(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】特に、淹れたコーヒーの調製のための飲料粉末及び充填剤含有カプセル
(51)【国際特許分類】
B65D 85/804 20060101AFI20231228BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20231228BHJP
A23F 5/10 20060101ALI20231228BHJP
A23L 29/20 20160101ALI20231228BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20231228BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20231228BHJP
【FI】
B65D85/804
A47J31/06 210
A23F5/10
A23L29/20
A23L29/238
A23L29/262
(21)【出願番号】P 2020538579
(86)(22)【出願日】2019-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019050827
(87)【国際公開番号】W WO2019138112
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-20
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518003948
【氏名又は名称】スイス コーヒー イノベーション アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニッケル, アクセル
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0158426(US,A1)
【文献】特表2016-511033(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03115316(EP,A1)
【文献】国際公開第2014/191412(WO,A1)
【文献】特表2016-501548(JP,A)
【文献】特表2011-504796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/804
A47J 31/06
A23F 5/10
A23L 29/20
A23L 29/238
A23L 29/262
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセルに水を導入することによって、飲料粉末から作られる飲料を調製するためのカプセルであって、
前記カプセルが、粉末混合物から構成されるペレットを含み、
前記ペレットが、架橋多糖を含む少なくとも1つのコーティング層で被覆されているカプセルにおいて、
前記ペレットの前記粉末混合物が、
i)第1の平均粒径Aを有する多糖含
有粉末と、
ii
)前記第1の平均粒径Aとは異なる、又は前記第1の平均粒径Aと同一の平均粒径Cを有する非水溶性充填剤とを含み、
前記非水溶性充填剤は、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、及び上記の材料の2つ以上の任意の混合物からなる群から選択される不活性材料を含み、
前記
多糖含有粉末および/または前記非水溶性充填剤の23℃での水への溶解度が0.1g/ml未満であることを特徴とする、
カプセル。
【請求項2】
前記カプセルの前記ペレットの前記粉末混合物が、
前記第1の平均粒径Aを有する
前記多糖含有粉末と、ii)前記第1の平均粒径Aと同一の
前記第平均粒径Cを有する
前記非水溶性充填剤とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記第1の平均粒径Aが、0.01~0.5mm未満であることを特徴とする、請求項2に記載のカプセル。
【請求項4】
前記カプセルの前記ペレットの前記粉末混合物が、
前記第1の平均粒径Aを有する
前記多糖含有粉末と、ii
)前記第1の平均粒径Aとは異なる
前記第平均粒径Cを有する
前記非水溶性充填剤とを含み
、前記平均粒径Cが、前記第1の平均粒径Aよりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載のカプセル。
【請求項5】
前記多糖含有粉末の前記平均粒径Aが、0.5~1.5mmであり
、前記平均粒径Cが、0.01~0.5mm未満であることを特徴とする、請求項4に記載のカプセル。
【請求項6】
前記カプセルの前記ペレットの前記粉末混合物が、
前記第1の平均粒径Aを有する
前記多糖含有粉末と、ii
)前記第1の平均粒径Aとは異なる
前記平均粒径Cを有する
前記非水溶性充填剤とを含み
、前記平均粒径Cが、前記第1の平均粒径Aよりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のカプセル。
【請求項7】
前記多糖含有粉末の前記平均粒径Aが、0.01~0.5mm未満であり
、前記平均粒径Cが、0.5~1.5mmであることを特徴とする、請求項6に記載のカプセル。
【請求項8】
前記カプセルの前記ペレットの前記粉末混合物が、
前記第1の平均粒径Aを有する
前記多糖含有粉末と、ii)アスペクト比が2より大きい細長い形状を有する
前記非水溶性充填剤とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のカプセル。
【請求項9】
前記第1の平均粒径Aが、0.01~0.5mm未満であり、繊維状充填剤の最長伸長が、0.5~3.0mmであることを特徴とする、請求項8に記載のカプセル。
【請求項10】
前記ペレットの前記粉末混合物が、前記第1の平均粒径Aを有する前記多糖含有粉末を少なくとも50重量%と、ii
)前記平均粒径Cを有する前記
非水溶性充填剤を1~40重量%とを含むことを特徴とする、請求項1~9の
いずれか1項に記載のカプセル。
【請求項11】
前記多糖含有粉末が、コーヒー、茶、飲用チョコレート、ココア、粉乳、及び上記の材料の2つ以上の任意の混合物からなる群から選択される材料を含むことを特徴とする、請求項1~10の
いずれか1項に記載のカプセル。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1つに記載のカプセルに水を導入することによって、飲料粉末から作られる飲料を調製するためのカプセルの流動抵抗の調整方法であって、前記方法が、以下の
i)第1の平均粒径Aを有する多糖含
有粉末と、ii
)前記第1の平均粒径Aとは異なる、又は前記第1の平均粒径Aと同一の平均粒径Cを有する非水溶性充填剤とを含む粉末混合物からペレットを提供するステップであって、前記
多糖含有粉末および/または前記非水溶性充填剤の23℃での水への溶解度が0.1g/ml未満であるステップと、
ii)前記ペレットを架橋多糖を含むコーティング層で被覆するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれかに記載のカプセルの製造方法であって、前記製造方法が、
i)第1の平均粒径Aを有する多糖含
有粉末と、ii
)前記第1の平均粒径Aとは異なる、又は前記第1の平均粒径Aと同一の平均粒径Cを有する非水溶性充填剤とを含む粉末混合物からペレットを提供するステップであって、前記
多糖含有粉末および/または前記非水溶性充填剤の23℃での水への溶解度が0.1g/ml未満であるステップと、
ii)ステップi)で得られた前記ペレットの少なくとも一部を、溶媒中の多糖の溶液と、又は分散剤中の多糖の分散体と接触させるステップと、
iii)ステップii)の前記溶液又は前記分散体から前記ペレットを取り出すステップと、
iv)ステップii)又はiii)で得られた前記ペレットを、少なくとも1つの架橋剤と接触させるステップと、
v)ステップiv)の前記溶液から前記ペレットを取り出すステップと、
vi)ステップiv)又はv)で得られた前記ペレットを乾燥するステップと
を含む、製造方法。
【請求項14】
前記ペレットが、ステップii)でアルギン酸アルカリ金属塩溶液に浸漬又は噴霧されることと、ステップiv)で前記ペレットが、アルカリ土類金属塩溶液に浸漬又は噴霧されることとを特徴とする、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ココア、茶、又はコーヒーなどの飲料の調製に特に好適な飲料粉末含有カプセルに関する。さらに、本発明は、そのようなカプセルの流動抵抗の調整方法、そのようなカプセルの製造方法、及びそのようなカプセルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料、特に淹れたコーヒーのポーション式の調製において、コーヒーポッドに加えてコーヒーカプセルがますます使用されてきており、このコーヒーカプセルのカプセル壁は通常、ステンレス鋼、アルミニウム、又はプラスチック材料でできている。そのようなカプセルは、挽いたコーヒーを風味を損なうことなく長期間貯蔵することを可能にする。さらに、そのようなカプセルは、所望の種類のコーヒーを含むカプセルを適合したコーヒーマシンに挿入することにより、所望の味の1杯のコーヒーを素早く簡単に製造することを可能にし、次に、熱湯がカプセル内に圧入され、そこから淹れたコーヒーが作られる。しかしながら、このタイプのカプセルは、とりわけ、使用されるカプセル材料及び製造するのに費用がかかるカプセル構造のために、比較的高価である。さらに、このようなカプセルは、環境の観点から問題がある。第1に、カプセルはリサイクル可能ではなく、通常、使用後に消費者によって残留廃棄物として処分される。したがって、コーヒーカプセルのリサイクルは事実上行われず、このことは、アルミニウムベースのコーヒーカプセルについて特に懸念される。その理由は、アルミニウムの製造は非常にエネルギー集約的であり、このようなカプセルは特にCO2バランスが悪いことを意味するためである。別の主要な欠点は、このようなカプセルが生分解性ではなく、したがって、生物学的に処分することができないことである。ドイツだけで40億個を超えるコーヒーカプセルが消費されており、世界中で480億個を超えるコーヒーカプセルが消費されているという事実を考慮すると、これは深刻な問題である。
【0003】
上記の問題を少なくとも部分的に回避するために、代替材料で作られたカプセルが既に提案されている。
【0004】
カプセルは、独国特許出願公開第102014000187号明細書により既知であり、これは、特に挽いたコーヒーなどのセルロース粉末でできたペレットからなり、このペレットは、生分解性材料からなる層で被覆されている。被覆層は、好ましくは、多糖又はその誘導体と、ポリオールスペーサー及び関連する架橋剤との組み合わせからなる液体セルロースである。
【0005】
特許出願公開第3115316号明細書は、カプセルに水を導入することによって、特に飲料粉末から作られる飲料、特に挽いたコーヒーから作られるコーヒーを調製するためのカプセルについて開示しており、前記カプセルは、少なくとも1つの多糖を含む粉末から作られるペレットを含み、前記ペレットは、少なくとも1つのコーティング層で被覆されており、前記少なくとも1つのコーティング層は、架橋多糖を含み、前記架橋多糖は、ポリオールスペーサーを使用せずに架橋剤で多糖を架橋することにより得られる。
【0006】
これらのカプセルは生分解性であるため、環境に優しい。しかしながら、これらのカプセルでは、流動抵抗を設定すること、したがって熱湯での抽出特性を所望の値に設定することは難しい。上記のカプセルを、飲料用コーヒーに適合した全自動コーヒーマシンで処理するために、これらのカプセルは規格サイズを有していなければならない。さらに、これらは、同時に同じ水圧を使用して全自動コーヒーマシン内のカプセルからコーヒーを抽出することができるように、規定された流動抵抗を有する必要がある。例えば、抽出時間は、9バールの水圧で25秒を超えてはならない。しかしながら、このようなカプセルの流動抵抗は、多くの異なる要因、特に粉砕の程度、カプセルを製造する際の圧縮圧力、及び他の要因に依存する。大きな粒子間よりも小さな粒子間に残る空洞が少ないため、粉末の粉砕の程度が細かいほど、それから製造されるカプセルの間隙率は低くなる。しかしながら、コーヒーの種類が異なると、味の良いコーヒーを製造するために、異なる粉砕の程度も必要となる。例えば、エスプレッソは、フィルターコーヒーよりも粒子が細かい。このため、コーヒーの種類に関係なく、全自動コーヒーマシンを使用して上記のカプセルを処理し、規定されたコーヒー濃度でコーヒーを処理することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これから進んで、本発明は、ココア、茶、及びコーヒーなどの飲料粉末から作られる飲料のポーション式の調製のためのカプセルを提供することを目的とし、このカプセルは、製造が容易で安価であり、生分解性であり、したがって、廃棄が環境に優しく、また、風味を著しく損なうことなく、長期間にわたってカプセルの内容物を貯蔵することができるだけでなく、特に、抽出プロセスの間一定である規定された流動抵抗に容易に調節することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、カプセルに水を導入することによって、飲料粉末から作られる飲料、特に挽いたコーヒーから作られるコーヒーを調製するためのカプセルによって達成され、前記カプセルは、粉末混合物から構成されるペレットを含み、前記ペレットは、架橋多糖を含む少なくとも1つのコーティング層で被覆されており、前記ペレットの前記粉末混合物は、i)第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末と、ii)a)前記第1の平均粒径Aとは異なる第2の平均粒径Bを有する多糖含有粉末、及び/又はb)前記第1の平均粒径Aとは異なる、又は前記第1の平均粒径Aと同一の平均粒径Cを有する充填剤、好ましくは不活性充填剤とを含む。
【0009】
この解決策は、第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末を、好適な量の前記第1の平均粒径Aとは異なる好適な第2の平均粒径Bを有する多糖含有粉末、及び/又は前記第1の平均粒径Aとは異なる、又は前記第1の平均粒径Aを有する好適な平均粒径Cを有する充填剤、好ましくは不活性充填剤を含む粉末混合物に混合することによることと、続いて、好適な圧縮圧力を使用して粉末混合物を圧縮することとにより、前記ペレットの流動特性を調整することができ、その結果、そこから製造された前記カプセルは、使用される前記多糖の種類及び粉砕の程度に関係なく、特に使用されるコーヒーの種類及び前記コーヒーの粉砕の程度に関係なく、抽出中に選択可能な、規定された、一定の流動抵抗を有するようになるという知見に基づいている。このため、本発明によるカプセルの抽出時間は、コーヒーの種類及び前記コーヒーの粉砕の程度に関係なく、熱湯に対して同じであるため、本発明によるカプセルは、コーヒーの種類及びコーヒーの粉砕の程度に関係なく、全自動コーヒーマシンで、優れた安定した品質の飲料用コーヒーに加工することができる。したがって、本発明によるカプセルは、細かい又は非常に細かい粉砕の程度を有する挽いたコーヒーにも特に適しており、このことは、その大きな表面積のために、良好な抽出をもたらすが、この細かい粉末間の小さなキャピラリーのために、第2の構成成分ii)を混合しない粒子は、過度に高い流動抵抗を有するであろう。したがって、第2の構成成分ii)の混合は、粉末混合物の配合にある程度の自由度をもたらし、他の方法では互いに依存する他のパラメータ、すなわち、粉砕の程度、密度、ペレットの重量、ペレットの体積、及びコーヒーの種類、の少なくとも部分的な分離をもたらす。本発明によるカプセルは、架橋多糖を含む少なくとも1つのコーティング層で被覆されたペレットからなるので、カプセルはまた、環境に優しい方法で処分することができる。特に、架橋多糖からなる少なくとも1つのコーティング層は、十分に高いレベルの輸送保護及び接触保護をカプセルに提供するのに十分に安定である。これとは別に、本発明のカプセルはまた、感知できるほどの風味の損失を生じることなく、長期間にわたってカプセルの内容物を保護する。挽いたコーヒーをペレットにプレスすることにより、酸素に接触可能な挽いたコーヒーの表面は、非圧縮の挽いたコーヒーと比較して著しく減少する。さらに、本発明によるカプセルは、球形に製造するのが容易であり、したがって、カプセルが転がるため、適切に適合した飲料機器での使用に理想的に適している。
【0010】
本発明によれば、本発明によるカプセルは、粉末混合物から構成されるペレットを含み、前記ペレットの前記粉末混合物は、i)第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末、特に好ましくは挽いたコーヒーと、ii)a)前記第1の平均粒径Aとは異なる第2の平均粒径Bを有する多糖含有粉末、特に好ましくは挽いたコーヒー、及び/又はb)前記第1の平均粒径Aとは異なる、又は前記第1の平均粒径Aと同一の平均粒径Cを有する充填剤、特に好ましくは不活性充填剤とを含む。前記ペレットの前記粉末混合物は、前記第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末に加えて、前記第1の平均粒径Aとは異なる、又は前記第1の平均粒径Aと同一の平均粒径Cを有する充填剤、好ましくは不活性充填剤を有することが特に好ましい。
【0011】
本発明の目的のために、不活性充填剤は、承認された食品又は承認された食品添加物であり、好ましくはまた、貯蔵安定性があり、無臭、及び無味である粉末状材料を意味すると理解される。
本発明の意味における粒径はまた、平均粒径を意味すると理解され、平均粒径は、平均粒径d50、すなわち、存在する粒子の50%未満である直径の値を意味する。したがって、異なる平均粒径を有する(すなわち、異なる平均粒径d50を有する)2つの粒子の混合物は、二峰性の粒径分布を有する混合物である。
因果関係をより良く説明するために、いくつかの数学的-物理的関係を以下で検討する。
【0012】
エスプレッソの調製などの温かい飲料の抽出プロセスの場合、流体、例えば水は、通常、特定の性質の下で、例えば、挽いたコーヒーから作られたプレスケーキであり得る多孔質体を通って単相で流れる。このプレスケーキは、粒子の層からなるため、パイルとしても知られている。そのようなパイルは、それらが球状粒子の層から構成されている限り、正確に記述できる。記述パラメータは、直径dP、間隙の程度及び/又は間隙率ε、及びキャピラリー直径dKである。例えば、最も圧縮された球形のパッキングの場合、間隙率は約26%になる(ケプラーの仮定)。パイルが異なる直径を有する粒子から構成されている場合、又はそれらが球ではない場合、正確な記述はもはや不可能であり、実験データ、統計的手法、又は数値シミュレーション法のいずれかを使用する必要がある。有効(外部)間隙率εは、次の式に従って計算される。
ε=(VS-VP)/VS (1)
式中、VSはバルク体積、VPは粒子体積を表す。バルク密度及び粒子密度からの計算は、粒子が内部の閉じた多孔性を有さない場合にのみ許される。
【0013】
ここで検討されている抽出プロセスは、多孔質体を通過する単相フロープロセスであるため、キャピラリー力は役割を果たさず、単純化される。さらに、フロースループロセスはやや遅い性質のものであるため、層流が存在し、したがって、慣性力ではなく摩擦力が流動抵抗を決定する。したがって、ダルシー則を用いることができ、これは、水が流れる砂の充填物に関する実験的研究に基づいて、経験的な運動量収支から導き出されたものである。それは、
-∂p/∂x=η/K*u0 (2)
である。
これは、流体が動的粘度η及び流入速度u0でX方向に一方向に流れる透過率Kを有する多孔質体にわたる圧力降下∂pを表す。流入速度u0は、体積流量Qと多孔質体の断面積との商で表すことができる。多孔質体の厚さIを積分すると、最終的に新しい形式のダルシー則が導かれる。
Q/A=K/η*Δp/I (3)
又はKに書き換えられる。
K=Q/A*η*I/Δp (4)
これにより、多孔質体の透過率を求めることができる。ハーゲン・ポアズイユの法則からの導出により、透過率と細孔、及び/又はキャピラリー直径dKとの間のさらなる関係が得られる。
K=ε*d2
K/32 (5)
ここでも、εは間隙率であり、上記の式を用いて求めることができる。
【0014】
物体内のキャピラリー直径を求めることは困難であるため、キャピラリー直径は平均粒径dPで置き換える必要がある。正確な関係は球形の充填でしか得られないため、ここにはさまざまな実験的作業がある。不規則な表面を有し、断片として異なる直径も有する実際の粒子の場合、計測の関係のみが存在する。Ergunによると、砂の充填物では、次の式を用いることにより良好な結果が得られる。
dP=2.165*(1-ε)/ε*dK (6)
別の特性変数は、透過率から導き出される透過率の値である。多孔質体の透過率を説明するための文献値があるため、ここに示す。
KF=K*ρF/ηF*g (7)
ここで、ρFは流れる媒体の密度(90℃の水、例えばρF=965kg/m3)、ηFは媒体の動的粘度(90℃の水、例えばηF=3.14*10-4kg/m/s)、及びg=9.81m/s2は重力加速度である。
文献から、次の基準に従って好適なコーヒーに加えて優れたエスプレッソを調製すべきであることが知られている。
o水の量:V=25ml
o準備時間:t=25秒
oフロー圧力:p=9バール
商V/tは、体積流量Qを与える。そして、フロー圧力pは、周囲圧力pUとの差圧Δp=p-pU=8バールとなる。
最適なエスプレッソの目標値は、次のように計算できる。
Q/Δp=1.25*10-12m4*s/kg (8)
【0015】
エスプレッソバリスタは、コーヒーを細かく挽いたコーヒーに適度に粉砕し、ポルタフィルタをテンパリング又はプレスすることにより、この最適値を実現する。また、細かく粉砕すると、コーヒー豆の内部の閉じた細孔の大部分が露出し、最適な抽出が可能になる。エスプレッソマシンでは、異なるポルタフィルタが使用されている。本特許出願の範囲内の調査のために、50mmの平均直径を有するポルタフィルタが選択され、これは、A=1,963mm2の流量面積をもたらす。通常の挽いたコーヒーの量の7gで、適切にプレスした後、挽いたコーヒーの粕は約L=6.6mmの厚さである。この結果、挽いたコーヒーの粕の平均密度は、約ρKK=0.54g/cm3となる。生の状態のコーヒー豆では約ρKB,r=1.20g/cm3、焙煎した状態では約ρKB,g=0.5-0.6g/cm3の密度が指定されている。これは、焙煎による損失、すなわち、揮発性成分の蒸発、及び内部の閉じた多孔性の形成による体積の増加に起因する。したがって、焙煎した豆全体の密度は、プレスした挽いたコーヒーの粕の密度と同じ範囲にあるため、外部の間隙率を確実に述べることは困難である。したがって、計算では、多孔質体とは独立に、透過率及び透過率の値などの変数を最初に計算した。この例では、以下が得られた。
K=1.32*10-15m2及び
KF=3.98*10-8m/s
KFの値は、透過性の乏しい多孔質体に関する文献値と非常によく一致している。
【0016】
上記のように、外部の開放間隙率は理論的に求めることができないため、平均粒径の現実的な値が得られるように、計算プログラムでその値を調整した。顕微鏡検査では、エスプレッソ用途で挽いたコーヒーの平均粒径は約0.3mmを示している。そして、これは、ε=1.4%の値に相当する。間隙率のこの低い値は、一方では広い粒径のばらつきによるものであり、また、抽出プロセス中に挽いたコーヒーが膨潤し、細かい粒子が洗い流されることによってキャピラリーが詰まるため、説明可能である。
【0017】
実験によって間隙率を求めることは、記載されている他のすべての副作用もカバーしており、特定の挽いたコーヒー本体に関するすべての情報を提供する。これで、この導出を使用して、個々の変数の相互依存性を判別できる。この目的のために、式(3)、(5)、及び(6)は、式(8)で与えられた目標値に従って変換され、以下が得られる。
Q/Δp=2/3*10-2/η*A/I*ε3/(ε-1)2*dP
2
【0018】
優れたエスプレッソの目標値は左側にある。この値に達する場合、右側の変数に影響を与えることにより、さまざまなオプションがある。右側では、初項は、水の動的粘度ηなどの一定の数値又は定数であり、したがって固定されている。変数A及びIは、多孔質体の形状によって、又は挽いたコーヒーの同じ粒径分布を用いた不活性混合物パートナーの混合によっていずれも変更できる。その結果、間隙率及び粒径の値は一定のままであるが、同じ割合の活性成分を使用すると、同じ条件下で変数A/Iが増加し、したがって、例えば、フロー時間又は特定の流動抵抗が減少する。
【0019】
好ましくは、第1の粒径Aを有する多糖含有粉末、第2の粒径Bを有する多糖含有粉末(含まれる場合)、及び粒径Cを有する充填剤(含まれる場合)の少なくとも1つは非水溶性材料である。第1の粒径Aを有する多糖含有粉末、第2の粒径Bを有する多糖含有粉末(含まれる場合)、及び粒径Cを有する充填剤(含まれる場合)のすべてが非水溶性材料であることが特に好ましい。本発明の目的のために、非水溶性材料は、23℃での水への溶解度が0.1g/ml未満、好ましくは0.05g/ml未満、特に好ましくは0.01g/ml未満である物質を意味すると理解される。第1の粒径Aを有する多糖含有粉末及び第2の粒径Bを有する多糖含有粉末(存在する場合)は、非常に特に好ましくはコーヒー粉末である。本特許出願全体におけるコーヒー粉末は、コーヒー豆を粉砕することによって製造された粉末、すなわち、水溶きコーヒーではないことを意味する。これにより、カプセルの使用中に、すなわち、水が流れたときに、水によってカプセル材料から抽出される抽出可能成分を除いて、カプセル材料が水に溶解しないことが保証される。このため、固形分、したがってカプセルの流動抵抗も、抽出プロセス全体を通して変化しないままである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の特に好ましい実施形態によれば、カプセルのペレットの粉末混合物は、第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末と、ii)前記第1の平均粒径Aと同一である平均粒径Cを有する充填剤とを含む。
【0021】
挽いたコーヒー単独と同じ密度で、挽いたコーヒーと同じ平均粒径を有する不活性混合物パートナーを混合することにより、挽いたコーヒーと同じ量でペレットの体積が増加し、これは、キャピラリーの長さが直線的に増加するだけでキャピラリーの数が二次的に増加することを意味する。これにより、ペレットの流動抵抗が低減される。一方、ペレットの体積が挽いたコーヒーのみから製造された同等のペレットの体積に設定されている場合、つまり、挽いたコーヒー単独に使用される圧縮圧力と比較して、追加された充填剤の量に従って圧縮圧力が増加した場合、混合物は間隙率を増加させる。
【0022】
本発明のこの実施形態では、カプセルは、比較的細かい多糖含有粉末、特に好ましくは比較的細かい挽いたコーヒーを含む、架橋多糖を含む少なくとも1つのコーティング層で被覆されたペレットを含むことが特に好ましい。比較的細かい多糖含有粉末の平均粒径Aは、好ましくは0.01~0.5mm未満、より好ましくは0.1~0.4mm、特に好ましくは0.2~0.4mm、非常に特に好ましくは0.25~0.35mmである。そのような平均粒径を有する粉末は、比較的低い間隙率を有する、したがって比較的高い流動抵抗を有するペレットを形成し、したがって、それらはペレットから多糖類及び他の成分の抽出物を生成するための熱湯での抽出時間が長いため、全自動コーヒーマシンでの加工には、たとえあったとしても、不適切である。
【0023】
本発明によれば、この実施形態におけるペレットの流動抵抗は、同じ圧縮密度で不活性混合物パートナーの割合を変えることによって成形体の体積を増加させることによって、第1の平均粒径Aと同一である平均粒径Cを有する充填剤、好ましくは不活性充填剤を混合することによって低減される。これが3次元すべてで均一に発生する場合、より長いキャピラリー長に対するキャピラリー数の二次的成長の影響が優位になる。そして、これにより、間隙率が増加する。これに代わるものとして、不活性混合物パートナーの割合を変えることによって充填剤を混合することによって、成形体のペレットを同じ体積に調整して、ペレットの流動抵抗を低減させる。これは、異なる毛管現象による間隙率の変化を引き起こす。
上述のように、第1の粒径Aを有する多糖含有粉末及び粒径Cを有する充填剤は、いずれの場合にも非水溶性であることが好ましい。
【0024】
好適な流動抵抗を設定するために、本発明の概念の発展において、この実施形態では、ペレットの粉末混合物は、第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末を少なくとも50重量%と、同一の平均粒径Cを有する充填剤、好ましくは不活性充填剤を1~40重量%とを、好ましくは第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末を少なくとも60重量%と、同一の平均粒径Cを有する充填剤、好ましくは不活性充填剤を2~30重量%とを含むことが提案されている。
【0025】
本発明のこの実施形態では、多糖含有粉末、すなわち、特に好ましくは挽いたコーヒーは、好ましくは第1の粒径分布を有し、充填剤は同じ粒径分布を有する。したがって、混合物の全体的な粒径分布は、単峰性である。本発明によれば、粒径分布は、直径d90及びd10によって特徴付けられ、同じ粒径分布は、挽いたコーヒーの比d90/d10が対応する充填剤の比と同一であることを意味する。粒径d90は粒子の90%未満の直径の値を意味し、粒径d10は粒子の10%未満の直径の値である。
【0026】
本発明の第2の特に好ましい実施形態によれば、カプセルのペレットの粉末混合物は、第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末と、ii)第1の平均粒径Aとは異なる第2の平均粒径Bを有する多糖含有粉末、及び/又は第1の平均粒径Aとは異なる平均粒径Cを有する充填剤とを含み、平均粒径B及び/又は平均粒径Cは、第1の平均粒径Aよりも小さい。
【0027】
本発明のこの実施形態では、カプセルは、比較的粗い多糖、特に好ましくは比較的粗い挽いたコーヒーを含む粉末を含む、架橋多糖を含む少なくとも1つのコーティング層で被覆されたペレットを含むことが特に好ましい。比較的粗い多糖含有粉末の平均粒径Aは、好ましくは0.5~1.5mm、より好ましくは0.7~1.3mm、特に好ましくは0.8~1.2mm、非常に特に好ましくは0.9~1.1mmである。そのような平均粒径を有する粉末は、比較的大きな間隙率を有する、したがって流動抵抗が低すぎるペレットを形成する。
【0028】
本発明によれば、この実施形態におけるペレットの流動抵抗は、平均粒径Bを有する多糖含有粉末、特に好ましくは挽いたコーヒー及び/又は平均粒径Cを有する充填剤、特に好ましくは不活性充填剤を混合することによって増大する。平均粒径B及び/又は平均粒径Cは、第1の平均粒径Aよりも小さい。第1の平均粒径Aを有する粗い粒子間の空洞が、平均粒径B又はCを有するより細かい粒子によって少なくとも部分的に充填され、したがって、ペレットの間隙率が低下する。
【0029】
この実施形態では、特に、多糖含有粉末の平均粒径Bが、0.01~0.5mm未満、好ましくは0.1~0.4mm、特に好ましくは0.2~0.4mm、非常に特に好ましくは0.25~0.35mmである場合に良好な結果が得られる。
【0030】
同様に、この実施形態では、充填剤、好ましくは不活性充填剤の平均粒径Cは、0.01~0.5mm未満、好ましくは0.1~0.4mm、特に好ましくは0.2~0.4mm、非常に特に好ましくは0.25~0.35mmであることが好ましい。
【0031】
上述のように、第1の粒径Aを有する多糖含有粉末、第2の粒径Bを有する多糖含有粉末(存在する場合)、及び粒径Cを有する充填剤(存在する場合)は、それぞれ非水溶性であることが好ましい。
【0032】
好適な流動抵抗を設定するために、本発明の概念の発展において、この実施形態では、ペレットの粉末混合物は、第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末を少なくとも50重量%と、第2の粒径Bを有する多糖含有粉末、及び/又は平均粒径Cを有する充填剤、好ましくは不活性充填剤を1~40重量%とを含むこと、好ましくは第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末を少なくとも60重量%と、第2の平均粒径Bを有する多糖含有粉末、及び/又は第2の平均粒径Cを有する充填剤、好ましくは不活性充填剤を2~30重量%とを含むことが提案されている。
【0033】
本発明のこの実施形態では、多糖含有粉末、すなわち、特に好ましくは挽いたコーヒーは、好ましくは第1の平均粒径Aを有する第1の粒径分布を有し、平均粒径Bを有する多糖含有粉末及び/又は充填剤は、異なる粒径分布を有する。したがって、混合物の全体的な粒径分布は、二峰性である。本発明によれば、粒径分布は、直径d90及びd10によって特徴付けられ、同じ粒径分布は、挽いたコーヒーの比d90/d10が対応する充填剤の比と同一であることを意味する。粒径d90は粒子の90%未満の直径の値を意味し、粒径d10は粒子の10%未満の直径の値である。
【0034】
本発明の第3の特に好ましい実施形態によれば、カプセルのペレットの粉末混合物は、第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末と、ii)第1の平均粒径Aとは異なる第2の平均粒径Bを有する多糖含有粉末、及び/又は第1の平均粒径Aとは異なる平均粒径Cを有する充填剤とを含み、平均粒径B及び/又は平均粒径Cは、第1の平均粒径Aよりも大きい。
【0035】
本発明のこの実施形態では、カプセルは、比較的細かい多糖含有粉末、特に好ましくは比較的細かい挽いたコーヒーを含む、架橋多糖を含む少なくとも1つのコーティング層で被覆されたペレットを含むことが特に好ましい。比較的細かい多糖含有粉末の平均粒径Aは、好ましくは0.01~0.5mm未満、好ましくは0.1~0.4mm、特に好ましくは0.2~0.4mm、非常に特に好ましくは0.25~0.35mmである。そのような平均粒径を有する粉末は、比較的低い間隙率を有する、したがって比較的高い流動抵抗を有するペレットを形成する。
【0036】
本発明によれば、この実施形態におけるペレットの流動抵抗は、平均粒径Bを有する多糖含有粉末、特に好ましくは挽いたコーヒー及び/又は平均粒径Cを有する充填剤、特に好ましくは不活性充填剤を混合することによって低減される。平均粒径B及び/又は平均粒径Cは、第1の平均粒径Aよりも大きい。この点に関していかなる理論にも縛られることを望まないが、より大きな連続したキャピラリーが、粗い粒子間に「捕らえられる」ことによって形成され、それにより、より良好な流れを可能にすることが、本発明の範囲内であると考えられる。しかしながら、ここでは、ペレットは抽出チャンバ内で、キャピラリーが過度に拡張することができない程度に被覆されて一緒に保持されているため、従来のエスプレッソ・ポルタフィルタ・マシンのような、いわゆる「チャネリング」は存在しない。
【0037】
この実施形態では、特に、多糖含有粉末の平均粒径Bが、0.5~1.5mm、より好ましくは0.6~1.2mm、特に好ましくは0.7~1.2mm、非常に特に好ましくは0.8~1.2mmである場合に良好な結果が得られる。
【0038】
同様に、この実施形態では、充填剤、好ましくは不活性充填剤の平均粒径Cは、0.5~1.5mm、より好ましくは0.6~1.2mm、特に好ましくは0.7~1.2mm、非常に特に好ましくは0.8~1.2mmであることが好ましい。
【0039】
上述のように、第1の粒径Aを有する多糖含有粉末、第2の粒径Bを有する多糖含有粉末(存在する場合)、及び粒径Cを有する充填剤(存在する場合)は、それぞれ非水溶性であることが好ましい。
【0040】
好適な流動抵抗を設定するために、本発明の概念の発展において、この実施形態では、ペレットの粉末混合物は、第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末を少なくとも50重量%含み、第2の平均粒径Bを有する多糖含有粉末、及び/又は第2の平均粒径Cを有する充填剤、好ましくは不活性充填剤を1~40重量%含むこと、好ましくは第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末を少なくとも60重量%と、第2の平均粒径Bを有する多糖含有粉末、及び/又は第2の平均粒径Cを有する充填剤、好ましくは不活性充填剤を2~30重量%とを含むことが提案されている。
【0041】
本発明のこの実施形態では、多糖含有粉末、すなわち、特に好ましくは挽いたコーヒーは、好ましくは第1の平均粒径Aを有する第1の粒径分布を有し、平均粒径Bを有する多糖含有粉末及び/又は充填剤は、異なる粒径分布を有する。したがって、混合物の全体的な粒径分布は、二峰性である。本発明によれば、粒径分布は、直径d90及びd10によって特徴付けられ、同じ粒径分布は、挽いたコーヒーの比d90/d10が対応する充填剤の比と同一であることを意味する。粒径d90は粒子の90%未満の直径の値を意味し、粒径d10は粒子の10%未満の直径の値である。
【0042】
本発明の第4の特に好ましい実施形態によれば、カプセルのペレットの粉末混合物は、第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末と、ii)アスペクト比が2より大きく、好ましくは3より大きく、特に好ましくは5より大きく、最も好ましくは10より大きい細長い形状を有する充填剤とを含む。ここでのアスペクト比は、充填剤粒子の最長伸長の、充填剤粒子の最短伸長に対する商であると理解される。充填剤としてセルロース繊維が使用されることが好ましい。特にセルロース繊維などの繊維状充填剤の混合は、細いキャピラリーが細長いセルロース繊維に沿って形成され、より良好な流れを可能にするため、間隙率が増加する。
【0043】
本発明のこの実施形態では、カプセルは、比較的細かい多糖含有粉末、特に好ましくは比較的細かい挽いたコーヒーを含む、架橋多糖を含む少なくとも1つのコーティング層で被覆されたペレットを含むことが特に好ましい。比較的細かい多糖含有粉末の平均粒径Aは、好ましくは0.01~0.5mm未満、好ましくは0.1~0.4mm、特に好ましくは0.2~0.4mm、非常に特に好ましくは0.25~0.35mmである。そのような平均粒径を有する粉末は、比較的低い間隙率を有する、したがって比較的高い流動抵抗を有するペレットを形成する。
【0044】
本発明によれば、この実施形態では、繊維状充填剤を添加することにより、ペレットの流動抵抗が低減される。この点に関していかなる理論にも縛られることを望まないが、より大きな連続したキャピラリーが、細長い粒子間に「捕らえられる」ことによって形成され、それにより、より良好な流れを可能にすることが、本発明の範囲内であると考えられる。しかしながら、ここでは、ペレットは抽出チャンバ内で、キャピラリーが過度に拡張することができない程度に被覆されて一緒に保持されているため、従来のエスプレッソ・ポルタフィルタ・マシンのような、いわゆる「チャネリング」は存在しない。
【0045】
さらに、この実施形態では、繊維状充填剤、好ましくは不活性充填剤の最長伸長は、0.5~3.0mm、より好ましくは0.6~2.4mm、特に好ましくは0.7~2.4mm、非常に特に好ましくは0.8~2.4mmであることが好ましい。繊維状充填剤の最短伸長は、最長伸長の1/3~1/8であることが好ましい。
【0046】
上述のように、第1の粒径Aを有する多糖含有粉末及び粒径Cを有する充填剤は、いずれの場合にも非水溶性であることが好ましい。
【0047】
好適な流動抵抗を設定するために、本発明の概念の発展において、この実施形態では、ペレットの粉末混合物は、第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末を少なくとも50重量%と、繊維状充填剤、好ましくは不活性充填剤、特に好ましくはセルロース繊維を1~40重量%とを含むこと、好ましくは第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末を少なくとも60重量%と、繊維状充填剤を2~30重量%とを含むことが提案されている。
【0048】
本発明は、本発明によるカプセルのペレットを構成する粉末混合物に含まれる多糖含有粉末に関して特に限定されない。特に、ペレットの粉末混合物が、コーヒー、茶、飲用チョコレート、ココア、及び粉乳からなる群から選択される多糖含有粉末を含む場合、良好な結果が得られる。特に、ペレットの粉末混合物が、多糖含有粉末として挽いたコーヒーを含む場合に、良好な結果が得られる。
【0049】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、本発明によるカプセルのペレットを構成する粉末混合物に含まれる充填剤は、不活性充填剤、すなわち、承認された食品又は承認された食品添加物であり、好ましくはまた、貯蔵安定性があり、無臭、及び無味である充填剤である。これらの特性に関して、本発明によるカプセルのペレットを構成する粉末混合物に含まれる充填剤が、不活性材料を含むか、又は好ましくは、特に好ましくは二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、炭酸カルシウム、二酸化チタン、ローカストビーンガム、ケイ酸アルミニウム、及び上記の材料の2つ以上の任意の混合物からなる群から選択される不活性材料からなる場合、特に有利であることが判明した。
【0050】
本発明との関係において、ペレットは、圧縮された粉末であると理解される。特に、本発明によるカプセルのペレットが、粉末混合物、特に挽いたコーヒーを含む粉末混合物を1~100MPa、好ましくは5~50MPa、特に好ましくは15~30MPaの圧力でプレスすることによって得ることができる場合、良好な結果が得られる。これは十分な圧縮を提供するので、ペレットは確実に被覆され、良好な酸素バリアが得られる。より低い圧力では凝集力が不十分であり、より高い圧力では圧縮が過剰であり、これは、プレスから取り出した後に再び減圧され、カプセルを破壊する可能性がある。
【0051】
原則として、ペレットは、円錐台形、円錐形、楕円形、円柱形、直方体形、コーヒー豆形、又は球形などの任意の形状を有することができる。本発明によるカプセルは、球体の形状を有することが特に好ましく、これは、体積に対する表面積の比が最も小さいことを意味し、その結果、風味が特に良好に保たれるためである。さらに、球形は、カプセルを転がすことができ、したがって、自動販売機で特に良好に使用することができる。
【0052】
カプセルの安定した被覆を得るために、コーティング層の架橋多糖は、ポリオールスペーサーの使用の有無にかかわらず、架橋剤で多糖を架橋することによって得られることが好ましい。
【0053】
基本的に、本発明は、少なくとも1つのコーティング層の多糖の化学的性質に関して限定されない。特に、少なくとも1つのコーティング層の多糖が、デンプン、セルロース、キチン、カラギーナン、寒天、及びアルギン酸塩類からなる群から選択される場合、良好な結果が得られる。少なくとも1つのコーティング層の多糖は、特に好ましくはカラギーナン又はアルギン酸塩であり、少なくとも1つのコーティング層の多糖はアルギン酸塩であることが非常に特に好ましい。本発明との関係において、これらの多糖類は、飲料の調製中に味のいかなる歪みも引き起こさないことが見出された。本発明との関係において、ペレット、特に挽いたコーヒーから製造されたペレットは、簡単に及び安価にアルギン酸塩で被覆できることも示されている。アルギン酸塩類は生分解性であり、十分に安定した被覆(sheating)を提供し、風味を著しく損なうことなくカプセルの内容物を保護する。本発明との関係において、アルギン酸塩類が水の硬度を低下させることができることも示されている。これにより、不快な酸味が緩和される。
【0054】
少なくとも1つのコーティング層の多糖が架橋されていることは、本発明にとって重要である。本発明の一実施形態によれば、多糖は、共有結合によって架橋することができる。共有結合による架橋は、非常に耐久性のある被覆を可能にする。共有結合による架橋は、通常、多糖と好適な架橋剤との反応によって行われる。特に好適な架橋剤は二官能性有機化合物であり、官能基は、例えば、カルボン酸、カルボン酸の塩、活性カルボン酸、アミン、アルコール、アルデヒド、及びケトンからなる群から選択される。この文脈において、活性カルボン酸は、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸の活性エステル、カルボン酸の無水物、又はカルボン酸の他の反応性誘導体を意味すると理解される。
【0055】
本発明の代替の特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのコーティング層の多糖は、イオン結合及び/又は配位結合によって架橋されている。イオン結合及び/又は配位結合によって架橋されたそのような多糖類は、特に製造が容易であり、使用される多糖の生分解性を損なわない。イオン架橋及び/又は配位架橋は、例えば、カルボキシレート基又はスルホネート基などのアニオン基を有する多糖類によって達成することができる。二価以上のカチオン、特にアルカリ土類金属イオンを導入することにより、次に、多糖のアニオン基のイオン架橋又は配位架橋が行われ、安定したコーティング層を形成する。
【0056】
この文脈において、配位結合は、ヒドロキシル基の酸素原子の自由電子対とカチオンとの間で起こり得るような、電子対供与体と電子対受容体との間の相互作用を意味する。
【0057】
架橋多糖は、非常に特に好ましくはアルギン酸アルカリ土類金属塩であり、最も好ましくはアルギン酸カルシウムである。この場合、カルシウムイオンはアルギン酸塩の基との配位結合又はイオン結合を形成するため、カルシウムイオンは架橋剤である。驚くべきことに、本発明との関係において、アルギン酸カルシウムを含む被覆は、カプセルの内容物が感知できるほどの風味の損失を被ることなく、カプセルから製造される飲料の味を損なわず、輸送及び接触保護を確保するためにカプセルの十分な安定性をもたらす非水溶性の層を提供することが見出された。アルギン酸カルシウムもまた、極めて生分解性である。別の利点は、アルギン酸カルシウムがE番号E405の承認された食品添加物であり、したがって、健康に無害であることである。この実施形態では、カプセルの内容物、すなわち、多糖から製造されたペレットがアルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンを少なくとも実質的に含まないことも好ましく、これは、ペレットが製造された多糖に天然に含まれている可能性のあるアルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンとは別に、ペレットがさらにアルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンを含まないことを意味すると理解される。特に、カプセルに含まれるペレット又はペレットの内容積の少なくとも80%は、1モル/リットル未満のアルカリ土類金属イオン濃度、特にカルシウムイオン濃度を有することが好ましく、好ましくは0.1モル/リットル未満、より好ましくは0.001モル/リットル未満、特に好ましくは0.001モル/リットル未満、非常に特に好ましくは0.0001モル/リットル未満、最も好ましくは0.00001モル/リットル未満である。ペレットの内容積の80%は、ペレットの中心から半径方向に外面に至る最長経路から、中心から外面までの経路の80%にある点により、球面が伸ばされるときに得られる容積を意味すると理解される。アルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンによるペレットの汚染は、最初に、ペレットをアルギン酸アルカリ金属塩溶液と接触させ、次に初めて、アルギン酸カルシウムコーティングの形成を伴うアルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンを含む液体と接触させることにより、アルギン酸アルカリ金属塩溶液が加えられる前に、アルカリ土類金属、特にカルシウムイオンを含む液体と最初に接触させることなく、アルカリ土類金属イオン、特にアルギン酸カルシウムコーティングを形成することにより防ぐことができる。
【0058】
原則として、本発明によるカプセルは、架橋多糖からなるコーティング層のみを含むことができる。カプセルの安定性、したがって、輸送の安全性及び接触保護を高めるために、本発明の概念の発展において、本発明によるカプセルは、2層以上のコーティング層を含むことが提案されている。カプセルのペレットは、好ましくは2~100層、特に好ましくは2~20層、非常に特に好ましくは2~10層、最も好ましくは2~5層のコーティング層で被覆されている。カプセルのペレットを2層以上のコーティング層で被覆することにより、酸素バリアとしてのコーティングの効果及び関連する効果的な風味保護の提供も特に高度に達成される。
【0059】
第1のコーティング層は、ペレットのまだ粗い表面にゲルとして浸透し、より滑らかな表面をもたらすことが示されている。これは、表面のさらなる減少を意味し、風味をしっかりとさらに収容する。コーティング層を追加すると、さらにより滑らかな表面が得られ、必要な安定性も有するため、より強い衝撃でも損傷を与えることなく保たれる。
【0060】
本発明のさらに特に好ましい実施形態によれば、カプセルのコーティングは、ペレットを被覆する2~100層、好ましくは2~20層、特に好ましくは2~10層、最も好ましくは2~5層のアルギン酸カルシウム層からなる。
【0061】
アルギン酸ナトリウム溶液の粘度及び使用されるプロセスに応じて、個々のコーティング層は50~600μmの厚さを有する。100~300μmの層厚が、安定性と乾燥速度との間の最適な妥協点を有するため、第1のコーティング層に特に好ましい。その後のコーティング層は、迅速な乾燥を可能にするために、好ましくはより薄く、好ましくは50~200μmである。
【0062】
ゲルに含まれる水をより容易に除去し、架橋剤、すなわち、カルシウムイオンのアルギン酸ナトリウムへの拡散をできるだけ速く促進するために、薄いコーティング層が好ましい。原則として、カルシウムイオンのアルギン酸ナトリウムへの拡散速度は、より高濃度の架橋剤によって速くすることもできる。しかしながら、この変形例の実際の実施において、薄いコーティング厚が、拡散速度及び取り扱いにとって有利であることが証明された。
【0063】
本発明の別の目的は、カプセルに水を導入することによって、飲料粉末から作られる飲料、特に挽いたコーヒーから作られるコーヒーを調製するためのカプセルの流動抵抗を調整するための方法であり、この方法は、以下の
i)第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末と、ii)a)前記第1の平均粒径Aとは異なる第2の平均粒径Bを有する多糖含有粉末、及び/又はb)前記第1の平均粒径Aとは異なる、又は前記第1の平均粒径Aと同一の平均粒径Cを有する充填剤とを含む粉末混合物からペレットを提供するステップと、
ii)前記ペレットを架橋多糖を含むコーティング層で被覆するステップと
を含む。
本発明によるカプセルに関して上述した好ましい特徴は、本発明による方法についても好ましい。
【0064】
本発明はさらに、以下の
i)第1の平均粒径Aを有する多糖含有粉末と、ii)a)前記第1の平均粒径Aとは異なる第2の平均粒径Bを有する多糖含有粉末、及び/又はb)前記第1の平均粒径Aとは異なる、又は前記第1の平均粒径Aと同一の平均粒径Cを有する充填剤とを含む粉末混合物からペレットを提供するステップと、
ii)ステップi)で得られた前記ペレットの少なくとも一部、好ましくは表面全体を、溶媒中の多糖の溶液と、又は分散剤中の多糖の分散体と接触させるステップと、
iii)任意選択的に、ステップii)の前記溶液又は前記分散体から前記ペレットを取り出すステップと、
iv)ステップii)又はiii)で得られた前記ペレットを、少なくとも1つの架橋剤と接触させるステップと、
v)必要な場合、ステップiv)の前記溶液から前記ペレットを取り出すステップと、
vi)ステップiv)又はv)で得られた前記ペレットを乾燥するステップと
を含む、カプセルの製造方法に関する。
【0065】
ステップii)におけるペレットの接触は、好ましくは、ペレットの表面の少なくとも一部、好ましくは表面全体が多糖の溶液又は分散体で濡らされるように行われる。例えば、ステップii)及びiv)において、ペレットは、多糖の溶液若しくは分散体又は架橋剤でペレットを浸漬、噴霧、又はコーティングすることによって互いに独立して接触させられる。
本発明による方法は、特にペレットが球形である場合でも、エッジ又は継ぎ目を形成することなく、ペレットを均一にコーティングすることを可能にする。
溶媒又は分散剤は、水性の溶媒又は分散剤であることが好ましい。溶媒又は分散剤は、特に好ましくは水である。
【0066】
ステップii)において、ペレットは、好ましくは、0.5~5重量%のアルギン酸アルカリ金属塩水溶液に浸漬されるか、又はその水溶液が噴霧される。ステップii)において、ペレットは、特に好ましくは、1~2重量%のアルギン酸アルカリ金属塩水溶液に浸漬されるか、又は噴霧される。0.5重量%未満の濃度では、アルギン酸アルカリ金属塩溶液が十分に濃厚ではなく、後続のステップで十分に安定した被覆を形成するために、単純な浸漬又は噴霧によって十分な量のアルギン酸アルカリ金属塩をペレットに塗布するには粘度が低すぎる。アルギン酸アルカリ金属塩の濃度が5重量%を超える場合、アルギン酸アルカリ金属塩溶液の粘度が高すぎて、完全な被覆を形成することが困難になる。さらに、アルギン酸アルカリ金属塩の濃度が5重量%を超えると、コーティング厚が厚くなり、乾燥がより困難になる。
【0067】
ステップvi)の乾燥は、種々の方法で実施することができ、種々の乾燥プロセスが成功していることが証明されている。非常に均一な乾燥は、特に、これに限定されないが、ペレットが自由に浮遊し、それ自体の回転によって均一に乾燥する、好適なチャネル内の空気の流れの中で乾燥することによって達成することができる。形成されるコーティング層を通って拡散する水をより良好に吸収することができるようにするために、吸収性又は温かい表面での接触乾燥も効果的であることが照明されている。両方の原理は、流動床チャネルの一種において組み合わせることができる。赤外線乾燥機及びマイクロ波乾燥機も、さらに非常に効率的な乾燥原理として使用できる。
【0068】
本発明の別の目的は、本発明によるカプセルを水と接触させることにより飲料を製造するための、本発明によるカプセルの使用である。カプセルは、好ましくは、コーヒー、茶、飲用チョコレート、ココア、及び粉乳からなる群から選択される材料を含む。
【0069】
本発明によるカプセルをコーヒー飲料の製造に使用すると、必要に応じて、飲料を1杯ずつ調製することが可能となる。本発明の使用の特定の利点は、より多くの生分解性廃棄物のみが生じることである。
【0070】
本発明によるカプセルが飲料、特にコーヒー飲料を調製するために使用される場合、コーヒーカプセルは、好ましくは、押し潰されたか又は穴を開けられたコーヒーカプセルがその後水で抽出される前に、押し潰されるか又は穴を開けられる。