IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハーマン インターナショナル インダストリーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

特許7411576リモートマイクロフォン技術のための近接補償システム
<>
  • 特許-リモートマイクロフォン技術のための近接補償システム 図1
  • 特許-リモートマイクロフォン技術のための近接補償システム 図2
  • 特許-リモートマイクロフォン技術のための近接補償システム 図3
  • 特許-リモートマイクロフォン技術のための近接補償システム 図4
  • 特許-リモートマイクロフォン技術のための近接補償システム 図5
  • 特許-リモートマイクロフォン技術のための近接補償システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】リモートマイクロフォン技術のための近接補償システム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
G10K11/178 100
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020564713
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 US2019034945
(87)【国際公開番号】W WO2019232400
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】62/679,275
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512168283
【氏名又は名称】ハーマン インターナショナル インダストリーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン, ジョナサン ウェスリー
(72)【発明者】
【氏名】フェン, タオ
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032981(JP,A)
【文献】米国特許第09305541(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0047383(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のためのリモートマイクロフォンシステムであって、
前記車両内の仮想マイクロフォン位置において誤差信号を生成するように構成された、車室内に配置された少なくとも1つの物理マイクロフォンと、
事前測定された座席場所及び関連する伝達関数のルックアップテーブルを維持するように構成されたデータベースと、
プロセッサであって、前記プロセッサは、
前記車両内の座席位置を示す座席の現在の座席場所を受信することと、
前記事前測定された場所の1つが前記現在の座席場所に対応するかどうかを判定することと、
前記事前測定された場所の1つが前記現在の座席場所に対応しないことに応答して、少なくとも2つの既知の事前測定された場所から伝達関数を補間することと、
前記誤差信号を生成するように、前記少なくとも2つの既知の事前測定された場所から補間された前記伝達関数を前記少なくとも1つの物理マイクロフォンの主要雑音信号に適用することと、
を行うように構成されている、プロセッサと
を備えた、リモートマイクロフォンシステム。
【請求項2】
前記関連する伝達関数は、それぞれの事前測定された座席場所に特異的なフィルタ係数を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記フィルタ係数は、少なくとも部分的に最小平均二乗(LMS)最適化ルーティングによって判定される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも2つの既知の事前測定された場所から補間された前記伝達関数は、前記主要雑音信号に線形的に依存する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記主要雑音信号は、前記物理マイクロフォンにおける源信号及び耐雑音信号に基づいて生成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記仮想マイクロフォン位置は、前記座席の各側部に1つずつある、2つの仮想マイクロフォン位置を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
車両内での雑音キャンセレーションに対する誤差信号を推定するためのリモートマイクロフォンシステムであって、
車両座席における前記車両内の仮想マイクロフォン位置において誤差信号を生成するように構成された、車室内に配置された少なくとも1つの物理マイクロフォンと、
事前測定された座席場所及び関連する伝達関数のルックアップテーブルを維持するように構成されたデータベースと、
プロセッサであって、前記プロセッサは、
前記車両座席の現在の座席場所を受信することと、
前記事前測定された座席場所の1つが前記現在の座席場所に対応するかどうかを判定することと、
前記事前測定された場所の1つが前記現在の座席場所に対応しないことに応答して、少なくとも2つの既知の事前測定された場所から伝達関数を補間することと、
前記誤差信号を生成するように、前記少なくとも2つの既知の事前測定された場所から補間された前記伝達関数を前記少なくとも1つの物理マイクロフォンの主要雑音信号に適用することと
を行うように構成されている、プロセッサと、
を備えた、リモートマイクロフォンシステム。
【請求項8】
前記関連する伝達関数は、それぞれの事前測定された座席場所に特異的なフィルタ係数を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記フィルタ係数は、少なくとも部分的に最小平均二乗(LMS)最適化ルーティングによって判定される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも2つの既知の事前測定された場所から補間された前記伝達関数は、前記主要雑音信号に線形的に依存する、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記主要雑音信号は、前記物理マイクロフォンにおける源信号及び耐雑音信号に基づいて生成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記仮想マイクロフォン位置は、前記車両座席の各側部に1つずつある、2つの仮想マイクロフォン位置を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
車両内での雑音キャンセレーションに対する、仮想マイクロフォンのための誤差信号を推定するための方法であって、
車両座席の現在の座席場所を受信することと、
前記現在の座席場所が事前測定された座席場所に対応するかどうかを判定することと、
前記現在の座席場所が前記事前測定された座席場所に対応しないことに応答して、少なくとも2つの既知の事前測定された場所から伝達関数を補間することと、
誤差信号を生成するように、前記少なくとも2つの既知の事前測定された場所から補間された前記伝達関数を少なくとも1つの物理マイクロフォンの主要雑音信号に適用することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によって開示がその全体において本明細書に組み込まれる、2018年6月1日に出願された米国仮特許出願第62/679,275号の利益を主張する。
【0002】
本明細書で開示されるのは、リモートマイクロフォン技術のための近接補償に関連する方法及びシステムである。
【背景技術】
【0003】
車両は、車室内の周囲雑音を減退させるアクティブノイズキャンセレーション(ANC)技術を含むことが多い。そのようなANC技術は、様々なマイクロフォンが車室内に配置されることを必要とする場合がある。それらのマイクロフォンは、誤差信号を生成する際にANCシステムを補助することがある。しかしながら、物理マイクロフォンを車室内の特定の位置に存在させることは現実的でないことが多い。それらのケースでは、リモートマイクロフォン技術が使用されることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
車両のためのリモートマイクロフォンシステムは、車両内の仮想マイクロフォン位置において誤差信号を生成するように構成された、車室内に配置された少なくとも1つの物理マイクロフォンと、事前測定された座席場所及び関連する伝達関数のルックアップテーブルを維持するように構成されたデータベースと、プロセッサと、を含んでもよい。プロセッサは、車両内の座席位置を示す座席場所を受信し、誤差信号を生成するよう、事前測定された場所と関連付けられた伝達関数を、少なくとも1つの物理マイクロフォンの主要雑音信号に適用する、ように構成されてもよい。
【0005】
車両内での雑音キャンセレーションに対する誤差信号を推定するリモートマイクロフォンシステムは、車両座席における車両内の仮想マイクロフォン位置において誤差信号を生成するように構成された、車室内に配置された少なくとも1つの物理マイクロフォンと、事前測定された座席場所及び関連する伝達関数のルックアップテーブルを維持するように構成されたデータベースと、プロセッサと、を含んでもよい。プロセッサは、車両座席の座席場所を受信し、誤差信号を生成するよう、座席場所と関連付けられた伝達関数を、少なくとも1つの物理マイクロフォンの主要雑音信号に適用する、ように構成されてもよい。
【0006】
車両内での雑音キャンセレーションに対する、仮想マイクロフォンに対して誤差信号を推定する方法は、車両座席の座席場所を受信することと、座席場所が事前測定された座席場所に対応するかどうかを判定することと、誤差信号を生成するよう、座席場所と関連付けられた伝達関数を、少なくとも1つの物理マイクロフォンの主要雑音信号に適用することと、を含んでもよい。
【0007】
本開示の実施形態は、添付の特許請求の範囲で詳細に指摘されている。しかし、様々な実施形態の他の特徴は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって、より明らかになり、最もよく理解される。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
車両のためのリモートマイクロフォンシステムであって、
前記車両内の仮想マイクロフォン位置において誤差信号を生成するように構成された、車室内に配置された少なくとも1つの物理マイクロフォンと、
事前測定された座席場所及び関連する伝達関数のルックアップテーブルを維持するように構成されたデータベースと、
前記車両内の座席位置を示す座席場所を受信し、
前記誤差信号を生成するよう、前記事前測定された場所と関連付けられた伝達関数を前記少なくとも1つの物理マイクロフォンの主要雑音信号に適用する、ように構成されたプロセッサと、
を備えた、前記リモートマイクロフォンシステム。
(項目2)
前記伝達関数は、前記座席場所に特異的なフィルタ係数を含む、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記フィルタ係数は、少なくとも部分的に最小平均二乗(LMS)最適化ルーティングによって判定される、項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記伝達関数は、前記主要雑音信号に線形的に依存する、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記主要雑音信号は、前記物理マイクロフォンにおける源信号及び耐雑音信号に基づいて生成される、項目1に記載のシステム。
(項目6)
前記仮想マイクロフォン位置は、前記座席の各側部に1つずつある、2つの仮想マイクロフォン位置を含む、項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記プロセッサは更に、前記事前測定された場所の1つが前記座席場所に対応するかどうかを判定するように構成されている、項目1に記載のシステム。
(項目8)
前記事前測定された場所の1つが前記座席場所に対応することに応答して、前記プロセッサは更に、前記対応する事前測定された座席場所と関連付けられた前記伝達関数を適用するように構成されている、項目7に記載のシステム。
(項目9)
前記事前測定された場所の1つが前記座席場所に対応しないことに応答して、前記プロセッサは更に、少なくとも2つの既知の事前測定された場所からの前記伝達関数を補間するように構成されている、項目7に記載のシステム。
(項目10)
車両内での雑音キャンセレーションに対する誤差信号を推定するリモートマイクロフォンシステムであって、
車両座席における前記車両内の仮想マイクロフォン位置において誤差信号を生成するように構成された、車室内に配置された少なくとも1つの物理マイクロフォンと、
事前測定された座席場所及び関連する伝達関数のルックアップテーブルを維持するように構成されたデータベースと、
前記車両座席の座席場所を受信し、
前記誤差信号を生成するよう、前記座席場所と関連付けられた伝達関数を前記少なくとも1つの物理マイクロフォンの主要雑音信号に適用する、ように構成されたプロセッサと、
を備えた、前記リモートマイクロフォンシステム。
(項目11)
前記伝達関数は、前記座席場所に特異的なフィルタ係数を含む、項目10に記載のシステム。
(項目12)
前記フィルタ係数は、少なくとも部分的に最小平均二乗(LMS)最適化ルーティングによって判定される、項目11に記載のシステム。
(項目13)
前記伝達関数は、前記主要雑音信号に線形的に依存する、項目10に記載のシステム。
(項目14)
前記主要雑音信号は、前記物理マイクロフォンにおける源信号及び耐雑音信号に基づいて生成される、項目10に記載のシステム。
(項目15)
前記仮想マイクロフォン位置は、前記座席の各側部に1つずつある、2つの仮想マイクロフォン位置を含む、項目10に記載のシステム。
(項目16)
前記プロセッサは更に、前記事前測定された場所の1つが前記座席場所に対応するかどうかを判定するように構成されている、項目10に記載のシステム。
(項目17)
前記事前測定された場所の1つが前記座席場所に対応することに応答して、前記プロセッサは更に、前記対応する事前測定された座席場所と関連付けられた前記伝達関数を適用するように構成されている、項目16に記載のシステム。
(項目18)
前記事前測定された場所の1つが前記座席場所に対応しないことに応答して、前記プロセッサは更に、少なくとも2つの既知の事前測定された場所からの前記伝達関数を補間するように構成されている、項目16に記載のシステム。
(項目19)
車両内での雑音キャンセレーションに対する、仮想マイクロフォンのための誤差信号を推定する方法であって、
車両座席の座席場所を受信することと、
前記座席場所が事前測定された座席場所に対応するかどうかを判定することと、
誤差信号を生成するよう、前記座席場所と関連付けられた伝達関数を少なくとも1つの物理マイクロフォンの主要雑音信号に適用することと、
を備えた、前記方法。
(項目20)
前記座席場所が前記事前測定された座席場所に対応することに応答して、前記対応する事前測定された座席場所と関連付けられた前記伝達関数を適用することを備えた、項目19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】リモートマイクロフォン技術(RMT)のための例示的な近接補償システムを示す。
図2図1のシステムについての例示的なリモートマイクロフォン技術の図を示す。
図3】RMTに対する伝達関数を近似する例示的な概略図を示す。
図4】伝達関数の使用を示す例示的な概略図を示す。
図5】伝達関数の使用を示す別の例示的な概略図を示す。
図6】伝達関数を判定する例示的な処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
必要に応じて、本実施形態の詳細な実施形態が本明細書において開示されるが、開示される実施形態は、様々な形式及び代替的な形式において具現化することができる本実施形態の例示にすぎないことを理解されたい。図は必ずしも縮尺通りではなく、一部の特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張または最小限に抑えられる場合がある。したがって、本明細書に開示される具体的な構造上の、そして機能上の詳細は、限定的と解釈されるべきではなく、本発明を様々に利用するために単に当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0010】
従来、リモートマイクロフォン技術は、車両内で物理マイクロフォンを取り込み、物理マイクロフォンが存在しない位置において誤差信号を適用している。このリモート位置または仮想的な位置は、乗員の耳となるように目標とされたエリア内にあることが多い。このリモートマイクロフォン技術は、物理的な位置及び仮想的な位置において測定がマイクロフォンにより行われ、それによって、それらの2つの位置の間の関係が識別される予備段階を伴う。それらの2つの位置の間の伝達関数は、主要雑音測定から、または無指向性源を使用した音響伝達関数方法を介してのいずれかで作成される。この伝達関数は、単一の物理マイクロフォンから単一の仮想マイクロフォンへ、または複数の物理マイクロフォンから単一の仮想マイクロフォンへのいずれかで存在することがある。単一の物理マイクロフォンが仮想的な位置において信号を常に近接することができないことが多いので、後者の例が使用されることがある。
【0011】
しかしながら、既存のリモートマイクロフォン技術は、物理マイクロフォンと仮想マイクロフォンとの間の固定された位置を想定している。これは、乗員がその座席を移動させ、または調節するときには当てはまらないことがある。座席のそのような移動があると、乗員の耳の位置も移動し、よって、仮想マイクロフォンの仮想的な位置を不正確にさせる。これは、ANCシステムのキャンセレーション性能及び安定性に影響を与えることがある。
【0012】
本明細書で説明されるのは、乗員の座席場所に基づいて、仮想マイクロフォンの伝達関数を判定するシステムである。特定の座席場所は、事前測定されてもよく、伝達関数と関連付けられてもよい。よって、伝達関数は、現在の座席場所に基づいて判定及び選択されてもよい。これは、座席位置を事前測定された場所のセットと比較することによって行われてもよい。座席位置が事前測定された場所の1つに対応する場合、それから、事前測定された場所と関連付けられた伝達関数が選択される。座席位置が事前測定された場所の1つに対応しない場合、それから、伝達関数は、事前測定された場所の間で補間される。すなわち、座席場所が第1の事前測定された場所と第2の事前測定された場所との間にある場合、それから、伝達関数は、第1の事前測定された場所及び第2の事前測定された場所の各々と関連付けられた伝達関数の補間に基づいて選択される。
【0013】
図1は、リモートマイクロフォン技術(RMT)に対する例示的な近接補償システム100を示す。システム100は、車両102に含まれてもよく、本明細書で説明される方法及び処理を実行するように構成されたプロセッサ105を含んでもよい。プロセッサ105は、コントローラ(図2においてコントローラ105として示される)及びメモリ108と共に、車両102内の音声処理に対して特異的な他の構成要素を含んでもよい。プロセッサ105は、コンピュータプロセッサ、マイクロプロセッサなどのコマンドを処理するクアッドコアプロセッサ、または本明細書で議論される動作を実行することが可能な任意の他のデバイス、一連のデバイス、もしくは他の機構など、1つ以上のコンピューティングデバイスであってもよい。メモリは、命令及びコマンドを記憶してもよい。命令は、ソフトウェア、ファームウェア、コンピュータコード、またはいくつかのそれらの組み合わせの形式であってもよい。メモリは、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、電子メモリ、磁気メモリ、光学メモリ、または任意の他の形式のデータ記憶装置など、1つ以上のデータ記憶装置の形式にあってもよい。一実施例では、メモリは、2GB DDR3と共に、128GBマイクロSDカードなどの他の着脱可能メモリ素子を含んでもよい。
【0014】
メモリ108は、様々な座席位置及び座席場所と共に適用され、それらと関連付けられることになる伝達関数のルックアップテーブルを記憶してもよい。それらの事前測定された伝達関数は、事前測定された場所と関連付けられてもよい。座席場所が事前測定された場所の1つに対応する場合、それから、事前測定された場所と関連付けられた伝達関数
【化1】

が選択される。座席場所が事前測定された場所の1つに対応しない場合、それから、伝達関数
【化2】

は、事前測定された場所の間で補間されてもよい。すなわち、座席場所が第1の事前測定された場所と第2の事前測定された場所との間にある場合、それから、伝達関数
【化3】

は、第1の事前測定された場所及び第2の事前測定された場所の各々と関連付けられた伝達関数
【化4】

の補間に基づいて選択される。
【0015】
プロセッサ105は、少なくとも1つの物理マイクロフォン110と通信していてもよい。図1の例では、物理マイクロフォン110は、複数の物理マイクロフォン110を含んでもよい。システム100は、スピーカ115を含んでもよい。スピーカ115は、車室に音声を提供するよう、車両の全体を通じて配置されてもよい。スピーカ115は、中音域ドライバ、ツイータ、及びウーファを含む様々なドライバを含んでもよい。それらのスピーカ115は、車両の全体を通じて配置されてもよい。システム100は、増幅器120をも含んでもよい。
【0016】
車両102は、様々な車両座席140を含んでもよい。それらの座席140は、乗客及び乗員が典型的には車両の使用の間に座るエリアであってもよい。上記説明されたように、RMT技術は、仮想マイクロフォン位置を含んでもよい。図1は、少なくとも1つの仮想マイクロフォン位置を示す。説明されるように、仮想マイクロフォン位置は、乗員の耳の近くの位置であってもよい。各々の座席140は、それと関連付けられた仮想マイクロフォン位置において少なくとも1つの仮想マイクロフォン130を有してもよい。図1における例では、各々の座席140は、それらと関連付けられた2つの仮想マイクロフォン130を有し、その1つは、座席140のいずれかの側部にある。
【0017】
各々の座席140は、座席場所を検出するように構成された少なくとも1つのセンサ142を含んでもよい。座席位置は、車両102内の座席140の相対的な場所であってもよい。車両座席140は、垂直に、横方向に、軸方向に、水平になどに調節されてもよい。座席位置は、垂直の場所、横方向の場所、軸方向の場所のうちの1つ以上を含んでもよい。1つ以上のセンサ142は、プロセッサ105に座席位置を提供することができる。次に、メモリ108内のルックアップテーブルは、伝達関数
【化5】

を事前測定された座席場所と関連付けるために使用されてもよい。
【0018】
図2は、図1のシステム100についての例示的なリモートマイクロフォン技術の図を示す。システム100は、説明されるように、コントローラ105としても本明細書に記載される、プロセッサ105を含んでもよい。図2において提供される様々な信号及び経路は、
【化6】

を含む。
【0019】
コントローラ105は、二次的経路S(z)に制御信号y(n)を提供してもよい。二次的経路S(z)は、物理マイクロフォン110への耐雑音信号y(n)を生成してもよい。コントローラ105は、仮想マイクロフォン130への推定された二次的(電子音響)経路
【化7】

に制御信号y(n)を提供してもよい。推定された二次的経路は、仮想マイクロフォン130において推定された耐雑音信号
【化8】

を提供してもよい。
【0020】
物理マイクロフォン110は、主要雑音源信号d(n)及び二次的耐雑音信号y(n)を受信してもよく、物理マイクロフォン位置において評価された誤差信号e(n)を出力してもよい。推定された耐雑音信号
【化9】

は、110の物理位置において推定された主要雑音信号
【化10】

を提供するよう、170において誤差信号e(n)から除去または取り去られてもよい。
【0021】
推定された伝達関数
【化11】

は、物理位置110において推定された主要雑音信号
【化12】

に適用されてもよく、仮想マイクロフォン130において推定された主要雑音信号
【化13】

を生成してもよい。この伝達関数
【化14】

は、乗員がそれらの座席140を移動させる場合に、キャンセレーション性能が維持され、安定性が問題とならないように、予備識別段階または物理マイクロフォンと仮想マイクロフォンとの間の記憶された伝達関数
【化15】

の間の補間に基づいて生成及び判定されてもよい。これは、以下で更に詳細に説明される。伝達関数が座席位置に基づいていることを理由に、伝達関数は特に、仮想マイクロフォン130の位置に関連する。
【0022】
コントローラ105はまた、仮想マイクロフォン130への推定された二次的(電子音響)経路に制御信号y(n)を提供する。仮想マイクロフォン130への推定された二次的経路は、仮想的な位置において仮想マイクロフォン130に推定された耐雑音信号を提供してもよい。仮想マイクロフォン130は、仮想的な位置において推定された主要雑音信号を受信してもよく、仮想的な位置において推定された耐雑音信号にそれを追加してもよく、仮想マイクロフォン位置において推定された誤差を提供してもよい。
【0023】
図3は、伝達関数を表す有限インパルス応答(FIR)フィルタの係数を計算するよう、適応フィルタ及び最小平均二乗(LMS)最適化ルーチンを使用して伝達関数を近似する例示的な概略図を示す。この方法は、主要雑音信号または二次的経路のいずれかにも関連してもよい。この例示的な伝達関数では、フィルタ係数は、座席位置が変化するにつれて変化してもよい。
【0024】
加えてまたは代わりに、伝達関数は、
【化16】

によって表される主要雑音信号の相互スペクトル密度(物理信号から仮想信号の)及び自動スペクトル密度(物理信号)の比率として近接されてもよい。
【0025】
上記の例の伝達関数は、主要雑音信号の線形性に依存してもよく、用途依存である。
【0026】
図3を参照して、伝達関数を近似するためのLMSの使用は、システム100が、座席位置に基づいて複数のフィルタ係数を記憶することを可能にする。これは、予備識別段階における複数回の測定を含んでもよい。コントローラ105は、座席位置を複数の事前測定された場所の1つであるとして認識してもよい。コントローラ105は、認識された座席位置に基づいて、伝達関数
【化17】

を取り出してもよい。代わりに、一連の離散伝達関数
【化18】

が測定されてもよく、それから、座席140が事前測定された場所に沿って移動するにつれてその間で補間されてもよい。
【0027】
よって、伝達関数
【化19】

は、座席場所に基づいて判定及び選択されてもよい。これは、座席位置を事前測定された場所と比較することによって行われてもよい。座席位置が事前測定された場所に対応する場合、それから、事前測定された場所と関連付けられた伝達関数
【化20】

が選択される。座席位置が事前測定された場所に対応しない場合、それから、伝達関数
【化21】

は、事前測定された場所の間で補間される。すなわち、座席場所が第1の事前測定された場所と第2の事前測定された場所との間にある場合、伝達関数
【化22】

は、第1の事前測定された場所及び第2の事前測定された場所の各々と関連付けられた伝達関数
【化23】

の補間に基づいて選択される。
【0028】
現在の頭部追跡技術は、より煩雑であり、多くの車両はそのような能力を装備していない。この機構は、特定の頭部追跡デバイス、カメラ、超音波センサなどに対する必要性、及び既存の要素の使用を回避する。
【0029】
図4は、座席場所と共に変化する物理マイクロフォンと仮想マイクロフォンとの間の伝達関数
【化24】

の使用を示す例示的な概略図を示す。図4の例では、2つの物理マイクロフォン110及び1つの仮想マイクロフォン130(図4においては図示せず)が使用されてもよい。図4では、M及びMは、座席場所と共に変化する物理マイクロフォンと仮想マイクロフォン130との間の伝達関数である。
【0030】
図5は、座席場所と共に変化する物理マイクロフォンと仮想マイクロフォンとの間の伝達関数
【化25】

の使用を示す別の例示的な概略図を示す。複数の物理マイクロフォンは、仮想マイクロフォンの予測のために使用されてもよい。推定された二次的経路Sl,m(n)は、仮想マイクロフォン130において推定された耐雑音信号y(n)を提供することができる。物理マイクロフォン110は、主要雑音源信号de’m(n)及び二次的耐雑音信号yv’m(n)を受信してもよく、物理マイクロフォン位置において評価された誤差信号ev’m(n)を出力してもよい。高速フーリエ変換は、誤差信号ev’m(n)に適用されてもよい。他の合計相互スペクトル、高速フーリエ変換、逆高速フーリエ変換、マトリックスなども近接補償において使用されてもよい。
【0031】
推定された伝達関数
【化26】

は、物理位置110において推定された主要雑音信号
【化27】

に適用されてもよく、仮想マイクロフォン130において推定された主要雑音信号
【化28】

を生成してもよい。図6は、伝達関数
【化29】

を判定する例示的な処理600を示す。この処理600は、コントローラ/プロセッサ105によって実行されてもよい。処理600は、ブロック605において開始してもよく、そこでは、コントローラ105は、座席140の1つから現在の座席場所を受信してもよい。
【0032】
ブロック610において、コントローラ105は、現在の座席場所が事前測定された座席場所に対応するかどうかを判定してもよい。そうである場合、処理600は、ブロック615に進む。そうでない場合、処理600は、ブロック620に進む。
【0033】
ブロック615において、コントローラ105は、対応する事前測定された座席場所と関連付けられた伝達関数
【化30】

を選択する。
【0034】
ブロック620において、コントローラ105は、少なくとも2つの既知の事前測定された場所の補間に基づいて、伝達関数
【化31】

を選択する。すなわち、伝達関数は、2つの既知の事前測定された関数に対応する伝達関数の間で伝達関数を選択することによって判定されてもよい。
【0035】
それから、処理600は終了する。
【0036】
本開示の実施形態は、一般に、複数の回路または他の電気装置を提供する。回路及び他の電気デバイスへの全ての言及、並びにそれぞれによって提供される機能は、本明細書に図示及び記載されているものだけを包含することに限定されることを意図していない。開示された様々な回路または他の電気デバイスに特定のラベルを割り当てることができるが、そのようなラベルは、回路及び他の電気デバイスの動作の範囲を限定することを意図していない。このような回路及び他の電気デバイスは、所望される特定のタイプの電気的実装に基づいて、任意の方法で互いに組み合わされてよい及び/または分離されてよい。本明細書で開示されるいずれかの回路または他の電子デバイスは、本明細書で開示される動作(複数可)を実行するよう相互に協働する、いずれかの数のマイクロコントローラ、グラフィックプロセッサユニット(GPU)、集積回路、メモリデバイス(例えば、FLASH(登録商標)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、電気的プログラム可能リードオンリメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、または他の適切なそれらの変形)、及びソフトウェアを含んでもよいことが認識される。更に、電気デバイスの任意の1つまたは複数は、開示された任意の数の機能を実行するようにプログラムされた非一時的コンピュータ可読媒体で実現されるコンピュータプログラムを実行するように構成されてよい。
【0037】
例示的な実施形態が上述されているが、これらの実施形態が本発明のすべての可能な形式を説明することは意図されていない。むしろ、明細書で使用する言葉は限定ではなく説明のための言葉であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多様な変更が成され得ることが理解される。加えて、種々の実現実施形態の特徴は、本発明の別の実施形態を形成するために組み合わされ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6