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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】金属積層造形方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/04 20060101AFI20231228BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231228BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20231228BHJP
   B23K 9/032 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B23K9/04 G
B33Y10/00
B33Y80/00
B23K9/04 Z
B23K9/032 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019176512
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021053646
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 泰典
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-089126(JP,A)
【文献】特開昭51-135854(JP,A)
【文献】特開2018-187679(JP,A)
【文献】特開2013-146753(JP,A)
【文献】特開2015-182083(JP,A)
【文献】特開平05-192767(JP,A)
【文献】特開2018-103225(JP,A)
【文献】特開2007-275945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00、9/007 - 9/013、
9/04、9/14 - 10/02
B23K 9/02 - 9/038
B33Y 10/00、30/00、80/00
B22F 3/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸回りに回転可能に設けられたテーブルと、前記テーブルの上方に配置されてアーク溶接を行う溶接ノズルとを、前記中心軸回りに相対回転させ、金属層を積層する工程を順次行うことで前記金属層が形成される平面状をなす前記テーブル上の被成形面に造形物を形成する金属積層造形方法であって、
前記金属層を積層する工程は、
前記被成形面の幅方向両側の端部上に、アーク溶接によって前記造形物の外周形状に沿って連続する堰き止めビードを形成する工程と、
前記堰き止めビードに対し、前記被成形面の幅方向内側の空間を埋めるように、前記堰き止めビードを形成する工程よりも大電流のアーク溶接によって内側ビードを形成する工程と、
を含み、
前記堰き止めビードを形成する工程は、
前記被成形面の前記中心軸を中心とした外周側の端部上に、前記堰き止めビードとして、前記造形物の外周形状に沿って連続する外周側堰き止めビードを形成する工程と、
前記被成形面の前記中心軸を中心とした内周側の端部上に、前記堰き止めビードとして、前記造形物の内周形状に沿って連続する内周側堰き止めビードを形成する工程と、
を含み、
前記内側ビードを形成する工程は、
前記被成形面を、前記内周側から前記外周側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、前記外周側堰き止めビードの前記内周側に、前記中心軸回りの周方向で円環状に連続する外周側内側ビードを形成する外周側内側ビード形成工程と、
前記被成形面を、前記外周側から前記内周側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、前記内周側堰き止めビードの前記外周側に、前記中心軸回りの周方向で円環状に連続する内周側内側ビードを形成する内周側内側ビード形成工程と、
を含み、
前記外周側堰き止めビードを形成する工程では、
前記被成形面の前記外周側の縁部から前記内周側に隙間を空けた位置に第一の外周側堰き止めビードを形成した後、
前記被成形面を前記外周側から前記内周側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、前記第一の外周側堰き止めビードに対して前記被成形面の前記外周側に隣接させて第二の外周側堰き止めビードを形成する
金属積層造形方法。
【請求項2】
中心軸回りに回転可能に設けられたテーブルと、前記テーブルの上方に配置されてアーク溶接を行う溶接ノズルとを、前記中心軸回りに相対回転させ、金属層を積層する工程を順次行うことで前記金属層が形成される平面状をなす前記テーブル上の被成形面に造形物を形成する金属積層造形方法であって、
前記金属層を積層する工程は、
前記被成形面の幅方向両側の端部上に、アーク溶接によって前記造形物の外周形状に沿って連続する堰き止めビードを形成する工程と、
前記堰き止めビードに対し、前記被成形面の幅方向内側の空間を埋めるように、前記堰き止めビードを形成する工程よりも大電流のアーク溶接によって内側ビードを形成する工程と、
を含み、
前記堰き止めビードを形成する工程は、
前記被成形面の前記中心軸を中心とした外周側の端部上に、前記堰き止めビードとして、前記造形物の外周形状に沿って連続する外周側堰き止めビードを形成する工程と、
前記被成形面の前記中心軸を中心とした内周側の端部上に、前記堰き止めビードとして、前記造形物の内周形状に沿って連続する内周側堰き止めビードを形成する工程と、
を含み、
前記内側ビードを形成する工程は、
前記被成形面を、前記内周側から前記外周側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、前記外周側堰き止めビードの前記内周側に、前記中心軸回りの周方向で円環状に連続する外周側内側ビードを形成する外周側内側ビード形成工程と、
前記被成形面を、前記外周側から前記内周側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、前記内周側堰き止めビードの前記外周側に、前記中心軸回りの周方向で円環状に連続する内周側内側ビードを形成する内周側内側ビード形成工程と、
前記内周側堰き止めビードを形成する工程では、
前記被成形面の前記内周側の縁部から前記外周側に隙間を空けた位置に第一の内周側堰き止めビードを形成した後、
前記被成形面を前記内周側から前記外周側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、前記第一の内周側堰き止めビードに対して前記被成形面の前記外周側に隣接させて第二の前記内周側堰き止めビードを形成する
金属積層造形方法。
【請求項3】
前記堰き止めビードを形成する工程では、前記被成形面上に、前記堰き止めビードを幅方向に並べて複数列形成するとともに、複数列の前記堰き止めビードの上段側に、複数列の前記堰き止めビードよりも幅方向に少ない列数を有した前記堰き止めビードを形成する請求項1又は2に記載の金属積層造形方法。
【請求項4】
前記内側ビードを形成する工程では、前記堰き止めビードと前記被成形面とで形成される谷部の傾斜が、アーク溶接を行う溶接ノズルに対して対称となるように、前記被成形面を傾ける
請求項1に記載の金属積層造形方法。
【請求項5】
前記金属層の上面を切削して均す工程をさらに含む
請求項1からの何れか一項に記載の金属積層造形方法。
【請求項6】
金属層を積層する工程を順次行うことで造形物を形成する金属積層造形方法であって、
前記金属層を積層する工程は、
前記金属層が形成される被成形面の幅方向少なくとも一方側の端部上に、アーク溶接によって前記造形物の外周形状に沿って連続する堰き止めビードを形成する工程と、
前記堰き止めビードに対し、前記被成形面の幅方向内側の空間を埋めるように、前記堰き止めビードを形成する工程よりも大電流のアーク溶接によって内側ビードを形成する工程と、
を含み、
前記堰き止めビードを形成する工程では、
前記被成形面の幅方向外側の縁部から幅方向内側に隙間を空けた位置に第一の堰き止めビードを形成した後、
前記被成形面を幅方向外側から幅方向内側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、前記第一の堰き止めビードに対して前記被成形面の幅方向外側に隣接させて第二の前記堰き止めビードを形成する
金属積層造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属積層造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンタ(立体造形)技術の一つとして、金属を積層造形する技術が開発、実用化されている。この種の金属積層造形法として、アーク放電により溶融させた金属を利用して金属層を積層させることにより造形物を形成する溶融金属積層法が開発されている。金属層は、アーク放電によって溶融させた金属によって溶接ビードを形成し、この溶接ビードを複数並べることで形成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、アークを用いて溶加材を溶融及び凝固させた溶融ビードを積層することで構造体の外殻を積層造形する工程と、外殻の内側空間に鋳湯を流し込み、外殻の内側に鋳物部を形成する工程と、を含む構造体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-176269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような金属積層造形において、製造速度の向上が望まれている。しかし、溶融ビードを積層して外殻(造形物)を積層造形する場合、高い温度で高速でアーク溶接を行うと、造形中に、溶融した金属(溶融金属)が垂れ落ちることがある。垂れ落ちた溶融金属が造形物の外周面等に付着すると、表面の品質が損なわれてしまう。また、溶融金属が垂れ落ちると、その部分が欠損してしまう場合があるため、溶融金属を除去して積層をやり直す必要があり、造形物の形成に時間がかかってしまう。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、良好な品質で、高速造形できる金属積層造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る金属積層造形方法は、中心軸回りに回転可能に設けられたテーブルと、前記テーブルの上方に配置されてアーク溶接を行う溶接ノズルとを、前記中心軸回りに相対回転させ、金属層を積層する工程を順次行うことで前記金属層が形成される平面状をなす前記テーブル上の被成形面に造形物を形成する金属積層造形方法であって、前記金属層を積層する工程は、前記被成形面の幅方向両側の端部上に、アーク溶接によって前記造形物の外周形状に沿って連続する堰き止めビードを形成する工程と、前記堰き止めビードに対し、前記被成形面の幅方向内側の空間を埋めるように、前記堰き止めビードを形成する工程よりも大電流のアーク溶接によって内側ビードを形成する工程と、を含み、前記堰き止めビードを形成する工程は、前記被成形面の前記中心軸を中心とした外周側の端部上に、前記堰き止めビードとして、前記造形物の外周形状に沿って連続する外周側堰き止めビードを形成する工程と、前記被成形面の前記中心軸を中心とした内周側の端部上に、前記堰き止めビードとして、前記造形物の内周形状に沿って連続する内周側堰き止めビードを形成する工程と、を含み、前記内側ビードを形成する工程は、前記被成形面を、前記内周側から前記外周側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、前記外周側堰き止めビードの前記内周側に、前記中心軸回りの周方向で円環状に連続する外周側内側ビードを形成する外周側内側ビード形成工程と、前記被成形面を、前記外周側から前記内周側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、前記内周側堰き止めビードの前記外周側に、前記中心軸回りの周方向で円環状に連続する内周側内側ビードを形成する内周側内側ビード形成工程と、
を含み、前記外周側堰き止めビードを形成する工程では、前記被成形面の前記外周側の縁部から前記内周側に隙間を空けた位置に第一の外周側堰き止めビードを形成した後、前記被成形面を前記外周側から前記内周側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、前記第一の外周側堰き止めビードに対して前記被成形面の前記外周側に隣接させて第二の外周側堰き止めビードを形成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の金属積層造形方法によれば、良好な品質で、高速造形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る金属積層造形方法で造形物を形成するための造形システムの構成を示す模式図である。
図2】本開示の実施形態に係る造形システムのコントローラーのハードウェア構成を示す図である。
図3】本開示の実施形態に係る造形システムのコントローラーの機能ブロック図である。
図4】本開示の第一実施形態に係る金属積層造形方法のフローチャートである。
図5】本開示の第一実施形態に係る金属層を積層する工程のフローチャートである。
図6】本開示の第一実施形態に係る堰き止めビードを形成する工程を示す図である。
図7】本開示の第一実施形態に係る堰き止めビードを形成する工程のフローチャートである。
図8】本開示の第一実施形態に係る内側ビードを形成する工程を示す図である。
図9】本開示の第一実施形態に係る内側ビードを形成する工程のフローチャートである。
図10】本開示の第一実施形態に係る内周側内側ビード形成工程を示す図である。
図11】本開示の第一実施形態に係る中間部内側ビード形成工程を示す図である。
図12】本開示の第一実施形態に係る上面を切削して均す工程を示す図である。
図13】本開示の第一実施形態に係る側面を形成する工程を示す図である。
図14】本開示の第二実施形態に係る堰き止めビードを形成する工程のフローチャートである。
図15】本開示の実施形態に係る第一の堰き止めビード形成工程を示す図である。
図16】本開示の実施形態に係る第二の堰き止めビード形成工程を示す図である。
図17】本開示の実施形態に係る第二の堰き止めビード形成工程において、図16に続く状態を示す図である。
図18】本開示の実施形態に係る上段堰き止めビード形成工程を示す図である。
図19】本開示の実施形態に係る上段堰き止めビード形成工程において、図18に続く状態を示す図である。
図20】本開示の第二実施形態に係る内側ビードを形成する工程のフローチャートである。
図21】本開示の実施形態に係る内周側内側ビード形成工程を示す図である。
図22】本開示の実施形態に係る外周側内側ビード形成工程を示す図である。
図23】本開示の実施形態に係る中間部内側ビード形成工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
以下、本開示の実施形態に係る金属積層造形方法、造形物について、図面を参照して説明する。
(造形システムの全体構成)
図1は、本開示の実施形態に係る金属積層造形方法で造形物を形成するための造形システムの構成を示す模式図である。図1に示すように、本開示の実施形態の造形システム1は、テーブル2と、テーブル回転駆動部3と、テーブル傾動部4と、溶接ノズル5と、コントローラー6と、を備える。造形システム1は、いわゆるNC(数値制御)加工が行えるマシニングセンタ等からなる。
【0012】
(テーブルの構成)
テーブル2は、鉛直方向Dvの上方を向くテーブル上面2fを有する。テーブル上面2fは、テーブル2の中心軸2cを中心に、中心軸2cと直交する方向に広がる平面である。テーブル上面2f上には、造形物10を形成する金属層11mが順次積層される。テーブル2は、中心軸2c回りに回転可能とされている。テーブル2は、中心軸2cが鉛直方向Dvに対して所定の角度で傾斜するように傾動可能とされている。テーブル2では、中心軸2cが鉛直方向Dvに延び、テーブル上面2fが鉛直方向Dvの上方を向いた状態が水平な状態である。
【0013】
テーブル回転駆動部3は、中心軸2c回りにテーブル2を回転させる。
テーブル傾動部4は、テーブル2を傾動させる。テーブル傾動部4は、テーブル上面2fが水平な状態から傾斜する方向を向くよう、テーブル2を傾動させる。
【0014】
(溶接ノズルの構成)
溶接ノズル5は、シールドガス(不活性ガス)中で発生させたアークにより溶接ワイヤを溶融させるアーク溶接によって、溶接ビード100を形成する。溶接ノズル5は、テーブル2に対して相対移動可能とされている。溶接ノズル5は、例えば、テーブル2に対して相対移動可能な多軸アーム(図示無し)に取り付けられている。
【0015】
溶接ノズル5は、テーブル2を中心軸2c回りに回転させつつ、アーク溶接により溶接ワイヤを溶融させることで、テーブル2のテーブル上面2f上、又はテーブル上面2f上に積層された金属層11m上に、溶接ビード100を形成する。このようにして形成される溶接ビード100は、テーブル2の中心軸2c回りの周方向に連続する円弧状(円環状)となる。
【0016】
溶接ノズル5は、溶接ワイヤに電流を供給する電流供給部51を備えている。電流供給部51は、コントローラー6の制御により、溶接ワイヤを溶かすための熱源に供給する、溶接電流の大きさを調整(切替)可能とされている。
【0017】
(コントローラーのハードウェア構成図)
コントローラー6は、造形システム1の各部を制御する。図2に示すように、コントローラー6は、CPU61(Central Processing Unit)、ROM62(Read Only Memory)、RAM63(Random Access Memory)、HDD64(Hard Disk Drive)、信号受信モジュール65等を備えるコンピュータである。信号受信モジュール65は、テーブル回転駆動部3やテーブル傾動部4に設けられた各センサー(図示無し)からの検出信号を受信する。
【0018】
(コントローラーの機能ブロック図)
図3に示すように、コントローラー6は予め自装置で記憶するプログラムをCPU61で実行することにより、信号入力部70、回転制御部71、傾動制御部72、ノズル動作制御部73、溶接制御部74の各機能構成を実現する。
【0019】
信号入力部70は、信号受信モジュール65を用いて、各センサー(図示無し)からの検出信号を受信する。
回転制御部71は、テーブル回転駆動部3を制御することで、テーブル2の中心軸2c回りの回転動作を制御する。回転制御部71は、テーブル2の回転の開始、及び停止を制御する。また、回転制御部71は、テーブル2の回転速度を制御することで、溶接ノズル5による溶接速度を制御する。
【0020】
傾動制御部72は、テーブル傾動部4を制御することで、テーブル2のテーブル上面2f(図1参照)の傾動動作を制御する。
【0021】
ノズル動作制御部73は、多軸アーム(図示無し)の動作を制御することで、溶接ノズル5のテーブル2に対する相対位置、姿勢を変化させる動作を制御する。ノズル動作制御部73は、例えば、溶接ノズル5を、テーブル2の中心軸2cを中心とした径方向に往復動作させることで、溶接ビード100の幅や形状を調整するウィービング条件を制御する。また、ノズル動作制御部73は、既に形成された溶接ビード100に対する溶接アークの狙い位置を制御する。
【0022】
溶接制御部74は、電流供給部51における溶接ノズル5への溶接電流の供給を制御する。溶接制御部74は、本実施形態において、電流供給部51における溶接ノズル5への溶接電流を、第一溶接電流値ALと、第二溶接電流値AHとの二段階に切り替える。第一溶接電流値ALは、第二溶接電流値AHよりも低い電流値であり、例えば、150~350Aである。第一溶接電流値ALのより好ましい範囲は、200~300Aである。第一溶接電流値ALのさらに好ましい範囲は、230~280Aである。第二溶接電流値AHは、第一溶接電流値ALよりも高い電流値であり、例えば、400~800Aである。第二溶接電流値AHのより好ましい範囲は、450~750Aである。第二溶接電流値AHのさらに好ましい範囲は、600~700Aである。
【0023】
溶接制御部74は、他にも、溶接ノズル5における各種の溶接条件を制御する。溶接制御部74で制御する溶接条件としては、例えば、アーク電圧、パルス電流、溶接ワイヤ(母材)の予熱温度、パス間温度、造形中の造形物10の表面粗さ、溶接ワイヤの送り速度、溶接ワイヤ径、溶接ワイヤの突き出し長さ、シールドガスの組成や流量、等がある。溶接制御部74は、上記したような溶接条件のうちの少なくとも一つを制御する。
【0024】
(造形物)
図1に示すように、このような造形システム1で形成される造形物10は、テーブル2上に形成される。本実施形態の造形物10は、円筒状をなした筒状部11を有する。筒状部11を有する造形物10としては、例えば、タービンや圧縮機等の回転機械のケーシングにおける吸込口や吐出口を形成するノズルが挙げられる。筒状部11は、その軸線を中心軸2cと一致させた状態でテーブル2上に形成される。筒状部11は、軸線の延びる軸線方向Daに延びている。本実施形態の軸線方向Daは、テーブル2が水平な状態とされた場合に鉛直方向Dvと一致する。
【0025】
筒状部11は、軸線方向Daの一方の側(第一側)の筒端11aから他方の側(第二側)の筒端11bに向けて、その外径寸法、及び内径寸法が漸次大きくなる。これにより、筒状部11は、テーブル2のテーブル上面2fから上方に向かって、中心軸2cに漸次接近するように傾斜して延びている。筒状部11は、天面12と、外周面13と、内周面14と、を有している。
【0026】
天面12は、筒状部11において軸線方向Daの端部に形成されている。天面12は、軸線方向Daに直交するように広がる。天面12は、テーブル2上の筒状部11において、軸線方向Daの外側を向く面のうち、テーブル上面2fと接触していない側の面である。本実施形態の天面12は、軸線方向Daから見た際に、円環状をなす平面である。
【0027】
外周面13は、中心軸2cと直交する方向から見た際に、天面12の径方向Drの最も外側の外側端部12aから天面12と交差する方向に広がっている。本実施形態の外周面13は、湾曲する面である。本実施形態の径方向Drは、筒状部11の軸線から軸線方向Daに直交して広がる方向であって、テーブル2が水平な状態とされた場合の水平方向Dhである。内周面14は、中心軸2cと直交する方向から見た際に、天面12の径方向Drの最も内側の内側端部12bから天面12と交差する方向に広がっている。本実施形態の内周面14は、外周面13に対して平行に近い角度で広がっている。本実施形態の内周面14は、湾曲する面である。
【0028】
(金属積層方法の処理の手順)
次に、上記造形システム1を用いてなされる金属積層造形方法S1Aについて説明する。図4は、上記金属積層造形方法のフローチャートである。
図4に示すように、金属積層造形方法S1Aは、複数の金属層を順次積層することで、立体的な造形物を造形する。本実施形態の金属積層造形方法S1Aは、金属層を積層する工程S2Aと、側面を形成する工程S3と、造形物を取り出す工程S4と、を含む。なお、側面を形成する工程S3は省略してもよい。
【0029】
(金属層積層工程)
金属層を積層する工程S2Aでは、図1に示すように、テーブル2のテーブル上面2f上、又はテーブル上面2f上に積層された金属層11m上に、溶接ビード100を形成する。ここで、金属層を積層する工程S2Aにおいて溶接ビード100が新たに形成される、テーブル2のテーブル上面2f、又はテーブル上面2f上に既に積層された金属層11mの上面を、被成形面Mfと称する。被成形面Mfは、テーブル2のテーブル上面2f、又はテーブル上面2f上に既に積層された金属層11mの上面において、溶接ノズル5と対向する領域である。
【0030】
金属層を積層する工程S2Aでは、アーク溶接によって形成される溶接ビード100を、被成形面Mf上に複数列並ぶように形成することで、金属層11mを形成する。ここで、被成形面Mf上で複数列の溶接ビード100が並ぶ方向を、被成形面Mfの幅方向Dwと称する。この幅方向Dwは、径方向Drと一致している。
金属層を積層する工程S2Aは、複数回実行される。金属層を積層する工程S2Aが繰り返し実行されることで、テーブル上面2f上に金属層11mが複数積層される。なお、本実施形態では、全ての溶接ビード100が、同じ溶接ワイヤにより形成される。
【0031】
図5は、上記金属層を積層する工程のフローチャートである。
図5に示すように、本実施形態の金属層を積層する工程S2Aは、堰き止めビードを形成する工程S21Aと、内側ビードを形成する工程S22Aと、ノズルを移動する工程S23と、上面を切削して均す工程S24と、最終積層数を確認する工程S25と、を含む。
【0032】
(堰き止めビードを形成する工程)
図6は、堰き止めビードを形成する工程を示す図である。図7は、上記堰き止めビードを形成する工程のフローチャートである。
図6に示すように、堰き止めビードを形成する工程S21Aでは、被成形面Mfの幅方向Dw両側に、溶接ビード100として堰き止めビード101A、101Bを形成する。図7に示すように、堰き止めビードを形成する工程S21Aは、第一準備工程S211と、外周側堰き止めビード形成工程S212と、第一ノズル移動工程S213と、内周側堰き止めビード形成工程S214と、を含んでいる。
【0033】
第一準備工程S211では、傾動制御部72がテーブル傾動部4を制御することで、図6に示すように、テーブル2を、その中心軸2cが鉛直方向Dvに対して所定の第一傾斜角度θ1となるように傾動させる。第一傾斜角度θ1は、例えば、これからテーブル2のテーブル上面2f上に形成される造形物10の筒状部11の延伸方向Deが、鉛直方向Dvと一致する角度である。ここで、上述した鉛直方向Dvと一致させる筒状部11の延伸方向Deは、中心軸2cを中心とした周方向で、溶接ビード100を形成する位置(言い換えれば、溶接ノズル5と対向する位置)における筒状部11の延伸方向Deである。更に言い換えれば、鉛直方向Dvと一致させる延伸方向Deは、図6に示す断面において左側の筒状部11の延伸方向Deである。本実施形態における筒状部11の延伸方向Deは、テーブル2のテーブル上面2fから上方に向かって中心軸2cに漸次接近するように傾斜して延びる方向である。
【0034】
第一準備工程S211では、ノズル動作制御部73が、多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。溶接ノズル5は、被成形面Mfにおいて、幅方向Dw第一側(形成すべき筒状部11の径方向Drの外側)の端部に対向する位置に配置される。第一準備工程S211では、溶接制御部74が、電流供給部51における溶接ノズル5への溶接電流を、第二溶接電流値AHよりも低い第一溶接電流値ALに設定する。第一準備工程S211では、回転制御部71がテーブル回転駆動部3を制御することで、テーブル2を、中心軸2c回りに所定の回転速度で回転させる。
【0035】
外周側堰き止めビード形成工程S212では、第一溶接電流値ALに設定された溶接電流を、電流供給部51から溶接ノズル5に供給し、アーク溶接を行う。これにより、被成形面Mfにおいて、幅方向Dw第一側(例えば、筒状部11の径方向Drの外側)の端部に、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する外周側の堰き止めビード101Aが形成される。
【0036】
第一ノズル移動工程S213では、ノズル動作制御部73が多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。溶接ノズル5は、被成形面Mfにおいて、幅方向Dw第二側(筒状部11の径方向Drの内側)の端部に対向する位置に配置される。
【0037】
内周側堰き止めビード形成工程S214では、電流供給部51から溶接ノズル5に、第一溶接電流値ALに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、被成形面Mfにおいて、幅方向Dw第二側(筒状部11の径方向Drの内側)の端部に、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する内周側の堰き止めビード101Bが形成される。
【0038】
(内側ビードを形成する工程)
図8は、内側ビードを形成する工程を示す図である。図9は、上記内側ビードを形成する工程のフローチャートである。図5に示すように、内側ビードを形成する工程S22Aは、堰き止めビードを形成する工程S21Aの後に行われる。
内側ビードを形成する工程S22Aでは、堰き止めビード101A、101Bに対し、被成形面Mfの幅方向Dw内側の空間を埋めるように、溶接ビード100として内側ビード102A(図8参照)、102B(図10参照)、102C(図11参照)を形成する。
【0039】
図9に示すように、内側ビードを形成する工程S22Aは、第二準備工程S221と、外周側内側ビード形成工程S222と、第二ノズル移動工程S223と、内周側内側ビード形成工程S224と、第三準備工程S225と、中間部内側ビード形成工程S226と、を含んでいる。
【0040】
第二準備工程S221では、傾動制御部72がテーブル傾動部4を制御することで、図8に示すように、テーブル2を、その中心軸2cが鉛直方向Dvに対して所定の第二傾斜角度θ2となるように傾動させる。この第二傾斜角度θ2は、第一傾斜角度θ1よりも小さい。第二準備工程S221では、ノズル動作制御部73が、多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。溶接ノズル5は、被成形面Mfにおいて、外周側の堰き止めビード101Aと、堰き止めビード101Aに対して幅方向Dw内側の被成形面Mfとの境界部分に対向する位置に配置される。第二準備工程S221では、溶接制御部74が、電流供給部51における溶接ノズル5への溶接電流を、第一溶接電流値ALよりも高い第二溶接電流値AHに設定する。
【0041】
外周側内側ビード形成工程S222では、電流供給部51から溶接ノズル5に、第二溶接電流値AHに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、被成形面Mfにおいて、外周側の堰き止めビード101Aに対して幅方向Dw内側(径方向Dr内側)に、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する外周側の内側ビード102Aが形成される。
【0042】
図10は、内周側内側ビード形成工程を示す図である。
第二ノズル移動工程S223では、ノズル動作制御部73が多軸アーム(図示無し)を制御することで、図10に示すように、溶接ノズル5を移動させ、被成形面Mfにおいて、内周側の堰き止めビード101Bと、堰き止めビード101Bに対して径方向外側の被成形面Mfとの境界部分に対向する位置に溶接ノズル5を配置させる。
【0043】
内周側内側ビード形成工程S224では、電流供給部51から溶接ノズル5に、第二溶接電流値AHに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、被成形面Mfにおいて、内周側の堰き止めビード101Bに対して幅方向Dw内側(径方向Dr外側)に、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する内周側の内側ビード102Bが形成される。
【0044】
図11は、中間部内側ビード形成工程を示す図である。
第三準備工程S225では、傾動制御部72がテーブル傾動部4を制御することで、図11に示すように、テーブル2を、その中心軸2cが鉛直方向Dvに一致するように傾動させる。これにより、被成形面Mfは、鉛直方向Dvの上方を向く。第三準備工程S225では、ノズル動作制御部73が多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。溶接ノズル5は、被成形面Mfにおいて、外周側の内側ビード102Aと、内周側の内側ビード102Bとの間の中間部に対向する位置に配置される。
【0045】
中間部内側ビード形成工程S226では、電流供給部51から溶接ノズル5に、第二溶接電流値AHに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、被成形面Mfにおいて、外周側の内側ビード102Aと、内周側の内側ビード102Bとの間に、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する中間部の内側ビード102Cが形成される。この中間部の内側ビード102Cは、外周側の内側ビード102Aと、内周側の内側ビード102Bとの双方に重なって形成される。なお、被成形面Mfの幅方向Dwの寸法が広い場合には、第三準備工程S225と中間部内側ビード形成工程S226とを複数回繰り返し、外周側の内側ビード102Aと内周側の内側ビード102Bとの間に、中間部の内側ビード102Cを、幅方向Dwに複数列並べて形成してもよい。
【0046】
このようにして、被成形面Mf上に、幅方向Dw両側の堰き止めビード101A、101Bと、堰き止めビード101A、101Bに対して被成形面Mfの幅方向Dw内側の空間を埋める内側ビード102A、102B、102Cと、を備えた金属層11mが形成される。
【0047】
(ノズルを移動する工程)
図5に示すように、ノズルを移動する工程S23は、内側ビードを形成する工程S22A後に実施される。ノズルを移動する工程S23では、テーブル2から離れるように、溶接ノズル5を、軸線方向Daに一層分の金属層11mの厚さに相当する寸法だけ移動させる。
【0048】
図12は、上面を切削して均す工程を示す図である。図12に示すように、上面を切削して均す工程S24では、一層分が形成された金属層11mの上面を、切削工具8で切削して平面に近づくように均す。なお、この上面を切削して均す工程S24は、堰き止めビードを形成する工程S21A、及び内側ビードを形成する工程S22Aを複数回繰り返した後に実施し、複数層を積層した金属層11mの上面を切削工具8で切削するようにしてもよい。また、この上面を切削して均す工程S24を省略することも可能である。
【0049】
(最終積層数を確認する工程)
図5に示すように、最終積層数を確認する工程S25は、上面を切削して均す工程S24後に実施される。最終積層数を確認する工程S25では、金属層11mの積層数が、予め設定した最終層数に到達したか否かを確認する。これには、コントローラー6によって、例えば、積層された金属層11mの積層数が、予め設定した最終層数になっているか否かを判断する。その結果、加工開始後の金属層11mの積層数が、最終層数に到達していなければ、堰き止めビードを形成する工程S21Aに戻り、次の層の金属層11mの形成を開始する。また、最終積層数を確認する工程S25において、金属層11mの積層数が、最終層数に到達していた場合、側面を形成する工程S3に移行する。
【0050】
(側面を形成する工程)
図13は、側面を形成する工程を示す図である。
図4に示すように、側面を形成する工程S3は、金属層を積層する工程S2Aが複数回実行された後に実施される。本実施形態の側面を形成する工程S3では、傾動制御部72がテーブル傾動部4を制御することで、図13に示すように、各金属層11mの外周側の堰き止めビード101Aが鉛直方向Dvの上方に配置されるように、テーブル2が傾動される。
【0051】
側面を形成する工程S3では、軸線方向Daに複数積層された金属層11mの外周側に位置する複数の堰き止めビード101A上に重ねられるように、側面溶接ビード105を形成する。側面溶接ビード105は、テーブル2が回転することで周方向に連続して環状に形成される。側面溶接ビード105は、溶接ノズル5を、軸線方向Daに移動させながら複数列形成される。これにより、軸線方向Daに隙間なく並んで側面溶接ビード105が複数形成される。その結果、筒状部11の外周面13の全体が、側面溶接ビード105により形成される。このようにして、所定形状の造形物10が、テーブル2上に形成される。
【0052】
(造形物を取り出す工程)
図4に示すように、造形物を取り出す工程S4は、側面を形成する工程S3後に実施される。造形物を取り出す工程S4では、テーブル2上に形成された造形物10が、テーブル2から外されて取り出される。これにより、造形物10の造形が終了する。
【0053】
このようにして形成された造形物10において、各層の金属層11mは、幅方向Dwに複数列の溶接ビード100が並べて配置されている(図12参照)。各層の金属層11mを構成する複数列の溶接ビード100は、幅方向Dw外側に配置されて金属層11mの外形形状をなす堰き止めビード101A、101Bと、堰き止めビード101A、101Bに対して幅方向Dw内側に配置された内側ビード102A、102B、102Cと、を備える。堰き止めビード101A、101Bは、内側ビード102A、102B、102Cを形成する際の第二溶接電流値AHよりも低い、第一溶接電流値ALで行われたアーク溶接によって形成される小電流凝固ビード101Lである。また、内側ビード102A、102B、102Cは、堰き止めビード101A、101Bを形成する際の第一溶接電流値ALよりも高い、第二溶接電流値AHで行われたアーク溶接によって形成される大電流凝固ビード102Hである。
また、中心軸2cを中心とした周方向から見たビード断面積は、堰き止めビード101A、101Bよりも内側ビード102A、102B、102Cの方が大きい。
【0054】
(作用効果)
上述した第一実施形態の金属積層造形方法S1Aでは、金属層を積層する工程S2Aは、被成形面Mfの幅方向Dwの端部上に堰き止めビード101A、101Bを形成する堰き止めビードを形成する工程S21Aと、堰き止めビード101A、101Bに対し、被成形面Mfの幅方向Dw内側の空間を埋めるように、堰き止めビードを形成する工程S21Aよりも大電流のアーク溶接によって内側ビード102A、102B、102C、102Cを形成する内側ビードを形成する工程S22Aと、を含んでいる。
したがって、第一実施形態の金属積層造形方法S1Aによれば、被成形面Mf上に造形物10の外周形状に沿って形成された堰き止めビード101A、101Bにより、内側ビード102A、102B、102C、102Cを形成する際には、溶融金属が堰き止められる。これによって、内側ビード102A、102B、102Cを形成する溶融金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちることが抑えられる。また、堰き止めビード101A、101Bを形成する際には、内側ビード102A、102B、102Cよりも小電流のアーク溶接が用いられる。このため、堰き止めビード101A、101Bを形成する溶融金属が、内側ビード102A、102B、102Cよりも流れにくく、堰き止めビード101A、101Bを形成する溶融金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちることを抑えつつ、堰き止めビード101A、101Bを良好に形成することができる。さらに、内側ビード102A、102B、102Cは、堰き止めビード101A、101Bよりも大電流のアーク溶接によって形成される。このため、内側ビード102A、102B、102Cを、効率良く形成することが可能となる。したがって、溶融した金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちるのを抑え、造形物10を良好な品質で、高速造形することが可能となる。
【0055】
また、第一実施形態の金属積層造形方法S1Aでは、堰き止めビードを形成する工程S21Aで、被成形面Mfの幅方向Dw両側の端部上に、堰き止めビード101A、101Bを形成し、内側ビード102A、102B、102Cを形成する内側ビードを形成する工程S22Aでは、被成形面Mfの幅方向Dw両側の堰き止めビード101A、101Bの間の空間を埋めるように、内側ビード102A、102B、102Cを形成している。
したがって、第一実施形態の金属積層造形方法S1Aによれば、内側ビード102A、102B、102Cを形成する際には、被成形面Mfの幅方向Dw両側に堰き止めビード101A、101Bが形成されているので、内側ビード102A、102B、102Cを形成する溶融金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちることが、より有効に抑えられる。
【0056】
また、第一実施形態の金属積層造形方法S1Aでは、上面を切削して均す工程S24をさらに備えている。
したがって、第一実施形態の金属積層造形方法S1Aによれば、金属層11mを積層した後、金属層11mの上面を切削して均すことで、その上段側に形成される金属層11mの堰き止めビード101A、101B、及び内側ビード102A、102B、102Cと、下段側の金属層11mの上面との間に隙間が生じることが抑えられる。
【0057】
また、第一実施形態の金属積層造形方法S1Aでは、テーブル2と溶接ノズル5とを、中心軸2c回りに相対回転させることで、テーブル2上に金属層11mを積層している。
したがって、第一実施形態の金属積層造形方法S1Aによれば、テーブル2と溶接ノズル5とを、テーブル2の中心軸2c回りに相対回転させながら、金属層11mを積層していくことで、テーブル2上に、筒状の造形物10を容易に形成することができる。
【0058】
上述した第一実施形態の造形物10における各層の金属層11mは、幅方向Dwに複数列の溶接ビード100が並べて配置されている。また、複数列の溶接ビード100は、幅方向Dw外側に配置されて金属層11mの外形形状をなす堰き止めビード101A、101Bと、堰き止めビード101A、101Bに対して幅方向Dw内側に配置された内側ビード102A、102B、102Cと、を備えている。さらに、内側ビード102A、102B、102Cは、堰き止めビード101A、101Bよりも大電流のアーク溶接によって形成された大電流凝固ビードHである。
したがって、第一実施形態の造形物10では、各層の金属層11mにおいて、幅方向Dw内側ビード102A、102B、102Cが大電流凝固ビード102Hとなり、幅方向Dw堰き止めビード101A、101Bが小電流凝固ビード101Lとなる。これにより、溶融した金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちるのを抑え、良好な品質で、効率良く形成することが可能となる。
【0059】
また、造形物10におけるビード断面積は、堰き止めビード101A、101Bよりも内側ビード102A、102B、102Cの方が大きい。
したがって、堰き止めビード101A、101Bを小電流でアーク溶接し、内側ビード102A、102B、102Cを大電流でアーク溶接できるので、全てを小電流でアーク溶接する場合と比較して、造形物10を効率良く形成することができる。
【0060】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態と、堰き止めビードを形成する工程、及び内側ビードを形成する工程の構成のみが異なるので、図4図5を援用し、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0061】
(金属積層方法の処理の手順)
次に、上記造形システム1を用いてなされる金属積層造形方法S1Bについて説明する。図4に示すように、本実施形態の金属積層造形方法S1Bは、金属層を積層する工程S2Bと、側面を形成する工程S3と、造形物を取り出す工程S4と、を含む。
【0062】
(金属層積層工程)
図5に示すように、本実施形態の金属層を積層する工程S2Bは、堰き止めビードを形成する工程S21Bと、内側ビードを形成する工程S22Bと、ノズルを移動する工程S23と、上面を切削して均す工程S24と、最終積層数を確認する工程S25と、を含む。
【0063】
(堰き止めビードを形成する工程)
図14は、本第二実施形態に係る堰き止めビードを形成する工程を示すフローチャートである。
図14に示すように、堰き止めビードを形成する工程S21Bは、準備工程S311と、第一の堰き止めビード形成工程S312と、テーブル傾動工程S313と、第二の堰き止めビード形成工程S314と、ノズル移動工程S315と、上段堰き止めビード形成工程S316と、を含んでいる。
【0064】
図15は、第一の堰き止めビード形成工程を示す図である。
準備工程S311では、傾動制御部72がテーブル傾動部4を制御することで、図15に示すように、テーブル2の中心軸2cを鉛直方向Dvに一致させる。これにより、テーブル上面2fは、鉛直方向Dvの上方を向いて配置される。準備工程S311では、ノズル動作制御部73が多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。溶接ノズル5は、被成形面Mfにおいて、幅方向Dw第一側(筒状部11の径方向Drの外側)の縁部Me1から、幅方向Dw内側に所定寸法の隙間G1を空けた位置に対向するよう配置される。準備工程S311では、溶接制御部74が、電流供給部51における溶接ノズル5への溶接電流を第二溶接電流値AHよりも低い第一溶接電流値ALに設定する。準備工程S311では、回転制御部71がテーブル回転駆動部3を制御することで、テーブル2を、中心軸2c回りに所定の回転速度で回転させる。
【0065】
第一の堰き止めビード形成工程S312では、電流供給部51から溶接ノズル5に、第一溶接電流値ALに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、被成形面Mfにおいて、幅方向Dw第一側(筒状部11の径方向Drの外側)の縁部Me1から幅方向Dw内側に所定寸法の隙間G1を空けた位置に、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する外周側の第一の堰き止めビード101Cが形成される。この第一の堰き止めビード101Cを形成する際には、被成形面Mfの幅方向Dw外側の縁部Me1まで隙間G1があるので、第一の堰き止めビード101Cを形成する溶融金属が、被成形面Mfの外部に垂れ落ちることが抑えられる。
【0066】
第一の堰き止めビード形成工程S312では、次いで、ノズル動作制御部73が多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。溶接ノズル5は、被成形面Mfにおいて、幅方向Dw第二側(筒状部11の径方向Drの内側)の縁部Me2から、幅方向Dw内側(筒状部11の径方向外側)に所定寸法の隙間G2を空けた位置に対向するよう配置される。第一の堰き止めビード形成工程S312では、続いて、電流供給部51から溶接ノズル5に、第一溶接電流値ALに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、被成形面Mfの縁部Me2から幅方向Dw内側に所定寸法の隙間G2を空けた位置に、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する内周側の第一の堰き止めビード101Dが形成される。この第一の堰き止めビード101Dを形成する際には、被成形面Mfの幅方向Dw外側の縁部Me2まで隙間G2があるので、第一の堰き止めビード101Dを形成する溶融金属が、被成形面Mfの外部に垂れ落ちることが抑えられる。
【0067】
図16は、第二の堰き止めビード形成工程を示す図である。
テーブル傾動工程S313では、傾動制御部72がテーブル傾動部4を制御することで、図16に示すように、テーブル2を、その中心軸2cが鉛直方向Dvに対して所定の第三傾斜角度θ3となるように傾動させる。ここで、第三傾斜角度θ3は、例えば20~40°とするのが好ましい。これにより、被成形面Mfは、幅方向Dwにおいて傾斜した状態とされる。
【0068】
第二の堰き止めビード形成工程S314では、ノズル動作制御部73が多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。溶接ノズル5は、被成形面Mfにおいて、中心軸2cを挟んで、鉛直方向Dvの高さが高い側(図16において右側)で、外周側の第一の堰き止めビード101Cに対して幅方向Dwの外側に隣接する位置に配置される。
【0069】
第二の堰き止めビード形成工程S314では、更に、電流供給部51から溶接ノズル5に、第一溶接電流値ALに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、被成形面Mfにおいて、外周側の第一の堰き止めビード101Cに対して、幅方向Dw外側で隣接して、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する外周側の第二の堰き止めビード101Eが形成される。この外周側の第二の堰き止めビード101Eを形成する際には、被成形面Mfが幅方向Dw外側から幅方向Dw内側に向かって斜め下方に傾斜している。そのため、外周側の第二の堰き止めビード101Eを形成する溶融金属は、被成形面Mfの幅方向Dw内側に位置する第一の堰き止めビード101Cによって堰き止められる。
【0070】
図17は、第二の堰き止めビード形成工程において、図16に続く状態を示す図である。
第二の堰き止めビード形成工程S314では、次いで、図17に示すように、ノズル動作制御部73が多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。溶接ノズル5は、被成形面Mfにおいて、中心軸2cを挟んで、鉛直方向Dvの高さが低い側(図17において左側)で、内周側の第一の堰き止めビード101Dに対して幅方向Dwの外側(筒状部11の径方向Drの内側)に隣接する位置に配置される。
【0071】
第二の堰き止めビード形成工程S314では、更に、電流供給部51から溶接ノズル5に、第一溶接電流値ALに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、被成形面Mfにおいて、内周側の第一の堰き止めビード101Dに対して、幅方向Dw外側(筒状部11の径方向Drの内側)に隣接して、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する内周側の第二の堰き止めビード101Fが形成される。この内周側の第二の堰き止めビード101Fを形成する際には、被成形面Mfが幅方向Dw外側から幅方向Dw内側に向かって斜め下方に傾斜している。そのため、内周側の第二の堰き止めビード101Fを形成する溶融金属は、被成形面Mfの幅方向Dw内側に位置する内周側の第一の堰き止めビード101Dによって堰き止められる。
【0072】
このような第一の堰き止めビード形成工程S312、第二の堰き止めビード形成工程S314を経ることで、被成形面Mf上の外周側には、第一の堰き止めビード101C、及び第二の堰き止めビード101Eが、幅方向Dwに並べて複数列(2列)に形成される。また、被成形面Mf上の内周側には、第一の堰き止めビード101D、及び第二の堰き止めビード101Fが、幅方向Dwに並べて複数列(2列)に形成される。
【0073】
ノズル移動工程S315では、ノズル動作制御部73が多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を鉛直方向Dvに移動させる。溶接ノズル5は、テーブル2から離れるように、第一の堰き止めビード101C、101D、第二の堰き止めビード101E、101Fの一層分の厚さに相当する寸法だけ移動される。
【0074】
(上段堰き止めビード形成工程)
図18は、上段堰き止めビード形成工程を示す図である。
上段堰き止めビード形成工程S316では、ノズル動作制御部73が多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。図18に示すように、溶接ノズル5は、中心軸2cを挟んで、鉛直方向Dvの高さが高い側(図18において右側)で、被成形面Mf上の径方向Drの外側に形成された、第一の堰き止めビード101C、及び第二の堰き止めビード101Eに対して対向する位置に配置される。
【0075】
上段堰き止めビード形成工程S316では、更に、電流供給部51から溶接ノズル5に、第一溶接電流値ALに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、第一の堰き止めビード101C、及び第二の堰き止めビード101E上に、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する外周側の上段側の堰き止めビード101Gが形成される。このとき、下段側の第一の堰き止めビード101C、及び第二の堰き止めビード101Eの幅方向Dwの列数(本開示では2列)が、上段側の堰き止めビード101Gの幅方向Dwにおける列数(本開示では1列)よりも多い。そのため、上段側の堰き止めビード101Gを形成する際に、溶融金属が下段側の第一の堰き止めビード101C、及び第二の堰き止めビード101Eを越えて垂れ落ちることが抑えられる。また、上段側の堰き止めビード101Gを形成する際には、被成形面Mfが幅方向Dw外側から幅方向Dw内側に向かって斜め下方に傾斜している。そのため、上段側の堰き止めビード101Gを形成する溶融金属は、下段側の第一の堰き止めビード101C、及び第二の堰き止めビード101Eから幅方向Dw外側に広がりにくく、被成形面Mfから垂れ落ちることが抑えられる。
【0076】
図19は、上段堰き止めビード形成工程において、図18に続く状態を示す図である。
上段堰き止めビード形成工程S316では、次に、ノズル動作制御部73が多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。図19に示すように、溶接ノズル5は、中心軸2cを挟んで、鉛直方向Dvの高さが低い側(図19において左側)で、被成形面Mf上の内周側に形成された、第一の堰き止めビード101D、及び第二の堰き止めビード101Fに対して対向する位置に配置される。
【0077】
上段堰き止めビード形成工程S316では、更に、電流供給部51から溶接ノズル5に、第一溶接電流値ALに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、第一の堰き止めビード101D、及び第二の堰き止めビード101F上に、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する外周側の上段側の堰き止めビード101Hが形成される。このとき、下段側の第一の堰き止めビード101D、及び第二の堰き止めビード101Fの幅方向Dwの列数(本開示では2列)が、上段側の堰き止めビード101Hの幅方向Dwにおける列数(本開示では1列)よりも多い。そのため、上段側の堰き止めビード101Hを形成する際に、溶融金属が下段側の第一の堰き止めビード101D、及び第二の堰き止めビード101Fを越えて垂れ落ちることが抑えられる。また、上段側の堰き止めビード101Hを形成する際には、被成形面Mfが幅方向Dw外側から幅方向Dw内側に向かって斜め下方に傾斜している。そのため、上段側の堰き止めビード101Hを形成する溶融金属は、下段側の第一の堰き止めビード101D、及び第二の堰き止めビード101Fから幅方向Dw外側に広がりにくく、被成形面Mfから垂れ落ちることが抑えられる。
【0078】
(内側ビードを形成する工程)
図20は、内側ビードを形成する工程のフローチャートである。
図20に示すように、内側ビードを形成する工程S22Bは、第一テーブル傾動工程S321と、内周側内側ビード形成工程S322と、第二テーブル傾動工程S323と、外周側内側ビード形成工程S324と、第三テーブル傾動工程S325と、中間部内側ビード形成工程S326と、を含んでいる。
【0079】
図21は、内周側内側ビード形成工程を示す図である。
第一テーブル傾動工程S321では、傾動制御部72がテーブル傾動部4を制御することで、図21に示すように、テーブル2を、その中心軸2cが鉛直方向Dvに対して所定の第四傾斜角度θ4となるように傾動させる。この第四傾斜角度θ4は、例えば0~20°である。本実施形態において、テーブル2は、中心軸2cを挟んだ一方の側(図21において左側)が、他方の側(図21において右側)で、テーブル上面2fが高くなるように傾斜させる。これにより、被成形面Mfが、幅方向Dw内側から、内周側の第一の堰き止めビード101D、第二の堰き止めビード101F、及び上段の堰き止めビード101Hが形成された幅方向Dw外側(筒状部11の径方向Dr内側)に向かって斜め下方に傾斜する。このとき、第一の堰き止めビード101D、第二の堰き止めビード101F、及び上段の堰き止めビード101Hと、その幅方向Dw内側の被成形面Mfとの間に形成される断面V字状の谷部V1の両側の傾斜が、溶接ノズル5に対して対称となるように、被成形面Mfが傾けられる。言い換えれば、図21の断面視において、溶接ノズル5のノズル中心線(図21中、一点鎖線で示す)が谷部V1の底部(言い換えれば、谷部V1を形成する二つの面が交わる線)を通るときに、ノズル中心線が谷部V1全体の傾斜角度を等分するように、被成形面Mfが傾けられる。
【0080】
第一テーブル傾動工程S321では、ノズル動作制御部73が、多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。溶接ノズル5は、第一の堰き止めビード101D、第二の堰き止めビード101F、及び上段の堰き止めビード101Hと、その幅方向Dw内側の被成形面Mfとの間に形成される谷部V1に対向する位置に配置される。第一テーブル傾動工程S321では、溶接制御部74が、電流供給部51における溶接ノズル5への溶接電流を、第一溶接電流値ALよりも高い第二溶接電流値AHに設定する。
【0081】
内周側内側ビード形成工程S322では、電流供給部51から溶接ノズル5に、第二溶接電流値AHに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、第一の堰き止めビード101D、第二の堰き止めビード101F、及び上段の堰き止めビード101Hと、その幅方向Dw内側の被成形面Mfとの間に形成される谷部V1を開先として、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する内周側の内側ビード102Dが形成される。
【0082】
図22は、外周側内側ビード形成工程を示す図である。
第二テーブル傾動工程S323では、傾動制御部72がテーブル傾動部4を制御することで、図22に示すように、テーブル2を、その中心軸2cが鉛直方向Dvに対して所定の第五傾斜角度θ5となるように傾動させる。
【0083】
この第五傾斜角度θ5は、例えば0~20°である。本実施形態のテーブル2は、中心軸2cを挟んだ他方の側(図22において右側)が、一方の側(図22において左側)で、テーブル上面2fが高くなるように傾斜される。これにより、被成形面Mfが、幅方向Dw内側から、外周側の第一の堰き止めビード101C、第二の堰き止めビード101E、及び上段の堰き止めビード101Gが形成された幅方向Dw外側(筒状部11の径方向Dr外側)に向かって斜め下方に傾斜する。このとき、外周側の第一の堰き止めビード101C、第二の堰き止めビード101E、及び上段の堰き止めビード101Gと、その幅方向Dw内側の内周側の内側ビード102Dとの間に形成される断面V字状の谷部V2の両側の傾斜が、溶接ノズル5に対して対称となるように、被成形面Mfが傾けられる。言い換えれば、図22の断面視において、溶接ノズル5のノズル中心線(図22中、一点鎖線で示す)が谷部V2の底部(言い換えれば、谷部V2を形成する二つの面が交わる線)を通るときに、ノズル中心線が谷部V2全体の傾斜角度を等分するように、被成形面Mfが傾けられる。
【0084】
第二テーブル傾動工程S323では、ノズル動作制御部73が、多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。溶接ノズル5は、外周側の第一の堰き止めビード101C、第二の堰き止めビード101E、及び上段の堰き止めビード101Gと、その幅方向Dw内側の内周側の内側ビード102Dとの間に形成される谷部V2に対向する位置に配置される。
【0085】
外周側内側ビード形成工程S324では、電流供給部51から溶接ノズル5に、第二溶接電流値AHに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、外周側の第一の堰き止めビード101C、第二の堰き止めビード101E、及び上段の堰き止めビード101Gと、その幅方向Dw内側の内周側の内側ビード102Dとの間の谷部V2に、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する外周側の内側ビード102Eが形成される。
【0086】
図23は、中間部内側ビード形成工程を示す図である。
第三テーブル傾動工程S325では、傾動制御部72がテーブル傾動部4を制御することで、図23に示すように、テーブル2を、その中心軸2cが鉛直方向Dvに一致するように傾動させる。これにより、被成形面Mfは、鉛直方向Dvの上方を向く。第三テーブル傾動工程S325では、更に、ノズル動作制御部73が多軸アーム(図示無し)を制御することで、溶接ノズル5を移動させる。溶接ノズル5は、被成形面Mfにおいて、内周側の内側ビード102Dと、外周側の内側ビード102Eとの間の中間部に対向する位置に配置される。
【0087】
中間部内側ビード形成工程S326は、電流供給部51から溶接ノズル5に、第二溶接電流値AHに設定された溶接電流を供給し、アーク溶接を行う。これにより、被成形面Mfにおいて、内周側の内側ビード102Dと、外周側の内側ビード102Eとの間に、中心軸2c回りの周方向で円環状に連続する中間部の内側ビード102Fが形成される。この中間部の内側ビード102Fは、内周側の内側ビード102Dと、外周側の内側ビード102Eとの双方に重なって形成される。なお、被成形面Mfの幅方向Dwの寸法が広い場合には、中間部内側ビード形成工程S326を複数回繰り返し、内周側の内側ビード102Dと、外周側の内側ビード102Eとの間に、中間部の内側ビード102Fを、幅方向Dwに複数列並べて形成してもよい。
【0088】
このようにして、被成形面Mf上に、複数列の溶接ビード100として、幅方向Dw両側の堰き止めビード101C~101Hと、堰き止めビード101C~101Hに対して被成形面Mfの幅方向Dw内側の空間を埋める内側ビード102D~102Fと、を備えた金属層11mが形成される。堰き止めビード101C~101Hは、内側ビード102D~102Fを形成する際の第二溶接電流値AHよりも低い、第一溶接電流値ALで行われたアーク溶接によって形成される小電流凝固ビード101Lである。また、内側ビード102D~102Fは、堰き止めビード101C~101Hを形成する際の第一溶接電流値ALよりも高い、第二溶接電流値AHで行われたアーク溶接によって形成される大電流凝固ビード102Hである。また、堰き止めビード101C~101Hよりも内側ビード102D~102Fの方が、中心軸2c回りの周方向から見たときのビード断面積が大きい。
【0089】
次いで、上記第一実施形態と同様、ノズルを移動する工程S23、上面を切削して均す工程S24、及び最終積層数を確認する工程S25を、順次実施していく。これにより、金属層11mが所定の最終層数だけ積層される。
その後、側面を形成する工程S3、造形物を取り出す工程S4を経ることで、所定形状を有した造形物10が造形される。
【0090】
(作用効果)
上述した第二実施形態の金属積層造形方法S1Bでは、金属層を積層する工程S2Bは、堰き止めビードを形成する工程S21Bと、堰き止めビードを形成する工程S21Bよりも大電流のアーク溶接によって内側ビードを形成する工程S22Bと、を含んでいる。
したがって、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bによれば、被成形面Mf上に造形物10の外周形状に沿って形成された堰き止めビード101C~101Hにより、内側ビード102D~102Fを形成する際には、溶融金属が堰き止められる。これによって、内側ビード102D~102Fを形成する溶融金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちることが抑えられる。また、堰き止めビード101C~101Hを形成する際には、内側ビード102D~102Fよりも小電流のアーク溶接が用いられる。そのため、堰き止めビード101C~101Hを形成する溶融金属が、内側ビード102D~102Fよりも流れにくく、堰き止めビード101C~101Hを形成する溶融金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちることを抑えつつ、堰き止めビード101C~101Hを良好に形成することができる。さらに、内側ビード102D~102Fは、堰き止めビード101C~101Hよりも大電流のアーク溶接によって形成される。そのため、内側ビード102D~102Fを、効率良く形成することが可能となる。その結果、溶融した金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちるのを抑え、造形物10を良好な品質で、高速造形することが可能となる。
【0091】
また、金属積層造形方法S1Bの堰き止めビードを形成する工程S21Bでは、被成形面Mfの幅方向Dw両側の端部上に、堰き止めビード101C~101Hを形成し、内側ビードを形成する工程S22Bでは、被成形面Mfの幅方向Dw両側の堰き止めビード101C~101Hの間の空間を埋めるように、内側ビード102D~102Fを形成している。
したがって、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bによれば、内側ビード102D~102Fを形成する際には、被成形面Mfの幅方向Dw両側に堰き止めビード101C~101Hが形成されているので、内側ビード102D~102Fを形成する溶融金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちることが、より有効に抑えられる。
【0092】
また、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bでは、上面を切削して均す工程S24をさらに含んでいる。
したがって、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bによれば、金属層11mを積層した後、金属層11mの上面を切削して均すことで、その上段側に形成される金属層11mの堰き止めビード101C~101H、及び内側ビード102D~102Fと、下段側の金属層11mの上面との間に隙間が生じることが抑えられる。
【0093】
また、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bでは、テーブル2と溶接ノズル5とを、中心軸2c回りに相対回転させることで、テーブル2上に金属層11mを積層させている。
したがって、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bによれば、テーブル2上に、筒状の造形物10を容易に形成することができる。
【0094】
また、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bでは、堰き止めビードを形成する工程S21Bにおいて、被成形面Mf上に、堰き止めビード101C及び101E、101D及び101Fを幅方向Dwに並べて複数列形成するとともに、複数列の堰き止めビード101C及び101E、101D及び101Fの上段側に、複数列の堰き止めビード101C及び101E、101D及び101Fよりも幅方向Dwに少ない列数を有した堰き止めビード101G、101Hを形成している。
したがって、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bによれば、堰き止めビード101C~101Hの高さを大きくすることができ、内側ビード102D~102Fを、一度により多く形成することが可能となる。また、堰き止めビード101C~101Hの列数を、上段側よりも下段側よりも多くすることで、上段側の堰き止めビード101G、101Hを形成する際に溶融金属が下段側の堰き止めビード101C~101Fを越えて垂れ落ちることが抑えられる。
【0095】
また、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bでは、被成形面Mfの幅方向Dw外側の縁部Me1、Me2から幅方向Dw内側に隙間G1、G2を空けた位置に第一の堰き止めビード101C、101Fを形成した後、被成形面Mfを幅方向Dw外側から幅方向Dw内側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、第二の堰き止めビード101E、101Fを形成している。
したがって、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bによれば、第一の堰き止めビード101C、101Dを形成する際には、被成形面Mfの幅方向Dw外側の縁部Me1、Me2まで隙間G1、G2があるので、第一の堰き止めビード101C、101Dを形成する溶融金属が、被成形面Mfの外部に垂れ落ちることが抑えられる。また、第二の堰き止めビード101E、101Fを形成する際には、被成形面Mfを幅方向Dw外側から幅方向Dw内側に向かって斜め下方に傾斜させることで、第二の堰き止めビード101E、101Fを形成する溶融金属は、被成形面Mfの幅方向Dw内側に位置する第一の堰き止めビード101C、101Dによって堰き止められる。このようにして、堰き止めビード101C~101Hが被成形面Mfの外部に垂れ落ちることが有効に抑えられる。
【0096】
また、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bでは、内側ビードを形成する工程S22Bにおいて、被成形面Mfを、幅方向Dw内側から、堰き止めビード101C~101Hが形成された幅方向Dw外側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、内側ビード102D、102Eを形成している。
したがって、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bによれば、内側ビード102D、102Eを形成する際には、被成形面Mfが、堰き止めビード101C~101Hが形成された幅方向Dw外側に向かって斜め下方に傾斜しているので、内側ビード102D、102Eを形成する溶融金属が堰き止めビード101C~101Hによって有効に堰き止められる。
【0097】
また、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bでは、内側ビードを形成する工程S22Bにおいて、堰き止めビード101C~101Hと被成形面Mfとで形成される谷部V1、V2の傾斜が、アーク溶接を行う溶接ノズル5に対して対称となるように、被成形面Mfを傾けている。
したがって、第二実施形態の金属積層造形方法S1Bによれば、堰き止めビード101C~101Hと被成形面Mfとで形成される谷部V1、V2が、内側ビード102D、102Eを形成するためのアーク溶接を行う際の開先となる。堰き止めビード101C~101Hと被成形面Mfとで形成される谷部V1、V2の傾斜を、溶接ノズル5に対して対称とすることで、アーク溶接によって生成される溶融金属が、堰き止めビード101C~101Hと被成形面Mfとの双方に良好に溶け込む。これにより、内側ビード102D、102Eが、堰き止めビード101C~101Hと被成形面Mfとの双方に良好に融合して形成される。
【0098】
上述した第二実施形態の造形物10は、各層の金属層11mが、幅方向Dwに複数列の溶接ビード100が並べて配置されている。複数列の溶接ビード100は、幅方向Dw外側に配置されて金属層11mの外形形状をなす堰き止めビード101C~101Hと、堰き止めビード101C~101Hに対して幅方向Dw内側に配置された内側ビード102D~102Fと、を備えている。そして、内側ビード102D~102Fは、堰き止めビード101C~101Hよりも大電流凝固ビード102Hである。
したがって、第二実施形態の造形物10は、各層の金属層11mにおいて、内側ビード102D~102Fが大電流凝固ビード102Hとなり、堰き止めビード101C~101Hが小電流凝固ビード101Lとなる。これにより、溶融した金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちるのを抑え、良好な品質で、効率良く形成することが可能となる。
【0099】
また、第二実施形態の造形物10では、堰き止めビード101C~101Hのビード断面積よりも内側ビード102D~102Fのビード断面積の方が大きい。
したがって、第二実施形態の造形物10は、内側ビード102D~102Fを大電流でアーク溶接し、堰き止めビード101C~101Hを小電流でアーク溶接できるので、全てを小電流でアーク溶接する場合と比較して、効率良く形成することができる。
【0100】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記各実施形態では、被成形面Mfの幅方向Dwの両側に堰き止めビード101A~101Hを形成するようにしたが、これに限るものではなく、例えば、被成形面Mfの幅方向Dwの一方側にのみ、堰き止めビードを形成するようにしてもよい。
【0101】
また、上記各実施形態では、金属層11mを積層する毎に、金属層11mの上面を切削して均す工程S24を実施するようにしたが、これに限るものではなく、金属層11mの上面を切削して均す工程S24を実施せずに、金属層11mを順次積層していくようにしてもよい。
【0102】
また、上記第二実施形態において、被成形面Mf上に、堰き止めビード101C及び101E、101D及び101Fを幅方向Dwに二列に並べて形成し、その上段側に、一列の堰き止めビード101G、101Hを形成するようにしたが、これに限られない。例えば、下段側に、三列以上の堰き止めビードを被成形面Mfの幅方向Dwに並べて形成し、その上段側に、下段側よりも少ない列数の堰き止めビードを形成してもよい。さらに、被成形面Mf上に、三段以上の堰き止めビードを積層して形成し、各段の堰き止めビードを、下段側よりも上段側の堰き止めビードが少なくなるように形成してもよい。
【0103】
また、上記第二実施形態において、堰き止めビード101C~101Hと前記被成形面Mfとで形成される谷部V1、V2の傾斜が、アーク溶接を行う溶接ノズル5に対して対称となるように、被成形面Mfを傾けるようにしたが、これに限られない。谷部V1、V2に対する溶接ノズル5の角度は、適宜変更可能である。
【0104】
また、上記各実施形態において、金属積層造形方法S1A、S1Bで実施する処理の手順は適宜順番を入れ替えることが可能である。例えば、堰き止めビードを形成する工程S21A、S21B、内側ビードを形成する工程S22A、S22Bでは、径方向Dr外側と、径方向Dr内側とで、堰き止めビード101A~101H、内側ビード102A~102Fの形成順序を入れ替えてもよい。
【0105】
また、各実施形態においては、一つの溶接ノズル5を用いる場合を例示したが、複数の溶接ノズルを用いてアーク溶接を行うようにしてもよい。
【0106】
<付記>
各実施形態に記載の金属積層造形方法S1A、S1B、造形物10は、例えば以下のように把握される。
【0107】
(1)第1の態様の金属積層造形方法S1A、S1Bは、金属層を積層する工程S2A、S2Bを順次行うことで造形物10を形成する金属積層造形方法S1A、S1Bであって、前記金属層を積層する工程S2A、S2Bは、前記金属層11mが形成される被成形面Mfの幅方向Dw少なくとも一方側の端部上に、アーク溶接によって前記造形物10の外周形状に沿って連続する堰き止めビードを形成する工程S21A、S21Bと、前記堰き止めビード101A~101Hに対し、前記被成形面Mfの幅方向Dw内側の空間を埋めるように、前記堰き止めビードを形成する工程S21A、S21Bよりも大電流のアーク溶接によって前記内側ビードを形成する工程S22A、S22Bと、を含む。
【0108】
この金属積層造形方法S1A、S1Bによれば、被成形面Mf上に造形物10の外周形状に沿って形成された堰き止めビード101A~101Hにより、内側ビード102A~102Fを形成する際には、溶融金属が堰き止められる。これによって、内側ビード102A~102Fを形成する溶融金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちることが抑えられる。また、堰き止めビード101A~101Hを形成する際には、内側ビード102A~102Fよりも小電流のアーク溶接が用いられる。このため、堰き止めビード101A~101Hを形成する溶融金属が、内側ビード102A~102Fよりも流れにくく、堰き止めビード101A~101Hを形成する溶融金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちることを抑えつつ、堰き止めビード101A~101Hを良好に形成することができる。さらに、内側ビード102A~102Fは、堰き止めビード101A~101Hよりも大電流のアーク溶接によって形成される。このため、内側ビード102A~102Fを、効率良く形成することが可能となる。したがって、溶融した金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちるのを抑え、造形物10を良好な品質で、効率良く形成することが可能となる。
【0109】
(2)第2の態様の金属積層造形方法S1A、S1Bは、(1)の金属積層造形方法S1A、S1Bであって、前記堰き止めビードを形成する工程S21A、S21Bでは、前記被成形面Mfの幅方向Dw両側の端部上に、前記堰き止めビード101A~101Hを形成し、前記内側ビードを形成する工程S22A、S22Bでは、前記被成形面Mfの幅方向Dw両側の前記堰き止めビード101A~101Hの間の空間を埋めるように、前記内側ビード102A~102Fを形成する。
【0110】
これにより、内側ビード102A~102Fを形成する際には、被成形面Mfの幅方向Dw両側に堰き止めビード101A~101Hが形成されているので、内側ビード102A~102Fを形成する溶融金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちることが、より有効に抑えられる。
【0111】
(3)第3の態様の金属積層造形方法S1Bは、(1)又は(2)の金属積層造形方法S1Bであって、前記堰き止めビードを形成する工程S21Bでは、前記被成形面Mf上に、前記堰き止めビード101C及び101E、101D及び101Fを幅方向Dwに並べて複数列形成するとともに、複数列の前記堰き止めビード101C及び101E、101D及び101Fの上段側に、複数列の前記堰き止めビード101C及び101E、101D及び101Fよりも幅方向Dwに少ない列数を有した前記堰き止めビード101G、101Hを形成する。
【0112】
これにより、堰き止めビード101C~101Hの高さを大きくすることができ、内側ビード102D~102Fを、一度により多く形成することが可能となる。また、堰き止めビード101C~101Hの列数を、上段側よりも下段側よりも多くすることで、上段側の堰き止めビード101G、101Hを形成する際に溶融金属が下段側の堰き止めビード101C~101Fを越えて垂れ落ちることが抑えられる。
【0113】
(4)第4の態様の金属積層造形方法S1Bは、(1)から(3)の何れか一つの金属積層造形方法S1Bであって、前記堰き止めビードを形成する工程S21Bでは、前記被成形面Mfの幅方向Dw外側の縁部Me1、Me2から幅方向Dw内側に隙間G1、G2を空けた位置に第一の前記堰き止めビード101C、101Fを形成した後、前記被成形面Mfを幅方向Dw外側から幅方向Dw内側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、第一の前記堰き止めビード101C、101Dに対して前記被成形面Mfの幅方向Dw外側に隣接させて第二の前記堰き止めビード101E、101Fを形成する。
【0114】
これにより、第一の堰き止めビード101C、101Dを形成する際には、被成形面Mfの幅方向Dw外側の縁部Me1、Me2まで隙間G1、G2があるので、第一の堰き止めビード101C、101Dを形成する溶融金属が、被成形面Mfの外部に垂れ落ちることが抑えられる。また、第二の堰き止めビード101E、101Fを形成する際には、被成形面Mfを幅方向Dw外側から幅方向Dw内側に向かって斜め下方に傾斜させる。これにより、第二の堰き止めビード101E、101Fを形成する溶融金属は、被成形面Mfの幅方向Dw内側に位置する第一の堰き止めビード101C、101Dによって堰き止められる。このようにして、堰き止めビード101C~101Hが被成形面Mfの外部に垂れ落ちることが有効に抑えられる。
【0115】
(5)第5の態様の金属積層造形方法S1Bは、(1)から(4)の何れか一つの金属積層造形方法S1Bであって、前記内側ビードを形成する工程S22Bでは、前記被成形面Mfを、幅方向Dw内側から、前記堰き止めビード101C~101Hが形成された幅方向Dw外側に向かって斜め下方に傾斜させた状態で、前記内側ビード102D、102Eを形成する。
【0116】
これにより、内側ビード102D、102Eを形成する際には、被成形面Mfが、堰き止めビード101C~101Hが形成された幅方向Dw外側に向かって斜め下方に傾斜しているので、内側ビード102D、102Eを形成する溶融金属が堰き止めビード101C~101Hによって有効に堰き止められる。
【0117】
(6)第6の態様の金属積層造形方法S1Bは、(5)の金属積層造形方法S1Bであって、前記内側ビードを形成する工程S22Bでは、前記堰き止めビード101C~101Hと前記被成形面Mfとで形成される谷部V1、V2の傾斜が、アーク溶接を行う溶接ノズル5に対して対称となるように、前記被成形面Mfを傾ける。
【0118】
これにより、堰き止めビード101C~101Hと被成形面Mfとで形成される谷部V1、V2が、内側ビード102D~102Fを形成するためのアーク溶接を行う際の開先となる。堰き止めビード101C~101Hと被成形面Mfとで形成される谷部V1、V2の傾斜を、溶接ノズル5に対して対称とすることで、アーク溶接によって生成される溶融金属が、堰き止めビード101C~101Hと被成形面Mfとの双方に良好に溶け込む。これにより、内側ビード102D、102Eが、堰き止めビード101C~101Hと被成形面Mfとの双方に良好に融合して形成される。
【0119】
(7)第7の態様の金属積層造形方法S1A、S1Bは、(1)から(6)の何れか一つの金属積層造形方法S1A、S1Bであって、前記金属層11mの上面を切削して均す工程S24をさらに含む。
【0120】
これにより、金属層11mを積層した後、金属層11mの上面を切削して均すことで、その上段側に形成される金属層11mの堰き止めビード101A~101H、及び内側ビード102A~102Fが、下段側の金属層11mの上面との間に隙間が生じるのを抑えて良好に形成される。
【0121】
(8)第8の態様の金属積層造形方法S1A、S1Bは、(1)から(7)の何れか一つの金属積層造形方法S1A、S1Bであって、中心軸2c回りに回転可能に設けられたテーブル2と、前記テーブル2の上方に配置されてアーク溶接を行う溶接ノズル5とを、前記中心軸2c回りに相対回転させることで、前記テーブル2上に前記金属層11mを積層する。
【0122】
これにより、テーブル2と溶接ノズル5とを、テーブル2の中心軸2c回りに相対回転させながら、金属層11mを積層していくことで、テーブル2上に、筒状の造形物10を容易に形成することができる。
【0123】
(9)第9の態様の造形物10は、溶接ビード100からなる前記金属層11mが複数層に積層されてなる造形物10であって、各層の前記金属層11mは、幅方向Dwに複数列の前記溶接ビード100が並べて配置され、複数列の前記溶接ビード100は、幅方向Dw外側に配置されて前記金属層11mの外形形状をなす前記堰き止めビード101A~101Hと、前記堰き止めビード101A~101Hに対して幅方向Dw内側に配置された前記内側ビード102A~102Fと、を備え、前記内側ビード102A~102Fは、前記堰き止めビード101A~101Hよりも大電流でアーク溶接された大電流凝固ビード102Hである
造形物10。
【0124】
このように、各層の金属層11mにおいて、幅方向Dw内側ビード102A~102Fが大電流凝固ビード102Hとされ、幅方向Dw堰き止めビード101A~101Hが小電流凝固ビード101Lとされた造形物10は、上記したような、溶融した金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちるのを抑え、造形物10を良好な品質で、効率良く形成することが可能となる金属積層造形方法S1A、S1Bにより形成される。
【0125】
(10)第10の態様の造形物10は、(9)の造形物10であって、前記堰き止めビード101A~101Hのビード断面積よりも前記内側ビード102A~102Fのビード断面積の方が大きい。
【0126】
これにより、大電流でアーク溶接が行われることで形成された内側ビード102A~102Fは、小電流でアーク溶接が行われることで形成された堰き止めビード101A~101Hよりも、ビード断面積が大きい。このような造形物10は、上記したような、溶融した金属が被成形面Mfの外部に垂れ落ちるのを抑え、造形物10を良好な品質で、効率良く形成することが可能となる金属積層造形方法S1A、S1Bにより形成される。
【符号の説明】
【0127】
1…造形システム
2…テーブル
2c…中心軸
2f…テーブル上面
3…テーブル回転駆動部
4…テーブル傾動部
5…溶接ノズル
6…コントローラー
8…切削工具
10…造形物
11…筒状部
11a…筒端
11b…筒端
11m…金属層
12…天面
12a…外側端部
12b…内側端部
13…外周面
14…内周面
51…電流供給部
61…CPU
62…ROM
63…RAM
64…HDD
65…信号受信モジュール
70…信号入力部
71…回転制御部
72…傾動制御部
73…ノズル動作制御部
74…溶接制御部
100…溶接ビード
101A~101H…堰き止めビード
102A~102F…内側ビード
101L…小電流凝固ビード
102H…大電流凝固ビード
105…側面溶接ビード
Da…軸線方向
De…延伸方向
Dh…水平方向
Dr…径方向
Dv…鉛直方向
Dw…幅方向
G1…隙間
G2…隙間
AH…第二溶接電流値
AL…第一溶接電流値
Me1…縁部
Me2…縁部
Mf…被成形面
S1A、S1B…金属積層造形方法
S2A、S2B…金属層を積層する工程
S3…側面を形成する工程
S4…造形物を取り出す工程
S21A、S21B…堰き止めビードを形成する工程
S211…第一準備工程
S212…堰き止めビード形成工程
S213…第一ノズル移動工程
S214…堰き止めビード形成工程
S22A、S22B…内側ビードを形成する工程
S221…第二準備工程
S222…外周側内側ビード形成工程
S223…第二ノズル移動工程
S224…内周側内側ビード形成工程
S225…第三準備工程
S226…中間部内側ビード形成工程
S23…ノズルを移動する工程
S24…上面を切削して均す工程
S25…最終積層数を確認する工程
S31…第四準備工程
S311…準備工程
S312…堰き止めビード形成工程
S313…テーブル傾動工程
S314…堰き止めビード形成工程
S315…ノズル移動工程
S316…堰き止めビード形成工程
S32…外周面溶接ビード形成工程
S321…第一テーブル傾動工程
S322…内周側内側ビード形成工程
S323…第二テーブル傾動工程
S324…外周側内側ビード形成工程
S325…第三テーブル傾動工程
S326…中間部内側ビード形成工程
V1、V2…谷部
θ1…第一傾斜角度
θ2…第二傾斜角度
θ3…第三傾斜角度
θ4…第四傾斜角度
θ5…第五傾斜角度
図1
図2
図3
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