(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】肝臓保護剤組成物および治療応用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/12 20060101AFI20231228BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20231228BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231228BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20231228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61K31/12
A61K31/122
A61P1/16
A61P3/06
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020551375
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(86)【国際出願番号】 US2019023327
(87)【国際公開番号】W WO2019183325
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-11-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-04
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501394435
【氏名又は名称】サミ-サビンサ グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】マジード ムハンメド
(72)【発明者】
【氏名】ナガブシャナム カリヤナム
(72)【発明者】
【氏名】ムンドクル ラクシュミ
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】石井 徹
【審判官】渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-320864(JP,A)
【文献】特表2014-502621(JP,A)
【文献】特開2010-202634(JP,A)
【文献】HUNG, W.-L., et al.,Food & Function,2014年,Vol.5, No.11,pp.2883-2891.
【文献】LIU, G., et al.,Food Science and Technology Research,2015年,Vol.21, No.6,pp.835-845.
【文献】SANDUR, S.K., et al.,Carcinogenesis,Vol.28, No,8,2007年,pp.1765-1773.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/12
A61K31/122
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒト哺乳動物における
NASHの治療管理のための方法であって、
純度95%クルクミノイドおよび
純度20%ガルシノールを含む組成物の有効量をそのような治療を必要とする非ヒト哺乳動物に投与して
NASHの症状の低減をもたらすステップを含む、方法。
【請求項2】
NASH症状が、炎症性浸潤および肝細胞バルーニングを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
NASHの症状が、炎症マーカーの発現の増加、肝臓酵素レベルの上昇、脂質過酸化の増加、抗酸化物質レベルの減少、コラーゲン発現の増加およびアディポネクチンレベルの低減を含む、請求項1に記載の
NASHの治療管理のための方法。
【請求項4】
炎症マーカーが、TNF-α、NFκB、TGF-βおよびMCP-1を含む群から選択される、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
肝臓酵素が好ましくはALTである、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
抗酸化物質がグルタチオンおよびグルタチオンペルオキシダーゼを含む群から選択される、請求項
3に記載の方法。
【請求項7】
組成物中の
純度95%クルクミノイドおよび
純度20%ガルシノールが、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
純度95%クルクミノイドが、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
組成物が、薬学的/栄養学的に許容される賦形剤およびアジュバントを用いて製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、粉剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤または食品の形態で経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
組成物が、肝臓保護について公知のまたは評価された他の成分と共に製剤化または混合され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
哺乳動物における
NASHの治療管理のための、
純度95%クルクミノイドおよび
純度20%ガルシノールを含む組成物。
【請求項12】
NASH症状が、炎症性浸潤および肝細胞バルーニングを含む、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
NASHの症状が、炎症マーカーの発現の増加、肝臓酵素レベルの上昇、脂質過酸化の増加、抗酸化物質レベルの減少、コラーゲン発現の増加およびアディポネクチンレベルの低減を含む、請求項
11に記載の
NASHの治療管理のための組成物。
【請求項14】
炎症マーカーが、TNF-α、NFκB、TGF-βおよびMCP-1を含む群から選択される、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
肝臓酵素が好ましくはALTである、請求項
13に記載の組成物。
【請求項16】
抗酸化物質が、グルタチオンおよびグルタチオンペルオキシダーゼを含む群から選択される、請求項
13に記載の組成物。
【請求項17】
組成物中の
純度95%クルクミノイドおよび
純度20%ガルシノールが、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される、請求項
11に記載の組成物。
【請求項18】
純度95%クルクミノイドが、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する、請求項
11に記載の組成物。
【請求項19】
哺乳動物がヒトである、請求項
11に記載の組成物。
【請求項20】
薬学的/栄養学的に許容される賦形剤およびアジュバントを用いて製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、粉剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤または食品の形態で経口投与される、請求項
11に記載の組成物。
【請求項21】
肝臓保護について公知のまたは評価された他の成分と共に製剤化または混合され得る、請求項
11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許の相互参照
これは、2018年3月23日出願の米国仮出願第62647041号に基づく優先権を主張するPCT出願である。
発明の分野
本発明は、肝臓保護剤組成物に関する。詳細には、本発明は、肝保護のためのクルクミノイドおよびガルシノールを含む組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)および関連状態の治療管理のための、95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、脂肪肝から肝硬変および肝細胞癌にわたるアルコール摂取無しでの脂肪性肝疾患のスペクトラムを含む。NAFLDのさまざまな程度および種類として、a)脂肪症、b)非アルコール性脂肪性肝炎(steatoheapatitis)(NASH)、c)線維症およびd)肝硬変、e)肝細胞癌が挙げられる。脂肪症は、肝細胞におけるトリグリセリド蓄積または肝臓における過多な脂肪として定義される。正常より、最小で少なくとも5~10%過多な脂肪の過剰負荷は、脂肪症の有意な状態とみなされる。
【0003】
NAFLD、非アルコール脂肪性肝炎(NASH)の第2ステージは、末期線維症、肝硬変および肝がんまたは肝細胞癌への進行の実質的なリスクを有する潜在的に重篤な状態である。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病理組織学的特性として、肝細胞脂肪症およびバルーニング、混合急性および慢性炎症ならびに細静脈周囲、類洞周囲のコラーゲン沈着が挙げられる。NASHは、代謝障害の肝臓での徴候と考えられ、2型糖尿病、肥満、インスリン抵抗性および全身性の炎症状態に密接に関連している。次の先行技術文献は、NAFLDおよびNASHの特徴的な特性を開示している。
NASHおよびNAFLDの病理組織を評価することは、疾患の程度および進行を決定するために重要である。組織学的「グレード分けおよびステージ分類」システムは、脂肪性肝炎の固有の特性、重症度および線維症のグレード分けを反映し、病理組織学の均一な報告を促進するように開発され(Brunt et al., Nonalcoholic steatoheapatitis: definition and pathology; Semin Liver Dis. 2001;21(1):3-16)、そこでは、ステージ分類スコアは、疾患の位置および程度の両方を反映している。
【0004】
他のNAFLDは、NAFLD活性スコア(NAS)脂肪症(0~3グレード)、小葉炎症(0~2)および肝細胞バルーニング(0~2)についての肝生検の病理組織学スコアの合計によってNASHから識別され得る。3未満のNASはNAFLDに相当し、3~4は境界線NASHに相当し、5を超えるとNASHに相当する。生検も、線維症(0~4)についてのスコア化される。同様に、バルーニングおよび小葉炎症、門脈炎症ならびに脂肪症グレードについてのグレード分けシステムは、Kleiner et al., Histology of NAFLD and NASH in adults and children, Clin Liver Dis. 2016; 20(2): 293-312によって十分に説明され、識別されている。
線維症は、さらなる代謝および生化学的異常で生じる。それはコラーゲンの形成と沈着の速度の間の不均衡に依存する。線維症ステージは、Brunt et al., Nonalcoholic steatohepatits: a proposal for grading and staging the histological lesions. Am J Gastroenterol. 1999; 94(9):2467-74によって記載される通り、ステージ1、ゾーン3類洞周囲線維症;ステージ2、門脈線維症を有する類洞周囲線維症;ステージ3、ブリッジング線維症を有して上記と同じ;およびステージ4を含む。線維症は、バイオマーカーとしてヒドロキシプロリンおよび酸化ストレスを使用して肝疾患において診断され得る(Gabr et al., Prediction of fibrosis in hepatitis C. patients: assessments using hydroxyproline and oxidative stress biomarkers. Indian Virological Society 2013; 25(1): 91-100)。
【0005】
酸化ストレスマーカーは、肝臓の健康を維持することに重要な役割も演じている。肝臓線維症の評価のための非侵襲性パラメーターとしての酸化ストレスマーカーの重要性(Novitskiy G et al., Effects of ethanol and acetaldehyde on reactive oxygen species production in rat hepatic stellate cells Alcohol Clin Exp Res. 2006;30(8):1429-35)。酸化ストレスマーカー、抗酸化酵素およびヒドロキシプロリンがCHCの病態形成に関与していることが記載されている。Clichici S et al., Non-invasive oxidative stress markers for liver fibrosis development in the evolution of toxic hepatitis. Acta Physiol Hung.2011;98(2):195-204)
【0006】
NASHは、通常、最小限の症状を有するサイレントな疾患であるが、体重減少、疲労および虚弱が疾患進行と共に生じる。NAFLDの脂肪肝を有する個体は、肝臓酵素の上昇を有すると定められ、肝臓酵素集団の低下は、肝臓の状態を矯正または改善する。酵素数を管理する当技術分野の技術は、栄養補助食品として使用される天然アミノ酸であるグルタミンを提供することである。
【0007】
NAFLDの治療管理について緊急の必要性がある。処置のための承認薬を有さないため、それは公衆衛生システムへの重大な負荷である。処置の主な様式は、ライフスタイル管理であり、ピオグリタゾンおよびビタミンEは、肝細胞損傷、線維症を低減し、脂肪性肝炎を改善する薬物療法として使用されている。他の方法としてインスリン感受性改善薬、ビグアナイド、例えばメトホルミンを使用することが挙げられる。
【0008】
さまざまな植物原料由来の天然分子も肝保護のためおよびNAFLDの管理のために現在使用されている(Madrigal-Santillan et al., Review of natural products with hepatoprotective effects, World J Gastroenterol. 2014; 20(40): 14787-14804)。クルクマ種(Curcuma sp.)由来のクルクミンは、NASHの症状を軽減することにおけるその治療効果について周知である(Rahmani et al., Treatment of Non-alcoholic Fatty Liver Disease with Curcumin: A Randomized Placebo-controlled Trial, Phytotherapy Research, 2016; 30(9):1540-1548; Amato et al., NAFLD and Atherosclerosis Are Prevented by a Natural Dietary Supplement Containing Curcumin, Silymarin, Guggul, Chlorogenic Acid and Inulin in Mice Fed a High-Fat Diet, Nutrients 2017, 9(5), 492; https://doi.org/10.3390/nu9050492)。ガルシニア種(Garcinia sp.)由来のガルシノールも公知の肝保護剤である(WO2012092430A1)。しかし、大部分の天然分子は、NAFLDのすべての症状に対して完全保護を付与しない。安全で信頼でき、NAFLDおよびNASHに関連する大部分の症状を軽減することによって肝保護能力を引き出す組成物に対する未充足の産業的必要性が、今なお存在する。
本発明は、NAFLDならびにNASH、線維症および肝硬変などの関連状態の治療管理のためのクルクミノイドおよびガルシノールを含む相乗作用組成物を提供する。
NAFDLおよびその関連状態の管理のための95%w/wクルクミノイドおよび20%w/wガルシノールを含む相乗作用肝保護剤組成物を開示することは、本発明の主な目的である。
95%w/wクルクミノイドおよび20%w/wガルシノールを含む組成物を使用するNAFLDならびに脂肪症、NASH、線維症および肝硬変などの関連状態の治療管理のための方法を開示することは、本発明のさらに別の目的である。
本発明は、上に述べた目的を解決し、さらに関連する有利点をもたらす。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、肝保護剤としての使用のための、95%w/wクルクミノイドおよび20%w/wガルシノールを含む組成物に関する。より具体的には、本発明は、NAFLDならびに脂肪症、NASH、肝維症および肝硬変などの関連状態の治療管理のための95%w/wクルクミノイドおよび20%w/wガルシノールを含む組成物の使用を開示する。
本発明は、95%w/wクルクミノイドおよび20%w/wガルシノールを含む組成物を投与することによる、NAFLDならびに脂肪症、NASH、線維症および肝硬変などの関連状態の治療管理のための方法も開示する。
本発明の他の特性および有利点は、例に基づいて本発明の原理を例示する添付の図と合わせた、以下のさらに詳細な説明から明らかになる。
本特許または出願書類は、カラーで出力された少なくとも1つの図を含む。カラーの図(複数可)を含む本特許または特許出願公開の複製物は、請求および必要な手数料の支払いにより当局によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ヘマトキシリンおよびエオシンを用いて染色した肝臓の病理組織学的切片を示す図である。
【
図2】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物の肝臓切片におけるNAFLDスコアを示すグラフ表示である。NAFLDスコアは、ヘマトキシリンおよびエオシンを用いて染色された組織学的切片に基づいて算出される。
【
図3】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物の肝臓切片における脂肪症スコアを示すグラフ表示である。
【
図4】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物の肝臓切片におけるバルーニングスコアを示すグラフ表示である。
【
図5】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物の肝臓切片における線維症の面積を示すグラフ表示である。
【
図6】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物における肝臓ヒドロキシプロリンレベルを示すグラフ表示である。
【
図7】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物においてコラーゲン沈着を示す、ピクロシリウスレッドを用いて染色された肝臓切片の病理組織学的顕微鏡像である。
【
図8】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物におけるアディポネクチンレベルを示すグラフ表示である。
【
図9】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物における血漿TNFαレベルを示すグラフ表示である。
【
図10】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物における血漿グルタチオンレベルを示すグラフ表示である。
【
図11】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物における血漿グルタチオンペルオキシダーゼレベルを示すグラフ表示である。
【
図12】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物における脂質過酸化の程度を示すグラフ表示である。
【
図13】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物におけるTNF-α、NFκBおよびMCP1の発現を示すグラフ表示である。
【
図14】ガルシノール、クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイドを投与された動物におけるTGF-βおよびコラーゲン1の発現を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最も好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物におけるNAFLDおよび関連状態の治療管理のための方法であって、95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含有する組成物の有効量をそのような治療を必要とする哺乳動物に投与してNAFLDおよび関連状態の症状の低減をもたらすステップを含む、方法を開示する。関連実施形態では、NAFLDの関連状態は、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、線維症および肝硬変を含む。関連実施形態では、NAFLの症状は、肝細胞における脂肪の異常な蓄積を含む。
【0012】
関連実施形態では、NASH症状は、これらに限定されるものではないが、炎症性浸潤および肝細胞バルーニングを含む。別の関連実施形態では、線維症の症状は、肝臓におけるヒドロキシプロリンレベルの上昇およびコラーゲンの病理学的沈着を含む。別の関連実施形態では、NAFLDおよび関連状態の症状として、炎症マーカーの発現の増加、肝臓酵素レベルの上昇、脂質過酸化の増加、抗酸化物質レベルの減少、コラーゲン発現の増加およびアディポネクチンレベルの低減を含む。
さらに別の関連実施形態では、炎症マーカーは、TNF-α、NFκB、TGF-βおよびMCP-1を含む群から選択される。
さらに別の態様では、肝臓酵素は好ましくはALTである。別の関連する態様では、抗酸化物質は、グルタチオンおよびグルタチオンペルオキシダーゼを含む群から選択される。関連実施形態では、組成物中の95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールは、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される。
【0013】
別の関連実施形態では、95%クルクミノイドは、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する。別の関連する態様では、20%ガルシノールは、ガルシニア種から得られる。好ましい実施形態では、ガルシニア種は、ガルシニア・インディカ(Garcinia indica)である。別の関連する態様では、哺乳動物はヒトである。
さらに別の態様では、組成物は、薬学的/栄養学的(nutraceutically)に許容される賦形剤およびアジュバントを用いて製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、粉剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤または食品の形態で経口投与される。別の関連する態様では、95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物は、肝臓保護のための他の公知の成分と共に製剤化され得る。
別の好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物におけるNAFLDおよび関連状態の治療管理のための、95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物を開示する。関連実施形態では、NAFLDの関連状態は、NAFL、NASH、線維症および肝硬変を含む。関連実施形態では、NAFLの症状は、肝細胞における脂肪の異常な蓄積を含む。関連実施形態では、NASH症状は、これらに限定されるものではないが、炎症性浸潤および肝細胞バルーニングを含む。
【0014】
別の関連実施形態では、線維症の症状は、肝臓におけるヒドロキシプロリンレベルの上昇およびコラーゲンの病理学的沈着を含む。別の関連実施形態では、NAFLDおよび関連状態の症状は、炎症マーカーの発現の増加、肝臓酵素レベルの上昇、脂質過酸化の増加、抗酸化物質レベルの減少、コラーゲン発現の増加およびアディポネクチンレベルの低減を含む。さらに別の関連実施形態では、炎症マーカーは、TNF-α、NFκB、TGF-βおよびMCP-1を含む群から選択される。
【0015】
さらに別の態様では、肝臓酵素は、好ましくはALTである。別の関連する態様では、抗酸化物質は、グルタチオンおよびグルタチオンペルオキシダーゼを含む群から選択される。関連実施形態では、組成物中の95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールは、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される。別の関連実施形態では、95%クルクミノイドは、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する。別の関連する態様では、20%ガルシノールは、ガルシニア種から得られる。好ましい実施形態では、ガルシニア種は、ガルシニア・インディカである。別の関連する態様では、哺乳動物はヒトである。
さらに別の態様では、組成物は、薬学的/栄養学的に許容される賦形剤およびアジュバントを用いて製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、粉剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤または食品の形態で経口投与される。別の関連する態様では、95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物は、肝臓保護のための他の公知の成分と共に製剤化され得る。
【0016】
別の好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物におけるNAFLの治療管理の方法であって、哺乳動物に95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物の有効量を投与して肝臓に貯留された過多な脂肪の脂肪分解をもたらすステップを含む、方法を開示する。関連実施形態では、組成物中の95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールは、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される。
別の関連実施形態では、95%クルクミノイドは、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する。別の好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物におけるNAFLに関連する症状の治療管理のための、95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物を開示する。関連実施形態では、NAFLの症状は、肝細胞における脂肪の異常な蓄積を含む。
関連実施形態では、組成物中の95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールは、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される。
別の関連実施形態では、95%クルクミノイドは、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する。さらに別の関連実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0017】
別の好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物におけるNAFLの治療管理の方法であって、哺乳動物に95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含有する組成物の有効量を投与してNASHに関連する症状の低減をもたらすステップを含む、方法を開示する。関連実施形態では、NASHの症状は、これらに限定されるものではないが、炎症性浸潤、肝臓酵素の上昇および肝細胞バルーニングを含む。
別の関連実施形態では、炎症マーカーは、これらに限定されるものではないが、インターロイキン、TNF-αおよびTGF-βからなる群から選択される。別の関連実施形態では、肝臓酵素は、トランスアミナーゼ、アミノトランスフェラーゼおよびホスファターゼからなる群から選択される。関連実施形態では、肝臓酵素は、好ましくはALTである。
【0018】
関連実施形態では、組成物中の95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールは、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される。別の関連実施形態では、95%クルクミノイドは、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する。さらに別の関連実施形態では、哺乳動物はヒトである。別の好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物におけるNASHと関連する症状の治療管理のための、95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物を開示する。
【0019】
関連実施形態では、NASHの症状は、これらに限定されるものではないが、炎症性浸潤、肝臓酵素の上昇および肝細胞バルーニングを含む。別の関連実施形態では、炎症マーカーは、これらに限定されるものではないが、インターロイキン、TNF-αおよびTGF-βからなる群から選択される。別の関連実施形態では、肝臓酵素は、トランスアミナーゼ、アミノトランスフェラーゼおよびホスファターゼからなる群から選択される。関連実施形態では、肝臓酵素は、好ましくはALTである。
関連実施形態では、組成物中の95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールは、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される。別の関連実施形態では、95%クルクミノイドは、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する。さらに別の関連実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0020】
別の好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物における肝線維症の治療管理の方法であって、哺乳動物に95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物の有効量を投与して肝線維症のマーカーにおける低減をもたらすステップを含む、方法を開示する。関連実施形態では、肝線維症のマーカーは、これらに限定されるものではないが、炎症性サイトカイン、肝臓酵素およびヒドロキシプロリンの上昇ならびに肝臓におけるコラーゲンの病理学的沈着を含む。
【0021】
別の関連実施形態では、炎症マーカーは、これらに限定されるものではないが、インターロイキン、TNF-αおよびTGF-βからなる群から選択される。別の関連実施形態では、肝臓酵素は、トランスアミナーゼ、アミノトランスフェラーゼおよびホスファターゼからなる群から選択される。別の関連実施形態では、肝臓酵素は、好ましくはALTである。関連実施形態では、組成物中の95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールは、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される。別の関連実施形態では、95%クルクミノイドは、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する。さらに別の関連実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0022】
別の好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物における肝線維症に関連する症状およびマーカーの低減のための、95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物を開示する。関連実施形態では、肝線維症のマーカーは、これらに限定されるものではないが、炎症性サイトカイン、肝臓酵素およびヒドロキシプロリンの上昇ならびに肝臓におけるコラーゲンの病理学的沈着を含む。別の関連実施形態では、炎症マーカーは、これらに限定されるものではないが、インターロイキン、TNF-αおよびTGF-βからなる群から選択される。別の関連実施形態では、肝臓酵素は、トランスアミナーゼ、アミノトランスフェラーゼおよびホスファターゼからなる群から選択される。
関連実施形態では、組成物中の95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールは、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される。別の関連実施形態では、95%クルクミノイドは、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する。さらに別の関連実施形態では、哺乳動物はヒトである。
別の最も好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物において肝保護をもたらす方法であて、哺乳動物に95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物の有効量を投与して炎症マーカーおよび肝臓酵素の低減をもたらして肝保護を付与するステップを含む、方法を開示する。
【0023】
関連実施形態では、組成物中の95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールは、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される。別の関連実施形態では、95%クルクミノイドは、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する。関連実施形態では、炎症マーカーは、これらに限定されるものではないが、インターロイキン、TNF-αおよびTGF-βを含む群から選択される。別の関連実施形態では、肝臓酵素は、トランスアミナーゼ、アミノトランスフェラーゼおよびホスファターゼからなる群から選択される。さらに別の関連実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0024】
別の好ましい実施形態では、本発明は、肝保護剤としての使用のための、95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物を開示する。関連実施形態では組成物中の95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールは、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される。別の関連実施形態では、95%クルクミノイドは、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する。さらに別の関連実施形態では、哺乳動物はヒトである。
以下の例示的実施例は、本発明の技術的特性および有利点を理解するために含まれる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
方法
マウスモデル
実験はNASH-HCCのSTAMモデルで実行する。NASH STAMモデルは、主に、脂肪症からNASHおよび肝線維症にわたるヒトNAFLDのスペクトラム全体を再現することから広く使用されている。加えて、このモデルにおいて観察される組織学的表現型は、ヒト臨床試料において見られるものと同様であり、このことは、疾患の重症度を評価するために同じスコア化システム(NAFLD活性スコア;NAS)を使用することを可能にする(Kazuki Takakura Et al., Mouse models for investigating the underlying mechanisms of non alcoholic steatoheapatitis-derived hepatocellular carcinoma; World J Gastroenterol; 2018 may 14; 24 (18); 1989-1994)。
STAMマウスモデルでは体重増加はなく、動物は、高脂肪食給餌にもかかわらず肥満を示さない。
【0026】
プロトコール
病原体未感染妊娠14日目C57BL/6マウスをJapan SLC、Inc.(日本)から得て、NASHを、オスマウスにおいて、出生後の200μgストレプトゾトシン(Sigma、米国)の単回皮下注射および自由摂取の高脂肪食(CLEA Japan、日本)の給餌によって、4週齢(28±2日齢)に確立した。5週齢(35±2日齢)のマウスを、処置開始前日に、それぞれマウス8匹の4群に無作為化した。
群
群1(ビヒクル):NASHマウス8匹に5mL/kgの体積中のビヒクル0.5%メチルセルロース]を5~9週齢に1日1回経口投与した。
群2(20%ガルシノール):NASHマウス8匹に、20%ガルシノールを補充したビヒクルを10mg/kgの用量で、5~9週齢に1日1回経口投与した。
群3(95%クルクミノイド-Sabinsa Corporation、米国から商業的に入手できるクルクミンC3複合体(登録商標)):NASHマウス8匹に、クルクミンC3複合体を補充したビヒクルを50mg/kgの用量で、5~9週齢に1日1回経口投与した。
群4(20%ガルシノールおよびクルクミンC3複合体(登録商標):NASHマウス8匹に、20%ガルシノールを10mg/kgの用量でおよびクルクミンC3複合体を50mg/kgの用量で補充したビヒクルを、6~9週齢に1日1回経口投与した。
【0027】
下の表1に処置スケジュールを要約する。
【表1】
すべての動物は、9週齢で人道的に屠殺し、臓器重量、個々の肝臓重量、肝臓対体重比を記録した。
【0028】
試料回収
血漿試料について、非絶食時血液を抗凝固薬(ノボヘパリン)を含むポリプロピレンチューブに回収し、1,000xg、4℃で15分間遠心分離した。上清を回収し、-80℃で保存した。凍結肝臓試料について、左中葉および尾状葉を液体窒素中で急速凍結し、-80℃で保存した。
パラフィン包埋肝臓ブロックについて、左側葉を回収し、6片に切り分けた。左側葉の2片をブアン固定液中で固定しパラフィンに包埋した。
【0029】
cDNA試料について、左側葉の他の2片を液体窒素中で急速凍結し、使用まで-80℃で保存した。総RNAを肝臓試料からRNAiso(Takara Bio、日本)を製造者の説明書に従って使用して抽出した。1μgのRNAを、4.4mM MgCl2(F.Hoffmann-La Roche、スイス)、40U RNase阻害剤(Toyobo、日本)、0.5mM dNTP(Promega、米国)、6.28μMランダムヘキサマー(Promega)、5x第1鎖緩衝液(Promega)、10mMジチオスレイトール(Invitrogen、米国)および200U MMLV-RT(Invitrogen)を最終体積20μL中に含有する反応混合物を使用して逆転写した。反応を、37℃で1時間、続いて99℃で5分間実行した。
全血および血漿生化学の測定
非絶食時血糖を全血中でStat Stripグルコースメーター(NIPRO CORPORATION、日本)を使用して測定した。血漿生化学について、非絶食時血液を抗凝固薬(ノボヘパリン、Mochida Pharmaceutical Co.Ltd.、日本)を含むポリプロピレンチューブに回収し、1,000xg、4℃で15分間遠心分離した。上清を回収し、使用まで-80℃で保存した。血漿ALTおよび総コレステロールをFUJI DRI-CHEM 7000(Fujifilm、日本)によって測定した。アディポネクチンの概算をR&D Systemsからの取扱説明書に従って行った。
【0030】
肝臓生化学の測定
肝臓トリグリセリド含有量の測定
肝臓総脂質抽出物をフォルチ法(Folch J. et al., J. Biol. Chem. 1957;226: 497)によって得た。肝臓試料をクロロホルム-メタノール(2:1、v/v)中でホモジナイズし、室温で一晩インキュベートした。クロロホルム-メタノール-水(8:4:3、v/v/v)を用いた洗浄後、抽出物を乾燥するまでエバポレーションし、イソプロパノールに溶解した。肝臓トリグリセリド含有量をトリグリセリドEテスト(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.、日本)によって測定した。
【0031】
肝臓ヒドロキシプロリン含有量の測定
肝臓ヒドロキシプロリン含有量を測定するために、凍結肝臓試料をアルカリ-酸加水分解方法によって次の通り処理した。肝臓試料を、100%アセトンを用いて脱脂し、風乾し、2N NaOH中65℃で溶解し、121℃で20分間オートクレーブ処理した。溶解した試料(400μL)を400μLの6N HClを用いて121℃で20分間、酸加水分解し、10mg/mL活性炭を含有する400μLの4N NaOHを用いて中和した。AC緩衝液(2.2M酢酸/0.48Mクエン酸、400μL)を試料に加え、続いて、上清を回収するため遠心分離した。ヒドロキシプロリンの標準曲線を、トランス-4-ヒドロキシ-L-プロリン(Sigma-Aldrich)の16μg/mLから開始する系列希釈物を用いて作成した。調製した試料および標準物(各400μL)を400μLクロラミンT溶液(Wako Pure Chemical Industries)と混合し、25分間、室温でインキュベートした。
【0032】
次に試料をエールリッヒ溶液(400μL)と混合し、65℃で20分間加熱して発色させた。試料を氷上で冷却し、沈殿を除くために遠心分離し、各上清の光学密度を560nmで測定した。ヒドロキシプロリンの濃度をヒドロキシプロリン標準曲線から算出した。肝臓試料のタンパク質濃度をBCAプロテインアッセイキット(Thermo Fisher Scientific、米国)を使用して決定し、算出したヒドロキシプロリン値を標準化するために使用した。肝臓ヒドロキシプロリンレベルは、タンパク質1mgあたりのμgとして表した。
TNF-αのレベルを、製造者(R&D systems)によって記載された通りサイトカインELISAによって概算した。
【0033】
抗酸化グルタチオン、グルタチオンペルオキシダーゼおよび脂質過酸化を:
Ellman, GL 1959, 'Tissue sulfhydryl groups', Archives Biochemistry Biophysics, vol. 82, pp.70-77
Paglia, DE & Valentine, WN 1967, 'Studies on the quantitative and qualitative characterization of erythrocyte glutathione peroxidase', Journal of Laboratory and Clinical Medicine, vol.70, pp.158-169.
Buege, JA & Aust, SD 1978, 'Microsomal lipid peroxidation', Methods Enzymol, vol. 52, pp.302-310
によって記載された標準的手順を使用して概算した。
【0034】
組織学的分析
HE染色のために、ブアン固定液で予め固定した肝臓組織のパラフィンブロックから切片を切り出し、リリーマイヤーヘマトキシリン(Muto Pure Chemicals Co.,Ltd.、日本)およびエオシン溶液(Wako Pure Chemical Industries)を用いて染色した。NAFLD活性スコア(NAS)をクライナーの基準に従って算出した(Kleiner DE. et al., Hepatology, 2005;41:1313)。
コラーゲン沈着を可視化するために、ブアン固定した肝臓切片を、ピクロシリウスレッド溶液(Waldeck、ドイツ)を用いて染色した。線維症面積の定量的分析のために、シリウスレッド染色切片の明視野像をデジタルカメラ(DFC295;Leica、ドイツ)を200倍拡大で使用して中心静脈周辺で捕捉し、5視野/切片での陽性面積をImageJ ソフトウェア(National Institute of Health、米国)SR_SLMN039-1704-08/16を使用して測定した。
統計検定
統計解析をGraphPad Prism6(GraphPad Software Inc.、米国)でボンフェローニ多重比較検定を使用して実施した。P値<0.05を統計的有意とみなした。片側t検定でP値<0.1の場合に、トレンド(trend)または傾向(tendency)を推定した。結果を平均±SDとして表した。
【0035】
結果
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は、顕著なアルコール摂取歴または他の既知の肝疾患無しでの肝臓の脂肪症によって特徴付けられる。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、NAFLDの進行した形態である。NASH Clinical Researchの病理学委員会は、NAFLDの病変のすべてのスペクトラムを扱い、臨床試験使用のためのNAFLD活性スコアを提案する組織学的特性スコア化システムを設計および検証した。NAFLDスコアは、ヘマトキシリンおよびエオシンを用いて染色した組織学的切片に基づいて算出される(
図1)。ガルシノール+クルクミノイドを用いた処置は、低NAFLDスコアを有する脂肪性肝疾患において有意な減少を示した(
図2)。さらに、ガルシノール+クルクミンを用いた処置は、脂肪症(
図3)および肝細胞バルーニング(
図4)において有意な減少も示した。
【0036】
結果は、20%ガルシノールおよび95%クルクミノイドの混合物を用いた処置が、未処置対照ならびに個々のガルシノール20%およびクルクミノイド20%と比較してNAFLD活性スコアにおいて有意な減少を示し、したがって、脂肪性肝疾患における相乗的減少を示し、個々に投与された場合に未処置対照と比較して低いが併用よりは高いNAFLDスコアを示す20%ガルシノールおよびクルクミノイドを含む併用の相乗作用をもたらすことを示している。脂肪症では、肝細胞バルーニングは、細胞傷害を示す特性であり、拡張し腫大した肝細胞によって特徴付けられる。NASHの管理の観点から、20%ガルシノールおよびクルクミノイドの混合物を用いた処置は、脂肪症および肝細胞バルーニングにおいて有意な相乗的減少を示した。
【0037】
肝臓における線維症は、多数の代謝および生化学的異常に関連する、コラーゲンの形成と沈着の速度の間の不均衡に依存する。肝線維症は、過多な線維性結合組織の形成の反応性、良性または病理学的状態であり、病理学的状態の際に肝臓の完全性を保護する修復活性である。肝臓組織におけるそれらのレベルが肝線維化の速度および進行を決める。その非侵襲性線維化(non invasic fibrotic)検出活性は、重度の線維症を有する慢性肝疾患におけるバイオマーカーとして働く。線維症の面積は、肝臓切片の形態計測定量のシリウスレッド染色によって測定した。20%ガルシノールおよび95%クルクミノイドが、低いコラーゲン沈着を示して線維症の面積を相乗的に低減したことが観察された(
図5)。
【0038】
ヒドロキシプロリンは、線維性コラーゲンの主な構成成分であり、総アミノ酸含有量の約14%含まれる。線維症の発症は、ヒドロキシプロリンのプロコラーゲンへの組み込みに主に依存する。さらに、ヒドロキシプロリンは、結合組織におけるコラーゲン細線維の合成を制限する唯一のアミノ酸である。コラーゲン分解の際に、肝臓、尿および血清に放出されるヒドロキシプロリン含有量は、線維症と相関し、線維化スコアについての診断マーカーとして使用され得る(Need AG. Bone resorption markers in vitamin D insufficiency; Clin Chim Acta. 2006;368:48-52)。ガルシノール-クルクミノイド組成物の処置は、ヒドロキシプロリンレベル(
図6)を相乗的に低減し、それにより、
図7に表されるようにピクロシリウスレッドによって染色した場合にコラーゲン沈着を低減した。すべての処置群において対照と比較して、体重および肝臓重量に変化は観察されなかった(表2)。
【0039】
【0040】
生化学パラメーターに関して、対照と比較して処置群における血漿グルコース、総コレステロールおよびトリグリセリドのレベルに変化はなかった(表3)。しかし、NAFLDによって上昇した血漿ALTレベルは、ガルシノールおよびクルクミノイドを含有する組成物によって有意に低減され(表3)、組成物の肝保護効果を示している。
【0041】
【表3】
アディポネクチンは、糖新生を減少させ、解糖および脂肪酸酸化を増加させることによってグルコースおよび脂質の両方の代謝を制御する。アディポネクチンのレベルは、NAFLDマウスモデルにおいて有意に低減していた。ガルシノールおよびクルクミノイドを含む組成物は、アディポネクチンのレベルを効果的に増加させ(
図8)肝保護を付与する。
【0042】
炎症マーカー、TNF-αの血漿レベルは、NAFLDにおいて上昇していた。クルクミノイドおよびガルシノール+クルクミノイド組成物は、TNF-αのレベルを有意に低減する(
図9)。組成物は、抗酸化グルタチオン(
図10)およびグルタチオンペルオキシダーゼ(
図11)のレベルも増加させ、脂質過酸化(
図12)を有意に低減し、抗酸化剤および抗炎症剤としての役割も示している。
【0043】
(実施例2)
遺伝子発現研究
炎症マーカーTNF-α、NFκB、TGF-βおよびMCP-1の発現を評価した。
β-アクチン
F-GAAGTCCCTCACCCTCCCAA
R-GGCATGGACGCGACCA
NFκB
F-GAAATTCCTGATCCAGACAAAAAC
R-ATCACTTCAATGGCCTCTGTGTAG
TNF-α
F-CTCCAGGCGGTGCCTATGT
R-GAAGAGCGTGGTGGCCC
MCP-1
F-GCATCCACGTGTTGGCTCA-
R--CTCCAGCCTACTCATTGGGATCA
TGF-β
F--TTGCCCTCTACAACCAACACAA
R--GGCTTGCGACCCACGTAGTA
コラーゲン1
F--TTCCCTGGACCTAAGGGTACT
R--TTGAGCTCCAGCTTCGCC
【0044】
炎症マーカー、主にTNF-α、NFκBおよびMCP1の発現(
図13)は、本発明の組成物を用いて処置した動物の肝臓において低減される。20%ガルシノールと合わせた95%クルクミノイドは、TNF-α、NFκBおよびMCP1のより高い阻害を示した。線維症についての重要なマーカーであるTGF-βおよびコラーゲン1の発現も、組成物によって有意に低減された(
図14)。
全体として、95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含有する組成物は、NAFLDでの有意な低減、肝臓ヒドロキシプロリンでの有意な減少、脂肪症の有意な減少、線維症およびNASHにおける減少動向、肝細胞バルーニングの低減、肝臓におけるコラーゲンの病理学的沈着の低減に影響して相乗的に作用し、それにより肝臓保護を付与する。
本発明は、クルクミノイドおよびガルシノールを含む肝臓保護のための組成物の相乗効果を開示する。当業者は、このことが、前述の組成物が肝臓保護のための公知のまたは評価された他の成分と混合または製剤化された場合に自明であることを理解する。
本発明への他の改変および変形は、前述の開示および教示から当業者に明らかである。したがって、本発明のある特定の実施形態のみが本明細書に具体的に記載されているが、多数の改変が本発明の精神および範囲から逸脱することなくそれらに行われ得ることは明らかである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲と合わせてのみ解釈される。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕哺乳動物におけるNAFLDおよび関連状態の治療管理のための方法であって、95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物の有効量をそのような治療を必要とする哺乳動物に投与してNAFLDおよび関連状態の症状の低減をもたらすステップを含む、方法。
〔2〕NAFLD関連状態が、NAFL、NASH、線維症および肝硬変を含む、前記〔1〕に記載のNAFLDおよび関連状態の治療管理のための方法。
〔3〕NAFLの症状が、肝細胞における脂肪の異常な蓄積を含む、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕NASH症状が、炎症性浸潤および肝細胞バルーニングを含む、前記〔2〕に記載の方法。
〔5〕線維症の症状が、肝臓におけるヒドロキシプロリンレベルの上昇およびコラーゲンの病理学的沈着を含む、前記〔2〕に記載の方法。
〔6〕NAFLDおよび関連状態の症状が、炎症マーカーの発現の増加、肝臓酵素レベルの上昇、脂質過酸化の増加、抗酸化物質レベルの減少、コラーゲン発現の増加およびアディポネクチンレベルの低減を含む、前記〔1〕に記載のNAFLDおよび関連状態の治療管理のための方法。
〔7〕炎症マーカーが、TNF-α、NFκB、TGF-βおよびMCP-1を含む群から選択される、前記〔6〕に記載の方法。
〔8〕肝臓酵素が好ましくはALTである、前記〔6〕に記載の方法。
〔9〕抗酸化物質がグルタチオンおよびグルタチオンペルオキシダーゼを含む群から選択される、前記〔6〕に記載の方法。
〔10〕組成物中の95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールが、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される、前記〔1〕に記載の方法。
〔11〕95%クルクミノイドが、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する、前記〔1〕に記載の方法。
〔12〕哺乳動物がヒトである、前記〔1〕に記載の方法。
〔13〕組成物が、薬学的/栄養学的に許容される賦形剤およびアジュバントを用いて製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、粉剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤または食品の形態で経口投与される、前記〔1〕に記載の方法。
〔14〕組成物が、肝臓保護について公知のまたは評価された他の成分と共に製剤化または混合され得る、前記〔1〕に記載の方法。
〔15〕哺乳動物におけるNAFLDならびに関連状態および症状の治療管理のための、95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールを含む組成物。
〔16〕NAFLDの関連状態が、NAFL、NASH、線維症および肝硬変を含む、前記〔15〕に記載の組成物。
〔17〕NAFLの症状が、肝細胞における脂肪の異常な蓄積を含む、前記〔15〕に記載の組成物。
〔18〕NASH症状が、炎症性浸潤および肝細胞バルーニングを含む、前記〔15〕に記載の組成物。
〔19〕線維症の症状が、肝臓におけるヒドロキシプロリンレベルの上昇およびコラーゲンの病理学的沈着を含む、前記〔15〕に記載の組成物。
〔20〕NAFLDおよび関連状態の症状が、炎症マーカーの発現の増加、肝臓酵素レベルの上昇、脂質過酸化の増加、抗酸化物質レベルの減少、コラーゲン発現の増加およびアディポネクチンレベルの低減を含む、前記〔15〕に記載のNAFLDならびに関連状態および症状の治療管理のための組成物。
〔21〕炎症マーカーが、TNF-α、NFκB、TGF-βおよびMCP-1を含む群から選択される、前記〔20〕に記載の組成物。
〔22〕肝臓酵素が好ましくはALTである、前記〔20〕に記載の組成物。
〔23〕抗酸化物質が、グルタチオンおよびグルタチオンペルオキシダーゼを含む群から選択される、前記〔20〕に記載の組成物。
〔24〕組成物中の95%クルクミノイドおよび20%ガルシノールが、それぞれおおよそ10~50mg/kg体重および1~10mg/kg体重の濃度で投与される、前記〔15〕に記載の組成物。
〔25〕95%クルクミノイドが、おおよそ75~81%クルクミン、15~19%デメトキシクルクミンおよび2.2~6.5%ビスデメトキシクルクミンの割合で存在する、前記〔15〕に記載の組成物。
〔26〕哺乳動物がヒトである、前記〔15〕に記載の組成物。
〔27〕薬学的/栄養学的に許容される賦形剤およびアジュバントを用いて製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、粉剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤または食品の形態で経口投与される、前記〔15〕に記載の組成物。
〔28〕肝臓保護について公知のまたは評価された他の成分と共に製剤化または混合され得る、前記〔15〕に記載の組成物。
【配列表】