(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】試験室及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/02 20160101AFI20231228BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231228BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20231228BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20231228BHJP
H01M 8/04828 20160101ALI20231228BHJP
H01M 8/04791 20160101ALI20231228BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20231228BHJP
H01M 8/04992 20160101ALI20231228BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20231228BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01M8/02
H01M8/04 Z
H01M8/04701
H01M8/04746
H01M8/04828
H01M8/04791
H01M8/0656
H01M8/04992
H01M8/10 101
G01N17/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019202207
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2022-09-16
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517381603
【氏名又は名称】バイス テヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワーグナー エノ
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-226213(JP,A)
【文献】特開2017-219370(JP,A)
【文献】独国実用新案第000020013299(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験室(10
)を制御する方法であって、
燃料電池組立品(13)が前記試験室の試験空間(12)において少なくとも1つの物理的試験条件に曝され、
前記燃料電池組立品は、
それぞれ、反応物を導入する供給口を有する陽極室と、前記燃料電池組立品における不要な副産物を排出する排出口を有する陰極室とを持つ少なくとも1つの電気的機械的燃料電池(15)を含み、
前記燃料電池組立品は、前記試験空間において作動し、
前記試験空間に存在する燃料ガス及び酸化ガスは、反応物として前記燃料電池組立品に供給され、
前記物理的試験条件は、前記試験空間におけるエア温度、エア圧力及び相対湿度が前記試験室の制御デバイスによって、開ループ制御及び/又は閉ループ制御により設定され、
前記試験空間は、前記試験室の空調及び換気システム(32)によって、調節された供給エアが供給されると共に、排気エアが前記試験空間から排出され、
酸素濃度は、前記試験空間の前記制御デバイスにおける、酸素濃度を制御するコントローラのセンサ(36)を用いて決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記空調及び換気システム(32)は、前記制御デバイスによって制御されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
酸素(O
2)は、前記コントローラにおける調量バルブ(21)を用いる前記酸素濃度の関数として、前記試験空間及び/又は前記空調及び換気システム(32)の供給エアダクト(33)に導入されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、
前記不要な副産物は、前記試験空間(12)に排出されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、
前記陰極室には、前記燃料電池組立品(13)のポンプ(19)によって、前記試験空間(12)に存在するエアが供給されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、
前記陽極室には、前記燃料電池組立品(13)の燃料ガス調量バルブ(17)によって、燃料ガスとしての水素(H
2)が供給されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記水素(H
2)及び酸素(O
2)は、前記試験空間(12)に配置された電解装置によって生成されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法において、
前記試験空間(12)におけるエア温度は、前記試験室(10)の温度制御デバイスによって設定されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法において、
前記試験空間(12)の相対湿度は、前記試験室(10)の加湿器(29)及び/又は除湿機(28)によって設定され、
前記加湿器(29)及び/又は前記除湿機(28)は、前記試験空間に配置されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法において、
前記試験空間の相対湿度は、前記制御デバイスにおける湿度制御回路の湿度センサによって測定されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法において、
前記試験空間(12)のエア圧力は、前記空調及び換気システム(32)の供給エア送風機及び/又は排気エア送風機によって設定されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法において、
前記空調及び換気システム(23)は、前記試験空間(12)におけるエアの交換比率、及び/又は前記試験空間と実環境との圧力差を確定するために用いられることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法において、
前記供給エアにおける前記エア温度及び/又は前記相対湿度は、前記空調及び換気システム(32)によって設定されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法において、
燃料電池組立品(13)によって生成された電流は、該生成された電流の関数として前記相対湿度を制御する前記制御デバイスによって測定されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の方法において、
燃料電池組立品(13)によって生成された電流は、該生成された電流の関数として前記酸素濃度を制御する前記コントローラによって測定されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の方法において、
前記測定された電流は、前記制御デバイスのカスケード制御におけるマスタコントローラの入力パラメータとして用いられることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記コントローラは、カスケード制御におけるスレーブコントローラとして用いられることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の方法において、
前記物理的試験条件は、温度、相対湿度、腐食性の大気、及び/又は部材耐力であることを特徴とする方法。
【請求項19】
周囲に対して封止でき且つ断熱された試験空間(12)を備え
る試験室(10)であって、
前記試験空間(12)の内部には、該試験空間内で作動可能で且つ少なくとも1つの物理的試験条件に曝され得る燃料電池組立品(13)が配置されており、
前記燃料電池組立品は、それぞれ、反応物を導入する供給口を有する陽極室と、燃料電池組立品における不要な副産物を排出する排出口を有する陰極室とを持つ少なくとも1つの電気的機械的燃料電池を含み、
前記試験空間に存在する燃料ガス及び酸化ガスは、反応物として前記燃料電池組立品に供給され、
前記試験室は、前記試験空間におけるエア温度、エア圧力及び相対湿度に対する開ルー
プ制御及び/又は閉ループ制御によって前記
物理的試験条件を設定する制御デバイスを有し、
前記試験室は、前記試験空間に、調節された供給エアを導入し、且つ、該試験空間から排気エアを排出する空調及び換気システム(32)を有しており、
前記制御デバイスは、前記試験空間における酸素濃度を決定するためのセンサを持つコントローラを有し、
前記コントローラは、前記試験空間における前記酸素濃度を制御するように構成されていることを特徴とする試験室。
【請求項20】
請求項19に記載の試験室において、
前記試験室(10)は、前記試験空間(12)の温度を制御する温度制御デバイスを有し、
前記試験空間の温度は、前記温度制御デバイスによって-70℃から+180℃まで、好ましくは、-80℃から+200℃までの温度範囲に確定され、
前記温度制御デバイスは、冷媒を含む冷却回路を有する冷却ユニット、前記試験空間に配置された熱交換器(30)、圧縮機、復水器、及び膨張エレメントを含み、
前記温度制御デバイスは、ヒータ及び他の熱交換機を含む加熱ユニット有していることを特徴とする試験室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験室、特に空調のための人工気象室及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試験室の試験空間において、燃料電池組立品が少なくとも1つの物理的試験条件に曝され、この燃料電池組立品は、それぞれ、反応物を導入する供給口を有する陽極室と、燃料電池組立品における不要な副産物を排出する排出口を有する陰極室とを持つ少なくとも1つの電気的機械的燃料電池を含む。燃料電池組立品は、試験空間において作動し、該試験空間に存在する燃料ガス及び酸化ガスは、反応物として燃料電池組立品に供給される。試験条件は、試験空間におけるエア温度(気温)、エア圧力(気圧)及び相対湿度が試験室の制御デバイスによって、開ループ制御及び/又は閉ループ制御により設定される。試験空間には、試験室の空調及び換気システムによって、調節された供給エアが供給されると共に、排気エアが該試験空間から排出される。
【0003】
この種の試験室は、典型的には、対象物の、特にデバイスの物理的及び/又は化学的特性を試験している。例えば、温度範囲が-70℃から+180℃まで設定可能な温度試験室又は人工気象試験室が知られている。人工気象試験室においては、所望の気象条件が付加的に設定可能であり、従って、デバイス又は試験材料が、所定の期間に亘って曝される。試験対象である試験材料を収容する試験空間の温度は、典型的には、当該試験空間内の循環エアダクトによって制御される。循環エアダクトは、試験空間にエア処置スペースを形成する。エア処置スペースには、循環エアダクト又は試験空間を通して加熱エア又は冷却エアの熱交換を行う熱交換器が配置される。ファン又は換気装置は、試験空間に存在するエアを吸引し、且つ循環エアダクト内の各熱交換器に、吸引したエアを送る。このように、試験材料は、温度制御され得るか、又は規定された温度変化に曝され得る。従って、温度は、試験サイクル中に、試験室における最高温度と最低温度との間で変化させることができる。
【0004】
さらに、燃料電池として又は燃料電池組立品として表されるものは、例えば、燃料電池組立品の性能又は機能を試験するために、このような試験室において、規定された気象条件に曝されることは知られている。最新式の燃料電池組立品又は燃料電池は、陽極と、陰極と、例えば、燃料ガスとしての水素と、酸化ガスとしての酸素とを持つ電解質膜を有することが知られている。
【0005】
固体ポリマ燃料電池のように、それらは、典型的には、電解質触媒を形成し且つ導電層材料からなり、陽極及び陰極を形成するコート層を両面に持つポリマイオン交換膜により構成されている。2つの導電性セパレータ板は、電解質膜の両面を覆うと共に、該電解質膜の個々の表面を横切って適当に分散される反応物を介してチャネルを形成する。
【0006】
さらに、導電性セパレータ板は、陽極及び陰極の各領域において、電流のコレクタとして機能する。従来の燃料電池を用いて得られる出力電圧は比較的に低いため、燃料電池は、直列に、すなわちスタックとして配置されて、より高い出力電圧を実現している。その場合、導電性セパレータ板は、反応物を通すと共に分散するために両面に形成されたチャネルを持つバイポーラ板として実現される。陽極側のチャネル及び陰極側のチャネルには、それぞれ燃料ガス及び酸化ガスが1つの供給口を介して供給され、一方、各チャネルからは、それぞれ1つの排出口を介して不要な副産物が排出される。
【0007】
電解質膜を有する燃料電池組立品が燃料ガスとして水素で作動する場合は、処理水及び凝縮液が、典型的には、燃料電池組立品の作動中に陽極室に蓄積する。この蓄積した水は、通常、該陽極室の溢水を防ぐために除去される。陽極室内にある水とそこに含まれる燃料ガスとは、燃料電池組立品の周囲、すなわち試験空間に入る。燃料ガスが水素である場合に、このことは、試験空間に酸水素ガスの化成をもたらす。これが、空調及び換気システムによって、試験空間のエアを交換しなければならない理由である。また、燃料電池組立品は、燃料ガスとして循環される水素と、水素を装荷(loading)する異質の副産物とを分離しなければならないことが知られている。試験空間には、空調及び換気システムによって、調節された供給エアが供給され、且つ、排気エアが排出される。このため、供給エア及び排気エアのためのダクトが試験空間と接続されている。
【0008】
燃料電池組立品を試験するために、当該組立品は、電気抵抗の増大又は減少に基づいて電流電圧特性を検出できる電子的な負荷と接続される。試験空間とその内部で接続された空調及び換気システムとは、当該試験空間の周囲のエアと気密に封止される。燃料電池組立品の陰極には、該試験空間から酸化ガスとしての酸素が供給される。
【0009】
試験空間における相対湿度の理想的な設定は、試験空間内での燃料電池組立品の理想的な機能を強固にする。試験空間に存在する水が、燃料電池組立品に、酸化ガスとしての酸素を供給する場合に、その湿度は高すぎても低すぎてもいけない。そうしなければ、燃料電池組立品における出力密度が、激しく減少するからである。また、空調及び換気システムにより供給される供給エアは、エア温度に関して、予め適当に調節されなければならない。その上、窒素のような酸化ガスとして使えない空気の成分は、適切に調節されなければならない。従って、空調及び換気システムは、エア交換の必要性が要求されるエアが適切に調節されるのであれば、高出力のドライヤ及び加湿器を備えなければならない。さらに、試験空間は、空調及び換気システムによって加圧されてもよい。これにより、気流速度がより一層向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、燃料電池組立品の試験において簡単で且つ高い費用効果を可能にする、燃料電池組立品を含む試験室及びその制御方法を提案することにある。この目的は、請求項1の特徴を有する方法、及び請求項19の特徴を有するデバイスによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る、試験室、特に、空調のための人工気象室を制御する方法において、燃料電池組立品が、試験室の試験空間において少なくとも1つの物理的試験条件に曝される。この燃料電池組立品は、それぞれ、反応物を導入する供給口を有する陽極室と、燃料電池組立品における不要な副産物を排出する排出口を有する陰極室とを持つ少なくとも1つの電気的機械的燃料電池を含む。燃料電池組立品は、試験空間において作動し、試験空間に存在する燃料ガス及び酸化ガスは、反応物として燃料電池組立品に供給される。試験条件は、試験空間におけるエア温度、エア圧力及び相対湿度が試験室の制御デバイスによって、開ループ制御及び/又は閉ループ制御により設定される。試験空間には、試験室の空調及び換気システムによって、調節された供給エアが供給されると共に、排気エアが該試験空間から排出される。ここで、酸素濃度は、試験空間の制御デバイスにおける、酸素濃度を制御するコントローラのセンサを用いて決定される。
【0012】
本発明によると、燃料電池組立品は、試験室の試験空間に配置されて作動する。作動中に、燃料電池組立品は、試験中に特定の周囲(環境)条件に曝される。試験空間におけるエア交換は、燃料電池組立品から放出される燃料ガスを試験空間から除去するために、空調及び換気システムによって実現される。特に、試験空間におけるエア中の酸素濃度が決定され、具体的には、燃料電池組立品が作動する試験空間で要求される酸素濃度によって制御される。これが、空調及び換気システムの出力を、酸素濃度が試験空間内のエア中の燃料電池組立品の作動のために十分なだけの濃度になるまで減少させる。この場合、もはや、試験空間において燃料電池組立品に実際に必要となるのと同量の(新鮮な)エアのみを導入しなければならないという理由で、空調及び換気システムが予め調節した大量の供給エアを試験空間に供給するという必要はなくなる。その上、燃料電池組立品が、特に酸化ガスとしてエア中の酸素成分を用いる限りは、該空調及び換気システムは、窒素のような空気の他の成分を、予め適切に調節しておかなければならない。本発明に係る方法は、空調及び換気システムによってポンピング対象の酸素成分を減らせるので、その結果、従来と比較して、ポンピング対象の、当該空調及び換気システムが扱うエアの量が極めて少なくなる。加えて、この方法によりエネルギー量を節約できるため、空調及び換気システム、特に供給エアの扱いを必要とする加湿器、除湿機及び熱交換器は、従来と比較して、その寸法を小さくできるので、そのコストを大幅に節約することができる。
【0013】
空調及び換気システムは、制御デバイスによって制御できる。制御デバイスは、コントローラから試験空間の酸素濃度に関するデータ及び信号を受信できる。従って、当該コントローラは、制御デバイスが持つ閉ループ制御を構成できる。その場合、制御デバイスは、供給エアを予め調節するように、空調及び換気システムを制御することができ、例えば、試験空間のエア、特にエア温度及び相対湿度を調節するように当該試験空間を制御することができる。この閉ループ制御は、PIDコントローラによって実現できる。この制御デバイスのコントローラは、酸素濃度を制御するために、空調及び換気システムを制御することによって、試験空間におけるエア交換を増量したり減量したりできる。
【0014】
酸素が、コントローラの調量バルブ(絞り弁)を用いる酸素濃度の関数として、試験空間及び/又は空調及び換気システムの供給ダクトに導入されるのであれば、とりわけ効果的である。例えば、純粋酸素は、さらに供給管を介して試験空間に直接に導入することができる。燃料電池組立品によって消費される酸素は、試験空間に導入される酸素によって補充できる。従って、酸素は、もはや供給エアに代えて試験空間に導入される必要がなくなる。これは、空調及び換気システムによって予め調節されなければならない供給エアの量が実質的に減ることを意味する。これにより、空調及び換気システムは、より一層小型化できる。これに代えて又はこれに加えて、純粋酸素は、供給エアがより多くの酸素成分を持つように、空調及び換気システムの供給エアダクトに供給してもよい。これにより、上記の酸素は、既に調節がなされていることになる。その結果、燃料電池組立品が酸化ガスとして使用できない空気成分の残りは、より少なくなる。結局、試験空間には、空調及び換気システムによる調節量が比較的に少ない供給エアが供給されなければならない。上記の調量バルブは、試験空間又は供給エアダクトに、酸素における実際の必要量を比較的精密に測定できる。これにより、調節対象であるエアの量は、最小限にまで減らすことができる。調量バルブは、例えば、電子調整バルブであってもよい。
【0015】
さらに、不要な副産物は試験空間に排出されてもよい。不要な副産物は、例えば、水、水蒸気、及び燃料ガスの残りを含んでもよい。不要な副産物は、空調及び換気システムの排気エアによって、試験空間から排出することができる。さらに、不要な副産物、特に水蒸気は、試験空間内の湿度の設定に用いることができる。少なくとも、このことが、燃料電池組立品が現実的な周囲条件で試験されたことを保証する。
【0016】
陰極室には、燃料電池組立品のポンプによって、試験空間に存在するエアを供給できる。上記のエアは、センサによって測定された酸素濃度、すなわち、試験空間のコントローラによって制御された酸素濃度を持つ。例えば、このポンプは、燃料電池組立品をどのようにでも作動させるのに要求されるコンプレッサであってもよい。
【0017】
陽極室には、燃料電池組立品の燃料ガス調量バルブにより、燃料ガスとしての水素が供給される。これにより、純粋水素(H2)が、供給管を介して燃料電池組立品に直接に供給できる。燃料ガス調量バルブは、電子調整バルブであってもよい。燃料電池の化学式
H2 +(1/2)O2 → H2O + Eel
によると、水素と酸素との比の値は2対1であり、コントローラにより水素量の関数として極めて精密に試験空間に導入される。これにより、調節対象のエアの量をさらに減少することができる。
【0018】
水素(H2)及び酸素(O2)は、試験空間に配置された電解装置によっても生成できる。例えば、試験空間には、加圧式電解装置を配置してもよい。この加圧式電解装置は、燃料電池組立品によって消費される水素及び酸素の総量を試験空間内で生成及び排出する。従って、水素と酸素との供給管及びそれに付随する貯蔵に関する複合設備は全く省くことができる。要求される全ては、試験空間内で電気エネルギーが供給される加圧式電解装置のためのものである。原理的には、加圧式電解装置は、試験空間の外部に配置することも可能であり、また、水素及び酸素は、供給管を介して燃料電池組立品に導入するか、又は空調及び換気システムの供給エアダクトを介して試験空間に導入することも可能である。
【0019】
試験空間におけるエア温度は、試験室の温度制御デバイスによって設定できる。これにより、予め調節された供給エアの温度をより一層精密に制御することができる。この場合、試験空間のエア温度は、制御デバイスによって制御される。試験空間を通して加熱又は冷却されたエアの熱交換器が配置されたエア処理空間が、当該試験空間に形成されてもよい。さらに、試験空間に存在するエアを循環するファン又は換気装置が設けられてもよい。従って、このエア処理空間は、循環エアダクトのように実現できる。
【0020】
試験空間の相対湿度は、該試験空間に配置された、試験室の加湿器及び/又は除湿機を用いて設定できる。加湿器又は除湿機は、試験空間におけるエア処理空間に配置できる。この場合、制御デバイスは、加湿器又は除湿機を介して試験空間の相対湿度を比較的精密に制御できる。加えて、空調及び換気システムは、予め供給エアを調節する加湿器又は除湿機を有してもよい。
【0021】
試験空間の相対湿度は、制御デバイスにおける湿度制御回路の湿度センサを用いて測定できる。これは、特に試験空間における相対湿度の精密制御及び設定を可能とする。
【0022】
試験空間のエア圧力は、空調及び換気システムの供給エア送風機及び/又は排気エア送風機によって設定できる。例えば、これにより、試験空間に周囲の圧力よりも高い圧力をも確定できる。エア圧力は、閉ざされた試験空間において、燃料ガスの導入により、また、酸化ガスの消費により変わりやすいため、このことが当該試験空間において、常時一定となるエア圧力を設定可能とすることをも保証する。供給エア送風機及び排気エア送風機は、制御デバイスによって制御することができる。
【0023】
このようにすると、試験空間におけるエアの交換比率、及び/又は当該試験空間と実環境との圧力差は、空調及び換気システムによって確定できる。エアの交換比率は、試験空間に、燃料ガスのうち、非発火性の成分が常時存在するように設定できる。
【0024】
供給エアにおけるエア温度及び/又は相対湿度は、空調及び換気システムによっても設定できる。この場合、空調及び換気システムは、加湿器及び/又は除湿機、及び供給エアの温度を制御する熱交換器を備える。空調及び換気システムは、燃料電池組立品に対する適切な試験条件によって、供給エアを予め調節できる。試験条件は、試験空間に存在するエアの調節により、当該試験空間自体に精密に設定できる。
【0025】
燃料電池組立品によって生成された電流が測定できれば、制御デバイスは、生成された電流の関数として相対湿度の制御が可能となり、とりわけ効果的である。測定された電流、及び燃料電池組立品によって生成された水の量は、互いに、下記の[数1]に示すファラデーの法則に依存する。
【0026】
【数1】
ここで、Iは電流を表し、右辺のnはイオン価数を表し、Fはファラデー定数(96485C/mol)を表す。
【0027】
このように、燃料電池組立品によって生成される水又は水蒸気の物質流は、直接に且つリアルタイムに測定できる。また、このように、測定された水の生成量は、試験空間内の相対湿度、及び/又は調節された供給エアの相対湿度を設定する制御デバイスの湿度コントローラをパイロット制御するために用いることができる。全体として、このことは、試験空間及び/又は供給エアの相対湿度が、生成された電流の関数として、より一層精密に制御されることを可能とする。
【0028】
これに代えて又はこれに加えて、燃料電池組立品によって生成された電流が測定でき、コントローラは、生成された電流の関数として酸素濃度を制御できる。上述したファラデーの法則及び燃料電池組立品の化学式によると、測定された電流を生成するために試験空間で消費された酸素の量は、この場合、極めて精密に測定できる。従って、当該試験空間は、この精密さに対応する上記酸素の要求量分の酸素を供給することができる。このように、消費された酸素の決定量は、例えば、酸素濃度を制御するために、コントローラのパイロット制御に使用できる。
【0029】
さらに、測定された電流は、制御デバイスのカスケード制御におけるマスタコントローラの入力パラメータとして用いることができる。カスケード制御は、試験空間において、エア温度、エア圧力及び/又は湿度を制御する、なかでも、PIDコントローラにより構成できる。制御デバイスは、燃料電池組立品の水蒸気の出力により増大する相対湿度と、酸素の消費量とをそれぞれ制御パラメータとして考慮することができる。この制御パラメータは、この試験室によって、燃料電池組立品の試験を大幅に簡単化する。当該試験室における制御デバイスにおいて、時間消費のパラメータ化及びこれらの変数を予め設定することは、この場合、もはや必要ではなくなる。
【0030】
コントローラをカスケード制御におけるスレーブコントローラとして用いれば、特に効果的である。これにより、制御の精確さをより一層改善できる。
【0031】
物理的な試験条件は、温度、相対湿度、腐食性の大気、及び/又は部材耐力であってもよい。さらに、燃料電池組立品は、試験期間中に作動してもよく、また、負荷が掛けられた上記の試験条件に曝されてもよい。
【0032】
本発明に係る試験室、特に、空調のための人工気象室は、周囲に対して封止でき且つ断熱された試験空間を備えている。該試験空間の内部には、該試験空間内で作動可能で且つ少なくとも1つの気象試験条件に曝され得る燃料電池組立品が配置されている。燃料電池組立品は、それぞれ、反応物を導入する供給口を有する陽極室と、燃料電池組立品における不要な副産物を排出する排出口を有する陰極室とを持つ少なくとも1つの電気的機械的燃料電池を含む。試験空間に存在する燃料ガス及び酸化ガスは、反応物として燃料電池組立品に供給される。試験室は、試験空間におけるエア温度、エア圧力及び相対湿度に対する開ループ制御及び/又は閉ループ制御によって試験条件を設定する制御デバイスを有し、また、試験室は、試験空間に、調節された供給エアを導入し、且つ、該試験空間から排気エアを排出する空調及び換気システムを有する。制御デバイスは、試験空間における酸素濃度を決定するためのセンサを持つコントローラを有し、該コントローラは、試験空間における酸素濃度を制御するように構成されている。本発明に係る試験室の有利な効果に関しては、本発明に係る方法における効果の記述による。
【0033】
試験室は、試験空間の温度を制御する温度制御デバイスを有していてもよい。この温度制御デバイスにより、試験空間の温度は-70℃から+180℃まで、好ましくは-80℃から+200℃までの温度範囲に設定されてもよい。温度制御デバイスは、冷媒を含む冷却回路を有する冷却ユニット、試験空間に配置された熱交換器、圧縮機、復水器、及び膨張エレメントを含んでもよい。また、温度制御デバイスは、ヒータ及び他の熱交換機を含む加熱ユニット有していてもよい。
【0034】
この場合、試験空間における熱交換器を介した冷却ユニットによって、該試験空間においては、循環されるエアをかなりの量で冷却できるようになる。熱交換器は、冷却回路と接続されてもよく、また、該冷却回路内に統合されてもよい。従って、冷却回路内の冷媒循環は、熱交換器を通して流れる。圧縮機は、機械的な圧縮デバイスでよく、また、液化された冷媒用の復水器は、冷媒の流通方向における圧縮機の下流側と接続されてもよい。復水器内で液化された冷媒は、圧力の降下による膨張により、再度気体に戻り、熱交換器を冷却するように、膨張エレメントを介して流してもよい。加熱ユニット又はヒータは、他の熱交換器によって加熱可能な、電気的加熱素子により構成されてもよい。熱交換器と同様に、この他の熱交換器は、試験空間内に配置してもよい。
【0035】
試験室における他の有利な実施形態は、方法に係る請求項1に従属する請求項の特徴の記述から明らかとなる。
【0036】
以下、本発明について添付した図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は本発明に係る試験室を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、周囲11に対して気密に封止され且つ断熱された試験空間12を有する試験室10を模式的に示している。複数の燃料電池15のスタック14によって構成された燃料電池組立品13が、試験空間12に配置されている。燃料電池組立品13は、燃料ガス調量バルブ17を持つ供給管16を介して、燃料ガスとしての水素(H
2)が直接に供給される。さらに、燃料電池組立品13は、圧縮機19を持つ供給管18を介して試験空間12に存在するエアが供給される。また、酸化ガスとしての酸素(O
2)が調量バルブ21を持つ供給管20を介して供給される。燃料電池組立品13における、燃料ガスの残り、水、及び/又は水蒸気のような不要な副産物は、排出管22を介して試験空間12に排出される。
【0039】
燃料電池組立品13は、冷却水によって冷却される。この冷却水は、供給管23を介して該燃料電池組立品13に供給され、スタック14を通った後、戻り管24を介して排出される。燃料電池組立品13は、負荷を生成し得る回路25と接続され、且つ、電流及び電圧が測定される。
【0040】
試験空間12に存在するエアがファン27によって循環し得る循環エアダクト26が、試験空間12の内部に形成されている。除湿機28、加湿器29、エアを冷却する熱交換器30、及びエアを加熱する他の熱交換器31が、循環エアダクト26内に配置されている。その一部のみが示される空調及び換気システム32における供給エアダクト33及び排気エアダクト34は、試験空間12と接続される。予め調節された供給エアは、供給エアダクト33を介して循環エアダクト26に直接に導入され、従って、試験空間12に導入される。試験空間12に存在するエアは、排気エアダクト34を介して排出される。さらに、破裂板35が試験空間12と接続されている。また、試験空間12の酸素濃度を測定するためのセンサ36が試験空間12に配置されている。センサ36は、酸素濃度を制御するコントローラ(図示せず)の一部である。該コントローラは、供給管20を介した酸素の供給によって、燃料電池組立品13が作動可能となるよう、試験空間12における酸素濃度が常時設定されるように調量バルブ21を制御する。このように、燃料電池組立品13によって消費される試験空間12のエア中の酸素は、供給エアダクト33を介して予め調節された多量のエアを導入することなく、供給管20を介して補給できる。
【0041】
コントローラは、試験室10における制御デバイス(図示せず)の一部である。制御デバイスは、空調及び換気システム32、ファン27、除湿機28、加湿器29、熱交換器30、及び熱交換器31を制御して、試験空間12に存在するエアを調節する。燃料電池組立品13による現生成物を測定することにより、制御デバイスは、燃料電池組立品13により生成された不要な副産物若しくは水、及び/又は燃料電池組立品13により消費された酸素を算定できる。従って、制御デバイスは、空調及び換気システム32、除湿機28、加湿器29及び調量バルブ21を精密に制御することができる。このことは、全体に亘って、空調及び換気システム32により、算定すべきエアの量が減少すると共に、エアの加湿及び除湿においては、試験空間12に存在するエアの酸素成分に本質的に限定され得る。また、関連する変数を制御デバイス自体によって決定できるので、燃料電池組立品13を用いた試験を遂行する前の、制御デバイスの複雑なパラメータ化を省くことができる。