(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】計測器
(51)【国際特許分類】
G01B 3/1069 20200101AFI20231228BHJP
【FI】
G01B3/1069
(21)【出願番号】P 2018243654
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-10-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】小池 保
(72)【発明者】
【氏名】船越 勝也
(72)【発明者】
【氏名】菊地 麻衣子
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-230012(JP,A)
【文献】特開平10-129086(JP,A)
【文献】特開昭63-234729(JP,A)
【文献】実開平05-084819(JP,U)
【文献】特開平06-058701(JP,A)
【文献】特開昭61-239101(JP,A)
【文献】実開平02-005009(JP,U)
【文献】特開昭57-153201(JP,A)
【文献】登録実用新案第3194702(JP,U)
【文献】実開昭55-005355(JP,U)
【文献】実開昭58-193206(JP,U)
【文献】特開平04-238223(JP,A)
【文献】特開平02-281104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/10-3/1094
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
力が加わらない第1状態において幅方向に湾曲するメジャーと、
前記メジャーの少なくとも一方の面に設けられたパターンと、
前記メジャーをリールに巻き付けて収納する第1ケースと、
とを備えた計測器において、
前記メジャーの湾曲が前記第1状態における湾曲より小さい第2状態の前記メジャーの幅方向の複数の箇所の前記パターンを光学的に読み取る第1読取器と、
を備える計測器。
【請求項2】
前記メジャーの長さ方向の複数の箇所の前記パターンを光学的に読み取る第2読取器を備える請求項1に記載の計測器。
【請求項3】
前記第1読取器が読み取った信号を、前記第1読取器と前記メジャーとの距離の差を補償するように補正する補正部を備える
請求項1または2に記載の計測器。
【請求項4】
前記第1読取器を収納し、前記第1ケースに脱着可能である第2ケース
を備える請求項1から
3のいずれか一項に記載の計測器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測器に関する。
【背景技術】
【0002】
メジャーの一方の面にパターンを設け、読取器がパターンを読み取ることで、長さを計測する計測器が知られている(例えば特許文献1-3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-230012号公報
【文献】実開昭62-128302号公報
【文献】実開平2-5009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば建設現場で用いられる計測器では、メジャーの断面を湾曲させることにより、メジャーの柔軟性と直立性を確保できる。しかしながら、メジャーが湾曲していると、読取器のパターンを読み取る精度が低下してしまう。また、光学的にメジャーを読み取る際にメジャーがよれたりした場合にも、読取器によるパターンの読取精度が低下する恐れがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、計測の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、力が加わらない第1状態において幅方向に湾曲するメジャーと、前記メジャーの少なくとも一方の面に設けられたパターンと、前記メジャーをリールに巻き付けて収納する第1ケースと、とを備えた計測器において、前記メジャーの湾曲が前記第1状態における湾曲より小さい第2状態の前記メジャーの幅方向の複数の箇所の前記パターンを光学的に読み取る第1読取器と、を備える計測器である。
【0007】
上記構成において、前記メジャーの長さ方向の複数の箇所の前記パターンを光学的に読み取る第2読取器を備える構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1読取器が読み取った信号を、前記第1読取器と前記メジャーとの距離の差を補償するように補正する補正部を備える構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1読取器を収納し、前記第1ケースに脱着可能である第2ケースを備える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、計測の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1における計測器のブロック図である。
【
図3】実施例1におけるメジャーに設けられたパターンの例を示す図である。
【
図4】実施例1における読取器の配置を示す図である。
【
図5】(a)は、実施例1におけるパターンの拡大図、(b)は、1つのパターンの拡大図である。
【
図8】(a)は、比較例1におけるメジャーおよび読取器の断面図、(b)および(c)は、実施例1におけるメジャーおよび読取器の断面図である。
【
図9】実施例1におけるリールおよびメジャーの断面図である。
【
図11】実施例における読取器とメジャー付近の模式図である。
【
図12】実施例2における計測器用のケース60の(a)上面図、(b)側面図、(c)A-A断面図および(d)下面図である。
【
図13】実施例3における読取器とメジャーを示す断面図である。
【
図14】実施例3における距離Dに対する読取器の出力電流を示す図である。
【
図15】(a)は、実施例3における補正部のブロック図、(b)は、実施例3における制御部の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1における計測器のブロック図である。計測器100は、メジャー10、リール11、スイッチ12、制御部13、バッテリ14、通信部15、表示部16および読取部21および23を備えている。実施例1ではメジャー10はリール11に巻き付けられている。読取部21は複数の読取器20を備え、読取部23は複数の読取器22を備えている。読取器20および22はそれぞれ発光素子18および受光素子19を備えた光学式センサである。発光素子18は例えばLED(Light Emitting Diode)であり、メジャー10の面に光(可視光、赤外光または紫外光等)を照射する。受光素子19は、例えばフォトトランジスタであり、メジャー10の面から反射した光を検出する。
【0016】
スイッチ12は制御部13を始動させる。制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、発光素子18のオンおよびオフを制御し、受光素子19が出力する信号の電流値または電圧値を読み取り、その結果に基づき計測値を算出する。通信部15は制御部13が算出した計測値を外部装置25に送信する。外部装置25との通信には無線通信または有線通信を用いる。表示部16は、例えば液晶ディスプレイであり、制御部13が算出した計測値を表示する。バッテリ14は、制御部13、通信部15、表示部16、読取部21および23に電力を供給する。
【0017】
外部装置25は、例えばコンピュータまたはスマートホンであり、測定対象の長さを示す計測値を通信部15から受信し、例えばデータベースに登録して管理する。計測値を登録するデータベースは、外部装置25に内蔵されていてもよいし、アクセス可能な状態で外部装置25の外部に設けられていてもよい。
【0018】
図2(a)および
図2(b)は、実施例1における計測器100の断面図である。
図2(a)に示すように、計測器100はケース30を備え、ケース30内にリール11が収納されている。リール11にメジャー10が巻き付けられている。リール11はメジャー10を巻き取るようにバネ等の弾性体により付勢されている。メジャー10の先端には、メジャー10がケース30内に引き込まれることを抑制するフック10aが設けられている。
【0019】
実施例1では、ケース30に基板26および27が設けられている。基板26には読取器20が設けられ、基板27には読取器22およびスイッチ12が設けられている。基板26および27はそれぞれ接続線28および29によりメイン基板37に接続されている。メイン基板37には制御部13等が設けられている。接続線28および29はそれぞれ読取器20および22と制御部13との間で信号を伝送する。基板26はバネ34等の弾性体により
図2図示右側、メジャー10の方に付勢されている。メジャー10のロックを解除する際に操作されるロックレバー31には、湾曲した棒状または板状の押え部32および33が接続されている。ロックレバー31が
図2(a)に示すアンロック状態のとき、押え部32はメジャー10から離間しており、バネの付勢力によりメジャー10がリール11に巻き取られる。また、アンロック状態では、押え部33はメジャー10と基板26および読取器20との間に挿入されている。このため、読取器20はメジャー10の面から離間している。
【0020】
ユーザは、
図2(b)のように、メジャー10を伸ばして、対象物に当てる。なお、
図2(b)ではロックレバー31はロック状態となっている。ユーザがロックレバー31をロック状態とすると、押え部32はメジャー10を基板27に向けて押圧する。これにより、メジャー10はロックされ、メジャー10がリール11に巻き取られることが抑制されるとともに、押え部32により押されたメジャー10が読取器22に当接する。一方、ロックレバー31がロック状態のときは、押え部33がメジャー10と基板26の間から外れる。これにより、バネ34により付勢されている読取器20はメジャー10に当接する。なお、読取器20および22は透明なカバーに覆われており、カバーがメジャー10に当接するようにしてもよい。
【0021】
次に、メジャー10の一方の面に印刷されたカラーパターンの例を説明する。
図3は、実施例1におけるメジャーに設けられたカラーパターンの例を示す図である。メジャー10の長さ方向をY方向とし、幅方向をX方向とする。
図3に示すように、メジャー10の一方の面には複数のパターン40がX方向に配列された6桁の3進グレイコードによるカラーパターンが、Y方向に一定の長さ毎に印刷されている。それぞれのカラーパターンは特定の計測値に対応づけられている。また、カラーパターンを構成する各パターン40は色分けされており、3進数の0、1および2に対応する色として
図3では白、青および黒の3色が用いられている。0、1および2に対応する色は、この他にも白、グレーおよび黒でもよく、読取器20、22が異なる色として識別できる色であれば同一色の濃淡で各パターンを印刷してもよい。なお、同一色の濃淡が異なるケースも、ここでは「色が異なる」と見なすものとする。
図3には、3進数の数値や桁番号が記載されているが、実際のメジャー10にはこれらの数値や桁番号を記載しなくてもよい。なお、メジャー10の他方の面には、一般的なメジャーと同様に長さを示す目盛りや数値が印刷されている。
図3では、Y方向に隣接するカラーパターン同士では1値のみが変化し、2値以上の変化が生じないようにカラーパターンが並べられている。なお、カラーパターンを構成するコードは3進数以外に2進数または4進数以上のN進数でもよい。
【0022】
図4は、実施例1における読取器の配置を示す図である。読取部21としてX方向に6個の読取器20が配列されている。これら読取器20は同じ行のカラーパターンを構成する個々のパターン40に対応して設けられている。また、読取部23としてY方向に4個の読取器22aから22dが配列されている。
図2(a)および
図2(b)に示すように、読取部21と読取部23とは離間して向けられていてもよいが、説明を簡略化するため
図4の例では読取部21と23とを近接させて図示している。
【0023】
読取器20および22は
図3の各桁のパターン40の色を検出する。各読取器20および22の発光素子18は対応するパターン40に光を照射する。パターン40の反射率は白、青および黒の順に小さくなり、受光素子19にパターン40からの反射光が照射されると、受光素子19は各色に対応して例えば2.0V、1.5Vおよび1.0Vの信号を出力する。
【0024】
例えば
図3の領域42の各桁のパターン40が読み取られる。制御部13は各読取器20の出力を3進数000012に変換する。3進数000012を10進数に変換すると、先端位置41から領域42までの長さLを算出できる。
【0025】
図5(a)は、実施例1におけるメジャー10に印刷されたパターンの拡大図、
図5(b)は、1つのパターンの拡大図をそれぞれ示す。
図5(a)では、
図3の範囲43を拡大し、各パターン40の左上にパターンの色に対応する3進数の数値を図示している。メジャー10には数字は記載されていなくてもよい。「0」、「1」および「2」はそれぞれ「白」、「青」および「黒」に対応する。
【0026】
図5(a)に示すように、各パターン40のY方向の幅はP1であり、例えば3mmである。全てのパターン40の幅P1は製造誤差程度の誤差範囲内でほぼ同一である。
図5(a)の範囲50および50aは、それぞれ
図4の読取器20がパターン40を読み取る範囲である。範囲52aから52dは
図4の読取器22aから22dがパターン40を読み取る範囲である。範囲50および50aはX方向に延伸する直線上に位置している。範囲50および50aが配列される直線位置が、パターン40を読み取る計測位置56である。
図5(a)では、計測位置56はパターン40のY方向中央に位置しており、これがパターン読取の基準位置となる。制御部13は、範囲50および50aでの読取器20による読取結果に基づき、メジャー10の先端位置41から計測位置56までの長さLを算出する。なお、実際の計測長さは、長さLに所定値を加減した値となる。
【0027】
読取器20を用いて範囲50および50aのパターン40を読み取り長さを計測した場合、1行のコードの計測精度はP1となる。
【0028】
また、
図5(b)に示すように、最小桁(桁番号6)のパターン40をY方向に仮想的に3つの領域40a、40bおよび40cに分割する。領域40aから40cは印刷により区別されているわけではなく、目視してもメジャー10上では区別がつかない。領域40aから40cのそれぞれのY方向の幅はP3である。P3=P1/3であり、例えば1mmである。領域40aから40cのY方向の幅は実質的に同じであり、製造誤差程度の範囲に収まる。
【0029】
図5(a)のように、範囲52aから52dは各行の最小桁のパターンに対応しており、Y方向に延伸する直線上に位置している。範囲50aと52bとの中心の距離および範囲50aと52cとの中心の距離は、各々P2である。距離P2は幅P1+幅P3であり、例えば4mmである。一方、範囲52aと52bとの中心の距離および範囲52cと52dとの中心の距離は、各々P1である。
【0030】
読取器20に加え、読取器22aから22dを用いて範囲52aから52dに位置するパターン40を読み取り長さを計測すると、長さの計測精度をP3とすることができる。
【0031】
図6は、実施例1に用いるテーブルを示す図である。制御部13は、
図6のテーブルを用い、読取器20の出力から算出した長さLを補正する。これにより、計測精度をP3にできる。
【0032】
図6のテーブルには、行ごとに範囲50aで読み取られた色(3進数の数値)、範囲50で読み取られた数値の和、範囲52aから52dで読み取られた色の組合せ、および読取器20の出力に基づいて算出された長さLに対して加算する補正値が設定されている。範囲50の数値の和は、最小桁のパターン以外の5つのパターン40に対応する数値の和が奇数か偶数かを示している。補正値は、範囲50および50aで読み取られたパターンの色により決定される長さLに対し加算する補正値である。補正値が「-P3」のときは、範囲50および50aでの読み取り結果により決定される長さLに対しP3に相当する長さを減じることを示している。補正値が「+P3」のときは、範囲50および50aでの読み取り結果により決定される長さに対しP3に相当する長さを加算することを示している。
【0033】
以上のように、制御部13は、読取器20、22aから22dの計測結果を用いて長さを決定することで、パターン40の桁数を増やすことなく、パターンの幅P1より長さの計測精度を向上できる。読取器22aから20dの個数をさらに増やすことで、計測精度をP1の1/3より小さくすることも可能である。
【0034】
図7(a)および
図7(b)は、実施例1におけるメジャーの斜視図である。メジャー10に力が加わらない状態では、
図7(a)に示すようにメジャー10はX方向に沿って湾曲している。
図7(a)では、メジャー10のX方向の中心10bが端部10cに対し図示下方に凸となるように湾曲している。図示下方の面に対応するメジャー10の凸側の面にはパターン40が印刷されている。メジャー10の凹側の他方の面にはユーザが視認する目盛が印刷されていてもよい。
図7(b)に示すように、メジャー10に物体45が当たるなどしてメジャー10の厚さ方向に力を加えたり、巻くように曲げたりすると、メジャー10を平坦にすることができる。メジャー10は例えば金属製であり、湾曲した状態では直立性が高いためメジャーを伸ばしてもメジャーが折れ曲がりにくくなり、一方厚さ方向に力を加えると湾曲が解消し柔軟に変形する。このようなメジャーは、例えば建設現場で用いられている。
【0035】
図8(a)は、比較例1におけるメジャーおよび読取器の断面図、
図8(b)および
図8(c)は、実施例1におけるメジャーおよび読取器の断面図である。
図8(a)に示すメジャー10´はX方向の中心10bが端部10cに比べ読取器20の方に膨らむように湾曲している。なお、
図8(a)はメジャー10´には力が加わっていない状態、すなわち自由状態を示している。メジャー10´の中心10bと端部10cと厚さ方向の距離はD1である。このため、メジャー10´の中心10b付近の読取器20dとメジャー10´との距離Ddと、端部10c付近の読取器20aとメジャー10´との距離Daとが異なっている。メジャー10´と読取器20aおよび20dとの距離が変わることで各読取器20aおよび20dが受光するメジャーからの反射光量も異なってしまうため、読取器20aと20dとで同じ色を読み取っても、出力される信号の電流値または電圧値が異なってしまうことから計測器が異なる色を読み取っていると誤認してしまう可能性がある。よって、長さの計測精度が低下してしまう恐れがある。
【0036】
一方、実施例1では、
図8(b)に示すようにメジャー10の中心10bと端部10cとの厚さ方向の距離D2が自由状態の距離D1より小さい。これにより、メジャー10端部付近での距離Daとメジャー10中央付近での距離Ddとの差が
図8(a)より小さくなる。よって、同じ色を読み取ったときに読取器20aと20dとから出力される信号の電流値または電圧値の差が小さくなり、同じ色を読み取った電流値または電圧値が所定の範囲内に収まるため、長さの計測精度を向上できる。
【0037】
一方、
図8(c)に示すようにメジャー10をX方向にほぼ平坦とした場合には、距離DaとDdはほぼ同じとすることができる。この場合には、同じ色を読み取ったときに読取器20aと20dとから出力される信号の電流値または電圧値の差がほぼ無くなり、長さの計測精度を
図8(b)の場合よりもさらに向上できる。
【0038】
図9は、実施例1におけるリールおよびメジャーの断面図である。
図9に示すように、メジャー10がリール11に巻き付けられると、メジャー10には矢印46のようにリール11の中心方向に力が加わる。これにより、メジャー10は幅方向にほぼ平坦となる。実施例1では、この状態で読取器20がパターン40の色を読み取るため、同じ色を読み取ったときに各読取器20から出力される信号の電流値または電圧値の差がほぼ無くなり、長さの計測精度を向上できる。また、
図2(b)のロックレバー31がロック状態になった際には、押え部33がメジャー10と基板26との間から外れ、バネ34が付勢する読取器20によってメジャー10がリール11側に押圧されるので、メジャー10を更に平坦に保つことが可能となる。
【実施例2】
【0039】
図10は、実施例2における計測器の断面図である。
図10に示す計測器102では、読取器20および22は同一の基板26上に設けられている。読取器20の近くには複数のローラ35が設けられ、ケース30のメジャー10が導出される孔36aの近くにもローラ36が設けられている。読取器20および読取器22が設けられた基板26はケース60内に設けられている。ケース60は、メジャー10が収納されているケース30にネジ66により固定されている。
【0040】
図11は、実施例2における読取器とメジャー付近の模式図である。
図11では、図示下面側にメジャー10が湾曲しているものとする。メジャー10がローラ35に当たると、ローラ35に当たっている部分ではメジャー10に矢印46の方向に力が加わる。これにより、メジャー10はローラ35に押し付けられ幅方向に平坦になり、ローラ35近くではメジャー10の中心10bと端部10cとの厚さ方向の距離はほとんどない状態になる。また、ローラ36はメジャー10を孔36aに案内するためのものであり、ローラ36はメジャー10にほとんど力を加えていない。これにより、孔36a付近ではメジャー10は自然状態となる。よって、孔36a付近ではメジャー10の中心10bと端部10cとの厚さ方向の距離が大きくなるが、読取器20はメジャー10の湾曲が小さくなる位置でパターン40の色を読み取るため、同じ行のカラーパターンの各パターン40と各読取器20との距離をほぼ一定に保つことができ、パターンの読取精度が向上する。一方、読取器22はY方向に配列されており、Y方向に並んだ各カラーパターンの同一桁を読み取るので、各読取器22と読取対象の各パターンとの距離はほぼ一定になると見込まれ、X方向の湾曲の影響を受けにくい。よって、読取器22は読取器20より孔36a側に設ける。
【0041】
図12(a)、
図12(b)、
図12(c)および
図12(d)は、それぞれ実施例2における計測器のケースの上面図、側面図、A-A断面図および下面図である。
図12(a)から
図12(d)に示すように、読取器20および22が収納されたケース60は、下ケース61と上ケース62とを備えている。下ケース61と上ケース62とは接合されている。下ケース61および上ケース62は例えば樹脂である。上ケース62は、読取器20および22が出射する光(例えば赤外光)に対し透明である。
【0042】
ケース60には、基板26、63およびバッテリ14が収納される。基板26上には、読取器20、22および集積回路64が設けられている。集積回路64は例えば制御部13および通信部15として機能する。メジャー10が収納されたケース30は、上ケース62の上に載置される。読取器20および読取器22が出射した光は上ケース62を透過してメジャー10に照射される。メジャー10により反射された光は上ケース62を透過して読取器20および22に至る。基板26下にはバッテリ14が収納されており、下ケース61の下面にはバッテリ14の収納領域用の蓋65が設けられている。また、基板63の下には、計測器102をオンとするためのスイッチ12が設けられており、下ケース61の下面にはスイッチ12を押圧するための押圧部67が設けられている。ケース60にはネジ66用の孔69が設けられている。ケース60は、ケース30に脱着可能である。ネジ止め以外にフック等の係止部を用いてケース60をケース30に装着してもよい。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0043】
建設現場等では、計測器は砂や粉塵が多い過酷な環境で用いられる。このため、メジャー10の表面が汚れることによって、パターンが読み取られなくなる恐れがある。また、メジャー10が折れる等破損する可能性もあり、数ヶ月間で計測器が使えなくなることも考えられる。しかし、計測器自体を交換するとなると、そのためのコストが増加してしまう。一方、実施例2では、読取器20および22が収納されたケース60をメジャー10が収納されるケース30から脱着可能としている。これにより、高価な読取器20および22を使いまわす一方、安価なメジャー10を簡単に交換することができる。ケース60内には、読取器20および22以外にも制御部13、通信部15および表示部16の少なくとも1つを設けてもよい。これにより、メジャー10が収容されている安価な部分だけを交換することができる。メジャー10は消耗品とも考えることができるため、計測器を使う上でメジャー10に関連する部分のみを交換可能とすることは、メリットが大きい。
【0044】
力が加わらない第1状態においてX方向(幅方向)に湾曲し、一方の面にパターン40が設けられている実施例1および2によれば、
図8(b)および
図8(c)のように、読取器20(第1読取器)により、メジャー10に力が加わらず幅方向に湾曲している第1状態よりも湾曲の度合いが小さい第2状態のメジャー10のX方向の複数の箇所のパターン40を光学的に読み取る。これにより、読取器20とメジャーとの距離をより均一化することが可能となり、パターン40の読取精度が向上し、長さの計測精度が向上する。
【0045】
なお、読取器22(第2読取器)は、メジャー10の湾曲が第2状態の湾曲より大きい第3状態のメジャー10のY方向(長さ方向)の複数の箇所のパターン40を光学的に読み取る。読取器22はY方向に並んだ同一桁のパターンの色を読み取るため、メジャー10がX方向に湾曲していても読取精度に影響しにくい。よって、読取器22はメジャー10の湾曲が第2状態より大きい箇所でパターンの色を読み取ってもよい。また、読取器22は、湾曲が第1状態、第2状態または平坦な状態のいずれの状態でパターン40を読み取ってもよい。
【0046】
読取器22は計測精度を向上させるためのものであり、設けられていなくてもよい。
【0047】
実施例1では、読取器20はリール11に巻き付けられた状態のメジャー10のパターン40を読み取る。これにより、読取器20はメジャー10の湾曲が小さい状態でパターン40を読み取ることができる。
【0048】
実施例2では、ローラ35(押圧部)によりメジャー10の湾曲を小さくするようにメジャー10を押圧する。読取器20はローラ35により湾曲が小さくなった状態のメジャー10のパターン40を読み取る。これにより、読取器20はメジャー10の湾曲が小さい状態でパターン40を読み取ることができる。なお、押圧部はローラ35以外にもメジャー10を押圧する部材であればよい。
【0049】
実施例2では、メジャー10を収納するケース30(第1ケース)と、読取器20および22を収納するケース60(第2ケース)は脱着可能である。これにより、高価な読取器20および22を使いまわし、安価なメジャー10を簡単に交換することができる。
【0050】
計測器100および102では、通信部15が計測した計測値を外部装置25に無線等により伝送できる。これにより、ユーザが計測した長さを記録しなくても、計測値をデータベースに格納することができる。実施例1のように計測器100は計測値を表示する表示部16を備えていてもよい。これにより、ユーザが計測した計測値を確認できる。
【実施例3】
【0051】
図13は、実施例3における読取器とメジャーを示す断面図である。
図13に示すように、実施例3では、読取器20aから20dはメジャー10が湾曲した状態においてパターン40を読み取る。メジャー10の湾曲は、
図8(a)のような自由状態の湾曲でもよく、
図8(b)のような自由状態より湾曲が小さい状態でもよい。読取器20a乃至20dの上面とメジャー10の下面との距離はDaからDdの範囲を取る。メジャー10の中心10b付近の距離Ddが最も小さく、メジャーの端部に向かうにつれて距離が大きくなり、メジャー端部10c付近での距離Daが最も大きい。
【0052】
図14は、実施例3における距離Dに対する読取器の出力電流を示す図である。縦軸は計測器の出力電流Ioutを出力電流のピーク電流I0で規格化し、%で示している。
図14に示すように、出力電流は距離が基準となるDpのときにピーク電流I0が出力されるものとする。また、距離DがDpより小さくなる、または大きくなると出力電流は次第に小さくなる。
図14では、距離DaおよびDdのときの出力電流ILはI0の80%、距離Dbのときの出力電流IMはI0の90%、距離Dcのときの出力電流IHはI0の98%である。これにより、同じ色のパターンを読み取っても読取器20aおよび20dの出力は読取器20cの出力より約20%小さくなってしまうため、実施例3ではメジャー10と読取器20との距離に応じて読取器出力を補正する。
【0053】
図15(a)は、実施例3における補正部48の一例を示すブロック図である。
図15(a)に示すように、読取器20の出力とグランドとの間に抵抗R1からR4が直列接続されている。抵抗R1と読取器20との間のノードN1は制御部13のアナログデジタル変換端子A/Dに接続されている。抵抗R1とR2との間のノードN2、抵抗R2とR3との間のノードN3および抵抗R3とR4との間のノードN4は、それぞれ制御部13の出力端子OUT1からOUT3に接続されている。
【0054】
制御部13は、読取器20a乃至20dに応じて、その出力端子の電位を調整する。読取器20aおよび20dの出力信号を取得するとき、制御部13は出力端子OUT3をローレベル(例えばグランド電圧)とする。この場合、ノードN1の電圧はVL=IL×(R1+R2+R3)となるので、制御部13は電圧VLをデジタル信号に変換する。読取器20bの出力信号を取得するときは、制御部13は出力端子OUT2をローレベルとする。この場合、ノードN1の電圧はVM=IM×(R1+R2)となる。また、読取器20bの出力信号を取得するとき、制御部13は出力端子OUT1をローレベルとする。このときのノードN1の電圧はVH=IH×R1となる。各読取器20a乃至20dとメジャー10との距離に応じて各抵抗R1からR4の抵抗値を適切に設定することにより、同一色を読み取ったそれぞれの読取器20a、20d、20bおよび20cのそれぞれに対応するノードN1の電圧VL、VMおよびVHをほぼ同じ電圧値とすることができる。これにより、湾曲しているメジャー10を読み取った場合でも、メジャー10の湾曲に起因する読取器20とメジャー10との距離Dの差を補償することができ、読取精度の向上を図ることが可能となる。
【0055】
図15(b)は、実施例3における制御部の制御を示すフローチャートである。各読取器の出力信号の補正は、
図15(a)に図示した回路を用いる他に、予め読取器毎に接点された補正係数を用いることも可能である。
図15(b)に示すように、制御部13は、各々の読取器20から出力信号を取得する(S10)。制御部13は読取器20の出力信号を補正する(S12)。
図15(b)の例では、各読取器20aの出力信号にそれぞれの読取器に対応する補正係数を乗ずる。例えば読取器20aおよび20dの出力信号には補正係数として1.2を乗ずる。読取器20bの出力信号には補正係数として1.1を乗ずる。読取器20cの出力信号には補正係数として1.02を乗ずる。これにより、同じパターンを読み取ったときの各読取器20aから20dの出力信号×補正係数をほぼ同じ値とすることができる。これにより、メジャー10の湾曲に起因する読取器20とメジャー10との距離Dの差を補償することができる。制御部13は、補正した各読取器の出力信号に基づき計測値を算出する(S14)。その後、終了する。
【0056】
読取器20aから20dが読み取った信号の補正は、
図15(a)のように回路により実現してもよいし、
図15(b)のようにソフトウェアとハードウェアとの協働により実現してもよい。その他の構成は実施例1および2と同じであり説明を省略する。
【0057】
実施例3によれば、補正部48は、読取器20aから20dが読み取った信号を複数の箇所における読取器20aから20dとメジャー10との距離DaからDdの差を補償するように補正する。これにより、メジャー10が湾曲していてもパターン40の読取精度が向上し、長さの計測精度が向上する。
【0058】
なお、読取器22はそれぞれコードの同じ桁を読み取っていることから、メジャー10の湾曲は読取器22の出力に影響しないため、補正部48は読取器22が読み取った信号を補正しなくてもよい。
【0059】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 メジャー
11 リール
13 制御部
20、22 読取器
30、60 ケース
35 ローラ
40 パターン