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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】加熱発泡材取付具及び建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
E06B5/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020067466
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021161831
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005005
【氏名又は名称】不二サッシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 直子
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108832(JP,A)
【文献】特開2016-108831(JP,A)
【文献】特開2019-167707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0024184(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の枠体を構成する枠材と、前記枠体の内側に建て込まれる戸体を構成する框材との少なくともいずれかであり、平坦面状の被取付面と、前記被取付面に隣接して配置され、前記被取付面に対し略直角な方向に張り出した張出板部と、前記張出板部を挟んで前記被取付面の反対側に配置された被押付面と、を有する被取付部材の前記被取付面に対し、加熱により少なくとも板厚方向に発泡する板状の加熱発泡材を取り付けるための加熱発泡材取付具であって、
前記張出板部の少なくとも先端部を取り囲むようにして前記張出板部に取り付けられる、略U字板状の取付部と、前記取付部のうち、前記張出板部の基端側に位置する端部から、前記張出板部の板厚方向に関して互いに離れる方向に伸長した1対の腕部と、を備え、
前記1対の腕部のうち、一方の腕部は、前記加熱発泡材を前記被取付面に対し前記加熱発泡材の板厚方向に抑え付け、他方の腕部は、前記被押付面を直接又は他の部材を介して押圧する、
加熱発泡材取付具。
【請求項2】
前記一方の腕部は、先端側に向かうほど前記被取付面に近づく方向に伸長しており、前記一方の腕部と前記取付部との間の挟角が鈍角である、請求項1に記載の加熱発泡材取付具。
【請求項3】
前記他方の腕部は、先端側に向かうほど前記被押付面に近づく方向に伸長しており、前記他方の腕部と前記取付部との間の挟角が鈍角である、請求項1~2のうちのいずれかに記載の加熱発泡材取付具。
【請求項4】
前記取付部は、前記張出板部の一部と係合して、前記取付部が前記張出板部の張出方向に移動するのを防止するための係合部を有する、請求項1~3のうちのいずれかに記載の加熱発泡材取付具。
【請求項5】
前記取付部は、前記張出板部を、前記張出板部の板厚方向に弾性的に挟持する、請求項1~4のうちのいずれかに記載の加熱発泡材取付具。
【請求項6】
前記一方の腕部の先端部に、先端側に向かうほど前記被取付面から離れる方向に伸長し、前記一方の腕部との間の挟角が鈍角になった、折り返し部をさらに備える、請求項1~5のうちのいずれかに記載の加熱発泡材取付具。
【請求項7】
前記他方の腕部の先端部に、先端側に向かうほど前記被押付面から離れる方向に伸長し、前記他方の腕部との間の挟角が鈍角になった、折り返し部をさらに備える、請求項1~6のうちのいずれかに記載の加熱発泡材取付具。
【請求項8】
前記他方の腕部は、前記被押付面を、前記被取付面に取り付けられた前記加熱発泡材とは別の加熱発泡材を介して押圧する、請求項1~7のうちのいずれかに記載の加熱発泡材取付具。
【請求項9】
矩形状の枠体と、該枠体の内側に建て込まれる戸体と、加熱により少なくとも板厚方向に発泡する板状の加熱発泡材と、該加熱発泡材を、前記枠体を構成する枠材と前記戸体を構成する框材との少なくともいずれかであり、平坦面状の被取付面と、前記被取付面に隣接して配置され、前記被取付面に対し略直角な方向に張り出した張出板部と、前記張出板部を挟んで前記被取付面の反対側に配置された被押付面と、を有する被取付部材の前記被取付面に対して取り付ける加熱発泡材取付具と、を備え、
前記加熱発泡材取付具が、請求項1~8のうちのいずれかに記載の加熱発泡材取付具である、建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部に配置される矩形状の枠体を構成する枠材や、前記枠体の内側に建て込まれる戸体を構成する框材に対して、加熱により発泡する加熱発泡材を取り付けるための加熱発泡材取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の開口部に固定された窓枠やドア枠などの枠体の内側に、窓障子やドアなどの戸体を建て込んでなる建具においては、火災発生時に、枠体と戸体との間の隙間が、火炎や熱風などの通り道になる可能性がある。そこで従来から、火災発生時に、枠体と戸体との間の隙間を、加熱により発泡(膨張)する加熱発泡材を利用して塞ぐことが考えられている(例えば実開昭60-76942号公報参照)。
【0003】
加熱発泡材は、一般的に板状(シート状)に構成されており、枠体を構成する枠材や戸体を構成する框材に対して、粘着テープや接着剤などにより貼付されている。ただし、加熱発泡材は、一般的に200℃程度で発泡し始めるのに対し、粘着テープに用いられる粘着剤(接着剤を含む)は、それよりも低い温度(例えば120℃程度)で溶け始める。このため、加熱発泡材が発泡し始めるよりも前に粘着剤が溶けて、加熱発泡材が所定の取付位置から剥がれ落ちる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭60-76942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような事情に鑑み、例えば図14に示したように、加熱発泡材100を、枠材又は框材である被取付部材101に形成した鞘状の凹溝102に係止する構造を、貼付に代えて、又は貼付と併用することが考えられる。このような構造を採用すれば、加熱発泡材100が、発泡前に被取付部材101から脱落することを防止できる。ただし、加熱発泡材100を凹溝102に係止する構造は、加熱発泡材100の取付対象となる被取付部材101が、予め凹溝102を備えていることが必要になる。このため、加熱発泡材を既存の建具に対して取り付ける場合には、採用することが難しい。
【0006】
そこで、加熱発泡材を、枠材や框材に対してねじにより直接固定する構造を採用することが考えられる。この場合には、加熱発泡材が、発泡前に枠材や框材から脱落することを防止できるとともに、加熱発泡材を、新規の建具だけでなく、既存の建具にも取り付けることが可能になる。ただし、加熱発泡材を、ねじを用いて固定する場合には、工具を用いたねじ止め作業を行えるだけの作業スペースが必要になる。このため、加熱発泡材の取付位置として、ねじ止め作業を行えるだけの作業スペースを確保できない位置には、加熱発泡材を取り付けることが難しくなる。このように、加熱発泡材を、ねじを用いて固定する場合には、加熱発泡材の取付位置に制約を受けやすくなる。
【0007】
本発明は、上述のような事情に鑑みて、加熱発泡材が、発泡前に枠材や框材から脱落することを防止できるとともに、加熱発泡材を、新規の建具だけでなく、既存の建具にも取り付けることが可能であり、かつ、加熱発泡材の取付位置に関する制約も受けにくい、加熱発泡材取付具の構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加熱発泡材取付具は、矩形状の枠体を構成する枠材と、前記枠体の内側に建て込まれる戸体を構成する框材との少なくともいずれかであり、平坦面状の被取付面と、前記被取付面に隣接して配置され、前記被取付面に対し略直角な方向に張り出した張出板部と、前記張出板部を挟んで前記被取付面の反対側に配置された被押付面と、を有する被取付部材の前記被取付面に対し、加熱により少なくとも板厚方向に発泡する板状の加熱発泡材を取り付けるためのものである。
本発明の加熱発泡材取付具は、前記張出板部の少なくとも先端部を取り囲むようにして前記張出板部に取り付けられる、略U字板状の取付部と、前記取付部のうち、前記張出板部の基端側に位置する端部から、前記張出板部の板厚方向に関して互いに離れる方向に伸長した1対の腕部とを備える。
前記1対の腕部のうち、一方の腕部は、前記加熱発泡材を前記被取付面に対し前記加熱発泡材の板厚方向に抑え付け、他方の腕部は、前記被押付面を直接又は他の部材を介して押圧する。
なお、前記張出板部が前記被取付面に対して略直角な方向に張り出すとは、前記被取付面に対して直角な方向だけでなく、前記被取付面に対して直角な方向からわずかに傾いた方向に張り出す場合を含むことを意味する。
【0009】
本発明の一態様にかかる加熱発泡材取付具では、自由状態で、前記一方の腕部を、先端側に向かうほど前記被取付面に近づく方向に伸長させ、前記一方の腕部と前記取付部との間の挟角を鈍角にすることができる。
また、本発明の一態様にかかる加熱発泡材取付具では、自由状態で、前記他方の腕部を、先端側に向かうほど前記被押付面に近づく方向に伸長させ、前記他方の腕部と前記取付部との間の挟角を鈍角にすることができる。
【0010】
本発明の一態様にかかる加熱発泡材取付具では、前記取付部を、前記張出板部の一部と係合して、前記取付部が、前記張出板部の張出方向に移動するのを防止するための係合部を有するものとすることができる。
【0011】
本発明の一態様にかかる加熱発泡材取付具では、前記取付部により、前記張出板部を、前記張出板部の板厚方向に弾性的に挟持することができる。
【0012】
本発明の一態様にかかる加熱発泡材取付具では、前記一方の腕部の先端部から、先端側に向かうほど前記被取付面から離れる方向に伸長し、前記一方の腕部との間の挟角が鈍角になった、折り返し部をさらに備えることができる。
また、本発明の一態様にかかる加熱発泡材取付具では、前記他方の腕部の先端部から、先端側に向かうほど前記被押付面から離れる方向に伸長し、前記他方の腕部との間の挟角が鈍角になった、折り返し部をさらに備えることができる。
【0013】
本発明の一態様にかかる加熱発泡材取付具では、前記他方の腕部により、前記被押圧面を、前記被取付面に取り付けられた前記加熱発泡材とは別の加熱発泡材を介して押圧することができる。
【0014】
本発明の建具は、矩形状の枠体と、該枠体の内側に建て込まれる戸体と、加熱により少なくとも板厚方向に発泡する板状の加熱発泡材と、前記枠体を構成する枠材と前記戸体を構成する框材との少なくともいずれかの被取付部材と、該被取付部材に対して前記加熱発泡材を取り付けるための加熱発泡材取付具とを備える。
前記被取付部材は、平坦面状の被取付面と、前記被取付面に隣接して配置され、前記被取付面に対し略直角な方向に張り出した張出板部と、前記張出板部を挟んで前記被取付面の反対側に配置された被押付面と、を有する。
本発明の建具では、前記加熱発泡材取付具として、本発明の一態様にかかる加熱発泡材取付具を使用し、前記加熱発泡材を前記被取付面に対して取り付ける(抑え付ける)。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加熱発泡材が、発泡前に枠材や框材から脱落することを防止できるとともに、加熱発泡材を、新規の建具だけでなく、既存の建具にも取り付けることが可能であり、かつ、加熱発泡材の取付位置に関する制約も受けにくい、加熱発泡材取付具の構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施の形態の第1例にかかるドア装置を屋外側から見た模式図である。
図2図2は、図1のA-A縦断面図である。
図3図3は、図1のB-B横断面図である。
図4図4は、加熱発泡材取付具を取り出して示す図であり、(A)は正面図であり、(B)は平面図であり、(C)は左側面図である。
図5図5は、加熱発泡材取付具の取り付け状態を示す、図2の部分拡大図である。
図6図6は、加熱発泡材取付具の取付工程を説明するために示す断面図であり、(A)は初期段階を示しており、(B)は完了段階を示している。
図7図7は、実施の形態の第2例で使用する加熱発泡材取付具を示す側面図である。
図8図8は、実施の形態の第2例を示す、図5に相当する図である。
図9図9は、実施の形態の第3例で使用する加熱発泡材取付具を示す側面図である。
図10図10は、実施の形態の第3例を示す、図5に相当する図である。
図11図11は、実施の形態の第4例を示す、図5に相当する図である。
図12図12は、実施の形態の第5例で使用する加熱発泡材取付具を示す側面図である。
図13図13は、実施の形態の第5例を示す、図5に相当する図である。
図14図14は、加熱発泡材の支持構造の従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1図6を用いて説明する。
本例は、本発明をドア装置に適用した場合を示している。本例のドア装置1は、いわゆる片開き式の框ドアであり、図1に全体構成を示すように、建物の開口部に固定された矩形状の枠体であるドア枠2と、該ドア枠2の内側に開閉可能に支持された戸体である扉3とを備えている。
なお、本明細書中で、面内方向とは、水平方向の1つである、ドア枠2の幅方向(図1の左右方向)をいう。また、面内方向に関して内側とは、ドア枠2の幅方向中央側をいい、面内方向に関して外側とは、ドア枠2の幅方向外側をいう。
【0018】
[ドア枠2の構造]
ドア枠2は、面内方向に配置されて上辺を構成する上枠4と、同じく面内方向に配置されて下辺を構成する下枠5と、鉛直方向に配置されて左右の縦辺を構成する1対の竪枠6とを備えている。そして、上枠4及び下枠5のそれぞれの面内方向両端部と、1対の竪枠6のそれぞれの上下方向両端部とを、タッピングねじなどを用いて連結することで、ドア枠2を矩形状に構成している。ドア枠2を構成する各枠4~6はいずれも、アルミニウム合金の一体押し出し成型材である。1対の竪枠6のうち、図1の右側(外観)に配置された一方の竪枠6は、吊元側の竪枠であり、丁番7(図3参照)が取り付けられている。これに対し、図1の左側(外観)に配置された他方の竪枠6は、戸先側の竪枠である。本例では、火災発生時に、ドア枠2と扉3との間の隙間が、火炎や熱風などの通り道になることを防止するために、下枠5に、加熱発泡材8a、8bを取り付けている。加熱発泡材8a、8bの取付態様については、後に詳しく説明する。
【0019】
上枠4は、図2に示すように、扉3の上方に水平に配置された略平板状の上枠基板部9と、該上枠基板部9の屋内外方向中間部から鉛直方向下方に向けて伸長した上枠保持片10とを備える。上枠保持片10は、扉3よりも屋内側に配置されており、屋外側に開口した係止凹溝11aを有する。該係止凹溝11aには、弾性材製の気密片12aが係止されている。また、上枠基板部9の屋外側部分には、下方に開口したホルダ溝13が備えられている。該ホルダ溝13には、弾性材製の水切材14が係止されている。気密片12aは、扉3の閉鎖時に、扉3の上辺(後述する上框33)と上枠4との間の隙間を塞ぐ。
【0020】
下枠5は、図2及び図6に示すように、扉3の下方に配置される屋外側下枠基板部15と、該屋外側下枠基板部15の屋内側端部から鉛直方向上方に向けて伸長した下枠保持片16と、該下枠保持片16の上端部から屋内側に向けて伸長した屋内側下枠基板部17とを備える。屋外側下枠基板部15は、全体が、屋外側に向かうほど下方に向かう方向に傾斜している。これに対し、屋内側下枠基板部17は、屋外側部分が水平に配置されており、それ以外の部分が屋内側に向かうほど下方に向かう方向に傾斜している。扉3の閉鎖状態で、扉3の下辺(後述する下框34)と屋外側下枠基板部15との間には、上下方向寸法の小さい隙間が形成される。
【0021】
下枠保持片16は、扉3よりも屋内側に配置されており、屋外側に開口した係止凹溝11bを有する。該係止凹溝11bには、弾性材製の気密片12bが係止されている。気密片12bは、扉3の閉鎖時に、扉3の下辺(後述する下框34)と下枠5との間の隙間を塞ぐ。
【0022】
下枠保持片16は、図5に示すように、下半部に配置された基部18と、上半部に配置された保持部19とからなる。
【0023】
基部18は、平板状に構成されており、屋外側を向いた平坦面状の被取付面20を有する。基部18の屋外側側面である被取付面20には、後述するように、加熱発泡材8aが取り付けられる。
【0024】
保持部19は、略コ字形の断面形状を有しており、その内側に係止凹溝11bを有する。保持部19は、上下方向に離隔して配置され、それぞれが屋外側に向けて水平方向に張り出した上側張出板部21及び下側張出板部22と、これら上側張出板部21及び下側張出板部22のそれぞれの屋内側端部同士を上下方向に連結した底板部23とからなる。
【0025】
上側張出板部21は、下枠保持片16の上端部に備えられており、屋外側端部に下方に向けて略直角に折れ曲がった折曲部24aを有する。
【0026】
下側張出板部22は、下枠保持片16の上下方向中間部に備えられており、屋外側端部に上方に向けて略直角に折れ曲がった折曲部24bを有する。下側張出板部22は、被取付面20の上方に隣接して配置されており、鉛直面である被取付面20に対し直角な方向である水平方向に張り出している。下側張出板部22の上下両面のうち、上面は、屋内側に向かうほど上方に向かう方向にわずかに傾斜した傾斜面であるのに対し、下面は、屋内外方向にわたり上下位置の変化しない水平面である。
【0027】
このように、本例のドア装置1にあっては、被取付面20に隣接して配置された下側張出板部22の下面に、加熱発泡材8aを係止するための、鞘状の凹溝を構成する係止片は備えられていない。また、下側張出板部22の下面は、扉3の閉鎖状態での下端面(下框34の下端面)と、ほぼ同じ上下方向位置に位置している。なお、本例では、下側張出板部22が、特許請求の範囲に記載した張出板部に相当する。
【0028】
底板部23は、基部18の上方に配置され、平板状に構成されており、屋外側を向いた平坦面状の被押付面25を有する。別な言い方をすれば、係止凹溝11bの底面には、被押付面25が備えられている。被押付面25は、下側張出板部22を挟んで被取付面20の反対側(上側)に配置されている。本例では、被押付面25は、被取付面20と同一の鉛直面上に配置されている。図示の例では、被押付面25の上下方向の幅寸法は、被取付面20の上下方向の幅寸法よりも少しだけ小さくなっている。
【0029】
1対の竪枠6のそれぞれは、図3に示すように、建物の開口部に固定される外側竪枠26と、該外側竪枠26に対してねじ27により固定された内側竪枠28とから構成されている。内側竪枠28の面内方向外側の半部は、外側竪枠26の屋内外方向中間部に備えられた収納凹溝29の内側にがたつきなく挿入されている。内側竪枠28の面内方向内側の端部には、竪枠保持片30が備えられている。竪枠保持片30は、屋外側に開口した係止凹溝11cを備えている。該係止凹溝11cには、弾性材製の気密片12cが係止されている。気密片12cは、扉3の閉鎖時に、扉3の左右の縦辺(後述する竪框35)と竪枠6との間の隙間を塞ぐ。
【0030】
[扉3の構造]
ドア枠2の内側に建て込まれる扉3は、図1に示すように、矩形状の框枠体31の内側に、ガラスパネル32を嵌め込むことにより構成されており、ドア枠2に対して、複数の丁番7(図3参照)により開閉可能に支持されている。
【0031】
框枠体31は、上辺を構成する上框33と、下辺を構成する下框34と、左右の縦辺を構成する1対の竪框35との、それぞれの端部を連結することにより、矩形状に構成されている。框枠体31を構成する各框33~35はいずれも、アルミニウム合金の一体押し出し成型材である。
【0032】
ガラスパネル32は、防火性能に優れた網入りガラスである。ガラスパネル32の上辺(上縁部)、下辺(下縁部)、及び、側辺(側縁部)は、框枠体31を構成する上框33、下框34、及び、左右の竪框35にそれぞれ設けられたガラス溝36a~36cの内側にそれぞれ挿入されている。また、ガラスパネル32の下辺は、セッティングブロック37を介して、下框34に設けられたガラス溝36bの底部に突き当てられており、ガラスパネル32の両側辺と、竪框35に設けられたガラス溝36cの底部との間には、それぞれスペーサーブロック38が嵌装されている。また、ガラスパネル32の外周縁寄り部分の両側面と、ガラス溝36a~36cの開口部との間部分を、屋外側シール材39aと屋内側シール材39bとで、それぞれ全周にわたりシールしている。
【0033】
[ドア装置1の防火構造]
本例のドア装置1は、火災発生時に、ドア枠2と扉3との間の隙間が、火炎や熱風などの通り道になることを防止する。このために、ドア枠2を構成する下枠5に対して、加熱により少なくとも板厚方向に発泡する加熱発泡材8a、8bを、加熱発泡材取付具40を利用して取り付けている。
【0034】
具体的には、それぞれが面内方向に伸長した加熱発泡材8a、8bを、複数の加熱発泡材取付具40を利用して、下枠5に取り付けている。図示の例では、加熱発泡材8a及び加熱発泡材8bのそれぞれを、所定の長さを有する2枚の加熱発泡材を面内方向に直列につなげて構成している。このため、図1に示すように、加熱発泡材取付具40を、加熱発泡材8a及び加熱発泡材8bの面内方向両側の端部と、加熱発泡材8a及び加熱発泡材8bの面内方向中間部に位置するつなぎ目部分との、合計3個所に配置している。ただし、本発明を実施する場合に、加熱発泡材取付具の設置位置及び設置個数は特に限定されない。また、図示及び説明は省略するが、ドア枠2を構成する下枠5以外の各枠4、6、並びに、框枠体31を構成する各框33、34、35に対して、それぞれ複数の加熱発泡材を、鞘状の凹溝に係止する方法やねじにより固定する方法など、各種の取付方法により取り付けることができる。
【0035】
加熱発泡材8a、8bは、厚さが数ミリ程度の板状(帯状、シート状)で、加熱により少なくとも板厚方向に発泡(膨張)し、耐火性を有するものであり、例えば、積水化学工業株式会社製の商品名「フィブロック」を使用できる。なお、「フィブロック」は、発泡開始温度が200℃程度であり、板厚はその種類(ブチル系、エポキシ系など)に応じて5倍~40倍程度にまで厚くなる。なお、加熱発泡材として、板厚方向だけでなく、板厚方向に対して直交する方向(幅方向及び長さ方向)にも発泡するものを使用できる。
【0036】
[加熱発泡材8a、8bの取付構造]
本例では、下枠5を構成する下枠保持片16の屋外側側面に、面内方向の全長にわたり、加熱発泡材8a、8bを取り付けている。
【0037】
具体的には、加熱発泡材8aは、板厚方向を屋内外方向に一致させるとともに、その下端部を屋外側下枠基板部15の上面に位置させた状態で、下枠保持片16の下半部を構成する基部18の被取付面20に取り付けられている。これに対し、加熱発泡材8bは、板厚方向を屋内外方向に一致させるとともに、その下端部を下側張出板部22の上面に位置させた状態で、下枠保持片16の上半部を構成する保持部19の被押付面25に取り付けられている。このため、加熱発泡材8aと加熱発泡材8bとは、上下方向に離隔した状態で互いに同一の鉛直面上に配置されている。また、加熱発泡材8bは、係止凹溝11bの内側に配置されている。図示の例では、加熱発泡材8aの上下方向の幅寸法と、加熱発泡材8bの上下方向の幅寸法とを、互いに同じとしている。
【0038】
本例では、加熱発泡材8aを被取付面20に対し、粘着テープによる粘着剤(接着剤)により貼付するとともに、加熱発泡材8bを被押付面25に対し、粘着テープによる粘着剤により貼付している。さらに、被取付面20に貼付した加熱発泡材8a及び被押付面25に貼付した加熱発泡材8bのそれぞれを、下側張出板部22に取り付けられた加熱発泡材取付具40を利用して、同時に抑え付けている。
【0039】
[加熱発泡材取付具40の構造]
加熱発泡材取付具40は、ステンレス鋼板やアルミニウム合金などの耐食性及び耐熱性を有する金属板に、打ち抜き及び曲げなどのプレス加工を施してなる小型部品である。加熱発泡材取付具40は、加熱発泡材8a、8bの発泡の妨げにならないように、加熱発泡材8a、8bの長さ寸法に対して十分に小さい幅寸法(例えば数mm~十数mm程度の幅寸法)を有している。加熱発泡材取付具40は、図5に示すように、断面形状が略ひ字状に屈曲したクリップ形状を有しており、取付部41と、1対の腕部42、43とを備えている。
なお、本例では、複数個(図示の例では3個)の加熱発泡材取付具40を使用しているが、いずれの加熱発泡材取付具40も同様の構成を有している。
【0040】
取付部41は、略U字板状に構成されており、下側張出板部22の先半部を取り囲むようにして、下側張出板部22に取り付けられる。取付部41は、下側張出板部22の上方に配置される上板部44と、下側張出板部22の下方に配置される下板部45と、上板部44の屋外側端部と下板部45の屋外側端部同士を連結する連結部46とからなる。
【0041】
上板部44は、屋内外方向中間部が下方に向けて張り出すように略V字形に屈曲した屈曲部47を有する。屈曲部47の下端部と下板部45の上面との間の上下方向寸法は、下側張出板部22の屋外側端部(折曲部24bを含む)の上下方向寸法よりも十分に小さくなっている。これに対し、下板部45は、全体が平板状に構成されている。
【0042】
取付部41を下側張出板部22に取り付けた状態で、屈曲部47は、下側張出板部22の屋外側端部に備えられた折曲部24bと屋内外方向に係合する。これにより、加熱発泡材取付具40(取付部41)が、下側張出板部22に対し、下側張出板部22の張出方向である屋外側に移動することを防止する。このため、屈曲部47が、特許請求の範囲に記載した係合部に相当する。また、取付部41を下側張出板部22に取り付けた状態で、下板部45の上面は、下側張出板部22の下面に対して面接触する。
【0043】
1対の腕部42、43は、取付部41の屋内側端部から、下側張出板部22の板厚方向に一致する上下方向に関して、互いに離れる方向に伸長している。
【0044】
1対の腕部42、43のうち、下方に配置された一方の腕部42は、平板状に構成されており、下板部45の屋内側端部から下方に向けて直角に折れ曲がっている。これに対し、1対の腕部42、43のうち、上方に配置された他方の腕部43は、平板状に構成されており、上板部44の屋内側端部から上方に向けて折れ曲がっている。本例では、一方の腕部42と他方の腕部43とが、屋内外方向に関して同じ位置に位置している。このため、一方の腕部42の屋内側側面と、他方の腕部43の屋内側側面とは、同一の仮想平面上に位置している。
【0045】
本例では、一方の腕部42の上下方向の幅寸法が、他方の腕部43の上下方向の幅寸法よりも大きくなっている。図示の例では、一方の腕部42の上下方向の幅寸法は、他方の腕部43の上下方向の幅寸法の3倍程度になっている。一方の腕部42の上下方向の幅寸法は、加熱発泡材8aの上下方向の幅寸法とほぼ同じであり、被取付面20の上下方向の高さ寸法よりも少しだけ小さい。他方の腕部43の上下方向の幅寸法は、加熱発泡材8bの上下方向の幅寸法及び被押付面25の上下方向の高さ寸法よりも小さい(図示の例では1/2程度である)。なお、一方の腕部42と他方の腕部43との面内方向の幅寸法は、互いに等しく、取付部41の面内方向の幅寸法と同じである。
【0046】
取付部41を下側張出板部22に取り付けた状態で、一方の腕部42は、加熱発泡材8a(のうち下端部を除く部分)を、被取付面20に対し加熱発泡材8aの板厚方向に(屋内側に向けて)抑え付ける。これに対して、他方の腕部43は、被押付面25を、加熱発泡材8bを介して押圧する。したがって、本例では、他方の腕部43についても、加熱発泡材8b(のうち上端部を除く部分)を、被押付面25に対し加熱発泡材8bの板厚方向に抑え付ける。なお、本例では、腕部42、43により、加熱発泡材8a、8bを抑え付ける力の大きさは、下側張出板部22の屋外側端部から加熱発泡材8a、8bの屋外側側面までの寸法に対する、取付部41(上板部44及び下板部45)の屋内外方向の長さ寸法によって変更可能であり、加熱発泡材8a、8bの屋外側側面に軽く触れる程度の大きさから、加熱発泡材8a、8bを強く押圧できる程度の大きさまで調節することができる。
【0047】
上述のような本例の加熱発泡材取付具40を下側張出板部22に取り付けるには、図6の(A)に示すように、加熱発泡材取付具40を下側張出板部22に対して屋外側から近づけ、加熱発泡材取付具40の屋外側端部を斜め上方に向けて傾けた状態で、取付部41の内側に下側張出板部22の屋外側端部を挿入する。その後、取付部41を構成する下板部45を、下側張出板部22の下面に沿って屋内側に移動させながら、加熱発泡材取付具40の屋外側端部を下方に向けて傾けることで、図6の(B)に示すように、下側張出板部22の屋外側端部を取付部41の奥部にまで押し込む。これにより、加熱発泡材取付具40を下側張出板部22に取り付ける(装着する)。
【0048】
本例では、このようにして、加熱発泡材取付具40を下側張出板部22に取り付けた後、係止凹溝11bに対して気密片12bを係止する。したがって、上方に配置された加熱発泡材8bは、気密片12bによって屋外側から覆われる。これに対して、下方に配置された加熱発泡材8aは、屋外側に露出している。また、係止凹溝11bに係止した気密片12bにより、取付部41を構成する上板部44を、下側張出板部22の上面に対して押し付けるとともに、取付部41を構成する連結部46を、下側張出板部22の屋外側の端面に対して押し付けている。
【0049】
以上のような構成を有する本例のドア装置1では、加熱発泡材8a、8bを、下枠5に対して、粘着剤により貼付するだけでなく、加熱発泡材取付具40を利用して加熱発泡材8a、8bの板厚方向に抑え付けている。このため、加熱発泡材8a、8bが、発泡前に下枠5から脱落することを防止できる。したがって、火災発生時には、発泡(膨張)した加熱発泡材8aにより、扉3の下片(下框34)と下枠5を構成する屋外側下枠基板部15との間の隙間を、面内方向の全長にわたり塞ぐことができる。また、発泡した加熱発泡材8aにより、気密片12bが溶融するのを抑制することもできる。また、気密片12bが溶融した際には、被押付面25に取り付けられた加熱発泡材8bが発泡することで、扉3の下片(下框34)と下枠5を構成する下枠保持片16との間の隙間を、面内方向の全長にわたり塞ぐことができる。なお、加熱発泡材8bは、気密片12bによって、傾倒したり、係止凹溝11bから脱落したりするのを防止することもできるが、本例では、加熱発泡材8bを、加熱発泡材取付具40の他方の腕部43により抑え付けているため、気密片12bが溶融した後においても、加熱発泡材8bの姿勢を安定させることができ、発泡方向を所期の方向に規制することができる。
【0050】
本例では、加熱発泡材8a、8bを、下枠5に形成された鞘状の凹溝に係止するのではなく、下枠5とは別部品である加熱発泡材取付具40を利用して抑え付けるため、加熱発泡材8a、8bを、新規のドア装置1だけでなく、既存のドア装置1にも取り付けることが可能である。つまり、本例のように、鞘状の凹溝を備えていない下枠5を対象として、加熱発泡材8a、8bを取り付けることが可能になる。
【0051】
被取付面20は、下枠保持片16の下半部を構成する基部18の屋外側側面に備えられており、床面の近傍に位置している。このため、加熱発泡材8aを被取付面20に対して、例えばねじを用いて固定しようとした場合にも、作業スペースが狭いため、ねじ止め作業自体を行えないか、作業性が悪くなる。これに対して、本例の場合には、加熱発泡材取付具40を下側張出板部22に対して屋外側から押し込むだけで、加熱発泡材取付具40を下側張出板部22に取り付けることができ、加熱発泡材8aを被取付面20に抑え付けることができる。したがって、本例の構造によれば、加熱発泡材8aの取付位置に関する制約を受けにくくできる。
【0052】
また、取付部41に備えられた屈曲部47を、下側張出板部22に備えられた折曲部24bに対し屋内外方向に係合させているため、加熱発泡材取付具40が、下側張出板部22から屋外側に脱落することを防止できる。このため、1対の腕部42、43によって、加熱発泡材8a、8bを屋内側に向けて押圧する力を大きくした場合にも、加熱発泡材取付具40が屋外側に移動する(脱落する)のを防止できる。また、係止凹溝11bに係止した気密片12bにより、取付部41を構成する上板部44を、下側張出板部22の上面に押し付けるとともに、取付部41を構成する連結部46を、下側張出板部22の屋外側の端面に押し付けることができるため、加熱発泡材取付具40の姿勢を安定させることができる。また、加熱発泡材取付具40の屋外側への移動及び面内方向への移動を防止することもできる。
【0053】
さらに本例では、1対の腕部42、43のそれぞれの屋内側側面を、加熱発泡材8a、8bのそれぞれの屋外側側面に接触(面接触)させているため、1対の腕部42、43の屋内側側面と加熱発泡材8a、8bの屋外側側面との間に作用する摩擦力により、加熱発泡材取付具40が面内方向に移動することを抑制できる。
【0054】
また、取付部41を構成する下板部45を平板状に構成し、該下板部45の上面を、下側張出板部22の下面に対して面接触させているため、下板部45の上面と下側張出板部22の下面との間に作用する摩擦力を大きくできる。したがって、加熱発泡材取付具40が、面内方向に移動するのを効果的に抑制できる。
【0055】
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、図7及び図8を用いて説明する。
本例では、加熱発泡材取付具40aの形状のみを、実施の形態の第1例の構造から変更している。具体的には、加熱発泡材取付具40aを構成する1対の腕部42a、43aの形状を変更している。
【0056】
1対の腕部42a、43aのうち、下方に配置された一方の腕部42aは、平板状に構成されており、自由状態で、下板部45の屋内側端部から、下方に向かうほど屋内側に向かう方向に伸長している。このため、一方の腕部42aは、先端側に向かうほど被取付面20に近づく方向に伸長しており、下板部45との間の挟角αが鈍角になっている。一方の腕部42aは、下端部が最も屋内側に位置している。図示の例では、一方の腕部42aと下板部45との間の挟角αの大きさは、95度程度になっている。
【0057】
1対の腕部42a、43aのうち、上方に配置された他方の腕部43aは、平板状に構成されており、自由状態で、上板部44の屋内側端部から、上方に向かうほど屋内側に向かう方向に伸長している。このため、他方の腕部43aは、先端側に向かうほど被押付面25に近づく方向に伸長しており、上板部44との間の挟角βが鈍角になっている。他方の腕部43aは、上端部が最も屋内側に位置している。図示の例では、他方の腕部43aと上板部44との間の挟角βの大きさは、115度程度になっている。
【0058】
本例の場合にも、取付部41を下側張出板部22に取り付けた状態で、一方の腕部42aは、加熱発泡材8aを、被取付面20に対し加熱発泡材8aの板厚方向に抑え付ける。このように、一方の腕部42aにより加熱発泡材8aを抑え付けると、屈曲部47と折曲部24bとの係合によって、取付部41(連結部46)が屋外側へと移動しないため、図8に示すように、一方の腕部42aは、加熱発泡材8aからの反力を受け、下板部45との間の挟角αを小さくする方向に弾性変形する。
【0059】
また、取付部41を下側張出板部22に取り付けた状態で、他方の腕部43aは、被押付面25を、加熱発泡材8bを介して押圧する。すなわち、本例の場合にも、他方の腕部43aは、加熱発泡材8bを、被押付面25に対し加熱発泡材8bの板厚方向に抑え付ける。このように、他方の腕部43aにより加熱発泡材8bを抑え付けると、屈曲部47と折曲部24bとの係合によって、取付部41(連結部46)が屋外側へと移動しないため、図8に示すように、他方の腕部43aは、加熱発泡材8bからの反力を受け、上板部44との間の挟角βを小さくする方向に弾性変形する。
【0060】
本例では、一方の腕部42aを弾性変形させる力を利用して、下板部45の上面を下側張出板部22の下面に対して、弾性的に押し付けることができる。また、他方の腕部43aを弾性変形させる力を利用して、上板部44の下面(屈曲部47の下端部)を下側張出板部22の上面に対して、弾性的に押し付けることができる。つまり、取付部41を構成する上板部44及び下板部45により、下側張出板部22を板厚方向(上下方向)に弾性的に挟持することができる。
【0061】
以上のような構成を有する本例では、一方の腕部42aにより、加熱発泡材8aを弾性的に押圧することができるとともに、他方の腕部43aにより、加熱発泡材8bを弾性的に押圧することができる。これにより、1対の腕部42a、43aにより、加熱発泡材8a、8bを抑え付ける力を大きくできるため、加熱発泡材8a、8bが発泡前に脱落することを有効に防止できる。また、一方の腕部42aの屋内側側面と加熱発泡材8aの屋外側側面との間に作用する摩擦力、及び、他方の腕部43aの屋内側側面と加熱発泡材8bの屋外側側面との間に作用する摩擦力をそれぞれ大きくすることができる。したがって、加熱発泡材取付具40aが、面内方向に移動するのをより効果的に抑制できる。
【0062】
さらに、取付部41を構成する上板部44及び下板部45により、下側張出板部22を弾性的に挟持することができるため、加熱発泡材取付具40aが屋外側に移動するのを抑制することができるとともに、加熱発泡材取付具40aが面内方向に移動するのを抑制することもできる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0063】
[実施の形態の第3例]
実施の形態の第3例について、図9及び図10を用いて説明する。
本例では、加熱発泡材取付具40bの形状のみを、実施の形態の第2例の構造からさらに変更している。具体的には、加熱発泡材取付具40bは、下方に配置された一方の腕部42aの先端部に、屋外側に向けて折り返された折り返し部48を備えている。
【0064】
折り返し部48は、平板状に構成されており、一方の腕部42aの下端部から、下方に向かうほど屋外側に向かう方向に伸長している。このため、折り返し部48は、先端側に向かうほど被取付面20から離れる方向に伸長しており、一方の腕部42aとの間の挟角γが鈍角になっている。図示の例では、折り返し部48と一方の腕部42aとの間の挟角γの大きさは、110度程度である。
【0065】
本例では、下枠5を構成する屋外側下枠基板部15を、例えばステンレスなどの金属製の下枠カバー49により覆っており、該下枠カバー49を、折り返し部48の先端部(下端部)によって上方から弾性的に抑え付けている。ただし、本発明を実施する場合に、折り返し部の先端部を、屋外側下枠基板部15の上面に接触させる構成や、下枠カバー49などに接触させない(他の部材との間に隙間を設ける)構成を採用することもできる。
【0066】
以上のような構成を有する本例では、一方の腕部42aの先端部から、屋外側に向けて折り返された折り返し部48の先端部を下枠カバー49の表面に接触させているため、加熱発泡材取付具40bが屋外側及び面内方向に移動するのを防止することができる。また、下枠カバー49が、下枠5に対して移動するのを抑制することもできる。なお、本例では、折り返し部48を、一方の腕部42aにのみ設けている。ただし、本発明を実施する場合には、折り返し部を、他方の腕部43aにのみ設けることもできるし、一方の腕部42aと他方の腕部43aとの両方に設けることもできる。図10中に破線で示したように、折り返し部48を、他方の腕部43aに設ける場合には、該折り返し部48は、先端側に向かうほど被押付面25から離れる方向に伸長し、他方の腕部43aとの間の挟角が鈍角になる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例及び第2例と同じである。
【0067】
[実施の形態の第4例]
実施の形態の第4例について、図11を用いて説明する。
本例では、実施の形態の第3例にかかる加熱発泡材取付具40bとほぼ同じ形状を有する加熱発泡材取付具40cを使用するが、該加熱発泡材取付具40cにより、下方に配置された加熱発泡材8aのみを抑え付ける点が、実施の形態の第3例とは異なる。
【0068】
本例では、下枠保持片16に備えられた係止凹溝11bの内側に、加熱発泡材を備えていない。このため、本例では、取付部41aを構成する上板部44aを屋内側に延長し、上方に配置された他方の腕部43aにより、加熱発泡材を介さずに、被押付面25を直接押圧している。
【0069】
以上のような構成を有する本例では、他方の腕部43aの屋内側側面と被押付面25との間に作用する摩擦力を利用して、加熱発泡材取付具40cが面内方向に移動するのを抑制することができる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例、第2例及び第3例と同じである。
【0070】
[実施の形態の第5例]
実施の形態の第5例について、図12及び図13を用いて説明する。
本例では、加熱発泡材取付具40dの形状を、実施の形態の第3例の構造からさらに変更している。具体的には、加熱発泡材取付具40dは、取付部41bを構成する上板部44bを、平板状に構成している。このため、上板部44bは、下側張出板部22aと係合する屈曲部(係合部)を備えていない。
【0071】
また、下枠保持片16aに備えられた下側張出板部22aを、平板状に構成している。このため、下側張出板部22aは、屋外側端部に、加熱発泡材取付具40dと係合する折曲部を備えていない。
【0072】
以上のような構成を有する本例では、取付部41bを構成する上板部44bと下板部45とにより、下側張出板部22aを上下方向に弾性的に挟持することによってのみ、加熱発泡材取付具40dが、下側張出板部22aに対して屋外側に移動(脱落)するのを抑制する。
【0073】
本例では、下板部45だけでなく、上板部44bについても平板状に構成しており、該上板部44bの下面を下側張出板部22aの上面に対して面接触させることができるため、上板部44bの下面と下側張出板部22aの上面との間に作用する摩擦力を大きく確保できる。したがって、上板部44bから屈曲部(係合部)を省略した場合にも、加熱発泡材取付具40dの屋外側への移動を十分に抑制できる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例、第2例及び第3例と同じである。
【0074】
実施の形態の各例の構造は、矛盾を生じない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。
【0075】
本発明を実施する場合に、加熱発泡材取付具を構成する1対の腕部のそれぞれ形状は、平板状に限定されず、加熱発泡材(又は被押付面若しくは他の部材)を押圧できる限り、各種の形状を採用することができる。また、一方の腕部の先端部に折り返し部を設ける場合には、押し返し部の形状についても、平板状に限定されず、その他の形状を採用することができる。また、他方の腕部により、被押付面を他の部材を介して押圧する場合には、他の部材として、加熱発泡材以外のその他の部材(例えばスペーサーなど)を採用することもできる。また、本発明を実施する場合に、被取付面(又は被押付面)に対して加熱発泡材を粘着剤により貼付することは、必須の要件ではない。
【0076】
また、本発明を実施する場合に、加熱発泡材取付具を構成する取付部に係合部を設ける場合には、上板部に限らず、下板部、又はその他の部分に設けることもできる。また、係合部の形状についても、実施の形態の各例で示したような屈曲形状に限定されず、加熱発泡材取付具の移動(脱落)を防止できる限り、その他の形状を採用することができる。
【0077】
本発明を実施する場合に、被取付部材に備えられた張出板部は、気密片を係止するための保持部を構成するものに限定されない。張出板部は、被取付面に隣接して配置されるとともに、被取付面に対して略直角に張り出した構成を有していれば、その機能、張出寸法、張出方向などは、特に限定されない。また、本発明を実施する場合に、加熱発泡材取付具が取り付けられる被取付部材は、被取付面と被押付面とが、同一平面上に存在する場合に限らず、被取付面と被押付面とが張出板部を挟んで配置されていれば、直交する方向にずれて(オフセットして)配置されていても良く、わずかに傾いて配置されていても良い。
【0078】
実施の形態の各例では、加熱発泡材取付具を、被取付部材である下枠に対して取り付ける構造について説明したが、本発明の加熱発泡材取付具は、下枠に限らず、上枠や竪枠に取り付けることもできるし、框枠体を構成する各框に対して取り付けることもできる。また、本発明は、建具として、ドア装置に限らず、たてすべり出し窓、横すべり出し窓、外開き窓、内開き窓、FIX窓などのプロジェクト窓、引き戸式の窓などの窓装置にも適用することもできる。
【符号の説明】
【0079】
1 ドア装置
2 ドア枠
3 扉
4 上枠
5 下枠
6 竪枠
7 丁番
8a、8b 加熱発泡材
9 上枠基板部
10 上枠保持片
11a、11b、11c 係止凹溝
12a、12b、12c 気密片
13 ホルダ溝
14 水切材
15 屋外側下枠基板部
16、16a 下枠保持片
17 屋内側下枠基板部
18 基部
19 保持部
20 被取付面
21 上側張出板部
22、22a 下側張出板部
23 底板部
24a、24b 折曲部
25 被押付面
26 外側竪枠
27 ねじ
28 内側竪枠
29 収納凹溝
30 竪枠保持片
31 框枠体
32 ガラスパネル
33 上框
34 下框
35 竪框
36a~36c ガラス溝
37 セッティングブロック
38 スペーサーブロック
39a 屋外側シール材
39b 屋内側シール材
40、40a~40d 加熱発泡材取付具
41、41a、41b 取付部
42、42a 腕部
43、43a 腕部
44、44a、44b 上板部
45 下板部
46 連結部
47 屈曲部
48 折り返し部
49 下枠カバー
100 加熱発泡材
101 被取付部材
102 凹溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14