(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】粘着フィルムおよび粘着フィルムの切断方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/40 20180101AFI20231228BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20231228BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20231228BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231228BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231228BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231228BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20231228BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20231228BHJP
B26D 3/08 20060101ALI20231228BHJP
B26D 5/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C09J7/40
C09J7/29
C09J7/22
C09J201/00
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B27/40
B32B7/022
B26D3/08 Z
B26D5/00 F
(21)【出願番号】P 2019186065
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 真人
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/221405(WO,A1)
【文献】特開2003-305688(JP,A)
【文献】特開2007-100029(JP,A)
【文献】特開2019-070072(JP,A)
【文献】特開2018-159014(JP,A)
【文献】特開2018-111754(JP,A)
【文献】ArgoGuard 49510,米国,Schweitzer-MauduitInternational, Inc.,2018年01月30日,[2023年3月16日検索],インターネット,<URL,https://www.swmintl.com/media/2193/49510-argoguard-swm-aliphatic-polycaprolactone-1-30-18.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
B26D 5/00-5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、粘着剤層、および剥離ライナーを積層方向にこの順序で有
し、画面を保護するために貼付される粘着フィルムであって、
前記基材層は、ポリウレタンによって形成されており、
前記剥離ライナーは、JIS K7127:1999に準拠して測定される引張弾性率が、前記基材層よりも大きく、且つ75μm以上の厚みを有し、
前記剥離ライナーの引張弾性率は、3GPa以上5GPa以下であって、
前記基材層、および前記粘着剤層には、前記積層方向から視たときに所定の形状を備えるとともに前記積層方向に形成される切り込み線が設けられ
、
前記粘着剤層は、再剥離性を有する、粘着フィルム。
【請求項2】
前記基材層に設けられた表面保護層を有し、
前記表面保護層、前記基材層、前記粘着剤層、および前記剥離ライナーが、この順序で積層された、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の粘着フィルムに対し、相対的に移動する刃の先端が、前記剥離ライナー以外の他の層を貫通し、前記剥離ライナーに達した、または前記剥離ライナーに部分的に入った状態で、前記刃と前記粘着フィルムとを相対的に動かし、前記粘着フィルムを切断する、粘着フィルムの切断方法。
【請求項4】
前記粘着フィルムを搬送して前記刃と前記粘着フィルムとを相対的に動かす、請求項3に記載の粘着フィルムの切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムおよび粘着フィルムの切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被着体に貼付されてその表面を保護する粘着フィルムがあり、例えば特許文献1では、スマートフォンやタブレットPC等に貼付されてその画面を保護する粘着フィルムが開示されている。
【0003】
粘着フィルムは、一般的に、基材層、粘着剤層、および剥離ライナーがこの順序で積層された構成を有するが、剥離ライナー以外の他の層を厚み方向に切断することによって、粘着フィルムから剥離ライナーを剥がし易くなる。
【0004】
剥離ライナーが剥がされた粘着フィルムは、被着体に合わせて貼付される。その際、被着体の形状に追従し易いよう、粘着フィルムは柔軟であることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粘着フィルムにおいて、基材層は被着体への追従性の観点から高い柔軟性を有することが好ましいものの、それと同様、剥離ライナーまでも高い柔軟性を有していると、剥離ライナー以外の他の層を厚み方向に刃を入れて切断しようとした際、それらを支持する剥離ライナーが変形し易くなり、他の層を切断し難くなってしまう。
【0007】
一方で、刃を深く入れて確実に切断しようとすると、刃が深く入り過ぎてしまい、剥離ライナーまでも切り抜かれてしまう虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、剥離ライナー以外の他の層を切断し易く、かつ剥離ライナーが切り抜かれ難い粘着フィルムおよび粘着フィルム切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の粘着フィルムは、基材層、粘着剤層、および剥離ライナーを積層方向にこの順序で有し、画面を保護するために貼付される。前記基材層は、ポリウレタンによって形成されており、前記剥離ライナーは、JIS K7127:1999に準拠して測定される引張弾性率が、前記基材層よりも大きく、且つ75μm以上の厚みを有する。前記剥離ライナーの引張弾性率は、3GPa以上5GPa以下であって、前記基材層、および前記粘着剤層には、前記積層方向から視たときに所定の形状を備えるとともに前記積層方向に形成される切り込み線が設けられる。前記粘着剤層は、再剥離性を有する。
【0010】
上記目的を達成するための本発明の粘着フィルムの切断方法は、上記粘着フィルムに対し、相対的に移動する刃の先端が、前記剥離ライナー以外の他の層を貫通し、前記剥離ライナーに達した、または前記剥離ライナーに部分的に入った状態で、前記刃と前記粘着フィルムとを相対的に動かし、前記粘着フィルムを切断する。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を有する発明によれば、剥離ライナー以外の他の層を厚み方向に刃を入れて切断する際、剥離ライナーが、柔軟な基材層のようには変形せず、他の層をしっかり支持するため、それらを切断し易い。
【0012】
また、剥離ライナーの厚みが厚く、刃が剥離ライナーを容易に貫通しないため、他の層とともに剥離ライナーが切り抜かれ難い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の粘着フィルムを示す側面図である。
【
図2】実施形態の粘着フィルム切断装置の概略図である。
【
図3】実施形態の粘着フィルムの切断の一形態を示す側面図である。
【
図4】実施形態の粘着フィルムの切断の他の形態を示す側面図である。
【
図5】切断した粘着フィルムからの剥離ライナーの剥離を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0015】
図1に示すように、実施形態の粘着フィルム10は、表面保護層11、基材層12、粘着剤層13、および剥離ライナー14を積層方向にこの順序で有する。
【0016】
粘着フィルム10は、剥離ライナー14を剥がし、粘着剤層13を介して被着体に貼付され、その表面を例えば傷や汚れ等から保護する。粘着フィルム10が貼付される被着体は、例えば、スマートフォンやタブレットPC等であり、粘着フィルム10は、それらに貼付されて画面を保護する。
【0017】
被着体への粘着フィルム10の貼付は、例えば、粘着剤層13から剥離ライナー14を剥がした後、界面活性剤水溶液等の施工液を、粘着剤層13の面および被着体の少なくとも一方に噴霧して貼付する、いわゆる水貼りであるが、これに限定されず、剥離ライナー14を剥がしてそのまま粘着剤層13を被着体に付着させる、いわゆるドライ貼りであってもよい。
【0018】
粘着フィルム10は、剥離ライナー14を剥がした状態で、透明性を有する。ここで、どの程度の透明性を有するかは特に限定されず、粘着フィルム10を貼付した状態でスマートフォンやタブレットPC等の画面を視認可能であればよい。
【0019】
表面保護層11は、スマートフォンやタブレットPC等の画面操作の際、使用者の指の滑りを円滑にする役割を果たす。また、それに限定されず、表面保護層11は、例えば耐傷性や防汚性等の機能を有してもよい。これらの観点から、表面保護層11の形成材料は、好ましくはフッ素樹脂であるが、これに限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂であってもよい。
【0020】
基材層12は、被着体の形状に追従する柔軟性を有する。基材層12の形成材料は、ポリウレタンである。基材層12をポリウレタンによって形成すれば、曲面を有する画面形状にも粘着フィルム10を良好に追従させて貼付でき、好適である。基材層12の厚みは、例えば50μm以上200μm以下であるが、これに限定されない。
【0021】
粘着剤層13は、粘着フィルム10を被着体に貼付できれば、特に限定されないが、被着体への貼付後においても剥離可能な再剥離性を有することが好ましい。粘着剤層13を形成する粘着剤は、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤等が挙げられる。それらの粘着剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
剥離ライナー14は、剛性に優れ、柔軟な基材層12よりも大きな引張弾性率を有する。このような性質を有すれば、剥離ライナー14の形成材料は、特に限定されないが、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0023】
引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠して測定される。同規格に規定されている試験片タイプ2を用いて、試験速度200mm/分で測定される剥離ライナー14の引張弾性率は、例えば、3GPa以上5GPa以下である。
【0024】
また、剥離ライナー14は、一般的な剥離ライナーに比べ、大きな厚みを有する。具体的に、一般的な剥離ライナーの厚みが50μm程度であるところ、本実施形態の剥離ライナー14は、75μm以上の厚みを有する。剥離ライナー14の厚みの上限値は、特に限定されないが、例えば、150μmである。
【0025】
被着体への粘着フィルム10の貼付前、粘着フィルム10は、被着体であるスマートフォンやタブレットPC等の画面形状に合わせて切断される。このとき、粘着フィルム10を所定の形状に切断するカッティングプロッター100(粘着フィルム切断装置)が用いられる。
【0026】
図2に示すように、本実施形態のカッティングプロッター100は、粘着フィルム10を搬送する駆動ローラ110(搬送部)と、刃121の備えられたキャリッジ120と、カッティングプロッター100の動作を制御する制御部130とを有する。また、カッティングプロッター100は、例えば操作パネルや表示パネル等を含む入出力装置を有してもよい。
【0027】
駆動ローラ110は、粘着フィルム10の面に接し、回転することによって粘着フィルム10を面に沿う一方向(X方向)に搬送する。駆動ローラ110とともに粘着フィルム10を厚み方向から挟むように、駆動ローラ110の下方にピンチローラが設けられてもよい。この場合、駆動ローラ110およびピンチローラは、粘着フィルム10を挟んだ状態で回転し、粘着フィルム10を搬送する。
【0028】
駆動ローラ110は、駆動源としてモータ(不図示)と接続している。駆動ローラ110は、正逆両方向に回転可能である。制御部130は、駆動ローラ110の回転速度および回転方向を制御することによって、X方向における粘着フィルム10の搬送速度および搬送方向を制御する。
【0029】
キャリッジ120は、刃121を、粘着フィルム10の面に沿うY方向に移動させる。Y方向は、X方向と直交する。キャリッジ120は、例えば、Y方向に延びるボールネジと接続し、これがモータによって回転することによって、刃121とともにY方向に移動するが、刃121をY方向にスライドさせる機構が備えられていれば、その形態は特に限定されない。Y方向におけるキャリッジ120および刃121の移動速度および移動方向は、制御部130によって制御される。
【0030】
キャリッジ120は、粘着フィルム10の厚み方向であるZ方向において、刃121を昇降可能に保持している。Z方向は、X方向およびY方向のそれぞれと互いに直交する。キャリッジ120は、例えばムービングコイルあるいはソレノイド等のアクチュエータを備えており、これによってZ方向における刃121の昇降を可能にする。Z方向における刃121の位置は、制御部130によって制御される。
【0031】
制御部130は、主たる構成として、CPU(Central Processing Unit)、および記憶部を有する。記憶部は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Randam Access Memory)、およびハードディスクを含む。
【0032】
また、制御部130は、例えば、操作パネルや表示パネル等の入出力装置と接続するための入出力インターフェイス(I/F)や、データサーバやパーソナルコンピュータ等の外部装置と通信するための通信用インターフェイスを有してもよい。制御部130に含まれる各構成要素は、バスに接続しており、バスを介してデータ等を相互にやり取りする。
【0033】
制御部130は、例えば、様々なスマートフォンやタブレットPC等の形状に対応した切断手順のプログラムを、記憶部に記憶しておき、それに従って、粘着フィルム10が指定された所定の形状に切断されるように、駆動ローラ110およびキャリッジ120を動かす。このような形態に限定されず、制御部130は、例えば、データサーバと通信し、データサーバに保存されているプログラムに従って、駆動ローラ110およびキャリッジ120を動かしてもよい。
【0034】
粘着フィルム10は、様々なスマートフォンやタブレットPC等の画面形状に対応した各種形状に切断されるが、いずれの場合も、
図2に示したように、外周よりも内側の面内で切断される。
【0035】
また、
図3または
図4に示すように、厚み方向(Z方向)では、刃121が、表面保護層11、基材層12、および粘着剤層13を貫通するが、剥離ライナー14は貫通することなく、切断が行われる。
【0036】
図3に示す形態では、刃121の先端が剥離ライナー14に達した状態で、粘着フィルム10が所定の形状に切断される。一方、
図4に示す形態では、刃121の先端が剥離ライナー14に部分的に入った状態で、粘着フィルム10が所定の形状に切断される。
【0037】
図5に示すように、所定の形状に切断された粘着フィルム10は、剥離ライナー14を剥がされ、被着体である例えばスマートフォンまたはタブレットPCの画面に合わせて貼付される。本実施形態のように、剥離ライナー14を切り抜くことなく、その他の層を厚み方向に切断すれば、粘着フィルム10から剥離ライナー14を剥がし易く、円滑に貼付作業を進められる。
【0038】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0039】
本実施形態によれば、剥離ライナー14以外の他の層(表面保護層11、基材層12、および粘着剤層13)を、厚み方向に刃121を入れて切断する際、剥離ライナー14が、柔軟な基材層12のようには変形せず、他の層をしっかり支持するため、それらを切断し易い。
【0040】
特に、
図2で示したように粘着フィルム10自体を直接搬送して動かしつつ切断を行う場合、粘着フィルム10が台等に固定されないため、剥離ライナー14が本実施形態と異なり柔軟で変形し易いと、剥離ライナー14以外の他の層が、刃121を押し当てられた際に、剥離ライナー14とともに例えば折れ曲がるように変形してしまい、良好に切断できない虞がある。しかし、本実施形態では、剥離ライナー14に剛性があり、他の層が剥離ライナー14によってしっかり支持されるため、たとえ粘着フィルム10を台等に固定せず動かしつつ切断する場合であっても、良好に切断を行うことができる。
【0041】
また、剥離ライナー14の厚みが75μm以上と厚く、刃121が剥離ライナー14を容易に貫通しないため、他の層とともに剥離ライナー14が切り抜かれ難い。
【0042】
また、粘着フィルム10が表面保護層11を有し、例えば傷や汚れ等から粘着フィルム10の表面が保護されるため、耐傷性や防汚性等を高められる。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変できる。
【0044】
例えば、本発明の粘着フィルムは、上記実施形態のように、スマートフォンやタブレットPC等の画面に貼付される粘着フィルムに限定されず、例えば、自動車、バイク、鉄道車両、航空機、船舶等の移動体の内装材や外装材等に貼付される粘着フィルムも、本発明の範囲に含まれる。
【0045】
また、上記実施形態の粘着フィルム10から表面保護層11を除いた形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0046】
また、本発明の粘着フィルムは、上記実施形態のように粘着フィルム自体を直接搬送して動かしつつ切断する切断装置に用いられるだけでなく、粘着フィルムを例えば台や支持シート等に固定した状態で切断する切断装置に用いられてもよい。
【0047】
後者の切断装置は、粘着フィルムの載置された台等を動かさず、刃を動かすことによって、粘着フィルムを所定の形状に切断してもよいし、刃と台等との両方を動かしつつ切断を行ってもよい。また、刃を固定し、粘着フィルムの載置された台等を動かすことによって切断を行ってもよく、この場合、粘着フィルムの載置された台等が動くことによって、刃は、粘着フィルムに対し相対的に移動し、粘着フィルムを所定の形状に切断していく。
【符号の説明】
【0048】
10 粘着フィルム、
11 表面保護層、
12 基材層、
13 粘着剤層、
14 剥離ライナー、
100 粘着フィルム切断装置、
110 駆動ローラ(搬送部)、
120 キャリッジ、
121 刃、
130 制御部。