(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ソイルセメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20231228BHJP
E02D 3/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D3/00 101
(21)【出願番号】P 2023146577
(22)【出願日】2023-09-09
【審査請求日】2023-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500390869
【氏名又は名称】株式会社インバックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】秋山 祥克
(72)【発明者】
【氏名】酒巻 克之
(72)【発明者】
【氏名】松村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 瑞穂
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7042016(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00- 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)工程を少なくとも含む、ソイルセメントの製造方法。
(A)土砂に、少なくとも固化材を、ソイルセメント1m
3当たり50~400kg添加して混合し混合物を作製する、混合物の作製工程。
だだし、前記固化材の添加は1回限り(1次添加のみ)であり、2次添加は行わない。
(B)前記混合物
の圧縮強さが、0.03~1.5N/mm
2
になる期間、該混合物を仮置きして養生する、混合物の仮置き養生工程
(C)前記仮置き養生を終えた混合物を、粒径が200mm以下に解砕して解砕物を得る、混合物の解砕工程
(D)前記解砕物を転圧して
成型して、
(d1)成型28日後の圧縮強さが、材齢3日の解砕物の成形体で0.04~0.45N/mm
2
、材齢7日の解砕物の成形体で0.07~0.55N/mm
2
、材齢28日の解砕物の成形体で0.07~0.66N/mm
2
、および、材齢365日の解砕物の成形体で0.12~0.44N/mm
2
であり、
(d2)成型91日後の圧縮強さが、材齢3日の解砕物の成形体で0.07~0.56N/mm
2
、材齢7日の解砕物の成形体で0.11~0.78N/mm
2
、材齢28日の解砕物の成形体で0.18~1.09N/mm
2
、および、材齢365日の解砕物の成形体で0.18~0.69N/mm
2
である、
ソイルセメントを得る、解砕物の転圧工程
【請求項2】
前記(C)工程において、解砕物を使用するまで保管する、請求項1に記載のソイルセメントの製造方法。
【請求項3】
前記(D)工程において、転圧したソイルセメントをさらに養生する、請求項1または2に記載のソイルセメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形追従性が高く、かつ再掘削が容易であり、また、用途や利活用先を拡大できるソイルセメントを製造する方法である。
【背景技術】
【0002】
ソイルセメントとは、広義には、土砂に固化材および水等を混合した混合物(フレッシュ状態)、並びに、該固化材の水和により硬化した固化体を云う。
そして、昨今では環境問題への配慮から、各種建設工事に伴う発生土砂を用いたソイルセメントが多用されている。これにより発生土を建設現場と同じ場所か、または異なる建設現場で有効活用できるため、土砂の処分場所が延命し、土砂の搬出・処分・調達に要する費用と、土砂の搬出時の騒音・振動等の環境問題を抑制できる。したがって、ソイルセメントは、経済的であるとともに、前記環境問題が生じ難いという特長がある。
【0003】
従来、ソイルセメントの製造において、土砂に固化材を添加する方法は、固化材の全量を土砂に一括して添加する一括添加方法(特許文献1、特許文献2)と、固化材を二度に分けて、土砂に一次および二次添加する分割添加方法(特許文献3)がある。
しかし、前記一括添加方法は、土砂が、火山灰質粘性土、および有機質土等の固化難土や、重粘土等の高粘性土の場合、目標強度を発現するために必要な固化材量が、粗粒土や低含水比土等のその他の土砂に比べ多くなる。
【0004】
また、前記分割添加方法は、一括添加方法で用いる固化材の添加量よりも少ない添加量で、一括添加方法と同程度の強度が得られるという利点はあるが、比較的、強度が高いため、地下埋設管の埋め戻し等の再掘削が必要な工事では、再掘削が困難になる場合があり、当該用途に適さなかった。さらに、分割添加方法で製造したソイルセメントは、破壊ひずみが小さく、地震等で生じるひずみ(変形)に対する追従性が低いという欠点がある。
したがって、分割添加方法では、用途や利活用先が限定されるほか、固化材の添加量の適正化が難しいため、ソイルセメント中の固化材が過剰または不足する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-15022号公報
【文献】特開2018-21303号公報
【文献】特許第704216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、変形追従性が高く、かつ再掘削が容易であり、また、用途や利活用先を拡大できるソイルセメントの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、下記の構成を有するソイルセメントの製造方法は、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
[1]下記(A)~(D)工程を少なくとも含む、ソイルセメントの製造方法。
(A)土砂に、少なくとも固化材を、ソイルセメント1m3当たり50~400kg添加して混合し混合物を作製する、混合物の作製工程。だだし、前記固化材の添加は1回限り(1次添加のみ)であり、2次添加は行わない。
(B)前記混合物の圧縮強さが、0.03~1.5N/mm
2
になる期間、該混合物を仮置きして養生する、混合物の仮置き養生工程
(C)前記仮置き養生を終えた混合物を、粒径が200mm以下に解砕して解砕物を得る、混合物の解砕工程
(D)前記解砕物を転圧して成型して、
(d1)成型28日後の圧縮強さが、材齢3日の解砕物の成形体で0.04~0.45N/mm
2
、材齢7日の解砕物の成形体で0.07~0.55N/mm
2
、材齢28日の解砕物の成形体で0.07~0.66N/mm
2
、および、材齢365日の解砕物の成形体で0.12~0.44N/mm
2
であり、
(d2)成型91日後の圧縮強さが、材齢3日の解砕物の成形体で0.07~0.56N/mm
2
、材齢7日の解砕物の成形体で0.11~0.78N/mm
2
、材齢28日の解砕物の成形体で0.18~1.09N/mm
2
、および、材齢365日の解砕物の成形体で0.18~0.69N/mm
2
である、
ソイルセメントを得る、解砕物の転圧工程
[2]前記(C)工程において、解砕物を使用するまで保管する、前記[1]に記載のソイルセメントの製造方法。
[3]前記(D)工程において、転圧したソイルセメントをさらに養生する、前記[1]または[2]に記載のソイルセメントの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により製造したソイルセメントは、変形に対する追従性が高く、かつ再掘削できる強度である。
また、前記(A)工程で作製した混合物を、一定期間、仮置き養生するため、および(C)工程で解砕した解砕物を使用するまで保管するため、使用期間を長く確保できるから、ソイルセメントの用途や利活用先を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(C)工程で仮置き養生を終えた混合物の状態を示す写真であって、左の写真は強度が高くて解砕できない状態を示し、中央の写真は解砕が容易で解砕した状態を示し、右の写真は泥濘化して解砕できない状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、前記したとおり、(A)混合物の作製工程、(B)混合物の仮置き養生工程、(C)混合物の解砕工程、および(D)解砕物の転圧工程を少なくとも含む、ソイルセメントの製造方法である。
以下、前記(A)~(D)工程に分けて、本発明を詳細に説明する。
【0012】
(A)混合物の作製工程
前記(A)工程は、土砂に、少なくとも固化材を添加して混合し混合物を作製する工程である。次に、土砂、固化材、混合装置、および加水の順に説明する。
(i)土砂
該土砂は、建物等の建設現場や道路工事現場等から発生する土砂、残土、および廃土等の土砂、並びに、掘削等の施工現場で発生する土砂、および施工現場付近で採取できる土砂等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、該土砂の種類は、特に限定されず、粗粒土、細粒土、火山灰質粘性土、有機質土、および高有機質土等の固化難土、並びに、粘土等の高粘性土から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0013】
(ii)固化材
該固化材は、高炉セメントB種、高炉セメントA種、高炉セメントC種、ポルトランドセメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、およびセメント系固化材から選ばれる1種以上である。ここで、前記セメント系固化材はセメントを母材とする複合材であり、一般軟弱土用、特殊土用(汎用型)、および高有機質土用等の固化の用途や固化現場の状況等に応じて決めるとよい。
前記セメント系固化材は、市販のセメント系固化材を例にすれば、汎用型ではジオセット200(登録商標、太平洋セメント社製)、高有機質土用ではジオセット225(登録商標、太平洋セメント社製)等が挙げられる。なお、コストの低さや固化性能の高さを勘案すると、前記固化材は、好ましくは高炉セメントB種、およびセメント系固化材である。
【0014】
該固化材の添加量は、前記ソイルセメント1m3当たり50~400kgである。該添加量がソイルセメント1m3当たり50kg未満では、後掲の表1中の比較例1および表3中の比較例10が示すようにソイルセメントの強度は十分ではなく、400kgを超えると、後掲の表1中の比較例6および表3中の比較例13が示すようにソイルセメントの強度は過大になり、前記(C)工程において解砕が容易でない場合がある。なお、前記固化材の添加量は、ソイルセメント1m3当たり、好ましくは80~300kgである。また、前記添加量は、室内配合試験等により、事前に適正量を決めるとよい。
【0015】
(iii)混合装置
前記土砂と固化材を混合するための装置は、特に限定されず、一般に、コンクリートやモルタルの混練に用いるミキサーでよく、例えば、可傾式ミキサー、強制練りミキサー、ドラムミキサー、重力式ミキサー、およびハンドミキサー等が挙げられる。また、建設現場等では、該混合装置は、バックホウ、バケットミキシング、およびソイルセメント専用のバッチ式または連続式のミキサー等が挙げられる。
ちなみに、土砂に、固化材を添加することにより生じる効果は、以下の点が挙げられる。
(a)見掛けの含水比が低下する。
(b)土砂中の土粒子が団粒化するから、土性が改質される。
(c)締固め等の施工性が向上する。
(d)固化材中のカルシウムイオンと、土砂中のフミン酸等の腐食酸が反応して、ソイルセメントの固化阻害物である腐食酸を固定するため、固化反応がより促進する。
【0016】
(iv)加水
該(A)工程において、土砂の粘性が高いため固化材の攪拌・混合が困難、または不可能な場合や、土砂の含水比が低く、固化材の水和に必要な水分が不足する場合は、混合物の混練時に加水するのが好ましい。
ここで、前記の土砂の粘性が高いため固化材の攪拌・混合が困難、または不可能な場合とは、攪拌・混合が混合装置の性能に依存するから一義的には云えないが、例えば、攪拌・混合できないか、または均一に混合しない場合をいう。
また、前記加水に用いる水は、上水道水、河川水、湖沼水、海水、および下水処理水等である。なお、加水量は、使用する水を用いて実際に混合物を調製して決めるとよい。その際、上水道水以外を使用する場合は、固化性能に悪影響を及ぼさないことを事前に確認することが好ましい。
【0017】
(B)混合物の仮置き養生工程
前記(B)工程は、混合物が解砕可能である期間、該混合物を仮置きして養生する工程である。
前記「解砕可能である期間」とは、粉砕に用いる器具や装置の性能にもよるが、例えば、混合物の圧縮強さで云えば、0.03~1.5N/mm2となる期間である。該圧縮強さが0.03N/mm2未満では、前記混合物の強度が解砕できる強度に達せず、力を加えると泥濘化する場合があり、また1.5N/mm2を超えると、解砕が容易でなくなるか、解砕後の転圧が困難になる場合がある。なお、前記圧縮強さは、好ましくは0.08~1.0N/mm2である。ちなみに、後掲の表1~3に基づけば、仮置き養生の期間は、3~365日の範囲内である。
固化材量が多いほど、また養生期間が長いほど、原則として強度は高くなるため解砕は困難になる。ただし、固化材量が多い場合でも養生期間が短ければ、強度の増加度が小さいために解砕は容易な場合がある。一方、固化材量が少ない場合でも養生期間が長ければ強度の増加度が大きくなるため、解砕が困難となる場合もある。即ち、[強度(主に固化材量に依存)/養生期間/解砕の難易度]は相互に関係するため、用途や利活用先を考慮してそれぞれを決定することが重要である。したがって、実際の土砂を用いて事前の配合試験を実施することが好ましい。
また、仮置き養生の方法は特に限定されず、シート掛け、密封養生、および封緘養生等が挙げられる。
【0018】
(C)混合物の解砕工程
該工程は、前記仮置き養生を終えた混合物を、粒径が200mm以下に解砕して解砕物を得る工程である。該粒径が200mmを超えると転圧が困難になる場合がある。なお、該粒径は、好ましくは150mm以下、より好ましくは100mm以下、さらに好ましくは50mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
また、本発明で用いる解砕方法は特に限定されないが、前記仮置き養生を終えた混合物を、篩が装着された解砕機を用いて砕く方法、および、バックホウのバケットまたはキャタピラで押し潰す方法等が挙げられる。
【0019】
なお、解砕時における混合物の圧縮強さが1.0N/mm2を超える場合は、解砕物の締固め性(充填性)を高めることによりソイルセメントの強度が向上するから、解砕物に加水するのが好ましい。
前記加水に用いる水は、上水道水、河川水、湖沼水、海水、および下水処理水等を用いることができる。なお、加水量は、使用する水を用いて実際に混合物を調製して決めるとよい。その際、上水道水以外を使用する場合は、固化性能に悪影響を及ぼさないことを確認することが好ましい。
前記解砕物は、解砕物を使用するときまで保管すると便利である。保管した解砕物は、適時、転圧等を行って使用することにより、将来に渡って、ソイルセメントの用途や利活用先を拡大できる。
【0020】
(D)解砕物の転圧工程
該工程は、前記解砕物を転圧してソイルセメントを得る工程である。
本発明で用いる転圧方法は特に限定されず、振動ローラや振動ダンパによる転圧が挙げられる。また、より高い強度を要する用途には、解砕物に固化材を添加して転圧するとよい。
また、ソイルセメントの強度が不足する場合は、該転圧工程において、解砕物に固化材を添加してソイルセメントを得ることもできる。
該工程において、冬期の施工後の凍結防止や、夏期の施工後の打設面の乾燥を防ぐため、養生することが好ましい。該養生は、養生シートや養生マットの使用、および、これらの養生と散水や吸熱養生の併用が挙げられる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は該実施例に限定されない。
1.使用材料
(1)試料土
用いた試料土は、神奈川県産の土砂(表1)、静岡県産の土砂(表2中のA)、広島県産の土砂(表2中のB)、北海道産の土砂(表2中のC)、および熊本県産の土砂(表3)である。
【0022】
(2)固化材
用いた固化材は、ジオセット225[登録商標、太平洋セメント社製](表1、表3)、および高炉セメントB種[太平洋セメント社製](表2)である。
【0023】
2.解砕の難易度の判定
表1~3に示す配合に従い、前記試料土と1次添加用の固化材をホバート型ミキサを用いて混練し、混合物を作製した。ただし、混練が困難な場合は、混練できるまで加水した。
次に、該混合物をポリ袋に入れて、該混合物の圧縮強さが0.02(比較例1等)~2.07(比較例6)N/mm2になるまで密封養生して仮置きした後、目開き9.5mmのフルイを通過させて、表1~3に記載の材齢の混合物を解砕した。
解砕の難易度は、各混合物の解砕時の状況により判定した。また、解砕時の強度が、0.01N/mm2である比較例10、並びに、0.02N/mm2である比較例1および比較例11は、フルイを通過させるために圧力を掛けると泥濘化して解砕できなかった。
【0024】
3.供試体の作製
次に、表1~3に示す配合に従い、該解砕物単独(実施例)、または該解砕物と2次添加用の固化材(比較例)をホバート型ミキサを用いて混練した混練物を内径50mm、高さ100mmのモールドにセメント協会標準試験方法(JCAS L-01)により転圧し、実施例および比較例の供試体を作製した。
また、参考例1~3の供試体は、固化材を添加せずに転圧のみで作製した。
【0025】
4.耐水性試験
前記供試体(表1~3中では固化体と記載した。)の耐水性は、降雨等によるソイルセメントの耐水性を評価するため、供試体の泥化や崩壊の有無を目視により判定して、耐水性の良・不良を判定した。なお、前記固化体の耐水性の良・不良は、表1、2では、材齢7日の混合物を解砕して得た解砕物を転圧して作製した成型28日後の供試体を用い、また、表3では、材齢28日の混合物を解砕して得た解砕物を転圧して作製した成型28日後の供試体を用いた。
【0026】
5.圧縮強さ試験および破壊ひずみ試験
前記供試体の圧縮強さ(表中では「強度」で表す。)、および、材齢7日の混合物の解砕物を用いた成型28日後の供試体の破壊ひずみは、JIS A 1216「土の一軸圧縮試験方法」に準拠して測定した。
なお、表3中の比較例13は、固化材を一次添加した直後に転圧して成型し、成型28日後、および成型91日後の成形体(通常の圧縮強さ試験に用いる供試体)の圧縮強さと破壊ひずみ、および耐水性を測定した。また、比較例13の解砕の難易度は、この測定した強度に基づき判定した。
以上の結果を表1~3に示すとともに、ソイルセメントの物性に影響する、土砂の種類(産地)、並びに、固化材の種類および添加量が同じ実施例と比較例同士を、おもに比較しながら、試験結果の評価を以下に論じる。
【0027】
【0028】
(1)表1について
(i)実施例5と比較例2、3の比較
固化材の(全)添加量が250kg/m3と同じであるにもかかわらず、成型28日後および91日後の、実施例5/比較例2、および実施例5/比較例3の強度比(カッコ内の数値)は、材齢7日解砕物および材齢28日解砕物において、0.10~0.20と低かった。なお、表1のカッコ内の数値は、例えば、比較例2の材齢7日解砕物の「0.20」では、実施例5/比較例2の強度比を示す。表1中のその他も同様。
また、破壊ひずみは、材齢7日解砕物および材齢28日解砕物のいずれも、比較例2、3に比べ実施例5は4倍程度と高く、変形追従性に優れていた。さらに、該実施例および比較例の耐水性は良好だった。
【0029】
(ii)実施例7と比較例4、5の比較
固化材の(全)添加量が350kg/m3と同じであるにもかかわらず、成型28日後および91日後の、実施例7/比較例4および実施例7/比較例5の強度比(カッコ内の数値)は、材齢7日解砕物および材齢28日解砕物において、0.11~0.22と低かった。
また、破壊ひずみは、材齢7日解砕物および材齢28日解砕物のいずれも、比較例4、5に比べ実施例7は5倍程度と高く、変形追従性に優れていた。さらに、該実施例および比較例の耐水性は良好だった。
なお、参考例1(固化材無添加)の圧縮強さと破壊ひずみはいずれも、同じ土砂を用いた比較例1(固化材添加)と同程度であるにもかかわらず、固化材で改質されていないため、耐水性は不良であった。
【0030】
(iii)比較例1について
比較例1では、ソイルセメント1m3当たり固化材の添加量は40kg/m3と少ないため、解砕時に泥濘化して解砕が困難であった。したがって、本発明では、強度を低くするために固化材の添加量をソイルセメント1m3当たり50kg/m3未満にすると、解砕が困難になる。
【0031】
【0032】
(3)表2について
実施例11と比較例7の比較
固化材の(全)添加量が240kg/m3と同じであるにもかかわらず、実施例11/比較例7の強度比(カッコ内の数値)は、材齢7日解砕物および材齢28日解砕物において、0.43~0.86と低かった。なお、表2のカッコ内の数値は、例えば、実施例11の材齢7日解砕物の「0.86」では、実施例11/比較例7の強度比を示す。表2中のその他も同様。
また、破壊ひずみは、比較例7に比べ実施例11では1.3倍程度と高く、変形追従性に優れていた。さらに、実施例11と比較例7の耐水性はいずれも良好だった。
また、試料土が広島産(実施例12、比較例8)や北海道産(実施例13、比較例9)と、土砂の種類が変わっても、前記静岡産(実施例11、比較例7)と同様のことが云える。
なお、参考例2(固化材無添加)の圧縮強さと破壊ひずみはいずれも、同じ土砂を用いた実施例9(固化材添加)と同程度であるにもかかわらず、固化材で改質されていないため、耐水性は不良であった。
【0033】
【0034】
(4)表3について
(i)実施例14と比較例11の比較
固化材の(全)添加量が150kg/m3と同じであるにもかかわらず、実施例14/比較例11の強度比(カッコ内の数値)は、材齢28日解砕物および材齢365日解砕物において、0.38~0.76と低かった。なお、表3のカッコ内の数値は、例えば、実施例14の材齢28日解砕物の「0.76」では、実施例14/比較例11の強度比を示す。表3中のその他も同様。
また、破壊ひずみは、比較例11に比べ実施例14では1.1倍程度と高く、変形追従性が高い。さらに、実施例14と比較例11の耐水性はいずれも良好だった。
これらのことから、仮置き養生の期間が365日の解砕物を用いても、適切な強度を有し、変形追従性と耐水性が高いソイルセメントを製造できることが分かる。
なお、参考例3(固化材無添加)の圧縮強さと破壊ひずみはいずれも、同じ土砂を用いた比較例10(固化材添加)と同程度であるにもかかわらず、固化材で改質されていないため、耐水性は不良であった。
【0035】
(ii)実施例16と比較例12の比較
固化材の(全)添加量が250kg/m3と同じであるにもかかわらず、実施例16/比較例12の強度比(カッコ内の数値)は、材齢28日解砕物および材齢365日解砕物において、0.34~0.88と低かった。
また、破壊ひずみは、比較例12に比べ実施例16では1.8倍と高く、変形追従性が優れている。さらに、実施例16と比較例12の耐水性はいずれも良好だった。
これらのことから、仮置き養生の期間が365日の解砕物を用いても、適切な強度を有し、変形追従性と耐水性が高いソイルセメントを製造できることが分かる。
(iii)比較例10について
比較例10では、ソイルセメント1m3当たり固化材の添加量は30kg/m3と少ないため、解砕時に泥濘化して解砕が困難であった。
(iv)比較例13について
比較例13は、前記のとおり、固化材を一次添加した直後に転圧して成型した成形体(通常の圧縮強さ試験に用いる供試体)であるが、本発明のソイルセメントに比べ、圧縮強さは高く解砕は困難で、破壊ひずみが低いため変形追従性に劣る。
【要約】
【課題】本発明は、変形追従性が高く、かつ再掘削が容易であり、また、用途や利活用先を拡大できるソイルセメントの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、下記(A)~(D)工程を少なくとも含む、ソイルセメントの製造方法である。
(A)土砂に、少なくとも固化材を、ソイルセメント1m
3当たり50~400kg添加して混合し混合物を作製する、混合物の作製工程
(B)前記混合物が解砕可能である期間、該混合物を仮置きして養生する、混合物の仮置き養生工程
(C)前記仮置き養生を終えた混合物を、粒径が200mm以下に解砕して解砕物を得る、混合物の解砕工程
(D)前記解砕物を転圧してソイルセメントを得る、解砕物の転圧工程
【選択図】
図1