(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】センサシステム及び電磁波照射装置
(51)【国際特許分類】
G01N 22/00 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
G01N22/00 N
G01N22/00 V
G01N22/00 U
(21)【出願番号】P 2020066886
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山岸 良彰
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-088128(JP,A)
【文献】特開2019-170176(JP,A)
【文献】特開2018-207766(JP,A)
【文献】特開2019-013100(JP,A)
【文献】特開2019-110729(JP,A)
【文献】特開2001-013087(JP,A)
【文献】特開2007-244015(JP,A)
【文献】特開2013-021541(JP,A)
【文献】特開2013-055730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00-G01N 22/04
G01N 21/35-G01N 21/3586
H02J 50/00-H02J 50/90
G01K 1/00-G01K 19/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ電磁波を受けて駆動する複数のセンサと、
前記複数のセンサに電磁波を照射する電磁波照射装置であって、前記複数のセンサのうち所定の数のセンサが駆動する前記電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを設定し、前記設定された前記電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを用いて前記電磁波を照射する、電磁波照射装置と、
を備えるセンサシステム
であって、
前記電磁波のパラメータが、前記電磁波の周波数、前記電磁波の偏波状態、前記電磁波の照射方向、及び複数の送電部のうち前記電磁波を照射する送電部の位置から選択される少なくともいずれかであり、
前記前記電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを設定することにより、前記複数のセンサのうち所定の数のセンサが駆動する、
センサシステム。
【請求項2】
前記電磁波照射装置が、前記電磁波のパラメータを変化させて、前記複数のセンサのそれぞれが駆動するか確認し、前記複数のセンサのうち所定の数のセンサが駆動する前記電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを設定する、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記電磁波照射装置が、一定時間内に、前記設定された前記電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを用いて、前記電磁波を照射する、請求項1又は2に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記一定時間が、前記複数のセンサのそれぞれの測定周期のうち、最も短い測定周期である、請求項3に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記電磁波照射装置が、前記一定時間内に前記設定された前記電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを用いて前記電磁波を照射することを繰り返す、請求項3又は4に記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記電磁波のパラメータの最低限の組み合わせが前記複数のセンサのいずれかを駆動できなくなった場合、前記電磁波照射装置が、前記駆動できなくなったセンサを駆動可能な電磁波のパラメータを前記電磁波のパラメータの最低限の組み合わせに追加する、請求項1から5のいずれか1項に記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記追加された電磁波のパラメータにより、前記電磁波のパラメータの最低限の組み合わせのうちの少なくとも1つの電磁波のパラメータを削除しても、前記複数のセンサのうち所定の数のセンサを駆動可能である場合、前記電磁波照射装置が、前記削除可能な電磁波のパラメータを削除する、請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記電磁波照射装置が、前記最低限の組み合わせに含まれるパラメータの電磁波の組み合わせの少なくとも一部を同時に照射する、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記電磁波照射装置が、前記最低限の組み合わせに含まれるパラメータの電磁波ごとに、前記電磁波の送信電力を変更する、請求項1又は8に記載のセンサシステム。
【請求項10】
複数のセンサに電磁波を照射する電磁波照射装置であって、
前記複数のセンサのうち所定の数のセンサが駆動する前記電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを設定
し、
前記電磁波のパラメータが、前記電磁波の周波数、前記電磁波の偏波状態、前記電磁波の照射方向、及び複数の送電部のうち前記電磁波を照射する送電部の位置から選択される少なくともいずれかであり、
前記前記電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを設定することにより、前記複数のセンサのうち所定の数のセンサが駆動する、
電磁波照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシステム及び電磁波照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部屋、保管庫、房、漕及び炉等の閉空間においては、複数のセンサが配置され、品質管理やトレーサビリティを目的として、閉空間内における温度や湿度等の環境条件の分布を測定したり、閉空間内に配置された複数の物品のそれぞれの存否や移動を監視したりする場合がある(例えば、特許文献1、2参照。)。複数のセンサのそれぞれには、電力を供給するため、あるいは応答信号の発信を誘引するために、電磁波が供給されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/123062号
【文献】特開2019-88128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のセンサに電磁波を照射しても、複数のセンサの少なくとも一部が、その機能を発揮しない場合がある。そこで、本発明は、複数箇所に配置されたセンサのそれぞれが機能を発揮できるセンサシステム及び電磁波照射装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、それぞれ電磁波を受けて駆動する複数のセンサと、複数のセンサに電磁波を照射する電磁波照射装置であって、複数のセンサのうち所定の数のセンサが駆動する電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを設定し、設定された電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを用いて電磁波を照射する、電磁波照射装置と、を備えるセンサシステムが提供される。
【0006】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、電磁波のパラメータを変化させて、複数のセンサのそれぞれが駆動するか確認し、複数のセンサのうち所定の数のセンサが駆動する電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを設定してもよい。
【0007】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、電磁波のパラメータごとに駆動可能なセンサを確認して、複数のセンサのうち所定の数のセンサが駆動する電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを設定してもよい。
【0008】
上記のセンサシステムにおいて、複数のセンサが検出対象を検出する前に、電磁波照射装置が、複数のセンサのうち所定の数のセンサが駆動する電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを設定してもよい。
【0009】
上記のセンサシステムにおいて、複数のセンサが検出対象を検出している間、電磁波照射装置が、複数のセンサのうち所定の数のセンサが駆動する電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを設定してもよい。
【0010】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、一定時間内に、設定された電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを用いて、電磁波を照射してもよい。
【0011】
上記のセンサシステムにおいて、一定時間が、複数のセンサのそれぞれの測定周期のうち、最も短い測定周期であってもよい。
【0012】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、一定時間内に設定された電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを用いて電磁波を照射することを繰り返してもよい。
【0013】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波のパラメータの最低限の組み合わせが複数のセンサのいずれかを駆動できなくなった場合、電磁波照射装置が、駆動できなくなったセンサを駆動可能な電磁波のパラメータを、電磁波のパラメータの最低限の組み合わせに追加してもよい。
【0014】
上記のセンサシステムにおいて、追加された電磁波のパラメータにより、電磁波のパラメータの最低限の組み合わせのうちの少なくとも1つの電磁波のパラメータを削除しても、複数のセンサのうち所定の数のセンサを駆動可能である場合、電磁波照射装置が、削除可能な電磁波のパラメータを削除してもよい。
【0015】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、削除されずに残った電磁波のパラメータの組み合わせと、追加された電磁波のパラメータと、の組み合わせを、電磁波のパラメータの最低限の組み合わせとして再設定してもよい。
【0016】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、最低限の組み合わせに含まれるパラメータの電磁波を順次照射してもよい。
【0017】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、最低限の組み合わせに含まれるパラメータの電磁波の組み合わせの少なくとも一部を同時に照射してもよい。
【0018】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、最低限の組み合わせに含まれるパラメータの電磁波ごとに、電磁波の送信電力を変更してもよい。
【0019】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、電磁波のパラメータの最低限の組み合わせに、冗長用の電磁波のパラメータを追加してもよい。
【0020】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、設定された電磁波のパラメータの最低限の組み合わせと冗長用の電磁波のパラメータを用いて、電磁波を照射してもよい。
【0021】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、一定時間内に、設定された電磁波のパラメータの最低限の組み合わせと冗長用の電磁波のパラメータを用いて、電磁波を照射してもよい。
【0022】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、一定時間内に設定された電磁波のパラメータの最低限の組み合わせと冗長用の電磁波のパラメータを用いて電磁波を照射することを繰り返してもよい。
【0023】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波のパラメータが電磁波の周波数であってもよい。
【0024】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波のパラメータが電磁波の偏波状態であってもよい。
【0025】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波のパラメータが電磁波の照射方向であってもよい。
【0026】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置がそれぞれ電磁波を照射する複数の送電部を有し、電磁波のパラメータが、複数の送電部のうち電磁波を照射する送電部の位置であってもよい。
【0027】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が、電磁波を照射するためのフェーズドアレーアンテナを備えていてもよい。
【0028】
上記のセンサシステムにおいて、複数のセンサが閉空間内に配置されてもよい。
【0029】
上記のセンサシステムにおいて、複数のセンサが炉内に配置されてもよい。
【0030】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波照射装置が電磁波を照射中に、複数のセンサの配置が一定であってもよい。
【0031】
上記のセンサシステムにおいて、電磁波がマイクロ波であってもよい。
【0032】
上記のセンサシステムにおいて、複数のセンサが、電磁波を照射されることにより電力を供給されてもよい。
【0033】
上記のセンサシステムにおいて、複数のセンサが、電磁波を照射されることにより発振してもよい。
【0034】
また、本発明の態様によれば、複数のセンサに電磁波を照射する電磁波照射装置であって、複数のセンサのうち所定の数のセンサが駆動する電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを設定する、電磁波照射装置が提供される。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、複数箇所に配置されたセンサのそれぞれが機能を発揮できるセンサシステム及び電磁波照射装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るセンサシステムを示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る電磁波の周波数と、駆動可能なセンサと、の関係の例を示すグラフである。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る電磁波の周波数と、駆動可能なセンサと、の関係の例を示す表である。
【
図4】
図4(a)は、第3実施形態に係る電磁波の周波数と、センサの受信電力と、の関係の例を示すグラフである。
図4(b)は、第3実施形態に係る電磁波の周波数と、電磁波照射装置の送信電力と、の関係の例を示すグラフである。
【
図5】
図5(a)は、第3実施形態に係る電磁波の周波数と、センサの受信電力と、の関係の例を示すグラフである。
図5(b)は、第3実施形態に係る電磁波の周波数と、電磁波照射装置の送信電力と、の関係の例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、第4実施形態に係るセンサシステムの電磁波照射装置が備える回路を示す模式図である。
【
図7】
図7(a)は、第4実施形態に係る周波数と、センサごとの受電特性と、の関係を示す例のグラフである。
図7(b)は、第4実施形態に係る周波数と、電磁波照射装置の送信電力と、の関係の例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、第5実施形態に係るセンサシステムを示す模式図である。
【
図9】
図9は、第6実施形態に係るセンサシステムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0038】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るセンサシステムは、
図1に示すように、それぞれ電磁波を受けて駆動する複数のセンサ30A、30B、30C・・・と、複数のセンサ30A、30B、30C・・・に電磁波を照射する電磁波照射装置40であって、複数のセンサ30A、30B、30C・・・のうち所定の数のセンサが駆動する電磁波のパラメータの最低限の組み合わせを設定する電磁波照射装置40と、を備える。電磁波のパラメータとは、例えば、電磁波の周波数である。
【0039】
複数のセンサ30A、30B、30C・・・と、電磁波照射装置40と、は、例えば閉空間10内に配置されている。閉空間10は、例えば凍結乾燥炉である。例えば、凍結乾燥炉は、扉を閉じると、内部の気体を外気から無菌的に遮蔽する。閉空間10内には、例えば、それぞれ凍結乾燥される医薬品を保存している複数のバイアル20A、20B、20C・・・が棚上に配置されている。複数のセンサ30A、30B、30C・・・は、例えば、複数のバイアル20A、20B、20C・・・の少なくとも一部の中に配置されている。複数のバイアル20A、20B、20C・・・のうち、どのバイアルにセンサを配置するかは、任意である。複数のバイアル20A、20B、20C・・・は、凍結乾燥中、移動されない。
【0040】
複数のセンサ30A、30B、30C・・・の数は任意である。複数のセンサ30A、30B、30C・・・のそれぞれは、例えば温度センサである。複数のセンサ30A、30B、30C・・・のそれぞれは、電磁波照射装置40から照射されるマイクロ波等の電磁波によってワイヤレスに給電され、凍結乾燥中のバイアル内の温度を測定し、測定結果を含むセンシング信号を無線で発する。
【0041】
あるいは、複数のセンサ30A、30B、30C・・・のそれぞれは水晶等の発振子を備え、電磁波照射装置40から照射されるマイクロ波等の電磁波によって発振子が温度に依存する周波数で発振することによって凍結乾燥中のバイアル内の温度を測定し、測定結果を含むセンシング信号を無線で発する。
【0042】
電磁波照射装置40が電磁波を照射すると、閉空間10内で電磁波が反射し、定在波が発生する場合がある。そのため、定在波の節近傍においては、伝送される電力が弱くなるヌルポイントが生じる場合がある。ヌルポイントの位置と、複数のセンサ30A、30B、30C・・・のいずれかの位置とが一致すると、センサに電力が供給されず、センサが稼働しない場合がある。
【0043】
これに対し、複数のセンサ30A、30B、30C・・・が検出対象を検出する前に、電磁波照射装置40は、電磁波の周波数を設定可能な範囲内で変化させて、電磁波の周波数ごとに複数のセンサ30A、30B、30C・・・のそれぞれが駆動するか確認する。電磁波の周波数を設定可能な範囲内で変化させることを、電磁波の周波数を掃引するという場合がある。電磁波照射装置40は、少なくとも一つのセンサを駆動可能な電磁波の周波数を複数抽出する。電磁波照射装置40は、一つもセンサを駆動できない電磁波の周波数を除去する。さらに、電磁波照射装置40は、電磁波の周波数と、駆動可能なセンサと、の組み合わせを複数作成する。またさらに、電磁波照射装置40は、電磁波の周波数と駆動可能なセンサの組み合わせに基づいて、複数のセンサ30A、30B、30C・・・のうち所定の数のセンサが駆動する電磁波の周波数の最低限の組み合わせを設定する。所定の数は、センサの検出対象や、要求される検出精度に応じて、任意に設定可能である。所定の数は、複数のセンサ30A、30B、30C・・・の全数であってもよい。
【0044】
電磁波照射装置40は、電磁波の周波数の最低限の組み合わせを、一定時間内に順次照射するシーケンスを作成する。一定時間とは、例えば、複数のセンサ30A、30B、30C・・・のそれぞれの測定周期のうち、最も短い測定周期である。なお、複数のセンサ30A、30B、30C・・・のそれぞれの測定周期が同じである場合、複数のセンサ30A、30B、30C・・・のそれぞれの測定周期が、最も短い測定周期となる。
【0045】
図2に示す例では、電磁波照射装置40は、周波数f1で2つのセンサ30A、30Bが駆動することを確認し、周波数f2で1つのセンサ30Cが駆動することを確認する。この場合、電磁波照射装置40は、センサ30A、30B、30Cのそれぞれの測定周期内に、周波数f1の電磁波と周波数f2の電磁波を照射するシーケンスを作成する。
【0046】
図1に示す電磁波照射装置40は、作成したシーケンスに従って、一定時間内に、設定された電磁波の周波数の最低限の組み合わせを用いて、電磁波を照射することを繰り返す。センサ30A、30B、30C・・・は、それぞれ、駆動可能な周波数の電磁波を測定周期内に少なくとも1回受信する。そのため、センサ30A、30B、30C・・・は、それぞれ、測定周期内に少なくとも1回駆動し、検出対象を検出することが可能である。
【0047】
電磁波照射装置40は、複数のセンサ30A、30B、30C・・・が検出対象を検出している間に、複数のセンサ30A、30B、30C・・・のうち所定の数のセンサが駆動する電磁波の周波数の最低限の組み合わせを再設定してもよい。
【0048】
例えば、現時点で設定されている電磁波の最低限の組み合わせが複数のセンサ30A、30B、30C・・・のいずれかを駆動できなくなった場合、電磁波照射装置40は、駆動できなくなったセンサを駆動可能な電磁波の周波数を、現時点で設定されている電磁波の周波数の最低限の組み合わせに追加する。
【0049】
また、追加された電磁波の周波数により、現時点で設定されている電磁波の周波数の最低限の組み合わせのうちの少なくとも1つの電磁波の周波数を削除しても、複数のセンサ30A、30B、30C・・・のうち所定の数のセンサを駆動できる場合、電磁波照射装置40は、削除可能な電磁波の周波数を削除し、削除されずに残った電磁波の周波数の組み合わせと、追加された電磁波の周波数と、の組み合わせを、電磁波の周波数の最低限の組み合わせとして再設定する。
【0050】
図3(a)に示す例では、当初、複数のセンサ30A、30B、30C、30D、30Eの全てを駆動可能であった電磁波の周波数の最低限の組み合わせf1、f3、f10が、センサ30Eを駆動できなくなっている。この場合、周波数f1、f3、f10の電磁波全ての照射を止めて、電磁波の周波数を設定可能な範囲内で変化させて、電磁波の周波数の最低限の組み合わせの再設定をすると、一時的に複数のセンサの全ての駆動が止まる。
【0051】
したがって、
図3(b)に示すように、電磁波照射装置40は、以前に複数のセンサ30A、30B、30C、30D、30Eの全てを駆動可能であった電磁波の周波数の最低限の組み合わせf1、f3、f10で電磁波を照射することを止めずに、例えば周波数f2、f4の電磁波の照射を追加する。電磁波照射装置40は、電磁波の周波数f2がセンサ30Eを駆動可能であり、電磁波の周波数f4がセンサ30Eを駆動不可能であることを確認する。
【0052】
さらに、
図3(c)に示すように、追加された周波数f2の電磁波がセンサ30Eのみならず、センサ30Dも駆動可能である場合、以前に設定された電磁波の周波数の最低限の組み合わせのうち、センサ30Dを駆動可能な電磁波の周波数f10を削除しても、複数のセンサ30A、30B、30C、30D、30Eの全てを駆動可能である。この場合、電磁波照射装置40は、削除可能な電磁波の周波数f10を削除する。電磁波照射装置40は、削除されずに残った電磁波の周波数の組み合わせf1、f3と、追加された電磁波の周波数f2と、の組み合わせを、電磁波の周波数の最低限の組み合わせとして再設定する。
【0053】
例えば、電磁波照射装置40の位置の変化、複数のセンサ30A、30B、30C・・・の配置の変化、並びに電磁波照射装置40と複数のセンサ30A、30B、30C・・・の間に存在する人、動物、及び物の有無の変化等により、複数のセンサ30A、30B、30C・・・による電磁波の受信状態が変わる場合がある。これに対し、電磁波照射装置40が、電磁波の周波数の最低限の組み合わせを再設定することにより、複数のセンサ30A、30B、30C・・・全てを再度駆動することが可能である。
【0054】
電磁波の周波数の最低限の組み合わせを再設定するタイミングは任意である、例えば、再設定は常に実施されてもよいし、電磁波照射装置40が備えるタイマあるいは電磁波照射装置40に接続されたタイマに基づいて定期的に実施されてもよい。あるいは、電磁波照射装置40が、複数のセンサ30A、30B、30C・・・の少なくとも一部が駆動していないことを確認したときに、電磁波の周波数の最低限の組み合わせを再設定してもよい。電磁波照射装置40が、複数のセンサ30A、30B、30C・・・の少なくとも一部が駆動していないことを確認したときに、電磁波照射装置40は、すぐに、電磁波の周波数の最低限の組み合わせを再設定してもよいし、所定の時間が経過した後に、電磁波の周波数の最低限の組み合わせを再設定してもよい。またあるいは、電磁波照射装置40は、電磁波の周波数の最低限の組み合わせを再設定するトリガ信号を受信して、電磁波の周波数の最低限の組み合わせを再設定してもよい。
【0055】
(第2実施形態)
電磁波照射装置40は、電磁波の周波数の最低限の組み合わせに、冗長用の電磁波の周波数を追加し、複数のセンサ30A、30B、30C・・・の駆動の信頼性を向上させてもよい。この場合、電磁波照射装置40は、設定された電磁波の周波数の最低限の組み合わせと、冗長用の電磁波の周波数と、の両方を用いて、電磁波を照射する。最低限の組み合わせに含まれる周波数の少なくとも一部の電磁波と、冗長用の周波数の電磁波は、複数のセンサ30A、30B、30C・・・の少なくとも一部の同じセンサを駆動する。例えば、電磁波照射装置40は、一定時間内に、設定された電磁波の周波数の最低限の組み合わせと冗長用の電磁波の周波数とを用いて、電磁波を照射することを繰り返す。ただし、電磁波照射装置40は、電磁波の周波数の最低限の組み合わせに、冗長用の電磁波の周波数を追加しなくともよい。
【0056】
(第3実施形態)
電磁波照射装置40は、最低限の組み合わせに含まれる周波数の電磁波の組み合わせの少なくとも一部を同時に照射してもよい。
図4に示す例では、周波数f1の電磁波でセンサ30Aを駆動可能であり、周波数f2の電磁波でセンサ30Bを駆動可能である。ここで、周波数f1の電磁波と周波数f2の電磁波を順次送信すると、時間を消費する場合がある。これに対し、
図5に示すように、電磁波照射装置40が、周波数f1の電磁波と周波数f2の電磁波を同時に照射すれば、センサ30A、30Bの測定周期を半減することが可能である。
【0057】
電磁波照射装置40は、最低限の組み合わせに含まれる周波数の単スペクトルを合成してもよいし、最低限の組み合わせに含まれる周波数の少なくとも2つ以上が含まれるように、最低限の組み合わせに含まれる周波数の少なくとも1つをスペクトル拡散してもよい。
【0058】
(第4実施形態)
図1に示す電磁波照射装置40は、最低限の組み合わせに含まれる周波数の電磁波ごとに、電磁波の送信電力を変更してもよい。例えば、電磁波照射装置40は、
図6に示すように、それぞれ異なる所定の周波数の電力を生成する複数の発振器51A、51B、51C・・・と、複数の発振器51A、51B、51C・・・に接続され、それぞれ電力を可変的に増幅する複数の可変増幅器52A、52B、52C・・・と、複数の可変増幅器52A、52B、52C・・・でそれぞれ増幅された電力を合成する合成器53と、合成器53で合成された電力を電磁波として発射するアンテナ54と、を備える。
【0059】
複数の可変増幅器52A、52B、52C・・・は、それぞれ独立して電力を増幅することが可能である。そのため、複数の可変増幅器52A、52B、52C・・・は、複数の発振器51A、51B、51C・・・で生成された、それぞれ異なる所定の周波数の電力を独立して増幅することが可能である。
【0060】
例えば、発振器51Aが周波数f1の電力を生成し、発振器51Bが周波数f2の電力を生成し、発振器51Cが周波数f3の電力を生成し、可変増幅器52A、52B、52Cがそれぞれの電力を同等に増幅してアンテナ54が周波数f1、f2、f3を含む電磁波を送信したとする。また、
図7(a)に示すように、センサ30Aが周波数f1の電磁波を受信し、センサ30Bが周波数f2の電磁波を受信し、センサ30Cが周波数f3の電磁波を受信したとする。
図7(a)で示す例では、センサ30A、30B、30Cの受信電力が一定でなく、センサ30Aの受信感度は良好であり、センサ30Bの受信感度は不良であり、センサ30Cの受信感度が通常である。この場合は、例えば、電磁波照射装置40は、
図7(b)に示すように、可変増幅器52Aの増幅率を、センサ30Aが通常の受信電力で周波数f1の電磁波を受信できる範囲内で下げる。これにより、電力の消費を抑制すること、及びノイズを低減することが可能である。また、電磁波照射装置40は、可変増幅器52Bの増幅率を、センサ30Bが通常の受信電力で周波数f2の電磁波を受信できる範囲内で上げる。これにより、センサ30Bを安定的に駆動することが可能である。
【0061】
(第5実施形態)
第1から第4実施形態では、電磁波のパラメータが電磁波の周波数である例を説明したが、これに限定されない。例えば、
図8に示すように、第5実施形態に係るセンサシステムにおいては、電磁波照射装置40がそれぞれ電気電磁波を照射する複数の送電部40A、40B、40Cを有し、電磁波のパラメータが複数の送電部40A、40B、40Cの位置であってもよい。複数の送電部40A、40B、40Cの数は任意である。
【0062】
電磁波照射装置40は、送電部40A、40B、40Cの位置ごとに複数のセンサ30A、30B、30C・・・のそれぞれが駆動するか確認する。電磁波照射装置40は、送電部の位置と、駆動可能なセンサと、の組み合わせを複数作成する。またさらに、電磁波照射装置40は、送電部の位置と駆動可能なセンサの組み合わせに基づいて、複数のセンサ30A、30B、30C・・・のうち所定の数のセンサが駆動する送電部の位置の最低限の組み合わせを設定する。
【0063】
電磁波照射装置40は、設定された最低限の組み合わせに含まれる位置の送電部から電磁波を照射するシーケンスを作成する。あるいは、電磁波照射装置40は、設定された最低限の組み合わせに含まれる位置の送電部の少なくとも一部から同時に電磁波を照射してもよい。
【0064】
(第6実施形態)
電磁波のパラメータは、電磁波の照射方向であってもよい。第6実施形態に係るセンサシステムにおいては、
図9に示すように、電磁波照射装置40がアンテナを備え、電磁波の照射方向を変化させる。アンテナは、例えば指向性アンテナであり、フェーズドアレーアンテナ及び可動式のパラボラアンテナ等が使用可能である。フェーズドアレーアンテナは、移動機構を用いずに指向性を変化させることができるため、発塵を抑制することが可能である。
【0065】
電磁波照射装置40は、電磁波の照射方向ごとに複数のセンサ30A、30B、30C・・・のそれぞれが駆動するか確認する。電磁波照射装置40は、電磁波の照射方向と、駆動可能なセンサと、の組み合わせを複数作成する。またさらに、電磁波照射装置40は、電磁波の照射方向と駆動可能なセンサの組み合わせに基づいて、複数のセンサ30A、30B、30C・・・のうち所定の数のセンサが駆動する電磁波の照射方向の最低限の組み合わせを設定する。
【0066】
(他の実施形態)
上記のように本発明を実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、上述した実施形態を組み合わせてもよい。また、上記の実施形態では、閉空間として凍結乾燥炉を使用する場合を説明したが、閉空間は、部屋、工場、保管庫、房、漕及び炉等であってもよい。閉空間は、無菌的な医薬品処理空間であってもよい。また、センサは、表面弾性波に基づき湿度を測定対象としてもよい。センサは、酸素や二酸化炭素等の気体濃度を測定対象としてもよい。あるいは、センサは、物品のそれぞれの存否や移動を測定対象としてもよい。センサは、バイアルに限らず、様々な容器内に配置されてもよいし、容器内に配置されていなくともよい。センサは、商品、美術品、及び展示品等の物品に配置されてもよい。
【0067】
また、電磁波のパラメータは、電磁波の偏波状態であってもよい。電磁波の偏波状態は、直線偏波、直線偏波の偏波方向、円偏波を含む。
図1に示す電磁波照射装置40は、電磁波の偏波状態ごとに複数のセンサ30A、30B、30C・・・のそれぞれが駆動するか確認する。電磁波照射装置40は、電磁波の偏波状態と、駆動可能なセンサと、の組み合わせを複数作成する。またさらに、電磁波照射装置40は、電磁波の偏波状態と駆動可能なセンサの組み合わせに基づいて、複数のセンサ30A、30B、30C・・・のうち所定の数のセンサが駆動する電磁波の偏波状態の最低限の組み合わせを設定する。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0068】
10・・・閉空間、20A、20B、20C・・・バイアル、30A、30B、30C、30D、30E・・・センサ、40・・・電磁波照射装置、40A、40B、40C・・・送電部、51A、51B、51C・・・発振器、52A、52B、52C・・・可変増幅器、53・・・合成器、54・・・アンテナ