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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】中間媒体式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
F17C9/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021063427
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022001790
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2020106073
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】東 孝祐
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-051674(JP,A)
【文献】特開2004-190951(JP,A)
【文献】特開2000-227200(JP,A)
【文献】特開2020-008130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状の第1のチャンバと、前記第1のチャンバ内を通過するように配置され熱源媒体が流入する第1の伝熱管と、を有する中間媒体蒸発器と、
前記第1のチャンバよりも上方に配置される中空状の第2のチャンバと、前記第2のチャンバ内を通過するように配置され低温液化ガスが流入する第2の伝熱管と、を有する液化ガス気化器と、
内管と前記内管の径方向外側に配置される外管とを含む多重管構造であり、前記第1のチャンバ内と前記第2のチャンバ内とを相互に連通する連通管と、
を備え、
前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ及び前記連通管による空間内には中間媒体が封入されており、
前記第1のチャンバ内の液状の中間媒体は、前記第1の伝熱管を介して前記熱源媒体に加熱されて気化し、ガス状の中間媒体になり、
前記第2のチャンバ内のガス状の中間媒体は、前記第2の伝熱管を介して前記低温液化ガスに冷やされて凝縮し、液状の中間媒体になり、
前記内管の内側の空間、及び、前記内管と前記外管との間の空間のうちの一方を第1流路とし、他方を第2流路としたときに、
前記第1流路は、
前記第2のチャンバ内における前記液状の中間媒体の液面よりも上側の位置で開口する第1上側開口部と、
前記第1のチャンバ内における前記液状の中間媒体の液面よりも上側の位置で開口する第1下側開口部と、
を有し、ガス状の中間媒体が流れるガス流路として機能し、
前記第2流路は、
前記第2のチャンバ内における前記液状の中間媒体の液面よりも下側の位置で開口する第2上側開口部と、
前記第1のチャンバ内で開口する第2下側開口部と、
を有し、少なくとも一部において前記液状の中間媒体で満たされた状態で、前記液状の中間媒体が流れる液流路として機能する、
中間媒体式熱交換器。
【請求項2】
前記第2流路において、前記第1のチャンバ内における前記液状の中間媒体の液面よりも上側の位置に設けられ、前記液状の中間媒体を溜める液溜め部を更に備える、
請求項1に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項3】
前記液溜め部は、
前記第2流路の前記第2下側開口部から流出した前記液状の中間媒体を溜める一方で、溜まった前記液状の中間媒体を、前記第2下側開口部よりも上側に位置する上縁部から溢れさせるように構成されている、
請求項2に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項4】
前記第2流路は、前記第2上側開口部から下方に延びる上側流路部と、前記第2下側開口部から上方に延び且つ上端部が前記上側流路部の下端部よりも上方に位置する下側流路部と、を更に有し、
前記液溜め部は、前記上側流路部の前記下端部から流出した前記液状の中間媒体を溜める一方で、溜まった前記液状の中間媒体を、前記下側流路部の前記上端部に流入させるように構成されている、
請求項2に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項5】
前記液溜め部は、前記液溜め部を通過する前記液状の中間媒体の下向きの流れを上向きの流れに曲げる曲面を含んだ形状に形成されている、
請求項3又は請求項4に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項6】
前記第1流路は前記連通管の前記内管の内側の空間として形成され、前記第2流路は前記内管と前記外管との間の空間として形成され、
前記連通管は、前記液溜め部から流出した前記液状の中間媒体が、前記第1下側開口部に入ろうとする前記ガス状の中間媒体の流れに乗って前記第1下側開口部を通じて前記第1流路内に流入することを抑止する液流入抑止部材を更に有する、
請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項7】
前記液流入抑止部材は、前記液溜め部から下方に延び、前記第1流路の前記第1下側開口部よりも下方に位置する下端部を有する、
請求項6に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項8】
前記液流入抑止部材は、前記第1流路の前記第1下側開口部から径方向に離れるように、鉛直方向に対して傾斜している、
請求項6又は請求項7に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項9】
前記液流入抑止部材は、前記第1流路の前記第1下側開口部を取り囲むように、前記第1流路の周方向に連続的に又は不連続的に形成されている、
請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項10】
前記第2流路の前記第2下側開口部は、前記第1のチャンバ内における前記液状の中間媒体の液面よりも下側の位置に配置されることにより、前記液状の中間媒体に浸かっている、
請求項1に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項11】
前記第2流路の前記第2下側開口部は、前記第1のチャンバ内において、前記第1の伝熱管の直上から側方にずれた位置に配置されている、
請求項10に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項12】
前記中間媒体蒸発器は、前記第1のチャンバ内の前記ガス状の中間媒体が前記第2下側開口部を通じて前記第2流路内に流入することを抑止するガス流入抑止部材を更に有する、
請求項10又は請求項11に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項13】
前記第1流路の水力直径は、前記第2流路の水力直径よりも大きい、
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項14】
前記第1流路の前記第1上側開口部及び前記第1下側開口部は、開口径を大きくするように逆テーパー状に形成されている、
請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項15】
前記第2流路の前記第2上側開口部は、開口径を大きくするように逆テーパー状に形成されている、
請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項16】
内管と前記内管の径方向外側に配置される外管とを含む多重管構造であり、前記第1のチャンバ内と前記第2のチャンバ内とを相互に連通し、前記内管の内側の空間、及び、前記内管と前記外管との間の空間のうちの一方を前記第1流路とし、他方を前記第2流路とする第2の連通管を更に備える、
請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載の中間媒体式熱交換器。
【請求項17】
前記内管と前記外管の少なくとも一方には、断熱材が設けられている、
請求項1ないし請求項16のいずれか一項に記載の中間媒体式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間媒体式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、液化天然ガス(LNG;Liquefied Natural Gas)等の低温液化ガスを気化させる装置として、中間媒体を循環させながら熱源媒体からの熱を、中間媒体を介して低温液化ガスに伝熱する中間媒体式熱交換器が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている中間媒体式熱交換器は、図19に示されているように、中間媒体のケーシングであるチャンバ80と伝熱管88、93とにより構成されており、中間媒体蒸発部81とLNG気化部82とを備えている。
【0004】
具体的には、中間媒体蒸発部81は、チャンバ80の下部80bと、下部80bに通されている直管状の伝熱管88と、を備えている。LNG気化部82は、チャンバ80の上部80tと、上部80tに通されているU字状の伝熱管93と、を備えている。下部80bと上部80tとにより、1つのチャンバ80が形成されている。チャンバ80の中には、中間媒体が封入されている。伝熱管88には熱源媒体である海水が流れる。伝熱管93にはLNGが流れる。チャンバ80内に溜まっている中間媒体は、伝熱管88を介して海水によって加熱されてガス状の中間媒体GMとなる。このガス状の中間媒体GMは、伝熱管93を介してLNGによって冷やされて液状の中間媒体LMとなる。これにより、中間媒体は、チャンバ80の中を気体、液体間で相転移しながら循環する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-120125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記中間媒体式熱交換器では、中間媒体のケーシングである1つのチャンバ80と、その上部80tに通される伝熱管88と、下部80bに通される伝熱管93と、により構成されている。このため、前記中間媒体式熱交換器は、汎用のシェルアンドチューブ型の熱交換器により製造することができず、専用に設計されて製造する必要があるため、コストが増大する虞があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、コストを抑制することが可能な中間媒体式熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、本発明者らは、LNG気化部(以下「液化ガス気化器」という。)と、中間媒体蒸発部(以下「中間媒体蒸発器」という。)と、について、それぞれ互いに異なる2つのシェルアンドチューブ型の熱交換器を用いることとした。そして、前記2つのシェルアンドチューブ型の熱交換器(液化ガス気化器及び中間媒体蒸発器)を、連通管により相互に連通することとした。具体的には、次のとおりである。
【0009】
本発明の一局面に係る中間媒体式熱交換器は、中空状の第1のチャンバと、前記第1のチャンバ内を通過するように配置され熱源媒体が流入する第1の伝熱管と、を有する中間媒体蒸発器と、前記第1のチャンバよりも上方に配置される中空状の第2のチャンバと、前記第2のチャンバ内を通過するように配置され低温液化ガスが流入する第2の伝熱管と、を有する液化ガス気化器と、内管と前記内管の径方向外側に配置される外管とを含む多重管構造であり、前記第1のチャンバ内と前記第2のチャンバ内とを相互に連通する連通管と、を備える。前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ及び前記連通管による空間内には中間媒体が封入されている。前記第1のチャンバ内の液状の中間媒体は、前記第1の伝熱管を介して前記熱源媒体に加熱されて気化し、ガス状の中間媒体になり、前記第2のチャンバ内のガス状の中間媒体は、前記第2の伝熱管を介して前記低温液化ガスに冷やされて凝縮し、液状の中間媒体になる。そして、前記内管の内側の空間、及び、前記内管と前記外管との間の空間のうちの一方を第1流路とし、他方を第2流路としたときに、前記第1流路は、前記第2のチャンバ内における前記液状の中間媒体の液面よりも上側の位置で開口する第1上側開口部と、前記第1のチャンバ内における前記液状の中間媒体の液面よりも上側の位置で開口する第1下側開口部と、を有し、ガス状の中間媒体が流れるガス流路として機能する。前記第2流路は、前記第2のチャンバ内における前記液状の中間媒体の液面よりも下側の位置で開口する第2上側開口部と、前記第1のチャンバ内で開口する第2下側開口部と、を有し、少なくとも一部において前記液状の中間媒体で満たされた状態で、前記液状の中間媒体が流れる液流路として機能する。
【0010】
中間媒体式熱交換器では、第1のチャンバ内に溜まった液状の中間媒体は、第1のチャンバ内で第1の伝熱管を介して熱源媒体に加熱されて気化し、ガス状の中間媒体になる。ガス状の中間媒体は、連通管の内のガス流路として機能する第1流路を通じて上昇し、液化ガス気化器の第2のチャンバ内に流入する。そして、第2のチャンバ内において、ガス状の中間媒体は、第2の伝熱管を介して、低温液化ガスを加熱することによって、低温液化ガスを気化させる。このとき、ガス状の中間媒体は、低温液化ガスに冷やされて凝縮し、再び液状の中間媒体になる。そして、第2のチャンバ内に溜まった液状の中間媒体は、連通管の内の液流路として機能する第2流路を通じて、第1のチャンバ内に流入する。この一連の動作を繰り返すことによって、中間媒体式熱交換器では、中間媒体の循環を通じて、熱源媒体から低温液化ガスに熱伝達がなされる。
【0011】
さらに、中間媒体式熱交換器では、前記中間媒体蒸発器が前記第1のチャンバを有し、前記液化ガス気化器が前記第2のチャンバを有しており、前記第1のチャンバ内と前記第2のチャンバ内とが連通管で相互に連通されているので、専用に設計されて製造することを必要とせず、汎用の熱交換器によって構成することができる。このため、コストを抑制することができる。
【0012】
さらに、中間媒体式熱交換器では、多重管構造の連通管で液流路とガス流路とを構成しているので、互いに異なる位置に設けられる複数の単管構造の連通管でそれぞれ液流路とガス流路とを構成する場合に比べて、連通管の本数を減らすことができる。
【0013】
また、中間媒体式熱交換器では、第2流路が少なくとも一部において前記液状の中間媒体で満たされているので、第2流路の中にガス状の中間媒体が流入したとしても、第2流路の中で液状の中間媒体が流れやすい状態が維持され、第2流路は液流路として機能することができる。
【0014】
中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記中間媒体式熱交換器は、前記第2流路において、前記第1のチャンバ内における前記液状の中間媒体の液面よりも上側の位置に設けられ、前記液状の中間媒体を溜める液溜め部を更に備える。
【0015】
この態様に係る中間媒体式熱交換器では、第2流路の液溜め部が液状の中間媒体で満たされるため、第1のチャンバ内における液状の中間媒体の液面よりも下側の位置にまで第2流路を延ばす必要がない。
【0016】
中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記液溜め部は、前記第2流路の前記第2下側開口部から流出した前記液状の中間媒体を溜める一方で、溜まった前記液状の中間媒体を、前記第2下側開口部よりも上側に位置する上縁部から溢れさせるように構成されている。
【0017】
この態様に係る中間媒体式熱交換器では、液溜め部において、液状の中間媒体が一定量溜まった状態が維持される一方で、第2下側開口部は液溜め部の上縁部よりも下方に位置している。このため、第1のチャンバ内のガス状の中間媒体は、液溜め部の上縁部から第2下側開口部に向かうことができない。したがって、第2流路は、液溜め部によって液封されている状態となる。
【0018】
さらに、この態様に係る中間媒体式熱交換器では、多重管構造の連通管に液溜め部を簡易に設けることができ、コストを抑制することができる。
【0019】
中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記第2流路は、前記第2上側開口部から下方に延びる上側流路部と、前記第2下側開口部から上方に延び且つ上端部が前記上側流路部の下端部よりも上方に位置する下側流路部と、を更に有し、前記液溜め部は、前記上側流路部の前記下端部から流出した前記液状の中間媒体を溜める一方で、溜まった前記液状の中間媒体を、前記下側流路部の前記上端部に流入させるように構成されている。
【0020】
この態様に係る中間媒体式熱交換器では、第2のチャンバ内で凝縮した液状の中間媒体は、第2流路の上側流路部の下端部から液溜め部に流入し、液溜め部から下側流路部の上端部に流入して、第1のチャンバに流れる。このとき、液溜め部において、下側流路部の上端部と上側流路部の下端部との間で、液状の中間媒体が一定量溜まった状態が維持される。そして、上側流路部の下端部は、下側流路部の上端部よりも下方に位置しているので、第1のチャンバ内で気化したガス状の中間媒体が下側流路部を上昇したとしても、ガス状の中間媒体は、上側流路部の下端部に向かうことができない。したがって、第2流路の上側流路部は、液溜め部によって液封されている状態となる。
【0021】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記液溜め部は、前記液溜め部を通過する前記液状の中間媒体の下向きの流れを上向きの流れに曲げる曲面を含んだ形状に形成されている。
【0022】
この態様に係る中間媒体式熱交換器では、液溜め部が前記曲面を含んだ形状に形成されているため、液溜め部を通過する液状の中間媒体が曲線状に曲がるように向きを変える。これにより、液溜め部を通過する液状の中間媒体の流動抵抗が低下し、液溜め部による圧力損失が抑えられる。
【0023】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記第1流路は前記連通管の前記内管の内側の空間として形成され、前記第2流路は前記内管と前記外管との間の空間として形成され、前記連通管は、前記液溜め部から流出した前記液状の中間媒体が、前記第1下側開口部に入ろうとする前記ガス状の中間媒体の流れに乗って前記第1下側開口部を通じて前記第1流路内に流入することを抑止する液流入抑止部材を更に有する。
【0024】
この態様に係る前記中間媒体式熱交換器では、第2流路が第1流路の径方向外側に位置している。このため、仮に、液流入抑止部材が設けられていない場合、液溜め部から流出した液状の中間媒体は、第1下側開口部に入ろうとするガス状の中間媒体の流れに乗って第1下側開口部を通じて第1流路内に流入しようとする。このため、ガス流路として機能する第1流路において、液状の中間媒体がガス状の中間媒体の流れの障害となるおそれが生ずる。ガス状の中間媒体の流れが障害されると、中間媒体式熱交換器全体での中間媒体の循環量が低下し、中間媒体式熱交換器の効率が低下することとなる。これに対し、この態様に係る前記中間媒体式熱交換器では、液流入抑止部材によって、液状の中間媒体が第1下側開口部を通じて前記第1流路内に流入することが抑止される。したがって、この態様に係る前記中間媒体式熱交換器では、液流入抑止部材によって、中間媒体式熱交換器の効率が低下することが抑制される。
【0025】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記液流入抑止部材は、前記液溜め部から下方に延び、前記第1流路の前記第1下側開口部よりも下方に位置する下端部を有する。
【0026】
この態様に係る前記中間媒体式熱交換器では、前記液溜め部から下方に延びる液流入抑止部材の下端部が第1流路の第1下側開口部よりも下方に位置する。このため、液溜め部から流出する液状の中間媒体が、第1下側開口部に入ろうとするガス状の中間媒体の流れに乗って第1下側開口部を通じて第1流路内に流入することがより効果的に抑止される。
【0027】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記液流入抑止部材は、前記第1流路の前記第1下側開口部から径方向に離れるように、鉛直方向に対して傾斜している。
【0028】
この態様に係る前記中間媒体式熱交換器では、液流入抑止部材の下端部と第1下側開口部との間の距離が大きくなり、液溜め部から流出する液状の中間媒体が第1下側開口部を通じて第1流路内に流入することがより効果的に抑止される。
【0029】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記液流入抑止部材は、前記第1流路の前記第1下側開口部を取り囲むように、前記第1流路の周方向に連続的に又は不連続的に形成されている。
【0030】
この態様に係る前記中間媒体式熱交換器では、液流入抑止部材が第1下側開口部を第1流路の周方向に取り囲むことにより、液溜め部の周方向の任意の位置から流出する液状の中間媒体が第1下側開口部を通じて第1流路内に流入することが抑止される。また、この態様において、液流入抑止部材が不連続的に形成されている場合には、液流入抑止部材が液状の中間媒体の流入を抑止しながらガス状の中間媒体の流入を抑止しない状態が可能となる。
【0031】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記第2流路の前記第2下側開口部は、前記第1のチャンバ内における前記液状の中間媒体の液面よりも下側の位置に配置されることにより、前記液状の中間媒体に浸かっている。
【0032】
この態様に係る中間媒体式熱交換器では、液流路として機能する第2流路の下端部である第2下側開口部が第1のチャンバ内に溜まった液状の中間媒体に浸かっているので、第2流路の全体が液状の中間媒体で満たされた状態で運転することができる。このため、第2流路の中にガス状の中間媒体が流入したとしても、第2流路の中で液状の中間媒体が流れやすい状態が維持され、第2流路は液流路として機能し続けることができる。
【0033】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記第2流路の前記第2下側開口部は、前記第1のチャンバ内において、前記第1の伝熱管の直上から側方にずれた位置に配置されている。
【0034】
第1のチャンバ内における液状の中間媒体に浸かっている第2流路の第2下側開口部が、第1の伝熱管の直上に配置されていると、第2下側開口部を通じて第2流路内に第1の伝熱管から発生するガス状の中間媒体の流入を生じさせるおそれがある。しかし、この態様に係る中間媒体式熱交換器では、第2下側開口部が第1のチャンバ内において第1の伝熱管の直上から側方にずれた位置に配置されているため、第2下側開口部から第2流路内にガス状の中間媒体が流入することが抑制される。
【0035】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記中間媒体蒸発器は、前記第1のチャンバ内の前記ガス状の中間媒体が前記第2下側開口部を通じて前記第2流路内に流入することを抑止するガス流入抑止部材を更に有する。
【0036】
この態様に係る中間媒体式熱交換器では、中間媒体蒸発器の第1のチャンバ内で発生したガス状の中間媒体が、液中を浮上したとしても、第2下側開口部から第2流路内に流入することが抑止される。
【0037】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記第1流路の水力直径は、前記第2流路の水力直径よりも大きい。
【0038】
この態様に係る前記中間媒体式熱交換器では、ガス状の中間媒体が流れる第1流路による圧力損失が抑えられる。
【0039】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記第1流路の前記第1上側開口部及び前記第1下側開口部は、開口径を大きくするように逆テーパー状に形成されている。
【0040】
この態様に係る前記中間媒体式熱交換器では、ガス状の中間媒体が流れる第1流路による圧力損失が抑えられる。
【0041】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記第2流路の前記第2上側開口部は、開口径を大きくするように逆テーパー状に形成されている。
【0042】
この態様に係る前記中間媒体式熱交換器では、液状の中間媒体が流れる第2流路による圧力損失が抑えられる。
【0043】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記中間媒体式熱交換器は、第2の連通管を更に備える。第2の連通管は、内管と前記内管の径方向外側に配置される外管とを含む多重管構造であり、前記第1のチャンバ内と前記第2のチャンバ内とを相互に連通し、前記内管の内側の空間、及び、前記内管と前記外管との間の空間のうちの一方を前記第1流路とし、他方を前記第2流路とする。
【0044】
この態様に係る前記中間媒体式熱交換器では、複数の連通管を備えるため、中間媒体蒸発器と液化ガス気化器との間で循環する中間媒体の循環量を増大させることができ、中間媒体式熱交換器の効率を向上させることができる。
【0045】
前記中間媒体式熱交換器の好ましい態様として、前記内管と前記外管の少なくとも一方には、断熱材が設けられている。
【0046】
この態様に係る前記中間媒体式熱交換器では、内管に断熱材が設けられている場合には、内管と外管の間の熱交換による影響を抑制し、外管に断熱材が設けられている場合には、外管を流れる中間媒体と大気との間の熱交換による影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係る中間媒体式熱交換器では、コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の第1実施形態に係る中間媒体式熱交換器を示す正面断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る中間媒体式熱交換器を示す側面断面図であり、図1のII-II線断面図である。
図3】本発明の第1実施形態の第1変形例を示す中間媒体式熱交換器の側面断面図である。
図4】本発明の第1実施形態の第2変形例を示す中間媒体式熱交換器の側面断面図である。
図5】本発明の第1実施形態の第3変形例を示す中間媒体式熱交換器の側面断面図である。
図6】本発明の第1実施形態の第4変形例を示す中間媒体式熱交換器の側面断面図である。
図7】本発明の第1実施形態の第5変形例を示す中間媒体式熱交換器の側面断面図である。
図8】本発明の第1実施形態の第6変形例を示す中間媒体式熱交換器の側面断面図である。
図9】本発明の第1実施形態の第7変形例を示す中間媒体式熱交換器の正面断面図である。
図10】本発明の第1実施形態の第8変形例を示す中間媒体式熱交換器の正面断面図である。
図11図10の領域XIを拡大して示した図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る中間媒体式熱交換器を示す側面断面図である。
図13】本発明の第2実施形態の第1変形例を示す中間媒体式熱交換器の側面断面図である。
図14】本発明の第2実施形態の第2変形例を示す中間媒体式熱交換器の側面断面図である。
図15】本発明の第2実施形態の第3変形例を示す中間媒体式熱交換器の側面断面図である。
図16】本発明の第2実施形態の第4変形例を示す中間媒体式熱交換器の側面断面図である。
図17】本発明の第2実施形態の第5変形例を示す中間媒体式熱交換器の側面断面図である。
図18】本発明の第2実施形態の第6変形例を示す中間媒体式熱交換器の側面断面図である。
図19】従来の中間媒体式熱交換器を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、実施形態に係る中間媒体式熱交換器について、説明する。また、以下の説明では、連通管について、図13、図15に示す第2実施形態の第1変形例、第3変形例を除き、径方向に対称な形状であることを前提として、説明を行っている。
【0050】
(第1実施形態)
中間媒体式熱交換器は、熱源媒体と低温液化ガスとの間で中間媒体を介して熱交換させる熱交換器である。中間媒体式熱交換器は、中間媒体を循環させながら熱源媒体の熱を、中間媒体を介して液化天然ガス(LNG)に伝熱し、LNGを気化させて天然ガス(NG)を生成する。なお、中間媒体式熱交換器は、低温液化ガスとしてLNGを気化させる構成に限られず、例えばエチレン、液化酸素、液化窒素等を気化させるものであってもよい。また、熱源媒体は、海水、工業用水等である。
【0051】
図1、2に示すように、中間媒体式熱交換器1は、中間媒体蒸発器E1と、液化ガス気化器E2と、連通管30と、液溜め部40と、を備える。中間媒体式熱交換器1は、中間媒体蒸発器E1、液化ガス気化器E2、及び連通管30により形成される閉じられた空間を有している。そして、中間媒体式熱交換器1の空間内には、中間媒体LM、GMが封入されている。
【0052】
中間媒体蒸発器E1は、シェルアンドチューブ型の熱交換器によって構成されている。すなわち、中間媒体蒸発器E1は、長手方向を水平方向とする中空状のチャンバ(第1のチャンバ)10cと、第1のチャンバ10c内を通過するように配置された第1の伝熱管10dと、を有する。中間媒体蒸発器E1では、第1の伝熱管10d内の熱源媒体と第1のチャンバ10c内の液状の中間媒体LMとの間で熱交換が行われ、熱源媒体からの熱によって液状の中間媒体LMが蒸発し、ガス状の中間媒体GMが生成される。
【0053】
第1の伝熱管10dは、図1に示すように、直管形状を有し、第1のチャンバ10c内の下側(底側)を通過するように配置されている。第1の伝熱管10dは、第1のチャンバ10cをその長手方向に貫通する。そして、第1の伝熱管10dにおいて、熱源媒体が図1の左側から流入し図1の右側へ(すなわち、伝熱管10dにおける長手方向の一方側から他方側へ)流出している。図2に示すように、第1の伝熱管10dは、複数本用意されている。
【0054】
第1のチャンバ10c内には、中間媒体式熱交換器1の稼働状態において、図1及び図2に示すように、液状の中間媒体LMが溜まっている。第1の伝熱管10dは、第1のチャンバ10c内に溜まった液状の中間媒体LMに浸かっている。
【0055】
液化ガス気化器E2は、シェルアンドチューブ型の熱交換器によって構成されている。すなわち、液化ガス気化器E2は、第1のチャンバ10cよりも上方に配置され長手方向を水平方向とする中空状のチャンバ(第2のチャンバ)20cと、第2のチャンバ20c内を通過するように配置された第2の伝熱管20dと、を有する。液化ガス気化器E2では、第2のチャンバ20c内のガス状の中間媒体GMと第2の伝熱管20d内の低温液化ガスとの間で熱交換が行われ、中間媒体GMの熱によって低温液化ガスが気化する。この際、ガス状の中間媒体GMが低温液化ガスに冷やされることにより、液状の中間媒体LMが生成される。
【0056】
第2の伝熱管20dは、図1に示すように、U字形状を有し、第2のチャンバ20cの底部との間に間隔をあけて、第2のチャンバ20c内を通過するように配置されている。具体的には、第2の伝熱管20dは、その一端が第2のチャンバ20cの長手方向一方側壁部に接続され、第2のチャンバ20cの長手方向他方側壁部の近傍にまで延びている。そして、第2の伝熱管20dは、長手方向他方側壁部の近傍で屈曲するように折り返し、その他端が第2のチャンバ20cの長手方向一方側壁部に接続されている。図2に示すように、第2の伝熱管20dは、複数本用意されている。なお、第2の伝熱管20dは、U字形状を有しているものに限定されず、直管状のものであってもよい。なお、本明細書において、「長手方向一方側」とは、図1の左側を意味するものとし、「長手方向他方側」とは、図1の右側を意味するものとする。
【0057】
第2のチャンバ20c内には、中間媒体式熱交換器1の稼働状態において、図1及び図2に示すように、ガス状の中間媒体GMと液状の中間媒体LMとが溜まっている。第2の伝熱管20dは、第2のチャンバ20c内に溜まった液状の中間媒体LMよりも上方に離れて配置されている。
【0058】
連通管30は、図2に示すように、内管31と、内管31の径方向外側に配置される外管32と、を含む二重管構造の管である。連通管30は、内管31及び外管32のそれぞれにより、第1のチャンバ10c内と第2のチャンバ20c内とを相互に連通している。
【0059】
外管32の上端は、第2のチャンバ20cの下面を形成する底面部に、例えば溶接によって接続されている。外管32の上端は、第2のチャンバ20c内に溜まる液状の中間媒体LMの中で開口している。外管32の途中部は、第1のチャンバ10cの上面を形成する天面部に、例えば溶接によって接続されている。そして、外管32は、第1のチャンバ10cの上面側の天面部を貫通している。すなわち、外管32の下端は、第1のチャンバ10c内に進入している態様となっている。外管32の下端は、第1のチャンバ10c内であって、第1のチャンバ10c内に溜まる液状の中間媒体LMの液面よりも上側の位置で開口している。
【0060】
内管31は、外管32の内側において、第1のチャンバ10c内の空間から第2のチャンバ20c内の空間にまで延びるように配置されている。そして、内管31の長さは、外管32の長さよりも長くなるように設定されている。内管31の上端は、外管32の上端よりも高く、かつ、第2のチャンバ20cに溜まる液状の中間媒体LMの液面よりも高くなるように設定されている。内管31の上端は、第2のチャンバ20c内のガス状の中間媒体GMの中で開口している。内管31の下端は、外管32の下端よりも低く、かつ、第1のチャンバ10c内に溜まる液状の中間媒体LMの液面よりも高くなるように設定されている。内管31の下端は、第1のチャンバ10c内のガス状の中間媒体GMの中で開口している。
【0061】
そして、連通管30は、内管31の内側と、内管31と外管32との間に、それぞれ空間を形成している。本第1実施形態において、内管31の内側の空間を第1流路F1とし、内管31と外管32との間の空間を第2流路F2とする。
【0062】
第1流路F1は、内管31の上端によって形成される開口部である第1上側開口部F1bと、内管31の下端によって形成される開口部である第1下側開口部F1aと、を有する。第1上側開口部F1bは、第2のチャンバ20c内に溜まる液状の中間媒体LMの上側に位置している。第1下側開口部F1aは、後述する第2下側開口部F2aよりも下側の位置であって、第2下側開口部F2aの高さ位置と第1のチャンバ10c内に溜まる液状の中間媒体LMの液面との間の位置に位置している。
【0063】
第2流路F2は、外管32の上端と内管31とによって形成される開口部である環状の第2上側開口部F2bと、外管32の下端と内管31とによって形成される開口部である環状の第2下側開口部F2aと、を有する。第2上側開口部F2bは、第1上側開口部F1bよりも下側の位置において、第2のチャンバ20c内に溜まる液状の中間媒体LMに開口している。第2下側開口部F2aは、外管32が第1のチャンバ10cに接続する高さ位置と第1のチャンバ10c内に溜まる液状の中間媒体LMの液面との間の位置に開口している。
【0064】
第2のチャンバ20c内の液状の中間媒体LMは、第2上側開口部F2bを通じて第2流路F2内に流入し、第2流路F2内の液状の中間媒体LMは、第2下側開口部F2aを通じて第1のチャンバ10c内に流入する。すなわち、第2流路F2は、液状の中間媒体LMが流れる液流路として機能する。
【0065】
一方、第1のチャンバ10c内のガス状の中間媒体GMは、第1下側開口部F1aを通じて第1流路F1内に流入し、第1流路F1内のガス状の中間媒体GMは、第1上側開口部F1bを通じて第2のチャンバ20c内に流入する。すなわち、第1流路F1は、ガス状の中間媒体GMが流れるガス流路として機能する。
【0066】
液溜め部40は、液状の中間媒体LMを溜める部分であり、第1のチャンバ10c内において、連通管30における第1流路F1(内管31)の径方向外側かつ第2流路F2の第2下側開口部F2aの下側(外管32の下端の下側)かつ第1のチャンバ10c内における液状の中間媒体LMの液面よりも上側の位置に設けられる。
【0067】
液溜め部40は、下向きに凸の形状に形成されている。液溜め部40は、第2流路F2の第2下側開口部F2aの下側において、内管31の管壁の外側面から外管32の管壁よりも径方向外側の位置にまで径方向に延びる底面部と、底面部の外側端縁から第2下側開口部F2aよりも高さ方向の上側の位置にまで上方に延びる縦壁部と、を有する。そして、縦壁部の上縁部が、液溜め部40の上縁部42をなす。つまり、液溜め部40は、第2流路F2の第2下側開口部F2aから流出した液状の中間媒体LMを底面から上縁部42の高さ位置まで溜める一方で、溜まった液状の中間媒体LMを、第2下側開口部F2aよりも上側に位置する液溜め部40の上縁部42から溢れさせるように構成されている。
【0068】
第2下側開口部F2aは、液溜め部40に溜められた液状の中間媒体LMに浸かる。これにより、第2流路F2は、液状の中間媒体LMで満たされた状態となる。
【0069】
次に、第1実施形態に係る中間媒体式熱交換器1の運転動作による作用効果を説明する。
【0070】
中間媒体式熱交換器1では、第1のチャンバ10c内に溜まった液状の中間媒体LMは、第1の伝熱管10dを介して熱源媒体によって加熱されて気化し、ガス状の中間媒体GMになる。ガス状の中間媒体GMは、一旦第1のチャンバ10c内の上側に溜まった後、連通管30の内管31の内側の空間(第1流路F1)を通じて上昇し、液化ガス気化器E2の第2のチャンバ20c内に流入する。そして、第2のチャンバ20c内において、ガス状の中間媒体GMは、第2の伝熱管20dを介して、低温液化ガスを加熱することによって、低温液化ガスを気化させる。このとき、ガス状の中間媒体GMは、低温液化ガスに冷やされて凝縮し、再び液状の中間媒体LMになる。そして、第2のチャンバ20c内に一旦溜まった液状の中間媒体LMは、連通管30のうち内管31と外管32との間の空間(第2流路F2)を通じて、第1のチャンバ10c内の液溜め部40に流入する。液溜め部40は、液状の中間媒体LMが一定量溜まった状態を維持しながら、液溜め部40の上縁部42から液状の中間媒体LMを溢れさせる。溢れた液状の中間媒体LMは、再び第1のチャンバ10c内に溜まる。この一連の動作を繰り返すことによって、中間媒体式熱交換器1では、中間媒体の循環を通じて、熱源媒体から低温液化ガスに熱伝達がされる。
【0071】
以上説明したように、第1実施形態に係る中間媒体式熱交換器1では、中間媒体蒸発器E1が第1のチャンバ10cを有し、液化ガス気化器E2が第2のチャンバ20cを有しており、第1のチャンバ10c内と第2のチャンバ20c内とが連通管30で相互に連通されている。したがって、中間媒体式熱交換器1は、専用に設計されることを必要とせず、汎用の熱交換器によって構成することができる。このため、コストを抑制することができる。
【0072】
さらに、第1実施形態に係る中間媒体式熱交換器1では、二重管構造の連通管30で液流路とガス流路とを構成しているので、互いに異なる位置に設けられる複数の単管構造の連通管でそれぞれ液流路とガス流路とを構成する場合に比べて、連通管の本数を減らすことができる。また、これにより、連通管30が第1のチャンバ10c及び第2のチャンバ20cにそれぞれ溶接で接続されている場合において、連通管30のそれぞれの接続箇所からガス状の中間媒体GMが漏出する可能性を低減することができる。
【0073】
また、第1実施形態に係る中間媒体式熱交換器1では、液溜め部40に液状の中間媒体LMが溜められることにより第2流路F2に液状の中間媒体LMが満たされるので、第2流路F2の中で液状の中間媒体LMが流れやすい状態が維持される。
【0074】
また、第1実施形態に係る中間媒体式熱交換器1では、第2流路F2の液溜め部40が液状の中間媒体LMで満たされるため、第1のチャンバ10c内における液状の中間媒体LMの液面よりも下側の位置にまで第2流路F2を延ばす必要がない。
【0075】
また、第1実施形態に係る中間媒体式熱交換器1では、液溜め部40において、液状の中間媒体LMが一定量溜まった状態が維持される一方で、第2下側開口部F2aは液溜め部40の上縁部42よりも下方に位置している。このため、第1のチャンバ10c内のガス状の中間媒体GMは、液溜め部40の上縁部42から第2下側開口部F2aに向かうことができない。したがって、第2流路F2は、液溜め部40によって液封されている状態となる。
【0076】
さらに、第1実施形態に係る中間媒体式熱交換器1では、多重管構造の連通管30に液溜め部40を簡易に設けることができ、コストを抑制することができる。
【0077】
なお、液溜め部40、第1流路F1の第1下側開口部F1a及び第1上側開口部F1b並びに第2流路F2の第2上側開口部F2bは、図1及び図2の形態に限定されない。例えば、図3に示す、第1変形例のように、液溜め部40は、液溜め部40を通過する液状の中間媒体LMの下向きの流れを上向きの流れに曲げる曲面を含んだ形状に形成されていてもよい。より具体的には、液溜め部40の底面部は、第2流路F2の第2下側開口部F2aの下側において、下向きに突出するように湾曲していてもよい。
【0078】
また、第1流路F1の第1下側開口部F1a及び第1上側開口部F1bは、それぞれ開口径を大きくするように、先太り形状(逆テーパー状)に形成されていてもよい。
【0079】
さらに、第2流路F2の第2上側開口部F2bは、開口径を大きくするように、先太り形状(逆テーパー状)に形成されていてもよい。
【0080】
第1の変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、液溜め部40が曲面を含んだ形状に形成されているため、液溜め部40を通過する液状の中間媒体LMが曲線状に曲がるように向きを変える。これにより、液溜め部40を通過する液状の中間媒体LMの流動抵抗が低下し、液溜め部40による圧力損失が抑えられる。
【0081】
また、第1流路F1の第1下側開口部F1a及び第1上側開口部F1bが上記のように逆テーパー状に形成されていることにより、ガス状の中間媒体GMが流れる第1流路F1による圧力損失が抑えられる。
【0082】
同様に、第2流路F2の第2上側開口部F2bが上記のように逆テーパー状に形成されていることにより、液状の中間媒体LMが流れる第2流路F2による圧力損失が抑えられる。
【0083】
第1流路F1、第2流路F2及び液溜め部40のうちの少なくとも一部において、中間媒体LM,GMの流れにおける圧力損失が抑えられると、連通管30の長さを抑えることが可能となる。すなわち、第2流路F2を通過する液状の中間媒体LMにおいて、上側の液面(第2のチャンバ20c内に溜まる液状の中間媒体LMの液面)から下側の液面(液溜め部40に溜まる液状の中間媒体LMの液面)までの液面高さの差は、連通管30及び液溜め部40での圧力損失の総和(第1のチャンバ10c内の圧力と第2のチャンバ20c内の圧力との差)に釣り合う。このため、圧力損失が抑えられると、液面高さの差が小さくなるため、連通管30に必要となる長さを抑えることが可能となる。
【0084】
一方、連通管30は、例えば、図4及び図5に示す液流入抑止部材34を有していてもよい。液流入抑止部材34は、第1流路F1に液状の中間媒体LMが流入することを抑止するためのものであり、液溜め部40から下方に向けて延びるように構成されている。
【0085】
より具体的には、液流入抑止部材34は、内管31の下端すなわち第1流路F1の第1下側開口部F1aを取り囲む環状に形成されるとともに、液溜め部40の底面部から、垂れ下がるように形成されている。液流入抑止部材34の下端部35は、第1流路F1の第1下側開口部F1aよりも下方に位置している。
【0086】
液流入抑止部材34は、第1流路F1の周方向に連続的に形成されていることが好ましいが、不連続的に形成されていてもよい。また、液流入抑止部材34は、図5に示す第3変形例のように、下側に向かうほど第1下側開口部F1aから径方向に離れるように、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。
【0087】
図4に示す第2変形例及び図5に示す第3変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、液流入抑止部材34によって、液状の中間媒体LMが第1下側開口部F1aを通じて第1流路F1内に流入することが抑止される。すなわち、液滴が第1流路F1内に流入した場合には第1流路F1内面に付着することがあるが、液流入抑止部材34によって、これが抑止される。したがって、第2変形例及び第3変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、液流入抑止部材34によって、中間媒体式熱交換器1の効率が低下することが抑制される。
【0088】
また、図4に示す第2変形例及び図5に示す第3変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、液流入抑止部材34の下端部35が第1流路F1の第1下側開口部F1aよりも下方に位置する。このため、液溜め部40から流出する液状の中間媒体LMが、第1下側開口部F1aに入ろうとするガス状の中間媒体GMの流れに乗って第1下側開口部F1aを通じて第1流路F1内に流入することがより効果的に抑止される。
【0089】
さらに、図4に示す第2変形例及び図5に示す第3変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、液流入抑止部材34が第1下側開口部F1aを第1流路F1の周方向に取り囲むことにより、液溜め部40の周方向の任意の位置から流出する液状の中間媒体LMが第1下側開口部F1aを通じて第1流路F1内に流入することが抑止される。
【0090】
さらに、図5の第3変形例に係る前記中間媒体式熱交換器1では、液流入抑止部材34が傾斜していることにより、液流入抑止部材34の下端部35と第1下側開口部F1aとの間の距離が大きくなり、液溜め部40から流出する液状の中間媒体LMが第1下側開口部F1aを通じて第1流路F1内に流入することがより効果的に抑止される。
【0091】
液溜め部40は、例えば、図6に示す第4変形例のように、連通管30の途中に設けられてもよい。すなわち、図2に示す液溜め部40は第1のチャンバ10c内において外管32の下端より下側に配置されていたのに対し、図6に示す第4変形例では、液溜め部40は第1のチャンバ10cと第2のチャンバ20cとの間に配置されているとともに、内管31と外管32との間に形成される空間内に配置されている。
【0092】
第4変形例において、連通管30の外管32は、第2のチャンバ20cに接続される外管上側部32Kと、第1のチャンバ10cに接続される外管下側部32Mと、外管上側部32Kと外管下側部32Mとを繋ぐように設けられた外管拡径部32Lと、を有する。
【0093】
外管拡径部32Lの径は、外管上側部32K及び外管下側部32Mの径よりも大きい。すなわち、外管拡径部32Lは、外管上側部32Kの外面から径方向外向きに延びる天面部と、天面部の外周縁から下方に延び且つ延びた先で径方向内向きに湾曲又は屈曲して外管下側部32Mの上端につながる外壁部と、を有する。そして、外管拡径部32Lは、液溜め部40を覆っている。
【0094】
液溜め部40は、外管拡径部32Lと内管31とによって形成される空間内に設けられている。液溜め部40の底面部は、内管31の外面から外管上側部32Kの下端と外管下側部32Mの上端との間の間隙を通って外管上側部32Kおよび外管下側部32Mより径方向外側にまで延びる。すなわち、底面部は、第1実施形態と異なり、外管上側部32Kの下端より下側に配置されるとともに外管下側部32Mの上端よりも上側に配置されている。液溜め部40の縦壁部は、底面部の外周端部から外管上側部32Kの下端よりも上方まで外管上側部32Kの外側を延びる。縦壁部の上縁部42は、外管拡径部32Lの天面部との間に隙間を形成している。縦壁部は、外管拡径部32Lの外壁部との間に径方向に隙間を形成している。さらに、縦壁部は、外管上側部32Kとの間に径方向に隙間を形成している。
【0095】
第2流路F2は、第2上側開口部F2bから下方に延びている上側流路部F21と、第2下側開口部F2aから上方に延びている下側流路部F22と、を有する。
【0096】
上側流路部F21は、外管上側部32Kと内管31との間に形成される空間である。上側流路部F21の下端部F21sは、外管上側部32Kの下端と内管31とによって形成される。
【0097】
下側流路部F22は、液溜め部40の縦壁部の上縁部42と外管拡径部32Lの天面部とによって形成される部分と、液溜め部40と外管拡径部32Lの外壁部とによって形成される部分と、内管31と外管下側部32Mとによって形成される部分と、を含む。下側流路部F22の上端部F22tは、液溜め部40の上縁部42と外管拡径部32Lの天面部との間の空間として形成される。
【0098】
この場合、液流入抑止部材34は、内管31から延びるように設けられてもよい。液流入抑止部材34は、第2流路F2の第2下側開口部F2aよりも下側であって、内側に第1流路F1を形成する内管31の外側面から径方向外向きかつ下向きに傾斜するように延びている。すなわち、液流入抑止部材34は、第1流路F1の第1下側開口部F1aから径方向に離れるように、鉛直方向に対して傾斜している。この場合においても、液流入抑止部材34の下端部35は、第1下側開口部F1aよりも下方に位置する。
【0099】
第4変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、液溜め部40は、下向きに凸の空間を形成し、この空間内に第2流路F2の上側流路部F21を流れてきた液状の中間媒体LMを溜める。液溜め部40の上縁部42から溢れた液状の中間媒体LMは、外管拡径部32Lの天面部及び外壁部に導かれて、下側流路部F22に流入し、第1のチャンバ10cに向かう。すなわち、液溜め部40は、上側流路部F21の下端部F21sから流出した液状の中間媒体LMを溜める一方で、溜まった液状の中間媒体LMを、下側流路部F22の上端部F22tに流入させるように構成されている。
【0100】
そして、第4変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、液溜め部40において、下側流路部F22の上端部F22tと上側流路部F21の下端部F21sとの間で、液状の中間媒体LMが一定量溜まった状態が維持される。そして、上側流路部F21の下端部F21sが下側流路部F22の上端部F22tよりも下方に位置しているので、第1のチャンバ10c内で気化したガス状の中間媒体GMが下側流路部F22を上昇したとしても、ガス状の中間媒体GMは、上側流路部F21の下端部F21sに向かうことができない。したがって、第2流路F2の上側流路部F21は、液溜め部40によって液封されている状態となる。
【0101】
さらに、第4変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、第2流路F2の一部である上側流路部F21が、液溜め部40に液封されて、液状の中間媒体LMで満たされているので、第2流路F2の中で液状の中間媒体LMが流れやすい状態が維持され、第2流路F2は液流路として機能することができる。
【0102】
また、第4変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、液状の中間媒体LMは、連通管30の第2流路F2の途中に設けられた液溜め部40から流出することにより、第2下側開口部F2aから滴下する。このとき、液流入抑止部材34により、液滴となった液状の中間媒体LMが、第2下側開口部F2aよりも下側かつ径方向内側に位置する第1下側開口部F1aに向かうガス状の中間媒体GMの流れに乗って、第1下側開口部F1aから第1流路F1内に流入することが抑止される。
【0103】
連通管30は、例えば、図7に示す第5変形例のように、第1実施形態の場合と逆に、内管31の内側の空間を液流路である第2流路F2として機能させ、内管31と外管32との間の空間をガス流路である第1流路F1として機能させてもよい。この場合において、液溜め部40は、連通管30の内管31の下端が形成する第2下側開口部F2aの下側に設けられてもよい。
【0104】
連通管30は、内管31と、内管31の径方向外側に配置される外管32と、を含む。外管32は、上端が第2のチャンバ20c内に進入し、下端が第1のチャンバ10c内に進入している。そして、外管32の上端は、第2のチャンバ20c内に溜まる液状の中間媒体LMの液面よりも上側に位置している。外管32の下端は、第1のチャンバ10c内に溜まる液状の中間媒体LMの液面よりも上側に位置している。
【0105】
第5変形例において、内管31は、外管32と同様に、上端が第2のチャンバ20c内に進入し、下端が第1のチャンバ10c内に進入している。さらに、内管31の内側の空間を液流路として機能する第2流路F2とするにもかかわらず、内管31の上端は、第2のチャンバ20c内に溜まる液状の中間媒体LMの液面よりも上側に設けられている。そして、第2のチャンバ20c内に溜まる液状の中間媒体LMを外管32の外側から第1流路F1を横切って内管31の内側の第2流路F2に導くための、例えば凹状のガイド溝(図示省略)が形成されている。ガイド溝は、連通管30を径方向に見たときに、外管32及び内管31のそれぞれの上端を外管32及び内管31を液面よりも下の位置にまでそれぞれ凹状に切り欠き、それぞれの切り欠きを樋状に結ぶ溝である。このガイド溝によって、第2のチャンバ20c内において、外管32の上端よりも下方に位置する液状の中間媒体LMを、内管31の内側の空間すなわち第2流路F2に導くことができる。第2流路F2は、内管31の内側の空間であるが、本変形例においても液流路として機能するものであるので、前記ガイド溝が内管31に接続する位置において、第2流路F2の第2上側開口部F2bが形成される。すなわち、第2流路F2の第2上側開口部F2bは、第2のチャンバ20c内における液状の中間媒体LMの液面よりも下側に位置することとなる。内管31の下端は、外管32の下端よりも下側であって、第1のチャンバ10c内の液状の中間媒体LMの液面よりも上側の位置に配置されている。
【0106】
第5変形例における上記の内管31及び外管32の態様により、内管31の内側の空間である第2流路は液流路として機能することができ、内管31と外管32との間の空間である第1流路はガス流路として機能することができる。
【0107】
液溜め部40は、連通管30における第2流路F2の第2下側開口部F2aの下側かつ第1のチャンバ10c内における液状の中間媒体LMの液面よりも上側の位置に設けられる。第5変形例においては、液溜め部40は、第2流路F2の第2下側開口部F2aを取り囲みながら、第1流路F1の第1下側開口部F1aの下側に配置される。
【0108】
液溜め部40の上縁部42は、内管31の下端(第2流路F2の第2下側開口部F2a)よりも上側に位置しているとともに、外管32の下端よりも下側に位置している。これにより、液溜め部40の上縁部42と外管32の下端との間に隙間が形成される。
【0109】
そして、液状の中間媒体LMが液溜め部40の上縁部42から溢れ前記隙間から下方に流出することが可能となると同時に、第1のチャンバ10c内で生成されたガス状の中間媒体GMが前記隙間から第1下側開口部F1aを通じて第1流路F1内に流入することが可能となる。
【0110】
液溜め部40は、例えば、図8に示す第6変形例のように、連通管30の途中であって内管31の内側の空間に設けられてもよい。すなわち、液溜め部40は、図7に示す第5変形例では第1のチャンバ10c内において内管31の下端より下側に配置されていたのに対し、図8に示す第6変形例では、第1のチャンバ10cと第2のチャンバ20cとの間に配置されているとともに、内管31の内側に形成される空間内に配置されている。
【0111】
連通管30の外管32は、図6の第4変形例と同様に、第2のチャンバ20cに接続される外管上側部32Kと、第1のチャンバ10cに接続される外管下側部32Mと、外管上側部32Kと外管下側部32Mとを繋ぐように設けられた外管拡径部32Lと、を有する。なお、図6の第4変形例と異なり、外管上側部32Kの上端は、第2のチャンバ20c内の液状の中間媒体LMの液面よりも上側に位置している。
【0112】
さらに、第6変形例において、連通管30の内管31は、第2のチャンバ20c内に進入し外管上側部32Kとの間に空間を形成する内管上側部31Kと、第1のチャンバ10c内に進入し外管下側部32Mとの間に空間を形成する内管下側部31Mと、内管上側部31Kと内管下側部31Mとを繋ぐように設けられ外管拡径部32Lとの間に空間を形成する内管拡径部31Lと、を有する。
【0113】
内管拡径部31Lの径は、内管上側部31K及び内管下側部31Mの径よりも大きい。すなわち、内管拡径部31Lは、内管上側部31Kの外面から径方向外向きに延びる天面部と、天面部の外周縁から下方に延び且つ延びた先で径方向内向きに湾曲又は屈曲して内管下側部31Mの上端につながる外壁部と、を有する。そして、内管拡径部31Lは、液溜め部40を覆っている。
【0114】
液溜め部40は、内管拡径部31Lによって形成される空間内に設けられ、下向きに凸の形状に形成されている。液溜め部40の底面部は、内管拡径部31Lの内側に形成される空間内において、内管上側部31Kの下端と内管下側部31Mの上端との間に配置され径方向に延びる。液溜め部40の縦壁部は、底面部の外周端部から内管上側部31Kの下端よりも上方まで内管上側部31Kの外側を延びる。縦壁部の上縁部42は、内管拡径部31Lの天面部との間に隙間を形成している。縦壁部は、内管拡径部31Lの外壁部との間に隙間を形成している。さらに、縦壁部は、内管上側部31Kとの間に径方向に隙間を形成している。
【0115】
第2流路F2の上側流路部F21は、第6変形例において、内管上側部31Kの内側に形成される空間である。上側流路部F21の下端部F21sは、内管上側部31Kの下端部によって形成される。
【0116】
第2流路F2の下側流路部F22は、液溜め部40の縦壁部の上縁部42と内管拡径部31Lの天面部とによって形成される部分と、液溜め部40と内管拡径部31Lの外壁部とによって形成される部分と、内管下側部31Mの内側に形成される部分と、を含む。下側流路部F22の上端部F22tは、液溜め部40の上縁部42と内管拡径部31Lの天面部との間の空間として形成される。
【0117】
第6変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、連通管30の内管31の内側の空間が液流路として機能する第2流路F2となっているが、第2流路F2の途中に液溜め部40が設けられる第4変形例(図6)と同様に、第2流路F2の上側流路部F21は液溜め部40によって液封されている状態となる。
【0118】
第1実施形態及びその変形例では、中間媒体式熱交換器1が1つの連通管30を備えているが、1つの連通管30を備える構成に限られず、複数の連通管30を備える構成であってもよい。ここで、複数の連通管30を備える第7変形例を、図9に基づいて説明する。
【0119】
第7変形例に係る中間媒体式熱交換器1は、第1の連通管30と第2の連通管30Bとを備える。第1の連通管30及び第2の連通管30Bは、それぞれ上述した連通管30と同じ構成を備える。すなわち、第1の連通管30及び第2の連通管30Bは、第1の実施の形態(図1及び図2)に開示された連通管30の構成を備えてもよいし、第1の変形例から第6の変形例(図3から図8)に開示された連通管30の構成を備えてもよい。
【0120】
第7変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、複数の連通管30を備えるため、中間媒体蒸発器E1と液化ガス気化器E2との間で循環する中間媒体の循環量を増大させることができ、中間媒体式熱交換器1の効率を向上させることができる。
【0121】
図10に示すように、第8の変形例に係る中間媒体式熱交換器1において、連通管30の内管31及び外管32には、断熱材が設けられている。すなわち、図10の領域XIを拡大した図11に示すように、内管31は、内側管31Aと、内側管31Aの外側に配置された外側管31Bと、内側管31Aと外側管31Bの間に配置された断熱材31Cとが重ねられた三重構造の断熱管として構成されている。外管32には、大気と接触する部位に断熱材32Cが設けられている。なお、断熱材31C、32Cは、内側管31A、外側管31B、及び外管32の熱伝導率の100分の1以下の熱伝導率を有しており、例えば、グラスウール、ロックウール、ポリスチレンフォーム及び硬質ウレタンフォーム等が用いられる。
【0122】
内管31の断熱材31Cによって、第1流路F1のガス状の中間媒体GMが、第2流路F2の液状の中間媒体LMによって冷やされて液化することを抑制できる。これにより、第1流路F1内におけるフラッディング現象の発生及び流路抵抗の増加による中間媒体の循環量の低下が抑制される。さらに、液化ガス気化器E2における、ガス状の中間媒体GMの気化効率の低下が抑制される。
【0123】
内管31の断熱材31Cと、外管32に設けた断熱材32Cとによって、第2流路F2の液状の中間媒体LMが、大気及び第1流路F1のガス状の中間媒体GMによって温められて気化することを抑制できる。これにより、第2流路F2におけるフラッディング現象の発生及び流路抵抗の増加による中間媒体の循環量の低下が抑制される。また、第2流路F2の液状の中間媒体LMが、大気によって冷却されることも抑制できるので、中間媒体蒸発器E1における、液状の中間媒体LMの蒸発効率の低下が抑制される。
【0124】
なお、内管31及び外管32のうち、いずれか一方だけに断熱材が設けられていてもよい。
【0125】
また、内管31は、第2流路F2と接する部位だけが、断熱材を用いた三重構造の断熱管として構成されていてもよい。
【0126】
また、外管32には、大気と接触する部位に断熱材32Cが設けられているが、これに限らない。例えば、外管32は、内管31と同様に、内側管と、内側管の外側に配置された外側管と、内側管と外側管の間に配置された断熱材とが重ねられた三重構造の断熱管として構成されていてもよい。
【0127】
また、液溜め部40の縦壁部及び底面部は、内管31と同様に、内側部材と、外側部材と、内側部材及び外側部材の間に配置された断熱材とが重ねられた三重構造の断熱部材として構成されていてもよい。
【0128】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る中間媒体式熱交換器1を、図12に基づいて説明する。なお、第2実施形態において、上記の第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を用いて説明を省略することとし、主に異なる構成要素について説明を行う。
【0129】
第2実施形態に係る中間媒体式熱交換器1においても、第1のチャンバ10c内と第2のチャンバ20c内が多重管構造の連通管30で相互に連通されている。
【0130】
第2実施形態における連通管30は、内管31の内側空間を液流路として機能する第2流路F2とし、内管31と外管32との間の空間をガス流路として機能する第1流路F1としている。
【0131】
内管31の下端は、外管32の下端よりも低く、かつ、第1のチャンバ10c内に溜まる液状の中間媒体LMの液面よりも低くなっている。すなわち、第2流路F2の第2下側開口部F2aは、第1のチャンバ10c内における液状の中間媒体LMの液面よりも下側の位置に配置されている。このため、第2下側開口部F2aは、液状の中間媒体LMに浸かっている。
【0132】
第2実施形態に係る中間媒体式熱交換器1では、液流路として機能する第2流路F2の下端部である第2下側開口部F2aが第1のチャンバ10c内に溜まった液状の中間媒体LMに浸かっているので、第2流路F2の全体が液状の中間媒体LMで満たされた状態で運転することができる。このため、第2流路F2の中にガス状の中間媒体GMが流入したとしても、第2流路F2の中で液状の中間媒体LMが流れやすい状態が維持され、第2流路F2は液流路として機能し続けることができる。
【0133】
なお、連通管30は、図12の形態に限定されない。例えば、図13に示す第1変形例のように、内管31は、第1のチャンバ10c内で、直管状ではなく、水平方向、例えば第1の伝熱管10dの延びる方向と直交する方向(図13の左右方向)に屈曲してクランク状をなしてもよい。
【0134】
そして、第2流路F2の第2下側開口部F2aは、第1のチャンバ10c内において、液状の中間媒体LMの液面よりも下側の位置であって、かつ、第1の伝熱管10dの直上から側方にずれた位置に配置されている。
【0135】
第1のチャンバ10c内における液状の中間媒体LMに浸かっている第2流路F2の第2下側開口部F2aが、第1の伝熱管10dの直上に配置されている場合には、第1の伝熱管10dから発生するガス状の中間媒体GMが第2下側開口部F2a内に流入する場合がある。これに対し、第1変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、第2下側開口部F2aが第1の伝熱管10dの直上から側方にずれた位置に配置されているため、第2下側開口部F2aから第2流路F2内にガス状の中間媒体GMが流入することが抑制される。
【0136】
連通管30の下端部が第1の伝熱管10dの直上に位置する構成において、図14に示す第2変形例及び図15に示す第3変形例のように、ガス流入抑止部材50が設けられてもよい。ガス流入抑止部材50は、第1のチャンバ10c内のガス状の中間媒体GMが第2下側開口部F2aを通じて第2流路F2内に流入することを抑止する。
【0137】
ガス流入抑止部材50は、第2下側開口部F2aと第1の伝熱管10dとの間で水平方向に延びるように配置される板状の部材である。すなわち、ガス流入抑止部材50は、第2流路F2の第2下側開口部F2aの下側に位置する部分を有するガス流入抑止板である。ガス流入抑止部材50は、第1のチャンバ10cの底面から上方を見たときに、第2下側開口部F2aを覆って見えなくする程度に十分な面積を有する。
【0138】
14に示す第2実施形態の第2変形例及び図15に示す第3変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、ガス流入抑止部材50によって、第1のチャンバ10c内の第1の伝熱管10dで発生したガス状の中間媒体GMが、液中を浮上したとしても、第2下側開口部F2aを通じて第2流路F2内に流入することが抑止される。
【0139】
一方、第2実施形態においても、図16に示す第4変形例のように、内管31の内側空間をガス流路として機能する第1流路F1とし、内管31と外管32との間の空間を液流路として機能する第2流路F2としてもよい。
【0140】
第4変形例において、第2流路F2を形成する外管32は、第1のチャンバ10c内で、直管状ではなく、内管31から径方向に離れるように、例えば第1の伝熱管10dの延びる方向と直交する方向(図16の左右方向)に屈曲してクランク状をなしてもよい。
【0141】
外管32が第1のチャンバ10c内で屈曲して内管31から離れながら液状の中間媒体LMの液面よりも下側の位置にまで延びる一方で、内管31が形成する第1流路F1の第1下側開口部F1aは液面より上側に位置している。このため、連通管30は、中間壁33を更に有する。中間壁33は、外管32が径方向外向きに屈曲する位置よりも下側の位置であって、第2下側開口部F2aよりも上側の位置において、外管32の管壁との間で第2流路として必要な間隔をおいて、内管31から径方向外向きに延びる部位と、この部位から下向きに屈曲し、第1のチャンバ10c内における液状の中間媒体LMの液面よりも下側の位置に延びる部位と、を含む。これにより、中間壁33と外管32との間で第2流路F2としての空間が確保され、同時に、中間壁33と内管31との間で、ガス状の中間媒体GMが第1下側開口部F1aに向かうための空間が確保される。
【0142】
すなわち、外管32と内管31及び中間壁33のそれぞれとの間に形成される空間が、第2流路F2となる。第2流路F2は、外管32及び中間壁33の屈曲に伴い屈曲し、第1の伝熱管の直上から側方にずれた位置に延びている。そして、第2流路F2の第2下側開口部F2aは、第1のチャンバ10c内における液状の中間媒体LMの液面よりも下側の位置であって第1の伝熱管の直上から側方にずれた位置に配置されている。
【0143】
第4変形例に係る中間媒体式熱交換器1では、上記の第2実施形態の第1変形例と同様に、第2下側開口部F2aが第1のチャンバ10c内において第1の伝熱管10dの直上から側方にずれた位置に配置されているため、第2下側開口部F2aから第2流路F2内にガス状の中間媒体GMが流入することが抑制される。
【0144】
さらに、図16に示す第4変形例に、ガス流入抑止部材50が更に設けられる、第2実施形態の第5変形例を図17に示す。
【0145】
すなわち、中間媒体蒸発器E1は、第2流路F2の第2下側開口部F2aと第1の伝熱管10dとの間に配置されたガス流入抑止部材50を更に有している。
【0146】
これにより、ガス状の中間媒体GMが第2下側開口部F2aを通じて第2流路F2内に流入することがより効果的に抑止される。
【0147】
次に、第1実施形態及び第2実施形態について、図示されていない他の変形例を示す。
【0148】
第2実施形態及びその変形例において、中間媒体式熱交換器1は、複数の連通管30を備えてもよい。この場合においても、中間媒体式熱交換器1全体での中間媒体の循環量を増大させることができ、中間媒体式熱交換器1の効率を向上させることができる。
【0149】
連通管30において、第1流路F1の水力直径が第2流路F2の水力直径よりも大きくなるように、内管31及び外管32のそれぞれの径が設定されてもよい。ガス流路として機能する第1流路F1での圧力損失は、液流路として機能する第2流路F2での圧力損失よりも、大きくなる。したがって、第1流路F1の水力直径が第2流路F2の水力直径よりも大きければ、第1流路F1による圧力損失を抑えることが可能となる。そして、第1流路F1による圧力損失が抑えられると、第2流路F2における液面高さが抑えられるため、連通管30の長さをより短くすることが可能となる。
【0150】
なお、水力直径(D)とは、次のように定義される長さである。
=4A/P
ここで、Aは、流れの断面積であり、Pは、断面のうち濡れている部分(濡れ縁)の周長である。
【0151】
内管31が円管である場合の内管31の中に形成される流路の水力直径は、内管31の内径に等しい。内管31及び外管32が共に円管である場合の、内管31と外管32との間に形成される流路の水力直径DHrは、当該流路の断面積をAとし、内管31の外径をDとし、外管32の内径をDとした場合に、
Hr=4A/{π×(D+D)}
として、計算される。
【0152】
連通管30について、上記では内管31と外管32とからなる2重管構造として説明を行ったが、2重管構造の連通管に限定されず、2重管以上の多重管による構造の連通管であってもよい。この場合において、連通管の中において径方向に重なる複数の管で区切られる複数の空間のうち、いずれを液流路とし、いずれをガス流路とするかは、任意であり限定されるものではない。
【0153】
さらに、連通管30について、上記では、図13、図15に示す本発明の第2実施形態の第1変形例、第3変形例を除き、径方向に対称な形状であることを前提として、説明を行ったが、多重管構造の連通管であれば、径方向に非対称な形状のものであってもよい。例えば、連通管30について、内管31の中心軸線と外管32の中心軸線とが重なっておらず、偏心しているようなものであってもよい。また、内管31及び外管32の両方又は一方が円管でなくてもよい。
【0154】
また、液溜め部40について、図3に示す第1実施形態の第1変形例において、液溜め部40を通過する液状の中間媒体LMの下向きの流れを上向きの流れに曲げる曲面を含んだ形状に形成されていてもよいとして説明を行ったが、他の変形例における液溜め部40についても、同様に曲面を含んだ形状に形成されていてもよい。
【0155】
図18に示すように、第6の変形例に係る中間媒体式熱交換器1において、連通管30の内管31及び外管32には、断熱材が設けられている。図10~11に示す前述の第1実施形態の第8の変形例と同様に、内管31は、内側管31Aと、内側管31Aの外側に配置された外側管31Bと、内側管31Aと外側管31Bの間に配置された断熱材31Cとが重ねられた三重構造の断熱管として構成されている。外管32には、大気と接触する部位に断熱材32Cが設けられている。
【0156】
内管31の断熱材31Cによって、第2流路F2の液状の中間媒体LMが、第1流路F1のガス状の中間媒体GMによって温められて気化することを抑制できる。これにより、第2流路F2における、フラッディング現象の発生及び流路抵抗の増加による中間媒体の循環量の低下は抑制される。
【0157】
内管31の断熱材31Cと、外管32に設けられた断熱材32Cとによって、第1流路F1のガス状の中間媒体GMが、大気及び第2流路F2の液状の中間媒体LMによって冷やされて液化することを抑制できる。これにより、第1流路F1におけるフラッディング現象の発生及び第1流路F1の流路抵抗の増加による中間媒体の循環量の低下は抑制される。さらに、液化ガス気化器E2における、ガス状の中間媒体GMの気化効率の低下は抑制される。
【0158】
なお、内管31及び外管32のうち、いずれか一方だけに断熱材が設けられていてもよい。
【0159】
また、内管31は、第1流路F1と接する部位だけが、断熱材を用いた三重構造の断熱管として構成されていてもよい。
【0160】
また、外管32には、大気と接触する部位に断熱材32Cが設けられているが、これに限らない。例えば、外管32は、内管31と同様に、内側管と、内側管の外側に配置された外側管と、内側管と外側管の間に配置された断熱材とが重ねられた三重構造の断熱管として構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0161】
1 中間媒体式熱交換器
E1 中間媒体蒸発器
10c 第1のチャンバ
10d 第1の伝熱管
E2 液化ガス気化器
20c 第2のチャンバ
20d 第2の伝熱管
30 (第1の)連通管
30B 第2の連通管
31 内管
31A 内側管
31B 外側管
31C、32C 断熱材
31K 内管上側部
31L 内管拡径部
31M 内管下側部
32 外管
32K 外管上側部
32L 外管拡径部
32M 外管下側部
33 中間壁
34 液流入抑止部材
35 液流入抑止部材の下端部
40 液溜め部
41 液溜め部の底部
42 液溜め部の底部の上縁部
43 液溜め部の天部
50 ガス流入抑止部材
F1 第1流路
F1a 第1下側開口部
F1b 第1上側開口部
F2 第2流路
F21 第2流路の上側流路部
F21s 上側流路部の下端部
F22 第2流路の下側流路部
F22t 下側流路部の上端部
F2a 第2下側開口部
F2b 第2上側開口部
50 ガス流入抑止部材(ガス流入抑止板)
LM 液状の中間媒体
GM ガス状の中間媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19