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特許7411373惰行運転時に排気ガス成分のための触媒の貯蔵部の充填レベルを制御するための方法および制御器
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  • 特許-惰行運転時に排気ガス成分のための触媒の貯蔵部の充填レベルを制御するための方法および制御器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】惰行運転時に排気ガス成分のための触媒の貯蔵部の充填レベルを制御するための方法および制御器
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
F01N3/24 U
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019185664
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2020079586
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】10 2018 217 307.9
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ノップ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ワグネ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・フェイ
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-162174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(10)の排気ガス中の触媒(26)の排気ガス成分貯蔵部の充填を制御する方法であって、
排気ガス成分貯蔵部の実測充填レベル
【数1】
第1の経路モデル(100)によって決定するステップであって、触媒(26)の上流側で排気ガス流に突入し、排気ガス成分の濃度を検出する第1の排気ガスプローブ(32)の信号(λin,meas)が前記第1の経路モデル(100)に供給されステップと、
以下の変数:少なくとも1つの排気ガス成分の排出量、排気ガス質量流量、排気ガス温度、および触媒温度のうちの少なくとも1つに応じて内燃機関の惰行運転フェーズにおける実測充填レベル
【数2】
の変化を予測するステップであって、内燃機関(10)の燃焼室(20)への空気および/または燃料供給に関連する内燃機関(10)の回転角センサ(25)の信号から惰行運転フェーズにおける、前記少なくとも1つの排気ガス成分の排出量、前記排気ガス質量流量、前記排気ガス温度、および前記触媒温度のうちの少なくとも1つの値を予測する、ステップと、
含み、
前記内燃機関(10)の前記燃焼室(20)への燃料計量によって行う運転時に第1の制御回路(22,32,128,130,132)のための基本ラムダ目標値(BLSW)を設定し、前記第1の排気ガスプローブ(32)の前記信号(λ in,meas )をラムダ実測値として処理するラムダ制御を前記第1の制御回路(22,32,128,130,132)で行い、前記基本ラムダ目標値(BLSW)を用いてラムダ目標値(λ in,set )が第2の制御回路(22,32,100,122,124,126,128,132)で計算され、前記第1の経路モデル(100)と同一の方程式を含む第2の経路モデル(100′)によって基本ラムダ目標値(BLSW)のための初期値(λ in,fictitious )を仮想充填レベル
【数3】
に換算し、当該仮想充填レベル
【数4】
を、目標値発生器(118,120)によって出力された充填レベルのための目標値
【数5】
と比較し、比較結果が充填レベルのための目標値
【数6】
と仮想充填レベル
【数7】
との間に所定の程度よりも大きい差をもたらした場合には基本ラムダ目標値(BLSW)を比較結果に応じて反復して変更し、比較結果が充填レベルのための目標値と仮想充填レベル
【数8】
との間に所定の程度よりも大きい差をもたらさなかった場合には基本ラムダ目標値(BLSW)を変更せず、燃焼室への燃料計量が行われない内燃機関の惰行運転フェーズの開始時に、内燃機関(10)の燃焼室(20)への空気および/または燃料供給に関連する内燃機関(10)の前記回転角センサ(25)の信号に応じて基本ラムダ目標値を形成する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記回転角センサ(25)の信号に応じて、前記惰行運転フェーズの後に再開される燃焼室充填物の燃焼により生じた排気ガス(28)が第1の排気ガスプローブ(32)に到達するために必要なガス移動時間の長さにわたって前記実測充填レベル
【数9】
の変化を予測するか、または惰行運転フェーズがガス移動時間よりも短い場合には、前記回転角センサ(25)の信号に応じて、惰行運転フェーズの長さにわたって実測充填レベル
【数10】
を求める方法。
【請求項3】
請求項に記載の方法において、
前記内燃機関(10)がまだ惰行運転状態にあるかどうかをチェックし、そうでない場合には、燃焼運転のための基本ラムダ目標値を設定することによって基本ラムダ目標値を形成し、内燃機関(10)がまだ惰行運転状態にある場合には、燃料遮断によって惰行運転に移行してから経過した時間がガス移動時間よりも長いかどうかをチェックする方法。
【請求項4】
請求項に記載の方法において、
燃料遮断によって惰行運転に移行してから経過した時間がガス移動時間よりも長い場合に、前記第1の排気ガスプローブの信号(32)を前記基本ラムダ目標値(BSLW)として使用する方法。
【請求項5】
請求項に記載の方法において、
内燃機関(10)がまだ惰行運転状態にあるかどうかがチェックされ、そうでない場合には、燃焼運転のための基本ラムダ目標値(BSLW)を設定することによって基本ラムダ目標値を形成する方法。
【請求項6】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法において、
所定の目標充填レベル
【数11】
からの実測充填レベル
【数12】
のずれを検出し、充填レベル制御(124)によってラムダ目標値‐補正値として処理し、基本ラムダ目標値とラムダ目標値‐補正値との合計を求め、この合計を、内燃機関(10)の少なくとも1つの燃焼室(20)への燃料計量に影響を及ぼす補正値を形成するために使用する方法。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法において、
排気ガス成分が酸素であり、フィルタ処理された充填レベル目標値
【数13】
からの、第1の触媒モデル(100)によってモデル化された充填レベル
【数14】
のずれとして充填レベル制御ずれを求め、該充填レベル制御ずれを、ラムダ目標値‐補正値を求める充填レベル制御アルゴリズムに供給し、反復して変更された基本ラムダ目標値に必要に応じてラムダ目標値‐補正値を加算し、このようにして計算した合計によってラムダ目標値(λin,set)を形成する方法。
【請求項8】
請求項に記載の方法において、
触媒モデル(102)が出力ラムダモデル(106)を備え、該出力ラムダモデル(106)が、第1の触媒モデル(102)によって計算した個々の排気ガス成分の濃度を、触媒(26)の下流側に配置されており、排気ガスにさらされている第2の排気ガスプローブ(34)の信号と比較可能な信号に変換するように構成する方法。
【請求項9】
内燃機関(10)の排気ガス中の触媒(26)の排気ガス成分貯蔵部の充填を制御するための制御器(16)であって、前記制御器(16)は、
排気ガス成分貯蔵部の実測充填レベル
【数15】
を第1の経路モデル(100)によって決定し、触媒(26)の上流側で排気ガス流に突入し、排気ガス成分の濃度を検出する第1の排気ガスプローブ(32)の信号(λin,meas)が前記第1の経路モデル(100)に供給され以下の変数:少なくとも1つの排気ガス成分の排出量、排気ガス質量流量、排気ガス温度、および触媒温度のうちの少なくとも1つに応じて、内燃機関の惰行運転フェーズにおける実測充填レベル
【数16】
の変化を予測、内燃機関(10)の燃焼室(20)への空気および/または燃料供給に関連する内燃機関(10)の回転角センサ(25)の信号から惰行運転フェーズにおける前記少なくとも1つの排気ガス成分の排出量、前記排気ガス質量流量、前記排気ガス温度、および前記触媒温度のうちの少なくとも1つの値を予測するように構成されており、前記制御器(16)はさらに、
前記内燃機関(10)の前記燃焼室(20)への燃料計量によって行う運転時に第1の制御回路(22,32,128,130,132)のための基本ラムダ目標値(BLSW)を設定し、前記第1の排気ガスプローブ(32)の前記信号(λ in,meas )をラムダ実測値として処理するラムダ制御を前記第1の制御回路(22,32,128,130,132)で行い、前記基本ラムダ目標値(BLSW)を用いてラムダ目標値(λ in,set )を第2の制御回路(22,32,100,122,124,126,128,132)で形成し、前記第1の経路モデル(100)と同一の方程式を含む第2の経路モデル(100′)によって基本ラムダ目標値(BLSW)のための初期値(λ in,fictitious )を仮想充填レベル
【数17】
に換算し、当該仮想充填レベル
【数18】
を、目標値発生器(118,120)によって出力された充填レベルのための目標値
【数19】
と比較し、比較結果が充填レベルのための目標値
【数20】
と仮想充填レベル
【数21】
との間に所定の程度よりも大きい差をもたらした場合には基本ラムダ目標値(BLSW)を比較結果に応じて反復して変更し、比較結果が充填レベルのための目標値と仮想充填レベル
【数22】
との間に所定の程度よりも大きい差をもたらさなかった場合には基本ラムダ目標値(BLSW)を変更せず、燃焼室への燃料計量が行われない内燃機関の惰行運転フェーズの開始時に、内燃機関(10)の燃焼室(20)への空気および/または燃料供給に関連する内燃機関(10)の前記回転角センサ(25)の信号に応じて基本ラムダ目標値を形成するように構成される、制御器(16)。
【請求項10】
請求項に記載の制御器(16)において、請求項からまでのいずれか1項に記載の方法のプロセスを制御するように構成されて
いる制御器(16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の、内燃機関の排気ガス中の触媒の排気ガス成分貯蔵部の充填を制御する方法に関する。装置の独立請求項の前提部分に記載の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法およびこのような制御器は、それぞれドイツ特許出願公開第102016222108号明細書により公知である。公知の方法および制御ユニットでは、内燃機関の排気ガス中の触媒の排気ガス成分の充填制御が行われ、この場合、排気ガス成分貯蔵部の実測充填レベルが経路モデルによって決定され、経路モデルには、触媒の上流側で排気ガス流に突入しており、排気ガス成分の濃度を検出する第1の排気ガスプローブの信号が供給される。
【0003】
この場合、経路モデルは、計算された出力変数が現実の物体の出力変数にできるだけ正確に対応するように、経路モデルによって再現された現実の物体にも作用する入力変数を出力変数に結び付けるアルゴリズムを意味すると理解される。実際の物体は、考慮した例では入力変数と出力変数との間にある物理的な経路全体である。
【0004】
ガソリンエンジンにおける空気‐燃料混合物の不完全燃焼時には、窒素(N)、二酸化炭素(CO)および水(HO)に加えて、種々の燃焼生成物が放出され、そのうちの炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NO)は法的に制限されている。自動車の現行の排気ガス限界値は、現在の技術水準によれば、触媒の排気ガス後処理のみで満たすことができる。三元触媒を使用することによって、前述の有害物質成分を変換することができる。HC、COおよびNOにおいて同時に高い変換率は、三元触媒において、化学量論的な運転点(ラムダ=1)の周辺の狭いラムダ範囲、いわゆる「変換ウィンドウ」においてしか達成されない。
【0005】
変換ウィンドウ内で三元触媒を作動するために、今日のエンジン制御システムでは、一般に、三元触媒の前後に配置されたラムダプローブの信号に基づいたラムダ制御が使用される。内燃機関の燃料/空気比の組成の尺度である空気比λを制御するために、三元触媒の前方の排気ガスの酸素含有量が、そこに配置された前方の排気ガスプローブを用いて測定される。この測定値に応じて、制御部は、フィードフォワード制御機能によって、基本値としてあらかじめ設定された燃料量または噴射パルス幅を補正する。
【0006】
フィードフォワード制御の一部として、噴射される燃料量の基本値は、例えば内燃機関の回転速度および負荷に応じてあらかじめ設定される。さらに正確な制御のために、三元触媒コンバータの下流側の排気ガスの酸素濃度が、別の排気ガスプローブによって付加的に検出される。この後方の排気ガスプローブの信号はマスタ制御に使用され、マスタ制御は、排気ガスプローブの信号に基づいた三元触媒の前方におけるラムダ制御に重畳される。三元触媒コンバータの後方に配置される排気ガスプローブとしては、一般に、ラムダ=1で極めて急峻な特性線を有し、したがって、ラムダ=1を極めて正確に示すことができるジャンプ型ラムダプローブが使用される(自動車ハンドブック、第23版、524ページ)。
【0007】
一般にラムダ=1からのわずかなずれしか補正せず、比較的緩慢に設計されているマスタ制御に加えて、現在のエンジン制御システムには、通常、ラムダ=1からの大きいずれが生じた後に、ラムダ‐フィードフォワード制御の形で変換ウィンドウに再び迅速に到達するように作用する機能が設けられており、これは、例えば、三元触媒に酸素が装填されているオーバーランカットオフを伴うフェーズ後には重要である。これは、NO変換に影響を及ぼす。
【0008】
三元触媒の酸素貯蔵能のために、三元触媒の前方にリッチまたはリーンラムダが設定された後に、三元触媒の後方にまだ数秒間にわたってラムダ=1が存在することができる。酸素を一時的に貯蔵する三元触媒のこの特性は、三元触媒の前方におけるλ=1からの短時間のずれを補償するために利用される。より長い時間にわたって三元触媒の前方で1に等しくないラムダが生じている場合には、ラムダ>1(酸素過剰)で酸素充填レベルが酸素貯蔵能を超えるとすぐに、または三元触媒にラムダ<1でもはや酸素が貯蔵されなくなるとすぐに、同じラムダが三元触媒の後方にも設定される。
【0009】
この時点で、三元触媒の後方のジャンプ型ラムダプローブも変換ウィンドウを離れていることを示す。しかしながら、この時点までは三元触媒の後方のラムダプローブの信号は、切迫した故障を示唆せず、したがって、この信号に基づいたマスタ制御の応答はしばしば遅すぎ、故障の前に早期に燃料計量による対応ができない。その結果、テールパイプの排出量が増大する。したがって、現在の制御コンセプトは、三元触媒の後方のジャンプ型ラムダプローブの電圧に基づいて、変換ウィンドウを離れたことを遅れてようやく検出するという欠点を有する。
【0010】
ラムダプローブの信号に基づいて三元触媒の後方で制御するための代替案は、三元触媒の平均的な酸素充填レベルを制御することである。この平均的な充填レベルは測定可能ではないが、しかしながら、冒頭で述べたドイツ特許出願公開第102016222108号明細書に記載の計算によってモデル化することができる。
【0011】
しかしながら、三元触媒は、経時変化する経路パラメータを有する複雑な非線形の経路である。さらに、三元触媒のモデルのために測定またはモデル化された入力変数には、一般に不確実性が伴う。したがって、異なる運転状態(例えば、異なるエンジン運転点または異なる触媒劣化段階)における三元触媒の挙動を十分に正確に記述することができる一般的に有効な触媒モデルは、原則としてエンジン制御装置では利用できない。
【0012】
ドイツ特許出願公開第102016222108により公知の方法では、とりわけ、入力エミッションモデル、触媒モデルおよび出力ラムダモデルを有する第1の経路モデルが使用される。この第1の経路モデルを用いて、触媒のモデル化された充填レベルが計算され、エミッション最適値に調整される。これは、原則として平均的な充填レベルである。
【0013】
自動車の内燃機関が駆動輪によって駆動される自動車の惰行運転フェーズでは、通常、燃料供給の遮断が行われる。この場合、触媒には多くの酸素が取り込まれる。燃焼室充填物が点火され、燃焼される、惰行運転と燃焼運転との間の急激な移行に基づいて、惰行運転フェーズは、充填レベルのモデル化における特別な課題を提起する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】ドイツ特許出願公開第102016222108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、方法の観点においては請求項1に記載の特徴によって、および装置の観点においては装置の独立請求項に記載の特徴によって、ドイツ特許出願公開第102016222108号明細書による従来技術とは異なる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、以下の変数、すなわち、少なくとも1つの排気ガス成分のエミッション、排気ガス質量流量、排気ガス温度、触媒温度のうちの少なくとも1つに応じた内燃機関の惰行運転フェーズにおける実測充填レベルの変化が予測され、内燃機関の燃焼室への空気および/または燃料供給に関連する内燃機関のセンサの信号および制御変数から惰行運転フェーズにおけるこれらの変数の値が予測される。
【0017】
さらに、第1の経路モデルを解析的に反転する代わりに、反転された経路モデルとして設計されたフィードフォワード制御が使用される。フィードフォワード制御は、この目的のために、第1の経路モデルのコピーを表す別の内部経路モデルを有する。従来技術のシステムは、「システムの監視」と「充填レベル制御」の2つの主要な動作状態を有する。例えば、「監視」状態は、惰行運転遮断に基づいて燃焼がアクティブでない場合にアクティブになり、したがって、充填レベルにアクティブに影響を及ぼすことができない。監視状態において、フィードフォワード制御の内部経路モデルは、ラムダプローブによって測定された現在の燃焼ラムダを用いて計算され、したがって、フィードフォワード制御は、状態「充填レベル制御」が再開された場合に最適な充填レベル推移をフィードフォワード制御することができる。
【0018】
三元触媒の前方に配置された排気ガスプローブの信号に基づいて三元触媒の充填レベルを制御することは、三元触媒の後方に配置された排気ガスプローブの信号に基づいたマスタ制御の場合よりも早期に、触媒ウィンドウを離れるときが差し迫っていることを検出でき、これにより、空気-燃料混合気を早期に適切に補正することによって、触媒ウィンドウを離れることに対抗措置をとることができるという利点を有する。
【0019】
惰行運転フェーズでは、燃料供給が遮断されていることにより、充填レベルに積極的に影響を及ぼすことができないので、充填レベル制御は停止される。本発明は、触媒の前方の第1の排気ガスプローブの組込み位置でラムダ値が測定される排気ガスが、燃焼室と排気ガスプローブとの間に横たわる距離を進むために移動時間を必要とするという認識に基づいている。したがって、惰行運転フェーズの終了時に行われる充填レベル制御を再び開始した場合には、燃焼室と第1の排気ガスプローブとの間には依然として残留排気ガス量が存在する。従来技術の場合、この残留排気ガス量はフィードフォワード制御によってもはや考慮されない。なぜならば、フィードフォワード制御は、充填レベル推移および操作量をあらかじめ設定する必要があり、数値的に反転された経路モデルによって計算されるべき充填レベルの現在の値をこれらの値によって正確に更新しなければならないからである。
【0020】
その結果、フィードフォワード制御の反転された経路モデルは、特に、例えば切換プロセスで生じる短い惰行運転フェーズの後には低すぎる充填レベルを示す。このことは、惰行運転時の燃料遮断に続いて触媒が最適な速度で触媒ウィンドウに戻らないとことにつながる。場合によっては、触媒ウィンドウ(すなわち、汚染物質変換のために好ましい充填レベル)は、制御の介入によって、モデル化された出力ラムダと、触媒の後方に配置された排気ガスプローブによって測定されたラムダとの間に大きいずれが生じた場合にトリガされる再初期化機構によってようやく達成される。
【0021】
本発明は、充填レベル制御のスイッチオンおよび制御特性を改善し、これにより、変換のために好ましい触媒の充填レベルの制御を加速する。したがって、全体として、触媒容積内に貯蔵された酸素量の制御の改善をもたらし、変換ウィンドウを離れることが早期に検出され、防止され、同時に、既存の制御概念よりもバランスのとれた充填レベル保持能力を有する。このことは、燃料遮断を伴った運転と伴わない運転との間の移行だけでなく、運転点が急激に変化した場合、例えば強度に加速した場合にも生じる動的妨害を補償するために有利である。これにより、エミッションを低減することができる。より厳しい規制要件を、三元触媒のためにより低いコストで満たすことができる。
【0022】
好ましい実施形態は、内燃機関の燃焼室への空気および/または燃料供給に関連するセンサの信号および制御変数に応じて、惰行運転フェーズの後に再開される燃焼室充填物の燃焼により生じた排気ガスが第1の排気ガスプローブに到達するために必要なガス移動時間の長さにわたって基本ラムダ目標値の形成が行われるか、または惰行運転フェーズがガス移動時間よりも短い場合には、センサの信号および制御変数に応じて惰行運転フェーズの長さにわたって基本ラムダ目標値の形成が行われることにより優れている。
【0023】
別の好ましい実施形態は、触媒の上流側で排気ガス流に突入し、排気ガス成分の濃度を検出する第1の排気ガスプローブの信号が供給される第1の経路モデルによって排気ガス成分貯蔵部の実測充填レベルが決定され、内燃機関の燃焼室への燃料計量によって行う運転時に第1の制御回路のための基本ラムダ目標値が第2の制御回路によって設定され、基本ラムダ目標値が、第1の経路モデルと同一の第2の経路モデルによって仮想充填レベルに換算され、仮想充填レベルが、目標値発生器によって出力された充填レベルのための目標値と比較され、比較結果が充填レベルのための目標値と仮想充填レベルとの間に所定の程度よりも大きい差をもたらした場合には基本ラムダ目標値が比較結果に応じて反復して変更され、比較結果が充填レベルのための目標値と仮想充填レベルとの間に所定の程度よりも大きい差をもたらさなかった場合には基本ラムダ目標値は変更されず、基本ラムダ目標値は、燃焼室への燃料計量が行われない内燃機関の惰行運転フェーズの開始時に、内燃機関の燃焼室への空気および/または燃料供給に関連する内燃機関のセンサの信号および制御変数に応じて形成される。
【0024】
内燃機関がまだ惰行運転状態にあるかどうかをチェックし、そうでない場合には、燃焼運転のための基本ラムダ目標値を設定することによって基本ラムダ目標値を形成し、内燃機関がまだ惰行運転状態にある場合には、燃料遮断によって惰行運転に移行してから経過した時間がガス移動時間よりも長いかどうかがチェックされることも好ましい。
【0025】
さらに好ましくは、燃料遮断によって惰行運転に移行してから経過した時間がガス移動時間よりも長い場合には、第1の排気ガスプローブの信号が基本ラムダ目標値として使用される。
【0026】
別の好ましい構成は、内燃機関がまだ惰行運転状態にあるかどうかがチェックされ、そうでない場合には、燃焼運転のための基本ラムダ目標値を設定することによって基本ラムダ目標値が形成されることによって優れている。
【0027】
所定の目標充填レベルからの実測充填レベルのずれが検出され、充填レベル制御によってラムダ目標値‐補正値として処理され、基本ラムダ目標値とラムダ目標値‐補正値との合計が求められ、この合計が、内燃機関の少なくとも1つの燃焼室への燃料計量に影響を及ぼす補正値を形成するために使用されることも好ましい。
【0028】
さらに好ましくは、排気ガス成分が酸素であり、第1の排気ガスプローブの信号をラムダ実測値として処理するラムダ制御が第1の制御回路で行われ、ラムダ目標値が第2の制御回路で形成され、充填レベル制御ずれが、フィルタ処理された充填レベル目標値からの、第1の触媒モデルによってモデル化された充填レベルのずれとして求められ、この充填レベル制御ずれが、ラムダ目標‐補正値を求める充填レベル制御アルゴリズムに供給され、このラムダ目標値‐補正値が、反復して変更された基本ラムダ目標値に必要に応じて加算され、このようにして計算された合計がラムダ目標値を形成する。
【0029】
別の好ましい構成は、触媒モデルが出力ラムダモデルを備え、この出力ラムダモデルは、第1の触媒モデルによって計算した個々の排気ガス成分の濃度を、触媒の下流側に配置されており、排気ガスにさらされている第2の排気ガスプローブの信号と比較可能な信号に変換するように構成されていることにより優れている。
【0030】
本発明による制御器の構成は、この方法のいずれか1つの構成により方法のプロセスを制御するように構成されていることにより優れている。
【0031】
さらなる利点が、以下の説明および添付の図面から明らかである。
【0032】
上述した特徴および以下にさらに説明する特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれに示した組み合わせだけでなく、他の組み合わせで使用することもできるし、または単独で使用することができることを理解されたい。
【0033】
本発明の実施形態を図面に示し、以下の説明に詳細に説明する。この場合、異なる図面の同じ符号は、それぞれ同じか、または少なくとも機能的に比較可能な要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の技術範囲として排気ガスシステムを備える内燃機関を示す概略図である。
図2】経路モデルの機能ブロックを示す概略図である。
図3】本発明による方法および制御器を示す機能ブロック図である。
図4a】一時的な燃料遮断時に生じるバイナリ状態の時間波形を示す図である。
図4b】一時的な燃料遮断時に生じるバイナリ状態の時間波形を示す図である。
図4c】一時的な燃料遮断時に生じるバイナリ状態の時間波形を示す図である。
図4d】一時的な燃料遮断時に生じるバイナリ状態の時間波形を示す図である。
図5】本発明による方法の第1の部分の一実施形態を示すフロー図である。
図6】本発明による方法の第2の部分の一実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では三元触媒の例を用いて、貯蔵されるべき排気ガス成分として酸素について本発明を説明する。しかしながら、本発明は、窒素酸化物および炭化水素などの他の種類の触媒および排気ガス成分にも適用可能である。以下では、簡略化のために三元触媒を有する排気ガスシステムに基づいている。本発明は、複数の触媒を有する排気ガスシステムにも適用可能である。この場合、以下に説明する前方および後方のゾーンは、いくつかの触媒に延在しいているか、もしくは異なる触媒中に設けられていてもよい。
【0036】
詳細には、図1は、空気供給システム12と、排気ガスシステム14と、制御ユニット16とを有する内燃機関10を示す。空気供給システム12は、空気質量計18と、空気質量計18の下流側に配置された絞り弁ユニット19の絞り弁とを備える。空気供給システム12を介して内燃機関10に流入する空気は、内燃機関10の燃焼室20内でガソリンと混合され、このガソリンは、噴射弁22を介して燃焼室20内に直接に噴射される。本発明は、直接噴射型の内燃機関に制限されておらず、吸気管噴射またはガスによって運転される内燃機関に使用することもできる。得られた燃焼室充填物は、点火装置24、例えば点火プラグよって点火され、燃焼される。回転角センサ25は、内燃機関10のシャフトの回転角を検出し、これにより、制御器16が、シャフトの所定の角度位置で点火をトリガし、内燃機関の回転速度を決定することを可能にする。燃焼により生じる排気ガスは、排気ガスシステム14を通って排出される。
【0037】
排気ガスシステム14は触媒26を備えている。触媒26は、例えば、周知のように、3つの排気ガス成分である窒素酸化物、炭化水素および一酸化炭素を3つの反応経路で変換し、酸素を貯蔵する作用を有する三元触媒である。酸素を貯蔵する作用に基づいて、酸素は排気ガス成分の一部なので、触媒は排気ガス成分貯蔵部を有する。図示の例では、三元触媒26は、第1のゾーン26.1および第2のゾーン26.2を有する。両方のゾーンには排気ガス28が貫流する。前方の第1のゾーン26.1は、三元触媒コンバータ26の前方範囲にわたって流れ方向に延在する。後方の第2のゾーン26.2は、三元触媒コンバータ26の後方範囲にわたって第1のゾーン26.1の下流側に延在する。もちろん、前方ゾーン26.1の前方および後方ゾーン26.2の後方、ならびに2つのゾーンの間にさらなるゾーンがあってもよく、このゾーンのためにも同様に必要に応じてそれぞれの充填レベルが計算モデルによってモデル化される。
【0038】
三元触媒26の上流側には、排気ガス28にさらされる前方の排気プローブ32が三元触媒26の直前に配置されている。三元触媒コンバータ26の下流側には、同様に排気ガス28にさらされる後方の排気ガスプローブ34が三元触媒コンバータ26の直後に配置されている。前方の排気ガスプローブ32は、好ましくは、広範囲の空気周波数にわたって空気比λの測定を可能にする広帯域ラムダプローブである。後方の排気ガスプローブ34は、好ましくは、いわゆる「ジャンプラムダプローブ」である。この排気プローブ34の信号は急激に変化するので、空気比λ=1を特に正確に測定することができる。Bosch,Automotive Handbook, 23rd Edition,page524を参照されたい。
【0039】
図示の実施形態では、排気ガス28にさらされる温度センサ36が、排気ガス28と熱的に接触した状態で三元触媒26に配置されており、三元触媒26の温度を検出する。
【0040】
制御器16は、空気質量計18、回転角センサ25、前方の排気プローブ32、後方の排気プローブ34および温度センサ36の信号を処理し、これらの信号に基づいて絞り弁の角度位置を調整し、点火装置24による点火をトリガし、噴射弁22によって燃料を噴射するための制御信号を生成する。代替的また付加的に、制御器16は、図示のアクチュエータを制御する、異なる、もしくは他のセンサの信号、または、例えば、アクセルペダル位置を検出する運転者要求送信機40の信号などの異なる、もしくは他のアクチュエータを制御するための信号も処理する。燃料供給を遮断するシフト操作は、例えばアクセルペダルを解放することによってトリガされる。これらの機能および以下でさらに説明する機能は、内燃機関10の運転時に制御器16で実行されエンジン制御プログラム16.1によって実施される。
【0041】
本出願では、経路モデル100、触媒モデル102、フィードフォワード制御136の形式の逆の触媒モデル(図3参照)、および出力ラムダモデル106を参照する。モデルはそれぞれ制御器16で実施もしくは計算されるアルゴリズム、特に方程式であり、これらのアルゴリズム、特に方程式は、計算モデルによって模倣された実際の物体にも影響を及ぼす入力変数を、アルゴリズムによって計算された出力変数が実際の物体の出力変数にできるだけ正確に対応するように出力変数に関連付ける。
【0042】
図2は、経路モデル100の機能ブロック図を示す。経路モデル100は、触媒モデル102および出力ラムダモデル106からなる。触媒モデル102は、入力エミッションモデル108と、充填レベルおよび出力エミッションモデル110とを含む。さらに、触媒モデル102は、触媒26の平均的な充填レベル
【数1】
を計算するためのアルゴリズム112を有する。
【0043】
入力エミッションモデル108は、入力変数として、三元触媒26の前方に配置された排気ガスプローブ32の信号λin,measを、次の充填レベルモデル110に必要な入力変数ω in,modに変換するように構成されている。例えば、入力エミッションモデル108を用いて、三元触媒26の前方でラムダをO、CO、HおよびHCの濃度に換算することが有利である。
【0044】
入力エミッションモデル108によって計算された変数ω in,modおよび必要に応じて付加的な入力変数(例えば排気ガス温度または触媒温度、排気ガス質量流量、および三元触媒26の現在の最大酸素貯蔵能力)を用いて、充填レベルおよび出力エミッションモデル110において三元触媒26の充填レベル
【数2】
および個々の排気ガス成分の濃度λout,modが三元触媒26の出力部でモデル化さ
れる。
【0045】
充填および排出プロセスをより現実的に再現できるように、三元触媒コンバータ26は、好ましくは、アルゴリズムによって、排気ガス28の流れ方向に互いに前後に配置された複数のゾーンまたは部分容積26.1,26.2に概念的に分割され、反応速度論を用いて、これらのゾーン26.1,26.2のそれぞれについて個々の排気ガス成分の濃度を決定する。これらの濃度をそれぞれ個々のゾーン26.1,26.2の充填レベルに換算し、好ましくは、現在の最大酸素貯蔵能力に規格化された酸素充填レベルに換算することができる。
【0046】
個々の、または全てのゾーン26.1,26.2の充填レベルは、三元触媒26の状態を反映する全充填レベルに対して適切な重み付けによって述べることができる。例えば、最も単純な場合には、全てのゾーン26.1,26.2の充填レベルは全て等しく重み付けし、したがって、平均的な充填レベルを決定することができる。三元触媒26の後方の現在の排気ガス組成のためには、三元触媒26の出力部における比較的小さいゾーン26.2の充填レベルが重要であるが、三元触媒26の出力部におけるこの小さいゾーン26.2の充填レベルの変化のためには、その前方のゾーン26.1の充填レベルおよび充填レベルの変化が重要であることを、適切な重み付けによって考慮することもできる。簡単にするために、以下では平均的な酸素充填レベルを仮定する。
【0047】
出力ラムダモデル106のアルゴリズムは、触媒モデル102によって触媒26の出力部における個々の排気ガス成分の濃度ω out,modを計算し、この濃度を、経路モデル100の適合のために、触媒26の後方に配置された排気ガスプローブ34の信号λout,measと比較することができる信号λout,modに変換する。好ましくは、ラムダは三元触媒26の後方でモデル化される。出力ラムダモデル106は、目標酸素充填レベルに基づいたフィードフォワード制御のために必要不可欠ではない。
【0048】
したがって、経路モデル100は、一方では、触媒26が確実に触媒ウィンドウ内に配置される目標充填レベルに調整されるように触媒26の少なくとも1つの平均的な充填レベル
【数3】
をモデル化する役割を果たす。他方では、経路モデル100は、触媒26の後方に配置された排気ガスプローブ34のモデル化された信号λout,modを供給する。後方の排気ガスプローブ34のこのモデル化された信号λout,modが、経路モデル100の適合のためにどのように有利に使用されるかを、以下に詳細に説明する。この適合は、システムモデルの入力変数、特に触媒の前方のラムダプローブの信号に不随する不確実性を補償するために行われる。同様に、フィードフォワード制御および場合によっては制御器パラメータが適合される。
【0049】
図3は、方法の機能ブロック図を、機能ブロックに作用するか、または機能ブロックによって影響される装置要素と共に示す。
【0050】
詳細には、図3は、出力ラムダモデル106によってモデル化された後方の排気ガスプローブ34の信号λout,modが、後方の排気ガスプローブ34の実際の出力信号λout,measとどのように比較されるかを示す。このために、2つの信号λout,modおよびλout,measは適合ブロック114に供給される。適合ブロック114は、2つの信号λout,modおよびλout,measを互いに比較する。例えば、三元触媒26の後方に配置されたジャンプ型ラムダプローブは排気ガスプローブ34として、いつ三元触媒26が酸素で完全に満たされたのか、または酸素が完全に空になったのかを明確に示す。これは、リーン相またはリッチ相の後に、モデル化された酸素充填レベルと実際の酸素充填レベルとを一致させるか、もしくはモデル化された出力ラムダλout,modと、三元触媒26の後方で測定されたラムダλout,measとを一致させ、異なっている場合には経路モデル100を適合させるために利用することができる。適合は、例えば、適合ブロック114が、経路モデル100のアルゴリズムのパラメータを、点線で示した適合経路116にわたって、三元触媒26から流出する排気ガスについてモデル化されたラムダ値λout,modが、三元触媒26で測定されたラムダ値λout,measに対応するまで、連続的に変更することによって行われる。
【0051】
これにより、経路モデル100に取り込まれる測定変数またはモデル変数の不正確さが補償される。モデル化された値λout,modが測定されたラムダ値λout,measに対応するという状況から、経路モデル100もしくは第1の触媒モデル102によってモデル化された充填レベル
【数4】
が、車載手段によっては測定できない三元触媒26の充填状態に対応すると推論することができる。さらに、第1の触媒モデル102のアルゴリズムから数学的変換によって生じる第1の触媒モデル102とは逆の第2の触媒モデルを表すフィードフォワード制御136も、モデル化された経路の動作を正確に記述すると推論することができる。フィードフォワード制御136は第2の経路モデル100′を有し、第2の経路モデル100′の方程式は第1の経路モデル100の方程式と同一であるが、しかしながら他の入力変数が供給される。フィードフォワード制御136により、経路モデル100は数値的に反転される。その理由は、触媒が、経時変化する経路パラメータを有する複雑な非線形の経路であり、これらの経路パラメータは、原則として、非線形の微分方程式によってしか表すことができないからである。このことは、一般に、反転された経路モデルのための方程式を分析的に解くことができないか、または多大な労力をかけてしか解くことができないことにつながる。これらの問題は、数値反転として実現されるフィードフォワード制御136によって回避される。
【0052】
フィードフォワード制御136の出力変数は、基本ラムダ目標値BLSWである。フィードフォワード制御136には、随意のフィルタリング120によってフィルタ処理された充填レベル目標値
【数5】
が入力変数として供給される。フィルタリング120は、制御経路が全体として追従することができるフィードフォワード制御136の入力変数の変更のみを許可する目的で行われる。制御器16のメモリ118から、まだフィルタ処理されていない目標値
【数6】
が読み出される。このために、メモリ118は、好ましくは、内燃機関10の現在の運転パラメータによってアドレス指定される。運転パラメータは、例えば、回転速度センサ25によって検出された回転速度、および空気質量計18によって検出された内燃機関10の負荷であるが、必ずしもこれらでなくてもよい。
【0053】
フィルタ処理された充填レベル目標値
【数7】
は、フィードフォワード制御136によって基本ラムダ目標値BLSWとして処理される。この処理と並行して、リンク122では、充填レベル制御ずれFSRAが、経路モデル100もしくは第1の触媒モデル102によってモデル化された充填レベル
【数8】
と、フィルタ処理された充填レベル目標値
【数9】
とのずれとして形成される。この充填レベル制御ずれFSRAは、ラムダ目標値‐補正値LSKWを形成する充填レベル制御アルゴリズム124に供給される。このラムダ目標値‐補正値LSKWは、リンク126において、フィードフォワード制御によって計算された基本ラムダ目標値BLSWに加算される。
【0054】
このように求められた合計は、従来のラムダ制御の目標値λin,setとして用いられる。このラムダ目標値λin,setから、第1の排気ガスプローブ32によって供給されたラムダ実際値λin,meas がリンク128において差し引かれる。このようにして形成された制御ずれRAは、従来の制御アルゴリズム130によって操作量SGに変換され、この操作量SGは、リンク132において、例えば、内燃機関10の運転パラメータの関数としてあらかじめ決定されている噴射パルス幅tiajの基本値BWに乗法により関連付けられる。基本値BWは、制御器16のメモリ134に記憶される。運転パラメータは、この場合にも好ましくは内燃機関10の負荷および回転速度であるが、必ずしもこれらでなくてもよい。積から求められる噴射パルス幅tiajにより、燃料が噴射弁22を介して内燃機関10の燃焼室20内に噴射される。
【0055】
第1の制御回路で行われる従来のラムダ制御は、このようにして第2の制御回路で行われる触媒26の酸素充填レベルの制御に重畳される。要素22,32,128,130,132は、ラムダ制御が行われる第1の制御回路を形成し、ラムダ実測値として第1の排気ガスプローブ32の信号λin,measが処理される。第1の制御回路のラムダ目標値λin,setは、要素22,32,100,122,124,126,128,132を有する第2の制御回路で形成される。
【0056】
この場合、経路モデル100、もしくは第1の触媒モデル102を用いてモデル化された平均的な酸素の充填レベル
【数10】
は、例えば、リーンおよびリッチによる破損の可能性を最小限に抑え、これにより、最小限の排出量をもたらす充填レベル目標値
【数11】
に調整される。この場合、基本ラムダ目標値BLSWは、フィードフォワード制御136によって形成されるので、充填レベル制御の制御ずれは、モデル化された平均的な充填レベル
【数12】
が、あらかじめフィルタ処理された目標充填レベル
【数13】
と同一である場合にはゼロに等しくなる。充填レベル制御アルゴリズム124は、このような場合以外にしか介入しない。充填レベル制御のフィードフォワード制御136として作用する基本ラムダ目標値の形成は、第1の触媒モデル102の数値的反転として実現されているので、このフィードフォワード制御136は、第1の触媒モデル102の適合と同様に、三元触媒26の後方に配置された第2の排気ガスプローブ34の信号λin,measに基づいて適合される。これは、図3において、反転された経路モデル136に通じる適合経路116の分岐によって示されている。
【0057】
フィードフォワード制御136をこのように経路モデル100の反転として実現することにより、経路モデルを用いてモデル化された触媒の実測充填レベルが、フィルタ処理された充填レベル目標値
【数14】
またはフィルタ処理されていない充填レベル目標値
【数15】
とは異なる場合にのみ、充填レベル制御アルゴリズム124が介入すればよいという利点が得られる。経路モデル100は、触媒の前方の入力ラムダを触媒の平均的な酸素充填レベルに換算し、反転された経路モデルとして実現されるフィードフォワード制御136は、平均的な目標酸素充填レベルを触媒の前方の対応する目標ラムダに換算する。
【0058】
図3の対象は、以下の考察に基づいている。ラムダ実際値検出ブロック32′では、最初に仮想値λin,fictiousが、フィードフォワード制御136の第2のシステムモデル100′のための入力変数として設定される。最初の仮想値λin,fictiousは、内燃機関10の燃焼運転(すなわち、燃料計量および燃焼器充填物の燃焼を伴う通常運転)のための最初の基本ラムダ目標値としての役割を果たし、この方法を後に実施する場合に、更新された基本ラムダ目標値BLSWとして出力される。第2の経路モデル100′によって、この入力変数から、触媒26の平均的な酸素充填レベルのための仮想値
【数16】
が得られる。リンク138において、平均的な仮想充填レベル
【数17】
と、随意のフィルタリング120によってフィルタ処理された充填レベル目標値
【数18】
またはフィルタ処理されていない充填レベル目標値
【数19】
との差が計算される。両方の値
【数20】
および
【数21】
(または
【数22】
)が等しい場合には、差はゼロに等しい。このことは、所定の仮想ラムダ値λin,fictiousが、目標酸素充填レベルに到達するためにフィードフォワード制御する必要があるラムダ目標値BLSWに正確に対応することを意味する。閾値ブロック140では、平均的な仮想充填レベル
【数23】
と、随意のフィルタリング120によってフィルタ処理された充填レベル目標値
【数24】
またはフィルタ処理されていない充填レベル目標値
【数25】
との差が所定の閾値と比較される。差の大きさが十分に小さく、閾値の大きさを選択することにより調整可能である場合には、閾値ブロック140は、この状況を表す信号をラムダ実測値検出ブロック32′に引き渡す。したがって、この信号に応答して、ラムダ実測値検出ブロック32′は、適切に検出された出力信号λin,fictiousを保持し、この信号を基本ラムダ目標値BLSWとしてリンク126に引き渡す。
【0059】
これに対して、平均的な仮想充填レベル
【数26】
と、随意のフィルタリング120によってフィルタ処理された充填レベル目標値
【数27】
またはフィルタ処理されていない充填レベル目標値
【数28】
との差から計算された値が閾値よりも大きい場合には、このことは、所定の仮想ラムダ値λin,fictiousが、目標酸素充填レベルに到達するために、フィードフォワード制御する必要がある理想的な1つのラムダ目標値BLSWにまだ対応していないことを意味する。閾値値ブロック140では、平均的な仮想充填レベル
【数29】
と、随意のフィルタリング120によってフィルタ処理された充填レベル目標値
【数30】
またはフィルタ処理されていない充填レベル目標値
【数31】
との差が、所定の閾値を超える。この場合、閾値ブロック140は、この状況を表す信号をラムダ実測値検出ブロック32′に引き渡す。この信号に応答して、ラムダ実測値検出ブロック32′は、適切ではないと識別された出力信号λin,fictiousを繰り返し変化させ始め、繰り返し変化する出力信号BSLWを、特に、経路モデル100′に引き渡す。第1の経路モデル100に関連してこの第2の経路モデル100′は、次いで同一のパラメータおよび最初は同一の状態変数、例えば第1の経路モデル100によって、可変の入力ラムダλin,fictiousもしくはBSLWを用いて、第2の経路モデル100′によって計算された充填レベル
【数32】
と、フィルタ処理された充填レベル目標値
【数33】
またはフィルタ処理されていない充填レベル目標値
【数34】
との差が、フィードフォワード制御に必要な精度を満たすのに十分に小さくなるまで繰り返される。要求される精度は、ブロック140の閾値を選択することによって設定可能である。このようにして得られた入力ラムダλin,fictiousの値は、次いで第1の制御回路のための基本ラムダ目標値BLSWとして使用される。差を求めることは、平均的な仮想充填レベル
【数35】
と、随意のフィルタリング120によってフィルタ処理された充填レベル目標値
【数36】
またはフィルタ処理されていない充填レベル目標値
【数37】
との比較を行うことを意味する。比較は、例えば商を求めることに基づいて行うことができる。
【0060】
この手順の利点は、多大な計算労力をかけてしか解くことができないか、もしくは第1の経路モデル100を解析的に反転した解くことができない方程式によってではなく、順方向の経路モデル100もしくは100′のための方程式をもう一度解きさえすればよいことである。
【0061】
制御器16における計算労力を最小限にするために、好ましくは、反復を行う範囲を決定する入力ラムダλin,fictiousのための反復限界が決定される。好ましくは、これらの反復限界は、現在の運転条件に応じて決定される。例えば、予想される目標ラムダBLSWの周辺でできるだけ小さい間隔のみをおいて反復を実施することが有利である。さらに、反復限界を決定する場合に、充填レベル制御部124の介入と、目標ラムダBLSWに対する他の機能の介入とを考慮に入れることが有利である。
【0062】
この解かれるべき方程式は、二分法またはレギュラ・ファルシ法などの包含法によって、この間隔内で反復的に解かれる。レギュラ・ファルシ法などの包含法は一般に知られている。これらの包含法は、反復的な近似値を提供するだけでなく、これらの近似値を両側から制限することによっても優れている。これにより、適切な基本ラムダ目標値BLSWを決定するための計算労力が著しく制限される。
【0063】
この説明は、燃焼室内で燃料‐空気混合物を燃焼する内燃機関の通常運転に適用される。惰行運転時には、燃焼室への燃料供給は原則的に遮断される。図3では、このことが、運転者要求送信機40とスイッチ42との接続によって表されている。内燃機関が自動車の駆動輪によって駆動された場合、このことを制御器によって、例えば運転者要求送信機40の信号を評価することによって検出することができ、この場合、スイッチ42は開放され、これにより、燃料噴射弁22は開放制御されない。
【0064】
基本ラムダ目標値BLSWは、内燃機関10の燃焼室への空気および/または燃料供給に関連する内燃機関10のセンサの信号および制御変数に応じて、燃焼室20への燃料計量が行われない内燃機関10の惰行運転フェーズの開始時に形成される。図3には、このことがブロック44およびスイッチ46,50によって表す。ブロック44は、内燃機関の燃焼室への空気および/または燃料供給に関連る内燃機関10のセンサの信号と制御変数とに応じて形成される基本ラムダ目標値BLSWを出力する。スイッチ46は、惰行運転への移行時にスイッチ42と平行して操作され、例えば、運転者要求送信機40によってトリガされる。スイッチ46の操作は、フィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力部がブロック44の出力部に置かれる(すなわち、ブロック44の出力部に接続される)ように行われる。
【0065】
この場合、基本ラムダ目標値BLSWは、もはや目標値検出ブロック32′から出力されるのではなく、ブロック44から出力され、この出力は、内燃機関の燃焼室への空気および/または燃料供給に関連する内燃機関のセンサの信号および制御変数に応じて行われる。このようなセンサの例は、空気質量計18および回転角センサ25である。
【0066】
ブロック48では、燃料遮断を開始してから、内燃機関10の燃焼室20から第1の排気ガスプローブ32へ到達するために排気ガス28が必要とするガス移動時間が惰行運転時に決定される。ガス移動時間は、例えば、制御器16で計算されるガス運搬モデルを計算することによって求められる。このようなガス運搬モデルのための入力変数は、例えば、空気質量計18および回転角センサ25の信号である。
【0067】
ガス移動時間が経過すると、ブロック48は、スイッチ50の操作をトリガして、ブロック44によって行われる基本ラムダ目標値BLSWの供給を中止し、第1の排気ガスプローブ32からの信号に基づく基本ラムダ目標値の供給によって代替する。この場合、フィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力部は、ブロック32の出力部に置かれる(すなわち、ブロック44の出力部に接続される)。
【0068】
例えば運転者要求送信機40の操作によって惰行運転が終了した場合には、特にスイッチ46が再び操作され、基本ラムダ目標値BSLWが目標値検出ブロック32′によって再び出力される。
【0069】
フィードフォワード制御の経路モデル100′の適合は、図3の対象では、ブロック114から第2の経路モデル100′に至る経路116を介して行われる。排気ガスシステム26、排気ガスプローブ32,34、空気質量計18、回転角センサ25、および噴射弁22を除いて、図4に示す全ての要素は、本発明による制御器16の構成要素である。この場合、メモリ118,134を除いて、図4の他の全ての要素は、エンジン制御プログラム16.1の一部であり、制御器16に記憶されており、制御器16で実施される。
【0070】
図4は、従来技術において、および従来技術と比較して、本発明では燃料供給の一時的な中断に関連して生じるバイナリ状態の時間波形を示す。図4aのレベル1は、燃料噴射弁22を介して内燃機関に燃料が供給される状態を示している。これは、時間t<t0およびt>t1の場合である。レベル0は、遮断された燃料供給を表す。燃料供給は、時間t0とt1との間で遮断されている。
【0071】
図4bのレベル1は、排気ガスプローブ32が燃料供給を信号で示している状態を表す。これは、時間t<t2およびt>t3の場合である。レベル0は、第1の排気ガスプローブ32が遮断された燃料供給を信号で示している状態を表す。これは、時間t2<t<t3の場合である。図4bは、ある程度、図4aの位相をシフトした図であり、時間位相シフトt2-t0、もしくはt3-t1は、燃焼室と第1の排気ガスプローブ32との間の排気ガスのガス移動時間である。
【0072】
図4dのレベル1は、フィードフォワード制御136によって従来技術のブロック100′,138,140,32′のループを繰り返し通過することによって、基本ラムダ目標値BLSWが上述のように設定される状態を表す。これは、時間t<t0およびt>t1の場合である。設定は、燃料供給が中断される時点t0で停止する。なぜならば、燃料供給が中断されたことにより、この時点からはもはや目標値設定によって触媒26の充填レベルに能動的に影響を及ぼすことができず、その代わりに、充填レベルの変動を監視するしかないからである。
【0073】
監視の範囲で、すなわち、t0<t<t1の場合、ブロック100′,138,140,32′からなるループで反復的に計算された基本ラムダ目標値BLSWのための第1の代替値として、フィードフォワード制御136の経路モデル100′で行われる酸素充填レベルの計算のために、三元触媒26の前方に配置された排気ガスプローブ32が使用される。図4bが示すように、この信号は、時間間隔t0<t<t1で位相シフト/ガス移動時間に基づいて値1をとる。時間間隔t2<t<t3において、第1の排気ガスプローブ32は燃料遮断を示すが、このことはフィードフォワード制御136によって記録されない。なぜならば、この燃料遮断は、時間間隔t2<t<t3において、第1の排気ガスプローブ32の信号の代わりに目標値検出ブロック32の信号を再び処理するからである。したがってフィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力信号の時間波形として、従来技術では連続的なレベル1が生じる。結果として、触媒26に取り込まれる酸素の増大に伴う短時間の燃料遮断は、フィードフォワード制御の経路モデル100′によって処理されない。不都合な結果として、フィードフォワード制御136の経路モデル100′によってモデル化される充填レベルは、実際よりも小さい。触媒への酸素の取込みを表す図4bの斜線範囲は、従来技術では考慮されない(図4c参照)。
【0074】
本発明は、燃料供給を遮断する場合すぐに、フィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力部をブロック44の出力部に置くことによって、この不都合な影響を回避する。ブロック44は燃料遮断を遅滞なく示す。したがって本発明では、図4dに示す波形がフィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力信号として生じる。この場合、酸素の取込みはフィードフォワード制御136の経路モデル100′を計算する場合に考慮される。
【0075】
内燃機関への燃料供給の中断がガス移動時間よりも短い場合には、燃料供給が再開される場合に、ガス移動時間内に、フィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力部がブロック44の出力部から再び目標値検出ブロック32′の出力部に置かれる。
【0076】
内燃機関への燃料供給の中断がガス移動時間よりも長い場合には、最初はフィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力部がブロック44の出力に置かれる。その後、ガス移動時間が経過し、燃料遮断がまだ続く場合には、スイッチ50は、ガス移動時間を計算するブロック48によって操作され、フィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力部は、ガス移動時間の終了時にブロック44から分離され、第1の排気ガスプローブ32に接続される。燃料供給が再開された場合には、フィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力部は、再び目標値検出ブロック32′に接続される。
【0077】
図5は、図3を参照して説明したフィードフォワード制御を実施する方法の実施形態としてフィードフォワード制御が惰行運転以外においてどのように行われるのかついてフロー図を示す。このフロー図は、好ましくは、図1のエンジン制御プログラム16のサブルーチンとして実施される。
【0078】
ステップ142では、エンジン制御プログラム16.1の上位の部分からサブルーチンを呼び出す。ステップ144では、仮想ラムダ値λin,fictiousの初期値が設定される。ステップ146では、この初期に基づいて、経路モデル100′の方程式(経路モデル100の方程式と同一である)によって、触媒の平均的な酸素充填レベルのための仮想ラムダ値
【数38】
を計算する。ステップ148では、平均的な仮想充填レベル
【数39】
と、フィルタ処理された充填レベル目標値
【数40】
またはフィルタ処理されていない充填レベル目標値
【数41】
との差が計算され、あらかじめ設定可能な閾値と比較される。この差が閾値よりも大きい場合には、ステップ150で、仮想ラムダ値λin,fictiousの反復的な変更およびステップ146の前の分岐が行われる。必要に応じて、ステップ146,148,150のループを繰り返し通過し、ステップ150でループを通過する度に仮想ラムダ値λin,fictiousの変更が行われる。ステップ150で、平均的な仮想充填レベル
【数42】
とフィルタ処理された充填レベル目標値
【数43】
との差が閾値未満であることが明らかになった場合には、サブルーチンなしで済まし、もはや仮想ラムダ値λin,fictiousのさらなる変更は行われず、サブルーチンはステップ152に分岐し、これまでに決定された仮想ラムダ値λin,fictiousが、基本ラムダ目標値BLSWとして使用される。
【0079】
図6は、図4を参照して説明したフィードフォワード制御を実施する方法の実施形態として、フィードフォワード制御が惰行運転中にどのように行われるかを示すフロー図を示す。このフロー図は、好ましくは、図1のエンジン制御プログラム16のサブルーチンとして実施される。
【0080】
ステップ162では、フィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力部は、目標値検出ブロック32′の出力部に置かれる。これは、内燃機関を制御するためのメインプログラムなしで済ますことに相当する。次に、惰行運転が開始された場合には、プログラムはステップ164に分岐し、フィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力部がブロック44の出力部に置かれる。
【0081】
ステップ166では、内燃機関がまだ惰性運転状態にあるかどうかをチェックする。そうでない場合には、プログラムはステップ162に分岐して戻り、フィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力部は、目標値検出ブロック32′の出力部に置かれる。これに対して、内燃機関がまだ惰行運転状態にある場合には、プログラムはステップ168に分岐し、燃料を遮断した惰行運転に移行してから経過した時間がガス移動時間よりも長いかどうかがチェックされる。そうでない場合には、プログラムはステップ164に進み、フィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力部はブロック44の出力部に保持される。これに対して、燃料を遮断した惰行運転に移行してから経過した時間がガス移動時間よりも長い場合には、ステップ170で、経路モデル100′の入力部が排気ガスプローブ32の出力部に置かれる。次のステップ172では、内燃機関がまだ惰行運転状態にあるかどうかがステップ166と同様にチェックされる。そうである場合には、プログラムはステップ170に戻り、フィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力部が第1の排気ガスプローブ32の出力部に置かれる。これに対して、内燃機関がもはや惰行運転状態にない場合には、プログラムはステップ162に分岐し、フィードフォワード制御136の経路モデル100′の入力は、再び、目標値検出設ブロック32′の出力部に置かれる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6