(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】クロロホルムの光塩素化による四塩化炭素の生成
(51)【国際特許分類】
C07C 17/10 20060101AFI20231228BHJP
C07C 19/041 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C07C17/10
C07C19/041
(21)【出願番号】P 2018569011
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(86)【国際出願番号】 US2017040426
(87)【国際公開番号】W WO2018009459
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-11
(32)【優先日】2016-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518459466
【氏名又は名称】オキシデンタル ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゼラー,ロバート エル
(72)【発明者】
【氏名】ホリス,ダレル
(72)【発明者】
【氏名】クレイマー,キース エス
(72)【発明者】
【氏名】カルダーウッド,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】クラウスメイヤー,ロドニー エル
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-21923(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAPLUS STN,REGISTRY STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射線の存在下、塩素、クロロホルム、および四塩化炭素を含む反応混合物中で塩素をクロロホルムと反応させる
反応工程を含み、クロロホルムの濃度は
前記反応工程を通じて前記反応混合物の重量に対して5000重量ppm未満であり、
前記反応工程を通じて初期段階から反応混合物中のクロロホルムに対して少なくとも化学量論的濃度の塩素を含み、前記電磁放射線は塩化物ラジカルを生成し、前記反応混合物はよく混合されている、四塩化炭素を製造する方法。
【請求項2】
前記クロロホルムの濃度は前記反応混合物の重量に対して4000重量ppm未満であり、前記塩素及び前記
クロロホルムは連続的に前記反応混合物に供給され、四塩化炭素は連続的に
生成物混合物から取り出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応混合物中の塩素の濃度は、前記反応混合物の総重量に対して0.1wt%より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電磁放射線は約200~約500nmの波長を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応工程中に前記反応混合物を撹拌して、4000より大きいレイノルズ数の定量値を持つ乱流を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応工程は、温度を約10~約70℃、圧力を約0.8~約15気圧に維持した反応器内で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応工程は、1000ppm未満のヘキサクロロエタンを含む粗生成物流を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応工程は、前記クロロホルムの99.00%超を消費する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(i)
塩素、クロロホルム、および四塩化炭素を含む反応混合物を反応器内に準備し、前記塩素及び前記クロロホルムは連続的に前記反応混合物に供給して、電磁放射線の存在下、塩素、クロロホルム、および四塩化炭素を含む反応混合物中で塩素をクロロホルムと反応させる反応工程であって、クロロホルムの濃度は前記反応工程を通じて前記反応混合物の重量に対して5000重量ppm未満であり、前記反応工程を通じて初期段階から反応混合物中のクロロホルムに対して少なくとも化学量論的濃度の塩素を含む反応工程、
(ii)前記反応混合物を電磁エネルギーに曝して、これにより前記クロロホルムの少なくとも一部を四塩化炭素に転化する工程、
(iii)四塩化炭素と、四塩化炭素以外の2500ppm未満の塩素化炭化水素とを含む生成物流を取り出す工程であって、
四塩化炭素を連続的に
生成物混合物から取り出すものである工程、および
(iv)生成物流を取り出す前記工程の後で前記生成物流の一部のみを前記反応器に戻し、これにより前記反応器に戻されなかった前記生成物流の残余部分を提供する工程であり、前記生成物流の残余部分が、後続の化学合成において、前記生成物流の残余部分から有機種を取り除く必要なく使用されるのに適している工程、を含む、四塩化炭素を製造する方法。
【請求項10】
前記反応混合物を準備する工程は、前記反応器内の四塩化炭素1000ポンド(454kg)につき1時間あたり800ポンド(363kg)未満の速度でクロロホルムを前記反応器に導入することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記反応混合物を準備する工程は、クロロホルムに対して1.02:1.00より大きいモル比で塩素を前記反応器に導入することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
理想的な連続撹拌槽反応器に近いよく混合された反応器を形成して、当該反応器内で前記反応混合物を撹拌する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年7月5日に提出された米国仮特許出願第62/358,340号の利益を主張するものであり、その内容を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明の実施の形態は、クロロホルムの光塩素化による四塩化炭素の生成を含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
四塩化炭素は、多くの重要な市販化学品の合成に有用な供給原料である。特に、四塩化炭素は、塩素化プロパン(ヒドロフルオロオレフィン類(HFO)の製造に使用される)の製造に基本的な供給原料としての役割を果たすことが多い。
【0004】
本来はクロロホルムを塩素と反応させて四塩化炭素を形成するが、ほとんどの商業的な方法ではメタンを塩素化して四塩化炭素を製造する。部分的に塩素化されたメタン(塩化メチル、塩化メチレン、およびクロロホルム)を四塩化炭素に塩素化する工業的な方法が提案されている。例えば、米国特許第9,169,177号には、部分的に塩素化されたメタンから四塩化炭素を製造する方法が開示されている。四塩化炭素への反応選択性を高めるため、この特許では90%未満の転化率を維持することが提案されている。これにより、塩化メチルまたは塩化メチレンをほとんど生成せずにクロロホルムおよび四塩化炭素を含む生成物流が製造される。完全に塩素化されていない(例えば、クロロホルム)生成物流内のこれら塩素化メタンは、さらなる塩素化のために反応器に戻される。
【0005】
四塩化炭素に対する需要が増加していることから、四塩化炭素の効率的な合成のための工業的な方法が望まれている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つ以上の実施の形態は、四塩化炭素を製造する方法を提供する。上記方法は、電磁放射線の存在下、塩素、クロロホルム、および四塩化炭素を含む反応混合物中で塩素をクロロホルムと反応させる工程を含み、クロロホルムの濃度は前記反応混合物の重量の5000重量ppm未満であり、前記反応混合物はクロロホルムに対して少なくとも化学量論濃度の塩素を含み、前記電磁放射線は塩化物ラジカルを生成し、前記反応混合物はよく混合されている。
【0007】
本発明の他の実施の形態は、四塩化炭素を製造する方法を提供する。この方法は、(i)四塩化炭素、塩素、およびクロロホルムを含む反応混合物を反応器内に準備する工程、(ii)前記反応混合物を電磁エネルギーに曝して、これにより前記クロロホルムの少なくとも一部を四塩化炭素に転化する工程、(iii)前記反応器から四塩化炭素を含む生成物流を取り出す工程、および(iv)生成物流を取り出す前記工程の後に前記生成物流の少なくとも一部を前記反応器に戻す工程を含む。
【0008】
本発明のさらに他の実施の形態は、クロロホルムの存在下で塩素を紫外光に曝す光塩素化反応によりクロロホルムを四塩化炭素に転化する類いの方法を改良することに関する。この改良は、約200~約500nmの波長を持つ電磁放射線に曝される反応領域を含むよく混合された反応器内で、5000ppm未満のクロロホルムおよび少なくとも化学量論濃度の塩素を含む四塩化炭素媒質中で光塩素化反応を行うことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1つ以上の実施の形態による方法を示す流れ図である。
【
図2】本発明の1つ以上の実施の形態による方法を示す流れ図である。
【
図3】本発明の実施の形態による方法を行うためのシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態は、少なくとも一部は、クロロホルムの光塩素化により四塩化炭素を製造する方法の発見に基づいている。本発明の実施の形態によれば、相対的に高濃度の塩素と相対的に低濃度のクロロホルムを含む四塩化炭素媒質中で反応が起こる。本発明の方法を実践することで、予想していなかったことだが、四塩化炭素に対する実質的な選択性を持って工業的に有用なレベルの転化を達成することができることが分かった。利点として、2種類のトリクロロメチルラジカルの二量化で得られるヘキサクロロエタンの形成を商業的に許容可能なレベル以下に維持することができることが発見された。その結果、本発明の実施の形態によって製造された四塩化炭素生成物は、カラッシュ反応などの続く合成過程で粗生成物流として直接用いることができ、また望ましくない重塩素化有機物を除去するのにコストをかける必要がない。
方法の概略
【0011】
本発明の1つ以上の実施の形態の概略を
図1を参照して記載することができる。
図1は塩素化方法11を示している。導入工程13で四塩化炭素供給流12’と塩素気体供給流14’により四塩化炭素12と塩素気体14が供給される。ここで、四塩化炭素12と塩素気体14は混合されて、四塩化炭素12と塩素気体14の混合物15(初期混合物15とも言う場合がある)が形成される。次いで、四塩化炭素と塩素気体の初期混合物15は、フリーラジカル形成工程17で電磁放射線源18からの電磁放射線18’に曝される。フリーラジカル形成工程17は、塩素気体、四塩化炭素、および塩素フリーラジカルの混合物19(フリーラジカル混合物19とも言う場合がある)を形成する。
【0012】
クロロホルム供給流20’は、クロロホルム20をフリーラジカル混合物19に導入して反応混合物22を形成し、反応工程21では、クロロホルム20を所望の生成物である四塩化炭素に転化し、反応副生物である塩酸24を生成する。四塩化炭素、塩素、および塩酸は生成物混合物28に含まれている。生成物混合物28は、反応工程21からの中間体流28’または粗生成物流28’と見なしてもよい。次いで、粗生成物流28’に対して1つ以上の追加の処理工程25(例えば、ストリッピング工程25)を行ってもよい。追加の処理工程25は、例えば、気体流24’を介して塩素と塩酸24の少なくとも一部を除去することで精製流26’を介して四塩化炭素26を濃縮するガス除去を含んでいてもよい。
【0013】
1つ以上の実施の形態では、精製四塩化炭素26の少なくとも一部を、再循環流29’により反応工程21に再循環しもよい。あるいは、精製四塩化炭素26の少なくとも一部を精製生成物流30’により生成物30として回収してもよい。上記のように、精製流26’は、有機種、例えば、塩素化有機物の製造でしばしば副生物となる重塩素化有機化合物などを除去する蒸留工程の必要がなく、続く化学合成で反応物流として直接用いてもよいという利点がある。そうとは言え、特定の使用のために生成物流をさらに精製することが望ましい場合もある。従って、本発明の特定の実施の形態は精製流26’をさらに精製する蒸留工程を含んでいてもよい。
【0014】
図2を参照して別の方法のスキームを記載することができる。
図2は塩素化方法31を示している。導入工程33内で供給流12’からの四塩化炭素12は、放射線源18からの電磁放射線18’と合わせて照射媒質32を準備する。混合工程35内で供給流20’からのクロロホルム20は、供給流14’からの塩素14と合わせて反応物混合物34を形成する。四塩化炭素は、この工程内でクロロホルム20と塩素14と混合してもよい。
【0015】
照射媒質32(電磁放射に曝され続ける)と反応物混合物34を工程37に導入して反応混合物22を形成し、反応工程21を行う。ここで、クロロホルム20は四塩化炭素に転化され(すなわち、クロロホルムが塩素化され)、反応副生物として塩酸を生成する。四塩化炭素と塩酸は生成物混合物28中に含まれている。生成物混合物28は反応工程21からの中間体流28’すなわち粗生成物流28’と見なしてもよい。次いで、粗生成物流28’に対してストリッピング工程25などの1つ以上の追加の処理工程25が行われてもよい。追加の処理工程25は、気体流24’を介して塩素と塩酸24の少なくとも一部を除去することで精製流26’を介して四塩化炭素26を濃縮するガス除去を含んでいてもよい。
【0016】
1つ以上の実施の形態では、四塩化炭素26の少なくとも一部を、再循環流29’を介して初期工程33および/または工程35に再循環してもよい。あるいは、精製四塩化炭素26の少なくとも一部を、精製生成物流30’を介して生成物30として回収してもよい。
図1について上述のように、蒸留などの追加の精製を回避してもよい。ただし、特定の実施の形態では、蒸留を含むさらなる精製が望ましい場合もある。
【0017】
クロロホルムの塩素化を行うシステム
図3を参照して本発明の方法を行うシステムを記述することができる。
図3は塩素化方法を行うシステム51を示している。システム51は反応槽53を含み、反応槽53は導入口57、排気口61、ランプ63、撹拌要素65、および生成物取出口67を含む。
【0018】
例示的な実施の形態によれば、クロロホルム供給流54’を介したクロロホルム54を、例えば、再循環流75’を介した四塩化炭素と混合して反応物プレミックスを形成する。次いで、供給流52’からの塩素52を(例えば、インラインスパージャー(多孔分散管)を経て)クロロホルムと四塩化炭素を含む反応物プレミックスと混合し、流77’内に反応物混合物を形成する。
図3に示すように、塩素を導入する前に、クロロホルムと四塩化炭素をインラインミキサー55等の混合装置内で混合あるいは撹拌してもよい。他の実施の形態(図示せず)では、流77’に含まれる塩素、クロロホルム、および四塩化炭素を含む混合物を同様に反応器53に導入する前に撹拌してもよい。
【0019】
次いで、供給流77’を導入口57を介して反応器53に導入する。上記のように、ランプ63からの電磁放射線により塩素化反応が生じ、これによってクロロホルムが四塩化炭素に転化される。得られた四塩化炭素生成物を生成物流66’(粗生成物流66’とも言う場合がある)として取出口67を介して反応器53から取り出す。生成物流66’はまた、クロロホルム、塩素、塩化水素、および比較的低濃度の他の副生成物のうち1種以上を含んでいてもよい。気体副生物(例えば、塩化水素および塩素)を排気口61を介して反応器53から取り出して、流79’を形成してもよい。この流を廃棄するために中和してもよく、あるいはさらに分離して塩素と塩酸を単離し、他の合成化学過程に用いてもよい。
【0020】
粗生成物流66’を槽69に輸送してもよい。槽69は脱気槽を含んでいてもよく、ここで気体流69’により軽い構成成分(例えば、塩素および塩化水素)を除去して粗生成物流66’を濃縮してもよい。軽い構成成分を流79’と混合してもよい。例えば、ポンプ71により、濃縮四塩化炭素を含む粗生成物流66’を四塩化炭素供給流75’を経て再循環ループ71’を通って反応器53に戻してもよい。あるいは、濃縮粗生成物流を四塩化炭素生成物流73’を経て保存およびさらなる使用のためにシステムから排出してもよい。1つ以上の実施の形態では、四塩化炭素生成物流73’を、例えば研磨UV反応器から供給された追加の電磁放射線(本明細書で記載するようにランプ63)に曝して、これにより生成物流内で残留クロロホルムを光塩素化してもよい。1つ以上の実施の形態では、下流のこの仕上反応器内で処理する生成物流に追加の塩素を加えてもよい。
【0021】
自明であるが、本発明の特定の実施の形態によれば、粗生成物流66’を他の過程に直接輸送することができる(すなわち流66’を直接73’に輸送することができる)限り再循環ループ71’は任意である。しかしながら、そのような実施の形態では、反応媒質として四塩化炭素の別の供給源を用いなければならない。
【0022】
従って、自明であるが、本発明の方法(およびシステム)は連続法として操作することができ、反応物は反応器に連続的に供給され、生成物は連続的に反応器から取り出される。また、四塩化炭素に対する処理要件は、システムからの生成物流により満たされてもよい(例えば、四塩化炭素生成物流66’は投入流75’を介して反応器53に再循環されてもよい)。1つ以上の実施の形態では、四塩化炭素の外部供給源(例えば、四塩化炭素12)が必要なシステムの初期起動の後、本発明の方法は、システムから再循環(例えば、ループ71’を介して再循環)された四塩化炭素から、システムの操作に必要な四塩化炭素の90%超を、他の実施の形態では95%超を、さらに他の実施の形態では99%超を受け取ることができる。
【0023】
また、自明であるが、本発明から逸脱することなくシステム51に様々な変形を加えてもよい。例えば、反応槽53に導入する前に塩素52とクロロホルム54を予備混合する必要がなく、塩素52とクロロホルム54をそれぞれの供給流を介して直接反応器53に注入してもよい。特定の実施の形態では、クロロホルム供給流54’を(例えば、浸漬管を介して)反応器内の液面より下に導入してもよい。これらまたは他の実施の形態では、同様に塩素供給流52’も、例えば、スパージャーを介して液面より下に導入してもよい。1つ以上の実施の形態では、分離した個別の供給流をまず四塩化炭素と混合して、直接反応器53に導入してもよい。また、反応器53は、一般に
図3に示すように材料が反応器の底部から上部に流れるように構成されていてもよく、あるいは材料の流れを反対にして、反応器の上部で投入流を受け取り、生成物を反応器の底部から取り出すようになっていてもよい。
【0024】
1つ以上の実施の形態では、導入口57はスパージャーまたは浸漬管などの分散装置を含んでいてもよく、容器53は複数の導入口(図示せず)を含んでいてもよい。
【0025】
1つ以上の実施の形態では、容器53は
図3に示すように単一のランプを含んでいてもよく、あるいは複数のランプを含んでいてもよい。1つ以上の実施の形態では、ランプ63は紫外線ランプ、レーザー、および発光ダイオードを含んでいてもよい。特定の実施の形態では、ランプは水銀蒸気放電灯(例えば、ハノビア灯)を含んでいてもよい。1つ以上の実施の形態では、これらランプ(例えば、ランプ63)を、容器53内に含まれる反応媒質の中に部分的に浸していてもよく、あるいは反応媒質の中に完全に浸していてもよい。他の実施の形態(図示せず)では、ランプを反応器の内部の外側ではあるが、反応器の媒質に所望の電磁放射線を放出するように配置していてもよい。
【0026】
また、反応槽53は、加熱/冷却ジャケットなどの温度調節システムを備えていてもよい。1つ以上の実施の形態では、撹拌要素65は
図3に示すような単一の機械的攪拌器を含んでいてもよく、あるいは複数の撹拌装置を採用してもよい。当該分野で知られているように、上部および底部に取り付けたミキサーを含む様々な混合構成を用いてもよい。
【0027】
1つ以上の実施の形態では、反応器58は暗領域を含むように構成されている。暗領域は、本明細書で記載する所望の光塩素化反応を生じさせる適切な量の電磁放射線に曝されない反応器内の領域である。この暗領域を設けると、反応器53内に含まれるよりも大きい体積の四塩化炭素に希釈かつ十分に混合される時間と空間が投入流77’にもたらされ、その後に適切な電磁放射線の存在で塩素がラジカル化し、かつ/または塩素ラジカルがクロロホルムと反応するという利点がある。当業者には自明であるが、暗領域はいくつかの反応機構を用いて形成されていてもよい。例えば、物理的な障害物を反応器内に置いて、これによってランプ63から出射される電磁放射線からある領域を保護してもよい。あるいは、物理的な障害物と組み合わせて、暗領域をランプ63と暗領域の所望の位置との間に適切な距離を設けて形成してもよい。当業者には自明であるように、導入口57は暗領域内またはそれに隣接して配置されることが望ましい。
【0028】
自明であるが、起動時にまず反応器53を四塩化炭素で充填して、反応が起こる初期媒質を形成する。1つ以上の実施の形態では、反応の任意の時点で塩素に対してクロロホルムが過剰にならないように、反応器は反応の開始時にクロロホルムを含まない、あるいは実質的に含まない。一旦、反応が進行中になると、塩素、クロロホルム、および必要なら四塩化炭素の反応器53への投入を調節することで反応器53内で塩素とクロロホルム、従って四塩化炭素との適切なバランス(これについては本明細書の以下で記載する)を維持することができる。
【0029】
このシステムは本発明の特定の実施の形態を参照して記載したが、当業者であれば必要以上の計算または実験を行うことなく、本明細書で記載する他の方法に対応するようにシステムを適合させることができる。
【0030】
四塩化炭素供給流の特徴
1つ以上の実施の形態では、四塩化炭素供給流(例えば、12’、75’)は実質的に四塩化炭素である。この四塩化炭素供給流は、四塩化炭素以外に感知できる程度の量の構成成分を含まない供給流を指す。1つ以上の実施の形態では、四塩化炭素供給流(例えば、12’、75’)は本質的に四塩化炭素からなり、本発明の実施の形態の基本的で新規な特性に実質的に影響を及ぼすような他の構成成分を含まない組成物を指す。1つ以上の実施の形態では、四塩化炭素供給流(例えば、12’、75’)は四塩化炭素からなる。1つ以上の実施の形態では、この四塩化炭素は工業品等級の四塩化炭素である。1つ以上の実施の形態では、四塩化炭素供給流12’および75’は約99.9~約100wt%の四塩化炭素を含む。1つ以上の実施の形態では、四塩化炭素供給流(例えば、12’、75’)は四塩化炭素以外の塩素化有機構成成分を7000ppm未満、他の実施の形態では6000ppm未満、他の実施の形態では5500ppm未満、他の実施の形態では5000ppm未満、他の実施の形態では2500ppm未満、他の実施の形態では1000ppm未満、他の実施の形態では750ppm未満、他の実施の形態では500ppm未満、他の実施の形態では100ppm未満含む。
【0031】
塩素供給流の特徴
1つ以上の実施の形態では、塩素供給流(例えば、14’、52’)は実質的に塩素である。この塩素供給流は、塩素気体以外に感知できる程度の量の構成成分を含まない供給流を言う。1つ以上の実施の形態では、塩素気体供給流(例えば、14’、52’)は本質的に塩素気体からなり、本発明の実施の形態の基本的で新規な特性に実質的に影響を及ぼすような他の構成成分を含まない組成物を指す。1つ以上の実施の形態では、塩素気体供給流(例えば、14’、52’)は塩素気体からなる。1つ以上の実施の形態では、塩素供給流(例えば、14’、52’)は約99.5~約100vol%の塩素を含む。1つ以上の実施の形態では、塩素供給流(例えば、14’、52’)は塩素以外の構成成分を5000ppm未満含み、他の実施の形態では1000ppm未満、他の実施の形態では750ppm未満、他の実施の形態では500ppm未満含む。
【0032】
1つ以上の実施の形態では、システムに導入する前に塩素気体供給流(例えば、14’、52’)を窒素または他の不活性媒体(例えばアルゴンなど)で分散する。従って、1つ以上の実施の形態では、塩素気体供給流(例えば、14’、52’)は実質的に酸素を含まず、感知できる程度の量の酸素を含まない供給流を指す。1つ以上の実施の形態では、塩素供給流(例えば、14’、52’)は酸素を2500ppm未満、他の実施の形態では1000ppm未満、他の実施の形態では750ppm未満、他の実施の形態では500ppm未満、他の実施の形態では250ppm未満含む。
【0033】
クロロホルム供給の特徴
1つ以上の実施の形態では、クロロホルム供給流20’および54’は実質的にクロロホルムであり、クロロホルム以外に感知できる程度の量の構成成分を含まない供給流を言う。1つ以上の実施の形態では、クロロホルム供給流20’および54’は本質的にクロロホルムからなり、本発明の実施の形態の基本的で新規な特性に実質的に影響を及ぼすような他の構成成分を含まない組成物を指す。1つ以上の実施の形態では、クロロホルム供給流20’および54’はクロロホルムからなる。1つ以上の実施の形態では、このクロロホルムは工業品等級のクロロホルムである。他の実施の形態では、フッ化炭素等級のクロロホルムが用いられる。さらに他の実施の形態では、クロロホルムは、クロロメタンの生成など他の合成過程からの供給を含んでいてもよい。1つ以上の実施の形態では、クロロホルム供給流20’および54’は約99.8~約100wt%のクロロホルムを含む。1つ以上の実施の形態では、クロロホルム供給流20’および54’は、クロロホルム以外の構成成分を5000ppm未満、他の実施の形態では2500ppm未満、他の実施の形態では2000ppm未満、他の実施の形態では1000ppm未満、他の実施の形態では750ppm未満、他の実施の形態では500ppm未満含む。
【0034】
反応混合物の特徴
1つ以上の実施の形態では、四塩化炭素、塩素、塩化水素、およびクロロホルムと、残留副生物(例えば、重質の塩素化有機物など)を含む反応混合物(例えば、反応混合物22または反応器53の内容物)は、四塩化炭素を液状で維持するような温度と圧力で維持されている。当業者には自明であるが、本発明の方法は液相で行われるのが望ましいので、操作圧力が高い程、操作温度は高くなる。
【0035】
1つ以上の実施の形態では、前記反応または塩素化工程(例えば、反応工程21)の間および場合によってはその前に、反応混合物(例えば、反応混合物22または反応器53の内容物)を10℃超の温度で維持する。他の実施の形態では、15℃超、他の実施の形態では20℃超で維持する。これらまたは他の実施の形態では、反応工程の前またはその最中にこの反応混合物を70℃未満の温度に維持する。他の実施の形態は60℃未満、他の実施の形態では50℃未満の温度に維持する。1つ以上の実施の形態では、反応工程の前あるいは最中にこの反応混合物を約10~約70℃の温度に維持する。他の実施の形態では約15~約60℃、他の実施の形態では約20~約50℃の温度に維持する。1つ以上の実施の形態では、四塩化炭素媒質中に比較的高濃度の塩素とクロロホルムを維持するのに十分な温度と圧力で反応混合物(例えば、反応混合物22または反応器53の内容物)を維持する。
【0036】
1つ以上の実施の形態では、反応または塩素化工程(例えば、工程21)の前あるいは最中に反応混合物(例えば、反応混合物22または反応器53の内容物)を0.8気圧超、他の実施の形態では0.9気圧超、他の実施の形態では0.95気圧超の圧力で維持する。これらまたは他の実施の形態では、反応工程の前あるいは最中に反応混合物を15気圧未満、他の実施の形態では10気圧未満、他の実施の形態では5気圧未満の圧力で維持する。1つ以上の実施の形態では、反応工程の前あるいは最中に反応混合物を約0.8~約15気圧、他の実施の形態では約0.9~約10気圧、または他の実施の形態では約0.95~約5気圧の圧力に維持する。
【0037】
1つ以上の実施の形態では、反応または塩素化工程(例えば、工程21)の前あるいは最中に反応混合物(例えば、反応混合物22または反応器53の内容物)を撹拌下で維持する。1つ以上の実施の形態では、撹拌は、反応が起こる反応器(例えば、反応器53)全体に乱流が起こるのに十分なものである。1つ以上の実施の形態では、この撹拌は、4000より大きいレイノルズ数の定量値を持つことができる乱流を達成するのに十分なものである。他の実施の形態では、10,000より大きいレイノルズ数、および他の実施の形態では20,000より大きいレイノルズ数の定量値を持つことができる乱流を達成するのに十分なものである。これらまたは他の実施の形態では、反応または塩素化工程(例えば、工程21)の前あるいは最中に反応混合物を撹拌して、約4000~約30,000、他の実施の形態では約8,000~約28,000、または他の実施の形態では約10,000~約26,000のレイノルズ数の定量値を持つことができる乱流を発生させる。1つ以上の実施の形態では、本発明の光塩素化方法は反応器(例えば、反応器53)内で行われる。この反応器は、理想的な連続撹拌槽反応器(CSTR)に近い十分な撹拌を備えたよく混合される反応器である。
【0038】
上に提案したように、クロロホルムの反応混合物(例えば、反応混合物22または反応器53の内容物)への導入ではその供給速度が反応器内のクロロホルム濃度を調節しており、その導入は、UV光の存在下がクロロホルムの四塩化炭素への反応が実質的に瞬時に生じるような量および方法で行われる。予期していなかったことであるが、反応工程(例えば、工程21)の直前または最中に四塩化炭素と相溶するクロロホルムを希釈および拡散することは、本発明の有益な結果を得るための重要なパラメータであることが発見された。
【0039】
1つ以上の実施の形態では、クロロホルムの反応器(例えば、反応器53)への供給速度を反応器内の四塩化炭素に対して定量してもよい。1つ以上の実施の形態では、クロロホルムの供給速度は、反応器内の四塩化炭素1000ポンド(454kg)につき1時間あたり10ポンド(4.54kg)超、他の実施の形態では15ポンド(6.80kg)超、他の実施の形態では25ポンド(11.3kg)超、他の実施の形態では35ポンド(15.9kg)超、他の実施の形態では45ポンド(20.4kg)超、他の実施の形態では55ポンド(24.9kg)超、他の実施の形態では65ポンド(29.5kg)超、他の実施の形態では75ポンド(34.0kg)超、他の実施の形態では85ポンド(38.6kg)超、他の実施の形態では95ポンド(43.1kg)超、他の実施の形態では110ポンド(49.9kg)超、および他の実施の形態では120ポンド(54.4kg)超である。これらまたは他の実施の形態では、クロロホルムの供給速度は、反応器内の四塩化炭素1000ポンド(454kg)につき1時間あたり1000ポンド(454kg)未満、他の実施の形態では800ポンド(363kg)未満、他の実施の形態では650ポンド(295kg)未満、他の実施の形態では500ポンド(227kg)未満、他の実施の形態では250ポンド(113kg)未満、他の実施の形態では200ポンド(90.7kg)未満、他の実施の形態では150ポンド(68.0kg)未満、他の実施の形態では125ポンド(56.7kg)未満、他の実施の形態では100ポンド(45.4kg)未満、他の実施の形態では80ポンド(36.3kg)未満、他の実施の形態では60ポンド(27.2kg)未満、他の実施の形態では40ポンド(18.1kg)未満、他の実施の形態では30ポンド(13.6kg)未満、他の実施の形態では25ポンド(11.3kg)未満である。1つ以上の実施の形態では、クロロホルムの供給速度は反応器内の四塩化炭素1000ポンド(454kg)につき1時間あたり約10~約1000ポンド(約4.54~約454kg)、他の実施の形態では約25~約650ポンド(約11.3~約295kg)、および他の実施の形態では約55~約200ポンド(約24.9~約90.7kg)である。
【0040】
1つ以上の実施の形態では、クロロホルムの希釈もまた、反応混合物(例えば、反応混合物22または反応器53の内容物)中のクロロホルム量に基づいて定量してもよい。例えば、反応混合物中のクロロホルム濃度を反応混合物の重量に対するクロロホルムの重量に基づいて定量してもよい。この反応混合物には、四塩化炭素、塩素、塩化水素、およびクロロホルムが含まれている。当業者には自明であるように、これらの量(すなわち、反応混合物中のクロロホルム)を、反応器の流出物(すなわち、取出口での)でのクロロホルムの量を測定して決めてもよい。そのクロロホルムの量は、よく撹拌された反応器内では反応領域のクロロホルムの量に相当する。そのような反応器の反応領域は、クロロホルムの塩素化が起こる(すなわち、反応混合物が適切な波長の電磁放射線に曝される)反応媒質(すなわち、反応器)内の場所を指す。1つ以上の実施の形態では、反応混合物中のクロロホルム濃度は反応混合物の総重量に対して5,000重量ppm未満、他の実施の形態では4,000重量ppm未満、他の実施の形態では3,000重量ppm未満、および他の実施の形態では2,000重量ppm未満である。1つ以上の実施の形態では、反応混合物中のクロロホルム濃度は反応混合物の総重量に対して約1~約5,000重量ppm、他の実施の形態では約50~約3,000重量ppm、および他の実施の形態では約100~約2,000重量ppmである。
【0041】
上で提案されたように、反応工程(例えば、反応工程21)の間に反応混合物中に存在する、あるいは別の方法で記述される塩素の量は、本発明を実践するための重要なパラメータの1つであると思われる。1つ以上の実施の形態では、塩素の反応混合物(例えば、容器53)への導入は、クロロホルムに対して少なくとも化学量論量または化学量論的過剰の塩素と反応するような量および方法で行われる。1つ以上の実施の形態では、反応媒質(すなわち、四塩化炭素)中の塩素濃度は、反応が行われる温度および圧力で四塩化炭素中の塩素に対して飽和濃度である。1つ以上の実施の形態では、反応器(例えば、反応器53)内の塩素の量は、反応器の上部空間内で感知できる程度の濃度の塩素を維持するのに十分な量である。反応器内の温度および圧力に対して飽和濃度になるまでクロロホルムに対して過剰な塩素を反応器に供給する程度に反応器内の塩素濃度を経時的に維持し続けるが、反応器内に塩素があれば、再循環ループにより四塩化炭素を再循環してその量を調節してもよい。
【0042】
1つ以上の実施の形態では、反応混合物に導入される塩素の量は、反応器に供給されるクロロホルムに対する塩素のモル比に基づいて定量してもよい。1つ以上の実施の形態では、例えば、反応器53に供給されるクロロホルムに対する塩素のモル比は1.00:1.00より大きく、他の実施の形態では1.02:1.00より大きく、また他の実施の形態では1.04:1.00.より大きい。1つ以上の実施の形態では、クロロホルムに対する塩素のモル比は約1.00:1.00~約1.10:1.00、他の実施の形態では約1.01:1.00~約1.08:1.00、また他の実施の形態では約1.02:1.00~約1.06:1.00.である。
【0043】
これらまたは他の実施の形態では、反応混合物中の塩素濃度に基づいて本発明の方法で用いられる塩素の量を定量してもよい。当業者には自明であるように、これらの量(すなわち反応混合物中の塩素)は、反応器の流出物中(すなわち、取出口で)の塩素の量を測定して求めてもよい。ここで、よく撹拌された反応器内の塩素の量は、反応領域での塩素の量に相当する。この反応領域は、クロロホルムの塩素化が起こる反応媒質(すなわち、反応器)内の場所を指す。1つ以上の実施の形態では、流出物中の塩素濃度は、反応混合物の総重量に対して0.01wt%超であり、他の実施の形態では0.1wt%超、他の実施の形態では0.3wt%超、他の実施の形態では0.6wt%超、他の実施の形態では1.2wt%超、他の実施の形態では1.5wt%超、他の実施の形態では1.8wt%超、および他の実施の形態では2.0wt%超である。これらまたは他の実施の形態では、反応器の流出物中の塩素濃度は、所定の温度および圧力で飽和濃度であり、他の実施の形態では反応混合物の総重量に対して5wt%未満、他の実施の形態では4.6wt%未満、および他の実施の形態では4.2wt%未満である。1つ以上の実施の形態では、反応器の流出物中の塩素濃度は、反応混合物の総重量に対して約0.01wt%から飽和濃度、他の実施の形態では約0.1~約5wt%、他の実施の形態では約0.3~約5wt%、他の実施の形態では約1.8~約4.6wt%、他の実施の形態では約2.0wt%~約4.2wt%である。
【0044】
電磁放射線の特徴
1つ以上の実施の形態では、本発明を実践するのに用いられる(例えば、ランプ63により生成される)電磁放射線は、約200~約500nmの波長を含む。他の実施の形態では約200~約400nm、他の実施の形態では約280~約380nm、および他の実施の形態では約300~約350nmの波長を含む。これらまたは他の実施の形態では、電磁放射線は相対強度に基づく波長分布によって特徴付けられ、強度の約50~約60%は約280~約435nmの波長を持つ。これらまたは他の実施の形態では、強度の約40~約50%が約300~約380nmの波長を持つ。これらまたは他の実施の形態では、強度の約20~約30%は約330~約370nmの波長を持つ。1つ以上の実施の形態では、電磁放射線は紫外光を含む。
【0045】
1つ以上の実施の形態では、電磁放射線は、40~約20,000Wで動作する1種以上の光生成灯から得られる。他の実施の形態では、約75~約18,000W、他の実施の形態では約100~約10,000Wで動作する1種以上の光生成灯から得られる。1つ以上の実施の形態では、電磁放射線は1種以上の水銀ランプから得られる。特定の実施の形態では、電磁放射線はハノビア水銀蒸気放電灯から得られる。
【0046】
生成物流の特徴
上述のように、四塩化炭素粗生成物流(例えば、流28’および66’)は、所望の四塩化炭素生成物、塩素、塩化水素、および残留副生物(例えば、重質の塩素化有機物など)を含む。1つ以上の実施の形態では、これら生成物流(例えば、28’および66’)は実質的に四塩化炭素、クロロホルム、塩化水素、更に場合によっては塩素である。これらの生成物流は、感知できる程度の量の四塩化炭素、クロロホルム、塩化水素、さらに場合によっては塩素以外の構成成分を含まない生成物流を指す。1つ以上の実施の形態では、この生成物流(例えば、28’および66’)は、本質的に四塩化炭素、さらに場合によってはクロロホルム、塩化水素、および塩素からなる。この生成物流は、本発明の実施の形態の基本的で新規な特性に実質的に影響を及ぼすような他の構成成分を含まない組成物を指す。1つ以上の実施の形態では、この生成物流(例えば、28’および66’)は、四塩化炭素、さらに場合によってはクロロホルム、塩化水素、および塩素からなる。
【0047】
1つ以上の実施の形態では、この生成物流(例えば、28’および66’)は、四塩化炭素(例えば、ヘキサクロロエタン)以外の塩素化炭化水素を2500ppm(100万分の1重量分率)未満、他の実施の形態では1000ppm未満、他の実施の形態では500ppm未満、他の実施の形態では250ppm未満、他の実施の形態では100ppm未満含む。
【0048】
1つ以上の実施の形態では、この生成物流(例えば、28’および66’)は、四塩化炭素、塩化水素、および塩素以外の構成成分を2500ppm(100万分の1重量分率)未満、他の実施の形態では1000ppm未満、他の実施の形態では750ppm未満、他の実施の形態では500ppm未満含む。
【0049】
1つ以上の実施の形態では、生成物流(例えば、28’および66’)はクロロホルムの濃度が低いという利点を有する。これは反応収率が高いことを示すものである。1つ以上の実施の形態では、クロロホルムに対する反応収率は90.00%超であり、他の実施の形態では92.00%超、他の実施の形態では95.00%超、他の実施の形態では97.00%超、他の実施の形態では98.00%超、他の実施の形態では99.00%超、他の実施の形態では99.50%超、他の実施の形態では99.99%超である。特定の実施の形態ではクロロホルムに対する収率は100%である。その結果、生成物流28’および66’はクロロホルムを6000ppm(100万分の1重量分率)未満、他の実施の形態では5500ppm未満、他の実施の形態では5000ppm未満、他の実施の形態では4500ppm未満、他の実施の形態では4000ppm未満、他の実施の形態では3000ppm未満、他の実施の形態では2000ppm未満、他の実施の形態では、1000ppm未満、他の実施の形態では500ppm未満、他の実施の形態では250ppm未満、他の実施の形態では100ppm未満、他の実施の形態では50ppm未満、他の実施の形態では10ppm未満含む。
【0050】
反応機構
本明細書で提案したように、この過程のやり方および順序は、任意の副反応(例えば、クロロホルムの二量化)の前に塩素フリーラジカルを形成し、これらラジカルとクロロホルムとの反応を促進して、これにより反応の選択性を高めていると考える。いかなる特定の理論にも束縛されるわけではないが、本発明の1つ以上の工程中に以下の反応が起こっていると考える。
Cl2+hν→2Cl* (1) 開始
CHCl3+Cl*→CCl3
*+HCl (2) 成長
CCl3
*+Cl2→CCl4+Cl* (3) 成長
CCl3
*+CCl3
*→C2Cl6 (4) 停止
CCl3
*+Cl*→CCl4 (5) 停止
Cl*+Cl*→Cl2 (6) 停止
反応1~3はクロロホルムと塩素気体を四塩化炭素とHCl副生物に転化する所望の経路である。反応5は所望の生成物を生成するが、フリーラジカル反応連鎖を停止してしまう。反応4は、反応連鎖を停止し、2種類のトリクロロメチルラジカルを二量化してヘキサクロロエタンを形成することを含む。この反応は本発明では実質的に回避されている。反応6は反応連鎖を停止するが、塩素を供給してUV光などの開始剤の存在下で再びフリーラジカルを生成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
1つ以上の実施の形態では、塩素化有機化合物の合成に粗生成物流(例えば、流28’、66’、または73’)を用いてもよい。上で示したように、本発明の1つ以上の実施の形態の方法は、分離工程(例えば、蒸留工程)を必要とせず、これらの下流の合成過程に直接用いることができる生成物流を提供して、ヘキサクロロエタンなどの重質塩素化有機副生物を除去するという利点がある。
【0052】
1つ以上の実施の形態では、本発明の実施の形態によって粗生成物流として製造された四塩化炭素は、オレフィン(例えば、エチレンまたは塩化ビニル)と直接混合して、適切な触媒の存在下で反応させて塩素化プロパンおよび/または塩素化プロペンを形成することができる。この点については、米国特許第6,187,978号および6,313,360号、および米国特許公開第2012/0310020号、2009/0216055号、および2004/0225166号を参照により本明細書に組み込む。
【0053】
本発明の実践を示すため、以下の実施例を準備して試験を行った。しかしながら、以下の実施例は本発明の範囲を限定すると見なされるべきではない。本発明は請求項により規定されている。
【実施例】
【0054】
実施例1~5
実施例1~5のすべての反応は、ジャケットを装着した1リットルのパイレックス撹拌反応器(Ace反応器#7864-12)内でジャケットを装着した水冷却石英浸漬灯ウェル(Ace#7874-38)を用いて行われた。450ワットの中程度の圧力の水銀蒸気放電灯(Ace#7825-35)で照射した。磁性撹拌棒を用いて確実に反応器内が十分に混合されるようにした。反応器内の混合条件はレイノルズ数が約24,400になるように算出した。各実験を約6時間に亘って行った。実施例を30m×0.53mmのDB-624カラムと熱伝導度型検出器(TCD)を用いてガスクロマトグラフで分析した。ヘキサクロロエタン(検出された唯一の望ましくない副生物)の濃度を測定し、それを形成するのに消費したクロロホルムの百分率を計算し、100%から減じることで選択性を算出した。各実施例の関連するデータを以下の表1にまとめて示す。
【0055】
実施例1
4.4wt%のクロロホルムと95.6wt%の四塩化炭素を含む1158グラムの混合物を反応器に充填した。反応温度を35℃に維持した。UVランプを点灯した。5分後、100wt%のクロロホルムを0.29g/分の速度で供給し、100wt%の塩素気体を6時間の間、0.18g/分の速度で溶液に拡散させた。化学量論的に反応に必要な量の70%で塩素を供給した。試料を6時間の間、1時間ごとに採取した。クロロホルムの四塩化炭素に対する選択性を求めたところ、65.2%であり、クロロホルムの残部はヘキサクロロエタンを生成した。1時間ごとに採集したデータは、通常の実験変動の他は経時的な選択性において変化を示さなかった。
【0056】
実施例2
1196グラムの100wt%の四塩化炭素を反応器に充填した。反応温度を35℃に維持した。UVランプを点灯した。4分後、100%のクロロホルムを0.30g/分の速度で供給し、100wt%の塩素を6時間10分の間に0.18g/分の速度で溶液に拡散させた。化学量論的に反応に必要な量で塩素を供給した。試料を1時間ごとに採取した。クロロホルムの四塩化炭素に対する選択性を求めたところ、約100%であった。クロロホルムのヘキサクロロエタンへの転化率は0.003%未満(分析法の検出限界で検出できなかった)であった。1時間ごとに採集したデータは、通常の実験変動の他は経時的な選択性において変化を示さなかった。
【0057】
実施例3
1190グラムの100wt%の四塩化炭素を反応器に充填した。反応温度を25℃に維持した。UVランプを点灯した。4分後、100wt%のクロロホルムを0.30g/分の速度で供給し、100wt%の塩素を5時間の間、0.18g/分の速度で溶液に拡散させた。化学量論的に反応に必要な量で塩素を供給した。試料を1時間ごとに採取した。クロロホルムの四塩化炭素に対する選択性を求めたところ、約100%であった。クロロホルムのヘキサクロロエタンへの転化率は0.003%未満(分析法の検出限界で検出できなかった)であった。1時間ごとに採集したデータは、通常の実験変動の他は経時的な選択性において変化を示さなかった。
【0058】
実施例4
1207グラムの100wt%の四塩化炭素を反応器に充填した。反応温度を35℃に維持した。塩素を0.18g/分の速度で拡散させた。30分後にUVランプを点灯した。さらに5分後に、100%のクロロホルムを0.31g/分の速度で供給した。化学量論的に反応に必要な量の過剰量で塩素を供給した。試料を1時間ごとに採取した。クロロホルムの四塩化炭素に対する選択性を求めたところ、約100%であった。クロロホルムのヘキサクロロエタンへの転化率は0.003%未満(分析法の検出限界で検出できなかった)であった。1時間ごとに採集したデータは、通常の実験変動の他は経時的な選択性において変化を示さなかった。
【0059】
実施例5
約5000重量ppmのクロロホルムと残部の四塩化炭素を含む混合物(1225グラム)を反応器に充填した。反応温度を35℃に維持した。UVランプを点灯した。5分後、100wt%のクロロホルムを0.30g/分の速度で供給し、100wt%の塩素気体を5時間の間、0.18g/分の速度で溶液に拡散させた。化学量論的に反応に必要な量の94%で塩素を供給した。試料を1時間ごとに採取した。クロロホルムの四塩化炭素に対する選択性を求めたところ、81.4%であった。クロロホルムの残部はヘキサクロロエタンを生成した。1時間ごとに採集したデータは、通常の実験変動の他は経時的な選択性において変化を示さなかった。
【0060】
【0061】
表1のデータは、実施例1および5は本発明の実践の範囲外であることを示している。というのは、四塩化炭素への転化率および反応の選択性が許容可能なレベルより低かったためである。実施例1および5から得た生成物流はいずれも、生成物流をさらに蒸留してヘキサクロロエタンを除去する必要があった。実施例2、3、および4は非常に利点のある結果を示しており、この結果は実施例1および5中に存在する過剰なクロロホルムがこの反応に悪影響を及ぼすことを示唆している。
【0062】
実施例6~9
実施例6~9では、実施例1~5で用いた反応器システムを修正して、循環ループを設けた。この循環ループにより、クロロホルムを反応器の外で四塩化炭素と混合し、クロロホルム、四塩化炭素、および塩素のブレンドを反応器に導入する前に塩素をこの混合物中に分散させることができるようにした。磁性撹拌棒を用いて、確実に反応器がよく混合されるようにした。反応器内の混合条件はレイノルズ数が約20,000になるように算出した。各実験は、約90分の時間間隔に亘って行われた。生成物を反応器の上部から生成物受容部に送って、各実験を通して反応器内の液体を一定の体積に維持した。ホウケイ酸ガラスのフィルター(Ace#7835 44)を取り付けた100ワットの中程度の圧力の水銀蒸気放電灯(Ace#7825-30)を用いて、放射線がより低い波長で減衰するようにした。各実施例からの関連するデータを以下の表2にまとめて示す。
【0063】
実施例6
957グラムの四塩化炭素を反応器に充填した。反応温度を35℃に維持した。UVランプを点灯した。5分後、100wt%のクロロホルムを5.30g/分の速度で供給し、100wt%の塩素気体を90分間の間、3.42g/分の速度でこの溶液に拡散させた。化学量論的に反応に必要な量の112%で塩素を供給した。試料を30分ごとに採取した。クロロホルムの転化率は98.90%であり、クロロホルムの四塩化炭素に対する選択性は99.94%であった。残部は反応してヘキサクロロエタンを生成したクロロホルムであった。
【0064】
実施例7
四塩化炭素中に1.02%のクロロホルムを含む混合物(953グラム)を反応器に充填した。反応温度を35℃に維持した。UVランプを点灯した。5分後、100wt%のクロロホルムを5.78g/分の速度で供給して、100wt%の塩素気体を90分間の間、3.42g/分の速度でこの溶液に拡散させた。クロロホルムの供給する反応に化学量論的に必要な量の100%で塩素を供給した。試料を30分ごとに採取した。クロロホルムの転化率は97.79%であり、クロロホルムの四塩化炭素に対する選択性は99.84%であった。残部は反応してヘキサクロロエタンを生成したクロロホルムであった。
【0065】
実施例8
四塩化炭素中に8.93%のクロロホルムを含む混合物(1044グラム)を反応器に充填した。反応温度を35℃に維持した。UVランプを点灯した。5分後、100wt%のクロロホルムを5.76g/分の速度で供給し、100wt%の塩素気体を90分間の間、3.42g/分の速度でこの溶液に拡散させた。クロロホルムの供給する反応に化学量論的に必要な量の100%で塩素を供給した。試料を30分ごとに採取した。クロロホルムの転化率は90.99%であり、クロロホルムの四塩化炭素に対する選択性は99.67%であった。残部は反応してヘキサクロロエタンを生成したクロロホルムであった。
【0066】
実施例9
この実施例では、UVランプからホウケイ酸ガラスのフィルターを取り外した。四塩化炭素中に1.24%のクロロホルムを含む混合物(963グラム)を反応器に充填した。反応温度を35℃に維持した。UVランプを点灯した。5分後、100wt%のクロロホルムを5.78g/分の速度で供給し、100wt%の塩素気体を90分間の間、3.42g/分の速度でこの溶液に拡散させた。クロロホルムの供給する反応に化学量論的に必要な量の100%で塩素を供給した。試料を30分ごとに採取した。クロロホルムの転化率は98.33%であり、クロロホルムの四塩化炭素に対する選択性は99.60%であった。残部は反応してヘキサクロロエタンを生成したクロロホルムであった。
【0067】
【0068】
表2のデータは、実施例7、8、および9は本発明の実践の範囲外であることを示している。というのは、四塩化炭素への反応の選択性が許容可能な範囲外であるからである。例えば、実施例7では、達成された選択性は99.84%に過ぎず、このため、得られた生成物流は1500ppmを越えるヘキサクロロエタンを含んでいた。これは、四塩化炭素を原料として用いるほとんどの合成過程で許容できない濃度である。従って、ヘキサクロロエタンを除去するために生成物流のさらなる蒸留が必要である。実施例7、8、および9は反応時の過剰なクロロホルムの存在のために不適格となったと考えられる。
【0069】
当業者には自明だが、本発明の範囲および精神を逸脱することなく様々な修正および変更を加えることができる。本発明は、本明細書で記載した例示的な実施の形態の通りに限定されるものではない。