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特許7411365空気吹出口用整流板を備えた空冷ヒートポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】空気吹出口用整流板を備えた空冷ヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/50 20110101AFI20231228BHJP
   F24F 1/16 20110101ALI20231228BHJP
   F24F 1/68 20110101ALI20231228BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F24F1/50
F24F1/16
F24F1/68
F24F13/08 C
F24F13/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019175957
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021050899
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅裕
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-034160(JP,A)
【文献】特開2007-163017(JP,A)
【文献】特開2019-011871(JP,A)
【文献】特開2019-020096(JP,A)
【文献】特開2000-346402(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0130975(US,A1)
【文献】国際公開第2019/111451(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/50
F24F 1/16
F24F 1/68
F24F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に空気吸込口を有し、上面に内部の送風機からの空気を吹き出す空気吹出口を有する熱交換サーキットの該空気吹出口を塞ぐように六角形の集合体として連続成型積層された空気吹出口用整流板が被せられ、該空気吹出口から吹き出す空気を真上に配向させるように構成された複数の上記熱交換サーキットが隣接する列と、
上記空気吹出口用整流板が上記空気吹出口に被せられていない複数の熱交換サーキットが隣接して設けられた列とが、交互に配置されている
ことを特徴とする空冷ヒートポンプ。
【請求項2】
側面に空気吸込口を有し、上面に内部の送風機からの空気を吹き出す空気吹出口を有する熱交換サーキットの該空気吹出口を塞ぐように六角形の集合体として連続成型積層された空気吹出口用整流板が被せられ、該空気吹出口から吹き出す空気を真上に配向させるように構成された複数の上記熱交換サーキットが壁側に隣接して設けられ、
壁側以外の複数の熱交換サーキットは、上記空気吹出口用整流板が設けられていない
ことを特徴とする空冷ヒートポンプ。
【請求項3】
側面に空気吸込口を有し、上面に内部の送風機からの空気を吹き出す空気吹出口を有する複数の熱交換サーキットのうち、ショートサーキットが多くて性能が出ない熱交換サーキットの空気吹出口にのみ該空気吹出口を塞ぐように六角形の集合体として連続成型積層された空気吹出口用整流板が被せられ、他の複数の熱交換サーキットは、上記空気吹出口用整流板が設けられておらず、
前記空気吹出口用整流板は、
アルミ箔が六角形の集合体として連続成型積層された円板形状のものである
ことを特徴とする空冷ヒートポンプ。
【請求項4】
前記空気吹出口用整流板は、
アルミ箔が六角形の集合体として連続成型積層された円板形状のものである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の空冷ヒートポンプ。
【請求項5】
前記空気吹出口用整流板は、
厚さが20mm以上40mm以下である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空冷ヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気吹出口用整流板備えた空冷ヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図6に示すように、両側面111cに空気吸込口111dを設けると共に、両側面111cを下方に向けて幅が縮小するように傾斜して形成した熱交換室111と、熱交換室111の下面に連続して設けられ、両側面112cが下方に向けて幅が拡大するように傾斜して形成した機械室112と、空気吸込口111dに面して熱交換室111内に配置された熱交換器113と、空気吸込口111dから吸込んだ空気を熱交換器113を通して空気吹出口111bから吹出す送風機114とを具備する熱交換サーキット(空気熱交換器)110が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7に示すように、壁W1に近い場所に熱交換サーキット210を設置する場合、防音壁W2が熱交換サーキット210の空気吹出口11bよりも高いと、熱交換サーキット210から吹き出した空気が防音壁W2に当たり、下降流になってショートサーキットすることがわかっている。この場合、吹出空気側にダクトDを取り付け、防音壁W2よりも高くしてショートサーキットを防止している。
【0004】
また、このような熱交換サーキットは、複数台を隣接して設置することが多い。そこで、例えば特許文献2にも示されるように、対向配置された複数の熱交換サーキットの各外気吸込口よりも上方位置に架け渡され、熱交換サーキット間の空間を上下に遮熱する遮熱シートを有する熱交換サーキット用遮熱具が知られている。この遮熱シートにより、冷房運転時には吸込温度を下げる効果が発揮され、暖房時には吸込温度を上げる効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-163017号公報
【文献】特開2014-37920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7のようなダクトDを有する熱交換サーキット210は、防音壁W2が非常に高い場合、ダクトDも防音壁W2の高さに合わせて非常に高くする必要がある。ダクトDを高くすると、機械室内部の送風機やモータのメンテナンスが困難になるため、一般的にはダクトDの高さは1m程度に抑制される。そうすると、ショートサーキットを十分に防止できないという問題がある。
【0007】
特許文献2のような遮熱シートを熱交換サーキットの間に設置する方法は、熱交換サーキットが密着して隣接している場合には利用できない。また、熱交換サーキットと壁との間の通路にシートを設置する案もあるが、通路には設備の配管類が多くあるため、水平にシートを設置できない上に、通路幅は現場によって変わるため、コスト、施工性から考えて現実的ではない。
【0008】
また熱交換サーキットの吹出側に設置されているファンは、通常、プロペラファンであり、吹出空気流れを可視化すると、直進性がなく吹き出した空気は周りに広がり旋回しながら上昇しているため、風が強いと上昇力がなく、熱交換サーキットの近くにある壁にぶつかり、下降流を発生しやすい。また、隣接しているファンとファンの間が狭いため隣接したファンからの吹出空気がぶつかりながら上昇する。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱交換サーキットの空気吹出口から吹き出される空気を均一化して直進させ、その性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、送風機の空気吹出口にハニカムプレートを設けた。
【0011】
具体的には、第1の発明の空気吹出口用整流板は、側面に空気吸込口を有し、上面に内部の送風機からの空気を吹き出す空気吹出口を有する熱交換サーキットの該空気吹出口を塞ぐように被せられ、該空気吹出口から吹き出す空気を真上に配向させるように構成されている。
【0012】
上記の構成によると、通常は内部の送風機から吹き出される空気の流れが螺旋状になるような場合でも、空気吹出口用整流板が空気吹出口から吹き出される空気を真上に配向させるので、空気吹出口用整流板がない場合に問題となっていたショートサーキットが確実に防止される。取り付け及び取り外しが容易なため、メンテナンスコストが低下する。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、
アルミ箔が六角形の集合体として連続成型積層されたものである。
【0014】
上記の構成によると、さびにくく重すぎないで適度な強度を有し、取り付けやすい安価な空気吹出口用整流板を容易に製造できる。
【0015】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
厚さが20mm以上40mm以下である。
【0016】
40mmを超えると、圧損が増え、20mmよりも小さいと整流効果が減少するが、上記の構成によると、適度に圧損を抑えながら、適切な整流効果が発揮される。
【0017】
第4の発明の空冷ヒートポンプは、第1から第3のいずれか1つの発明の空気吹出口用整流板が、空気吹出口に被せられた複数の熱交換サーキットが隣接して設けられている。
【0018】
上記の構成によると、空気吹出口用整流板によってショートサーキットが防止された効率のよい空冷ヒートポンプが得られる。
【0019】
第5の発明では、第4の発明において、
隣接する複数の空気吹出口のうち少なくとも一部に上記空気吹出口用整流板が間引き設置されている。
【0020】
上記の構成によると、空気吹出口用整流板を適当に間引き設置してもショートサーキットが抑制されるので、製造費や設置費を抑制できる。例えば、ショートサーキットが多くて性能が出ない熱交換サーキットの空気吹出口にのみ空気吹出口用整流板を被せてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、熱交換サーキットの送風機から吹き出される空気を均一化して直進させ、その性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】空気吹出口に空冷ヒートポンプ用ハニカムプレートが設けられた空冷ヒートポンプを示す斜視図である。
図2】空気吹出口に空冷ヒートポンプ用ハニカムプレートが設けられた空冷ヒートポンプを示す正面図である。
図3】空冷ヒートポンプ用ハニカムプレートを示す平面図である。
図4】空冷ヒートポンプ用ハニカムプレートの設置パターンの一例(実施例1)を示す平面図である。
図5】空冷ヒートポンプ用ハニカムプレートの設置パターンの他の例(実施例2)を示す平面図である。
図6】従来の熱交換サーキットを示す断面図である。
図7】従来の熱交換サーキットからの空気の流れの概要を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1及び図2は、本発明の実施形態の空気吹出口用整流板としての空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1を備えた空冷ヒートポンプ2を示し、この空冷ヒートポンプ2は、図6で示した熱交換サーキット110と同様の熱交換サーキット10が多数隣接されて構成されている。熱交換サーキット10は、側面に空気吸込口11を有し、下部に機械室12を有し、上面に内部の送風機(図示せず)からの空気を吹き出す空気吹出口11bを有する。制御盤15で機械室12の制御を一斉に行うように構成されている。本実施形態では、空気吹出口11bの形状は、平面視円形となっているが、必ずしもこれに限定されない。
【0025】
図3にも示すように、空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1は、平面視円形の空気吹出口11bを塞ぐように被せられる円板状のもので、空気吹出口11bから吹き出す空気を真上に配向させるように構成されている。空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1は、例えば、アルミ箔が六角形の集合体として連続成型積層されたものである。例えば、厚さは20mm程度で、外形740mm程度、セルサイズは8mm程度である。40mmを超えると圧損が増え、20mmよりも小さいと整流効果が減少するが、厚さが20mm以上40mm以下であると、適度に圧損を抑えながら、適切な整流効果が発揮される。本実施形態では、さびにくく重すぎないで適度な強度を有し、取り付けやすい安価な空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1を容易に製造できるが、材料や形状はこれに限定されない。要するに、空気吹出口11bから吹き出す空気を真上に配向させることができる形状であればよく、例えば、格子状でもよい。空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1は、空気吹出口11bに例えば、結束バンドで取り付けられるので、作業性が極めてよい。
【0026】
図1では、すべての空気吹出口11bに空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1を被せているが、隣接する複数の空気吹出口11bのうち少なくとも一部に空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1が間引き設置されていてもよい。
【0027】
例えば、図4の実施例1では、縦一列4台の熱交換サーキット10が1つのユニット3を構成し、空冷ヒートポンプ2のうち、空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1を被せたユニット3を間隔を開けて配置している。すなわち、合計5つのユニット3が空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1を被せられ、残りの6つのユニット3は、被せられていない。
【0028】
図5の実施例2では、実施例1と同様に11のユニット3が並べられ、1ユニットのうち壁側の熱交換サーキット10にのみ空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1が被せられている。
【0029】
なお、図示しないが、ショートサーキットが多くて性能が出ない熱交換サーキット10の空気吹出口11bにのみ空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1を被せてもよい。
【0030】
-効果確認-
図4に示す実施例1に相当するもので気流の直進性及び性能評価に関する効果実験を行った結果について説明する。
【0031】
(気流の直進性)
図7に示したように、熱交換サーキット10の冷房時には、吹出空気が壁に当たって下降すると、熱交換サーキット10の吸込温度が45℃程度となり、機械室12の凝縮器圧力が高くなり、高圧カットで運転できなくなる可能性がある。
【0032】
また、暖房時には、吹出空気が壁に当たって空気の比重が重くなり、冷房時よりも下降流が発生しやすい。吸込温度が0℃以下になると、熱交換器の分に氷がつき、これを溶かすデフロスト運転を行うので、温水出口温度が上昇せず、COPが大幅に低下する恐れがある。
【0033】
実験を行ったところ、実施例1のものでは、空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1を取り付けた熱交換サーキット10の吹出空気は、隣接した熱交換サーキット10の吹出空気の気流も整流し、約8mまで直進することがわかった。この整流された空気は、風の影響も受けにくく、気流によるショートカットが防止されることがわかった。
【0034】
一方、実施例1と同じ配置で、空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1を全く被せない比較例では、吹出空気は、螺旋状に上昇するため、約3m程度しか上昇しないことがわかった。
【0035】
(性能評価)
外気5℃、温水入り口温度40℃、温水出口温度50℃、負荷率80%の条件下で性能評価実験を行った。空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1ありとなしとで比較した結果、なしの場合のCOPは2.92でありの場合のCOPは3.01となって、約3%向上した。これは、壁に当たって下降流となる気流の割合が低下したので、吸込空気の温度が空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1なしの場合に比べて上昇するため、空冷ヒートポンプ2全体での効率が約3%程度改善したと考えられる。
【0036】
このように、本実施形態では、空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1が空気吹出口11bから吹き出される空気を真上に配向させるので、空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1がない場合に問題となっていたショートサーキットが確実に防止される。
【0037】
また、空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1によってショートサーキットが防止された効率のよい空冷ヒートポンプ2が得られる。例えば、50馬力のユニット3を11台設置した場合、暖房時のCOPが3%向上するので、負荷100%で1日24時間運転すると、3ヶ月程度で償却できる。
【0038】
さらに、空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1を適当に間引き設置してもショートサーキットが抑制されるので、製造費や設置費を抑制できる。
【0039】
また、すでに設置している空冷ヒートポンプ2の熱交換サーキット10の空気吹出口11bに空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1を被せるだけでよいので、設置コストが安い上に、熱効率の向上効果が大きい。
【0040】
したがって、本実施形態に係る空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1によると、熱交換サーキットの送風機から吹き出される空気を均一化して直進させ、その性能を向上させることができる。
【0041】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0042】
すなわち、上記実施形態では、平面視円形の空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1を空気吹出口11bに設けたが、空気吹出口11bの上に消音ダクトがある場合には、消音ダクトの吹出口に空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート1を被せてもよい。その場合には、例えば、平面視四角形となってもよい。
【0043】
上記実施形態では、空冷ヒートポンプ2の例について説明したが、パッケージエアコン、ガスヒートポンプ、冷却塔の空気吹出口にも適用できる。
【0044】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 空冷ヒートポンプ用ハニカムプレート(空気吹出口用整流板)
2 空冷ヒートポンプ
3 ユニット
10 熱交換サーキット
11 横一列
11 空気吸込口
11b 空気吹出口
12 機械室
15 制御盤
W1 壁
W2 防音壁
110 熱交換サーキット
111 熱交換室
111b 空気吹出口
111c 両側面
111d 空気吸込口
112 機械室
112c 両側面
113 熱交換器
114 送風機
210 熱交換サーキット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7