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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ANTI-MUCI*抗体を用いた診断法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20231228BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231228BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231228BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20231228BHJP
   G01N 33/574 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/04
C12N15/13
C12P21/08
G01N33/574 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020544813
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2019019566
(87)【国際公開番号】W WO2019165421
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】62/635,378
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US18/62569
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/640,697
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/791,661
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507081094
【氏名又は名称】ミネルバ バイオテクノロジーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バンダッド,シンシア
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/130726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖(LC)相補性決定領域(CDR)、すなわちCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3と、重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)、すなわちCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含む、抗ムチン1(MUC1)抗体またはMUC1 に結合する抗体断片であって、
CDR-H1は配列番号96のアミノ酸配列を含み、
CDR-H2は配列番号98のアミノ酸配列を含み、
CDR-H3は配列番号100のアミノ酸配列を含み、
CDR-L1は配列番号102のアミノ酸配列を含み、
CDR-L2は配列番号104のアミノ酸配列を含み、および、
CDR-L3は配列番号106のアミノ酸配列を含む、抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片。
【請求項2】
配列番号92のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1に記載の抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片。
【請求項3】
配列番号94のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1または2に記載の抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片。
【請求項4】
軽鎖(LC)相補性決定領域(CDR)、すなわちCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3と、重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)、すなわちCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含む、抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片であって、
CDR-H1は、配列番号112のアミノ酸配列を含み、
CDR-H2は、配列番号114のアミノ酸配列を含み、
CDR-H3は、配列番号116のアミノ酸配列を含み、
CDR-L1は、配列番号118のアミノ酸配列を含み、
CDR-L2は、配列番号120のアミノ酸配列を含み、および、
CDR-L3は、配列番号122のアミノ酸配列を含む、抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片。
【請求項5】
配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項4に記載の抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片。
【請求項6】
配列番号110のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項4または5に記載の抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片。
【請求項7】
抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片は、ヒト化抗体または抗体断片である、請求項1-6のいずれか1つに記載の抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片。
【請求項8】
抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片は、非ヒト抗体または抗体断片である、請求項1-6のいずれか1つに記載の抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片。
【請求項9】
請求項1-8のいずれか1つに記載の抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片を含む治療剤であって、治療剤は、抗体薬物結合体、癌免疫療法剤、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、操作されたナチュラルキラー細胞(engineered NK cell)、または二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である、治療剤。
【請求項10】
対象の癌または転移性癌の治療で使用するための、請求項1-8のいずれか1つの抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片、あるいは請求項9の治療剤。
【請求項11】
MUC1またはMUC1の異常な発現または活性を特徴とする癌または転移性癌の治療のための薬剤の製造における、請求項1-8のいずれか1つの抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片、あるいは請求項9の治療剤の使用。
【請求項12】
抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片は、ウサギ抗体または抗体断片、ヤギ抗体または抗体断片、ロバ抗体または抗体断片、ネズミ抗体または抗体断片、げっ歯類抗体または抗体断片、ラクダ科抗体または抗体断片、またはラマ抗体または抗体断片である、請求項8に記載の抗MUC1抗体またはMUC1 に結合する抗体断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癌を診断し、MUC1の異常な発現を特徴とする癌または癌の転移に罹患している患者をMUC1*標的化治療剤で治療する適合性を決定する方法であって、癌を有すると診断された、または癌を有することが疑われる患者の細胞または組織を、タンデム反復ドメインを欠くMUC1の形態に結合する抗体と接触させることを含む方法であって、MUC1*標的化治療剤の切断型または切断型形態への抗体の特異的結合の存在が、MUC1*標的化治療剤が患者を治療するために使用するのに適していることを示す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここでは、MUC1*を増殖因子受容体として機能し、縦列反復配列を欠くMUC1の膜貫通切断産物と定義する。しかし、MUC1は、異なる部位で切断する異なる酵素によって切断することができる。どの切断酵素がMUC1をクリップするかは、組織特異的であっても患者特異的であってもよい。MUC1*の細胞外ドメインのコンホメーションは、どの切断酵素がそれを切断するかに依存して変化し得る。抗MUC1*抗体は、切断後に残存する膜貫通受容体の細胞外ドメインに結合する可能性がある。
【0003】
一態様では抗体がMUC1増殖因子(PSMGFR)、PSMGFR N-10、PSMGFR N-10、PSMGFR C-10の一次配列のペプチドに結合することができ、またはPSMGFRN-10に結合することができないが、PSMGFR N-10に結合することができ、またはPSMGFR N-10に結合することができず、またはN+20/C-22、N+20/C-41、もしくはN+20/C-27ペプチド、またはN+9/C-9ペプチドなどのPSMGFR N+20ペプチドに結合することができる。抗体は、PSMGFR配列を超えてN末端(terminally)に伸長される配列を有するペプチドに結合し得る。抗体は、配列N+20-PSMGFRまたはN+9-PSMGFRのペプチドに結合し得る。本発明の1つの態様において、抗MUCl*抗体またはその断片を使用する診断アッセイは、患者をスクリーニングして、MUC1*標的化治療薬からのそれらの潜在的利益を決定するために使用される。本発明の1つの態様において、診断において使用される抗体、および治療薬に組み込まれる抗体またはその断片は、同じ抗体に由来する。診断用抗体および治療用抗体の種は、同じである必要はない。
【0004】
一例では(i)癌と診断された、または癌を発症することが疑われる患者からの、生検であり得る疑わしい細胞または組織標本を、抗MUC1*抗体と接触させる;(ii)患者または健康なドナーからの正常な細胞または組織標本を、保管された参照標本であり得る同じ抗MUCl*抗体と接触させる;(iii)抗体結合を検出する;(iv)疑わしい標本への抗体結合の程度およびパターンを、正常な標本のものと比較する;(v)疑わしい標本がMUC1*を過剰発現するか、または頂端縁(apical border)に限定される発現とは対照的に均一なパターンでMUC1*を発現するという決定は患者がMUC1*陽性癌を患っていることを示す;(vi)抗MUCl*抗体またはその断片を組み込む治療剤を、患者に投与する。
【0005】
本発明の別の態様において、抗MUCl*抗体は、患者がMUC1*陽性腫瘍を有するかどうか、または使用される特異的抗体に依存して、患者が造影剤に結合される抗体の全てまたは断片を含む治療薬から利益を得るかどうかを決定するために、全身診断として患者において使用するための造影剤に結合され得る。診断用抗体および治療用抗体の種は、同じである必要はない。ラクダ科動物種で産生された抗体は、ヒトにおいて短い半減期を有する小さな一価抗体をラクダ科動物が産生したので、in vivo診断アッセイに特に有用である。
【0006】
本発明の別の態様において、造影剤に結合され得る抗MUCl*抗体は外科手術中に切除され得るように、癌組織を検出またはマーキングするために外科手術中に使用される。
【0007】
本発明の別の態様において、PSMGFRペプチドの配列のいくつかまたは全てを有するペプチドに結合する抗MUCl*抗体またはその断片は、乳癌の診断および/または治療のために使用される。
【0008】
本発明の別の態様において、20個ものアミノ酸だけN末端で伸長されたPSMGFRペプチドの配列のいくつかまたは全てを有するペプチドに結合する抗MUCl*抗体またはその断片が、膵臓癌の診断および/または治療のために使用される。
【0009】
本発明の別の態様では、PSMGFRペプチドの配列の一部または全部を有し、N末端で20アミノ酸ほど伸長したペプチドに結合する抗MUCl*抗体またはその断片が食道癌の診断および/または治療に使用される。
【0010】
本発明の別の態様では、PSMGFRペプチドの配列の一部または全部を有し、N末端で20アミノ酸ほど伸長したペプチドに結合する抗MUCl*抗体またはその断片が前立腺癌の診断および/または治療に使用される。
【0011】
一態様では、治療薬を標的とするMUC1*は癌免疫療法であり得る。MUC1*標的化治療薬は、CAR T、BiTE、ADC(抗体薬物結合体)、二重特異性抗体または抗体模倣物であり得る。
【0012】
MUC1*標的治療薬は切断された形態のMUC1に結合する抗体であってもよく、切断された形態は切断後に残る膜貫通受容体の細胞外ドメインである。抗体は、MUC1増殖因子の一次配列(PSMGFR)として知られるペプチド、またはPSMGFR配列を超えて20アミノ酸までN末端伸長されるペプチドに結合し得る。治療において使用される抗体は診断アッセイにおいて使用される抗体に由来し得るが、同じ種の動物において生成される必要はない。
【0013】
本発明の方法は、インビトロアッセイであり得る。このアッセイは、組織標本、体液サンプル、または血液サンプルに対して実施され得る。
【0014】
別の態様において、アッセイは、インビボアッセイであり得る。造影剤を抗体に付着させることができる。
【0015】
別の態様において、本発明は第2の抗体を含み得、工程は第1の抗体対第2の抗体の量の比を決定することを含み得る。第1の抗体は切断後に残る膜貫通受容体の細胞外ドメインに結合することができ、第2の抗体は、縦列反復配列のような切断部位のN末端であるMUC1細胞外ドメインの一部に結合することができる。
【0016】
別の態様において、上記の方法の全てに関して、非ヒト、ヒトまたはヒト化抗MUCl*抗体または抗体断片または抗体様タンパク質は、以下に特異的に結合し得る
【0017】
(i)MUC1のPSMGFR領域;
【0018】
(ii)SEQ ID NO:4に記載のPSMGFRペプチド;
【0019】
(iii)PSMGFR N+20/C-22、以下のアミノ酸配列を有するペプチド
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRY(配列番号5);
【0020】
(iv)PSMGFR N+12/C-22のアミノ酸配列を有するペプチド
SVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRY(配列番号6);
【0021】
(v)PSMGFR N+9/C-30のアミノ酸配列を有するペプチド
VQLTLAFREGTINVHDVETQFNQY (配列番号:7);
【0022】
(vi)PSMGFR N+20/C-41、以下のアミノ酸配列を有するペプチド
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTIN(配列番号:8)
【0023】
(vii)PSMGFR N+20/C-27、以下のアミノ酸配列を有するペプチド
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTE(配列番号9)
【0024】
(viii)PSMGFR N+9/C-9のアミノ酸配列を有するペプチド
VQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVP(配列番号10)。
【0025】
切断後に残存する膜貫通受容体の細胞外ドメインに結合する抗体は、
PSMGFR N+20/C-27と反応性を示すSDIX SRYポリクローナル抗体、MNC2モノクローナル抗体、MNE6モノクローナル抗体、またはモノクローナル抗体1E4、29H1、31A1、32C1、45C11;
PSMGFR N+9/C-9と反応性を示す17H6、39H5、3C5、8A9;
PSMGFRと反応性を示す18G12、20A10、25E6、28F9、18B4、ならびに
PSMGFRと反応性を示すMNC2およびMNE6でありうる。
これらの抗体は、ヒト、ヒト化、マウス、ラクダ、ラクダ、アルパカ、ラクダ、ウサギ、ヤギ、ハムスターまたは他の非ヒト種であり得る。
【0026】
本発明のこれらの目的および他の目的は、以下の本発明の説明、添付の図面および添付の特許請求の範囲からより完全に理解されるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明は本明細書の以下の詳細な説明、および例示としてのみ与えられ、したがって本発明を限定するものではない添付の図面から、より完全に理解されるのであろう;
【0028】
図1図1A-1Dは、Allredスコアリングシステムによる、乳がん組織アレイの隣接する連続切片の写真および病理スコアのグラフ表示を示している。病理スコアは0~3であり、0は染色を示さず、3は最大の染色である。グラフはまた、色分けされており、病理スコアゼロは黒色であり、1は黄色であり、2はオレンジ色であり、3は赤色である;全長MUC1を認識する抗体でプローブした場合にはゼロであるが、MUC1*を認識する抗体でプローブした場合には陽性であるとスコア付けされた組織は緑色であり;欠損組織または解釈不能組織は-1とスコア付けされた。図1Aは、全長MUC1のタンデム反復ドメインに結合する抗体であるVU4H5で染色した後の乳癌組織アレイの写真を示す。図1Bは、図1Aに描写された組織についての病理スコアのグラフを示す。図1Cは、MUC1*のPSMGFR領域内のエピトープに結合する抗体であるMNC2で染色した後の乳癌組織アレイの写真を示す。図1Dは、図1Cに描写された組織についての病理スコアのグラフを示す。
【0029】
図2図2A-2Bは、図1Aおよび図1Cに示されるアレイの病理スコアの円グラフを示す。図2Aは、完全長MUC1の縦列反復に結合する抗体が乳癌の30%を見逃すことを示す。図2Bは、抗MUCl*抗体MNC2が乳癌の95%を認識することを示す。抗MUCl-全長は乳房腫瘍の10%にのみ強く結合するが、抗MUCl*抗体MNC2は乳房腫瘍の約50%に強く結合する。
【0030】
図3図3A-3Bは、病理スコアの円グラフおよび抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の乳癌アレイBR1141の写真を示す。
【0031】
図4図4A-4Cは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の乳癌アレイBR1141からの個々の乳癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、TNM(Tumor stage, Nodeinvolvement,and Metastasis)、病理スコアを図で示した。標準的な免疫組織化学法を使用した。抗体濃度は、抗体がストロマを染色せずに正常組織の予想される染色を示した最高濃度を用いて力価測定した。宿主抗体およびB細胞濾胞を染色する抗ヒト二次抗体による偽陽性を回避するために、抗体をそのFc領域を通してビオチンに結合させた。図4Aは、huMNC2反応性細胞について陰性であったA7位の標本を示す。図4Bは、humMNC2反応性について+1をスコア化したリンパ節転移を伴う、グレード2の癌であるA9位の標本を示す。図4Cは、humMNC2反応性について+2をスコア化したリンパ節転移を伴う、より大きなグレード2の腫瘍であるB10位の標本を示す。
【0032】
図5図5A-5Bは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の乳癌アレイBR1141からの個々の乳癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。図5AはhumMNC2反応性について+3をスコア化したリンパ節転移を伴わない、グレード2の癌であるD7位の標本を示す。図5Bはグレード2の腫瘍であり、humMNC2反応性について+4をスコア化したリンパ節転移を伴う、位置F6での標本を示す。
【0033】
図6図6A-6Bは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の病理スコアおよび卵巣癌アレイBCll15aの写真の円グラフを示す。
【0034】
図7図7A-7Cは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の異なる癌サブタイプの拡大写真を示す。図7Aは、病理が+4をスコア化したグレード2の乳房腫瘍の写真を示す。図7Bは、病理が+3をスコア化したグレード2の卵巣腫瘍の写真を示す。図7Cは、病理が+3をスコア化したグレード3の膵腫瘍の写真を示す。1,000を超える腫瘍標本を対象としたIHC研究では、huMNC2-scFvが乳がんの95%(90%トリプルネガティブ)、卵巣がん83%、膵臓がん78%および肺がん71%を認識していることが示された。
【0035】
図8図8A-8Dは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の異なる癌サブタイプの拡大写真を示す。図8Aは、病理が+2をスコア化したグレード2の乳房腫瘍の写真を示す。図8Bは、病理が+3をスコア化したグレード3の卵巣腫瘍の写真を示す。図8Cはグレード3の膵臓腫瘍の写真であり、リンパ節転移があり、病理がスコア+3であった。図8Dは、病理が+3をスコア化した肺癌の写真を示す。
【0036】
図9図9A-9Iは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の種々の正常組織の拡大写真を示す。使用した条件および濃度は、癌組織を研究するために使用したものと同一であった。図9Aは正常な副腎組織を示している。図9Bは正常な脳組織を示している。図9Cは正常な乳房組織を示している。図9Dは、正常な胃組織を示す。図9Eは、正常な心臓組織を示す。図9Fは正常な腎組織を示している。図9Gは正常な精巣組織を示している。図9Hは、正常な腸組織を示す。図91は、正常な肝臓組織を示す。
【0037】
図10図10A-10Fは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の正常な腎臓組織の写真を示す。使用した条件および濃度は、癌組織を研究するために使用したものと同一であった。図10Aは、正常な発現である頂端縁に限定されたhuMNC2反応性を有する正常な腎組織を示す。図10Bは、より大きな倍率での同じ組織である。図10Cは、検出不能なhuMNC2反応性を有する正常な腎臓組織の別の例を示す。図10Dは、より大きな倍率での同じ組織である。図10Eは、正常な発現で頂端境界に限定されたhuMNC2反応性を有する正常な腎臓組織の別の例を示す。図10Fは、より大きな倍率での同じ組織である。さらなる研究は正常な腎臓組織の10%未満が遠位収集細管においてhuMNC2反応性を示し、そのような反応性は正常な発現パターンである頂端境界に厳密に限定されたことを示した。
【0038】
図11図11A-11Bは、病理スコアの円グラフおよび抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の食道癌アレイBC001113の写真を示す。
【0039】
図12図12A-12Fは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の、食道癌アレイBC001113からの個々の食道癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、病理スコアを図で示した。図12Aは、huMNC2反応性細胞について陰性であったA4位の標本を示す。図12Bは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。図12Cは、病理がhuMNC2に対する微量反応性としてスコア付けした位置D2の標本を示す。図12Dは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。図12Eは、病理がhuMNC2に対する+1反応性としてスコア付けした位置B8の標本を示す。図12Fは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
【0040】
図13図13A-13Dは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の、食道癌アレイBC001113からの個々の食道癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、病理スコアを図で示した。図13Aは、病理が+2をスコア化した、グレード4の腫瘍であるD6位の標本を示す。図13Bは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。図13Cは、病理が+3とスコア付けした、グレード3の腫瘍である位置D5の標本を示す。図12Dは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
【0041】
図14図14A-14Bは、病理スコアの円グラフおよび抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の膵臓癌アレイPA805bの写真を示す。
【0042】
図15図15A-15Dは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の、膵臓癌アレイPA805bからの個々の膵臓癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、病理スコアを図で示した。図15Aは、病理が+3をスコア化した、グレード3の腫瘍で位置F3における標本を示す。図15Bは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。図15Cは、病理が+2とスコア付けした、グレード1の腫瘍である位置B1の標本を示す。図15Dは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
【0043】
図16図16A-16Dは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の、膵臓癌アレイPA805bからの個々の膵臓癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、病理スコアを図で示した。図16Aは、病理が+2をスコア化したグレード1の腫瘍であるA2位の標本を示す。図16Bは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。図16Cは、病理が+2とスコア付けした、グレード2の腫瘍である位置C3の標本を示す。図16Dは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
【0044】
図17図17A-17Dは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の、膵臓癌アレイPA805bからの個々の膵臓癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、病理スコアを図で示した。図17Aは、病理が+2とスコア付けした、グレード2の腫瘍である位置C6の標本を示す。図17Bは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。図17Cは、病理がスコア+3であったリンパ節転移を伴う、より大きなグレード3の腫瘍である位置Dlでの標本を示す。図17Dは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
【0045】
図18図18A-18Dは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の、膵臓癌アレイPA805bからの個々の膵臓癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、病理スコアを図で示した。図18Aは、病理がスコア+2であったグレード1の腫瘍であるE2位の標本を示している。図18Bは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。図18Cは、病理がスコア+3であったリンパ節転移を伴う、より小さなグレード3の腫瘍であるE10位の標本を示す。図18Dは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
【0046】
図19図19は、対照として二次抗体単独で染色された膵臓癌アレイPA805bの写真を示す。
【0047】
図20図20A-20Bは、抗MUCl*モノクローナル抗体または抗MUCl*ポリクローナル抗体で染色された膵臓癌アレイPA805bの写真を示す。図20Aは、抗MUCl*モノクローナル抗体huMNC2-scFvで染色された膵臓癌アレイの写真を示す。図20Bは、抗MUCl*ポリクローナル抗体SDIXで染色された膵臓癌アレイの写真を示す。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を、動物をPSMGFRペプチドで免疫することによって生成した。丸で囲んだ標本は、モノクローナル抗体対ポリクローナル抗体でプローブした場合に異なる染色を示すために示されている。各標本の下の数字は、huMNC2-scFv、続いてスラッシュマーク、次いで腫瘍グレードでプローブした場合の病理スコアを示す。
【0048】
図21図21A~21Dは患者サンプルがモノクローナル抗体MNC2またはポリクローナル抗体SDIXでプローブされた場合の染色強度および染色パターンを比較する、膵臓癌アレイからの個々の腫瘍組織標本の写真を示し、両方の抗体がPSMGFRペプチドに結合する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0049】
図22図22A~22Dは患者サンプルがモノクローナル抗体MNC2またはポリクローナル抗体SDIXでプローブされた場合の染色強度および染色パターンを比較する、膵臓癌アレイからの個々の腫瘍組織標本の写真を示し、両方の抗体がPSMGFRペプチドに結合する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0050】
図23図23A~23Dは患者サンプルがモノクローナル抗体MNC2またはポリクローナル抗体SDIXでプローブされた場合の染色強度および染色パターンを比較する、膵臓癌アレイからの個々の腫瘍組織標本の写真を示し、両方の抗体がPSMGFRペプチドに結合する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0051】
図24図24A~24Dは患者サンプルがモノクローナル抗体MNC2またはポリクローナル抗体SDIXでプローブされた場合の染色強度および染色パターンを比較する、膵臓癌アレイからの個々の腫瘍組織標本の写真を示し、両方の抗体がPSMGFRペプチドに結合する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0052】
図25図25A~25Dは患者サンプルがモノクローナル抗体MNC2またはポリクローナル抗体SDIXでプローブされた場合の染色強度および染色パターンを比較する、膵臓癌アレイからの個々の腫瘍組織標本の写真を示し、両方の抗体がPSMGFRペプチドに結合する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0053】
図26図26A~26Dは患者サンプルがモノクローナル抗体MNC2またはポリクローナル抗体SDIXでプローブされた場合の染色強度および染色パターンを比較する、膵臓癌アレイからの個々の腫瘍組織標本の写真を示し、両方の抗体がPSMGFRペプチドに結合する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0054】
図27図27A~27Dは患者サンプルがモノクローナル抗体MNC2またはポリクローナル抗体SDIXでプローブされた場合の染色強度および染色パターンを比較する、膵臓癌アレイからの個々の腫瘍組織標本の写真を示し、両方の抗体がPSMGFRペプチドに結合する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0055】
図28図28A~28Dは患者サンプルがモノクローナル抗体MNC2またはポリクローナル抗体SDIXでプローブされた場合の染色強度および染色パターンを比較する、膵臓癌アレイからの個々の腫瘍組織標本の写真を示し、両方の抗体がPSMGFRペプチドに結合する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0056】
図29図29A~29Dは患者サンプルがモノクローナル抗体MNC2またはポリクローナル抗体SDIXでプローブされた場合の染色強度および染色パターンを比較する、膵臓癌アレイからの個々の腫瘍組織標本の写真を示し、両方の抗体がPSMGFRペプチドに結合する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0057】
図30図30A~30Dは患者サンプルがモノクローナル抗体MNC2またはポリクローナル抗体SDIXでプローブされた場合の染色強度および染色パターンを比較する、膵臓癌アレイからの個々の腫瘍組織標本の写真を示し、両方の抗体がPSMGFRペプチドに結合する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0058】
図31図31A~31Dは患者サンプルがモノクローナル抗体MNC2またはポリクローナル抗体SDIXでプローブされた場合の染色強度および染色パターンを比較する、膵臓癌アレイからの個々の腫瘍組織標本の写真を示し、両方の抗体がPSMGFRペプチドに結合する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0059】
図32図32A~32Dは膵臓癌アレイからの個々の組織標本の写真を示すが、示されている標本は正常な膵臓組織である。モノクローナル抗体MNC2の染色強度および染色パターンを、ポリクローナル抗体SDIXの染色強度およびパターンと比較する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0060】
図33図33A~33Dは膵臓癌アレイからの個々の組織標本の写真を示すが、示されている標本は正常な膵臓組織である。モノクローナル抗体MNC2の染色強度および染色パターンを、ポリクローナル抗体SDIXの染色強度およびパターンと比較する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0061】
図34図34A~34Dは膵臓癌アレイからの個々の組織標本の写真を示すが、示されている標本は正常な膵臓組織である。モノクローナル抗体MNC2の染色強度および染色パターンを、ポリクローナル抗体SDIXの染色強度およびパターンと比較する。図において、(A)はMNC2で染色され、(B)は同じ組織であるが、より大きな倍率で染色され、(C)はSDIXで染色され、(D)は同じ組織であるが、より大きな倍率で示されている。
【0062】
図35図35A-35Bは、癌細胞上および正常な造血幹細胞上のMUC1*発現の地図を示している。図35Aは、抗MUCl*モノクローナル抗体、MNC2によってプローブされる癌細胞上のMUC1*を示す。図35Bは、抗MUCl*モノクローナル抗体、MNC3によってプローブされる正常な造血幹細胞上のMUC1*を示す。両方の抗体は、動物をPSMGFRペプチドで免疫化することによって作製した。MNC2は正常な造血幹細胞には結合しないが、MNC3は結合する。
【0063】
図36図36A-36Bは、抗PSMGFR抗体で染色されたヒト造血幹細胞のFACS分析を示す。図36AはSDIXポリクローナル抗体およびMNC3モノクローナル抗体が造血幹細胞のほぼ100%を認識するが、MNC2モノクローナル抗体はそれらに結合しないことを示すFACS結果のグラフを示す。図36BはFACスキャンのオーバーレイを示し、これはMNC2結合が対照抗体と変わらないことを示し、一方、MNC3は細胞集団において明らかなシフトを生じる。全ての3つの抗体は、PSMGFRペプチドで免疫化することによって生成された。
【0064】
図37図37は切断酵素MMP9の触媒ドメインの添加後、90%の全長MUC1を発現する細胞のFACS分析のグラフを示し、次いで、抗全長MUC1抗体VU4H5または抗MUCl*抗体MNC2でプローブする。
【0065】
図38図38A-38Cは、MUC1*細胞外ドメイン配列に由来する3つの異なるペプチドのうちの1つで動物を免疫化することによって生成された新しい抗MUCl*モノクローナル抗体を列挙する。図38Aは、動物をPSMGFRペプチドで免疫した場合に生成されたモノクローナル抗体を列挙する。図38Bは、動物をPSMGFR N+20/C-27ペプチドで免疫した場合に生成されたモノクローナル抗体を列挙する。図38Cは、動物をPSMGFR N+9/C-9ペプチドで免疫した場合に生成されたモノクローナル抗体を列挙する。-1または-2という名称は、同じウェルからの姉妹クローンを指す。ストック抗体溶液の濃度を示す。
【0066】
図39図39は、PSMGFRペプチドで免疫することによって生成されたモノクローナル抗体がMUC1*細胞外ドメインの配列に由来する他のペプチドに結合する能力を試験するELISA実験のグラフを示す。全てのモノクローナル抗体は、免疫化ペプチドに結合するそれらの能力に基づいて最初に選択された。抗体が結合するペプチド内のエピトープをさらに解明するために、抗体を、PSMGFRペプチド、N-10ペプチドまたはC-10ペプチドに結合する能力について試験した。
【0067】
図40図40A~40Bは、T47D乳癌細胞に結合する新しいPSMGFR抗MUCl*モノクローナル抗体のFACS分析のグラフを示す。図40Aは、平均蛍光強度を示す。図40Bは、それぞれの抗体で陽性に染色された細胞のパーセントを示す。
【0068】
図41図41は、PSMGFR N+20/C-27ペプチドで免疫することによって生成されたモノクローナル抗体がMUC1*細胞外ドメインの配列に由来する他のペプチドに結合する能力を試験するELISA実験のグラフを示す。全てのモノクローナル抗体は、免疫化ペプチドに結合するそれらの能力に基づいて最初に選択された。抗体が結合するペプチド内のエピトープをさらに解明するために、抗体を、PSMGFRペプチド、N-10ペプチドまたはC-10ペプチドに結合する能力について試験した。
【0069】
図42図42A-42Bは、T47D乳癌細胞に結合する新しいPSMGFR N+20/C-27抗MUCl*モノクローナル抗体のFACS分析のグラフを示す。図42Aは、平均蛍光強度を示す。図42Bは、それぞれの抗体で陽性に染色された細胞のパーセントを示す。
【0070】
図43図43は、PSMGFR N+9/C-9ペプチドで免疫することによって生成されたモノクローナル抗体がMUC1*細胞外ドメインの配列に由来する他のペプチドに結合する能力を試験するELISA実験のグラフを示す。全てのモノクローナル抗体は、免疫化ペプチドに結合するそれらの能力に基づいて最初に選択された。抗体が結合するペプチド内のエピトープをさらに解明するために、抗体を、PSMGFRペプチド、N-10ペプチドまたはC-10ペプチドに結合する能力について試験した。
【0071】
図44図44A-44Bは、T47D乳癌細胞に結合する新しいPSMGFR N+9/C-9抗MUCl*モノクローナル抗体のFACS分析のグラフを示す。図44Aは、平均蛍光強度を示す。図44Bは、それぞれの抗体で陽性に染色された細胞のパーセントを示す。
【0072】
図45図45A-45Cは膵臓癌アレイからの隣接する連続切片の写真を示し、これは、種々の抗MUCl*抗体を用いて標準的なIHC法によって染色された。図45AはSDIXポリクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原は、PSMGFRペプチドであった。図45Bは18B4モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体に対する免疫原は、PSMGFRペプチドであった。図45Cは1E4モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体の免疫原は、PSMGFRN+20/C-27ペプチドであった。
【0073】
図46図46A~46Fは、図45に示される膵臓癌アレイからの個々の標本の写真を示す。図46Aは、SDIXポリクローナル抗体で染色された標本を示す。図46Bは、同じ組織標本をより大きな倍率で示す。図46Cは、18B4モノクローナル抗体で染色された隣接組織切片を示す。図46Dは、同じ組織標本をより大きな倍率で示す。図46Eは、1E4モノクローナル抗体で染色された隣接組織切片を示す。図46Fは、同じ組織標本をより大きな倍率で示す。
【0074】
図47図47A~47Dは、図45に示される膵臓癌アレイからの個々の標本の写真を示す。図47Aは、SDIXポリクローナル抗体で染色された標本を示す。図47Bは、同じ組織標本をより大きな倍率で示す。図47Cは、18B4モノクローナル抗体で染色された隣接組織切片を示す。図47Dは、同じ組織標本をより大きな倍率で示す。
【0075】
図48図48A~48Dは、図45に示される膵臓癌アレイからの個々の標本の写真を示す。図48Aは、SDIXポリクローナル抗体で染色された標本を示す。図48Bは、同じ組織標本をより大きな倍率で示す。図48Cは、18B4モノクローナル抗体で染色された隣接組織切片を示す。図48Dは、同じ組織標本をより大きな倍率で示す。
【0076】
図49図49A-49Dは、図45に示される膵臓癌アレイからの個々の標本の写真を示す。図49Aは、SDIXポリクローナル抗体で染色された標本を示す。図49Bは、同じ組織標本をより大きな倍率で示す。図49Cは、1E4モノクローナル抗体で染色された隣接組織切片を示す。図49Dは、同じ組織標本をより大きな倍率で示す。図49A図49Cと比較すると、PSMGFR N+20/C-27ペプチドで免疫化することによって生成されたモノクローナル抗体は、PSMGFRペプチドで免疫化することによって生成されたポリクローナル抗体SDIXによって認識されるものとは異なる腫瘍内の細胞集団を認識することが明らかである。
【0077】
図50図50A~50Dは、図45に示される膵臓癌アレイからの個々の標本の写真を示す。図50Aは、SDIXポリクローナル抗体で染色された標本を示す。図50Bは、同じ組織標本をより大きな倍率で示す。図50Cは、1E4モノクローナル抗体で染色された隣接組織切片を示す。図50Dは、同じ組織標本をより大きな倍率で示す。図50A図50Cとを比較すると、PSMGFR N+20/C-27ペプチドで免疫することによって生成されたモノクローナル抗体は、PSMGFRペプチドで免疫することによって生成されたポリクローナル抗体SDIXによって認識されるものとは異なる腫瘍内の細胞集団を認識することが明らかである。
【0078】
図51図51A~51Cは膵臓癌アレイからの隣接する連続切片の写真を示し、これは、種々の抗MUCl*抗体を用いて標準的なIHC法によって染色された。図51AはSDIXポリクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原はPSMGFRペプチドであった。図51Bは20A10モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、抗体の免疫原はPSMGFRペプチドであった。図51Cは29H1モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原は、PSMGFRN+20/C-27ペプチドであった。
【0079】
図52図52A~52Dは膵臓癌アレイからの隣接する連続切片の写真を示し、これは、種々の抗MUCl*抗体を用いて標準的なIHC法によって染色された。図52Aは17H6モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原は、PSMGFRN+9/C-9ペプチドであった。図52Bは32C1モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体の免疫原は、PSMGFRN+20/C-27ペプチドであった。図52Cは45C11モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原は、PSMGFRN+20/C-27ペプチドであった。図52Dは31A1モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原は、PSMGFRN+20/C-27ペプチドであった。
【0080】
図53図53A-53Fは膵臓癌アレイからの隣接する連続切片の病理染色スコアの写真およびグラフ表示を示しており、これは、標準的なIHC法により、完全長MUC1を認識する抗体またはMUC1*のみを認識する抗体のいずれかで染色された。図53Aは、完全長MUC1のタンデム反復ドメイン中の捕捉されたO結合グリカンに結合する抗体である抗体5E5で染色された膵臓癌アレイを示す。図53Bは、アレイ中の各標本についての病理のスコアを示す。図53Cは、MUC1*のPSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗体である抗MUCl*抗体29H1で染色された膵臓癌アレイを示す。図53Dは、アレイ内の各標本に対する病理のスコアを示す。図53Eは、全長MUC1のタンデム反復ドメイン中のエピトープに結合する抗体である抗体VU4H5で染色された膵臓癌アレイを示す。図53Fは、アレイ中の各標本についての病理のスコアを示す。図から分かるように、抗体5E5はVU4H5が認識しないいくつかの標本を認識するが、抗MUCl*抗体29H1は全長MUC1を認識する両方の抗体によって認識される標本と、いずれの抗MUCl抗体によっても認識されない他の標本とを認識する。これらの知見はPSMGFR配列を越えてN末端に伸長したアミノ酸を含むペプチドに結合する抗MUCl*抗体が全長MUC1を認識せず、PSMGFRN+20/C-27ペプチドに結合する抗体は膵臓癌に普及しているエピトープを認識することを示す。
【0081】
図54図54A~54Cは食道癌アレイからの隣接する連続切片の写真を示し、これは、種々の抗MUCl*抗体を用いて標準的なIHC法によって染色された。図54AはSDIXポリクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原はPSMGFRペプチドであった。図54Bは20A10モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、抗体の免疫原はPSMGFRペプチドであった。図54Cは29H1モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原は、PSMGFRN+20/C-27ペプチドであった。図54Dは31A1モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原は、PSMGFRN+20/C-27ペプチドであった。この図は両方がPSMGFRペプチドに結合する抗体SDIXおよび20A10が異なる程度ではあるが、同じ腫瘍組織標本を認識し、一方、PSMGFRN+20/C-27ペプチドに結合する抗体はより多くの食道腫瘍標本、ならびに抗PSMGFR抗体によって認識されるもの大部分に結合することを示す。これらの結果はPSMGFRN+20/C-27ペプチドに結合する抗体が一般に、PSMGFRペプチドに結合する抗体よりも食道癌に対してより特異的であるが、特定の患者はPSMGFRペプチドに結合する抗MUCl*抗体によってより良好に認識される食道癌を有し得るという考えと一致する。
【0082】
図55図55A-55Cは食道癌アレイからの隣接する連続切片の写真を示し、これは、種々の抗MUCl*抗体を用いて標準的なIHC法によって染色された。図55AはSDIXポリクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原はPSMGFRペプチドであった。図55Bは17H6モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体は、PSMGFR N+9/C-9ペプチドに結合する。
【0083】
図55CはMNC2モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体は、PSMGFRペプチドに結合する。
図55Dは45C11モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体は、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する。
これらの結果は、ほとんどの食道癌において、MUC1はPSMGFR配列のN末端にある潜在性エピトープを露出する酵素によって切断されるという考えと一致している。
【0084】
図56図56A-56Fは食道癌アレイからの隣接する連続切片の病理染色スコアの写真およびグラフ表示を示し、これは、完全長MUC1を認識する抗体またはMUC1*のみを認識する抗体のいずれかで標準的なIHC法により染色された。図56Aは、完全長MUC1のタンデム反復ドメイン中の捕捉されたO結合グリカンに結合する抗体である抗体5E5で染色された食道癌アレイを示す。図56Bは、アレイ中の各標本についての病理のスコアを示す。図56Cは、MUC1*のPSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗体である抗MUCl*抗体29H1で染色された食道癌アレイを示す。図56Dは、アレイ中の各標本についての病理のスコアを示す。図56Eは、全長MUC1のタンデム反復ドメイン中のエピトープに結合する抗体である抗体VU4H5で染色された食道癌アレイを示す。図56Fは、アレイ中の各標本についての病理のスコアを示す。図から分かるように、抗体5E5はVU4H5が認識しないいくつかの標本を認識するが、抗MUCl*抗体29H1は全長MUC1を認識する両方の抗体によって認識される標本と、他の抗MUCl抗体によっても認識されない他の標本とを認識する。これらの知見はPSMGFR配列を越えてN末端に伸長したアミノ酸を含むペプチドに結合する抗MUCl*抗体が全長MUC1を認識せず、PSMGFRN+20/C-27ペプチドに結合する抗体は食道癌に普及しているエピトープを認識することを示す。
【0085】
図57-1】図57A-57Gは抗体5E5またはVU4H5のいずれかで染色された前立腺癌アレイの写真を示し、これらは両方とも、MUC1*のみを認識し、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する全長MUC1または29H1を認識する。図57Aは、抗体5E5で染色された食道癌アレイを示す。図57Bは、抗体29H1で染色された食道癌アレイを示す。図57Bは、抗体29H1で染色された食道癌アレイを示す。図57Cは、抗体VU4H5で染色された食道癌アレイを示す。図57Dは、対照として、二次抗体のみで染色された食道癌アレイを示す。
図57-2】図57E図57Aの赤いボックスによってマークされた組織をより大きな倍率で示し、染色は5E5で行われた。図57F図57Bにおいて赤いボックスによってマークされた組織を、より大きな倍率で示し、ここで、染色は、29H1で行われた。図57G図57Cにおいて赤いボックスによってマークされた組織を、より大きな倍率で示し、ここで、染色は、VU4H5を用いて行われた。破線の赤いボックスは完全長MUC1を認識する抗体について陰性に染色されるが、抗MUCl*抗体、特にPSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗体でプローブされた場合、高度に陽性で多くの食道腫瘍標本のただ1つの患者標本を示す。
【0086】
図58図58A-58Cは、様々な抗MUCl*抗体を用いて標準的なIHC法によって染色された、前立腺癌アレイからの隣接する連続切片の写真を示す。図58AはSDIXポリクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原はPSMGFRペプチドであった。図58Bは18B4モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで抗体はPSMGFRペプチドに結合する。図58Cは1E4モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体は、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する。
【0087】
図59図59A-59Eは、種々の抗MUCl*抗体を用いて標準的なIHC法によって染色された前立腺癌アレイからの隣接する連続切片の写真を示す。図59Aは、PSMGFRペプチドに結合するがC-10ペプチドには結合しないMNC2モノクローナル抗体で染色されたアレイを示す。図59Bは、PSMGFRペプチドに結合する18B4抗体で染色されたアレイを示す。図59Cは、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する32C1抗体で染色されたアレイを示す。図59DはSDIXポリクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原はPSMGFRペプチドであった。図59Eは、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する31A1モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示す。
【0088】
図60図60A-60Fは、全長MUC1を認識する抗体またはMUC1*のみを認識する抗体のいずれかで標準的なIHC法により染色された、前立腺癌アレイからの隣接する連続切片の病理染色スコアの写真およびグラフ表示を示す。図60Aは抗体5E5で染色された前立腺癌アレイを示し、これは、完全長MUC1のタンデム反復ドメイン中の捕捉されたO結合グリカンに結合する抗体である。図60Bは、アレイ内の各標本に対する病理のスコアを示す。図60Cは、MUC1*のPSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗体である抗MUCl*抗体29H1で染色された前立腺癌アレイを示す。図60Dは、アレイ内の各標本に対する病理のスコアを示す。図60Eは、全長MUC1のタンデム反復ドメイン中のエピトープに結合する抗体である抗体VU4H5で染色された前立腺癌アレイを示す。図60Fは、アレイ内の各標本に対する病理のスコアを示す。図から分かるように、抗体5E5はVU4H5が認識しないいくつかの標本を認識するが、抗MUCl*抗体29H1は全長MUC1を認識する両方の抗体によって認識される標本と、いずれの抗MUCl抗体によっても認識されない他の標本とを認識する。これらの知見はPSMGFR配列を越えてN末端に伸長したアミノ酸を含むペプチドに結合する抗MUCl*抗体が全長MUC1を認識せず、PSMGFRN+20/C-27ペプチドに結合する抗体は前立腺癌に普及しているエピトープを認識することを示す。
【0089】
図61-1】図61A-61Gは抗体5E5またはVU4H5のいずれかで染色された前立腺癌アレイの写真を示し、これらは両方とも、MUC1*のみを認識し、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する全長MUC1または29H1を認識する。図61Aは、抗体5E5で染色された前立腺癌アレイを示す。図61Bは、抗体29H1で染色された前立腺癌アレイを示す。図61Bは、抗体29H1で染色された前立腺癌アレイを示す。図61Cは、抗体VU4H5で染色された前立腺癌アレイを示す。図61Dは、対照として、二次抗体のみで染色された前立腺癌アレイを示す。
図61-2】図61E図61Aの赤いボックスによってマークされた組織をより大きな倍率で示し、染色は5E5で行われた。図61F図61Bにおいて赤いボックスによってマークされた組織を、より大きな倍率で示し、ここで、染色は、29H1で行われた。図61G図61Cにおいて赤いボックスによってマークされた組織を、より大きな倍率で示し、ここで、染色は、VU4H5を用いて行われた。破線の赤いボックスは完全長MUC1を認識する抗体について陰性に染色されるが、抗MUCl*抗体、特にPSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗体でプローブされた場合には非常に陽性で多くの前立腺腫瘍標本のただ1つの患者標本を示す。
【0090】
図62図62A-62Bは、2つの異なる抗MUCl*モノクローナル抗体で染色された乳癌アレイBR1141の隣接する連続切片の写真を示す。図62Aは、抗MUCl*モノクローナル抗体MNC2で染色された乳癌アレイの写真を示す。図62Bは、抗MUCl*モノクローナル抗体20A10で染色された乳癌アレイの写真を示す。両方のモノクローナル抗体はPSMGFRペプチド、N-10ペプチドに結合するが、C10ペプチドには結合しない。
【0091】
図63図63A-63Bは、2つの異なる抗MUCl*モノクローナル抗体で染色された乳癌アレイBR1141の隣接する連続切片の写真を示す。図63Aは、抗MUCl*モノクローナル抗体MNC2で染色された乳癌アレイの写真を示す。図63Bは、抗MUCl*モノクローナル抗体25E6で染色された乳癌アレイの写真を示す。両方のモノクローナル抗体は、PSMGFRペプチドおよびN-10ペプチドに結合する。MNC2はC-10ペプチドに結合することができないが、25E6はC-10ペプチドにいくらか低いレベルの結合を示し、これらが異なるエピトープに結合することを示している。
【0092】
図64図64A-64Bは、2つの異なる抗MUCl*モノクローナル抗体で染色された乳癌アレイBR1141の隣接する連続切片の写真を示す。図64Aは、抗MUCl*モノクローナル抗体MNC2で染色された乳癌アレイの写真を示す。図64Bは、抗MUCl*モノクローナル抗体18B4で染色された乳癌アレイの写真を示す。両方のモノクローナル抗体は、PSMGFRペプチドに結合する。しかし、MNC2とは異なり、18B4はN-10エピトープに結合することができず、異なるエピトープに結合すること、および18B4が結合のためにPSMGFRペプチドの10個のN末端アミノ酸を必要とし得ることを示している。
【0093】
図65図65A-65Bは、2つの異なる抗MUCl*モノクローナル抗体で染色された乳癌アレイBR1141の隣接する連続切片の写真を示す。図65Aは、抗MUCl*モノクローナル抗体MNC2で染色された乳癌アレイの写真を示す。図65Bは、抗MUCl*モノクローナル抗体18G12で染色された乳癌アレイの写真を示す。両方のモノクローナル抗体は、PSMGFRペプチドに結合する。しかし、MNC2とは異なり、18G12はある程度C-10エピトープに結合し、PSMGFRペプチド内の異なるエピトープに結合することを示している。
【0094】
図66図66A-66Bは、2つの異なる抗MUCl*モノクローナル抗体で染色された乳癌アレイBR1141の隣接する連続切片の写真を示す。図66Aは、抗MUCl*モノクローナル抗体MNC2で染色された乳癌アレイの写真を示す。図66Bは、抗MUCl*モノクローナル抗体8A9で染色された乳癌アレイの写真を示す。モノクローナル抗体MNC2はPSMGFRペプチドに結合するが、8A9はPSMGFR N+9/C-9ペプチドに結合する。それらが結合するペプチドは、非常に異なる染色パターンと組み合わされて、それらが異なるMUC1*エピトープに結合することを示す。
【0095】
図67図67A-67Bは、2つの異なる抗MUCl*モノクローナル抗体で染色された乳癌アレイBR1141の隣接する連続切片の写真を示す。図67Aは、抗MUCl*モノクローナル抗体MNC2で染色された乳癌アレイの写真を示す。図67Bは、抗MUCl*モノクローナル抗体28F9で染色された乳癌アレイの写真を示す。両方のモノクローナル抗体は、PSMGFRペプチドに結合する。
【0096】
図68図68A-68Bは、2つの異なる抗MUCl*モノクローナル抗体で染色された乳癌アレイBR1141の隣接する連続切片の写真を示す。図68Aは、抗MUCl*モノクローナル抗体MNC2で染色された乳癌アレイの写真を示す。図68Bは、抗MUCl*モノクローナル抗体17H6で染色された乳癌アレイの写真を示す。モノクローナル抗体MNC2はPSMGFRペプチドに結合するが、17H6はPSMGFR N+9/C-9ペプチドに結合する。それらが結合するペプチドは、非常に異なる染色パターンと組み合わされて、それらが異なるMUC1*エピトープに結合することを示す。
【0097】
図69図69A-69Bは、2つの異なる抗MUCl*モノクローナル抗体で染色された乳癌アレイBR1141の隣接する連続切片の写真を示す。図69Aは、抗MUCl*モノクローナル抗体MNC2で染色された乳癌アレイの写真を示す。図69Bは、抗MUCl*モノクローナル抗体3C5で染色された乳癌アレイの写真を示す。モノクローナル抗体MNC2はPSMGFRペプチドに結合するが、3C5はPSMGFR N+9/C-9ペプチドに結合する。それらが結合するペプチドは、非常に異なる染色パターンと組み合わされて、それらが異なるMUC1*エピトープに結合することを示す。
【0098】
図70-1】図70A-70Gは、4つの異なる抗MUCl*モノクローナル抗体で染色された乳癌アレイBR1007の隣接する連続切片の写真を示す。図70Aは、PSMGFRペプチドに結合する抗MUCl*モノクローナル抗体20A10で染色された乳癌アレイの写真を示す。図70Bは、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗MUCl*モノクローナル抗体29H1で染色された乳癌アレイの写真を示す。図70Cは、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗MUCl*モノクローナル抗体4501で染色された乳癌アレイの写真を示す。図70Dは、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗MUCl*モノクローナル抗体320で染色された乳癌アレイの写真を示す。
図70-2】図70Eは、PSMGFRペプチドに結合する抗MUCl*モノクローナル抗体18B4で染色された乳癌アレイの写真を示す。図70Fは、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗MUCl*モノクローナル抗体31A1で染色された乳癌アレイの写真を示す。図70Gは、PSMGFR N+9/C-9ペプチドに結合する抗MUCl*モノクローナル抗体17H6で染色された乳癌アレイの写真を示す。
【0099】
図71図71A-71Fは、完全長MUC1を認識する抗体またはMUC1*のみを認識する抗体のいずれかで標準的なIHC法により染色した、乳癌アレイからの隣接する連続切片の病理染色スコアの写真およびグラフ表示を示す。図71Aは、全長MUC1のタンデム反復ドメイン中の捕捉されたO結合グリカンに結合する抗体である抗体5E5で染色された乳癌アレイを示す。図71Bは、アレイ中の各標本についての病理のスコアを示す。図71Cは、MUC1*のPSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗体である抗MUCl*抗体29H1で染色された乳癌アレイを示す。図71Dは、アレイ内の各標本に対する病理のスコアを示す。図71Eは、全長MUC1のタンデム反復ドメイン中のエピトープに結合する抗体である抗体VU4H5で染色された乳癌アレイを示す。図71Fは、アレイ中の各標本についての病理のスコアを示す。図から分かるように、抗体5E5はVU4H5が認識しないいくつかの標本を認識するが、抗MUCl*抗体29H1は全長MUC1を認識する両方の抗体によって認識される標本と、いずれの抗MUCl抗体によっても認識されない他の標本とを認識する。これらの知見は、PSMGFR配列を超えてN末端に伸長したアミノ酸を含むペプチドに結合する抗MUCl*抗体が全長MUC1を認識しないことを示す。
【0100】
図72図72A~72Fは種々の抗MUCl*モノクローナル抗体で染色された乳癌組織アレイBR1141の隣接する連続切片の写真を示し、ここで、全ての抗体は、PSMGFRペプチドに結合する。図72Aは、MNC2で染色された乳癌標本を示す。図72Bは、20A10で染色された乳癌標本を示す。図72Cは、25E6で染色された乳癌標本を示す。図72Dは、28F9で染色された乳癌標本を示す。図72Eは、18G12で染色された乳癌標本を示す。図72Fは、18B4で染色された乳癌標本を示す。これらの抗体は全て、PSMGFRペプチドに結合し、この乳癌アレイの同じ染色パターンをおおよそ生成する。しかし、これらの抗体がアレイ内の個々の標本をどのように認識するかにはいくつかの差異があり、これは異なる酵素によるMUC1~MUC1*切断を表し得る。図39を参照すると、MNC2および20A10はN-10ペプチドに結合するが、C-10ペプチドには結合せず、これは10個の膜近位アミノ酸がそれらの結合に重要であることを示す。抗体18B4、18G12および25E6はC-10ペプチドへのいくらかの結合を示し、28F9は、C-10ペプチドへのさらにより多くの結合を示す。特に、18B4はN-10ペプチドに結合せず、これは他のものよりもPSMGFR内でよりN末端であるエピトープに結合することを示す。赤い丸は、比較のための目的の標本を示す。
【0101】
図73図73A-73Fは種々の抗MUCl*モノクローナル抗体で染色された乳癌組織アレイBR1141の隣接する連続切片の写真を示し、ここで、PSMGFR N+9/C-9ペプチドに結合する抗体はMNC2およびそのヒト化一単回形態huMNC2-scFv-Fcと比較され、これらは両方ともPSMGFR、N-10に結合するが、C-10ペプチドには結合しない。図73Aは、MNC2で染色された乳癌標本を示す。図73Bは、8A9で染色された乳癌標本を示す。図73Cは、17H6で染色された乳癌標本を示す。図73Dは、huMNC2-scFv-Fcで染色された乳癌標本を示す。図73Eは、3C5で染色された乳癌標本を示す。図73Fは、39H5で染色された乳癌標本を示す。ここで赤丸で印をつけた患者検体を参照すると、PSMGFR N+9/C-9ペプチドに結合する抗体が、MNC2抗PSMGFR抗体が見逃したり弱く結合したりする乳癌細胞の集団を認識することがわかるのは単純である。
【0102】
本出願に開示されるモノクローナル抗体MNC2、MNE6、MNC3、MNC8、および18B4、18G12、20A10、25E6、1E4、29H1、31A1、32C1、4501、3C5、8A9、17H6、および39H5に加えて、PSMGFRペプチドの接種から作製される他のモノクローナル抗体配列が、配列番号237-349に列挙される。
【発明を実施するための形態】
【0103】
本出願では、「a」および「an」が単一のオブジェクトおよび複数のオブジェクトの両方を指すために使用される。
【0104】
本明細書中で使用される場合、時には手短に言えば、ポリペプチドは細胞中に「形質導入またはトランスフェクトされた」ものとして示される。これらの出現において、ポリペプチド配列をコードする核酸は、ポリペプチドが細胞に形質導入または形質移入され得ることは不可能であるため、細胞に形質導入または形質移入されることが理解される。
【0105】
本明細書で使用されるように、動物に注入される細胞の数、または他の意味で細胞の数が参照される場合には、「M」は数百万を指し、「K」は数千を指す。
【0106】
本明細書で使用されるように、「C2」、「Min-C2」および「MNC2」と交換可能である「MN-C2」;「E6」、「Min-E6」および「MNE6」と交換可能である「MNE6」;「C3」、「Min-C3」および「MNC3」と交換可能である「MN-C3」;ならびに「C8」、「Min-C8」および「MNC8」と交換可能である「MN-C8」のような、様々なモノクローナル抗体の交換可能な名称が使用される。
【0107】
本明細書中で使用される場合、抗体構築物の前に配置される「h」または「hu」は、ヒトまたはヒト化について省略語である。
【0108】
本明細書で使用される「抗体様」とは抗体の一部を含むが、天然に存在する抗体ではないように操作され得る分子を手段する。例としてはCAR(キメラ抗原受容体)T細胞技術およびYlanthia<登録商標>技術が挙げられるが、これらに限定されない。CAR技術は身体の免疫系が特異的な標的タンパク質または細胞を攻撃するように、T細胞の一部に融合された抗体エピトープを使用する。Ylanthia<登録商標>技術は合成ヒトFabの集合である「抗体様」ライブラリーからなり、その後、標的タンパク質からペプチドエピトープへの結合についてスクリーニングされる。次いで、選択されたFab領域はそれらが抗体に類似するように、足場またはフレームワークに操作され得る。
【0109】
本明細書中で使用される場合、「PSMGFR」は配列番号4によって同定されるMUC1増殖因子受容体の一次配列の略であり、したがって、6アミノ酸配列と混同されるべきではない。「PSMGFRペプチド」または「PSMGFR領域」は、MUC1増殖因子受容体(配列番号4)の一次配列を組み込むペプチドまたは領域を指す。
【0110】
本明細書中で使用される場合、用語「PSMGFR」は、以下に記載されるMUC1増殖因子受容体の一次配列の頭字語である;
GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNFTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号4)。
この点に関して、「N-10 PSMGFR」、「N-15PSMGFR」または「N-20 PSMGFR」はPSMGFRのN末端で欠失したアミノ酸残基の数をいい、「N+10 PSMGFR」、「N+15 PSMGFR」は、PSMGFRのN末端で付加されたアミノ酸残基の数をいう。「C-10 PSMGFR」、「C-15 PSMGFR」、または「C-20 PSMGFR」のような繊維状の「C-数」はPSMGFRのC末端で欠失したアミノ酸残基の数を意味し、「C+10 PSMGFR」、「C+15 PSMGFR」、または「C+20 PSMGFR」はPSMGFRのC末端で付加したアミノ酸残基の数を意味する。
また、「N+20/C-27 PSMGFR」、「PSMGFRN+20/C-27」又は「N+20/C-27」のように可能な組み合わせは、PSMGFRのN末端にはMUC1ペプチドのアミノ酸が20個追加され、PSMGFRのC末端には27アミノ酸が欠失しているペプチドを意味する。
【0111】
本明細書中で使用される場合、PSMGFRペプチドの属を言及することが所望される場合、それらは「PSMGFR基」と呼ばれ、例えば、「N+20 PSMGFR基」は、C末端がどのように修飾されるか、アミノ酸が欠失されているか、または付加されているか等に関係なく、N末端にさらなる20アミノ酸を有するペプチドを言及する。
【0112】
本明細書中で使用される場合、「MUC1*の細胞外ドメイン」は、タンデム反復ドメインを欠くMUC1タンパク質の細胞外部分をいう。ほとんどの場合、MUC1*は、MUC1*部分が縦列反復のない短い細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質尾部からなる切断産物である。MUC1の切断の正確な位置は、おそらく、2つ以上の酵素によって切断され得るようため、知られていない。MUC1*の細胞外ドメインはPSMGFR配列の大部分を含むが、さらなる10~20個のN末端アミノ酸を有し得る。
【0113】
本明細書中で使用される場合、「MUC1*」細胞外ドメインは主に、PSMGFR配列
(GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNFTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号4))によって定義される。
MUC1切断の正確な部位はそれを切断する酵素に依存し、そして切断酵素は細胞型、組織型、または細胞の進化における時間に依存して変化するので、MUC1*細胞外ドメインの正確な配列はN末端で変化し得る。
【0114】
他のクリップされたアミノ酸配列は、
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRY(配列番号5);または
SVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRY(配列番号6)を含み得る。
【0115】
本明細書中で使用される場合、「配列同一性」は特定のポリペプチドまたは核酸の配列における、核酸またはアミノ酸の参照配列に対する相同性を手段し、その結果、相同ペプチドの機能は参照ペプチドまたは核酸と同じであり得る。そのような相同性が参照ペプチドと非常に近く、その結果、2つの配列は時々、90%、95%または98%同一であり得るが、結合または他の生物学的活性において同じ機能を保有する。
【0116】
本明細書中で使用される場合、「MUC1陽性」細胞はMUC1、MUC1-YまたはMUC1-Zまたは他のMUC1変異体についての遺伝子を発現する細胞をいう。
【0117】
本明細書中で使用される場合、「MUC1陰性」細胞は、MUC1についての遺伝子を発現しない細胞をいう。
【0118】
本明細書中で使用される、「MUC1*陽性」細胞はMUC1の遺伝子を発現する細胞を指し、ここで、その遺伝子の発現されたタンパク質は縦列反復を含まない膜貫通タンパク質であり、これは、翻訳後修飾、切断、選択的スプライシング、または縦列反復を含まないMUC1タンパク質を細胞にトランスフェクションまたは形質導入した結果であり得る。
【0119】
本明細書中で使用される場合、「MUC1*陰性」細胞とはMUC1についての遺伝子を発現してもしなくてもよいが、タンデム反復を欠くMUC1膜貫通タンパク質を発現しない細胞をいう。
【0120】
本明細書中で使用される、「MUC1陽性」癌細胞はMUC1の遺伝子を過剰発現し、異常なパターンでMUC1を発現し、その発現が頂端縁に限定されず、かつ/または縦列反復を欠くMUC1を発現する癌細胞を指す。
【0121】
本明細書中で使用される、「MUC1陰性」癌細胞とはMUC1の遺伝子を発現していてもしてもしなくてもよいが、MUC1を過剰発現していない、または縦列反復のないMUC1膜貫通タンパク質を過剰発現していない癌細胞を指す。
【0122】
本明細書中で使用される「MUC1*陽性」癌細胞は、縦列反復のないMUC1膜貫通タンパク質を過剰発現する癌細胞を指す。
【0123】
本明細書中で使用される、「MUC1*陰性」癌細胞はMUC1の遺伝子を発現し得るか又は発現しないが、縦列反復を欠くMUC1膜貫通タンパク質を過剰発現しない癌細胞を指す。
【0124】
本発明は一般に、癌性組織における鎖間結合領域または細胞外ドメインの増加した切断によって特徴付けられる細胞表面受容体のクラスの異常な発現によって特徴付けられる、癌に関連する診断アッセイを含む。そのような一組の癌は、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4などのムチンファミリー蛋白質のMUC16までの異常な発現を特徴とする癌である。本明細書における本発明の説明の多くは、癌においてますます切断される細胞外ドメインを有する、および/または鎖間結合領域(IBR)を有する癌に関与するより大きなクラスのタンパク質の例として、MUC1を異常に発現する細胞および組織を対象とする。これらの場合において、この記載は例示的であると考えられるべきであり、そして本発明の原理は、類似の機構によって機能する他の膜貫通タンパク質に適用されることが理解されるべきである。本明細書中の開示を用いて、当業者は、このまたは類似の機構によって機能する他の膜貫通タンパク質を容易に同定し得、そして受容体の異常な発現を特徴とする癌に本発明を適用し得る。本発明は自己凝集する、および/または次第に切断されるそれらの細胞外ドメインの領域を有する膜貫通タンパク質を含む新規な機構に基づき、これは、本発明者らによって解明されたMUC1によって例示される。
【0125】
MUC1は、以下のように本明細書中で呼ばれるいくつかの領域を含む。細胞内部のC末端から細胞外のN末端まで、MUC1タンパク質は、1)細胞質尾部;2)膜貫通部;3)MGFR; 4)IBR(鎖間結合領域)5)UR(ユニーク領域);および6)タンデムリピートのドメインから構成される。
【0126】
本発明者らの以前の発明の1つの態様はMUC1受容体の特定の領域(すなわち、IBR)が、他のMUC1分子の同一の領域に強く結合するという発見を特徴とした。すなわち、MUC1受容体は、それぞれの受容体のIBRを介して他のMUC1受容体と凝集(すなわち自己凝集)する能力を有している。MUC1またはその切断産物MUC1*へのリガンドの結合を閉塞することができるIBRがそれ自体と凝集することを示す金ナノ粒子実験を行った。IBRとMGFRとの間の境界はMUC1が切断される場所に依存して変化し、これは、どの切断酵素がそれを切断するかによって決定される。
【0127】
この自己凝集は、健常細胞で観察されるMUC1受容体クラスター形成に寄与する可能性がある。MUC1受容体のIBR部分が自己凝集するという発見は、本発明者らが裏付けとなる証拠を提示する以下の機構モデルと一致する。
(1)集合したIBR部分は機能的受容体として作用するMUC1受容体の隣接する細胞外部分への増殖因子、修飾酵素などのリガンドの接近を遮断するため、受容体クラスター形成は健康な状態と関連している;クラスター形成は細胞内修飾酵素およびシグナル伝達リガンドへの細胞内尾部の接近も遮断する;
(2)MUC1受容体が自己集合部分の一部または全てを放出する位置で切断されると、受容体をクラスター化したままに保つ臨界力が失われ、受容体が細胞膜内を自由に移動するか、または活性化リガンドまたは増殖因子または他の細胞表面受容体のような修飾酵素、分泌リガンドと相互作用する。
これらの相互作用には、細胞増殖シグナル伝達カスケードを引き起こす二量体化のような、新たな誘導的多量体化状態が関与している。
【0128】
MUC1の切断はタンデム反復ドメインを含む細胞外ドメインの大部分を放出し、少なくともPSMGFR領域を含む切断された細胞外ドメインを有する膜貫通タンパク質を残す。タンデムリピートドメインの大部分の切断と放出は、切断された細胞外ドメインに結合して二量体化するリガンドの結合部位を露出させ、成長と生存経路の活性化を導く。
我々は、MUC1切断産物「MUC1*」と呼ぶ。
【0129】
MUC1*は、その切断された細胞外ドメインのリガンド誘導二量体化によって活性化される成長因子受容体である。MUC1の膜近位部分の45アミノ酸配列であるPSMGFRペプチドに結合する二価抗体はMUC1*を二量化し、そして増殖を刺激する。抗PSMGFR抗体は濃度依存的にT47D MUC1陽性癌細胞の増殖を刺激した。同様の実験において、癌細胞増殖を最大にすることが同定された抗PSMGFR抗体の濃度を、上記のように増殖させたT47D腫瘍細胞の第1の基に添加した。同量の抗PSMGFR抗体を対照細胞、K293細胞のセットに添加した。MUC1腫瘍細胞(T47D)への抗PSMGFR抗体の添加は180% 24時間まで増殖を増強したが、対照細胞には影響を及ぼさなかった。
【0130】
MUC1*の余分な細胞領域を消化するリガンドは、細胞の成長と生存を誘発する。本発明者らが同定したMUC1*のリガンドは、NME1、NME2、NME6、NME7-ABおよび選択的スプライス変異体NME7-X1である。
【0131】
MUC1*は癌細胞の増殖を促す増殖因子受容体であるが、完全長MUC1はそうではない。したがって、正常値を上回るMUC1*の量を検出することは、癌の指標となり、MUC1*の量が多いほど、癌が悪化する。MUC1の切断は、腫瘍がどの切断酵素を発現するかによって、複数の部位で起こることがある。MUC1の切断はタンデム反復を含む細胞外ドメインの部分を放出し、そして切断部位に依存して、IBRのユニークな領域の部分またはIBRの部分を含み得る。切断されたMUC1の量は、細胞または組織上に残存する全長MUC1の量を測定することによって推測することができる。これは、細胞または組織を、タンデム反復、またはユニーク領域またはIBRに結合する抗体と接触させることによって達成され得る。タンデム反復ドメインに結合する抗体は配列
PDTRPAPGSTAPPAHGVTSA(配列番号235)
を有するペプチドに結合することができる抗体である。タンデム反復ドメインに結合する一般的に使用される抗体にはVU4H5(SantaCruz Biotechnology, Dallas Texas Cat. No. SC-7313)、HMPV,5E5(Sorensen et al., Glycobiology, Vol. 16, no. 2, pp. 96-107,2006)、PR81、およびLDQ10が含まれるが、これらに限定されない。
これらの場合、同じ細胞または組織上で発現されるMUC1*の量と比較して、全長MUC1の量を測定することが最も有効である。MUCl*:MUCl全長の比は癌および癌の攻撃性の指標であり、MUC1*が多いほど、癌はより攻撃的である。治療薬がMUC1*またはMUC1を標的とする癌治療の適合性を決定するために、MUC1*の量またはMUC1全長に対するMUC1*の比率の検出も使用できる。同様に、このような治療の有効性は治療前後のMUC1*の量またはMUC1*対MUC1全長の比を検出することによって評価され得、ここで、発現されるMUC1*の量の減少またはMUC1*対MUC1全長の比のシフトは有効性の指標である。
【0132】
IBRまたはタンデム反復を含まないMUC1の選択的スプライスアイソフォームが存在し得る。たとえば、MUC1-YまたはMUC1-Xである。これらの選択的スプライスアイソフォームは、癌および生存を促進するために増殖因子と相互作用する部分であるため、PSMGFRペプチドの配列から構成される細胞外ドメインを依然として有する。従って、細胞または組織によって発現されるMUC1*の量の検出は、依然として、癌および癌の攻撃性の有効な指標である。
【0133】
乳癌組織上の優勢なMUC1種は膜貫通切断産物MUC1*であり、完全長MUC1ではない。乳房腫瘍マイクロアレイを、VET4H5またはMNC2のいずれかでプローブした。VU4H5は、全長MUC1のタンデム反復ドメイン中のエピトープ
(PDTRPAPGSTAPPAHGVTSA(配列番号235))
を認識するので、全長MUC1にのみ結合するモノクローナル抗体である。このエピトープは、全長MUC1のタンデム反復ドメイン内で数百回繰り返される。したがって、抗体VU4H5は、分子上の単一のエピトープに結合する抗体よりも強いシグナルを与えるはずである。MNC2は、PSMGFRペプチド(配列番号4)で動物を免疫することによって産生されるモノクローナル抗体である。トランスフェクション実験は、MNC2が全長MUC1に結合しないことを示す。MNC2はMUC1がPSMGFRペプチド(45アミノ酸)、N-10ペプチド(35アミノ酸)には結合するが、C-10ペプチドには結合しないので、MUC1*細胞外ドメインの少なくとも最初の35膜近位アミノ酸を含むMUC1*の形態に開裂された後に露出される潜在的エピトープに結合し、その同族エピトープがMUC1*細胞外ドメインの10膜近位アミノ酸内に少なくとも部分的に包含されることを示す。重要なことに、MNC2はMUC1*活性化増殖因子NME1およびNME7-ABの結合を競合的に阻害する。
【0134】
図1A-1Dは、Allredスコアリングシステムによる、乳がん組織アレイの隣接する連続切片の写真および病理スコアのグラフ表示を示している。病理スコアは0~3であり、0は染色を示さず、3は最大の染色である。グラフはまた、色分けされており、病理スコアゼロは黒色であり、1は黄色であり、2はオレンジ色であり、3は赤色である;全長MUC1を認識する抗体でプローブした場合にはゼロであるが、MUC1*を認識する抗体でプローブした場合には陽性であるとスコア付けされた組織は緑色であり;欠損組織または解釈不能組織は-1とスコア付けされた。
図1Aは、全長MUC1のタンデム反復ドメインに結合する抗体であるVU4H5で染色した後の乳癌組織アレイの写真を示す。
図1Bは、図1Aに描写された組織についての病理スコアのグラフを示す。
図1Cは、MUC1*のPSMGFR領域内のエピトープに結合する抗体であるMNC2で染色した後の乳癌組織アレイの写真を示す。
図1Dは、図1Cに描写された組織についての病理スコアのグラフを示す。
図2A-2Bは、図1Aおよび図1Cに示されるアレイの病理スコアの円グラフを示す。
図2Aは、完全長MUC1の縦列反復に結合する抗体が乳癌の30%を見逃すことを示す。
図2Bは、抗MUCl*抗体MNC2が乳癌の95%を認識することを示す。
抗MUCl-全長は、乳房腫瘍の10%にのみ強く結合するが、抗MUCl*抗体MNC2は乳房腫瘍の約50%に強く結合する。これらのデータを総合すると、完全長MUC1ではなくMUC1*が癌組織上の優勢なMUC1種であることが実証される。抗MUCl*抗体はほぼ全ての乳癌を検出または診断するのであろうが、完全長MUC1に結合する抗体は乳癌の約30%を検出できないであろう。さらに、MUC1*は癌増殖を促進する増殖因子受容体であるため、組織または細胞標本の抗MUCl*染色の程度は癌の程度またはステージに比例するのであろうが、完全長MUC1の発現は癌のステージに逆比例するようにあらわれる。
【0135】
広範囲の癌細胞および腫瘍標本を、抗MUCl*抗体MNC2でプローブした。MNC2を用いて、蛍光活性化細胞選別(FACS)、免疫蛍光(IF)、免疫組織化学(IHC)を含む広範囲のアッセイにおいてMUC1*陽性癌を検出した。FACSおよびIFは一般に、数十年間実験室で増殖された単一の不死化細胞である細胞株を研究するために使用される。数十年にわたる不自然な増殖溶液中での増殖の後、これらの細胞株は、患者の元の腫瘍内の単一細胞にさえほとんど類似性を示さず、最近診断された治療を求める患者の腫瘍を示すものではない。これらの理由のために、本発明者らは数千の腫瘍マイクロアレイを分析した。ここで、アレイ内の各ドットは、単一の患者の生検からの腫瘍標本である。ほとんどの場合、生検は最近診断された患者からのものであるが、添付の匿名化された患者データは患者の年齢、癌のサブタイプおよび癌の病期または悪性度を示す。一部の症例では、乳癌が全てHER2+、または全てER+/PR+である組織マイクロアレイを分析した。
その他の場合として、われわれは、最初の生検標本を後の転移と比較した腫瘍マイクロアレイを解析した。これらの研究において、MNC2による腫瘍の認識はまた、抗全長MUC1抗体VU4H5または全長MUC1のタンデム反復ドメイン中の捕捉されたO-結合グリカンに結合する新規抗体5E5を使用する染色と比較された。MNC2および他の抗MUCl*抗体は、VU4H5または5E5よりも良好に腫瘍組織を一貫して認識した。正常組織および正常組織マイクロアレイも広範囲に研究し、MNC2またはそのヒト化単鎖型huMNC2-scFvまたはhuMNC2-scFv-Fcの正常組織への結合を決定した。正常組織では、MNC2反応性MUC1*の発現がごく一部の組織で導管および腺の頂端縁に限定されていた。すべての場合において、MNC2反応性MUC1*は正常組織よりも癌組織においてはるかに高度に発現し、MNC2反応性MUC1*を発現した正常組織の0.2%-5%の発現と比較して、癌組織で50~100%を超えて発現した。
【0136】
図3図19はモノクローナル抗MUCl*抗体MNC2が乳癌、卵巣癌、膵癌、肺癌および食道癌の高い割合に結合する一方で、正常組織への結合はあってもごくわずかであることを示している。
図3A-3Bは、病理スコアの円グラフおよび抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の乳癌アレイBR1141の写真を示す。
図4A-4Cは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の乳癌アレイBR1141からの個々の乳癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。
アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、TNM(Tumor stage, Nodeinvolvement,and Metastasis)、病理スコアを図で示した。標準的な免疫組織化学法を使用した。抗体濃度は、抗体がストロマを染色せずに正常組織の予想される染色を示した最高濃度を用いて力価測定した。宿主抗体およびB細胞濾胞を染色する抗ヒト二次抗体による偽陽性を回避するために、抗体をそのFc領域を通してビオチンに結合させた。
図4Aは、huMNC2反応性細胞について陰性であったA7位の標本を示す。
図4Bは、humMNC2反応性について+1をスコア化したリンパ節転移を伴う、グレード2の癌であるA9位の標本を示す。
図4Cは、humMNC2反応性について+2をスコア化したリンパ節転移を伴う、より大きなグレード2の腫瘍であるB10位の標本を示す。
図5A-5Bは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の乳癌アレイBR1141からの個々の乳癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。
図5AはhumMNC2反応性について+3をスコア化したリンパ節転移を伴わない、グレード2の癌であるD7位の標本を示す。
図5Bはグレード2の腫瘍であり、humMNC2反応性について+4をスコア化したリンパ節転移を伴う、位置F6での標本を示す。
図6A-6Bは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の病理スコアおよび卵巣癌アレイBCl l 5aの写真の円グラフを示す。
図7A-7Cは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の異なる癌サブタイプの拡大写真を示す。
図7Aは、病理が+4をスコア化したグレード2の乳房腫瘍の写真を示す。
図7Bは、病理が+3をスコア化したグレード2の卵巣腫瘍の写真を示す。
図7Cは、病理が+3をスコア化したグレード3の膵腫瘍の写真を示す。
1,000を超える腫瘍標本を対象としたIHC研究では、huMNC2-scFvが乳がんの95%(90%トリプルネガティブ)、卵巣がん83%、膵臓がん78%、肺がん71%を認識していることが示された。
図8A-8Dは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の異なる癌サブタイプの拡大写真を示す。
図8Aは、病理が+2をスコア化したグレード2の乳房腫瘍の写真を示す。
図8Bは、病理が+3をスコア化したグレード3の卵巣腫瘍の写真を示す。
図8Cはグレード3の膵臓腫瘍の写真であり、リンパ節転移があり、病理がスコア+3であった。
図8Dは、病理が+3をスコア化した肺癌の写真を示す。
図9A-9Iは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の種々の正常組織の拡大写真を示す。
使用した条件および濃度は、癌組織を研究するために使用したものと同一であった。
図9Aは、正常な副腎組織を示している。
図9Bは、正常な脳組織を示している。
図9Cは、正常な乳房組織を示している。
図9Dは、正常な胃組織を示す。
図9Eは、正常な心臓組織を示す。
図9Fは、正常な腎組織を示している。
図9Gは、正常な精巣組織を示している。
図9Hは、正常な腸組織を示す。
図91は、正常な肝臓組織を示す。
図10A-10Fは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の正常な腎臓組織の写真を示す。使用した条件および濃度は、癌組織を研究するために使用したものと同一であった。
図10Aは、正常な発現である頂端縁に限定されたhuMNC2反応性を有する正常な腎組織を示す。
図10Bは、より大きな倍率での同じ組織である。
図10Cは、検出不能なhuMNC2反応性を有する正常な腎臓組織の別の例を示す。
図10Dは、より大きな倍率での同じ組織である。
図10Eは、正常な発現で頂端境界に限定されたhuMNC2反応性を有する正常な腎臓組織の別の例を示す。
図10Fは、より大きな倍率での同じ組織である。さらなる研究は正常な腎臓組織の10%未満が遠位収集細管においてhuMNC2反応性を示し、そのような反応性は正常な発現パターンである頂端境界に厳密に限定されたことを示した。
図11A-11Bは、病理スコアの円グラフおよび抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の食道癌アレイBC001113の写真を示す。
図12A-12Fは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の、食道癌アレイBC001113からの個々の食道癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、病理スコアを図で示した。
図12Aは、huMNC2反応性細胞について陰性であったA4位の標本を示す。
図12Bは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図12Cは、病理がhuMNC2に対する微量反応性としてスコア付けした位置D2の標本を示す。
図12Dは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図12Eは、病理がhuMNC2に対する+1反応性としてスコア付けした位置B8の標本を示す。
図12Fは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図13A-13Dは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の、食道癌アレイBC001113からの個々の食道癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、病理スコアを図で示した。
図13Aは、病理が+2をスコア化した、グレード4の腫瘍であるD6位の標本を示す。
図13Bは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図13Cは、病理が+3とスコア付けした、グレード3の腫瘍である位置D5の標本を示す。
図12Dは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図14A-14Bは、病理スコアの円グラフおよび抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の膵臓癌アレイPA805bの写真を示す。
図15A-15Dは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の、膵臓癌アレイPA805bからの個々の膵臓癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、病理スコアを図で示した。
図15Aは、病理が+3をスコア化した、グレード3の腫瘍で位置F3における標本を示す。
図15Bは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図15Cは、病理が+2とスコア付けした、グレード1の腫瘍である位置B1の標本を示す。
図15Dは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図16A-16Dは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の、膵臓癌アレイPA805bからの個々の膵臓癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、病理スコアを図で示した。
図16Aは、病理が+2をスコア化したグレード1の腫瘍であるA2位の標本を示す。
図16Bは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図16Cは、病理が+2とスコア付けした、グレード2の腫瘍である位置C3の標本を示す。
図16Dは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図17A-17Dは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の、膵臓癌アレイPA805bからの個々の膵臓癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、病理スコアを図で示した。
図17Aは、病理が+2とスコア付けした、グレード2の腫瘍である位置C6の標本を示す。
図17Bは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図17Cは、病理がスコア+3であったリンパ節転移を伴う、より大きなグレード3の腫瘍である位置Dlでの標本を示す。
図17Dは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図18A-18Dは、抗MUCl*抗体huMNC2-scFv-Fcで染色した後の、膵臓癌アレイPA805bからの個々の膵臓癌標本の2つの異なる倍率での写真を示す。アレイ内の位置、癌サブタイプ、腫瘍悪性度、病理スコアを図で示した。
図18Aは、病理がスコア+2であったグレード1の腫瘍であるE2位の標本を示している。
図18Bは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図18Cは、病理がスコア+3であったリンパ節転移を伴う、より小さなグレード3の腫瘍であるE10位の標本を示す。
図18Dは、より大きな倍率で同じ試験片を示す。
図19は、対照として二次抗体単独で染色された膵臓癌アレイPA805bの写真を示す。
【0137】
MNC2は全乳癌サブタイプにわたって乳癌の約95%を認識していたが、一部の癌サブタイプは乳癌ほどMNC2反応性MUC1*を発現していないことを確認した。特に、膵臓、食道癌および前立腺癌では、MNC2反応性MUC1*の発現レベルが低かった。膵臓癌アレイでは腫瘍の78%がMNC2反応性であったが、腫瘍の発現量に比例する染色の強さは相対的に弱かった。
図14Aの円グラフは、膵腫瘍の65%がスコア+1または+2、わずか5%がスコア+3、スコア+4を示さなかったことを示している。図3Aの円グラフは、乳房腫瘍の半数以上が+2~+3のスコアを示し、6%が+4で、わずか4%が陰性で、MNC2 MUC1*反応性であったことを示している。両方のアレイを同じMNC2抗MUCl*抗体で染色し、同じボード認定病理によってスコア付けした。乳癌と膵癌におけるMUC1*のMNC2染色の違いは、MUC1*細胞外ドメインの立体配座または線状変化を誘導する異なる位置でMUC1をMUC1*に切断する切断酵素の違いによると推論した。検討するために、我々は、抗MUCl*ポリクローナル抗体SDIXで同じ膵臓癌アレイを染色した。MNC2およびSDIXの両方は動物をPSMGFRペプチドで免疫することによって生成されたが、それらは腫瘍組織に対して異なる結合特性を示した。一般に、SDIXはMNC2よりも多くの膵組織を認識し、より強固に染色されたが、MNC2はSDIXではない腫瘍を認識した症例が存在した。
【0138】
癌組織上では、MUC1*は大部分の組織に発現し、癌に特徴的であり、全ての解剖学的障壁は癌組織で破壊されている。対照的に、正常組織では、MUC1*の発現は導管および腺の頂端縁に限られている。MNC2反応性MUC1*の発現はさらに制限される。例えば、図6Bは、卵巣癌マイクロアレイの写真を示す。ただし、J列は正常な卵巣組織で構成されている。
確認できるように、MNC2反応性MUC1*の発現は認められない。正常腎はMNC2反応性MUC1*をいくらか発現している。図10A-10Fに見られるように、正常なMUC1*発現は弱く、正常な腎臓の遠位集合管の約10%の頂端縁に限定されている。正常膵はMUC1*を発現しており、これも腺房細胞の頂端縁に厳密に限定されている(図20)。当業者は癌性組織を容易に同定することができ、正常組織上および癌性組織上でのMUC1*発現を区別することができる。一般に、MUC1*は癌組織上で肉眼的に過剰発現され、その発現は発現の頂端パターンに限定されない。
【0139】
この図20図34において、我々は一連の膵臓腫瘍がモノクローナル抗体MNC2による染色を示さなかったか、または最小限であったが、SDIXポリクローナル抗体による同じ組織の染色は強固な染色を生じたことを示した。MNC2およびSDIXの両方を、同じペプチド: PSMGFRで動物を免疫することによって作製した。しかし、MNC2は、SDIXによって認識されるサブセットのみを認識する。これらの結果は、MNC2が腫瘍のサブセットにおいてのみ生成されるエピトープを認識することを強く示唆する。データは、MUC1*のMNC2反応性サブセットが異なる切断酵素による切断に起因すると思われる、癌サブタイプ特異的または患者特異的であり得ることを示唆する。
【0140】
抗MUCl*抗体特異性がMUC1をMUC1*に切断する切断酵素に依存するという仮説は、図35図37に示されるデータによって支持され、MNC2、MNC3およびSDIXはすべて、PSMGFRペプチドで動物を免疫することによって生成された。しかし、モノクローナル抗体MNC3はポリクローナル抗体SDIXと同様に、造血幹細胞のほぼ100%を認識するが、モノクローナル抗体MNC2は認識しない。逆に、MNC2は乳房腫瘍のほぼ95%に結合するが、MNC3は結合しない。重要なことに、MNC2は、MUC1がほとんどの乳癌で過剰発現するが造血幹細胞では発現しない切断酵素MMP9によって切断された後にMUC1*を認識することを示した。MMP9の発現はほとんどの固形腫瘍癌の予後不良の予測因子である(Yousefら、BMC Cancer 2014,14:609; Mehnerら、Oncotarget,Vol.5, No.9, pp 2736-2749,2014; Radiskyら、FrontBiosci(Landmark Ed);20:1144-1163,2015; Gongら、Journal ofSurgical Oncology 2000;73:95-99; Latinovicら、Arch Oncol2013;21(3-4):109-14; Sillanpaら、GynecologicOncology104(2007)296-303)。
【0141】
癌サブタイプ特異的、患者特異的、または腫瘍異質性により良く対処することができる広範囲のMUCl*を認識することができる新しい抗MUCl*モノクローナル抗体を生成するために、本発明者らは、MUC1*細胞外ドメインの配列に由来する以下のペプチドのうちの1つで動物を免疫化した:
【0142】
(i)PSMGFRペプチド
GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号4);
【0143】
(ii) PSMGFR N+20/C-27
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTE(配列番号9)
【0144】
(iii) PSMGFR N+9/C-9
VQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVP(配列番号10)。
【0145】
抗体クローンを単離し、各免疫化からのサブセットを、まず免疫化ペプチドに結合するそれらの能力に基づいて選択し、次に、次に、正常組織より上の癌組織を認識するそれらの能力に基づいて選択した。図38A図38Cは、免疫化ペプチドに従って組織化された、選択された抗体の表を示す。表において、-1または-2の指定はこれらが姉妹クローンであることを示し、配列決定後、これらは実際に同じ抗体であることを示した。本開示の残りの部分を通して、抗体は、-1または-2の呼称なしで言及される。
【0146】
図39図44は、新しい抗MUCl*抗体の結合特性を示す。全ての抗体は最初に、それらが免疫化ペプチドに結合するという事実によって選択された。MNC2およびMNC3との比較のために、新しい抗体を、PSMGFR、N-10ペプチドおよびC-10ペプチドに結合するそれらの能力について試験した。新しい抗MUCl*抗体もまた、T47D乳癌細胞株に結合するそれらの能力を決定するために、FACSによって試験した。数十年前に患者から作製された単一細胞株への抗体結合の分析のため、我々は新たな抗体の分析を複数の癌サブタイプにわたって数百の腫瘍組織に拡大した。各アレイで表される患者の数は変化した。正常組織も抗体でプローブした。
【0147】
図45図52はPSMGFR配列のN末端である領域に結合する抗体を調べるために、SDIXポリクローナルに対する新しい抗MUCl*抗体の結合を比較する。以前の研究ではMNC2は膵癌の約78%を認識していたが、結合はそれほど強固ではなく、MNC2またはSDIXポリクローナルによって非常に悪い腫瘍が全く認識されなかったことが示されたため、膵癌アレイから開始した。
【0148】
いくつかの抗PSMGFR抗体(例えば、18B4)は、ポリクローナル抗PSMGFR抗体SDIXと同じ膵臓腫瘍組織を認識するようである(図45A-45BC)。この小さな膵臓癌アレイにおいて、抗PSMGFR N+20/C-27抗体1E4はSDIXおよび18B4と同じ腫瘍を認識するようあるが、これらの腫瘍標本の拡大図は抗体1E4が抗PSMGFR抗体(図46A-46F)とは異なる腫瘍内の癌細胞集団を認識することを示しており、腫瘍の一部はSDIXによって十分に認識されなかったが、モノクローナル抗体18B4によって認識された(図47A-48D)。他の膵臓腫瘍は、抗PSMGFR N+20/C-27抗体1E4によってより良好に認識された(図49A-49D)。同様に、抗PSMGFRN+20/C-27抗体29H1は、抗PSMGFR抗体SDIXおよび20A10で見逃されている一部の膵腫瘍を認識する(図51A-51C)。
【0149】
これらの研究は一般に、N末端でPSMGFRを超えて伸長したMUC1*細胞外ドメインに結合する抗体は、SDIXポリクローナルよりも良好に膵臓癌を認識することを示した。しかし、膵腫瘍の抗体特異性も患者特異的であると思われる。いくつかの患者標本は、PSMGFR N+20/C-27またはPSMGFRN+9/C-9に結合する新しい抗体よりも、SDIX抗PSMGFR抗体ではるかに良好に染色された。これは、患者の腫瘍がどの治療がそれらの腫瘍の排除に最も適しているかを決定するために、MUC1*抗体のパネルを用いてプローブされなければならないという考えを支持する。本発明の一態様では、治療薬が、診断薬である抗体の一部または全部、または診断抗体である抗体に由来する抗体の一部または全部を組み込む。
【0150】
図53は、N末端で伸長されたこれらの新しい抗体が完全長MUC1に結合する抗体よりも多くの膵腫瘍を認識することを示している。この図は、完全長MUC1の縦列反復配列に結合する標準抗体VU4H5と、一部がん細胞に存在する捕捉されたO結合型糖鎖に結合する新しい抗体5E5と、29H1の結合を比較したものである。
【0151】
次に、食道腫瘍と前立腺腫瘍について検討した。これらの研究は、モノクローナル抗体MNC2ならびにPSMGFRペプチドに両方とも結合するポリクローナル抗体SDIXが食道腫瘍および前立腺腫瘍の認識不良を示したという著者らの以前の知見によって動機づけられた。実際、腫瘍標本の高分化部分でMNC2反応性を示したこれらの腫瘍は、同じ標本の低分化部分でその反応性を失った。これらの結果は、MMP9以外の切断酵素がほとんどの食道癌および前立腺癌で優位であることを主張した。これらの研究はその考えを支持する。
【0152】
ペプチドPSMGFR N+20/C-27および/またはPSMGFR N+9/C-9に結合する新しい抗MUCl*抗体は、MNC2、SDIX、および全長MUC1抗体5E5およびVU4H5と比較した場合、食道および前立腺腫瘍の顕著に良好な認識を示した。
【0153】
図54A~54Cは食道癌アレイからの隣接する連続切片の写真を示し、これは、種々の抗MUCl*抗体を用いて標準的なIHC法によって染色された。
図54AはSDIXポリクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原はPSMGFRペプチドであった。
図54Bは20A10モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、抗体の免疫原はPSMGFRペプチドであった。
図54Cは29H1モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原は、PSMGFRN+20/C-27ペプチドであった。
図54Dは31A1モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原は、PSMGFRN+20/C-27ペプチドであった。
この図は両方がPSMGFRペプチドに結合する抗体SDIXおよび20A10が異なる程度ではあるが、同じ腫瘍組織標本を認識し、一方、PSMGFRN+20/C27ペプチドに結合する抗体はより多くの食道腫瘍標本、ならびに抗PSMGFR抗体によって認識されるもの大部分に結合することを示す。これらの結果はPSMGFR N+20/C&#8722;27ペプチドに結合する抗体が一般に、PSMGFRペプチドに結合する抗体よりも食道癌に対してより特異的であるが、特定の患者はPSMGFRペプチドに結合する抗MUCl*抗体によってより良好に認識される食道癌を有し得るという考えと一致する。
【0154】
図55A-55Cは食道癌アレイからの隣接する連続切片の写真を示し、これは、種々の抗MUCl*抗体を用いて標準的なIHC法によって染色された。
図55AはSDIXポリクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原はPSMGFRペプチドであった。
図55Bは17H6モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体は、PSMGFR N+9/C-9ペプチドに結合する。
図55CはMNC2モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体は、PSMGFRペプチドに結合する。
図55Dは45C11モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体は、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する。
これらの結果は、ほとんどの食道癌において、MUC1はPSMGFR配列のN末端にある潜在性エピトープを露出する酵素によって切断されるという考えと一致している。
【0155】
図56A-56Fは食道癌アレイからの隣接する連続切片の病理者染色スコアの写真およびグラフ表示を示し、これは、完全長MUC1を認識する抗体またはMUC1*のみを認識する抗体のいずれかで標準的なIHC法により染色された。
図56Aは、完全長MUC1のタンデム反復ドメイン中の捕捉されたO結合グリカンに結合する抗体である抗体5E5で染色された食道癌アレイを示す。
図56Bは、アレイ中の各標本についての病理者のスコアを示す。
図56Cは、MUC1*のPSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗体である抗MUCl*抗体29H1で染色された食道癌アレイを示す。
図56Dは、アレイ中の各標本についての病理者のスコアを示す。
図56Eは、全長MUC1のタンデム反復ドメイン中のエピトープに結合する抗体である抗体VU4H5で染色された食道癌アレイを示す。
図56Fは、アレイ中の各標本についての病理者のスコアを示す。
図から分かるように、抗体5E5はVU4H5が認識しないいくつかの標本を認識するが、抗MUCl*抗体29H1は全長MUC1を認識する両方の抗体によって認識される標本と、他の抗MUCl抗体によっても認識されない他の標本とを認識する。これらの知見はPSMGFR配列を越えてN末端に伸長したアミノ酸を含むペプチドに結合する抗MUCl*抗体が全長MUC1を認識せず、PSMGFRN+20/C-27ペプチドに結合する抗体は食道癌に普及しているエピトープを認識することを示す。
【0156】
図57A-57Gは抗体5E5またはVU4H5のいずれかで染色された前立腺癌アレイの写真を示し、これらは両方とも、MUC1*のみを認識し、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する全長MUC1または29H1を認識する。
図57Aは、抗体5E5で染色された食道癌アレイを示す。
図57Bは、抗体29H1で染色された食道癌アレイを示す。
図57Bは、抗体29H1で染色された食道癌アレイを示す。
図57Cは、抗体VU4H5で染色された食道癌アレイを示す。
図57Dは、対照として、二次抗体のみで染色された食道癌アレイを示す。
図57E図57Aの赤いボックスによってマークされた組織をより大きな倍率で示し、染色は5E5で行われた。
図57F図57Bにおいて赤いボックスによってマークされた組織を、より大きな倍率で示し、ここで、染色は、29H1で行われた。
図57G図57Cにおいて赤いボックスによってマークされた組織を、より大きな倍率で示し、ここで、染色は、VU4H5を用いて行われた。
破線の赤いボックスは完全長MUC1を認識する抗体について陰性に染色されるが、抗MUCl*抗体、特にPSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗体でプローブされた場合、高度に陽性で多くの食道腫瘍標本のただ1つの患者標本を示す。
【0157】
図58A-58Cは、様々な抗MUCl*抗体を用いて標準的なIHC法によって染色された、前立腺癌アレイからの隣接する連続切片の写真を示す。
図58AはSDIXポリクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原はPSMGFRペプチドであった。
図58Bは18B4モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで抗体はPSMGFRペプチドに結合する。
図58Cは1E4モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体は、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する。
【0158】
図59A-59Eは、種々の抗MUCl*抗体を用いて標準的なIHC法によって染色された前立腺癌アレイからの隣接する連続切片の写真を示す。
図59Aは、PSMGFRペプチドに結合するがC-10ペプチドには結合しないMNC2モノクローナル抗体で染色されたアレイを示す。
図59Bは、PSMGFRペプチドに結合する18B4抗体で染色されたアレイを示す。
図59Cは、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する32C1抗体で染色されたアレイを示す。
図59DはSDIXポリクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示し、ここで、抗体についての免疫原はPSMGFRペプチドであった。
図59Eは、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する31A1モノクローナル抗MUCl*抗体で染色されたアレイを示す。
【0159】
図60A-60Fは、全長MUC1を認識する抗体またはMUC1*のみを認識する抗体のいずれかで標準的なIHC法により染色された、前立腺癌アレイからの隣接する連続切片の病理染色スコアの写真およびグラフ表示を示す。
図60Aは抗体5E5で染色された前立腺癌アレイを示し、これは、完全長MUC1のタンデム反復ドメイン中の捕捉されたO結合グリカンに結合する抗体である。
図60Bは、アレイ内の各標本に対する病理のスコアを示す。
図60Cは、MUC1*のPSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗体である抗MUCl*抗体29H1で染色された前立腺癌アレイを示す。
図60Dは、アレイ内の各標本に対する病理のスコアを示す。
図60Eは、全長MUC1のタンデム反復ドメイン中のエピトープに結合する抗体である抗体VU4H5で染色された前立腺癌アレイを示す。
図60Fは、アレイ内の各標本に対する病理のスコアを示す。
図から分かるように、抗体5E5はVU4H5が認識しないいくつかの標本を認識するが、抗MUCl*抗体29H1は全長MUC1を認識する両方の抗体によって認識される標本と、他の抗MUCl抗体によっても認識されない他の標本とを認識する。
これらの知見はPSMGFR配列を越えてN末端に伸長したアミノ酸を含むペプチドに結合する抗MUCl*抗体が全長MUC1を認識せず、PSMGFRN+20/C-27ペプチドに結合する抗体は前立腺癌に普及しているエピトープを認識することを示す。
【0160】
図61A-61Gは抗体5E5またはVU4H5のいずれかで染色された前立腺癌アレイの写真を示し、これらは両方とも、MUC1*のみを認識し、PSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する全長MUC1または29H1を認識する。
図61Aは、抗体5E5で染色された前立腺癌アレイを示す。
図61Bは、抗体29H1で染色された前立腺癌アレイを示す。
図61Bは、抗体29H1で染色された前立腺癌アレイを示す。
図61Cは、抗体VU4H5で染色された前立腺癌アレイを示す。
図61Dは、対照として、二次抗体のみで染色された前立腺癌アレイを示す。
図61E図61Aの赤いボックスによってマークされた組織をより大きな倍率で示し、染色は5E5で行われた。
図61F図61Bにおいて赤いボックスによってマークされた組織を、より大きな倍率で示し、ここで、染色は、29H1で行われた。
図61G図61Cにおいて赤いボックスによってマークされた組織を、より大きな倍率で示し、ここで、染色は、VU4H5を用いて行われた。
破線の赤いボックスは完全長MUC1を認識する抗体について陰性に染色されるが、抗MUCl*抗体、特にPSMGFR N+20/C-27ペプチドに結合する抗体でプローブされた場合には非常に陽性で多くの前立腺腫瘍標本のただ1つの患者標本を示す。
【0161】
MNC2は、乳がんの大部分に存在するMUC1*を認識する。しかしながら、腫瘍の不均一性および増殖因子受容体であるMUC1*が異なる切断酵素によって切断され、それによって異なる抗MUCl*抗体によって認識される細胞集団を増殖させることによる腫瘍の逃避の可能性は、1つより多い抗MUCl*抗体での治療が有益であることを示唆する。この目的のために、本発明者らは、MNC2に対する新しい抗MUCl*抗体の認識をより密接に比較した(図62図73)。
【0162】
乳癌アレイBR1141を、両方ともPSMGFRペプチド、N-10ペプチドに結合するが、C-10ペプチドには結合しないMNC2または20A10のいずれかで染色した。一次近似では、2つの抗体が乳癌において発現されるMUC1*の同じまたは非常に近いエピトープを認識する(図62A~62B)。
図63A-65Bは25E6、18B4および18G12と比較して、同じ乳癌アレイを示すが、MNC2である。
MNC2とは異なり、この新しい抗PSMGFR抗体のセットはC-10ペプチドに結合することができることを思い出されたい(図41)。図から分かるように、MNC2の結合とこれらの新しい抗PSMGFR抗体との間には差異がある。MNC2を抗PSMGFR N+9/C-9抗体8A9(図66A-66B)および抗PSMGFR抗体28F9(図67A-67B)と比較すると、同一腫瘍内と同様に、患者間の乳癌集団の認識の差がより顕著である。
図41を参照すると、抗体28F9はC-10ペプチドに最も高い程度の結合を示したが、MNC2はC-10ペプチドに結合せず、これらの抗体はMUC1*の切断された細胞外ドメイン上の非常に異なるエピトープに結合することを論じた。
抗PSMGFR N+9/C-9抗体3C5およびMNC2の結合の間の差異は、図69A-69Bにおいて明らかに見られる。
抗PSMGFR抗体20A10および18B4と、ペプチドPSMGFR N+20/C-27に結合する他の抗体(例えば、29H1、45C11および32C1、31A1)またはPSMGFRN+9/C-9ペプチドに結合する抗体(例えば、17H6)との間の乳癌認識の差異は、図70A~70Gに示される。
【0163】
より小さな乳癌アレイBR1007を抗MUCl*抗体29H1でプローブし、抗全長MUCl抗体5E5およびVU4H5でプローブした場合の同じアレイの認識と比較した(図71A~71F)。
図から分かるように、抗体5E5はVU4H5が認識しないいくつかの標本を認識するが、抗MUCl*抗体29H1は全長MUC1を認識する両方の抗体によって認識される標本と、他の抗MUCl抗体によっても認識されない他の標本とを認識する。
これらの知見は、PSMGFR配列を超えてN末端に伸長したアミノ酸を含むペプチドに結合する抗MUCl*抗体が全長MUC1を認識しないことを示す。
【0164】
図72A~72Fにおいて、乳癌アレイBR1141へのMNC2の結合を、抗PSMGFR抗体のパネルと比較した。これらの抗体は全て、PSMGFRペプチドに結合し、この乳癌アレイの同じ染色パターンをおおよそ生成する。しかし、これらの抗体がアレイ内の個々の標本をどのように認識するかにはいくつかの差異があり、これは異なる酵素によるMUC1~MUC1*切断を表し得る。図39を参照すると、MNC2および20A10はN-10ペプチドに結合するが、C-10ペプチドには結合せず、これは10個の膜近位アミノ酸がそれらの結合に重要であることを示す。
抗体18B4、18G12および25E6はC-10ペプチドへのいくらかの結合を示し、28F9は、C-10ペプチドへのさらにより多くの結合を示す。特に、18B4はN-10ペプチドに結合せず、これは他のものよりもPSMGFR内でよりN末端であるエピトープに結合することを示す。
前述の例外はあるが、抗PSMGFR抗体によるこのアレイ内の腫瘍の認識は非常に類似していた。
【0165】
対照的に、PSMGFR N+9/C-9ペプチドに結合する抗体は、MNC2によって認識されなかったか、またはMNC2および他の抗PSMGFR抗体によって弱く認識された腫瘍のサブセットを強く認識した(図73A-73F)。示される写真は種々の抗MUCl*モノクローナル抗体で染色された乳癌組織アレイBR1141の隣接する連続切片であり、ここで、PSMGFR N+9/C-9ペプチドに結合する抗体はMNC2およびそのヒト化一単一形態huMNC2-scFv-Fcと比較され、これらは両方ともPSMGFR N-10に結合するが、C-10ペプチドには結合しない。
図73Aは、MNC2で染色された乳癌標本を示す。
図73Bは、8A9で染色された乳癌標本を示す。
図73Cは、17H6で染色された乳癌標本を示す。
図73Dは、huMNC2-scFv-Fcで染色された乳癌標本を示す。
図73Eは、3C5で染色された乳癌標本を示す。
図73Fは、39H5で染色された乳癌標本を示す。
ここで赤丸で印をつけた患者検体を参照すると、PSMGFR N+9/C-9ペプチドに結合する抗体が、MNC2抗PSMGFR抗体が見逃したり弱く結合したりする乳癌細胞の集団を認識することが明らかである。抗MUCl*抗体8A9、17H6、3C5、および39H5は、MNC2、20A10、25E6、28F9、18G12、または18B4などの抗PSMGFR抗体によって認識されないか、またはより低い程度に認識されるがん細胞のユニークなサブセットを認識する。
【0166】
まとめると、これらのデータは(i)MUCl陽性癌の診断は、乳癌のような癌サブタイプ内でさえ、腫瘍が完全長MUC1に結合する抗体ではなく、抗MUCl*抗体でプロービングされたときにより正確である;(ii)MUCl陽性癌の診断は、乳癌のような癌サブタイプ内でさえ、腫瘍が1つ以上の抗MUCl*でプロービングされたとき、より正確である;(iii)MUCl陽性癌の診断は、乳癌のような癌サブタイプ内でさえ、腫瘍が1つ以上の抗MUCl*でプロービングされたとき、より正確でここで、少なくとも2つの異なる抗体は、2つの異なるグループの中から選ばれ、該グループは、PSMGFRペプチド、PSMGFR N+20/C-27に結合する抗体、PSMGFR N+9/C-9ペプチドに結合する抗体である。
【0167】
癌の診断における使用のために使用され得る本発明の抗MUCl*抗体はPSMGFRペプチド、PSMGFR N+20/C-27ペプチド、PSMGFR N+9/C-9ペプチド、またはより具体的には、以下の配列の少なくとも15個の連続するアミノ酸を有するペプチドに結合し、4個までのアミノ酸置換を有する抗体を含む;
【0168】
(i)MUC1のPSMGFR領域;
【0169】
(ii)SEQ ID NO:4に記載のPSMGFRペプチド;
【0170】
(iii)PSMGFR N+20/C-22;
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRY(配列番号5)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0171】
(iv)PSMGFR N+12/C-22;
SVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRY(配列番号6)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0172】
(v)PSMGFR N+9/C-30;
VQLTLAFREGTINVHDVETQFNQY(配列番号7)のアミノ酸配列を有するペプチドである
【0173】
(vi)PSMGFR N+20/C-41;
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTIN (配列番号8)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0174】
vii)PSMGFR N+20/C-27;
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTE(配列番号9)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0175】
viii)PSMGFR N+9/C-9;
VQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVP (配列番号10)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
具体的には抗PSMGFR抗体MNC2、MNE6、18B4、18G12、20A10、25E6、抗PSMGFRN+20/C-27抗体1E4、29H1、31A1、32C1、4501、および抗PSMGFR N+9/C-9抗体3C5、8A9、17H6、および39H5は癌を診断するために使用され得る抗体である。これらの抗体は、ヒト、ヒト化または非ヒトであり得る。それらは、抗体インタクト抗体または抗体断片であり得る。抗体は、上記の配列(i)~(viii)のペプチドで動物を免疫することによって生成され得る。抗体を産生するためにMUC1*細胞外ドメインペプチドで免疫化される動物は、ヒト、ウサギ、マウス、ヤギ、ロバ、ラクダ科動物、ラマ、アルパカまたは他の非ヒト種であり得る。
【0176】
本発明の抗体は、イメージング剤、色素、蛍光実体、発色試薬、または抗体を光学的、視覚的、電気的または放射能的に検出可能にする任意の他の要素で誘導体化され得るか、またはイメージング剤に付着され得る診断アッセイにおいて使用され得る。
本発明の抗体は、種々の診断フォーマットで使用され得る。
【0177】
別の例において、本発明の抗MUCl*抗体は患者がMUC1*陽性腫瘍を有するかどうかを決定するために、または患者が診断に使用される抗体に由来し得るかまたは類似の結合特性を有し得る、抗MUCl*抗体の全てまたは断片を含む治療薬から利益を得るかどうかを決定するために、全身診断として生存患者において使用するための造影剤に結合され得る。診断用抗体および治療用抗体の種は、同じである必要はない。ラクダ科動物種において生成される抗体は、ラクダ科動物がヒトにおいて短い半減期を有する小さな一価抗体を生成するので、in vivo診断アッセイに特に有用である。
【0178】
さらに別の例において、本発明の抗MUCl*抗体は造影剤に結合され得、そして癌性組織を検出またはマーキングするために外科手術中に使用され得、その結果、癌性組織は外科手術の間に完全に切除され得る。
【0179】
本発明の1つの態様において、癌と診断されたか、または癌の危険性があると疑われる患者由来の体液または組織標本を、本発明の1つ以上の抗MUCl*抗体と接触させる;標本の細胞に対する抗体の結合の分析は、癌を示す結合のレベルまたは結合のパターンを示す。次いで、癌の処置のための治療剤が、患者に投与される。本発明の1つの態様において、治療剤は、抗MUCl*抗体の全てまたは断片を含む。
【0180】
1つの例において、抗MUCl*抗体またはその断片を使用する診断アッセイは、患者をスクリーニングして、MUC1*標的化治療薬からのそれらの潜在的利益を決定するために使用される。診断に使用される抗MUCl*抗体および治療薬に組み込まれる抗体またはその断片は、同じ抗体に由来してもよい。診断用抗体および治療用抗体の種は、同じである必要はない。診断アッセイは、1つ以上の抗MUCl*抗体の使用を包含し得る。1つ以上の抗MUCl*抗体と反応する患者標本は、患者が1つ以上の反応性抗体またはその断片を含む治療薬の投与から利益を受け得ることを示す。
【0181】
1つの実施例は(i)癌と診断された、または癌を発症することが疑われる患者からの疑わしい細胞または組織標本を、抗MUCl*抗体と接触させる;(ii)保管された参照標本であり得る、正常な細胞または組織標本と接触させる;(iii)抗体結合が検出される;(iv)疑わしい標本がMUC1*を過剰発現するか、または頂端縁に限定される発現とは対照的に、均一なパターンでMUC1*を発現するという測定は患者がMUC1*陽性癌を患っていることを示す;(vi)次いで、癌の処置のための治療剤が患者に投与され、これは抗MUCl*抗体またはその断片を組み込むことができる。
【0182】
本発明の1つの態様において、癌を有すると診断されたかまたは癌を有することが疑われる患者からの体液または組織標本を、本発明の抗MUCl*抗体と接触させ、そして正常より高いレベルのMUC1*が検出されるか、またはMUC1*の異常なパターンが検出され、これは患者がMUC1*陽性癌を有し、次いで、治療剤が患者に投与され、これは抗MUCl*抗体または抗体断片を組み込むことを示す。1つの場合において、抗体または抗体断片が組み込まれる治療剤は、CAR T細胞、操作されたNK細胞または樹状細胞のような免疫腫瘍剤である。別の場合において、抗体または抗体断片が組み込まれる治療剤は、huMNC2-CAR44 T細胞である。本発明のさらに別の局面において、抗体または抗体断片が組み込まれる治療剤は、二重特異性抗体である。本発明のさらに別の局面において、抗体または抗体断片が組み込まれる治療剤は、抗体薬物結合体(ADC)である。本発明のさらに別の局面において、抗体または抗体断片が組み込まれる治療剤は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である。
【0183】
別の実施例において、診断アッセイは抗MUCl*抗体および第2の抗体を含み得、工程は第1の抗体対第2の抗体の量の比を決定することを含み得る。第1の抗体はMUC1*細胞外ドメインに結合することができ、第2の抗体は、タンデム反復配列などの切断部位のN末端であるMUC1細胞外ドメインの一部に結合することができる。組織標本に接触する場合、MUC1*の全長MUC1に対する比率が高いほど、癌が進行し、治療を標的とするMUC1*から患者が利益を受ける可能性が高くなる。
【0184】
本発明は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、一本鎖、抗体断片などを含むがこれらに限定されない抗体様タンパク質と同様に抗体を含む。さらに、本発明は本明細書中に記載される結合アッセイによって特徴付けられ得るタンパク質を得るための抗体模倣物を生成するためのタンパク質足場(scaffolds)の使用を含み、本発明は癌細胞上で差次的に発現される、MUC1*細胞外ドメイン内の特異的エピトープを認識する抗体を同定するために、本明細書中に記載される方法を使用することをさらに含む。
【0185】
1つの態様において、本発明は、MUC1アイソフォームの細胞外ドメイン上の領域またはタンデム反復ドメインを欠く切断産物に結合する、ヒトまたはヒト化抗MUCl*抗体または抗体断片または抗体様タンパク質に関する。ヒトまたはヒト化抗MUCl*抗体または抗体断片または抗体様タンパク質は、特異的に結合し得る
【0186】
(i)MUC1のPSMGFR領域;
【0187】
(ii)SEQ ID NO:4に記載のPSMGFRペプチド;
【0188】
(iii)PSMGFR N+20/C-22;
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRY(配列番号5)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0189】
(iv)PSMGFR N+12/C-22;
SVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRY(配列番号6)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0190】
(v)PSMGFR N+9/C-30;
VQLTLAFREGTINVHDVETQFNQY(配列番号7)のアミノ酸配列を有するペプチドである
【0191】
(vi)PSMGFR N+20/C-41;
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTIN (配列番号8)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0192】
vii)PSMGFR N+20/C-27;
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTE(配列番号9)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0193】
viii)PSMGFR N+9/C-9;
VQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVP (配列番号10)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0194】
ヒトまたはヒト化抗体は、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4またはIgMであり得る。ヒトまたはヒト化抗体断片または抗体様タンパク質は、scFvまたはscFv-Fcであり得る。
【0195】
上記のようなヒトまたはヒト化抗体、抗体断片または抗体様タンパク質はマウスモノクローナルMN-E6抗体に由来し、マウスモノクローナルMN-E6抗体と少なくとも80%、90%または95%または98%の配列同一性を有する重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み得る。
【0196】
上記のヒトまたはヒト化抗体、抗体断片または抗体様タンパク質は、PSMGFRN+20/C-27と反応性の抗体1E4、29H1、31A1、32C1、および45C11のCDR1、CDR2またはCDR3領域と少なくとも90%または95%または98%の配列同一性を有する重鎖可変領域および軽鎖可変領域における相補性決定領域(CDR);PSMGFR N+9/C-9と反応性の17H6、39H5、3C5、8A9; PSMGFRと反応性の18G12、20A10、25E6、28F9、18B4、MNC2、およびMNE6を含み得る。
【0197】
別の態様において、本発明は、MUC1*へのNMEタンパク質の結合を阻害する、上記のヒトまたはヒト化抗MUCl*抗体または抗体断片または抗体様タンパク質に関する。NMEは、NME1、NME6、NME7AB、NME7またはNME8であってもよい。
【0198】
さらに別の態様において、本発明は、縦列反復、リンカー分子、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを欠くMUC1の細胞外ドメインに結合するscFvまたはヒト化可変領域を含むキメラ抗原受容体(CAR)に関する。単鎖抗体断片が結合することができる
【0199】
(i)MUC1のPSMGFR領域;
【0200】
(ii)SEQ ID NO:4に記載のPSMGFRペプチド;
【0201】
(iii)PSMGFR N+20/C-22;
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRY(配列番号5)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0202】
(iv)PSMGFR N+12/C-22;
SVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRY(配列番号6)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0203】
(v)PSMGFR N+9/C-30;
VQLTLAFREGTINVHDVETQFNQY(配列番号7)のアミノ酸配列を有するペプチドである
【0204】
(vi)PSMGFR N+20/C-41;
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTIN (配列番号8)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0205】
vii)PSMGFR N+20/C-27;
SNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTE(配列番号9)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0206】
viii)PSMGFR N+9/C-9;
VQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVP (配列番号10)のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0207】
この点に関して、好ましい実施形態は、配列番号236に記載されるhuMNC2-CAR44である
【0208】
1つの態様において、本発明は有効量の癌特異的抗体(例えば、MNC2もしくはMNE6、またはその断片)(ここで、この抗体は、ヒト、ヒト化された、または非ヒト種であり得る)をヒトに投与することを含む、MUC1またはMUC1*陽性癌を有すると診断されたか、有するか、またはその発症の危険性があると診断されたヒトの処置のための方法に関する。本発明の特定の局面において、MUC1*標的化治療薬はCAR Tとしても知られるキメラ抗原レセプターで形質導入された免疫細胞であり、ここで、CARの抗体断片は、MUC1*癌細胞特異的抗体に由来する。一態様では、それはMNC2に由来する。別の場合には、それはMNE6に由来する。
【0209】
別の態様において、本発明は、1E4、29H1、31A1、32C1、4501、17H6、39H5、3C5、8A9、18G12、20A10、25E6、28F9、18B4、MNC2、およびMNE6抗体の群から選択される抗体またはその断片を含む治療剤を用いて、MUC1またはMUC1*陽性癌の処置から恩恵を受け得るヒトを同定するための診断アッセイに関する。本発明の1つの態様において、抗MUCl*抗体またはその断片は治療薬の全部または一部を含み、診断のために使用される抗体またはその断片に由来し得、ここで、治療薬および診断薬は、同じ種である必要はない。別の例では治療薬の全部または一部を含む抗MUCl*抗体またはその断片が診断に使用される抗体またはその断片に由来せず、ここで、治療薬および診断薬は同じ種である必要はない。
【0210】
本発明の1つの態様において、治療剤は、MUC1*を標的とする。本発明の別の態様において、抗MUCl*抗体のいくつかまたは全てを含む治療剤は、癌免疫療法組成物、CAR T、BiTE、抗体または抗体薬物結合体、ADCである。
【0211】
本発明の1つの態様において、診断は、処理による処置の適格性を決定するためのコンパニオン診断である。本発明の別の態様において、診断は、治療的処置の効力を評価するために使用される。本発明のさらに別の局面において、診断は治療の臨床試験の結果と一緒に分析され、その結果、診断の結果はどの患者が処置から利益を得るかを予測するために使用され得る。本発明の別の態様において、癌細胞抗体またはその断片は造影剤で誘導体化され、次いで、この組成物は患者内の反応性腫瘍の可視化を可能にするために患者に投与される。このようにして、抗体+造影剤は癌を診断するために、治療処置の応答を評価するために、または治療処置に対する応答を評価するために使用され得、ここで、治療はMUC1*を標的とし、そして診断において使用される癌細胞抗体のいくつかまたは全てを含み得る。本発明の一態様において、イメージング剤に付着された抗体はラクダ抗体であり、ラクダ、アルパカ、およびラクダを含むが、これらに限定されない。
【0212】
ここに記載される診断アッセイは、被験体、患者または対照として正常な人から採取された組織、生検標本、細胞、または体液であり得る標本に使用することができる。診断アッセイは、in vitroまたはin vivoで行うことができる。診断アッセイは手術中に使用することができる(例えば、手術部位の組織は、対象から組織を除去することなく研究することができる)。このようにして、診断アッセイは、組織が腫瘍の一部であるように見えるか否かにかかわらず、検出可能な全てのMUC1*陽性組織を外科医に除去するように導く。これらの研究のいずれかにおいて、腫瘍形成または腫瘍形成の可能性の主要指標は、抗PSMGFR抗体または癌細胞抗体にアクセス可能な細胞または組織表面でのMUC1*の量である。延長すると、曝露された癌細胞抗体結合エピトープは、MUC1*のPSMGFR領域がMUC1*成長因子受容体によって媒介される成長および生存機能に結合し、それを活性化する成長因子にもアクセス可能であることを意味する。別の技術において、MUC1*領域およびタンデム反復、IBRまたはURに対する抗体は、試料に曝露され得、そしてMUC1*のMUC1全長に対する結合の比率の測定がなされ得る。健康なサンプルは、MUC1*領域への抗体結合をほとんどまたは全く示さない。腫瘍形成を示す試料は抗MUCl*抗体対抗タンデム反復抗体または抗IBR抗体の非ゼロ比を示し、ここで、癌の段階/悪性度が増加することにつれて、MUC1*対MUC1含有タンデム反復、IBRまたはURの比が増加する。
【0213】
細胞および組織上のMUC1*またはMUC1を含むタンデム反復の量を検出することに加えて、組織から排出されるタンデム反復を含むMUC1の部分は、血液、母乳または分泌物、尿、肺流出などの体液中で検出され得る。これらの場合において、膜貫通MUC1*に対するMUC1切断のレベルは、タンデム反復に結合する抗体、IBRまたはIBR自体にN末端であるユニーク領域を含むがこれらに限定されない抗体を使用して、脱落したMUC1の量を測定することによって推測される。
【0214】
細胞または組織上のMUC1*の量を測定または推測することは、正常組織または患者からの以前の試料よりも大きく、腫瘍形成の可能性、腫瘍の存在、または腫瘍の進行の指標であり、それによって、患者の癌に対する治療の有効性の診断および/または評価者として役立つことができる。1つの態様において、MUC1*の量は、組織標本を抗MUCl*抗体と接触させ、そしてMUC1*の量が正常組織または健康なヒトにおいて発現される量よりも多いことを決定することによって測定される。
[00215]本明細書中に引用される参考文献の全ては、その全体が参照により組み込まれる。
「オリジナルドキュメント」で利用できる画像
[00216]当業者は、本明細書に具体的に記載された本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識するか、または日常的な実験のみを使用して確認することができるのであろう。
(配列決定リストフリーテキスト)
以下の抗体配列において、下線配列はCDR配列を指し、二重下線領域はフレームワーク領域を指す。
完全長MUC1受容体(ムチン1前駆体、ジーンバンク受付番号: P15941)
MTPGTQSPFF LLLLLTVLTV VTGSGHASST PGGEKETSAT QRSSVPSSTE KNAVSMTSSV
LSSHSPGSGS STTQGQDVTL APATEPASGS AATWGQDVTS VPVTRPALGS TTPPAHDVTS
APDNKPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDNRPALGS TAPPVHNVTS
ASGSASGSAS TLVHNGTSAR ATTTPASKST PFSIPSHHSD TPTTLASHST KTDASSTHHS
SVPPLTSSNH STSPQLSTGV SFFFLSFHIS
NLQFNSSLED PSTDYYQELQ RDISEMFLQI YKQGGFLGLS NIKFRPGSW VQLTLAFREG
TINVHDVETQ FNQYKTEAAS RYNLTISDVS VSDVPFPFSA QSGAGVPGWG IALLVLVCVL
VALAIVYLIA LAVCQCRRKN YGQLDIFPAR DTYHPMSEYP TYHTHGRYVP PSSTDRSPYE
KVSAGNGGSS LSYTNPAVAA ASAND (SEQ ID NO : 1 )


nat-PSMGFRおよびPSIBRをそのN末端に有し、翻訳後および細胞表面上のレセプターの発現前に切断され得る完全長MUC1レセプターの膜貫通および細胞質配列を含む、切断されたMUC1レセプターアイソフォーム:
GFLGLS NIKFRPGSW VQLTLAFREG TINVHDVETQ FNQYKTEAAS RYNLTISDVS
VSDVPFPFSAQSGAGVPGWG IALLVLVCVL VALAIVYLIA LAVCQCRRKN YGQLDIFPAR
DTYHPMSEYP TYHTHGRYVPPSSTDRSPYE KVSAGNGGSS LSYTNPAVAA ASANL
(SEQ ID NO:2)

nat-PSMGFR + PSIBR + Unique RegionをそのN末端に有し、完全長MUC 1受容体の膜貫通領域および細胞質領域を含む切断型MUC1受容体アイソフォーム:
ATTTPASKSTPFSIPSHHSDTPTTLASHSTKTDASSTHHSTVPPLTSSNHSTSPQLSTGVSFFFLSFHIS
NLQFNSSLEDPSTDYYQELQRDISEMFLQIYKQGGFLGLSNIKFRPGSWVQLTLAFREGTIVHDVETQ
FNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGAGVPGWGIALLVLVCVLVALAIVYLIALAVCQCRRKN
YGQLDIFPARDTYHPMSEYPTYHTHGRYVPPSSTDRSPYEKVSAGNGGSSLSYTNPAVAAASANL
(SEQ ID NO:3)

PSMGFR
GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA
(SEQ ID NO:4 )

PSMGFR N+20/C-22
SNIKFRPGSVWQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRY (SEQ ID NO:5 )

PSMGFR N+12/C-22
SWVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRY
(SEQ ID NO:6 )

PSMGFR N+9/C-30
VQLTLAFREGTINVHDVETQFNQY
(SEQ ID NO:7 )

PSMGFR N+20/C-41
SNIKFRPGSVWQLTLAFREGTIN (SEQ ID NO:8 )

PSMGFR N+20/C-27
SNIKFRPGSVWQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTE (SEQ ID NO:9 )

PSMGFR N+9/C-9
VQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTI SDVSVSDVP (SEQ ID NO:10 )

【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
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【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
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【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
図1
図2
図3
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図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
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図42
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図44
図45
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図47
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図55
図56
図57-1】
図57-2】
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図60
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図61-2】
図62
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図67
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図69
図70-1】
図70-2】
図71
図72
図73
【配列表】
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