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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】扉ヒンジ構造
(51)【国際特許分類】
   E05D 7/04 20060101AFI20231228BHJP
   F25D 23/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
E05D7/04
F25D23/02 301E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021095448
(22)【出願日】2021-06-07
(65)【公開番号】P2022187418
(43)【公開日】2022-12-19
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】菊野 真二
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180977(JP,A)
【文献】実開昭62-187288(JP,U)
【文献】実開昭60-182472(JP,U)
【文献】米国特許第4864691(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 7/00-7/14
F25D 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵庫本体(5)の前面に形成された上下の開口部(14・15)を開閉する上下扉(16・17)を揺動支持する扉ヒンジ構造であって、
上扉(16)の上縁隅部に配され、下向きに伸びて上扉(16)の上側を軸支する上ヒンジピン(27)を備える上ヒンジ(23)と、
下扉(17)の下縁隅部に配され、上向きに伸びて下扉(17)の下側を軸支する下ヒンジピン(30)を備える下ヒンジ(24)と、
上扉(16)の下縁隅部と下扉(17)の上縁隅部との間に配され、上向きに伸びて上扉(16)の下側を軸支する上中ヒンジピン(35)と、下向きに伸びて下扉(17)の上側を軸支する下中ヒンジピン(36)とを備える中ヒンジ(25)と、
上下扉(16・17)のそれぞれの上下隅部に形成されて、各ヒンジピン(27・30・35・36)のそれぞれを所定のクリアランスを有する状態で受け入れるピン穴(47)と、
を備え、
上ヒンジピン(27)と下ヒンジピン(30)とは、上ヒンジピン(27)の中心軸線(C1)と下ヒンジピン(30)の中心軸線(C2)とが、正面視において垂直軸線で規定されるヒンジ軸線(CA)上に配されており、
上中ヒンジピン(35)は、その中心軸線(C3)が、垂直軸線であるヒンジ軸線(CA)に対して閉じ位置にある上扉(16)の揺動先端側に傾く状態で配されており、
下中ヒンジピン(36)は、その中心軸線(C4)が、垂直軸線であるヒンジ軸線(CA)に対して閉じ位置にある下扉(17)の揺動基端側に傾く状態で配されており、
上中ヒンジピン(35)の上端周縁部がピン穴(47)の揺動先端側の内面に接するとともに、下中ヒンジピン(36)の下端周縁部がピン穴(47)の揺動基端側の内面に接するように構成されていることを特徴とする扉ヒンジ構造。
【請求項2】
垂直軸線であるヒンジ軸線(CA)に対する上中ヒンジピン(35)と下中ヒンジピン(36)の傾斜姿勢を調整するための軸調整機構を備える、請求項1記載の扉ヒンジ構造。
【請求項3】
中ヒンジ(25)は、左右の水平方向に長い支持プレート(32)と、鉛直方向に伸びる取付プレート(33)とで断面L字状に形成された中ヒンジプレート(34)と、支持プレート(32)の上面に設けられた上中ヒンジピン(35)と、支持プレート(32)の下面に設けられた下中ヒンジピン(36)とを備え、
上中ヒンジピン(35)と下中ヒンジピン(36)とは、正面視において同軸上に配されており、
軸調整機構が、中ヒンジプレート(34)の左右の揺動基端側を支持して、前後方向に伸びる回転中心軸(39)と、中ヒンジプレート(34)の左右の揺動先端側を支持する調整軸(40)とを備える、請求項2記載の扉ヒンジ構造。
【請求項4】
調整軸(40)が取付プレート(33)を介して貯蔵庫本体(5)にねじ込まれるねじ軸(42a)と、ねじ軸(42a)よりも大径の操作頭部(42b)とを有するねじ体からなる調整ビス(42)であり、
軸調整機構が、取付プレート(33)に開設されて、調整軸(40)のねじ軸(42a)を受け入れて、回転中心軸(39)を中心とした中ヒンジプレート(34)の上下方向の揺動を許す長孔状の調整孔(44)を含む、請求項3記載の扉ヒンジ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫、冷凍庫などの貯蔵庫が備える上下の開口部をそれぞれ開閉する一対の扉を、上ヒンジ、中ヒンジ、下ヒンジの3個のヒンジで揺動自在に支持する扉ヒンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の扉ヒンジ構造は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の扉ヒンジ構造では、上側の扉の上縁右隅を支持する第1の扉支持部材(上ヒンジ)と、上側の扉の下縁右隅および下側の扉の上縁右隅を支持する第2の扉支持部材(中ヒンジ)と、下側の扉の下縁右隅を支持する第3の扉支持部材(下ヒンジ)とを備えている。第1の扉支持部材は下方に伸びるヒンジピンを備え、第2の扉支持部材は上方に伸びるヒンジピンと下方に伸びるヒンジピンとを備え、第3の扉支持部材は上方に伸びるヒンジピンを備えている。各ヒンジピンは扉に形成されたピン穴に挿入されており、各扉はその上下がヒンジピンで軸支されて、該ヒンジピンまわりに揺動開閉自在に支持されている。各ヒンジピンの中心軸線は、正面視において同軸上に配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-17742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような、ピン穴に挿入されたヒンジピンで扉を支持する形態の扉ヒンジ構造においては、扉の揺動開閉操作を円滑に行えるようにするため、摺動部分となるヒンジピンとピン穴との間にはクリアランスが設けられており、このクリアランスによって摺動時における両者の摩擦を軽減している。しかし、クリアランスが存在するために、扉は支持されながらも僅かに移動できる余地があり、閉じ姿勢における扉は、各扉の下側を支持しているヒンジピンを支点に揺動先端側が下方に移動して、扉の全体が傾くことがある。特許文献1において扉が傾いたとき、正面視における扉は反時計まわりに僅かに回転した状態で支持され、上側の扉の左下角と下側の扉の左上角との位置が左右方向にずれるため、貯蔵庫の外観の体裁が損なわれてしまう。また、所謂センタフリー型と称される観音開き状に開閉される左右一対の扉を上下に備えた貯蔵庫では、左右の扉の揺動先端側の対向面に上下方向に伸びてマグネットで互いに吸着するシール部材を備えているが、左右の扉に傾きが生じると扉の対向面の隙間が上下で異なるため、シール部材が正常に機能しないことがあり、貯蔵庫の断熱性能が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、閉じ姿勢において扉が傾くことを抑えて、貯蔵庫の外観の体裁が損なわれること、或いは断熱性能が低下することを防ぐことができる、扉ヒンジ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、貯蔵庫本体5の前面に形成された上下の開口部14・15を開閉する上下扉16・17を揺動支持する扉ヒンジ構造を対象とする。扉ヒンジ構造は、上扉16の上縁隅部に配され、下向きに伸びて上扉16の上側を軸支する上ヒンジピン27を備える上ヒンジ23と、下扉17の下縁隅部に配され、上向きに伸びて下扉17の下側を軸支する下ヒンジピン30を備える下ヒンジ24と、上扉16の下縁隅部と下扉17の上縁隅部との間に配され、上向きに伸びて上扉16の下側を軸支する上中ヒンジピン35と、下向きに伸びて下扉17の上側を軸支する下中ヒンジピン36とを備える中ヒンジ25と、上下扉16・17のそれぞれの上下隅部に形成されて、各ヒンジピン27・30・35・36のそれぞれを所定のクリアランスを有する状態で受け入れるピン穴47と、を備える。上ヒンジピン27と下ヒンジピン30とは、上ヒンジピン27の中心軸線C1と下ヒンジピン30の中心軸線C2とが、正面視において垂直軸線で規定されるヒンジ軸線CA上に配されている。上中ヒンジピン35は、その中心軸線C3が、垂直軸線であるヒンジ軸線CAに対して閉じ位置にある上扉16の揺動先端側に傾く状態で配されている。下中ヒンジピン36は、その中心軸線C4が、垂直軸線であるヒンジ軸線CAに対して閉じ位置にある下扉17の揺動基端側に傾く状態で配されている。そして、上中ヒンジピン35の上端周縁部がピン穴47の揺動先端側の内面に接するとともに、下中ヒンジピン36の下端周縁部がピン穴47の揺動基端側の内面に接するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
垂直軸線であるヒンジ軸線CAに対する上中ヒンジピン35と下中ヒンジピン36の傾斜姿勢を調整するための軸調整機構を備える構成を採ることができる。
【0008】
中ヒンジ25は、左右の水平方向に長い支持プレート32と、鉛直方向に伸びる取付プレート33とで断面L字状に形成された中ヒンジプレート34と、支持プレート32の上面に設けられた上中ヒンジピン35と、支持プレート32の下面に設けられた下中ヒンジピン36とを備え、上中ヒンジピン35と下中ヒンジピン36とが、正面視において同軸上に配されており、軸調整機構が、中ヒンジプレート34の左右の揺動基端側を支持して、前後方向に伸びる回転中心軸39と、中ヒンジプレート34の左右の揺動先端側を支持する調整軸40と、を備える構成を採ることができる。
【0009】
調整軸40が取付プレート33を介して貯蔵庫本体5にねじ込まれるねじ軸42aと、ねじ軸42aよりも大径の操作頭部42bとを有するねじ体からなる調整ビス42であり、軸調整機構が、取付プレート33に開設されて、調整軸40のねじ軸42aを受け入れて、回転中心軸39を中心とした中ヒンジプレート34の上下方向の揺動を許す長孔状の調整孔44を含むものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の扉ヒンジ構造においては、上ヒンジピン27の中心軸線C1と、下ヒンジピン30の中心軸線C2とを、正面視において垂直軸線で規定されるヒンジ軸線CA上に配設した。一方、上中ヒンジピン35においては、その中心軸線C3が、垂直軸線であるヒンジ軸線CAに対して閉じ位置にある上扉16の揺動先端側に傾く状態で配して、上中ヒンジピン35の上端周縁部がピン穴47の揺動先端側の内面に接するよう構成した。また、下中ヒンジピン36においては、その中心軸線C4が、垂直軸線であるヒンジ軸線CAに対して閉じ位置にある下扉17の揺動基端側に傾く状態で配して、下中ヒンジピン36の下端周縁部がピン穴47の揺動基端側の内面に接するように構成した。
【0011】
上記のような配設形態に各ヒンジピン27・30・35・36を配設すると、上扉16においては、上ヒンジピン27を支点として、上扉16の下側を上中ヒンジピン35で揺動先端側に移動させ、上扉16の揺動先端側を上方に向かって揺動させて、自重による上扉16の傾動方向とは逆方向に上扉16を傾動変位させることができる(図5参照)。同様に、下扉17においては、下ヒンジピン30を支点として、下扉17の上側を下中ヒンジピン36で揺動基端側に移動させ、下扉17の揺動先端側を上方に向かって揺動させて、自重による下扉17の傾動方向とは逆方向に下扉17を傾動変位させることができる(図5参照)。以上のように、本発明の扉ヒンジ構造22によれば、自重による上下の扉16・17の傾きを、上中ヒンジピン35および下中ヒンジピン36による上下の扉16・17の傾動変位で相殺することができる。したがって、本発明によれば、上下の扉16・17を適正姿勢として、扉16・17の角部の位置ずれが生じること、あるいはシール部材が機能不全に陥ることを抑制することができるので、閉じ姿勢における上下の扉16・17の傾きに由来して貯蔵庫の外観の体裁が損なわれることや、断熱性能が低下することなどを防ぐことができる。
【0012】
垂直軸線であるヒンジ軸線CAに対する、上中ヒンジピン35と下中ヒンジピン36の傾斜角度を調整するための軸調整機構が設けられていると、上下の扉16・17の傾き具合に応じて、上中ヒンジピン35と下中ヒンジピン36の傾斜角度を調整することで、より簡便に上下の扉16・17を適正姿勢とすることが可能となる。
【0013】
具体的には、中ヒンジ25が、左右の水平方向に長い支持プレート32と、鉛直方向に伸びる取付プレート33とで断面L字状に形成された中ヒンジプレート34と、支持プレート32の上面に設けられた上中ヒンジピン35と、支持プレート32の下面に設けられた下中ヒンジピン36とを備え、上中ヒンジピン35と下中ヒンジピン36とは、正面視において同軸上に配されており、軸調整機構が、中ヒンジプレート34の左右の揺動基端側を支持して、前後方向に伸びる回転中心軸39と、中ヒンジプレート34の左右の揺動先端側を支持する調整軸40と、を備える形態を採ることができる。これによれば、中ヒンジプレート34を回転中心軸39で軸支したのち、支持プレート32が揺動先端側に下り傾斜する姿勢になるように調整軸40で中ヒンジプレート34を位置保持させることにより、中心軸線C3の上側が閉じ位置にある上扉16の揺動先端側に傾く状態に上中ヒンジピン35を配し、中心軸線C4の下側が閉じ位置にある下扉17の揺動基端側に傾く状態に下中ヒンジピン36を配することができる。以上のように、中ヒンジプレート34の姿勢を変更することで、上中ヒンジピン35および下中ヒンジピン36の姿勢を規定することができるので、より簡便に上中ヒンジピン35および下中ヒンジピン36を傾斜姿勢として、上下の扉16・17を適正姿勢とすることができる。
【0014】
調整軸40が取付プレート33を介して貯蔵庫本体5にねじ込まれるねじ軸42aと、ねじ軸42aよりも大径の操作頭部42bとを有するねじ体からなる調整ビス42であり、軸調整機構が、取付プレート33に開設されて、調整軸40のねじ軸42aを受け入れて、回転中心軸39を中心とした中ヒンジプレート34の上下方向の揺動を許す長孔状の調整孔44を含む形態を採ることができる。これによれば、調整ビス42を緩操作してから、調整孔44の開口の範囲で中ヒンジプレート34を上下方向に揺動させ、最後に調整ビス42を締操作するだけで、中ヒンジプレート34を任意の姿勢とすることができる。また、簡便に上中ヒンジピン35と下中ヒンジピン36の傾斜角度を調整して、上下の扉16・17を適正姿勢とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る扉ヒンジ構造の一部破断正面図である。
図2】扉ヒンジ構造が適用される冷蔵庫の正面図である。
図3】中ヒンジ部分を示す一部破断正面図である。
図4】扉ヒンジ構造の縦断側面図である。
図5】本発明に係る扉ヒンジ構造で支持された扉の状態を示しており、二点鎖線は、自重により扉が傾いた場合を示している。
図6】本発明の第2実施形態に係る扉ヒンジ構造の中ヒンジ部分を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態) 図1から図5に、本発明に係る扉ヒンジ構造をセンタフリー型の冷蔵庫に適用した第1実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、図1図2および図4に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2において冷蔵庫(貯蔵庫)1は、中間枠2で区分された上下ふたつの冷蔵室3・4を有する断熱箱体からなる冷蔵庫本体(貯蔵庫本体)5を備える。冷蔵室3・4は奥部で連通しており、両冷蔵室3・4の内部空気の冷却を担う冷却機構は、冷蔵庫本体5の上方に区画された機械室6に設置される圧縮機7、凝縮器8、凝縮器ファン9と、冷蔵室3の上部に設置される蒸発器10、送風ファン11などで構成される。
【0017】
冷蔵庫本体5の前面には、冷蔵室3・4の出し入れ口(開口部)14・15が形成されており、上方の出し入れ口14は、観音開き状に揺動支持される左右の上扉16・16で開閉可能に、下方の出し入れ口15は、観音開き状に揺動支持される左右の下扉17・17で開閉可能に構成されている。上下の扉16・17の裏面には、それぞれコ字状のマグネットパッキン18と、マグネットパッキン18の両端部を橋絡するように配されるマグネットシール19とが四角枠状に設けられている。マグネットパッキン18が出し入れ口14・15の縁部の冷蔵庫本体5および中間枠2の前面に吸着し、さらにマグネットシール19・19どうしがそれぞれ吸着することで、各冷蔵室3・4は各扉16・17により密閉状に閉塞される。
【0018】
図2に示すように冷蔵庫1の正面視において、左方に配された上下一対の扉16・17および右方に配された上下一対の扉16・17は、それぞれ扉ヒンジ構造22で揺動支持されている。左方の対の扉16・17を揺動支持する扉ヒンジ構造22と、右方の対の扉16・17を揺動支持する扉ヒンジ構造22とは、左右勝手違いの構造であり、以下では左方に配される扉対16・17の扉ヒンジ構造22について説明する。図1に示すように、扉ヒンジ構造22は、上扉16の上縁左隅部に配される上ヒンジ23と、下扉17の下縁左隅部に配される下ヒンジ24と、上扉16の下縁左隅部と下扉17の上縁左隅部との間に配される中ヒンジ25とを備える。
【0019】
図1および図4に示すように、上ヒンジ23は、垂直壁と水平壁とを備える断面L字状の上ヒンジプレート26と、上ヒンジプレート26の水平壁の下面に一体に形成され下向きに伸びる丸軸状の上ヒンジピン27とを備えており、垂直壁が左右2本の締結ビス28で冷蔵庫本体5の前面の左縁上部に締結固定される。下ヒンジ24は、垂直壁と水平壁とを備える断面逆L字状の下ヒンジプレート29と、下ヒンジプレート29の水平壁の上面に一体に形成され上向きに伸びる丸軸状の下ヒンジピン30とを備えており、垂直壁が左右2本の締結ビス31で冷蔵庫本体5の前面の左縁下部に締結固定される。上ヒンジピン27は、その中心軸線C1が正面視における垂直軸線で規定されるヒンジ軸線CA上に配され、下ヒンジピン30も、その中心軸線C2がヒンジ軸線CA上に配される。
【0020】
図1および図4に示すように、中ヒンジ25は、左右の水平方向に長い支持プレート32と、支持プレート32の後縁に一体に設けられて鉛直方向に伸びる取付プレート33とを備える断面逆L字状の中ヒンジプレート34と、支持プレート32の上面に一体に形成され上向きに伸びる丸軸状の上中ヒンジピン35と、支持プレート32の下面に一体に形成され下向きに伸びる丸軸状の下中ヒンジピン36とを備える。上中ヒンジピン35の中心軸線C3と下中ヒンジピン36の中心軸線C4とは、支持プレート32から伸びる垂直軸に沿うように配される。また、上中ヒンジピン35の中心軸線C3と下中ヒンジピン36の中心軸線C4とは、正面視においては同軸上に配され、側面視においては前後にずれた状態で配される。中ヒンジプレート34は、取付プレート33の左端部に設けられる、前後方向に伸びる回転中心軸39と、取付プレート33の右端部に設けられ、前後方向に伸びる調整軸40とで、冷蔵庫本体5の前面の左縁中央に固定される。調整軸40は、回転中心軸39を中心として中ヒンジプレート34を上下方向に揺動した状態で位置保持し、これら回転中心軸39、調整軸40により、上中ヒンジピン35と下中ヒンジピン36の傾斜姿勢を調整するための軸調整機構が構成される。
【0021】
図1に示すように、回転中心軸39は、冷蔵庫本体5の前面にねじ込まれるねじ軸41aと、ねじ軸41aよりも大径の操作頭部41bとを有するねじ体からなる固定ビス41で構成される。同様に、調整軸40は、冷蔵庫本体5の前面にねじ込まれるねじ軸42aと、ねじ軸42aよりも大径の操作頭部42bとを有するねじ体からなる調整ビス42で構成される。両ヒンジピン35・36よりも左側の取付プレート33、換言すれば取付プレート33の左端部には、固定ビス41のねじ軸41aよりも僅かに大きな孔径の丸孔からなる固定孔43が開設されており、両ヒンジピン35・36よりも右側の取付プレート33、換言すれば取付プレート33の右端部には、調整ビス42のねじ軸42aよりも僅かに大きな孔径の左右方向に長い長孔からなる調整孔44が開設されている。また、両孔43・44は、上中ヒンジピン35の上端部より下側であって、下中ヒンジピン36の下端よりも上側に配されている。中ヒンジプレート34は、固定孔43を介して冷蔵庫本体5に固定ビス41をねじ込み、調整孔44を介して冷蔵庫本体5に調整ビス42をねじ込むことにより、冷蔵庫本体5の前面に締結固定される。なお、冷蔵庫本体5に対する調整ビス42のねじ込み位置を変更することで、中ヒンジ25の姿勢を変更して、上中ヒンジピン35と下中ヒンジピン36の傾斜姿勢を調整することができる。
【0022】
上扉16および下扉17の上下面には、扉ヒンジ構造22を構成し、各ヒンジピン27・30・35・36を受入れる非貫通状のピン穴47を備える軸受体48がそれぞれ固定されている。図1に示すように、各軸受体48は有底筒状に形成されており、そのピン穴47の開口側に外向きに張り出すフランジ部49が形成されている。軸受体48はフランジ部49を除く部分が、各扉16・17の内部に埋設される状態で各扉16・17に対して圧嵌固定されている。
【0023】
上記の各ヒンジピン27・30・35・36は同径に設定されており、各ピン穴47も同径に設定されている。ピン穴47の孔径は、各ヒンジピン27・30・35・36の直径よりも僅かに大きく設定されて、各ヒンジピン27・30・35・36と各ピン穴47との間には、各扉16・17の揺動開閉操作を円滑に行えるようにするためのクリアランスが設けられている。なお、図面においては、クリアランスがあることを明確に表現するためにクリアランスを大きく作図しており、実際のクリアランスは図示したものよりも小さい。図1および図4において、符号50は、各扉16・17の揺動開閉時に、フランジ部49と中ヒンジプレート34、およびフランジ部49と下ヒンジプレート29との摺動抵抗を減じるためのカラーである。上扉16の重量は、中ヒンジ25がカラー50を介して受け止めており、下扉17の重量は、下ヒンジ24がカラー50を介して受け止めている。
【0024】
図4に示すように、上扉16を揺動支持する上ヒンジピン27の中心軸線C1と上中ヒンジピン35の中心軸線C3の前後方向の位置は異なっている。同様に、下扉17を揺動支持する上中ヒンジピン35の中心軸線C4と下ヒンジピン30の中心軸線C2の前後方向の位置も異なっている。このように、各扉16・17の上下を支持するヒンジピンの中心軸線(上ヒンジピン27と上中ヒンジピン35、下中ヒンジピン36と下ヒンジピン30)を、下側が前側に位置するように配すると、各扉16・17を閉塞状態から開放方向へと90度揺動させたとき、各扉16・17の揺動先端の高さ位置は閉塞時の揺動先端の高さ位置よりも高くなる。これにより、各扉16・17を閉塞状態から90度未満揺動した状態で揺動操作力を解除すると、各扉16・17は自重で閉塞方向へと揺動されて閉塞状態とされる。また、各扉16・17を閉塞状態から90度を超えて揺動した状態で揺動操作力を解除すると、各扉16・17は自重で全開方向へと揺動されて全開状態とされる。
【0025】
冷蔵庫本体5に対する上下の扉16・17の組付けは、まず、下ヒンジ24の下ヒンジプレート29を締結ビス31で冷蔵庫本体5へと締結固定する。詳しくは、図4に示すように、冷蔵庫本体5の内部には、ナット体51が予め固定されており、該ナット体51に対して下ヒンジプレート29を介して締結ビス31をねじ込むことにより、下ヒンジ24は既定の位置に固定される。下ヒンジ24が既定位置に固定されたとき、正面視において、下ヒンジピン30の中心軸線C2はヒンジ軸線CAと同軸上に配される。
【0026】
次に、下扉17の下側のピン穴47に下ヒンジピン30が侵入するように、下ヒンジ24に下扉17を装着し、さらに下扉17の上側のピン穴47に下中ヒンジピン36が侵入するように、下扉17に中ヒンジ25を装着する。この状態で、ナット体51に対して取付プレート33を介して固定ビス41および調整ビス42をねじ込んで、中ヒンジ25を冷蔵庫本体5へと締結固定する。このとき、固定ビス41と調整ビス42は完全に締め込むのではなく、中ヒンジ25の取付プレート33が冷蔵庫本体5と接する状態で移動できる程度の仮固定とする。
【0027】
次に、上扉16の下側のピン穴47に上中ヒンジピン35が侵入するように、中ヒンジ25に上扉16を装着し、さらに上扉16の上側のピン穴47に上ヒンジピン27が侵入するように、上扉16に上ヒンジ23を装着する。この状態で、ナット体51に対して上ヒンジプレート26を介して締結ビス28をねじ込むことにより、上ヒンジ23は既定の位置に固定される。上ヒンジ23が既定位置に固定されたとき、正面視において、上ヒンジピン27の中心軸線C1はヒンジ軸線CAと同軸上に配される。
【0028】
上下の扉16・17を上記の状態まで組付けたのちに中ヒンジ25を本固定する。固定ビス41のねじ軸41aと固定孔43、および調整ビス42のねじ軸42aと調整孔44との間には僅かに隙間があるため、中ヒンジ25は固定ビス41(回転中心軸39)まわりに僅かに回転させることができる。中ヒンジ25の本固定においては、これを利用して支持プレート32の右端が下側に傾斜するように中ヒンジ25の全体を時計まわり方向に回転させ、この状態で、固定ビス41および調整ビス42を締め込んで中ヒンジ25を本固定する。これにて、扉ヒンジ構造22による冷蔵庫本体5に対する上下の扉16・17の組付けが完了する。なお、ナット体51は所定角度だけ支持プレート32が右肩下がりに傾斜する位置に設けることもできる。
【0029】
従来の冷蔵庫では、各ヒンジピンの中心軸線はヒンジ軸線上に配されていたが、本実施形態では上下の扉16・17の組付けが完了したとき、中ヒンジ25はその全体が時計まわり方向に回転された状態で冷蔵庫本体5に固定される。これより、上中ヒンジピン35は、その中心軸線C3がヒンジ軸線CA上にある状態から、該中心軸線C3の上側が右側(閉じ位置にある上扉16の揺動先端側)に傾く状態とすることで、上中ヒンジピン35の上端周縁部がピン穴47の内面に接して、上扉16を左向きに変位させる。また、下中ヒンジピン36は、その中心軸線C4がヒンジ軸線CA上にある状態から、該中心軸線C4の下側が左側(閉じ位置にある下扉17の揺動基端側)に傾く状態として、下中ヒンジピン36の下端周縁部がピン穴47の内面に接して下扉17を右向きに変位させる。
【0030】
図5の二点鎖線は、両中心軸線C3・C4がヒンジ軸線CAと同軸上に配され、扉の自重により各扉16・17が傾いて支持されている状態を示している。本実施形態では、上記のように、上中ヒンジピン35の中心軸線C3、および下中ヒンジピン36の中心軸線C4を上記のように傾斜させたので、左の上扉16は、上ヒンジピン27を支点にしてその下側が上中ヒンジピン35の上端で右向き(揺動先端側)に移動して(図3参照)、図5の実線で示すように上扉16の全体を反時計まわりに回動させることができる。また、左の下扉17の上側は、下ヒンジピン30を支点にしてその上側が下中ヒンジピン36の下端で左向き(揺動基端側)に移動して(図3参照)、図5の実線で示すように反時計まわりに回動させることができる。なお右の上下の扉16・17では、左右勝手違いの現象が生じる。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る扉ヒンジ構造22によれば、各ヒンジピン27・30・35・36の配置形態により、自重による上下の扉16・17の傾きを、上中ヒンジピン35および下中ヒンジピン36による上下の扉16・17の傾動変位で相殺して、扉16・17を適正姿勢とすることができるので、上下の扉16・17の角部の位置ずれが生じること、あるいはマグネットシール19が機能不全となることを防ぐことができる。したがって、本実施形態によれば、閉じ姿勢における上下の扉16・17の傾きに由来して、貯蔵庫の外観の体裁が悪化することや、断熱性能が低下することなどを防ぐことができる。
【0032】
上中ヒンジピン35と下中ヒンジピン36の傾斜角度を調整するための軸調整機構を設けたので、上下の扉16・17の傾き具合に応じて、上中ヒンジピン35と下中ヒンジピン36の傾斜角度を調整することができる。したがって、より簡便に上下の扉16・17を適正姿勢とすることができる。
【0033】
軸調整機構を、中ヒンジプレート34の左右の揺動基端側を支持して、前後方向に伸びる回転中心軸39と、中ヒンジプレート34の左右の揺動先端側を支持する調整軸40とを備えるものとしたので、中ヒンジプレート34を回転中心軸39で軸支したのち、支持プレート32が揺動先端側に下り傾斜する姿勢になるように調整軸40で中ヒンジプレート34を位置保持させるだけで、上中ヒンジピン35と下中ヒンジピン36の傾斜姿勢を調整することができる。したがって、上下の扉16・17の傾き具合に応じて、上中ヒンジピン35および下中ヒンジピン36の傾斜角度を調整することが可能となり、より簡便に上下の扉16・17を適正姿勢とすることができる。
【0034】
(第2実施形態) 図6に、本発明に係る扉ヒンジ構造の第2実施形態を示す。本実施形態では、調整孔44の構成を変更した点が先の第1実施形態と相違しており、調整孔44は、上下方向に長い長孔として、長孔の範囲において固定ビス41(回転中心軸39)まわりに中ヒンジプレート34を上下方向に揺動できるようにした。これによれば、調整ビス42を緩操作してから、調整孔44の開口の範囲で中ヒンジプレート34を上下方向に揺動させ、最後に調整ビス42を締操作するだけで、中ヒンジプレート34を任意の姿勢とすることができる。また、簡便に上中ヒンジピン35と下中ヒンジピン36の傾斜角度を調整して、上下の扉16・17を適正姿勢とすることができる。また、調整孔44を中ヒンジプレート34の上下方向の揺動を許す長孔状に形成したので、中ヒンジ25の固定姿勢の調整幅をより大きくすることができる。なお、その他は第1実施形態と同様であるので、同じ構成、構造、および部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0035】
本発明の扉ヒンジ構造は、各実施形態に示した冷蔵庫の揺動扉のヒンジ構造以外に、冷凍庫、保冷庫、保温庫、温蔵庫などの貯蔵庫の揺動扉のヒンジ構造に適用できる。また、上下一対の扉対が、1列、あるいは左右方向に3列以上設けられた貯蔵庫の扉ヒンジ構造にも適用できる。本発明の扉ヒンジ構造を構成する回転中心軸39および調整軸40は、ブラインドリベットで構成することができる。本発明の扉ヒンジ構造には、対となるカム部材で構成される、上下の扉16・17の閉じ動作あるいは開き動作を助勢する助勢構造や、上下の扉16・17の全閉状態を保持、あるいは全開状態を保持する保持構造を組み込むことができる。
【符号の説明】
【0036】
5 貯蔵庫本体(冷蔵庫本体)
14 出し入れ口(開口部)
15 出し入れ口(開口部)
16 上扉
17 下扉
22 扉ヒンジ構造
23 上ヒンジ
24 下ヒンジ
25 中ヒンジ
27 上ヒンジピン
30 下ヒンジピン
32 支持プレート
33 取付プレート
34 中ヒンジプレート
35 上中ヒンジピン
36 下中ヒンジピン
39 回転中心軸
40 調整軸
42 調整ビス
42a ねじ軸
42b 操作頭部
43 固定孔
44 調整孔
47 ピン穴
CA ヒンジ軸線
C1 上ヒンジピンの中心軸線
C2 下ヒンジピンの中心軸線
C3 上中ヒンジピンの中心軸線
C4 下中ヒンジピンの中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6