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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】インフレーション成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/325 20190101AFI20231228BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20231228BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
B29C48/325
B29C48/92
B29L23:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020062983
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160169
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-07-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】303050355
【氏名又は名称】住友重機械モダン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隆宏
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-166795(JP,A)
【文献】特開平03-164227(JP,A)
【文献】特開平08-290455(JP,A)
【文献】特開2018-171898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の内周部材と、前記内周部材を環囲する円筒状の外周部材とを有し、前記内周部材と前記外周部材との間に形成されるリップから樹脂を押し出すダイと、
前記外周部材に径方向外向きの荷重を付与してリップ幅を調節する、流体圧アクチュエータを駆動源とする複数のダイリップ駆動機構と、
を備え、
前記外周部材は、前記ダイリップ駆動機構により径方向外向きの荷重が付与される複数の荷重受け部と、前記複数の荷重受け部の間に設けられる剛性低下部と、を有し、
前記ダイリップ駆動機構は、前記外周部材の外周面よりも径方向内側の前記荷重受け部の部分であって、前記剛性低下部の径方向における内端よりも径方向外側に位置し、かつ、前記剛性低下部の径方向における外端よりも径方向内側に位置する前記荷重受け部の部分を径方向外向きに押すことを特徴とするインフレーション成形装置。
【請求項2】
前記外周部材は、前記リップの外周を定める円筒状の本体部と、前記本体部の外周から径方向外側に張り出すフランジ部と、を含み、
前記フランジ部は、前記複数の荷重受け部と、前記複数の荷重受け部の間に設けられる前記剛性低下部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のインフレーション成形装置。
【請求項3】
円柱状の内周部材と、前記内周部材を環囲する円筒状の外周部材とを有し、前記内周部材と前記外周部材との間に形成されるリップから樹脂を押し出すダイと、
前記外周部材に径方向の荷重を付与してリップ幅を調節する、流体圧アクチュエータを駆動源とする複数のダイリップ駆動機構と、
を備え、
前記外周部材は、立壁部を有し、
前記立壁部は、前記ダイリップ駆動機構により荷重が付与される複数の荷重受け部と、前記複数の荷重受け部の間に設けられ前記立壁部の外周面から内周面まで延在する剛性低下部と、を有することを特徴とするインフレーション成形装置。
【請求項4】
前記剛性低下部は、切り欠き、スリット、貫通穴および肉盗み部の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインフレーション成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレーション成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイに形成されたリング状の吐出口(以下、リップという)から溶けた樹脂をチューブ状に押し出し、その内側に空気を吹き込んで膨らませ、薄いフィルムを成形するインフレーション成形装置が知られている。従来では、リップの外周を定めるダイの外周部材に複数のダイリップ駆動機構によって径方向の荷重を付与してリップ幅を少なくとも部分的に調節可能なインフレーション成形装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-166797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インフレーション成形装置において、リップの最大駆動量をより大きくできれば、フィルムの偏肉を調節できる範囲が広がり、より高品質なフィルムを成形することができる。ダイリップ駆動機構のアクチュエータの最大駆動力をより高くすれば、リップの最大駆動量をより大きくできるが、アクチュエータの最大駆動力をこれ以上高くすることはコスト的に現実的ではない。
【0005】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、低コストでありながらもリップの最大駆動量が比較的大きいインフレーション成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のインフレーション成形装置は、円柱状の内周部材と、内周部材を環囲する円筒状の外周部材とを有し、内周部材と外周部材との間に形成されるリップから樹脂を押し出すダイと、外周部材に径方向の荷重を付与してリップ幅を調節する、流体圧アクチュエータを駆動源とする複数のダイリップ駆動機構と、を備える。外周部材は、ダイリップ駆動機構により荷重が付与される複数の荷重受け部と、複数の荷重受け部の間に設けられる剛性低下部と、を有する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低コストでありながらもリップの最大駆動量が比較的大きいインフレーション成形装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係るインフレーション成形装置の概略構成を示す図である。
図2図1のダイおよび厚み調節部の縦断面図である。
図3図1のダイおよび厚み調節部の上面図である。
図4図2の外周部材の上部を示す斜視図である。
図5図2の外周部材の一部を拡大して示す上面図である。
図6図2の外周部材の上部とそれに取り付けられたダイリップ駆動機構を示す側面図である。
図7図2のダイリップ駆動機構を示す斜視図である。
図8図2のダイリップ駆動機構を示す斜視図である。
図9図9(a)、(b)は、図2のダイリップ駆動機構の動作を説明するための説明図である。
図10図1のインフレーション成形装置の動作を示すフローチャートである。
図11】変形例に係る外周部材を示す斜視図である。
図12図12(a)、(b)は、別の変形例に係る外周部材を示す斜視図である。
図13図13(a)、(b)は、さらに別の変形例に係る外周部材を示す斜視図である。
図14図14(a)、(b)は、さらに別の変形例に係る外周部材を示す斜視図である。
図15図15は、さらに別の変形例に係る外周部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0011】
図1は、実施の形態に係るインフレーション成形装置1の概略構成を示す図である。インフレーション成形装置1は、ダイ10と、厚み調節部2と、一対の安定板4と、ピンチロール5と、厚みセンサ6と、制御装置7と、を備える。
【0012】
ダイ10には、押出機(不図示)から溶けた樹脂が供給される。ダイ10に形成されたリング状のリップ18a(図2で後述)から溶けた樹脂が押し出され、チューブ状のフィルムが成形される。
【0013】
厚み調節部2は、フィルム厚を調節するとともに、フィルムを冷却する。
【0014】
一対の安定板4は、厚み調節部2の上方に配置され、チューブ状のフィルムを一対のピンチロール5の間に案内する。ピンチロール5は、安定板4の上方に配置され、案内されたフィルムを引っ張り上げながら扁平に折りたたむ。扁平に折りたたまれたフィルムは、巻取機(不図示)によって巻き取られる。
【0015】
厚みセンサ6は、厚み調節部2と安定板4との間に配置される。厚みセンサ6は、全周にわたるチューブ状のフィルムのフィルム厚を、所定の周期で繰り返し計測する。本実施の形態の厚みセンサ6は、チューブ状のフィルムの周りを回りながら、全周にわたるフィルム厚を計測する。厚みセンサ6により計測されたフィルム厚データは制御装置7に送信される。
【0016】
制御装置7は、インフレーション成形装置1を統合的に制御する装置である。例えば制御装置7は、厚みセンサ6により計測されたフィルム厚データに基づいて厚み調節部2を制御し、フィルム厚を全周にわたって許容範囲内に収める。
【0017】
図2は、ダイ10および厚み調節部2の縦断面図である。図3は、ダイ10および厚み調節部2の上面図である。図3では、冷却装置3の表示を省略している。
【0018】
ダイ10は、ダイ本体11と、内周部材12と、外周部材14と、を含む。内周部材12は、ダイ本体11の上面に載置される円柱状の部材である。なお、ここでの「円柱状」には、完全な円柱状だけでなく、略円柱状も含まれる。外周部材14は、環状の部材であり、内周部材12を環囲する。内周部材12と外周部材14との間には、リング状に上下方向に延びるスリット18が形成される。スリット18を溶けた樹脂が上側に向かって流れ、その上端開口であるリップ18aから溶けた樹脂が押し出される。
【0019】
ダイ本体11の外周には、複数のヒータ19が装着される。また、外周部材14の外周にもヒータ19が装着される。ダイ本体11および外周部材14は、ヒータ19によって所要の温度に加熱される。これにより、ダイ10の内部を流れる溶けた樹脂を適度な温度および溶融状態に保つことができる。
【0020】
厚み調節部2は、冷却装置3と、複数のダイリップ駆動機構16と、を含む。
【0021】
冷却装置3は、複数のダイリップ駆動機構16の上方に固定される。冷却装置3は、エアーリング8と、環状の整流部材9と、を備える。エアーリング8は、内周部が下方に凹んだリング状の筐体である。エアーリング8の外周部には、複数のホース口8bが周方向に等間隔で形成されている。複数のホース口8bのそれぞれにはホース(不図示)が接続され、このホースを介してブロワー(不図示)からエアーリング8内に冷却風が送り込まれる。
【0022】
エアーリング8の内周部には、上側に開口したリング状の吹出口8aが形成されている。エアーリング8内に送り込まれた冷却風は、吹出口8aから吹き出て樹脂に吹き付けられる。
【0023】
整流部材9は、吹出口8aを取り囲むようエアーリング8内に配置される。整流部材9は、エアーリング8内に送り込まれた冷却風を整流する。これにより、冷却風は、周方向において均一な流量、風速で、吹出口8aから吹き出る。
【0024】
複数のダイリップ駆動機構16は、外周部材14の上端側を囲むように周方向に例えば等間隔に配置される。ここでは、ダイリップ駆動機構16の数は32であるが、これには限定されない。複数のダイリップ駆動機構16は、片持ち状に外周部材14に取り付けられる。
【0025】
複数のダイリップ駆動機構16はそれぞれ、外周部材14に径方向内向きの押圧荷重または径方向外向きの引張荷重を付与できるよう構成される。外周部材14は、押圧荷重または引張荷重が付与されることによって弾性変形する。したがって、複数のダイリップ駆動機構16を調節することによって、リップ18aの幅(以下、リップ幅という)を周方向で部分的に調節でき、フィルム厚を周方向で部分的に制御できる。フィルム厚に周方向でばらつきが生じている場合、例えば、肉厚が薄い部分に対応する(例えば肉厚が薄い部分の下方に位置する)ダイリップ駆動機構16によって外周部材14に引張荷重を付与し、肉厚が薄い部分の下方のリップ幅を広くする。これにより、フィルム厚のばらつきが小さくなる。
【0026】
図4は、外周部材14の上部を示す斜視図である。図5は、外周部材14の一部を拡大して示す上面図である。図5では、一部のダイリップ駆動機構16の表示を省略している。
【0027】
外周部材14の上部は、小径部25と、小径部25の下方に小径部25よりも大径に形成された中径部26と、中径部26の下方に中径部26よりも大径に形成された大径部27と、を有する。小径部25は、円筒状の本体部28と、本体部28の外周から径方向外側に張り出す環状のフランジ部29と、を含む。なお、ここでの「円筒状」には、完全な円筒状だけでなく、略円筒状も含まれる。フランジ部29は、本体部28から半径方向外向きに張り出した張出部80と、張出部80の外周側の端部から立ち上がる立壁部82と、含む。フランジ部29の断面は逆L字形状を有する。
【0028】
フランジ部29には、周方向に等間隔に、小径部25の径方向の剛性を低下させる剛性低下部としての切り欠き86形成されている。切り欠き86は、立壁部82と張出部80とに跨るように形成されている。剛性低下部としての切り欠き86がフランジ部29に形成されていることによってフランジ部29ひいては小径部25の径方向の剛性が低下し、剛性低下部がない場合と比べて、より小さい駆動力で小径部25を変形させることができ、したがって同じ駆動力で得られるリップ幅の駆動量が大きくなる。つまり、リップ幅の最大駆動量が大きくなり、偏肉を調節できる範囲が広がる。また、言い換えると、より小さい駆動力で従来と同程度の駆動力を得られるため、最大駆動力がより低い流体圧アクチュエータ24を採用でき、流体圧アクチュエータ24の低コスト化、小型化を図れる。また、小径部25に剛性低下部を形成して小径部25の径方向の剛性が低下したことにより、或るダイリップ駆動機構16の駆動力を変化させた場合に変形する小径部25の周方向の範囲を、剛性低下部を形成しない場合と比べて狭くすることができ、周方向においてより細かい範囲で偏肉を調節することが可能となる。
【0029】
切り欠き86は、フランジ部29のうち、立壁部82の荷重受け部および荷重受け部の径方向内側の張出部80の部分を避けた位置に形成される。すなわち、切り欠き86は、フランジ部29のうち、立壁部82の非荷重受け部および非荷重受け部の径方向内側の張出部80の部分に形成される。「荷重受け部」は、フランジ部29のうち、ダイリップ駆動機構16が接続される立壁部82の部分であって、ダイリップ駆動機構16により荷重が付与される立壁部82の部分である。「非荷重受け部」は、隣接する荷重受け部の間の立壁部82の部分であって、ダイリップ駆動機構16が接続されず、したがってダイリップ駆動機構16により荷重が付与されない立壁部82の部分である。
【0030】
荷重受け部に切り欠き86が形成されるとダイリップ駆動機構16による荷重がフランジ部29に伝わりにくくなるところ、本実施の形態では非荷重受け部とその径方向内側の張出部80の部分に切り欠き86が形成されるため、これを避けられる。また、荷重受け部と荷重受け部との間(すなわち非荷重受け部)に切り欠き86が形成されることにより、或るダイリップ駆動機構16によって対応する(すなわち当該ダイリップ駆動機構16が接続される)荷重受け部を変形させても、隣接する荷重受け部には影響が及ばないか少ない影響しか及ばなくなる。これにより、或る周方向位置のリップ幅を調節するには当該周方向位置のダイリップ駆動機構16の駆動力を制御すればよく、リップ幅の制御が単純になる。切り欠き86は、この例ではすべての非荷重受け部に形成されているが、それに限られず、少なくとも1つの非荷重受け部に形成されればよい。
【0031】
切り欠き86は、立壁部82の上端から立壁部82の下端まで延び、そこから更に張出部80を径方向内側に延びる。切り欠き86の径方向内側の端部は、平面視で円弧状である。
【0032】
図6は、外周部材14の上部とそれに取り付けられたダイリップ駆動機構16を示す側面図である。図7、8は、ダイリップ駆動機構16を示す斜視図である。図8では、一対の支持部材30の一方を取り外した状態を示す。
【0033】
ダイリップ駆動機構16は、外周部材14に取り付けられる一対の支持部材30と、一対の支持部材30に固定される回動軸32と、回動軸32を支点として回動可能に支持されるレバー34と、レバー34による回転力を受けて軸線方向に作動する作動ロッド36と、作動ロッド36とフランジ部29とを軸線方向に連結する連結部材38と、作動ロッドを軸線方向に摺動可能に支持する軸受部材40と、レバー34に回転力を付与する流体圧アクチュエータ24と、を含む。
【0034】
一対の支持部材30は、平板状に形成され、互いに平行となるよう外周部材14にねじ留めされる。一対の支持部材30の間には、レバー34を介在させるためのスペースが設けられる。軸受部材40は、長方体状に形成され、支持部材30の径方向内側にて外周部材14にねじ留めされる。軸受部材40には、径方向に貫通する挿通孔42が形成されている。挿通孔42の内周面がいわゆる滑り軸受(無給油タイプの軸受)を構成し、作動ロッド36を摺動可能に支持する。
【0035】
回動軸32は、その軸が水平方向を向き、かつ、径方向に略直交するよう一対の支持部材30に固定される。
【0036】
作動ロッド36は、段付円柱状に形成され、その中間部が軸受部材40の挿通孔42に挿通される。作動ロッド36の軸方向外側には、縮径部44が設けられている。縮径部44は、後述するようにレバー34との連結部として機能する。作動ロッド36の軸方向内側には、凹状の係合部46が設けられている。係合部46は、後述するように連結部材38との接続部として機能する。フランジ部29の立壁部82の外周面(以下、「受圧面23」と呼ぶ)は、作動ロッド36の先端面と対向する。
【0037】
連結部材38は、縦断面視で二股形状に形成される。具体的には、連結部材38には、軸方向において外周部材14と対向する面に、下側に突出する係合部48,50が設けられている。係合部48は、作動ロッド36の係合部46と概ね相補形状をなす。また、小径部25のフランジ部29には、軸方向下向きに凹んだ環状の係合溝52が形成されている。係合部50は、この係合溝52と概ね相補形状をなす。
【0038】
連結部材38の係合部48が作動ロッド36の係合部46に係合し、連結部材38の係合部50がフランジ部29の係合溝52に係合するよう作動ロッド36と連結部材38とがねじ留めされる。係合部48と係合部46との互いの対向面はテーパ面とされている。これにより、ねじ54を締結するにつれて作動ロッド36の先端面がフレキシブルリップ部22の受圧面23に押しつけられ、作動ロッド36とフランジ部29とがしっかりと固定される。連結部材38の係合部50と、作動ロッド36の先端部とによりフランジ部29の一部が挟まれる。これにより、作動ロッド36がその軸線方向にフランジ部29ひいては小径部25と接続される。
【0039】
レバー34は、径方向に延びる長尺板状の本体60を有し、その一端部が回動軸32に回動可能に支持されている。レバー34は、非作動の状態において本体60と作動ロッド36とがほぼ平行となるように設けられている。また、本体60の一端部からその本体60の軸線と直角方向に延出するように二股形状の連結部62が設けられている。すなわち、連結部62は一対の連結片64からなり、それらの間隔が作動ロッド36の縮径部44の外径よりやや大きく、それらの幅が縮径部44の長さよりもやや小さく構成されている。このような構成により、連結部62が縮径部44に嵌合する態様でレバー34と作動ロッド36とが連結される。
【0040】
流体圧アクチュエータ24は、流体圧によって駆動されるアクチュエータである。流体圧アクチュエータは、本実施の形態では空圧駆動式である。流体圧アクチュエータは、圧縮空気の給排により作動する二組のベローズ70,72およびベローズ71,73と、第1ベース75と、第1ベース75の軸方向下側に配置される第2ベース76と、4本の連結棒77と、を含む。第1ベース75と第2ベース76は、軸方向に離間して配置され、4本の連結棒77により連結される。レバー34と第1ベース75との間にベローズ70,72が配置され、レバー34と第2ベースとの間にベローズ71,73が配置されている。すなわち、レバー34の力点となる端部は、ベローズ70,72とベローズ71,73との間に挟まれるように支持される。ベローズ70,72またはベローズ71,73の一方に圧縮空気が供給されることにより、レバー34が図中時計回りまたは反時計回りに回転駆動される。
【0041】
図6では、圧縮空気の供給によりベローズ70,72に圧力が付与されベローズ70,72が伸長すると、レバー34が図中反時計回りに回動し、その回転力が作動ロッド36の軸線方向左側(すなわち径方向外側)への力に変換される。その結果、小径部25に対して引っ張り荷重が付与され、対応する(すなわちそのダイリップ駆動機構16の径方向内側の)リップ幅が広がる方向に変化する。一方、圧縮空気の供給によりベローズ71,73に圧力が付与されベローズ71,73が伸長すると、レバー34が図中時計回りに回動し、その回転力が作動ロッド36の軸線方向右側(すなわち径方向内側)への力に変換される。その結果、小径部25に対して押圧荷重が付与され、対応するリップ幅が狭まる方向に変化する。
【0042】
このような空圧駆動を実現するために、第1ベース75に形成された供給路75aや第2ベース76に供給された供給路76aを介して、図示しない圧力調整装置から圧縮空気が供給される。圧力調整装置は、制御装置7からの制御指令に基づいて、ベローズ70~73内の圧力を制御する。
【0043】
図9(a)、(b)は、ダイリップ駆動機構16の動作を説明するための説明図である。図9(a)はダイリップ駆動機構16の中立状態(ベローズ70~73がともに非作動の状態)を示し、図9(b)はダイリップ駆動機構16の拡開作動状態(ベローズ70,72のみが作動した状態)を示す。
【0044】
ダイリップ駆動機構16によれば、レバー34の回転力が作用点Pにおいて作動ロッド36に直接付与される。すなわち、レバー34の回転力が作動ロッド36の軸線方向の力として小径部25に付与される。その際、作動ロッド36が外周部材14により安定に支持されるため、その軸線方向の力が小径部25へ効率良く伝達される。その結果、リップ幅の調整のための駆動力を効率的に作用させることが可能となる。
【0045】
本実施の形態では、図9(a)に示すように、レバー34と作動ロッド36との接続点(レバー34の作用点P)と、回動軸32(レバー34の支点)とを結ぶ直線L1が、作動ロッド36の軸線L2と直交するように構成される。これにより、回動軸32を中心として作用点Pを通る仮想円Cの接線方向と、作動ロッド36の軸線方向とが一致する。
【0046】
このため、図9(b)に示すように、レバー34の回転力の作用点Pにおける方向と、作動ロッド36の軸線方向とが一致する。その結果、レバー34の回転力がそのまま作動ロッド36の軸線方向の駆動力となり、力の伝達効率を最大限に高めることができる。すなわち、小径部25を拡開作動させる際の流体圧アクチュエータ24の駆動力を極めて効率的に作用させることが可能となる(図中太線矢印参照)。
【0047】
図示を省略するが、ダイリップ駆動機構16の狭小作動状態(ベローズ71,73のみが作動した状態)においても、図9(b)における力の向きが逆になるだけで、レバー34の回転力の作用点Pにおける方向と、作動ロッド36の軸線方向とが一致する。その結果、拡開作動時と同様にレバー34の回転力がそのまま作動ロッド36の軸線方向の駆動力となり、力の伝達効率を最大限に高めることができる。すなわち、ダイリップ駆動機構16によれば、リップ幅の調整のための駆動力を効率的に作用させることが可能となる。
【0048】
なお、レバー34の回転力が作動ロッド36に直接付与される構成であれば、本実施形態に限定されない。例えば、連結部62の延出方向(回動軸32と作用点Pとを結ぶ方向)と作動ロッド36の軸線方向とが鋭角又は鈍角をなす結果、レバー34の回転力の作用点Pにおける方向(便宜上「回転力作用方向」ともいう)と、作動ロッド36の軸線方向(便宜上「軸線力作用方向」ともいう)とが一致しない構成としてもよい。その場合、本体60と作動ロッド36とが平行である一方、本体60の軸線と連結部62の延出方向とが鋭角又は鈍角をなすものでもよい。あるいは、本体60の軸線と連結部62の延出方向とが直角をなす一方、本体60と作動ロッド36とが平行でないものでもよい。あるいは、本体60の軸線と連結部62の延出方向とが鋭角又は鈍角をなし、且つ本体60と作動ロッド36とが平行でないものでもよい。また、本体60として少なくとも一部に屈曲部又は湾曲部を有するもの(軸線を必ずしも特定できない構成)を採用してもよい。
【0049】
図10は、インフレーション成形装置1の動作を示すフローチャートである。制御装置7は、成形開始信号が入力されると、押出機、冷却装置3およびピンチロール5などを制御してフィルムの成形を開始する(S10)。成形開始信号は、不図示の成形開始ボタンを介して入力されてもよい。
【0050】
厚みセンサ6は、フィルム厚を計測する(S12)。制御装置7は、厚みセンサ6により計測されたフィルム厚データに基づいて、複数のダイリップ駆動機構16のそれぞれを制御する(S14)。
【0051】
制御装置7は、終了条件が満たされるか否かを判定する(S16)。終了条件が満たされない場合(S16のN)、処理をステップS12に戻す。終了条件が満たされる場合(S16のY)、制御装置7はフィルムの成形を終了する。終了条件は、外部から終了の指示を受け付けたことや、成形が所定の時間継続されたことである。
【0052】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、変形例を説明する。
【0053】
(変形例1)
実施の形態では、剛性低下部としての切り欠き86は、立壁部82および張出部80に跨がるように形成されたがその限りではない。図11は、変形例に係る外周部材14を示す斜視図である。図11では、剛性低下部としての切り欠き86は、立壁部82にのみ形成されている。図11では、切り欠き86は立壁部82の下端まで到達しているが、切り欠き86は立壁部82の下端まで到達していなくてもよい。本変形例によれば、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0054】
(変形例2)
実施の形態では、小径部25には剛性低下部としての切り欠き86が形成されたがその限りではない。
【0055】
図12(a)、(b)は、別の変形例に係る外周部材14を示す斜視図である。図12(a)、(b)では、切り欠きの代わりに、剛性低下部としてのスリット90が形成されている。図12(a)では立壁部82にのみスリット90が形成されている。図12(b)では、立壁部82と張出部80に跨るようにスリット90が形成されている。図12(a)、(b)では、スリット90が立壁部82の上端まで達しているが、スリット90は立壁部82の上端まで達していなくてもよい。図12(b)では、スリット90が張出部80の内周端まで到達しているが、スリット90は張出部80の内周端まで到達していなくてもよい。
【0056】
剛性低下部としてのスリット90は、非荷重受け部に形成されてもよい。つまり、剛性低下部としてのスリット90は、荷重受け部および非荷重受け部の少なくとも一方に形成されればよい。
【0057】
図13(a)、(b)は、さらに別の変形例に係る外周部材14を示す斜視図である。図13(a)、(b)では、切り欠きの代わりに、剛性低下部としての貫通穴92が形成されている。貫通穴92の開口形状は特に限定されず、例えば円形状、楕円形状、多角形状、その他の形状であってもよい。
【0058】
図13(a)では立壁部82にのみ貫通穴92が形成されている。図13(b)では、張出部80にのみ貫通穴92が形成されている。図13(a)、(b)を組み合わせ、立壁部82および張出部80の両方に貫通穴92を形成してもよい。さらなる変形例として、立壁部82と張出部80の境界部分に貫通穴92が形成されてもよい。
【0059】
剛性低下部としての貫通穴92は、非荷重受け部に形成されてもよい。つまり、剛性低下部としての貫通穴92は、荷重受け部および非荷重受け部の少なくとも一方に形成されればよい。
【0060】
図14(a)、(b)は、さらに別の変形例に係る外周部材14を示す斜視図である。図14(a)、(b)では、切り欠きの代わりに、剛性低下部としての肉盗み(部)が形成されている。肉盗み部94は、凹部あるいは溝と捉えることもできる。肉盗み部94が形成された部分は薄肉になる。肉盗み部94の形状は特に限定されない。
【0061】
図14(a)では立壁部82にのみ肉盗みが形成されている。図14(b)では、張出部80にのみ肉盗み部94が形成されている。図14(a)、(b)では、立壁部82の外周面に肉盗み部94が形成されているが、立壁部82の内周面に肉盗み部94が形成されてもよい。図14(b)では、張出部80の上面に肉盗み部94が形成されているが、張出部80の下面に肉盗み部94が形成されてもよい。図14(a)、(b)を組み合わせ、立壁部82および張出部80の両方に肉盗み部94を形成してもよい。さらなる変形例として、立壁部82と張出部80の境界部分に肉盗み部94を形成してもよい。
【0062】
剛性低下部としての肉盗み部94は、非荷重受け部に形成されてもよい。つまり、剛性低下部としての肉盗み部94は、荷重受け部および非荷重受け部の少なくとも一方に形成されればよい。
【0063】
以上の変形例によれば、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0064】
(変形例3)
実施の形態および上述の変形例では、切り欠き86、スリット90、貫通穴92および肉盗み部94のうちのいずれか1種類の剛性低下部がフランジ部29に形成される場合について説明したが、任意の複数の種類の剛性低下部がフランジ部29に形成されてもよい。
【0065】
(変形例4)
実施の形態および上述の変形例では、フランジ部29に剛性低下部が形成される場合について説明したが、フランジ部29に代えて、またはフランジ部29に加えて、本体部28の外周に剛性低下部が形成されてもよい。図15は、さらに別の変形例に係る外周部材14を示す斜視図である。この例では、剛性低下部としての肉盗み部94が本体部の外周面に形成されている。外周部材14には、肉盗み部94の代わりに、スリットが形成されてもよい。スリットは、本体部28の内周端まで達しないように形成されればよい。
【0066】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0067】
1 インフレーション成形装置、 10 ダイ、 12 内周部材、 14 外周部材、 16 ダイリップ駆動機構、 18a リップ、 86 切り欠き、 90 スリット、 92 貫通穴、 94 肉盗み部。
図1
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