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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】重合体のフローリアクター合成
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/00 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
C08G73/00
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021108462
(22)【出願日】2021-06-30
(62)【分割の表示】P 2016199310の分割
【原出願日】2016-10-07
(65)【公開番号】P2021169609
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】14/882,073
(32)【優先日】2015-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キンレン, パトリック ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ツヴァイク, アンドリュー エム.
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-529651(JP,A)
【文献】特表2012-509386(JP,A)
【文献】特表平10-509751(JP,A)
【文献】S.N.Beesabathuni et al.,Fabrication of conducting polyaniline microspheres using droplet microfluidics,RSC Advances,2013年,Vol.3,p.24423-24429
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00-73/26
C08G 61/00-61/12
C08G 81/00-85/00
C08F 2/00-2/60、6/00-246/00、301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー塩を生成するために1つ又は複数の単量体を重合するためのシステムであって、
内径を有する一定のチューブであって、
水性単量体溶液及び非水性溶液を含む乳化された反応物質組成物を受け入れるために構成される少なくとも1つの入口ポート、並びに
ポリマー塩を排出するために構成される少なくとも1つの出口ポート
を有する一定のチューブと、
前記一定のチューブの少なくとも一部を受け入れるように寸法形成された温度コントローラと、
入口部及び出口部を有し、反応物質組成物を乳化するように構成された混合室であって、前記出口部が前記チューブの前記入口ポートに流体連結されている、混合室と、
前記混合室の前記入口部に流体連結されている、少なくとも1つの流体流れ制御装置と
を含み、
前記内径が、100ミクロンから4000ミクロンの間であり、前記ポリマー塩が、1:1から1:0.2の単量体と塩のモル比を有し、前記単量体がアニリンであり、前記非水性溶液がジノニルナフタレンスルホン酸である、システム。
【請求項2】
導電性ポリマー塩の拡散制限合成のためのシステムであって、
拡散制限重合条件を提供する、内径を有する一定のチューブであって、
水性単量体溶液及び非水性酸溶液を含む乳化された反応物質組成物を受け入れるために構成される少なくとも1つの入口ポート、並びに
拡散制限重合された導電性ポリマー塩を排出するために構成される少なくとも1つの出口ポート
を有する一定のチューブと、
前記一定のチューブの少なくとも一部を受け入れるように寸法形成された温度コントローラと、
入口部及び出口部を有し、反応物質組成物を乳化するように構成された混合室であって、前記出口部が前記一定のチューブの前記入口ポートに流体連結されている、混合室と、
前記混合室の前記入口部に流体連結されている、少なくとも1つの流体流れ制御装置と
を含み、
前記内径が、100ミクロンから4000ミクロンの間であり、前記導電性ポリマー塩が、1:1から1:0.2の単量体と塩のモル比を有し、前記単量体がアニリンであり、前記非水性酸溶液がジノニルナフタレンスルホン酸である、システム。
【請求項3】
単量体の水性溶液と酸の有機溶媒溶液のエマルションをフローリアクターの中に導入することであって、前記フローリアクターが、内径を有する一定長のチューブを備えている、導入することと、
前記一定長のチューブの中で、拡散制限条件下で前記単量体を重合することと、
前記酸を用いて、重合された前記単量体の塩を前記一定長のチューブの中で形成することと
を含む、重合された単量体の塩を製造する方法であって、
前記内径が、100ミクロンから4000ミクロンの間であり、前記重合された単量体の塩が、1:1から1:0.2の単量体と塩のモル比を有し、前記単量体がアニリンであり、前記酸がジノニルナフタレンスルホン酸である、方法。
【請求項4】
アニリンの水性溶液と有機酸の有機溶媒溶液のエマルションをフローリアクターの中に導入することであって、前記フローリアクターが、内径を有する一定長のチューブを備えている、導入することと、
前記エマルション又は前記フローリアクターに酸化剤を導入することと、
前記一定長のチューブの内径の内で、拡散制限条件下で前記アニリンを重合すること、及びその酸性塩を形成することと
を含む、重合されたアニリンの酸性塩を製造する方法であって、
前記内径が、100ミクロンから4000ミクロンの間であり、前記重合されたアニリンの酸性塩が、1:1から1:0.2の重合されたアニリン酸性塩のモル比を有し、前記有機酸がジノニルナフタレンスルホン酸である、方法。
【請求項5】
単量体の水性溶液と酸の有機溶媒溶液のエマルションをフローリアクターの中に導入することであって、前記フローリアクターが、一定長のチューブを備え、前記一定長のチューブが、
内径、及び
重合された単量体を受け入れるための表面
を有する、導入することと、
前記エマルションに触媒を導入することと、
前記内径内で、拡散制限条件下で前記単量体を重合することと、
前記一定長のチューブの中で、前記表面上に重合された前記単量体の少なくとも一部を堆積することと、
前記酸を用いて重合された前記単量体の塩を形成することと
を含む、重合された単量体の塩を製造する方法であって、
前記内径が、100ミクロンから4000ミクロンの間であり、前記重合された単量体の塩が、1:1から1:0.2の単量体と塩のモル比を有し、前記単量体がアニリンであり、前記酸がジノニルナフタレンスルホン酸である、方法。
【請求項6】
単量体と酸のエマルションをフローリアクターに導入することであって、前記フローリアクターが、内径を有する一定長のチューブを備える、導入することと、
前記単量体を重合することと、
前記一定長のチューブの中で、前記酸を用いて重合された前記単量体の塩を形成することであって、前記重合された単量体の塩の大部分が前記チューブの壁に堆積する、形成することと、
前記重合された単量体の塩から、水で洗浄することにより、水溶性反応物、試薬及び/又は副生成物を除去することと、
有機溶媒で、前記チューブの前記壁から、前記重合された単量体の塩を溶離することと
を含む、ポリマーを製造する方法であって、
前記単量体がアニリンであり、前記酸がジノニルナフタレンスルホン酸であり、前記内径が、100ミクロンから4000ミクロンの間であり、前記重合された単量体の塩が、1:1から1:0.2の単量体と塩のモル比を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
共役系重合体材料は、化学構造を適切に設計することにより、耐腐食性及び制電性をもたらす添加剤として使用されたり、有機発光ダイオード(OLED)、太陽電池、半導体、ディスプレイスクリーン、及び化学センサなどの電子用途において利用されたりすることができる。しかしながら、共役系重合体材料は、バッチ処理で調製された場合、高い製造コスト、材料の不一致、処理上の困難という課題を有することが多い。
【背景技術】
【0002】
このような進歩にも関わらず、現状の方法では、導電性ポリマーの利用拡大に限りがある。例えば、ポリアニリン(PANI又は「エメラルジン」)は、高い製造コスト、材料の不一致、及びバッチ処理の困難により完全に活用されていない導電性ポリマーのうちの1つである。PANIは、最終仕上げとしてプリント基板製造において広く使用されており、銅及びハンダ付けされた回路を腐食から保護する。PANIは、水溶液中でアニリンを化学酸化重合することによって調整されることが多い。この手法によって得られた材料は、ほとんどの有機溶媒において非晶質及び不溶性である。PANIの反応時間は、比較的長い(例えば、長時間でわたる)。評価中の現状のフローリアクターの多くは、マイクロ流体チップ又は小型化カラム、並びに処理にコスト及び複雑さを加えるフロー装置制御用の特殊機器を使用する。
【発明の概要】
【0003】
第1の実施形態では、方法が提供されており、この方法は、単量体と酸のエマルションを形成することと、エマルションをフローリアクターの中に導入することであって、フローリアクターが、約1から約4000ミクロンの間の内径の一定長のチューブを備えている、導入することと、単量体を重合し、その酸性塩を形成することとを含む。
【0004】
一態様では、この方法は、重合された単量体の塩を回収することをさらに含む。別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、この方法は、触媒をエマルション又はフローリアクターに導入することをさらに含む。
【0005】
別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、エマルションは、単量体の水溶液及び酸の有機溶媒溶液を含んでいる。
【0006】
別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、一定長のチューブは巻回されている。
【0007】
別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、重合された単量体の塩は、一定長のチューブの中に実質的に含まれており、チューブはフルオロポリマーである。別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、水を用いて未反応材料をチューブから取り除くことをさらに含む。別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、この方法は、有機溶媒を用いて、重合された単量体の塩をチューブから回収することをさらに含む。
【0008】
第2の実施形態では、方法が提供されており、この方法は、アニリンと有機酸又はスルホン酸とのエマルションを形成することと、エマルションをフローリアクターの中に導入することであって、フローリアクターが、約1から約4000ミクロンの間の内径の一定長のチューブを備えている、導入することと、酸化剤をエマルション又はフローリアクターに導入することと、アニリンを一定長のチューブの内径の中で重合し、その酸性塩を形成することとを含む。
【0009】
一態様では、一定長のチューブは巻回されている。別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、重合されたアニリンの塩は、一定長のチューブの中に実質的に含まれており、チューブはフルオロポリマーである。
【0010】
別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、この方法は、有機溶媒を用いて、重合されたアニリンの塩をチューブから回収することをさらに含む。
【0011】
別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、有機酸又はスルホン酸に対するアニリンのモル比は1と0.2の間である。別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、アニリンの総流量は約0.01ミリモル/分から約0.2ミリモル/分であり、結果として、フローリアクターの中へのエマルション反応混合物の流量が0.1ミリリットル/分から約0.5ミリリットル/分となる。別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、酸化剤は、約0.001から約0.2ミリリットル/分の流量で導入される。
【0012】
第3の態様では、1つ又は複数の重合体を生成する1つ又は複数の単量体を反応させるための重合装置が提供されており、この重合装置は、約1から約1000ミクロンの間の内径の一定量のチューブであって、チューブが、少なくとも1つの入口部及び少なくとも1つの出口部を含んでおり、一定量のチューブが、反応物質組成物を受け入れるための少なくとも1つの入口ポート、及び少なくとも1つの出口ポートを有している、一定量のチューブ、チューブの少なくとも一部を受け入れるように寸法形成された温度コントローラ、チューブの入口部に流体連結された出口部、及び入口部を有している混合室、並びに混合室の入口部に流体連結された少なくとも1つの流体流れ制御装置を備えている。
【0013】
一態様では、チューブは、温度コントローラの周りに巻き付けられている。
【0014】
別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、少なくとも1つの流体制御装置は、単量体流体流れ制御装置及び酸流体流れ制御装置を備えている。別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、この装置は、混合室の出口部及びチューブの入口部に流体連結された第2の混合室をさらに備えている。別の態様では、単独で、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、この装置は、第2の混合室又はチューブに流体連結された触媒流体流れ制御装置をさらに備えている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示のさらなる利点は、縮尺通りではない図面と併せて考察するとき、詳細な説明を参照することによって明らかとなる。同様の参照番号は幾つかの図面を通して同様の要素を示す。
【0016】
図1A】本明細書で開示且つ説明されている例示的なフローリアクターシステムの図である。
図1B】本明細書で開示且つ説明されている例示的な連続フローリアクターシステムの図である。
図1C】本明細書で開示且つ説明されている例示的な平行フローリアクターシステムの図である。
図2】本明細書で開示されている別の例示的なフローリアクターシステムの図である。
図3】本明細書で開示且つ説明されている別の例示的なフローリアクターシステムの図である。
図4】本明細書で開示且つ説明されているスプールフローリアクターの図である。
図5】本明細書で開示且つ説明されているシステム及び方法を使用する重合方法のプロセスフロー図である。
図6】フローリアクターの内径領域の断面図である。
図7】内径領域の一部を占有する導電性ポリマー反応生成物を有するフローリアクターの内径領域の断面図である。
図8】本開示に従って、背圧と反応時間を例示するグラフである。
図9】本明細書で開示且つ説明されているシステム及び方法を使用する重合方法のプロセスフロー図である。
図10】本明細書で開示且つ説明されているシステム及び方法を使用するPANI-DNNSAの重合方法のプロセスフロー図である。
図11】本明細書で開示且つ説明されているシステム及び方法を使用して調製されたPANI-DNNSAのUV-Visスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書では、フローリアクター化学処理によって、ポリアニリン-ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)(以後「PANI-DNNSA」とも呼ばれる)を溶剤溶解性重合体として調製することが開示されている。開示されたシステム及び方法は、リアクター処理後の操作がない状態で純化されたエメラルジン塩を直接捕集する特有の処理シーケンスを提供する。本システム及び方法は、導電性ポリマー、具体的には、導電性ポリマー塩(例えば、PANI-DNNSA)を合成する既知の方法に対する改善をもたらす。本システム及び方法では、反応時間が非常に短く、これは、長い反応時間を要する従来の方法を用いては実現できない。
【0018】
例えば、本システム及び方法は、可溶性であり、本質的に導電性である重合体としてのポリアニリン(PANI)塩の効率良く且つ制御された合成に対して改善をもたらす。本明細書では、PANIジノニルナフタレンスルホン酸性塩(PANI-DNNSA)又は「エメラルジン塩」の連続流合成は、フローリアクターを用いるように記載されている。幾つかの実施例では、フローリアクターは、マイクロ流体(1から約750umの内径)チューブリアクターを備えている。幾つかの実施例では、マイクロ流体チューブは、フルオロポリマー(例えば、TEFLON(登録商標))を備えている。チューブリアクターは、形成される重合体の堆積に適切な表面と、導電性ポリマー塩の直接純化が容易な表面とを設ける。
【0019】
本明細書で使用されている用語「フローリアクター」は、マイクロフローリアクターを含んでいる。本明細書では、マイクロフローリアクターは、流れ面、例えば、1mm(1000ミクロン)より短いチューブ内径(I.D.)を有するフローリアクターとして使用されている。
【0020】
以下でさらに説明されているように、幾つかの実施例では、重合反応が進行するにつれて、重合生成物の大部分がチューブの壁に堆積する。重合物は、水で洗浄して、水溶性反応物、試薬、及び副生成物を除去することによって、純化することができる。
【0021】
フローリアクターの中で形成されてチューブの壁に堆積された導電性ポリマー塩を有機溶媒で溶離し、固形鋳込み成形(solid casting)、膜形成、又は沈殿に適した可溶性導電性ポリマー塩を提供することができる。この方法は、導電性ポリマー単量体と塩の比率が約1:1から約1:0.2である導電性ポリマー塩の調製を提供する。この装置は、例えば、UV-Vis分光分析、赤外線、及び/又は質量分光分析によるin situ特性評価に対して構成可能である。
【0022】
少なくとも1つの反応物を重合するための装置及び関連する方法が説明されている。特定の実施例では、装置は、混合室及びマイクロ流路を備えているマイクロ流体装置である。さらに、リアクターは、マイクロ流路に動作可能に接続されている出力室及び検出ユニットをさらに備えてもよい。
【0023】
図1Aを参照すると、フローリアクターシステム100が示されている。第1の反応物10及び第2の反応物20は、第1の混合ユニット30に導入される。図1Aで示されているリアクターシステム100は、従来のマクロスケール装置又はバッチリアクターよりも効率的に導電性ポリマー塩を(単位時間当たりの質量で)生成することができる。フローリアクター100は、室温から約250℃の処理温度の範囲内で、最も有利には、100℃より低い処理温度で作動可能である。室温とは、少なくとも水の氷点を越える温度から水の沸点より低い温度を含む。幾つかの実施例では、周囲温度とは、約50°F(10℃)から約90°F(32℃)の間である。幾つかの実施例では、反応物10、20は、フローリアクターに導入される前に所望のモル比で混合されるように、所定の流量及び/又は所定の濃度で、第1の混合ユニット30に個別に導入される。他の実施例では、反応物10、20は、フローリアクターに導入される前に所望のモル比で混合されるように、第1の混合ユニット30に共に導入される。第1の混合ユニット30は、任意の従来の混合装置であってもよい。幾つかの実施例では、混合装置は、1つ又は複数の溶液、例えば、水溶液及び非水溶液を乳化することが可能な高速又は超高速の混合装置である。幾つかの実施例では、第1の反応物10は水溶液の中に含まれ、第2の反応物20は非水溶液の中に含まれる。第1の混合ユニット30は、第1の反応物10及び第2の反応物20を乳化するように設計される。第3の反応物50が、第2の混合ユニット60で第1及び第2の反応物に加わる。幾つかの実施例では、反応物50は触媒である。第2の混合ユニット60で混合した後、反応物は、入口ポート65を介してチューブ70に導入される。チューブ70は、分析装置90によってモニターされ得る排出ポート80を備える。分析装置90は、未反応材料及び/又は反応生成物などの、排出ポート80から流れる材料を調べて分析する分光装置を含み得る。分光装置は、UV-Vis、IR(近赤外線、中赤外線、及び遠赤外線)、及び質量分光分析を含む。キャパシタンス、pHなど、他の分析及び調査技法を使用することができる。圧力調整ユニット67は、重合過程中又は重合材料の捕集工程の過程中に圧力の変化をモニターするためにフローリアクター70の出口部に位置付けされてもよい。圧力調整ユニット67からの情報は、単量体がフローリアクターに導入されることを中止するためにコントローラによって使用されてもよい。さらに、例えば、処理の過程中の圧力変化をモニターするために追加の圧力調整ユニット67をフローリアクター70の入口部に位置付けしてもよい。流体ライン69は、フローリアクター70に個別に流体連結されてもよく、それにより、フローリアクターユニット70から重合生成物を捕集するためにパージ媒体66(例えば、水)又は捕集媒体68(例えば、溶媒)を導入する。
【0024】
幾つかの実施例では、フローリアクターシステム100は、チューブ70に対して単一の入口ポートを有する。他の実施例では、フローリアクターシステム100は、入口ポート65と排出ポート80の間に位置付けされた追加の入口ポートを有する。図1Aで示されているように、チューブ70は、拡張したチューブ状のフローリアクターを設けるために巻回させてもよい。
【0025】
幾つかの実施例では、チューブ70は、温度制御及び/又は支持及び/又はチューブ70の破損からの保護をもたらすハウジング40の中に含まれる。幾つかの実施例では、ハウジング70は、チューブ70の少なくとも一部を囲む内部表面を有し、それにより、巻回したチューブ70が少なくとも部分的にハウジング40の内部に含まれる。幾つかの実施例では、ハウジング40は、チューブ70に対する温度制御(加熱及び/又は冷却を含む)をもたらすように構成される。
【0026】
図1Bで示されているように、代替的なフローリアクター構成100aが、連続連結された巻回構成で配置された複数のチューブ70a、70bを有するように示される。チューブ70a、70bは、寸法的に同じであってもよいし、異なる長さ及び/又は異なる内径を有してもよい。この構成では、ハウジングは、チューブ70a及び70bを受け入れる別個のセクション40a、40bに分岐され得る。これらのセクションは、チューブを加熱及び/又は冷却するために個別に操作することができる。代替的に、フローリアクター構成100aは、チューブ70a、70bを受け入れる単一のハウジングを有してもよい。プロセス流がフローリアクターに入る前に分割されるチューブの平行なアレイ構成に対して、連続的なアレイは、反応混合物が拡散制限条件の中で維持される時間量を最大化する。任意の特定の理論に縛られるわけではないが、拡散制限条件の中で反応混合物を維持することにより、バッチ処理に比べて、エマルション内の反応物から導電性ポリマー塩を生成するための現在開示されている反応の改善がもたらされる。本明細書で開示されている方法及びシステムは、反応物のエマルションに対する上記の拡散制限条件を提供する。
【0027】
図1Cを参照すると、例示的なフローリアクターシステム100bが示されている。複数のフローリアクターユニット70c、70d、及び70eが、平行流構成で示されている。各フローリアクター70c、70d、及び70eは、流制御弁63を介して個別に隔離され得る。流制御弁63は、各フローリアクターの入口部及び出口部に位置付けされ、対応するフローリアクターに単量体溶液を導入する。流制御弁63は、手動で操作してもよく、且つ/又は、従来の制御装置を用いるコンピュータ制御のために構成されたソレノイドベースであってもよい。流制御弁63は、分散液の逆流を防止する1つ又は複数のチェック弁を含んでもよい。1つ又は複数の圧力調整ユニット67は、重合過程中又は重合材料の捕集工程の過程中に圧力変化をモニターするために、フローリアクターのうちの1つ又は複数の出口部に配置されてもよい。追加の圧力調整ユニット67をさらに各フローリアクターの入口部に配置してもよい。流制御弁63をコントローラからの圧力データに連結し、パージ及び/又は重合体回収を活性化するためにフローリアクター70c、70d、及び70eのうちの1つ又は複数を隔離してもよい。この構成では、フローリアクターシステム100bは、フローリアクターユニット70c、70d、及び70eのうちの1つ又は複数を選択的に隔離することによって継続的に操作することができる。これは、重合生成物の捕集及び/又は残りのフローリアクターユニットのうちの1つ又は複数への単量体の導入を維持しながらのメンテナンスのためである。代替的に、フローリアクターシステム100bは、例えば、フローリアクターユニット70c、70d、及び70eのうちの1つ又は複数への単量体の導入を一時的に中止させることによって、半継続的に操作することができる。1つ又は複数のフローリアクターユニット70c、70d、及び70eから重合生成物を選択的に捕集するため、追加の流体ライン69を流制御弁63のうちの1つ又は複数に個別に流体連結してもよく、それにより、パージ媒体66(例えば、水)又は捕集媒体68(例えば、溶媒)を導入する。フローリアクターユニット70c、70d、及び70eのうちの1つ又は複数は、チューブの内径から回収された重合生成物を伴う又は伴わない搬送のためにフローリアクターシステム100bから物理的に取り外されてもよい。
【0028】
これより図2及び3を参照すると、代替的なフローリアクター構成が示されている。したがって、システム100bは、線形のチューブ70構成を有している。幾つかの実施例では、システム100bにおけるチューブ70の断面は、それぞれ個別に約100ミクロンから4000ミクロンの断面形状を有する、長方形又はその他の形状である。図3は、反応物10、20を導入するための揚水装置15、25、55、及び52混合ユニット30、60を含むシステム100cを示す。揚水装置は、シリンジポンプ、回転弁ポンプ、置換ポンプなどを含んでもよい。
【0029】
図4を参照すると、幾つかの実施例では、チューブ70は、温度制御部材75の表面の上に又はその周りに、図示されているように巻回されていたり、巻き付けられていたりする。温度制御部材75は、高さHを有する部材75a、75bの間のシリンダーであり得る部材78によって分けられた長さLを有しており、所定の長さのチューブ及び/又は支持及び/又は加熱/冷却を提供する。幾つかの実施例では、チューブ70は、温度制御部材75の表面の周りに実質的に巻回されていたり、巻き付けられていたりする。温度制御部材75の表面の長手方向軸(線B-Bによって示されている)は、チューブ70のターンに対して実質的に垂直である。幾つかの実施例では、抵抗加熱を有する金属ブロックからなる大きな温度制御部材については、該システムは、熱が、ブロック(巻回又は巻き付けされたチューブの内側)から入り、対流を通じて外部環境へと少なくとも部分的に排出されることを可能にするように構成され得る。冷却によるリアクターの作動を必要とし得るフローリアクターシステム100の構成については、ハウジング40の中にリアクターチューブを完全に嵌め込むことを実現することができる。他の実施例では、チューブ70は、巻き付けられたコイルではなく、チューブの片側又は片面だけではなく、チューブの全ての側面から熱を制御するように構成された何らかの他の構成である。温度制御部材75は、媒体を冷却するように構成されてもよく、又は制御ユニットに接続された1つ又は複数のプロセッサによって制御することができる電気抵抗加熱又は他の形態の加熱を受け入れるように構成されてもよい。一態様では、巻回したチューブ70は、巻回されたセクションにわたってほぼ同じ内径を有する。他の態様では、巻回したチューブ70の内径は、入口ポート65から排出ポート80まで変動する。
【0030】
幾つかの実施例では、ハウジング40は、温度制御部材75と組み合わせて使用される。ハウジングは、金属、セラミック、又はプラスチックから作られてもよく、加熱要素、冷却要素、温度センサ、圧力センサなどのうちの1つ又は複数を含んでもよい。チューブ70は、支持及び/又は保護をもたらすためにハウジング40によって取り囲まれ得る。幾つかの実施例では、フローリアクターシステム100は、マイクロ流体リアクターである。一態様では、リアクターシステム100は、マイクロ流体チューブ70を備えている。マイクロ流体チューブ70は、例えば、温度制御部材75の外面の周りでコイル状に巻回又は巻き付けされている、約1000ミクロン未満、約900ミクロン未満、又は約800ミクロン未満から、最小で約100ミクロンの内径を有するチューブである。幾つかの実施例では、チューブ70のターンは、互いに対して非常に近い距離で離間されている。幾つかの実施例では、チューブ70の1つ又は複数のターンの間の個々の距離は、約0から100ミクロンの間である。幾つかの実施例では、ターンによってチューブが接触するわけではない。他の実施例では、チューブのターンによって、熱制御の改善のためにチューブのターン間の空気流が制限又は防止される。
【0031】
他の実施例では、ハウジング40は、チューブを加熱及び/又は冷却するように構成された、気候によって制御される環境である。このような構成では、チューブ70のターンの間の間隔は、熱制御を容易するように使用されてもよい。チューブ70と組み合わせたハウジング40の熱制御構成は、液体、固体、又は気体のいずれかの使用を含んでもよい。
【0032】
図5を参照すると、プロセスフロー101は、本明細書に開示されている方法の例として示されている。したがって、ステップ105では、非水溶媒の中で水性単量体と塩のエマルションを調製することが示されている。ステップ110では、エマルション及び触媒をマイクロリアクターチューブに導入することが示されている。所定の時間の後、反応物のうちの1つ又は複数の流れが止められる場合があり、ステップ115で示されているように、任意選択的に、水を用いてマイクロリアクターチューブを洗浄することが実行され得る。ステップ115は、未反応反応物及び/又は低分子量生成物を除去するように実行され得る。ステップ120では、有機溶媒を用いて重合体をマイクロリアクターチューブから回収することが実行される。
【0033】
図6及び図7では、内径Dを有するチューブ孔の内表面71を有するチューブ70の断面が示されている。幾つかの実施例では、最大直径は、拡散制限反応(diffusion-limited reaction)の利点が減少する直径よりも小さい。この最大直径は、4000ミクロンほどであってもよく、高圧チューブで使用されるチューブ径に類似する。他の実施例では、4000ミクロン未満、3000ミクロン未満、又は1000ミクロン未満から、最小で約100ミクロンの内径により、最適な結果が得られる場合がある。任意の特定の理論に縛られるわけではないが、本明細書で開示且つ説明されている反応のより迅速な反応速度は、リアクターチューブの内径寸法をマイクロ流体システムにおいて10から10ほどまで縮小させるときに起きると考えられている。これは、単位時間当たりの反応容積の何らかの釣合いとして以前報告された。一実施例では、毛細管70は、ガラス、金属、プラスチック、或いは、重合体(例えば、フルオロポリマー)が内表面にコーティングされたガラス又は金属から作られる。チューブは、別の重合体の中に包まれてもよく、又は金属でコーティングされてもよい。
【0034】
チューブ長は、圧力を扱うためのシステムの選択された構成要素の能力(ポンプ、チューブの破裂強度、取り付け部品など)に基づいて選択されてもよい。現在開示されているシステムとの使用に適したチューブの最大長は、背圧と、チューブの長さ全体を通して生成物を搬送する能力との関数である。幾つかの実施例では、システムは、システムが約20bar(280psi)以下で作動するようなチューブ内径を有して連結されたチューブ長で作動するように構成されてもよい。幾つかの実施例では、4000ミクロン未満の内径を有するチューブでは、チューブの長さは500メートルを越えない。他の実施例では、チューブ70は、約100メートル以下の長さの、1000ミクロン未満の直径のチューブ(マイクロ流体チューブ)である。その他の組み合わせのチューブの直径及び長さが、システムの作動パラメータ及び所望の単位時間当たりの反応容積と比例するように使用されてもよい。
【0035】
チューブの断面は、任意の形状であってもよく、好ましくは円形である。幾つかの実施例では、図7で示されているように、重合は、チューブ孔の内表面71上で生じる。重合生成物73が、内径Dを、縮小した直径D’に制限する。幾つかの実施例では、チューブ内径又は内径Dの縮小は、長手方向軸A-A、B-Bの周りで対称的である。幾つかの実施例では、チューブ内径又は内径Dの縮小は、長手方向軸A-A、B-Bの周りで非対称的である。チューブ70の直径Dを直径D’に縮小することによって、本明細書に記載のプロセスを制御するために部分的に測定及び/又は使用することができる背圧が生じる。
【0036】
図8で示されるように、この背圧をモニターすることができる。重合の初期段階では、時間T1において、背圧400は、チューブ70内に供給される乳化した反応混合物の粘度及び流量と一致している。重合によってチューブ70内径が縮小する期間T2の間、背圧が増加し始め、閾値450に近付く。幾つかの実施例では、システムは、背圧値420が所定の閾値450に達するときに重合を止めるように設計されている。期間T2で示されている背圧の変化率は、反応物の粘度、反応物及び/又は触媒のモル濃度、温度、流量、並びにこれらの組み合わせを操作することによって、毛細管チューブの破裂強度及びその他のリアクターパラメータを考慮して、調節することができる。図9は、現在開示されている方法の実施例を表すプロセスフロー図200を示す。したがって、ステップ205では、反応物のエマルション及び触媒をマイクロリアクターチューブ内へとポンピングすることが示されている。ステップ210では、重合工程の間に反応物のエマルションの背圧をモニターすることが示されている。ポンピング装置を備えた外付け又は電気の従来型圧力モニター装置を使用することが想定されている。ステップ215で示されているように、閾値背圧に一旦達したら、反応物のエマルションの導入が止められる。ステップ220では、有機溶媒を用いて洗浄することによって、製品重合体をマイクロリアクターチューブから回収することが示されている。
【0037】
例えば、本明細書で開示された方法は、共役系導電性ポリマーであるポリアニリン-ジノニルナフタレンスルホン酸性塩(PANI-DNNSA)の製造に適用することができる。PANI-DNNSAは、有機発光ダイオード(OLED)、太陽電池、半導体、ディスプレイスクリーン、及び化学センサなどの電気用途のための導電性ポリマーである。
【0038】
したがって、PANI-DNNSA塩の連続流合成プロセスの実施例が提供されている。フロー装置は、酸化試薬を水性アニリン及び有機可溶性DNNSAの予備形成エマルションに添加することを可能にするように設計された。最初の試験事例は、酸化触媒としての過硫酸アンモニウムの存在の中でのアニリン及びDNNSAの等モル量のエマルション重合を評価する。この反応は、以下の式(1)で示されている。
【0039】
【0040】
したがって、図10を参照すると、プロセスフロー図300が示されている。ステップ302及び304では、アニリンを含む水性組成物と、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)を含む非水性組成物とをそれぞれ第1の混合器の中に導入する。ステップ310では、反応物のエマルションを第1の混合器の中で形成することが実行される。ステップ315では、触媒及び反応物のエマルションを第2の混合器の中に導入することが実行される。ステップ320では、マイクロリアクターチューブに導入することと、閾値背圧を得ることとが実行される。ステップ325では、反応物のエマルション及び触媒のマイクロリアクターチューブへの導入を停止することが実行される。任意選択的に、未反応材料及び/又は低分子量重合体を除去するために、ステップ330では、水を用いてマイクロリアクターチューブを洗浄することができる。ステップ335では、有機溶媒を用いてポリアニリン重合体塩(polyaniline polymer salt)をマイクロリアクターチューブから回収することが実行される。
【0041】
実験セクション
ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)が、n-ブチルグリコール(n-butylglycol)中の50%w/w水溶液としてKing Industries(米国コネチカット州、ノーウォーク)から得られた。UV-Visスペクトルが、日立U-3900分光計を使用して捕集された。キシレン溶液を石英キュベット(quartz cuvette)の中で一晩乾燥し、続いて真空内で乾燥することによって、試料の膜が調製された。石英ガラス上での一貫性のある膜の形成を可能にするため、キュベットが側方に置かれた。PANI:DNNSA試料の不純物プロファイルが、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析され、残留する出発物質及び溶媒が検査された。
【0042】
フロー装置管状のフローリアクターコイルは、長さが約21m(70ft)、外径が1/16”、内径が0.031”のTEFLON(登録商標)チューブから準備された。チューブは、高さが4.25”、直径が4”のアルミニウムスプールの周りに巻き付けられた。このスプールの寸法により、TEFLON(登録商標)チューブの65ターンの単一層が可能となる。TEFLON(登録商標)フローリアクターの計算された容積は、寸法に基づいて10.4mLであった。リアクターコイルの前後の無駄容積を含む測定容積は11.4mLであった。組み立てられたTEFLON(登録商標)フローリアクターは、120VのFirewire加熱器が適合されたカスタム製アルミニウムスピンドルに適合された。温度制御は、K型サーモカップル及びアルミニウムブロック内の加熱ユニットに取付けられた、モデル150J-KEM製温度コントローラ(J-KEM Scientific, Inc.、米国ミズーリ州、セントルイス)を用いて達成された。試薬は、プラスチック又はガラスのシリンジが備え付けられた3つの別個のシリンジポンプを用いてリアクターコイルの中に導入された。2つのKD Scientific社製(K-100及びK-250)シリンジポンプ、並びにSage社製(モデル#355)シリンジポンプが利用された。アニリン及びDNNSAの溶液を組み合わせるための第1の混合器は、ステンレス鋼製シリンダーの中の磁気駆動されたTEFLON(登録商標)攪拌器を備えた、改良されたRainin HPLC混合ユニットから構成される。酸化触媒の過硫酸アンモニウムの導入が、標準HPLC T型フィッティング(SS、0.040”内径)を用いて実行された。リアクターコイルからのフラクションの捕集は、手動でフラクションを変えたり、Gilson203Bフラクション捕集器を用いたりして達成された。フローシステムの構成要素は、標準型1/16”TEFLON(登録商標)チューブ、並びにステンレス鋼又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のHPLCグレードフィッティングで接続された。
【0043】
ポリアニリン-ジノニルナフタレンスルホン酸の合成(1ミリモルスケール)。図3で説明された本開示のフローシステムは、フローリアクターコイルの中の任意の空気又は泡を除去するために、0.427mL/分の初期総流量で3つの全てのシリンジからの水で平衡化された。コイルの温度は、プロセス全体を通して25℃で維持された。一旦システムから空気が取り除かれた後、各ポンプのシリンジは、適切な試薬が交換された。シリンジポンプA(Sage製ポンプ)は、蒸留された脱イオン水の中の新しく調製された0.375Mのアニリンの溶液を含有する60mLのプラスチック製シリンジが適合された。KD Scientific社製ポンプB及びCは、それぞれ、20mLプラスチックシリンジの中のn-ブチルグリコールの中の1.0MのDNNSAを20mL、及び10mLプラスチックシリンジの中の2.0M過硫酸アンモニウムを10mL備えた。リアクターコイル内に導入された材料の上記容積に基づいて、反応規模は、1ミリモルスケールに特定された。ポンプA(アニリン:0.277mL/分)及びB(DNNSA:0.1mL/分)が、アニリン-DNNSAのエマルションの形成を開始するために起動された。一旦、第2のT型混合器で乳白色のエマルションが生成されたら、ポンプC(酸化剤:0.05mL/分)が反応の開始のために起動された。一定の時間の後、システムの中の背圧の増加に起因して、流量が急速に減少することが観察された。この実施例では、リアクターコイルから出た最初の10mLは、有機相の中のPANI重合体と、幾らかの水相副生成物との不均一な混合物を含有していることが観察された。この初期のフラクションは、キシレンにより抽出され、抽出物は、水で2度洗浄された。この溶媒抽出物の乾燥有機層は、0.10gの青緑膜(図11のUV-Visスペクトル500)を産出するために真空で濃縮された。UV-Vis(乾燥膜)285、325、373、851nm。元素分析:C 72.64、H 10.01、N 1.84、S 5.41。合計約30分の後、ポンプAからの流れが止められた。一実施例では、試薬用シリンジは、フローリアクターの中の重合を止めるために水を含有するシリンジと交換された。
【0044】
この実施例では、重合が止められた後、フローリアクターは、任意の水溶性反応物又は副生成物を除去するために一定量の水で洗浄された。この水による洗浄からPANI生成物は捕集されず、重要な青色がフローリアクターチューブの中に残留した。この水洗浄に続いて、リアクターは、次いで、一定量のキシレンで洗浄され、捕集された洗浄物は、濃縮された青色抽出物を与えた。溶媒抽出物は、乾燥されて、0.31gの青緑膜を産出するために真空中で濃縮された。UV-Vis(乾燥膜)285、325、371、839nmが、スペクトル550として図11で示されている。元素分析:C 73.49、H 10.42、N 1.87、S 5.14。
【0045】
ポリアニリン-ジノニルナフタレンスルホン酸の合成(7.5ミリモルスケール)。フローリアクターシステムは、前述の1ミリモルスケール反応について説明されたように設定されたが、ポンプの位置及びシリンジの寸法は、フローリアクターの中の重合体材料の形成及び堆積からの初期背圧を克服するために変更された。より小さなシリンジを用いて、ポンプは以下のように備え付けられた。ポンプA: 0.375Mアニリンの20mLシリンジ、KD Scientific社製ポンプ。ポンプB:1MのDNNSA溶液の10mLシリンジ、KD Scientific社製ポンプ。ポンプC:2Mの(NHの10mLシリンジ、Sage製ポンプ。試料が3.5mLのフラクションで捕集された。初期の不均一なフラクションは、0.206gの青緑の残留物を産出するため、以前説明されたように加工された。UV-Vis(乾燥膜)285、325、802。元素分析:C 72.70、H 9.83、N 2.02、S 5.01。
【0046】
初期フラクションを捕集した後、フローリアクターチューブは、HPLCポンプを使用して水で洗浄された。水洗浄に対する初期測定背圧は200psiであった。次いで、リアクターは、15mLのキシレンで洗浄された。一旦リアクターコイルの中でキシレンが水に置き換わった後、背圧は5psiより低い値に下がった。キシレンによる洗浄は、生成物の主なフラクション、3.58gの青色残留物を産出した。UV-Vis(乾燥膜)284、325、768nm。元素分析:C 74.39、H 9.99、N 1.98、S 4.77。PANI:DNNSAの1:1の化学量に基づく7.5ミリモルスケール反応からの歩留りは3.79g(91.6%)であった。
【0047】
マイクロリアクターを含む現状のフローリアクターは、マイクロ流体チップ又は小型化カラム、並びにフロー装置制御用の特殊機器を使用する。本システム及び方法は、シリンジポンプから組み立て可能な装置、市販のHPLCチューブ、及び標準型サーモカップル温度制御装置が備え付けられたアルミニウムホルダーを提供する。試薬の流れを制御するためにシリンジポンプを使用することにより、リアクターの中の圧力を、フローリアクターチューブ及び低圧力フィッティングの限度をだいぶ下回るように維持することができる。試薬の濃度及び流量は、バッチ処理で使用されたものと似たような全体的な反応濃度をもたらすように選択され得る。例えば、PANI-DNNSAについては、混合の後の反応濃度は、0.23Mであり得る。この値は、前述のバッチ反応に対して計算された値に非常に近い。
【0048】
本開示で使用された試薬の化学量は、アニリン、DNNSA、及び過硫酸アンモニウムのそれぞれとほぼ同等なものであったが、他の化学量を使用してもよい。PANIについては、単量体濃度は、水の中の溶解度によって制限され、室温では、0.375Mよりわずかに高かった。したがって、PANIを使用する例示的な実験では、ポンプAは、0.375Mのアニリン溶液で充填され、0.277mL/分で供給された。DNNSA溶液、約50%w/wのn-ブチルグリコール又は1.04M溶液は、ポンプBの中に置かれ、0.1mL/分で供給された。ポンプCは、新しく調製された、0.05mL/分で供給された2M過硫酸アンモニウム溶液で充填された。各試薬は、0.1ミリモル/分の供給率を有し、反応混合物の総流量が0.427mL/分となった。システムパラメータ及び重合生成物に応じてその他の総流量を使用してもよい。
【0049】
1ミリモルスケール及び7.5ミリモルスケールの両方が、2つの異なるフラクション、通常の抽出路によって純化された二相性の反応混合物において得られた初期フラクションと、より大きなスケール反応とをもたらしたことに留意されたい。第1のフラクションは、材料全体の5%を表す副次的な構成要素であった。意外なことに、主要なフラクションは、フローリアクターチューブに粘着した。リアクター内の流れを完全に抑えなかったが、システムの背圧を増加させた。したがって、反応プロセスのモニタリングを容易にするために背圧のモニタリングが使用された。これらの結果に基づいて、所与のフローリアクターユニットにおいて、グラム/日の率、例えば、10グラム/日、又は20グラム/日、最大で50グラム/日でPANI-DNNSAを生成することが可能である。生成量は、使用される平行フローリアクターの数によって倍加可能である。したがって、本開示は、コスト効率よく、比較的高い歩留り及び高い生産率で、PANI-DNNSAなどの組成上一貫した導電性ポリマー塩を大量に生成する方法を提供する。
【0050】
両方の実験において、リアクターコイルは、硫酸及び過剰な酸化触媒などの水性不純物を除去するために水で洗浄されたが、主要な生成物は、キシレンを用いてフローリアクターを洗浄することによって得られた。PANI-DNNSA生成物の溶解度に起因して、最小限の量のキシレンで生成物を得ることが可能である。PANI-DNNSA生成物の堆積は、有利な結果であり、例えば、リアクターの後工程の加工がない状態で、水性不純物の除去、及びキシレンにおける重合体の直接抽出を可能にし、スピンコートされたり、沈殿したりすることが可能な生成物が提供される。
【0051】
図11は、PANI:DNNSAのUV-Visスペクトルを乾燥膜として示す。早期の第1のフラクションのUV-Visスペクトル500は、生成物として主要な後期のフラクションのUV-Visスペクトル550との類似性を示す。予期されるUV吸収は、アニリン環、及びDNNSA塩内のナフタレン環の取り込みに対して見受けられる。元素分析が得られ、N及びSのモルパーセントの分析は、これらの元素が、等しいモル量で存在していることを示しており、PANIの窒素成分と、DNNSAのスルホン酸又は1:1のPANI:DNNSAである重合体材料との1対1の比を示唆している。以前報告された導電性PANI:DNNSA重合体は、2:1の比で得られた。現在の1:1の材料は、プロセスの中で使用されるわずかにモル過剰のDNNSAの結果であると考えられている。PANI:DNNSA比の操作は、本システム及び方法において可能であり、完成した重合生成物における比の変動を可能にする。
【0052】
本フローリアクター装置での初期実験は、単量体及び酸から導電性ポリマー塩を調製することの実施可能性を示した。開示されたシステム及び方法は、エマルションを形成することと、エマルションと共に触媒をフローリアクターに導入することとを提供する。例示のみのために、PANI-DNNSA可溶性重合体が、現状のフローリアクタープロセスによって調製された。PANI系については、塩を形成するためのその他の有機酸を使用してもよい。チオフェン/ポリスチレンスルホン酸塩などのその他の単量体/塩系を導電性ポリマーの単量体重合の間のIn situドーピングに対して使用してもよい。
【0053】
さらに、本開示は下記の条項に係る実施例を含む。
【0054】
条項1
単量体と酸のエマルションをフローリアクターの中に導入することであって、フローリアクターが、約1から約1000マイクロメーターの間の内径の一定長のチューブを備えている、導入することと、単量体を重合することと、酸を用いて、重合された単量体の塩を一定長のチューブの中で形成することとを含む方法。
【0055】
条項2
触媒をエマルションに導入することをさらに含む、条項1に記載の方法。
【0056】
条項3
触媒をフローリアクターに導入することをさらに含む、条項1又は2に記載の方法。
【0057】
条項4
エマルションが、単量体の水溶液及び酸の有機溶媒溶液を含んでいる、条項1に記載の方法。
【0058】
条項5
重合された単量体の塩を一定長のチューブの中で維持することをさらに含む、条項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
条項6
重合された単量体の塩をチューブから回収することをさらに含む、条項5に記載の方法。
【0060】
条項7
重合された単量体の塩をチューブから回収することが、有機溶媒を用いる、条項6に記載の方法。
【0061】
条項8
重合された酸性塩を一定長のチューブの中で維持し、且つ水を用いて未反応単量体又は酸をチューブから取り除くことをさらに含む、条項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
条項9
一定長のチューブが巻回されている、条項1に記載の方法。
【0063】
条項10
チューブがフルオロポリマーである、条項1に記載の方法。
【0064】
条項11
フローリアクターが、平行流構成で配置された複数のチューブを備えている、条項1に記載の方法。
【0065】
条項12
重合することが、拡散制限条件内で実行される、条項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
条項13
単量体がアニリン又はチオフェンである、条項1に記載の方法。
【0067】
条項14
前記酸が、ポリスチレンスルホン酸又はジノニルナフタレンスルホン酸から選択された有機酸である、条項1に記載の方法。
【0068】
条項15
アニリン及び有機スルホン酸のエマルションを形成することと、エマルションをフローリアクターの中に導入することであって、フローリアクターが、約1から約1000マイクロメーターの間の内径の一定長のチューブを備えている、導入することと、酸化剤をエマルション又はフローリアクターに導入することと、アニリンを一定長のチューブの内径の中で重合し、その酸性塩を形成することとを含む方法。
【0069】
条項16
一定長のチューブが巻回されている、条項15に記載の方法。
【0070】
条項17
重合されたアニリンの塩が、一定長のチューブの中に実質的に含まれており、チューブがフルオロポリマーである、条項15に記載の方法。
【0071】
条項18
有機溶媒を用いて、重合されたアニリンの塩をチューブから回収することをさらに含む、条項17に記載の方法。
【0072】
条項19
有機スルホン酸に対するアニリンのモル比が1と0.2の間である、条項15に記載の方法。
【0073】
条項20
アニリンの総流量が約0.01ミリモル/分から約0.2ミリモル/分であり、結果として、フローリアクターの中へのエマルション反応混合物の流量が0.1ミリリットル/分から約0.5ミリリットル/分となる、条項15に記載の方法。
【0074】
条項21
酸化剤が、約0.001から約0.2ミリリットル/分の流量で導入される、条項15に記載の方法。
【0075】
条項22
1つ又は複数の重合体を生成する1つ又は複数の単量体を反応させるための重合装置であって、前記重合装置が、約1から約1000マイクロメーターの間の内径の一定量のチューブであって、チューブが、少なくとも1つの入口部及び少なくとも1つの出口部を含んでおり、一定量のチューブが、反応物質組成物を受け入れるための少なくとも1つの入口ポート、及び少なくとも1つの出口ポートを有している、一定量のチューブ、チューブの少なくとも一部を受け入れるように寸法形成された温度コントローラ、チューブの入口部に流体連結された出口部、及び入口部を有している混合室、並びに混合室の入口部に流体連結された少なくとも1つの流体流れ制御装置を備えている重合装置。
【0076】
条項23
チューブが温度コントローラの周りに巻き付けられている、条項22に記載の重合装置。
【0077】
条項24
少なくとも1つの流体制御装置が、単量体流体流れ制御装置及び酸流体流れ制御装置を備えている、条項22に記載の重合装置。
【0078】
条項25
混合室の出口部及びチューブの入口部に流体連結された第2の混合室をさらに備えている、条項22から24のいずれか一項に記載の重合装置。
【0079】
条項26
第2の混合室又はチューブに流体連結された触媒流体流れ制御装置をさらに備えている、条項22から25のいずれか一項に記載の重合装置。
【0080】
条項27
単量体及び酸のエマルションを形成することと、エマルションをフローリアクターの中に導入することであって、フローリアクターが、約1から約1000マイクロメーターの間の内径の一定長のチューブを備えている、導入することと、単量体を重合し、その酸性塩を形成することとを含む方法。
【0081】
条項28
重合された単量体の塩を回収することをさらに含む、条項27に記載の方法。
【0082】
条項29
触媒をエマルション又はフローリアクターに導入することをさらに含む、条項27に記載の方法。
【0083】
条項30
エマルションが、単量体の水溶液及び酸の有機溶媒溶液を含んでいる、条項27に記載の方法。
【0084】
条項31
一定長のチューブが巻回されている、条項27に記載の方法。
【0085】
条項32
重合された単量体の塩が、一定長のチューブの中に実質的に含まれており、チューブがフルオロポリマーである、条項27に記載の方法。
【0086】
条項33
水を用いて未反応材料をチューブから取り除くことをさらに含む、条項27から32のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
条項34
有機溶媒を用いて、重合された単量体の塩をチューブから回収することをさらに含む、条項32に記載の方法。
【0088】
条項35
アニリン及び有機スルホン酸のエマルションを形成することと、エマルションをフローリアクターの中に導入することであって、フローリアクターが、約1から約1000マイクロメーターの間の内径の一定長のチューブを備えている、導入することと、酸化剤をエマルション又はフローリアクターに導入することと、アニリンを一定長のチューブの内径の中で重合し、その酸性塩を形成することとを含む方法。
【0089】
本開示の好適な実施形態の記載は、例示及び説明のために提示されている。これは、網羅的であったり、開示された厳密な形態に本発明を限定したりすることを意図していない。上記の教示を参照すれば、明らかな修正例及び変形例が可能である。これらの実施例は、本開示の原理及びその実際の用途の最良の図解を提供し、それにより、当業者が、予期される特定の使用に適する様々な実施例、及びその様々な修正例の利用を可能にするために選択及び説明されている。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11