IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘンペル エイ/エスの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】新規なポリシロキサン系汚損抑制塗装系
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20231228BHJP
   B05D 1/38 20060101ALI20231228BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231228BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B32B27/18 F
B05D1/38
B05D7/24 302Y
B05D7/24 303A
B32B27/00 101
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019125497
(22)【出願日】2019-07-04
(62)【分割の表示】P 2016503551の分割
【原出願日】2014-03-20
(65)【公開番号】P2019196012
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2019-07-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】13160169.2
(32)【優先日】2013-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501477945
【氏名又は名称】ヘンペル エイ/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・メラー・オルセン
(72)【発明者】
【氏名】ドルテ・ヒレルプ・ハンセン
(72)【発明者】
【氏名】アナス・ブロム
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】山崎 勝司
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/000477(WO,A1)
【文献】特表2014-521758(JP,A)
【文献】国際公開第2012/175459(WO,A1)
【文献】特表2014-519978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B05D1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、前記第2の被膜は前記第1の被膜の上に位置し、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記ポリシロキサン系バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、ピリチオン錯体である1つ以上の殺生物剤を含み、及び
b)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記ポリシロキサン系バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、
ここに、前記第2の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含み、前記親水性変性ポリシロキサン油は、バインダ成分又は架橋剤(存在する場合)との反応が可能な基を含まないように選択され、前記第1の被膜及び前記第2の被膜は以下の項目の少なくとも1つにおいて異なる:
i)殺生物剤の含量及び/又は種類
ii)親水性変性ポリシロキサン油の含有量及び/又は種類
、汚損抑制塗装系。
【請求項2】
前記第1の被膜は、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油をさらに含み、前記親水性変性ポリシロキサン油は、バインダ成分又は架橋剤(存在する場合)との反応が可能な基を含まないように選択される、請求項1に記載の汚損抑制塗装系。
【請求項3】
親水性変性ポリシロキサン油がシリコン反応性基を全く含まない、請求項1または2に記載の汚損抑制塗装系。
【請求項4】
親水性変性ポリシロキサン油がポリシロキサン油の非ケイ素起源の親水性オリゴマ/ポリマ部分での修飾によって得られる、請求項1~3のいずれか1項に記載の汚損抑制塗装系。
【請求項5】
親水性変性ポリシロキサン油がポリオキシアルキレン基での修飾により得られる、請求項1~4のいずれか1項に記載の汚損抑制塗装系。
【請求項6】
親水性変性ポリシロキサン油が親水性オリゴマ又はポリマ基で修飾されており、前記親水性オリゴマ又はポリマが3~200個の反復単位を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の汚損抑制塗装系。
【請求項7】
親水性変性ポリシロキサン油が親水性オリゴマ又はポリマ基で修飾されており、前記親水性オリゴマ又はポリマが、100~50,000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の汚損抑制塗装系。
【請求項8】
親水性変性ポリシロキサン油が親水性オリゴマ又はポリマ基で修飾されており、前記親水性オリゴマ又はポリマ基が、親水性変性ポリシロキサン油の総重量の25~60%の範囲で存在する、請求項1~7のいずれか1項に記載の汚損抑制塗装系。
【請求項9】
前記親水性変性ポリシロキサン油がポリ(オキシアルキレン)-変性ポリシロキサンである、請求項1~8のいずれか1項に記載の汚損抑制塗装系。
【請求項10】
前記殺生物剤が銅ピリチオンである、請求項1~9のいずれか1項に記載の汚損抑制塗装系。
【請求項11】
前記第1の被膜が基板上に調製され、前記第2の被膜が最外層である、請求項1~10のいずれか1項に記載の汚損抑制塗装系。
【請求項12】
少なくとも硬化した第1の被膜及び硬化した第2の被膜を備え、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記ポリシロキサン系バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、ピリチオン錯体である1つ以上の殺生物剤を含み、及び
b)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記ポリシロキサン系バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第2の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含み、前記硬化した第2の被膜の平衡水接触角は、0°~27°の範囲内である、請求項1記載の汚損抑制塗装系。
【請求項13】
基材の表面に汚損抑制塗装系を構築する方法であって、連続するステップとして、
a)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を、前記基材の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、請求項1~12のいずれかに記載の硬化した第1の被膜を形成するステップと、
b)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を前記硬化した第1の被膜の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、それぞれ請求項1~12のいずれかに記載の硬化した第2の被膜を形成するステップと、ここに前記第1の被膜と前記第2の被膜とは同一でない、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺生物剤及び/又は酵素等の有効成分を含む新規な多層ポリシロキサン系汚損抑制塗装系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコーン配合物は、物理的手段に依存しており、これは主に、生物汚損の少ない表面を形成するための弾性率及び表面張力の要因となる。従来のポリジメチルシロキサン(PDMS)塗装は、従来の殺生物剤に基づく防汚塗装に比べ抵抗低減が改善されているが、時間と共に生物汚損に対抗することが困難となるため、抵抗低減の利点が減少することが分かっている。
【0003】
したがって、従来のポリシロキサン系汚損除去塗装組成物の利点と、殺生物剤に基づく防汚塗装組成物の利点とを組み合わせた、汚損抑制ポリシロキサン系塗装組成物が必要である。
【0004】
WO2011/076856A1では、ポリシロキサン系バインダ系と、乾燥重量で0.01~20%の1つ以上の親水性変性ポリシロキサンと、1つ以上の殺生物剤とを含む汚損抑制塗装組成物を開示している。親水性変性ポリシロキサンは、殺生物剤の溶解及び塗装表面への輸送を促進すること、及び高い親水性は、高い溶出率による殺生物剤の早期枯渇につながる可能性があることが開示されている。
【0005】
WO2012/175459A1では、殺生物剤を含む第1の層と、殺生物剤を含まない又は後に含まなくなる後続層とによる塗装系を開示している。層は、ポリオルガノシロキサンを含み得る。汚損除去特性は、後続層(群)組成物が乾燥及び硬化時に全般的に疎水性又は両親媒性の汚損除去被膜を形成する際に一般に改善され、好ましくは、後続層(群)の平衡水接触角は、23℃で30度より大きいことが開示されている。
【0006】
WO2013/000479Aでは、ポリシロキサン系バインダマトリクスと1つ以上の殺生物剤とを含む硬化塗膜であって、バインダマトリクスが、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでいるものを開示している。
【0007】
WO2013/000477Aでは、乾燥重量で被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスと、1つ以上の酵素とを含む硬化汚損抑制被膜が開示されている。被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含み得ること、及びバインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含み得ることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態の目的は、代替となる多層ポリシロキサン系汚損抑制塗装系を提供し、汚損抑制特性を更に向上させることである。更に、殺生物剤溶出率を調節して、時間に対する依存を少なくすることが可能な塗装系が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者(ら)は、特別に設計された汚損抑制塗装系により、この目的を達成可能であることを見出した。
【0010】
したがって、本発明者らは、驚くべきことに、塗装の親水性表面(即ち、高表面エネルギ)から分離された、有効成分の貯蔵場所を含むポリシロキサン系汚損抑制塗装系により性能が改善されることを発見した。したがって、本明細書に記載の汚損抑制塗装系は、有効成分の貯蔵場所を、他のポリシロキサン系層の下に位置する(第1の)ポリシロキサン系層内に有する。汚損抑制特性に必須となるのは、塗装系に含まれる親水性オリゴマ/ポリマ部分及び/又は親水性変性ポリシロキサン油である。
【0011】
本明細書に記載の塗装系内において、有効成分(群)は、貯蔵場所から塗装表面へ拡散する。従来の塗装と比較して、有効成分は、より有効に用いられる。更に、従来の塗装と比較して、リザーバから海水への有効成分の徐放が改善される。この改善された徐放は、更に長期間維持される。
【0012】
本発明者らは、これにより、改善された汚損抑制特性を長期間に亘り提供する塗装系の発明に成功した。
【0013】
したがって、本発明は、少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、殺生物剤及び酵素から選択された1つ以上の有効成分を含み、
b)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、
前記1つ以上の有効成分が殺生物剤(群)を含む場合、
c)前記第1の被膜の前記バインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでおり、及び/又は、前記第1の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含み、又は、
d)前記第2の被膜の前記バインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでおり、及び/又は、前記第2の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含む、汚損抑制塗装系に関する。
【0014】
本発明の実施形態は、こうした少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、殺生物剤及び酵素から選択された1つ以上の有効成分を含み、
b)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、
c)前記第1の被膜及び/又は前記第2の被膜の前記バインダマトリクスは、その一部として、
親水性オリゴマ/ポリマ部分、及び/又は
【0015】
1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含んでいる、汚損抑制塗装系に関する。
【0016】
そのため、第1の態様において、本発明は、少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、殺生物剤及び酵素から選択された1つ以上の有効成分を含み、
b)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、
c)前記第2の被膜の前記バインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでおり、及び/又は、前記第2の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含む、汚損抑制塗装系に関する。
【0017】
第2の選択的な態様において、本発明は、少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、殺生物剤及び酵素から選択された1つ以上の有効成分を含み、
b)前記第1の被膜の前記バインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでおり、及び/又は前記第1の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含み
c)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表される、汚損抑制塗装系に関する。
【0018】
第3の選択的な態様において、本発明は、少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、1つ以上の酵素を含み、
b)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表される、汚損抑制塗装系に関する。
【0019】
以下の開示及び説明を読むことにより、当業者は、幾つかの比、濃度、及び他の種類の単位が明らかに「湿潤膜」又は「湿潤厚さ」を示すことを理解するであろう。こうした場合、前記比、濃度、又は単位は、湿潤塗料の塗布直後に対応する。
【0020】
他の場合においては、乾燥重量が、こうした比、濃度、又は他の単位の基準となる。こうした場合、前記比、濃度、又は単位は、海洋条件に晒されていない硬化組成物に適用される。例えば、海水に晒された際には、こうした記載の比、濃度、及び他の単位(例えば、有効成分の濃度)は、本明細書に記載した作用機序の結果として、一般に変化する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
汚損抑制塗装系
本発明は、特に、少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系に関し、以下において、発明の3つの選択的な態様を更に詳細に説明している。
【0022】
「汚損抑制」(同じく「汚損除去」)という表現は、表面、特に、水性環境又は水性液体に晒される(例えば、槽内、管内等の)表面の、全ての種類の生物汚損(即ち、表面における生物の付着)に関することを理解されたい。しかしながら、本明細書に定めた塗装は、海洋生物汚損、即ち、海洋環境、特に海水に表面が晒されることに関連して発生する生物汚損の回避又は低減に特に関係すると考えられる。
【0023】
更に、硬化した第1の被膜及び硬化した第2の被膜は、第1の被膜の上に第2の被膜が作製されるような形で、基材上に作製されることを理解されたい。また、第1の被膜は、既存の塗装層、例えば、防食塗装層、又はタイコート層、又は経年劣化した防汚若しくは汚損除去被膜等の上に作製しても、未処理基材上に直接作製してもよいことを理解されたい(詳しくは下記「塗装組成物の塗布」の節を参照)。更に、第2の被膜は、最外層であることが好ましいが、第2の被膜は、原則として、他の塗装層によりオーバコートされてもよい。
【0024】
したがって、汚損抑制塗装系は、少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える。まず、第1の被膜及び第2の被膜内に存在するポリシロキサン系バインダマトリクス(但しマトリクスは必ずしも同一ではない)を、下記「ポリシロキサン系バインダマトリクス」の節において説明する。次に、硬化した第1の被膜の具体的な特徴を下記「硬化した第1の被膜」の節において説明し、硬化した第2の被膜の具体的な特徴を、下記「硬化した第2の被膜」の節において更に説明する。
【0025】
第1の被膜と第2の被膜とは同種(即ち、ポリシロキサン系)であるが、第1の被膜と第2の被膜とは同一ではないことを理解されたい。特に、第1の被膜と第2の被膜とは、i)有効成分の含有量及び/又は種類、ii)(バインダマトリクスの)親水性オリゴマ/ポリマ部分の含有量及び/又は種類、及びiii)親水性変性ポリシロキサン油の含有量及び/又は種類のうち少なくとも1つに関して異なることが好ましい。
【0026】
第1の被膜及び第2の被膜がどのように作製されるかについての他の実施形態は、下記「塗装系の塗布」及び「海洋構造物」の節において説明している。
【0027】
ポリシロキサン系バインダマトリクス
ポリシロキサン系バインダマトリクス(第1の被膜及び第2の被膜参照)は、好ましくは、反応性ポリシロキサンバインダ成分、例えば、機能性オルガノポリシロキサン(ポリジアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、又はそれらの組み合わせ等)、架橋剤、ケイ酸塩(例えば、エチルシリケート)等により構成される。したがって、こうした成分間の反応は、一般的な3次元共有結合性の相互結合網の形態であるバインダマトリクスをもたらすと考えられる。
【0028】
本発明の非限定的な実施形態において、ポリシロキサン系バインダマトリクスは、以下を含む:
-本明細書に開示したポリシロキサン部、例として、式(1)、(1x)のジオルガノポリシロキサン(群)又はそれらの組み合わせ、
-本明細書に定めた親水性オリゴマ/ポリマ部分、例として、
a)式(1c)又は(2a)の親水性オリゴマ/ポリマ部分であり、以下によりバインダマトリクスに含まれるもの、
-例えば、式(1f)に示したような、側鎖のグラフト化、又は
-例えば、式(1d)、(2a)、又は(1g)に示したような、ポリシロキサン骨格の導入、又は
その任意の組み合わせ、及び/又は
b)非反応性親水性変性ポリシロキサン油、例として、
-例えば、式(A)に示した、本明細書に開示したポリ(オキシアルキレン)鎖がグラフト化されたポリシロキサン、
-例えば、式(B)に示したような、本明細書に開示したポリ(オキシアルキレン)鎖が骨格に組み込まれたポリシロキサン、又は
-例えば、式(c)に示したような、本明細書に開示したポリオキシアルキレン鎖が骨格に組み込まれ、ポリオキシアルキレン鎖がグラフト化されたポリシロキサン、
-本明細書に定めた架橋剤(群)、例として、式(2)のものから選択された架橋剤、及び
-他の構成要素、例えば、添加剤、顔料、フィラー等、並びに以下に開示した任意の殺生物剤(群)及び酵素(群)。
【0029】
一実施形態において、親水性オリゴマ/ポリマ部分は、ポリマ骨格内において式(1g)のオリゴマ/ポリマの導入を用いてバインダマトリクスに含まれるものではない。他の実施形態において、親水性オリゴマ/ポリマ部分は、ポリマ骨格内においてバインダマトリクスに含まれないが、代わりに側鎖としてグラフト化によりバインダマトリクスに含まれる。
【0030】
硬化塗膜は、様々な方法、例えば、縮合反応によるシロキサン結合の形成又は、例えばアミン/エポキシ、カルビノール/イソシアネート等、その反応基の使用による重合/架橋により形成し得る。好ましいのは縮合反応である。
【0031】
ポリシロキサン系バインダマトリクスは、末端官能性及び/又はペンダント官能性を有する、機能性オルガノポリシロキサンであるポリシロキサン系バインダから調製される。好ましいのは末端官能性である。官能性は、加水分解性基、例えばアルコキシ基、ケトキシム基にすること、或いはシラノール基にすることができる。1分子当たり最小2個の反応基が好ましい。分子が反応基、例えばシラノール基を2個のみ含有する場合、所望の架橋密度を得るためには、付加的な反応物、架橋剤を用いることが必要となる場合がある。架橋剤は、例えばメチルトリメトキシシラン等のアルコキシシランにすることができるが、後述するように、広範囲の有用なシランを利用できる。シランは、そのまま使用すること、又はシランの加水分解縮合生成物として用いることができる。縮合硬化が非常に好ましいが、オルガノポリシロキサンの官能性は、縮合硬化に限定されない。望ましい場合、例えばアミン/エポキシ等、他の種類の硬化を単独で、又は縮合反応と組み合わせて利用することができる。このような場合、オルガノポリシロキサンは、エポキシ又はアミンの末端基及びペンダント加水分解性基であり、例えばアルコキシ官能性を備えるものを有することができる。
【0032】
一部の実施形態において、ポリシロキサン系バインダ系を含む汚損抑制塗装組成物(即ち、第1の被膜及び第2の被膜をそれぞれ調製するための組成物)は、当業者に明白となるように、反応硬化性組成物又は縮合硬化性組成物となり得る。その例には、シラノール反応性ポリジオルガノシロキサンと加水分解性基を有するシランとに基づく2成分縮合硬化性組成物、又はアルコキシ若しくは他の加水分解反応性を有するポリジオルガノシロキサンに基づく1成分縮合硬化性組成物が挙げられる。他の例は、エポキシ官能性ポリシロキサンバインダと、アミン官能性ポリシロキサン硬化剤とに基づく反応硬化性組成物である。バインダ又は硬化剤(又は両方)がアルコキシ基等の縮合硬化性基を含む場合には、反応硬化性組成物と縮合硬化性組成物との組み合わせも可能となる。
【0033】
一実施形態において、バインダ相は、(i)バインダと(ii)架橋剤とを含み、バインダ(i)は、マトリクスの形成に関与するように加水分解性基又は他の反応基を含むべきである。
【0034】
バインダ(i)は、一般に、乾燥重量で塗装組成物の40~90%を構成する。
架橋剤(ii)は、好ましくは、乾燥重量で塗装組成物の0~10%を構成し、例えば、以下に示す一般式(2)で表される有機ケイ素化合物、その部分加水分解縮合生成物、又はこれら2つの混合物である。
【0035】
【化1】
【0036】
ここで、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~6の非置換又は置換1価炭化水素基又は加水分解性基を表し、Xは、それぞれ独立して、加水分解性基を表し、aは、0~2、例えば0~1の整数を表す。
【0037】
高分子化学の技術において、「部分加水分解縮合生成物」という用語が、オリゴマ又はポリマを形成する縮合反応において、化合物をそれ自体と反応させたものを示すことは周知である。しかしながら、こうしたオリゴマ又はポリマは、架橋反応において用いられた反応性/加水分解性基を依然として保持する。
【0038】
式(2)に示した化合物は、バインダ(i)の架橋剤として機能する。組成物は、バインダ(i)及び架橋剤(ii)を混合することにより、1成分硬化性RTV(室温加硫型)として配合することができる。バインダ(i)の末端Si基の反応性が易加水分解性基、例えばジメトキシ又はトリメトキシにより構成される場合、通常、膜を硬化させるために別個の架橋剤は必要ない。硬化メカニズムの基盤技術及び架橋剤の例は、先行技術(US2004/006190)に記載されている。
【0039】
一実施形態において、Rは、ポリ(オキシアルキレン)等の親水性基である。この場合、Si原子とポリオキシアルキレン基との間にC2-5アルキルスペーサを有することが好ましい。したがって、オルガノポリシロキサンは、オキシアルキレンドメインを有し得る。
【0040】
好適な架橋剤は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン、ビニルトリス(アセトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン、メチルトリス(アセトキシム)シラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジ-t-ブトキシ-ジアセトキシシラン、メチルトリス(エチルラクテート)シラン、ビニルトリス(エチルラクテート)シラン、及びこれらの加水分解縮合生成物から選択されるものである。
【0041】
更に好適な架橋剤は、テトラエトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン、メチルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルオキシミノ)シラン、メチルトリス(エチルラクテート)シラン、ビニルトリス(エチルラクテート)シラン、及びこれらの加水分解縮合生成物である。
【0042】
更に好適な架橋剤は、テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(エチルラクテート)シラン、ビニルトリス(エチルラクテート)シラン、及びこれらの加水分解縮合生成物である。具体的な実施形態において、前記架橋剤は、テトラエトキシシラン又はその加水分解縮合生成物である。他の具体的な実施形態において、前記架橋剤は、ビニルトリメトキシシラン又はその加水分解縮合生成物である。更に他の具体的な実施形態において、前記架橋剤は、メチルトリス(エチルラクテート)シラン又はその加水分解縮合生成物である。更に他の具体的な実施形態において、前記架橋剤は、ビニルトリス(エチルラクテート)シラン又はその加水分解縮合生成物である。他の一実施形態において、前記架橋剤は、加水分解縮合生成物である。他の実施形態において、前記架橋剤は、加水分解縮合生成物ではない。
【0043】
他の興味深い架橋剤は、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、及びこれらの加水分解縮合生成物から選択されるものである。
「ポリシロキサン」という用語が、ケイ素及び酸素の原子が交互に存在し、炭素原子の無い骨格を有するポリマを示すことは周知である(The New Encyclopedia Britannica in 30 volumes micropaedia volume IX. 1975、ケイ素を参照してポリシロキサンを定義)。同様に、ポリオルガノシロキサンという用語は、ケイ素原子上に有機(即ち、炭素系)置換基を有するポリシロキサン骨格を意味するものである。
【0044】
一部の興味深い実施形態において、ポリシロキサン系バインダは、ポリジメチルシロキサン系バインダを含む。
【0045】
他の興味深い実施形態において、バインダは、フルオロ変性体、例えば、シラノール末端ポリ(トリフルオロプロピルメチルシロキサン)等のフルオロアルキル変性ポリシロキサンバインダを含み得る。
【0046】
ポリシロキサン系バインダマトリクスは、一般に、乾燥重量で塗装組成物又は硬化被膜の少なくとも40%、乾燥重量で少なくとも50%、好ましくは乾燥重量で少なくとも60%、例えば、少なくとも70重量%、特に乾燥重量で50~90%、又は乾燥重量で50~98%、例えば、乾燥重量で50~96%、特に、乾燥重量で60~95%、又は乾燥重量で50~95%、又は乾燥重量で60~94%、又は乾燥重量で70~96%、又は乾燥重量で70~94%、又は乾燥重量で75~93%、又は乾燥重量で75~92%を構成する。
【0047】
バインダは、他の構成要素、例えば、添加剤、顔料、フィラー等、並びに任意の親水性変性ポリシロキサン油(群)(下記参照)、任意の殺生物剤(群)、及び任意の酵素(群)(下記参照)を汚損抑制被膜内に組み込む、架橋マトリクスの形態となる。
【0048】
「ポリシロキサン系バインダマトリクス」という用語は、バインダマトリクスが、ポリシロキサン部を主成分とすること(即ち、バインダマトリクスの50重量%超、好ましくは60重量%超、例えば70重量%超がポリシロキサン部により表されること)を意味するものである。好ましくは、ポリシロキサン部は、バインダマトリクス(即ち、バインダ成分及び任意の架橋剤)の50~100重量%、例えば50~99.9重量%、特に60~100重量%、又は50~99重量%、又は60~98重量%、又は70~97重量%、又は70~99重量%、又は80~98重量%、又は90~97重量%を構成する。バインダマトリクスの残部は、例えば、存在する場合には、任意の親水性オリゴマ/ポリマ部分及び任意の(非ポリシロキサン型)架橋剤により構成し得る。
【0049】
ポリシロキサン部と他の任意の部分(例えば、任意の親水性オリゴマ/ポリマ部分)との量を、それぞれ、特定の出発物質(又は付加物)に対して計算する際に、これら2つを区別することは、通常、非常に簡単である。しかしながら、これら2つの間のリンカについての疑いを取り除くため、親水性オリゴマ/ポリマ部分には、親水性オリゴマ/ポリマ部分に隣接するケイ素原子の手前までの全ての原子が含まれることを理解されたい。一例として、[ポリシロキサン-O]-Si(Me)-CHCHCH-[親水性オリゴマ]-CHCHCH-Si(Me)-[O-ポリシロキサン]という種類の構造において、[ポリシロキサン-O]-Si(Me)部分は、シリコーン部分に含まれ、CHCHCH-[親水性オリゴマ]-CHCHCH部分は、親水性オリゴマ部分に含まれる。
【0050】
触媒
第1の被膜及び第2の被膜のそれぞれを形成する塗装組成物は、更に、架橋を促進するために縮合触媒を含み得る。適切な触媒の例には、有機カルボン酸の有機金属塩及び金属塩、例えばジラウリン酸ジブチル錫、二酢酸ジブチル錫、ジオクタン酸ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジオクチル錫、二酢酸ジオクチル錫、ジオクタン酸ジオクチル錫、2-エチルヘキサン酸ジオクチル錫、ジネオデカン酸ジオクチル錫、ナフテン酸錫、酪酸錫、オレイン酸錫、カプリル酸錫、2-エチルヘキサン酸ビスマス、オクタン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、2-エチルヘキサン酸鉄、2-エチルオクタン酸鉛、2-エチルヘキサン酸コバルト、2-エチルヘキサン酸マンガン、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、及びナフテン酸チタンと、チタン酸エステル及びジルコン酸エステル、例としてチタン酸テトラブチル、チタン酸テトラキス(2-エチルヘキシル)、チタン酸トリエタノールアミン、チタン酸テトラ(イソプロペノキシ)、チタンテトラブタノレート、チタンテトラプロパノレート、チタンテトライソプロパノレート、ジルコニウムテトラプロパノレート、ジルコニウムテトラブタノレートと、キレート化チタン酸塩、例としてジイソプロピルビス(アセチルアセトニル)チタネートと、リン酸水素(ビス(2-エチル-ヘキシル)等のリン酸系触媒とが含まれる。他の触媒には、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、及び1,4-エチレンピペラジン等の三級アミンが含まれる。他の例には、グアニジン系触媒が含まれる。縮合触媒の他の例は、WO2008/132196及びUS2004/006190に記載されている。
【0051】
触媒は、単独で用いても、2つ以上の触媒を組み合わせて用いてもよい。一実施形態において、前記触媒(群)は、錫及びチタン酸化物(群)(チタン酸塩(群))から成る群から選択される。具体的な一実施形態において、前記触媒は、錫系である。一実施形態においては、錫が欠如した触媒が含まれる。他の実施形態において、前記触媒は、1つ以上のチタン酸化物(群)(チタン酸塩(群))を含む。使用すべき触媒の量は、触媒及び架橋剤(群)の反応性と、所望の乾燥時間とに応じて決まる。好適な実施形態において、触媒濃度は、バインダ(i)と架橋剤(ii)とを合わせた総重量の0.01~10%、例えば0.01~3.0%、又は5.0~10%、又は0.1~4.0%、又は1.0~6.0%である。
【0052】
一部の実施形態において、触媒は含まれない。
溶媒、添加剤、顔料、及びフィラー
第1の被膜及び第2の被膜のそれぞれを形成するために用いられる塗装組成物は、更に、溶媒及び添加剤を含み得る。
溶媒の例には、ホワイトスピリット、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、及びナフサ溶媒等の脂肪族、脂環式、及び芳香族炭化水素と、酢酸メトキシプロピル、酢酸n-ブチル、及び酢酸2-エトキシエチル等のエステルと、オクタメチルトリシロキサンと、それらの混合物とが含まれる。或いは、溶媒系は、水を含んでもよく、或いは水性(溶媒系において水が50%超)にしてもよい。
【0053】
一実施形態において、溶媒は、ホワイトスピリット、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、及びナフサ溶媒等の脂肪族、脂環式、及び芳香族炭化水素と、酢酸メトキシプロピル、酢酸n-ブチル、及び酢酸2-エトキシエチル等のエステルと、オクタメチルトリシロキサンと、それらの混合物とから選択され、好ましくは、沸点が110℃以上の溶媒である。
【0054】
溶媒は、含まれる場合、一般に塗装組成物の5~50体積%を構成する。
添加剤の例は、次の通りである。
(i)非反応性流体、例としてオルガノポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、石油、及びそれらの組み合わせ、
(ii)界面活性剤、例としてアルキルフェノールエチレンオキシド縮合物(アルキルフェノールエトキシレート)等のプロピレンオキシド又はエチレンオキシドの誘導体、リノール酸のエトキシル化モノエタノールアミド等の不飽和脂肪酸のエトキシル化モノエタノールアミド、ドデシル硫酸ナトリウム、及び大豆レシチン、
(iii)湿潤剤及び分散剤、例としてM. Ash and I. Ash,“Handbook of Paint and Coating Raw Materials, Vol. 1”, 1996, Gower Publ. Ltd., Great Britain, pp 821-823 and 849-851に記載のもの、
(iv)増粘剤及び沈降防止剤(例えば、チキソトロープ剤)、例としてコロイドシリカ、水和ケイ酸アルミニウム(ベントナイト)、アルミニウムトリステアレート、アルミニウムモノステアレート、キサンタンガム、クリソタイル、焼成シリカ、水素添加ヒマシ油、有機変性粘土、ポリアミドワックス、及びポリエチレンワックス、
(v)染料、例として1,4-ビス(ブチルアミノ)アントラキノン及び他のアントラキノン誘導体、トルイジン染料等、
(vi)抗酸化剤、例としてビス(tert-ブチル)ハイドロキノン、2,6-ビス(tert-ブチル)フェノール、レゾルシン、4-tert-ブチルカテコール、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ビス(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート等。
【0055】
任意の添加剤は、一般に、乾燥重量で塗装組成物の0~30%、例えば0~15%を構成する。
【0056】
好ましくは、塗装組成物は、1つ以上の増粘剤及び/又は沈降防止剤(例えば、チキソトロープ剤)を、好ましくは、乾燥重量で塗装組成物の0.2~10%、例として0.5~5%、例えば0.6~4%の量で含む。
【0057】
更に、第1の被膜及び第2の被膜を形成するために用いる塗装組成物は、顔料及びフィラーを含み得る。
【0058】
顔料及びフィラーは、本発明に関連して、接着性との関係が僅かであり、共に塗装組成物に添加し得る成分と見做されるものである。「顔料」は、通常、最終的な塗膜を不透明及び非透光性にすることを特徴とし、「フィラー」は、通常、塗料を非透光性にしないため、塗装の下の任意の材料を隠すことに有意に寄与しないこと特徴とする。
【0059】
顔料の例は、様々な等級の二酸化チタン、赤色酸化鉄、酸化亜鉛、カーボンブラック、グラファイト、黄色酸化鉄、赤色モリブデート、黄色モリブデート、硫化亜鉛、酸化アンチモン、ナトリウムアルミニウムスルホシリケート、キナクリドン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、黒色酸化鉄、インダンスロンブルー、コバルトアルミニウムオキシド、カルバゾールジオキサジン、酸化クロム、イソインドリンオレンジ、ビス-アセト酢酸-o-トリジオール、ベンズイミダゾロン、キナフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、テトラクロロイソインドリノン、キノフタロンイエローである。
【0060】
フィラーの例は、カルサイト等の炭酸カルシウム、ドロマイト、タルク、マイカ、長石、硫酸バリウム、カオリン、霞石、シリカ、パーライト、酸化マグネシウム、及び石英粉末等である。フィラー(及び顔料)は、ナノチューブまたは繊維の形態で添加してもよく、したがって、塗装組成物は、上述したフィラーの例とは別に、繊維、例えば、出典を明記することにより本願明細書の一部としたWO00/77102に全般的及び具体的に記載されるもの含み得る。
【0061】
任意の顔料及び/又はフィラーは、一般に、乾燥重量で塗装組成物の0~60%、例えば0~50%、好ましくは5~45%、例えば5~40%、又は5~35%、又は0.5~25%、又は1~20%を構成する。任意の顔料及び/又はフィラーの濃度を考慮すると、こうした構成要素は、一般に、実体積として塗装組成物の0.2~20%、例として0.5~15%を構成する。
【0062】
第1の被膜及び第2の被膜に対応する塗装組成物の(例えば、スプレ、ブラシ、又はローラ塗布手法による)容易な塗布を促進する目的で、塗装組成物は、一般に、25~25,000mPa・s、例えば150~15,000mPa・sの範囲、特に200~4,000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0063】
発明の第1の選択的な態様
硬化した第1の被膜
硬化した第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表される。第1の被膜に特有の特徴は、殺生物剤及び酵素から選択された1つ以上の有効成分を更に含むことである。
【0064】
第1の被膜は、1種類の殺生物剤、1種類の酵素、1種類の殺生物剤及び1種類の酵素の組み合わせ、2種類の殺生物剤の組み合わせ、2種類の酵素の組み合わせ、1種類以上の殺生物剤、1種類以上の酵素、1種類以上の殺生物剤及び1種類以上の酵素の組み合わせ等を含み得ることを理解されたい。
【0065】
殺生物剤
一変形例において、第1の被膜に含まれる有効成分は、1つ以上の殺生物剤を含む。
本発明に関連して、「殺生物剤」という用語は、化学的又は生物学的手段により、任意の有害生物を駆除する、阻止する、無害にする、その作用を防止する、又は他の抑制効果を発揮する活性物質を意味するものとなる。しかしながら、殺生物剤(群)は、存在する場合、1つ以上の酵素(下記参照)と組み合わせて使用可能であることを理解されたい。
【0066】
殺生物剤の例示的な例は、メタロ-ジチオカルバメート、例えばビス(ジメチルジチオカルバマト)亜鉛、エチレン-ビス(ジチオカルバマト)亜鉛、エチレン-ビス(ジチオカルバマト)マンガン、ジメチルジチオカルバメート亜鉛、及びこれらの錯体と、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオナート-O,S)-銅、アクリル酸銅、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオナート-O,S)-亜鉛、フェニル-(ビスピリジル)-ビスマスジクロリドと、金属殺生物剤、例えば酸化銅(I)、亜酸化銅、金属銅、銅金属合金、例えば銅青銅等の銅-ニッケル合金と、金属塩、例えばチオシアン酸銅、塩基性炭酸銅、水酸化銅、メタホウ酸バリウム、塩化銅、塩化銀、硝酸銀、及び硫化銅と、複素環式窒素化合物、例えば3a,4,7,7a-テトラヒドロ-2-((トリクロロメチル)-チオ)-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン、ピリジン-トリフェニルボラン、1-(2,4,6-トリクロロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)-ピリジン、2-メチルチオ-4-tert-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミン-s-トリアジン、及びキノリン誘導体と、複素環式硫黄化合物、例えば2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-オクチル-3(2H)-イソチアゾリン(Sea-Nine(登録商標)-211N)、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、及び2-(チオシアナトメチルチオ)-ベンゾチアゾールと、尿素誘導体、例えばN-(1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-2,5-ジオキソ-4-イミダゾリジニル)-N,N’ビス(ヒドロキシメチル)ウレア、及びN-(3,4-ジクロロフェニル)-N,N-ジメチルウレア、N,N-ジメチルクロロフェニルウレアと、カルボン酸、スルホン酸、及びスルフェン酸のアミド又はイミド、例えば2,4,6-トリクロロフェニルマレイミド、1,1-ジクロロ-N-((ジメチルアミノ)スルホニル)-1-フルオロ-N-(4-メチルフェニル)-メタンスルフェンアミド、2,2-ジブロモ-3-ニトリロ-プロピオンアミド、N-(フルオロジクロロメチルチオ)-フタルイミド、N,N-ジメチル-N’-フェニル-N’-(フルオロジクロロメチルチオ)-スルファミド、及びN-メチロールホルムアミドと、カルボン酸の塩又はエステル、例えば2-((3-ヨード-2-プロピニル)オキシ)-エタノールフェニルカルバメート、及びN,N-ジデシル-N-メチル-ポリ(オキシエチル)アンモニウムプロピオネートと、アミン、例えばデヒドロアビエチルアミン及びココジメチルアミンと、置換メタン、例えばジ(2-ヒドロキシ-エトキシ)メタン、5,5’-ジクロロ-2,2’-ジヒドロキシジフェニルメタン、及びメチレン-ビスチオシアネートと、置換ベンゼン、例えば2,4,5,6-テトラクロロ-1,3-ベンゼンジカルボニトリル、1,1-ジクロロ-N-((ジメチルアミノ)-スルホニル)-1-フルオロ-N-フェニルメタンスルフェンアミド、及び1-((ジヨードメチル)スルホニル)-4-メチル-ベンゼンと、テトラアルキルホスホニウムハロゲニド、例えばトリ-n-ブチルテトラデシルホスホニウムクロリドと、グアニジン誘導体、例えばn-ドデシルグアニジンヒドロクロリドと、ジスルフィド、例えばビス-(ジメチルチオカルバモイル)-ジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドと、イミダゾール含有化合物、例えばメデトミジンと、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロールと、ビス(N-シクロヘキシル-ジアゼニウムジオキシ)銅、チアベンダゾール、N-トリハロメチルチオフタルイミド、トリハロメチルチオスルファミド、カプサイシン、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート、1,4-ジチアアントラキノン-2,3-ジカルボニトリル(ジチアノン)と、フラノン、例えば3-ブチル-5-(ジブロモメチリデン)-2(5H)-フラノンと、大環状ラクトン、例えばアベルメクチンと、それらの混合物とから選択されるものである。
【0067】
現時点では、殺生物剤(存在する場合)は、錫を含まないことが好ましい。
現在好適な殺生物剤は、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル(クロロタロニル)、チオシアン酸銅(スルホシアン酸第一銅)、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド(ジクロフルアニド)、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(ジウロン)、N-tert-ブチル-N-シクロプロピル-6-メチルチオ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(シブトリン)、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル、(2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール、トラロピリル)、N-tert-ブチル-N-シクロプロピル-6-メチルチオ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(シブトリン)、(RS)-4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-3H-イミダゾール(メデトミジン)、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT、Sea-Nine(登録商標) 211N)、ジクロロ-N-((ジメチルアミノ)スルホニル)-フルオロ-N-(p-トリル)メタンスルフェンアミド(トリルフルアニド)、2-(チオシアノメチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール((2-ベンゾチアゾリルチオ)メチルチオシアネート、TCMTB)、トリフェニルボランピリジン(TPBP)、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオナート-O,S)-(T-4)亜鉛(亜鉛ピリジンチオン、亜鉛ピリチオン)、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオナート-O,S)-T-4)銅(銅ピリジンチオン、銅ピリチオン)、亜鉛エチレン-1,2-ビス-ジチオカルバメート(亜鉛-エチレン-N,N’-ジチオカルバメート、ジネブ)、酸化銅(I)、金属銅、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(ジウロン)、及びジヨードメチル-p-トリルスルホン、アミカル48から成る群から選択される。好ましくは少なくとも1種類の殺生物剤が上記リストから選択される。
【0068】
特に好適な実施形態において、殺生物剤は、粘液及び藻類等の軟質汚損に対して効果的な殺生物剤から選択されるのが好ましい。こうした殺生物剤の例は、N-tert-ブチル-N-シクロプロピル-6-メチルチオ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(シブトリン)、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT、Sea-Nine(登録商標) 211N)、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオナート-O,S)-(T-4)亜鉛(亜鉛ピリジンチオン、亜鉛ピリチオン)、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオナート-O,S)-T-4)銅(銅ピリジンチオン、銅ピリチオン、銅オマジン)、及び亜鉛エチレン-1,2-ビス-ジチオカルバメート(亜鉛-エチレン-N-N’-ジチオカルバメート、ジネブ)、酸化銅(I)、金属銅、チオシアン酸銅(スルホシアン酸第一銅)、ビス(1-ヒドロキシ-2(1H)-ピリジンチオナート-O,S)-T-4)銅(銅ピリジンチオン、銅ピリチオン、銅オマジン)である。
【0069】
更に特に好適な実施形態において、殺生物剤は、有機殺生物剤であり、例えば亜鉛ピリチオン又は銅ピリチオン等のピリチオン錯体である。最も好適な実施形態において、殺生物剤は、銅ピリチオンである。有機殺生物剤は、全体又は一部が有機体由来のものである。他の好適な実施形態において、殺生物剤の1つは、亜鉛系である。その具体的な実施形態において、前記殺生物剤は、亜鉛エチレン-1,2-ビス-ジチオカルバメート(亜鉛-エチレン-N-N’-ジチオカルバメート、ジネブ)である。US7,377,968において詳述されるように、例えば、高い水溶性又はマトリクス組成物との不混和性の高さのため、殺生物剤が急速に膜から枯渇するような場合は、殺生物剤の用量を制御して膜内での実効寿命を延ばす手段として、1つ以上の殺生物剤(群)をカプセル化した形態で添加することが有利となり得る。カプセル化した殺生物剤は、遊離状態の殺生物剤が防汚塗装としての使用にとって有害となる形でポリシロキサンマトリクスの特性(例えば、機械的完全性、乾燥時間等)を変化させる場合にも添加することができる。
【0070】
一実施形態において、殺生物剤は、カプセル化した4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(Sea-Nine CR2)である。
【0071】
殺生物剤は、25℃の水中で0~20mg/L、例えば0.00001~20mg/Lの溶解度を有することが好ましい。
【0072】
存在する場合、殺生物剤は、一般に、乾燥重量で塗装組成物の0.1~30%、例えば、乾燥重量で0.5~25%、特に、乾燥重量で1~20%、例として乾燥重量で3~15%を構成する。
【0073】
殺生物剤は、一般に、塗装組成物の実体積で0.1~25%、例えば、実体積で0.5~20%、特に、実体積で1~15%を構成する。
【0074】
他の実施形態において、殺生物剤は、塗装組成物の実体積で1~10%、例として塗装組成物の実体積で2~9%、又は3~8%、又は4~7%を構成する。
【0075】
本明細書に開示した様々な態様から明らかであるように、組成物に含まれる場合、殺生物剤は、常に本明細書に開示した塗装系の第1の被膜に含まれる。結果として、殆どの実施形態において、第2の被膜には、殺生物剤が存在しない。
【0076】
一実施形態において、本明細書に開示した塗装系の第2の被膜は、殺生物剤を含むが、親水性オリゴマ/ポリマ部分と親水性変性ポリシロキサン油とを何れも含まない。その特定の実施形態において、第2の被膜に含まれる殺生物剤の量は、第1の被膜に含まれる殺生物剤の量より少なく、例として70%未満、例えば、50%未満、又は25%未満である。
【0077】
酵素
他の変形例において、第1の被膜に含まれる有効成分は、1つ以上の酵素を含む。
第1の被膜に1つ以上の酵素が含まれる場合、酵素が最外被膜のみに存在するポリシロキサン系汚損除去系と比較して、前記酵素の環境への放出を制御することにより、前記ポリシロキサン系汚損抑制系の生物汚損に対する抵抗性が向上すると考えられる。酵素は、付着前又は付着中に付着を防止すること、或いは付着前に戻すことにより、塗装の汚損抑制特性に寄与する。シロキサン系汚損抑制塗装は、それ自体が生物汚損有機体の付着の阻害に非常に優れているが、酵素は、特に問題となる生物汚損種に対する選択標的機構により、或いは広範囲の防汚機構による保護機構の全体的な向上により、汚損抑制系の全体的な防汚能力に寄与することができる。
【0078】
生物汚損有機体の付着を防止可能な全ての酵素が本発明に関連すると考えられる。しかしながら、特に関係するものは、加水分解酵素である。加水分解酵素は、ECクラス3から選択されるものである。特に関係するものは、以下のECクラスから選択されるものである。
【0079】
EC3.1:エステル結合(エステラーゼ:ヌクレアーゼ、ホスホジエステラーゼ、リパーゼ、ホスファターゼ)
EC3.2:糖類(DNAグリコシラーゼ、グリコシドヒドロラーゼ)
EC3.3:エーテル結合
EC3.4:ペプチド結合(プロテアーゼ/ペプチダーゼ)
EC3.5:炭素-窒素結合、ペプチド結合以外
EC3.6:酸無水物(ヘリカーゼ及びGTPアーゼを含む酸無水物加水分解酵素)
EC3.7:炭素-炭素結合
EC3.8:ハロゲン結合
EC3.9:リン-窒素結合
EC3.10:硫黄-窒素結合
EC3.11:炭素-リン結合
EC3.12:硫黄-硫黄結合
EC3.13:炭素-硫黄結合
EC4.2:デヒドラターゼ等、炭素-酸素結合を切断するリアーゼを含む
【0080】
一実施形態において、1つ以上の酵素は、加水分解酵素を含む。
【0081】
一実施形態において、1つ以上の酵素は、ECクラスとして、EC3.1、EC3.2、EC3.4、及びEC4.2から選択される。
【0082】
他の実施形態において、1つ以上の酵素は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、メタロプロテイナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、及びグリコシダーゼから選択される。
【0083】
有用と考えられる市販の酵素の例には、Savinase(登録商標)(Novozymes A/S)、Endolase(登録商標)(Novozymes A/S)、Alcalase(登録商標)(Novozymes A/S)、Esperase(登録商標)(Novozymes)、パパイン(Sigmaaldrich)、スブチリシンカールスバーグ(Sigmaaldrich)、ペクチナーゼ(Sigmaaldrich)、及びポリガラクツロナーゼ(Sigmaaldrich)がある。
【0084】
一実施形態において、1つ以上の酵素は、フジツボのエキソポリマ物質(即ち、接着剤)を分解可能な酵素を含む。したがって、酵素は、フジツボキプリス幼生の付着を、好ましくは殺すことなく、又は他の形でフジツボに毒性効果を及ぼすことなく、阻止する必要がある。フジツボの付着を可逆的に妨げる酵素の能力は、本明細書の実験に関する節に記載される「フジツボ付着試験」により試験することができる。
【0085】
他の実施形態において、1つ以上の酵素は、藻類のエキソポリマ物質(即ち、接着剤)を分解可能な酵素を含む。したがって、酵素は、藻類の遊走子の付着を、好ましくは殺すことなく、又は他の形で藻類の遊走子に毒性効果を及ぼすことなく、阻止する必要がある。藻類の付着を可逆的に妨げる酵素の能力は、本明細書の実験に関する節に記載される「藻類付着試験」により試験することができる。
【0086】
他の実施形態において、1つ以上の酵素は、有毒であるかに関係無く、特定の生物に効果を及ぼすように選択された酵素を含む。したがって、この実施態様において、酵素の効果は、付着を低減することに加え、対象となる生物汚損種の生存能力及び死亡率にも影響し得る。
【0087】
一部の興味深い実施形態において、1つ以上の酵素は、他の塗料成分と混合される前に予め配合される。例えば、酵素は、フィラー粒子上又は粒子内、バインダ成分上に固定してよく、親水性のモノマ、オリゴマ、又はポリマが存在する場合には、こうした成分に配合してよく、又は親水性変性ポリシロキサン油に配合してよい(下記参照)。
【0088】
興味深い一実施形態において、1つ以上の酵素(又は1つ以上の酵素の1つ若しくは幾つか)は、例えば、表面処理又は固定化により配合される。
【0089】
一変形例において、1つ以上の酵素は、カプセル化材料の網状組織が海水による加水分解で分解される際に、湿潤塗料における安定性、硬化被膜との適合性、及び酵素の徐放性を得るために、WO2009/062975に記載されたものに類似する方法で、エアロゲル、キセロゲル、又はクリオゲル型のマトリクスに封入してもよい。
【0090】
同様に、酵素は、海水からではなく、キシレンから酵素を遮蔽するために、US7,377,968に記載された材料に類似するポリマ材料においてカプセル化してもよい。
【0091】
酵素を前処理する他の方法は、ポリアニオン性又はポリカチオン性材料とのイオン相互作用によるものである。酵素のpIに応じて、適切な電荷を有するポリマは、イオン架橋結合を発生させる酵素と強く結び付くことにより、酵素を安定させる。
【0092】
粘土又はニトロセルロース等の適切な材料への吸着は、酵素含有汚損抑制塗装の調製、塗布、及び硬化中に、酵素の安定性を高める他の方法となる。
【0093】
二官能性架橋剤を用いて、酵素間の共有結合を確立して、酵素の安定性を潜在的に改善することもできる。これは、架橋及び共重合の両方と呼ぶことができる。架橋酵素凝集体(CLEA(登録商標))は、より一般的な酵素の一部について市販されている。
【0094】
したがって、一実施形態において、1つ以上の酵素は、二官能性架橋剤と反応して酵素凝集体を形成する。
【0095】
ホモ及びヘテロ二官能性架橋剤は、バインダ成分等の他の活性材料に酵素を固定するために使用することができる。ヘテロ二官能性架橋剤は、分子の各末端において選択的であるという利点を有する。これにより、対象となる分子間でのみ架橋が生じる状態が確保される。しかしながら、ホモ二官能性の架橋剤も、別個の材料に酵素を固定するために頻繁に用いられる。酵素の固定は、膜の前駆体に酵素を結合させること、或いは硬化膜を活性化させ、酵素を活性部位に結合させることにより、膜硬化の前後に実施し得る。
【0096】
また、酵素の表面の変性により、油又は疎水性溶媒等の溶媒との相溶性を改善し得る。ポリ(エチレングリコール)及び脂肪酸は、酵素が保持される予定の環境との適合性を高めるために一般的に利用される。
【0097】
したがって、他の一実施形態において、酵素は、好ましくはポリ(エチレングリコール)により表面変性される。
【0098】
存在する場合、ポリシロキサン系汚損除去塗装系における生物汚損有機体の付着を防止するために利用される1つ以上の酵素は、硬化塗装の総重量(乾燥重量)と比較した純粋な酵素の量として計算して、好ましくは、第1の被膜の総重量の最大10重量%、例えば0.0005~8重量%、例えば0.001~6重量%、又は0.002~4重量%、又は0.003~2重量%、又は0.005~1重量%、又は0.01~0.1重量%を構成するべきである。
【0099】
様々な態様から明らかであるように、組成物に含まれる場合、酵素は、常に本明細書に開示した塗装系の第1の被膜に含まれる。結果として、殆どの実施形態において、第2の被膜には、酵素が存在しない。
【0100】
一実施形態において、本明細書に開示した塗装系の第2の被膜は、酵素を含むが、親水性オリゴマ/ポリマ部分と親水性変性ポリシロキサン油とを何れも含まない。その特定の実施形態において、第2の被膜に含まれる酵素の量は、第1の被膜に含まれる酵素の量より少なく、例として70%未満、例えば、50%未満、又は25%未満である。
【0101】
硬化した第1の被膜の実施形態
一実施形態において、硬化した第1の被膜は、「親水性変性ポリシロキサン油」の節において、硬化した第2の被膜に対して指定した種類の1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含む。好ましくは、こうした親水性ポリシロキサン油(存在する場合)の含有量は、硬化した第2の被膜に対して指定した通りである。
【0102】
他の実施形態において、硬化した第1の被膜のバインダマトリクスは、その一部として、「バインダマトリクスの親水性変性」の節において、硬化した第2の被膜のバインダマトリクスに対して指定したような親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでいる。好ましくは、こうした親水性オリゴマ/ポリマ部分(存在する場合)の含有量は、硬化した第2の被膜に対して指定した通りである。
【0103】
第1の被膜が1つ以上の殺生物剤を含む変形例における上述した2つの実施形態に関して、バインダマトリクスの親水性オリゴマ/ポリマ部分(存在する場合、下記参照)と1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油(群)との合計量を一方とし、1つ以上の殺生物剤を他方とした重量比は、一般に、1:0.02~1:50、又は1:0.05~1:20、又は1:0.06~1:16、又は1:0.08~1:14、又は1:0.1~1:12、even 1:0.15~1:10、又は1:0.05~1:9、又は1:0.1~1:8、又は1:0.2~1:7、又は1:0.08~1:12、又は1:0.1~1:10、1:0.15~1:6、又は1:0.1~1:5、又は1:0.2~1:4の範囲となる。他の実施形態において、前記比は、一般に、1:0.25~1:3.5、又は1:0.3~1:3、又は1:0.35~1:2.5、又は1:0.4~1:2、又は1:0.5~1.5の範囲となる。一実施形態において、第1の被膜は、1つ以上の殺生物剤を含む。他の実施形態において、第1の被膜は、殺生物剤を含まない。
【0104】
他の実施形態において、第1の被膜は、1つ以上の酵素を含む。他の実施形態において、前記第1の被膜は、酵素を含まない。
【0105】
更に他の実施形態において、第1の被膜は、1つ以上の殺生物剤及び1つ以上の酵素を含む。
【0106】
一実施形態において、第1の被膜は、
50重量%超がポリシロキサン部により表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、乾燥重量で40~98%、例えば60~95%と、
乾燥重量で0.1~25%、例えば2~20%の1つ以上の殺生物剤と、
乾燥重量で0.1~15%、例えば1~10%の1つ以上の添加剤と、
乾燥重量で0~20%、例えば1~10%の1つ以上の顔料及びフィラーと、を含む。
【0107】
他の実施形態において、第1の被膜は、
50重量%超がポリシロキサン部により表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、乾燥重量で40~98%、例えば60~95%と、
乾燥重量で0.1~25%、例えば2~20%の1つ以上の殺生物剤と、
乾燥重量で0.1~15%、例えば1~10%の1つ以上の添加剤と、
乾燥重量で0~20%、例えば1~10%の1つ以上の顔料及びフィラーと、
乾燥重量で0.5~20%、例えば1~15%の1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油と、を含む。
【0108】
他の実施形態において、第1の被膜は、
50重量%超がポリシロキサン部により表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、乾燥重量で40~98%、例えば60~95%と、
乾燥重量で0.0001~5%、例えば0.001~2%の1つ以上の酵素と、
乾燥重量で0.1~15%、例えば1~10%の1つ以上の添加剤と、
乾燥重量で0~20%、例えば1~10%の1つ以上の顔料及びフィラーと、を含む。
【0109】
他の実施形態において、第1の被膜は、
50重量%超がポリシロキサン部により表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、乾燥重量で40~98%、例えば60~95%と、
乾燥重量で0.0001~5%、例えば0.001~2%の1つ以上の酵素と、
乾燥重量で0.1~15%、例えば1~10%の1つ以上の添加剤と、
乾燥重量で0~20%、例えば1~10%の1つ以上の顔料及びフィラーと、
乾燥重量で0.5~20%、例えば1~15%の1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油と、を含む。
【0110】
「乾燥重量%」という表現は、場合に応じて被膜又は塗装組成物の乾燥重量に基づく各成分のパーセンテージを意味することを理解されたい。実際的には(したがって、特に明記しない場合)、「乾燥重量%」は、硬化被膜を示す場合、塗装組成物の「乾燥重量%」と同一である。
【0111】
硬化した第2の被膜
第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表される。多くの場合、この第2の被膜は、汚損抑制塗装系の最外層を構成する。
【0112】
本発明の第1の選択的な態様において、第2の被膜は、「標準的」ポリジメチルシロキサン(PDMS)と比較して、相対的に高い親水性を有するべきであり(疎水性/親水性に関する「標準的」ポリジメチルシロキサンの例は、米国Dow CorningのXiameter PMX-200 Sil Fluid 5000 CST)、そのため、第2の被膜の特徴は、以下の何れか又は両方の形で親水性がもたらされることである:(i) 前記第2の被膜のバインダマトリクスが、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでいること、及び/又は(ii)第2の被膜が更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含むこと。これら2種類の方法は、それぞれ下記「バインダマトリクスの親水性変性」及び「親水性変性ポリシロキサン油」の節において更に説明する。
【0113】
したがって、想定とは異なり、硬化した第2の被膜の平衡水接触角は、0°~30°、例として0°~27°の範囲、例えば、0°~24°の範囲、又は0°~20°の範囲であることが好ましい。これらの範囲は、第2の被膜が親水性変性ポリシロキサン油を含む場合に特に関係する。平衡水接触角は、本明細書の実施例の節に記載したように測定される。
【0114】
硬化した第2の被膜の表面エネルギは、平衡水接触角が低く、例えば室温(23℃)で測定時に、例として30°未満、例として24°未満、例えば20°未満である場合に相対的に高くなる。したがって、本明細書に記載の塗装組成物の臨界表面張力は、相対的に高く、例として60mN/m超、例えば65mN/m超、例として70mN/m超となる。
【0115】
第2の被膜は、バインダマトリクスの一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含むか、若しくは第2の被膜が1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含んでよく、又は第2の被膜は、バインダマトリクスの一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分をと同時に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含んでもよいことを理解されたい。
【0116】
バインダマトリクスの親水性変性
一変形例において、バインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでいる。任意の親水性オリゴマ/ポリマ部分は、好ましくは、バインダマトリクスの1~30重量%、例として2~25重量%、例えば1~20重量%を構成する。
【0117】
当然ながら、ポリシロキサン系バインダマトリクスに含まれる親水性オリゴマ/ポリマ部分は、非ケイ素由来となる。
【0118】
一実施形態において、バインダは、下記一般式(1)により表される硬化性ジオルガノポリシロキサンを含む。
【0119】
【化2】
【0120】
ここで、Aは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、加水分解性基、及び他の官能基、例えばアミン又はエポキシから選択され、Aは、それぞれ独立して、アルキル、アリール、アルケニル、及び加水分解性基から選択され、A及びAは、それぞれ独立して、アルキル、アリール、アルケニル、及び親水性基、例えばポリオキシアルキレン基から選択され、A及び/又はAが親水性基、例えばポリオキシアルキレン基である場合、このような基は、C2-5アルキレンリンカを介してケイ素原子に結合してよく、a=1~25,000、b=1~2,500であり、a+bは、少なくとも5である。
【0121】
他の一実施形態において、バインダは、下記一般式(1x)により表される硬化性ジオルガノポリシロキサンを含む。
【0122】
【化3】
【0123】
ここで、A、A、A、A、a、及びbは、それぞれ式(1)の通りであり、Aは、それぞれ独立して、酸素又は炭素数2~5のアルキル基から選択される。
【0124】
他の実施形態において、ポリシロキサンバインダは、以下に示すように、側鎖(ペンダント親水性基)としてグラフト化された親水性オリゴマ/ポリマ部分を有し、水酸化物機能性ポリシロキサンと不飽和基(-CH=CH)、例えばアリル基又はビニル基等を含む親水性成分との間における、白金等のヒドロシリル化触媒の存在下での、式(1c)によるヒドロシリル化反応により調製可能であり、親水性化合物の例は、アリル末端ポリ(エチレングリコール)である。合成は、60~150℃の高温で行われる。ポリマを硬化性にするためには、加水分解性基、又は他の形の反応性を有する基、例えばビニルトリメトキシシランにより、ポリマを官能化する必要がある。反応は、親水性化合物をポリシロキサンにグラフト化する際と同じ原理に従うもので、式(1b)に示されており、官能化は、必ずでは無いが、親水性基の結合前に実施し得る。
【0125】
反応(1b)の結果として生じたバインダは、親水性成分、例えば式(1c)に示したポリ(エチレングリコール)モノアリルエーテルにより更に変性され、親水性オリゴマ/ポリマ部分により変性された硬化性ポリシロキサンが生じる。
【0126】
【化4】
【0127】
【化5】
【0128】
得られたバインダは、そのまま使用すること、又は(式1に示した一般式の)硬化性ジオルガノシロキサンと組み合わせて使用することができる。前述したように、ポリ(エチレングリコール)以外の親水性ポリマも、ポリシロキサンを親水性にする上で有用となる。
【0129】
ポリシロキサンに加水分解性シランをグラフト化する前に(即ち、式(1b)及び(1c)に記載の合成と逆の順序で)、ポリシロキサンに親水性ペンダント部分をグラフト化することも可能である。
【0130】
したがって、興味深い一実施形態において、ポリシロキサン系バインダマトリクスを含む硬化塗膜は、その一部として ペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでいる。
【0131】
「ペンダント」という表現は、親水性オリゴマ/ポリマ部分が、非末端位置でポリシロキサン骨格に結合され、このような部分が一端でのみ結合されるため、ペンダント親水性オリゴマ/ポリマがポリシロキサン骨格(マトリクス)に対する「グラフト」を形成することを意味する。これは、「分岐」と呼ばれる場合もある。
【0132】
ペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分は、遊離末端に官能(非反応性)基、例えば、殺生物効果等を示す基を、原則として遊離末端に有してもよい。しかしながら、多くの実施態様において、親水性オリゴマ/ポリマ部分は、このような官能基を有しておらず、天然型のオリゴマ/ポリマ形態であり、アルキル基等、又は場合によってはヒドロキシル基により、エンドキャップされる場合があり、或いはメトキシ末端となる。
【0133】
バインダの他の変形例は、ポリシロキサン(A)と、ポリ(オキシアルキレン)等の親水性ポリマ(B)のA-B-A共重合体である。ポリマの構造の例は、式(1d)に示している。この変形例において、ポリオキシアルキレン等の親水性を有するポリマの単位は、ポリシロキサン骨格に導入され、交互ブロック共重合体を形成する。バインダ中にオキシアルキレン基などの親水性基を導入することにより、参考文献WO2008/132196に記載されているように、バインダの親水性を増加させ得る。バインダは、単独で、或いは組み合わせて用いることが可能であり、共重合体の構造は、A-B-A及びB-A-Bにすることができる。B-A-Bの場合、ペンダント硬化性官能基が必要となり、これは、ケイ素部分の末端基が親水性ポリマによりブロックされるためである。
【0134】
【化6】
【0135】
他の変形例において、親水性成分は、アリル基又はビニル基等の少なくとも1つの不飽和基(-CH=CH)を含有するポリオキシアルキレン化合物を、ヒドリド基、例えばHSi(R)基を有するシランであって、Rがそれぞれ独立して、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシ(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシ)から選択され、少なくとも1つがC1-4アルコキシであるもの、例えばトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、又はメチルジメトキシシラン等により、硬化性ポリ(オキシアルキレン)を生じる白金等のヒドロシリル化触媒の存在下で、ヒドロシリル化することにより得られる。反応は60~150℃の高温で行われる。合成は、式(1e)に示している。ポリマは、成分(i)(式1)等と組み合わせて用いられる。有用なシランの他の例には、限定では無く、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、tert-ブチルジエトキシシランが含まれる。
【0136】
【化7】
【0137】
1変形例において、親水性は、式(2a)に表される一般型等の親水性シランを用いることにより取得し得る(又は、前節で述べたようにバインダー(i)に親水性基を組み込むことにより得られる親水性に追加し得る)。親水性シランは、バインダ成分(式(1)又は(1e))内のシラノール又は加水分解性基と反応することにより、親水性成分が組み込まれる。
【0138】
【化8】
【0139】
ここで、
Rは、それぞれ独立して、炭素数1~6の非置換又は置換1価炭化水素基又は加水分解性基を表し、
Xは、それぞれ独立して、加水分解性基を表し、
は、それぞれ独立して、-H、C1-4アルキル(例えば、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-CH(CH、-CHCHCHCH)、フェニル(-C)、及びC1-4アルキルカルボニル(例えば、-C(=O)CH、-C(=O)CHCH、及び-C(=O)CHCHCH)、特に、-H及びメチルから選択され、
は、それぞれ独立して、C2-5アルキレン(例えば、-CHCH-、-CHCH(CH)-、CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCH(CHCH)-)、アリーレン(例えば、1,4-フェニレン)、及びアリール(例えば、1-フェニルエチレン)により置換されたC2-5アルキレン、特にC2-5アルキレン、例えば-CHCH-及び-CHCH(CH)-)から選択され、
pは、0~50、
aは、0~2、
zは、1~3である。
【0140】
オキシアルキレン単位をオルガノポリシロキサンに導入することにより、バインダの親水性は、特にエチレンオキシド型-[CH2CH2-O]-が用いられるときに増加する。
【0141】
他の実施形態において、バインダの親水性変性は、A-B-A変性(上述)と、ペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分との両方から成る。
【0142】
親水性オリゴマ/ポリマ部分は、ポリシロキサン系バインダマトリクスの部分を構成し、即ち、この部分は、バインダマトリクスに共有結合的に組み込まれることを理解されたい。また、形成される共有結合(群)は、非加水分解性であることが好ましいことを理解されたい。
【0143】
当然ながら、ポリシロキサン系バインダマトリクスに含まれる親水性オリゴマ/ポリマ部分は、非ケイ素由来であることを理解されたい。
【0144】
適切な親水性オリゴマ/ポリマ部分は、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ[N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリ(N,N-diメタクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(グリセロール)、ポリHEMA、多糖類、ポリ(ビニルアルコール)、ポリケトン、ポリ(アルデヒドグルロネート)、ポリビニルアミン、ポリカプロラクトン、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(エチレングリコール)等のポリオキシアルキレン、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)等に上述した共重合体を含めたものから選択される。親水性は、ポリオキシアルキレン部分による変性により得られることが好ましい。
【0145】
上述した親水性オリゴマ/ポリマのポリシロキサンポリマ骨格への組み込みは、一般に結合基により行われる。結合基は、2個の相互反応官能基の反応の生成物として理解され、ポリシロキサン骨格上に1個の官能基があり、親水性オリゴマ/ポリマ上に1個がある。例えば、アミン結合基は、例えば、限定では無いが、グリシジルエーテルの1級又は2級アミンとの反応の結果である。親水性オリゴマ/ポリマとポリシロキサン骨格との間での有用な結合基の例には、アミン基、エーテル基、アミド基、1,2,3-トリアゾール、C-C結合、C-C二重結合、C-C三重結合、Si-C結合、C-S結合、S-S結合、ウレタン基、ウレア基がある。最も好適な結合基は、白金により触媒されるヒドロシリル化反応により調製されたSi-C結合であり、ここで、ポリシロキサン骨格上の官能基は、ヒドリド基、親水性オリゴマ/ポリマ上の官能基は、アリル基である。
【0146】
一部の実施形態において、親水性オリゴマ/ポリマ部分は、恒久的にバインダマトリクスの親水性に寄与することが好ましい。したがって、こうした実施形態において、親水性オリゴマ/ポリマ部分は、海水中で加水分解性となる結合を有しないことが好ましい。したがって、親水性オリゴマ/ポリマ部分は、エステル結合又は酸無水物結合を含まないことが好ましい。
【0147】
本発明に関連して、オリゴマ/ポリマ部分は、少なくとも3個の反復単位、例えば少なくとも5個の反復単位を包含するものとして理解される。一般に、変性に用いられるオリゴマ/ポリマ部分は、3~1,000個の反復単位、例えば3~200個、又は5~150個、又は5~100個、又は10~80個、又は5~20個の反復単位を含む。
【0148】
一部の好適な実施形態において、親水性オリゴマ/ポリマ部分(即ち、バインダマトリクスに組み込まれるオリゴマ又はポリマ基)の数平均分子量(Mn)は、100~50,000g/molの範囲、例えば100~30,000g/molの範囲、特に150~20,000g/molの範囲、又は200~10,000g/molの範囲内である。
【0149】
本発明の説明及び特許請求の範囲において、「親水性オリゴマ/ポリマ部分」、「親水性 ポリマ部分」、及び同様の用語は、オリゴマ又はポリマの部分が、それら自体において(即ち、個別の部分として表される時に)、25℃の脱塩水において少なくとも1%(w/w)の溶解度を有することを意味するものである。
【0150】
上述したポリシロキサン系バインダが、その内部に、バインダマトリクスの一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分により変性された1つ以上のポリシロキサン成分を含んでいることを特徴とする場合、こうしたポリシロキサン成分は、他のポリシロキサン成分及び架橋剤との反応時に、バインダ系に親水性をもたらす。或いは、ポリシロキサンバインダ又は親水性オリゴマ/ポリマ部分と反応して非加水分解性結合を形成することを可能にする反応性シランにより官能化された親水性オリゴマ/ポリマ部分を用いてもよい。
【0151】
ポリシロキサン成分は、Si-OH基といったケイ素反応基、Si-OR(アルコキシ、オキシム、アセトキシ等)基といった加水分解性基等を含み、ポリシロキサン系バインダ系の他の構成要素との反応を促進する必要がある。
【0152】
上記の現在好適な一実施形態において、親水性オリゴマ/ポリマ部分は、ポリ(オキシアルキレン)部分である。
【0153】
親水性変性ポリシロキサン油
他の変形例(上述した「バインダマトリクスの親水性変性」に関する段落において言及した第1の変形例と組み合わせ得る)において、第2の被膜は、更に、親水性変性ポリシロキサン油、即ち、ポリシロキサン系バインダマトリクスとの共有結合を形成しない成分を含み得る。親水性変性ポリシロキサン油は、同じ分子に親水性及び親油性基が含有されるため、界面活性剤及び乳化剤として広く用いられている。上述したポリシロキサン成分とは対照的に、親水性変性ポリシロキサン油は、バインダ(又はバインダ成分)又は架橋剤(存在する場合)との反応が可能な基を含まないように選択され、したがって、親水性変性ポリシロキサン油は、特にバインダ成分に関して、非反応性となるようにする。特に、親水性変性ポリシロキサン油は、Si-OH基のようなケイ素反応基、Si-OR(アルコキシ、オキシム、アセトキシ等)基のような加水分解性基等を全く含まず、ポリシロキサン系バインダ系との反応を避けるようにする。
【0154】
非反応性親水性変性ポリシロキサン油は、一般に、極性及び/又は水素結合が可能な非イオン性オリゴマ又はポリマ基の添加により変性し、他の極性溶媒、特に、水、又は他の極性オリゴマ又はポリマ基との相互作用を高める。こうした基の例には、アミド(例えば、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ[N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド])、ポリ(N,N-ジメタクリルアミド)、酸(例えば、ポリ(アクリル酸))、アルコール(例えば、ポリ(グリセロール)、ポリHEMA、多糖類、ポリ(ビニルアルコール))、ケトン(ポリケトン)、アルデヒド(例えば、ポリ(アルデヒドグルロネート)、アミン(例えば、ポリビニルアミン)、エステル(例えば、ポリカプロラクトン、ポリ(ビニルアセテート))、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)のようなポリオキシアルキレン)、イミド(例えば、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン))等であり、上述した共重合体が含まれる。親水性は、ポリオキシアルキレン基による変性により得られることが好ましい。
【0155】
好適な実施形態において、基は、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)のようなポリオキシアルキレン)、イミド(例えば、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン))から選択される。
【0156】
上と同様に、ポリシロキサン油が変性される親水性オリゴマ/ポリマ部分は、非ケイ素由来であることを理解されたい。好ましくは、上述した「オリゴマ」及び「ポリマ」は、少なくとも3個の反復単位、例えば少なくとも5個の反復単位を含む。多くの興味深い実施形態において、オリゴマ又はポリマは、3~1,000個の反復単位、例えば3~200個、又は5~150個、又は5~100個の反復単位を含む。他の興味深い実施形態において、オリゴマ又はポリマは、3~30個の反復単位、例えば3~20個の反復単位、例えば3~15個、又は4~12個の反復単位を含む。他の興味深い実施形態において、オリゴマ又はポリマは、6~20個の反復単位、例えば8~15個の反復単位を含む。
【0157】
一部の好適な実施形態において、親水性基(即ち、オリゴマ又はポリマ基)の数平均分子量(Mn)は、100~50,000g/molの範囲、例えば100~30,000g/molの範囲、特に200~20,000g/molの範囲、又は200~10,000g/molの範囲である。
【0158】
他の興味深い実施形態において、親水性基の数平均分子量(Mn)は、200~5,000g/mol、例えば200~2,500g/mol、又は300~1,000g/molの範囲である。
【0159】
本発明の説明及び特許請求の範囲において、「親水性変性ポリシロキサン油」に関連する「親水性変性」という用語は、ポリシロキサンが変性されるオリゴマ又はポリマ基が、それら自体において(即ち、個別の部分として表される時に)、25℃の脱塩水において少なくとも1%(w/w)の溶解度を有することを意味するものである。
【0160】
特に興味深いものは、親水性部分の相対重量が親水性変性ポリシロキサン油の総重量の1%以上(例えば、1~90%)、例えば5%以上(例えば、5~80%)、特に10%以上(例えば、10~70%)となる親水性変性ポリシロキサン油である。
【0161】
一実施形態において、親水性部分の相対重量は、親水性変性ポリシロキサン油の総重量の25~60%、例えば30~50%の範囲である。
【0162】
好適な実施形態において、親水性変性ポリシロキサン油(存在する場合)の数平均分子量(Mn)は、100~100,000g/molの範囲、例えば250~75,000g/molの範囲、特に500~50,000g/molの範囲である。
【0163】
他の実施形態において、親水性変性ポリシロキサン油(存在する場合)の数平均分子量(Mn)は、500~20,000g/mol、例えば1,000~10,000g/mol、又は1,000~7,500g/mol、又は1,500~5,000g/molの範囲である。
【0164】
親水性変性ポリシロキサン油(存在する場合)の粘度が、10~20,000mPa・sの範囲、例えば20~10,000mPa・sの範囲、特に40~5,000mPa・sの範囲である場合も好ましい。
【0165】
親水性変性ポリシロキサン油は、1つ以上の酵素の利用可能性の制御及び/又は任意の殺生物剤の浸出の制御、並びに湿潤塗料中の酵素の分布のために利用し得る。
【0166】
現在好適な実施形態において、親水性変性ポリシロキサン油は、ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンである。
【0167】
その一変形例において、ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサン油は、ポリ(オキシアルキレン)鎖がグラフト化されたポリシロキサンである。こうした親水性変性ポリシロキサン油の構造の例示的な例は、式(A)である。
【0168】
【化9】
【0169】
ここで
は、それぞれ独立して、C1-5アルキル(直鎖又は分岐炭化水素基を含む)及びアリール(例えば、フェニル(-C))、特にメチルから選択され、
は、それぞれ独立して、-H、C1-4アルキル(例えば、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-CH(CH、-CHCHCHCH)、フェニル(-C)、及びC1-4アルキルカルボニル(例えば、-C(=O)CH、-C(=O)CHCH、及び-C(=O)CHCHCH)、特に-H及びメチルから選択され、
は、それぞれ独立して、C2-5アルキレン(例えば、-CHCH-、-CHCH(CH)-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCH(CHCH)-)、アリーレン(例えば、1,4-フェニレン)、及びアリール(例えば、1-フェニルエチレン)により置換されたC2-5アルキレン、特に、-CHCH-及び-CHCH(CH)-等のC2-5アルキレンから選択され、
xは、0~2500、yは、1~100、x+yは、1~2000であり、
nは、0~50、mは、0~50、m+nは、1~50である。
【0170】
上記式(A)の具体的な一実施形態において、x+yは、25未満、例えば20未満、又は15未満である。他の具体的な実施形態において、x+yは、3~30個の反復単位、例えば3~20個の反復単位、例えば3~15個、又は4~12個の反復単位を含む。他の興味深い実施形態において、x+yは、6~20個の反復単位、例えば8~15個の反復単位を含む。
【0171】
この種の市販の親水性変性ポリシロキサン油は、DC5103(Dow Corning)、DC Q2-5097(Dow Corning)、及びDC193(Dow Corning)である。
【0172】
他の変形例において、ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサン油は、骨格にポリ(オキシアルキレン)鎖を組み込んだポリシロキサンである。こうした親水性変性ポリシロキサン油の構造の例示的な例は、式(B)である、
【0173】
【化10】
【0174】
ここで、
は、それぞれ独立して、C1-5アルキル(直鎖又は分岐炭化水素基を含む)及びアリール(例えば、フェニル(-C))、特にメチルから選択され、
は、それぞれ独立して、-H、C1-4アルキル(例えば、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-CH(CH、-CHCHCHCH)、フェニル( C)、及びC1-4アルキルカルボニル(例えば、-C(=O)CH、-C(=O)CHCH、及び-C(=O)CHCHCH)、特に-H及びメチルから選択され、
は、それぞれ独立して、C2-5アルキレン(例えば、-CHCH-、-CHCH(CH)、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCH(CHCH)-)、アリーレン(例えば、1,4-フェニレン)、及びアリール(例えば、1-フェニルエチレン)により置換されたC2-5アルキレン、特に、-CHCH-及び-CHCH(CH)-等のC2-5アルキレンから選択され、
xは、0~2500であり、
nは、0~50、mは、0~50、m+nは、1~50である。
【0175】
上記式(B)の一実施形態において、n+mは、3~30個の反復単位、例えば3~20個の反復単位、例えば3~15個、又は4~12個の反復単位を含む。他の興味深い実施形態において、n+mは、6~20個の反復単位、例えば8~15個の反復単位を含む。
【0176】
上記式(B)の一実施形態において、xは、3~1,000個の反復単位、例えば3~200個、又は5~150個、又は5~100個の反復単位、例えば、1~50個の反復単位を含む。他の興味深い実施形態において、xは、3~30個の反復単位、例えば3~20個の反復単位、例えば3~15個、又は4~12個の反復単位を含む。他の興味深い実施形態において、xは、6~20個の反復単位、例えば8~15個の反復単位を含む。
【0177】
上記式(B)の一実施形態において、n+m+xは、3~30個の反復単位、例えば3~20個の反復単位、例えば3~15個、又は4~12個の反復単位を含む。他の興味深い実施形態において、n+m+xは、6~20個の反復単位、例えば8~25個の反復単位、例えば8~15個の反復単位を含む。
【0178】
この種の市販の親水性変性ポリシロキサン油は、DC Q4-3669(Dow Corning)、DC Q4-3667(Dow Corning)、及びDC2-8692である。
【0179】
他の変形例において、ポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサン油は、骨格にポリオキシアルキレン鎖を組み込むと共に、ポリオキシアルキレンがグラフト化されたポリシロキサンである。こうした親水性変性ポリシロキサン油の構造の例示的な例は、式(C)である。
【0180】
【化11】
【0181】
ここで、
は、それぞれ独立して、C1-5アルキル(直鎖又は分岐炭化水素基を含む)及びアリール(例えば、フェニル(-C))、特にメチルから選択され、
は、それぞれ独立して、-H、C1-4アルキル(例えば、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-CH(CH、-CHCHCHCH)、フェニル(-C)、及びC1-4アルキルカルボニル(例えば、-C(=O)CH、-C(=O)CHCH、及び-C(=O)CHCHCH)、特に-H及びメチルから選択され、
は、それぞれ独立して、C2-5アルキレン(例えば、-CHCH-、-CHCH(CH)-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCH(CHCH)-)、アリーレン(例えば、1,4-フェニレン)、及びアリール(例えば、1-フェニルエチレン)により置換されたC2-5アルキレン、特に-CHCH-及び-CHCH(CH)-等のC2-5アルキレンから選択され、
xは、0~2500、yは、1~100、x+yは、1~2000であり、
kは、0~50、lは、0~50、k+lは、1~50であり、
nは、0~50、mは、0~50、m+nは、1~50である。
【0182】
上記構造(A)、(B)、及び(C)において、-CHCH(CH)-、-CHCH(CHCH)-基等は、可能な2つの配向の何れで存在してもよい。同様に、x及びy回存在するセグメントは、一般に、ポリシロキサン構造内でランダムに分布するか、ブロックとして分布することを理解されたい。
【0183】
これらの実施形態及び変形において、ポリ(オキシアルキレン)は、好ましくはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン及びポリ(オキシエチレン-co-オキシプロピレン)から選択され、これらはポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及びポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)と呼ばれる場合がある。したがって、上記構造(A)、(B)、及び(C)において、2個の酸素原子をつなぐRは、好ましくは、それぞれ-CHCH-及び-CHCH(CH)-から選択され、ケイ素原子及び酸素原子をつなぐRは、好ましくは、それぞれC2-5アルキルから選択される。
【0184】
1つ以上の非反応性親水性変性ポリシロキサン油は、存在する場合、種類が異なってよく、例えば、上述した2つ以上の種類のものであってよいことを理解されたい。
上記式(C)の一実施形態において、n+mは、3~30個の反復単位、例えば3~20個の反復単位、例えば3~15個、又は4~12個の反復単位を含む。他の興味深い実施形態において、n+mは、6~20個の反復単位、例えば8~15個の反復単位を含む。
【0185】
上記式(C)の一実施形態において、xは、3~1,000個の反復単位、例えば3~200個、又は5~150個、又は5~100個の反復単位、例えば、1~50個の反復単位を含む。他の興味深い実施形態において、xは、3~30個の反復単位、例えば3~20個の反復単位、例えば3~15個、又は4~12個の反復単位を含む。他の興味深い実施形態において、xは、6~20個の反復単位、例えば8~15個の反復単位を含む。
【0186】
上記式(C)の一実施形態において、yは、3~1,000個の反復単位、例えば3~200個、又は5~150個、又は5~100個の反復単位、例えば、1~50個の反復単位を含む。他の興味深い実施形態において、yは、3~30個の反復単位、例えば3~20個の反復単位、例えば3~15個、又は4~12個の反復単位を含む。他の興味深い実施形態において、yは、6~20個の反復単位、例えば8~15個の反復単位を含む。
【0187】
他の実施形態において、親水性変性ポリシロキサン油は、フッ素化ポリマ又はオリゴマを含まない。
【0188】
特定の実施形態において、本発明による非反応性親水性変性ポリシロキサン油は、芳香族置換基を含まない。
【0189】
存在する場合、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油は、一般に、塗装組成物(及び硬化被膜)において、乾燥重量で0.01~20%、例えば、0.05~10%の量で含まれる。特定の実施形態において、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油は、乾燥重量で塗装組成物/硬化被膜の0.05~7%、例えば、乾燥重量で0.1~5%、特に、乾燥重量で0.5~3%を構成する。他の特定の実施形態において、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油は、乾燥重量で塗装組成物/硬化被膜の1~10%、例えば、乾燥重量で2~9%、特に、乾燥重量で2~7%、又は乾燥重量で3~7%、又は乾燥重量で3~5%、又は乾燥重量で4~8%を構成する。
【0190】
硬化した第2の被膜の実施形態
興味深い一実施形態において、硬化した第2の被膜は、ペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分を一部として含んでいるポリシロキサン系バインダマトリクスを含む。
【0191】
他の実施形態において、第2の被膜は、5~45重量%、例えば10~40重量%、又は15~40重量%、又は20~35重量%の親水性オリゴマ/ポリマ部分、例えば、ペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分を含むポリシロキサン系バインダマトリクスを含む。好ましくは、こうした親水性オリゴマ/ポリマ部分は、ポリオキシアルキレン基である。
【0192】
存在する場合、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油は、一般に、硬化被膜において乾燥重量で0.01~20%、例えば、0.05~10%の量で含まれる。特定の実施形態において、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油は、乾燥重量で塗装組成物/硬化被膜の0.05~7%、例えば、乾燥重量で0.1~5%、特に、乾燥重量で0.5~3%を構成する。
【0193】
他の興味深い実施形態において、硬化した第2の被膜は、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を、硬化した第2の被膜の乾燥重量で0.5~20%、例えば乾燥重量で1~15%、又は2~10%、又は2~7%の量で含む。
【0194】
一実施形態において、硬化した第2の被膜は、殺生物剤及び酵素から選択された、即ち、上記第1の被膜について記載した種類の、1つ以上の有効成分を含んでいてよい。
【0195】
他の実施形態において、上述した実施形態と組み合わせる可能性のあるものとして、第2の被膜のバインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでおり、且つ第2の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含む。
【0196】
そのため、一実施形態において、第2の被膜は、
50重量%超がポリシロキサン部により表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、乾燥重量で40~98%、例えば60~95%と、
乾燥重量で0.1~20%、例えば1~10%の1つ以上の添加剤と、
乾燥重量で0~25%、例えば0.1~15%の1つ以上の顔料及びフィラーと、
乾燥重量で0.1~20%、例えば1~15%の1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油と、を含む。
【0197】
他の実施形態において、第2の被膜は、
50重量%超がポリシロキサン部により表され、その一部としてペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでいるポリシロキサン系バインダマトリクスを、乾燥重量で40~98%、例えば60~95%と、
乾燥重量で0.1~20%、例えば1~10%の1つ以上の添加剤と、
乾燥重量で0~25%、例えば0.1~15%の1つ以上の顔料及びフィラーと、を含む。
【0198】
他の実施形態において、第2の被膜は、
5~45重量%、例えば10~40重量%又は15~40重量%又は20~35重量%が親水性オリゴマ/ポリマ部分により表されるポリシロキサン系バインダマトリクスを、乾燥重量で40~98%、例えば60~95%と、
乾燥重量で0.1~20%、例えば1~10%の1つ以上の添加剤と、
乾燥重量で0~20%、例えば0.1~15%の1つ以上の顔料及びフィラーと、
乾燥重量で0.1~20%、例えば1~15%の1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油と、を含む。
【0199】
一変形例において、バインダマトリクスは、その一部として、ペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分を含む。
【0200】
塗装組成物の調製
第1の被膜及び第2の被膜は、対応する塗装組成物、即ち、第1の塗装組成物及び第2の塗装組成物から調製される。
【0201】
こうした塗装組成物のそれぞれは、塗料製造分野において一般的に用いられる任意の適切な手法により調製し得る。したがって、様々な成分を、ミキサ、高速分散機、ボールミル、パールミル、粉砕機、3本ロールミル等を利用して混ぜ合わせてよい。塗装組成物は、一般に、使用直前に組み合わせて完全に混合するべき2成分又は3成分系として調製及び出荷される。本発明による塗料は、パトロンフィルタ、ワイヤギャップフィルタ、ウェッジワイヤフィルタ、メタルエッジフィルタ、EGLM turnocleanフィルタ(Cuno)、DELTAストレインフィルター(Cuno)、及びJenagストレイナフィルタ(Jenag)を用いて、或いは振動濾過により、濾過し得る。適切な調製方法の例は、実施例に記載している。
【0202】
存在する場合、酵素は、チキソトロープ剤の粉砕及び活性化の後等、配合プロセスの非常に遅い段階に、他の塗料成分と混合することが好ましい。温度を比較的低く保つように注意する必要があり、より低い方が好ましく、必要があるとしても、配合物を高温に曝す時間を可能な限り短くする。一実施態様において、酵素は、塗布直前に添加される。
【0203】
本発明の方法において用いるべき塗装組成物は、一般的に、2種類以上の成分、例えば、1つ以上の反応性ポリシロキサンバインダを含む1種類の予混合物と1つ以上の架橋剤を含む1種類の予混合物との2種類の予備混合物を混合することにより調製される。塗装組成物という場合は、塗布の準備が為された混合済み塗装組成物であることを理解されたい。更に、乾燥重量での塗装組成物の%として記載される全ての量は、塗布の準備が為された混合済み塗装組成物の乾燥重量、即ち、溶媒(存在する場合)を除く重量での%である。
【0204】
発明の第2の選択的な態様
本発明は、更に、少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、殺生物剤及び酵素から選択された1つ以上の有効成分を含み、
b)前記第1の被膜の前記バインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでおり、及び/又は前記第1の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含み、
c)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表される、汚損抑制塗装系に関する。
【0205】
第1の被膜及び第2の被膜のポリシロキサン系バインダマトリクスに関する全ての詳細は、バインダマトリクス、殺生物剤、酵素、親水性変性ポリシロキサン油、任意の触媒、任意の溶媒、添加剤、顔料及びフィラー等、並びに適切な調製方法に関する全ての詳細と同じく、上述した通りである。しかしながら、本発明の第2の選択的な態様における第2の被膜は、特に親水性である必要はないことに留意されたい。
【0206】
第1の被膜のバインダマトリクスがその一部として親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでいるという特徴に関する詳細は、上記「バインダマトリクスの親水性変性」の節を参照されたい。
【0207】
第1の被膜が更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含むという特徴に関する詳細は、上記「親水性変性ポリシロキサン油」の節を参照されたい。
【0208】
一変形例において、1つ以上の有効成分は、1つ以上の殺生物剤を含む。
他の変形例において、1つ以上の有効成分は、1つ以上の酵素を含む。
【0209】
発明の第3の選択的な態様
本発明は、更に、少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、1つ以上の酵素を含み、
b)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表される、汚損抑制塗装系に関する。
一実施形態において、第1の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含む(上記「親水性変性ポリシロキサン油」の節参照)。
【0210】
他の実施形態において、第1の被膜のバインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでいる(上記「バインダマトリクスの親水性変性」の節参照)。
したがって、本発明は、更に、硬化した第1の被膜を構築するための塗装組成物を提供し、前記組成物は、ポリシロキサン系バインダマトリクスと、1つ以上の触媒と、溶媒、添加剤、顔料及びフィラー、1つ以上の酵素、及びバインダマトリクスに含まれる親水性変性ポリシロキサン油及び/又は親水性オリゴマ/ポリマ部分から選択された1つ以上の材料とを含む。
【0211】
本発明は、更に、硬化した第1の被膜を構築するための塗装組成物を提供し、前記組成物は、ポリシロキサン系バインダマトリクスと、1つ以上の触媒と、溶媒、添加剤、顔料及びフィラー、及び1つ以上の酵素から選択された1つ以上の材料とを含むが、塗装組成物は、バインダマトリクスに含まれる親水性変性ポリシロキサン油及び/又は親水性オリゴマ/ポリマ部分を含まない。
【0212】
塗装組成物の成分の詳細は、上述している。
第1の被膜及び第2の被膜のポリシロキサン系バインダマトリクスに関する全ての詳細は、バインダマトリクス、酵素、親水性変性ポリシロキサン油、任意の触媒、任意の溶媒、添加剤、顔料及びフィラー等、並びに適切な調製方法に関する全ての詳細と同じく、上述した通りである。しかしながら、本発明の第2の選択的な態様における第2の被膜は、特に親水性である必要はないことに留意されたい。
【0213】
一変形例において、第1の被膜は、更に、1つ以上の殺生物剤を含む。任意の殺生物剤の種類及び含有量に関する詳細は、上記「第1の硬化被膜」、「殺生物剤」の節を参照されたい。
【0214】
発明の具体的な実施形態
本発明の一般的な態様に加え、本発明は、更に以下の具体的な実施形態に関する。
【0215】
発明の第1の選択的な態様の変形例
殺生物剤を第1の被膜に含め、親水性変性ポリシロキサン油を後続の被膜(群)に含めることにより、前記汚損抑制系の生物汚損に対する抵抗性は、第2の被膜が親水性油を含まない系と比較して向上すると考えられる。特定の理論に縛られることなく、最外塗装層の親水性変性ポリシロキサン油は、最外層を拡散中に殺生物剤を移動させると考えられる。
【0216】
少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、1つ以上の殺生物剤を含み、
b)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第2の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含み、硬化した第2の被膜の平衡水接触角は、0°~27°の範囲である。
【0217】
この実施形態において、硬化した第2の被膜は、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を、硬化した第2の被膜の乾燥重量で0.5~20%、例えば乾燥重量で1~15%、又は2~10%、又は2~7%の量で含むことが好ましい。
【0218】
殺生物剤を第1の被膜に含め、親水性変性部分を有するバインダを後続被膜(群)に含めることにより、前記汚損抑制系の生物汚損に対する抵抗性は、第2の被膜が親水性変性バインダ部分を含まない系と比較して向上すると考えられる。特定の理論に縛られることなく、最外塗装層の親水性変性バインダ部分は、最外層を拡散中に殺生物剤を移動させると考えられる。
【0219】
少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、1つ以上の殺生物剤を含み、
b)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第2の被膜の前記バインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでおり、硬化した第2の被膜平衡水接触角は0°~27°の範囲である。
【0220】
この実施形態において、前記第2の被膜のバインダマトリクスは、その一部として、ペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分、特に、ポリオキシアルキレン部分、例えばポリオキシエチレン部分を含んでいることが好ましい。更に、ペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分の量に関して、ポリシロキサン系バインダマトリクスは、5~45重量%、例えば10~40重量%、又は15~40重量%、又は20~35重量%のペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分、特に、ポリオキシエチレン部分を含むことが好ましい。
【0221】
酵素を第1の被膜に含め、親水性変性ポリシロキサン油を後続の被膜(群)に含めることにより、前記汚損抑制系の生物汚損に対する抵抗性は、第2の被膜が親水性油を含まない系と比較して向上すると考えられる。特定の理論に縛られることなく、最外塗装層の親水性変性ポリシロキサン油は、最外層を拡散中に酵素を移動させると考えられる。
【0222】
少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、1つ以上の酵素を含み、
b)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第2の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含み、硬化した第2の被膜の平衡水接触角は、0°~27°の範囲である。
【0223】
この実施形態において、硬化した第2の被膜は、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を、硬化した第2の被膜の乾燥重量で0.5~20%、例えば乾燥重量で1~15%、又は2~10%、又は2~7%の量で含むことが好ましい。
【0224】
酵素を第1の被膜に含め、親水性変性部分を有するバインダを後続被膜(群)に含めることにより、前記汚損抑制系の生物汚損に対する抵抗性は、第2の被膜が親水性変性バインダ部分を含まない系と比較して向上すると考えられる。特定の理論に縛られることなく、最外塗装層の親水性変性バインダ部分は、最外層を拡散中に酵素を移動させると考えられる。
【0225】
少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、1つ以上の酵素を含み、
b)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第2の被膜の前記バインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでおり、硬化した第2の被膜の平衡水接触角は、0°~27°の範囲である。
【0226】
この実施形態において、前記第2の被膜のバインダマトリクスは、その一部として、ペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分、特に、ポリオキシアルキレン部分、例えばポリオキシエチレン部分を含んでいることが好ましい。更に、ペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分の量に関して、ポリシロキサン系バインダマトリクスは、5~45重量%、例として10~40重量%、又は15~40重量%、又は20~35重量%のペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分、特に、ポリオキシエチレン部分を含むことが好ましい。
【0227】
発明の第2の選択的な態様の変形例
殺生物剤と(i)バインダマトリクスの親水性変性及び/又は(ii)親水性変性ポリシロキサン油とを第1の被膜に含め、外側層に殺生物剤及び親水性バインダ変性及び/又は親水性変性ポリシロキサン油が存在しない、又は実質的に存在しない状態を保つことにより、前記汚損抑制系の生物汚損に対する抵抗性は、こうした親水性変性を第1の層が含まない系と比較して向上すると考えられる。特定の理論に縛られることなく、バインダマトリクスの親水性変性及び/又は親水性変性ポリシロキサン油は、第1の層における殺生物剤の拡散を促進するため、最外層により制御された状態の拡散により生じる殺生物剤の一定の放出速度を保つと考えられる。
【0228】
少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、1つ以上の殺生物剤を含み、
b)前記第1の被膜の前記バインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでおり、及び/又は前記第1の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含み、
c)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表される。
【0229】
酵素と(i)バインダマトリクスの親水性変性及び/又は(ii)親水性変性ポリシロキサン油とを第1の被膜に含め、外側層に酵素及び親水性バインダ変性及び/又は親水性変性ポリシロキサン油が存在しない、又は実質的に存在しない状態に保つことにより、前記汚損抑制系の生物汚損に対する抵抗性は、こうした親水性変性を第1の層が含まない系と比較して向上すると考えられる。特定の理論に縛られることなく、バインダマトリクスの親水性変性及び/又は親水性変性ポリシロキサン油は、第1の層における酵素の拡散を促進するため、最外層により制御された状態の拡散により生じる殺生物剤の一定の放出速度を保つと考えられる。
【0230】
少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、1つ以上の酵素を含み、
b)前記第1の被膜の前記バインダマトリクスは、その一部として、親水性オリゴマ/ポリマ部分を含んでおり、及び/又は前記第1の被膜は、更に、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を含み、
c)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表される。
【0231】
上述した2つの変形例の一実施形態において、硬化した第1の被膜は、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を、硬化した第1の被膜の乾燥重量で0.5~20%、例えば乾燥重量で1~15%、又は2~10%、又は2~7%の量で含むことが好ましい。
【0232】
上述した2つの変形例の他の実施形態において、前記第2の被膜のバインダマトリクスは、その一部として、ペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分、特に、ポリオキシアルキレン部分、例えばポリオキシエチレン部分を含んでいることが好ましい。更に、ペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分の量に関して、ポリシロキサン系バインダマトリクスは、5~45重量%、例えば10~40重量%、又は15~40重量%、又は20~35重量%のペンダント親水性オリゴマ/ポリマ部分、特に、ポリオキシエチレン部分を含むことが好ましい。
【0233】
発明の第3の選択的な態様の変形例
酵素を第1の被膜に含め、外側層に酵素が存在しない、又は実質的に存在しない状態を保つことにより、前記汚損抑制系の生物汚損に対する抵抗性は、酵素を含む第1の被膜が存在しない系と比較して向上すると考えられる。特定の理論に縛られることなく、酵素は、外側層を介して徐々に拡散するため、長期間に亘り、酵素の放出を安定した状態に保つと考えられる。
【0234】
少なくとも硬化した第1の被膜と硬化した第2の被膜とを備える汚損抑制塗装系であって、
a)前記第1の被膜は、乾燥重量で前記第1の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表され、前記第1の被膜は、更に、1つ以上の酵素と、任意に1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油とを含み、
b)前記第2の被膜は、乾燥重量で前記第2の被膜の少なくとも40%を構成するポリシロキサン系バインダマトリクスを含み、前記バインダマトリクスの50重量%超は、ポリシロキサン部により表される。
【0235】
この変形例において、硬化した第1の被膜は、1つ以上の親水性変性ポリシロキサン油を、硬化した第2の被膜の乾燥重量で0.5~20%、例えば乾燥重量で1~15%、又は2~10%、又は2~7%の量で含むことが好ましい。
【0236】
塗装組成物の塗布
本発明の塗装組成物は、一般に、基材の表面の少なくとも一部に塗布される。
「塗布」という用語は、塗料産業における通常の意味で用いられる。したがって、「塗布」は、例えば、ブラシ、ローラ、吹き付け、浸し塗り等、任意の従来の手段を用いて実施される。塗装組成物を「塗布」する商業的に最も興味深い方法は、吹き付けである。したがって、塗装組成物は、好ましくは吹き付け可能である。吹き付けは、当業者に既知である従来の吹き付け装置を用いて達成される。塗装は、一般に、50~600μm、例として50~500μm、例えば75~400μm、又は20~150μm、又は30~100μmの乾燥膜厚で塗布される。
【0237】
更に、塗装組成物は、ASTM D 4400-99による垂れ抵抗性に関して(即ち、垂れることなく垂直な表面に適切な膜厚で塗布される能力に関して)、少なくとも70μmまで、例えば少なくとも200μmまで、好ましくは少なくとも400μmまで、及び特に少なくとも600μmまでの湿潤膜厚に対する垂れ抵抗性を示すことが好ましい。
【0238】
「基材の表面の少なくとも一部」という用語は、塗装組成物を表面の任意の一部に塗布し得ることを示す。多くの用途において、塗装組成物は、少なくとも、表面(例えば、船の胴体)が海水等の水に接触し得る基材(例えば、船舶)の一部に塗布される。
【0239】
「基材」という用語は、塗装組成物が塗布される固体材料を意味するものである。基材は、一般に、スチール、鉄、アルミニウム等の金属又はガラス繊維強化ポリエステルを含む。最も興味深い実施形態において、基材は、金属基材、特に、スチール基材である。他の実施形態において、基材は、ガラス繊維強化ポリエステル基材である。一部の実施形態において、基材は、海洋構造物の最外表面の少なくとも一部である。
【0240】
「表面」という用語は、通常の意味で用いられ、物体の外側境界を示す。こうした表面の特定の例には、海洋構造物、例えば船舶(限定では無いが、全ての種類のボート、ヨット、モーターボート、発動機艇、遠洋航行船、タグボート、タンカ、コンテナ船及び他の貨物船、潜水艦、及び艦艇を含む)、パイプ、沿岸及び沖合の機械、建築物、及び全ての種類の物体、例えば桟橋、杭、橋梁下部構造、水力設備及び構造物、水中油井構造物、網及び他の養殖設備、並びにブイ等の表面が挙げられる。
【0241】
基材の表面は、「未処理の」表面(例えば、スチール表面)であってよい。しかしながら、基材は、一般に、防食塗装及び/又はタイコートで被覆され、基材の表面はこのような塗装により構成される。存在する場合、(防食及び/又はタイ)塗装は、一般に、100~600μm、例として150~450μm、例えば200~400μmの合計乾燥膜厚で塗布される。或いは、基材は、塗膜、例えば、摩耗した汚損除去塗膜又は類似するものを有してもよい。
【0242】
重要な一実施形態において、基材は、防食塗装、例として防食エポキシ系塗装、例えば硬化したエポキシ系塗装、又はショッププライマ、例えば、ジンクリッチショッププライマにより被覆された金属基材(例えば、スチール基材)である。他の関連する実施態様において、基材は、エポキシプライマ塗装で被覆されたガラス繊維強化ポリエステル基材である。
【0243】
即ち、本発明は、(第1の選択的な態様、第2の選択的な態様、又は第3の選択的な態様による)基材の表面に汚損抑制塗装系を構築する方法に関し、次の連続するステップを含む。
【0244】
a)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を、前記基材、例えば、場合に応じて未処理基材又は既に1つ以上の塗装を有する基材の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、第1の選択的な態様、第2の選択的な態様、又は第3の選択的な態様について定めたような硬化した第1の被膜を形成すること、及び
b)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を、前記硬化した第1の被膜の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、第1の選択的な態様、第2の選択的な態様、又は第3の選択的な態様のそれぞれについて定めたような硬化した第2の被膜を形成すること。
【0245】
本発明は、更に、(第1の選択的な態様、第2の選択的な態様、又は第3の選択的な態様による)基材の表面に汚損抑制塗装系を構築する方法に関し、次の連続するステップを含む。
【0246】
a)プライマ組成物の1つ以上の層を前記基材の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、下塗り済み基材を形成すること、
b)タイコート組成物の1つ以上の層を前記下塗り済み基材の表面に任意に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、硬化したタイコートを形成すること、
c)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を、場合に応じて前記下塗り済み基材の表面又は前記タイコートの表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、第1の選択的な態様、第2の選択的な態様、又は第3の選択的な態様について定めたような硬化した第1の被膜を形成すること、及び
d)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を前記硬化した第1の被膜の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、第1の選択的な態様、第2の選択的な態様、又は第3の選択的な態様についてそれぞれ定めたような硬化した第2の被膜を形成すること。
【0247】
本発明は、更に、(第1の選択的な態様、第2の選択的な態様、又は第3の選択的な態様による)経年劣化した防汚塗装系の表面に汚損抑制塗装系を構築する方法に関し、次の連続するステップを含む。
【0248】
a)シーラ/リンクコート組成物の1つ以上の層を、前記基材の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、封止基材を形成すること、
b)タイコート組成物の1つ以上の層を前記封止基材の表面に任意に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、硬化したタイコートを形成すること、
c)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を場合に応じて前記下塗り済み基材の表面又は前記タイコートの表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、第1の選択的な態様、第2の選択的な態様、又は第3の選択的な態様について定めたような硬化した第1の被膜を形成すること、及び
d)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を前記硬化した第1の被膜の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、第1の選択的な態様、第2の選択的な態様、又は第3の選択的な態様についてそれぞれ定めたような硬化した第2の被膜を形成すること。
【0249】
本発明は、更に、(第1の選択的な態様、第2の選択的な態様、又は第3の選択的な態様による)経年劣化した防汚除去塗装系の表面に汚損抑制塗装系を構築する方法に関し、次の連続するステップを含む。
【0250】
a)タイコート組成物の1つ以上の層を前記経年劣化した汚損除去塗装系の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、硬化したタイコートを形成すること、
b)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を場合に応じて前記下塗り済み基材の表面又は前記タイコートの表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、第1の選択的な態様、第2の選択的な態様、又は第3の選択的な態様について定めたような硬化した第1の被膜を形成すること、及び
c)ポリシロキサン系塗装組成物の1つ以上の層を前記硬化した第1の被膜の表面に塗布し、前記層(群)を硬化させることにより、第1の選択的な態様、第2の選択的な態様、又は第3の選択的な態様についてそれぞれ定めたような硬化した第2の被膜を形成すること。
【0251】
海洋構造物
本発明は、更に、外表面の少なくとも一部に、これまでに本明細書で定めたような最外汚損抑制塗装系を有する海洋構造物を提供する。特に、最外塗装を有する外表面の少なくとも一部は、前記構造物の水中部分となる。
【0252】
塗装組成物、基材表面上で塗装を構築する方法、及び塗装の特性は、上述した内容に従う。
【0253】
一実施形態において、海洋構造物の汚損抑制塗装系は、防食層、タイコート、及び本明細書に記載の汚損抑制塗装系から成るものにし得る。
【0254】
他の実施形態において、汚損抑制塗装組成物は、使用済みの汚損抑制塗装系の最上部、例えば、使用済みのポリシロキサン系汚損抑制被膜の最上部に塗布される。
【0255】
上述した海洋構造物の特定の一実施形態において、防食層の合計乾燥膜厚は、100~600μm、例として150~450μm、例えば200~400μmであり、タイコートの合計乾燥膜厚は、50~500μm、例として50~400μm、例えば75~350μm、又は75~300μm、又は75~250μmであり、汚損抑制塗装の第1の被膜の合計乾燥膜厚は、20~500μm、例として20~400μm、例えば50~300μmであり、汚損抑制塗装系の第2の被膜の合計乾燥膜厚は、20~500μm、例として20~400μm、例えば50~300μmである。
【0256】
海洋構造物の他の実施形態は、前記構造物の最外表面の少なくとも一部が、
1~4層、例えば2~4層の塗布により構築される、合計乾燥膜厚が150~400μmであるエポキシ系塗装の防食層と、
1~2層の塗布により構築される、合計乾燥膜厚が20~400μmであるタイコートと、
1~2層の塗布により構築される、合計乾燥膜厚が20~400μmである汚損抑制塗装の第1の被膜と、
1~2層の塗布により構築される、合計乾燥膜厚が20~400μmである汚損抑制塗装の第2の被膜と、を含む汚損抑制塗装系により被覆されたものとなる。
【0257】
上述した海洋構造物の他の実施形態において、汚損抑制塗装は、タイコートを用いること無く、防食層上に直接塗布される。
【0258】
一般的な注意事項
本明細書及び特許請求の範囲では、ポリシロキサン(a polysiloxane)等に言及するが、本明細書に定めた塗装組成物は、個別の成分を1種類、2種類、又はそれ以上含み得ることを理解されたい。こうした実施形態において、それぞれの成分の総量は、個別の成分について上述した量に対応するべきである。
【0259】
化合物(群)、ポリシロキサン(群)、剤(群)等の表現における「(群)」は、個別の成分が1種類、2種類、又はそれ以上存在し得ることを示す。
【0260】
一方、「1つ(one)」という表現が用いられる場合、それぞれの成分は、1種類(1つ)のみ存在する。
【0261】
実施例
モデル塗料の調製方法
(i)部分:バインダ、溶媒、顔料、殺生物剤(必要な場合)、及び添加剤を、インペラディスクを備えたDiaf溶解機において混合する(例えば、直径70mmインペラディスクにより1L缶において2000rpmで15分間)。
【0262】
(ii)部分:エチルシリケート、溶媒、触媒、及び2,4-ペンタンジオンを、インペラディスクを備えたDiaf溶解機において混合する(例えば、直径70mmインペラディスクにより1L缶において500rpmで2分間)。
【0263】
塗布前に、(i)部分及び(ii)部分を、実施例に記載した組成物による親水性変性ポリシロキサン油及び/又は反応性親水性変性ポリシロキサンバインダと共に混合し、存在する場合には、酵素を水中の溶液/懸濁液中で添加し、その後、混合物を攪拌して均質にする。
【0264】
試験方法
粘度
特許請求の範囲を含む本願において、粘度は、25℃でISO2555:1989に従い測定する。
【0265】
水接触角の測定
硬化表面の平衡水接触角は、接触測角器(Dataphysics OCA)によりMilli-Q水を試験液として測定した、固着液滴(sessile drop)接触角を用いて確定する。基材を温度制御室に置き、20μlの液滴を基材上に分散させることにより静的接触角を測定する。水接触角は、Dataphysics OCAソフトウェアを用いて自動的に確定する。水接触角は、少なくとも5分間の間隔を空けた2回の連続した測定値が互いに有意に異なっていないと見做される場合に、安定していると見做す。これが生じない場合、60分後の水接触角を報告する。
【0266】
ラフト試験
パネルの調製
塗装の付着を促進するために片側をサンドブラストしたアクリルパネル(150×200mm)を、エアスプレにより塗布した市販のエポキシ(HEMPEL Light Primer 45551)100μm(DFT)により被覆する。室温で6~24時間乾燥させた後、タイコートをドクタブレードにより隙間300μmで塗布する。16~30時間乾燥させた後、第1の層をドクタブレードにより、実施例において指定した隙間で塗布する。16~30時間乾燥させた後、第2の被膜をドクタブレードにより、層の湿潤膜厚が対応する実施例に指定した通りになるように隙間を空けて塗布する。パネルは、少なくとも72時間乾燥後、ラフト上で浸漬する。
【0267】
試験
パネルは、スペインとシンガポールという2つの異なる場所で試験する。
スペインの試験場:スペイン北西部のビラノバに位置する。この試験場において、パネルは、平均温度17~18℃で、塩分濃度が37~38パーミルの範囲の海水に浸漬する。
【0268】
シンガポールの試験場:この試験場において、パネルは、温度が29~31℃の範囲で、塩分濃度が29~31パーミルの範囲の海水に浸漬する。
パネルは、4~12週間に亘り調査し、以下の基準に従って評価する。
【0269】
【表1】

【実施例
【0270】
以下のモデル塗料を、防汚性能の試験用に準備することができる。
モデル塗料表の全項目は、特に明記しない限り重量単位とする。最終的なポリシロキサンマトリクスの計算においては、全ての加水分解性基が加水分解及び反応して、ポリシロキサンバインダとの縮合反応によりマトリクスになるものとする。したがって、エチルシリケートは、その重量の41%が最終的なポリシロキサンマトリクスの計算に寄与し、ビニルトリメトキシシランは、これに応じて、その重量の54%が寄与する。バインダマトリクスのポリシロキサン含有量を計算する際に、成分は、出発原料として計算に含まれるが、しかしながら、エチルシリケート及びビニルトリメトキシシランについて上述したように補正される。
【0271】
材料
RF-5000、信越化学工業(日本)、シラノール末端ポリジメチルシロキサン
キシレン、地元供給業者
Aerosil R972、Evonik industries
Silikat TES 40 WN、Wacker-Chemie(ドイツ)、エチルシリケート
ネオスタンU-12、日東化成(日本)、ラウリン酸ジブチル錫
アセチルアセトン、Wacker-CHemie(ドイツ)、2、4-ペンタンジオン
Byk331、Byk(ドイツ)、非反応性ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン油
Bayferrox 130M、Lancess(ドイツ)、酸化鉄
銅オマジン、Arch-CHemicals Inc.(アイルランド)、銅ピリチオン
DC190、Dow Corning(米国)、ポリエーテル変性ポリシロキサン
Tego glide 435、Evonik Industries(ドイツ)、非反応性ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン油
DC5103、Dow Corning(米国)、ポリエーテル変性ポリシロキサン(シロキシル化ポリエーテル)
DC550、Dow Corning(米国)、ポリフェニルメチルジメチルシロキサン
DC57、Dow Corning(米国)、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン
SIV9280.0、Gelest(米国),ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン
【0272】
フュームシリカ
ポリアミドワックス
Sachtleben R320、Sachtleben(ドイツ)、微粒子化ルチル型二酸化チタン
亜鉛オマジン、Arch-CHemicals Inc.(アイルランド)、亜鉛ピリチオン
Econea、JanssenPMP(ベルギー)、トラロピリル
セルラーゼ、(22178)、Sigma Aldrich Cellulase、クロコウジカビ由来
Savinase 16L type EX、Novozymes(デンマーク)、プロテアーゼ(スブチリシン)の溶液
共重合体
KF6015、信越化学工業(日本)、ポリエーテル変性シリコーンオイル
Dynasylan VTMO、Evonik Industries(ドイツ)、ビニルトリメトキシシラン
キシレン中の白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金濃度2.1~2.4%、CAS No.68478-92-2
ポリジメチルシロキサン、ヒドリド末端-MWn=1100、当量=550g/eq
メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体、ヒドリド末端-MWn=2300、当量=200g/eq
ポリエチレングリコールジアリルエーテル-MWn=300g/mol、当量=150g/eq
ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(ヒドロキシル末端)-MWn=350g/mol、当量=350g/eq
ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(ヒドロキシル末端)-MWn=500g/mol、当量=500g/eq
分岐型親水性変性ポリシロキサン(HMP3)
【0273】
分岐型硬化性ポリ(エチレングリコール)変性ポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサン-メチルヒドロシロキサン(ヒドリド末端)25.0gを無水トルエン50.0gに溶解したものを、キシレン溶液中の白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体0.14gに混合することにより調製する。溶液を80℃に加熱する。この溶液に、4.0gのビニルトリメトキシシランを滴下して添加し、1/2時間、80℃で反応させる。反応完了後、68.5gのポリエチレングリコールモノアリルエーテル[A350]を滴下して添加し、3時間、80℃で反応させる。HMP3中のPEG変性PDMSバインダは、66.1w/w%となる。HMP3バインダ中のPEGの量は、70.3w/w%となる。
【0274】
直鎖型親水性変性ポリシロキサン(HMP4)
直鎖型硬化性ポリ(エチレングリコール)変性ポリシロキサンは、ヒドリド末端ポリジメチルシロキサン100.0gを無水トルエン75.0gに溶解したものを、キシレン溶液中の白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体0.17gと混合することにより調製する。溶液を攪拌下で80℃に加熱する。この溶液に、1.7gのポリエチレングリコールジアリルエーテル[AA300]を滴下して添加し、2時間、80℃で反応させる反応完了後、5.4gのビニルトリメトキシシランを80℃で滴下して添加し、1時間、80℃で反応させる。HMP4中のPEG変性PDMSバインダの含有量は、58.8w/w%となる。HMP4バインダ中のPEGの量は、5.0w/w%となる。
【0275】
分岐型親水性変性ポリシロキサン(HMP5)
分岐型硬化性ポリ(エチレングリコール)変性ポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサン-メチルヒドロシロキサン(ヒドリド末端)25.0gを無水トルエン50.0gに溶解したものを、キシレン溶液中の白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体0.14gと混合することにより調製する。溶液を80℃に加熱する。この溶液に、4.0gのビニルトリメトキシシランを滴下して添加し、1/2時間、80℃で反応させる。反応完了後、90.0gのポリエチレングリコールモノアリルエーテル[A500]を滴下して添加し、3時間、80℃で反応させる。HMP5中のPEG変性PDMSバインダの量は、64.4w/w%となる。HMP5バインダ中のPEGの量は、75.6w/w%となる。
反応性の親水性変性ポリシロキサン(MHP3、MHP4、HMP5)は、乾燥窒素下で密閉容器に保存し、配合前に水分との接触を回避する。
【0276】
実施例1
【0277】
【表2】

【0278】
【表3】

【0279】
【表4】

【0280】
【表5】

【0281】
【表6】

【0282】
【表7】

【0283】
【表8】


この組成物は、硬化剤を必要とせず、1成分組成物として使用し得る。
【0284】
【表9】

【0285】
【表10】
【0286】
【表11】
【0287】
【表12】
【0288】
【表13】
【0289】
【表14】
【0290】
【表15】
【0291】
【表16】
【0292】
【表17】
【0293】
【表18】
【0294】
【表19】
【0295】
【表20】