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特許7411505シールド部材、シールドユニット、及びコネクタモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】シールド部材、シールドユニット、及びコネクタモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6591 20110101AFI20231228BHJP
   H01R 13/6585 20110101ALI20231228BHJP
   H01R 24/38 20110101ALI20231228BHJP
   H01R 13/74 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01R13/6591
H01R13/6585
H01R24/38
H01R13/74 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020096992
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021190375
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 雅和
(72)【発明者】
【氏名】近藤 快人
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0041938(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0287306(US,A1)
【文献】特開2020-092313(JP,A)
【文献】特開2002-075553(JP,A)
【文献】特表2016-528709(JP,A)
【文献】特表2018-500733(JP,A)
【文献】特開2018-164189(JP,A)
【文献】特開2018-006162(JP,A)
【文献】特開2020-003230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 13/00-13/08
H01R 13/15-13/35
H01R 13/56-13/74
H01R 24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環板状の導電性材料からなり、内周部分に環状に配置された複数の第1弾性部と、外周部分に環状に配置された複数の第2弾性部と、複数の前記第1弾性部と複数の前記第2弾性部との間に形成された中間部と、を備えたシールド部材であって、
複数の前記第1弾性部の夫々は、内周縁から径方向に沿う複数の第1スリットにより形成され、
複数の前記第2弾性部の夫々は、外周縁から径方向に沿う複数の第2スリットにより形成されており、
複数の前記第1弾性部の夫々の基端部分は、前記中間部に対して湾曲した第1湾曲部分を有しており、
複数の前記第2弾性部の夫々の基端部分は、前記中間部に対して湾曲した第2湾曲部分を有しており、
複数の前記第1湾曲部分の夫々の中心角である第1中心角は、複数の前記第2湾曲部分の夫々の中心角である第2中心角よりも大きく、
複数の前記第1湾曲部分の夫々の湾曲方向と、複数の前記第2湾曲部分の夫々の湾曲方向とは同方向であるシールド部材。
【請求項2】
複数の前記第2弾性部の夫々の先端部は、前記中間部に対する複数の前記第2湾曲部分の夫々の湾曲方向とは反対方向に湾曲している、請求項に記載のシールド部材。
【請求項3】
円環板状の導電性材料からなり、内周部分に環状に配置された複数の第1弾性部と、外周部分に環状に配置された複数の第2弾性部と、複数の前記第1弾性部と複数の前記第2弾性部との間に形成された中間部と、を備えたシールド部材であって、
複数の前記第1弾性部の夫々は、内周縁から径方向に沿う複数の第1スリットにより形成され、
複数の前記第2弾性部の夫々は、外周縁から径方向に沿う複数の第2スリットにより形成されており、
複数の前記第1スリットの夫々のスリット幅、及び、複数の前記第2スリットの夫々のスリット幅は、何れも板厚の2倍以下であるシールド部材。
【請求項4】
前記中間部は環状であって、全周に亘って補強部分を有する、請求項1からの何れか一項に記載のシールド部材。
【請求項5】
請求項1からの何れか一項に記載のシールド部材を備えたシールドユニットであって、
導電性の筒状シェルと、
前記筒状シェルに外嵌され、前記第1弾性部が当接することにより前記筒状シェルと電気的に接続された前記シールド部材と、
前記シールド部材の前記第2弾性部と当接可能な導電性のシールドカバーと、を備えたシールドユニット。
【請求項6】
接続対象機器に電気的に接続されるコネクタモジュールであって、
シールド部材と、
前記接続対象機器が収容された本体ケースに対して締結部材により固定されるコネクタケースと、
前記コネクタケースに内挿されたコネクタと、を備え、
前記シールド部材は、
円環板状の導電性材料からなり、内周部分に環状に配置された複数の第1弾性部と、外周部分に環状に配置された複数の第2弾性部と、複数の前記第1弾性部と複数の前記第2弾性部との間に形成された中間部と、を有し、
複数の前記第1弾性部の夫々は、内周縁から径方向に沿う複数の第1スリットにより形成され、
複数の前記第2弾性部の夫々は、外周縁から径方向に沿う複数の第2スリットにより形成され、
前記コネクタは、導電性のコンタクトと、前記コンタクトを内挿して支持する絶縁性のホルダと、前記ホルダの外側を覆う導電性の筒状シェルと、前記筒状シェルを内挿して支持する絶縁性のハウジングと、前記筒状シェルに外嵌されて前記第1弾性部が弾性変形して当接することにより前記筒状シェルと電気的に接続された前記シールド部材と、前記シールド部材の前記第2弾性部を押圧可能な導電性のシールドカバーと、を有しており、
前記コネクタケースが前記本体ケースと前記締結部材により締結固定されたとき、前記シールド部材の前記第2弾性部が弾性変形して前記シールドカバーを押圧することにより前記シールド部材と前記シールドカバーとが電気的に接続されるコネクタモジュール。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド部材、シールドユニット、及びコネクタモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラモジュール等の接続対象機器に電気的に接続されるコネクタモジュールが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のコネクタモジュールは、接続対象機器の本体ケースに固定されるコネクタケースと、コネクタケースに収容されるコネクタ(文献では端子モジュール)とを備えている。コネクタは、コンタクト(文献では中心導体)と、コンタクトを内挿して支持する絶縁性のホルダ(文献では絶縁体ホルダ)と、ホルダの外側を覆う導電性の筒状シェル(文献では導電性シェル)と、筒状シェルに係合して外部の電磁波を遮断する導電性のシールドケースとを有している。シールドケースには、筒状シェルの外周部位に係合する複数の弾性部が突出形成されており、この弾性部により筒状シェルとシールドケースとの接触を良好に維持して、高いシールド性を実現している。
【0003】
特許文献2には、回路基板を有する接続対象機器に電気的に接続されるコネクタモジュールが開示されている。特許文献2に記載のコネクタモジュールは、接続対象機器のケースに固定されるシール装置と、シール装置に固定されるコネクタとを備えている。シール装置は、ケースに接着固定される外周環状部材と、コネクタの外周部に接着固定される内側環状部材と、これら外周環状部材及び内側環状部材に固着される可撓性薄膜体とを有している。可撓性薄膜体がコネクタとケースとの隙間を封じることにより、ケースとコネクタとの位置ずれを吸収することができると記載されている。
【0004】
特許文献3には、同軸プラグを有する接続対象機器に電気的に接続されるコネクタモジュール(文献ではフローティングコネクタ)が開示されている。特許文献3に記載のコネクタモジュールは、ケースに固定される筒状外部シェルと、筒状外部シェルに対してシール部材を介して移動自在に組み付けられる筒状可動シェルとを備えている。筒状外部シェルに対して筒状可動シェルが移動自在となっていることにより、同軸プラグの挿入位置ずれがあっても嵌合接続できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-67740号公報
【文献】特開2007-127206号公報
【文献】特開2014-137913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のコネクタモジュールは、筒状シェルに係合して外部の電磁波を遮断する導電性のシールドケースを有しているため、高いシールド性を確保することが可能となるものの、接続対象機器とコネクタとの位置ずれを吸収する上で改善の余地がある。特許文献2に記載のコネクタモジュールは、可撓性薄膜体により接続対象機器とコネクタとの位置ずれを吸収することができるものの、可撓性薄膜体は強度面で問題がある。特許文献3に記載のコネクタモジュールは、筒状可動シェルを筒状外部シェルに対して移動自在に構成して接続対象機器とコネクタとの位置ずれを吸収することができるものの、振動等により筒状可動シェルが筒状外部シェルに繰り返し当接するおそれがあり、耐久性に問題がある。しかも、特許文献3に記載のコネクタモジュールは、筒状可動シェルと筒状外部シェルとの距離を一定に保つことができず、インピーダンス整合が取り難く、高周波伝播特性に悪影響を及ぼす可能性があった。
【0007】
そこで、接続対象機器との位置合わせが容易なシールド部材、シールドユニット、及びコネクタモジュールが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るシールド部材の特徴構成は、円環板状の導電性材料からなり、内周部分に環状に配置された複数の第1弾性部と、外周部分に環状に配置された複数の第2弾性部と、複数の前記第1弾性部と複数の前記第2弾性部との間に形成された中間部と、を備えたシールド部材であって、複数の前記第1弾性部の夫々は、内周縁から径方向に沿う複数の第1スリットにより形成され、複数の前記第2弾性部の夫々は、外周縁から径方向に沿う複数の第2スリットにより形成されている点にある。
【0009】
本構成においては、シールド部材は複数の第1弾性部と複数の第2弾性部とを有するので、例えば複数の第1弾性部に電気的に接続された筒状シェルと複数の第2弾性部に電気的に接続されたシールドカバーとの相対位置を、第1弾性部及び/又は第2弾性部を弾性変形させることにより電気的接続を維持したまま変化させることができる。これにより、振動等が印加されても第1弾性部及び/又は第2弾性部が弾性変形して衝撃を吸収することにより、筒状シェルやシールドカバーの耐久性を高めることができる。
【0010】
本開示に係るシールド部材の他の特徴構成は、複数の前記第1弾性部の夫々の基端部分は、前記中間部に対して湾曲した第1湾曲部分を有しており、複数の前記第2弾性部の夫々の基端部分は、前記中間部に対して湾曲した第2湾曲部分を有しており、複数の前記第1湾曲部分の夫々の中心角である第1中心角は、複数の前記第2湾曲部分の夫々の中心角である第2中心角よりも大きい点にある。
【0011】
本構成においては、中間部に対して第1湾曲部分が第2湾曲部分よりも大きく湾曲しているので、第1湾曲部分に繋がる第1弾性部が接触圧力を発生させる方向と、第2湾曲部分に繋がる第2弾性部が接触圧力を発生させる方向とを変化させることができる。これにより、例えば複数の第1弾性部を筒状シェルの側面部分に電気的に接続させることができると共に、複数の第2弾性部をシールドカバーの平面部分に電気的に接続させることができる。
【0012】
本開示に係るシールド部材の他の特徴構成は、複数の前記第1湾曲部分の夫々の湾曲方向と、複数の前記第2湾曲部分の夫々の湾曲方向とは同方向である点にある。
【0013】
本構成においては、複数の第1湾曲部分の夫々と複数の第2湾曲部分の夫々とは同方向に湾曲しているため、第1湾曲部分に繋がる第1弾性部と第2湾曲部分に繋がる第2弾性部とは同方向に延出することとなる。そのため、複数の第1湾曲部分の夫々と複数の第2湾曲部分の夫々とが逆方向に湾曲しているものに比べて、シールド部材全体の厚さを薄くすることができる。
【0014】
本開示に係るシールド部材の他の特徴構成は、複数の前記第2弾性部の夫々の先端部は、前記中間部に対する複数の前記第2湾曲部分の夫々の湾曲方向とは反対方向に湾曲している点にある。
【0015】
本構成においては、複数の第2弾性部の夫々の先端部が、中間部に対する複数の第2湾曲部分の夫々の湾曲方向とは反対方向に湾曲しているので、先端部の当該湾曲している部分を例えばシールドカバーの平面部に接触させることにより、接触させた状態で、シールド部材とシールドカバーとの相対位置を円滑に変化させることができる。
【0016】
本開示に係るシールド部材の他の特徴構成は、複数の前記第1スリットの夫々のスリット幅、及び、複数の前記第2スリットの夫々のスリット幅は、何れも板厚の2倍以下である点にある。
【0017】
本構成においては、複数の第1スリットの夫々のスリット幅、及び、複数の第2スリットの夫々のスリット幅を、何れも板厚の2倍以下にすることにより、スリット幅を小さくすることができる。これにより、平面視における第1弾性部及び第2弾性部の面積を大きくすることができるので、第1弾性部と第2弾性部の夫々の接続対象との接触面積を大きくすることができ、安定した電気的接続を確保することができる。
【0018】
また、シールド部材の面積が大きくなるので、高周波伝搬時のインピーダンス特性が安定すると共に、シールド部材の外部へのノイズ放射を抑制することができる。また、シールド効果が高くなるので、外部ノイズからの高周波電流への影響を抑制することができる。
【0019】
本開示に係るシールド部材の他の特徴構成は、前記中間部は環状であって、全周に亘って補強部分を有する点にある。
【0020】
本構成においては、環状の中間部の全周に亘って補強部分を設けることにより、中間部の強度(剛性)を高めることができ、第1弾性部及び/又は第2弾性部のばね定数が高かったり大きく弾性変形したりすることにより弾性部に大きな力が発生したとしても、シールド部材は変形しない。これにより、例えば第1弾性部が、筒状シェルに高い接触圧力で接触しても、中間部の強度が高いためシールド部材は接触圧力の影響を受けて変形することはなく、第1弾性部は筒状シェルに対して高い接触圧力を維持することができる。
【0021】
本開示に係るシールドユニットの特徴構成は、上記の何れかに記載のシールド部材を備えたシールドユニットであって、導電性の筒状シェルと、前記筒状シェルに外嵌され、前記第1弾性部が当接することにより前記筒状シェルと電気的に接続された前記シールド部材と、前記シールド部材の前記第2弾性部と当接可能な導電性のシールドカバーと、を備えた点にある。
【0022】
本構成において、シールド部材は環状なので、第1弾性部から第2弾性部にかけての距離が一定になると共に、複数の第1弾性部は夫々が筒状シェルと電気的接続され、複数の第2弾性部は夫々がシールドカバーと電気的に接続されるので、例えば、筒状シェルの中心に導体を配置して、その導体とシールドユニットとに高周波電流を流したときに高いシールド性と安定したインピーダンス特性を確保することができる。
【0023】
本開示に係るコネクタモジュールの特徴構成は、上記の何れかに記載のシールド部材を備え、接続対象機器に電気的に接続されるコネクタモジュールであって、前記接続対象機器が収容された本体ケースに対して締結部材により固定されるコネクタケースと、前記コネクタケースに内挿されたコネクタと、を備え、前記コネクタは、導電性のコンタクトと、前記コンタクトを内挿して支持する絶縁性のホルダと、前記ホルダの外側を覆う導電性の筒状シェルと、前記筒状シェルを内挿して支持する絶縁性のハウジングと、前記筒状シェルに外嵌されて前記第1弾性部が弾性変形して当接することにより前記筒状シェルと電気的に接続された前記シールド部材と、前記シールド部材の前記第2弾性部を押圧可能な導電性のシールドカバーと、を有しており、前記コネクタケースが前記本体ケースと前記締結部材により締結固定されたとき、前記シールド部材の前記第2弾性部が弾性変形して前記シールドカバーを押圧することにより前記シールド部材と前記シールドカバーとが電気的に接続される点にある。
【0024】
本構成においては、シールド部材は複数の第1弾性部と複数の第2弾性部とを有するので、複数の第1弾性部に電気的に接続された筒状シェルと複数の第2弾性部に電気的に接続されたシールドカバーとの相対位置を、第1弾性部及び/又は第2弾性部を弾性変形させることにより電気的接続を維持したまま変化させることができる。これにより、振動等が印加されても第1弾性部及び/又は第2弾性部が弾性変形して衝撃を吸収することにより、筒状シェルやシールドカバーの耐久性を高めることができる。
【0025】
また、本構成のシールド部材は、シールドカバーを押圧可能な第2弾性部を有しており、コネクタケースが本体ケースと締結部材により締結固定されたとき、シールド部材の第2弾性部が弾性変形してシールドカバーを押圧することによりシールド部材とシールドカバーとが電気的に接続される。つまり、コネクタケースが接続対象機器の本体ケースと締結部材により締結固定される前のコネクタにおいては、シールド部材の第2弾性部は、シールドカバーに当接していないか、当接していたとしても大きな力でシールドカバーを押圧していない。その結果、シールド部材がシールドカバーに対して円滑に相対移動することが可能となっている。よって、接続対象機器をコネクタに装着する際、双方の軸芯間で位置ずれが生じていても、コンタクトを覆う筒状シェルに第1弾性部を弾性変形させて当接するシールド部材が、筒状シェルと共に移動し、位置ずれを矯正しながら位置合わせをすることができる。
【0026】
しかも、コネクタケースが本体ケースと締結部材により固定されたとき、シールド部材の第2弾性部が弾性変形してシールドカバーを押圧することによりシールド部材とシールドカバーとが電気的に接続されるため、本構成のコネクタモジュールは、高いシールド性を確保することができる。
【0027】
このように、高いシールド性を確保しつつ接続対象機器との位置合わせが容易な耐久性の高いコネクタモジュールを提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】カメラユニット(車載カメラ)の構成を模式的に示す図である。
図2】カメラユニットの全体斜視図である。
図3】コネクタモジュールの分解斜視図である。
図4】コネクタモジュールの分解斜視図である。
図5】コネクタモジュールの縦断面図である。
図6】コネクタモジュールに接続対象機器を接続する状態を示す縦断面図である。
図7】シールド部材の斜視図である。
図8】シールド部材の正面図である。
図9】シールド部材の縦断面図である。
図10】変形例に係るシールド部材の斜視図である。
図11】変形例に係るシールド部材の正面図である。
図12】変形例に係るシールド部材の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係るコネクタモジュールの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、図1に模式的に示すように、車両に搭載されるカメラユニット100(車載カメラ)に用いられるコネクタモジュール10を例として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0030】
図1に示すように、カメラユニット100は、カメラモジュール110(接続対象機器の一例)と、コネクタモジュール10と、カメラモジュール110を収容する樹脂等で構成される絶縁性の本体ケース9と、を有している。カメラモジュール110は、少なくとも撮像素子101と、撮像素子101を駆動制御すると共に撮像素子101から出力された映像信号を処理する電子回路102と、撮像素子101へ集光するレンズ103を備えた光学系104とを有する。このカメラユニット100は、車載以外の用途にも用いることができる(例えば、自転車、ドローン(drone)等に搭載されてもよい)。
【0031】
カメラユニット100は、同軸ケーブル120により画像処理装置(不図示)やモニタ装置(不図示)に電気的に接続される。同軸ケーブル120は、内部導体と外部導体とが誘電体(絶縁体)を挟んで同軸上に配置された構造のケーブルである。内部導体は、信号を伝達し、外部導体は電磁波による内部導体への影響を抑制するシールドとして機能する。本実施形態において、内部導体は、画像処理装置やモニタ装置からカメラユニット100の撮像素子101や電子回路102に対して電力を供給すると共に、撮像素子101及び電子回路102から出力される映像信号を画像処理装置やモニタ装置に出力する。
【0032】
カメラモジュール110の撮像素子101は、CCD(Charge Coupled Device)センサやCIS(CMOS Image Sensor)である。レンズ103は、1枚に限らず、複数枚であってもよい。電子回路102は、撮像素子101を駆動するクロックドライバや、撮像素子101から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ等を含んでいる。
【0033】
電子回路102は、1枚又は複数枚のプリント基板に電子部品が実装された回路基板として構成されている。複数の回路基板を有する場合には、回路基板間の電気的接続にフレキシブル基板が用いられてもよい。電子回路102が形成された回路基板にはレセプタクルA(図5参照)が実装されている。コネクタモジュール10は、レセプタクルAに電気的に接続されると共に、同軸ケーブル120にも電気的に接続されて、電子回路102と同軸ケーブル120とを電気的に接続する。
【0034】
図2には、カメラユニット100の全体斜視図が示されており、図3図4には、コネクタモジュール10の分解斜視図が示されており、図5には、コネクタモジュール10の縦断面図が示されている。図2に示すようにコネクタモジュール10は、コネクタケース10Aと、コネクタケース10Aに内挿されるコネクタ10Bと、を備えている。コネクタケース10Aと本体ケース9とは、複数(本実施形態では2つ)のボルトB(締結部材の一例)により固定される。図3に示すように、コネクタ10Bは、ハウジング8と、端子モジュール30と、外部シール部材6と、シールドケース7と、回転防止機構5(回転防止部材の一例)と、を有している。また、図4に示すように、端子モジュール30は、中心導体1(コンタクトの一例)と、ホルダ2と、筒状シェル3と、内部シール部材4とを有している。端子モジュール30は、同軸ケーブル120と同様の機能を有している。中心導体1は、同軸ケーブル120の内部導体に対応し、ホルダ2は同軸ケーブル120の誘電体(絶縁体)に対応し、筒状シェル3は同軸ケーブル120の外部導体に対応する。
【0035】
図5に示すように、コネクタケース10Aは、コネクタ10Bを収容するケースであり、コネクタ10Bのハウジング8は、端子モジュール30と、外部シール部材6とを収容するケースである。図2に示すように、コネクタケース10Aは、カメラユニット100の中では、カメラモジュール110に対して後方(図2においては上方)に位置することになるので、リアケースと称される場合がある。本体ケース9は、カメラユニット100の中では、リアケースに対してフロントケースと称される場合がある。ハウジング8が内挿されて固定されたコネクタケース10Aと本体ケース9とは、複数のボルトBにより互いに締結され、内部に端子モジュール30、外部シール部材6、シールドケース7、回転防止機構5及びレセプタクルAの収容空間が形成される(図5も参照)。
【0036】
図5に示すように、シールドケース7は、シールドケース7の外部空間E1を伝搬する電磁波からシールドケース7の内部空間E2を遮蔽する。シールドケース7は、カメラモジュール110のレセプタクルAの少なくとも一部を覆って、電磁ノイズ等の電磁波から電子回路102を遮蔽する。このシールドケース7は、電子回路102のグラウンドに接続されている。上述の同軸ケーブル120の外部導体は、筒状シェル3に電気的に接続されている。また、後述するようにシールドケース7と筒状シェル3とは電気的に接続されている。従って、シールドケース7が電子回路102のグラウンドに電気的に接続されているとき、筒状シェル3及び同軸ケーブル120の外部導体も、電子回路102のグラウンドに電気的に接続されている。
【0037】
以下、図2図9を用いて、第一実施形態に係るコネクタモジュール10について、詳細に説明する。
【0038】
上述したようにコネクタモジュール10は、コネクタケース10Aと、コネクタ10Bと、を備えている。コネクタ10Bは、ハウジング8と、端子モジュール30と、外部シール部材6と、シールドケース7と、回転防止機構5と、を有している。また、端子モジュール30は、中心導体1と、ホルダ2と、筒状シェル3と、内部シール部材4と、を有している。
【0039】
図4図5に示すように、中心導体1は、信号を伝送する線状の導体である。本実施形態では、中心導体1は、直線状部1aのみで構成されており、中心導体1の延伸方向を以下、第1方向Lと称して説明する。また、第1方向Lに直交する方向を径方向Rと称し、径方向Rにおいて中心導体1へ向かう方向を径方向内側R1、中心導体1から離れる方向を径方向外側R2と称する。
【0040】
ホルダ2は、円柱形の絶縁体の中心に、中心導体1が貫通する貫通孔23を有した円筒状部材であり、中心導体1を内挿して支持する。ホルダ2は、中心導体1を外部から絶縁するために、樹脂などの絶縁性(非導電性)材料によって形成されている。ホルダ2の第1方向Lにおける長さは、中心導体1より短い。従って、ホルダ2は、中心導体1の第1方向Lにおける中央部14を覆って中心導体1を支持する。つまり、中心導体1の両端は、ホルダ2に覆われず、露出して第1端子部11及び第2端子部12となる。中心導体1は、第1端子部11が同軸ケーブル120の側になり、第2端子部12がカメラモジュール110の側(レセプタクルAの側)になるように配置される。図4では便宜的に分解斜視図を示しているが、中心導体1は、ホルダ2にインサート成形されている。ホルダ2に覆われる中央部14の両端部には、径方向外側R2に突出した第一環状突出部14a及び第二環状突出部14bが形成されている。このように中心導体1の第1方向Lにおける中央部14の両側に環状突出部14a,14bを形成し、この中央部14をホルダ2にインサート成形することによって一体化すれば、中心導体1がホルダ2から脱落することが確実に防止される。また、中央部14の外径に比べて第1端子部11及び第2端子部12の外径が小さく設定されている。このように、中心導体1の直線状部1aは、第1端子部11,第2端子部12及び中央部14によって構成されている。尚、中心導体1には、第一環状突出部14aと第二環状突出部14bの何れか一方だけが形成されていてもよいし、第1端子部11又は第2端子部12が屈曲形成されていてもよい。
【0041】
ホルダ2は、第2端子部12の側の端部に、第2端子部12に向かうに連れて径方向外側R2に拡がっており、弾性変形可能な突片22を複数(本実施形態では3つ)有している。これら突片22は、第2端子部12の側に自由端を有する片持ち梁状のアームで構成されている。ホルダ2を筒状シェル3に挿入するに連れて突片22が径方向内側R1に弾性変形し、後述する筒状シェル3の第一係合凹部31に到達した後に径方向外側R2に復帰して、突片22と筒状シェル3の第一係合凹部31とが係合される。このため、ホルダ2と筒状シェル3との組み付けが容易であり、突片22が第一係合凹部31に係合することにより、ホルダ2が筒状シェル3から脱落することが防止される。
【0042】
筒状シェル3は、ホルダ2の径方向外側R2を覆う円筒状の導電性部材であり、ハウジング8から突出した(ハウジング8に覆われていない)筒状端部34を有している。この筒状端部34の内周面は、開口に向かうほど拡径するテーパー面34bが形成されている。筒状シェル3は、金属によって形成されている。筒状シェル3には、第1端子部11の側の一部分に、内周面から径方向内側R1に環状に延出した環状延出部33が形成されている。筒状シェル3には、第2端子部12の側の一部分に、内周面から径方向外側R2に環状に窪んだ第一係合凹部31が形成されている。上述したように、この第一係合凹部31にホルダ2の複数の突片22が係合する。これにより、筒状シェル3に対してホルダ2が固定される。この第一係合凹部31の径方向外側R2の側が有底であり閉塞されているため、電磁ノイズがホルダ2の側に侵入することが防止される。本実施形態における第一係合凹部31は、筒状シェル3の内周面を切削加工することによって形成されている。また、筒状シェル3には、第1方向Lにおける中央付近の外周面から径方向内側R1に環状に窪んだ有底の第二係合凹部32が形成されている。この第二係合凹部32と後述するハウジング8の複数の係合爪81aが係合することにより、筒状シェル3がハウジング8から脱落することが防止される。また、筒状シェル3の筒状端部34には、外周面から径方向内側R1に環状に窪んだ有底の第三係合凹部34aが形成されている。
【0043】
内部シール部材4は、同軸ケーブルとして機能する端子モジュール30内に、液体などが浸入しないように封止する目的で設けられる。内部シール部材4は、弾性力を有する円環状の部材(弾性部材)である。内部シール部材4は、第1方向Lにおける一方側の面が環状延出部33によって係止され、他方の面がホルダ2の第1方向Lにおける端面によって係止されている。
【0044】
端子モジュール30において、内部シール部材4の一方側は環状延出部33に当接し、他方側は中心導体1を支持したホルダ2に当接している。そして、ホルダ2は、突片22を筒状シェル3の第一係合凹部31に係合させている。このように、端子モジュール30において、内部シール部材4とホルダ2とは、環状延出部33及びホルダ2の突片22によって挟まれた状態で第1方向Lに沿った方向における規定位置に配置されている。このようにして形成された端子モジュール30は、ハウジング8の円筒空間E3に向かって挿入していくことによって、ハウジング8に取り付けられる。
【0045】
図3図5に示すように、ハウジング8は、端子モジュール30及び外部シール部材6を収納するケースであり、端子モジュール30(筒状シェル3)を内挿して支持する。端子モジュール30の外面は導電性の筒状シェル3であるため、筒状シェル3をコネクタモジュール10の外部から絶縁するために、ハウジング8は、樹脂などの絶縁性(非導電性)材料によって形成されている。
【0046】
ハウジング8は、円筒状の筒状部8Aと、筒状部8Aから径方向外側R2に円環状に突出した外周部8Bとを有している。筒状部8Aの内周面には、基端部から第1方向Lに沿って第1端子部11側に延出し、先端が径方向内側R1に突出した複数(本実施形態では4つ)の係合爪81aが設けられている。上述したように、これら係合爪81aが、筒状シェル3の第二係合凹部32と係合している。外周部8Bの表面は、コネクタケース10Aの外面と面一となるように露出しており、外周部8Bにレーザー溶着等を施すことにより、コネクタケース10Aとコネクタ10B(ハウジング8)とが水密状態に固定される。
【0047】
筒状部8Aは、外周部8Bを境界として、第1方向Lに沿った第1端子部11側に第一円筒状部81を有し、第1方向Lに沿った第2端子部12側に第二円筒状部82を有している。第二円筒状部82の外周面には、回転防止機構5が係合する複数(本実施形態では2つ)の係合凸部83が径方向外側R2に突出形成されている。この係合凸部83には、後述する第二回転防止部材5Bが当接する段部83aと、両側方から径方向外側R2にさらに突出した突出係合部83bとが形成されている(図4参照)。第二円筒状部82の内周面には、外部シール部材6が装着されるシール凹部84が形成されている。この外部シール部材6は、第1方向Lにおいてハウジング8の底部となるシール凹部84に当接するように配置されている。外部シール部材6も、内部シール部材4と同様に、弾性力を有する円環状の部材(弾性部材)である。
【0048】
上述した内部シール部材4は、筒状シェル3の内周面及び中心導体1の外周面に圧接し、外部シール部材6は、ハウジング8の内周面及び筒状シェル3の外周面に圧接し、ハウジング8の円筒空間E3への液体の浸入を抑制する。また、外周部8Bにレーザー溶着等を施すことにより、コネクタケース10Aとコネクタ10B(ハウジング8)とが水密状態に固定され、コネクタケース10A内部への液体の浸入が抑制される。本実施形態のように、コネクタモジュール10が車載カメラとしてのカメラユニット100に利用される場合、内部シール部材4や外部シール部材6等を用いた封止は有効である。車載カメラとしてのカメラユニット100は、例えば、運転支援や、走行状態の記録のために用いられることも多い。この際、カメラユニット100は、バンパーやドア等、車両の外装に設置されることが多い。車両の外装は、雨や雪、路上の水たまりなどからの水滴等を浴びやすい。従って、上述したような封止を施すことによって、コネクタモジュール10に防水性を付与すると好適である。
【0049】
図3図4に示すように、シールド部材7Aとシールドカバー7Bとからなるシールドケース7は、シールドケース7の外部空間E1に存在する電磁波、例えば、中心導体1によって伝送される信号やカメラモジュール110の電子回路102になどに影響を与える電磁ノイズなどの電磁波から内部空間E2を遮蔽する(図5も参照)。このため、シールド部材7Aとシールドカバー7Bも、金属などの導電性材料によって形成されている。以下、筒状シェル3とシールド部材7Aとシールドカバー7Bとをまとめてシールドユニット7Cという。シールドユニット7Cは、コネクタ10Bに高周波電流を流したときに高いシールド性と安定したインピーダンス特性を確保するためのものである。
【0050】
図7図9に示すように、シールド部材7Aは、円環状かつ平板状の導電性材料からなり、内周部分に環状に均等に配置された複数(本実施形態では8つ)の第1弾性部74と、外周部分に環状に均等に配置された複数(本実施形態では16個)の第2弾性部75と、径方向Rで複数の第1弾性部74と複数の第2弾性部75との間に形成された環状の中間部76と、を有している。複数の第1弾性部74の夫々は、周方向に沿う幅が同じであり、弾性変形可能である。複数の第2弾性部75の夫々は、周方向に沿う幅が同じであり、弾性変形可能である。シールド部材7Aは、平板にプレス加工を行うことにより形成されている。
【0051】
第1弾性部74の夫々は、内周縁から径方向外側R2に沿って形成された複数(本実施形態では8つ)の第1スリット74aにより形成されている。第1弾性部74の夫々は、平板状の中間部76に対して基端部分から第1方向Lに向かって第1中心角θ1で湾曲した第1湾曲部分74cを有している。第1弾性部74の径方向内側R1には、端子モジュール30(筒状シェル3)が貫通する円形状の開口部73を有する。開口部73を端子モジュール30(筒状シェル3)が貫通すると、複数の第1弾性部74の夫々が弾性変形して第1弾性部74の内端74bが、第三係合凹部34aの底部34a1及び一方の側壁34a2(筒状シェル3の外周部位の一例)に接触することで、シールド部材7Aと筒状シェル3とは電気的に接続される(図5も参照)。尚、本実施形態では第1弾性部74は8つ形成されているが、7つ以下又は9つ以上であってもよい。また、複数の第1弾性部74は内周部分に環状に均等に配置されているが、不均等に配置されていてもよいし、夫々の第1弾性部74の周方向に沿う幅は異なっていてもよい。
【0052】
第2弾性部75の夫々は、外周縁から径方向内側R1に沿って形成された複数(本実施形態では16個)の第2スリット75aにより形成されている。第2弾性部75の夫々は、中間部76に対して基端部分から第1方向Lに向かって第2中心角θ2で湾曲した第2湾曲部分75cを有している。第1弾性部74の第1湾曲部分74cと第2弾性部75の第2湾曲部分75cとは中間部76に対して同じ方向に湾曲しており、第1湾曲部分74cの第1中心角θ1は、第2湾曲部分75cの第2中心角θ2よりも大きい。第1弾性部74(第1湾曲部分74c)と第2弾性部75(第2湾曲部分75c)とが同じ方向に湾曲しているため、第1弾性部74と第2弾性部75とは同方向に延出することとなる。そのため、第1弾性部74と第2弾性部75とが逆方向に湾曲しているものに比べて、シールド部材7A全体の厚さを薄くすることができる。
【0053】
第2弾性部75の先端部75bは、中間部76に対して第2湾曲部分75cとは反対方向に湾曲しており、先端部75bの湾曲面がシールドカバー7Bと接触可能なように形成されている。つまり、第2弾性部75により、シールド部材7Aの中間部76とシールドカバー7Bとの間に、第1方向Lの隙間G1(以下、単に「隙間G1」という。)が形成されている(図5参照)。このように、複数の第1弾性部74の内端74bが筒状シェル3の外周部位と接触し、第2弾性部75の先端部75bの湾曲面がシールドカバー7Bと接触することにより、シールドケース7と端子モジュール30(筒状シェル3)とが電気的に接続される。尚、本実施形態では第2弾性部75は16個形成されているが、15個以下又は17個以上であってもよい。また、複数の第2弾性部75は外周部分に環状に均等に配置されているが、不均等に配置されていてもよいし、夫々の第2弾性部75の周方向に沿う幅は異なっていてもよい。
【0054】
本実施形態において、第1スリット74aのスリット幅w1と第2スリット75aのスリット幅w2は、何れもシールド部材7Aの板厚tの2倍以下となっている。尚、第1スリット74aのスリット幅w1と第2スリット75aのスリット幅w2は、シールド部材7Aの板厚tの2倍を超えてもよい。
【0055】
本実施形態に係るシールド部材7Aにおいては、第1湾曲部分74cの第1中心角θ1は、第2湾曲部分75cの第2中心角θ2よりも大きいので、中間部76に対して第1弾性部74が第2弾性部75よりも大きく湾曲している。そのため、第1弾性部74が接触圧力を発生させる方向と、第2弾性部75が接触圧力を発生させる方向とを変化させることができる。具体的には、複数の第1弾性部74の夫々が弾性変形して第1弾性部74の内端74bを筒状シェル3の側面である第三係合凹部34aの底部34a1及び一方の側壁34a2に接触させて、径方向Rに対して接触圧力を発生させることができると共に、第2弾性部75の先端部75bの湾曲面をシールドカバー7Bの底部71に接触させて、第1方向Lに対して接触圧力を発生させることができる。
【0056】
本実施形態に係るシールド部材7Aにおいては、複数の第1スリット74aの夫々のスリット幅w1、及び、複数の第2スリット75aの夫々のスリット幅w2を、何れも板厚tの2倍以下にすることにより、スリット幅w1,w2を小さくすることができる。これにより、平面視における第1弾性部74及び第2弾性部75の面積を大きくすることができるので、第1弾性部74と筒状シェル3との接触面積及び第2弾性部75とシールドカバー7Bとの接触面積を大きくして安定した電気的接続を確保することができる。
【0057】
また、シールド部材7Aの面積が大きくなるので、コネクタ10Bの中心導体1とシールドユニット7Cに高周波電流を流した時の対するインピーダンス特性が安定すると共に、シールドユニット7Cの外部へのノイズ放射を抑制することができる。また、シールドユニット7Cによるシールド効果が高くなるので、外部ノイズからの高周波電流への影響を抑制することができる。
【0058】
シールドカバー7Bは、有底矩形筒状のケースであり、中心導体1の延伸方向に沿った第1方向Lに直交する矩形状の底部71と、底部71の周囲から屈曲して第1方向Lに沿って延伸する側壁部72とを有している。底部71の中央には、端子モジュール30(筒状シェル3)が貫通する円形状の開口部71aが形成されており、底部71の開口部71aの内周面よりも径方向内側R1に第1弾性部74が位置し、底部71の開口部71aよりも径方向外側R2の部位に第2弾性部75の先端部75bの湾曲面が接触する。底部71の対角線上にある一対の第一角部71bに切欠きが形成されており、この第一角部71bの切欠き近傍にはコネクタケース10Aからのシールドカバー7Bの脱落を防止するための脱落防止ピンPが挿入されるピン挿入孔71cが貫通形成されている。また、底部71の一対の第一角部71bとは異なる対角線上にある一対の第二角部71dには、後述するコネクタケース10Aに形成された脱落防止突起Tが嵌入される突起挿入孔71d1が貫通形成されている。側壁部72は、底部71の形状に合わせて第1方向Lに沿って立設している。
【0059】
図3図5に示すように、回転防止機構5は、第一回転防止部材5Aと第二回転防止部材5Bとを有する。これら第一回転防止部材5A及び第二回転防止部材5Bは、樹脂などの絶縁性(非導電性)材料によって形成されている。回転防止機構5は、コネクタケース10Aとシールドケース7との間に配置されており、ハウジング8に係合してハウジング8の回転を防止する。第一回転防止部材5Aは、一対の湾曲部51と一対の直線部52とで形成されたリング状部材である。この直線部52の中央には、径方向外側R2に突出した一対のブロック部52aが形成されており、この一対のブロック部52aのコネクタケース10A側の面の中央には、径方向Rに沿った溝52bが形成されている。第二回転防止部材5Bは、反転させた一対のU字状部材53が繋がってリング状に一体形成されている。このU字状部材53の内周面には、上述したハウジング8の突出係合部83bに係合する係合凹部53aが切欠き形成されており、第二回転防止部材5Bの対角線上にある一対の角部の外側面には、L字状に窪んだ窪み部55が形成されている。
【0060】
第一回転防止部材5Aは、ブロック部52aの溝52bが、後述するコネクタケース10Aの突起部15b1に係合して位置決めされ、ハウジング8の係合凸部83が直線部52に対向することによりハウジング8がコネクタケース10Aに対して回転することを防止する。また、第二回転防止部材5Bは、窪み部55が後述するコネクタケース10Aの第一膨出部15cに係合して位置決めされ、ハウジング8の第二円筒状部82に形成された段部83aに当接した状態でハウジング8の突出係合部83bが係合凹部53aと係合することにより、ハウジング8がコネクタケース10Aに対して回転することが防止される。このように、第一回転防止部材5A及び第二回転防止部材5Bにより、ハウジング8がコネクタケース10Aに対して回転することを確実に防止することができるが、回転防止機構5を第一回転防止部材5A及び第二回転防止部材5Bの何れか一方で構成してもよい。
【0061】
図3に示すように、コネクタケース10Aは、樹脂などの絶縁性(非導電性)材料から成る底部15と側壁16とを有するボックス状部材である。底部15の外面には、ハウジング8の外周部8Bが挿入される円環状溝である環状凹部15aが形成されており、この環状凹部15aの中央には、ハウジング8の第二円筒状部82が挿通される挿通孔部15a1が形成されている。上述したように、環状凹部15aに外周部8Bが挿入されたとき、外周部8Bの表面はコネクタケース10Aの外面と面一となり、外周部8Bにレーザー溶着等を施すことにより、コネクタケース10Aとコネクタ10B(ハウジング8)とが水密状態に固定される。側壁16の外面のうち対角線上にある一対の角部には、ボルトBの頭部が配置されるボルト収容部16aが切欠き形成されており、ボルトBが螺合される螺子穴Baが貫通形成されている。
【0062】
図4に示すように、底部15の内面には、第一回転防止部材5Aの外周面に沿った周溝部15bが形成されており、この周溝部15bのうち、第一回転防止部材5Aの溝52bに対応する箇所には、溝52bに係合する突起部15b1が突出形成されている。側壁16の内面のうち対角線上にある一対の角部には、脱落防止ピンPが嵌合される嵌合孔Paを有する一対の第一膨出部15cが形成されている。側壁16の内面のうち一対の第一膨出部15cとは異なる対角線上にある一対の角部には、シールドカバー7Bの突起挿入孔71d1に嵌合する脱落防止突起Tを有する一対の第二膨出部15dが形成されている。
【0063】
上述した端子モジュール30及びシールドケース7が、ハウジング8及びコネクタケース10Aに収容されて固定された組み立て品は、狭義のコネクタモジュール10である。この狭義のコネクタモジュール10にさらに、本体ケース9を含めてコネクタモジュール10と称してもよい。但し、本体ケース9を含める場合には、本体ケース9にカメラモジュール110が収容されている可能性がある。この場合、コネクタモジュール10は、カメラユニット100とほぼ同義となる。従って、端子モジュール30及びシールドケース7が、ハウジング8及びコネクタケース10Aに収容されて固定された組み立て品、さらに本体ケース9を含めた中間組み立て品、さらにカメラモジュール110を収容したカメラユニット100の何れも、コネクタモジュール10に対応させることができる。
【0064】
図6には、第一実施形態に係る狭義のコネクタモジュール10にカメラモジュール110を電気的に接続する形態が示されている。図4に示すように、ハウジング8の第二円筒状部82の側から端子モジュール30、外部シール部材6、コネクタケース10A、第一回転防止部材5A、第二回転防止部材5B、シールド部材7A、シールドカバー7Bをこの順に組付けて脱落防止ピンPにてシールドカバー7Bをコネクタケース10Aに固定することで、コネクタモジュール10を作製する。図6に示すように、このコネクタモジュール10の筒状シェル3の筒状端部34と、電子回路102が形成された回路基板に電気的に接続された導体Aaを有するレセプタクルAと、を近付ける。このとき、筒状シェル3の軸芯に対してレセプタクルAの導体Aaの軸芯が径方向Rに位置ずれしている場合、レセプタクルAが筒状シェル3の筒状端部34の内周面に形成されたテーパー面34bに当接する。
【0065】
そして、コネクタモジュール10とレセプタクルAとをさらに近付けると、テーパー面34bとレセプタクルAとが当接し、テーパー面34bに沿って、端子モジュール30、ハウジング8及び回転防止機構5が、コネクタケース10Aに対して径方向Rに相対移動する。また、筒状シェル3に係合しているシールド部材7Aが、脱落防止ピンP及び脱落防止突起Tによりコネクタケース10Aに固定されたシールドカバー7Bに対して摺接しながら径方向Rに相対移動する。このとき、隙間G1を有した状態で、シールド部材7Aの第2弾性部75の先端部75bに形成された湾曲面がシールドカバー7Bと接触しているため、端子モジュール30(筒状シェル3)及びハウジング8等がコネクタケース10Aに対して径方向Rに円滑に相対移動し、筒状シェル3の軸芯とレセプタクルAの導体Aaの軸芯とが一致し、中心導体1(第2端子部12)と導体Aaの双方が電気的に接続される。この状態で、ハウジング8の外周部8Bにレーザー溶着等を施すことにより、コネクタケース10Aとコネクタ10B(ハウジング8)とが封止固定される。最後に、コネクタケース10Aと本体ケース9を複数のボルトBにより互いに締結する。このとき、本体ケース9に当接しているシールドカバー7Bが押し上げられ、シールド部材7Aとシールドカバー7Bとの隙間G1を減少させるように第2弾性部75が弾性変形し、シールド部材7Aとシールドカバー7Bとの接触が確実なものとなる。
【0066】
本実施形態のシールド部材7Aは、第1弾性部74と筒状シェル3とが係合しており、第2弾性部75の先端部75bに形成された湾曲面とシールドカバー7Bとが接触しているため、振動等が印加されても第1弾性部74及び/又は第2弾性部75が弾性変形して衝撃を吸収するため、筒状シェル3やシールドカバー7Bの耐久性を高めることができる。
【0067】
本実施形態のシールドケース7は、シールド部材7Aとシールドカバー7Bとを有しており、シールド部材7Aにはシールドカバー7Bと接触可能な第2弾性部75形成されている。また、コネクタケース10Aが本体ケース9とボルトBにより固定される前のコネクタ10Bは、シールド部材7Aに形成された第2弾性部75により、シールド部材7Aの中間部76とシールドカバー7Bとの間に、第1方向Lの隙間G1が形成されている。つまり、第2弾性部75が柔軟に変形しながら、シールド部材7Aがシールドカバー7Bに対して相対移動することが可能となっている。その結果、レセプタクルAをコネクタ10Bに装着する際、双方の軸芯間で位置ずれが生じていても、中心導体1を覆う筒状シェル3に第1弾性部74により係合するシールド部材7Aが、筒状シェル3と共に移動し、位置ずれを矯正しながら位置合わせをすることができる。
【0068】
しかも、コネクタケース10Aが本体ケース9とボルトBにより固定されたとき、コネクタ10Bは、第2弾性部75が弾性変形することによりシールド部材7Aとシールドカバー7Bとの隙間G1が減少してシールド部材7A及びシールドカバー7Bが電気的に接続される。その結果、本実施形態のコネクタモジュール10は、高いシールド性を確保することができる。
【0069】
本実施形態のように、ハウジング8において、コネクタケース10Aの外面に固定される円環状の外周部8Bを形成すれば、この外周部8Bをレーザー溶着によりコネクタケース10Aに固定することが容易となる。また、振動等によりコネクタ10Bに荷重が加わった場合でもコネクタケース10Aやハウジング8で受け止めるため、コネクタ10Bの導電性部材(中心導体1、筒状シェル3、シールドケース7)とカメラモジュール110の電子回路102との間に加わる荷重を抑制することができる。さらに、本実施形態のように、ハウジング8の回転を防止する回転防止機構5を備えれば、ハウジング8の位置決めが確実になされ、ハウジング8とコネクタケース10Aとの固定作業が容易なものとなる。
【0070】
[シールド部材の変形例]
図10図12にシールド部材7Aの変形例を示す。本変形例に係るシールド部材7Aは、中間部76が平板状ではなく、一部が第1弾性部74、第2弾性部75の湾曲方向と同じ方向に窪んだ補強部分76aを有して構成されている点において、上記実施形態におけるシールド部材7Aと異なる。補強部分76aは、断面がU字状の環状溝であり、底面と2つの側面を有している。2つの側面のうち、径方向内側R1の側面の高さは、径方向外側R2の側面の高さよりも低くなっている。また、第1弾性部74の径方向Rに沿う長さ(ばね長)は上記実施形態における第1弾性部74の長さよりも短くなっている。
【0071】
本変形例のように、シールド部材7Aの中間部76に補強部分76aを設けることにより、中間部76の強度(剛性)を高めることができ、第1弾性部74及び/又は第2弾性部75のばね定数が高かったり大きく弾性変形したりすることにより弾性部に大きな力が発生したとしても、シールド部材7Aは変形しない。例えば、第1弾性部74の内端74bが、筒状シェル3の第三係合凹部34aの底部34a1及び一方の側壁34a2に高い接触圧力で接触しても、中間部76の強度が高いためシールド部材7Aは接触圧力の影響を受けて変形することはなく、第1弾性部74は筒状シェル3に対して高い接触圧力を維持することができる。
【0072】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態では、第1弾性部74の内端74bを筒状シェル3の第三係合凹部34aの底部34a1及び一方の側壁34a2に接触させたが、第1弾性部74の内端74b以外の部分(例えば中央部分)も第三係合凹部34aの底部34a1に接触させてもよいし、第1弾性部74と第三係合凹部34aとの電気的な接続を確保する接触部分は特に限定されない。また、第1弾性部74の第1湾曲部分74cの湾曲方向は、中間部76に対して第2弾性部75の第2湾曲部分75cの湾曲方向とは逆の方向であってもよい。
【0073】
(2)回転防止機構5を省略して、ハウジング8の外周部8Bに位置決め突起等を設けてもよい。
(3)上述したハウジング8の筒状部8Aを円筒状に構成したが、断面多角形状の角筒状に構成してもよい。また、ハウジング8の外周部8Bを円環状に構成したが、多角形状に構成してもよい。
(4)上述したコネクタモジュール10は、同軸コネクタに限定されず、多極の差動コネクタであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、シールド部材、シールドユニット、及びコネクタモジュールに利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 :中心導体(コンタクト)
2 :ホルダ
3 :筒状シェル
5 :回転防止機構(回転防止部材)
5A :第一回転防止部材
5B :第二回転防止部材
7 :シールドケース
7A :シールド部材
7B :シールドカバー
7C :シールドユニット
8 :ハウジング
8B :外周部
9 :本体ケース
10 :コネクタモジュール
10A :コネクタケース
10B :コネクタ
73a :外縁部
74 :第1弾性部
74a :第1スリット
74c :第1湾曲部分
75 :第2弾性部
75a :第2スリット
75b :先端部
75c :第2湾曲部分
76 :中間部
76a :補強部分
B :ボルト(締結部材)
θ1 :第1中心角
θ2 :第2中心角
図1
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図3
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図5
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図10
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図12