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特許7411413熱適応性衣服の構築方法及びコイル化アクチュエータ繊維の作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】熱適応性衣服の構築方法及びコイル化アクチュエータ繊維の作製方法
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/26 20060101AFI20231228BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20231228BHJP
   D02G 3/44 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
D02G3/26
A41D13/002
D02G3/44
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019555649
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018026941
(87)【国際公開番号】W WO2018191291
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-04-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】62/483,839
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517333956
【氏名又は名称】アザー ラブ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】リドリー ブレント
(72)【発明者】
【氏名】チャン ジーン
(72)【発明者】
【氏名】マイクランツ シャラ
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン コナー エドワード
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】稲葉 大紀
【審判官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533521(JP,A)
【文献】特開2000-234231(JP,A)
【文献】特開2004-197259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00- 3/48, D02J 1/00-13/00, B81B 1/00- 7/04, B81C 1/00-99/00, A41D31/00-31/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着されるとともに、ユーザの体の一部分を少なくとも部分的に覆うように構成された熱適応性衣服の構築方法であって、
複数のコイル化アクチュエータ繊維を作製する工程と、
前記作製された複数のコイル化アクチュエータ繊維を含む熱適応性布を作製する工程と、
前記熱適応性布によって画定される衣服本体を作製する工程と、
を備え、
前記複数のコイル化アクチュエータ繊維の各々は、
繊維を加撚して、繊維バイアス角度α繊維が25°~50°である高度に加撚した繊維を作製し、
前記高度に加撚した繊維を犠牲芯に巻き付けて、前記高度に加撚した繊維にコイルを作製し、
前記犠牲芯上に配置された前記高度に加撚した繊維コイルに熱を加えるかまたは化学的セット剤を塗布することによって、前記高度に加撚した繊維コイルをセットし、
前記犠牲芯を溶媒に溶解させて前記犠牲芯を除去して、
2.0以上のコイルばね指数(C)、
20℃以上のコイル接触温度
|CTE|≧2mm/m/Kの熱応答性、
25°~50°の繊維バイアス角度α繊維
という特徴を有するコイル化アクチュエータ繊維を作製する、
ことによって作製され、
前記衣服本体は、
装着するユーザの体と面するように構成された内面を有する内側部分と、
前記装着するユーザの外側環境と面するように構成された外面を有する外側部分と、を含み、
前記熱適応性布は、第1の環境温度範囲に応答して、基本の構成を取るように構成されており、
前記熱適応性布は、前記第1の環境温度範囲とは別の第2の環境温度範囲に応答して、嵩高な構成を取るように構成されている、方法。
【請求項2】
水への溶解を通じて、前記犠牲芯が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記犠牲芯が、水溶性ポリマーの、モノフィラメント、フィラメント糸または短繊維糸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高度に加撚した繊維コイルが布に組み込まれた後に、前記犠牲芯が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数のコイル化アクチュエータ繊維の作製方法であって、
前記複数のコイル化アクチュエータ繊維の各々は、
繊維を加撚して、繊維バイアス角度α繊維が25°~50°である加撚繊維を作製する工程と、
前記加撚繊維を犠牲芯に巻き付けて、前記加撚繊維にコイルを作製する工程と、
前記犠牲芯上に配置された前記加撚繊維コイルに熱を加えるかまたは化学的セット剤を塗布することによって、前記高度に加撚した繊維コイルをセットする工程と、
前記犠牲芯を溶媒に溶解させて前記犠牲芯を除去する工程であって、
|CTE|≧2mm/m/Kの熱応答性、
という特徴を有するコイル化アクチュエータ繊維を作製する工程と、
によって作製される、方法。
【請求項6】
前記コイル化アクチュエータ繊維を作製するべく前記犠牲芯を溶媒に溶解させて前記犠牲芯を除去する工程は、
2.0以上のコイルばね指数(C)、
という特徴を更に有するコイル化アクチュエータ繊維を作製する工程を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コイル化アクチュエータ繊維を作製するべく前記犠牲芯を溶媒に溶解させて前記犠牲芯を除去する工程は、
20℃以上のコイル接触温度、
という特徴を更に有するコイル化アクチュエータ繊維を作製する工程を含む
ことを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記繊維を加撚して前記加撚繊維を作製する工程は、前記繊維を加撚して、繊維バイアス角度α繊維が30°~40°になるようにする工程を含む、請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年4月10日に出願された「COILED ACTUATOR SYSTEM AND METHOD」という標題の米国特許仮出願第62/483,839号に基づく利益を主張するものであり、この仮出願は、当該参照により、その全体が、あらゆる目的で本明細書に援用される。
【0002】
本願は、2018年4月10日に出願された「COILED ACTUATOR SYSTEM AND METHOD」という標題であるとともに、代理人整理番号が0105198-019US0号である米国特許出願第XX/XXX,XXX号にも関するとともに、2016年5月20日に出願された「SYSTEM AND METHOD FOR THERMALLY ADAPTIVE MATERIALS」という標題の米国特許出願第15/160,439号にも関するものであり、これらの出願は、当該参照により、その全体が、あらゆる目的で本明細書に援用される。
【0003】
(政府の権利)
本発明は、米国エネルギー省により付与されたDE-AR0000536の下、米国政府の支援によりなされたものである。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】加撚繊維、加撚フィラメントまたは加撚糸の図であり、繊維バイアス角度(α繊維)が示されている。
【0005】
図2】加撚及びコイル化した繊維または糸の図であり、繊維バイアス角度(α繊維)、コイルバイアス角度(αコイル)、コイル径(D)及び繊維径(d)が示されている。
【0006】
図3a図3a及び図3bは、コイルバイアス角度の異なるコイル状繊維またはコイル状糸の2つの例の図である。
図3b図3a及び図3bは、コイルバイアス角度の異なるコイル状繊維またはコイル状糸の2つの例の図である。
【0007】
図4a図4a及び図4bは、犠牲層を除去して、コイル間の距離または間隔を拡大することによって作製した加撚繊維または加撚糸の別の例の図である。
図4b図4a及び図4bは、犠牲層を除去して、コイル間の距離または間隔を拡大することによって作製した加撚繊維または加撚糸の別の例の図である。
【0008】
図5a図5a及び図5bは、加撚繊維または加撚糸をマンドレル、または別の繊維もしくは糸のような芯材、に巻き付けることによって作製したコイル状繊維またはコイル状糸のさらなる例を示しており、マンドレルまたは中芯材を除去した後に、解放されたコイル状繊維またはコイル状糸が作製される。
図5b図5a及び図5bは、加撚繊維または加撚糸をマンドレル、または別の繊維もしくは糸のような芯材、に巻き付けることによって作製したコイル状繊維またはコイル状糸のさらなる例を示しており、マンドレルまたは中芯材を除去した後に、解放されたコイル状繊維またはコイル状糸が作製される。
【0009】
図6a図6aは、除去可能な材料で覆われた中芯を含む芯材に、加撚繊維または加撚糸を巻き付けることによって作製したコイル状繊維またはコイル状糸のさらなる例を示している。
図6b図6bは、除去可能な材料を溶解または反応させた後に作製されるコイル状繊維またはコイル状糸の例を示しており、コイル状繊維またはコイル状糸の中心に、中心材が残っている。
【0010】
図7a図7aは、繊維または糸が最も近い部分と接しないような形で、マンドレルまたは中芯の周囲でコイル化された加撚繊維または加撚糸の例を示している。
図7b図7bはさらに、そのマンドレルまたは中芯を除去した後に作製されたコイル状繊維またはコイル状糸を示している。
【0011】
図8a図8aは、マンドレルまたは中芯の周囲で、加撚繊維または加撚糸のためのスペーサとして機能する第2の繊維または糸に沿って、コイル化されている加撚繊維または加撚糸の別の例を示している。
図8b図8bは、マンドレルまたは中芯及びスペーサの繊維または糸を除去した後に作製されるコイル状繊維またはコイル状糸を示している。
【0012】
図9a図9aは、マンドレルまたは中芯の周囲でコイル化した2本の加撚繊維または加撚糸を示している。
【0013】
図9b図9bは、図9aのマンドレルまたは中芯を除去した後に作製される2本のコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータを示している。2本のコイル化アクチュエータが、互いに入れ子になった状態で示されている。
【0014】
図10】プロセスの監視及びフィードバックを含む加撚繊維製造プロセスの例を示している。
【0015】
図11a図11aは、繊維を受け取って巻き取る巻き取りスプールに、繊維を供給する繊維供給源スプールを含む繊維コイル化システムの例を示している。
【0016】
図11b図11bは、コイル形成起点領域が、図11aと比べて、巻き取りスプールの方に移動した、図11aの繊維コイル化システムを示している。
【0017】
図11c図11cは、コイル形成起点領域が、図11aと比べて、供給源スプールの方に移動した、図11aの繊維コイル化システムを示している。
【0018】
図12a図12aは、撚りの挿入を通じて、繊維または糸で発生し得るキンクまたは典型的なスナール(ねじれ)の図である。
【0019】
図12b図12bは、撚りの挿入を通じて、繊維または糸に作製できる筒状のスナールの図である。
【0020】
図13】環境応答性のコイル状繊維アクチュエータを示している。顕微鏡画像によって、2つの異なる方法によって作製した同様の幾何形状のコイルが示されている。スケールバーの長さは、0.5mmである。
図14】環境応答性のコイル状繊維アクチュエータを示している。顕微鏡画像によって、2つの異なる方法によって作製した同様の幾何形状のコイルが示されている。スケールバーの長さは、0.5mmである。
【0021】
図15a図15aは、1または複数のコイル状繊維アクチュエータを含むバイモルフの実施形態例を示している。
図15b図15bは、1または複数のコイル状繊維アクチュエータを含むバイモルフの実施形態例を示している。
図16a図16aは、1または複数のコイル状繊維アクチュエータを含むバイモルフの実施形態例を示している。
図16b図16bは、1または複数のコイル状繊維アクチュエータを含むバイモルフの実施形態例を示している。
図17a図17aは、1または複数のコイル状繊維アクチュエータを含むバイモルフの実施形態例を示している。
図17b図17bは、1または複数のコイル状繊維アクチュエータを含むバイモルフの実施形態例を示している。
図18図18は、1または複数のコイル状繊維アクチュエータを含むバイモルフの実施形態例を示している。
【0022】
図19】200個超の加撚及びコイル化ホモキラル繊維アクチュエータの例であって、様々なコイル指数値(C)を有するホモキラル繊維アクチュエータの例の有効線熱膨張係数(CTE)のデータを示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図は、縮尺通りには描かれておらず、図面全体を通じて、類似の構造または機能の要素は概ね、例示のために、類似の参照番号によって示されていることに留意されたい。図は、好ましい実施形態の説明を容易にするように意図されているに過ぎないことにも留意されたい。図は、説明されている実施形態のすべての態様を例示しているわけではなく、本開示の範囲を限定しない。
【0024】
様々な実施形態で、撚り挿入プロセスを通じて、コイル化アクチュエータ(「人工筋肉」)を作製できる。例えば、コイル化するまで、繊維を加撚することができる。別の例では、コイル化しそうになるまで、繊維を加撚してから、マンドレル、または繊維もしくは糸の芯に巻き付けることができる。本明細書で論じられている様々な例では、繊維に言及しているが、様々な実施形態は、繊維、フィラメント、リボン、糸、導線などを含め、任意の好適な細長い要素を含むことができることは明らかであるはずである。加えて、本明細書で使用する場合、「繊維」には、1または複数の繊維または他の要素を含む糸、単一の細長い要素を含む繊維などを含め、このようないずれの細長い要素も包含ができる。したがって、文脈によって別段に示されない限り、「繊維」という用語には、このようないずれの1つの細長い要素または複数の細長い要素も、広範に含まれると解釈するものとする。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書で論じられているコイル状アクチュエータ繊維は、織布を作動させるのに用いることができる。例えば、そのような織布は、温度、水分、湿度などを含む様々な種類の環境条件に反応する衣料の作製に用いることができる。いくつかの実施態様では、織布の搭載が最小限であることができ、及び/または織布は、体温近辺で作動する必要があることがあり、様々な実施形態は、そのような動作条件下で所望の動作が行われるように構成できる。さらなる実施形態は、様々な他の好適な目的または用途用に構成できるので、ヒトまたは動物のユーザが使用するための構成に関連する例は、本明細書に開示されているアクチュエータの多くの用途に限定されると解釈すべきではない。
【0026】
様々な実施形態は、いくつかの用途または実施態様向けの多くの利点を有し得る。例えば、いくつかの実施形態のアクチュエータは、製造に好都合な技法を用いて作製されるアクチュエータ用に、より大きい熱応答性の値を含むことができ、この場合、そのアクチュエータは、コイル接触温度及び熱応答性の範囲が制御されている。
【0027】
様々な実施形態によるコイル状熱繊維アクチュエータまたはコイル状熱糸アクチュエータは、よじれるかもしくはもつれるまで、加撚することによるコイル化(自己コイル化もしくは加撚によるコイル化)を介して、マンドレル、または1本の繊維もしくは複数の繊維を巻き付けることのできる芯として機能する他の好適な材料の周囲でのコイル化(巻き付けることによるコイル化)を介して、あるいは、他の好適な方法を介して、作製できる。様々な例では、このような芯は、本明細書でさらに詳細に論じられているように、溶解を介する除去を含め、一部または全部を除去可能であることができる。
【0028】
いくつかの例では、紡績機または撚糸機のような従来の製糸装置は、所望に制御された形状の繊維アクチュエータまたは糸アクチュエータであって、加撚によってコイル化されている繊維アクチュエータまたは糸アクチュエータを確実に製造することはできない。このような糸の作製は、周囲温度、周囲湿度、入力フィラメント結晶化度及び配向、摩擦、入力フィラメントの欠陥、スピンドル速度、供給速度または巻き取り速度のばらつき、入力フィラメントの直径、糸張力、などの変量(変数)に対して、感受性が高い場合がある。
【0029】
しかしながら、本明細書でさらに詳細に論じられているように、様々な実施形態では、糸張力、糸供給速度、撚りの挿入数/m、パッケージ巻き取り速度、製糸中のフライヤ(またはリング及びトラベラ)の回転速度などのバランスを慎重にとると、高度に加撚したかまたはコイル化したアクチュエータであって、制御可能な形状を有するアクチュエータを得ることができる。上記の変量の変動を補償するために、これらのパラメータの1または複数は、作製中に変更または調整する必要があることがあるが、いくつかの従来の製造機では、このようなパラメータを製造中に変更できない。さらに、一方の位置またはスピンドルのパラメータは、別の位置またはスピンドルのパラメータとは異なる形で変更する必要があることがあり、この操作は、いくつかの位置を共通の駆動部によって駆動する場合には、いくつかのシステムでは、不可能であることがある。したがって、このような機能を提供する新規な機械を本明細書で開示する。
【0030】
フィラメント糸または繊維(モノフィラメントまたはマルチフィラメントのいずれか)に撚りを挿入する方法の例としては、リング撚り、フリクション紡績、二重撚りなどを挙げることができる。リング紡績は、リングの周囲を自由に循環するトラベラというガイドの動作を用いて、撚りを挿入し、同時に、形成された糸をボビンに巻くプロセスであることができる。ある製造環境では、スピンドルは、共通のベルト駆動システムを用いて駆動できる。繊維に挿入する撚りの量は、供給ロールから出る糸の速度、及びスピンドルの回転速度によって決定できる。トラベラ(フォロアとしても知られる)の回転速度は、摩擦及び張力により、スピンドルの回転速度を遅くし得る速度であり得る。トラベラとスピンドルの回転速度の違いにより、糸をボビンに巻き取ることができる。フライヤ紡績及び粗紡は、リング紡績と同様の原理に従う場合があり、その場合、フライヤは、異なる速度で、回転するスピンドルの周囲を回転し、その結果、撚りの挿入及び糸の巻き取りが行われる。二重撚りでは、糸供給速度、ならびにスピンドル回転速度、または巻き取りリール回転速度及びスピンドル回転速度を設定することによって、撚りレベルを制御できる。製造装置の異なる位置における、糸の供給を制御するモータ、スピンドル及び/または巻き取りリールは、経済的な目的またはその他の目的のために、共通のベルト駆動システムによって駆動される場合がある。
【0031】
高度に加撚した繊維をマンドレル、または別の繊維もしくは糸のような他の芯材に巻き回すと、いくつかの実施形態では、さらに直径が大きく、さらに開口度が大きく、コイルばね指数値が上昇したコイルが得られる手段を提供するとともに、熱応答性に対応する方法を提供する。しかしながら、いくつかの例では、作製されるコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータからマンドレルを除去するという難問のために、マンドレルに巻き回すことは、大量生産にあまり適さないことがある。マンドレルに巻き回すことは、いくつかの例では、そのプロセスが、短いマンドレル、おそらくは一端が先細くなっているマンドレルであって、1本の繊維、複数の繊維または糸をそのマンドレルに巻き付けるために供給する一方の側に保持できるマンドレルを含む場合の方が、大量生産に適することができる。繊維がマンドレルの周囲でコイル化して前進すると、その繊維は、マンドレルの端部から外れることができ、コーンまたはドラムに巻き取ることができる。繊維アクチュエータまたは糸アクチュエータについては、いくつかの実施形態では、巻き付けるかまたは巻き回すプロセスで用いる1本の加撚繊維、複数の加撚繊維または加撚糸は、巻き付けるかまたは巻き回す前に(加熱、蒸気、化学的処理または機械的処理によって)セットされているが、いくつかの実施形態では、巻き回すかまたは巻き付けるプロセスの後にセットされ得る。いくつかの例では、本明細書にさらに詳細に記載されているように、犠牲材に巻き回すかまたは巻き付けることを通じて繊維または糸をコイル化するプロセスにおいて、当該犠牲材を芯として用いることができ、その犠牲材は、後で、物理的手段、溶解、溶融、洗浄、化学的方法などを通じて除去できる。
【0032】
コイル形状(例えば熱応答性)及び/またはコイル間隔(例えば、作用温度範囲)に対処できるアプローチの1つとして、犠牲材の使用を挙げることができる。このような実施形態の1つでは、芯鞘構造などのような共押出多成分繊維を加撚及びコイル化して(例えば、撚りの挿入によるか、またはマンドレルもしくは他の芯材に巻き回すことを通じてコイル化し、選択的に、コイル化アクチュエータを解撚することができる)、熱アクチュエータを形成できる。鞘部分を溶解させるか、または化学的に反応させて、当該鞘部分を除去することによって、コイルのばね指数を向上させることができ、同時に、いくつかの例のコイル間隔を増大できる。いくつかの例では、1つの鞘材(または複数の鞘材)の除去は、熱セットの前、または熱セットの後、のいずれかに行うことができる。
【0033】
いくつかの加撚技法、紡績技法、撚糸機及び紡績機では、糸パッケージまたは繊維パッケージを回転する必要性によって、その回転速度が制限される場合がある。仮撚り技法では、かなり小さい質量を紡績することによって、これらの実用上の回転速度の制限を克服できるが、様々な例では、このような方法は、実撚りを挿入できず、所望の特性を有する高度に加撚してコイル化した繊維及び糸の製造を可能にできない。いくつかの例では、加撚プロセスまたはコイル化プロセスにおいて、いくつかの仮撚り技法の高い回転速度を利用できる。繊維または糸を撚糸機に供給する側で、付与された撚りを解くことによって、加撚ユニットの反対側が、実撚りを付与でき、加撚ユニットの反対側で付与した撚りを除去するだけではなくなることができる。2つの同様のアプローチを通じて、機械の給糸側で撚りを解くことができる。アプローチの1つは、個々の短繊維をユニットに供給して、オープンエンド紡績と同様に、加撚ユニットの部位で、糸を形成することである。様々な例では、その機械は、回転部位で糸を形成できるので、大きな質量を紡績する必要はなく、仮撚りを行わなくてもよい。第2のアプローチは、インラインプロセスの一部として、押出繊維を加撚することであり、その撚りは、分子の逸脱により、溶融物、ゲルまたは溶液の押出部位の近くで解かれる。
【0034】
図1は、加撚繊維100の例100Aを示しており、繊維バイアス角度(α繊維)が示されている。繊維100の撚りのレベルは、この例では、破線105によって表されており、繊維100全体にわたって加撚されている。様々な実施形態では、撚りレベルは、顕微鏡下での検査を通じて、繊維100から直接観察及び決定できる。図1に示されているように、繊維バイアス角度α繊維は、繊維表面で観察される撚りと繊維100の軸方向の間の角度を測定することによって求めることができる。無撚繊維では、繊維バイアス角度は、様々な例において、0°となる。
【0035】
繊維、フィラメント及び糸は、加工中及び最終用途への適用の際に加撚することができる。本明細書に記載されている繊維アクチュエータ及び糸アクチュエータは、「高い撚りレベル」の(または「高度に加撚した」)ものとして記載されているものを有することができ、いくつかの例では、これらのアクチュエータは、いくつかの実施形態では繊維バイアス角度α繊維を20°以上に、さらなる実施形態では繊維バイアス角度α繊維を25°~50°にするのに充分な撚りの量を含むことができる。いくつかの例では、「高度に加撚した」または「高い撚りレベル」を有するとは、繊維バイアス角度α繊維を10°以上、15°以上、20°以上、25°以上、30°以上、35°以上、40°以上、45°以上、50°以上または55°以上などにする撚りの量を含むことができる。繊維または糸に撚りを挿入して、繊維バイアス角度が増大すると、その繊維または糸は、もつれる傾向がある。このもつれ(スナール)の開始は、環境条件、材料、材料の加工歴、及び、繊維または糸にかかる張力、を含む多くの変量に依存する。繊維または糸は、繊維バイアス角度α繊維が40°超、場合によっては45°前後であると、もつれる場合が多い。いくつかの実施形態では、繊維バイアス角度α繊維が30°~40°の高度に加撚した繊維または糸を作製するのが有益であり、芯材に巻き付けることによって、コイル状繊維アクチュエータを作製するのに使用できる高度に加撚したフィラメントを作製している際に、もつれ始める可能性が低下する。
【0036】
このような高度に加撚した繊維100を作製するための条件は、環境条件、材料同一性、材料加工歴及び繊維径によって変動する場合があり、いくつかの例では、繊維径が大きいほど、所定の繊維バイアス角度α繊維をもたらすのに必要な撚りが少なくなる。糸では、有効繊維バイアス角度α繊維は、加撚した糸または高度に加撚した糸の表面における、フィラメントの角度であると理解できる。
【0037】
ナイロン、ポリエステルなどのような繊維材では、熱膨張係数(CTE)値は、いくつかの例では、0.05mm/m/℃前後であり得、さらなる例では、約0.1mm/m/℃以下である。図示されている繊維またはシートでは、高分子鎖の配向により、異方性特性をもたらすことができ、CTE値は、いくつかの例では、延伸方向で10倍以上低下する場合があり、または、さらなる例では、マイナスになっていることもある。しかしながら、繊維100の熱機械応答性は、いくつかの例では、コイルまたはばね構造を利用することを通じて、効果的に増幅できる。汎用の繊維及び糸が、高い撚りレベルの挿入を通じてコイル化されて、すなわち「筒状にもつれさせられて」、いくつかの実施形態によるコイル状繊維熱アクチュエータであって、「人工筋肉」(本質的には、卓越した、すなわち非常に高い熱膨張特性を有するように、ばねのようにコイル化した繊維または糸)と称されることができるアクチュエータを作製できる。
【0038】
図2は、加撚及びコイル化した繊維100の例100Bの図であり、繊維バイアス角度(α繊維)、コイルバイアス角度(αコイル)、コイル径(D)及び繊維径(d)が示されている。図1の繊維100が、当該コイル状繊維100の内側で延びる空洞220を画定するコイル状の構成で示されている。この例では、隣接し合うコイル部分240の間に空間260を画定するように、コイル状繊維100の隣接し合うコイル部分240が、間隔を置いて配置されている。例えば、コイル状繊維100の第1のコイル部分240A及び第2のコイル部分240Bは、第1の空間260Aを画定し、コイル状繊維100の第2のコイル部分240B及び第3のコイル部分240Cは、第2の空間260Bを画定する。この例では、第1の空間260A及び第2の空間260Bは、コイル状繊維100の内側で延びる連続した空間260を画定する。本明細書でさらに詳細に説明されるようなさらなる例では、コイル状繊維100のコイル部分240は、コイル状繊維100の部分240の間の空間260の一部または全部がなくなるようにつなげることができる(例えば図3b)。
【0039】
図1及び図2に示されているように、加撚繊維100は、繊維バイアス角度α繊維を有することができる。コイル化するまで加撚される繊維100では、繊維バイアス角度α繊維は、コイルを形成させるのに用いる材料及びプロセス条件によって定めることができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、これでは、特定の目標とする温度応答性に対して最適または所望の繊維バイアス角度α繊維をもたらすことができない。マンドレルまたは他の芯に巻き回すかまたは巻き付けることを通じてコイルを形成することによって、所望の繊維バイアス角度α繊維が得られるように、高度に加撚した1または複数の繊維100から作製されるコイルを形成可能にできる。いくつかの実施形態では、所望の繊維バイアス角度α繊維は、30°~50°、いくつかの例では、より好ましくは35°~45°であることができる。
【0040】
コイル径(D)及び繊維径(d)を用いて、コイルばね指数(C)を算出できる。例えば、ばね指数(C)は、ばね力学においては、C=D/dとして定義でき、式中、dは繊維径であり、Dは、図2に図示されているような繊維中心線によって測定した場合の、コイルの呼び径である。ばね指数(C)の大きいコイルまたはばねは、開口が広くなるとともに、直径も大きくなることができ、ばね指数(C)の小さいコイルほど、直径の小さい密着コイルに近づくことができる。コイル化アクチュエータの有効熱膨張係数(CTE)及び剛性(例えば弾性率)のような特性は、コイルの形状に依存し得る(例えば、繊維バイアス角度α繊維を含め、繊維の構造とともに、ばね指数C及びコイルバイアス角度αコイルも寄与している)。いくつかの実施形態では、ばね指数(C)を変更することによって、作動ストローク及び/または応力が、所望のパラメータに調整可能であり得る。
【0041】
様々な実施形態で、コイル状繊維100の熱応答性は、コイル100の形状を通じて制御できる。いくつかの用途では、コイル状繊維100の熱応答性を最大にするのが有益であり、いくつかの例では、(例えば、繊維径(d)に対して)大きいコイル径(D)を必要とし得る。いくつかの例では、マンドレル、糸、繊維または他の芯に巻き回さずに形成したコイル状繊維100は、小さいコイル径(D)及び小さい値のコイルばね指数(C)に限定され得る。自己コイル化によって作製した繊維アクチュエータ及び糸アクチュエータで、この限界を超えるために、大きいコイル径(D)とともに、実質的に約1.7超、2.0超または2.5超のコイルばね指数(C)及び-2mm/m/K以上の大きさの有効熱膨張係数(CTE)を得るには、いくつかの実施形態の、形成した状態のままのコイルを解撚して(すなわち、コイル化をもたらした撚り挿入方向に対して逆方向に撚って)、余剰な残留ねじり及び残留圧縮機械応力を除去する。この解撚によって、コイルの形状を変化させて、コイル径を増大できるが、様々な実施形態では、所望の結果を得るために、コイルを除去するまで、この作業を行う必要はない。いくつかの実施形態では、最大コイル径(D)は、コイル化プロセスに適していた引張荷重下ではなく、小さい荷重(例えば、コイル化工程中に用いた荷重の≦50%)または、さらにはゼロに近い荷重(例えば、コイル化工程中に用いた荷重の≦10%、無視可能な引張荷重など)下で、制御しながら解撚を行うことによって実現する。いくつかの実施形態では、巻き回すプロセスを通じて作製したコイルのコイルばね指数(C)及び/または形状に影響を及ぼすために、解撚を利用することができる。
【0042】
コイルバイアス角度(αコイル)は、加撚繊維100の軸方向と、コイル状繊維100が延びる方向と直交する仮想線の間の角度を測定することによって求めることができる。コイル状繊維100をばねのように延伸すると、コイルバイアス角度(αコイル)を増大でき、ある所定のコイル状繊維100では、繊維100のコイル部分240が互いに接し合うまでコイル状繊維100を完全に圧縮すると、コイルバイアス角度(αコイル)は、その最小値に達することができる。
【0043】
コイルを構成する繊維100の繊維径(d)に対する全体のコイル径(D)を反映し得るコイルばね指数(C)に加えて、コイルバイアス角度αコイルは、コイルの特性に関連する、コイルの構造の尺度であり得る。コイルが、過剰または高度なねじり(加撚によるコイル化)の影響下で形成されると、コイル状繊維100の部分240は、互いに物理的に接し合い、各コイル部分240は、その近くのコイル部分240と触れることができる。このようなコイルを最適に積層すると、コイルバイアス角度αコイルを最小にでき、温度または他の環境パラメータの変化に対する応答性を最大化させることができる。いくつかの例では、コイル状繊維100を物理的に延ばし、コイルを引き延ばして、コイル部分240間に空間260を作った場合には、コイルバイアス角度αコイルが増大し得るとともに、温度応答性が低下し得る。
【0044】
撚りの挿入(加撚によるコイル化)を通じてコイル化されている様々なコイル状繊維アクチュエータは、そのサイズのコイルに対してコイルバイアス角度αコイルが最小限であるコイルを形成できるが、本明細書に記載されているようないくつかの例では、芯材に巻き回すこと(巻き付けによるコイル化)によってコイルを形成すると、可能性あるコイルバイアス角度αコイルに対する追加の制御を多少行うことができる。コイルばね指数(C)に対して、コイルバイアス角度αコイルが最小値になる(隣接するコイルが互いに接触し合う)か、またはコイルバイアス角度αコイルが増大する(隣接するコイル部分240間の空間260がいくらか空いた状態)ような形で、巻き付けた繊維または糸の間隔を定めることができるからである。いくつかの用途では、アクチュエータの熱応答性を最大にするのが有益である場合があり、コイルバイアス角度αコイルをより小さくする必要がある。コイルバイアス角度αコイルの制御は、コイル間接触温度及びアクチュエータの環境応答性範囲の制御にも関連し得る。
【0045】
図1の場合と同様に、繊維100の撚りのレベルが、破線105によって表されており、繊維100は隈なく撚られている。図2の図の下の方では、加撚繊維100が断面で示されており、破線の矢印は、加撚繊維100の加撚方向を表している。図2の例で示されているように、撚りは、コイルと同様にZ方向であるので、コイル状繊維100は、ホモキラルとして定めることができる。コイル状繊維100のさらなる例は、いずれの好適なキラリティも有することができる。繊維100コイルが、任意の長さで続いている可能性があることを示すものとして、図の最上部近くでは、繊維またはコイルが破線で示されている。したがって、様々な実施形態で、本明細書で論じられているようなコイル状繊維100は、任意の好適な長さを有し得る。加撚繊維の影付き部分は、図示ページの奥側に位置する、コイル状繊維100の部分を表している。
【0046】
図3a及び図3bは、コイルバイアス角度が異なる2つの異なる構成である、図2のコイル状繊維の例100Bを示している。図3aのコイル状繊維100のばね指数(C)は、図3bのコイル状繊維100のばね指数と同程度である。様々な例では、機械応力や膨張させる温度変化などを通じて、図3bのコイル状繊維100Bを延伸させて、図3aのコイル状繊維の構成と同様の構成にすることができる。同様に、機械応力や圧縮させる温度変化などを通じて、図3aのコイル状繊維100Bを圧縮して、図3bのコイル状繊維の構成と同様の構成にすることができる。いくつかの実施形態では、図3a及び図3bのコイル状繊維100の例は、ホモキラルであり、温度の低下によって、コイル状繊維100は線膨張することができる。
【0047】
図4a及び図4bは、コイル状繊維100のコイル形状の制御に、犠牲材410を使用することを示している。例えば、図4aは、シェル410を有するコアコイル状繊維100(すなわち、海島型繊維)を示しており、シェル410は、除去可能な材料であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、シェル410は、(例えば、洗浄、化学的溶解などを介して)除去可能であることができ、得られるコイル状繊維100は、図4bの例に示されているように、繊維100のコイル間の追加の空間及び/または異なるコイル指数値を有することができる。例えば、図4bに示されているように、空間260は、コイル状繊維100のそれぞれの部分240の間に設けることができる。図4a及び図4bのコイル状繊維100には、繊維100に撚りが示されていないが、さらなる実施形態では、コイル状繊維100は、任意の好適な量の撚りを含むことができる。
【0048】
図5a及び図5bは、コイル形状の制御に、犠牲芯510を使用することを示しており、コイル状繊維100の内径を画定できる芯510に巻き付けられた加撚繊維100が示されている。芯510の破線によって、芯510が任意の好適な長さを有し得ることを示している。芯510は、コイル状繊維100の空洞220内に配置でき、マンドレル、フィラメント、糸などを含む要素を含むことができる。様々な実施形態では、図5aに示されているような芯510は、(例えば、物理的に、化学的に、または他の好適な方法で)除去して、図5bに示されているように、固定されていないコイル状繊維100をもたらすことができる。一実施形態では、中芯510は、室温、40℃、60℃、80℃、高温または低温のような任意の好適な温度において、水または他の溶媒に溶解できる、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールなどのような、可溶性ポリマーを含むフィラメントまたは糸を含むことができる。
【0049】
1または複数の加撚繊維100を犠牲芯510に巻き付ける作製方法では、芯510は、完全に除去される必要があるわけではなく、場合によっては、芯510の一部が残っているのが望ましい場合もある。コイル化アクチュエータ繊維100の空洞220内に、芯510の一部が残っていると、残った材料が導電性であり(例えば、金属、複合材、有機材など)その材料を加熱可能にできる場合や、その材料が(例えば、その化学的性質、機械的構造などにより)伸長性であり、容易に直線的に伸長できるが、屈曲または座屈に対する材料の強度を向上させる場合を含め、多くの他の方法において有益であり得る。
【0050】
実例としては、水溶性繊維をカバード糸における芯510として使用でき、この場合、1本のカバリング繊維または複数のカバリング繊維は、芯510への巻き付け工程を構成する巻き回し作業の前または最中に加撚したものであり、巻き回した繊維100をセットした後、洗浄工程を通じて、芯510を除去することができる。水溶性ポリマーフィラメントもしくは糸、有機可溶性ポリマーフィラメントもしくは糸、または酸、塩基、酸化剤、還元剤もしくは他の化学試薬の存在下で容易に溶解もしくは分解するフィラメントもしくは糸のように、数多くの材料が、犠牲中芯510として使用するのに適している。
【0051】
非限定的な一例として、「海島型」糸を犠牲芯510として使用でき、その糸の「海」成分を洗い出すと、微細繊維の糸が、コイルアクチュエータの空洞220の内側に残ることができる。これらの繊維は、繊維アクチュエータの水分管理または動作範囲の制限に有用である場合がある。ホモキラル繊維アクチュエータの場合には、コイル接触温度で、有効最小長を実現できる(すなわち、空間260が部分的または完全になくなるように、コイル状繊維100の部分240の一部またはすべてが接し合う場合。ホモキラル繊維アクチュエータは、コイル接触温度未満の温度では、そのコイル間に、物理的空間を有することになる)が、温度が低下し、コイルが膨張すると、コイル状繊維100の空洞220の中を走る1または複数の繊維の存在によって、コイル状繊維100の動作の程度を制限できる。「海島型」糸は、多成分押出繊維から作製でき、この場合、少なくとも1つの成分が、可溶性であるか、または別段の形で除去可能であり、それにより、犠牲材の「海部分」内の非犠牲材の「島部分」を含め、微細な機構を形成可能にできる。加工の際のある時点に、犠牲材を除去して、「島部分」を残すことができる。この島部分は、犠牲材の「海部分」によって保護されていなければ、一部の機械で高速処理するのが難しい微細な特徴の繊維であり得る。
【0052】
例えば、図6a及び図6bは、除去可能なシェル材610及び内材620を含む芯510に、加撚繊維100を巻き付けることによって作製できるコイル状繊維100の別の例100Eを示している。図6aの例では、芯510は、可溶性であるか、または別段の形で除去可能であることができる外層、すなわちシェル材510を含むことができ、加撚繊維100を芯510に巻き付けた後、除去可能なシェル材610を溶解させるか、または別段の形で取り除いて、図6bに示されているように、コイル状繊維100を解放して、細くなった中芯内材620を残したまま動くようにできる。この残った芯材は、1本のストランド状の1つの材料として示されているが、いくつかの実施形態では、複数の材料及び/または複数のストランドを含むことができる。
【0053】
コイル状繊維100の部分240の間に空間260を有するかまたは有さないコイル状繊維100を含め、巻き回すことによって作製した1または複数のコイル状繊維100を含むアクチュエータ用に、芯510への1メートル当たりの加撚数または巻き付け数を制御することを通じて、コイル間隔を制御できる。例えば、図7aは、コイル状繊維100に空間260が作られるように、各繊維糸コイル部分240が最近傍のコイル部分240と接しないような形で、芯510(例えば、本明細書に論じられているように、1または複数の材料を有するマンドレルまたは中芯)の周囲でコイル化した加撚繊維100の別の例100Fを示している。図7bに示されているように(例えば、溶解、物理的な除去などを介して)芯510を除去すると、コイル状繊維100は、環境条件(例えば、本明細書で論じられているように、温度、湿度など)の変化に応じた動作が妨げられないように、解放されることができる。
【0054】
コイル部分240間の空間は、図8aに示されているように、間隔形成繊維830の使用を通じて制御することもできる。例えば、図8aの例100Gに示されているように、加撚繊維100は、芯510(例えば、本明細書で論じられているように、1または複数の材料を有するマンドレルまたは中芯)の周囲でコイル化でき、加撚繊維100用のスペーサとして機能する間隔形成繊維830と共に巻き付けることができる。間隔形成繊維830は、それぞれのコイル部分240の間に配置されて、当該コイル部分240が互いに接し合うのを防止できる。このアプローチによって、コイル状繊維100におけるコイル間の間隔を制御する方法を提供できる。図8bは、間隔形成繊維830及び芯510を除去した後に残ったコイル状繊維100を示している。本明細書で論じられているように、間隔形成繊維830及び芯510は、溶媒による溶解、物理的な除去などを含む様々な好適な方法で、除去可能であり得る。
【0055】
図9aは、芯510(例えばマンドレル)の周囲でコイル化した第1の加撚繊維1001及び第2の加撚繊維1002を示しており、2本の加撚繊維1001、1002は、互いに並んで配置されている。図9aは、除去可能な芯510に巻き付けた2本の繊維1001、1002を含む構造体900を示しており、図9bは、入れ子状の2本のコイル化アクチュエータ繊維1001、1002を芯510から外した後の構造体900を示している。2本の繊維1001、1002は、撚りを示すように図示されており、両方のコイルは、ホモキラルコイルとして示されている。図9a及び図9bの構造体900の例では、第2の繊維1002は、第1の繊維1001の約80%という小さい大きさ(サイズ)であるように示されている。さらなる例では、2本の繊維1001、1002は、同じ大きさであることができ、あるいは、好適な異なる大きさまたは直径であることができる。いくつかの実施形態では、温度の低下のような環境条件の変化に曝されると、構造体900を構成している2本の入れ子状のコイル繊維1001、1002図9a及び図9bにおいて、互いに物理的に接した状態で示されている)はそれぞれ膨張することができ、入れ子状の構造体900の直線長が増大し得る。他の図の場合と同様に、アクチュエータの例の一部が示されているが、このような繊維または糸の材料は、任意の長さを有することができる。
【0056】
犠牲芯510を部分的または完全に除去すると、プロセス中に、スプール上またはインラインで、解放状態のコイル状繊維アクチュエータを得ることができるが、犠牲芯は、布または最終製品段階で除去することもできる。非限定的な例の1つとして、可溶性の犠牲芯を用いて、高度に加撚したフィラメントをコイル化でき、巻き付けた構造体を含む布を編むかまたは織るかした後、犠牲芯を除去してもよい。このような場合には、布の作製及び加工中に、犠牲芯は、寸法安定性を付与するとともに、取扱いやすさに寄与することができる。
【0057】
コイル状繊維100は、様々な好適な方法で製造できる。例えば、本明細書でさらに詳細に論じられるように、コイリングマシンを用いて、線状繊維100でコイルを作ることができる。いくつかの実施形態では、このようなコイリングマシンは、繊維100のコイル化を監視するセンサを備えるとともに、そのようなセンサから得たデータに基づき当該コイリングマシンのパラメータを修正することができる。例えば、いくつかの実施形態では、繊維特性を監視して、リアルタイム情報を用いて、製造を制御するのが、有益であり得る。センサの出力をフィードバックループで用いてマシンパラメータを調整して、所望の形状特性及び機械的特性を有するとともに欠陥が最小限である高度に加撚した糸をもたらすことができる。コイリングマシンの1または複数の部分は、個別に制御可能であってよい。
【0058】
コイル化するまで繊維100を加撚するときには、糸張力、糸供給速度、撚りの挿入数/m、パッケージ巻き取り速度またはフライヤ回転速度のようなパラメータを調整して、欠陥を予防できるように、供給路沿いのどの位置で糸がコイル化したかわかることが望ましい場合がある。欠陥の例としては、糸の分断、糸のスナッギング、または、望ましくないかもしくは無制御なスナール、を挙げることができる。いくつかのセンサは、欠陥(例えば、糸の分断)を検出して、機械を停止させるかまたは問題が行ったことを技師に警告する信号を出力できる。
【0059】
制御可能な形状を有するコイル状繊維100を製造する方策の一例は、繊維100の長さ沿いの撚りレベルを判断して、高度に加撚した(かつ、場合によってコイル化した)糸をボビンまたはスプールに巻き取るためのスピンドル速度、フライヤ速度及び/または巻き取りリール速度を調整することである。いくつかの例では、加撚繊維またはコイル状繊維100がボビンに適切に巻き取られない場合には、欠陥が生じ得る。繊維100の長さ沿いの撚りレベルは、繊維経路100に沿って1または複数のセンサを追加することによって判断できる。センサ出力をフィードバックループで用いてマシンパラメータを調整して、欠陥を予防したり、及び/または、所望の形状を有するコイル状繊維100を作製したりできる。このようなセンサとしては、光センサ(例えば、CCDもしくはカメラシステム、エンコーダ、レーザマイクロメータ、光マイクロメータ、レーザ干渉計など)、機械式センサ(ばね付き機械式スイッチなど)、及び/または、電気センサ(ポテンショメータ、歪みセンサ、ピエゾセンサなど)が挙げられる。
【0060】
加撚繊維100の形状は、製造中に、直接的に(例えば、加撚繊維100の直径を測定することによって)または間接的に(例えば、加撚繊維100の形状と相関する他の特性を測定することによって)測定できる。所望の撚りレベル及び形状が得られるまで、センサ出力をフィードバックループで用いて、マシンパラメータ(例えば、張力、加撚速度、供給速度、巻き取り速度など)をリアルタイムで調整できる。
【0061】
作用性繊維100の撚りレベル及び形状と相関し得る特性としては、フィラメントの色相/反射率、光沢、フィラメント径または繊維径(d)、インピーダンス、歪み、繊維の平滑性またはテクスチャ(質感)、局所的な繊維速度、などが挙げられる(ただし、これらに限らない)。例えば、繊維100の高度加撚区域は、撚りレベルが低い区域の速度よりもかなり低い速度を有することができる。いくつかの実施形態では、導電性のフィラメントまたは繊維100を加撚する場合には、ホール効果型センサを用いることができる。
【0062】
様々な実施形態では、繊維通路沿いに、1または複数のテンションセンサまたはフィーダを配置でき、そのようなセンサから得たデータを用いて、製造中の加撚繊維の形状を制御できる。高度に加撚した繊維100は、軸収縮を起こす場合があり、これにより、いくつかの例では、供給速度を調整して当該軸収縮を相殺する場合を除き、繊維100における張力が増大し得る。仮撚りを与える機械または繊維100において実撚りを与える機械に、コイル形状を(直接もしく間接的に)測定するセンサ、及び/または、関連するプロセス制御システムを加えることができる。
【0063】
繊維通路沿いの所定の位置における繊維100のサイズのようなセンサ出力は、その機械のプロセス制御部にフィードバックでき、巻き取り速度、張力、加撚速度、供給速度または他のプロセス変量を通知できる。いくつかの実施形態では、繊維サイズ、繊維速度、張力、ならびに温度及び湿度のような周囲条件など、繊維通路沿いの複数のセンサの出力、及び/または、1または複数のプロセス測定からの出力、を考慮するのが有益であり得る。カメラのようないくつかのセンサは、2つ以上の情報を供給でき、例えば、繊維径(d)及び繊維速度の両方を示す。
【0064】
非限定的な例として、センサを用いて、高度に加撚したフィラメント、糸または繊維100の製造の際に、撚りレベルを監視及び制御できる。繊維バイアス角度α繊維は、繊維アクチュエータまたは糸アクチュエータの性能特性に寄与することができ、フィラメント、1本の繊維、複数の繊維または糸における撚りレベルが製造中に監視されて、撚りプロセス及びもたらされる繊維バイアス角度α繊維の制御に重要なフィードバックを供給できる。例えば、撚り情報を用いて、巻き取り速度または繊維上の張力を変更できる。カメラは、フィラメントの撚りレベルに関する情報を提供できるセンサの一例であり、この情報は、繊維径(d)(加撚する際に、より太くなり得る)を求めることを介し得るし、繊維バイアス角度α繊維を直接測定することを介し得るし、あるいは、別の好適な方法を介し得る。
【0065】
別の非限定的な例では、センサを用いて、環境応答性のアクチュエータ繊維100のコイル化を監視でき、当該センサは、コイル状繊維100の製造の制御において有用な情報を供給できる。例えば、カメラまたは他の好適なビジョンシステムは、繊維100の撚りレベルに関する情報を提供でき、コイル化の前に、繊維100の撚りレベルを監視するのに使用でき、コイル化の速度または繊維100沿いのコイル化の位置を監視するのに使用でき、コイル状繊維100の適切な巻き取り速度を求める際に及び/または張力を調整する際に、そのような情報を用いることができる。いくつかの実施形態では、このようなシステムは、コイル径(D)を求めることができ、このコイル径(D)は、いくつかの例では、繊維100の最終的な特性において重要である場合があり、コイル径情報をマシンの制御システムに供給して張力を増減でき、それにより、コイル状繊維100を製造する際に、コイル径(D)に直接影響を及ぼすことができる。
【0066】
プロセスを直接監視するかまたは周囲条件を監視するセンサから得られる様々な情報を、コイリングマシンの制御システムに組み込むことができる。非限定的な例として、コイル径(D)のインラインプロセスでの測定とともに、周囲の湿度、温度の測定値などを用いて、加工している繊維100の張力及び/または巻き取り速度の制御に関する情報を供給できる。
【0067】
例えば、図10は、製造方法1000の概略図であり、いくつかの実施形態では、この方法がセンサによって監視及び制御されて、プロセスを部分的または全体的に自動化して、当該方法1000の一部または全部においてユーザとの相互作用(対話)が不要となっている。1010では、供給源から出た繊維または糸を緊張させて、1020でその材料を加撚する位置まで供給する。続いて、1030では、加撚して、場合によってはコイル化した繊維または糸をボビンまたはスプールに巻き取ることができる。1010、1020、1030の3つの段階は、実線で囲まれたボックスで示されており、緊張させて、撚り、巻き取るまでの材料の移動は、実線の矢印で示されている。プロセスセンサ1040及び周囲センサ1050は、破線エッジのボックスで表されており、様々なボックスの間に示されている破線の矢印は、段階1010、1020、1030の制御のためのフィードバックを示している。
【0068】
センサ(例えば、センサ1040、1050)が、プロセスの条件及び制御に対してどのようにして影響を及ぼすことができるのかの例として、温度及び湿度を監視する環境センサは、繊維の張力の設定値を通知でき、張力が過剰に大きくなった場合には、フィーダによって、さらに多くの材料を撚り区域に挿入可能にできる。換言すると、いくつかの例では、センサ1040、1050の一方または両方から得られたデータを用いて、繊維の張力設定及び/または供給速度を決定及び実行でき、これには、張力の増減及び/または供給速度の増減を含めることができる。このような供給速度には、繊維供給源からの供給及び/または撚り区域への供給を含めることができる。例えば、いくつかの環境条件下では、加撚速度を増減させるのが望ましい場合があるので、周囲センサ1050から得られる温度及び/または相対湿度のデータが、加撚速度を通知することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、プロセスを監視するセンサ1040(例えばカメラ)は、張力1010及び巻き取り速度1030の両方の制御に関する情報を供給できる。非限定的な例として、プロセスセンサ(複数可)1040は、カメラのようなビジョンシステムを備えることができ、そのシステムを用いて、高度に加撚した繊維をさらに加撚してコイル化を誘導するプロセス中、繊維におけるコイルの形成を監視できる。コイル化の前に、繊維または糸の厚さは、ビジョンシステムが画像解析の一部として画素計数または他の好適なプロセスを通じて把握及び測定できる特定の厚さであることができる。撚りの挿入によっても繊維の厚みは変化し得るが、コイル化によって、繊維の有効厚は大幅に変化して、その材料の幅にわたって画素数が増大し得る。
【0070】
撚りプロセスにおいて、コイルの形成起点が発生したら、追加の撚りを挿入することによって、コイルを成長させ、加撚繊維または加撚糸の全体を通じて、コイルを拡張できる。ビジョンシステムの視野内で、画像解析を用いて、コイルの存在を判断でき、ビデオ内のフレームを比較することによって、コイルの進退速度を求めることができる。1030で、コイル状繊維またはコイル状糸をスプールまたはボビンに巻き取る際に、巻き取り速度が過剰に速いと、コイルは、プロセスセンサ1040の視野外(例えば、ビジョンシステムの視野外)に移動するであろう。あるいは、巻き取り速度が過剰に遅い場合には、コイルの拡張が、プロセスセンサ1040の視野全体にわたって進行すると思われ、コイル構造が、システム内で、テンションフィーダの方に逆行し得る。コイル拡張のテンションフィーダ方向への逆移動と、コイル拡張の巻き取りボビン方向への前方移動は、望ましくない場合がある。したがって、プロセスの制御で、プロセスセンサ1040からの情報(例えば、カメラまたは他のビジョンシステムから得られるデータの画像分析またはビデオ分析)を用いて、プロセスを安定した状態に保つことができる。換言すると、プロセスセンサ1040から得られるデータを用いて、張力、供給速度、加撚速度、巻き取り速度などのような変量を制御して、コイル形成起点を所望の位置に、または所望の位置範囲内に、維持できる。
【0071】
例えば、図11aは、繊維100を受け取って巻き取る巻き取りスプール1104に繊維100を供給する繊維供給源スプール1102を備える繊維コイル化システム1100の例を示している。図11aの繊維コイル化システム1100の構成は、そのような繊維コイル化システム1100の1つの構成の例に過ぎず、任意の他の好適な繊維供給源、繊維巻き取り要素及び張力付与要素も、本開示の範囲及び趣旨の範囲内であることに留意されたい。
【0072】
図11aにさらに示されているように、繊維100は、供給源スプール1102から出る直線状部分1110、及び、巻き取りスプール1104に巻き取られるコイル化部分1120、を含むことができる。コイル形成起点領域1130は、直線状部分1110とコイル化部分1120とを隔てるとともに、繊維が供給源スプール1102から巻き取りスプール1104に移動するのに応じて、繊維100の直線状部分1110がコイル化部分1120になる位置である。加えて、図11aは、図11aのシステム1100の例に示されているように、カメラ1150のような1または複数のプロセスセンサ1040によって監視できるコイル形成起点窓1140を示している。
【0073】
コイル形成起点窓1140は、コイル形成起点領域1130が位置すべきである所望の位置を含むことができる。繊維100が、供給源スプール1102と巻き取りスプール1104との間を移動して、繊維100上のコイル形成起点領域1130でコイル化されると、コイル形成起点領域1130は、(例えば、図11bに示されているように)巻き取りスプール1104の方に移動し得るとともに、(例えば、図11cに示されているように)供給源スプール1102の方に移動し得て、これにより、可能性としては、(例えば、図11b及び図11cに示されているように)コイル形成起点領域1130がコイル形成起点窓1140の外に移動し得る。したがって、システム1100は、1または複数のプロセスセンサ1040を介して、コイル形成起点領域1130の位置と移動を監視するとともに、システム1100の作動構成をリアルタイムで調整して、コイル形成起点領域1130をコイル形成起点窓1140内に維持し、及び/または、コイル形成起点領域をコイル形成起点窓1140内に戻すことができる。
【0074】
一例として、拡張(増殖)するコイル部分1120が巻き取りボビンまたは巻き取りスプール1104の方に移動する場合には、巻き取りスプール1104における巻き取り速度を低下させて、コイル形成起点領域1130を供給源スプール1102の方に移動できる。別の例では、拡張するコイル部分1120が繊維フィーダスプール1102の方に移動する場合には、巻き取りスプール1104における巻き取り速度を増大させることができる。コイル形成起点領域1130の位置のみではなく、コイル形成起点領域1130の速度も監視することによって、コイル形成起点領域1130の拡張(増殖)の拡張(増殖)速度に従って、巻き取りスプール1104における巻き取り速度を調整可能にできる。しかしながら、さらなる実施形態では、充分なプロセス安定性を、拡張(増殖)するコイル形成起点領域1130の位置を特定することのみを通じて得ることができる。いくつかの実施形態では、巻き取りスプール1104における巻き取り速度は、一定の値に保たれることができ、製造プロセス中のコイル形成起点領域1130の拡張(増殖)の位置及び/または速度の変化は、繊維100の加撚速度の制御に対してフィードバックでき、これによって、コイルへの撚りをさらに迅速に増大でき、それによって、コイル形成起点領域1130の拡張(増殖)が、巻き取りスプール1104から離れて、繊維供給源スプール1102の方に移動する。さらなる実施形態では、繊維100の加撚速度を低下させると、コイル化速度を低下させることができるとともに、コイル形成起点領域1130の拡張(増殖)を繊維供給源スプール1102から離して、巻き取りスプール1104の方に移動させることができる。
【0075】
別の例として、図10に示されているような製造方法1000におけるプロセスセンサ1040は、制御システムに情報を供給して、当該システム1100によって作られるコイル状繊維100の形状に影響を及ぼすことができる。一例として、カメラ1150などから得たデータの画像分析またはビデオ分析を用いて、コイル径(D)に対する繊維径(d)を参照することによって(図1及び2参照)、コイル化された材料のコイルばね指数(C)を求めることができる。繊維径(d)及びコイル径(D)のいずれも、様々な好適な方法で(例えば、加工中に、その材料の画像またはフレームの全体にわたる画素計数を通じて)測定できる。いくつかの実施形態では、コイルばね指数(C)は、絶対測定値ではなく、相対測定値であり得るので、画素計数を参照することは、コイルばね指数(C)を求めて、形成された状態のコイル部分1120の形状を部分的に把握するための簡潔な方法の1つであり得る。したがって、いくつかの例では、キャリブレーションが不要であることがある。様々な実施形態では、監視したコイルばね指数(C)または求めたコイルばね指数(C)が、小さすぎるか、またはコイルばね指数の所定の最小閾値未満であることが明らかになった場合には、繊維100の張力を低下させることができる。あるいは、監視したコイルばね指数(C)または求めたコイルばね指数(C)が、大きすぎるか、またはコイルばね指数の所定の最大閾値超であることが明らかになった場合には、繊維100の張力を増大させることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、加撚コイルアクチュエータの製造速度を増大させることが望ましい場合がある。しかしながら、いくつかの例では、加撚速度が高速であると、繊維が筒状にねじれてコイルを形成する(図12bを参照)のではなく、望ましくないキンクまたは典型的なスナール(図12aを参照)が形成される可能性が増大し得る。いくつかの例では、繊維100に対する張力が大きいほど、撚りが強いことにより、もつれる(典型的なスナールが形成される)可能性が低下し得る。ただし、張力が大きいほど、繊維100で密着度の高いコイルが作られ、ばね指数(C)も小さくなり得る。
【0077】
代替的なアプローチの例は、加撚している繊維100に対する物理的な空間を制限して、キンクまたは典型的なスナール(図12aを参照)の形成と関連するゆがみの発生に必要な物理的な空間を繊維100が有さないようにすることであり得る。いくつかの実施形態では、典型的なスナールと筒状の加撚のいずれでも、繊維100が物理的にゆがむ必要があるが、いくつかの例では、キンクまたは典型的なスナールは、繊維の延伸方向と直交した配置となり、より広い空間を必要とし得る。いくつかの例では、例えば、拘束管の使用などを通じて、もつれている繊維または糸に与えられ得る空間を制限することによって、筒状のねじれを形成させるのに充分な物理的な空間を保持しながら、同時に、キンクまたは典型的なスナールの形成に必要となる空間を除去可能にできる。
【0078】
例えば、いくつかの実施形態では、コイリングマシン100は、繊維100を通す拘束管を備えることができ、その拘束管の内径は、所望のコイル径(D)または最大コイル径以上であり、拘束管がなければ繊維100によって発生し得るキンクまたは典型的なスナールの直径ないし幅以下である。
【0079】
本明細書で論じられているように、コイル形状及び/またはコイル間隔は、様々な実施形態のアクチュエータ用の、加撚及びコイル化アクチュエータの特性に影響を及ぼすことができる。しかしながら、コイル形状及び/またはコイル間隔の制御は、様々な好適な方法で行うことができる。例えば、アプローチの1つは、製造中の製造温度及び/または水分レベルを制御することであり得る。いくつかの例では、加撚中と解撚中で異なる引張荷重を用いるのが有益である場合があるように、いくつかの例では、加撚工程中と解撚工程中で異なる温度(または水分レベル)を用いるのが有益である場合がある。あるいは、温度に応じて張力を変更するのが有益である場合がある。
【0080】
様々な実施形態で、本明細書で論じられているような1または複数のコイル状繊維100は、温度、湿度、水分などのような環境条件に応答できるコイル状繊維アクチュエータを形成できる。このようなコイル状繊維アクチュエータを実際に使用するためには、いくつかの実施形態では、熱応答性(例えば、ストローク、Δ長さ/Δ温度)及び/または温度応答性の範囲もしくは限界を制御するのが望ましい場合がある。所定の繊維材では、コイルのコイルバイアス角度αコイル及びコイル径(D)または開放性を含め、コイルの形状または構造によって、熱応答性の程度に影響を及ぼすことができる(例えば、コイル径(D)が大きいほど、コイルばね指数(C)を大きくでき、そのようなコイルは、熱応答性が大きくなり得る)。加えて、温度応答範囲の一方の限度値は、コイルの間隔を通じて制御できる(例えば、コイル部分240が互いに接し合うと、コイル化アクチュエータの収縮には、材料の圧縮が必要となり、熱応答性の程度が大きく低下し得る)。
【0081】
コイル化アクチュエータを実際に使用するためには、いくつかの例では、そのコイル化アクチュエータの熱応答性(例えば、所定の温度変化に対する作動量、すなわちΔ歪み/ΔT)が所望の程度であることが望ましい場合があるとともに、そのコイル化アクチュエータが、その用途において該当する温度範囲にわたって応答するのが望しい場合がある。いくつかのケースでは、動作範囲、ならびに(例えば特定の温度における)最小有効長及び(例えば別の温度における)最大長を制御して、これらの2つの温度の間及び2つの長さの間でのみ有効に作動するようにするのが有益であることがある。
【0082】
熱膨張係数がマイナスの熱アクチュエータ(繊維の撚りとコイルの撚りが同じ方向(例えば、ホモキラルコイル)であるアクチュエータ)のいくつかの実施形態では、特定の温度以上において、コイルは、互いに接し合って(コイル接触温度)、そのアクチュエータの有効最小長に達し得る。様々な例では、ホモキラルなコイル状繊維アクチュエータは、その温度がそのコイル接触温度未満であるときに、そのコイル間に物理的な空間を有することになる。人工筋肉は、ロボティクス用途で利用でき、その用途では、人工筋肉は、マスを移動できる。これらの用途では、最初にコイル化アクチュエータに荷を取り付けることで、アクチュエータのコイルを伸長できるとともに、引き離すことができ、アクチュエータの収縮時に、その荷を引き上げ可能になる。しかしながら、アクチュエータを事前に伸長させないか、またはアクチュエータに事前に荷を取り付けない用途では、いくつかの実施形態では、該当する温度範囲内で、コイル状繊維が作動する必要がある場合がある。作動が体温近くであることが望ましい場合のある衣服及び他の用途では、アクチュエータは、いくつかの例では、所望の作動範囲外の温度までは、圧縮状態(コイルが、隣接するコイルと接している状態)に到達せず、該当する範囲の全体にわたって動作可能になることができる。しかしながら、コイル化アクチュエータを作製するためのいくつかの既存の方法では、いくつかのアパレルの例で見られることのあるように、アクチュエータが未負荷であるときに延伸するには、低温(例えば10℃未満)を必要とするアクチュエータが作られる。作動織布に実用的、特にはアパレル及び寝具類用に実用的であるコイル状繊維アクチュエータの作製には、コイル間の物理的な間隔及び隣接するコイルが接触するコイル接触温度に対する制御、ならびに、温度低下に対する大きな応答性が重要であり得る。
【0083】
様々な実施形態では、コイル接触温度を制御するために、コイル部分240間の間隔260の制御を用いることができ、コイル接触温度超では、いくつかのコイルアクチュエータを効果的に停止状態にできる。コイル部分240間の間隔260を拡大するには、前記のように、解撚を通じて、作製した状態のコイルにおける余剰な残留撚り及び残留圧縮応力を低下または除去できる。コイル状繊維アクチュエータは、熱セット(例えばアニール処理)でき、そのセット条件も、コイル間の間隔に寄与し得る。コイルは、設計によって、温度応答性を有することができ、熱セット中に加わる大きな温度に応答でき、その温度は、いくつかの例では、材料に応じて、200℃を超える場合がある。いくつかの例では、特定のアニール条件(例えば、時間、温度、水のようないずれかの助剤の存在など)に応じて、材料中の相当な大きさの残留圧縮応力を除去できる。様々な実施形態では、残存したままであるか、または熱セットを通じて作製されるいずれの部分も、コイル間隔に影響を及ぼすことができる。
【0084】
熱セットは、様々な好適な温度及び様々な好適な時間で行うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、熱セットは、140℃、170℃または200℃で行うことができる。さらなる例では、熱セットは、150℃以下、140℃以下または130℃以下などの温度で行うことができる。さらなる例では、熱処理は、100℃超、110℃超、120℃超、130℃超または140℃超の温度で行うことができる。このような熱処理の温度範囲は、これらの温度例のうちのいずれかの間の範囲内であることができる。いくつかの例では、コイル化アクチュエータは、所望の温度範囲内で、15分、30分、1時間、2時間、3時間または4時間を含む様々な好適な期間、熱処理できる。加えて、熱処理は、これらの期間例のうちのいずれかを限界値とする好適な範囲内で行うことができる。
【0085】
同じ熱セット条件について、本明細書には、3つの非限定的なケース例が記載されている。第1の例は、繊維アクチュエータがセット手順中に自由に動作するケースである。プロセスの高温によって、コイルを圧縮させることができ、その後、アクチュエータをその圧縮位置でセットできる。熱セット手順が終わったら、温度が低下するのに応じて、コイルは膨張する傾向がある場合があるが、いくつかの例では、いくらかの残留圧縮力が、そのコイル膨張に対抗して働くことがあり、室温または意図されている用途の該当温度範囲において、コイルが互いに接したままであることもある。
【0086】
第2の例の熱セット手順では、アニール処理プロセス中に、繊維アクチュエータを物理的に拘束して、温度上昇によって、物理的に、コイルがさらに密に接し合わないようにする。このような拘束を行う方法は数多く存在し、例えば、一実施形態は、繊維アクチュエータをスプールに巻き取り、セット手順の条件に耐えることのできるシートまたはテープでそのスプールを包むことなどによって、セット手順中、繊維のロット全体を拘束することを含む。いくつかの実施形態では、セットプロセス後、冷却したアクチュエータコイルは、膨張する傾向がある場合があり、熱セットされるアクチュエータがセットプロセス中に自由に接触するケースよりも、離れる場合がある。熱セットプロセス中に拘束される繊維アクチュエータのコイル接触温度は、物理的拘束を行わずに熱セットした同様のアクチュエータの場合よりも高い値となり得て、このより高いコイル接触温度によって、室温及び体温、または他の所望の温度で無負荷のアクチュエータを使用可能にできる。本明細書で論じられているように、体温としては、約37.0℃、38.0℃、39.0℃などを含む温度、及び、約27.0℃、28.0℃、29.0℃、30.0℃、31.0℃、32.0℃、33.0℃、34.0℃、35.0℃、36.0℃などを含め、皮膚または皮膚周囲の環境で一般的に見られる温度を挙げることができる。本明細書で論じられているように、室温としては、約10.0℃、15.0℃、20.0℃、25.0℃、30℃などを含む温度を挙げることができる。
【0087】
第3の例の熱セット手順は、熱セットプロセス中に、繊維アクチュエータを拘束する点では、第2の例と同様であるが、第3の例では、プロセス中に、アクチュエータを意図的に延伸させることによって拘束する。いくつかの実施形態では、これにより、コイル接触温度をさらに高い値に移動させることができる。これらの3つのケースのそれぞれでは、温度、時間及び材料のセットを促すいずれかの化学剤の存在が、追加の要因であり得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、環境応答性の加撚及びコイル化繊維アクチュエータ及び糸アクチュエータにおいて、セット手順を修正して、コイル接触温度をさらに高い値に移動させる場合には、コイルは(コイルバイアス角度αコイルの増大に反映されるように)より低い温度におけるほど、延伸した状態になることができ、そのアクチュエータの熱応答性は、低下し得る。衣服及び織布におけるいくつかの用途例では、高い熱応答性(例えば、|CTE|≧2mm/m/K)及び高いコイル接触温度(例えば、20℃、いくつかのケースでは、より好ましくは40℃)の両方を有することが望ましい場合がある。
【0089】
いくつかの実施形態では、巻き回すことを通じて行うコイル化においては、解撚を用いて、コイル径(D)を拡大でき、解撚によって、コイル間隔260に影響を及ぼすことができる。さらに、いくつかの実施形態のコイル部分240間の間隔260は、コイル部分240の間にある程度の間隔260を開けた状態で作用性加撚繊維100をマンドレルまたは他の芯材510に巻き回すことによって(図7aを参照)、及び/または、作用性繊維100を犠牲繊維830とともにマンドレルまたは他の芯材510に巻き回して、犠牲繊維830が、コイル部分240の間で物理的なスペーサとして機能するようにすることによって(図8aを参照)、制御することができる。犠牲材830は、物理的に除去する(例えば、コイルから外す)か、溶解させるか、化学的手段によって除去するか、などできる。犠牲材の直径または大きさは、コイル化している加撚繊維100の直径または大きさに相当するものであることができ、あるいは、犠牲材830は、最終的なアクチュエータ繊維100におけるコイル間の間隔260を制御する方法として、前記よりも大きいかまたは小さいことができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、コイル接触温度を用いて、アクチュエータの動作範囲を制限できる。いくつかの用途では、アクチュエータの最小長を制限するのが有益である場合があり、コイル接触温度を制御することによって、その最小長をその温度またはより高い任意の温度に対して設定できる。いくつかの例では、温度が上昇し続けると、何らかの変化が見られる場合があるが、コイルは、自由には動作しないので、その変化は、かなり小さくなり得る(この説明では、ホモキラルコイルでの場合のように、温度が低下すると、コイル化アクチュエータが膨張することが想定されているが、コイル方向が加撚方向と逆であるヘテロキラルコイルは、反対の挙動を有することができ、温度が低下し、コイル間が接すると、最小サイズまで圧縮でき、コイル部分240が、隣接するコイル部分240と直接接すると(例えば、図3bを参照)、コイル部分240は、コイル接触温度未満の温度では、熱収縮が実質的に小さくなり得る)。
【0091】
コイル接触温度の制御によって、アクチュエータの剛性(例えば有効弾性率)に対して、ある種の制御を行うことができる。様々な実施形態では、コイル部分240が接し合うと、アクチュエータの剛性は増すことができ、このことは、繊維アクチュエータを組み込む設計で利用できる。
【0092】
いくつかの例では、繊維をアクチュエータに巻き付けて、アクチュエータが、糸内で保護された環境応答性の芯となるようにすることによって、アクチュエータの延伸を制御できる。作動芯が長くなると、直線度が増していく方向に、外側の繊維(例えば、連続フィラメント、短繊維など)を引っ張ることができ、外側の繊維が引っ張り延伸に対するその耐性を働かせるほど充分に真っ直ぐになる点に達することができる。この点において、様々な例では、アクチュエータは、熱応答域(この応答域では、巻き付けている繊維によって、さらなる延伸が大きく妨げられ得る)に入ることができ、アクチュエータの最大長が有効に得られる。いくつかの実施形態では、コイル化アクチュエータを包むかまたは覆うと、手触り、外観、スナッグからの保護、ウィッキング性の制御、水分処理性、耐薬品性、作動糸の全体積の改善などを含め、多くの他の利点を得ることができる。包むことを用いて、繊維アクチュエータのトルクを相殺することもできる。例えば、アクチュエータの両端を拘束して、温度変化に応じて、コイルのねじり作用が線寸法変化に変換されるようにできる。撚りの反対方向の繊維でアクチュエータを包むか、またはその繊維をアクチュエータに重ねる場合には(例えば、S方向の繊維でZ撚りアクチュエータを包むか、またはS方向の繊維をZ撚りアクチュエータに重ねることができる)、この拘束要件を排除できる。
【0093】
本明細書に開示されている様々な例は、コイル化アクチュエータの熱応答性に関するものであるが、これらの材料は、熱応答性に加えて、または熱応答性の代わりに、感湿性及び/または化学感応性を有することができ、温度または環境に対する応答性または適応性に言及する際には、感湿性、感水性及び/または化学感応性が含まれることが意図されている。
【0094】
本明細書に記載されている様々な実施形態は、モノフィラメント糸またはマルチフィラメント糸を含むことができる。しかしながら、さらなる例では、短繊維糸を用いて、コイル化熱アクチュエータを作製できる。いくつかの実施形態では、このような糸における個々の繊維は、表面間の相互作用を通じて架橋することができ、あるいは、コイルが離れている延伸形態の糸に、架橋剤または重合剤を含浸させて、熱応答性糸の長期健全性を向上できる。いくつかの例では、糸自体が、ウィッキング性を通じて、液体重合剤を分布させるための輸送手段として機能できる。同様に、ある材料が、短繊維糸またはマルチフィラメント糸を覆うコーティングとして使用されて、充填剤または光沢剤として機能できる。このような材料は、溶液として塗布されるサイジング剤を含むことができ、あるいは、溶融プロセスを通じて塗布されるポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、この保護材は、繊維アクチュエータまたは糸アクチュエータを加撚してコイル化して、その保護材がアクチュエータの製造を助ける犠牲材としての役割を果たした後に、除去できる。
【0095】
所望の形状(例えば、高いばね指数C、小さいコイルバイアス角度αコイル、コイル部分240間の制御された間隔260など)を有するコイルを作製するアプローチの例としては、事前に加撚した(ただし、いくつかの例ではコイル化されていない)1または複数の繊維100を1または複数の犠牲繊維とともに製紐することを挙げることができる。製紐は、芯510を用いても、芯510を用いずとも、行うことができる。製紐糸は、熱セットすることができ、犠牲繊維及び芯は、物理的手段、溶解、溶融、洗浄、化学的方法などを通じて除去できる。
【0096】
所望の形状(例えば、高いばね指数C、小さいコイルバイアス角度αコイル、コイル部分240間の制御された間隔260など)を有するコイルを作るためのアプローチの別の例としては、事前に加撚した(ただし、いくつかの例では、コイル化されていない)1または複数の繊維100を1または複数の犠牲繊維または犠牲糸に巻き付けるかまたは巻き回すことを挙げることができる。1または複数の犠牲繊維は、当該1または複数の犠牲繊維の周囲に形成されるコイルの中心空洞220の形状を画定できる。巻き付けるかまたは覆った繊維または糸は、熱セットでき、1本の犠牲繊維または複数の犠牲繊維は、物理的手段、溶解、溶融、洗浄、化学的方法などを通じて除去され、巻き付けた繊維コイルを芯から解放できる。アクチュエータの作製に対するこのアプローチ例では、犠牲芯は、その周囲に繊維を巻き回すことのできるテンプレートまたは構造体として機能できる。芯に巻き付けるのに用いる繊維または糸は、モノフィラメントや連続フィラメント糸であることができ、あるいは、コイル化構造の形成を容易にするために、選択的に、除去可能なサイジング材及び/または潤滑剤とともに調製された短繊維糸であることができる。
【0097】
いくつかの例では、高いばね指数を有し得る微細糸を含める際には、その有効弾性率は、所望の熱的性能または機械的性能を達成するには低すぎる場合がある。有効弾性率を高めるために、製造中、コイルを弾性芯または非弾性芯に巻き付けることができ、その芯は、最終製品において、糸の一部であり続けることができる。コイルは、いくつかの例では、多成分芯に巻き付けてもよく、この場合、巻き付け/熱セットを行った後に、その芯の一部を溶解、化学的手段、物理的手段などによって除去できる。
【0098】
交差した糸で覆う際にも、1または複数の繊維100の犠牲芯510への巻き付けを用いることができ、この場合、第1の組の1または複数の繊維100を芯510にある方向(SまたはZ)で巻き付けてから、追加の被覆作業を行い、この被覆作業では、第2の組の1または複数の繊維100を芯510及び第1の巻き付け部(第1の組の1または複数の繊維100を含むことができる)に反対方向(ZまたはS)に巻き付ける。いくつかの実施形態では、第1の組の繊維100及び第2の組の繊維100のいずれも、高度に加撚され、入れ子コイル状のアクチュエータをもたらすことができ、このアクチュエータでは、Z撚りの外側ホモキラルコイルが、S撚りの内側ホモキラルコイルを取り囲んでいるか、または、S撚りの外側ホモキラルコイルが、Z撚りの内側ホモキラルコイルを取り囲んでおり、これにより、均衡が取れているかまたは部分的に均衡が取れている作動糸を作製できる。いくつかの実施形態では、第1の組の繊維または第2の組の繊維の一方のみが高度に撚られており、もう一方の組の繊維は、支持、拘束、保護、嵩増しまたは他の好適な目的のために存在し得る。
【0099】
直径が短めの(例えば、0.25mm未満)繊維または糸では、市販の巻き付け装置または被覆装置で、直線長当たりの適切な撚りのレベルまたはコイル化をもたらして、コイルバイアス角度αコイルが最小限であるコンパクトなコイル化アクチュエータを作製できないことがある。非限定的な一例では、1メートル当たり5000個未満のコイルをコイル化できる巻き付け装置は、高度に加撚した100マイクロメートルのフィラメントで、中心の犠牲繊維または犠牲糸を包んで、各コイル間に、100マイクロメートル超の空間を残すことができる。このような間隔は、コイル化した材料に残すことができるが、その代わりに、高度に加撚した第2のフィラメント(または第2及び第3、もしくは第2、第3及び第4など)を中芯材に同時に巻き付けて、それぞれもう一方のコイルの内側に入れ子になっている2つのコイルを形成できる。いくつかの例では、環境応答性は、入れ子コイルの存在によって変化しないが、1つの入れ子コイルまたは複数の入れ子コイルは、特性にいくつか違いがある場合がある。例えば、第2のコイルの存在により、収縮範囲が狭くなり得る。別の例では、入れ子コイルの総合的な剛性は、個々のコイルの剛性よりも高くなり得る。製造の面では、第2のフィラメントを加えても、様々な例では、コイル化工程に加工時間が加わるとは限らないとともに、信頼性が向上し得る。製造プロセス中、2本(または3本以上)のフィラメントが、互いを安定させ、互いを効果的に拘束できるからである。
【0100】
いくつかの実施形態では、コイルを所望の形状にセットするのに、熱の付加は不要であることがある。例えば、塑性変形を通じた機械的セットを用いることができる。いくつかの例では、化学的方法を用いて、残留機械応力を除去して、コイルを所望の形状にセットすることもできる。
【0101】
中空中心部の前駆繊維などを含め、特殊な断面を有する繊維を用いて、断熱値を増大させて、当該繊維から作られるいくつかのアクチュエータの重量を低減できる。様々な実施形態では、非円形断面は、繊維100の表面積を増大させて、ウィッキング性、乾燥性、感触などを高めることができる。
【0102】
本明細書で論じられているコイル状繊維100を1または複数含むコイル化アクチュエータまたは人工筋肉は、アパレル、寝具、カーテン、遮熱材などにおける様々な好適な用途を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、コート、セーターなどのようなアパレルは、複数のコイル状繊維100を含む複数のコイル化アクチュエータを含む適応性布であって、着用者の体を取り囲むとともにその体と面するように構成された適応性布の第1の層と着用者の外部環境と面するように構成された第2の層とを含む適応性布、を含むことができる。このような構成は、適応性布を配置できる線形及び/または外側の面を含むことができる。別の実施形態では、衣服または他の製品において、1つの適応性層のみを用いてよい。
【0103】
様々な実施形態で、適応性布を含むアパレルは、着用者の体温及び/または外部環境の温度に基づいて構成を変更させるように構成でき、この構成としては、温度に基づき、断熱性を増減させるために、嵩を増すかまたは平坦化することを挙げることができる。例えば、環境温度が、ユーザの隣接環境にとって望ましい快適温(例えば、27℃前後)よりも低い場合に、適応性布の外層及び/または内層が嵩を増して、ユーザのために冷気からの断熱性を向上させるように構成でき、温度が低いほど、嵩増し及び断熱性の程度は大きくできる。あるいは、環境温度が、ユーザにとって快適な温度よりも高い場合には、適応性布の外層及び/または内層が平坦化して、ユーザのために断熱性を低下させるように構成できる。
【0104】
加えて、アパレルの適応性布は、着用者の体と関連する水分に基づいて構成を変更させて、そのような水分を着用者の体から遠くに誘導するように構成できる。例えば、ユーザが、適応性布を含むアパレルを着用している際に、汗をかいて、水分を発生させた場合に、その適応性布が、その空隙率を向上させるか、及び/または平坦化して、そのような水分をアパレル内から、アパレル外の方向かつユーザから遠くに逃がすように構成できる。
【0105】
複数のコイル化アクチュエータを含む適応性布または適応性織布は、様々な好適な方法で作製でき、様々な好適な特徴を有することができる。例えば、2つの材料間の熱膨張係数差(ΔCTE)は、複数のコイル化アクチュエータを有するバイモルフのような構造体または他の構造体の動作または撓みの範囲を示すことのできる項目である。いくつかの材料例では、ΔCTEの項目は、100~200μm/m/Kであることができ、この値は、いくつかの実施形態には望ましいとは限らない。したがって、バイモルフの様々な実施形態は、本明細書に記載されているような高度に加撚したコイルアクチュエータ(例えば、図15a、図15b、図16a、図16b、図17a、図17b及び図18)であって、いくつかの実施形態では有効CTE値が1000μm/m/K以上であり得て、同程度のΔCTE値をもたらすことができるコイルアクチュエータを含むことができる。いくつかの例では、このようなCTE値は、所望の撓みまたは屈曲特性を有するバイモルフ及び二層構造体で有用であり得る。
【0106】
様々な実施形態で、コイル化アクチュエータは、熱応答性引張アクチュエータ(直動)及び/またはねじりアクチュエータ(回転動作)として機能できる。さらなる実施形態では、本明細書に記載されている構造体は、補完材の使用を通じて、コイル化アクチュエータの直動を直交方向の動作に変換できる。このような実施形態は、低温に暴露されると厚くなる衣服及び他の物品を構成できる熱応答性の糸、横糸、フェルト、布などでの使用に望ましい場合がある。
【0107】
様々な実施形態では、材料を対にして、その対にした2つの材料のCTE値間の差(ΔCTE)が大きいことが望ましい場合がある。したがって、CTE値の大きいコイル化アクチュエータ1210は、バイモルフ及びバイモルフを含む構造体で用いるのに望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、コイル化アクチュエータは、CTEがプラスである特性(例えば、温度上昇に伴い膨張する特性、加撚方向とコイル方向が反対であるヘテロキラルコイル)またはCTEが大きくマイナスである特性(例えば、温度上昇に伴い収縮する特性、加撚方向とコイル方向が同じであるホモキラルコイル)を有することができる。様々な実施形態では、また、本明細書に記載されているように、同じフィラメント材を含む反対方向のコイル状のアクチュエータを対にすると、ΔCTEを大きくすることができる。
【0108】
様々な実施形態で、バイモルフは、温度変化によるアクチュエータの直線変位によってバイモルフにおける面外または直交方向の撓みを誘導して、バイモルフの高さまたは厚みの有効な変化をもたらすことができる加撚コイルアクチュエータを含むことができる。
【0109】
図15a及び図15bは、第1の末端1530及び第2の末端1540で接続されたコイル化アクチュエータ繊維100及びフィラメント1520を備えるバイモルフ1500の一例1500Aを示している。コイル化アクチュエータ繊維100及びフィラメント1520は、第1の末端1530及び第2の末端1540のみで接続されていることができ、及び/または、その長さの一部に沿って接続されていることができる。
【0110】
様々な実施形態で、コイル化アクチュエータ繊維100は、温度変化に応答して、長さ方向に膨張または収縮できる。例えば、コイル化アクチュエータ繊維100は、冷えると収縮でき、(ヘテロキラル繊維アクチュエータ。加撚方向とコイル方向は反対である)、あるいは、冷えると膨張できる(ホモキラル繊維アクチュエータ。加撚方向とコイル方向が同じである)。様々な実施形態で、フィラメント1520は、長さ方向に、膨張するか、収縮するか、または実質的な変化を見せないことができる。
【0111】
図15aは、第1の温度で平坦な構成であるバイモルフ1500A(左側)、及び、温度変化により第1の収縮構成となったバイモルフ1500A(右側)、を示している。図15bは、第1の温度で平坦な構成である図15aのバイモルフ1500A(左側)、及び、図15aに示されている温度変化とは逆の温度変化により第2の収縮構成となったバイモルフ1500A(右側)、を示している。例えば、図15aは、マイナスの温度変化に基づく構成変化を示している場合があり、図15bは、プラスの温度変化に基づく構成変化を示している場合がある。
【0112】
様々な実施形態で、コイル化アクチュエータ繊維100及びフィラメント1520は、いずれも図15a及び図15bの実施形態例に示されているように屈曲するように構成でき、コイル化アクチュエータ繊維100及びフィラメント1520の長さ部分は、屈曲構成及び直線構成のいずれにおいても隣接している。さらなる実施形態では、コイル化アクチュエータ繊維100及びフィラメント1520は、異なる方法で屈曲するように構成でき、コイル化アクチュエータ繊維100及びフィラメント1520は、平坦構成及び/または屈曲構成において、隣接していなくてよい。
【0113】
例えば、図16aは、コイル化アクチュエータ繊維100及びフィラメント1620を有するバイモルフ1500の実施形態例1500Bを示しており、そのコイル化アクチュエータ繊維100は、バイモルフ1500が平坦構成(左)でも、屈曲構成(右)でも、直線の構成を維持する。この例では、コイル化アクチュエータ繊維100は、温度変化によって収縮するように示されており、それにより、フィラメント1620は、コイル化アクチュエータ繊維100から離れるように屈曲する。
【0114】
同様に、図16bは、第1のフィラメント1620A及び第2のフィラメント1620Bとともに、第1のフィラメント1620Aと第2のフィラメント1620Bの間にコイル化アクチュエータ繊維100を備えるバイモルフ1500の別の例1500Cを示している。この例では、バイモルフ1500Cは、温度変化によって収縮するように示されており、それにより、フィラメント1620A、1620Bは、コイル化アクチュエータ繊維100から離れるように屈曲し、コイル化アクチュエータ繊維100は、直線の構成を維持する。
【0115】
図17a及び図17bは、第1の末端1530及び第2の末端1540で接続された第1のコイル化アクチュエータ繊維100A1及び第2のコイル化アクチュエータ繊維110B1を備えるバイモルフ1500の2つの例1500D、1500Eを示している。いくつかの実施形態では、コイル化アクチュエータ繊維100A1、110B1は、それらの長さの一部に沿って接続できる。図17aは、実施形態例1500Dを示しており、そのコイル化アクチュエータ繊維100A1、110B1は、逆の熱応答性を有し、平坦構成(左)でも屈曲構成(右)でも隣接したままである。これに対して、図17bは、実施形態例1500Eを示しており、そのコイル化アクチュエータ繊維100A1、110B1は、平坦構成(左)では隣接しており、屈曲構成(右)では離れることができる。
【0116】
図18は、コイル化アクチュエータ繊維100及びフィラメント1520を有するバイモルフ1500Fの実施形態例を示しており、そのフィラメント1520は、バイモルフ1500が平坦構成(左)及び屈曲構成(右)であるときに、直線の構成を維持する。この例1500Fでは、コイル化アクチュエータ繊維100は、温度変化によって膨張するように示されており、それにより、コイル化アクチュエータ繊維100は、フィラメント1520から離れるように屈曲する。
【0117】
様々な実施形態で、1または複数の加撚コイルアクチュエータ繊維100は、不動構造として機能し得る1または複数の剛体対向フィラメント1520(当該フィラメント1520に対して、アクチュエータ繊維100は、直交方向に変位し得る)と接続しており、その有効厚が変化しても線膨張が最小限である構造体をもたらすことができる。図18は、そのような構造の一例を示している。
【0118】
コイル化アクチュエータ繊維100は、所望の有効CTE値に加えて、シート構造には利用できない機械的連結経路のように、加工または製作面でのいくつかの利点、ならびに、本明細書で論じられているように、同じ長さの材料からCTEがプラスのコイル及びCTEがマイナスのコイルの両方を作製できるという利点をもたらすことができる。コイル化アクチュエータ繊維100のばね定数が大きいときには、コイル化アクチュエータ繊維100の有効CTE値を最大化するとともに、コイルの中心の開放空洞220を残すことができる。コイル化アクチュエータ繊維100は、そのような構造体に存在し得る空隙率、密度及び通気性などにより、望ましい場合がある。
【0119】
様々な実施形態で、1または複数のコイル化アクチュエータ繊維100及び/またはバイモルフ1500を布または薄いフィルムに織り込むかまたは縫い込んで、有効ΔCTE値が大きく、それに対応して撓みが大きいバイモルフシート構造を作製できる。さらなる実施形態では、1または複数のコイル化アクチュエータ繊維100をシートに縫合またな接合して、バイモルフシートを作製できる。いくつかの実施形態では、キラリティが反対の膨張部分及び収縮部分が交互になっている交互のコイル部分を有する1または複数のコイル化アクチュエータを、シートまたは布の表面に縫合または接合することができる。温度が変化すると、交互キラリティ型コイル化アクチュエータ繊維100内のプラスの熱応答性域及びマイナスの熱応答性域により、シートまたはリボンが正弦波状の形状をとるシート構造を形成できる。交互キラリティ型コイル化アクチュエータの実施形態は、様々な分野における用途を有することができる。例えば、様々な実施形態は、熱適応性衣服の製造用に構成でき、交互キラリティ型コイルを従来の本縫いで用いて、布の表面にプラスのCTEの領域及びマイナスのCTEの領域を交互に作製して、温度が変化したときに布にうねりを誘発できる。いくつかの実施形態では、本縫いにおける第2の糸または繊維は、CTEの大きいコイルアクチュエータ材または撚りコイルアクチュエータ材である必要はない。
【0120】
いくつかの実施形態では、複数のコイル化アクチュエータ繊維100を並列で配置して、一緒に織り込むかまたは縫い込んで、単一方向の所望のCTEを有するシートまたは層を作製できる。さらなる実施形態では、CTEが異なるこのようなシート(例えば、CTEが大きくプラスであるシート及びCTEが大きくマイナスであるシート)を対にして、所望の熱膨張差及び所望の曲率半径を有する平坦なバイモルフシートを作製できる。
【0121】
さらなる実施形態では、コイル化アクチュエータ繊維100は、薄いフィルム、膜または布の上に縫合でき、それにより、そのような薄いフィルム、膜または布に熱応答性特性を付与できる。したがって、様々な実施形態は、選択した材料に断熱性の材料または布をより深く組み込む必要性をなくすことができる。このような実施形態では、熱応答性の材料はさらに、織物の一部であることも、断熱材の主要部分であることも、基材であることも、または接着剤もしくはサーマルボンドを通じて別の材料に固着することも、できる。
【0122】
加えて、コイル化アクチュエータ繊維100を用いて、グースダウンの構造と同様の分岐構造を作製できる。例えば、いくつかの実施形態では、コイル化プロセスの際に、加撚繊維100を細い繊維の層に引き通すことによって、その細い繊維をコイル内に捕獲または捕捉して、変動可能な断熱性のより大きい状況において、良好な断熱特性、感触特性及び構造特性を有する分岐構造を形成できる。
【0123】
コイル化アクチュエータ繊維100は、リニアアクチュエータまたはねじりアクチュエータとして機能できる。様々な実施形態では、本明細書で論じられているように、2つの異なる材料を対にすると、面外動作または直交動作を発生させることができる。いくつかの実施形態では、異なるCTE特性を有する加撚コイルを拮抗した形で対にする織構造または編構造は、熱応答性バイモルフ1500を含むことができる。いくつかの実施形態では、様々な好適な方法で、複数の材料を併せて織って、温度に応答して変化する織物の全体的な物理構造を作ることができる。このような織構造は、温度に応答して構成または長さを変化させるコイル化アクチュエータ繊維100または他の好適な材料もしくは構造を含むことができる。
【0124】
様々な実施形態で、織構造または編構造は、繊維を揃えて、その全体的な動作がまとまっており異種の繊維群が不ぞろいに個別によじれることによって特徴付けられないようにすることによって、拘束部として機能でき、これは、熱適応性の材料、及びその撓みまたはその有効厚の変化の最大化に望ましい場合がある。
【0125】
さらなる実施形態では、感温性構造は、作動性材料がそれに対して作用する繊維、糸または布のような非適応性の拘束部を含むことができ、この場合、当該非適応性の材料が、線状、直線もしくは平坦な状態を維持し、作動性材料が、膨張により嵩高になるか、または、作動性材料が、線状、直線または平坦な状態を維持し、非適応性の材料が、作動性材料の収縮により、嵩高になる。織るかもしくは編むか、または接着剤を用いることを通じて、適切に拘束すると、そのような構造において、所望の温度応答性をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、材料の動作範囲を制限する拘束部を用いるのが有益であり得る。
【0126】
さらなる実施形態では、1または複数のコイル状繊維100を含むコイル化アクチュエータ繊維100または人工筋肉は、(i)織布または製紐糸、(ii)光の透過または気流を調節するために、シャッタまたはブラインドを開閉する機械的機構、(iii)医療機器または玩具用の機械的駆動部、(iv)大きさの大きいまたは小さいポンプ、弁駆動部または流体ミキサ、(v)電子回路を開閉するかまたは錠を開閉する機械的リレー、(vi)高感度な電気化学的分析物分析で用いる回転電極用のねじり駆動部、(vii)光学デバイス用の機械的駆動部、(viii)光シャッタを開閉するか、レンズもしくは光拡散体を並進もしくは回転させるか、規格対応レンズの焦点距離を変化させる変形を起こすか、または、ディスプレイ上のピクセルを回転もしくは並進させてディスプレイ上に変化する画像を実現させる、光学デバイス用の機械的駆動部、(ix)触覚情報を供給する機械的駆動部、(x)術者用手袋または点字表示装置における触覚装置用に触覚情報を供給する機械的駆動部、(xi)表面構造の変化を可能にするスマート表面用の機械的駆動システム、(xii)外骨格、義肢またはロボット用の機械的駆動システム、(xiii)人型ロボットにリアルな顔の表情もたらすための機械的駆動システム、(xiv)周囲温度に応答して通気孔を開閉するかまたは空隙率を変化させる感温性材のためのスマートパッケージング、(xv)周囲温度または光熱加熱に起因する温度に応答して弁を開閉する機械的システム、(xvi)光熱加熱または電気加熱を用いて、太陽の方向に対して、太陽電池の配向を制御する機械的駆動部、(xvii)光熱によって作動するマイクロデバイス、(xviii)温度変動を用いて、電気エネルギーとして回収される機械エネルギーを発生させる熱または光熱作動式エネルギーハーベスタ、(xix)密着する衣服であって、熱作動を用いて、衣服への挿入を容易にする衣服、(xx)調整可能なコンプライアンスをもたらすためのデバイスであって、電気熱作動によって調整可能なコンプライアンスをもたらすデバイス、(xxi)並進または回転ポジショナ、などのうちの1または複数を含め、様々な好適な方法で使用できる。
【0127】
記載されている実施形態には、様々な修正形態及び代替的な形態の余地があり、その具体例は、例として示してあり、本明細書に、さらに詳細に記載されている。しかしながら、記載されている実施形態は、開示されている特定の形態または方法に限られるものではなく、むしろ、本開示は、あらゆる修正形態、等価形態及び代替形態を網羅するものであることを理解されたい。
【実施例
【0128】
第1及び第2の実施例
図13及び図14は、本明細書に記載されている方法に従って作製した環境応答性の2つのコイル状繊維アクチュエータを示している。図13及び図14の顕微鏡画像は、2つの異なる方法によって作製した形状を有するコイルを示している。スケールバーの長さは0.5mmである。
【0129】
図13では、0.1mmのポリアミドフィラメントから、コイル化を誘導するまで、張力下で加撚し、そのコイルを、負荷を低減した状態で反対方向に撚り(解撚)、熱セットすることによって、高度に加撚した繊維コイルを作製した。コイル指数を測定したところ、約2.9であることが明らかになり、繊維アクチュエータの軸方向の線熱膨張係数を測定したところ、-4.2mm/m/Kであることが明らかになった。
【0130】
図14では、0.1mmのポリアミドフィラメントから、コイル化を誘導する前に、張力下で加撚してから、犠牲繊維芯に巻き付けた後、熱セットを行い、芯を除去することによって、高度に加撚した繊維コイルを作製した。コイル指数を測定したところ、約2.8であることが明らかになり、繊維アクチュエータの軸方向の線熱膨張係数を測定したところ、-4.6mm/m/Kであることが明らかになった。両方のコイル状繊維アクチュエータとも、同じポリアミドフィラメントから作製し、両方のコイルとも、ホモキラルで、熱膨張係数がマイナスであり、加熱時ではなく冷却時に膨張する。材料を加撚によってコイル化したコイル(図13)では、互いの間に小さな空間を示し、材料を巻き付けることによってコイル化したコイル(図14)では、コイルは接触しているかほぼ接触している。
【0131】
追加の実施例
以上に記載されたこれらの技法を用いて、5mm/m/Kを上回る規模(マイナスの熱膨張性を有するコイルでは、これは、-5mm/m/K未満または-0.005/K未満の値を意味する)のCTE値である熱アクチュエータを作製し、2mm/m/Kを上回る規模であるアクチュエータも作製した。これらの実施態様例のいずれも、体温近辺で作動し、アパレル用途に適する応答性織布を作製可能にする。
【0132】
図19は、様々なコイル指数値(C)を有する、200個超の加撚及びコイル化ホモキラル繊維アクチュエータの有効線熱膨張係数(CTE)データを示している。破線は、データの直線近似線を表している(R2=0.7)。マンドレルに巻き付けたアクチュエータまたは芯に巻き付けたアクチュエータに関するデータはなく、すべてのデータは、コイル化が起こるまで加撚することを通じて作製したコイルを示している。約1.75超のコイル指数値を得るために、形成された状態のままのコイルを部分的に解撚して、コイル指数値及び線膨張係数の程度の両方を向上させた。概して、コイルばね指数(C)が大きいコイルほど、コイル接触温度が、体温近辺で膨張及び収縮を可能にするほど充分に高い。ばね指数が向上したこれらのコイルであって、それぞれ異なる材料で、それぞれ異なる条件下において作製したコイルでは、コイル間隔及びコイルバイアス角度にばらつきも見られ、このことによって、高めのC値において、データ分散が大きくなるいくつかのケースが説明される。このデータは、直径が0.05mm~0.3mm超の範囲である様々な繊維サイズまたは糸サイズのポリアミド類、ポリエステル類及びポリオレフィン類の繊維から作製したコイルを示している。データは、様々な条件下で熱セットしたコイルも示している。
【0133】
表1には、異なる温度で熱セットした一連の加撚及びコイル化ポリエステル繊維アクチュエータから得られた熱膨張係数測定値のデータがまとめられている。140℃、170℃及び200℃の各温度でのアニール処理ごとに、6個の繊維アクチュエータを作製した(合わせて18個の繊維アクチュエータ)。アクチュエータはすべて、同様の条件下で作製し、アニール処理工程前には、名目上同一であった。各温度において、アニール処理した繊維アクチュエータの半数は、S撚りのホモキラルアクチュエータであり、半数は、Z撚りのホモキラルアクチュエータであった。3つのすべての熱セット条件は、ストロークの大きい熱応答性材を作製するのに適するものであったが、低めの温度(140℃及び170℃)では、熱応答性の程度が有意に大きい繊維アクチュエータが作製された。各熱セット手順は、2時間行った。
表1:異なる温度で熱セットした加撚及びコイル化ポリエステル繊維アクチュエータの要約データ
【0134】
低温の熱セット条件は、融点の高い材料にも使用できる。例えば、オートクレーブ条件(121℃の飽和及び加圧蒸気で15~20分)は、高度に加撚したポリアミドのかなりの撚りの強さを緩めるのに充分であり得、これにより、高度に加撚した及び/またはコイル化された材料を確実に処理するのに必要な張力を低減できる。概して、材料のガラス転移温度よりも高い温度で熱セットするのが望ましく、ガラス転移温度は、ポリエステル及びポリアミドのように織布で用いる一般的なポリマーでは、典型的には100℃未満である。ポリオレフィン材では、ガラス転移温度は、これよりもかなり低いことがあり、0℃未満の場合も多く、100℃未満の熱セット温度で充分である場合が多い。
【0135】
本明細書に記載されている技法を用いて、コイル化を誘導するまで繊維を加撚すると、有効線熱膨張係数値が-9mm/m/K超であるホモキラルなコイル状繊維アクチュエータを作製できることが示されている。追加の最適化が可能であり、そのような値は、性能の上限ではない。さらに、加撚繊維を芯に巻き付ける方法は、同様の結果をもたらすことができ、いくつかの例では、作製するコイルの構造に対する制御性を向上可能にして、それにより、性能の向上への道を開く。
【0136】
下記の項目(条項)の観点で、本開示の実施形態を説明することができる。
(項目1)
装着されるとともに、ユーザの体の一部分を少なくとも部分的に覆うように構成された熱適応性衣服の構築方法であって、
複数のコイル化アクチュエータ繊維を作製する工程と、
前記作製された複数のコイル化アクチュエータ繊維を含む熱適応性布を作製する工程と、
前記熱適応性布によって画定される衣服本体を作製する工程と、
を備え、
前記複数のコイル化アクチュエータ繊維の各々は、
繊維を加撚して、繊維バイアス角度α繊維が25°~50°である高度に加撚した繊維を作製し、
前記高度に加撚した繊維を犠牲芯に巻き付けて、前記高度に加撚した繊維にコイルを作製し、
前記犠牲芯上に配置された前記高度に加撚した繊維コイルに熱を加えるかまたは化学的セット剤を塗布することによって、前記高度に加撚した繊維コイルをセットし、
前記犠牲芯を溶媒に溶解させて前記犠牲芯を除去して、
2.0以上のコイルばね指数(C)、
20℃以上のコイル部分接触温度、
|CTE|≧2mm/m/Kの熱応答性、
25°~50°の繊維バイアス角度α繊維
という特徴を有するコイル化アクチュエータ繊維を作製する、
ことによって作製され、
前記衣服本体は、
装着するユーザの体と面するように構成された内面を有する内側部分と、
前記装着するユーザの外側環境と面するように構成された外面を有する外側部分と、を含み、
前記熱適応性布は、第1の環境温度範囲に応答して、基本の構成を取るように構成されており、
前記熱適応性布は、前記第1の環境温度範囲とは別の第2の環境温度範囲に応答して、嵩高な構成を取るように構成されている、方法。
(項目2)
前記繊維が、1または複数の繊維を含む糸、または、単一の細長い要素を含む繊維、のうちの1つを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
水への溶解を通じて、前記犠牲芯が除去される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記犠牲芯が、水溶性ポリマーの、モノフィラメント、フィラメント糸または短繊維糸を含む、項目1乃至3のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記コイル化アクチュエータ繊維が布に組み込まれた後に、前記犠牲芯が除去される、項目1乃至4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
複数のコイル化アクチュエータ繊維の作製方法であって、
前記複数のコイル化アクチュエータ繊維の各々は、
繊維を加撚して、繊維バイアス角度α繊維が25°~50°である加撚繊維を作製する工程と、
前記加撚繊維を犠牲芯に巻き付けて、前記加撚繊維にコイルを作製する工程と、
前記犠牲芯上に配置された前記加撚繊維コイルに熱を加えるかまたは化学的セット剤を塗布することによって、前記高度に加撚した繊維コイルをセットする工程と、
前記犠牲芯を溶媒に溶解させて前記犠牲芯を除去する工程であって、
2.0以上のコイルばね指数(C)、
20℃以上のコイル部分接触温度、
|CTE|≧2mm/m/Kの熱応答性、
25°~50°の繊維バイアス角度α繊維
という特徴のうちの2以上を有するコイル化アクチュエータ繊維を作製する工程と、
によって作製される、方法。
(項目7)
前記繊維が、1または複数の繊維または他の要素を含む糸、単一の細長い要素を含む繊維、のうちの1つを含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
コイル化アクチュエータ繊維の作製方法であって、
繊維を加撚して、加撚繊維を作製する工程と、
前記加撚繊維を芯に巻き付けて、前記加撚繊維にコイルを作製する工程と、
前記芯の少なくとも一部を除去して、コイル化アクチュエータ繊維を形成する工程と、
を含む方法。
(項目9)
前記繊維が、1または複数の繊維を含む糸、または、単一の細長い要素を含む繊維、のうちの1つを含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
熱または化学的処理によって、前記コイル化アクチュエータ繊維をセットする工程
を更に含む、項目8または9に記載の方法。
(項目11)
前記芯を部分的または完全に除去する前に、前記加撚繊維コイルのセット工程が行われる、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記コイル化アクチュエータ繊維のスプール上で、前記加撚繊維コイルのセット工程が行われる、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記コイル化アクチュエータ繊維のコイルばね指数(C)が、2.0以上である、項目8乃至12のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記コイル化アクチュエータ繊維のコイル部分接触温度が、10℃以上である、項目8乃至13のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記コイル化アクチュエータ繊維の熱応答性が、|CTE|≧2mm/m/Kである、項目8乃至14のいずれかに記載の方法。
(項目16)
少なくとも2本の加撚繊維を芯に巻き付けて、前記加撚繊維にコイルを作製する工程
を更に含む、項目8乃至15のいずれかに記載の方法。
(項目17)
a.溶解、
b.化学反応、または、
c.これらの組み合わせ
を通じて、前記芯が除去される、項目8乃至16のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記芯は、除去可能な部分と同じ条件下で溶解不可能であるかまたは化学反応性のない除去不可能な部分をさらに含み、当該芯の一部が残る、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記繊維を加撚して前記加撚繊維を作製する工程は、前記繊維を加撚して、繊維バイアス角度α繊維が25°超になるようにする工程を含む、項目8乃至18のいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記繊維を加撚して前記加撚繊維を作製する工程は、前記繊維を加撚して、繊維バイアス角度α繊維が30°~40°になるようにする工程を含む、項目8乃至19のいずれかに記載の方法。
(項目21)
a.当該コイル状繊維が体温であるとともに、
b.無負荷状態であるときに、
コイル間に物理的な空間を有するコイル状繊維アクチュエータの作製方法であって、
セットプロセス中に、前記コイル状繊維アクチュエータの実質的な膨張または収縮を防ぐ物理的拘束下で、前記コイル状繊維アクチュエータが、
c.熱または
d.化学的処理
のいずれかの少なくとも1つによってセットされる、方法。
(項目22)
前記コイル化アクチュエータ繊維のコイルばね指数(C)が、2.0以上である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記コイル状繊維アクチュエータの熱応答性が、|CTE|≧2mm/m/Kである、項目21または22に記載の方法。
(項目24)
セット中に加えられる前記物理的拘束は、前記コイル状繊維アクチュエータのスプールに加えられる、項目21乃至23のいずれかに記載の方法。
(項目25)
セット中に加えられる前記物理的拘束は、
c.前記セットプロセス中に、前記コイル状繊維アクチュエータの実質的な膨張または収縮を防ぎ、かつ
d.そのコイル間に物理的な空間が存在する位置に、前記コイル状繊維アクチュエータを保持する、項目21乃至24のいずれかに記載の方法。
(項目26)
前記コイル状繊維アクチュエータは、121℃以上の温度で熱セットされる、項目21乃至25のいずれかに記載の方法。
(項目27)
c.前記コイル状繊維が室温であるとともに、
d.無負荷状態であるときに、
前記コイル状繊維アクチュエータは、そのコイル間に物理的な空間を有する、項目21乃至26のいずれかに記載の方法。
(項目28)
c.当該コイル状繊維が体温であるとともに、
d.無負荷状態であるときに、
コイル間に物理的な空間を有するコイル状繊維アクチュエータの作製方法であって、
最初に前記コイルを形成した後に、前記コイル状繊維アクチュエータが、
d.前記コイルを形成するために用いられた加撚方向と反対方向に、
e.最初にコイルを形成する際に前記繊維に加えられた張力よりも小さい張力下で、
f.最初に形成したコイルの大半が元の状態を保つ程度だけ、
加撚され、
前記部分的に解撚されたコイル状繊維アクチュエータが、
c.熱または
d.化学的処理
のいずれかの少なくとも1つによってセットされる、方法。
(項目29)
前記コイル化アクチュエータ繊維のコイルばね指数(C)が、2.0以上である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記コイル状繊維アクチュエータの熱応答性が、|CTE|≧2mm/m/Kである、項目28または29に記載の方法。
(項目31)
前記コイル状繊維アクチュエータは、121℃以上の温度で熱セットされる、項目28乃至30のいずれかに記載の方法。
(項目32)
e.前記コイル状繊維が室温であるとともに、
f.無負荷状態であるときに、
前記コイル状繊維アクチュエータは、そのコイル間に物理的な空間を有する、項目28乃至31のいずれかに記載の方法。
(項目33)
g.当該コイル状繊維が体温であるとともに、
h.無負荷状態であるときに、
コイル間に物理的な空間を有するコイル状繊維アクチュエータの作製方法であって、
前記コイル状繊維アクチュエータは、
d.繊維を加撚して加撚繊維を作製し、
e.前記加撚繊維を犠牲芯に巻き付けて、前記加撚繊維にコイルを作製し、
f.前記犠牲芯の少なくとも一部を除去して、コイル化アクチュエータ繊維を作製する
ことによって作製され、
前記コイル状繊維アクチュエータは、
c.熱または
d.化学的処理
のいずれかの少なくとも1つによってセットされる、方法。
(項目34)
溶解を通じて、前記芯が除去される、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記芯は、完全に除去される、項目33または34に記載の方法。
(項目36)
芯に巻き付けてコイルを作製する前に、前記加撚繊維がセットされる、項目33乃至35のいずれかに記載の方法。
(項目37)
前記加撚繊維の繊維バイアス角度が、20°以上である、項目33乃至36のいずれかに記載の方法。
(項目38)
前記コイル状繊維アクチュエータの熱応答性が、|CTE|≧2mm/m/Kである、項目33乃至37のいずれかに記載の方法。
(項目39)
前記芯を除去する前に、前記コイル状繊維アクチュエータが熱セットされる、項目33乃至38のいずれかに記載の方法。
(項目40)
i.前記コイル状繊維が室温であるとともに、
j.無負荷状態であるときに、
前記コイル状繊維アクチュエータは、そのコイル間に物理的な空間を有する、項目33乃至39のいずれかのいずれかに記載の方法。
(項目41)
犠牲芯に巻き付けられたか、犠牲芯の周囲でコイル化された、高度に加撚した繊維または糸から作製されたコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータであって、
前記犠牲芯は、部分的にまたは全部除去されている、コイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータ。
(項目42)
繊維バイアス角度が、25°~45°である、項目41に記載のコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータ。
(項目43)
溶解を通じて、前記犠牲芯が除去されている、項目41または42に記載のコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータ。
(項目44)
水への溶解を通じて、前記犠牲芯が除去されている、項目41乃至43のいずれかに記載のコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータ。
(項目45)
前記犠牲芯が、水溶性ポリマーの、モノフィラメント、フィラメント糸または短繊維糸である、項目41乃至44のいずれかに記載のコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータ。
(項目46)
前記犠牲芯を除去する前に、当該コイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータは、熱または化学的手段によってセットされている、項目41乃至45のいずれかに記載のコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータ。
(項目47)
コイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータの作製方法であって、
a.繊維または糸を加撚する工程と、
b.前記加撚繊維または加撚糸を犠牲芯材に巻き付けるか、または犠牲芯材の周囲でコイル化する工程と、
c.前記犠牲芯材を部分的にまたは全部除去する工程と、
を含む方法。
(項目48)
コイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータにおけるコイル形状の変更方法であって、
d.前記コイルの形成時に加えられた張力以下の張力を加える工程と、
e.前記コイルを解撚して、前記コイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータのコイル指数を増大させる工程と、
を含む方法。
(項目49)
解撚の際に加えられる前記張力は、前記コイルの形成時に加えられた張力の50%未満である、項目48に記載の方法。
(項目50)
解撚中に、前記コイルの直径が監視され、
f.張力、
g.巻き取り速度、または
h.加撚速度
というプロセスパラメータのうちの少なくとも1つを制御する際に、直径データが使用される、項目48または49に記載の方法。
(項目51)
高度に加撚した繊維または糸から作製されたコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータであって、
第1の張力下で撚りを挿入することを通じてコイル化され、
当該コイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータのコイル指数を変化させるのに充分な第2の張力下で解撚された、コイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータ。
(項目52)
同一の加撚条件、コイル化条件及びセット条件下で、ただし、前記解撚工程なしに作製された第2のコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータのコイル接触温度が、前記解撚工程を含む同じプロセスから作製された前記コイルよりも低い、項目51に記載のコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータ。
(項目53)
i.2.0以上のコイル指数、または
j.室温よりも高いコイル接触温度
のいずれかの少なくとも1つを有する、項目51または52に記載のコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータ。
(項目54)
コイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータの作製方法であって、
k.第1の張力下で、繊維または糸を加撚する工程と、
l.i.コイル化するまで撚りを挿入する、あるいは、ii.前記加撚繊維または加撚糸を犠牲芯もしくはマンドレルに巻き付けてコイル化する、のいずれか1つを通じて、前記加撚繊維または加撚糸をコイル化する工程と、
m.第2の張力下で、前記コイルを解撚する工程と、
を含む方法。
(項目55)
前記第2の張力は、前記第1の張力未満である、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記第2の張力は、前記第1の張力の10%以下である、項目54または55に記載の方法。
(項目57)
n.当該コイル化アクチュエータが室温超であるとともに、
o.無負荷状態である、
という条件下で、コイル間に物理的な空間を有するコイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータであって、
セットプロセス中に実質的な膨張または収縮を防ぐ物理的拘束下で、
k.熱または
l.化学的処理
のいずれかの少なくとも1つによってセットされている、コイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータ。
(項目58)
セット前の当該コイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータは、室温において、隣接するコイルと接しているコイルを有する、項目57に記載のコイル状繊維またはコイル状糸。
(項目59)
セット前の当該コイル状繊維アクチュエータまたはコイル状糸アクチュエータは、最小限の張力下にある、項目57または58に記載のコイル状繊維またはコイル状糸。
(項目60)
p.相対的または絶対的な繊維径または糸径と、
q.繊維速度または糸速度と、
r.繊維または糸のねじれ位置と、
のリストからの少なくとも1つを求めるカメラ及び画像解析を備えるセンサであって、
d.張力と、
e.巻き取り速度と
f.加撚速度と、
のリストからの少なくとも1つのプロセス変数であって、繊維または糸の製造または加工の際に使用されるプロセス変数、に関する製造制御情報を供給する、センサ。
(項目61)
項目60に記載のセンサを用いるプロセスで作製された繊維アクチュエータ。
(項目62)
コイル指数値が2.0以上である繊維アクチュエータであって、筒状のねじれを誘導するまで撚りを挿入することを通じて、コイルが作製された、繊維アクチュエータ。
(項目63)
コイル接触温度が20℃超である、項目62に記載の繊維アクチュエータ。
図1
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