(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】粉末固形組成物の製造方法、及び粉末固形組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/891 20060101AFI20231228BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20231228BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20231228BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20231228BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20231228BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/25
A61K8/31
A61K8/29
A61Q1/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019234724
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】向山 寛人
(72)【発明者】
【氏名】廣▲崎▼ 賢
(72)【発明者】
【氏名】高橋 希佳
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-169207(JP,A)
【文献】特表2011-505358(JP,A)
【文献】特開2007-291074(JP,A)
【文献】特開2006-069937(JP,A)
【文献】特開2005-289972(JP,A)
【文献】特開2008-174492(JP,A)
【文献】特開2004-238366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性の液状油分が配合された基剤を含有する粉末固形組成物の製造方法であって、
前記基剤に
融点が55℃以上90℃以下の粉末状のワックスを配合する工程と、
前記基剤を溶媒に分散させる工程と、
前記ワックスが溶解しない第1の温度で前記溶媒を揮発させる工程と、
前記溶媒を揮発させる工程の後に、前記ワックスが溶解する第2の温度で前記基剤を加熱する工程とを含み、
前記基剤に光輝性粉体が配合されており、
前記不揮発性の液状油分の配合量が、前記基剤に対して15質量%以上40質量%以下である、粉末固形組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1の温度は、前記ワックスの融点未満の温度である、請求項1に記載の粉末固形組成物の製造方法。
【請求項3】
前記第2の温度が、前記ワックスの融点以上の温度である、請求項1または2に記載の粉末固形組成物の製造方法。
【請求項4】
前記第2の温度が、55℃以上90℃以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粉末固形組成物の製造方法。
【請求項5】
前記不揮発性の液状油分は、不揮発性のシリコーン油が配合されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粉末固形組成物の製造方法。
【請求項6】
前記不揮発性のシリコーン油の配合量が、前記基剤に対して10質量%以上30質量%以下である、請求項5に記載の粉末固形組成物の製造方法。
【請求項7】
前記ワックスは、融点が
65℃以上
80℃以下のワックスである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の粉末固形組成物の製造方法。
【請求項8】
前記ワックスの配合量が、前記基剤に対して0.5質量%以上10質量%以下である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の粉末固形組成物の製造方法。
【請求項9】
前記光輝性粉体の配合量が、前記基剤に対して10質量%以上60質量%以下である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の粉末固形組成物の製造方法。
【請求項10】
前記光輝性粉体の平均粒子径が30μm以上である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の粉末固形組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の製造方法により得られる粉末固形組成物。
【請求項12】
不揮発性のシリコーン油が配合された不揮発性の液状油分
25質量%以上40質量%以下と、
融点が55℃以上90℃以下のワックス2質量%以上10質量%以下と、
平均粒子径が30μm以上の光輝性粉体10質量%以上60質量%以下とを含有する、粉末固形組成物。
【請求項13】
前記ワックスは、融点が65℃以上80℃以下のワックスである、請求項12に記載の粉末固形組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末固形組成物の製造方法、及び粉末固形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション、アイシャドウ等の粉末状化粧品は、しっとり感やつや等の使用感を付与するため、油分が配合されている。また、従来の粉末状化粧品では、耐衝撃性を付与するため、ワックスが配合されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、従来の粉末状化粧品には、使用時のパール感等の付加的な特性を付与するため、光輝性材料等の成分が配合されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-220053号公報
【文献】特開2002-275033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の粉末状化粧品では、光輝性材料等の成分の配合量を増やしたり、配合する成分の粒径を大きくすると、耐衝撃性が低下するため、パール感等の付加的な特性を向上させるのに限界がある。また、粉末状化粧品の製造時にワックスを溶かすことで、耐衝撃性の低下をある程度は抑制できるものの、溶けたワックスの膜が溶媒の揮発を妨げ、得られる粉末状化粧品の使用性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、使用感を低下させずに付加的な特性を向上させることができる粉末固形組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る粉末固形組成物の製造方法は、不揮発性の液状油分が配合された基剤を含有する粉末固形組成物の製造方法であって、前記基剤に融点が55℃以上90℃以下の粉末状のワックスを配合する工程と、前記基剤を溶媒に分散させる工程と、前記ワックスが溶解しない第1の温度で前記溶媒を揮発させる工程と、前記溶媒を揮発させる工程の後に、前記ワックスが溶解する第2の温度で前記基剤を加熱する工程とを含み、前記基剤に光輝性粉体が配合されており、前記不揮発性の液状油分の配合量が、前記基剤に対して15質量%以上40質量%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、使用感を低下させずに付加的な特性を向上させることができる粉末固形組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法のフローチャートである。
【
図2】本実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法(配合方法)の工程図である。
【
図3】本実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法(成形方法)の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0010】
<粉末固形組成物の製造方法>
図1は、本発明の実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法のフローチャートである。
図2、
図3は、本実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法の工程図である。
【0011】
本実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法は、不揮発性の液状油分が配合された基剤を含有する粉末固形組成物の製造方法である。本明細書において、粉末固形組成物は、粉末または粉体を含む組成物を成形して固形物にしたものを示す。また、基剤は、粉末または粉体を主成分として含む。さらに、液状油分は、液体状の油成分または油脂を示す。また、不揮発性とは、動粘度が5cSt(センチストークス)以上であることを示す。
【0012】
本実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法は、不揮発性の液状油分が配合された基剤に粉末状のワックスを配合する工程を含む(
図1のステップS1参照)。具体的には、ヘンシェルミキサー10に、粉体B、ワックスW、不揮発性の液状油分L、光輝性粉体G、及び不揮発性のシリコーン油Oを投入し、混練する(
図2参照)。
【0013】
ヘンシェルミキサー10の構成は、任意であり、例えば、混合槽11、モータを内蔵する本体12、回転軸13、ブレード14を備える(
図2参照)。なお、粉体B、ワックスW等を混練する態様は、これに限定されるものではない。
【0014】
粉体の成分は、特に限定されず、例えば、タルク、カオリン、雲母(マイカ)、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、シリコーンパウダー、ミリスチン酸マグネシウム(マグネシウムミリステート)、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、クロルフェネシン、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの成分は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
本実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法において、粉体の配合量は、任意であるが、粉末固形組成物100質量%に対して、好ましくは10質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上65質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下である。
【0016】
ヘンシェルミキサー10内のワックスWは、粉砕された状態で混練される。この粉砕されたワックスは、本発明の粉末固形組成物の製造方法における粉末状のワックスの一例である。ワックスは、特に限定されず、好ましくは融点が55℃以上90℃以下のワックスであり、より好ましくは融点が60℃以上85℃以下のワックスであり、さらに好ましくは65℃以上80℃以下のワックスである。
【0017】
ワックスの成分は、特に限定されず、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ(ライスロウ)、カポックロウ、モクロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバエステル(水素添加ホホバ油)、硬質ラノリン、セラックロウ、ビーズワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸グリセリド、硬化ヒマシ油、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、ショ糖脂肪酸エステル(トリ酢酸テトラステアリン酸スクロース)等が挙げられる。これらの成分は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
ワックスの配合量は、任意であるが、基剤に対して、0.5質量%以上10質量%以下にすることができ、好ましくは1質量%以上6.5質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以上6質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上5.5質量%以下である。
【0019】
不揮発性の液状油分の成分は、特に限定されず、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、セレシン、ワセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-クチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、クロタミトン(C13H17NO)等が挙げられる。これらの不揮発性の液状油分は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
不揮発性の液状油分の配合量は、任意であるが、基剤に対して、好ましくは15質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上38質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以上35質量%以下である。
【0021】
光輝性粉体は、任意に配合することができる。本実施形態では、ヘンシェルミキサー10内の光輝性粉体Gは、粉体BとワックスWとともに、粉砕された状態で混練される。この粉砕された光輝性粉体Gは、本発明の粉末固形組成物の製造方法における光輝性粉体の一例である。
【0022】
光輝性粉体の平均粒子径は、任意であるが、好ましくは30μm以上、より好ましくは35μm以上、さらに好ましくは40μm以上である。ここで、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積分布が50%となる粒子径である。
【0023】
なお、光輝性粉体の均粒子径の上限は、特に限定されないが、粉末固形組成物の耐衝撃性を維持する観点から、光輝性粉体の均粒子径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0024】
光輝性粉体の成分は、特に限定されず、例えば、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆タルク、酸化亜鉛被覆シリカ、酸化チタン被覆着色雲母、ベンガラ被覆雲母チタン、ベンガラ・黒酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、コンジョウ被覆雲母チタン等が挙げられる。これらの成分は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
光輝性粉体の配合量は、任意であるが、基剤に対して、好ましくは10質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上55質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上50質量%以下である。
【0026】
不揮発性のシリコーン油は、任意に配合することができる。ここで、不揮発性のシリコーン油は、動粘度が5cSt(センチストークス)以上のシリコーン油を示す。不揮発性のシリコーン油の成分は、特に限定されず、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。これらの成分は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
本実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法において、不揮発性のシリコーン油の配合量は、任意であるが、基剤に対して、好ましくは10質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは13質量%以上28質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上25質量%以下である。
【0028】
本実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法は、基剤を溶媒に分散させる工程を含む(
図1のステップS2参照)。ここで、基剤を溶媒に分散させることは、粉末固形組成物を湿式で製造することを示す。具体的には、さらに溶媒Sをヘンシェルミキサー10内の加え撹拌する(
図2参照)。
【0029】
溶媒の成分は、特に限定されず、例えば、水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等が挙げられる。これらの成分は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
溶媒の配合量は、任意であるが、基剤(基剤にワックス、光輝性粉体等を配合した全体)100質量%に対して、好ましくは3質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0031】
なお、本実施形態の粉末固形組成物の製造方法において、本発明の効果を損なわない範囲において、上記成分以外の、色材、酸化防止剤、防腐剤等を配合することができる。
【0032】
色材としては、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、無機白色顔料(例えば、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、チタン酸鉄等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウムまたはアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号、青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β-カロチン等)等が例示される。なお、色材の配合量は、任意である。
【0033】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が例示される。
【0034】
酸化防止剤の配合量は、任意であり、基剤に対して、好ましくは0.005質量%以上0.2質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.015質量%以上0.05質量%以下である。
【0035】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、オクトキシグリセリン、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド等が例示される。
【0036】
防腐剤の配合量は、任意であり、基剤に対して、好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上0.4質量%以下であり、さらに好ましくは0.15質量%以上0.3質量%以下である。
【0037】
ヘンシェルミキサー10内の粉体B、ワックスW、光輝性粉体G、不揮発性の液状油分L、不揮発性のシリコーン油O、及び溶媒Sは、撹拌され、ペースト状のスラリーPとなる(
図2参照)。そして、ヘンシェルミキサー10内のスラリーPを、成形型20に流し込む(
図2参照)。このとき、スラリーPは、ろ過しながら成形型20に充填するのが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法は、ワックスが溶解しない第1の温度で溶媒を揮発させる工程を含む(
図1のステップS3参照)。第1の温度は、任意であるが、好ましくはワックスの融点未満の温度(ワックスが溶解しない温度)である。また、溶媒を揮発させるとは、液体の溶媒を気化させることを示す。
【0039】
この工程では、成形型20に充填されたスラリーPをワックスの融点未満の温度(約50℃)で加温する(
図3参照)。なお、スラリーPを加温する態様は、任意であり、例えば、スラリーPを充填した成形型20を、脱気装置付きの恒温槽に設置して乾燥すればよい。また、スラリーPの加温時間は、任意であり、例えば、3分から3時間程度である。
【0040】
これにより、スラリーP中の溶媒Sは揮発し、揮発溶媒VとしてスラリーPから除去脱気される。一方、スラリーP中のワックスWは、溶解せず粉末状のままスラリーP中に残存する。
【0041】
本実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法は、ワックスが溶解する第2の温度で基剤を加熱する工程を含む(
図1のステップS4参照)。第2の温度は、任意であるが、好ましくはワックスの融点以上の温度(ワックスが溶解する温度)である。また、基剤を加熱するとは、基剤に熱を加えて乾燥させることを示す。
【0042】
具体的には、第2の温度は、好ましくは55℃以上90℃以下、より好ましくは60℃以上85℃以下であり、さらに好ましくは65℃以上80℃以下、であることが好ましい。
【0043】
この工程では、成形型20に充填されたスラリーPをワックスの融点以上の温度(約70℃)で乾燥する(
図3参照)。なお、基剤を加熱する態様は、任意であり、例えば、スラリーPを充填した成形型20を、上述の恒温槽に設置したまま恒温槽内の温度を昇温して乾燥すればよい。また、基剤の加熱時間は、任意であり、例えば、3分から3時間程度である。
【0044】
これにより、スラリーPは、溶媒Sが除去された状態で乾燥され、粉末状のワックスWがスラリーP中で溶解する。なお、乾燥した基剤を室温に冷却すると、固形物が得られる。
【0045】
本実施形態に係る粉末固形組成物の製造方法は、ファンデーション、アイシャドウ、チークカラー、ボディーパウダー、パフュームパウダー、ベビーパウダー、プレスドパウダー、デオドラントパウダー、おしろいなどの固形粉末化粧料の製造に好適に用いられる。
【0046】
本実施形態では、上述のように、不揮発性の液状油分が配合された基剤に粉末状のワックスを配合し、該基剤を分散する溶媒をワックスが溶解しない第1の温度で揮発させることで、溶媒が揮発する際に基剤に配合されたワックスの粉末状が維持される。そのため、基剤に配合されたワックスは、溶媒の揮発の妨げにならない。
【0047】
また、ワックスが配合された基剤をワックスが溶解する第2の温度で加熱することで、溶媒が除去された状態で粉末状のワックスを溶かすことができる。この溶けたワックスが室温で固化して得られる粉末固形組成物は、耐衝撃性が高いものとなる。そのため、基剤に光輝性粉体等の成分が配合されていても、粉末固形組成物の耐衝撃性の低下を防ぐことができる。
【0048】
また、溶媒が除去された状態で粉末状のワックスが溶けることで、粉末固形組成物内に溶媒が残存することが抑制され、得られる粉末固形組成物の使用感(例えば、しっとり感、つや、やわらかさ、とれ等)が向上する。このように、本実施形態によれば、使用感を低下させずに粉末固形組成物の付加的な特性を向上させることができる。
【0049】
さらに、不揮発性の液状油分の配合量を基剤に対して15質量%以上40質量%以下にすることで、得られる粉末固形組成物の使用感を向上させることができる。そのため、本実施形態によれば、使用感に優れる粉末固形組成物が得られる。
【0050】
また、本実施形態では、上述のように、第1の温度をワックスの融点未満の温度にすることで、溶媒を揮発させる第1の温度をワックスが溶解しない温度にすることができる。これにより、溶媒が揮発する際に基剤に配合されたワックスの粉末状が維持され、ワックスが溶媒の揮発の妨げになることを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上述のように、第2の温度をワックスの融点以上の温度にすることで、基剤を加熱する第2の温度をワックスが溶解する温度にすることができる。これにより、溶媒が除去された状態で粉末状のワックスを溶かすことができ、得られる粉末固形組成物の耐衝撃性の低下を防ぎ、粉末固形組成物の使用感を向上させることができる。
【0052】
本実施形態では、上述のように、第2の温度を55℃以上90℃以下にすることで、ワックスが溶解する第2の温度の温度範囲が、ワックスを溶解させずに溶媒を揮発させる第1の温度の温度範囲に重ならないため、溶媒が除去された状態で粉末状のワックスを溶かすことができる。
【0053】
また、本実施形態では、第2の温度を55℃以上90℃以下にすることで、ワックスとして融点が55℃以上90℃以下のワックスを用いることができる。55℃以上90℃以下のワックスは、いずれも室温で固体であり、取扱いが容易である。また、融点が55℃以上90℃以下のワックスが用いられることで、ワックスの種類の選択の幅が広い。
【0054】
本実施形態では、上述のように、不揮発性の液状油分に不揮発性のシリコーン油を配合することで、得られる粉末固形組成物の使用感を高い精度で向上させることができる。そのため、本実施形態によれば、使用感に優れる粉末固形組成物を高い精度で得ることができる。
【0055】
また、上述のように、不揮発性のシリコーン油の配合量を基剤に対して10質量%以上30質量%以下にすることで、得られる粉末固形組成物の使用感をより高い精度で向上させることができる。そのため、本実施形態によれば、使用感に優れる粉末固形組成物をより高い精度で得ることができる。
【0056】
本実施形態では、上述のように、粉末状のワックスとして融点が55℃以上90℃以下のワックスを用いることで、第1の温度ではワックスを溶解させずに溶媒を揮発することができ、第2の温度ではワックスを溶解させることができる。これにより、ワックスが溶媒の揮発の妨げにならず、溶媒が除去された状態で粉末状のワックスを溶かすことができる。
【0057】
本実施形態では、上述のように、ワックスの配合量を基剤に対して0.5質量%以上10質量%以下にすることで、得られる粉末固形組成物の耐衝撃性を向上させることができる。また、ワックスの配合量をこのような範囲にすることで、得られる粉末固形組成物の使用感を向上させることができる。
【0058】
本実施形態では、上述のように、粉末固形組成物の耐衝撃性を向上させることができるため、基剤に光輝性粉体が配合されていても、粉末固形組成物の耐衝撃性の低下を防ぐことができる。そのため、本実施形態では、基剤に光輝性粉体を配合することで、得られる粉末固形組成物の使用感を低下させずにパール感を向上させることができる。
【0059】
また、粉末固形組成物の耐衝撃性を向上させることができることで、光輝性粉体の配合量を多くしても、粉末固形組成物の耐衝撃性の低下を防ぐことができる。そのため、本実施形態では、基剤に対して10質量%以上60質量%以下の光輝性粉体を配合することで、得られる粉末固形組成物のパール感を高い精度で向上させることができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、上述のように、粉末固形組成物の耐衝撃性を向上させることができるため、基剤に配合される光輝性粉体の粒径を大きくしても、粉末固形組成物の耐衝撃性の低下を防ぐことができる。そのため、本実施形態では、平均粒子径が30μm以上の光輝性粉体を配合することで、得られる粉末固形組成物の使用感を低下させずにパール感を高い精度で向上させることができる。
【0061】
<粉末固形組成物>
本実施形態に係る粉末固形組成物は、不揮発性のシリコーン油が配合された不揮発性の液状油分と、融点が55℃以上90℃以下のワックスと、平均粒子径が30μm以上の光輝性粉体とを含有する。
【0062】
不揮発性の液状油分の含有量は、粉末固形組成物100質量%に対して、15質量%以上40質量%以下であり、好ましくは23質量%以上38質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上35質量%以下である。
【0063】
また、不揮発性のシリコーン油の含有量は、任意であるが、粉末固形組成物100質量%に対して、好ましくは10質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは13質量%以上28質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上25質量%以下である。
【0064】
融点が55℃以上90℃以下のワックスの含有量は、粉末固形組成物100質量%に対して、2質量%以上10質量%以下であり、好ましくは2.5質量%以上4.5質量%以下であり、3質量%以上4質量%以下である。
【0065】
また、ワックスの融点は、好ましくは60℃以上85℃以下であり、より好ましくは65℃以上80℃以下である。また、ワックスの性状は、特に限定されないが、粉末状であることが好ましい。
【0066】
平均粒子径が30μm以上の光輝性粉体の含有量は、粉末固形組成物100質量%に対して、10質量%以上60質量%以下であり、好ましくは15質量%以上55質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上50質量%以下である。
【0067】
また、光輝性粉体の平均粒子径は、好ましくは30μm以上、より好ましくは35μm以上、さらに好ましくは40μm以上である。なお、光輝性粉体の均粒子径の上限は任意であるが、粉末固形組成物の耐衝撃性を維持する観点から、光輝性粉体の均粒子径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0068】
本実施形態に係る粉末固形組成物は、上述の粉末固形組成物の製造方法により得られる。すなわち、不揮発性の液状油分が配合された基剤に粉末状のワックスを配合する工程と、基剤を溶媒に分散させる工程と、ワックスが溶解しない第1の温度で溶媒を揮発させる工程と、ワックスが溶解する第2の温度で基剤を加熱する工程を実行することで、本実施形態に係る粉末固形組成物を得ることができる。
【0069】
本実施形態に係る粉末固形組成物は、ファンデーション、アイシャドウ、チークカラー、ボディーパウダー、パフュームパウダー、ベビーパウダー、プレスドパウダー、デオドラントパウダー、おしろいなどの固形粉末化粧料に好適に用いられる。
【0070】
このようにして得られる粉末固形組成物は、耐衝撃性が高く、使用感に優れている。また、本実施形態では、上述のように、不揮発性のシリコーン油が配合された不揮発性の液状油分、融点が55℃以上90℃以下のワックス、および平均粒子径が30μm以上の光輝性粉体を、それぞれ所定の範囲で含有することで、粉末固形組成物の使用感を維持しながらパール感を向上させることができる。
【0071】
なお、本実施形態に係る粉末固形組成物は、粉末状のワックスが第1の温度で溶媒を揮発させる工程で溶解せず、第2の温度で基剤を加熱する工程で溶解するものであるが、得られた粉末固形組成物において、溶媒は除去され、ワックスの粉末状は消失している。そのため、粉末固形組成物の製造前に基剤、不揮発性の液状油分、および光輝性粉体等とともに粉末状のワックスが溶媒に分散されてなる粉末固形組成物の構造または特性を解析することによって、本実施形態に係る粉末固形組成物の構造または特性を明記して特定することは現時点で技術的に困難である。
【0072】
また、何らかの方法によって本実施形態に係る粉末固形組成物の構造または特性を解析でき得るとしても、特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることに鑑みて、本実施形態に係る粉末固形組成物の構造または特性を特定する作業を行うことには著しく過大な経済的支出や時間を要することになる。すなわち、本実施形態に係る粉末固形組成物をその構造または特性を明記して直接特定することには、不可能・非実際的事情が存在する。
【実施例】
【0073】
以下、本発明について、さらに実施例を用いて説明する。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限り、質量基準である。また、各種の試験および評価は、下記の方法にしたがって行った。
【0074】
<試験体>
ヘンシェルミキサー(協立理工社製、SK-M)に、粉体、ワックス、色材、光輝性粉体、不揮発性の液状油分、及び不揮発性のシリコーン油を投入し、基剤を混練する(
図1のステップS1、
図2参照)。次いで、ヘンシェルミキサーに溶媒を添加し、撹拌機(PRIMIX社製、ロボミクス)で撹拌し、スラリー(湿式の基剤)Pを作製する(
図1のステップS2、
図2参照)。ヘンシェルミキサー内のスラリーPを、板状の成形型20に流し込む(
図2参照)。スラリーPが充填された成形型20を恒温槽(ヤマト科学社製、DF611)にセットし、約50℃(ワックスの融点未満の温度)で約3時間加温する(
図1のステップS3、
図3参照)。その後、恒温槽内の温度を約70℃(ワックスの融点以上の温度)に調整し、さらに約1時間加熱(乾燥)する(
図1のステップS4、
図3参照)。成形型20を恒温槽から取り出し、室内に約1時間放置する。得られた成形体(固形物)Cを試験体とする。なお、試験体の製造方法は、上記に条件に限定されず、工場等の製造設備や製造規模に応じて適宜変更することができる。
【0075】
<耐衝撃性>
試験体を30cmの高さから金属板上に落下させ、割れるまでの回数を調べた。各試験体につき、試験数(N)=3の平均値が5回以上で良好であると評価した。
【0076】
<しっとり感>
専門パネル2名が試験体を目の周囲(まぶた)に塗布したときのしっとり感を、以下の基準で評価した。なお、評価が2以上の場合にしっとり感が良好であると評価した。
5:とてもしっとりすると感じると回答した。
4:しっとりすると感じると回答した。
3:ややしっとりすると感じると回答した。
2:わずかにしっとりすると感じると回答した。
1:しっとりすると全く感じないと回答した。
【0077】
<つや>
専門パネル2名が試験体を目の周囲(まぶた)に塗布したときのつやを、以下の基準で評価した。なお、評価が2以上の場合につやが良好であると評価した。
5:とてもつやがあると感じると回答した。
4:つやがあると感じると回答し。
3:ややつやがあると感じると回答した。
2:わずかにつやがあると感じると回答した。
1:つやがあると全く感じないと回答した。
【0078】
<やわらかさ>
専門パネル2名が試験体を目の周囲(まぶた)に塗布したときのやわらかさを、以下の基準で評価した。なお、評価が2以上の場合にやわらかさが良好であると評価した。
5:とてもやわらかいと感じると回答した。
4:やわらかいと感じると回答し。
3:やややわらかいと感じると回答した。
2:わずかにやわらかいと感じると回答した。
1:やわらかいと全く感じないと回答した。
【0079】
<パール感>
専門パネル2名が試験体を目の周囲(まぶた)に塗布したときのパール感(光沢)を、以下の基準で評価した。
5:とてもパール感があると感じると回答した。
4:パール感があると感じると回答し。
3:ややパール感があると感じると回答した。
2:わずかにパール感があると感じると回答した。
1:パール感があると全く感じないと回答した。
【0080】
<とれ>
専門パネル2名が試験体を目の周囲(まぶた)に塗布したときのとれを、以下の基準で評価した。なお、評価が2以上の場合にとれが良好であると評価した。
5:とてもとれがよいと感じると回答した。
4:とれがよいと感じると回答し。
3:ややとれがよいと感じると回答した。
2:わずかにとれがよいと感じると回答した。
1:とれがよいと全く感じないと回答した。
【0081】
以下、実施例及び比較例について、説明する。
【0082】
[実施例1]
粉体としてタルク2.5部、合成金雲母10部、酸化亜鉛1部、ミリスチン酸マグネシウム1部、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー4部、及び窒化ホウ素8部を配合し、ワックスとしてホホバエステル(FLORATECH社製、フローラエステル70HG)2.5部を配合し、色材として赤226/マイカ混合物1部を配合し、光輝性粉体として合成金雲母/酸化チタン混合物(日本光研工業社製、TWINCLEPEARL(登録商標)400、平均粒子径37μm)20部、及び合成金雲母/酸化チタン混合物(日本光研工業社製、TWINCLEPEARL(登録商標)500、平均粒子径90μm)20部を配合し、不揮発性の液状油分としてワセリン2部、リンゴ酸ジイソステアリル6部、及びトリエチルヘキサノイン2部を配合し、不揮発性のシリコーン油としてジメチコン(信越化学工業社製、KF-96A-6cs)20部を配合して、全体を100部とした基剤に、さらに溶媒として99%エタノール30部を配合して、試験体を作製し、評価した。試験体の条件、及び評価を表1に示す。
【0083】
[実施例2]
粉体として合成金雲母の配合量を30部とし、光輝性粉体として合成金雲母/酸化チタン混合物(日本光研工業社製、TWINCLEPEARL(登録商標)400、平均粒子径37μm)の配合量を10部とし、合成金雲母/酸化チタン混合物(日本光研工業社製、TWINCLEPEARL(登録商標)500、平均粒子径90μm)の配合量を10部とした以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0084】
[実施例3]
粉体として合成金雲母の配合量を20部とし、光輝性粉体として合成金雲母/酸化チタン混合物(日本光研工業社製、TWINCLEPEARL(登録商標)400、平均粒子径37μm)の配合量を15部とし、合成金雲母/酸化チタン混合物(日本光研工業社製、TWINCLEPEARL(登録商標)500、平均粒子径90μm)の配合量を15部とした以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0085】
[実施例4]
粉体として合成金雲母を配合せず、光輝性粉体として合成金雲母/酸化チタン混合物(日本光研工業社製、TWINCLEPEARL(登録商標)400、平均粒子径37μm)の配合量を25部とし、合成金雲母/酸化チタン混合物(日本光研工業社製、TWINCLEPEARL(登録商標)500、平均粒子径90μm)の配合量を25部とした以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0086】
[実施例5]
ワックスとしてホホバエステルの代わりにトリ酢酸テトラステアリン酸スクロース(第一工業製薬社製、シュガーワックス(登録商標)A-10E)2.5部を配合した以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0087】
[実施例6]
ワックスとしてホホバエステルの代わりにパラフィン92.5%とマイクロクリスタリンワックス7.5%の混合物(日興リカ社製、パーミック160)2.5部を配合した以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0088】
[実施例7]
ワックスとしてホホバエステルの代わりにポリエチレン80%とマイクロクリスタリンワックス20%の混合物(日興リカ社製、PAワックス)2.5部を配合した以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0089】
[実施例8]
粉体として合成金雲母の配合量を20部とし、不揮発性のシリコーン油としてジメチコンの配合量を10部とした以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0090】
[実施例9]
粉体として合成金雲母を配合せず、不揮発性のシリコーン油としてジメチコンの配合量を30部とした以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0091】
[実施例10]
粉体として合成金雲母の配合量を7.5部とし、ワックスとしてホホバエステルの配合量を5部とした以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0092】
[実施例11]
ワックスとしてホホバエステルの代わりにトリ酢酸テトラステアリン酸スクロース5部を配合した以外は、実施例10と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0093】
[実施例12]
ワックスとしてホホバエステルの代わりにパラフィン92.5%とマイクロクリスタリンワックス7.5%の混合物5部を配合した以外は、実施例10と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0094】
[実施例13]
ワックスとしてホホバエステルの代わりにポリエチレン80%とマイクロクリスタリンワックス20%の混合物(日興リカ社製、PAワックス)5部を配合した以外は、実施例10と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0095】
[比較例1]
粉体として合成金雲母の配合量を30部とし、不揮発性のシリコーン油を配合しなかった(不揮発性の液状油分の総量を15質量%未満とした)以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0096】
[比較例2]
溶媒を配合せず、基剤を乾式で作製し、ワックスの融点以上の温度(約70℃)で加熱しなかった以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0097】
[比較例3]
粉体として合成金雲母の配合量を12.5部とし、ワックスを配合せず、ワックスの融点以上の温度(約70℃)で加熱しなかった以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0098】
【0099】
【0100】
表1、表2より、不揮発性のシリコーン油が配合された不揮発性の液状油分15質量%以上40質量%以下と、融点が55℃以上90℃以下の粉末状のワックス2質量%以上5質量%以下と、平均粒子径が30μm以上の光輝性粉体10質量%以上60質量%以下とを湿式で混合し、約50℃(ワックスが溶解しない温度)で溶媒を揮発させた後に、約70℃(ワックスが溶解する温度)で基剤を加熱して得られた粉末固形組成物は、耐衝撃性、しっとり感、つや、やわらかさ、パール感、とれのいずれも良好であった(実施例1~13)。
【0101】
これに対して、表2より、不揮発性の液状油分の総量が15質量%未満であり、湿式で混合した粉末固形組成物は、しっとり感、つや、やわらかさ、とれが劣るものであった(比較例1)。
【0102】
また、表2より、乾式で混合し、ワックスの融点以上の温度で加熱しなかった粉末固形組成物は、耐衝撃性が劣るものであった(比較例2)。
【0103】
また、表2より、ワックスを配合しない粉末固形組成物は、耐衝撃性、とれが劣るものであった(比較例3)。
【0104】
これらの結果から、基剤に粉末状のワックスを配合する工程と、基剤を溶媒に分散させる工程と、ワックスが溶解しない第1の温度で溶媒を揮発させる工程と、ワックスが溶解する第2の温度で基剤を加熱する工程とを含む粉末固形組成物の製造方法は、粉末固形組成物の使用感を低下させずに付加的な特性を向上させることが判った。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0106】
10 ヘンシェルミキサー
11 混合槽
12 本体(モータ)
13 回転軸
14 ブレード
20 成形型
B 粉体
W ワックス
L 不揮発性の液状油分
S 溶媒
O 不揮発性のシリコーン油
P スラリー
V 揮発溶媒
C 成形体(粉末固形組成物)