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  • 特許-導電性ペースト組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】導電性ペースト組成物
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20231228BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20231228BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20231228BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20231228BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20231228BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231228BHJP
   C08L 61/00 20060101ALI20231228BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231228BHJP
   C08L 29/14 20060101ALI20231228BHJP
   C08K 3/105 20180101ALI20231228BHJP
【FI】
H01B1/22 A
C08K5/17
C08K5/10
C08K5/06
C08K5/05
C08L101/00
C08L61/00
C08L63/00
C08L29/14
C08K3/105
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020079455
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2020205245
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2019109432
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】397059571
【氏名又は名称】京都エレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 豊治
(72)【発明者】
【氏名】留河 悟
(72)【発明者】
【氏名】新井 貴光
(72)【発明者】
【氏名】元久 裕太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 公佳
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-099561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
C08K 5/17
C08K 5/10
C08K 5/06
C08K 5/05
C08L 101/00
C08L 61/00
C08L 63/00
C08L 29/14
C08K 3/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)導電性粉末および(B)樹脂成分を含有し、
前記(A)導電性粉末として、少なくとも銀を用いた銀系粉末が用いられ、
前記(B)樹脂成分として、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の少なくとも一方が用いられ、
さらに、下記一般式(1)または(2)で示されるエステル構造を分子中に有し、分子量が150~2000の範囲内である(C)エステル系化合物
【化1】

(ただし、上記一般式(1)または(2)のエステル構造におけるX1 およびX2 は、いずれか一方がClまたはBrであり、他方がCl、Br、HまたはOHである。)、
または、下記一般式(3)で示されるエーテル構造、もしくは、下記一般式(4)で示されるアミン構造を分子中に有し、分子量が150~30000の範囲内である(D)エーテル/アミン系化合物
【化2】

(ただし、上記一般式(3)のエーテル構造または上記一般式(4)のアミン構造におけるYは、下記一般式(5A)または(5B)に示すアルコール構造のいずれかであり、
【化3】

上記一般式(4)のアミン構造におけるZは、上記一般式(5A)または(5B)に示すアルコール構造のいずれか、もしくは水素原子(H)であり、上記一般式(5A)または(5B)におけるX3 はそれぞれ独立してClまたはBrである。)
を含有していることを特徴とする
導電性ペースト組成物。
【請求項2】
前記(A)導電性粉末および(B)樹脂成分の合計量を100質量部としたときに、前記(C)エステル系化合物もしくはその塩、または、前記(D)エーテル/アミン系化合物の含有量が0.01質量部以上5質量部以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項3】
前記(C)エステル系化合物もしくはその塩、または、前記(D)エーテル/アミン系化合物の含有量が0.1質量部以上2.5質量部以下であることを特徴とする、
請求項2に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項4】
前記銀系粉末が、銀粉末および銀コート粉末の少なくとも一方であることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項5】
前記(C)エステル系化合物には、当該(C)エステル系化合物の前記エステル構造の一部が、エステルではなく塩基によりカルボン酸が中和された塩構造を有するものが含まれることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項6】
前記(B)樹脂成分が、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂から選択される少なくともいずれか1種であることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂型の導電性ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィルム、基板、電子部品等の基材に電極または電気配線(配線)等の導電層を形成する方法の一つとして、導電性ペースト組成物を用いる技術が広く用いられている。このような導電性ペースト組成物としては様々な種類が知られているが、一つの分類手法として、樹脂型導電性ペーストと焼成型導電性ペーストとに大別することが可能である。
【0003】
焼成型導電性ペーストは、セラミック等のような高温焼成可能な基板(基材)の表面に塗工され、一般的には500℃以上の高温で焼成され、これにより、当該基板の表面に焼成物としての導電層が形成される。焼成型導電性ペーストは、このように高温で焼成処理することにより焼成物としての導電層を形成するため、得られる導電層では、その体積抵抗率を相対的に低いものとすることができる。
【0004】
これに対して、樹脂型導電性ペーストは、基材に塗布または印刷し、これを加熱して乾燥硬化させることにより、硬化物としての導電層が形成される。樹脂型導電性ペーストは、焼成型導電性ペーストと比較して相対的に低温(一般的には250℃以下)で加熱処理するため、得られる導電層(硬化物)においては、焼成型導電性ペーストに比較して体積抵抗率が相対的に高くなることが知られている。
【0005】
導電性粉末(導電性粒子)として銀粉または銀を用いた粉末(まとめて銀系粉末と称する)を用いた樹脂型導電性ペーストでは、体積抵抗率を低くすることを目的とする技術がいくつか知られている。例えば、特許文献1では、導電性粉末として銀粉を用いるとともに脂肪酸銀塩を併用しており、銀粉の粒径、形状、タップ密度等の条件を調整した太陽電池電極用ペーストが開示されている。また、特許文献2では、導電性ペースト組成物に使用可能な銀系粉末として銀被覆銅合金粉末が開示されており、この銀被覆銅合金粉末では、体積抵抗率を低くするために、銅合金粉末が所定範囲のニッケルまたは亜鉛(もしくはその両方)を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-038846
【文献】特開2014-005531
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の通り、特許文献1および2では、銀系粉末を用いた樹脂型導電性ペーストにおいて体積抵抗率を低下させるためには、銀系粉末そのものについて諸条件を検討している。しかしながら、銀系粉末(導電性粉末)以外の成分が体積抵抗率の低下に寄与することに関しては、これら先行技術文献には特に開示がない。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、導電性粉末として銀系粉末を用いており、得られる硬化物の体積抵抗率を良好に低下させることが可能な、樹脂型の導電性ペースト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る導電性ペースト組成物は、前記の課題を解決するために、(A)導電性粉末および(B)樹脂成分を含有し、前記(A)導電性粉末として、少なくとも銀を用いた銀系粉末が用いられ、前記(B)樹脂成分として、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の少なくとも一方が用いられ、さらに、下記一般式(1)または(2)で示されるエステル構造を分子中に有し、分子量が150~2000の範囲内である(C)エステル系化合物
【0010】
【化1】
【0011】
(ただし、上記一般式(1)または(2)のエステル構造におけるX1 およびX2 は、いずれか一方がClまたはBrであり、他方がCl、Br、HまたはOHである。)、または、下記一般式(3)で示されるエーテル構造、もしくは、下記一般式(4)で示されるアミン構造を分子中に有し、分子量が150~30000の範囲内である(D)エーテル/アミン系化合物
【0012】
【化2】
【0013】
(ただし、上記一般式(3)のエーテル構造または上記一般式(4)のアミン構造におけるYは、下記一般式(5A)または(5B)に示すアルコール構造のいずれかであり、
【0014】
【化3】
【0015】
上記一般式(4)のアミン構造におけるZは、上記一般式(5A)または(5B)に示すアルコール構造のいずれか、もしくは水素原子(H)であり、上記一般式(5A)または(5B)におけるX3 はそれぞれ独立してClまたはBrである。)構成である。
【0016】
前記構成によれば、(A)導電性粉末が銀系粉末であり、(B)樹脂成分を加熱して硬化させる樹脂型導電性ペーストにおいて、一般式(1)または(2)のエステル構造を有する(C)エステル系化合物または(D)エーテル/アミン系化合物を含有させることにより、銀系粉末の条件を調整しなくても、当該導電性ペースト組成物の硬化物の体積抵抗率を低下させることができる。これにより、導電性ペースト組成物を用いて形成される電極または電気配線等といった導電層の体積抵抗率をより低いものにすることができる。また、例えば、銀系粉末として銀粉末ではなく銀コート粉末を用いても、硬化物の体積抵抗率を良好に低下させることが可能になるので、銀の使用量を低減しても良好な性質の導電層を製造することが可能になる。
【0017】
前記構成の導電性ペースト組成物においては、前記(A)導電性粉末および(B)樹脂成分の合計量を100質量部としたときに、前記(C)エステル系化合物もしくはその塩、または、前記(D)エーテル/アミン系化合物の含有量が0.01質量部以上5質量部以下である構成であってもよい。
【0018】
また、前記構成の導電性ペースト組成物においては、前記(C)エステル系化合物もしくはその塩、または、前記(D)エーテル/アミン系化合物の含有量が0.1質量部以上2.5質量部以下である構成であってもよい。
【0019】
また、前記構成の導電性ペースト組成物においては、前記銀系粉末が、銀粉末および銀コート粉末の少なくとも一方である構成であってもよい。
【0020】
また、前記構成の導電性ペースト組成物においては、前記(C)エステル系化合物には、当該(C)エステル系化合物の前記エステル構造の一部が、エステルではなく塩基によりカルボン酸が中和された塩構造を有するものが含まれる構成であってもよい。
【0021】
また、前記構成の導電性ペースト組成物においては、前記(B)樹脂成分が、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂から選択される少なくともいずれか1種である構成であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、以上の構成により、導電性粉末として銀系粉末を用いており、得られる硬化物の体積抵抗率を良好に低下させることが可能な、樹脂型の導電性ペースト組成物を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例に係る導電性ペースト組成物を硬化させて得られる導体パターン(硬化物)の体積抵抗率を評価するための導体パターンの形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示に係る導電性ペースト組成物は、(A)導電性粉末および(B)樹脂成分を含有し、加熱により少なくとも(B)樹脂成分を硬化させて導電性を有する硬化物を形成するために用いられるもの(樹脂型導電性ペースト)である。(A)導電性粉末としては、少なくとも銀を用いた銀系粉末が用いられ、(B)樹脂成分としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の少なくとも一方が用いられ、さらに、下記一般式(1)または(2)で示されるエステル構造を分子中に有し、分子量が150~2000の範囲内である(C)エステル系化合物、または、下記一般式(3)で示されるエーテル構造、もしくは、下記一般式(4)で示されるアミン構造を分子中に有し、分子量が150~30000の範囲内である(D)エーテル/アミン系化合物を含有している。
【0025】
【化4】
【0026】
ただし、上記一般式(1)または(2)のエステル構造におけるX1 およびX2 は、いずれか一方がClまたはBrであり、他方がCl、Br、HまたはOHである。
【0027】
【化5】
【0028】
ただし、上記一般式(3)のエーテル構造または上記一般式(4)のアミン構造におけるYは、下記一般式(5A)または(5B)に示すアルコール構造のいずれかである。
【0029】
【化6】
【0030】
また、上記一般式(4)のアミン構造におけるZは、上記一般式(5A)または(5B)に示すアルコール構造のいずれか、もしくは水素原子(H)であり、上記一般式(5A)または(5B)におけるX3 はそれぞれ独立してClまたはBrである。
【0031】
本開示に係る導電性ペースト組成物においては、(C)エステル系化合物、または、(D)エーテル/アミン系化合物の含有量は特に限定されないが、代表的には、(A)導電性粉末および(B)樹脂成分の合計量を100質量部としたときに、(C)エステル系化合物または(D)エーテル/アミン系化合物の含有量が0.01質量部以上5質量部以下であればよい。また、(C)エステル系化合物には、当該(C)エステル系化合物のエステル構造の一部が、エステルではなく塩基によりカルボン酸が中和された塩構造を有するものが含まれる。以下、本開示に係る導電性ペースト組成物に関して具体的に説明する。
【0032】
[(A)導電性粉末]
本開示に係る導電性ペースト組成物が含有する(A)導電性粉末としては、少なくとも銀を含有する粉末が用いられる。説明の便宜上、銀を含有する粉末を適宜「銀系粉末」と称する。具体的な銀系粉末としては、実質的に銀から構成される銀粉末、銀以外の材質で構成される粉末(本体粉末)の表面に銀をコートした銀コート粉末、銀を含有する合金(銀合金)から構成される銀合金粉末等が挙げられる。これらの中でも、特に銀粉末および銀コート粉末が好ましく用いられる。
【0033】
銀粉末は、銀のみで構成される粉末であるが、公知の不可避的不純物を含有してよいことはいうまでもない。また、銀合金粉末であっても、公知の各種規格において「銀製」と認められる程度の純度を有するものは、本開示において銀粉末として取り扱うことができる。
【0034】
銀コート粉末の具体的な構成は特に限定されず、銀以外の材質で構成される本体粉末の材質が金属であってもよいし、金属以外の材質であってもよい。金属以外の材質としては、公知の樹脂材料または公知のセラミック材料、ガラス等を挙げることができる。本体粉末が樹脂材料である場合には、本開示に係る導電性ペースト組成物を硬化させる際の加熱温度であっても粉末形状(粒子形状)が保持できる程度の耐熱性を有するものであればよい。
【0035】
本体粉末が金属である銀コート粉末、すなわち、銀コート金属粉末としては、例えば、銀コート銅粉末、銀コート銅合金粉末、銀コートニッケル粉末、銀コートアルミニウム粉末等を挙げることができるが特に限定されない。本体粉末が樹脂である銀コート粉末、すなわち、銀コート樹脂粉末としては、例えば、銀コートポリイミド樹脂粉末等を挙げることができるが特に限定されない。本体粉末がセラミック材料である銀コート粉末、すなわち、銀コートセラミック粉末としては、例えば、銀コートアルミナ粉末等を挙げることができるが特に限定されない。
【0036】
銀系粉末が銀コート粉末である場合に、本体粉末の表面にコートされる銀の量、すなわち、銀コート量は特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定することができる。本開示に係る導電性ペースト組成物の用途(硬化物の用途)に応じて求められる体積抵抗率等に応じて、銀コート量を増減することができる。あるいは、本体粉末の材質(導電性)に応じて、銀コート量を増減することができる。なお、銀コート量は、銀コート粉末の全質量におけるコートされている銀の質量の比(質量比、例えば百分率(質量%)等)で表すことができる。
【0037】
銀系粉末の具体的な形状は特に限定されず、球状(粒状)であってもよいしフレーク状(薄片状または鱗片状)であってもよい。なお、フレーク状粉末とは、部分的に凹凸があり変形が見られても、全体として見た場合に、平板または厚みの薄い直方体に近い形状の粉末であればよい。球状粉末とは、部分的に凹凸があり変形が見られても、全体として見た場合に、直方体よりは立方体に近い立体形状の粉末であればよい。
【0038】
銀系粉末の具体的な物性も特に限定されず、その平均粒径、比表面積、タップ密度等については公知の範囲内であればよい。例えば、銀系粉末の形状がフレーク状であれば、その平均粒径D50は例えば2~20μmの範囲内であればよく、BET比表面積は例えば0.1~2.0m2 /gの範囲内であればよく、タップ密度は例えば3~10g/cm3 の範囲内であればよく、アスペクト比は例えば5~15の範囲内であればよい。また、銀系粉末の形状が球状であれば、その平均粒径D50は0.1~10μmの範囲内であればよく、BET比表面積は0.5~2.0m2 /gの範囲内であればよく、タップ密度は例えば1.5~10g/cm3 であればよく、凝集度D50/DSEMが例えば2~15の範囲内であればよい。
【0039】
なお、銀系粉末の平均粒径D50の測定(評価)方法は特に限定されないが、本開示においては、後述する実施例のように、マイクロトラック粒度分布測定装置を用いたレーザ回折法により測定(評価)すればよい。また、BET比表面積の評価方法も特に限定されないが、公知の比表面積計を用いて窒素吸着によるBET1点法で測定して評価すればよい。また、タップ密度の評価方法も特に限定されないが、公知のタップ密度測定装置を用いて所定条件でタッピングし、タッピング後の試料容積に対する試料質量から算出して評価すればよい。これら測定方法または評価方法における各種条件は、樹脂型導電性ペーストの分野で公知の条件(例えば、本願出願人による樹脂型導電性ペースト(熱硬化型等)の先行特許出願の公開公報に記載される諸条件)を用いることができる。
【0040】
銀系粉末が銀粉末(もしくは銀合金粉末)または銀コート粉末のいずれであっても、あるいは、銀系粉末の形状がフレーク状または球状のいずれであっても、その製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0041】
銀粉末(もしくは銀合金粉末)がフレーク状粉末の場合、例えば、公知の方法で製造された球状粉末を元粉として、当該元粉に公知の機械的処理を施すことによりフレーク状粉末を製造することができる。元粉の粒径や凝集度等の物性は、例えば導電性ペースト組成物の使用目的(硬化物である電極または電気配線等の種類、あるいはこれら電極または電気配線等を備える電子部品または電子装置等の種類等)に応じて適宜選択することができる。
【0042】
また、銀粉末(もしくは銀合金粉末)が球状粉末の場合も、その製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、湿式還元法により製造した粉末、電解法やアトマイズ法等、公知の他の方法により製造した球状粉末等を挙げることができる。銀コート粉末の場合には、前記のようにして製造されたフレーク状または球状の本体粉末の表面に、公知の方法で銀をコートすればよい。
【0043】
本開示に係る導電性ペースト組成物においては、(A)導電性粉末として、少なくとも銀系粉末を用いればよいが、銀系粉末以外の導電性粉末を併用してもよい。このような他の導電性粉末としては、例えば、金粉末、パラジウム粉末、ニッケル粉末、アルミニウム粉末、鉛粉末、カーボン粉末等を挙げることができるが特に限定されない。銀系粉末以外の他の導電性粉末を併用する場合、全ての(A)導電性粉末のうち銀系粉末が少なくとも10質量%を超えて含まれていればよく、50質量%以上含まれてもよいし、90質量%以上含まれてもよいし、95質量%以上含まれてもよい。他の導電性粉末を併用する際の配合量は、得られる硬化物に求められる諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0044】
[(B)樹脂成分]
本開示に係る導電性ペースト組成物が含有する(B)樹脂成分としては、加熱により硬化が可能な公知の樹脂を挙げることができる。具体的には、例えば、公知の熱硬化性樹脂、公知の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0045】
熱硬化性樹脂としては、代表的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、シアネート樹脂等が挙げられるが特に限定されない。これら熱硬化性樹脂は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0046】
また、(B)樹脂成分としてエポキシ樹脂を用いる場合には、ブロック化ポリイソシアネート化合物を併用してもよい。したがって、本開示においてはブロック化ポリイソシアネート化合物も便宜上(B)樹脂成分と見なしてもよい。これら熱硬化性樹脂の中でも、一つの好ましい例として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、並びに、エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネートを挙げることができる。
【0047】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ環またはエポキシ基を有する多価エポキシ樹脂であれば特に限定されず、一般的なものを用いることができる。具体的には、例えば、グリシジル型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンエポキシド等の脂環式エポキシ樹脂、ブタジエンダイマージエポキシド等の脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。グリシジル型のエポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンまたは2-メチルエピクロルヒドリンと、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック系化合物;ビスフェノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、レゾルシン等の多価フェノール系化合物;エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール系化合物;エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン等のポリアミノ化合物;または、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸等の多価カルボキシル化合物;等と、を反応させて得られるものが挙げられる。これらエポキシ樹脂は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0048】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、代表的には、100~1000の範囲内を挙げることができ、100~400の範囲内であってもよい。エポキシ当量が100未満であると、得られる導電性ペースト組成物で形成される硬化物の耐熱性または耐久性等に影響が生じるおそれがある。一方、エポキシ当量が1000を超えると、得られる導電性ペースト組成物のチクソ性が低下する傾向にある。
【0049】
フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを反応させた公知のものを好適に用いることができる。代表的には、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、トリスフェニルメタン型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、シクロペンタジエン型フェノール樹脂、アリールアルキレン型フェノール樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、特に、ノボラック型フェノール樹脂、または、レゾール型フェノール樹脂が一般的である。
【0050】
ノボラック型フェノール樹脂は、公知のフェノール類と公知のアルデヒド類とを酸性触媒により反応させて得られるものであればよく特に限定されない。
【0051】
ノボラック型フェノール樹脂に用いられるフェノール類は特に限定されないが、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、p-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-アミルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-クミルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール等を挙げることができる。これらフェノール類は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0052】
ノボラック型フェノール樹脂に用いられるアルデヒド類は特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルキルアルデヒド;ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド;等を挙げることができる。これらアルデヒド類は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0053】
ノボラック型フェノール樹脂の製造に際して、フェノール類とアルデヒド類とを反応させる酸性触媒も特に限定されず、公知の有機スルホン酸、無機酸等を好適に用いることができる。また、フェノール類とアルデヒド類とを反応させる際のモル比は特に限定されず、公知のモル比を選択することができる。
【0054】
レゾール型フェノール樹脂は、公知のフェノール類と公知のアルデヒド類とをアルカリ金属またはアミン類または二価金属塩等の触媒により反応させて得られるものであればよく特に限定されない。
【0055】
レゾール型フェノール樹脂に用いられるフェノール類は特に限定されないが、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール類;2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等のキシレノール類;o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール類;イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のブチルフェノール類;p-tert-アミルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-クミルフェノール等のアルキルフェノール類;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール類;p-フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体;1-ナフトール、2-ナフトール等の1価のフェノール類;レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類;等を挙げることができる。これらフェノール類は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0056】
レゾール型フェノール樹脂に用いられるアルデヒド類は特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等を挙げることができる。これらアルデヒド類は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0057】
レゾール型フェノール樹脂の製造に際して、フェノール類とアルデヒド類とを反応させる各種触媒も特に限定されない。具体的には、例えば、周期表第1族または第2族の金属元素の水酸化物、酸化物、炭酸塩、公知の低分子有機アミン類、二価の酢酸金属塩等を挙げることができる。また、フェノール類とアルデヒド類とを反応させる際のモル比は特に限定されず、公知のモル比を選択することができる。
【0058】
エポキシ樹脂に併用されるブロック化ポリイソシアネート化合物としては、公知のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化したものであればよく特に限定されない。
【0059】
代表的なポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリジンジイソソアネート、キシリレンジイソソアネート、ナフタリンジイソソアネート等の芳香族イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソソアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート化合物;等を挙げることができる。これらポリイソシアネート化合物を用いたブロック化ポリイソシアネート化合物は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0060】
また、ポリオイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネートとポリオールとを公知の方法により反応させて合成した末端イソシアネート基含有化合物を用いることができる。例えば、後述する実施例では、ブロック化ポリイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネートとポリプロピレンポリオールの反応化合物を用いている。
【0061】
ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて末端イソシアネート基含有のブロック化ポリイソシアネートを合成する際に用いられるポリオールについても特に限定されず、公知のポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類等を好適に用いることができる。また、ポリイソシアネート化合物のブロック化剤についても特に限定されず、公知のイミダゾール類、フェノール類、オキシム類等の公知のものを好適に用いることができる(実施例ではメチルエチルケトンオキシムを用いている)。
【0062】
エポキシ樹脂とブロック化ポリイソシアネート化合物とを併用する場合に、その重量混合比も特に限定されず、公知の混合比を適宜選択することができる。代表的には、エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネート化合物の合計量を100質量部としたときに、ポキシ樹脂の質量部:ブロック化ポリイソシアネート化合物の質量部=30:70~90:10の範囲内を挙げることができる。なお、ここでいうエポキシ樹脂の質量部およびブロック化ポリイソシアネート化合物の質量部は、これら樹脂または化合物を1種類のみ用いる場合だけでなく、複数種類用いる場合を含む。
【0063】
熱可塑性樹脂としては、代表的には、ブチラール樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられるが特に限定されない。これら熱可塑性樹脂は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。これら熱可塑性樹脂の中でも、一つの好ましい例として、ブチラール樹脂を挙げることができる。
【0064】
ブチラール樹脂は、モノマー単位の構造としてブチラール基、水酸基、および酢酸基を含有するポリマーであればよく、一般的には、ポリビニルアルコールおよびブチルアルデヒドを反応させることにより合成される。また、ブチラール樹脂は、公知の手法で修飾されたり変性されたりしたものであってもよいし、モノマー単位の構造としてブチラール基、水酸基、および酢酸基以外の構造を含んでもよい。
【0065】
本開示に係る導電性ペースト組成物においては、(B)樹脂成分として、前述した少なくとも1種の熱硬化性樹脂、もしくは、前述した少なくとも1種の熱可塑性樹脂が用いられれば良いが、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を併用してもよい。すなわち、少なくとも1種の熱硬化性樹脂と少なくとも1種の熱可塑性樹脂を組み合わせた混合物(組成物、あるいはポリマーアロイ)を用いることもできる。
【0066】
[熱硬化性樹脂の硬化剤]
前述した(B)樹脂成分が熱硬化性樹脂である場合には、当該熱硬化性樹脂を硬化させるために公知の硬化剤を用いることができる。硬化剤の種類は特に限定されず、熱硬化性樹脂の種類に応じて公知のものを適宜用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂として前述したエポキシ樹脂、または、エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネート化合物が用いられる場合には、具体的な硬化剤としては、例えば、イミダゾール類、フッ化ホウ素を含むルイス酸およびそれらの錯体または塩、アミンアダクト、3級アミン、ジシアンジアミド、フェノール樹脂、酸無水物等を挙げることができる。
【0067】
これらの硬化剤のうちイミダゾール類としては、具体的には、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-アミノエチル-2-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール等を挙げることができる。
【0068】
フッ化ホウ素を含むルイス酸およびそれらの錯体または塩としては、具体的には、例えば、三フッ化ホウ素エチルエーテル、三フッ化ホウ素フェノール、三フッ化ホウ素ピペリジン、酢酸三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素トリエタノールアミン、三フッ化ホウ素モノエタノールアミン、三フッ化ホウ素モノエチルアミン等を挙げることができる。
【0069】
アミンアダクトとしては、具体的には、例えば、味の素ファインテクノ株式会社製アミキュアシリーズ(製品名)、富士化成工業株式会社製フジキュアシリーズ(製品名)等を挙げることができる。
【0070】
3級アミンとしては、具体的には、例えば、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノエチルアミン、メチルジデエシルアミン、メチルジオレイルアミン、トリアリルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、3-(ジブチルアミノ)プロピルアミン、トリ-n-オクチルアミン、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン等を挙げることができる。
【0071】
硬化剤としてのフェノール樹脂としては、具体的には、例えば、三菱化学株式会社製JER170(製品名)、JER171N(製品名)、明和化成株式会社製MEH-8000H(製品名)、MEH-8005(製品名)等を挙げることができる。
【0072】
酸無水物としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水cis-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、無水トリメット酸、無水ピロメリット酸、あるいは、新日本理化株式会社製リカシッドMH-700(製品名)、リカシッドHNA-100(製品名)等を挙げることができる。
【0073】
これら硬化剤は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、これら硬化剤の添加量は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂)100質量部に対して硬化剤3~30質量部の範囲内を挙げることができる(後述する実施例では、同じ意味で硬化剤の添加量の単位をphr(per hundred resin)と記載している)。熱硬化性樹脂の種類にもよるが、硬化剤の添加量が3質量部未満であれば熱硬化性樹脂の硬化が不十分となり、硬化物(導電層)において良好な導電性が得られないおそれがある。一方、硬化剤の添加量が30質量部を超えると、導電性ペースト組成物のペースト粘度が高くなるおそれがある。
【0074】
[(C)エステル系化合物]
本開示に係る導電性ペースト組成物が含有する(C)エステル系化合物としては、下記一般式(1)または(2)で示されるエステル構造を分子中に有し、分子量が150~2000の範囲内である化合物で8あればよい。
【0075】
【化7】
【0076】
なお、上記一般式(1)または(2)のエステル構造におけるX1 およびX2 は、いずれか一方がClまたはBrであり、他方がCl、Br、HまたはOHである。すなわち、上記エステル構造中には、少なくとも1つの塩素原子(Cl)または臭素原子(Br)が含まれていればよい。
【0077】
本開示で用いられる(C)エステル系化合物の具体的な製造(合成)方法は特に限定されないが、カルボン酸(カルボキシル基、カルボキシ基)を有する化合物(原料カルボン酸)に対して、エステル構造を導入するための化合物(エステル化原料)を公知の方法で反応させることにより製造することができる。
【0078】
このとき、エステル化原料のみを用いれば「(C)エステル系化合物」が得られるが、エステル化原料とともに中和剤を併用することで、カルボン酸の一部がエステル化するとともに一部が中和剤で中和されて塩となる。したがって、中和剤を併用することで塩構造を有する(C)エステル系化合物を得ることができる。この(C)エステル系化合物は、当該(C)エステル系化合物のエステル構造の一部が、エステルではなく塩基によりカルボン酸が中和された塩構造を有するものということができる。
【0079】
原料カルボン酸は、構造中にカルボン酸を有する化合物であれば特に限定されないが、代表的には、例えば、ブタン酸(酪酸)、イソ酪酸、吉草酸(ペンタン酸)、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ヘキサヒドロフタル酸(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)等の飽和脂肪族モノカルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸およびその無水物;クロトン酸、オレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;安息香酸、フタル酸またはその無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等の芳香環系カルボン酸;リンゴ酸、ヒドロキシ酪酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、没食子酸等のヒドロキシ酸;エチレンジアミン4酢酸;スチレン-マレイン酸共重合物等のカルボン酸を含む重合体;等を挙げることができる。これら原料カルボン酸は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0080】
エステル化原料は、一般式(1)または(2)から明らかなように、炭素数3の1価または2価のアルコール(すなわちプロパノールまたはピロパンジオール)において、ヒドロキシル基(ヒドロキシ基、水酸基)が結合する炭素原子を除く2つの炭素原子の少なくともいずれかに結合する1つの水素原子が塩素および臭素原子の少なくともいずれかに置換されたものであればよい。
【0081】
具体的には、例えば、3-クロロ-1-プロパノール、3-ブロモ-1-プロパノール、2,3-ジクロロ-1-プロパノール、2,3-ジブロモ-1-プロパノール、2-クロロ-3-ブロモ-1-プロパノール、2-ブロモ-3-クロロ-1-プロパノール、1-クロロ-2-プロパノール、1-ブロモ-2-プロパノール、1,3-ジクロロ-2-プロパノール、1,3-ジブロモ-2-プロパノール、1-クロロ-3-ブロモ-2-プロパノール、3-クロロ-1,2-プロパンジオール、3-ブロモ-1,2-プロパンジオール等を挙げることができる。これらハロゲン化アルコール化合物は、1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0082】
原料カルボン酸に対するエステル化原料の仕込み量は、原料カルボン酸が有するカルボキシル基(カルボキシ基)のモル数に対して、エステル化原料のヒドロキシル基(ヒドロキシ基、水酸基)のモル数を合わせればよい。例えば、原料カルボン酸がモノカルボン酸であり、エステル化原料がモノオールであれば、原料カルボン酸1モルに対してエステル化原料を1モル仕込めばよい。あるいは、原料カルボン酸がジカルボン酸であり、エステル化原料がモノオールであれば、原料カルボン酸1モルに対してエステル化原料を2モル仕込めばよい。あるいは、原料カルボン酸がジカルボン酸であり、エステル化原料がジオールであれば、原料カルボン酸1モルに対してエステル化原料を1モル仕込めばよい。
【0083】
また、エステル化原料としては、上記ハロゲン化アルコール化合物以外のアルコール類を併用してもよい。例えば、後述する実施例では、オクタノール、オクチルジグリコール、グリシドール等を併用している(略号C09~C11の(C)エステル系化合物)。上記ハロゲン化アルコール化合物に対する他のアルコール類の併用量は特に限定されない。
【0084】
ここで、(C)エステル系化合物が「塩構造」を有する場合には、後述する実施例において略号C13の化合物として例示するように、原料カルボン酸とエステル化原料とを反応させるときに中和剤(塩基)を用いればよい。エステル化原料と中和剤とを併用することで、原料カルボン酸の一部がエステル化するとともに一部が中和剤で中和されて塩となる。また、このとき、カルボン酸とエステル化したエステル化原料由来の構造において、ヒドロキシル基の一部が残存する(一般式(1)または(2)のエステル構造においてX1 およびX2 のうち他方がOHである場合)。
【0085】
エステル化原料と併用される中和剤(塩基)の具体的な種類は特に限定されないが、例えば、トリエタノールアミン塩、エチルアミン塩、アンモニウム塩等の各種アミン塩;ナトリウム、カリウム、カルシウム、銀、銅等の各種金属塩;等を挙げることができる。また、併用される中和剤の使用量(仕込み量)も特に限定されず、(C)エステル系化合物に含まれる具体的な塩構造に応じて適宜設定することができる。例えば、後述する実施例では、略号C13の(C)エステル系化合物では、ジカルボン酸である無水コハク酸1モルに対して、エステル化原料であるジオール(3-クロロ-1,2-プロパンジオール)1モルと中和剤(トリエタノールアミン塩)1モルとを仕込んでいる。
【0086】
(C)エステル系化合物の分子量は、前記の通り、150~2000の範囲内であればよいが、150~1500の範囲内でもよいし、150~1000の範囲内でもよい。一般式(1)または(2)のエステル構造を有すること考慮すると、(C)エステル系化合物の分子量が150未満は小さすぎると判断することができる。分子量が2000を超えると、後述する実施例からも明らかなように、本開示に係る導電性ペースト組成物の硬化物の体積抵抗率を低下させる効果が十分に得られない可能性がある。なお、(C)エステル系化合物の種類にもよるが、分子量の上限が1500以下または1000以下であれば、体積抵抗値を低下させる効果を相対的に高くできる場合がある。
【0087】
[(D)エーテル/アミン系化合物]
本開示に係る導電性ペースト組成物が含有する(D)エーテル/アミン系化合物は、下記一般式(3)で示されるエーテル構造を分子中に有し、その分子量が150~30000の範囲内であるエーテル系化合物であるか、もしくは、下記一般式(4)で示されるアミン構造を分子中に有し、分子量が150~30000の範囲内であるアミン系化合物であればよい。
【0088】
【化8】
【0089】
なお、上記一般式(3)のエーテル構造または上記一般式(4)のアミン構造におけるYは、下記一般式(5A)または(5B)に示すアルコール構造のいずれかであればよい。一般式(5A)のアルコール構造は、1-クロロ-2-プロパノール構造もしくは1-ブロモ-2-プロパノール構造であって、3位の炭素(メチレン基)が一般式(3)のエーテル構造または一般式(4)のアミン構造に結合しているということができる。また、一般式(5B)のアルコール構造は、3-クロロ-1-プロパノール構造もしくは3-ブロモ-1-プロパノール構造であって、2位の炭素(メチン基)が一般式(3)のエーテル構造または一般式(4)のアミン構造に結合しているということができる。
【0090】
【化9】
【0091】
また、上記一般式(4)のアミン構造におけるZは、上記一般式(5A)または(5B)に示すアルコール構造のいずれか、もしくは水素原子(H)であればよい。さらに、上記一般式(5A)または(5B)におけるX3 はそれぞれ独立してClまたはBrであればよい。
【0092】
本開示で用いられる(D)エーテル/アミン系化合物の具体的な製造(合成)方法は特に限定されないが、第一の原料化合物である、水酸基またはアミノ基を含有する化合物と、第二の原料化合物である、末端に置換基を有するアルキレンオキシド化合物と、を公知の方法で反応させることにより製造することができる。なお、説明の便宜上、(D)エーテル/アミン系化合物の第一の原料化合物を「原料化合物d1」と称し、(D)エーテル/アミン系化合物の第二の原料化合物を「原料化合物d2」と称する。
【0093】
原料化合物d1は、構造中に水酸基またはアミノ基を有する化合物であれば特に限定されないが、代表的には、例えば、エチレングリコール(1,2-エタンジオール)、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、1,10-デカンジオール等の2価アルコール;4-tert-ブチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のフェノール類;1,6-ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン)、m-キシリレンジアミン、パラフェニレンジアミン等のジアミン類;アニリン、4,4’-メチレンジアニリン等のアニリン類;ノボラック樹脂;フェノール樹脂;等を上げることができる。
【0094】
原料化合物d2は、アルキレンオキシド構造を有し、アルキル基の炭素に結合する水素原子が他の官能基に置換された構造の化合物を挙げることができる。本実施の形態では、例えば、後述する実施例(表7参照)に示すように、プロピレンオキシド構造を有し、3位のメチル基の水素原子(3位の炭素原子に結合する水素原子)が塩素(Cl)または臭素(Br)もしくは他の元素または官能基に置換された構造の化合物を用いている。
【0095】
ここで、本開示で用いられる(D)エーテル/アミン系化合物は、前記の通り、一般式(5A)または一般式(5B)のアルコール構造を有しており、一般式(5A)または(5B)におけるX3 はそれぞれ独立してClまたはBrである。そのため、原料化合物d2としては、少なくとも塩素または臭素を含有する化合物が用いられ、さらに原料化合物d2としては、塩素または臭素を含有する化合物と他の化合物とが併用されてもよい。
【0096】
原料化合物d2が、前記のプロピレンオキシド構造を有する化合物としては、例えば、エピクロロヒドリンまたはエピブロモヒドリンを挙げることができる。エピクロロヒドリンは、プロピレンオキシドの3位の炭素原子に結合する1つの水素原子(H)が塩素原子(Cl)に置換された化合物であり、エピブロモヒドリンは、プロピレンオキシドの3位の炭素原子に結合する1つの水素原子(H)が臭素原子(Br)に置換された化合物である。
【0097】
なお、後述する比較例3~6では、原料化合物d2としてグリシドールを用いているが、グリシドールは、プロピレンオキシドの3位の炭素原子に結合する1つの水素原子が水酸基に置換された化合物であるということができる。グリシドール単独を原料化合物d2として原料化合物d1と反応させた場合、得られる化合物におけるアルコール構造のX3 は水素原子となる(X3 がClまたはBrにならない)ため、本開示で用いられる(D)エーテル/アミン系化合物に該当しない。
【0098】
説明の便宜上、原料化合物d1のうち構造中に水酸基を有する化合物を「水酸基含有化合物」と称し、原料化合物d1のうち構造中にアミノ基を有する化合物を「アミノ基含有化合物」と称してもよい。また、原料化合物d2が、前記のようなプロピレンオキシドの3位の炭素原子に結合する水素原子が置換された化合物であれば、このような化合物を「置換プロピレンオキシド化合物」と称してもよい。なお、原料化合物d2は、前述した置換プロピレンオキシド化合物のみに限定されないことは言うまでもない。
【0099】
(D)エーテル/アミン系化合物の分子量は、前記の通り、150~30000の範囲内であればよいが、150~20000の範囲内でもよいし、150~15000の範囲内でもよい。一般式(3)のエーテル構造または一般式(4)のアミン構造を有するとともに、これらエーテル構造またはアミン構造が、一般式(5A)または(5B)に示すアルコール構造を有すること考慮すると、(D)エーテル/アミン系化合物の分子量が150未満は小さすぎると判断することができる。
【0100】
(D)エーテル/アミン系化合物の分子量が30000を超えると、後述する実施例からも明らかなように、本開示に係る導電性ペースト組成物の硬化物の体積抵抗率を低下させる効果が十分に得られない可能性がある。なお、(D)エーテル/アミン系化合物の種類にもよるが、分子量の上限が20000以下または15000以下であれば、体積抵抗値を低下させる効果を相対的に高くできる場合がある。
【0101】
[導電性ペースト組成物の製造方法およびその利用]
本開示に係る導電性ペースト組成物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を好適に用いることができる。代表的な一例としては、前述した(A)~(C)または(A),(B),(D)の各成分、並びに、必要に応じて硬化剤または他の成分を所定の配合割合(重量基準)で配合し、公知の混練装置を用いてペースト化すればよい。混練装置としては、例えば、3本ロールミル等を挙げることができる。
【0102】
本開示に係る導電性ペースト組成物における(A)~(C)または(A),(B),(D)の各成分の配合量(含有量)は特に限定されないが、(A)導電性粉末および(B)樹脂成分の合計量を100質量部としたときに、(A)導電性粉末の配合量が70質量部以上99質量部以下であればよく、80質量部以上98質量部以下であればよい。
【0103】
(A)導電性粉末の配合量が70質量部未満であれば、硬化した導電性ペースト組成物(硬化物)中において(A)導電性粉末同士の接触密度が小さくなり、(A)導電性粉末同士の接触不良により導電性が不充分となって体積抵抗率の上昇につながるおそれがある。一方、(A)導電性粉末の含有量が99質量部より多くなると、(B)樹脂成分の量が少なくなり(A)導電性粉末を均一に分散できなくなるおそれがある。
【0104】
また、(C)エステル系化合物または(D)エーテル/アミン系化合物の配合量(添加量、含有量)は、(A)導電性粉末および(B)樹脂成分の合計量を基準にして設定することができる。前記の通り、(A)導電性粉末および(B)樹脂成分の合計量を100質量部としたときに、(C)エステル系化合物または(D)エーテル/アミン系化合物の配合量は、0.01質量部以上5質量部以下であればよく、0.1質量部以上2.5質量部以下であってもよい。
【0105】
導電性ペースト組成物の組成等によっては(C)エステル系化合物または(D)エーテル/アミン系化合物の配合量が0.01質量部未満でも体積抵抗率を低下させる効果が得られる可能性はあるが、後述する実施例に示す結果から、(C)エステル系化合物または(D)エーテル/アミン系化合物の配合量の下限は0.01質量部であれば好ましい。一方、配合量が5質量部を超えた場合、導電性ペースト組成物の組成等にもよるが、配合量に見合った効果が得られない可能性があるとともに、(C)エステル系化合物または(D)エーテル/アミン系化合物の配合量が多くなり過ぎて、導電性ペースト組成物の物性に何らかの影響を及ぼす可能性が懸念される。
【0106】
なお、本開示に係る導電性ペースト組成物においては、必要に応じて、前述した各成分((A)導電性粉末、(B)樹脂成分、(C)エステル系化合物または(D)エーテル/アミン系化合物、必要に応じて硬化剤)以外に、導電性ペースト組成物の分野で公知の溶剤、並びに、各種添加剤を含有してもよい。当該添加剤としては特に限定されないが、具体的には、例えば、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、消泡剤、粘度調整剤等を挙げることができる。これら添加剤は本発明の作用効果を妨げない範囲において添加することができる。
【0107】
溶剤は、本開示に係る導電性ペースト組成物の粘度または流動性等の物性を調整するために添加される。本開示に係る導電性ペースト組成物の物性は特に限定されないが、その粘度については、電極または電気配線等のパターンを形成する際の便宜、特にスクリーン印刷の効率性から、例えば75~100Pa・sの範囲内を挙げることができる。導電性ペースト組成物の粘度がこの範囲内であれば、スクリーン印刷によるパターン形成を良好に実施することができる。
【0108】
溶剤の具体的な種類は特に限定されないが、例えば、ヘキサン等の飽和炭化水素類;トルエン等の芳香族系炭化水素類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート等のグリコールエーテル(セロソルブ)類;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ブチルジグリコール(ブチルカルビトール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)等のグリコールエーテル類;ブチルジグリコールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のグリコールエーテル類の酢酸エステル;ジアセトンアルコール、ターピネオール、ベンジルアルコール等のアルコール類;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類;DBE、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートなどのエステル類;等を挙げることができる。これら溶剤は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0109】
溶剤の配合量も特に限定されず、前述したように、導電性ペースト組成物の粘度または流動性等を好適な範囲内に調整できる程度に添加することができる。なお、導電性ペースト組成物全体に対して溶剤の含有量が40質量%を超えると、他の成分の種類または導電性ペースト組成物の組成にもよるが、印刷に好適な流動性を得ることができず印刷性が低下する場合がある。
【0110】
本開示に係る導電性ペースト組成物により基材上に所定のパターンを形成する方法は特に限定されず、公知の種々の形成方法を好適に用いることができる。代表的には、後述する実施例に示すように、スクリーン印刷法が挙げられるが、他にも、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、ディスペンサー法、ディップ法等の印刷法を適用することが可能である。
【0111】
本開示に係る導電性ペースト組成物を硬化させる方法も特に限定されず、(B)樹脂成分の種類等の諸条件に応じて公知の加熱方法を好適に用いることができる。(B)樹脂成分として熱硬化性樹脂を用いる場合には、当該熱硬化性樹脂が硬化する温度となるように公知の加熱方法を公知の条件で適用すればよい。(B)樹脂成分として熱可塑性樹脂を用いる場合には、所定のパターンに形成された導電性ペースト組成物を乾燥硬化させることができる温度となるように公知の加熱方法を公知の条件で適用すればよい。
【0112】
本開示において、導電性ペースト組成物の硬化物の体積抵抗率を測定(評価)する方法は特に限定されないが、後述する実施例に示すように、基材の表面上に所定のパターンで導電性ペースト組成物の硬化物(導電層)を形成し、この硬化物の膜厚および電気抵抗を公知の測定機器で測定し、膜厚に基づくアスペクト比と電気抵抗とに基づいて、当該硬化物の体積抵抗率(μΩ・cm)を算出して評価することができる。
【0113】
本開示に係る導電性ペースト組成物は、加熱により硬化することにより導電性の硬化物を形成する用途に広く好適に用いることができる。代表的には、基材上にパターン化された電極または電気配線を形成する用途を挙げることができる。具体的には、例えば、太陽電池セルの集電電極;チップ型電子部品の外部電極;RFID(Radio Frequency IDentification)、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、またはエレクトロルミネセンス等に用いられる部品の電極または電気配線;等の用途に好適に用いることができる。
【0114】
このように、本開示に係る導電性ペースト組成物は、(A)導電性粉末および(B)樹脂成分を含有する「樹脂型」(加熱により硬化するタイプ)であり、(A)導電性粉末として、少なくとも銀を用いた銀系粉末が用いられ、(B)樹脂成分として、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の少なくとも一方が用いられ、さらに、前記の一般式(1)または(2)で示されるエステル構造を分子中に有し、分子量が150~2000の範囲内である(C)エステル系化合物を含有している構成である。
【0115】
このような構成によれば、(A)導電性粉末が銀系粉末であり、(B)樹脂成分を加熱して硬化させる樹脂型導電性ペーストにおいて、一般式(1)または(2)のエステル構造を有する(C)エステル系化合物、または、一般式(3)で示されるエーテル構造、もしくは、一般式(4)で示されるアミン構造を有する(D)エーテル/アミン系化合物を含有させることにより、銀系粉末の条件を調整しなくても、当該導電性ペースト組成物の硬化物の体積抵抗率を低下させることができる。これにより、導電性ペースト組成物を用いて形成される電極または電気配線等といった導電層の体積抵抗率をより低いものにすることができる。また、例えば、銀系粉末として銀粉末ではなく銀コート粉末を用いても、硬化物の体積抵抗率を良好に低下させることが可能になるので、銀の使用量を低減しても良好な性質の導電層を製造することが可能になる。
【0116】
なお、本開示に係る導電性ペースト組成物は、前記の通り、前述した(A)導電性粉末、(B)樹脂成分、(C)エステル系化合物または(D)エーテル/アミン系化合物(必要に応じて硬化剤)から成る構成(組成)であればよいが、ここでいう(A)~(C)成分から成る構成、または、(A),(B)および(D)成分から成る構成とは、(A)~(C)成分および必要に応じての硬化剤のみで構成される、もしくは、(A),(B)および(D)成分および必要に応じて硬化剤のみで構成される、という意味に限定されず、もちろん本開示の作用効果に直接的に影響しない範囲で、前述した公知の溶剤または公知の添加剤を添加してもよいことは言うまでもない。
【0117】
また、(A)成分、(B)成分、(C)成分、または(D)成分に分類される物質または化合物であっても、本開示の作用効果等に応じて、その物質または化合物を導電性ペースト組成物に含有させないように(配合または添加を排除)することができる。さらには、本開示においては、その作用効果等を妨げない限り、(C)成分および(D)成分を併用することもできる。つまり、本開示に係る導電性ペースト組成物は、(A),(B),(C)および(D)成分を含有する構成であってもよい。
【実施例
【0118】
本発明について、実施例、比較例および参考例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例、比較例および参考例における物性等の測定・評価は次に示すようにして実施した。
【0119】
(測定・評価方法)
[導電性粉末の平均粒径]
導電性粉末である銀系粉末の平均粒径D50は、レーザ回折法により評価した。銀系粉末の試料0.3gを50mlビーカーに秤量し、イソプロピルアルコール30mlを加えた後に、超音波洗浄器(アズワン株式会社製、製品名USM-1)により5分間処理することで分散させた。この分散液を平均粒径D50測定用の試料として用い、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、製品名マイクロトラック粒度分布測定装置9320-HRA X-100)により、試料に分散する銀系粉末の平均粒径D50を測定して評価した。
【0120】
[体積抵抗率の評価]
基材であるアルミナ基板の表面に、実施例、比較例または参考例の導電性ペースト組成物を用いて、図1に示す導体パターン11をスクリーン印刷した。なお、導体パターン11は、図1に示すように、両端に位置する矩形状の端子11aおよび端子11bと、これら端子11a,11bを接続するつづら折り状の配線部分11cとを有している。導体パターン11が形成されたアルミナ基板を180℃の熱風乾燥機中で60分間加熱することにより、導体パターン11(導電性ペースト組成物)を硬化させた。これにより、体積抵抗率の評価用サンプルを作製した。
【0121】
各実施例、各比較例または各参考例の評価用サンプルについて、硬化後の導体パターン11(硬化物)について、その膜厚を表面粗さ計(株式会社東京精密製、製品名サーフコム480A)で測定し、その電気抵抗をデジタルマルチメータ(株式会社アドバンテスト製、製品名R6551)で測定した。測定された膜厚および電気抵抗と、導体パターン11のアスペクト比とに基づいて、各実施例、各比較例または各参考例の導電性ペースト組成物における硬化物の体積抵抗率(μΩ・cm)を算出して評価した。
【0122】
(導電性ペースト組成物の基本組成)
本実施例、比較例または参考例における導電性ペースト組成物では、(A)導電性粉末として、表1に示す4種類の銀系粉末を用いた。なお、これら銀系粉末の平均粒径、比表面積(BET比表面積)、およびタップ密度は前記の通り測定して評価した。
【0123】
【表1】
【0124】
また、本実施例、比較例または参考例における導電性ペースト組成物では、(B)樹脂成分として、表2に示す4種類の樹脂およびブロック化ポリイソシアネートを用いるとともに、熱硬化性樹脂の硬化剤として表2に示す2種類の化合物を用いた。また、溶剤としては、表2に示すブチルジグリコール(略号S1)を用いた。
【0125】
【表2】
【0126】
((C)エステル系化合物)
さらに、本実施例、比較例または参考例における導電性ペースト組成物では、(C)エステル系化合物として、表3に示す25種類の化合物を用いた。これら25種類の化合物は、表3に示すように、それぞれ原料カルボン酸およびエステル化原料(1種類または2種類)、もしくは、原料カルボン酸およびエステル化原料並びに中和剤(略号C13の化合物のみ)を用いて合成した。
【0127】
原料カルボン酸のカルボキシル基1モルに対して、エステル化原料のヒドロキシル基が表3に示す仕込みモル数となるようにこれら原料化合物を仕込むとともに、触媒としての硫酸を原料化合物に対して0.1質量%となるように仕込み(ただし、中和剤を用いた略号C13の化合物では、カルボキシル基2モルに対して、ヒドロキシル基1モルを反応後、中和剤1モルで中和して塩とした。)、100~150℃の温度範囲内で5時間反応させることにより、略号C01~C025の化合物をそれぞれ合成した。
【0128】
なお、エステル化の具体的な方法は特に限定されず、例えば、ボルハルト・ショアー現代有機化学に記載されている公知の方法等を用いることができる。また、略号C13の化合物は、原料カルボン酸のカルボキシル基の一部がエステル化原料によりエステル化されているとともに、カルボキシル基の一部が中和剤で中和されて塩となっているので、「塩構造」を有する(C)エステル系化合物に該当する。
【0129】
また、略号C24の化合物は、エステル化原料が1,2-プロパンジオールのみであるため、塩素(Cl)または臭素(Br)を含まない。したがって、略号C24の化合物は、本開示に係る導電性ペースト組成物で用いられる(C)エステル系化合物に該当しない「比較エステル系化合物」である。
【0130】
【表3】
【0131】
本実施例、比較例または参考例における導電性ペースト組成物は、表4に示す4種類の基本組成となるように調製(製造)した。
【0132】
具体的には、表4に示すように、(A)導電性粉末90質量部、(B)樹脂成分10質量部、および必要に応じて硬化剤0.5質量部を配合するとともに、(C)エステル系化合物を表5または表6に示す配合量で配合し、3本ロールミルで混練した。このとき、(A)導電性粉末(銀系粉末)の種類、並びに、(B)樹脂成分および硬化剤の種類、これらの混合比は、表4に示すように、組成1~組成4でそれぞれ異なるものとした。
【0133】
その後、溶剤としてブチルジグリコール(略号S1)を加えて粘度を100Pa・s(1rpm)に調整した。これにより、各実施例または各比較例の導電性ペースト組成物を調製(製造)した。なお、各参考例の導電性ペースト組成物は、組成1~組成4に対して(C)エステル系化合物を配合しない組成とした。
【0134】
【表4】
【0135】
(参考例1)
表5に示すように、組成1の基本組成のみを有し、(C)エステル系化合物を含有しない、参考例1の導電性ペースト組成物を調製した。この参考例1の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表5に示す。
【0136】
(実施例1)
表5に示すように、組成1の基本組成に対して、(C)エステル系化合物として略号C01の化合物を1質量部配合して、実施例1の導電性ペースト組成物を調製した。この実施例1の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表5に示す。
【0137】
(実施例2~23)
表5に示すように、組成1の基本組成に対して、(C)エステル系化合物として略号C02~C23の化合物(略号C13の化合物のみ塩構造を有する)をそれぞれ1質量部配合して、実施例2~23の導電性ペースト組成物を調製した。これら実施例2~23の導電性ペースト組成物をそれぞれ用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表5に示す。
【0138】
(比較例1)
表5に示すように、組成1の基本組成に対して、比較エステル系化合物である略号C24の化合物を1質量部配合して、比較例1の導電性ペースト組成物を調製した。この比較例1の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表5に示す。
【0139】
(実施例24)
表5に示すように、組成1の基本組成に対して、(C)エステル系化合物として略号C25の化合物を1質量部配合して、実施例24の導電性ペースト組成物を調製した。略号C25の化合物は、原料カルボン酸がスチレン-マレイン酸共重合物であるため、その重量平均分子量が約1000~1500である。この実施例24の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表5に示す。
【0140】
【表5】
【0141】
(参考例2)
表6に示すように、組成2の基本組成のみを有し、(C)エステル系化合物を含有しない、参考例2の導電性ペースト組成物を調製した。この参考例2の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表6に示す。
【0142】
(実施例25~28)
表6に示すように、組成2の基本組成に対して、(C)エステル系化合物として略号C05の化合物を0.05~5質量部の範囲内で配合して、実施例25~28の導電性ペースト組成物を調製した。これら実施例25~28の導電性ペースト組成物をそれぞれ用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表6に示す。
【0143】
(実施例29~32)
表6に示すように、組成2の基本組成に対して、(C)エステル系化合物として略号C15の化合物を0.01~2.5質量部の範囲内で配合して、実施例29~32の導電性ペースト組成物を調製した。これら実施例29~32の導電性ペースト組成物をそれぞれ用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表6に示す。
【0144】
(参考例3)
表6に示すように、組成3の基本組成のみを有し、(C)エステル系化合物を含有しない、参考例3の導電性ペースト組成物を調製した。この参考例3の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表6に示す。
【0145】
(実施例33~37)
表6に示すように、組成3の基本組成に対して、(C)エステル系化合物として略号C08,C15,C17,C19,C21の各化合物をそれぞれ0.5質量部配合して、実施例33~37の導電性ペースト組成物を調製した。これら実施例33~37の導電性ペースト組成物をそれぞれ用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表6に示す。
【0146】
(比較例2)
表6に示すように、組成3の基本組成に対して、比較エステル系化合物である略号C24の化合物を0.5質量部配合して、比較例2の導電性ペースト組成物を調製した。この比較例2の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表6に示す。
【0147】
(参考例4)
表6に示すように、組成4の基本組成のみを有し、(C)エステル系化合物を含有しない、参考例4の導電性ペースト組成物を調製した。この参考例4の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表6に示す。
【0148】
(実施例38~45)
表6に示すように、組成4の基本組成に対して、(C)エステル系化合物として略号C09~C15,C25の各化合物(略号C13の化合物のみ塩構造を有する)をそれぞれ1質量部配合して、実施例38~45の導電性ペースト組成物を調製した。これら実施例38~45の導電性ペースト組成物をそれぞれ用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表6に示す。
【0149】
【表6】
【0150】
(実施例、比較例および参考例の対比)
実施例1~45と参考例1~4との対比から明らかなように、(C)エステル系化合物を含有する各実施例の導電性ペースト組成物では、(C)エステル系化合物を含有しない各参考例の導電性ペースト組成物と比較して、得られる導体パターン11(導電層)の体積抵抗率が良好に低下していることがわかる。
【0151】
また、実施例1~24と比較例1と参考例1との対比、並びに、実施例33~37と比較例2と参考例3との対比から明らかなように、比較エステル系化合物を含有する比較例1または2の導電性ペースト組成物では、得られる導体パターン11の体積抵抗率は、体積的効率は参考例1または3の導電性ペースト組成物と変わらない。それゆえ、単に炭素数3のエステル構造を有する化合物ではなく、炭素数3のエステル構造に塩素(Cl)または臭素(Br)が含まれる(C)エステル系化合物であれば、体積抵抗率の低下に寄与できることがわかる。
【0152】
また、実施例13と実施例14との対比、あるいは、実施例42と実施例43との対比から明らかなように、(C)エステル系化合物が「塩構造」を含んでいるか(略号C13の化合物)否か(略号C14の化合物)によらず、(C)エステル系化合物は体積抵抗率の低下に寄与することがわかる。
【0153】
また、参考例1,2と参考例3との比較から明らかなように、(A)導電性粉末として、銀粉だけではなく銀コート銅粉を併用したときには、導体パターン11の体積抵抗率は相対的に高くなるものの、実施例1~32と実施例33~37との比較から明らかなように、(C)エステル系化合物として用いられる化合物の種類または配合量(添加量)を調整することで、銀コート銅粉を併用した場合であっても銀粉のみの場合と同程度に低い体積抵抗率を実現可能であることが期待できる。
【0154】
同様に、参考例1~3と参考例4との比較から明らかなように、(A)導電性粉末として、銀粉等の代わりに銀コート樹脂粉を用いたときには、導体パターン11の体積抵抗率はかなり高くなるものの、実施例38~44の結果から明らかなように、(C)エステル系化合物を用いることで、体積抵抗率を大きく低下可能であることがわかる。
【0155】
また、実施例1~23と参考例1と実施例24との対比、並びに、実施例38~44と参考例4と実施例45との対比から明らかなように、(C)エステル系化合物の分子量が1000~1500程度であっても、体積抵抗率を低下させることが可能である。ただし、実施例24および実施例45の結果によれば、体積抵抗率の低下の程度は、より低分子の化合物に比べて相対的に小さいため、この点を考慮すると、(C)エステル系化合物の分子量の上限は2000程度であることが好ましいことがわかる。それゆえ、(C)エステル系化合物の分子量としては、150~2000の範囲内が好ましいことがわかる。
【0156】
((D)エーテル/アミン系化合物)
本実施例、比較例または参考例における導電性ペースト組成物では、(D)エーテル/アミン系化合物として、表7に示す20種類の化合物を用いた。これら20種類の化合物は、表7に示すように、それぞれ原料化合物d1として、水酸基含有化合物またはアミノ基眼球化合物を用いるとともに、原料化合物d2として、置換プロピレンオキシド化合物を用いて合成した。
【0157】
原料化合物d1の水酸基またはアミノ基1モルに対して、原料化合物d2を仕込むとともに、原料化応物d1が水酸基含有化合物であれば、触媒として硫酸を当該水酸基含有化合物に対して0.1質量%となるように仕込み、原料化合物d1がアミノ基含有化合物であれば無触媒で、60~120℃の温度範囲内で3~5時間反応させることにより、略号D01~D20の化合物をそれぞれ合成した。
【0158】
なお、原料化合物d2が置換プロピレンオキシド化合物であるときに、当該置換プロピレンオキシド化合物の開環反応の具体的な方法は特に限定されず、例えば、ボルハルト・ショアー現代有機化学に記載されている公知の方法を用いることができる。また、開環反応には、必要に応じて非プロトン性溶媒を使用してもよい。
【0159】
また、略号D19またはD20の化合物は、原料化合物d2がグリシドールのみであるため、塩素(Cl)または臭素(Br)を含まない。したがって、略号D19またはD20の化合物は、本開示に係る導電性ペースト組成物で用いられる(D)エーテル/アミン系化合物に該当しない「比較エーテル/アミン系化合物」である。
【0160】
【表7】
【0161】
また、本実施例、比較例または参考例における導電性ペースト組成物は、前述したように、表4に示す4種類の基本組成となるように調製(製造)した。なお、具体的な調製(製造)方法は前述した通りであるため、その説明は省略する。
【0162】
(参考例5)
表8に示すように、組成1の基本組成のみを有し、(D)エーテル/アミン系化合物を含有しない、参考例5の導電性ペースト組成物を調製した。この参考例5の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表8に示す。
【0163】
(実施例46)
表8に示すように、組成1の基本組成に対して、(D)エーテル/アミン系化合物として略号D01の化合物を1質量部配合して、実施例46の導電性ペースト組成物を調製した。この実施例46の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表8に示す。
【0164】
(実施例47~63)
表8に示すように、組成1の基本組成に対して、(D)エーテル/アミン系化合物として略号D02~D18の化合物をそれぞれ1質量部配合して、実施例47~63の導電性ペースト組成物を調製した。これら実施例47~63の導電性ペースト組成物をそれぞれ用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表8に示す。
【0165】
(比較例3,4)
表8に示すように、組成1の基本組成に対して、比較エーテル/アミン系化合物である略号D19またはD20の化合物を1質量部配合して、比較例3または比較例4の導電性ペースト組成物を調製した。この比較例3または比較例4の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表8に示す。
【0166】
【表8】
【0167】
(参考例6)
表9に示すように、組成2の基本組成のみを有し、(D)エーテル/アミン系化合物を含有しない、参考例6の導電性ペースト組成物を調製した。この参考例6の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表9に示す。
【0168】
(実施例64~67)
表9に示すように、組成2の基本組成に対して、(D)エーテル/アミン系化合物として略号D04の化合物を0.05~5質量部の範囲内で配合して、実施例64~67の導電性ペースト組成物を調製した。これら実施例64~67の導電性ペースト組成物をそれぞれ用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表9に示す。
【0169】
(実施例68~71)
表9に示すように、組成2の基本組成に対して、(D)エーテル/アミン系化合物として略号D06の化合物を0.01~2.5質量部の範囲内で配合して、実施例68~71の導電性ペースト組成物を調製した。これら実施例68~71の導電性ペースト組成物をそれぞれ用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表9に示す。
【0170】
(参考例7)
表9に示すように、組成3の基本組成のみを有し、(D)エーテル/アミン系化合物を含有しない、参考例7の導電性ペースト組成物を調製した。この参考例7の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表9に示す。
【0171】
(実施例72~76)
表9に示すように、組成3の基本組成に対して、(D)エーテル/アミン系化合物として略号D04,D05,D13,D16,D18の各化合物をそれぞれ0.5質量部配合して、実施例72~76の導電性ペースト組成物を調製した。これら実施例72~76の導電性ペースト組成物をそれぞれ用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表9に示す。
【0172】
(比較例5)
表9に示すように、組成3の基本組成に対して、比較エーテル/アミン系化合物である略号D19の化合物を0.5質量部配合して、比較例5の導電性ペースト組成物を調製した。この比較例5の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表9に示す。
【0173】
(参考例8)
表9に示すように、組成4の基本組成のみを有し、(D)エーテル/アミン系化合物を含有しない、参考例8の導電性ペースト組成物を調製した。この参考例8の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表9に示す。
【0174】
(実施例77~83)
表9に示すように、組成4の基本組成に対して、(D)エーテル/アミン系化合物として略号D02,D06,D08,D09,D10~D12の各化合物をそれぞれ1質量部配合して、実施例77~83の導電性ペースト組成物を調製した。これら実施例77~83の導電性ペースト組成物をそれぞれ用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表9に示す。
【0175】
(比較例6)
表9に示すように、組成4の基本組成に対して、比較エーテル/アミン系化合物である略号D20の化合物を0.5質量部配合して、比較例6の導電性ペースト組成物を調製した。この比較例6の導電性ペースト組成物を用いて前記の通り評価用サンプルを作製し、その硬化物の体積抵抗率を測定した。その結果を表9に示す。
【0176】
【表9】
【0177】
(実施例、比較例および参考例の対比)
実施例46~83と参考例5~8との対比から明らかなように、(D)エーテル/アミン系化合物を含有する各実施例の導電性ペースト組成物では、(D)エーテル/アミン系化合物を含有しない各参考例の導電性ペースト組成物と比較して、得られる導体パターン11(導電層)の体積抵抗率が良好に低下していることがわかる。
【0178】
また、実施例46~83と比較例3,4と参考例5との対比、実施例72~76と比較例5と参考例7との対比、並びに、実施例77~83と比較例6と参考例8との対比から明らかなように、比較エーテル/アミン系化合物を含有する比較例3~6の導電性ペースト組成物では、得られる導体パターン11の体積抵抗率は、体積的効率は参考例5,7または8の導電性ペースト組成物と変わらない。それゆえ、前述した一般式(5A)または(5B)のアルコール構造におけるX3 が水素原子である比較エーテル/アミン系化合物ではなく、X3 が塩素(Cl)または臭素(Br)である(D)エーテル/アミン系化合物であれば、体積抵抗率の低下に寄与できることがわかる。
【0179】
また、参考例5,6と参考例7との比較から明らかなように、(A)導電性粉末として、銀粉だけではなく銀コート銅粉を併用したときには、導体パターン11の体積抵抗率は相対的に高くなるものの、実施例46~71と実施例72~76との比較から明らかなように、(D)エーテル/アミン系化合物として用いられる化合物の種類または配合量(添加量)を調整することで、銀コート銅粉を併用した場合であっても銀粉のみの場合と同程度に低い体積抵抗率を実現可能であることが期待できる。
【0180】
同様に、参考例5~7と参考例8との比較から明らかなように、(A)導電性粉末として、銀粉等の代わりに銀コート樹脂粉を用いたときには、導体パターン11の体積抵抗率はかなり高くなるものの、実施例77~83の結果から明らかなように、(D)エーテル/アミン系化合物を用いることで、体積抵抗率を大きく低下可能であることがわかる。
【0181】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明は、各種電子機器や電子部品を製造する分野に好適に用いることができ、特に、太陽電池の集電電極、チップ型電子部品の外部電極、RFID、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、またはエレクトロルミネセンス等に用いられる部品の電極や配線等、より高精細な電極や配線を形成することが求められる分野に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0183】
11:導体パターン
11a:端子
11b:端子
11c:配線部分
図1