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特許7411533酸素還元反応のための金属間L10-NiPtAg触媒
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  • 特許-酸素還元反応のための金属間L10-NiPtAg触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】酸素還元反応のための金属間L10-NiPtAg触媒
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/92 20060101AFI20231228BHJP
   B01J 23/90 20060101ALI20231228BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231228BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20231228BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20231228BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20231228BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20231228BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01M4/92
B01J23/90 M
B01J37/08
B01J37/16
H01M4/88 K
H01M8/10 101
H01M12/06 F
H01M12/08 K
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020190198
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2021097037
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】16/716,127
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】コーチョン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】長井 智幸
(72)【発明者】
【氏名】リー チン チョウ
(72)【発明者】
【氏名】ホンフェイ チア
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-168588(JP,A)
【文献】特開2017-045625(JP,A)
【文献】特表2019-534145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0133483(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86-4/98
B01J 23/90
B01J 37/08
B01J 37/16
H01M 8/10
H01M 12/06
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1000A/gPtを超える質量活性(MA)を有する金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子を含む、酸素還元反応のための電極触媒。
【請求項2】
前記金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子が、1100A/gPtを超える質量活性(MA)を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子が、40%を超える質量活性(MA)保持率を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子が、45%を超える質量活性(MA)保持率を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子は、式NiPtAgで表され、ここで0.4≦x≦0.6、0.4≦y≦0.6、及びz≦0.1である、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
式NiPtAg、ここで、0.4≦x≦0.6、0.4≦y≦0.6、及びz≦0.1、で表される金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子を含む触媒の合成方法であって、
還元性の金属前駆体の共還元によってNiPt合金系を形成すること;
前記NiPt合金系に銀(Ag)をドープして、NiPtAg合金ナノ粒子を形成すること;
前記NiPtAg合金ナノ粒子を、カーボン担体上に担持し、300℃~630℃で少なくとも6時間焼鈍して、L1-NiPtAg金属間構造体を形成すること、
を含む、方法。
【請求項7】
前記焼鈍が、500℃~600℃の範囲の温度で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記焼鈍が、550℃~600℃の範囲の温度で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記焼鈍が、550℃の温度で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子が、1100A/gPtを超える質量活性(MA)を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子が、40%を超える質量活性(MA)保持率を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子が、45%を超える質量活性(MA)保持率を有する、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、改善された活性及び耐久性のための、金属間構造を有する合金ナノ粒子を含有する、酸素還元反応のための電極触媒、並びに該触媒の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で提供される背景技術の説明は、本開示の文脈を一般的に提示するためのものである。
【0003】
プロトン交換膜型燃料電池(PEMFC)は、世界的なエネルギー需要の増大問題を解決する有望なエネルギー変換デバイスであることが示されており、これは、PEMFCが再生可能エネルギー源である水素からの化学エネルギーを電気エネルギーに変換できるためである。主なエネルギー損失は、酸素還元反応(ORR)が起こるカソード側にある。この課題に対処するためには、より高い活性及び耐久性を有する触媒が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
概して、NiPt合金ナノ粒子(NP)触媒は、他のPt系の合金触媒及び従来のPt/C触媒よりもはるかに高いORR活性を示すが、酸性電気化学的な作動環境下におけるNi浸出により、安定性に問題がある。Pt系の合金触媒の安定性の問題を、格子歪効果によって解決するために、金属間構造体を導入した。金属間L1-FePt及びCoPtはよく研究されているが、金属間L1-NiPtはほとんど報告されておらず、より低い性能を示した。熱力学及び動力学の観点から、従来の熱焼鈍法を用いて金属間L1-NiPtを合成することは、より困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このセクションは、本開示の一般的な概要を提供し、その全範囲又はその特徴の全ての包括的な開示ではない。
【0006】
本発明の一つの態様は、優れたORR活性及び耐久性を有する金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子を含む酸素還元反応のための電極触媒を提供することにある。一つの実施形態において、金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子は、式NiPtAgで表され、ここで、0.4≦x≦0.6、0.4≦y≦0.6、及びz≦0.1である。
【0007】
別の態様において、NiPtAgで表される金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子を含む触媒の合成法が提供され、ここで、0.4≦x≦0.6、0.4≦y≦0.6、及びz≦0.1である。該方法は、還元性の金属前駆体の共還元、Agのシーディング、及びNiPtAg合金ナノ粒子を生成するために、Agがシードされた溶液を所定の温度で不活性気体と接触させること、NiPtAg合金ナノ粒子をカーボン担体上に担持すること、及びL1-NiPtAg金属間構造体を形成するために焼鈍することを含む。
【0008】
上記の技術を向上させる、更なる適用分野及び様々な方法は、本明細書で提供される説明から明らかになるのであろう。この概要における説明及び特定の具体例は、例示のみを目的としたものであり、本開示の技術的範囲を限定することを意図したものではない。
【0009】
本教示は、詳細な説明及び添付の図面からより完全に理解されるのであろう:
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、固溶体構造体及び金属間構造体の概略図である。
図2図2は、Agドーピングの概念の概略図である。
図3図3は、本発明の触媒の調製工程の概略図である。
図4図4は、生成直後、焼鈍後、及び酸洗浄後のNiPtAgのXRDを示す。
図5図5は、加速安定性試験(AST)の前後における固溶体(S.S.)及びL1-NiPtAgの質量活性(MA)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載された図は、特定の局面の説明のために、本技術のものの中で、方法、アルゴリズム、及び装置の一般的な特徴を例示することが意図されていることに留意されたい。これらの図は、任意の所与の態様の特性を正確に反映するものではなく、本技術の技術的範囲内で特定の実施形態を定義又は限定することを必ずしも意図するものではない。更に、ある態様は、図の組み合わせからの特徴を組み込んでもよい。
【0012】
本教示は、酸素還元反応のための電極触媒を提供する。より具体的には、本発明の触媒は、金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子を含有する。例えば、図1を参照すると、固溶体構造体において、Pt原子とNi原子とはランダムに分布しているのに対し、金属間構造体において、Pt原子とNi原子とは層ごとに規則構造を形成している。この規則構造は、ORR活性と合金粒子の安定性を高める格子歪効果を生み出すであろう。更に、L1-NiPt構造体は、結晶c方向に強く結合したNi(3d)-Pt(5d)を持ち、したがって格子歪効果を生成し、Ptの電子状態を変えて、ORR活性と安定性を高める。
【0013】
本開示の金属間合金ナノ粒子は、MがNi、Cr、Mn、Co、Zn及びそれらの組み合わせから選択され、それらの組み合わせによって(CoNi)Pt等の三金属L1構造体を生成することができるMPt合金系に、銀(Ag)をドープして、L1-MPtAg金属間構造体、例えばL1-NiPtAgを形成することによって、形成することができる。例示的な実施形態において、金属間合金ナノ粒子は、式NiPtAgを有し、ここで、xは、約0.4から約0.6であり、yは、約0.4から約0.6であり、z≦0.1である。別の例示的な実施形態では、x=y=0.5である。更に別の例示的な実施形態において、ナノ粒子のサイズは、約5~6nmである。
【0014】
本発明はまた、金属間化合物L1-NiPtAg、合金ナノ粒子の合成方法を提供し、ここで、金属間化合物の形成を促進するために、Ag及び特別な焼鈍条件が使用される。より具体的には、本開示の実施形態によるNiPtAgナノ粒子は、Agドーピング法を用いて合成することができる。例えば、NiPtAgナノ粒子は、還元性の金属前駆体の共還元法、Agを用いたシーディング、及びNiPtAg合金ナノ粒子を生成するために、Agがシードされた溶液を特定の温度で不活性ガスと接触させることによって、形成されてもよい。
【0015】
「還元性の金属前駆体」は、特定の温度で還元剤と接触すると還元される材料である。「還元剤」は、還元性の金属前駆体を還元して、金属合金粒子を形成する。合成中におけるAgシーディングの量は、全ての金属前駆体の約0.01~約0.5モルパーセントの範囲である。一つの実施形態において、Agシーディングの量は、0.3モルパーセントである。次いで、NiPtAg合金ナノ粒子をカーボン担体上に担持し、続いて、適切な温度及び時間の下で焼鈍して、金属間構造体を得ることができる。
【0016】
金属間構造体の形成を容易にするためにAgを使用することは、本開示の有利な技術的特徴である。例えば、合成直後のナノ粒子におけるAgの存在は、以前に報告された金属間NiPtと比較して、金属間構造体の品質の制御を可能にする。図2を参照すると、反応中に、Ag原子は、拡散し、NiPt合金系から偏析し、これが多くの穴及び欠陥を作り出す。次いで、これらの欠陥は、原子が再配列するためのエネルギー障壁を減少させ、それによって、金属間構造、すなわち、熱的に動的安定な相への相転移を可能にする。更に、有機溶液相合成及びシード媒介成長メカニズムは、以前に報告された固相合成法と比較して、粒子の品質(サイズ分布)を保証する。金属間FePtAg系にAgドーピング法が適用されてきたが、FePtAg系は、粗悪な粒子の品質で開発され、磁気応用にのみ使用された。
【0017】
本開示はまた、金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子を含有する触媒の合成方法を提供する。図3は、触媒の調製を示す。合成直後のナノ粒子は、カーボン担体上に担持され、次いで、金属間構造体を形成するのに適した時間である約300℃~約630℃にてAr/H中で焼鈍されてもよい。他の適当なガスにはN/H及びHが含まれるが、これらに限定されない。一つの実施形態において、焼鈍温度は、500℃~600℃の範囲である。別の実施形態において、焼鈍温度は、550℃~600℃の範囲である。別の実施形態において、焼鈍温度は、550℃である。630℃を超えるより高い温度は、焼結、熱力学的安定相の反転、及びORR性能の抑制につながる可能性があり、一方、低すぎる焼鈍温度は、相転移処理を完了するのに長い時間がかかる。金属間合金ナノ粒子をMgOで被覆することは、焼結の問題を回避でき、MgOは、金属間構造体に干渉することなく酸洗で除去できる。別の実施形態において、焼鈍の時間は、少なくとも6時間である。焼鈍のための6時間以上の時間は、より良好な秩序度及び金属間構造体の形成を容易にする利点を生み出す。その後、生成物を回収し、酸洗して過剰のAgを除去して、ORR活性Pt表面を生成することができる。
【0018】
一つの実施形態において、金属間L1-NiPtAg合金ナノ粒子を含む触媒は、向上したORR活性及び耐久性を有する。例えば、良好なORR触媒は、2020年DOEターゲット(許容される耐久性(<40%の質量活性低下)を有する燃料電池装置において、440A/gPtの質量活性)を満たすべきである。本開示のある実施形態において、本発明の触媒は、1000A/gPtを超える質量活性(MA)を有する。別の実施形態において、本発明の触媒は、1100A/gPtよりも大きい質量活性(MA)を有する。別の実施形態において、本発明の触媒はまた、40%を超えるMA保持率を有する。別の実施形態において、本発明の触媒は、45%を超えるMA保持率を有する。ORR触媒の性能と耐久性は、PEMFCのカソードの主要な要素である。このような技術的特徴は、FCスタックの性能及び耐久性の強化、並びにコスト削減につながる可能性がある。
【実施例
【0019】
実施例
【0020】
本開示の様々な態様を、以下の実施例に関して更に説明する。これらの例は、本開示の特定の実施形態を例示するために提供され、本開示の技術的範囲を任意の特定の態様に限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0021】
NiPtAgナノ粒子の合成
【0022】
実施例において、78.7mgのPt(acac)及び51.4mgのNi(acac)を、250mLの2つ口フラスコに加えた。次いで、20mlのオレイルアミン(OAm)を添加した。溶液を撹拌しながら2分間60℃に加熱し、次いで室温に冷却した。28.6mgのAgAcを溶液に添加した。次いで、溶液をアルゴン流通下で15分間110℃に加熱した。続いて、溶液を更に250℃に加熱し、250℃で1時間保持した後、室温に冷却した。生成物を回収し、1分間での超音波処理によってアセトン(又はイソプロピルアルコール(IPA))及びヘキサン(3:1容量)で3回洗浄し、8500rpmで5分間遠心分離した。最後に、NiPtAg NPを、35mlのヘキサン中に分散させた。
【0023】
NP/Cの調製
【0024】
実施例において、95.5mgのカーボン(ケッチェンブラック)を60mlのヘキサンに加え、30分間超音波処理した。ヘキサン中の17.5mlのNPを、30分間超音波処理した。次に、炭素分散液とNP溶液を混合し、氷浴中で1時間超音波処理した。得られたNP/Cを回収し、8500rpmで1分間遠心分離することにより、ヘキサンで3回洗浄した。次いで、NP/Cを30mlのIPA中に分散させ、10分間超音波処理し、真空濾過し、真空中で10分間乾燥させた。その後、NP/Cを瓶に集め、後の使用のために保存した。
【0025】
NP/Cの焼鈍
【0026】
試料を、Ar/H中において550℃で6時間焼鈍した。
【0027】
酸処理
【0028】
実施例において、30mgのNP/Cを、20mLの0.1MのHNO溶液に添加した。該溶液を、5分間超音波処理し、次いで撹拌しながら60℃で1時間加熱した後、室温に冷却した。生成物をDI水で洗浄し、8500rpmで1分間の遠心分離を3回行った。次いで、生成物を15mlのIPA及び15mlのDI水中に分散させ、10分間超音波処理し、真空濾過し、真空中で10分間乾燥させた。その後、生成物を瓶に集め、後の使用のために保存した。
【0029】
インク調製
【0030】
実施例において、9.80mgのサンプルを81.56μlのアイオノマー及び10mlの25%IPAと混合し、使用前に氷浴中で1時間超音波処理した。
【0031】
RDE性能評価
【0032】
電気化学的測定には、ポテンシオスタット(VSP、BioLogic)、電極回転子及び標準的な3電極ガラスセル(Pine Research Instrumentation)を使用した。作用電極は、触媒塗布GCディスクであった。対極(CE)は、内部に内蔵された白金めっき電極であり、参照極(RE)は、内部に内蔵された可逆水素電極(RHE)であった。CE及びREを、ガラスフリット管を用いてメインセル区画から単離した。触媒を、まず、0.05~1.2V及びO飽和0.1M HClO内、400rpmでの80サイクルのサイクリックボルタンメトリ(CV)により、活性化した。次に、線形掃引ボルタンメトリー(LSV)を、10mV/s、O飽和電解質中、900rpm、にて0.05~1.05Vで行い、ORR活性を評価した。その後、サイクリックボルタンメトリーを、50mV/s、Ar飽和0.1M HClO中、50rpmにて、0.05~1.05V、50rpmで行い、比電荷210μC/cmPtと仮定して、約0.06V~0.4Vの間の水素吸蔵及び脱離電荷から決定された電気化学表面積(ECSA)を決定した。質量活性(MA)と特異的活性(SA)は、それぞれPt量とECSAで反応電流ikを正規化することにより決定した。
【0033】
耐久性能評価
【0034】
加速安定性試験(AST)は、O飽和0.1M HClO中、0rpm、0.4V(3秒)から1.0V(3秒)の間で、10,000サイクル行った。CV及びLSVを、0、200、400、800、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、及び10,000サイクルで測定して、触媒の中間状態性能を決定した。中間状態ECSA、MA及びSAの測定の詳細は、Nagai et al.、「Improved Accelerated Stress Tests for ORR Catalysts Using a Rotating Disk Electrode」、Journal of Electrochemical Society、166(7)F3111-F3115に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。図5を参照すると、金属間L1NiPtAgは、MA(686A/gPt)及びMA保持率(37%)を有する固溶体NiPtAg対応物と比較して、加速安定性試験(AST)の10,000(10K)サイクル後に、より高いMA(1120A/gPt)及びMA保持率(47%)を示した。
【0035】
PtNi1-x/C Ptの特定
【0036】
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、NPの形状とサイズを特定した。NP/C粉末の結晶学的構造を、Cu Kα放射によるX線回折(XRD、リガク Smartlab)によって明らかにした。図4を参照すると、焼鈍後には、内部に点を付した丸印「〇」で示される金属間L1-NiPt構造体に起因する回析ピークが現れ、酸洗後も保持されていた。このことは、金属間L1-NiPtの形成を示唆する。
【0037】
本開示の実施形態による触媒材料は、酸素還元反応(ORR)、酸素発生反応(OER)、ギ酸酸化反応(FAOR)、メタノール酸化反応(MOR)、エタノール酸化反応(EOR)等を触媒するために使用されてもよい。例えば、本発明の触媒材料は、燃料電池(例えば、水素プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)、直接ギ酸燃料電池、直接メタノール燃料電池(DMFC)、直接エタノール燃料電池等)又は金属-空気電池に使用することができる。
【0038】
前述の説明は、本質的に単に例示的なものであり、本開示、その用途、又は適用を限定することを意図するものではない。本明細書で使用されるように、A、B、及びCのうちの少なくとも1つの語句は非排他的論理「又は」を使用して、論理(A又はB又はC)を意味すると解釈されるべきであり、方法内の様々なステップは、本開示の原理を変更することなく、異なる順序で実行され得ることを理解されたい。範囲の開示は、全範囲内の全ての範囲及び細分された範囲の開示を含む。
【0039】
本明細書で使用される見出し(「背景」及び「概要」など)及び副見出しは、本開示内のトピックの一般的な編成のみを意図し、技術の開示又はその任意の態様を限定することを意図しない。記載された特徴を有する複数の実施形態の記載は、追加の特徴を有する他の実施形態、又は記載された特徴の異なる組み合わせを組み込む他の実施形態を排除することを意図しない。
【0040】
本明細書中で使用されるように、用語「約」は、製剤の成分の濃度の文脈において、代表的には記載された値の+/-5%、より代表的には記載された値の+/-4%、より代表的には記載された値の+/-3%、より代表的には記載された値の+/-2%、更により代表的には記載された値の+/-1%、そして更により代表的には記載された値の+/-0.5%を意味する。
【0041】
本明細書で使用されるように、用語「備える」及び「含む」及びそれらの変形は、非限定的であることが意図され、その結果、連続する項目又はリストの列挙は、この技術のデバイス及び方法においても有用であり得る他の同様の項目を除外するものではない。同様に、用語「であってよい」及び「できる」並びにそれらの変形は、非限定的であることが意図され、その結果、実施形態は、特定の要素又は特徴を含むことができ、又は含むことができるという列挙は、それらの要素又は特徴を含まない本技術の他の実施形態を排除しない。
【0042】
本開示の広範な教示は、様々な形態で実施することができる。したがって、本開示は、特定の例を含むが、本明細書及び以下の特許請求の範囲を検討することにより、当業者には他の修正が明らかになるので、本開示の真の範囲はそのように限定されるべきではない。本明細書における1つの態様、又は様々な態様への参照は、実施形態又は特定の系に関連して記載された特定の特性、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態又は態様に含まれることを意味する。「一つの態様で」(又はその変形で)という語句の出現は、必ずしも同じ態様又は実施形態を指すものではない。また、本明細書で説明される様々な方法ステップは、図示されるのと同じ順序で実行される必要はなく、各方法ステップは、各態様又は実施形態において必要とされないことも理解されるべきである。
【0043】
実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提供された。これは、網羅的であることも、本開示を限定することも意図していない。特定の実施形態の個々の要素又は特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されないが、適用可能な場合、交換可能であり、たとえ具体的に図示又は説明されていなくても、選択された実施形態で使用することができる。同じことは、多くの方法で変更することもできる。そのような変形は、本開示からの逸脱と見なされるべきではなく、そのような修正はすべて、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
本願は更に以下の態様を含んでいる:
《態様1》
1000A/g Pt を超える質量活性(MA)を有する金属間L1 -NiPtAg合金ナノ粒子を含む、酸素還元反応のための電極触媒。
《態様2》
前記金属間L1 -NiPtAg合金ナノ粒子が、1100A/g Pt を超える質量活性(MA)を有する、態様1に記載の触媒。
《態様3》
前記金属間L1 -NiPtAg合金ナノ粒子が、40%を超える質量活性(MA)保持率を有する、態様1に記載の触媒。
《態様4》
前記金属間L1 -NiPtAg合金ナノ粒子が、45%を超える質量活性(MA)保持率を有する、態様1に記載の触媒。
《態様5》
前記金属間L1 -NiPtAg合金ナノ粒子は、式Ni Pt Ag で表され、ここで0.4≦x≦0.6、0.4≦y≦0.6、及びz≦0.1である、態様1に記載の触媒。
《態様6》
式Ni Pt Ag 、ここで、0.4≦x≦0.6、0.4≦y≦0.6、及びz≦0.1、で表される金属間L1 -NiPtAg合金ナノ粒子を含む触媒の合成方法であって、
還元性の金属前駆体の共還元によってNiPt合金系を形成すること;
前記NiPt合金系に銀(Ag)をドープして、NiPtAg合金ナノ粒子を形成すること;
前記NiPtAg合金ナノ粒子を、カーボン担体上に担持し、300℃~約630℃で少なくとも6時間焼鈍して、L1 -NiPtAg金属間構造体を形成すること、
を含む、方法。
《態様7》
前記焼鈍が、約500℃~約600℃の範囲の温度で行われる、態様6に記載の方法。
《態様8》
前記焼鈍が、約550℃~約600℃の範囲の温度で行われる、態様6に記載の方法。
《態様9》
前記焼鈍が、約550℃の温度で行われる、態様6に記載の方法。
《態様10》
前記金属間L1 -NiPtAg合金ナノ粒子が、1100A/g Pt を超える質量活性(MA)を有する、態様6に記載の方法。
《態様11》
前記金属間L1 -NiPtAg合金ナノ粒子が、40%を超える質量活性(MA)保持率を有する、態様6に記載の方法。
《態様12》
前記金属間L1 -NiPtAg合金ナノ粒子が、45%を超える質量活性(MA)保持率を有する、態様6に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5