Th17 cells mediate steroid-resistant airway inflammation and airway hyperresponsiveness in mice,J IMMUNOL 2008;181(6):4089-97)、その結果、利用可能とされる有効な処置を欠いていることで罹患率と死亡率がより高くなっている。Al-Ramili W,Prefontaine D,Chouiali F,Martin JG,Olivenstein R,Lemiere C,et al.,T(H)17-associated cytokines (IL-17A and IL-17F) in severe asthma,J Allergy Clin Immunol 2009,123(5):1185-7;Newcomb DC,Peebles RS Jr.Th-17 mediated inflammation in asthma,Curr Opin Immunol 2013;25(6):755-60を参照。代わりの治療選択肢が、この患者亜集団に対して明らかに必要である。
【0008】
シグナル伝達性転写因子3(STAT3)の活性化剤は、Th17リンパ球の開発とサイトカイン産生に必要なものあり、その活性化は気道炎症の進行に関連付けられる。Harris TJ,Grosso JF,Yen H,Xin H,Kortylewski M,Albesiano E,et al.,Cutting edge:an in vivo requirement for STAT3 signaling in Th17 development and Th17-dependent autoimmunity,J IMMUNOL 2007,179(7):4333-7;Zhou L,Ivanov II,Spolski R,Min R,Shenderov K,Egawa T,et al.,IL-6 programs T(H)-17 cell differentiation by promoting sequential engagement of the IL-21 and IL-23 pathways,NAT IMMUNOL 2007,8(9):967-74を参照。活性化に際して、STAT3は、サイトカイン活性化受容体複合体に動員されて、Tyr(Y)705にてリン酸化されるようになる。ホスホチロシル化(p)STAT3は、SH2-pY705の相互作用を介してホモ二量体し、核へ転座し、プロモーターに結合することで、転写Th17分化と複数のサイトカイン産生を引き起こす遺伝子を活性化させる。Sakaguchi M,Oka M,Iwasaki T,Fukami Y,Nishigori C.,Role and regulation of STAT3 phosphorylation at Ser727 in melanocytes and melanoma cells,J INVEST DERMATOL 2012;132(7):1877-85;Darnell JE Jr.,STATs and gene regulation,SCIENCE 1997,227(5332):1630-5を参照。STAT3活性化はTh2サイトカイン産生にも関与しており(Doganci A,Eigenbrod T,Krug N,De Sanctis GT,Hausding M,Erpenbeck VJ,et al.,The IL-6R alpha chain controls lung CD4+CD25+ Treg development and function during allergic airway inflammation in vivo,J CLIN INVEST 2005,115(2):313-25;Finotto S,Eigenbrod T,Karwot R,Boross I,Doganci A,Ito H,et al.,Local blockade of IL-6R signaling induces lung CD4+ T cell apoptosis in a murine model of asthma via regulatory T cells,INT,IMMUNOL.,2007,19(6):685-93;Simeone-Penney MC,Svergnini M,Tu P,Homer RJ,Mariana TJ,Cohn L,et al.,Airway epithelial STAT3 is required for allergic inflammation in a murine model of asthma,J.IMMUNOL.2007,178(10):6191-9;Stritesky GL,Muthukrishnan R,Sehra S,Goswami R,Pham D,Travers J,et al.,The transcription factor STAT3 is required for T helper 2 cell development,IMMUNITY 2011,34(1):39-49)、Th2サイトカインを喘息の処置に有益な標的とする。
【0009】
アナフィラキシー
湿疹性皮膚疾患の重度の負担、ならびに総合的およびアレルゲン特異的血清IgEの上昇にもかかわらず、臨床的な食物アレルギーおよびアナフィラキシーは、STAT3変異により引き起こされる常染色体優性ハイパーIgE症候群(AD-HIES)の患者において著しく減少している。STAT3を抑制させた肥満細胞は、近位FcεRIシグナル伝達の不足が原因で正常に脱顆粒することができない。Siegel,a.M.et alを参照。STAT3変異を抱える患者のアレルギー疾患の減少により、肥満細胞脱顆粒時のSTAT3シグナル伝達の役割が明らかになっている(THE JOURNAL OF ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY,132,1388-1396,doi:10.1016/j.jaci.2013.08.045 (2013))。STAT3依存性サイトカインIL-6が血管漏出を引き起こす可能性があること(Wei,L.H.et al.,The role of IL-6 trans-signaling in vascular leakage:implications for ovarian hyperstimulation syndrome in a murine model,THE JOURNAL OF CLINICAL ENDOCRINOLOGY AND METABOLISM,98,E472-484,doi:10.1210/jc.2012-3462 (2013))、およびSTAT3シグナル伝達がギャップ接合ダイナミクスに関与していること(Guy,S.,Geletu,M.,Arulanandam,R.& Raptis,L.,Stat3 and gap junctions in normal and lung cancer cells,CANCERS 6,646-662,doi:10.3390/cancers6020646 (2014))を考慮すると、損なわれたSTAT3機能は、アナフィラキシー中に生じる内皮透過性を防ぐこともできる。ヒスタミン誘導型アナフィラキシーは、STAT3変異体AD-HIESマウス、および小分子STAT3阻害を受けた野生型マウスにおいて鈍化された。同様に、ヒスタミンの皮膚プリック応答は、AD-HIES患者において減少した。AD-HIESを抱える、またはSTAT3阻害剤で処置された患者から誘導されるヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)は、治療すると、Srcを介して適切にシグナルを伝達することも、接着結合タンパク質血管内皮(VE)-カドヘリンとβ-カテニンをダウンレギュレートすることもできなかった。AD-HIES HUVECSにおけるSTAT3標的mir17-92発現の減少は、Srcを阻害するPTENの増加、およびβ-カテニン細胞ダイナミクスを調節するE2F1に関連していた。ゆえにSTAT3依存性転写活性は、内皮結合アーキテクチャと機能ダイナミクス、および透過性に重要な構成要素を調節する。STAT3の長期的な機能アブレーションにより付着結合部の血管媒介物質誘導型の溶解が予防される。このことは、アナフィラキシーなどの過剰な血管透過性の臨床疾病がSTAT3の小分子阻害を介して媒介可能であることを示唆している。
【0010】
肥満細胞の脱顆粒後、ヒスタミン、血小板活性化因子(PAF)、トロンビンなどの媒介物質は、標的血管内皮に作用して、一酸化窒素合成(Palmer,R.M.,Ferrige,A.G.& Moncada,S.,Nitric oxide release accounts for the biological activity of endothelium-derived relaxing factor,NATURE 327,524-526,doi:10.1038/327524a0(1987))、細胞内カルシウム放出(Valone,F.H.& Johnson,B.,Modulation of platelet-activating-factor-induced calcium influx and intracellular calcium release in platelets by phorbol esters,THE BIOCHEMICAL JOURNAL,247,669-674 (1987);Kotlikoff,M.I.,Murray,R.K.& Reynolds,E.E.,Histamine-induced calcium release and phorbol antagonism in cultured airway smooth muscle cells,THE AMERICAN JOURNAL OF PHYSIOLOGY 253,C561-566 (1987))、および血管漏出を増大させて、それにより即時過敏症の症状をもたらす(Kaliner,M.,Sigler,R.,Summers,R.& Shelhamer,J.H.,Effects of infused histamine:analysis of the effects of H-1 and H-2 histamine receptor antagonists on cardiovascular and pulmonary responses,THE JOURNAL OF ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY,68,365-371 (1981);Kirsch,C.M.,Brokaw,J.J.,Prow,D.M.& White,G.W.,Mechanism of platelet activating factor-induced vascular leakage in the rat trachea,EXPERIMENTAL LUNG RESEARCH,18,447-459 (1992))。内皮接着結合部は血管漏出を調節するものであり、その細胞質尾部によってα-カテニン、β-カテニン、およびプラコグロビンなどの細胞内アンカーに結合したVE-カドヘリンによって形成される(Andriopoulou,P.,Navarro,P.,Zanetti,A.,Lampugnani,M.G.& Dejana,E.,Histamine induces tyrosine phosphorylation of endothelial cell-to-cell adherens junctions,ARTERIOSCLEROSIS,THROMBOSIS,AND VASCULAR BIOLOGY,19,2286-2297 (1999))。血管透過性は、Src/Yesキナーゼ依存性機構を介してβ-カテニンからVE-カドヘリンを結合解除することにより達成することができる(Wallez,Y.et al.,Src kinase phosphorylates vascular endothelial-cadherin in response to vascular endothelial growth factor:identification of tyrosine 685 as the unique target site,Oncogene 26,1067-1077,doi:10.1038/sj.onc.1209855 (2007);Weis,S.,Cui,J.,Barnes,L.& Cheresh,D.,Endothelial barrier disruption by VEGF-mediated Src activity potentiates tumor cell extravasation and metastasis,THE JOURNAL OF CELL BIOLOGY 167,223-229,doi:10.1083/jcb.200408130(2004))。
【0011】
STAT3シグナル伝達は、ギャップ接合細胞間伝達、IL-6およびIL-11誘導型の血管漏出、STAT3のリン酸化に付随するVE-カドヘリンのダウンレギュレーション、ならびにβ-カテニン核転座および転写活性のSTAT3/mir17-92/E2F1依存性調節に関与している。例えば、Wei,L.H.et al.,The role of IL-6 trans-signaling in vascular leakage:implications for ovarian hyperstimulation syndrome in a murine model,THE JOURNAL OF CLINICAL ENDOCRINOLOGY AND METABOLISM 98,E472-484,doi:10.1210/jc.2012-3462 (2013);Guy,S.,Geletu,M.,Arulanandam,R.& Raptis,L.,Stat3 and gap junctions in normal and lung cancer cells,CANCERS 6,646-662,doi:10.3390/cancers6020646 (2014);Snyder-Talkington,B.N.,Schwegler-Berry,D.,Castranova,V.,Qian,Y.& Guo,N.L.,Multi-walled carbon nanotubes induce human microvascular endothelial cellular effects in an alveolar-capillary co-culture with small airway epithelial cells,PARTICLE AND FIBRE TOXICOLOGY 10,35,doi:10.1186/1743-8977-10-35 (2013);Dai,B.et al.,STAT3 mediates resistance to MEK inhibitor through microRNA miR-17,CANCER RESEARCH 71,3658-3668,doi:10.1158/0008-5472.CAN-10-3647 (2011);van Haaften,G.& Agami,R.,Tumorigenicity of the miR-17-92 cluster distilled,GENES & DEVELOPMENT 24,1-4,doi:10.1101/gad.1887110(2010);Kawada,M.et al.,Signal transducers and activators of transcription 3 activation is involved in nuclear accumulation of beta-catenin in colorectal cancer,CANCER RESEARCH 66,2913-2917,doi:10.1158/0008-5472.CAN-05-3460(2006);Mahboubi,K.,Biedermann,B.C.,Carroll,J.M.& Pober,J.S.,IL-11 activates human endothelial cells to resist immune-mediated injury,JOURNAL OF IMMUNOLOGY 164,3837-3846 (2000)を参照。ゆえにSTAT3阻害は、アナフィラキシーの環境において血管透過性を低下させると予想される。
【0012】
炎症性腸疾患(IBD)
IBDは、潰瘍性大腸炎(UC)またはクローン病(CD)のいずれかとして提示される。UCおよびCDの病因は確立されていないが、様々な遺伝子が、ATG16L、NOD2/CARD15、IBD5、CTLA4、TNFSF15、JAK2、STAT3、IL23R、およびORMDL3を含むゲノムワイド関連研究(GWAS)においてIBDの危険因子に関係があるとされている。これらは、抗菌ペプチド、生得および適応免疫細胞機能、Th17細胞、調節T細胞(Treg)、およびサイトカイン(腫瘍壊死因子、インターロイキン17、23、12、22、およびIL-6)に関係する。これらサイトカインの多くが、STAT3を活性化する細胞表面受容体のリガンドとして機能する。3つの細胞系統、骨髄細胞、腸細胞、およびT細胞内のSTAT3は、マウスとヒトの大腸炎に寄与することが実証されているが(Takeda K,Clausen BE,Kaisho T,et al.,Enhanced Th1 activity and development of chronic enterocolitis in mice devoid of Stat3 in macrophages and neutrophils,IMMUNITY 1999,10:39-49;Atreya R,Mudter J,Finotto S,et al.,Blockade of interleukin 6 trans signaling suppresses T-cell resistance against apoptosis in chronic intestinal inflammation:evidence in crohn disease and experimental colitis in vivo,NAT MED 2000,6:583-8;Suzuki A,Hanada T,Mitsuyama K,et al.,CIS3/SOCS3/SSI3 plays a negative regulatory role in STAT3 activation and intestinal inflammation,J.EXP.MED.2001,193:471-81)、効果は対照的である。一方で、骨髄細胞(好中球およびマクロファージ)または腸細胞内のSTAT3の遺伝的欠失により、それぞれ慢性マウス大腸炎が生じ、またはマウスが実験的大腸炎の影響を受けやすくなった。Pickert G,Neufert C,Leppkes M,et al.,STAT3 links IL-22 signaling in intestinal epithelial cells to mucosal wound healing,THE JOURNAL OF EXPERIMENTAL MEDICINE,2009,206:1465-72を参照。ゆえに骨髄細胞および腸細胞内のSTAT3は、大腸炎を防ぐものと思われる。一方、マウスに対して行われた直近の研究では、浸潤性CD4+T細胞内内のSTAT3がアポトーシスを防ぐことが実証されており、アポトーシスは慢性腸炎症に寄与するものである(Atreya R,Neurath MF,Signaling molecules:the pathogenic role of the IL-6/STAT-3 trans signaling pathway in intestinal inflammation and in colonic cancer,CURR DRUG TARGETS 2008,9:369-74内で調査されている)。このことは、T細胞内のSTAT3の活性化が慢性大腸炎に不可欠であることを示している。
【0013】
IBDの2匹のマウスモデル、すなわちデキストランナトリウム塩(DSS;UCモデル)およびトリニトロ安息香酸(TNBS;CDモデル)において遺伝的または薬理学的にSTAT3活性を調節する効果を調べた結果では、細胞と組織すべてに及ぶSTAT3の最終効果はIBDの進行を促すことであると示されている。マウスにおける所見に加えて、他の群では、活性化STAT3(pY-STAT3)のレベルは、IBDを抱えるヒトの腸組織の炎症の程度に直接相関していたことが示されている。Musso A,Dentelli P,Carlino A,et al.,Signal transducers and activators of transcription 3 signaling pathway:an essential mediator of inflammatory bowel disease and other forms of intestinal inflammation,INFLAMM BOWEL DIS.,2005,11:91-8;Mudter J,Weigmann B,Bartsch B,et al.,Activation pattern of signal transducers and activators of transcription(STAT)factors in inflammatory bowel diseases,AM J GASTROENTEROL,2005,100:64-72;Mitsuyama K,Matsumoto S,Masuda J,et al.,Therapeutic strategies for targeting the IL-6/STAT3 cytokine signaling pathway in inflammatory bowel disease,ANTICANCER RESEARCH 2007,27:3749-56を参照。ゆえにSTAT3を標的とすることは、現行のケア基準が無効であるIBD患者を処置する有効な手段を表す場合がある。
【0014】
それゆえ、STAT3活性を調節または阻害するための新規な化合物および方法を開発する必要が依然として存在する。
【発明の概要】
【0015】
一態様では、式Iの構造を有する、STAT3調節剤あるいは阻害剤として有用な化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が本明細書に記載され、
【0016】
【化1】
式中、様々な置換基が、本明細書中の1つ以上の実施形態に定義される。本明細書に記載される化合物は、STAT3を調節する(例えば阻害する)ので、本明細書に記載される障害のうち1つ以上の処置として有用な場合がある。これら化合物を合成する方法も本明細書に記載される。本明細書に記載される組成物と方法は、インビトロとインビボでSTAT3を阻害するのに有用である。ゆえにこのような組成物と方法は、望ましくないSTAT3活性に関係する障害または疾病を処置するための医薬品と方法を含む、多くの臨床的用途において有用である。前記障害の非限定的な例として、アルツハイマー病またはその他の神経変性疾患に起因するアナフィラキシー、筋消耗、筋力低下、悪液質、喘息、潰瘍性大腸炎、非アルコール性脂肪肝疾患、線維症、脂肪肝炎、シャーガス心筋症、強皮症、高増殖性疾患、ウイルス感染症、骨髄異形成症候群、喘息、乾癬、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、強膜炎、多発性硬化症、移植片対宿主疾患、膵炎、肺リンパ管筋腫症、加齢黄斑変性症、アミロイドーシス、アストログリア症、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
一態様では、式Iの化合物、
【0018】
【化2】
またはその薬学的に許容可能な塩が記載され、式中、
R
1の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、C(=O)R
a、OC(=O)R
a、C(=O)OR
a、NR
bR
c、NR
bC(=O)R
c、C(=O)NR
bR
c、NR
bC(=O)OR
c、OC(=O)NR
bR
c、NR
aC(=O)NR
bR
c、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換された複素環であり、
n
1は0、1、2、3、または4であり、
R
2の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、C(=O)R
a、OC(=O)R
a、C(=O)OR
a、NR
bR
c、NR
bC(=O)R
c、C(=O)NR
bR
c、NR
bC(=O)OR
c、OC(=O)NR
bR
c、NR
aC(=O)NR
bR
c、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、随意に置換されたアリール、随意に置換されたアリールオキシ、または随意に置換された複素環であり、
n
2は0、1、2、3、4、または5であり、
R
3は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、OC(=O)R
a、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、または随意に置換されたアリールもしくはヘテロアリールであり、
R
4は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、NR
bR
c、OC(=O)R
a、アルキル、アルケニル、またはシクロアルキルであり、
R
5、R
6、およびR
7の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、C(=O)R
a、OC(=O)R
a、C(=O)OR
a、NR
bR
c、NR
bC(=O)R
c、C(=O)NR
bR
c、NR
bC(=O)OR
c、OC(=O)NR
bR
c、NR
aC(=O)NR
bR
c、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換された複素環であり、
n
3は0、1、2、3、または4であり、ならびに
R
a、R
b、およびR
cの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、もしくはアリールであり、または前記R
bとR
cは、それらが結合する窒素原子と一体となって、1~4のヘテロ原子を含む複素環を随意に形成する。
【0019】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R1の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF3、OCF3、ORa、またはSRaである。
【0020】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つでは、R1の各出現は独立して、C(=O)Ra、OC(=O)Ra、C(=O)ORa、NRaRb、NRbC(=O)Ra、C(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORa、OC(=O)NRbRc、またはNRaC(=O)NRbRcである。
【0021】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つでは、R1の各出現は独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換された複素環である。
【0022】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R1はHである。
【0023】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つでは、n1は0、1、または2である。
【0024】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、n1は0である。
【0025】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、n1は1である。
【0026】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R2の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF3、OCF3、ORa、またはSRaである。
【0027】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R2の各出現は独立して、C(=O)Ra、OC(=O)Ra、C(=O)ORa、NRaRb、NRbC(=O)Ra、C(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORa、OC(=O)NRbRc、またはNRaC(=O)NRbRcである。
【0028】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R2の各発生は独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換された複素環である。
【0029】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R2はHである。
【0030】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、n2は0、1、または2である。
【0031】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、n2は0である。
【0032】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、n2は0である。
【0033】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R3は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、またはCF3である。
【0034】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R3はOCF3、ORa、SRa、またはOC(=O)Raである。
【0035】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R3は0、1、または2である。
【0036】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R3はHである。
【0037】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R4は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、またはORaである。
【0038】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R4はOCF3、SRa、またはOC(=O)Raである。
【0039】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R4はアルキル、アルケニル、またはシクロアルキルである。
【0040】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R4はOHである。
【0041】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R4はOMeである。
【0042】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、およびCF3から選択される。
【0043】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して、OCF3、ORa、およびSRaからなる群から選択される。
【0044】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して、OCF3およびORaからなる群から選択される。
【0045】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して、C(=O)Ra、OC(=O)Ra、C(=O)ORa、NRaRb、NRbC(=O)Ra、C(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORa、OC(=O)NRbRc、およびNRaC(=O)NRbRcからなる群から選択される。
【0046】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、および随意に置換された複素環からなる群から選択される。
【0047】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R5、R6、およびR7の各出現は、Hである。
【0048】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、n3は0、1、または2である。
【0049】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、n3は0である。
【0050】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、n3は0である。
【0051】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、Raの各出現は独立して、水素、アルキル、複素環、またはアリールである。
【0052】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、Raの各出現は独立して、水素またはアルキルである。
【0053】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、RbとRcの各出現は独立して、水素、アルキル、複素環、またはアリールである。
【0054】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、RbとRcの各出現は独立して、水素またはアルキルである。
【0055】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、RbとRcは、それらが結合する窒素原子と一体となって、N、O、およびSからなる群から各々選択される1~4のヘテロ原子を含む複素環を随意に形成する。
【0056】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、請求項1に記載の化合物は、式IIの構造
【0057】
【化3】
またはその薬学的に許容可能な塩を有する。
【0058】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R2はH、OH、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、NRbRc、CF3、OCF3、またはCNである。
【0059】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つでは、R2はNH2、OH、OMe、OEt、OCH2CH2CH3、またはOCH(CH3)2である。
【0060】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R2は、水素、メチル、エチル、プロピル、tert-ブチル、F、Cl、Br、CF3、ニトロ、メトキシ、エトキシ、OCF3、-C(=O)Me、-C(=O)OMe、-NHC(=O)Me、1,4-ジオキサニル、シクロヘキサニル、シクロヘキセニル、フェノキシ、2-メトキシフェノキシ、3-メトキシフェノキシ、4-メトキシフェノキシ、2-クロロフェノキシ、3-クロロフェノキシ、4-クロロフェノキシ、2-メチルフェノキシ、3-メチルフェノキシ、および4-メチルフェノキシからなる群から選択される。
【0061】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R2はOMeである。
【0062】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R3はH、OH、アルキル、アルコキシ、またはハロゲンである。
【0063】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R3はHである。
【0064】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R4はH、アルキル、OH、NH2、アルコキシ、ハロゲン、CF3、またはCNである。
【0065】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R4はH、OH、またはアルコキシである。
【0066】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R4はOHである。
【0067】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R4はOMeである。
【0068】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記化合物は、式IIIの構造
【0069】
【化4】
またはその薬学的に許容可能な塩を有する。
【0070】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記化合物は、表1aの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される。
【0071】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記化合物は、表1bの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される。
【0072】
別の態様では、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体または希釈剤とを含む、医薬組成物が記載される。
【0073】
また別の態様では、細胞中のSTAT3を阻害する方法が記載され、該方法は、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容可能な塩の有効量を前記細胞に送達する工程を含む。
【0074】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記細胞は哺乳動物の生体内に存在する。
【0075】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記哺乳動物は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、またはヤギである。
【0076】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記細胞は癌細胞である。
【0077】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記方法は、前記癌細胞にアポトーシスを誘導する工程をさらに含む。
【0078】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記方法は、腫瘍中の血管新生を阻害する工程、抗腫瘍免疫媒介性細胞毒性を増強する工程、腫瘍増殖を減らす工程、哺乳動物の生存を改善する工程、STAT3リン酸化を阻害する工程、および/またはSTAT3の核から細胞質への転座を阻害する工程をさらに含む。
【0079】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記ヒトは、神経変性疾患、アナフィラキシー、筋肉消耗、筋力低下、悪液質、喘息、潰瘍性大腸炎、非アルコール性脂肪肝疾患、線維症、脂肪肝炎、シャーガス心筋症、強皮症、高増殖性疾患、ウイルス感染症、骨髄異形成症候群、喘息、乾癬、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、強膜炎、多発性硬化症、移植片対宿主疾患、膵炎、肺リンパ管筋腫症、加齢黄斑変性症、アミロイドーシス、アルツハイマー病もしくは他の神経変性疾患におけるアストログリオーシス、またはこれらの組み合わせを患っている、それらを患っていることが分かっている、それらを患っている疑いがある、またはそれらを進行させるリスクがある。
【0080】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記高増殖性疾患は、頭頸部癌、肺癌、肝臓癌、乳癌、皮膚癌、腎臓癌、精巣癌、大腸癌、直腸癌、胃癌、転移性黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、骨癌、脾臓癌、胆嚢癌、脳癌、膵臓癌、胃癌、肛門癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、移植後リンパ増殖性疾患、再狭窄、骨髄異形成症候群、および白血病からなる群から選択される。
【0081】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記白血病は急性骨髄性白血病である。
【0082】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記線維症は、肺線維症、骨髄線維症、腸線維症、膵臓線維症、関節線維症、肝線維症、後腹膜線維症、骨髄線維症、および真皮線維症からなる群から選択される。
【0083】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記ウイルス感染症は慢性ウイルス感染症である。
【0084】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記慢性ウイルス感染症は、AIDS、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、またはエプスタイン-バーウイルス感染症である。
【0085】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記障害は、喘息、乾癬、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、強膜炎、多発性硬化症、移植片対宿主疾患、膵炎、肺リンパ管筋腫症、加齢黄斑変性症、またはアミロイドーシスである。
【0086】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記アナフィラキシーはアナフィラキシーショックである。
【0087】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記障害は、筋消耗、筋力低下、悪液質、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記ヒトは、筋消耗、悪液質、腎不全、癌、AIDS、HIV感染症、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫を含む)、多発性硬化症、うっ血性心不全、結核、家族性アミロイドポリニューロパチー、先端性不全症、ホルモン欠乏症、代謝性アシドーシス、感染性疾患、慢性膵炎、自己免疫疾患、セリアック病、クローン病、電解質不均衡、アジソン病、敗血症、火傷、外傷、発熱、長骨骨折、甲状腺機能亢進症、長期ステロイド療法、手術、骨髄移植、非定型肺炎、ブルセラ症、心内膜炎、B型肝炎、肺膿瘍、肥満細胞症、腫瘍周囲症候群、結節性多発動脈炎、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、内臓リーシュマニア症、長期安静、もしくは薬物中毒を患っているか、またはそれらを患うリスクがある。
【0088】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つでは、前記慢性閉塞性肺疾患は肺気腫である。
【0089】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記神経変性疾患は、化学療法誘発末梢神経障害、糖尿病性神経障害または化学脳である。
【0090】
また別の態様では、哺乳動物種の障害を処置または予防する方法が記載され、該方法は、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の治療上有効な量を前記哺乳動物種に投与する工程を含み、前記障害は、神経変性疾患、アナフィラキシー、筋消耗、筋力低下、悪液質、喘息、潰瘍性大腸炎、非アルコール性脂肪肝疾患、線維症、脂肪肝炎、シャーガス心筋症、強皮症、高増殖性疾患、ウイルス感染症、骨髄異形成症候群、喘息、乾癬、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、強膜炎、多発性硬化症、移植片対宿主疾患、膵炎、肺リンパ管筋腫症、加齢黄斑変性症、アミロイドーシス、アルツハイマー病もしくは他の神経変性疾患におけるアストログリオーシス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0091】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記哺乳動物種は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、またはヤギである。
【0092】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記哺乳動物種はヒトである。
【0093】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記ヒトは、前記障害を患っている、それを患うリスクがある、またはそれを患っている疑いがある。
【0094】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記高増殖性疾患は、頭頸部癌、肺癌、肝臓癌、乳癌、皮膚癌、腎臓癌、精巣癌、大腸癌、直腸癌、胃癌、転移性黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、骨癌、脾臓癌、胆嚢癌、脳癌、膵臓癌、胃癌、肛門癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、移植後リンパ増殖性疾患、再狭窄、骨髄異形成症候群、および白血病からなる群から選択される。
【0095】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記白血病は急性骨髄性白血病である。
【0096】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記線維症は、肺線維症、骨髄線維症、腸線維症、膵臓線維症、関節線維症、肝線維症、後腹膜線維症、骨髄線維症、および真皮線維症からなる群から選択される。
【0097】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記ウイルス感染症は慢性ウイルス感染症である。
【0098】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記慢性ウイルス感染症は、AIDS、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、またはエプスタイン-バーウイルス感染症である。
【0099】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記障害は、喘息、乾癬、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、強膜炎、多発性硬化症、移植片対宿主疾患、膵炎、肺リンパ管筋腫症、加齢黄斑変性症、またはアミロイドーシスである。
【0100】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記アナフィラキシーはアナフィラキシーショックである。
【0101】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記障害は、筋消耗、筋力低下、悪液質、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記ヒトは、筋消耗、悪液質、腎不全、癌、AIDS、HIV感染症、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫を含む)、多発性硬化症、うっ血性心不全、結核、家族性アミロイドポリニューロパチー、先端性不全症、ホルモン欠乏症、代謝性アシドーシス、感染性疾患、慢性膵炎、自己免疫疾患、セリアック病、クローン病、電解質不均衡、アジソン病、敗血症、火傷、外傷、発熱、長骨骨折、甲状腺機能亢進症、長期ステロイド療法、手術、骨髄移植、非定型肺炎、ブルセラ症、心内膜炎、B型肝炎、肺膿瘍、肥満細胞症、腫瘍周囲症候群、結節性多発動脈炎、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、内臓リーシュマニア症、長期安静、もしくは薬物中毒を患っているか、またはそれらを患うリスクがある。
【0102】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つでは、前記慢性閉塞性肺疾患は肺気腫である。
【0103】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記神経変性疾患は、化学療法誘発末梢神経障害、糖尿病性神経障害、または化学脳である。
【0104】
また別の態様では、式Iの化合物を作る方法が記載され、該方法は、工程aで酸化試薬を用いて前記式Iの化合物を形成するために式Ixの化合物を酸化する工程を含み、
【0105】
【化5】
式中、
R
1の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、C(=O)R
a、OC(=O)R
a、C(=O)OR
a、NR
bR
c、NR
bC(=O)R
c、C(=O)NR
bR
c、NR
bC(=O)OR
c、OC(=O)NR
bR
c、NR
aC(=O)NR
bR
c、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換された複素環であり、
n
1は0、1、2、3、または4であり、
R
2の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、C(=O)R
a、OC(=O)R
a、C(=O)OR
a、NR
bR
c、NR
bC(=O)R
c、C(=O)NR
bR
c、NR
bC(=O)OR
c、OC(=O)NR
bR
c、NR
aC(=O)NR
bR
c、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、随意に置換されたアリール、随意に置換されたアリールオキシ、または随意に置換された複素環であり、
n
2は0、1、2、3、4、または5であり、
R
3は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、OC(=O)R
a、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、または随意に置換されたアリールもしくはヘテロアリールであり、
R
4は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、NR
bR
c、OC(=O)R
a、アルキル、アルケニル、またはシクロアルキルであり、
R
5、R
6、およびR
7の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、C(=O)R
a、OC(=O)R
a、C(=O)OR
a、NR
bR
c、NR
bC(=O)R
c、C(=O)NR
bR
c、NR
bC(=O)OR
c、OC(=O)NR
bR
c、NR
aC(=O)NR
bR
c、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換された複素環であり、
n
3は0、1、2、3、または4であり、ならびに
R
a、R
b、およびR
cの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、もしくはアリールであり、または前記R
bとR
cは、それらが結合する窒素原子と一体となって、1~4のヘテロ原子を含む複素環を随意に形成する。
【0106】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記酸化試薬は、NaIO4、H2O2、MCPBA、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0107】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記酸化試薬はNaIO4である。
【0108】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、NaIO4はインサイツで調製される。
【0109】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記酸化試薬は、式Ixの化合物に対して1.5~4.0当量の量で使用される。
【0110】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記酸化試薬は、式Ixの化合物に対して2.0~3.5当量の量で使用される。
【0111】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、工程aは12時間~2日間実施される。
【0112】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、工程aは1日間実施される。
【0113】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R1の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF3、OCF3、ORa、またはSRaである。
【0114】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R1の各出現はHである。
【0115】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つでは、R2の各出現は独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF3、OCF3、ORa、またはSRaである。
【0116】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R2はOMeであり、n2は1である。
【0117】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R3はOCF3、ORa、SRa、またはOC(=O)Ra、アルキル、アルケニル、またはシクロアルキルである。
【0118】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、R3はHである。
【0119】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、式Iの化合物は、式IIIの構造
【0120】
【化6】
を有し、式Ixの化合物は、式IIIxの構造
【0121】
【0122】
本明細書に開示される任意の態様または実施形態は、本明細書に開示される別の態様または実施形態と組み合わせてもよい。本明細書に記載される1つ以上の実施形態と本明細書に記載される他の1つ以上の実施形態との組み合わせは、明示的に企図される。
【発明を実施するための形態】
【0123】
定義
本明細書で使用される用語の定義を以下に示す。本明細書中の群または用語に提供される最初の定義は、別段の指示がない限り、個別に、または別の群の一部として本明細書全体にわたる群または用語に適用される。別段の定めがない限り、本明細書で使用される技術用語と科学用語はすべて、当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0124】
「アルキル」および「alk」という用語は、炭素原子1~12個、好ましくは炭素原子1~6個を含む、直鎖または分枝鎖のアルカン(炭化水素)ラジカルを指す。例示的な「アルキル」基として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチルペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4-ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4-トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどが挙げられる。「(C1-C4)アルキル」という用語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、およびイソブチルなどの炭素原子1~4個を含む直鎖または分枝鎖を指す。「置換アルキル」とは、任意の利用可能な結合点において、1つ以上の置換基、好ましくは1~4個の置換基で置換されたアルキル基を指す。例示的な置換基としては、以下、水素、ハロゲン(例えば、単一のハロゲン置換基または複数のハロ置換基、後者の場合、CF3、またはCCl3を有するアルキル基などの基)、シアノ、ニトロ、オキソ(すなわち、=O)、CF3、OCF3、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、アリール、ORa、SRa、S(=O)Re、S(=O)2Re、P(=O)2Re、S(=O)2ORe、P(=O)2ORe、NRbRc、NRbS(=O)2Re、NRbP(=O)2Re、S(=O)2NRbRc、P(=O)2NRbRc、C(=O)ORd、C(=O)Ra、C(=O)NRbRc、OC(=O)Ra、OC(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORe、NRdC(=O)NRbRc、NRdS(=O)2NRbRc、NRdP(=O)2NRbRc、NRbC(=O)Ra、またはNRbP(=O)2Reのうち1つ以上が挙げられるがこれらには限定されず、Raの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールであり、Rb、Rc、およびRdの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、複素環、アリールであり、前記RbとRcは、それらが結合するNと一体となって複素環を随意に形成し、Reの各出現は独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールである。前述の例示的な置換基では、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルケニル、複素環、およびアリールなどの基は、それ自体が随意に置換されてもよい。
【0125】
「アルケニル」という用語は、炭素原子2~12個と少なくとも1つの炭素炭素二重結合とを含む、直鎖または分枝鎖の炭化水素ラジカルを指す。このような例示的な基としてエテニルまたはアリルが挙げられる。「C2-C6アルケニル」という用語は、炭素原子2~6個と少なくとも1つの炭素炭素二重結合とを含む、直鎖または分枝鎖の炭化水素ラジカルを指し、例えばエチレニル、プロペニル、2-プロペニル、(E)-ブタ-2-エニル、(Z)-ブタ-2-エニル、2-メチル(E)-ブタ-2-エニル、2-メチル(Z)-ブタ-2-エニル、2,3-ジメチル-ブタ-2-エニル、(Z)-ペンタ-2-エニル、(E)-ペンタ-1-エニル、(Z)-ヘキサ-1-エニル、(E)-ペンタ-2-エニル、(Z)-ヘキサ-2-エニル、(E)-ヘキサ-2-エニル、(Z)-ヘキサ-1-エニル、(E)-ヘキサ-1-エニル、(Z)-ヘキサ-3-エニル、(E)-ヘキサ-3-エニル、および(E)-ヘキサ-1,3-ジエニルなどである。「置換アルケニル」とは、任意の利用可能な結合点において、1つ以上の置換基、好ましくは1~4個の置換基で置換されたアルケニル基を指す。例示的な置換基としては、以下、水素、ハロゲン(例えば、単一のハロゲン置換基または複数のハロ置換基、後者の場合、CF3、またはCCl3を有するアルキル基などの基)、シアノ、ニトロ、オキソ(すなわち、=O)、CF3、OCF3、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、アリール、ORa、SRa、S(=O)Re、S(=O)2Re、P(=O)2Re、S(=O)2ORe、P(=O)2ORe、NRbRc、NRbS(=O)2Re、NRbP(=O)2Re、S(=O)2NRbRc、P(=O)2NRbRc、C(=O)ORd、C(=O)Ra、C(=O)NRbRc、OC(=O)Ra、OC(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORe、NRdC(=O)NRbRc、NRdS(=O)2NRbRc、NRdP(=O)2NRbRc、NRbC(=O)Ra、またはNRbP(=O)2Reのうち1つ以上が挙げられるがこれらには限定されず、Raの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールであり、Rb、Rc、およびRdの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、複素環、アリールであり、前記RbとRcは、それらが結合するNと一体となって複素環を随意に形成し、Reの各出現は独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールである。例示的な置換基は、それ自体が随意に置換されてもよい。
【0126】
「アルキニル」という用語は、炭素原子2~12個と少なくとも1つの炭素炭素三重結合とを含む、直鎖または分枝鎖の炭化水素ラジカルを指す。このような例示的な基としてエチニルが挙げられる。「C2-C6アルキニル」という用語は、炭素原子2~6個と少なくとも1つの炭素炭素三重結合をと含む直鎖または分枝鎖の炭化水素ラジカルを指し、例えばエチニル、プロパ-1-イニル、プロパ-2-イニル、ブタ-1-イニル、ブタ-2-イニル、ペンタ-1-イニル、ペンタ-2-イニル、ヘキサ-1-イニル、ヘキサ-2-イニル、またはヘキサ-3-イニルなどである。「置換アルキニル」とは、任意の利用可能な結合点において、1つ以上の置換基、好ましくは1~4個の置換基で置換されたアルキニル基を指す。例示的な置換基としては、以下、水素、ハロゲン(例えば、単一のハロゲン置換基または複数のハロ置換基、後者の場合、CF3、またはCCl3を有するアルキル基などの基)、シアノ、ニトロ、オキソ(すなわち、=O)、CF3、OCF3、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、アリール、ORa、SRa、S(=O)Re、S(=O)2Re、P(=O)2Re、S(=O)2ORe、P(=O)2ORe、NRbRc、NRbS(=O)2Re、NRbP(=O)2Re、S(=O)2NRbRc、P(=O)2NRbRc、C(=O)ORd、C(=O)Ra、C(=O)NRbRc、OC(=O)Ra、OC(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORe、NRdC(=O)NRbRc、NRdS(=O)2NRbRc、NRdP(=O)2NRbRc、NRbC(=O)Ra、またはNRbP(=O)2Reのうち1つ以上が挙げられるがこれらには限定されず、Raの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールであり、Rb、Rc、およびRdの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、複素環、アリールであり、前記RbとRcは、それらが結合するNと一体となって複素環を随意に形成し、Reの各出現は独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールである。例示的な置換基は、それ自体が随意に置換されてもよい。
【0127】
「シクロアルキル」という用語は、環1~4個と、環1つにつき炭素3~8個とを含む完全飽和環状炭化水素基を指す。「C3-C7シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはシクロヘプチルを指す。「置換シクロアルキル」とは、任意の利用可能な結合点において、1つ以上の置換基、好ましくは1~4個の置換基で置換されたシクロアルキル基を指す。例示的な置換基としては、以下、水素、ハロゲン(例えば、単一のハロゲン置換基または複数のハロ置換基、後者の場合、CF3、またはCCl3を有するアルキル基などの基)、シアノ、ニトロ、オキソ(すなわち、=O)、CF3、OCF3、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、アリール、ORa、SRa、S(=O)Re、S(=O)2Re、P(=O)2Re、S(=O)2ORe、P(=O)2ORe、NRbRc、NRbS(=O)2Re、NRbP(=O)2Re、S(=O)2NRbRc、P(=O)2NRbRc、C(=O)ORd、C(=O)Ra、C(=O)NRbRc、OC(=O)Ra、OC(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORe、NRdC(=O)NRbRc、NRdS(=O)2NRbRc、NRdP(=O)2NRbRc、NRbC(=O)Ra、またはNRbP(=O)2Reのうち1つ以上が挙げられるがこれらには限定されず、Raの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールであり、Rb、Rc、およびRdの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、複素環、アリールであり、前記RbとRcは、それらが結合するNと一体となって複素環を随意に形成し、Reの各出現は独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールである。例示的な置換基は、それ自体が随意に置換されてもよい。例示的な置換基はまた、スピロ結合または縮合環式置換基、特にスピロ結合シクロアルキル、スピロ結合シクロアルケニル、スピロ結合複素環(ヘテロアリールを除く)、縮合シクロアルキル、縮合シクロアルケニル、縮合複素環、または縮合アリールを含み、ここで、前記シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、およびアリールの置換基は、それ自体が随意に置換されてもよい。
【0128】
「シクロアルケニル」という用語は、環1~4個と、環1つにつき炭素3~8個とを含む部分不飽和環状炭化水素基を指す。そのような例示的な基として、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどが挙げられる。「置換シクロアルケニル」とは、任意の利用可能な結合点において、1つ以上の置換基、好ましくは1~4個の置換基で置換されたシクロアルケニル基を指す。例示的な置換基としては、以下、水素、ハロゲン(例えば、単一のハロゲン置換基または複数のハロ置換基、後者の場合、CF3、またはCCl3を有するアルキル基などの基)、シアノ、ニトロ、オキソ(すなわち、=O)、CF3、OCF3、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、アリール、ORa、SRa、S(=O)Re、S(=O)2Re、P(=O)2Re、S(=O)2ORe、P(=O)2ORe、NRbRc、NRbS(=O)2Re、NRbP(=O)2Re、S(=O)2NRbRc、P(=O)2NRbRc、C(=O)ORd、C(=O)Ra、C(=O)NRbRc、OC(=O)Ra、OC(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORe、NRdC(=O)NRbRc、NRdS(=O)2NRbRc、NRdP(=O)2NRbRc、NRbC(=O)Ra、またはNRbP(=O)2Reのうち1つ以上が挙げられるがこれらには限定されず、Raの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールであり、Rb、Rc、およびRdの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、複素環、アリールであり、前記RbとRcは、それらが結合するNと一体となって複素環を随意に形成し、Reの各出現は独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールである。例示的な置換基は、それ自体が随意に置換されてもよい。例示的な置換基はまた、スピロ結合または縮合環式置換基、特にスピロ結合シクロアルキル、スピロ結合シクロアルケニル、スピロ結合複素環(ヘテロアリールを除く)、縮合シクロアルキル、縮合シクロアルケニル、縮合複素環、または縮合アリールを含み、ここで、前記シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、およびアリールの置換基は、それ自体が随意に置換されてもよい。
【0129】
「アリール」という用語は、芳香環1~5個を有する環状の芳香族炭化水素基、特にフェニル、ビフェニル、あるいはナフチルなどの単環式基または二環式基を指す。2つ以上の芳香環を含む場合(二環式など)、アリール基の芳香環は、1つの点で結合されるか(例えば、ビフェニル)、または縮合されてもよい(例えば、ナフチル、フェナントレニルなど)。「置換アリール」とは、任意の利用可能な結合点において、1つ以上の置換基、好ましくは1~3個の置換基で置換されたアリール基を指す。例示的な置換基としては、以下、水素、ハロゲン(例えば、単一のハロゲン置換基または複数のハロ置換基、後者の場合、CF3、またはCCl3を有するアルキル基などの基)、シアノ、ニトロ、オキソ(すなわち、=O)、CF3、OCF3、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、アリール、ORa、SRa、S(=O)Re、S(=O)2Re、P(=O)2Re、S(=O)2ORe、P(=O)2ORe、NRbRc、NRbS(=O)2Re、NRbP(=O)2Re、S(=O)2NRbRc、P(=O)2NRbRc、C(=O)ORd、C(=O)Ra、C(=O)NRbRc、OC(=O)Ra、OC(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORe、NRdC(=O)NRbRc、NRdS(=O)2NRbRc、NRdP(=O)2NRbRc、NRbC(=O)Ra、またはNRbP(=O)2Reのうち1つ以上が挙げられるがこれらには限定されず、Raの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールであり、Rb、Rc、およびRdの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、複素環、アリールであり、前記RbとRcは、それらが結合するNと一体となって複素環を随意に形成し、Reの各出現は独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールである。例示的な置換基は、それ自体が随意に置換されてもよい。例示的な置換基はまた、縮合環状基、特に縮合シクロアルケニル、縮合複素環、または縮合アリールを含み、ここで、前記シクロアルケニル、縮合複素環、およびアリールの置換基は、それ自体が随意に置換されてもよい。
【0130】
「炭素環」という用語は、環1~4個と、環1つにつき炭素3~8個を含む完全飽和または部分飽和の環状炭化水素基を指すか、または芳香環1~5個を有する環状芳香族炭化水素基、具体的にフェニル、ビフェニル、またはナフチルなどの単環式あるいは二環式基を指す。用語「炭素環」は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、およびアリールを包含する。用語「置換炭素環」とは、任意の利用可能な結合点において、1つ以上の置換基、好ましくは1~4個の置換基で置換された炭素環または炭素環基を指す。例示的な置換基として、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、置換シクロアルキニル、および置換アリールについて上述したものが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な置換基はまた、任意の利用可能な結合点にスピロ結合または縮合環式置換基、特にスピロ結合シクロアルキル、スピロ結合シクロアルケニル、スピロ結合複素環(ヘテロアリールを除く)、縮合シクロアルキル、縮合シクロアルケニル、縮合複素環、または縮合アリールを含み、ここで、前記シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、およびアリールの置換基は、それ自体が随意に置換されてもよい。
【0131】
「複素環」と「複素環式」という用語は、少なくとも1つの炭素原子含有環に少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族(すなわち、「ヘテロアリール」)環状基(例えば、4~7員単環式、7~11員二環式、または8~16員三環式の環系)を含む、完全飽和状態、または部分不飽和か完全不飽和の状態を指す。ヘテロ原子を含む複素環式基の各環は、窒素原子、酸素原子、および/または硫黄原子から選択される1、2、3、または4つのヘテロ原子を有していてもよく、ここで、窒素と硫黄のヘテロ原子は随意に酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は随意に四級化されてもよい(「ヘテロアリール」という用語は、第四級窒素原子を有するヘテロアリール基を指すため、正電荷を有する)。複素環式基は、環または環系の任意のヘテロ原子または炭素原子にある分子の残りの部分に結合していてもよい。例示的な単環式複素環基として、アゼチジニル、ピロリジニル、ピロリル、ピラゾリル、オキセタニル、ピラゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソキサゾリニル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、フリル、テトラヒドロフリル、チエニル、オキサジアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロロジニル、2-オキソアゼピニル、アゼピニル、ヘキサヒドロジアゼピニル、4-ピペリドニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニルなどが挙げられる。例示的な二環式複素環基として、インドリル、イソインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾ[d][1,3]ジオキソリル、2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシニル、キヌクリジニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフリル、ベンゾフラザニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、フロピリジニル(フロ[2,3-c]ピリジニル、フロ[3,2-b]ピリジニル、またはフロ[2,3-b]ピリジニルなど)、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロキナゾリニル(3,4-ジヒドロ-4-オキソキナゾリニル)、トリアジニルアゼピニル、テトラヒドロキノリニルなどが挙げられる。例示的な三環式複素環基として、カルバゾリル、ベンジドリル、フェナントロリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニルなどが挙げられる。
【0132】
「置換複素環」および「置換複素環式」(「置換ヘテロアリール」など)という用語は、任意の利用可能な結合点において、1つ以上の置換基、好ましくは1~4個の置換基で置換される複素環または複素環式基を指す。例示的な置換基としては、以下、水素、ハロゲン(例えば、単一のハロゲン置換基または複数のハロ置換基、後者の場合、CF3、またはCCl3を有するアルキル基などの基)、シアノ、ニトロ、オキソ(すなわち、=O)、CF3、OCF3、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、アリール、ORa、SRa、S(=O)Re、S(=O)2Re、P(=O)2Re、S(=O)2ORe、P(=O)2ORe、NRbRc、NRbS(=O)2Re、NRbP(=O)2Re、S(=O)2NRbRc、P(=O)2NRbRc、C(=O)ORd、C(=O)Ra、C(=O)NRbRc、OC(=O)Ra、OC(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORe、NRdC(=O)NRbRc、NRdS(=O)2NRbRc、NRdP(=O)2NRbRc、NRbC(=O)Ra、またはNRbP(=O)2Reのうち1つ以上が挙げられるがこれらには限定されず、Raの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールであり、Rb、Rc、およびRdの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、複素環、アリールであり、前記RbとRcは、それらが結合するNと一体となって複素環を随意に形成し、Reの各出現は独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、またはアリールである。例示的な置換基は、それ自体が随意に置換されてもよい。例示的な置換基はまた、任意の利用可能な結合点にスピロ結合または縮合環式置換基、特にスピロ結合シクロアルキル、スピロ結合シクロアルケニル、スピロ結合複素環(ヘテロアリールを除く)、縮合シクロアルキル、縮合シクロアルケニル、縮合複素環、または縮合アリールを含み、ここで、前記シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、およびアリールの置換基は、それ自体が随意に置換されてもよい。
【0133】
用語「アルキルアミノ」は、構造-NHR’を有する基を指し、R’は本明細書で定義されるように、水素、アルキルもしくは置換アルキル、またはシクロアルキルもしくは置換シクロアルキルである。アルキルアミノ基の例として、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、iso-プロピルアミノ、シクロプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、tert-ブチルアミノ、ネオペンチルアミノ、n-ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、シクロヘキシルアミノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
用語「ジアルキルアミノ」は、構造-NRR’を有する基を指し、RとR’はそれぞれ独立して、アルキルもしくは置換アルキル、シクロアルキルもしくは置換シクロアルキル、シクロアルケニルもしくは置換シクロアルケニル、アリールもしくは置換アリール、またはヘテロシリルもしくは置換ヘテロシクリルである。RとR’は、ジアルキアミノ部分において同じでも異なってもよい。ジアルキルアミノ基の例として、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルプロピルアミノ、ジ(n-プロピル)アミノ、ジ(iso-プロピル)アミノ、ジ(シクロプロピル)アミノ、ジ(n-ブチル)アミノ、ジ(tert-ブチル)アミノ、ジ(ネオペンチル)アミノ、ジ(n-ペンチル)アミノ、ジ(ヘキシル)アミノ、ジ(シクロヘキシル)アミノなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、RおよびR’は結合することで環状構造を形成する。その結果生じる環状構造は、芳香族または非芳香族でもよい。環状ジアミノアルキル基の例として、アジリジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピロリル、イミダゾリル、1,3,4-トリアノリル、およびテトラゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、塩素、臭素、フッ素、またはヨウ素を指す。
【0136】
特に示されない限り、原子価が十分でない任意のヘテロ原子は、その原子価を満たすのに十分な水素原子を持つと仮定される。
【0137】
本発明の化合物はまた、本発明の範囲内にも含まれる塩を形成することができる。本発明の化合物への言及は、特に示されない限り、その塩への言及を含むことが理解される。本明細書では、「塩」という用語は、無機および/または有機の酸および塩基で形成される、酸性塩および/または塩基性塩を表す。加えて、本発明の化合物が、限定されないがピリジンやイミダゾールなどの塩基性部分と、カルボン酸などの酸性部分との両方を含む場合、両性イオン(「内塩」)が形成されてもよく、これは本明細書中の用語「塩」の中に含まれるものである。薬学的に許容可能な(すなわち、非毒性、生理学的に許容可能な)塩が好ましいが、他の塩も、例えば調製中に使用可能な単離工程または精製工程に有用である。本発明の化合物の塩は、例えば、塩が沈殿する培地、または水性培地において、本明細書に記載される化合物を当量の酸または塩基と反応させ、そして凍結乾燥することにより形成することができる。
【0138】
本発明の化合物は、限定されないがアミン、ピリジン、またはイミダゾール環などの塩基性部分を含むものであり、様々な有機酸および無機酸により塩を形成することができる。例示的な酸付加塩として、酢酸塩(酢酸またはトリハロ酢酸で形成されるもの、例えばトリフルオロ酢酸)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタノ酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩(例えば、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(例えば、2-ナフタレンスルホン酸塩)、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩(例えば、3-フェニルプロピオン酸塩)、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(硫酸で形成されたものなど)、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩等のトルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩などが挙げられる。
【0139】
本発明の化合物は、限定されないがカルボン酸などの酸性部分を含むものであり、様々な有機塩基および無機塩基で塩を形成することができる。例示的な塩基性塩として、アンモニウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ベンザチンなどの有機塩基(例えば、有機アミン)を含む塩、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン(N,N-ビス(デヒドロアビエチル)エチレンジアミンで形成)、N-メチル-D-グルカミン、N-メチル-D-グリカミド、t-ブチルアミン、アルギニンやリジンなどのアミノ酸を含む塩などが挙げられる。塩基性窒素含有基は、低級ハロゲン化アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物、ならびにヨウ化物)、ジアルキル硫酸塩(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミルの硫酸塩)、長鎖ハロゲン化物(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリルの塩化物、臭化物、ならびにヨウ化物)、ハロゲン化アラルキル(例えば、ベンジルおよびフェネチルの臭化物)などの薬剤で四級化されてもよい。
【0140】
本発明の化合物のプロドラッグと溶媒和物も、本明細書で企図される。本明細書では、「プロドラッグ」という用語は、被験体への投与に際して、代謝プロセスまたは化学プロセスにより化学変換を受けて、本明細書に記載されるような化合物またはその塩および/もしくは溶媒和物を産生する化合物を表す。本発明の化合物の溶媒和物として、例えば水和物が挙げられる。ある実施形態では、本明細書に記載されるような化合物は、プロドラッグそのものであってもよく、被験体への投与に際して、代謝プロセスまたは化学プロセスにより化学変換を受けて、望ましい生物活性を持つ化合物またはその塩および/もしくは溶媒和物を産生する。
【0141】
本発明の化合物、およびその塩または溶媒和物は、それらの互変異性形態(例えば、アミドエーテルまたはイミノエーテルとして)で存在してもよい。そのような互変異性体形態はすべて、本発明の一部として本明細書で企図される。
【0142】
エナンチオマー形態およびジアステレオマー形態を含む、本発明の化合物の立体異性体(例えば、様々な置換基上での不斉炭素のために存在し得るもの)はすべて、本発明の範囲内で企図されている。本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体を実質的に含まなくてもよく(例えば、特定の活性を持つ純粋なまたは実質的に純粋な光学異性体として)、または、例えばラセミ体として、もしくは他のすべての立体異性体か他の選択された立体異性体と混合されてもよい。本発明のキラル中心は、International Union of Pure and Applied Chemistry(IUPAC)1974 Recommendationに定義されるようなSまたはR配置を有してもよい。ラセミ体は、例えば分別結晶化、ジアステレオマー誘導体の分離もしくは結晶化、またはキラルカラムクロマトグラフィーによる分離などの物理的方法によって分解することができる。個々の光学異性体は、例えば光学活性酸による塩形成、続いて結晶化などの従来の方法を含むが、これらに限定されない任意の適切な方法により、ラセミ体から得ることができる。
【0143】
本発明の化合物は、調製後に単離および精製されて、化合物(「実質的に純粋な」化合物)の90%以上、例えば95%以上、99%以上の重量を含む組成物をもたらすことが好ましく、この組成物は後に本明細書に記載されるように使用または製剤される。本発明のこのような「実質的に純粋な」化合物も、本発明の一部として本明細書に企図される。
【0144】
本発明の化合物の立体配置異性体はすべて、混合物、または純粋か実質的に純粋な形態にあるものと企図される。本発明の化合物の定義は、シス(Z)およびトランス(E)アルケン異性体、ならびに環状炭化水素環または複素環のシスおよびトランス異性体の両方を包含する。
【0145】
本明細書全体を通じて、基とその置換基は、安定な部分および化合物を提供するように選択されてもよい。
【0146】
特定の官能基と化学用語の定義は、以下でより詳細に記載される。本発明の目的では、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Edの裏表紙に従い同定され、特定の官能基は通常、本明細書で記載されるように定義される。加えて、有機化学の一般原則、ならびに特定の機能部分と反応性は、“Organic Chemistry,”Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito(1999)に記載されており、その全内容は参照により本明細書で引用される。
【0147】
本発明のある化合物は、特定の幾何学的または立体異性の形態で存在してもよい。本発明は、本発明の範囲内にあるように、シスおよびトランス異性体、RおよびSエナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、それらのラセミ混合物、ならびにそれらの他の混合物を含む、そのような化合物すべてを企図している。その他の不斉炭素原子がアルキル基などの置換基に存在してもよい。そのような異性体すべて、ならびにその混合物も、本発明に含まれることが企図されている。
【0148】
様々な異性体比の何れかを含む異性体混合物が、本発明に従って利用されてもよい。例えば、2つの異性体のみを併用する場合、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10、95:5、96:4、97:3、98:2、99:1、または100:0の異性体比を含む混合物はすべて、本発明により企図される。当業者は、同様の比がより複雑な異性体混合物に対して企図されることを容易に認識するであろう。
【0149】
本発明は同位体的に標識された化合物も含む。この化合物は、1つ以上の原子が、通常は自然に見つかる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を持つ原子で置換されるという事実を除いて、本明細書に開示される化合物と同一である。本明細書の化合物に組み込み可能な同位体の例として、それぞれ2H、3H、13C、11C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、および塩素の同位体が挙げられる。本発明の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、もしくは薬学的に許容可能な塩、もしくは溶媒和物は、前述の同位体および/または他の原子の同位体を含むものであり、本発明の範囲内に含まれる。本発明のある同位体的に標識された化合物、例えば、3Hや14Cなどの放射性同位体が組み込まれる化合物は、薬物および/または基質組織の分布アッセイに有用である。トリチウム化された、すなわち3H、および炭素-14、すなわち14Cの同位体は、それらの調製の容易性と検出性に対して特に好まれている。さらに、重水素などのより重い同位体、すなわち2Hでの置換により、より大きな代謝安定性、例えばインビボ半減期の増加や投与量の減少から生じる特定の治療上の利点が提供され、したがって、いくつかの状況で好ましい場合がある。同位体的に標識された化合物は通常、以下のスキームおよび/または実施例に開示される手順を実行し、容易に入手可能な同位体的に標識された試薬を非同位体的に標識された試薬と置き換えることにより、調製することができる。
【0150】
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが望まれる場合、不斉合成、またはキラル補助基による誘導によりこのエナンチオマーを調製することができる。この場合、結果として生じるジアステレオ異性混合物は分離され、望ましい純粋なエナンチオマーを得るために補助基が切断される。代替的に、分子がアミノなどの塩基性官能基、またはカルボキシルなどの酸性官能基を含む場合、ジアステレオマー塩は、適切な光学的に活性な酸または塩基、その後に当該技術分野で周知の分別結晶またはクロマトグラフィー法により形成されたジアステレオマーの分解、続いて純粋なエナンチオマーの回収により形成される。
【0151】
本明細書に記載されるような化合物は、任意数の置換基または機能性部分で置換されてもよいことが理解される。全体として、「随意に」という用語が先行するか否かにかかわらず「置換された」という用語、および本発明の式に含まれる置換基は、特定の置換基の水素ラジカルを持つ所与の構造内での水素ラジカルの置換を指す。任意の所与の構造内の複数の位置が特定の基から選択される複数の置換基で置換される場合、置換基は、すべての位置で同一でも異なってもよい。本明細書で使用されるように、用語「置換された」は、有機化合物の許容可能な置換基すべてを含むことが企図されている。広範な態様では、許容可能な置換基として、有機化合物の非環式および環式の置換基、分枝および未分枝の置換基、炭環式および複素環式の置換基、芳香族および芳香族の置換基が挙げられる。本発明の目的では、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、および/または、ヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載される有機化合物の許容可能な置換基を有してもよい。さらに本発明は、任意の様式で有機化合物の許容可能な置換基に限定されるものではない。本発明が想定する置換基と変数の組み合わせは、例えば感染症または増殖性障害の処置に有用である安定な化合物の形成をもたらすものであるのが好ましい。本明細書では、「安定」という用語は、製造を可能にするのに十分な安定性を持ち、検出されるのに十分な期間、好ましくは本明細書に詳述される目的に有用とされる十分な期間にわたりその完全性を維持する化合物を指すことが好ましい。
【0152】
本明細書では、STAT3の阻害剤という用語は、STAT3が分子に結合する能力および/またはリン酸化される能力を含む、1つ以上の活動を実行するためにSTAT3の活性を少なくとも部分的に妨げる、1つ以上の分子を指す。
【0153】
本明細書では、用語「薬学的に許容可能な」は、適切な医学的良識の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題や合併症なしのヒトと動物の組織に接触して使用するのに適しており、合理的なベネフィット・リスク比と釣り合っている、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すように利用される。
【0154】
本明細書では、用語「癌」、および同等に「腫瘍」は、宿主由来の異常複製細胞が被験体に検出可能な量で存在する疾病を指す。癌は悪性または非悪性の癌であってもよい。癌または腫瘍として、胆道癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、絨毛癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、上皮内新生物、白血病、リンパ腫、肝臓癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、黒色腫、神経芽細胞腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎(腎臓)癌、肉腫、皮膚癌、精巣癌、甲状腺癌、その他の癌腫、および肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。癌は原発性または転移性でもよい。
【0155】
本明細書では、用語「癌を患うリスクがある」は、過去、現在、または将来の因子により癌を患う可能性がある患者を指す。これら因子には、患者歴、家族歴、BRACA-1やCEAなどの一般的か組織特異的な癌のマーカーの同定、年齢、人種、食事、喫煙の有無、または化学物質か放射線被ばくなどのある種の暴露が含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
本明細書では、用語「筋肉消耗を患うリスクがある」は、強度レベルが通常よりも低い、筋肉が少なすぎる、筋肉の損失を有するリスクがある個体、例えばそのような症状を伴う基礎的な医学的状態を患う個体、または高齢者である個体を指す。
【0157】
本明細書では、用語「悪質液を患うリスクがある」は、過去、現在、または将来の因子により悪質液を患う可能性がある個体を指す。ある実施形態では、悪液質を患うリスクのある個体は、少なくとも1つの症状として悪液質を引き起こすか、または悪液質に関連することが知られている基礎疾病を患う個体である。この疾病は慢性であっても、そうでなくてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの症状として悪液質を患うことが知られている基礎的な医学的状態として、少なくとも腎不全、癌、AIDS、HIV感染症、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫を含む)、多発性硬化症、うっ血性心不全、結核、家族性アミロイド多発性神経障害、先端性不全症、ホルモン欠乏症、代謝性アシドーシス、感染症、慢性膵炎、自己免疫疾患、セリアック病、クローン病、電解質不均衡、アジソン病、敗血症、熱傷、外傷、発熱、長骨骨折、甲状腺機能亢進症、長期ステロイド療法、手術、骨髄移植、非定型肺炎、ブルセラ症、心内膜炎、B型肝炎、肺膿瘍、肥満細胞症、腫瘍周囲症候群、結節性多発動脈炎、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、筋炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、リウマチ性疾患、自己免疫疾患、コラーゲン血管疾患、内臓リーシュマニア症、長期安静、および/または、アンフェタミン、アヘン、バルビツレートなどの薬物中毒が挙げられる。
【0158】
本明細書では、用語「線維症を患うリスクがある」は、過去、現在、または将来の因子により線維症を患う可能性がある個体を指す。
【0159】
本明細書では、用語「哺乳動物」は、本発明の方法に適切な被験体である。哺乳動物は、ヒトを含む高等脊椎動物分類の哺乳動物の任意のメンバーであってもよく、子に給餌するために乳を分泌するメスの出生、体毛、および乳腺機能を特徴とする。さらに哺乳動物は、気候条件の変化にかかわらず一定の体温を維持する能力を特徴とする。哺乳動物の例として、ヒト、ネコ、イヌ、ウシ、マウス、ラット、チンパンジーが挙げられる。哺乳動物は、「患者」、「被験体」、または「個体」と呼ばれてもよい。
【0160】
本明細書では、「有効量」は、所望の成果を達成または促進するのに必要であるか、またはそれに十分な任意の量を指す。いくつかの例では、有効量は治療上有効な量である。治療上有効な量は、被験体に所望の生物学的応答を促進または達成するのに必要であるか、またはそれに十分な任意の量である。任意の特定用途向けの有効量は、処置される疾患もしくは疾病、投与される特定の薬剤、被験体の大きさ、または疾患もしくは状態の重篤度などの因子に応じて変更することができる。当業者は、過度の実験を必要とすることなく特定の薬剤の有効量を経験に基づき決定することができる。
【0161】
化合物
一態様では、式Iの化合物、
【0162】
【化8】
またはその薬学的に許容可能な塩が記載され、式中、
R
1の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、C(=O)R
a、OC(=O)R
a、C(=O)OR
a、NR
bR
c、NR
bC(=O)R
c、C(=O)NR
bR
c、NR
bC(=O)OR
c、OC(=O)NR
bR
c、NR
aC(=O)NR
bR
c、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換された複素環であり、
n
1は0、1、2、3、または4であり、
R
2の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、C(=O)R
a、OC(=O)R
a、C(=O)OR
a、NR
bR
c、NR
bC(=O)R
c、C(=O)NR
bR
c、NR
bC(=O)OR
c、OC(=O)NR
bR
c、NR
aC(=O)NR
bR
c、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、随意に置換されたアリール、随意に置換されたアリールオキシ、または随意に置換された複素環であり、
n
2は0、1、2、3、4、または5であり、
R
3は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、OC(=O)R
a、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、または随意に置換されたアリールもしくはヘテロアリールであり、
R
4は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、NR
bR
c、OC(=O)R
a、アルキル、アルケニル、またはシクロアルキルであり、
R
5、R
6、およびR
7の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、C(=O)R
a、OC(=O)R
a、C(=O)OR
a、NR
bR
c、NR
bC(=O)R
c、C(=O)NR
bR
c、NR
bC(=O)OR
c、OC(=O)NR
bR
c、NR
aC(=O)NR
bR
c、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換された複素環であり、
n
3は0、1、2、3、または4であり、ならびに
R
a、R
b、およびR
cの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、もしくはアリールであり、または前記R
bとR
cは、それらが結合する窒素原子と一体となって、1~4のヘテロ原子を含む複素環を随意に形成する。
【0163】
いくつかの実施形態では、R1の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF3、OCF3、ORa、またはSRaである。いくつかの実施形態では、R1の各出現は独立して、C(=O)Ra、OC(=O)Ra、C(=O)ORa、NRaRb、NRbC(=O)Ra、C(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORa、OC(=O)NRbRc、またはNRaC(=O)NRbRcである。いくつかの実施形態では、R1の各出現は独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換された複素環である。いくつかの実施形態では、R1はH、Me、Et、Pr、i-Pr、Bu、またはi-Buである。いくつかの実施形態では、R1は、H、OH、SH、NH2、CF3、またはOCF3である。いくつかの実施形態では、R1はHである。
【0164】
いくつかの実施形態では、n1は、0、1、または2である。いくつかの実施形態では、n1は1である。いくつかの実施形態では、n1は0である。いくつかの特定の実施形態では、R1はHであり、n1は0である。
【0165】
いくつかの実施形態では、R2の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF3、OCF3、ORa、またはSRaである。いくつかの実施形態では、R2の各出現は独立して、C(=O)Ra、OC(=O)Ra、C(=O)ORa、NRaRb、NRbC(=O)Ra、C(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORa、OC(=O)NRbRc、またはNRaC(=O)NRbRcである。いくつかの実施形態では、R2の各出現は独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換された複素環である。いくつかの実施形態では、R2はH、Me、Et、Pr、i-Pr、Bu、またはi-Buである。いくつかの実施形態では、R2は、H、OH、SH、NH2、CF3、またはOCF3である。いくつかの実施形態では、R2はHである。
【0166】
いくつかの実施形態では、R1とR2は共にHである。
【0167】
いくつかの実施形態では、n2は、0、1、または2である。いくつかの実施形態では、n2は1である。いくつかの実施形態では、n2は0である。いくつかの特定の実施形態では、R2はHであり、n2は0である。
【0168】
いくつかの実施形態では、R3は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、またはCF3である。いくつかの実施形態では、R3はOCF3、ORa、SRa、またはOC(=O)Raである。いくつかの実施形態では、R3はアルキル、アルケニル、またはシクロアルキルである。いくつかの実施形態では、R1はH、Me、Et、Pr、i-Pr、Bu、またはi-Buである。いくつかの実施形態では、R3はHである。
【0169】
いくつかの実施形態では、R4は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、またはORaである。いくつかの実施形態では、R4はOCF3、SRa、またはOC(=O)Raである。いくつかの実施形態では、R4はアルキル、アルケニル、またはシクロアルキルである。いくつかの実施形態では、R4はH、Me、Et、Pr、i-Pr、Bu、またはi-Buである。いくつかの実施形態では、R2は、H、OH、SH、NH2、CF3、またはOCF3である。いくつかの実施形態では、R4はOHである。
【0170】
いくつかの実施形態では、R5は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、およびCF3からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R5は、OCF3、ORa、およびSRaからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R5は、C(=O)Ra、OC(=O)Ra、C(=O)ORa、NRaRb、NRbC(=O)Ra、C(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORa、OC(=O)NRbRc、およびNRaC(=O)NRbRcからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R5は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、および随意に置換された複素環からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R5はH、Me、Et、Pr、i-Pr、Bu、またはi-Buである。いくつかの実施形態では、R5は、H、OH、SH、NH2、CF3、またはOCF3である。いくつかの実施形態では、R5はHである。
【0171】
いくつかの実施形態では、R6は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、およびCF3からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R6は、OCF3、ORa、およびSRaからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R6は、C(=O)Ra、OC(=O)Ra、C(=O)ORa、NRaRb、NRbC(=O)Ra、C(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORa、OC(=O)NRbRc、およびNRaC(=O)NRbRcからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R6は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、および随意に置換された複素環からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R6はH、Me、Et、Pr、i-Pr、Bu、またはi-Buである。いくつかの実施形態では、R6は、H、OH、SH、NH2、CF3、またはOCF3である。いくつかの実施形態では、R6はHである。
【0172】
いくつかの実施形態では、R7の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、およびCF3からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R7の各出現は独立して、OCF3、ORa、およびSRaからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R7の各出現は独立して、C(=O)Ra、OC(=O)Ra、C(=O)ORa、NRaRb、NRbC(=O)Ra、C(=O)NRbRc、NRbC(=O)ORa、OC(=O)NRbRc、およびNRaC(=O)NRbRcからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R7の各出現は独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、および随意に置換された複素環からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R7の各出現は独立して、H、Me、Et、Pr、i-Pr、Bu、またはi-Buである。いくつかの実施形態では、R7の各出現は独立して、H、OH、SH、NH2、CF3、またはOCF3である。いくつかの実施形態では、R7はHである。
【0173】
いくつかの実施形態では、R5、R6、およびR7の各出現はHである。
【0174】
いくつかの実施形態では、n3は、0、1、または2である。いくつかの実施形態では、n3は1である。いくつかの実施形態では、n3は0である。
【0175】
いくつかの実施形態では、Raの各出現は独立して、水素、アルキル、複素環、またはアリールである。いくつかの実施形態では、Raの各出現は独立して、水素またはアルキルである。いくつかの実施形態では、Raの各出現は独立して、H、Me、Et、Pr、i-Pr、Bu、またはi-Buである。
【0176】
いくつかの実施形態では、RbとRcの各出現は独立して、水素、アルキル、複素環、またはアリールである。いくつかの実施形態では、RbとRcの各出現は独立して、水素またはアルキルである。
【0177】
他の実施形態では、RbとRcは、それらが結合する窒素原子と一体となって、N、O、およびSからなる群から各々選択されるヘテロ原子1~4個を随意に形成する。他の実施形態では、RbとRcは、それらが結合する窒素原子と一体となって、随意に置換されたモルホリン、ピペリジン、またはピペラジンを形成する。
【0178】
いくつかの実施形態では、前記化合物は、式IIの構造
【0179】
【化9】
またはその薬学的に許容可能な塩を有する。
【0180】
いくつかの実施形態では、R2はH、OH、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、NRbRc、CF3、OCF3、またはCNである。いくつかの実施形態では、R2はNH2、OH、OMe、OEt、OCH2CH2CH3、またはOCH(CH3)2である。いくつかの実施形態では、R2は、水素、メチル、エチル、プロピル、tert-ブチル、F、Cl、Br、CF3、ニトロ、OMe、OEt、OCF3、-C(=O)Me、-C(=O)OMe、-NHC(=O)Me、1,4-ジオキサニル、シクロヘキサニル、シクロヘキセニル、フェノキシ、2-メトキシフェノキシ、3-メトキシフェノキシ、4-メトキシフェノキシ、2-クロロフェノキシ、3-クロロフェノキシ、4-クロロフェノキシ、2-メチルフェノキシ、3-メチルフェノキシ、および4-メチルフェノキシからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R2は、OMe、OEt、OPr、OBu、またはO-iBuである。いくつかの実施形態では、R2はOMeである。
【0181】
いくつかの実施形態では、R3は、H、OH、アルキル、アルコキシ、またはハロゲンである。いくつかの実施形態では、R3はH、Me、Et、Pr、i-Pr、Bu、またはi-Buである。いくつかの実施形態では、R3はHである。
【0182】
いくつかの実施形態では、R4は、H、アルキル、OH、NH2、アルコキシ、ハロゲン、CF3、またはCNである。いくつかの実施形態では、R4は、H、OH、またはアルコキシである。いくつかの実施形態では、R4はOHである。いくつかの実施形態では、R4はHである。
【0183】
いくつかの実施形態では、前記化合物は、式IIIの構造
【0184】
【化10】
またはその薬学的に許容可能な塩を有する。
【0185】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、表1aに示される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の例から選択される。表1aに列挙された化合物は、式Iの化合物の代表例と非限定的な例である。
【0186】
【0187】
【0188】
いくつかの実施形態では、式IIの化合物は、表1bに示される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の例から選択される。表1bに列挙された化合物は、式IIの化合物の代表例と非限定的な例である。
【0189】
【0190】
【0191】
調製方法
略称
ACN アセトニトリル
EA 酢酸エチル
DMF ジメチルホルムアミド
PE 石油エーテル
DCM ジクロロメタン
THF テトラヒドロフラン
HOBT 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
EDCI 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
HBTU 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HATU N-[(ジメチルアミノ)(3H-1,2,3-トリアゾロ(4,4-b)ピリジン-3-イルオキシ)メチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェート
PyBOP 1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
BOPCl ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィンクロリド
BOP ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジエチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
TEA トリエチルアミン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMAP 4-ジメチルアミノピリジン
PCC クロロクロム酸ピリジニウム
PDC 二クロム酸ピリジニウム
NBS N-ブロモスクシンイミド
NCS N-クロロスクシンイミド
NIS N-ヨードスクシンイミド
9-BBN 9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン
TsOH p-トルエンスルホン酸
TFA トリフルオロアセトアミド
CDI カルボニルジイミダゾール
【0192】
以下は、本発明の化合物を作るための一般的な合成スキームである。これらスキームは例示的なものであり、当業者が本明細書に開示される化合物を作るために使用できる技術に限定されることを意味するものではない。当業者には様々な方法が明白であろう。さらに、合成の様々な工程は、所望の化合物を得るために代替的な順序または序列で実施されてもよい。以下の反応は例示的なものであるが、本明細書に開示される出発原料および化合物の一部の調製に限定されるものではない。
【0193】
以下のスキーム1~4は式Iの構造を有する化合物の合成に使用可能なものであり、その中で、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、n1、n2、およびn3が、本明細書に開示される実施形態のいずれかに従って定められる。式IIとIIIの化合物は式Iに包含されるため、これら化合物は、スキーム1~4に記載されるのと同じ方法を使用して調製することができる。これら方法に対する様々な変更が、以下に示す同様の結果を達成するために当業者により想定されてもよい。スキーム1~4に記載される方法に使用される出発原料と試薬は、市販のものであるか、または当該技術分野で既知の方法により調製することができる。スキーム1~4に記載の反応は、低温(例えば、0℃)、室温、または加熱条件下(例えば、50、60、70、80、90、もしくは100℃、または使用される溶媒の還流温度)で実行されてもよい。
【0194】
【0195】
ある実施形態では、スキーム1の工程aに示すように、アミノナフテレンXをフェニルスルホニル塩化物XIと反応させることでスルホンアミドXIIが得られる。アミノナフテレンX以外にも、アミノナフテレンXの任意の塩を出発原料として使用することもできる。塩の非限定的な例として、HCl、H2SO4、HNO3、もしくはHac塩、またはその他当該技術分野で既知の任意の塩が挙げられる。任意の適切な塩基、有機物、または無機物が、工程aに使用されてもよい。適切な塩基の非限定的な例として、CH3COONa、Na2CO3、K2CO3、NaOH、KOH、CsOH、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、およびジイソプロピルエチルアミンが挙げられる。この反応に適した溶媒の非限定的な例として、DMSO、エタノール、水、THF、塩化メチレン、アセトニトリル、クロロホルム、またはトルエンが挙げられる。
【0196】
【0197】
ある実施形態では、スキーム2の工程bに示すように、得られたスルホンアミドXIIを1つ以上の酸化剤により参加することで、イミノナフタレノンXIIIを得る。この反応に適した酸化剤の非限定的な例として、NaIO4、H2O2、およびMCPBAが挙げられる。この反応に適した溶媒の非限定的な例として、DMSO、エタノール、水、THF、塩化メチレン、アセトニトリル、クロロホルム、またはトルエンが挙げられる。
【0198】
【0199】
ある実施形態では、スキーム3の工程cに示すように、得られたイミノナフタレノンXIIIをナフタレンXIVと結合させることで式Ixの化合物を得る。1つ以上のルイス酸を使用してこの結合反応を促してもよい。この反応に適したルイス酸の非限定的な例として、BF3、FeCl2、FeCl3、CuCl2、およびAlCl3が挙げられる。この反応に適した溶媒の非限定的な例として、DMSO、エタノール、水、THF、塩化メチレン、アセトニトリル、クロロホルム、およびトルエンが挙げられる。
【0200】
【0201】
ある実施形態では、スキーム4の工程dに示すように、得られた式Ixの化合物を1つ以上の酸化剤等により酸化して式Iの化合物を得る。この反応に適切な酸化剤の非限定的な例として、NaIO4、H2O2、およびMCPBAが挙げられる。この反応に適した溶媒の非限定的な例として、DMSO、エタノール、水、THF、塩化メチレン、アセトニトリル、クロロホルム、またはトルエンが挙げられる。
【0202】
ゆえに、また別の態様では、式Iの化合物を作る方法が開示され、該方法は、工程aで酸化試薬を用いて前記式Iの化合物を形成するために式Ixの化合物を酸化する工程を含み、
【0203】
【化15】
式中、
R
1の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、C(=O)R
a、OC(=O)R
a、C(=O)OR
a、NR
bR
c、NR
bC(=O)R
c、C(=O)NR
bR
c、NR
bC(=O)OR
c、OC(=O)NR
bR
c、NR
aC(=O)NR
bR
c、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換された複素環であり、
n
1は0、1、2、3、または4であり、
R
2の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、C(=O)R
a、OC(=O)R
a、C(=O)OR
a、NR
bR
c、NR
bC(=O)R
c、C(=O)NR
bR
c、NR
bC(=O)OR
c、OC(=O)NR
bR
c、NR
aC(=O)NR
bR
c、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、随意に置換されたアリール、随意に置換されたアリールオキシ、または随意に置換された複素環であり、
n
2は0、1、2、3、4、または5であり、
R
3は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、OC(=O)R
a、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、または随意に置換されたアリールもしくはヘテロアリールであり、
R
4は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、NR
bR
c、OC(=O)R
a、アルキル、アルケニル、またはシクロアルキルであり、
R
5、R
6、およびR
7の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF
3、OCF
3、OR
a、SR
a、C(=O)R
a、OC(=O)R
a、C(=O)OR
a、NR
bR
c、NR
bC(=O)R
c、C(=O)NR
bR
c、NR
bC(=O)OR
c、OC(=O)NR
bR
c、NR
aC(=O)NR
bR
c、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、随意に置換されたアリール、または随意に置換された複素環であり、
n
3は0、1、2、3、または4であり、ならびに
R
a、R
b、およびR
cの各出現は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、もしくはアリールであり、または前記R
bとR
cは、それらが結合する窒素原子と一体となって、1~4のヘテロ原子を含む複素環を随意に形成する。
【0204】
いくつかの実施形態では、前記酸化試薬は、NaIO4、H2O2、MCPBA、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの特定の実施形態では、前記酸化試薬はNaIO4である。いくつかの実施形態では、NaIO4はインサイツで調製される。
【0205】
いくつかの実施形態では、前記酸化試薬は、式Ixの化合物に対して約1.5~4.0等量で使用される。いくつかの実施形態では、前記酸化試薬は、式Ixの化合物に対して約1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、もしくは4.0等量で、または、本明細書に開示される任意の2つの値により境界を定めた範囲の等量で使用される。
【0206】
いくつかの実施形態では、前記酸化試薬は、式Ixの化合物に対して約2.0~3.5等量で使用される。いくつかの実施形態では、前記酸化試薬は、式Ixの化合物に対して約2.5等量で使用される。
【0207】
いくつかの実施形態では、工程aは、約12時間~約2日間実施される。本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、工程aは約1日間実施される。
【0208】
いくつかの実施形態では、R1の各出現は独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF3、OCF3、ORa、またはSRaである。
【0209】
いくつかの実施形態では、R1の各出現はHである。
【0210】
いくつかの実施形態では、R2の各出現は独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF3、OCF3、ORa、またはSRaである
【0211】
いくつかの実施形態では、R2はHであり、n2は1である。
【0212】
いくつかの実施形態では、R3は、OCF3、ORa、SRa、OC(=O)Ra、アルキル、アルケニル、またはシクロアルキルである。いくつかの実施形態では、R3はHである。
【0213】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、式Iの化合物は、式IIIの構造
【0214】
【化16】
を有し、式Ixの化合物は、式IIIxの構造
【0215】
【0216】
STAT3を阻害し障害を処置する方法
また別の態様では、細胞中のSTAT3を阻害する方法が記載され、該方法は、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上に記載の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容可能な塩の有効量を前記細胞に送達する工程を含む。
【0217】
いくつかの実施形態では、前記細胞は哺乳動物の生体内に存在する。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、またはタスマニアデビルである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0218】
いくつかの実施形態では、前記細胞は癌細胞である。いくつかの実施形態では、前記方法は、癌細胞にアポトーシスを誘導する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、腫瘍中の血管新生を阻害する工程、抗腫瘍免疫媒介性細胞毒性を増強する工程、腫瘍増殖を減らす工程、哺乳動物の生存を改善する工程、STAT3リン酸化を阻害する工程、および/またはSTAT3の核から細胞質への転座を阻害する工程をさらに含む。
【0219】
いくつかの実施形態では、前記ヒトは、アルツハイマー病もしくは他の神経変性疾患によるアナフィラキシー、筋肉消耗、筋力低下、悪液質、喘息、潰瘍性大腸炎、非アルコール性脂肪肝疾患、線維症、脂肪肝炎、シャーガス心筋症、強皮症、高増殖性疾患、ウイルス感染症、骨髄異形成症候群、喘息、乾癬、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、強膜炎、多発性硬化症、移植片対宿主疾患、膵炎、肺リンパ管筋腫症、加齢黄斑変性症、アミロイドーシス、アストログリオーシス、またはこれらの組み合わせを患っている、それらを患っていることが分かっている、それらを患っている疑いがある、またはそれらを進行させるリスクがある。
【0220】
いくつかの実施形態では、前記高増殖性疾患は、頭頸部癌、肺癌、肝臓癌、乳癌、皮膚癌、腎臓癌、精巣癌、大腸癌、直腸癌、胃癌、転移性黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、骨癌、脾臓癌、胆嚢癌、脳癌、膵臓癌、胃癌、肛門癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、移植後リンパ増殖性疾患、再狭窄、骨髄異形成症候群、および白血病からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記白血病は急性骨髄性白血病である。
【0221】
いくつかの実施形態では、前記線維症は、肺線維症、骨髄線維症、腸線維症、膵臓線維症、関節線維症、肝線維症、後腹膜線維症、骨髄線維症、および真皮線維症からなる群から選択される。
【0222】
いくつかの実施形態では、前記ウイルス感染症は慢性ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、前記慢性ウイルス感染症は、AIDS、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、またはエプスタイン-バーウイルス感染症である。
【0223】
いくつかの実施形態では、前記障害は、喘息、乾癬、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、強膜炎、多発性硬化症、移植片対宿主疾患、膵炎、肺リンパ管筋腫症、加齢黄斑変性症、またはアミロイドーシスである。いくつかの実施形態では、前記アナフィラキシーはアナフィラキシーショックを含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、前記障害は、筋消耗、筋力低下、悪液質、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記ヒトは、筋消耗、悪液質、腎不全、癌、AIDS、HIV感染症、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫を含む)、多発性硬化症、うっ血性心不全、結核、家族性アミロイドポリニューロパチー、先端性不全症、ホルモン欠乏症、代謝性アシドーシス、感染性疾患、慢性膵炎、自己免疫疾患、セリアック病、クローン病、電解質不均衡、アジソン病、敗血症、火傷、外傷、発熱、長骨骨折、甲状腺機能亢進症、長期ステロイド療法、手術、骨髄移植、非定型肺炎、ブルセラ症、心内膜炎、B型肝炎、肺膿瘍、肥満細胞症、腫瘍周囲症候群、結節性多発動脈炎、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、内臓リーシュマニア症、長期安静、もしくは薬物中毒を患っているか、またはそれらを患うリスクがある。いくつかの実施形態では、前記慢性閉塞性肺疾患は肺気腫である。
【0225】
また別の態様では、哺乳動物種の障害を処置または予防する方法が記載され、該方法は、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の治療上有効な量を前記哺乳動物種に投与する工程を含み、前記障害は、神経変性疾患、アナフィラキシー、筋消耗、筋力低下、悪液質、喘息、潰瘍性大腸炎、非アルコール性脂肪肝疾患、線維症、脂肪肝炎、シャーガス心筋症、強皮症、高増殖性疾患、ウイルス感染症、骨髄異形成症候群、喘息、乾癬、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、強膜炎、多発性硬化症、移植片対宿主疾患、膵炎、肺リンパ管筋腫症、加齢黄斑変性症、アミロイドーシス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0226】
いくつかの実施形態では、前記哺乳動物種は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、またはヤギである。いくつかの実施形態では、前記哺乳動物種はヒトである。いくつかの実施形態では、前記ヒトは、障害を患っている、障害を患うリスクがある、または障害を患う疑いがある。
【0227】
本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上では、前記障害は、神経変性疾患、アナフィラキシー、筋肉消耗、筋力低下、悪液質、喘息、潰瘍性大腸炎、非アルコール性脂肪肝疾患、線維症、脂肪肝炎、シャーガス心筋症、強皮症、高増殖性疾患、ウイルス感染症、骨髄異形成症候群、喘息、乾癬、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、強膜炎、多発性硬化症、移植片対宿主疾患、膵炎、肺リンパ管筋腫症、加齢黄斑変性症、アミロイドーシス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記神経変性疾患は、化学療法誘発末梢神経障害、糖尿病性神経障害、または化学脳である。
【0228】
有効性のためのアッセイ
luminexビーズ、イムノブロッティング、またはelizaにより細胞の溶解物中の、または腫瘍サンプルの周辺血単核細胞および腫瘍細胞株(kasumi-1)の免疫組織化学により組織のスライド中のPY-STAT3分析物を測定するために、STAT3細胞阻害は、PY-STAT3抗体を使用して分析されてもよい。
【0229】
本発明は以下の実施例により詳しく説明され、この実施例は本発明の好ましい実施形態である。これら実施例は限定的ではなく例示的なものであり、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の趣旨と範囲内に含まれる他の実施形態が存在することもあることを理解されたい。
【0230】
医薬組成物
本発明はまた、本明細書に記載される化合物の少なくとも1つ、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0231】
また別の態様では、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つ以上に係る少なくとも1つの化合物、例えば、式I、II、もしくはIIIの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体もしくは希釈剤とを含む、医薬組成物が記載されている。
【0232】
本明細書では、句「薬学的に許容可能な担体」は、薬学的に許容可能な材料、組成物、またはビヒクルを、例えば液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、もしくは封入物質を意味するものであり、主題の医薬品を1つの器官または身体部分から、別の器官または身体部分へと運ぶか、または輸送することに関与する。各担体は、製剤の他の成分と適合性し、かつ患者に有害ではないという意味で、「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体として機能可能な材料の一部の例として、ラクトース、グルコース、スクロースなどの糖類;トウモロコシデンプンやジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;コアバターや座剤用ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、ひまわり油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ダイズ油などの油;ブチレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルやラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;ならびに医薬製剤に利用される他の適合可能な非毒性物質が挙げられる。「担体」という用語は、天然または合成の有機成分または無機成分を意味するものであり、これを有効成分と組み合わせることで適用が容易となる。医薬組成物の成分はまた、所望の医薬効率を実質的に損なう相互作用が存在しなくなるように、本発明の化合物と、および成分同士と混ざり合うことができる。
【0233】
上述のように、本医薬品のある実施形態は、薬学的に許容可能な塩の形態で提供されてもよい。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、この点で、本発明の化合物の比較的無毒な無機酸付加塩および有機酸付加塩を指す。これらの塩は、本発明の化合物の最終単離および精製中にインサイツで調製することができるか、または、遊離塩基形態にある本発明の精製化合物を適切な有機酸または無機酸と別々に反応させ、これにより形成された塩を単離することによって、調製することができる。代表的な塩として、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナプチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリルスルホン酸塩などが挙げられる(例えば、Berge et al.,(1977)“Pharmaceutical Salts,”,J.Pharm.Sci.66:1-19.を参照)。
【0234】
主題化合物の薬学的に許容可能な塩として、例えば非毒性の有機酸または無機酸由来の化合物の従来の非毒性塩または第四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、このような従来の非毒性塩として、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルファミン酸塩、リン酸塩、硝酸塩などの無機酸由来の塩、ならびに、酢酸塩、ブチオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、ステアリン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、パルミチン酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、フェニル酢酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、スルファニル酸塩、2-アセトキシ安息香酸塩、フマル酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンジスルホン酸塩、シュウ酸塩、イソチオン酸塩などの有機酸から調製される塩が挙げられる。
【0235】
他の場合、本発明の化合物は、1つ以上の酸性官能基を含有してもよく、ゆえに、薬学的に許容可能な塩基で薬学的に許容可能な塩を形成することができる。これらの例では、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、本発明の化合物の比較的無毒な無機塩基付加塩および有機塩基付加塩を指す。これらの塩は同様に、化合物の最終単離および精製中にインサイツで調製することができ、または、遊離酸形態にある精製化合物を、薬学的に許容可能な金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩などの適切な塩基と、アンモニアと、または薬学的に許容可能な有機第一級、第二級、第三級、または第四級アミンと別々に反応させることによって調製することができる。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類塩として、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩などが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用とされる代表的な有機アミンとして、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる(例えば、上記のBerge et alを参照)。
【0236】
ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、およびポリエチレンオキシド-ポリブチレンオキシド共重合体などの湿潤剤、乳化剤、および滑沢剤、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、香料、防腐剤、および酸化防止剤も、前記組成物中に含まれてもよい。
【0237】
本発明の製剤として、経口、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、直腸、経膣、および/または非経口の投与に適した製剤が挙げられる。前記製剤は単位剤形で都合よく提供することができ、薬学分野で周知のあらゆる方法により調製することができる。担体材料と組み合わせることで単一投与形態を産生することが可能な有効成分の量は、処置される宿主や特定の投与形態に応じて変更される。有効成分の量は、担体材料と組み合わせて単一剤形を産生可能な量であり、通常は治療効果をもたらす化合物の量でである。一般的に、この量は100%のうち、有効成分の約1%~約99%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約30%の範囲内にある。
【0238】
これら製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物を、前記担体、および必要に応じて1つ以上の副成分と会合させる工程を含む。一般に、前記製剤は、本発明の化合物を、液体担体、細かく分割された固形担体、またはその両方と均一かつ密接に会合させ、その後に必要に応じて産物を成形することにより調製される。
【0239】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(香味を付けたものを使用、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント)、粉末剤、顆粒剤、水性か非水性液体中の溶液もしくは懸濁液、水中油型か油中水型の液体エマルジョン、エリキシルかシロップ、芳香錠(ゼラチンおよびグリセリンなどの不活性塩基、またはスクロースおよびアカシアを使用)、および/またはうがい薬の形態であってもよく、これら各々には有効成分として本発明の化合物が所定量含まれている。本発明の化合物はまた、ボーラスざ剤、なめ薬、またはペースト剤として投与されてもよい。
【0240】
経口投与用の固形剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末剤、顆粒剤など)では、有効成分は、クエン酸ナトリウムやリン酸二カルシウムなどの1つ以上の薬学的に許容可能な担体、および/または、以下:デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤や増量剤;例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアなどの結合剤;グリセロールなどの保水剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモやタピオカのデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、炭酸ナトリウム、ナトリウムデンプングリコレートなどの崩壊剤;パラフィンなどの溶解遅延剤;第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;例えばセチルアルコール、グリセロールモノステアレート、ポリエチレンオキシド-ポリブチレンオキシド共重合体などの湿潤剤;カオリンやベントナイト粘土(bentonite clay)などの吸収性物質;滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、それらの混合物などの滑沢剤;ならびに着色料のいずれかと混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、医薬組成物は緩衝剤も含んでもよい。同様のタイプの固形組成物も、高分子量ポリエチレングリコールなどと同様にラクトースまたは乳糖などの賦形剤を使用して、充填済みのソフトまたはハードゼラチンカプセル剤中の充填剤として使用されてもよい。
【0241】
錠剤は随意に1つ以上の副成分と共に圧縮または成型により作られてもよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えばゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えばナトリウムデンプングリコラートまたは架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤、または分散剤を使用して調製されてもよい。成型錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械中で成型することにより作られてもよい。
【0242】
錠剤、ならびに糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤などの本発明の医薬組成物のその他固形剤形は、腸溶コーティングや、その他製剤分野で周知のコーティングといったコーティングおよびシェルを用いて随意に入手(scored)または調製されてもよい。これらはまた、所望の放出プロファイル、他のポリマーマトリクス、リポソーム、および/またはミクロスフェアを提供するために例えば様々な比率のヒドロキシブチルセルロースを使用して、中に含まれる有効成分の遅延放出または制御放出を行うように製剤されてもよい。これらは例えば、細菌保持フィルタによる濾過により、または滅菌固形組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより滅菌されてもよく、前記滅菌固形組成物は、使用の直前に滅菌水または他の滅菌注入可能な培地に溶けることができる。これらは随意に乳白剤を含有してもよく、有効成分のみを放出し、または優先的に随意に遅延が生じるよう胃腸管の特定部分で有効成分を放出する組成物であってもよい。使用可能な埋め込み用組成物の例として、高分子物質やワックスが挙げられる。有効成分はまた、適切な場合に上述の賦形剤のうち1つ以上を含むマイクロカプセル化形態であってもよい。
【0243】
本発明の化合物の経口投与用の液体剤形として、薬学的に許容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。この有効成分に加えて、前記液体剤形は、例えば、エチルアルコール、イソブチルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物といった、水などの溶媒、可溶化剤、および乳化剤など当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含んでもよい。さらに、シクロデキストリン、例えばヒドロキシブチル-β-シクロデキストリンは、化合物を可溶化するために使用されてもよい。
【0244】
不活性希釈剤に加えて、前記経口組成物はさらに、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、香料、および防腐剤などのアジュバントを含んでもよい。
【0245】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えばエトキシレート化(ethoxylated)イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステルとしての懸濁化剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガント、およびそれらの混合物を含んでもよい。
【0246】
直腸または膣内の投与用の本発明の医薬組成物の製剤は坐薬として提供されてもよい。この坐薬は、本発明の1つ以上の組成物を、例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、坐薬ワックス、またはサリチル酸塩を含む1つ以上の適切な非刺激性の賦形剤または担体と混合することにより調製されてもよいものであり、室温では固体であるが体温では液体であるため、直腸または膣の腔の中で溶けて本発明の活性医薬品を放出する。
【0247】
経膣投与に適した本発明の製剤はまた、当該技術分野で適切と知られている担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレーの製剤を含む。
【0248】
本発明の化合物の局所投与または経皮投与用の剤形として、粉末剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液、パッチ、および吸入薬が挙げられる。この活性化合物は、滅菌条件下で薬学的に許容可能な担体、および必要に応じて防腐剤、バッファー、または噴射剤と混合されてもよい。
【0249】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、およびゲル剤は、本発明の活性化合物に加えて、動物性脂肪、植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、および酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含有してもよい。
【0250】
粉末剤と噴霧剤は、本発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれら物質の混合物などの賦形剤を含有してもよい。噴霧剤はさらに、クロロフルオロ炭化水素(chlorofluorohydrocarbons)などの従来の噴射剤と、ブタンなどの揮発性の非置換型炭化水素とを含んでもよい。
【0251】
経皮パッチには、身体に本発明の化合物を制御送達するという付加的な利点がある。このような剤形は、医薬品を適切な媒体中で溶解または分散させることにより作ることができる。吸収促進剤も、皮膚全体にわたる本発明の医薬品の流束を増大させるために使用することができる。このような流束の速度は、速度制御膜を設けること、またはポリマーマトリックスかゲル内に化合物を分散させることにより制御することができる。
【0252】
眼用製剤、眼用軟膏剤、粉末剤、溶液なども、本発明の範囲内にあるものとして企図される。
【0253】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な滅菌等張水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液、もしくはエマルジョン、または使用の直前に注入可能な滅菌溶液もしくは分散液に再構成される滅菌粉末剤と組み合わせた状態で本発明の1つ以上の化合物を含んでおり、前記注入可能な滅菌溶液または分散液は、抗酸化剤、バッファー、静菌薬、意図したレシピエントの血液に製剤等張性を付与する溶質、懸濁化剤、または増粘剤を含んでいてもよい。
【0254】
場合によっては、薬物の効果を延ばすために、皮下注射または筋肉内注射による薬物の吸収を遅くすることが望ましい。この行為は、水溶解性が乏しい結晶材料または非晶質材料の液体懸濁液を使用することで達成されてもよい。薬物の吸収速度はその溶解速度に左右されるものであり、この溶解速度は結晶のサイズと形態に左右される場合がある。代替的に、非経口投与される薬物形態の遅延吸収は、薬物を油ビヒクルに溶解または懸濁することにより達成される。デポ注入を行う戦略の1つは、ビヒクルが室温で流体であり、体温で凝固するポリエチレン酸化物-ポリプロピレン酸化物共重合体の使用を含む。
【0255】
注射可能なデポー剤形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で主題の化合物のマイクロカプセルマトリクスを形成することにより作られる。薬物とポリマーとの比、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例として、ポリ(オルトエステル)やポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射製剤は、体組織に適合可能なリポソームまたはマイクロエマルジョン中で薬物を捕捉することによっても調製される。
【0256】
本発明の化合物は、ヒトおよび動物に医薬品として投与されると、それ自体で、または、例えば0.1%~99.5%(より好ましくは、0.5%~90%)の有効成分を薬学的に許容可能な担体と組み合わせて含んでいる医薬組成物として投与することができる。
【0257】
本発明の化合物と医薬組成物は併用療法に利用することができる。すなわち本発明の化合物と医薬組成物は、その他1つ以上の所望の治療処置または医療処置と同時に、その前に、またはその後に投与することができる。併用レジメンで利用される治療(治療薬または処置)の特定の組み合わせでは、所望の治療薬および/または処置の適合性、ならびに達成すべき所望の治療効果が考慮に入れられる。利用される治療により、同じ障害に対して所望の効果が達成されてもよい(例えば、本発明の化合物は、NSAIDS、DMARDS、ステロイド、または抗体療法薬などの生物学的製剤などであるがこれらに限定されない別の抗炎症剤または免疫抑制剤と同時に投与されてもよい)、または前記治療により異なる効果(例えば、任意の副作用の制御)を達成できることも理解されるであろう。
【0258】
本発明の化合物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、局所、経口、または他の許容可能な手段により投与されてもよい。前記化合物は、哺乳動物(例えば、ヒト、家畜、および家庭用動物)、競走馬、鳥類、トカゲ、および化合物に耐えることができる他の任意の他の生物の関節炎疾病を処置するために使用されてもよい。
【0259】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分の1つ以上を充填した1つ以上の容器を含む、医薬パックまたはキットを提供する。このような容器には随意に、医薬品またはバイオ製品の製造、使用、または販売を規制する政府機関により規定された形式の注意書きが付随されてもよい。その中では、ヒトへの投与のための製造、使用、または販売に関する政府機関による承認が反映されている。
【0260】
被験体への投与
本発明のいくつかの態様は、特定の成果を達成するために有効量の組成物を被験体に投与する工程を含む。ゆえに、本発明の方法に係る有用な小分子組成物は、医薬用途に適した任意の様式で製剤することができる。
【0261】
本発明の製剤は、薬学的に許容可能な濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合可能な担体、アジュバント、および随意に他の治療成分を日常的に含有してもよい、薬学的に許容可能な溶液に含まれた状態で投与される。
【0262】
治療上の使用のために、有効量の前記化合物は、化合物が適切な標的細胞によって取り込まれるのを可能にする任意の様式により被験体に投与することができる。本発明の医薬組成物を「投与すること」は、当業者に既知のあらゆる手段により達成することができる。具体的な投与経路として、経口、経皮(例えば、パッチを経由)、非経口注射(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内、髄腔内など)、または粘膜(鼻腔内、気管内、吸入、直腸内、膣内など)が挙げられるが、これらに限定されない。注射はボーラス注入または連続注入で行われてもよい。
【0263】
例えば本発明に係る医薬組成物は、静脈内、筋肉内、または他の非経口手段により投与されることが多い。前記医薬組成物はまた、鼻腔内投与、吸入、局所、経口、またはインプラントとして投与することができ、かつ直腸または膣への使用も可能である。適切な液体または固形の医薬調製形態は、例えば注射または吸入用の水溶液または生理食塩水であり、マイクロカプセル化されており、渦巻型化されており(encochleated)、微細金粒子上にコーティングされており、リポソーム中に含有されており、霧状化されており、エアロゾルであり、皮膚への移植用のペレットであり、または皮膚を切創可能な鋭利器具上で乾燥している。医薬組成物としては、顆粒剤、粉末剤、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル剤、坐剤、シロップ剤、エマルジョン、懸濁液、クリーム剤、点滴剤、または活性組成物の持続性放出を備える調製物も挙げられ、この調製物中で、上記のとおり、賦形剤および添加剤、および/または、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、滑沢剤、香味剤、甘味剤、または安定剤などの助剤が習慣的に使用される。医薬組成物は、種々の薬物送達系での使用に好適である。薬物送達に関する方法の簡単な概説については、参照により本明細書に組み込まれる、Langer R(1990)Science 249:1527-33を参照。
【0264】
本発明の方法に使用される組成物に含まれる化合物の濃度は、約1nM~約100μMの範囲であってもよい。有効投与量は、約10ピコモル/kg~約100マイクロモル/kgの範囲であると考えられる。
【0265】
医薬組成物は投薬ユニットで調製および投与されるのが好ましい。液体投薬ユニットは、注射または他の非経口投与用のバイアルまたはアンプルである。固形投薬ユニットは、錠剤、カプセル剤、粉末剤、および坐剤である。患者の処置のために、化合物の活性、投与方法、投与の目的(すなわち、予防目的か治療目的か)、障害の性質と重症度、患者の年齢と体重に応じて、異なる投与量が必要な場合もある。所与の投与量での投与は、個々の投薬ユニットの形態での単回投与により、またはそうでなければさらに小さな様々な投薬ユニットにより行うことができる。数日、数週間、または数か月といった特定の間隔での投与を繰り返しおよび複数回行うことも、本発明により企図される。
【0266】
前記組成物は、それ自体で(ニート(neat))、または薬学的に許容可能な塩の形態で投与することができる。医薬品に使用される場合、この塩は薬学的に許容可能でなければならないが、薬学的に許容不能な塩を都合よく使用してその薬学的に許容可能な塩を調製することができる。そのような塩として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸といった酸から調製される塩が挙げられるが、これらに限定されない。またこのような塩は、カルボン酸基のナトリウム塩、カリウム塩、またはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製することができる。
【0267】
好適な緩衝剤としては、酢酸および塩(1~2%w/v)、クエン酸および塩(1~3%w/v)、ホウ酸および塩(0.5~2.5%w/v)、ならびにリン酸および塩(0.2~2%w/v)が挙げられる。好適な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム(0.003~0.03%w/v)、クロロブタノール(0.3~0.9%w/v)、パラベン(0.01~0.25%w/v)、およびチメロサール(0.004~0.02%w/v)が挙げられる。
【0268】
非経口投与に適した組成物は、レシピエントの血液と等張な場合がある滅菌調製物水溶液を好都合に含む。許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル溶液、リン酸緩衝生理食塩水、および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌された固定油は、溶媒または懸濁媒体として慣用的に使用されている。この目的のために、合成モノ-グリセリドまたはジグリセリドを含む、任意のブランドの固定鉱物または非鉱物油を使用してもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製での使用を見出されている。皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内などに適した担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAに見出すことができる。
【0269】
本発明に有用な化合物は、そのような化合物を2つより多く混合した物の中で送達することができる。混合物は、化合物の組み合わせに加えて、1つ以上の補助剤をさらに含むことができる。
【0270】
様々な投与経路が利用可能である。選択される特定の様式は、当然ではあるが、選択される特定の化合物、被験体の年齢と一般的な健康状態、処置される特定の疾病、および治療上の有効性に必要な用量に左右されることとなる。本発明の方法は、一般的に言えば、医学的に許容可能な任意の投与様式を用いて実施することができる。この様式とは、臨床的に許容不能な有害作用を引き起こすことなく有効な応答レベルを生じさせる任意の様式を意味する。好ましい投与様式は上記で論じられている。
【0271】
前記組成物は単位剤形で都合よく提供することができ、薬学分野で周知の方法のうちいずれかにより調製することができる。すべての方法が、1つ以上の複数の副成分を構成する担体に化合物を会合させる工程を含む。一般に、この組成物は、化合物を液体担体、細く分割した固体担体、またはその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0272】
他の送達系は、時間放出、遅延放出、または持続放出の送達系を含むことができる。このような系により化合物の反復投与が回避され、被験体および医師に対する利便性が高まる。多くのタイプの放出送達系が利用可能であり、当業者に知られている。この系には、ポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリアンヒドリドなどのポリマーベースの系が挙げられる。前述のポリマー含有薬物のマイクロカプセルは、例えば米国特許第5,075,109号に開示されている。送達系としてさらに、コレステロール、コレステロールエステル、脂肪酸などのステロールを含む脂質、または、モノ、ジ、およびトリグリセリドなどの中性脂肪、ヒドロゲル放出系、サイラスティック系、ペプチドベースの系、ワックスコーティング、従来の結合剤および賦形剤を用いた圧縮錠剤、部分縮合された埋め込み剤(implant)などが挙げられる。具体的な例として、(a)米国特許第4,452,775号と5,736,152号に記載されるものなど、本発明の薬剤がマトリクス内にある形態で含まれている浸食系、および、(b)米国特許第3,854,480号、5,133,974号、5,407,686号に記載されるものなど、活性成分が制御速度でポリマーから浸透する分散系が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ポンプベースのハードウェア送達系が使用されてもよく、その一部は埋め込みに適している。
【0273】
等価物
以下の代表的な実施例は、本発明の説明を助けることを目的としており、本発明の範囲を制限するように意図されるものでも、解釈されるものでもない。実際に、本明細書に示されかつ記述されるものに加えて、本発明およびその多くのさらなる実施形態に対する様々な変更は、付随する例や、本明細書で引用される科学文献および特許文献への言及を含む、本明細書の完全な内容から当業者には明白となるであろう。さらに、これら引用文献の内容は、当該技術分野の状況の記述を助けるために参照により本明細書に引用されるものであることを理解されたい。以下の実施例は、様々な実施形態およびその等価物において本発明の実施に適合可能である、重要な追加情報、例示、および指針を含む。
【実施例】
【0274】
実施例1:式IIIの化合物および式IIIxの化合物の合成
工程1:スルホンアミド-ナフトールの形成
【0275】
【0276】
工程1では、4-メトキシベンゼンスルホニルクロリド(1)と4-アミノ-1-ナプトールHCl(2)を酢酸ナトリウム存在下で反応させることで、スルホンアミド-ナフトール(3)を得る。機械撹拌バーを備えた5L丸底フラスコに(2)(139.19g、694mmol)と水(2.0L)を添加した。さらに水(water heel)(800mL)を用いて、撹拌した懸濁液に酢酸ナトリウム(176.12g,2.13mol)と(1)(177.52g,816mmol)を添加した。この反応物を電気マントルにより85℃に加熱し、校正電気炉により温度をモニタリングした。反応物をTLCによりモニタリングし、2時間後に設定温度で冷却した。紫色の沈殿物が反応中に生じ、これを濾過し、水で洗浄し(小分けにして1400mL)、窒素パージ下で18時間かけて加熱(55℃)真空オーブン内で乾燥させた。紫色の中間体3(223.78g、収率95%)を、1H NMRおよびLCMSにより特徴付けた。
【0277】
工程2:スルホニルイミノキノンの形成
【0278】
【0279】
工程2では、ジクロロメタン(DCM)の存在下でシリカ上にてペリオデートナトリウムによりスルホンアミド-ナフトール(3)を酸化し、スルホニル-イミノキノン(4)を得る。具体的には、過ヨウ素酸ナトリウムを水と組み合わせることでシリカ上の過ヨウ素酸ナトリウムをインサイツで生成した。20L丸底フラスコに水(370mL)を添加し、90℃に加熱した。過ヨウ素酸ナトリウム(157.7g、737mmol)を撹拌しながら添加し、溶解させた。この溶液を、シリカゲルを含む20Lフラスコ(624.8g)に真空下で加えた。結果生じる自由流動固体を次の工程にそのまま使用した。
【0280】
機械撹拌を行いながら中間体3(120.3g,365mmol)を5L丸底フラスコに添加した。ジクロロメタン(DCM、3L)を添加し、機械撹拌を開始した。スラリーに過ヨウ素酸ナトリウム/シリカ(280.6g,183mmol)を加えた。茶色/黄色の混合物を室温で60分間撹拌し、その時点でTLCは出発物質の消費を示した。硫酸ナトリウム(101g)を添加して乾燥剤として機能させた後に濾過を行った。反応物を濾過し、DCM(680mL)で洗浄して、形成された中間体4の溶液を清潔な5L反応器に移した。
【0281】
工程3:式IIIxの化合物の形成
【0282】
【0283】
工程3では、ジクロロメタン(DCM)と触媒三フッ化ホウ素エーテラートの存在下でスルホニル-イミノキノン(4)と2-ナプトール(5)をインサイツで濃縮することで、式IIIxの化合物を得る。溶液を窒素で覆い、撹拌し、(5)(52.7g、365mmol)を添加した。三フッ化ホウ素エーテラート(2.1mL、17.5mmol)を添加し、反応物を35℃に加熱した。同量の別の部分を15分後に添加した。この反応物を2時間撹拌した後、冷却してから目の粗いフィルター(frit)で濾過した。生成物を2回に分けてDCM(小分けにして300ml)で洗浄した。窒素パージ下で60時間、粗製生成物(IIIx、154.2g)を加熱(55℃)真空オーブン内で乾燥した。
【0284】
粗製化合物IIIxを、絶対エタノール(1.5L)を含む5Lフラスコに添加し、3時間かけて35℃に加熱した。次いでスラリーを濾過し、エタノール(150mL)で洗浄した。窒素パージ下で24時間、固形物を加熱(55℃)真空オーブン内で乾燥した。生成物IIIx(143.5g、収率83%)を、1H NMRおよびLC-MSにより特徴付けた。
【0285】
工程4:式IIIの化合物の形成
【0286】
【0287】
ストッパーと磁気撹拌バーとを備えた一首の500mLフラスコに、式IIIx(8.30g、17.6mmol)の化合物とアセトン(87mL)とを充填した。結果生じる溶液にNaIO4/SiO2(13.69g、8.80mmol)を一度に添加し、混合物を周囲温度で20時間撹拌した。反応混合物の色はピンク色から暗赤色に変わった。TLCによる分析(1/1ヘキサン:アセトン、UV254nm)では、式IIIxの一部の化合物が残っていることが示された。さらにNaIO4/SiO2(13.7g、8.8mmol)を添加し、混合物を周囲温度で24時間撹拌した。TLCによる分析では、式IIIxの一部の化合物が残っていることが示された。反応混合物を濾過し、濾液にNaIO4/SiO2(13.7g、8.8mmol)をさらに添加した。この混合物を周囲温度で6時間撹拌した。TLCによる分析では、式IIIxの一部の化合物が残っていることが示された。さらにNaIO4/SiO2(13.7g、8.8mmol)を添加し、混合物を周囲温度で22時間撹拌した。TLCによる分析では、式IIIxの一部の化合物が残っていることが示された。反応混合物を濾過し、さらにNaIO4/SiO2(13.7g、8.8mmol)を濾液に添加した。この混合物を周囲温度で24時間撹拌した。LC-MSによる分析では、式IIIの化合物への76%転換が示された。この混合物を周囲温度で20時間撹拌し続けた。反応混合物を濾過し、フラスコと固形物をアセトンで洗浄した。濾液のほぼ半分を濃縮し、正相シリカゲル(シリカ80g、ヘキサン中の勾配0~60%アセトン)により精製して、式IIIの化合物(2.3g)を得た。式IIIの化合物のIRスペクトルを下記表2に示す。
【0288】
【0289】
実施例5:式IIIxの化合物および式IIIの化合物のSTAT3阻害IC50
【0290】
以下の化合物を、表面プラズモン共鳴(SPR)ベースの結合アッセイにおいてそのホスホペプチドリガンドへのSTAT3結合を遮断し、かつSTAT1、STAT3、およびSTAT5のIL-6媒介型リン酸化を阻害する能力について試験した。リン酸化STAT3の核転座の阻害も試験した。IC50(μM)値を表3に示す。これらアッセイのさらなる詳細は、米国特許第8,778,001号、Haricharan et al.,Mechanism and preclinical prevention of increased breast cancer risk caused by pregnancy,Cell biology:Human biology and medicine,2013,1-24に記載されており、これらの内容全体は参照によって引用されている。
【0291】