(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】コンクリート管理システム、コンクリート管理方法及びコンクリート管理プログラム
(51)【国際特許分類】
B28C 9/02 20060101AFI20231228BHJP
B28C 7/16 20060101ALI20231228BHJP
G01N 11/00 20060101ALI20231228BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20231228BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20231228BHJP
E04G 21/02 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
B28C9/02
B28C7/16
G01N11/00 E
G01N33/38
G06N20/00 130
E04G21/02 101
(21)【出願番号】P 2020077549
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新村 亮
(72)【発明者】
【氏名】田中 将希
(72)【発明者】
【氏名】谷中 郁哉
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-211247(JP,A)
【文献】特開2021-009055(JP,A)
【文献】特開2020-144099(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110610061(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 7/00-9/04,
G01N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置及び管理者端末に接続された制御部と、
シュート上を流下するコンクリートの撮影画像に基づいてワーカビリティを予測するための予測モデルを記録した学習結果記憶部とを備えたコンクリート管理システムであって、
前記制御部が、
前記撮影装置からシュート上を流下するコンクリートの撮影画像を取得し、
前記撮影画像を前記予測モデルに適用して
、前記撮影画像において、コンクリート投入口に流下したコンクリートの堆積状況に対応する特徴情報に基づいてワーカビリティを予測し、
前記予測したワーカビリティに関する情報を前記管理者端末に出力することを特徴とするコンクリート管理システム。
【請求項2】
撮影装置及び管理者端末に接続された制御部と、
シュート上を流下するコンクリートの撮影画像に基づいてワーカビリティを予測するための予測モデルを記録した学習結果記憶部とを備えたコンクリート管理システムであって、
前記制御部が、
前記撮影装置からシュート上を流下するコンクリートの撮影画像を取得し、
前記撮影画像により、前記シュート上の複数の領域の流速を算出し、前記予測モデルに適用して、前記流速の分布に基づいてワーカビリティを予測し、
前記予測したワーカビリティに関する情報を前記管理者端末に出力することを特徴とするコンクリート管理システム。
【請求項3】
撮影装置及び管理者端末に接続された制御部と、
シュート上を流下するコンクリートの撮影画像に基づいてワーカビリティを予測するための予測モデルを記録した学習結果記憶部とを備えたコンクリート管理システムであって、
前記制御部が、
前記撮影装置からシュート上を流下するコンクリートの撮影画像を取得し、
前記撮影画像により、前記シュート上の流速の時系列変化を取得し、前記予測モデルに適用して、前記時系列変化の周波数分析に基づいてワーカビリティを予測し、
前記予測したワーカビリティに関する情報を前記管理者端末に出力することを特徴とするコンクリート管理システム。
【請求項4】
前記制御部が、前記撮影画像において、流下するコンクリート性状に対応する特徴情報に基づいて、前記ワーカビリティを予測することを特徴とする請求項
2又は3に記載のコンクリート管理システム。
【請求項5】
撮影装置及び管理者端末に接続された制御部と、
シュート上を流下するコンクリートの撮影画像に基づいてワーカビリティを予測するための予測モデルを記録した学習結果記憶部とを備えたコンクリート管理システムを用いて、コンクリートを管理する方法であって、
前記制御部が、
前記撮影装置からシュート上を流下するコンクリートの撮影画像を取得し、
前記撮影画像を前記予測モデルに適用して
、前記撮影画像において、コンクリート投入口に流下したコンクリートの堆積状況に対応する特徴情報に基づいてワーカビリティを予測し、
前記予測したワーカビリティに関する情報を前記管理者端末に出力することを特徴とするコンクリート管理方法。
【請求項6】
撮影装置及び管理者端末に接続された制御部と、
シュート上を流下するコンクリートの撮影画像に基づいてワーカビリティを予測するための予測モデルを記録した学習結果記憶部とを備えたコンクリート管理システムを用いて、コンクリートを管理する方法であって、
前記制御部が、
前記撮影装置からシュート上を流下するコンクリートの撮影画像を取得し、
前記撮影画像により、前記シュート上の複数の領域の流速を算出し、前記予測モデルに適用して、前記流速の分布に基づいてワーカビリティを予測し、
前記予測したワーカビリティに関する情報を前記管理者端末に出力することを特徴とするコンクリート管理方法。
【請求項7】
撮影装置及び管理者端末に接続された制御部と、
シュート上を流下するコンクリートの撮影画像に基づいてワーカビリティを予測するための予測モデルを記録した学習結果記憶部とを備えたコンクリート管理システムを用いて、コンクリートを管理する方法であって、
前記制御部が、
前記撮影装置からシュート上を流下するコンクリートの撮影画像を取得し、
前記撮影画像により、前記シュート上の流速の時系列変化を取得し、前記予測モデルに適用して、前記時系列変化の周波数分析に基づいてワーカビリティを予測し、
前記予測したワーカビリティに関する情報を前記管理者端末に出力することを特徴とするコンクリート管理方法。
【請求項8】
撮影装置及び管理者端末に接続された制御部と、
シュート上を流下するコンクリートの撮影画像に基づいてワーカビリティを予測するための予測モデルを記録した学習結果記憶部とを備えたコンクリート管理システムを用いて、コンクリートを管理するためのプログラムであって、
前記制御部を、
前記撮影装置からシュート上を流下するコンクリートの撮影画像を取得し、
前記撮影画像を前記予測モデルに適用して
、前記撮影画像において、コンクリート投入口に流下したコンクリートの堆積状況に対応する特徴情報に基づいてワーカビリティを予測し、
前記予測したワーカビリティに関する情報を前記管理者端末に出力する手段として機能させることを特徴とするコンクリート管理プログラム。
【請求項9】
撮影装置及び管理者端末に接続された制御部と、
シュート上を流下するコンクリートの撮影画像に基づいてワーカビリティを予測するための予測モデルを記録した学習結果記憶部とを備えたコンクリート管理システムを用いて、コンクリートを管理するためのプログラムであって、
前記制御部を、
前記撮影装置からシュート上を流下するコンクリートの撮影画像を取得し、
前記撮影画像により、前記シュート上の複数の領域の流速を算出し、前記予測モデルに適用して、前記流速の分布に基づいてワーカビリティを予測し、
前記予測したワーカビリティに関する情報を前記管理者端末に出力する手段として機能させることを特徴とするコンクリート管理プログラム。
【請求項10】
撮影装置及び管理者端末に接続された制御部と、
シュート上を流下するコンクリートの撮影画像に基づいてワーカビリティを予測するための予測モデルを記録した学習結果記憶部とを備えたコンクリート管理システムを用いて、コンクリートを管理するためのプログラムであって、
前記制御部を、
前記撮影装置からシュート上を流下するコンクリートの撮影画像を取得し、
前記撮影画像により、前記シュート上の流速の時系列変化を取得し、前記予測モデルに適用して、前記時系列変化の周波数分析に基づいてワーカビリティを予測し、
前記予測したワーカビリティに関する情報を前記管理者端末に出力する手段として機能させることを特徴とするコンクリート管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷卸し時のコンクリートの品質を管理するためのコンクリート管理システム、コンクリート管理方法及びコンクリート管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワーカビリティの低下したフレッシュコンクリート(以下、コンクリートと呼ぶ)を打ち込むことは充てん不良等の初期欠陥の原因となる。このため、アジテータ車により搬送されたコンクリートを現場で使用する場合、コンクリートの品質を評価する必要がある。この品質は、従来、コンクリートの変形および流動性と材料分離に対する抵抗性に関するワーカビリティ(作業性)より評価される。このようなワーカビリティの管理は、荷卸し時の定期的なスランプ試験によって行なわれる。更に、荷卸し時に随時、コンクリートのワーカビリティを目視で確認することとなっている。しかしながら、スランプ試験は抜き取り試験であり、試験間の品質変動は把握できない。また、目視による確認には技術者の高度な経験が必要となる。
【0003】
そこで、現場等におけるコンクリートの流動状態を、画像情報に基づき、評価するための技術も検討されている(例えば、特許文献1参照)。この文献に記載された技術においては、現場等におけるコンクリート試料の流動状態を、撮像位置や撮像画角を含む撮像条件を考慮することなく撮像し、撮像した画像についての画像処理を実行し、輪郭の変化を解析することで、コンクリートを評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、スランプフロー試験におけるコンクリートの流動画像を用いて、現場で利用されるコンクリートのスランプフローを評価している。この場合、コンクリートを評価する環境によって、スランプフロー試験における流動状態と、荷卸しされるコンクリートの状態が異なる場合には、的確な評価が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのコンクリート管理システムは、撮影装置及び管理者端末に接続された制御部と、シュート上を流下するコンクリートの撮影画像に基づいてワーカビリティを予測するための予測モデルを記録した学習結果記憶部とを備える。前記制御部が、前記撮影装置からシュート上を流下するコンクリートの撮影画像を取得し、前記撮影画像を前記予測モデルに適用してワーカビリティを予測し、前記予測したワーカビリティに関する情報を前記管理者端末に出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、現場において、荷卸しされるコンクリートを効率的かつ的確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】本実施形態のコンクリート管理システムの構成を説明する説明図。
【
図5】本実施形態の記憶部に記録されたデータの説明図であって、(a)は第1教師情報と第1予測モデル、(b)は第2教師情報と第2予測モデル、(c)は第3教師情報と第3予測モデル、(d)は第4教師情報と第4予測モデルの説明図。
【
図6】本実施形態の荷卸し時のコンクリートの撮影画像の説明図であって、(a)はスランプ17.5の表面性状、(b)はスランプ12.5の表面性状、(c)はスランプ6.5の表面性状の説明図。
【
図7】本実施形態の荷卸し時のコンクリートの撮影範囲の説明図。
【
図8】本実施形態の荷卸し時のコンクリートの堆積画像の説明図。
【
図9】本実施形態の荷卸し時のコンクリートの堆積状況の説明図であって、(a)はレベル1、(b)はレベル2、(c)はレベル3、(d)はレベル4、(e)はレベル5、(f)はレベル6、(g)はレベル7、(h)はレベル8の説明図。
【
図10】本実施形態の荷卸し時のコンクリートの流速平面分布の説明図であって、(a)はスランプ17.5、(b)はスランプ12、(c)はスランプ8.5の説明図。
【
図11】本実施形態の荷卸し時のコンクリートの流速の計測位置の説明図。
【
図12】本実施形態の荷卸し時のコンクリートの流速の時間変化の説明図。
【
図13】本実施形態の荷卸し時のコンクリートの流速のスペクトル分析結果の説明図。
【
図14】本実施形態の荷卸し時の処理手順の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態を、
図1~
図14に従って説明する。本実施形態では、工事現場で用いるコンクリートのワーカビリティを評価するコンクリート管理システムとして説明する。
【0010】
図1に示すように、工事現場C1において、アジテータ車A1により搬送されたフレッシュコンクリートは、シュートA2からポンプ車P1のホッパーP2に供給される。そして、ポンプ車P1の圧送装置により、打設場所に搬送される。このような工事現場C1で用いられるコンクリートのワーカビリティを評価する。
【0011】
図2に示すように、本実施形態では、シュートA2からホッパーP2に流下(落下)するコンクリートの撮影画像を用いてワーカビリティを評価する。
本実施形態では、
図1に示すように、撮影装置10、支援サーバ20、管理者端末30を用いる。
【0012】
(ハードウェア構成の説明)
図3を用いて、撮影装置10、支援サーバ20、管理者端末30を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0013】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースカードや無線インタフェース等である。
【0014】
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード、カメラ等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
記憶部H14は、撮影装置10、支援サーバ20、管理者端末30の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0015】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、撮影装置10、支援サーバ20、管理者端末30における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0016】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0017】
(システム構成)
次に、
図4を用いて、コンクリート管理システムの各機能を説明する。
撮影装置10は、アジテータ車A1のシュートA2からポンプ車P1のホッパーP2(コンクリート投入口)に流下するコンクリートの荷卸し画像(流下画像)を撮影するコンピュータ端末である。動画は、例えば、「1080P HD」、「30fps」の条件で撮影する。本実施形態では、シュートA2の正面に三脚を立てて、高さは1.8m程度に撮影装置10を固定する。撮影時には日除けは行なわない。そして、撮影装置10は、有線通信や無線通信により、撮影画像を支援サーバ20に送信する。
【0018】
支援サーバ20は、撮影装置10から取得した撮影画像を用いて、コンクリートを評価するコンピュータシステムである。この支援サーバ20は、制御部21、教師情報記憶部22、学習結果記憶部23を備える。
【0019】
制御部21は、後述する処理(画像取得段階、学習段階、予測段階、判定段階等を含む処理)を行なう。このための各処理のためのプログラムを実行することにより、制御部21は、画像取得部211、学習部212、予測部213、判定部214等として機能する。
【0020】
画像取得部211は、工事現場において、撮影装置10からコンクリートの荷卸し時の撮影画像を取得する。本実施形態では、後述する第1予測モデル、第2予測モデルの学習処理や予測処理においては、カラー画像をグレー化及びヒストグラム均一化により画像処理を行なう。
【0021】
学習部212は、コンクリートの荷卸し画像からワーカビリティを予測するモデルを作成する。本実施形態では、後述する第1学習処理~第4学習処理を行なうことにより、第1予測モデル~第4予測モデルを生成する。
【0022】
予測部213は、取得した画像を第1予測モデル~第4予測モデルに適用して、コンクリートのワーカビリティを予測する。本実施形態では、第1予測モデル~第4予測モデルをそれぞれ用いた第1予測処理~第4予測処理を行なうことにより、ワーカビリティを予測する。
判定部214は、予測したワーカビリティに基づいて、必要に応じて管理者端末30にアラームメッセージを出力する。
【0023】
教師情報記憶部22には、ワーカビリティの予測モデルを生成するために用いる教師情報が記録される。本実施形態では、4種類の予測モデルを生成するために、それぞれ第1教師情報~第4教師情報が記録される。後述するように、第1教師情報~第4教師情報は、コンクリートの荷卸し時の撮影画像から得られる情報に対して、ワーカビリティを関連付けた情報である。本実施形態では、ワーカビリティとして、スランプ試験により算出されたスランプを用いる。教師情報の作成には、ポンプ車P1に荷卸ししたコンクリートをアジテータ車A1のホッパーに圧送し、2時間程度、循環させて、コンクリートの流動状況を15分ごとに2分間撮影する。同時にスランプ試験によりスランプを測定する。この場合、コンクリートに直射日光が当たらないようにシートで日除けを行なう。
【0024】
学習結果記憶部23には、コンクリートのワーカビリティの予測モデルが記録される。この予測モデルは、学習処理を行なった場合に記録される。本実施形態では、4種類の予測モデル(第1予測モデル~第4予測モデル)が記録される。
【0025】
図5(a)に示すように、第1教師情報221は、荷卸し時のコンクリートの表面性状に対応する特徴情報に着目した画像に対してワーカビリティを関連付けた情報である。
図6(a)は「スランプ17.5」、
図6(b)は「スランプ12.5」、
図6(c)は「スランプ6.5」の荷卸し画像である。
【0026】
本実施形態では、
図7に示すように、表面性状の評価のためにシュートA2の中央付近の領域a11と、排出口付近の領域a12の2箇所の画像を用いる。画像のサイズは、領域a11では150pixel×150pixel、領域a12では縦300pixel×横500pixelである。スランプの低下に伴い、流動するコンクリートの表面の凹凸が大きくなる。また、ポンプ車P1のホッパーに落下したコンクリートの堆積形状が大きくなる。
【0027】
そして、第1学習処理においては、学習部212は、第1教師情報221を用いて、深層学習のCNN(Convolutional Neural Network)により、第1予測モデル231を生成して、学習結果記憶部23に記録する。
【0028】
第1予測処理においては、予測部213は、コンクリートの荷卸し時の画像の画像処理を行なって、第1予測モデル231を用いて、スランプを予測して出力する。この場合、予測部213は、シュートA2における撮影状況により、予測に用いる画像のトリミングを行なう。例えば、
図7に示す領域a11、a12について、撮影画像のトリミングを行ない、撮影状況が良好なトリミング画像を用いる。そして、予測部213は、トリミング画像を第1予測モデルに入力して、第1スランプ予測値を予測する。
【0029】
図5(b)に示すように、第2教師情報222は、荷卸し時のコンクリートの堆積形状に着目した画像に対してワーカビリティを関連付けた情報である。
図8に示すように、本実施形態では、シュートA2から流下してホッパーP2に堆積したコンクリートの領域a21を切り出して用いる。
【0030】
図9に示すように、堆積形状を8段階のレベルに分類する。
図9(a)、(b)、(c)に示すレベル1~3は、それぞれ、コンクリートが占める領域の割合が小~大で、堆積していない状態を示す。
図9(d)、(e)、(f)、(g)に示すレベル4~7は、それぞれ、コンクリートが占める領域の割合が小、中、大、特大で、堆積している状態を示す。
図9(h)のレベル8は、堆積したコンクリートがボロボロと落下している状態を示す。そして、各レベルには、ワーカビリティ(スランプ)が関連付けられている。
【0031】
そして、第2学習処理においては、学習部212は、第2教師情報222を用いて、深層学習のCNN(Convolutional Neural Network)により、第2予測モデル232を生成して、学習結果記憶部23に記録する。
【0032】
第2予測処理においては、予測部213は、第2予測モデル232を用いて、コンクリートの荷卸し時の堆積画像を入力して、堆積レベルを予測して出力する。この場合、予測部213は、撮影画像から領域a21をトリミングして、第2予測モデルに入力して、堆積レベルを特定する。そして、予測部213は、堆積レベルに応じた第2スランプ予測値を予測する。
【0033】
図5(c)に示すように、第3教師情報223は、荷卸し時のコンクリートの流速平面分布に対してワーカビリティを関連付けた情報である。
図10は、シュートA2における流速平面分布のコンターを模式的に表したものであり、領域SP1は高速領域、領域SP2は中速領域、領域SP3は低速領域である。ここでは、速度そのものではなく、速度分布に注目する。
図10(a)は「スランプ17.5」、(b)は「スランプ12」、(c)は「スランプ8.5」である。
図10(a)に示すように、スランプが大きい場合、上下方向の流速の差は小さいが中央と左右両端で流速差がある。
図10(b)に示すように、スランプが中程度の場合には、上下方向の流速差が大きくなる。
図10(c)に示すように、スランプが更に小さくなると、中央と左右両端との流速差が小さくなる。
【0034】
本実施形態では、
図11に示すように、シュートA2上のコンクリートにおいて、領域a31~領域a39で特徴点の追跡により速度を求める。なお、流速の画像解析には、特徴点の追跡により速度を求める。第3教師情報では、このような流速平面分布の特徴に着目し、中央の流速に対する相対流速と、1秒間の流速の変動の大きさ(変動係数)を説明変数とし、ワーカビリティ(スランプ)を目的変数とする。
【0035】
そして、第3学習処理においては、学習部212は、第3教師情報223を用いて、スランプを目的変数として、1秒間の相対流速の平均値と流速変動の大きさ(変動係数)を説明変数として線形の重回帰式からなる第3予測モデル233を生成して、学習結果記憶部23に記録する。
【0036】
第3予測処理においては、予測部213は、第3予測モデル233を用いて、コンクリートの荷卸し時の流下画像を入力して、スランプを予測して出力する。この場合、予測部213は、撮影画像において、領域a31~領域a39で特徴点の追跡により速度を求める。次に、予測部213は、中央の流速に対する相対流速と、1秒間の流速の変動の大きさ(変動係数)を算出する。そして、予測部213は、相対流速と変動係数とを、重回帰式に入力して第3スランプ予測値を取得することにより、ワーカビリティ(スランプ)を予測する。
【0037】
図5(d)に示すように、第4教師情報224は、荷卸し時のコンクリートの流速変動状況に対してワーカビリティを関連付けた情報である。
図12に示すように、「スランプ14.5」では、流速は大きな周期的変動を有する波形G1を示し、「スランプ4.5」では細かな不規則な変動を有する波形G2を示す。スランプが大きい場合の波形G1は、アジテータ車A1のドラムの回転による周期的な排出に依存すると考えられる。スランプが小さい場合の波形G2は、ドラムの回転の影響が少なくなり、周期的な変動が小さくなる。一方で、シュートA2とコンクリートの摩擦係数が大きくなり、固まり状のコンクリートがシュートA2をスリップするように落下するため、ランダムな変動が生じると考えられる。そこで、
図13に示すように、各波形をフーリエ変換した場合、波形G1は低い周波数範囲に高いピークを有する。
【0038】
そして、第4学習処理においては、学習部212は、第4教師情報224を用いて、流速の経時変化をフーリエ変換した周波数スペクトルから、予め定められた2つの周波数範囲の強度平均値(第1強度平均値、第2強度平均値)を算出し、第1及び第2強度平均値の比(強度比)を算出する。そして、強度比とスランプとを関連付けた第4予測モデルを生成して、学習結果記憶部23に記録する。
第4予測処理においては、予測部213は、流速の経時変化をフーリエ変換した周波数スペクトルから算出した第1及び第2強度平均値の強度比を算出し、第4予測モデルに入力して、第4スランプ予測値を取得することにより、ワーカビリティ(スランプ)を予測する。
図4に示す管理者端末30は、工事現場の管理者が用いるコンピュータ端末である。
【0039】
(コンクリート監視方法)
次に、
図14を用いて、コンクリート監視方法を説明する。
上述したように、事前に、教師情報記憶部22を用いて、第1~第4学習処理を行なうことにより、第1~第4予測モデルを生成し、学習結果記憶部23に記録しておく。
そして、工事現場において、アジテータ車A1のシュートA2からポンプ車P1のホッパーP2までが視野に含まれる位置に撮影装置10を配置する。そして、アジテータ車A1のシュートA2からポンプ車P1のホッパーP2に流下するコンクリートを、撮影装置10を用いて試験的に撮影する。
【0040】
そして、支援サーバ20の制御部21は、スランプ試験結果の取得処理を実行する(ステップS10)。具体的には、アジテータ車A1により搬送されたコンクリートを取得してスランプ試験を行なうことにより、工事現場に搬送されたコンクリートのスランプ(実測スランプ)を測定する。そして、担当者は、管理者端末30を用いて、スランプ試験の実測スランプを支援サーバ20に入力する。この場合、支援サーバ20の制御部21は、実測スランプをメモリに仮記憶する。
【0041】
次に、支援サーバ20の制御部21は、事前撮影画像の取得処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部21の画像取得部211は、撮影装置10を用いて、シュートA2からホッパーP2に流下するコンクリートの撮影画像を取得する。
【0042】
次に、支援サーバ20の制御部21は、予測モデルの調整処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部21の予測部213は、取得した撮影画像を、第1予測モデル~第4予測モデルに適用して、第1スランプ予測値~第4スランプ予測値を予測する。
【0043】
次に、判定部214は、実測スランプと第1スランプ予測値~第4スランプ予測値とを比較する。そして、判定部214は、実測スランプに対して、予め定められた許容範囲内に含まれるスランプを算出した予測モデルを選択する。
【0044】
そして、工事に用いるコンクリートを、アジテータ車A1からポンプ車P1に荷卸しする。
この場合、支援サーバ20の制御部21は、荷卸し画像の取得処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部21の画像取得部211は、撮影装置10を用いて、シュートA2からホッパーP2に流下するコンクリートの撮影画像を取得する。
【0045】
次に、支援サーバ20の制御部21は、ワーカビリティの予測処理を実行する(ステップS14)。具体的には、制御部21の予測部213は、取得した撮影画像を、第1予測モデル~第4予測モデルに適用して、第1スランプ予測値~第4スランプ予測値を予測する。
【0046】
次に、支援サーバ20の制御部21は、注意喚起が必要かどうかについての判定処理を実行する(ステップS15)。具体的には、制御部21の判定部214は、第1スランプ予測値~第4スランプ予測値を用いて、ワーカビリティの総合評価を行なう。ここでは、ステップS12において選択された予測モデルにより算出されたスランプ予測値を用いる。例えば、選択された予測モデルにより算出されたスランプの少なくとも一つが基準範囲を逸脱している場合には、注意喚起が必要と判定する。
【0047】
注意喚起は不要と判定した場合(ステップS15において「NO」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、荷卸し画像の取得処理(ステップS13)に戻る。
一方、注意喚起が必要と判定した場合(ステップS15において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、アラーム処理を実行する(ステップS16)。具体的には、制御部21の判定部214は、管理者端末30に対して、基準範囲外を示したアラームメッセージを送信する。
【0048】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、コンクリートの荷卸し時の撮影画像に基づいて、ワーカビリティを予測する。注意喚起が必要と判定した場合(ステップS15において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、アラーム処理を実行する(ステップS16)。これにより、コンクリートの荷卸し時に、アジテータ車A1のシュートA2を流れるコンクリートを評価することができる。
【0049】
(2)本実施形態では、第1学習処理においては、第1教師情報221を用いて、CNNにより、第1予測モデル231を生成する。これにより、コンクリートの表面性状からワーカビリティを予測することができる。この場合、撮影画像(カラー画像)のグレー化及びヒストグラム均一化を行なう。これにより、コンクリートの表面状態を顕在化させることができる。
【0050】
(3)本実施形態では、第2学習処理においては、第2教師情報222を用いて、CNNにより、第2予測モデル232を生成する。これにより、コンクリートの堆積状況からワーカビリティを予測することができる。この場合、撮影画像(カラー画像)のグレー化及びヒストグラム均一化を行なう。これにより、コンクリートの堆積状態を顕在化させることができる。
【0051】
(4)本実施形態では、第3学習処理においては、第3教師情報223を用いて、スランプを目的変数として、1秒間の相対流速の平均値と流速変動の大きさ(変動係数)とを説明変数として線形の重回帰式からなる第3予測モデル233を生成する。これにより、荷卸し時のコンクリートの速度分布からワーカビリティを予測することができる。
【0052】
(5)本実施形態では、第4学習処理においては、第4教師情報224を用いて、流速の経時変化をフーリエ変換した周波数スペクトルからスランプを算出する第4予測モデル234を生成する。これにより、荷卸し時のコンクリートの速度変動からワーカビリティを予測することができる。
【0053】
(6)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、予測モデルの調整処理を実行する(ステップS12)。これにより、コンクリートを用いる工事現場の状況に応じて、予測に適した予測モデルを利用することができる。
【0054】
(7)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、ワーカビリティの予測処理(ステップS14)、注意喚起が必要かどうかについての判定処理(ステップS15)を実行する。これにより、コンクリートの荷卸し時に、問題があるコンクリートについて注意喚起を行なうことができる。
【0055】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、コンクリートの品質を評価するためのワーカビリティとしてスランプを用いる。ワーカビリティはスランプに限定されるものではなく、材料分離をワーカビリティとして用いてもよい。また、流動性の指標としてスランプフローを用いてもよい。この場合には、各試験により算出したワーカビリティの評価値を関連付けた撮影画像を教師情報として用いた学習処理により予測モデルを生成する。
【0056】
・上記実施形態では、アジテータ車A1のシュートA2からポンプ車P1のホッパーP2に流下するコンクリートの荷卸し画像(流下画像)を撮影する。アジテータ車A1のシュートA2からのコンクリートの荷卸し画像であれば、荷卸し先はポンプ車P1のホッパーP2に限定されるものではない。
【0057】
・上記実施形態では、第1学習処理~第4学習処理により、第1予測モデル~第4予測モデルを生成し、第1予測処理~第4予測処理を行なう。コンクリートのワーカビリティを予測する方法は、4種類に限定されるものではない。
【0058】
・上記実施形態では、第1予測モデル、第2予測モデルの学習処理や予測処理においては、コンクリートの流下状況の撮影画像については、カラー画像をグレー化及びヒストグラム均一化により加工した画像を用いる。画像処理方法は、グレー化及びヒストグラム均一化に限定されるものではなく、コンクリートの表面状態を強調できる画像処理であればよい。
【0059】
・上記実施形態では、予測モデルの調整処理(ステップS12)において、荷卸しされるコンクリートの管理に用いる予測モデルを選択する。ここで、利用する予測モデルの優先順位を決定してもよい。この場合には、判定部214が、実測スランプに対して、第1スランプ~第4スランプにおいて近い順番に並べて優先順位を高くする。そして、判定部214は、優先順位に応じて、重み付け値を設定する。この場合、実測スランプに近い順番で、高い重み付け値を付与する。
【0060】
注意喚起が必要かどうかについての判定処理(ステップS15)において、第1スランプ~第4スランプに対して重み付け値を乗算することにより、ワーカビリティの総合評価値を算出する。次に、判定部214は、総合評価値と基準範囲とを比較する。そして、総合評価値が基準範囲を逸脱している場合に、アラーム処理を実行する(ステップS16)。
【0061】
・上記実施形態では、第1予測処理において、表面性状の評価のためにシュートA2の中央付近の領域a11と、排出口付近の領域a12の2箇所の画像を用いる。ここで、荷卸し時の状況に応じて、利用する予測モデルを特定するようにしてもよい。例えば、荷卸し時の時間帯に応じて、領域a11と領域a12とを使い分けてもよい。朝夕の時間帯と昼間の時間帯とでは、コンクリートの表面性状の凸部から生じる陰の生じ方が異なる。そこで、時間帯に応じて、凹凸を強調できる領域を選択するようにしてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、注意喚起が必要かどうかについての判定処理を実行する(ステップS15)。ここでは、ステップS12において選択された予測モデルにより算出されたスランプ予測値の少なくとも一つが基準範囲を逸脱している場合には、注意喚起が必要と判定する。注意喚起の条件は、これに限定されるものではなく。第1スランプ予測値~第4スランプ予測値のいずれかが基準値を満足しない場合に、注意喚起が必要と判定するようにしてもよい。
また、支援サーバ20の制御部21は、時間帯に応じて、判定方法を変更してもよい。この場合には、時間帯に応じて、判定に用いるスランプ予測値を予め定めた判定方法テーブルを支援サーバ20に記憶させておき、現在時刻に応じて、一又は複数のスランプ予測値を用いる。これにより、例えば、日射状況に応じて、ワーカビリティを予測しやすい判定方法を用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
A1…アジテータ車、A2…シュート、P1…ポンプ車、P2…ホッパー、10…撮影装置、20…支援サーバ、21…制御部、211…学習部、212…画像取得部、213…予測部、214…判定部、22…教師情報記憶部、23…学習結果記憶部