(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】燃焼筒の取付方法、及び燃焼筒取付治具
(51)【国際特許分類】
F23R 3/60 20060101AFI20231228BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20231228BHJP
F23R 3/46 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F23R3/60
F02C7/00 D
F23R3/46
(21)【出願番号】P 2020041675
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】樋口 覚
(72)【発明者】
【氏名】村中 誠太郎
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-265905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/60; 3/42
F02C 7/20
F01D 25/00;25/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心として回転可能なロータ及び前記ロータの外周を覆うケーシングを有するタービンと、前記ケーシング内に燃焼ガスを送る複数の燃焼器と、を備え、
前記ケーシングは、前記ケーシング中で、前記軸線が延びる軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうち、前記軸線上流側の部分に位置する静止部を有し、
前記複数の燃焼器は、それぞれ、燃焼ガスが流れる燃焼筒を有し、
前記複数の燃焼器毎の
前記燃焼筒は、前記軸線を中心として、前記軸線に対する周方向に並んで前記静止部に取り付けられ、
複数の前記燃焼筒は、いずれも、前記周方向における周方向第一側と周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一側面と、前記周方向第二側を向く第二側面と、を有する、ガスタービンにおける、
燃焼筒の取付方法において、
複数の前記燃焼筒のうち、前記周方向で隣り合う第一燃焼筒と第二燃焼筒との相互間であって、前記第一燃焼筒及び前記第二燃焼筒のそれぞれに対して前記軸線方向での予め定められた位置に配置されて、前記第一燃焼筒と前記第二燃焼筒との相互間の間隔を予め定められた間隔に維持することが可能なスペーサ部を備える燃焼筒取付治具を準備する準備工程と、
前記静止部に取り付けられた前記第一燃焼筒における、前記第二側面中で、前記第一燃焼筒の前記軸線方向での前記予め定められた位置に、前記スペーサ部を接触させておく第一接触維持工程と、
前記第一接触維持工程中の前記スペーサ部に、前記第二燃焼筒における、前記第一側面中で、前記第二燃焼筒の前記軸線方向での前記予め定められた位置を接触させておく第二接触維持工程と、
前記第一燃焼筒と前記第二燃焼筒とが前記スペーサ部に接触している状態で、前記第二燃焼筒を前記静止部に取り付ける燃焼筒固定工程と、
を実行する、
燃焼筒の取付方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼筒の取付方法において、
前記準備工程で準備する前記燃焼筒取付治具は、前記スペーサ部に固定され、前記スペーサ部を前記静止部に対して相対移動不能に維持するために、前記静止部に取り付け可能なスペーサ取付部をさらに備え、
前記第一接触維持工程は、前記第一燃焼筒に前記スペーサ部が接触している状態で、前記スペーサ取付部を前記静止部に取り付ける治具取付工程を含む、
燃焼筒の取付方法。
【請求項3】
請求項2に記載の燃焼筒の取付方法において、
前記準備工程で準備する前記燃焼筒取付治具の前記スペーサ部は、第一方向に延び、
前記スペーサ部は、前記スペーサ部における前記第一方向に垂直な第二方向の厚さが前記予め定められた間隔に対応する間隔維持部を有する、
燃焼筒の取付方法。
【請求項4】
請求項3に記載の燃焼筒の取付方法において、
前記スペーサ部の前記第一方向の長さは、前記燃焼筒の前記軸線方向での前記予め定められた位置における前記燃焼筒の前記軸線に対する径方向の長さより長く、
前記スペーサ取付部は、前記スペーサ部の前記第一方向の端に固定されている、
燃焼筒の取付方法。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の燃焼筒の取付方法において、
複数の前記燃焼筒の前記第一側面及び前記第二側面には、それぞれ、前記軸線に対する径方向に延びて、シール部材が嵌まり込むシール溝が形成されており、
複数の前記燃焼筒における前記軸線方向での予め定められた位置は、前記シール溝が形成されている位置を含む、
燃焼筒の取付方法。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一項に記載の燃焼筒の取付方法において、
前記燃焼筒固定工程後に、前記静止部に取り付けられている前記第一燃焼筒と前記第二燃焼筒とに接触している前記スペーサ部が、前記第一燃焼筒と前記第二燃焼筒との間に存在しなくなるよう、前記燃焼筒取付治具を移動させる治具除去工程を実行する、
燃焼筒の取付方法。
【請求項7】
請求項6に記載の燃焼筒の取付方法において、
前記治具除去工程では、前記燃焼筒取付治具を前記軸線上流側に移動させる、
燃焼筒の取付方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の燃焼筒の取付方法において、
前記治具除去工程では、前記スペーサ取付部に引抜金具を取り付け、前記引抜金具を引っ張って、前記燃焼筒取付治具を移動させる、
燃焼筒の取付方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の燃焼筒の取付方法において、
前記第二燃焼筒は、複数の前記燃焼筒のうち、前記周方向における前記第一燃焼筒の隣であって、前記第一燃焼筒に対して上側に配置される燃焼筒である、
燃焼筒の取付方法。
【請求項10】
軸線を中心として回転可能なロータ及び前記ロータの外周を覆うケーシングを有するタービンと、前記ケーシング内に燃焼ガスを送る複数の燃焼器と、を備え、
前記ケーシングは、前記ケーシング中で、前記軸線が延びる軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうち、前記軸線上流側の部分に位置する静止部を有し、
前記複数の燃焼器は、それぞれ、燃焼ガスが流れる燃焼筒を有し、
前記複数の燃焼器毎の
前記燃焼筒は、前記軸線を中心として、前記軸線に対する周方向に並んで前記静止部に取り付けられているガスタービンにおける、
燃焼筒の取り付け時に用いる燃焼筒取付治具において、
複数の前記燃焼筒のうち、前記周方向で隣り合う二つの燃焼筒の相互間であって、前記二つの燃焼筒のそれぞれに対して前記軸線方向での予め定められた位置に配置されて、前記二つの燃焼筒の相互間の間隔を予め定められた間隔に維持することが可能なスペーサ部と、
前記スペーサ部に固定され、前記スペーサ部を前記静止部に対して相対移動不能に維持するために、前記静止部に取り付け可能なスペーサ取付部と、
を備え、
前記スペーサ部は、第一方向に延び、
前記スペーサ部は、前記スペーサ部における前記第一方向に垂直な第二方向の厚さが前記予め定められた間隔に対応する間隔維持部を有し、
前記スペーサ部の前記第一方向の長さは、前記燃焼筒の前記軸線方向における前記予め定められた位置での前記燃焼筒の前記軸線に対する径方向の長さより長く、
前記スペーサ取付部は、前記スペーサ部の前記第一方向の端に固定されている、
燃焼筒取付治具。
【請求項11】
請求項10に記載の燃焼筒取付治具において、
前記間隔維持部は、第一間隔維持部と、前記第一間隔維持部から前記第一方向に離れている第二間隔維持部と、を有し、
前記スペーサ部で、前記第一間隔維持部と前記第二間隔維持部との間における前記第二方向の厚さは、前記予め定められた間隔より狭い、
燃焼筒取付治具。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の燃焼筒取付治具において、
前記スペーサ取付部は、前記スペーサ取付部を前記静止部に取り付けるためのボルトが挿通可能なボルト挿通孔を有する、
燃焼筒取付治具。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載の燃焼筒取付治具において、
引抜金具をさらに備え、
前記スペーサ取付部は、前記引抜金具を捩込み可能なネジ穴を有する、
燃焼筒取付治具。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか一項に記載の燃焼筒取付治具において、
前記スペーサ取付部は、外周面から内部に向かって凹んだスリットを有し、
前記スペーサ部の前記第一方向の端は、前記スリットに差し込まれて、前記スペーサ取付部に固定されている、
燃焼筒取付治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼器の一部を構成する燃焼筒をガスタービンのケーシングに取り付ける燃焼筒の取付方法、及びこの方法の実行に使用する燃焼筒取付治具に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃料ガスを生成する複数の燃焼器と、燃焼ガスで駆動するタービンと、を備える。複数の燃焼器は、いずれも、燃料を噴射するバーナと、燃料の燃焼で生成された燃焼ガスをタービンに送る燃焼筒(又は尾筒)と、を有する。タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、このロータを覆うタービンケーシングと、複数の静翼列と、を備える。複数の燃焼筒は、軸線に対する周方向に並んで、タービンケーシングに取り付けられている。
【0003】
以下の特許文献1には、複数の燃焼筒のタービンケーシングへの取付を支援する組立支援装置が開示されている。この組立支援装置は、燃焼筒の基端部(下流側部)を把持する把持装置を有する。この組立支援装置は、複数の燃焼筒のうち、一の燃焼筒を把持している把持装置をレールに沿って移動させて、一の燃焼筒をタービンケーシング中の目的の位置まで移動させる。一の燃焼筒が目的の位置に移動すると、作業者は、この一の燃焼筒をタービンケーシング中の目的の位置に取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の組立支援装置を用いても、一の燃焼筒に対して周方向に隣接する他の燃焼筒を、一の燃焼筒に対する周方向の目的の相対位置に、1mm以下の精度で配置することは難しい。このため、上記特許文献1に記載の組立支援装置を用いても、作業員が、他の燃焼筒の位置を微調整する作業が必要になると考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、複数の燃焼筒をタービンケーシングに取り付ける作業量を低減することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための発明に係る一態様の燃焼筒の取付方法は、
この燃焼筒の取付方法が適用されるガスタービンは、軸線を中心として回転可能なロータ及び前記ロータの外周を覆うケーシングを有するタービンと、前記ケーシング内に燃焼ガスを送る複数の燃焼器と、を備える。前記ケーシングは、前記ケーシング中で、前記軸線が延びる軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうち、前記軸線上流側の部分に位置する静止部を有する。前記複数の燃焼器は、それぞれ、燃焼ガスが流れる燃焼筒を有する。前記複数の燃焼器毎の燃焼筒は、前記軸線を中心として、前記軸線に対する周方向に並んで前記静止部に取り付けられている。複数の前記燃焼筒は、いずれも、前記周方向における周方向第一側と周方向第二側とのうち、前記周方向第一側を向く第一側面と、前記周方向第二側を向く第二側面と、を有する。
この燃焼筒の取付方法では、複数の前記燃焼筒のうち、前記周方向で隣り合う第一燃焼筒と第二燃焼筒との相互間であって、前記第一燃焼筒及び前記第二燃焼筒のそれぞれに対して前記軸線方向での予め定められた位置に配置されて、前記第一燃焼筒と前記第二燃焼筒との相互間の間隔を予め定められた間隔に維持することが可能なスペーサ部を備える燃焼筒取付治具を準備する準備工程と、前記静止部に取り付けられた前記第一燃焼筒における、前記第二側面中で、前記第一燃焼筒の前記軸線方向での前記予め定められた位置に、前記スペーサ部を接触させておく第一接触維持工程と、前記第一接触維持工程中の前記スペーサ部に、前記第二燃焼筒における、前記第一側面中で、前記第二燃焼筒の前記軸線方向での前記予め定められた位置を接触させておく第二接触維持工程と、前記第一燃焼筒と前記第二燃焼筒とが前記スペーサ部に接触している状態で、前記第二燃焼筒を前記静止部に取り付ける燃焼筒固定工程と、を実行する。
【0008】
本態様では、周方向における第一燃焼筒と第二燃焼筒の間に、燃焼筒取付治具のスペーサ部を介在させているので、第二燃焼筒を、第一燃焼筒に対する周方向の目的の相対位置に高精度で配置することができる。このため、第二燃焼筒を、第一燃焼筒に対する周方向の目的の相対位置に高精度で配置するための微調整作業を省くことができる、又は、この微調整作業の量を低減できる。よって、本態様では、複数の燃焼筒をタービンケーシングに取り付ける作業量を低減することができる。
【0009】
上記目的を達成するための発明に係る一態様の燃焼筒取付治具は、
この燃焼筒取付治具が適用されるガスタービンは、軸線を中心として回転可能なロータ及び前記ロータの外周を覆うケーシングを有するタービンと、前記ケーシング内に燃焼ガスを送る複数の燃焼器と、を備える。前記ケーシングは、前記ケーシング中で、前記軸線が延びる軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうち、前記軸線上流側の部分に位置する静止部を有する。前記複数の燃焼器は、それぞれ、燃焼ガスが流れる燃焼筒を有する。前記複数の燃焼器毎の燃焼筒は、前記軸線を中心として、前記軸線に対する周方向に並んで前記静止部に取り付けられている。
この燃焼筒取付治具は、複数の前記燃焼筒のうち、前記周方向で隣り合う二つの燃焼筒の相互間であって、前記二つの燃焼筒のそれぞれに対して前記軸線方向での予め定められた位置に配置されて、前記二つの燃焼筒の相互間の間隔を予め定められた間隔に維持することが可能なスペーサ部と、前記スペーサ部に固定され、前記スペーサ部を前記静止部に対して相対移動不能に維持するために、前記静止部に取り付け可能なスペーサ取付部と、を備える。前記スペーサ部は、第一方向に延びる。前記スペーサ部は、前記スペーサ部における前記第一方向に垂直な第二方向の厚さが前記予め定められた間隔に対応する間隔維持部を有する。前記スペーサ部の前記第一方向の長さは、前記燃焼筒の前記軸線方向における前記予め定められた位置での前記燃焼筒の前記軸線に対する径方向の長さより長い。前記スペーサ取付部は、前記スペーサ部の前記第一方向の端に固定されている。
【0010】
周方向における第一燃焼筒と第二燃焼筒の間に、本態様の燃焼筒取付治具のスペーサ部を介在させることで、第二燃焼筒を、第一燃焼筒に対する周方向の目的の相対位置に高精度で配置することができる。このため、第二燃焼筒を、第一燃焼筒に対する周方向の目的の相対位置に高精度で配置するための微調整作業を省くことができる、又は、この微調整作業の量を低減できる。よって、本態様の燃焼筒取付治具を用いることで、複数の燃焼筒をタービンケーシングに取り付ける作業量を低減することができる。
【0011】
本態様では、第一燃焼筒と第二燃焼筒との間であって径方向外側の部分の間隔を予め定められた間隔にすることができる上に、第一燃焼筒と第二燃焼筒との間であって径方向内側の部分の間隔も予め定められた間隔にすることができる。本態様では、その上で、スペーサ部の端にスペーサ取付部を固定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様では、一の燃焼筒に対して周方向に隣接する他の燃焼筒を、一の燃焼筒に対する周方向の目的の相対位置に高精度で配置することができる。このため、本発明の一態様によれば、複数の燃焼筒をタービンケーシングに取り付ける作業量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの模式的な断面図である。
【
図2】本発明に係る一実施形態におけるガスタービンの要部断面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線断面図である。
【
図7】本発明に係る一実施形態における燃焼筒取付治具の斜視図である。
【
図8】本発明に係る一実施形態における燃焼筒の取付方法を示すフローチャートである。
【
図11】
図6に燃焼筒取付治具を追加した図である。
【
図12】本発明に係る一実施形態の変形例における燃焼筒取付治具の斜視図である。
【
図13】本発明に係る一実施形態のさらに他の変形例における燃焼筒取付治具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る一実施形態及びその変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
「ガスタービンの実施形態」
ガスタービンの実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のガスタービンは、空気Aを圧縮する圧縮機20と、圧縮機20で圧縮された空気A中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスGを生成する複数の燃焼器30と、燃焼ガスGにより駆動するタービン40と、を備えている。
【0017】
圧縮機20は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ21と、圧縮機ロータ21を覆う圧縮機ケーシング25と、複数の静翼列28と、を有する。タービン40は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ41と、タービンロータ41を覆うタービンケーシング45と、複数の静翼列48と、を有する。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸線方向Daの一方側を軸線上流側Dau、その反対側を軸線下流側Dadとする。また、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。
【0018】
圧縮機20は、タービン40に対して軸線上流側Dauに配置されている。
【0019】
圧縮機ロータ21とタービンロータ41とは、同一軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ11を成す。このガスタービンロータ11には、例えば、発電機GENのロータが接続されている。ガスタービンは、さらに、中間ケーシング16を備える。この中間ケーシング16は、軸線方向Daで、圧縮機ケーシング25とタービンケーシング45との間に配置されている。圧縮機ケーシング25と中間ケーシング16とタービンケーシング45とは、互いに接続されてガスタービンケーシング15を成す。
【0020】
圧縮機ロータ21は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸22と、このロータ軸22に取り付けられている複数の動翼列23と、を有する。複数の動翼列23は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列23は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼24で構成されている。複数の動翼列23の各軸線下流側Dadには、複数の静翼列28のうちのいずれか一の静翼列28が配置されている。各静翼列28は、圧縮機ケーシング25の内側に設けられている。各静翼列28は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼29で構成されている。
【0021】
タービンロータ41は、
図1及び
図2に示すように、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸42と、このロータ軸42に取り付けられている複数の動翼列43と、を有する。複数の動翼列43は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列43は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼44で構成されている。複数の動翼列43の各軸線上流側Dauには、複数の静翼列48のうちのいずれか一の静翼列48が配置されている。各静翼列48は、タービンケーシング45の内側に設けられている。各静翼列48は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼49で構成されている。複数の静翼49は、いずれも、径方向の延びる翼体49bと、この翼体49bの径方向外側Droに接続されている外側シュラウド49oと、この翼体49bの径方向内側Driに接続されている内側シュラウド49iと、を有する。なお、以下では、複数の静翼列48のうち、最も軸線上流側Dauの静翼列48を初段静翼列48fとする。また、この初段静翼列48fを構成する複数の静翼49をそれぞれ初段静翼49fとする。
【0022】
タービンケーシング45は、複数の翼環47と、ケーシング本体46と、を有する。複数の翼環47は、いずれも、軸線Arを中心として環状である。複数の翼環47のそれぞれは、複数の静翼列48のうちのいずれかの静翼列48を径方向外側Droから支持する。ケーシング本体46は、複数の翼環47の径方向外側Droに位置して、複数の翼環47を径方向外側Droから支持する。なお、以下では、複数の翼環47のうち、初段静翼列48fを支持する翼環47を初段翼環47fとする。
【0023】
ロータ軸42の外周側とタービンケーシング45の内周側との間であって、軸線方向Daで静翼49及び動翼44が配置されている環状の空間は、燃焼器30からの燃焼ガスGが流れる燃焼ガス流路を成す。この燃焼ガス流路は、軸線Arを中心として環状を成し、軸線方向Daに長い。
【0024】
複数の燃焼器30は、軸線Arを中心として周方向Dcに並んで、中間ケーシング16に取り付けられている。燃焼器30は、燃焼筒(又は尾筒)35と、この燃焼筒35内に燃料を噴射する複数のバーナ31と、複数のバーナ31を支えるバーナ枠32と、を有する。燃焼筒35内では、燃料Fが燃焼すると共に、この燃焼で生成された燃焼ガスGが流れる。
【0025】
燃焼筒35は、
図3に示すように、燃焼器軸線Ca周りに筒状の筒36と、外側出口フランジ37oと、内側出口フランジ37iと、第一サイドフランジ38s1と、第二サイドフランジ38s2と、ケーシング取付板39と、を有する。燃焼器軸線Caは、軸線方向Daの方向成分を含む方向に延びている。よって、筒36も、軸線方向Daの方向成分を含む方向に延びている。筒36の軸線上流側Dauの形状は、軸線方向Daから見てほぼ円形である。一方、筒36の軸線下流側Dadの形状は、軸線方向Daからみて等脚台形状である。このため、筒36の軸線下流側Dadの部分は、等脚台形の二つの底辺のうちの長い方の底辺に相当する外側板36oと、二つの底辺のうちの短い方の底辺に相当する内側板36iと、等脚台形の二つの脚のうちの一方の脚に相当する第一側板36s1と、二つの脚のうちの他方の脚に相当する第二側板36s2と、を有して構成されている。なお、等脚台形の二つの底辺のうちの長い方の底辺に相当する外側板36oと、二つの底辺のうちの短い方の底辺に相当する内側板36iとは、いずれも平板でなく、軸線Arを中心として円弧状の円弧板である。また、第二側板36s2は、周方向Dcにおける周方向第一側Dc1と周方向第二側Dc2とのうち、第一側板36s1に対して周方向第二側Dc2に位置している。第一側板36s1の外面のうちで、燃焼ガスGに接する内面と反対側の外面は、筒36の第一側面36sp1を形成する。また、第二側板36s2の外面のうちで、燃焼ガスGに接する内面と反対側の外面は、筒36の第二側面36sp2を形成する。
【0026】
外側出口フランジ37oは、筒36の外側板36oから径方向外側Droに突出している。また、内側出口フランジ37iは、筒36の内側板36iから径方向内側Driに突出している。第一サイドフランジ38s1は、筒36の第一側板36s1から周方向第一側Dc1に突出している。第二サイドフランジ38s2は、筒36の第二側板36s2から周方向第二側Dc2に突出している。ケーシング取付板39は、外側出口フランジ37oよりも軸線上流側Dauの位置で、筒36の外側板36oから径方向外側Droに突出している。
【0027】
図6に示すように、初段静翼49fの外側シュラウド49oと燃焼筒35の外側出口フランジ37oとは、外側出口シール60oで接続されている。また、初段静翼49fの内側シュラウド49iと燃焼筒35の内側出口フランジ37iとは、内側出口シール60iで接続されている。
【0028】
図4~
図6に示すように、第一サイドフランジ38s1は、周方向第一側Dc1を向く第一フランジ側面38sp1と、この第一フランジ側面38sp1から周方向第二側Dc2に向かって凹み径方向Drに延びる第一シール溝38sg1と、を有する。この第一フランジ側面38sp1は、前述の第一側面36sp1における軸線下流側Dadの部分を形成する。第二サイドフランジ38s2は、周方向第二側Dc2を向く第二フランジ側面38sp2と、この第二フランジ側面38sp2から周方向第一側Dc1に向かって凹み径方向Drに延びる第二シール溝38sg2と、を有する。この第二フランジ側面38sp2は、前述の第二側面36sp2における軸線下流側Dadの部分を形成する。第一フランジ側面38sp1及び第二フランジ側面38sp2は、いずれも平面である。また、第一フランジ側面38sp1の径方向Drの長さL1と第二フランジ側面38sp2の径方向Drの長さL1とは、実質的に同じである。周方向Dcで隣り合っている二つの燃焼筒35のうち、周方向第一側Dc1に位置している一方の燃焼筒35の第二フランジ側面38sp2と、一方の燃焼筒35に対して周方向第二側Dc2に位置している他方の燃焼筒35の第一フランジ側面38sp1とは、周方向Dcに互いの間隔をあけて、互に実質的に平行である。周方向Dcにおける、一方の燃焼筒35の第二フランジ側面38sp2と他方の燃焼筒35の第一フランジ側面38sp1との周方向Dcの間隔には、予め定められた間隔d(
図5参照)が設定されている。この予め定められた間隔dは、例えば、1mm~8mmである。一方の燃焼筒35の第二シール溝38sg2と他方の燃焼筒35の第一シール溝38sg1とには、サイドシール(シール部材)52が装着されている。このサイドシール52より、一方の燃焼筒35の第二フランジ側面38sp2と他方の燃焼筒35の第一フランジ側面38sp1との間の隙間をシールする。
【0029】
図4及び
図6に示すように、ケーシング取付板39には、軸線方向Daに貫通したボルト孔39hが形成されている。このボルト孔39hには、筒取付ボルト51の軸部が挿通される。初段翼環47fには、この初段翼環47fで軸線上流側Dauを向く上流側端面47puから軸線下流側Dadに凹んだ複数の筒取付ネジ穴47haが形成されている。複数の筒取付ネジ穴47haは、周方向Dcに並んでいる。燃焼筒35は、ケーシング取付板39のボルト孔39hに挿通され、初段翼環47fの筒取付ネジ穴47haに捩じ込まれた筒取付ボルト51により、初段翼環(静止部)47fに取り付けられている。
【0030】
「燃焼筒の取付方法、及び燃焼筒取付治具の実施形態」
燃焼筒の取付方法、及び燃焼筒取付治具の実施形態について、
図7~
図11を参照して説明する。
【0031】
まず、燃焼筒取付治具について、
図7を用いて、説明する。
【0032】
燃焼筒取付治具70は、スペーサ部71と、スペーサ取付部75と、治具取付ボルト81と、引抜金具82と、を有する。
【0033】
スペーサ部71は、スペーサ部71は、矩形板である。ここで、この矩形板の長辺が延びる方向を第一方向D1、この矩形板の厚さ方向を第二方向D2、この矩形板の短辺が延びる方向を第三方向D3とする。なお、第一方向D1、第二方向D2、第三方向D3は、互に垂直な方向である。矩形板であるスペーサ部71で、第二方向D2で互いに相反する側を向いている二つの面のうち、一方が第一接触面73aを成し、他方が第二接触面73bを成す。
【0034】
スペーサ部71は、周方向Dcで隣り合う二つの燃焼筒35のうちの一方の燃焼筒35の第二側面36sp2と他方の燃焼筒35の第一側面36sp1との周方向Dcの間隔を予め定められた間隔dに維持するための間隔維持部72を有する。このスペーサ部71の第二方向D2の寸法であるスペーサ部71の厚さt1、言い換えると、第一接触面73aと第二接触面73bとの間隔は、予め定められた間隔dに対応する寸法である。なお、予め定められた間隔dに対応する寸法とは、予め定められた間隔dと実質的に同じ寸法である。よって、本実施形態では、スペーサ部71全体が、間隔維持部72になる。
【0035】
このスペーサ部71の第一方向D1の長さL2は、各燃焼筒35における第一フランジ側面38sp1及び第二フランジ側面38sp2の径方向Drの長さL1より長い。
【0036】
スペーサ取付部75は、スリット76と、ボルト挿通孔78と、ネジ穴79と、を有する。スリット76は、第一方向D1に凹んだ切り欠きである。スペーサ部71の第一方向D1の端は、スペーサ取付部75のスリット76に差し込まれている。このスペーサ部71の第一方向D1の端部は、スリット76に差し込まれた状態で、溶接部77により、スペーサ取付部75に固定されている。
【0037】
スペーサ部71は、燃焼筒35との接触で摩耗し易い。このため、燃焼筒取付治具70を繰り返し使用していると、スペーサ部71の厚さが薄くなり、二つの燃焼筒35の間隔を維持する機能が低下する。従って、スペーサ部71は、交換できることが好ましい。本実施形態では、前述したように、スペーサ部71とスペーサ取付部75とを別部品として製造し、その後、両部品を溶接で接合している。このため、スペーサ取付部75から、スペーサ部71を比較的容易に取り外すことができ、このスペーサ部71を交換し易い。さらに、本実施形態では、スペーサ部71の端をスペーサ取付部75のスリット76に差し込んでから、スペーサ部71とスペーサ取付部75とを溶接するので、スペーサ部71の交換容易性を確保しつつ、スペーサ部71をスペーサ取付部75にしっかりと固定することができる。
【0038】
スペーサ取付部75のネジ穴79は、第三方向D3に凹んだネジ穴である。このネジ穴79に、引抜金具82が捩じ込まれる。ボルト挿通孔78は、スペーサ取付部75を第三方向D3に貫通し、治具取付ボルト81の軸部が挿通可能な孔である。
図6に示すように、初段翼環47fには、この初段翼環47fの上流側端面47puから軸線下流側Dadに凹んだ複数の治具取付ネジ穴47hbが形成されている。複数の治具取付ネジ穴47hbは、周方向Dcに並んでいる。燃焼筒取付治具70は、スペーサ取付部75のボルト孔39hに挿通され、初段翼環47fの治具取付ネジ穴47hbに捩じ込まれた治具取付ボルト81により、初段翼環(静止部)47fに取り付けられている。なお、引抜金具82の代表的な例は、アイボルトである。すなわち、引抜金具82は、スペーサ取付部75に取り付け可能で、且つ、スペーサ取付部75を容易に引っ張ることができる形状であればよい。
【0039】
次に、
図8に示すフローチャートに従って、本実施形態における燃焼筒35の取付方法について説明する。
【0040】
まず、
図7に示す燃焼筒取付治具70を準備する(S1:準備工程)。
【0041】
次に、複数の燃焼筒35のうち、いずれか一の燃焼筒35を基準燃焼筒35とし、この基準燃焼筒35を初段翼環(静止部)47fに取り付ける(S2:基準燃焼筒の固定工程)。この際、基準燃焼筒35におけるケーシング取付板39のボルト孔39hに、筒取付ボルト51を挿通させる。そして、初段翼環47fに形成されている複数の筒取付ネジ穴47haのうち、初段翼環47f中で、この基準燃焼筒35を取り付ける取付領域に存在する筒取付ネジ穴47haに、この筒取付ボルト51を捩じ込む。
【0042】
次に、
図9~
図11に示すように、初段翼環47fに取り付けられた基準燃焼筒35を第一燃焼筒35aとし、この第一燃焼筒35aの第二フランジ側面38sp2に、燃焼筒取付治具70のスペーサ部71を接触させておく(S3:第一接触維持工程)。この第一接触維持工程(S3)は、治具配置行程(S3a)と治具取付工程(S3b)とを含む。
【0043】
治具配置行程(S3a)では、燃焼筒取付治具70の第一接触面73aが第一燃焼筒35aの第二フランジ側面38sp2に接触するよう、この燃焼筒取付治具70を配置する。なお、第二フランジ側面38sp2は、この第一燃焼筒35aにおける、第二側面36sp2中で、第一燃焼筒35aの軸線方向Daでの予め定められた位置に形成されている面である。治具取付工程(S3b)では、燃焼筒取付治具70の第一接触面73aが第一燃焼筒35aの第二フランジ側面38sp2に接している状態で、この燃焼筒取付治具70を初段翼環(静止部)47fに取り付ける。この際、燃焼筒取付治具70のボルト挿通孔78に、治具取付ボルト81の軸部を挿通させる。そして、初段翼環47fに形成されている複数の治具取付ネジ穴47hbのうち、第一翼環47中で、第一燃焼筒35aの第二フランジ側面38sp2に接触させる燃焼筒取付治具70を取り付ける取付領域に存在する治具取付ネジ穴47hbに、この治具取付ボルト81を捩じ込む。以上で、第一接触維持工程(S3)での処理が終了する。
【0044】
次に、第一接触維持工程(S3)中の燃焼筒取付治具70、つまり第一燃焼筒35aに接触している状態の燃焼筒取付治具70に、周方向Dcで第一燃焼筒35aに隣接させる第二燃焼筒35bを接触させる(S4:第二接触維持工程)。以上のように、本実施形態では、周方向Dcにおける第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bの間に、燃焼筒取付治具70のスペーサ部71を介在させているので、第二燃焼筒35bを、第一燃焼筒35aに対する周方向Dcの目的の相対位置に高精度で配置することができる。
【0045】
次に、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとが燃焼筒取付治具70のスペーサ部71に接触している状態で、第二燃焼筒35bを第一翼環(静止部)47に取り付ける(S5:燃焼筒固定工程)。この際、前述の基準燃焼筒35の固定工程(S2)と同様に、第二燃焼筒35bのケーシング取付板39のボルト孔39hに、筒取付ボルト51を挿通させる。そして、初段翼環47fに形成されている複数の筒取付ネジ穴47haのうち、初段翼環47fの上流側端面47pu中で、この第二燃焼筒35bを取り付ける取付領域に存在する筒取付ネジ穴47haに、この筒取付ボルト51を捩じ込む。
【0046】
次に、初段翼環47fに取り付けられている第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとに接触している燃焼筒取付治具70のスペーサ部71が、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの間に存在しなくなるよう、燃焼筒取付治具70を移動させる(S6:治具除去工程)。この際、燃焼筒取付治具70を第一翼環47に取り付けていた治具取付ボルト81を、第一翼環47及び燃焼筒取付治具70から外す。この燃焼筒取付治具70の軸線下流側Dadには、第一翼環47等が存在する。このため、この燃焼筒取付治具70を軸線上流側Dauに移動させる。
【0047】
第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの間に挟まっている燃焼筒取付治具70を移動させる際、燃焼筒取付治具70と第一燃焼筒35aとの間に働く摩擦力、及び、燃焼筒取付治具70と第二燃焼筒35bとの間に働く摩擦力が大きく、この燃焼筒取付治具70を移動させることが困難な場合がある。この場合には、燃焼筒取付治具70のスペーサ取付部75に引抜金具82を取り付ける。そして、この引抜金具82にワイヤ等を掛けて、このワイヤ等を軸線上流側Dauに引っ張ることで、この燃焼筒取付治具70を軸線上流側Dauに移動させるとよい。
【0048】
次に、作業者は、次に初段翼環47fに取り付ける燃焼筒が最後の燃焼筒35であるか否かを判断する(S7)。
【0049】
S7で、作業者は、次に初段翼環47fに取り付ける燃焼筒が最後の燃焼筒35ではないと判断すると、S3に戻って、S3~S6の各工程を実行する。S3に戻った際、作業者は、燃焼筒固定工程(S5)で初段翼環47fに取り付けた第二燃焼筒35bを第一燃焼筒35aとし、第一接触維持工程(S3)を実行する。
【0050】
S7で、作業者は、次に初段翼環47fに取り付ける燃焼筒が最後の燃焼筒35であると判断すると、この最後の燃焼筒35を第一翼環(静止部)47に取り付ける(S8:最後の燃焼筒の固定工程)。最後の燃焼筒35を初段翼環47fに取りける直前では、この最後の燃焼筒35を取り付ける領域の周方向第一側Dc1に、第一翼環47に取り付けられている燃焼筒35(以下、第一側燃焼筒35とする)が存在すると共に、この最後の燃焼筒35を取り付ける領域の周方向第二側Dc2にも、第一翼環47に取り付けられている燃焼筒35(以下、第二側燃焼筒35とする)が存在する。そこで、本実施形態では、最後の燃焼筒35と、その前に第一翼環47に取り付けた燃焼筒35との間に、燃焼筒取付治具70を配置せず、最後の燃焼筒35を、第一側燃焼筒35に対する周方向Dcの目的の相対位置に配置でき、且つ、第二側燃焼筒35に対する周方向Dcの目的の相対位置に配置できるよう、最後の燃焼筒35の周方向Dcの位置を微調整しつつ、この最後の燃焼筒35を第一翼環47に取り付ける。
【0051】
最後の燃焼筒35の固定工程(S8)が終了すると、複数の燃焼筒35の相互間にサイドシール52を配置する(S9:サイドシール配置行程)。この際、周方向Dcで隣り合う一の燃焼筒35の第一シール溝38sg1と他の燃焼筒35の第二シール溝38sg2に一のサイドシール52を径方向外側Droから差し込んで、このサイドシール52を両燃焼筒35間に配置する。
【0052】
以上で、第一翼環47に対する複数の燃焼筒35の取り付けが終了する。
【0053】
以上のように、本実施形態では、周方向Dcにおける第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bの間に、燃焼筒取付治具70のスペーサ部71を介在させているので、第二燃焼筒35bを、第一燃焼筒35aに対する周方向Dcの目的の相対位置に高精度で配置することができる。このため、第二燃焼筒35bを、第一燃焼筒35aに対する周方向Dcの目的の相対位置に高精度で配置するための微調整作業を省くことができる、又は、この微調整作業の量を低減できる。よって、本実施形態では、複数の燃焼筒35をタービンケーシング45に取り付ける作業量を低減することができる。
【0054】
本実施形態では、第一燃焼筒35aで第二シール溝38sg2が形成されている位置と第二燃焼筒35bで第一シール溝38sg1が形成されている位置との間の周方向Dcの間隔を、高精度に、予め定められた間隔dにすることができる。このため、本実施形態では、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの間に配置されるサイドシール52によるシール性を高めることができる。
【0055】
なお、第二燃焼筒35bは、複数の燃焼筒35のうち、周方向Dcにおける第一燃焼筒35aの隣であって、第一燃焼筒35aに対して上側に配置される燃焼筒35であることが好ましい。この場合、第一燃焼筒35aの第二フランジ側面38sp2に接触させる燃焼筒取付治具70には、この燃焼筒取付治具70が第一燃焼筒35aの第二フランジ側面38sp2に接触する方向に重力が作用する。このため、第一燃焼筒35aに対する燃焼筒取付治具70の接触性が高まる。さらに、この燃焼筒取付治具70の第二接触面73bに接触させる第二燃焼筒35bには、この第二燃焼筒35bが燃焼筒取付治具70の第二接触面73bに接触する方向に重力が作用する。このため、燃焼筒取付治具70に対する第二燃焼筒35bの接触性が高まる。よって、第二燃焼筒35bを、第一燃焼筒35aに対して上側に配置される燃焼筒35にすることで、第二燃焼筒35bを、第一燃焼筒35aに対する周方向Dcの目的の相対位置に高精度で配置することができる。
【0056】
以上のように、第二燃焼筒35bを、第一燃焼筒35aに対して上側に配置される燃焼筒35にする場合、S2で、第一翼環47に最初に取り付ける燃焼筒35である基準燃焼筒35は、第一翼環47中で最も下の位置に取り付ける燃焼筒35であることが好ましい。この場合、第一翼環47に最後に取り付ける燃焼筒35は、第一翼環47中で最も上の位置に取り付ける燃焼筒35になる。
【0057】
「変形例」
以下、以上で説明した一実施形態の各種変形例について説明する。
【0058】
以上で説明した実施形態における燃焼筒取付治具70のスペーサ部71の全体が間隔維持部72である。しかしながら、スペーサ部の一部が間隔維持部であってもよい。具体的には、
図12に示すよう、スペーサ部71aは、第一間隔維持部72aと第二間隔維持部72bとを有し、これらがスペーサ部71aの一部を構成してもよい。第一間隔維持部72aと第二間隔維持部72bとは、第一方向D1に離れている。但し、第一方向D1における第一間隔維持部72aと第二間隔維持部72bとの間の距離L3は、各燃焼筒35における第一フランジ側面38sp1及び第二フランジ側面38sp2の径方向Drの長さL1より短い。
【0059】
第一間隔維持部72a及び第二間隔維持部72bで、第二方向D2で互いに相反する側を向いている二つの面のうち、一方が第一接触面73aをなし、他方が第二接触面73bを成す。第一間隔維持部72aにおける第一接触面73aと第二接触面73bとの間隔、言い換えると、第一間隔維持部72aにおける第二方向D2の寸法である厚さt1は、予め定められた間隔dに対応する寸法である。また、第二間隔維持部72bにおける第一接触面73aと第二接触面73bとの間隔、言い換えると、第二間隔維持部72bにおける第二方向D2の寸法である厚さt1も、予め定められた間隔dに対応する寸法である。
【0060】
スペーサ部71a中で、第一間隔維持部72aと第二間隔維持部72bとの間における第二方向D2の厚さt2は、第一間隔維持部72a及び第二間隔維持部72bの第二方向D2の厚さt1よりも狭い。つまり、第一間隔維持部72aと第二間隔維持部72bとの間における第二方向D2の厚さt2は、予め定められた間隔dより狭い。
【0061】
このため、本変形例の燃焼筒取付治具70aでは、スペーサ部71aが第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとに挟まれている際、このスペーサ部71aと第一燃焼筒35aとの接触面積、このスペーサ部71aと第二燃焼筒35bとの接触面積が、上記実施形態の燃焼筒取付治具70より小さくなる。よって、本変形例では、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの間から燃焼筒取付治具70aを引き抜き易くなる。
【0062】
また、
図13に示すよう、スペーサ部71bは、第一間隔維持部72aと第二間隔維持部72bと第三間隔維持部72cとを有し、これらがスペーサ部71bの一部を構成してもよい。第一間隔維持部72aと第二間隔維持部72bとは、第一方向D1に離れている。但し、第一方向D1における第一間隔維持部72aと第二間隔維持部72bとの間の距離L3は、各燃焼筒35における第一フランジ側面38sp1及び第二フランジ側面38sp2の径方向Drの長さL1より短い。また、第三間隔維持部72cは、第一方向D1で、第一間隔維持部72aと第二間隔維持部72bとの間に形成されている。この第三間隔維持部72cの第三方向D3の幅は、第一間隔維持部72aの第三方向D3の幅及び第二間隔維持部72bの第三方向D3の幅の幅より狭い。
【0063】
第一間隔維持部72a、第二間隔維持部72b、及び第三間隔維持部72cで、第二方向D2で互いに相反する側を向いている二つの面のうち、一方が第一接触面73aをなし、他方が第二接触面73bを成す。第一間隔維持部72aにおける第一接触面73aと第二接触面73bとの間隔、言い換えると、第一間隔維持部72aにおける第二方向D2の寸法である厚さt1は、予め定められた間隔dに対応する寸法である。また、第二間隔維持部72bにおける第一接触面73aと第二接触面73bとの間隔、言い換えると、第二間隔維持部72bにおける第二方向D2の寸法である厚さt1も、予め定められた間隔dに対応する寸法である。さらに、第三間隔維持部72cにおける第二方向D2の寸法である厚さt1も、予め定められた間隔dに対応する寸法である。
【0064】
スペーサ部71b中で、第一間隔維持部72aと第二間隔維持部72bとの間で、第三間隔維持部73cを除く部分における第二方向D2の厚さt2は、第一間隔維持部72a、第二間隔維持部72b、及び第三間隔維持部72cの第二方向D2の厚さt1よりも狭い。つまり、この部分における第二方向D2の厚さt2は、予め定められた間隔dより狭い。
【0065】
このため、本変形例の燃焼筒取付治具70bでも、スペーサ部71bが第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとに挟まれている際、このスペーサ部71bと第一燃焼筒35aとの接触面積、このスペーサ部71bと第二燃焼筒35bとの接触面積が、上記実施形態の燃焼筒取付治具70より小さくなる。よって、本変形例でも、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの間から燃焼筒取付治具70bを引き抜き易くなる。
【0066】
各治具除去工程(S6)において、燃焼筒取付治具70,70aを軸線上流側Dauに引き抜くことが容易であることが想定される場合、燃焼筒取付治具70,70aは、引抜金具82を備えていなくてもよい。この場合、スペーサ取付部75におけるネジ穴79は、不要になる。
【0067】
以上の実施形態では、一つの第二燃焼筒35bを第一翼環47に取り付ける毎に、治具除去工程(S6)を実行する。しかしながら、全ての燃焼筒35を第一翼環47に取り付けた後に、治具除去工程(S6)を実行してもよい。この場合、一つの第二燃焼筒35bを第一翼環47に取り付ける毎に、燃焼筒取付治具70,70aを移動させないため、準備工程(S1)で複数の燃焼筒取付治具70,70aを準備しておく必要がある。
【0068】
以上の実施形態では、全ての燃焼筒35を第一翼環47に取り付けた後に、サイドシール配置行程(S9)を実行する。しかしながら、一つの第二燃焼筒35bを第一翼環47に取り付ける(燃焼筒固定工程(S5))毎に、サイドシール配置行程(S9)を実行してもよい。
【0069】
本実施形態の燃焼筒35の固定工程(S2,S5,S8)では、タービンケーシング45の一部を構成する第一翼環(静止部)47に燃焼筒35を直接取り付ける。また、本実施形態の治具取付工程(S3b)では、タービンケーシング45の一部を構成する第一翼環47に燃焼筒取付治具70,70aを直接取り付ける。しかしながら、燃焼筒35や燃焼筒取付治具70,70aの取付対象は、タービンケーシング45中で軸線上流側Dauの部分に位置する部材であれば、第一翼環47でなくてもよい。例えば、燃焼筒35や燃焼筒取付治具70,70aの取付対象は、第一翼環47に取り付けられている部品であってもよい。この場合、燃焼筒35や燃焼筒取付治具70,70aの取付対象は、軸線Arを中心として環状を成し、この部品と第一翼環47とを有する環部(静止部)と言うこともできる。
【0070】
以上の実施形態では、第一接触維持工程(S3)で、第一燃焼筒35aに燃焼筒取付治具70,70aを接触させる治具配置行程(S3a)と、この燃焼筒取付治具70,70aを第一翼環47に取り付ける治具取付工程(S3b)と、を実行する。しかしながら、燃焼筒取付治具70,70aを第一翼環47に取り付けずに、第一燃焼筒35aに燃焼筒取付治具70,70aを接触させている状態を維持することができれば、この治具取付工程(S3b)を実行しなくてもよい。例えば、第一燃焼筒35aに燃焼筒取付治具70,70aを接触させた後、この接触状態を維持するために、作業者がこの燃焼筒取付治具70,70aを保持してもよい。この場合、燃焼筒取付治具70,70aのスペーサ取付部75が不要になる。但し、治具取付工程(S3b)を実行せずに、作業者が燃焼筒取付治具70,70aを保持すると、第二接触維持行程(S4)中、第二燃焼筒35bを燃焼筒取付治具70,70aに接触させる作業で、燃焼筒取付治具70,70aを保持している作業者が邪魔になる可能性がある。このため、基本的には、治具取付工程(S3b)を実行した方がよい。
【0071】
「付記」
以上の実施形態における燃焼筒の取付方法は、例えば、以下のように把握される。
【0072】
(1)第一態様における燃焼筒の取付方法は、
この燃焼筒の取付方法が適用されるガスタービンは、軸線Arを中心として回転可能なロータ41及び前記ロータ41の外周を覆うケーシング45を有するタービン40と、前記ケーシング45内に燃焼ガスGを送る複数の燃焼器30と、を備える。前記ケーシング45は、前記ケーシング45中で、前記軸線Arが延びる軸線方向Daにおける軸線上流側Dauと軸線下流側Dadとのうち、前記軸線上流側Dauの部分に位置する静止部47fを有する。前記複数の燃焼器30は、それぞれ、燃焼ガスGが流れる燃焼筒35を有する。前記複数の燃焼器30毎の燃焼筒35は、前記軸線Arを中心として、前記軸線Arに対する周方向Dcに並んで前記静止部47fに取り付けられる。 複数の前記燃焼筒35は、いずれも、前記周方向Dcにおける周方向第一側Dc1と周方向第二側Dc2とのうち、前記周方向第一側Dc1を向く第一側面36sp1と、前記周方向第二側Dc2を向く第二側面36sp2と、を有する。
この燃焼筒の取付方法では、複数の前記燃焼筒35のうち、前記周方向Dcで隣り合う第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの相互間であって、前記第一燃焼筒35a及び前記第二燃焼筒35bのそれぞれに対して前記軸線方向Daでの予め定められた位置に配置されて、前記第一燃焼筒35aと前記第二燃焼筒35bとの相互間の間隔を予め定められた間隔に維持することが可能なスペーサ部71,71aを備える燃焼筒取付治具70,70aを準備する準備工程S1と、前記静止部47fに取り付けられた前記第一燃焼筒35aにおける、前記第二側面36sp2中で、前記第一燃焼筒35aの前記軸線方向Daでの前記予め定められた位置に、前記スペーサ部71,71aを接触させておく第一接触維持工程S3と、前記第一接触維持工程S3中の前記スペーサ部71,71aに、前記第二燃焼筒35bにおける、前記第一側面36sp1中で、前記第二燃焼筒35bの前記軸線方向Daでの前記予め定められた位置を接触させておく第二接触維持工程S4と、前記第一燃焼筒35aと前記第二燃焼筒35bとが前記スペーサ部71,71aに接触している状態で、前記第二燃焼筒35bを前記静止部に取り付ける燃焼筒固定工程S5と、を実行する。
【0073】
本態様では、周方向Dcにおける第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bの間に、燃焼筒取付治具70,70aのスペーサ部71,71aを介在させているので、第二燃焼筒35bを、第一燃焼筒35aに対する周方向Dcの目的の相対位置に高精度で配置することができる。このため、第二燃焼筒35bを、第一燃焼筒35aに対する周方向Dcの目的の相対位置に高精度で配置するための微調整作業を省くことができる、又は、この微調整作業の量を低減できる。よって、本態様では、複数の燃焼筒35をタービンケーシング45に取り付ける作業量を低減することができる。
【0074】
(2)第二態様における燃焼筒の取付方法は、
前記第一態様における燃焼筒の取付方法において、前記準備工程S1で準備する前記燃焼筒取付治具70,70aは、前記スペーサ部71,71aに固定され、前記スペーサ部71,71aを前記静止部47fに対して相対移動不能に維持するために、前記静止部に取り付け可能なスペーサ取付部75をさらに備える。前記第一接触維持工程S3は、前記第一燃焼筒35aに前記スペーサ部71,71aが接触している状態で、前記スペーサ取付部75を前記静止部47fに取り付ける治具取付工程S3bを含む。
【0075】
第一燃焼筒35aに燃焼筒取付治具70,70aを接触させた後、この接触状態を維持するために、作業者がこの燃焼筒取付治具70,70aを保持してもよい。しかしながら、作業者が燃焼筒取付治具70,70aを保持すると、第二接触維持行程S4で、第二燃焼筒35bを燃焼筒取付治具70,70aに接触させる作業中、燃焼筒取付治具70,70aを保持している作業者が邪魔になり、第二接触維持行程(S4)での作業性が低下する可能性がある。従って、本態様では、治具取付工程S3bを実行することで、第二接触維持行程S4での作業性の低下を防ぐことができる。
【0076】
(3)第三態様における燃焼筒の取付方法は、
前記第二態様における燃焼筒の取付方法において、前記準備工程S1で準備する前記燃焼筒取付治具70,70aの前記スペーサ部71,71aは、第一方向D1に延びている。前記スペーサ部71,71aは、前記スペーサ部71,71aにおける前記第一方向D1に垂直な第二方向D2の厚さt1が前記予め定められた間隔dに対応する間隔維持部72を有する。
【0077】
(4)第四態様における燃焼筒の取付方法は、
前記第三態様における燃焼筒の取付方法において、前記スペーサ部71,71aの前記第一方向D1の長さL2は、前記燃焼筒35の前記軸線方向Daでの前記予め定められた位置における前記燃焼筒35の前記軸線Arに対する径方向Drの長さL1より長い。前記スペーサ取付部75は、前記スペーサ部71,71aの前記第一方向D1の端に固定されている。
【0078】
本態様では、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの間であって径方向外側Droの部分の間隔を予め定められた間隔dにすることができる上に、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの間であって径方向内側Driの部分の間隔も予め定められた間隔dにすることができる。本態様では、その上で、スペーサ部71,71aの端にスペーサ取付部75を固定することができる。
【0079】
(5)第五態様における燃焼筒の取付方法は、
前記第一態様から前記第四態様のうちのいずれか一態様における燃焼筒の取付方法において、複数の前記燃焼筒35の前記第一側面36sp1及び前記第二側面36sp2には、それぞれ、前記軸線Arに対する径方向Drに延びて、シール部材52が嵌まり込むシール溝38sg1,38sg2が形成されている。複数の前記燃焼筒35における前記軸線方向Daでの予め定められた位置は、前記シール溝38sg1,38sg2が形成されている位置を含む。
【0080】
本態様では、第一燃焼筒35aでシール溝38sg2が形成されている位置と第二燃焼筒35bでシール溝38sg1が形成されている位置との間の周方向Dcの間隔を、高精度に、予め定められた間隔dにすることができる。このため、本態様では、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの間に配置されるシール材52によるシール性を高めることができる。
【0081】
(6)第六態様における燃焼筒の取付方法は、
前記第一態様から前記第五態様のうちのいずれか一態様における燃焼筒の取付方法において、前記燃焼筒固定工程S5後に、前記静止部47fに取り付けられている前記第一燃焼筒35aと前記第二燃焼筒35bとに接触している前記スペーサ部71,71aが、前記第一燃焼筒35aと前記第二燃焼筒35bとの間に存在しなくなるよう、前記燃焼筒取付治具70,70aを移動させる治具除去工程S6を実行する。
【0082】
(7)第七態様における燃焼筒の取付方法は、
前記第六態様における燃焼筒の取付方法において、前記治具除去工程S6では、前記燃焼筒取付治具70,70aを前記軸線上流側Dauに移動させる。
【0083】
(8)第八態様における燃焼筒の取付方法は、
前記第六態様又は前記第七態様における燃焼筒の取付方法において、前記治具除去工程S6では、前記スペーサ取付部75に引抜金具82を取り付け、前記引抜金具82を引っ張って、前記燃焼筒取付治具70,70aを移動させる。
【0084】
本態様では、容易に治具除去行程S6を実行することができる。
【0085】
(9)第九態様における燃焼筒の取付方法は、
前記第一態様から前記第八態様のうちのいずれか一態様における燃焼筒の取付方法において、前記第二燃焼筒35bは、複数の前記燃焼筒35のうち、前記周方向Dcにおける前記第一燃焼筒35aの隣であって、前記第一燃焼筒35aに対して上側に配置される燃焼筒35である。
【0086】
本態様では、第一燃焼筒35aに接触させる燃焼筒取付治具70,70aには、この燃焼筒取付治具70,70aが第一燃焼筒35aに接触する方向に重力が作用する。このため、第一燃焼筒35aに対する燃焼筒取付治具70,70aの接触性が高まる。さらに、本態様では、この燃焼筒取付治具70,70aに接触させる第二燃焼筒35bには、この第二燃焼筒35bが燃焼筒取付治具70,70aに接触する方向に重力が作用する。このため、燃焼筒取付治具70,70aに対する第二燃焼筒35bの接触性が高まる。よって、本態様では、第二燃焼筒35bを、第一燃焼筒35aに対する周方向Dcの目的の相対位置に高精度で配置することができる。
【0087】
また、以上の実施形態における燃焼筒取付治具は、例えば、以下のように把握される。
【0088】
(10)第十態様における燃焼筒取付治具は、
この燃焼筒取付治具が適用されるガスタービンは、軸線Arを中心として回転可能なロータ41及び前記ロータ41の外周を覆うケーシング45を有するタービン40と、前記ケーシング45内に燃焼ガスGを送る複数の燃焼器30と、を備える。前記ケーシング45は、前記ケーシング45中で、前記軸線Arが延びる軸線方向Daにおける軸線上流側Dauと軸線下流側Dadとのうち、前記軸線上流側Dauの部分に位置する静止部47fを有する。前記複数の燃焼器30は、それぞれ、燃焼ガスGが流れる燃焼筒35を有する。前記複数の燃焼器30毎の燃焼筒35は、前記軸線Arを中心として、前記軸線Arに対する周方向Dcに並んで前記静止部47fに取り付けられている。
この燃焼筒取付治具は、複数の前記燃焼筒35のうち、前記周方向Dcで隣り合う二つの燃焼筒35の相互間であって、前記二つの燃焼筒35のそれぞれに対して前記軸線方向Daでの予め定められた位置に配置されて、前記二つの燃焼筒35の相互間の間隔を予め定められた間隔dに維持することが可能なスペーサ部71,71aと、前記スペーサ部71,71aに固定され、前記スペーサ部71,71aを前記静止部47fに対して相対移動不能に維持するために、前記静止部47fに取り付け可能なスペーサ取付部75と、を備える。前記スペーサ部71,71aは、第一方向D1に延び、前記スペーサ部71,71aは、前記スペーサ部71,71aにおける前記第一方向D1に垂直な第二方向D2の厚さが前記予め定められた間隔dに対応する間隔維持部72を有する。前記スペーサ部71,71aの前記第一方向D1の長さL2は、前記燃焼筒35の前記軸線方向Daにおける前記予め定められた位置での前記燃焼筒35の前記軸線Arに対する径方向Drの長さL1より長い。前記スペーサ取付部75は、前記スペーサ部71,71aの前記第一方向D1の端に固定されている。
【0089】
周方向Dcにおける第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bの間に、本態様の燃焼筒取付治具70,70aのスペーサ部71,71aを介在させることで、第二燃焼筒35bを、第一燃焼筒35aに対する周方向Dcの目的の相対位置に高精度で配置することができる。このため、第二燃焼筒35bを、第一燃焼筒35aに対する周方向Dcの目的の相対位置に高精度で配置するための微調整作業を省くことができる、又は、この微調整作業の量を低減できる。よって、本態様の燃焼筒取付治具70,70aを用いることで、複数の燃焼筒35をタービンケーシング45に取り付ける作業量を低減することができる。
【0090】
本態様では、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの間であって径方向外側Droの部分の間隔を予め定められた間隔dにすることができる上に、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの間であって径方向内側Driの部分の間隔も予め定められた間隔dにすることができる。本態様では、その上で、スペーサ部71,71aの端にスペーサ取付部75を固定することができる。
【0091】
(11)第十一態様における燃焼筒取付治具は、
前記第十態様における燃焼筒取付治具において、前記間隔維持部72は、第一間隔維持部72aと、前記第一間隔維持部72aから前記第一方向D1に離れている第二間隔維持部72bと、を有する。前記スペーサ部71aで、前記第一間隔維持部72aと前記第二間隔維持部72bとの間における前記第二方向D2の厚さt2は、前記予め定められた間隔dより狭い。
【0092】
本態様では、スペーサ部71aが第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとに挟まれている際、このスペーサ部71aと第一燃焼筒35aとの接触面積、このスペーサ部71aと第二燃焼筒35bとの接触面積を小さくすることができる。よって、本態様では、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの間から燃焼筒取付治具70aを引き抜き易くなる。
【0093】
(12)第十二態様における燃焼筒取付治具は、
前記第十態様又は第十一態様における燃焼筒取付治具において、前記スペーサ取付部75は、前記スペーサ取付部75を前記静止部47fに取り付けるためのボルト81が挿通可能なボルト挿通孔78を有する。
【0094】
(13)第十三態様における燃焼筒取付治具は、
前記第十態様から前記第十二態様のうちのいずれか一態様における燃焼筒取付治具において、引抜金具82をさらに備える。前記スペーサ取付部75は、前記引抜金具82を捩込み可能なネジ穴79を有する。
【0095】
本態様では、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとにスペーサ部71,71aが挟まれている際、スペーサ取付部75に引抜金具82を取り付け、引抜金具82を引っ張ることで、第一燃焼筒35aと第二燃焼筒35bとの間から、スペーサ部71,71aを容易に移動させることができる。
【0096】
(14)第十四態様における燃焼筒取付治具は、
前記第十態様から前記第十三態様のうちのいずれか一態様における燃焼筒取付治具において、前記スペーサ取付部75は、外周面から内部に向かって凹んだスリット76を有する。前記スペーサ部71,71aの前記第一方向D1の端は、前記スリット76に差し込まれて、前記スペーサ取付部75に固定されている。
【0097】
スペーサ部71,71aは、燃焼筒35との接触で摩耗し易い。このため、燃焼筒取付治具70,70aを繰り返し使用していると、スペーサ部71,71aの厚さが薄くなり、二つの燃焼筒35の間隔を維持する機能が低下する。従って、スペーサ部71,71aは、交換できることが好ましい。本態様では、スペーサ部71,71aとスペーサ取付部75とを別部品として製造し、その後、両部品を溶接で接合する。このため、スペーサ取付部75から、スペーサ部71,71aを比較的容易に取り外すことができ、このスペーサ部71,71aを交換し易い。さらに、本態様では、スペーサ部71,71aの端をスペーサ取付部75のスリット76に差し込んでから、スペーサ部71,71aとスペーサ取付部75とを溶接するので、スペーサ部71,71aの交換容易性を確保しつつ、スペーサ部71,71aをスペーサ取付部75にしっかりと固定することができる。
【符号の説明】
【0098】
11:ガスタービンロータ
15:ガスタービンケーシング
16:中間ケーシング
20:圧縮機
21:圧縮機ロータ
22:ロータ軸
23:動翼列
24:動翼
25:圧縮機ケーシング
28:静翼列
29:静翼
30:燃焼器
31:バーナ
32:バーナ枠
35:燃焼筒(又は尾筒)
35a:第一燃焼筒
35b:第二燃焼筒
36:筒
36o:外側板
36i:内側板
36s1:第一側板
36sp1:第一側面
36s2:第二側板
36sp2:第二側面
37o:外側出口フランジ
37i:内側出口フランジ
38s1:第一サイドフランジ
38sp1:第一フランジ側面
38sg1:第一シール溝(シール溝)
38s2:第二サイドフランジ
38sp2:第二フランジ側面
38sg2:第二シール溝(シール溝)
39:ケーシング取付板
39h:ボルト孔
40:タービン
41:タービンロータ
42:ロータ軸
43:動翼列
44:動翼
45:タービンケーシング
46:ケーシング本体
47:翼環
47f:初段翼環(静止部)
47pu:上流側端面
47ha:筒取付ネジ穴
47hb:治具取付ネジ穴
48:静翼列
48f:初段静翼列
49:静翼
49f:初段静翼
49b:翼体
49o:外側シュラウド
49i:内側シュラウド
51:筒取付ボルト
52:サイドシール(シール部材)
60o:外側出口シール
60i:内側出口シール
70,70a:燃焼筒取付治具
71:スペーサ部
72:間隔維持部
72a:第一間隔維持部
72b:第二間隔維持部
73a:第一接触面
73b:第二接触面
75:スペーサ取付部
76:スリット
77:溶接部
78:ボルト挿通孔
79:ネジ穴
81:治具取付ボルト
82:引抜金具
A:空気
F:燃料
G:燃焼ガス
Ar:軸線
Ca:燃焼器軸線
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dc1:周方向第一側
Dc2:周方向第二側
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
D1:第一方向
D2:第二方向
D3:第三方向