(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】グラップル、収容物排出装置及び収容物排出方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/30 20060101AFI20231228BHJP
B66C 3/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G21F9/30 531K
G21F9/30 531J
B66C3/02 F
(21)【出願番号】P 2020079684
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】寳正 史樹
(72)【発明者】
【氏名】岡市 真司
(72)【発明者】
【氏名】山内 浩正
【審査官】大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039519(JP,A)
【文献】米国特許第04798508(US,A)
【文献】特開平11-165720(JP,A)
【文献】特開2018-119890(JP,A)
【文献】特開2017-065793(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3192355(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0177373(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30、9/36
B66C 1/00-3/20
B65B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物が収容された袋状収容体を把持するグラップルであって、
前記袋状収容体の側面を押圧する把持状態と、前記袋状収容体の側面から離間する開放状態との間で操作可能な把持部材と、
前記把持部材に対して固定され、
前記袋状収容体の側面に挿通体を
突出駆動させて突き刺す挿通状態と、前記袋状収容体の側面から前記挿通体を
後退駆動させて離間する非挿通状態との間で操作可能な挿通部材と、
を備えることを特徴とするグラップル。
【請求項2】
前記挿通状態において、前記袋状収容体に対して水平方向または水平方向より上方に向けて挿通体が突き刺されていることを特徴とする請求項1記載のグラップル。
【請求項3】
前記把持部材が前記把持状態で前記袋状収容体の側面を押圧する押圧面部を備え、前記挿通状態において前記挿通体が前記押圧面部または前記押圧面部の近傍から袋状収容体に突き刺されることを特徴とする請求項1
または2記載のグラップル。
【請求項4】
収容物が収容された袋状収容体の底部を開放する袋状収容体底部開放機構と、
前記袋状収容体を前記袋状収容体底部開放機構に搬送する搬送機構と、
前記袋状収容体底部開放機構の上方空間に懸架された請求項1から
3の何れかに記載のグラップルと、
制御装置と、
前記搬送機構で前記袋状収容体を搬送中に前記袋状収容体の形状を捕捉するレーザセンサと、を備え、
前記制御装置は、前記レーザセンサにより検出された前記袋状収容体の形状に基づいて前記グラップルの姿勢を調整した後に前記袋状収容体を把持して持ち上げ、前記袋状収容体底部開放機構に載置するように構成されていることを特徴とする収容物排出装置。
【請求項5】
前記グラップルがロードセルを備えることを特徴とする請求項
4記載の収容物排出装置。
【請求項6】
収容物が収容された袋状収容体から収容物を排出する収容物排出方法であって、
グラップルに備えた把持部材により前記袋状収容体の側面を押圧した状態で、前記袋状収容体の側面
に前記グラップルに備えた挿通体を
突出駆動させて前記袋状収容体に突き刺す第1処理と、
前記袋状収容体の底部を開放して収容物を排出する第2処理と、
を含むことを特徴とする収容物排出方法。
【請求項7】
前記第2処理は、前記袋状収容体を開閉自在な可動床に閉状態で載置した状態で前記袋状収容体を開放した後に、前記可動床を開状態にして収容物を排出することを特徴とする請求項
6記載の収容物排出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラップル、収容物排出装置及び収容物排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性汚染物や感染性汚染物などの有害物が充填された多数の袋状収容体から収容物を排出して保管、貯蔵あるいは無害化処理するための施設では、袋状収容体から収容物を排出するために、人手または機械で袋状収容体を開封した後に、重機で掴み上げた袋状収容体を振り回すことにより袋状収容体から収容物を排出していた。
【0003】
しかし、袋状収容体を振り回す操作には熟練を要する。また、収容物が放射性または感染性の物質である場合に、重機操作者の被爆、感染リスクを回避するために、重機操作者の防護服、操作室の空調、広範囲な管理区域の設定などの工夫が必要であった。
【0004】
特許文献1には、被収容物を収容したフレキシブルコンテナバッグの底部を切断してフレキシブルコンテナバッグ内に被収容物を残留させないように排出させることが可能な破袋装置が提案されている。
【0005】
具体的に、当該破袋装置は、収容物を収容したフレキシブルコンテナバッグを載置するための床と当該床の周縁部を囲んで上方に延長するように設けられた筒体とを有したフレキシブルコンテナバッグ載置部と、前記フレキシブルコンテナバッグ載置部の筒体を通って前記フレキシブルコンテナバッグ載置部の床上に載置された前記フレキシブルコンテナバッグの底部を切断するための切断装置とを備えている。
【0006】
前記フレキシブルコンテナバッグ載置部の床は、複数の可動床により構成され、当該複数の可動床の床面が前記フレキシブルコンテナバッグの底面を支持可能な閉状態と当該複数の可動床の床面が前記フレキシブルコンテナバッグの底面を支持しない開状態とに設定可能に構成され、前記複数の可動床は、前記閉状態において、互いに隣り合う一方の可動床の縁と他方の可動体の縁とが隙間を隔てて対向するように形成されていて、前記隙間が前記切断装置の切断手段を通過させる複数の切断案内溝として機能するように構成されている。
【0007】
前記切断案内溝は、前記閉状態の床の中央を通過する直線状に形成され、前記切断装置は、切断手段が前記直線状の切断案内溝の一端側と他端側との間を往復動可能なように構成され、前記切断手段が前記閉状態の床に載置されているフレキシブルコンテナバッグの底部を切断した後に、前記床が開状態に設定されることにより、前記フレキシブルコンテナバッグ内の被収容物が自然落下するように構成されている。
【0008】
そして、クレーン等の揚重機の吊フックをフレキシブルコンテナバッグの吊り紐に引っ掛けて揚重機でフレキシブルコンテナバッグを吊り上げてフレキシブルコンテナバッグ載置部にフレキシブルコンテナバッグを載置するように構成されている。
【0009】
また、特許文献2には、袋状収容体を掴み上げる際に用いるグラップルが開示されている。当該グラップルは、作業機のフロントに取付けられ、複数の開閉式把持爪を有するフレコンバッグ用グラップルにおいて、前記把持爪を上腕部と側腕部とにより構成し、前記側腕部の内面をその側面視が直線状をなすように形成すると共に、グラップルを開いた状態において、前記側腕部が鉛直姿勢を取り得るフロントへの取付け構造を有することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017‐71435号公報
【文献】特開2011-73863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載されたように、袋状収容体に備わった吊り紐を揚重機に備えた吊りフックで吊り上げて、袋状収容体の底部を切断装置で切断することにより袋状収容体を開封して収容物を落下させる場合には、フレキシブルコンテナバッグの上面から吊り紐を上方に浮かせて吊りフックに吊り紐を掛ける作業を行なう必要があり、その際に揚重機の操作者が被爆するリスクや感染するリスクがあった。また袋状収容体が外袋と内袋の二重構造である場合には、内袋が収容物とともに外袋から落下するため、袋状収容体から収容物を排出することができないという不都合もあった。
【0012】
そこで、特許文献2に開示されたようなグラップルを用いてフレキシブルコンテナバッグを把持して持ち上げることも考えられるが、フレキシブルコンテナバッグの底部の切断箇所から収容物が落下するにつれて把持力が低下するため、フレキシブルコンテナバッグが収容物とともに落下するという問題もあった。
【0013】
なお、切断装置を鋭利な刃物で構成する場合には、長時間積み上げ保管されたようなフレキシブルコンテナバッグの収容物は硬化しているために袋状収容体を適切に開封することができず、不十分な開封状態では収容物の一部が袋状収容体に残存する虞もある。
【0014】
袋状収容体から収容物を排出するという観点では、洪水や土砂崩れの復旧作業に用いられる土砂などが充填された袋状収容体でも同様で、袋状収容体から土砂などの収容物を排出する際に同様の課題があった。この他にもセメントや小麦粉など製造工場より袋詰めにされて工場に集荷され、この袋状収容体から収容物を排出し、処理設備に投入する際にも同様の課題があった。
【0015】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、袋状収容体から収容物を排出する際に袋状収容体を適切に支持可能で、袋状収容体から収容物を適切に排出できるグラップル、収容物排出装置及び収容物排出方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、本発明によるグラップルの第一特徴構成は、収容物が収容された袋状収容体を把持するグラップルであって、前記袋状収容体の側面を押圧する把持状態と、前記袋状収容体の側面から離間する開放状態との間で操作可能な把持部材と、前記把持部材に対して固定され、前記袋状収容体の側面に挿通体を突出駆動させて突き刺す挿通状態と、前記袋状収容体の側面から前記挿通体を後退駆動させて離間する非挿通状態との間で操作可能な挿通部材と、を備える点にある。
【0017】
グラップルに備えた把持部材を把持状態に操作することで袋状収容体を持ち上げ、把持部材を開放状態に操作することで袋状収容体を離脱するように切り替えることができる。さらに、把持部材で袋状収容体を把持した状態で把持部材に固定された挿通部材から挿通体を袋状収容体に突き刺すことができ、挿通体を適切且つ確実に袋状収容体に突き刺すことができる。挿通体を挿通状態に操作することで袋状収容体が例えば下方に離脱することがないように掛けることができ、挿通体を非挿通状態に操作することで掛けられた袋状収容体を離脱することができる。
【0018】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記挿通状態において、前記袋状収容体に対して水平方向または水平方向より上方に向けて挿通体が突き刺されている点にある。
【0019】
挿通体の姿勢が水平方向または水平方向より上方に向けて袋状収容体に突き刺されているため、袋状収容体の重量が挿通体に掛っても挿通体の先端から袋状収容体が滑り落ちるようなことがない。
【0020】
同第三の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記把持部材が前記把持状態で前記袋状収容体の側面を押圧する押圧面部を備え、前記挿通状態において前記挿通体が前記押圧面部または前記押圧面部の近傍から袋状収容体に突き刺される点にある。
【0021】
把持状態で袋状収容体の側面が押圧面部を介して面状に押圧されるので、袋状収容体に破断を招くような局所的な力が作用することがなく、また押圧面部またはその近傍から挿通体を適切且つ確実に袋状収容体に突き刺すことができる。
【0022】
本発明による収容物排出装置の第一の特徴構成は、収容物が収容された袋状収容体の底部を開放する袋状収容体底部開放機構と、前記袋状収容体を前記袋状収容体底部開放機構に搬送する搬送機構と、前記袋状収容体底部開放機構の上方空間に懸架された上述の第一から第三の何れかの特徴構成を備えたグラップルと、制御装置と、前記搬送機構で前記袋状収容体を搬送中に前記袋状収容体の形状を捕捉するレーザセンサと、を備え、前記制御装置は、前記レーザセンサにより検出された前記袋状収容体の形状に基づいて前記グラップルの姿勢を調整した後に前記袋状収容体を把持して持ち上げ、前記袋状収容体底部開放機構に載置するように構成されている点にある。
【0023】
制御装置は、搬送機構により袋状収容体を袋状収容体底部開放機構に搬送し、グラップルで袋状収容体を把持して袋状収容体底部開放機構に載置する。このとき、制御装置は搬送機構により搬送される際にレーザセンサによって捕捉された袋状収容体の形状に整合するようにグラップルの姿勢を調整することで適切に袋状収容体を把持することができ、また袋状収容体底部開放機構に載置することができる。
【0024】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記グラップルがロードセルを備える点にある。
【0025】
グラップルに備えたロードセルによって計測される重量に基づいてグラップルに支持された袋状収容体から収容物が排出される状態が把握され、予め想定された袋状収容体の重量になると収容物が適切に排出されたことが把握できる。
【0026】
本発明による収容物排出方法の第一の特徴構成は、収容物が収容された袋状収容体から収容物を排出する収容物排出方法であって、グラップルに備えた把持部材により前記袋状収容体の側面を押圧した状態で、前記袋状収容体の側面に前記グラップルに備えた挿通体を突出駆動させて前記袋状収容体に突き刺す第1処理と、前記袋状収容体の底部を開放して収容物を排出する第2処理と、を含む点にある。
【0027】
第1処理では袋状収容体の側面から挿通体を突き刺し、第2処理では袋状収容体の底部を開放して収容物のみを排出する。第1処理で挿通体により袋状収容体が突き刺されているので、収容物が落下するに連れて把持部材による把持力が減少しても袋状収容体がグラップルから離脱して収容物とともに落下するようなことがない。また、把持部材により袋状収容体の側面が押圧され、位置決めされた状態で挿通体が袋状収容体の適切な位置に突き刺される。
【0028】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記第2処理は、前記袋状収容体を開閉自在な可動床に閉状態で載置した状態で前記袋状収容体を開放した後に、前記可動床を開状態にして収容物を排出する点にある。
【0029】
可動床が開状態となることで、袋状収容体の開放部位から収容物が排出される。
【発明の効果】
【0030】
以上説明した通り、本発明によれば、袋状収容体から収容物を排出する際に袋状収容体を適切に支持可能で、袋状収容体から収容物を適切に排出できるグラップル、収容物排出装置及び収容物排出方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】(a)から(f)は収容物排出方法の流れを示す説明図
【
図2】(a)から(c)はレーザセンサによる袋状収容体の姿勢検出プロセスの説明図
【
図4】(a)はグラップルの正面図、(b)は同側面図
【
図5】(a)は開放姿勢のグラップルの説明図、(b)は把持姿勢のグラップルの説明図
【
図6】制御装置により実行される袋状収容体から収容物を排出する方法の手順を示すフローチャート
【
図7】(a),(b)は袋状収容体の吊り紐の姿勢を調整する治具の説明図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明によるグラップル、収容物排出装置及び収容物排出方法について説明する。
【0033】
[収容物排出装置]
収容物排出装置は、処理場に搬入された複数の袋状収容体であるフレキシブルコンテナバッグの底部を開放して収容物を排出し、排出した収容物を最終処理するために用いられる装置である。収容物排出装置で袋状収容体から排出された収容物は破砕機などを用いて粒度調整され、処理に必要な助剤が添加された後に溶融炉で溶融処理される。
【0034】
フレキシブルコンテナバッグは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの丈夫な化学繊維で織られたシートを縫製して袋状に形成された直方体形状の収容袋であり、上面に吊り紐が設けられている。放射性物質を含むばいじんや焼却灰などが充填されて、保管場所に長期にわたって積み上げられて保管される。そのため、吊り紐はフレキシブルコンテナバッグの上面に密着した状態になる。
【0035】
図1(a)から(f)に示すように、収容物排出装置1は、袋状収容体10を受け入れる受入れヤード2と、受入れヤード2に搬入された袋状収容体10を搬送する搬送機構3と、上階へ搬送する昇降機構4と、昇降機構4で上階に搬送された袋状収容体10を受け入れて袋状収容体10から収容物を排出する収容物排出機構20とを備えている。
【0036】
袋状収容体10に収容された収容物は、放射線(主に放射性セシウム)で汚染された建築廃材、草木、土壌などを、焼却炉、溶融炉、ガス化溶融炉などで熱処理する際に生じたばいじん、焼却灰などであり、其々発生由来毎に分別して袋状収容体10に収容されている。なお、収容物は原子力発電所などのプラント事故で漏洩した放射線物質による汚染物に限るものではなく、感染の恐れがある医療廃棄物や、セメントや小麦粉などの粉粒物であっても対応可能である。
【0037】
搬送機構3はローラ式の搬送路3Aと、搬送路3Aの上面に設置された搬送台3Bで構成され、搬送路3Aを構成するローラが回転することにより搬送台3Bが回転方向に移動するように構成され、各袋状収容体10が各搬送台3Bに搭載されて搬送される。
【0038】
昇降機構4は袋状収容体10が搭載された搬送台3Bの両側縁部を係止してモータにより昇降する駆動機構を備えている。昇降機構4により上階に搬送された袋状収容体10は、搬送機構3によって収容物排出機構20まで搬送される。
【0039】
収容物排出機構20の上方空間にはグラップル30が昇降自在に懸架され、搬送台30B上の袋状収容体10はグラップル30により把持されて持ち上げられ(
図1(a)参照。)、搬送台3Bが退避した後に収容物排出機構20の上部に載置される(
図1(b)参照。)。収容物排出機構20は二重扉5などを備えた閉空間に仕切られている。
【0040】
グラップル30は、袋状収容体10の側面を押圧して把持する複数の把持部材32(本実施形態では2枚の把持部材)と、把持部材32から袋状収容体10に対して突出または後退可能に把持部材32に取り付けられた挿通部材34とを備えて構成され、挿通部材34に備えた挿通体34Aが、把持部材3
2から袋状収容体10に対して突出することにより、先端部が水平姿勢または水平より上方に傾斜した傾斜姿勢で袋状収容体10に刺し込まれるように構成されている。挿通部材34は挿通体34Aと挿通体34Aを突出または後退駆動する油圧シリンダ33(
図4(a)参照。)を備えている。
【0041】
グラップル30は、懸架機構を介して上方空間に配された案内レールに沿って移動可能に懸架されている。懸架機構にはグラップル30及びグラップル30で持ち上げられた袋状収容体10の重量を検知するロードセルが配されている。
【0042】
収容物排出機構20は、袋状収容体底部開放機構25と可動床21とを備えている。
可動床21は、
図2(a)に示すように、平面視で方形の床領域に配置された二等辺三角形の4枚の床板21Aを備え、各床板21Aの底辺に相当する部位に備えた軸P周りに開放可能に取り付けられ、各床板21Aが油圧機構により閉状態と開状態との間で開放駆動されるように構成されている。また、各床板21Aの斜辺の対向部に形成された隙間により、方形の床領域の対角線に沿ったスリットSが形成されている。
【0043】
袋状収容体底部開放機構25として油圧駆動式の一対のウォータージェットノズルが用いられ、袋状収容体10が可動床
21に載置されると、ウォータージェットノズルが可動床21に形成されたX字状のスリットSに沿って往復駆動されて袋状収容体10の略方形の底部が一対の対角線に沿って破断される(
図1(c)参照。)。
【0044】
袋状収容体10の底部が切断されると、再度グラップル30が降下して(
図1(c)参照。)、袋状収容体10の側面が把持される。このとき、把持部材32に取り付けられた挿通部材34に備えた挿通体34Aが後退姿勢から突出姿勢に姿勢変更されて、挿通体34Aが袋状収容体10に刺し込まれる(
図1(d)参照。)。
【0045】
グラップル30によって袋状収容体10が把持され持ち上げられた状態で、床板21Aが下方に開放駆動されて形成された開口から袋状収容体10の収容物が下方に落下する。袋状収容体10は挿通体34Aが刺し込まれているため、収容物が落下して袋状収容体10が縮んでも落下することがない(
図1(e)参照。)。袋状収容体10が外袋と内袋の二重構造であっても、挿通体34Aが内袋まで刺し込まれているため袋状収容体10が収容物とともに落下することはない。
【0046】
袋状収容体10から排出された収容物は、下方に備えた破砕機に落下して破砕処理され、粒度調整された後に放射性物質を分離するための塩化物などの助剤が添加され、助剤とともに回転式の表面溶融炉に投入されて溶融処理される。助剤の作用により放射性物質は気化して排ガス側に流出し、放射性物質が除去された溶融スラグが冷却されてスラグが得られる。
【0047】
袋状収容体10から収容物が排出されると、グラップル30は案内レールに沿って移動し、袋状収容体10を離脱する離脱位置で挿通部材34を後退させるとともに把持部材32を開放状態にすることで、袋状収容体10がグラップル30から離脱して下方に落下する。袋状収容体10は下方に備えた破砕機に落下して破砕され、収容物とともに溶融炉に投入される。
【0048】
[グラップルの構造]
図4(a),(b)にはグラップル30の外観が示されている。上述したように、グラップル30は、袋状収容体10の側面を押圧して把持する一対の把持部材32と、把持部材32から袋状収容体に10対して突出または後退可能に把持部材32に取り付けられた挿通部材34とを備えて構成され、挿通部材34に備えた挿通体34Aが把持部材32から袋状収容体10に対して突出することにより、先端部が水平姿勢または水平より上方に傾斜した傾斜姿勢で袋状収容体10に刺し込まれるように構成されている。
【0049】
把持部材32はアーム32Aとアーム32Aの内側に取り付けられた押圧面部32Bを備え、基部31の左右に回動可能に軸支され、油圧式、空気圧式または電動式の回動用モータ38により開閉作動可能に構成されている。把持部材32には、左右に3本、上下2段に先端が尖った挿通体34Aを備えた挿通部材34と、挿通体34Aを突出または後退駆動する油圧式、空気圧式または電動式のシリンダ33を備えている。挿通体34Aの吐出位置が一点鎖線で示され、後退位置が実線で示されている。
【0050】
基部31の前後に一対の油圧式または空気圧式のシリンダ37が設けられ、シリンダ37により駆動される吊りフック36が設けられている。吊りフック36の開放位置が実線で示され、閉じ位置が一点鎖線で示されている。
【0051】
基部31は、鉛直線に対して左右に回転可能な旋回モータを介して旋回する旋回機構35を介して支持部38に昇降自在に指示されている。
【0052】
図5(a)に示すように、袋状収容体10を把持する前に、把持部材32が袋状収容体10の側面から離間する開放状態では、挿通体34Aは略水平姿勢となり、
図5(b)に示すように、把持部材32を袋状収容体10の側面を押圧する把持状態に操作すると、押圧面部32Bが袋状収容体10を挟みつけて持ち上がることが可能な状態となる。このときにシリンダ33を進出駆動することにより、挿通体34Aが突出して袋状収容体10を突き刺すようになる(
図1(d)~(f)参照。)。シリンダ33を進出駆動しなければ、単に押圧面部32Bが袋状収容体10を挟みつけて把持する状態となる(
図1(b)参照。)。
【0053】
[収容物排出装置に備えた制御装置]
上述した収容物排出装置1についてさらに詳述する。
図3に示すように、収容物排出装置1には、搬送機構3を制御する搬送制御部C1、グラップル30を制御するグラップル制御部C2、袋状収容体底部開放機構25を制御する底部開放制御部C3、可動床21を制御する可動床制御部C4の各機能ブロックを備えた制御装置Cを備えている。
【0054】
制御装置CはCPUボードとメモリボードと入出力インタフェースボードを備えたコンピュータで構成されており、メモリボード上のメモリに格納された制御プログラムをCPUが実行することにより上述の各機能ブロックが構成される。
【0055】
搬送制御部C1は搬送機構3を制御するブロックで、搬送路に備えた位置検出用のセンサの出力に基づいてローラ式の搬送路3Aを駆動するモータを制御して搬送台3Bに搭載された袋状収容体10を搬送制御する。また、搬送機構3には搬送路3Aを挟んで両サイドに距離センサである一対のレーザセンサLSを備えている。搬送制御部C1は、レーザセンサLSを用いてレーザセンサLSから搬送台3Bに搭載された袋状収容体10までの距離を計測して距離画像を生成することにより、袋状収容体10の大きさ及び搭載姿勢を検知する。
【0056】
図2(a)に示すように、搬送台3Bに搭載された袋状収容体10が、搬送台3Bの対角線と袋状収容体10の対角線がずれた偏り姿勢で搭載されると、グラップル30で適切に把持するのが困難な場合が生じる。仮に袋状収容体10を把持できたとしても、
図2(b)に示すように、収容物排出機構20に載置される姿勢が同様に偏っているため、袋状収容体10の底部が対角線に沿って切断されない虞があり、その結果、収容物が袋状収容体10の底部の未切断部位に妨げられて落下排出することができなくなる。
【0057】
そこで、搬送制御部C1は、レーザセンサLSを用いて計測した袋状収容体10の姿勢を判断して、グラップル30の把持部材32が袋状収容体10の平坦な側面に位置するように、旋回機構35の旋回角度を調整するためのデータをグラップル制御部C2に供給する。
図2(c)に示すように、グラップル制御部C2は旋回機構により旋回させて袋状収容体10の平坦な側面を適切に把持し、さらに袋状収容体10の底部の対角線が
可動床21の対角線と整合するように袋状収容体10を
可動床21に載置することができる。
【0058】
図3に戻り、グラップル制御部C2は、上述した旋回機構の制御に加えて、回動用モータ38を制御して把持部材32を揺動制御するとともに、シリンダ33を制御して挿通体34Aを突出または後退制御する。また、旋回モータを制御して把持部材32の平面視の姿勢を調整し、シリンダ37を制御して吊りフック36を開閉駆動する。
【0059】
底部開放制御部C3は、可動床21に載置された袋状収容体10の底部を切断すべく、位置センサの検出値に基づいて平面視X字状のスリットSに沿ってウォータージェットノズルを往復駆動する。
【0060】
可動床制御部C4は、可動床21に備えた開度センサの検出値に基づいて可動床21の開放角度を調節することで、収容物の落下状態を調整する。例えば、初期には可動床21の開放角度を小さくして収容物の落下量を調整し、その後全開にして収容物を勢いよく落下させることができる。
【0061】
図6には、制御装置Cにより実行される収容物排出制御の手順が示されている。まず、袋状収容体10を稼働床に搬送する際に(S1)、レーザセンサLSにより袋状収容体10の姿勢を検出し(S2)、検出結果に基づいてグラップルの旋回角度を調整する(S3)。
【0062】
次に、袋状収容体10を把持して持ち上げて(S4)、搬送台車を退避させ(S5)、可動床の正規の位置に袋状収容体10を載置する(S6)。正規の位置とは、袋状収容体10の底部の対角線が可動床21の対角線(スリットSの位置)と整合する位置をいう。
【0063】
袋状収容体底部開放機構25を作動させて袋状収容体10の底部を切断し(S7)、把持部材32を把持状態に移行するとともにシリンダ33を駆動して挿通部材34を袋状収容体10に突き刺して、袋状収容体10を保持する(S8)。
【0064】
可動床を開放して袋状収容体10から収容物を落下により排出する(S9)。ロードセルでグラップル及び袋状収容体10の重量を計測して、収容物がすべて落下したことを検知すると(S11)、案内レールに沿ってグラップルを移動させて、袋状収容体離脱位置でシリンダ33を駆動して挿通体34Aを袋状収容体10の側面から離間する非挿通状態に後退させるとともに把持部材32を開放して袋状収容体10を落下させる(S12)。なお、上述の手順で、ステップS7の袋状収容体底部開放機構25の作動とステップS8の把持部材32及び挿通体34Aの作動の順番を入れ替えて、先に把持部材32及び挿通体34Aを作動させた後に袋状収容体底部開放機構25を作動させてもよい。
【0065】
即ち、本発明の収容物排出方法は、収容物が収容された袋状収容体から収容物を排出する収容物排出方法であって、袋状収容体の側面からグラップルに備えた挿通体を袋状収容体に突き刺す第1処理と、袋状収容体の底部を開放して収容物を排出する第2処理と、を含む。
【0066】
また、第1処理において、グラップルに備えた把持部材により袋状収容体の側面を押圧した状態で挿通体を収容体に突き刺す。第2処理は、袋状収容体を開閉自在な可動床に閉状態で載置した状態で袋状収容体を開放した後に、可動床を開状態にして収容物を排出する。
【0067】
以下に別実施形態を説明する。
上述した実施形態では、把持部材に挿通部材が上下に二段、左右に三連備えた構成を説明したが、挿通部材の数は特に限定されるものではなく、把持部材に一つ設けられていてもよい。
【0068】
上述した実施形態では、一対の把持部材が対向配置された例を説明したが、把持部材の数は特に限定されるものではない。例えば平面視で90°間隔で配置された4つの把持部材でもよく、把持する対象である袋状収容体10の水平断面形状が円形や略三角形である場合には平面視で120°間隔で配置された3つの把持部材でもよい。また、前者の場合、押圧面部が平面視L字状に形成され、袋状収容体の対向する角部を把持するように構成されていてもよい。
【0069】
把持部材は対向する一対のアームの双方が可動自在に構成されている必要はなく、少なくとも一つのアームが可動自在であって残りのアームが固定であってもよい。
【0070】
把持部材に備えた押圧面部が複数に分割した分割押圧面部で構成され、分割押圧面部同士の間に挿通体が進出または後退するように挿通部材が設けられていてもよい。
【0071】
上述した実施形態では、挿通部材が把持部材に設置された例を説明したが、挿通部材は把持部材に設置される態様に限るものではなく、把持部材と同様に基部31に回動可能に軸支された回動アームとアームに取り付けられた挿通体で構成してもよい。この場合、挿通体は回動アームの回動軌跡に沿って動作するように弧状に形成してもよい。
【0072】
上述した該グラップルを例えば作業機のフロントに取付けることも可能である。作業機としては、パワーショベル等の建設機械のアタッチメントや、廃棄物処理施設、工場、運搬設備等に設置されるクレーン等の荷役設備、ロボットハンド等であり、既存の作業機に取りつけることにより、建設現場などの屋外作業やクレーンやロボット設置場所の作業が可能となり、袋状収容体から収容物を排出させる作業を様々な現場において行うことができるようになる。
【0073】
図7(a),(b)には、袋状収容体10に備わった吊り紐10Aを吊りフック36で吊り上げる態様が示されている。袋状収容体10が外袋と内袋の二重構造でないような場合に、吊りフック36で吊り紐10Aを引っ掛けて吊り上げてもよい。
【0074】
この場合、袋状収容体10の上面に密着した吊り紐10Aを上方に浮かせて吊りフックに吊り紐を掛ける作業を行なう必要がある。そのため、吊り紐10Aを上方に浮かせた状態で袋状収容体10の上面と吊り紐10Aとの間にスペーサ40を配置することが好ましい。スペーサ40としては、吊りフックが進入可能な空間である開放部を備えるとともにと、吊り紐10Aを空間に浮かせた状態で保持できる載置部を備える樹脂製や段ボール製の成型体を用いることができる。なお、
図7(b)の白抜きの矢印は吊りフックの作動方向を示している。
【0075】
前記成型体の形状として、は筒状や半割筒状であればよく、例えば買い物かごの側面を切り欠いたようなものを用いることができる。袋状収容体10の上面の対角線方向から
図5(b)に示した吊りフック36で吊り上げることになる。スペーサ40の長手方向に複数のLEDを配列して点灯させ、グラップルに備えた光センサでLEDの配列方向に沿うようにグラップルの旋回機構を作動させることで、吊りフック36と吊り紐10Aの位置関係を整合させることができる。
【0076】
上述した実施形態では、袋状収容体底部開放機構25として一対のウォータージェットノズルを備えた構成を説明したが、袋状収容体底部開放機構25の具体的な構成はこのようなウォータージェットノズルを備えたものに限らず、例えば熱により袋状収容体10の底部を対角線方向に溶断する加熱体を用いてもよい。また、底部に予め開口部が形成され、当該開口部が紐状体で緊締されているような袋状収容体10であれば、その紐状体を切断するカッター部材などで構成することも可能である。
【0077】
以上の説明は、本発明の一実施態様の説明であり、該記載により本発明の技術的範囲が制限されることはなく、本発明の作用効果が奏される範囲で各部を適宜構成することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1:収容物排出装置
3:搬送機構
10:袋状収容体
20:収容物排出機構
21:可動床
25:袋状収容体底部開放機構
30:グラップル
32:把持部材
34:挿通体
C:制御装置