(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 7/10 20060101AFI20231228BHJP
F28F 9/00 20060101ALI20231228BHJP
F28F 9/22 20060101ALI20231228BHJP
F28F 19/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F28D7/10 Z
F28F9/00 331
F28F9/22
F28F19/00 511Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019080860
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2022-04-13
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519147603
【氏名又は名称】ジョアン・ジ・デウス・エ・フィーリョス・ソシエダデ・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】JOAO DE DEUS & FILHOS, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ペドロ・バラタ
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-080203(JP,A)
【文献】特開2013-053620(JP,A)
【文献】特開2009-114924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/00-9/04
F28F 9/00-9/26,19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流体を搬送するための平行な複数のチューブ(31)と、
前記複数のチューブの各々の端部が液密に挿入される複数の開口部をそれぞれ有する一対のヘッダープレート(11,21)と、
前記一対のヘッダープレート(11,21)に液密に接続され、第2の流体を収容するための内容積部であって前記チューブ(31)が配置される内容積部を、前記一対のヘッダープレート(11,21)とともに画定するジャケット(40)と、
前記ジャケット(40)の壁部(41)に接続される流路(51,61)であって、前記壁部(41)に形成された開口部(53,63)を通じて前記内容積部と流体連通する流路(51,61)と、
を備え、
前記ジャケット(40)の前記壁部(41)は、前記流路(51,61)に対して反対側で、前記複数のチューブ(31)の側壁部(31a)に接続され、
前記ジャケット(40)の前記壁部(41)は、
前記ジャケット(40)の前記壁部(41)と一体に形成された複数のチューブカバー延長部(41a,41b)を備え、
前記複数のチューブカバー延長部(41a,41b)の各々は、前記開口部(53,63)の対向する縁部の間に延在
し、
前記ジャケット(40)の前記壁部(41)には、前記複数のチューブカバー延長部(41a,41b)に対して交互に複数のスロット(53a,63a)が形成され、
前記複数のチューブカバー延長部(41a,41b)の各々は、対応するチューブ(31)の側壁部(31a)に接続されている、
熱交換器。
【請求項2】
前記複数のチューブ(31)に対して交互に複数の隙間が形成され、前記複数のスロット(53a,63a)の各々は、前記ジャケット(40)の前記内容積部と前記流路(51,61)との間を流体連通させるために、対応する隙間と重なり合う、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記ジャケット(40)の前記壁部(41)と前記複数のチューブカバー延長部(41a,41b)とは、前記複数のチューブ(31)の前記側壁部(31a)に蝋付けされている、請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記流路(51,61)は、前記ジャケット(40)の前記壁部(41)に蝋付けされている、請求項1~3のいずれか1つに記載の熱交換器。
【請求項5】
前記複数のチューブ(31)は、ガス状流体を搬送するように構成され、前記ジャケット(40)は、液体クーラントを収容するように構成されている、請求項1~4のいずれか1つに記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して熱交換器、特に自動車用途に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特に、
第1の流体を搬送するための平行な複数のチューブと、
前記複数のチューブの各々の端部が液密に挿入される複数の開口部をそれぞれ有する一対のヘッダープレートと、
前記一対のヘッダープレートに液密に接続され、第2の流体を収容するための内容積部であって前記チューブが配置される前記内容積部を、一対のヘッダープレートとともに画定するジャケットと、
前記ジャケットの壁部に接続される流路であって、前記壁部に形成された開口部を通じて前記内容積部と流体連通する前記流路と、
を備え、
前記壁部は、流路に対して反対側で、前記チューブの側壁部に接続される、
熱交換器に関する。
【0003】
このタイプの熱交換器は、例えば、内燃機関エンジンの吸気系で使用されるウォーターチャージエアクーラー(WCAC)を備えている。これらのWCACにおいて、水性混合物は、水路に接続されるWCACのジャケットを通じて循環される。ジャケットを通過する水性混合物は、熱交換器のチューブによって内燃機関エンジンの吸気系に向けて搬送されるガス状流体(空気又はガス状混合物)を冷却するために使用される。
【0004】
このタイプの熱交換器において、水路の弱点は、クーラント側の吸入口及び吐出口であり、すなわち、対応するジャケットの壁部に形成される吸入口及び吐出口の各開口部である。特に、チューブにおける応力レベルは、ジャケットがチューブをカバーしていない吸入口及び吐出口の開口部の領域で最も高いことを発見している。更に、ジャケットがチューブをカバーしていない吸入口及び吐出口の開口部の領域は、クーラントの流れにさらされ、当該開口部の領域においてはクーラントの流れがチューブの腐食を促進する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、既知の熱交換器の上述の欠点を克服できる熱交換器の構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記で定義したタイプの熱交換器を提案する。前記ジャケットの壁部は、前記開口部の対向する縁部の間に延在する複数のチューブカバー延長部を備え、前記ジャケットの壁部には、前記複数のチューブカバー延長部に対して交互に複数のスロットが形成され、当該複数のチューブカバー延長部の各々は、対応するチューブの側壁部に接続されている。
【0007】
上述の構成によれば、前記ジャケットは、吸入口/吐出口の開口領域も含めてチューブの全長をカバーする。この構成は、応力集中につながるチューブのカバー領域と非カバー領域との間の遷移部を排除する。更に、吸入口/吐出口の開口領域において、チューブの代わりに腐食されるのは、前記ジャケットであることが好ましい。このことは、チューブの寿命を増加させ、クーラントと空気回路との間の漏れを防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
限定されるものではないが、本発明の好適な実施形態が添付図面を参照しながら記載される。
【
図1】
図1は、本発明に係る熱交換器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
例えば、ウォーターチャージエアクーラー(water charge air cooler)などの熱交換器が図面に示されている。熱交換器は、吸入口ヘッダープレート11と吐出口ヘッダープレート21とを備え、両方ともアルミニウムなどの金属部材である。これらのヘッダープレート11,21は、それぞれ、既知の方法で吸入口ヘッダータンク(図示せず)及び吐出口ヘッダータンク(図示せず)と接続されることを意図している。また、
図2は、ヘッダープレートと対応するヘッダータンクとの間の接続部のシーリング用のガスケット13,23を示している。
【0010】
更に、熱交換器1は、一対のヘッダープレート11,21の間に延在する平行で扁平な複数のチューブ31を有するコア30を備えている。複数のチューブ31は、例えばアルミニウムなどの金属部材である。各チューブ31はそれぞれ、一対のヘッダープレート11,21の一方又は他方に形成された開口部又はスロットに挿入される互いに対向する端部を有している。各チューブ31は、略長方形断面を有し、一対の対向する長辺側壁部と、当該長辺側壁部を相互接続し且つ当該長辺側壁部よりも短い一対の対向する短辺側壁部と、を備えている。図面においては、一対の短辺側壁部の一方のみが、符号31aで示されている。
【0011】
第1の流体、具体的には空気又はガス状混合物などのガス状流体は、吸入口ヘッダープレート11と複数のチューブ31との間の流体連通を通じて熱交換器の吸入口ヘッダータンクから、複数のチューブ31と吐出口ヘッダープレート21との間の流体連通を通じて熱交換器の吐出口ヘッダータンクに流れるように設計されている。熱交換器は、吸入口ヘッダータンクと吐出口ヘッダータンクとを通じて、例えば内燃機関エンジンの吸気系を有する第1の流体用の流体回路(図示せず)と接続されてもよい。
【0012】
第2の流体、具体的には水又は水性混合物などの液体クーラントは、コア30の周囲及び複数のチューブ31の間の隙間を通じて流れ、複数のチューブ31の中を流れる第1の流体と熱交換するように設計されている。フィンプレート32は、複数のチューブ31の間の隙間内と複数のチューブ31に隣接するコア30の両端部とに配置される。
【0013】
更に、熱交換器は、アルミニウムなどの金属部材のジャケット40を備えている。ジャケット40は、一対のヘッダープレート11,21と液密に接続され、一対のヘッダープレート11,21とともに第2の流体を受け入れ/搬送するための内容積部を画定する。複数のチューブ31は、ジャケット40及び一対のヘッダープレート11,21によって形成される内容積部内に配置される。
【0014】
図面に示される実施形態において、ジャケット40は、長方形断面を有し、一対の対向する第1の壁部41,42と、当該一対の対向する第1の壁部41,42に対して相互接続される一対の対向する第2の壁部43,44と、を備えている。複数の壁部41~44は、互いに接続され、従来の方法で一対のヘッダープレート11,21に接続される。
【0015】
更に、熱交換器は、一対のヘッダープレート11,21とともにジャケット40によって形成される内容積部に第2の流体を搬入出するための吸入口流路51及び吐出口流路61を備える。両方の流路51,61は、アルミニウムなどの金属部材である。各流路51,61は、ジャケット40の壁部に接続される。図面で示される例において、両方の流路51,61は、ジャケット40の第1の壁部の一方である壁部41と接続される。図面で示される例において、各流路51,61は、細長い凹形の殻のように形成され、各流路のリム部51a,61aは、ジャケット40の壁部41と接続される(
図4及び
図5参照)。それにより、各流路51,61の凹面側は、ジャケット40の壁部41に対面する。
【0016】
各流路51,61は、ジャケット40の壁部41に形成される各開口部53,63を通じてジャケット40の内容積部と流体連通する。
図5に示されるように、この壁部41は、流路51,61に対して反対側で、複数のチューブ31の短辺側壁部31aと接続される。通常、
図5に示されるように、ジャケット40の全ての壁部41~44は、複数のチューブ31の側壁部と接続されてもよく、特に一対の第1の壁部41,42は、複数のチューブ31の短辺側壁部31aと接続されてもよい。
【0017】
また、
図2は、第2の流体用の液体クーラント回路などの流体回路(図示せず)に熱交換器を接続するように、吸入口流路51及び吐出口流路61に固定される吸入口コネクタ55及び吐出口コネクタ65を示している。
【0018】
一実施形態によれば、複数のチューブ31と、一対のヘッダープレート11,21と、ジャケット40とは、互いに接続され、複数の流路51,61は、ジャケット40に接続され、複数のコネクタ55,65は、従来の方法で、特に蝋付けによって複数の流路51,61に接続される。
【0019】
図2及び
図5を参照すると、複数の開口部53,63は、ジャケット40の第1の壁部41に形成され、それぞれの開口部53,63において、各開口部53,63の対向する縁部の間に延在する複数のチューブカバー延長部41a,41bを備える。それにより、各開口部53,63において複数のチューブカバー延長部41a,41bは、複数のチューブカバー延長部41a,41bに対して交互に複数のスロット53a,63aを形成する。各チューブカバー延長部41a,41bは、対応するチューブ31の各側壁部31aに接続される。このようにして、各チューブ31は、チューブ31がジャケット40の対応するチューブカバー延長部41a,41bによって覆われる複数の開口部53,63の部分を含めて、一対のヘッダープレート11,21の間に挟まれる各チューブ31の全長に渡ってジャケット40の壁部41によって覆われる。具体的には、各チューブカバー延長部41a,41bは、ジャケット40の全体とともに各チューブ31の側壁部31aに蝋付けされている。
【0020】
一方、各スロット53a,63aは、ジャケット40の内容積部と複数の流路51,61との間を流体連通させるために、隣接する複数のチューブ31の間、又はチューブ31とジャケット40の一対の第2の壁部43,44との間の各隙間と重なり合っている。
【0021】
複数のチューブカバー延長部41a,41bは、ジャケット40の壁部41と一体に形成されている。例えば、複数のチューブカバー延長部41a,41bは、ジャケット40の壁部41が形成される金属シートに適用される打ち抜き加工によって、複数のスロット53a,63aに対応する金属シート部分が除去されることで得られる。