(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】レシプロ膨張機及びランキンサイクル装置
(51)【国際特許分類】
F01K 27/00 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
F01K27/00 A
(21)【出願番号】P 2020018106
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2023-01-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 耕
(72)【発明者】
【氏名】飯田 登
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-140074(JP,A)
【文献】特開2001-165049(JP,A)
【文献】特開平03-009085(JP,A)
【文献】特開2009-174494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 27/00
F01B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトの周囲に配置されたシリンダと、
前記シリンダの内部を往復動するピストンと、
前記シリンダの内部における前記ピストンの往復動により変化する体積を有する作動室と、
オイルが貯留されているオイル溜まりと、
前記オイル溜まりから前記ピストンへ前記オイルを導く供給路と、
前記シャフトの回転によって発電し、前記シャフトの軸線方向において前記オイル溜まりと前記シリンダとの間に配置された発電機と、を備えた、
レシプロ膨張機。
【請求項2】
前記供給路は、前記シリンダの内面に開口している開口端を有する第一通路と、前記シャフトに形成された第二通路とを含む、請求項1に記載のレシプロ膨張機。
【請求項3】
前記第一通路は、前記ピストンが下死点及び前記下死点の近くに位置しているときに前記作動室に連通している、請求項2に記載のレシプロ膨張機。
【請求項4】
前記第一通路の前記開口端は、前記ピストンの往復動の方向に延びている前記ピストンの側面によって常に覆われている、請求項2に記載のレシプロ膨張機。
【請求項5】
前記ピストンの背面に接した空間と前記第一通路とを連通させる排出路をさらに備えた、請求項4に記載のレシプロ膨張機。
【請求項6】
前記オイル溜まりに貯留された前記オイルは、前記作動室に吸入される作動流体が有する温度よりも低い温度を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載のレシプロ膨張機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のレシプロ膨張機を備えた、ランキンサイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レシプロ膨張機及びランキンサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、斜板式圧縮機等の流体機械が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、斜板式圧縮機が記載されている。この斜板式圧縮機は、斜板室内に収容されたスラストベアリング等の部品の潤滑を斜板室の下方に設けたオイル貯留室のオイルによって行う。この斜板式圧縮機において、吐出室と斜板室又はオイル貯留室の少なくとも一方とを結ぶ通路がハウジング外壁に沿って配設され、その通路の斜板室又はオイル貯留室寄りに絞り部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、ピストンとシリンダとの間の摺動部における摩耗の発生が抑制され、信頼性向上の観点から有利なレシプロ膨張機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示におけるレシプロ膨張機は、
シャフトと、
前記シャフトの周囲に配置されたシリンダと、
前記シリンダの内部を往復動するピストンと、
前記シリンダの内部における前記ピストンの往復動により変化する体積を有する作動室と、
オイルが貯留されているオイル溜まりと、
前記オイル溜まりから前記ピストンへ前記オイルを導く供給路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記のレシプロ膨張機によれば、ピストンとシリンダとの間の摺動部における摩耗の発生が抑制され、信頼性向上の観点から有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1におけるレシプロ膨張機の断面図
【
図2】
図1のレシプロ膨張機における機構部を拡大した断面図
【
図4】
図1に示すレシプロ膨張機におけるピストンの斜視図
【
図5A】レシプロ膨張機におけるピストンの変位とクランク角との関係を示すグラフ
【
図5B】レシプロ膨張機におけるバルブの開閉とクランク角との関係を示すグラフ
【
図5C】レシプロ膨張機における第一通路の開閉とクランク角との関係を示すグラフ
【
図5D】レシプロ膨張機における作動室の圧力とクランク角との関係を示すグラフ
【
図6】実施の形態2におけるレシプロ膨張機の断面図
【
図7】
図6に示すレシプロ膨張機における機構部を拡大した断面図
【
図9】
図8のIX-IX線に沿ってシリンダブロックを斜め下から見た断面図
【
図10】実施の形態3におけるランキンサイクル装置の構成図
【
図11】他の実施の形態におけるレシプロ膨張機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者らが本開示を想到するに至った当時、太陽光などの自然エネルギー又は各種排熱を利用するシステムの一つとして、ランキンサイクルを有する発電システムがあった。このようなランキンサイクルでは、例えば、熱源に接する蒸発器で作動流体が温められ、高温かつ高圧の作動流体によって膨張機を作動させ、膨張機によって生成された動力によって発電がなされる。
【0010】
このような膨張機では、例えば、オイルを各摺動部へ供給して潤滑することによって、膨張機構を構成する摺動部品の摩耗等を防止し、信頼性を確保することが考えられる。しかし、膨張機の内部の各摺動部へ供給されたオイルが作動流体とともにサイクルへ流出すると、蒸発器へオイルが流入し、蒸発器の内部でオイルが温められ、オイルの劣化が進むことが想定される。この場合、劣化したオイルがサイクルを循環して再び膨張機へ流入することにより、膨張機の内部のオイルも徐々に劣化し、このことが膨張機の信頼性を低下させる一因となることが懸念される。このため、ランキンサイクルでは、オイルの劣化を防止する観点から、サイクルを循環するオイルの量を少なくすることが有利であると考えられる。
【0011】
例えば、容積型の流体機械の一種である斜板式の流体機械は、従来、カーエアコン用の圧縮機として広く用いられている。斜板式圧縮機では、斜板が回転する斜板室の内部でオイルを飛散させ、各摺動部の潤滑を行う方法が知られている。加えて、カーエアコン用の斜板式圧縮機におけるピストンとシリンダとの間の摺動部への給油として、サイクルから吸入した作動流体に含まれるミスト状のオイルを付着させる方法も考えられる。
【0012】
上記の通り、ランキンサイクルの膨張機において、オイルの劣化防止の観点からサイクルで循環するオイルの量を少なくすることが望ましい。このため、斜板式の流体機械等のレシプロ式の流体機械をランキンサイクルの膨張機として使用する場合に、吸入された作動流体に含まれるオイルによる潤滑の効果を期待することは難しい。なお、ピストンとシリンダとの間の摺動部では、ピストンがシリンダに対して往復動するので、その摺動部にオイルが介在していても回転運動している摺動部に比べて油圧が発生しにくい。このため、ピストンとシリンダとの間の摺動部では、油膜が薄くなりやすく、耐久性の確保が難しくなることも想定される。
【0013】
発電システムに用いられるランキンサイクル装置では、発電システムの発電効率を高めるためには、膨張機へ吸入される作動流体の温度が高いことが有利である。一方、作動流体の温度が高いことにより、摺動部におけるオイルの温度も上昇しやすい。その結果、オイルの粘度が低下し、摺動部の潤滑状態が良好とは言い難い状態になることも想定される。また、ランキンサイクル装置は、カーエアコンとは異なり、長期間の運転を前提としている。このため、ランキンサイクル装置の膨張機には長期間の運転が必要とされ、ランキンサイクル装置の膨張機が高い信頼性を有することが重要である。
【0014】
従来のレシプロ式の流体機械をランキンサイクルの膨張機として用いると、ピストンとシリンダとの間の摺動部へのオイルの供給量を十分に高めること、又は、摺動部におけるオイルの温度上昇を防止することが困難である。このため、従来のレシプロ式の流体機械をランキンサイクルの膨張機として用いると、ピストンとシリンダとの間の摺動部における潤滑不足又はオイルの粘度の低下により、摩耗が増加して信頼性が低下するという課題を発明者らは発見した。本発明者らは、この課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0015】
そこで、本開示は、ピストンとシリンダとの間の摺動部における摩耗の発生が抑制され、信頼性向上の観点から有利なレシプロ膨張機を提供する。
【0016】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細な説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0017】
【0018】
[1-1.構成]
図1、
図2、及び
図3に示す通り、レシプロ膨張機1aは、シャフト10と、シリンダ24と、ピストン25と、作動室26と、オイル溜まり40と、供給路70とを備えている。シリンダ24は、シャフト10の周囲に配置されている。ピストン25は、シリンダ24の内部を往復動する。作動室26は、シリンダ24の内部におけるピストン25の往復動により変化する体積を有する。オイル溜まり40には、オイルが貯留されている。オイル溜まり40は、典型的には、レシプロ膨張機1aの内部に形成されている。供給路70は、オイル溜まり40からピストン25へオイルを導く。
【0019】
図1に示す通り、レシプロ膨張機1aは、例えば、密閉容器50、機構部20、及び発電機30を備えている。機構部20及び発電機30は、密閉容器50の内部に配置されている。機構部20は、シャフト10、シリンダ24、ピストン25、作動室26、供給路70の少なくとも一部を含んでいる。加えて、機構部20の内部には、吸入室53及び吐出室54が形成されている。密閉容器50の内部には、下部空間56が形成されている。発電機30は、例えば、下部空間56に配置されている。
【0020】
レシプロ膨張機1aは、例えば、ランキンサイクルに用いられる。このため、密閉容器50の内部の所定の空間には、例えば、ランキンサイクルで使用可能な作動流体が封入されている。ランキンサイクルで使用可能な作動流体は、例えば、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)系の作動流体、ハイドロフルオロカーボン(HFC)系の作動流体、又はイソペンタン等の炭化水素系の作動流体である。
【0021】
図1に示す通り、密閉容器50には、例えば、吸入管51及び吐出管52が取り付けられている。吸入管51は吸入室53に接続されている。吐出管52は下部空間56に接続されている。換言すると、吸入管51の一端は吸入室53に接し、吐出管52の一端は下部空間56に接している。
【0022】
発電機30は、例えば、固定子31と、回転子32とを備えている。固定子31は、例えば、鉄心と、その鉄心に巻かれた銅線とを備えている。回転子32には、例えば、永久磁石が内蔵されている。固定子31は、例えば、密閉容器50の内面に固定されている。一方、回転子32は、固定子31の内面に面して配置されており、シャフト10に取り付けられている。
【0023】
機構部20は、例えば、下ブロック21及びシリンダブロック22を備えている。下ブロック21は、例えば板状の部品であり、下ブロック21の周縁は、溶接等の方法によって密閉容器50の内面に接合されている。これにより、機構部20が密閉容器50に固定されている。下ブロック21は、例えば、下軸受21bを有する。下ブロック21の中央部分は、例えば、円筒状に形成されている。下軸受21bは、下ブロック21の中央部分に形成された孔をなす面によって構成されている。下ブロック21は、例えば、連通穴21aを有する。連通穴21aは、下ブロック21の上方の空間と下ブロック21の下方の下部空間56とを連通させている。
【0024】
シリンダブロック22は、下ブロック21の上面に固定されている。これにより、シリンダブロック22の下端に形成された開口が下ブロック21によって塞がれ、シリンダブロック22と下ブロック21とによって囲まれた空間によって吐出室54が形成されている。シリンダブロック22は、例えば、上軸受22aを有する。上軸受22aは、例えば、シリンダブロック22の中央部分に形成された孔をなす面によって構成されている。その孔は、シリンダブロック22の中央における円筒状の部分によって形成されている。
【0025】
図2に示す通り、シリンダブロック22には、例えば、ハウジング22bが形成されている。ハウジング22bは、円環状の空間であり、ハウジング22bの軸線は、上軸受22aの軸線上に位置する。
図3に示す通り、シリンダブロック22は、例えば、吐出通路22dを有する。吐出通路22dは、ハウジング22bと吐出空間54とを連通させている。
【0026】
図2及び3に示す通り、シリンダ24は、シリンダブロック22の上軸受22aの周囲に形成されている。シリンダブロック22には、例えば、6つのシリンダ24が形成されており、これらのシリンダ24は、上軸受22aの周囲においてシャフト10の軸線周りに等間隔で配置されている。各シリンダ24は、円柱状の孔をなしている。シリンダブロック22の各シリンダ24とハウジング22bとの間には、吸入吐出口22cが形成されている。吸入吐出口22cは、シリンダブロック22の各シリンダ24とハウジング22bとの間に形成された開口である。
【0027】
機構部20は、例えば、6つのシリンダ24に対応して6つのピストン25を備えている。
図4に示す通り、各ピストン25は、例えば、円筒部25aと、保持部25bとを備えている。各ピストン25は、例えば、円筒部25aが往復動可能な状態でシリンダ24に挿入されている。円筒部25aの上端部には、テーパ部25cが形成されている。
【0028】
機構部20は、例えば、斜板28及びホルダ28aをさらに備えている。斜板28は、円盤状の部品であり、ホルダ28aによってシャフト10に固定されている。斜板28は、シャフト10の周囲において環状の平面部を有し、その平面部の法線はシャフト10の軸線に対して傾斜している。加えて、斜板28のその平面部は、シャフト10の軸線に垂直な平面に対しても傾斜している。
【0029】
シャフト10は、上軸受22a及び下軸受21bとの間に小さなクリアランスを形成した状態で回転可能に上軸受22a及び下軸受21bに挿入されている。これにより、シャフト10が半径方向に支持される。一方、機構部20は、例えば、スラスト軸受27をさらに備えている。スラスト軸受27は、例えば、玉軸受である。スラスト軸受27は、シャフト10の軸線方向において、ホルダ28aと下ブロック21との間に配置されている。スラスト軸受27は、例えば、転動体として鋼球を備えている。
【0030】
図2に示す通り、機構部20は、例えばヘッド23をさらに備えている。ヘッド23は、例えば、環状かつ板状の部品である。ヘッド23は、シリンダブロック22の上端に取り付けられている。
【0031】
上記の通り、各シリンダ24にはピストン25の円筒部25aが挿入されている。機構部20において、作動室26は、例えば、シリンダ24、ピストン25、及びヘッド23によって囲まれた空間として形成されている。
【0032】
機構部20は、例えば、シュー28bをさらに備えている。シュー28bは、上シュー28m及び下シュー28nを含む。シュー28bは、斜板28の周縁部に取り付けられている。各ピストン25は、シュー28bによって斜板28に連結されている。斜板28は、シャフト10とともに回転する。斜板28の回転位置により、各ピストン25の、各シリンダ24の内部における位置が定まる。加えて、斜板28の傾斜角度により、各ピストン25のストロークが定まる。6つのピストン25は、シャフト10の軸線周りに等間隔で配置されているので、これらのピストン25は、シャフト10の回転に伴い、所定の位相差で互いに連動して往復動する。
【0033】
図2に示す通り、機構部20は、例えば、バルブ60をさらに備えている。バルブ60は、略円筒形状を有し、吸入用凹部60a及び吐出用凹部60bを有する。バルブ60は、例えば、シャフト10の上端部に取り付けられており、ハウジング22bに回転可能な状態で収納されている。機構部20は、例えば、カバー29をさらに備えている。カバー29によって、ハウジング22bが覆われている。吸入管51は、例えば、カバー29に取り付けられている。吸入室53は、例えば、ハウジング22b、カバー29、及びバルブ60によって囲まれた空間として形成されている。
【0034】
シャフト10の回転に伴いバルブ60と各シリンダ24との位置関係が変化することにより、吸入用凹部60a及び吐出用凹部60bと吸入吐出孔22cとが連通して、バルブ60が開閉する。これにより、シャフト10の回転に伴い、バルブ60によって、吸入室53から作動室26に至る吸入経路と、作動室26から吐出室54に至る吐出経路とが所定のタイミングで開閉する。
【0035】
図1及び
図2に示す通り、供給路70は、例えば、オイル溜まり40からピストン25の近くまで延びている。供給路70は、例えば、第一通路71と、第二通路72とを含む。第一通路71は、シリンダ24の内面に開口している開口端71aを有する。第二通路72は、シャフト10に形成されている。
【0036】
第一通路71は、例えば、シリンダブロック22の中央における円筒状の部位をシャフト10の半径方向に貫通している。また、第一通路71は、例えば、第二通路72とシリンダ24の内面とを最短距離で結ぶ通路である。
【0037】
第一通路71は、例えば、ピストン25が下死点及び下死点の近くに位置しているときに作動室26に連通している。換言すると、開口端71aの位置は、ピストン25が下死点に位置するときに、ピストン25の上端面の近傍に位置している。
【0038】
一方、第一通路71は、ピストン25が下死点及び下死点の近くの位置以外の位置にあるときには、作動室26に連通していない。
【0039】
ピストン25の往復方向において、開口端71aと下死点におけるピストン25の上端面との距離D71aは、特定の値に限定されない。下死点におけるピストン25の上端面と上死点におけるピストン25の上端面との間の距離DSに対する距離D71aの比(D71a/DS)は、例えば、0.1以下である。
【0040】
第二通路72は、例えば、シャフト10の内部に形成された縦穴72a及び横穴72bを含む。縦穴72aは、シャフト10の軸線方向に延びている。横穴72bは、縦穴72aの所定の位置からシャフト10の半径方向外側に延び、シャフト10の外周面に開口している。
図2及び
図3に示す通り、シリンダブロック22の上軸受22aには、例えば、環状溝22eが形成されている。環状溝22eは、第一通路71の開口端71aと反対側の端には環状溝22eに接した開口が形成されている。第一通路71の断面積は、例えば、縦穴72aの断面積及び横穴72bの断面積よりも小さい。第一通路71の直径は、例えば2mm以下である。
【0041】
図1に示す通り、レシプロ膨張機1aは、例えば、オイルポンプ73及び吸込管74をさらに備えている。オイルポンプ73は、供給路70に配置されている。オイルポンプ73は、例えば、ギヤポンプ等の容積型のポンプである。オイルポンプ73は、例えば、シャフト10の下端に取り付けられており、シャフト10の回転により駆動される。吸込管74の内部はオイルポンプ73の吸入部に連通しており、吸込管74の下端は、オイル溜まり40に浸漬している。縦穴72aは、例えば、オイルポンプ73の吐出部に連通している。
【0042】
このような構成によれば、供給路70は、オイル溜まり40から、吸込管74、オイルポンプ73、縦穴72a、横穴72b、環状溝22e、及び第一通路71を経由して、作動室26に至る経路として形成されている。オイル溜まり40は、例えば、下部空間56の底部に形成されている。
【0043】
[1-2.動作]
以上のように構成されたレシプロ膨張機1aについて、その動作を、
図5A、
図5B、
図5C、及び
図5Dを参照しつつ説明する。
図5Aは、シャフト10が1回転する期間における特定のピストン25の変位を示す。
図5Bは、その期間における特定のピストン25に接する作動室26に対するバルブ60の開閉時期を示す。
図5Cは、その期間における第一通路71のその作動室26への開閉時期を示す。
図5Cにおいて、第一通路71がその作動室26に連通している状態が「開」に対応している。
図5Dは、その期間におけるその作動室26の圧力を示す。他のピストン25と、他のピストン25に対応した作動室26との組み合わせにおいても、特定のピストン25と比較してクランク角に関する位相差は存在するものの同様の挙動が示される。
【0044】
吸入管51及び吐出管52は、例えば、レシプロ膨張機1aの外部の作動流体の経路に接続されている。これにより、吸入室53は高圧に保たれ、吐出室54及び下部空間56は低圧に保たれている。吸入管51を通って、吸入室53には高温高圧の作動流体が流入する。
図2に示すバルブ60の状態では、より小さな体積を有する作動室26は、吸入行程にあり、吸入用凹部60aと連通している。吸入行程における作動室26の圧力は高い。一方、その作動室26に接したピストン25の下方の吐出室54の圧力は低いので、この圧力差により、そのピストン25には下向きの力が働く。一方、より大きな体積を有する作動室26は、吐出行程にあり、吐出用凹部60b及び吐出通路22dによって吐出室54に連通している。その結果、その作動室26の圧力はピストン25の下方の吐出室54と同様に低く、その作動室26に接するピストン25には作動流体の圧力差に伴う力は発生しない。
【0045】
このように、より小さな体積を有する作動室26に接したピストン25には、下向きの力が働き、そのピストン25が下降してシャフト10が回転駆動される。シャフト10の回転に伴い、ピストン25が下降し、そのピストン25に接する作動室26の体積は大きくなる。これにより、吸入室53から吸入用凹部60aを通過してその作動室26に高温高圧の作動流体が流入する。シャフト10がさらに回転すると、バルブ60が閉じて、その作動室26への作動流体の流入は止まる。一方、その作動室26の体積はさらに大きくなり、作動室26の内部の作動流体が膨張する。この膨張行程において、作動流体の膨張に伴い作動室26の圧力が低下し、その温度も低下する。膨張行程において、作動室26の内部の圧力は低下しても、その圧力は、ピストン25の下方の吐出室54の圧力よりは高い。このため、膨張行程における作動室26に接したピストン25には下向きの力が働く。
【0046】
一方、
図2において、吐出行程にある作動室26に接したピストン25は、シャフト10の回転に伴い上昇する。これにより、作動室26の体積が減少するので、作動室26から吐出用凹部60b及び吐出通路22dを通って吐出室54へ低温低圧の作動流体が流出する。さらに、吐出室54の作動流体は、連通穴21a、下部空間56、及び吐出管52の内部を通って、レシプロ膨張機1aの外部へ流出する。
【0047】
図1に示す通り、ピストン25の往復動の方向は、例えば、シャフト10の長手方向に平行である。
【0048】
6つの作動室26において、所定の位相差が保たれた状態で、作動流体の吸入、作動流体の膨張、及び作動流体の吐出が行われ、各作動室26の圧力が変化する。その結果、ピストン25によってシャフト10が連続して駆動され動力を得ることができる。レシプロ膨張機1aは6つの作動室26を備えているので、作動流体を連続して吸入することが可能であり、安定的にレシプロ膨張機1aを駆動できる。
【0049】
シャフト10とともに回転子32が回転することにより、発電機30において発電が行われ、電力を得ることができる。レシプロ膨張機1aは6つの作動室26を備えているので、レシプロ膨張機1aで発生するトルクの変動が小さく、出力電力が安定しやすい。
【0050】
このように、レシプロ膨張機1aにおいて、吐出管51を通って吸入された高温高圧の作動流体は、作動室26で膨張し、低温低圧の状態で吐出室54及び下部空間56を通ってレシプロ膨張機1aの外部に流出する。このため、下部空間56の作動流体の温度は、作動室26に吸入される作動流体の温度よりも低い。
【0051】
オイル溜まり40に貯留されたオイルは、例えば、作動室26に吸入される作動流体が有する温度よりも低い温度を有する。例えば、オイル溜まり40とピストン25との間には、吐出空間54が存在する。下部空間56における作動流体の温度は低いので、下部空間56の底部に形成されたオイル溜まり40に貯留されたオイルの温度も低い。
【0052】
シャフト10の回転に伴い、オイルポンプ73が作動し、オイル溜まり40に貯留されたオイルは、吸込管74から吸い込まれ、シャフト10の縦穴72aに吐出される。その後、縦穴72aを上昇したオイルは、横穴72bを通過して環状溝22eに供給される。第一通路71の開口端71aは、ピストン25がその下死点及び下死点の近くに位置していないときは、ピストン25の円筒部25aの側面によって塞がれている。
【0053】
図2では、より小さな体積を有する作動室26に接したピストン25は、下死点の近くに位置しており、第一通路71がその作動室26に連通している。このため、環状溝22eにおけるオイルは、第一通路71を通って作動室26に供給される。
図5Cに示す通り、第一通路71が作動室26に連通する期間は、ピストン25が下死点及び下死点の近くに位置している期間である。このとき、この作動室26は、膨張行程から吐出行程に変化する低圧の状態に保たれている。
【0054】
ピストン25の下死点におけるシャフト10のクランク角をθB[°]と表す。例えば、シャフト10のクランク角θCがθB-30°≦θC≦θB+30°である期間に、第一通路71は作動室26に連通している。望ましくは、θB-20°≦θC≦θB+20°である期間に、第一通路71は作動室26に連通している。第一通路71の直径は2mm以下と小さいので、オイルの粘性摩擦により少量のオイルが作動室26に供給される。作動室26に供給されたオイルは、ピストン25の上端に付着し、ピストン25が下死点から上昇する動きに伴いピストン25とシリンダ24との間に引き込まれ、ピストン25とシリンダ24との摺動部を潤滑する。特に、ピストン25の上端部にはテーパ25cが形成されているので、ピストン25の上昇に伴い、オイルが摺動部に引き込まれやすい。このため、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑がより確実になされやすい。
【0055】
ピストン25とシリンダ24との間の摺動部に引き込まれたオイルの一部は、ピストン25の下方の吐出室54に排出される。ピストン25の上端に付着したオイルの一部は、吐出行程において作動流体とともに作動室26から吐出室54に排出される。吐出室54に存在するオイルは、連通穴21aを通って下部空間56に移動する。下部空間56では、作動流体の流速は低下しているので、重力によるオイルの落下又はオイルの密閉容器50の内面等の所定の面への付着等が生じる。これにより、作動流体とオイルとが分離され、重力によってオイルが下方に集まる、これにより、オイルは、下部空間56の底部に形成されたオイル溜まり40に再び貯留される。
【0056】
上記の通り、オイル溜まり40に貯留されるオイルの温度が低いので、供給路70を通ってピストン25へ低温のオイルが供給される。これにより、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部におけるオイルの粘度の低下が抑制され、摺動部の潤滑がより確実になされやすい。
【0057】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、レシプロ膨張機1aは、シャフト10と、シリンダ24と、ピストン25と、作動室26と、オイル溜まり40と、供給路70とを備えている。シリンダ24は、シャフト10の周囲に配置されている。ピストン25は、シリンダ24の内部を往復動する。作動室26は、シリンダ24の内部におけるピストン25の往復動により変化する体積を有する。オイル溜まり40には、オイルが貯留されている。供給路70により、オイル溜まり40からピストン25へオイルが供給される。
【0058】
オイル溜まり40から供給路70を通ってピストン25へオイルが供給されることにより、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部へ低温のオイルを供給できる。このため、摺動部へのオイルの供給と、摺動部におけるオイルの温度の低減とを両立でき、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑状態が良好になりやすい。その結果、作動室26に高温の作動流体が吸入されても、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部における摩耗が抑制され、レシプロ膨張機1aは高い信頼性を有する。
【0059】
本実施形態のように、供給路70は、第一通路71と、第二通路72とを含んでいてもよい。第一通路71は、シリンダ24の内面に開口している開口端71aを有する。第二通路72は、シャフト10に形成されている。
【0060】
これにより、第一通路71を通ってピストン25の近くに低温のオイルが供給され、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑状態がより確実に良好になりやすい。加えて、シャフト10を用いて供給路70の一部を形成できるので、供給路70の形成に必要な部品点数を少なくできる。また、シャフト10の回転をオイルの供給に利用することも可能である。
【0061】
本実施形態のように、第一通路71は、ピストン25が下死点及び下死点の近くに位置しているときに作動室26に連通してもよい。
【0062】
これにより、作動室26の温度が低い状態でピストン25の上端面にオイルが供給される。その後、下死点からのピストン25の上昇に伴い、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部にオイルが引き込まれる。このため、摺動部へのオイルの供給と、摺動部におけるオイル温度のさらなる低減とを両立でき、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑状態がより良好になりやすい。
【0063】
本実施形態のように、第一通路71は、ピストン25が下死点及び下死点の近くの位置以外の位置にあるときには、作動室26に連通していなくてもよい。
【0064】
これにより、作動室26の温度が高い状態でピストン25の上端面にオイルが供給されることを防止でき、オイルが劣化しにくい。
【0065】
本実施形態のように、オイル溜まり40に貯留されたオイルは、作動室26に吸入される作動流体が有する温度よりも低い温度を有していてもよい。
【0066】
これにより、摺動部へのオイルの供給と、摺動部におけるオイルの温度の低減とをより確実に両立でき、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑状態がより確実に良好になりやすい。
【0067】
(実施の形態2)
以下、
図6、
図7、
図8、及び
図9を用いて、実施の形態2を説明する。実施の形態2に係るレシプロ膨張機1bは、特に説明する部分を除き、レシプロ膨張機1aと同様に構成されている。レシプロ膨張機1aの構成要素と同一又は対応するレシプロ膨張機1bの構成要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。レシプロ膨張機1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、レシプロ膨張機1bにも当てはまる。
【0068】
[2-1.構成]
図6、
図7、及び
図8に示す通り、レシプロ膨張機1bにおいて、第一通路71の開口端71aは、ピストン25の往復動の方向に延びているピストン25の側面によって常に覆われている。換言すると、開口端71aは、ピストン25が1往復する期間の全体にわたって、ピストン25の往復動の方向に延びているピストン25の側面によって覆われている。すなわち、開口端71aは、ピストン25の位置に関わらず、ピストン25の側面によって覆われている。一方、第一通路71の開口端71aと反対側の端は環状溝22eに接している。
【0069】
レシプロ膨張機1bは、例えば、排出路22fをさらに備えている。排出路22fは、ピストン25の背面に接した空間と第一通路71とを連通させている。排出路22fは、シリンダブロック22に形成された溝である。ピストン25の背面に接した空間は、例えば、吐出室54である。
【0070】
シリンダ24には、例えば、シリンダ環状溝24aが形成されている。シリンダ環状溝24aは、第一通路71に連通している。加えて、シリンダ環状溝24aと吐出室54とは排出路22fによって連通している。
【0071】
図7に示す通り、各ピストン25には、例えば、シリンダ環状溝24aと向かい合うようにピストン環状溝25dが形成されている。
【0072】
レシプロ膨張機1bにおいて、供給路70は、オイル溜まり40から、吸込管74、オイルポンプ73、縦穴72a、横穴72b、環状溝22e、第一通路71、シリンダ環状溝24a、及び排出路22fを経由して、吐出室54に至る経路である。
【0073】
[2-2.動作]
シャフト10の回転に伴い、オイルポンプ73が作動する。これにより、オイルポンプ73は、オイル溜まり40に貯留された低温のオイルを吸込管74から吸入し、シャフト10の縦穴72aへ吐出する。縦穴72aを上昇したオイルは、横穴72bを通過して、シリンダブロック22に形成された環状溝22eに供給される。
【0074】
図9に示す通り、環状溝22eにおけるオイルは、第一通路71を通過し、シリンダ環状溝24aに導かれる。
図9における破線の矢印は、オイルの流れを示す。シリンダ環状溝24aは、ピストン25の側面と向かい合っており、シリンダ環状溝24aにおけるオイルはピストン25の表面に付着する。ピストン25の往復動により、オイルはピストン25とシリンダ24との間の摺動部に引き込まれ、この摺動部の潤滑を行う。このように、オイル溜まり40に貯留された低温のオイルをピストン25とシリンダ24との間の摺動部に供給できる。このため、摺動部へのオイルの供給と、摺動部におけるオイルの温度のさらなる低減とが両立でき、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑状態を良好な状態に保ちやすい。
【0075】
上記の通り、ピストン25にはピストン環状溝25dが形成され、シリンダ環状溝24aとピストン環状溝25dとが向かい合っていることにより、シリンダ環状溝24aにおけるオイルがピストン環状溝25dに蓄積されやすい。ピストン環状溝25dに蓄積されたオイルによって、シリンダ24の内面にオイルが供給される。このように、ピストン環状溝25dによって、ピストン25とシリンダ24のとの間の摺動部のより広い範囲にオイルを供給できる。その結果、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑の状態をより確実に良好な状態に保つことができる。
【0076】
シリンダ環状溝24aのオイルは、排出路22fを通ってピストン25の下方の吐出室54に排出され、その後、下部空間56の底部に形成されたオイル溜まり40に再び貯留される。このように、供給路70によって常にオイルがオイル溜まり40と摺動部との間を循環することにより、摺動部におけるオイルの温度上昇を防止できる。このため、摺動部へのオイルの供給と、摺動部におけるオイルの温度のさらなる低減とを両立でき、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑状態をより良好な状態に保つことができる。
【0077】
レシプロ膨張機1bによれば、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部にオイルを直接供給でき、作動室26の内部の作動流体にオイルが接触しにくい。このため、オイルの温度上昇をより確実に防止できる。このように、摺動部へのオイルの供給と、摺動部におけるオイルの温度のさらなる低減とを両立でき、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑状態をより良好な状態に保ちやすい。
【0078】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、レシプロ膨張機1bでは、第一通路71の開口端71aは、ピストン25の往復動の方向に延びているピストン25の側面によって常に覆われている。
【0079】
これにより、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部へオイルを直接供給でき、高温となる作動室26の内部の作動流体とオイルとが接触することによってオイルの温度が上昇することを防止できる。このため、オイルの粘度の低下を防止でき、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑が確実に行われる。その結果、作動室26に高温の作動流体が吸入されても、ピストン25の側面に供給されたオイルと作動室26の内部の作動流体とが接触するリスクが低い。このため、オイルの温度上昇を抑制でき、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑状態を良好な状態を保つことができる。これにより、その摺動部における摩耗を抑制でき、レシプロ膨張機1bは高い信頼性を有する。
【0080】
本実施の形態のように、レシプロ膨張機1bは、ピストン25の背面に接した空間と第一通路71とを連通させる排出路22fをさらに備えていてもよい。
【0081】
第一通路71を通って、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部に直接供給されたオイルは、排出路22fを通って排出される。常にオイルがオイル溜まり40と摺動部との間を循環することにより、オイルの温度上昇を防止できる。このため、オイルの粘度低下を防止でき、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑がより確実に行われる。その結果、作動室26へ高温の作動流体が吸入されても、オイルの温度上昇をより確実に抑制でき、摺動部の潤滑状態をより確実に良好な状態に保つことができる。これにより、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部における摩耗を抑制でき、レシプロ膨張機1bは高い信頼性を有する。
【0082】
(実施の形態3)
以下、
図10を用いて、実施の形態3を説明する。
【0083】
[3-1.構成]
図10に示す通り、ランキンサイクル装置100は、レシプロ膨張機1aを備えている。
【0084】
ランキンサイクル装置100は、例えば、凝縮器102と、ポンプ103と、蒸発器104と、内部熱交換器105とをさらに備えている。内部熱交換器105は、第一流路106と、第二流路107とを備えている。ランキンサイクル装置100は、蒸発器104、レシプロ膨張機1a、第二流路107、凝縮器102、ポンプ103、第一流路106、及び蒸発器104の順番で作動流体が流れる閉じた回路を有する。この回路は、蒸発器104、レシプロ膨張機1a、第二流路107、凝縮器102、ポンプ103、第一流路106、及び蒸発器104の順番でこれらを配管によって接続することによって形成されている。
【0085】
蒸発器104は、熱源108が有する熱エネルギーを吸収する熱交換器である。蒸発器104は、例えば、フィンチューブ熱交換器である。例えば、蒸発器104において、熱源108から供給された高温蒸気等の高温の流体とランキンサイクル装置100の作動流体とが熱交換する。これにより、作動流体が加熱され蒸発する。これにより、高温高圧の作動流体が生成される。
【0086】
凝縮器102は、例えば、レシプロ膨張機1aから吐出された作動流体と外気とを熱交換させることにより、作動流体を冷却して凝縮させ、外気へ熱を放出する。凝縮器102として、フィンチューブ熱交換器等の公知の熱交換器を使用できる。
【0087】
ポンプ103は、凝縮器102を通過した作動流体を吸い込んで加圧し、加圧された作動流体を圧送する。ポンプ103は、例えば、ギヤポンプ等の容積型のポンプである。
【0088】
内部熱交換器105は、レシプロ膨張機1aから吐出された作動流体とポンプ103から吐出された作動流体とを熱交換させる。第二流路107をレシプロ膨張機1aから吐出された作動流体が流れ、第一流路106をポンプ103から吐出された作動流体が流れる。内部熱交換器105は、例えばプレート式熱交換器である。
【0089】
ランキンサイクル装置100における作動流体は、望ましくは、有機作動流体である。この場合、熱源108から蒸発器104に供給される高温流体の温度が約300℃未満であるときでも、レシプロ膨張機1aにおいて高い効率で発電がなされやすい。
【0090】
[3-2.構成]
ランキンサイクル装置100は、例えば以下のように運転される。まず、ポンプ103を作動させ、ランキンサイクル装置100の運転が開始する。その後、ランキンサイクル装置100における作動流体の循環量が所定値に達したら、熱源108から蒸発器104に高温流体が供給される。これにより、ランキンサイクル装置100の作動流体は、蒸発器104において高温流体から熱を受け取り、例えば、過熱状態の気相の作動流体に変化する。高温の気相の作動流体はレシプロ膨張機1aへと送られる。レシプロ膨張機1aの機構部20において、作動流体の圧力エネルギーが機械エネルギーに変換され、発電機30が駆動される。これにより、発電機30によって電力が生成される。レシプロ膨張機1aを通過した作動流体は、内部熱交換器105の第二流路107を通って凝縮器102に導かれる。作動流体は、凝縮器102において外気によって冷却され、凝縮する。凝縮した作動流体は、ポンプ103によって加圧され、内部熱交換器105の第一流路106を通って再び蒸発器104に送られる。
【0091】
ランキンサイクル装置100において、サイクルの高圧圧力及び低圧圧力を含む圧力条件が同じ場合を考える。この場合、レシプロ膨張機1aの入口における作動流体の温度が高いほど、レシプロ膨張機1aの入口における作動流体のエンタルピーとレシプロ膨張機1aの出口における作動流体のエンタルピーとの差が大きい。このため、ランキンサイクル装置100の発電効率を向上させる観点から、レシプロ膨張機1aの入口における作動流体の温度が高いことが有利である。レシプロ膨張機1aの入口における作動流体の温度が高い場合でも、レシプロ膨張機1aによれば、ピストン25とシリンダ24との間の摺動部の潤滑を確実に行うことができ、高い信頼性を発揮できる。
【0092】
[3-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、ランキンサイクル装置100は、実施の形態1に記載のレシプロ膨張機1aを備えている。
【0093】
これにより、レシプロ膨張機1aに高温の作動流体を吸入させた場合でも、レシプロ膨張機1aが高い信頼性を発揮でき、ランキンサイクル装置100も高い信頼性を発揮しうる。
【0094】
(他の実施の形態)
実施の形態1では、供給路70は、オイル溜まり40から、吸込管74、オイルポンプ73、縦穴72a、横穴72b、環状溝22e、及び第一通路71を経由して、作動室26に至る経路として形成されている。しかし、供給路70は、これに限らず、例えば、
図11に示すように構成されていてもよい。
図11に示すレシプロ膨張機1cは、特に説明する部分を除きレシプロ膨張機1aと同様に構成されている。
図11に示すレシプロ膨張機1cにおいて、供給路70は、オイル溜まり40に貯留されたオイルをシャフト10に形成した孔から飛散させるように構成されている。加えて、供給路70は、ピストン25の下死点の近くでシリンダ24の外部に露出したピストン25にオイルを付着させるように構成されている。このような構成によっても低温のオイルを供給できる。供給路70は、低温のオイルを供給できる他の構成を有していてもよい。
【0095】
実施の形態1では、オイルポンプ73として、容積型のギヤポンプを示した。しかし、オイルポンプ73は、これに限られず、ギヤポンプ以外の容積型のポンプ又はターボ型のポンプであってもよい。例えば、容積型のポンプは、ピストンポンプ、ベーンポンプ、又はロータリポンプであってもよい。ターボ型のポンプは、遠心ポンプ、斜流ポンプ、又は軸流ポンプであってもよい。オイルポンプ73は、オイルの粘性を利用したポンプであってもよい。
【0096】
実施の形態1では、上軸受22a及び下軸受21bとして、滑り軸受を示した。しかし、上軸受22a及び下軸受21bのそれぞれはこれには限定されない。上軸受22a及び下軸受21bのそれぞれは、例えば、ブッシュ等の高耐久性の摺動部材を用いた軸受であってもよい。また、上軸受22a及び下軸受21bのそれぞれは、転がり軸受であってもよい。この場合、滑り軸受に比べ摩擦損失の低減が可能である。
【0097】
実施の形態1では、スラスト軸受27として、転動体として鋼球を備えた玉軸受を示した。しかし、スラスト軸受27はこれに限定されない。スラスト軸受27は、転動体として円筒状のころを用いたころ軸受及び流体の動圧又は静圧を利用した滑り軸受等の他の形式の軸受であってもよい。
【0098】
実施の形態1では、レシプロ膨張機1aの一例として、6つの作動室26を備えた例を示した。しかし、レシプロ膨張機はこの例に限定されない。レシプロ膨張機は、7つの作動室を備えていてもよいし、6個及び7個以外の複数個の作動室を備えていてもよい。
【0099】
実施の形態1では、レシプロ膨張機1aの一例として、ピストン25の往復動に伴う動力が斜板28によってシャフト10に伝達される例を示した。しかし、レシプロ膨張機はこの例に限定されない。レシプロ膨張機は、ピストンの往復動を、ピストンの往復動の方向に平行な方向に延びているシャフトの回転運動に変換する他の機構を備えていてもよい。また、レシプロ膨張機は、ピストンの往復動に伴う動力がコンロッド及びクランクシャフトによってシャフトに伝達されるように構成されていてもよい。
【0100】
実施の形態2では、環状溝24aと吐出室54とを連通させる排出路22fは、シリンダブロック22に形成された溝である。しかし、排出路22fは、これに限定されない。例えば、排出路22fは、シリンダブロック22ではなく、ピストン25に形成されていてもよい。また、排出路22fは、溝以外の孔及びその他の形状の通路として構成されていてもよい。この場合でも、ランキンサイクル装置の信頼性を向上させることができる。
【0101】
実施の形態3では、実施の形態1に記載のレシプロ膨張機1aを備えた例を示した。しかし、ランキンサイクル装置は、これに限定されない。例えば、ランキンサイクル装置は、実施の形態2に記載のレシプロ膨張機1b等の信頼性の向上の観点から有利なレシプロ膨張機を備えていてもよい。この場合でも、ランキンサイクル装置の信頼性を向上させることができる。
【0102】
実施の形態3では、蒸発器104の一例として、フィンチューブ熱交換器を示した。しかし、蒸発器104は、これに限定されない。例えば、蒸発器104は、プレート式熱交換器及び二重管式熱交換器等の公知の熱交換器であってもよい。
【0103】
実施の形態3では、凝縮器102の一例として、フィンチューブ熱交換器を示した。しかし、凝縮器102はこれに限定されない。凝縮器102は、プレート式熱交換器及び二重管式熱交換器等の熱交換器であってもよい。この場合、凝縮器102は、別途設けられた熱媒体回路を流れる水等の熱媒体と作動流体とを熱交換させ作動流体を冷却するように構成されていてもよい。
【0104】
実施の形態3では、ポンプ103の一例として、容積型のギヤポンプを示した。しかし、ポンプ103はこれに限定されない。ポンプ103は、ギヤポンプ以外の容積型のポンプ又はターボ型のポンプであってもよい。容積型のポンプは、ピストンポンプ、ベーンポンプ、又はロータリポンプであってもよい。ターボ型のポンプは、遠心ポンプ、斜流ポンプ、又は軸流ポンプであってもよい。
【0105】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本開示は、往復動式のピストンを有するレシプロ膨張機及びランキンサイクル装置に適用可能である。具体的には、電力のみを生成するシステムだけでなく、CHPシステムなどのコジェネレーションシステムなどにも本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1a、1b、1c レシプロ膨張機
10 シャフト
24 シリンダ
25 ピストン
26 作動室
40 オイル溜まり
70 供給路
71 第一通路
71a 開口端
72 第二通路
100 ランキンサイクル装置