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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】締結具、遮蔽ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/24 20060101AFI20231228BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20231228BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20231228BHJP
   F01N 13/14 20100101ALI20231228BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20231228BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F16B39/24 A
B60K13/04 C
F01N13/08 D
F01N13/14
F16B5/02 F
F16B5/02 U
F16B39/24 E
F16B43/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020057772
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156373
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】592145187
【氏名又は名称】エルリングクリンガー・マルサン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 貴也
(72)【発明者】
【氏名】井上 育史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 将大
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特許第5885258(JP,B2)
【文献】特開2010-156372(JP,A)
【文献】特開2005-030571(JP,A)
【文献】特開昭50-085751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 39/24
F16B 5/02
F16B 43/00
B60K 13/04
F01N 13/08
F01N 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽部材を構造体に締結する締結具であって、
前記遮蔽部材を支持する支持部品と、
前記遮蔽部材を前記支持部品を介して前記構造体に固定する固定部品と、
を備え、
前記支持部品は、
前記遮蔽部材に設けられている孔中に挿入され、かつ、前記固定部品が挿入される筒部と、
前記筒部の両端にそれぞれ設けられていて、前記遮蔽部材の両面にそれぞれ対向する2枚の鍔部と、
2枚の前記鍔部と前記遮蔽部材の両面との間にそれぞれ介在されるばね部と、
を有し、
前記ばね部は、荷重-たわみ特性が異なる第1ばねと第2ばねとを有し、
前記第1ばねは、2枚の前記鍔部と前記遮蔽部材の両面との間にそれぞれ介在され、
前記第2ばねは、少なくとも1枚の前記鍔部と前記遮蔽部材の少なくとも1面との間に介在される、
ことを特徴とする締結具。
【請求項2】
前記筒部と2枚の前記鍔部とは、一端に鍔部が一体に設けられているスリーブと、前記スリーブの他端に嵌合されるリングと、から構成されていて、
前記第1ばねは、一端に鍔が一体に設けられているスリーブ形状のばねと、前記スリーブ形状のばねの他端に嵌合されるリング形状のばねと、からなり、
前記スリーブ形状のばねは、前記遮蔽部材の前記孔中に挿入され、かつ、前記スリーブに外側から嵌合され、
前記スリーブ形状のばねの鍔は、2枚の前記鍔部の一方と前記遮蔽部材の両面の一方との間に介在され、
前記リング形状のばねは、2枚の前記鍔部の他方と前記遮蔽部材の両面の他方との間に介在される、
ことを特徴とする請求項1に記載の締結具。
【請求項3】
前記支持部品は、前記遮蔽部材の両面と前記ばね部との間にそれぞれ介在される介在部を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の締結具。
【請求項4】
前記第1ばねは、ワイヤメッシュから構成されているばねであり、
前記第2ばねは、ウエーブワッシャである、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の締結具。
【請求項5】
構造体の影響が周囲に伝達するのを遮蔽する遮蔽部材と、
前記の請求項1から4のいずれか1項に記載の締結具と、
を備え、
前記遮蔽部材には、前記締結具の筒部が挿入される孔が、設けられている、
ことを特徴とする遮蔽ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、構造体に遮蔽部材を締結する締結具に関する。また、この発明は、遮蔽部材と締結具とを備えた遮蔽ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
構造体に遮蔽部材を締結する締結具としては、たとえば、以下の特許文献1がある。特許文献1の締結具は、エキゾーストマニホールドなどの構造体にヒートインシュレータなどの遮蔽部材を締結する支持部品とボルトとを備える。
【0003】
支持部品は、ヒートインシュレータに形成された孔を貫通する円筒体と、円筒体の一方の端部に嵌め込まれているワッシャと、円筒体のもう一方の端部に形成された鍔部と、ワッシャとヒートインシュレータとの間、および、鍔部とヒートインシュレータとの間に、それぞれ、固定されている弾性体と、を有する。
【0004】
ボルトは、支持部品の円筒体に通して、エキゾーストマニホールドの締結予定箇所にねじ込まれる。これにより、ヒートインシュレータは、エキゾーストマニホールドに、締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5885258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる締結具においては、エキゾーストマニホールドなどの構造体の振動がヒートインシュレータなどの遮蔽部材に伝達するのを抑制して、十分な緩衝効果が得られることが重要である。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、十分な緩衝効果が得られる締結具、遮蔽ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の締結具は、遮蔽部材を構造体に締結する締結具であって、遮蔽部材を支持する支持部品と、遮蔽部材を支持部品を介して構造体に固定する固定部品と、を備え、支持部品が、遮蔽部材に設けられている孔中に挿入され、かつ、固定部品が挿入される筒部と、筒部の両端にそれぞれ設けられていて、遮蔽部材の両面にそれぞれ対向する2枚の鍔部と、2枚の鍔部と遮蔽部材の両面との間にそれぞれ介在されるばね部と、を有し、ばね部が、荷重-たわみ特性が異なる第1ばねと第2ばねとを有し、第1ばねが、2枚の鍔部と遮蔽部材の両面との間にそれぞれ介在され、第2ばねが、少なくとも1枚の鍔部と遮蔽部材の少なくとも1面との間に介在される、ことを特徴とする。
【0009】
この発明の締結具において、筒部と2枚の鍔部とが、一端に鍔部が一体に設けられているスリーブと、スリーブの他端に嵌合されるリングと、から構成されていて、第1ばねが、一端に鍔が一体に設けられているスリーブ形状のばねと、スリーブ形状のばねの他端に嵌合されるリング形状のばねと、からなり、スリーブ形状のばねが、遮蔽部材の孔中に挿入され、かつ、スリーブに外側から嵌合され、スリーブ形状のばねの鍔が、2枚の鍔部の一方と遮蔽部材の両面の一方との間に介在され、リング形状のばねが、2枚の鍔部の他方と遮蔽部材の両面の他方との間に介在される、ことが好ましい。
【0010】
この発明の締結具において、支持部品が、遮蔽部材の両面とばね部との間にそれぞれ介在される介在部を有する、ことが好ましい。
【0011】
この発明の締結具において、第1ばねが、ワイヤメッシュから構成されているばねであり、第2ばねが、ウエーブワッシャである、ことが好ましい。
【0012】
この発明の遮蔽ユニットは、構造体の影響が周囲に伝達するのを遮蔽する遮蔽部材と、この発明の締結具と、を備え、遮蔽部材には、締結具の筒部が挿入される孔が、設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明の締結具、遮蔽ユニットは、十分な緩衝効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、この発明にかかる締結具、遮蔽ユニットの実施形態を示す使用状態図である。
図2図2は、要部を示す縦断面図(図1におけるII-II線断面図)である。
図3図3は、要部を示す分解側面図(図2に対応する側面図)である。
図4図4は、減衰特性を示す説明図である。
図5図5は、ばね部の荷重-たわみ特性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明にかかる締結具、遮蔽ユニットの実施形態(実施例)の1例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面においては、概略図であるため、主要部品を図示し、主要部品以外の部品の図示を省略し、また、ハッチングの一部を省略し、あるいは、断面の一部を省略する。
【0016】
(実施形態の構成の説明)
以下、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1の構成について説明する。
【0017】
(遮蔽ユニット1の説明)
この実施形態にかかる遮蔽ユニット1は、図1から図3に示すように、遮蔽部材(インシュレータ、ヒートインシュレータなど)2と、この実施形態にかかる締結具3と、を備える。
【0018】
(遮蔽部材2の説明)
遮蔽部材2は、この例では、金属製の部材であって、金属製のカバー部材や金属製のプレート部材などから構成されている。遮蔽部材2は、構造体4の影響が周囲に伝達するのを遮蔽するものである。すなわち、遮蔽部材2は、構造体4の周囲の部品、装置、部材などを、構造体4の影響から保護するものである。
【0019】
構造体4は、たとえば、エキゾーストマニホールド、タービンの出口配管部などである。構造体4の影響とは、たとえば、構造体4において発生する熱や音などである。構造体4のうち、遮蔽部材2が固定される個所には、固定部として固定ボス部40が一体に設けられている。固定ボス部40には、ねじ孔41が設けられている。
【0020】
遮蔽部材2のうち、固定ボス部40に対応する個所には、孔20が設けられている。孔20は、この例では、円形をなしている。この孔20の中には、締結具3のスリーブ6の筒部61が挿入される。
【0021】
遮蔽部材2の孔20および構造体4の固定ボス部40は、この例では、4個ずつ設けられている。なお、孔20および固定ボス部40の設ける個数や箇所などは、この例に限定されない。
【0022】
(締結具3の説明)
締結具3は、支持部品5と、固定部品としてのボルト50と、を備える。支持部品5は、遮蔽部材2を支持するものである。ボルト50は、遮蔽部材2を支持部品5を介して構造体4に固定するものである。
【0023】
(支持部品5の説明)
支持部品5は、図2および図3に示すように、スリーブ6およびリング60と、ばね部としての第1ばね7および第2ばね8と、介在部としての2枚のワッシャ(皿ワッシャ)9と、を有する。
【0024】
スリーブ6は、筒部61と、鍔部62と、を有する。筒部61の内径は、固定ボス部40のねじ孔41の内径とほぼ同径である。筒部61は、遮蔽部材2の孔20中に挿入される。筒部61中には、ボルト50が挿入される。
【0025】
鍔部62は、筒部61の一端(下端)に一体に設けられている。筒部61の他端(上端)の外周面には、係合溝63が周方向に設けられている。一方、鍔部としてのリング60の内周面には、係合溝63に係合する係合凸部64が周方向に設けられている。
【0026】
ばね部としての第1ばね7は、この例では、ワイヤメッシュから構成されているばねである。また、ばね部としての第2ばね8は、この例では、2枚のウエーブワッシャからなるばねである。
【0027】
この結果、図5のばねの荷重-たわみ(変位)特性に示すように、第1ばね7の荷重-たわみ特性(図5中の曲線A)と、第2ばね8の荷重-たわみ特性(図5中の曲線B)とは、それぞれ、異なる。
【0028】
第1ばね7は、スリーブ形状のばね70と、リング形状のばね71と、からなる。スリーブ形状のばね70は、筒形状をなしていて、一端(下端)に鍔72が一体に設けられている。筒形状をなしているスリーブ形状のばね70の内径は、スリーブ6の筒部61の外径とほぼ同等かもしくは若干大きい。
【0029】
リング形状のばね71の内径は、スリーブ形状のばね70の他端(上端)の外径とほぼ同等かもしくは若干小さい。リング形状のばね71は、スリーブ形状のばね70の他端に篏合される。
【0030】
(遮蔽部材2の締結具3による構造体4への締結工程の説明)
まず、図2および図3に示すように、遮蔽部材2のうち、孔20が設けられている個所の両面(上下両面)に、2枚のワッシャ9を、それぞれ、当てて配置させる。
【0031】
つぎに、上下2枚のワッシャ9に、2枚のウエーブワッシャの第2ばね8を、それぞれ、当てて上下に配置させる。
【0032】
つづいて、2枚の第2ばね8の透孔、2枚のワッシャ9の透孔および遮蔽部材2の孔20中に、第1ばね7のスリーブ形状のばね70を、下から挿入させる。このスリーブ形状のばね70の鍔72を、下側のウエーブワッシャの第2ばね8に、当てて配置させる。かつ、このスリーブ形状のばね70の他端(上端)に、第1ばね7のリング形状のばね71を、外側から篏合させる。このリング形状のばね71を、上側のウエーブワッシャの第2ばね8に、当てて配置させる。
【0033】
それから、スリーブ形状のばね70中に、スリーブ6の筒部61を、下から挿入させる。このスリーブ6の鍔部62を、スリーブ形状のばね70の鍔72に、下から当てて配置させる。かつ、このスリーブ6の係合溝63に、リング60の係合凸部64を、外側から篏合させる。これにより、締結具3の支持部品5は、遮蔽部材2に組み付けられる。
【0034】
この時、筒部すなわちスリーブ6の筒部61は、遮蔽部材2の孔20中に挿入されている。2枚の鍔部すなわちスリーブ6の鍔部62および鍔部としてのリング60は、遮蔽部材2の両面(上下両面)にそれぞれ対向している。
【0035】
また、ばね部すなわち第1ばね7と第2ばね8とは、2枚の鍔部すなわちスリーブ6の鍔部62および鍔部としてのリング60と、上下2枚のワッシャ9を介して遮蔽部材2の両面(上下両面)と、の間に介在されている。
【0036】
さらに、第1ばね7のスリーブ形状のばね70は、スリーブ6すなわちスリーブ6の筒部61に、外側から篏合されている。
【0037】
さらにまた、第1ばね7のスリーブ形状のばね70の鍔72は、2枚の鍔部の一方すなわちスリーブ6の鍔部62と、下側のワッシャ9を介して遮蔽部材2の両面の一方すなわち下面と、の間に介在されている。
【0038】
さらにまた、第1ばね7のリング形状のばね71は、2枚の鍔部の他一方すなわち鍔部としてのリング60と、上側のワッシャ9を介して遮蔽部材2の両面の他方すなわち上面と、の間に介在されている。
【0039】
さらにまた、介在部としての上下2枚のワッシャ9は、遮蔽部材2の両面(上下両面)と上下2枚のウエーブワッシャの第2ばね8との間に介在されている。
【0040】
そして、図1および図2に示すように、遮蔽部材2で構造体4を覆う。また、遮蔽部材2に組み付けられた締結具3の支持部品5を構造体4の固定ボス部40に位置させる。さらに、支持部品5の筒部61の中空部と固定ボス部40のねじ孔41とを合わせる。そして、締結具3のボルト50のねじ部を筒部61中に挿入して固定ボス部40のねじ孔41にねじ込む。
【0041】
この結果、支持部品5は、ボルト50の頭部と固定ボス部40との間に挟み込まれて固定される。これにより、遮蔽部材2は、締結具3の支持部品5およびボルト50を介して、構造体4に締結される。
【0042】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0043】
遮蔽部材2は、締結具3により、構造体4を覆った状態で、構造体4に締結されている。これにより、遮蔽部材2は、構造体4において発生する熱や音などを遮蔽する。この結果、遮蔽部材2は、構造体4の周囲の部品、装置、部材などを、構造体4において発生する熱や音などの影響から保護する。
【0044】
締結具3は、支持部品5により遮蔽部材2を支持し、かつ、固定部品のボルト50により、支持部品5を介して遮蔽部材2を構造体4の固定ボス部40に締結する。この結果、締結具3は、構造体4において発生する振動を、支持部品5で吸収緩衝して、構造体4において発生する振動が遮蔽部材2に伝達されるのを防止する。
【0045】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、以上のごとき構成、作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0046】
この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、遮蔽部材2と構造体4との間に、荷重-たわみ特性が異なる第1ばね7と第2ばね8とを、介在させたものであるから、構造体4の振動が遮蔽部材2に伝達するのを抑制して、十分な緩衝効果が得られる。
【0047】
これにより、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、構造体4の振動が遮蔽部材2に伝達されるのを十分な緩衝効果により抑制することができるので、遮蔽部材2において構造体4の振動により亀裂などの損傷が発生することを確実に防止することができる。
【0048】
しかも、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、遮蔽部材2と第1ばね7および第2ばね8との間に、遮蔽部材2に構造体4の振動が伝達(入力)するのを遮断する目的で隙間を、設けるものではないので、音振(騒音)の悪化を招くことがない。
【0049】
以下、図4を参照して、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1の減衰特性(I)と、比較例にかかる締結具であって、前記の特許文献1の締結具の減衰特性(II)、および、比較例にかかる締結具であって、特許第6038145号公報に記載の締結具の減衰特性(III)と、を比較する。
【0050】
前記の特許文献1の締結具は、ばね(弾性体、たとえば、ワイヤメッシュ)を、ワッシャおよび鍔部とヒートインシュレータとの間に、それぞれ、介在させた締結具である。特許第6038145号公報に記載の締結具は、板ばねを直接遮蔽部材に当てた締結具である。
【0051】
図4は、減衰特性を示す説明図である。縦軸は、振動の伝達率である。横軸は、振動の周波数(Hz)である。伝達率が1.0以下の領域は、減衰領域であり、振動の減衰効果が得られる。また、減衰特性(I)および(II)に示すように、伝導率の最高値のポイントが共振点を示す。この共振点における周波数(Hz)が低いと、減衰効率(すなわち、緩衝効果)が良い。すなわち、振動の周波数(Hz)が低い時点において、振動の減衰が開始されるため、減衰効率(すなわち、緩衝効果)が良い。
【0052】
特許第6038145号公報に記載の締結具の減衰特性(III)は、一点鎖線の曲線にて示すように、周波数(Hz)が、この例では、約220(Hz)の時点においても、減衰効果が得られない。また、前記の特許文献1の締結具の減衰特性(II)は、破線の曲線にて示すように、周波数(Hz)が高い(大きい)時点、この例では、約125(Hz)の時点において、減衰領域に入って減衰効果が得られる。
【0053】
一方、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1の減衰特性(I)は、実線の曲線にて示すように、周波数(Hz)が低い(小さい)時点、この例では、約85(Hz)の時点において、減衰領域に入って減衰効果が得られる。しかも、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1の減衰特性(I)は、前記の特許文献1の締結具の減衰特性(II)と比較して、共振点における周波数(Hz)が、この例では、約40(Hz)低くい(小さい)ので、その差の分、十分な減衰効果が得られる。
【0054】
ここで、ばね部の荷重-たわみ特性について、図5を参照して説明する。ワイヤメッシュから構成されている第1ばね7の荷重-たわみ特性は、曲線Aに示す。また、ウエーブワッシャである第2ばね8の荷重-たわみ特性は、曲線Bに示す。
【0055】
この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1のばね部の荷重-たわみ特性は、曲線Cに示すように、ワイヤメッシュから構成されている第1ばね7の荷重-たわみ特性(曲線A)と、ウエーブワッシャである第2ばね8の荷重-たわみ特性(曲線B)と、を合成したもの(直列につなげたもの)である。
【0056】
この結果、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、前記の通り、構造体4の振動が遮蔽部材2に伝達するのを抑制して、十分な緩衝効果が得られる。
【0057】
この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、ばね部の第1ばね7が、一端に鍔72が一体に設けられているスリーブ形状のばね70と、スリーブ形状のばね70の他端に嵌合されるリング形状のばね71と、からなり、スリーブ形状のばね70の鍔72およびリング形状のばね71が、2枚の鍔部(すなわち、スリーブ6の鍔部62およびリング60)と遮蔽部材2の両面(上下両面)との間にそれぞれ介在されているものである。この結果、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、第1ばね7のスリーブ形状のばね70の鍔72およびリング形状のばね71が、2枚の鍔部と遮蔽部材2の両面との間にそれぞれ介在されている上下2枚のウエーブワッシャの第2ばね8と共に、構造体4の振動が遮蔽部材2に伝達するのを抑制する。これにより、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、十分な緩衝効果が得られる。
【0058】
しかも、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、ばね部の第1ばね7のスリーブ形状のばね70の筒部が、スリーブ6の鍔部62およびリング60を介して、構造体4の固定ボス部40と固定部品のボルト50の頭部との間に、介在されているものである。この結果、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、スリーブ形状のばね70の筒部が、スリーブ形状のばね70の鍔72およびリング形状のばね71と第2ばね8とにより、構造体4の振動が遮蔽部材2に伝達するのを確実に抑制して、さらに十分な緩衝効果が得られる。
【0059】
さらに、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、スリーブ形状のばね70の筒部が、スリーブ6の筒部61の外面と遮蔽部材2の孔20の内面との間に介在するので、遮蔽部材2と構造体4とが横方向(遮蔽部材2の面と平行な方向)ずれたとしても、スリーブ6の筒部61の外面と遮蔽部材2の孔20の内面とが相互に当たるのを、スリーブ形状のばね70の筒部により、防ぐことができる。これにより、耐久性を向上させることができ、かつ、音の発生を防ぐことができる。
【0060】
この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、介在部としての上下2枚のワッシャ9を、遮蔽部材2の両面(上下両面)とばね部の上下2枚のウエーブワッシャの第2ばね8との間に介在したものである。この結果、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、第2ばね8のばね力および第1ばね7のばね力が、ワッシャ9を介して、遮蔽部材2に面接触の状態で作用する。これにより、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、構造体4の振動が遮蔽部材2に伝達するのを確実に抑制することができるので、さらに十分な緩衝効果が得られる。
【0061】
しかも、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、遮蔽部材2の両面(上下両面)とばね部の上下2枚のウエーブワッシャの第2ばね8とが相互に当たるのを、介在部としての上下2枚のワッシャ9により、防ぐことができる。これにより、耐久性を向上させることができ、かつ、音の発生を防ぐことができる。
【0062】
さらに、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、介在部としての上下2枚のワッシャ(皿ワッシャ)9の外周縁部が湾曲しているので、このワッシャ9の湾曲面が遮蔽部材2の両面(上下両面)に当たる。すなわち、湾曲9の外周縁部の角が遮蔽部材2の両面(上下両面)に食い込むことがない。これにより、耐久性を向上させることができる。
【0063】
この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、ばね部の第1ばね7がワイヤメッシュから構成されているばねであり、ばね部の第2ばね8がウエーブワッシャである。この結果、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、第1ばね7の荷重-たわみ特性と第2ばね8の荷重-たわみ特性とが異なり、構造体4の振動が遮蔽部材2に伝達するのを確実に抑制して、さらに十分な緩衝効果が得られる。
【0064】
この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、ばね部の第1ばね7がワイヤメッシュから構成されているばねであるから、一端に鍔72が一体に設けられているスリーブ形状のばね70を製造するのに適しており、しかも、スリーブ形状のばね70の他端にリング形状のばね71を嵌合するのにも適している。この結果、この実施形態にかかる締結具3、遮蔽ユニット1は、一端に鍔72が一体に設けられているスリーブ形状のばね70とリング形状のばね71とを、容易に製造することができ、しかも、容易に組み付けることができる。
【0065】
(実施形態以外の例の説明)
この実施形態においては、筒部および2枚の鍔部として、筒部61と鍔部62とが一体構造のスリーブ6と、鍔部としてのリング60との2つの部品から構成されている例について説明する。しかしながら、この発明においては、筒部および2枚の鍔部として、スリーブ6の一体構造の筒部61と鍔部62とを分割して、筒部61と鍔部62と鍔部としてのリング60との3つの部品から構成されているものであっても良い。
【0066】
この実施形態においては、2つのウエーブワッシャの第2ばね8を、2枚の鍔部すなわちスリーブ6の鍔部62および鍔部としてのリング60と、遮蔽部材2の両面(上下両面)と、の間に、それぞれ、介在させた例について説明する。しかしながら、この発明においては、1つのウエーブワッシャの第2ばね8を、1枚の鍔部すなわちスリーブ6の鍔部62または鍔部としてのリング60と、遮蔽部材2の1面(上面または下面)と、の間に、介在させたものであっても良い。
【0067】
この実施形態においては、ばね部の第1ばね7として、筒形状をなしていて一端(下端)に鍔72が一体に設けられているスリーブ形状のばね70と、リング形状のばね71と、からなる例について説明する。しかしながら、この発明においては、ばね部の第1ばねとして、2つ(2枚)の鍔形状もしくはリング形状のばねからなるもの、あるいは、2つ(2枚)の鍔形状もしくはリング形状のばねと、1つの筒形状のばねと、からなるものであっても良い。
【0068】
この実施形態においては、介在部として、ワッシャ9を使用した例について説明する。しかしながら、この発明においては、介在部として、ワッシャ9以外の部材、たとえば、ガスケットやその他の部材を使用したものであっても良い。
【0069】
この実施形態においては、第1ばね7として、ワイヤメッシュから構成されているばね(スリーブ形状のばね70およびリング形状のばね71)を使用するものである。しかしながら、この発明においては、第1ばねとして、ワイヤメッシュから構成されているばね以外のばねを使用しても良い。
【0070】
この実施形態においては、第2ばね8として、ウエーブワッシャを使用するものである。しかしながら、この発明においては、第2ばねとして、ウエーブワッシャ以外のばねを使用しても良い。
【0071】
なお、この発明の締結具は、前記の実施形態により限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
1 遮蔽ユニット
2 遮蔽部材
20 孔
3 締結具
4 構造体
40 固定ボス部
41 ねじ孔
5 支持部品
50 ボルト(固定部品)
6 スリーブ
60 リング
61 筒部
62 鍔部
63 係合溝
64 係合凸部
7 第1ばね(ばね部)
70 スリーブ形状のばね
71 リング形状のばね
72 鍔
8 第2ばね(ばね部)
9 ワッシャ(介在部)
A 第1ばねの荷重-たわみ特性を示す曲線
B 第2ばねの荷重-たわみ特性を示す曲線
C 第1ばねと第2ばねとを組み合わせた荷重-たわみ特性を示す曲線
(I) この実施形態にかかる締結具3の減衰特性を示す曲線
(II) 比較例にかかる締結具(前記の特許文献1の締結具)であって、ばねを使用している締結具の減衰特性を示す曲線
(III) 比較例にかかる締結具(特許第6038145号公報に記載の締結具)であって、ばねを使用していない締結具の減衰特性を示す曲線
図1
図2
図3
図4
図5