IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社共和電業の特許一覧 ▶ 株式会社日本工業試験所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ひずみゲージの設置方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019217179
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085851
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000142067
【氏名又は名称】株式会社共和電業
(73)【特許権者】
【識別番号】500271030
【氏名又は名称】株式会社日本工業試験所
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】名島 憲治
(72)【発明者】
【氏名】石瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 成敏
(72)【発明者】
【氏名】山上 哲示
(72)【発明者】
【氏名】上杉 太郎
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-112545(JP,A)
【文献】特開2018-186214(JP,A)
【文献】特開2012-098073(JP,A)
【文献】特開2005-315819(JP,A)
【文献】特開2005-172530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00- 7/34
G01L 1/00- 1/26
G01L 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の表面に、紫外線透過性の基体を有するひずみゲージを、紫外線硬化型接着剤で取り付ける工程と、
上記ひずみゲージの表面と、このひずみゲージの周辺の上記測定対象の表面とを覆うように、紫外線硬化型コーティング剤を配置する工程と、
上記紫外線硬化型コーティング剤の上から紫外線を照射して、上記紫外線硬化型接着剤と紫外線硬化型コーティング剤とを一度の紫外線の照射によって硬化させる工程と
を備えることを特徴とするひずみゲージの設置方法。
【請求項2】
測定対象の表面に、紫外線を透過する基体を有するひずみゲージを、紫外線硬化型接着剤で取り付ける工程と、
上記ひずみゲージの表面と、このひずみゲージの周辺の上記測定対象の表面とを覆うように、紫外線硬化型コーティング接着剤を配置する工程と、
上記紫外線硬化型コーティング接着剤と、この紫外線硬化型コーティング接着剤の周辺の上記測定対象の表面とを覆うように、紫外線を透過するフィルムを配置する工程と、
上記フィルムの上から紫外線を照射して、上記紫外線硬化型接着剤と、上記紫外線硬化型コーティング接着剤とを硬化させる工程と
を備えることを特徴とするひずみゲージの設置方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のひずみゲージの設置方法において、
上記紫外線硬化型接着剤が、湿気硬化併用型であることを特徴とするひずみゲージの設置方法。
【請求項4】
請求項2に記載のひずみゲージの設置方法において、
上記フィルムは、上記ひずみゲージに臨む側の面に、プライマが付与されていることを特徴とするひずみゲージの設置方法。
【請求項5】
請求項2に記載のひずみゲージの設置方法において、
上記フィルムは、フッ素樹脂で形成されていることを特徴とするひずみゲージの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみの測定対象の表面にひずみゲージを設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば橋梁等の構造物を構成する部材の応力状態を把握するため、部材にひずみゲージを設置し、ひずみゲージを電気回路に接続し、ひずみゲージの抵抗値の変化を検出して部材のひずみを測定している。部材にひずみゲージを設置する場合、部材のひずみを精度良く検出するためにひずみゲージを確実に固定すると共に、ひずみゲージの汚損を防止するためにひずみゲージを被覆して保護する必要がある。従来、ひずみゲージを部材に固定するため、熱硬化性接着剤であるエポキシ系接着剤や、湿気硬化型接着剤であるシアノアクリレート系接着剤が多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4A乃至4Dは、エポキシ系接着剤を用いた従来のひずみゲージの設置方法を示す工程図である。まず、図4Aに示すように、測定対象である部材1の表面の汚れや塗装や水を除去すると共に、ひずみゲージ2のゲージベースの表面にエポキシ系接着剤103を塗布する。続いて、図4Bに示すように、部材1の表面にエポキシ系接着剤103が接するようにひずみゲージ2を配置し、クランプ等により、部材1に向かってひずみゲージ2に押圧力Fを作用させる。この後、図4Cに示すように、ひずみゲージ2の上からヒータで熱107を照射し、エポキシ系接着剤103を加熱して硬化させる。エポキシ系接着剤103が硬化すると、図4Dに示すように、ひずみゲージ2の表面と、このひずみゲージ2の周辺の部材1の表面とを覆うように、エポキシ系コーティング剤104を塗布する。この後、図4Eに示すように、ひずみゲージ2の上からヒータで熱107を照射し、エポキシ系コーティング剤104を加熱して硬化させる。
【0004】
こうして、エポキシ系接着剤103の硬化物でひずみゲージ2を部材1に固定すると共に、エポキシ系コーティング剤104の硬化物でひずみゲージ2の表面とひずみゲージ2の周辺の部材1の表面とを被覆することにより、ひずみゲージ2の部材1への設置が完了する。
【0005】
一方、シアノアクリレート系接着剤を用いた従来のひずみゲージの設置方法では、部材1の表面の汚れや塗装や水を除去した後、ひずみゲージ2のゲージベースの表面にシアノアクリレート系接着剤を塗布する。続いて、部材1の表面にシアノアクリレート系接着剤が接するようにひずみゲージ2を配置し、作業者の指で指圧して、部材1に向かってひずみゲージ2に押圧力Fを作用させる。夏季等の気温の比較的高い場合は、指圧を15~60秒行うことによりシアノアクリレート系接着剤が硬化し、約1時間後にはひずみゲージ2によるひずみの測定が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭59-080435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のひずみゲージの設置方法は、エポキシ系接着剤を用いた場合は、ひずみゲージ2を部材1の表面に固定するためにエポキシ系接着剤103を加熱して硬化させる工程と、ひずみゲージ2を被覆するためにエポキシ系コーティング剤104を加熱して硬化させる工程が必要であるため、工数が多く、作業効率が比較的低い問題がある。特に低温時には、エポキシ系接着剤103とエポキシ系コーティング剤104の加熱時間が常温時よりも長くなるので、作業時間が長くなり、作業効率が更に低下する問題がある。
【0008】
また、シアノアクリレート系接着剤を用いた場合は、低温時には指圧を行う時間が長くなり、気温や湿度によってはシアノアクリレート系接着剤が硬化しないことがある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、比較的少ない工数により、比較的高い作業効率でひずみゲージを測定対象に設置できるひずみゲージの設置方法を提供することにある。また、気温や湿度等の条件の影響を受けにくいひずみゲージの設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のひずみゲージの設置方法は、測定対象の表面に、紫外線透過性の基体を有するひずみゲージを、紫外線硬化型接着剤で取り付ける工程と、
上記ひずみゲージの表面と、このひずみゲージの周辺の上記測定対象の表面とを覆うように、紫外線硬化型コーティング剤を配置する工程と、
上記紫外線硬化型コーティング剤の上から紫外線を照射して、上記紫外線硬化型接着剤と紫外線硬化型コーティング剤とを硬化させる工程と
を備えることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、ひずみを測定する対象である測定対象の表面に、紫外線透過性の基体を有するひずみゲージを、紫外線硬化型接着剤で取り付ける。ひずみゲージは、例えば、ひずみを測定するパターンが基体の表面に形成されているものを用いることができる。続いて、ひずみゲージの表面と、このひずみゲージの周辺の測定対象の表面とを覆うように、紫外線硬化型コーティング剤を配置する。この後、紫外線硬化型コーティング剤の上から紫外線を照射し、この紫外線により、ひずみゲージを覆う紫外線硬化型コーティング剤を硬化させる。これと共に、紫外線を、紫外線硬化型コーティング剤とひずみゲージの基体とを透過させ、ひずみゲージの基体の裏面に位置する紫外線硬化型接着剤に到達させて、この紫外線硬化型接着剤を硬化させる。このように、紫外線を照射する単一の工程により、ひずみゲージを覆う紫外線硬化型コーティング剤と、ひずみゲージを固定する紫外線硬化型接着剤との両方を硬化させることができる。したがって、ひずみゲージの固定とコーティングの形成とを異なる工程で行うよりも、少ない工程でひずみゲージを設置することができ、ひずみゲージを設置する手間の削減と時間の短縮を行うことができる。したがって、ひずみゲージの固定とコーティングの形成とを異なる工程で行うよりも、高い作業効率でひずみゲージを測定対象に設置できる。また、低温時においても、紫外線硬化型接着剤と紫外線硬化型コーティング剤は、紫外線の照射により速やかに硬化するので、熱硬化型の接着剤やコーティング剤及びシアノアクリレート系接着剤を用いた場合よりも、作業時間を短縮できる。
【0012】
本発明の他の側面によるひずみゲージの設置方法は、測定対象の表面に、紫外線を透過する基体を有するひずみゲージを、紫外線硬化型接着剤で取り付ける工程と、
上記ひずみゲージの表面と、このひずみゲージの周辺の上記測定対象の表面とを覆うように、紫外線硬化型コーティング接着剤を配置する工程と、
上記紫外線硬化型コーティング接着剤と、この紫外線硬化型コーティング接着剤の周辺の上記測定対象の表面とを覆うように、紫外線を透過するフィルムを配置する工程と、
上記フィルムの上から紫外線を照射して、上記紫外線硬化型接着剤と、上記紫外線硬化型コーティング接着剤とを硬化させる工程と
を備える。
【0013】
上記構成によれば、ひずみを測定する対象である測定対象の表面に、紫外線透過性の基体を有するひずみゲージを、紫外線硬化型接着剤で取り付ける。ひずみゲージは、例えば、ひずみを測定するパターンが基体の表面に形成されているものを用いることができる。続いて、ひずみゲージの表面と、このひずみゲージの周辺の測定対象の表面とを覆うように、紫外線硬化型コーティング接着剤を配置する。続いて、紫外線硬化型コーティング接着剤と、この紫外線硬化型コーティング接着剤の周辺の測定対象の表面とを覆うように、紫外線を透過するフィルムを配置する。このフィルムは、ひずみゲージを保護するため、水の透過を実質的に遮断するものであるのが好ましい。この後、上記フィルムの上から紫外線を照射し、この紫外線により、ひずみゲージを覆うと共にフィルムで覆われた紫外線硬化型コーティング接着剤を硬化させる。これと共に、紫外線を、フィルムと紫外線硬化型コーティング接着剤とひずみゲージの基体とを透過させ、ひずみゲージの基体の裏面に位置する紫外線硬化型接着剤に到達させて、この紫外線硬化型接着剤を硬化させる。このように、紫外線を照射する単一の工程により、ひずみゲージを覆うと共にフィルムで覆われた紫外線硬化型コーティング接着剤と、ひずみゲージを固定する紫外線硬化型接着剤との両方を硬化させることができる。したがって、ひずみゲージの固定と、コーティングの形成と、シートの固定とを異なる工程で行うよりも、少ない工数でひずみゲージを設置することができる。したがって、ひずみゲージの固定と防湿を、従来よりも少ない手間と時間により、比較的高い作業効率で行うことができる。また、低温時においても、紫外線硬化型接着剤と紫外線硬化型コーティング接着剤は、紫外線の照射により速やかに硬化するので、熱硬化型の接着剤やコーティング剤を用いた場合よりも作業時間を短縮できる。
【0014】
一実施形態のひずみゲージの設置方法は、上記紫外線硬化型接着剤が、湿気硬化併用型である。
【0015】
上記実施形態によれば、測定対象の表面にひずみゲージを取り付ける紫外線硬化型接着剤が、湿気硬化併用型であるので、ひずみゲージに形成されたパターンやワイヤ等で紫外線の進行が妨げられて、紫外線硬化型接着剤の紫外線の照射量が不十分になっても、湿気により紫外線硬化型接着剤を硬化することができる。
【0016】
一実施形態のひずみゲージの設置方法は、上記フィルムは、上記ひずみゲージに臨む側の面に、プライマが付与されている。
【0017】
上記実施形態によれば、フィルムに付与されたプライマにより、フィルムと、紫外線硬化型コーティング接着剤との接着性が高まるので、紫外線硬化型コーティング接着剤の硬化によって、フィルムをひずみゲージと測定対象の表面とに確実に固定できる。
【0018】
一実施形態のひずみゲージの設置方法は、上記フィルムは、フッ素樹脂で形成されている。
【0019】
上記実施形態によれば、フッ素樹脂で形成されたフィルムにより、ひずみゲージの防湿を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】本発明の第1実施形態のひずみゲージの設置方法における工程を示す図である。
図1B図1Aに続く工程を示す図である。
図1C図1Bに続く工程を示す図である。
図1D図1Cに続く工程を示す図である。
図2A】実施形態のひずみゲージの設置方法で設置されるひずみゲージを示す平面図である。
図2B】ひずみゲージの断面図である。
図3A】第2実施形態のひずみゲージの設置方法における工程を示す図である。
図3B図3Aに続く工程を示す図である。
図3C図3Bに続く工程を示す図である。
図3D図3Cに続く工程を示す図である。
図3E図3Dに続く工程を示す図である。
図3F図3Eに続く工程を示す図である。
図4A】従来のひずみゲージの設置方法における工程を示す図である。
図4B図4Aに続く工程を示す図である。
図4C図4Bに続く工程を示す図である。
図4D図4Cに続く工程を示す図である。
図4E図4Dに続く工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0022】
図1A乃至1Dは、第1実施形態のひずみゲージの設置方法を示す工程であり、図2A及び2Bは、ひずみゲージを示す平面図と断面図である。
【0023】
ひずみゲージ2は公知のものであり、ゲージベース21と、このゲージベース21の表面に形成されたゲージグリッド22と、ゲージグリッド22に接続されたゲージリード26,26と、ゲージグリッド22の端部に設けられたゲージタブにゲージリード26を接続するはんだ部25と、ゲージベース21の表面に設けられてゲージグリッド22を被覆する樹脂カバー23を備える。ゲージベース21は、ポリイミド系樹脂やポリエステル系樹脂で形成される。ゲージグリッド22は、ニッケル・クロム合金又は銅ニッケル合金等の金属箔がパターニングされて形成される。はんだ部25は、例えばすず鉛合金やすず銀合金で形成される。樹脂カバー23は、ポリイミド系樹脂やポリエステル系樹脂で形成され、ゲージベース21と同種の材料で形成されるのが好ましい。上記ゲージベース21と樹脂カバー23は、紫外線を透過する樹脂で形成されている。ゲージリード26は、銅線にビニル樹脂やフッ素樹脂の被膜が設けられたものを用いることができる。
【0024】
ひずみゲージ2は、測定対象である構造物の部材1に設置されると共に、ゲージリード26がケーブルを介して測定装置に接続される。測定装置は、ひずみゲージ2を含んでホイートストンブリッジ回路を構成し、このホイートストンブリッジ回路からの出力電力の変化に基づいて、測定対象のひずみを測定する。
【0025】
本実施形態のひずみゲージの設置方法では、まず、測定対象の部材1の表面であって、ひずみゲージ2を設置する予定の位置及びその周辺の浄化を行う。部材1の表面の浄化は、まず、部材1の表面をサンドペーパやグラインダ等で研磨し、汚れや塗装や錆等を除去する。この後、研磨位置を、アセトン等の溶剤を含んだ脱脂綿等で拭いて、粒子や油脂等を除去する。
【0026】
この後、図1Aに示すように、ひずみゲージ2のゲージベース21の表面であって、部材1の設置位置に接する側の面に、紫外線湿気併用硬化型の接着剤3を塗布する。紫外線湿気併用硬化型の接着剤3は、紫外線硬化型樹脂と、湿気硬化型樹脂とを含んで形成されている。紫外線硬化型樹脂としては、光ラジカル重合型樹脂を用いたものを使用できる。光ラジカル重合型樹脂としては、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、アクリルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系の樹脂を用いることができる。また、湿気硬化型樹脂としては、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系等の樹脂を用いることができる。特に、紫外線湿気併用硬化型の接着剤3は、光ラジカル重合型の紫外線硬化型樹脂と瞬間接着剤が混合されたものを使用でき、その具体例として、スリーボンド社製のTB3177が挙げられる。また、紫外線湿気併用硬化型の接着剤3は、瞬間接着剤に光重合機能を持たせたものを使用でき、例えばシアノアクリレート系接着剤と光アニオン重合開始剤を含有する接着剤を用いることができる。その具体例として、スリーボンド社製のTB1771Eが挙げられる。なお、接着剤3は、湿気硬化の性質を有さず、紫外線硬化型の接着剤であってもよい。
【0027】
続いて、図1Bに示すように、部材1の表面に接着剤3が密着するようにひずみゲージ2を取り付け、ひずみゲージ2の表面に、矢印Fで示すように、作業者の指等で力を加えて押圧する。なお、ひずみゲージ2の押圧は、治具等を用いて行ってもよい。
【0028】
この後、図1Cに示すように、ひずみゲージ2の表面と、このひずみゲージ2の周辺の部材1の表面とを覆うように、紫外線硬化型樹脂を含んで形成されたコーティング剤4を塗布する。このコーティング剤4に含まれる紫外線硬化型樹脂は、光ラジカル重合型樹脂や、光カチオン重合型樹脂を用いたものを使用できる。光ラジカル重合型樹脂としては、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、アクリルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系の樹脂を用いることができる。また、光カチオン重合型樹脂としては、エポキシ系、オキセタン系、ビニルエーテル系の樹脂を用いることができる。紫外線硬化型樹脂の具体例として、スリーボンド社製のTB3013Q又はTB3036を用いることができる。
【0029】
続いて、コーティング剤4の上から、図1Dに示すように、紫外線7を照射する。紫外線7は、例えば紫外線発光ダイオードを内蔵した可搬型の紫外線ランプを用いて、照射することができる。照射された紫外線により、コーティング剤4の紫外線硬化型樹脂が、光重合反応が進行して硬化し、紫外線硬化型樹脂の硬化物によるコーティング層が形成される。また、照射された紫外線は、コーティング剤4と、ひずみゲージ2の樹脂カバー23及びゲージベース21を透過し、ひずみゲージ2と部材1の間に位置する接着剤3に到達する。到達した紫外線により、接着剤3は、光重合反応が進んで硬化し、紫外線硬化型樹脂の硬化物による接着層が形成されて、ひずみゲージ2が部材1の表面に固定される。
【0030】
ここで、ひずみゲージ2に到達した紫外線の一部は、ゲージグリッド22やゲージリード26によってゲージベース21への進行が妨げられ、接着剤3に紫外線の照射が不十分となる領域が生じる。しかしながら、接着剤3は、湿気硬化型樹脂を含むので、湿気により硬化が進むことによって、紫外線の照射が不十分な領域が生じても硬化が促進される。したがって、ひずみゲージ2を部材1の表面に安定して固定することができる。
【0031】
このように、第1実施形態のひずみゲージの設置方法によれば、部材1の表面とひずみゲージ2の間に配置された接着剤3と、ひずみゲージ2の表面及びひずみゲージ2の周辺の部材1の表面を覆うコーティング剤4とを、一度の紫外線の照射によって硬化する。したがって、少ない工程によりひずみゲージ2を部材1の表面に固定することができると共に、ひずみゲージ2のコーティング層を形成することができる。
【0032】
また、第1実施形態のひずみゲージの設置方法によれば、紫外線硬化型樹脂を含む接着剤3と、紫外線硬化型樹脂を含むコーティング剤4を用いるので、低温時において、熱硬化型の接着剤やコーティング剤を用いた場合よりも、迅速に接着層やコーティング層を形成できる。
【0033】
図3A乃至3Fは、第2実施形態のひずみゲージの設置方法を説明する工程図である。第2実施形態のひずみゲージの設置方法では、第1実施形態よりも高い防湿性を実現するために、ひずみゲージ2にフィルム11を被覆する。第2実施形態で設置されるひずみゲージ2は、第1実施形態と同一である。
【0034】
第2実施形態のひずみゲージの設置方法は、まず、第1実施形態と同様に、測定対象の部材1の表面であって、ひずみゲージ2を設置する予定の位置及びその周辺の浄化を行う。部材1の表面の浄化は、サンドペーパ等による研磨と、アセトン等の溶剤を含んだ脱脂綿等による拭き取りで行う。
【0035】
この後、図3Aに示すように、ひずみゲージ2のゲージベース21の表面であって、部材1の設置位置に接する側の面に、第1実施形態と同様の紫外線湿気併用硬化型の接着剤3を塗布する。なお、接着剤3は、紫外線湿気併用硬化型ではなく、紫外線硬化型であってもよい。
【0036】
続いて、図3Bに示すように、部材1の表面に接着剤3が密着するようにひずみゲージ2を取り付け、ひずみゲージ2の表面に、矢印Fで示すように、作業者の指等で力を加えて押圧する。なお、ひずみゲージ2の押圧は、治具等を用いて行ってもよい。
【0037】
この後、図3Cに示すように、ひずみゲージ2の表面と、このひずみゲージ2の周辺の部材1の表面とを覆うように、紫外線硬化型樹脂を含んで形成されたコーティング接着剤10を塗布する。このコーティング接着剤10は、ひずみゲージ2をコーティングする機能と、表面に後述するフィルム11を接着する機能とを有する。このコーティング接着剤10に含まれる紫外線硬化型樹脂は、第1実施形態のコーティング剤4に含まれる紫外線硬化型樹脂と同様のものを用いることができる。コーティング接着剤10の紫外線硬化型樹脂としては、例えば、スリーボンド社製のTB3013Q又はTB3036を用いることができる。
【0038】
続いて、図3Dに示すように、ひずみゲージ2を被覆するためのフィルム11を準備する。フィルム11は、紫外線透過性の樹脂で形成され、例えば、PCTFEやETFE等のフッ素樹脂で形成されるのが好ましい。このフィルム11には、コーティング接着剤10の側の表面に、プライマ12が塗布されている。プライマ12は、コーティング接着剤10とフィルム11との接着性を高めるものを用いる。プライマ12としては、例えば、スリーボンド社製のTB7797を用いることができる。
【0039】
続いて、図3Eに示すように、上記フィルム11を、プライマ12がコーティング接着剤10に接触するように、コーティング接着剤10及びコーティング接着剤10の周辺の部材1の表面を覆うように配置する。
【0040】
続いて、図3Fに示すように、フィルム11の上から紫外線7を照射する。照射された紫外線は、フィルム11を透過してコーティング接着剤10に到達し、さらに、コーティング接着剤10とひずみゲージ2の樹脂カバー23及びゲージベース21を透過して接着剤3に到達する。このようにして各層に到達した紫外線により、コーティング接着剤10の紫外線硬化型樹脂が、光重合反応が進行して硬化し、紫外線硬化型樹脂の硬化物によるコーティング層を兼ねる接着層が形成されて、ひずみゲージ2を被覆すると共にフィルム11を接着する。また、接着剤3が、紫外線により光重合反応が進んで硬化し、紫外線硬化型樹脂の硬化物による接着層が形成されて、ひずみゲージ2が部材1の表面に固定される。
【0041】
ここで、ひずみゲージ2に到達した紫外線の一部は、ゲージグリッド22やゲージリード26で進行が妨げられて接着剤3への照射が不十分となる領域が生じるが、接着剤3は湿気硬化型樹脂を含むので、湿気により硬化が促進される。したがって、ひずみゲージ2を部材1の表面に安定して固定することができる。
【0042】
このように、第2実施形態のひずみゲージの設置方法によれば、部材1の表面とひずみゲージ2の間に配置された接着剤3と、ひずみゲージ2の表面及びひずみゲージ2の周辺の部材1の表面を覆うコーティング接着剤10とを、一度の紫外線の照射によって硬化する。したがって、少ない工程により、ひずみゲージ2を部材1の表面に固定することができ、ひずみゲージ2のコーティング層を形成でき、さらに、フィルム11をひずみゲージ2の上に被覆して固定することができる。
【0043】
また、第2実施形態のひずみゲージの設置方法によれば、紫外線硬化型樹脂を含む接着剤3と、紫外線硬化型樹脂を含むコーティング接着剤10を用いるので、低温時において、熱硬化型の接着剤やコーティング接着剤を用いた場合よりも、迅速に接着層やコーティング接着層を形成できる。
【0044】
また、第1実施形態のひずみゲージの設置方法で用いたコーティング剤4と、第2実施形態のひずみゲージの設置方法で用いたコーティング接着剤10は、同じ組成であったが、第1実施形態のひずみゲージの設置方法では、ひずみゲージ2を被覆して汚損防止効果を奏するものであれば、コーティング剤4は表面側にフィルム等を接着する効果を有しなくてもよい。
【0045】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 部材
2 ひずみゲージ
3 接着剤
4 コーティング剤
7 紫外線
10 コーティング接着剤
11 フィルム
12 プライマ
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E