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特許7411626木材保存剤及びそれを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】木材保存剤及びそれを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B27K 3/02 20060101AFI20231228BHJP
   B27K 3/52 20060101ALI20231228BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20231228BHJP
   A01N 43/56 20060101ALI20231228BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20231228BHJP
   A01N 25/08 20060101ALI20231228BHJP
   A01N 25/12 20060101ALI20231228BHJP
   A01N 25/28 20060101ALI20231228BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20231228BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B27K3/02 B
B27K3/52 A
A01N59/20 Z
A01N43/56 C
A01N43/56 B
A01N25/02
A01N25/08
A01N25/12
A01N25/28
A01P3/00
A01P7/04
【請求項の数】 68
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021214142
(22)【出願日】2021-12-28
(62)【分割の表示】P 2019530665の分割
【原出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2022031548
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】62/435,504
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/437,372
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510240088
【氏名又は名称】コッパース パフォーマンス ケミカルズ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】タム,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ホートン,ジョン
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-502093(JP,A)
【文献】特表2018-527352(JP,A)
【文献】特表2013-516436(JP,A)
【文献】特表2008-522878(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0118280(US,A1)
【文献】特表2013-544800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00-65/48
A01P 1/00-23/00
B27K 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理された木材又は木材製品を製造するために、木材又は木材製品に水性木材保存剤組成物を接触させるステップを含む、前記木材又は前記木材製品の処理方法であって、前記水性木材保存剤組成物は、水、微粉化された銅化合物、及びペンフルフェンを、銅:ペンフルフェン比が5:1~200:1の間となるように含み、前記微粉化された銅化合物は少なくとも10nmのd20を有し、d20は、d20以下の直径を有する銅成分の重量パーセントであり、前記銅化合物は塩基性炭酸銅である、方法。
【請求項2】
前記ペンフルフェンは、微粉化、可溶化、乳化、又はカプセル化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微粉化された銅の粒子径は、5~5000ナノメートルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微粉化されたペンフルフェンの粒子径は、5~5000ナノメートルである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記微粉化された銅及び/又は前記微粉化されたペンフルフェンの粒子径は、5~5000ナノメートルである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
銅:ペンフルフェン比が25:1~100:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
24℃で保管した後の前記水性木材保存剤中の前記微粉化された銅の平均粒子径の1週目~6ヵ月の変動は、50ナノメートル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
24℃で保管した後の前記水性木材保存剤中の前記微粉化されたペンフルフェンの平均粒子径の1週目~6か月の変動は、50ナノメートル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ペンフルフェンは、非水性溶媒を添加することにより前記水中に溶解している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ペンフルフェンは、乳化されている、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記接触ステップは、減圧及び/又は加圧処理を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記水性木材保存剤組成物に接触した後の前記木材又は木材製品は、4~200g/mの間の量の前記ペンフルフェンを担持している、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記処理された木材又は木材製品は、耐朽性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
処理された木材又は木材製品を製造するために、木材又は木材製品に水性木材保存剤組成物を接触させるステップを含む、前記木材又は前記木材製品の処理方法であって、前記水性木材保存剤組成物は:
a.水と、
b.分散剤と、
c.微粉化された銅化合物と、
d.ペンフルフェンと、
を含み、前記微粉化された銅化合物及び前記ペンフルフェンの銅:ペンフルフェン比は、5:1~200:1の間にあり、前記微粉化された銅化合物及び/又は前記ペンフルフェンの粒子径は、5~5000ナノメートルであり、前記微粉化された銅化合物は少なくとも10nmのd20を有し、d20は、d20以下の直径を有する銅成分の重量パーセントであり、前記銅化合物は塩基性炭酸銅である、方法。
【請求項15】
銅:ペンフルフェン比が25:1~100:1である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
24℃で保管した後の前記水性木材保存剤中の前記微粉化された銅の平均粒子径の1週目~6か月の変動は、50ナノメートル未満である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記分散剤は、高分子である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記分散剤は、ナフタレンスルホン酸縮合物の塩、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物の塩、及びスルホン化ナフタレンホルムアルデヒド重合体混合物からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記接触ステップは、減圧及び/又は加圧処理を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記水性木材保存剤組成物に接触した後の前記木材又は木材製品は、4~200g/mの間の量の前記ペンフルフェンを担持している、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記処理された木材又は木材製品は、耐朽性を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
木材又は木材製品の処理方法であって:
a.処理された木材又は木材製品を製造するために、前記木材又は前記木材製品に水性木材保存剤組成物を接触させるステップであって、前記水性木材保存剤組成物は、水と、銅:ペンフルフェン比が5:1~200:1の間にある微粉化された銅化合物及びペンフルフェンとを含み、前記微粉化された銅化合物は少なくとも10nmのd20を有し、d20は、d20以下の直径を有する銅成分の重量パーセントであり、前記銅化合物は塩基性炭酸銅である、ステップを含み;
前記水性木材保存剤組成物に接触した後の前記木材又は木材製品は、4~200g/mの間の量の前記ペンフルフェンを担持している、方法。
【請求項23】
銅:ペンフルフェン比が25:1~100:1である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記処理された木材又は木材製品は、耐朽性を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
4~200g/mの間の担持量を達成するために適用される前記水性木材保存剤組成物により、木材辺材部が得られる褐色腐朽菌に対する耐朽性は、米国木材保存協会規格E10-2015に準拠する土中埋設試験において、前記処理された木材又は木材製品の平均重量減少が2%未満~20%となるものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記褐色腐朽菌は、グレオフィラム・トラベウム(Gloeophyllum trabeum)、フィブロポリア・ラディキュロサ(Fibroporia radiculosa)、ポスティア・プラセンタ(Postia placenta)、及びコニオフォラ・ポスチア・プテアナ(Coniophora Postia puteana)からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記辺材部は、サザンイエローパインである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ペンフルフェンは、微粉化されている、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記微粉化された銅の粒子径は、5~5000ナノメートルである、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記微粉化されたペンフルフェンの粒子径は、5~5000ナノメートルである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記微粉化された銅及び/又は前記微粉化されたペンフルフェンの粒子径は、5~5000ナノメートルである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
4~200g/mの間の担持量を達成するように適用される前記水性木材保存剤組成物により、木材辺材部が得られる褐色腐朽菌に対する耐朽性は、米国木材保存協会規格E10-2015に準拠する土中埋設試験において、前記処理された木材又は木材製品の平均重量減少が10%未満の間となるものである、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
4~200g/mの間の担持量を達成するように適用される前記水性木材保存剤組成物により、木材辺材部が得られる褐色腐朽菌に対する耐朽性は、米国木材保存協会規格E10-2015に準拠する土中埋設試験において、前記処理された木材又は木材製品の平均重量減少が5%未満の間となるものである、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
4~200g/mの間の担持量を達成するように適用される前記水性木材保存剤組成物により、木材辺材部が得られる褐色腐朽菌に対する耐朽性は、米国木材保存協会規格E10-2015に準拠する土中埋設試験において、前記処理された木材又は木材製品の平均重量減少が2%未満の間となるものである、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記接触ステップは、減圧及び/又は加圧処理を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
木材又は木材製品であって、
a.微粉化された銅化合物と、
b.ペンフルフェンと、
を、銅:ペンフルフェン比が5:1~200:1の間となるように含み、前記木材又は前記木材製品は、前記ペンフルフェンを4~200g/mの間の量で含み、前記微粉化された銅化合物は少なくとも10nmのd20を有し、d20は、d20以下の直径を有する銅成分の重量パーセントであり、前記銅化合物は塩基性炭酸銅である、木材又は木材製品。
【請求項37】
銅:ペンフルフェン比が25:1~100:1である、請求項36に記載の木材又は木材製品。
【請求項38】
前記木材又は木材製品は、水を更に含む、請求項36に記載の木材又は木材製品。
【請求項39】
前記ペンフルフェンは、微粉化されている、請求項36に記載の木材又は木材製品。
【請求項40】
前記木材又は前記木材製品は、耐朽性を有する、請求項36に記載の木材又は木材製品。
【請求項41】
前記銅及び前記ペンフルフェンの組合せは、銅単独の耐朽性及びペンフルフェン単独の耐朽性と比較して、米国木材保存協会規格E10-2015に従って相乗的な耐朽性を示す、請求項36に記載の木材又は木材製品。
【請求項42】
前記銅化合物は、前記木材内部に分布している、請求項40に記載の木材又は木材製品。
【請求項43】
前記木材又は木材製品の表面から5cmの前記微粒子銅化合物の体積数密度は、少なくとも50%である、請求項42に記載の木材又は木材製品。
【請求項44】
木材保存剤組成物であって、
a.微粉化された銅化合物と;
b.ペンフルフェンと;
c.水と;
を、銅:ペンフルフェン比が5:1~200:1となるように含み、前記微粉化された銅化合物は少なくとも10nmのd20を有し、d20は、d20以下の直径を有する銅成分の重量パーセントであり、前記銅化合物は塩基性炭酸銅である、木材保存剤組成物。
【請求項45】
銅:ペンフルフェン比が25:1~100:1である、請求項44に記載の木材保存剤組成物。
【請求項46】
前記木材保存剤組成物は、濃縮又は希釈された処理液である、請求項44に記載の木材保存剤組成物。
【請求項47】
前記ペンフルフェンは、微粉化されている、請求項44に記載の木材保存剤組成物。
【請求項48】
分散剤を更に含む、請求項47に記載の木材保存剤組成物。
【請求項49】
前記木材保存剤中の前記微粉化された銅及び/又は微粉化されたペンフルフェンの平均粒子径は、5~5000ナノメートルの間にある、請求項47に記載の木材保存剤組成物。
【請求項50】
24℃で保管した後の前記木材保存剤組成物中の前記微粉化された銅及び/又は微粉化されたペンフルフェン混合物の平均粒子径の1週目~6か月の変動は、50ナノメートル未満である、請求項47に記載の木材保存剤組成物。
【請求項51】
前記ペンフルフェンは、乳化されている、請求項44に記載の木材保存剤組成物。
【請求項52】
前記ペンフルフェンは、非水性溶媒を添加することにより前記水中に溶解している、請求項44に記載の木材保存剤組成物。
【請求項53】
前記微粉化されたペンフルフェンの粒子径は、5~5000ナノメートルの間にある、請求項47に記載の木材保存剤組成物。
【請求項54】
24℃で保管した後の前記木材保存剤組成物中の前記微粉化されたペンフルフェンの平均粒子径の1週目~6か月の変動は、50ナノメートル未満である、請求項53に記載の木材保存剤組成物。
【請求項55】
前記分散剤は高分子である、請求項48に記載の木材保存剤組成物。
【請求項56】
前記分散剤は、ナフタレンスルホン酸縮合物の塩、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物の塩、及びスルホン化ナフタレンホルムアルデヒド重合体混合物からなる群から選択される、請求項55に記載の木材保存剤組成物。
【請求項57】
前記水性木材保存剤組成物は、米国木材保存協会規格E10-2015に準拠する土中埋設試験における木材辺材部の褐色腐朽菌に対する耐朽性に関し、銅を単独で及びペンフルフェンを単独で使用した場合と比較して、相乗作用を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
前記水性木材保存剤組成物は、米国木材保存協会規格E10-2015に準拠する土中埋設試験における木材辺材部の褐色腐朽菌に対する耐朽性に関し、銅を単独で及びペンフルフェンを単独で使用した場合と比較して、相乗作用を示す、請求項14に記載の方法。
【請求項59】
前記水性木材保存剤組成物は、米国木材保存協会規格E10-2015に準拠する土中埋設試験における木材辺材部の褐色腐朽菌に対する耐朽性に関し、銅を単独で及びペンフルフェンを単独で使用した場合と比較して、相乗作用を示す、請求項22に記載の方法。
【請求項60】
前記木材保存剤組成物は、米国木材保存協会規格E10-2015に準拠する土中埋設試験における木材辺材部の褐色腐朽菌に対する耐朽性に関し、銅を単独で及びペンフルフェンを単独で使用した場合と比較して、相乗作用を示す、請求項44に記載の木材保存剤組成物。
【請求項61】
前記褐色腐朽菌は、グレオフィラム・トラベウム(Gloeophyllum trabeum)、フィブロポリア・ラディキュロサ(Fibroporia radiculosa)、ポスティア・プラセンタ(Postia placenta)、及びコニオフォラ・ポスチア・プテアナ(Coniophora Postia puteana)からなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記辺材部は、サザンイエローパインである、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記褐色腐朽菌は、グレオフィラム・トラベウム(Gloeophyllum trabeum)、フィブロポリア・ラディキュロサ(Fibroporia radiculosa)、ポスティア・プラセンタ(Postia placenta)、及びコニオフォラ・ポスチア・プテアナ(Coniophora Postia puteana)からなる群から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項64】
前記辺材部は、サザンイエローパインである、請求項58に記載の方法。
【請求項65】
前記褐色腐朽菌は、グレオフィラム・トラベウム(Gloeophyllum trabeum)、フィブロポリア・ラディキュロサ(Fibroporia radiculosa)、ポスティア・プラセンタ(Postia placenta)、及びコニオフォラ・ポスチア・プテアナ(Coniophora Postia puteana)からなる群から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
前記辺材部は、サザンイエローパインである、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
前記褐色腐朽菌は、グレオフィラム・トラベウム(Gloeophyllum trabeum)、フィブロポリア・ラディキュロサ(Fibroporia radiculosa)、ポスティア・プラセンタ(Postia placenta)、及びコニオフォラ・ポスチア・プテアナ(Coniophora Postia puteana)からなる群から選択される、請求項60に記載の木材保存剤組成物
【請求項68】
前記辺材部は、サザンイエローパインである、請求項60に記載の木材保存剤組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願出願は、2016年12月16日に出願された米国仮特許出願第62/435,504号及び2016年12月21日に出願された米国仮特許出願第62/437,372号の優先権を主張するものであり、両出願全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、殺生物剤組成物、特に、1種又は複数種の銅化合物及びペンフルフェンを含む木材保存剤組成物に関する。より詳細には、本発明は、木材に注入可能な微粒子をベースとする殺生物剤組成物の製造方法、この殺生物剤組成物、この組成物を用いた木材の防腐方法、及び本発明の組成物で処理された木材に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
銅化合物は木材又は木材製品を腐朽から保護するための一般的な殺生物剤である。しかしながら、銅化合物を単独で含む組成物は、木材に存在する銅耐性菌がこの種の組成物の作用を阻害するため、木材の防腐処理に用いることはできない。
【0004】
先行技術には様々なピラゾール系有機殺生物剤が開示されている。例えば、米国特許出願第13/880,619号、米国特許出願公開第2014/0079806号には、担子菌類に対する木材処理用の殺菌剤としてペンフルフェンが開示されている。しかしながら、一部の真菌はピラゾール殺菌剤に耐性を示す。
【0005】
真菌が耐性を示す問題に対する各種取り組みが報告されている。例えば、米国特許出願第13/880,985号、米国特許出願公開第2014/0088041号においては、工業材料を保護するための殺菌剤としてペンフルフェン混合物が開示されている。米国特許出願第15/177,845号、米国特許出願公開第2016/0295863号にも、工業材料を保護するための殺菌剤としてのペンフルフェン混合物が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
驚くべきことに、本発明者らは、1種又は複数種の銅化合物及びペンフルフェンの粒子を含む木材保存剤組成物が、処理された木材又は木材製品の腐朽を効果的に防止することを見出した。更に驚くべきことに、本発明者らは、1種又は複数種の銅化合物及びペンフルフェンを含む木材保存剤組成物が、木材辺材部(sapwood species)の褐色腐朽菌による腐朽に対する耐朽性において相乗作用を示すことを見出した。
【0007】
更に驚くべきことに、本発明者らは、1種又は複数種の銅化合物及びペンフルフェンの微粉化粒子を含む木材保存剤組成物の製造方法も見出した。微粉化粒子を含む組成物は凝集又は他の形態不安定性によく悩まされるが、驚くべきことに、本発明による木材保存剤組成物は、保管条件下において安定である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
銅化合物又はピラゾール殺菌剤のいずれかを単独で木材保存剤組成物として使用すると、特定の木材腐朽菌のみが抑制される可能性がある。驚くべきことに、銅化合物をペンフルフェンと併用することにより、相乗的に、広い殺菌スペクトルが得られることが見出された。
【0009】
特定の実施形態において、本発明は、木材又は木材製品を処理する方法であって、木材又は木材製品に、耐朽性に関し相乗作用を示す水性木材保存剤組成物を接触させるステップを含む方法に関する。水性木材保存剤組成物自体は、水性担体、銅化合物、及びペンフルフェンを、銅:ペンフルフェンの比が約1:1~約500:1となるように含むものである。他の実施形態において、本発明は、木材保存剤組成物自体に関する。
【0010】
特定の実施形態において、水性木材保存剤組成物は、微粉化された銅化合物を含む。好ましい実施形態において、微粉化された銅化合物の粒子径は5~5000ナノメートルである。
【0011】
特定の実施形態において、水性木材保存剤組成物は、ペンフルフェンを含む。好ましい実施形態において、ペンフルフェンは微粉化形態にあり、微粉化されたペンフルフェンの粒子径は5~5000ナノメートルである。他の好ましい実施形態において、ペンフルフェンは、溶解されているか、乳化されているか、又はポリマーマトリックス中に封入されているかのいずれかである。
【0012】
特定の実施形態において、水性木材保存剤組成物は、微粉化された銅化合物及びペンフルフェンの両方を含む。一実施形態において、水性木材保存剤組成物は、微粉化された銅化合物及び乳化されたペンフルフェンの両方を含む。他の実施形態において、水性木材保存剤組成物は、微粉化された銅化合物及び微粉化されたペンフルフェンの両方を含む。好ましい実施形態において、微粉化された銅化合物及び/又は微粉化されたペンフルフェンの粒子径は5~5000ナノメートルである。他の好ましい実施形態において、微粉化された銅化合物及び/又は微粉化されたペンフルフェンを24℃で保管した場合の1週目(week one)から6ヵ月後まで粒子径の変動は50ナノメートル未満である。他の好ましい実施形態において、本発明の木材保存剤組成物は、更に、ホウ素系保存剤、例えば、ホウ酸、ホウ酸のナトリウム塩;トリアゾール化合物、ペンタクロロフェノール、及びフッ化ナトリウム等の他の公知の保存剤である化学物質と併用することができる。本発明の木材保存剤製剤のトリアゾール類としては、これらに限定されるものではないが、エポキシコナゾール、トリアジメノール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、メトコナゾール、シプロコナゾール、テブコナゾール、フルシラゾール、パクロブトラゾール、フルコナゾール、イソブコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、プラミコナゾール、ラブコナゾール、及びポサコナゾールが挙げられる。
【0013】
特定の実施形態において、水溶性木材保存剤組成物は、可溶化された銅化合物を含む。他の実施形態において、特許請求される木材又は木材製品の処理方法に使用される水性木材保存剤組成物は、乳化されたペンフルフェン又は可溶性ペンフルフェンを含む。他の好ましい実施形態において、本組成物は、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム塩等のホウ素化合物;トリアゾール化合物、又はペンタクロロフェノールを更に含むことができる。本発明の木材保存剤製剤のトリアゾールとしては、これらに限定されるものではないが、エポキシコナゾール、トリアジメノール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、メトコナゾール、シプロコナゾール、テブコナゾール、フルシラゾール、パクロブトラゾール、フルコナゾール、イソブコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、プラミコナゾール、ラブコナゾール、及びポサコナゾールルが挙げられる。特定の実施形態において、本発明は、木材又は木材製品の処理方法であって、木材又は木材製品に、上述した水性木材保存剤組成物を接触させるステップを含む、方法に関する。この実施形態において処理された木材又は木材製品は、ペンフルフェンを約4~200g/mの間の量で担持(retain)している。好ましい実施形態において、この実施形態において処理された木材又は木材製品は、ペンフルフェンを約8~100g/mの間の量で担持し、より好ましくは、約8~80g/mの間の量で担持している。
【0014】
特定の実施形態において、水性木材保存剤組成物を約4~200g/mの量で担持させるように適用すると、米国木材保存協会規格(American Wood Protection Association Standard)E10-2015に準拠する土中埋設試験において、木材の辺材部は、褐色腐朽菌に対し、処理された木材又は木材製品の質量減少が平均して2%未満~20%の間となるような耐朽性を示す。特定の実施形態において、褐色腐朽菌は、グレオフィラム・トラベウム(Gloeophyllum trabeum)、フィブロポリア・ラディキュロサ(Fibroporia radiculosa)、ポスティア・プラセンタ(Postia placenta)、及びコニオフォラ・ポスチア・プテアナ(Coniophora Postia puteana)からなる群から選択される。特定の実施形態において、辺材部はサザンイエローパインである。
【0015】
特定の実施形態において、本発明は、銅化合物及びペンフルフェンを含む木材又は木材製品であって、銅:ペンフルフェンの比が約1:1~約500:1の間にあり、ペンフルフェンを約4~200g/mの間の量で含む、木材又は木材製品に関する。好ましい実施形態において、本発明は、銅化合物及びペンフルフェンを含む木材又は木材製品であって、銅:ペンフルフェンの比が約1:1~約500:1の間にあり、ペンフルフェンを約8~80g/mの間の量で含む、木材又は木材製品に関する。
【0016】
安定な微粉化されたペンフルフェン粒子分散体は、粉砕(milling)プロセスにより調製することができる。一実施形態において、粉砕プロセスは、ペンフルフェンのスラリーと分散剤混合物とを溶媒中で混合するステップと、スラリーを、直径0.05mm~1.0mm、好ましくは0.1mm~0.5mm、密度2.5g/cc以上、好ましくは3.5g/cc以上の高密度摩砕(grinding)メディアで湿式粉砕するステップと、を含む。粉砕されたペンフルフェン分散体は、5ナノメートル~5000ナノメートル(5ミクロン)の範囲の粒子径を有し、詳細には、d95が約5ミクロン以下であり、及びd50が20ナノメートル(0.02ミクロン)を超える粒子径を有する。
【0017】
特定の実施形態において、粉砕に使用される分散剤は高分子分散剤である。好ましい実施形態において、分散剤は、ナフタレンスルホン酸縮合物の塩、又はスルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物の塩、又はスルホン化ナフタレンホルムアルデヒド重合体混合物である。特定の実施形態において、ペンフルフェン対分散剤の重量比は、1:10~約1000:1の範囲にあり、好ましい比は約1:1~約100:1である。
【0018】
調製後の微粉化ペンフルフェン組成物は、高剪断混合下及び複数の加圧処理の影響下において安定である。更に、粉砕されたペンフルフェン粒子は、銅化合物を含む組成物と混合することができ、ペンフルフェン/銅の混合物も高剪断混合下及び複数の加圧処理の影響下において安定である。調製後のペンフルフェン組成物の平均粒子径、d95、及びd50は、保管中、1ヵ月目から6ヵ月目まで安定したままである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
特段の定めがない限り、組成は全て「パーセント」で与え、パーセントは、全成分、例えば粒子の総重量、又は注入可能な組成物を基準とする重量パーセントである。組成物が様々な成分の「部」で定義される場合、これは重量部であり、ここで組成物中の部の総数は90~110である。
【0020】
本明細書において用いられる「耐朽性を示す(resistant to fungal decay)」という語は、木材又は木材製品が、関連する建築基準に基づき住宅建築に使用するのに適していることを示す。本明細書において用いられる「安定な」という語は、木材保存剤組成物に関して使用される場合、「安定な」組成物で木材を木材表面に脱落させることなく加圧処理できることを意味している。
【0021】
本明細書において用いられる「微粉化された」という語は、比較的小さい粒子径に粉砕された粒子状物質を指す。したがって、微粉化された化合物は、分散した化合物又は微粒子状の化合物でもある。「微粉化された」という語は、特定の粒子径又は粒子径範囲を示すことを意図するものではないが、本発明の微粉化粒子は、直径が10μm未満の粒子径を有する傾向がある。
【0022】
本明細書において用いられる粒子の直径は「dxx」として表すことができ、ここで「xx」は、dxx以下の直径を有するその成分の重量パーセント(或いは体積パーセント)である。d50は、成分の50重量%がd50以下の直径を有する粒子であると同時に、d50を超える直径を有する粒子である成分の重量が丁度50%を下回る、直径である。粒子の直径は、好ましくは、ストークスの式により流体中の粒子の沈降速度から求められ、例えば、x線検出を用いるHoriba and Co. Ltd.から販売されているModel LA 700若しくはCAPA(商標)700又はMicromeritics, Inc.製Sedigraph(商標)5100Tを使用し、ストークスの式に基づき径を算出することにより、約0.2ミクロンまでの径が求められる。これよりも小さい径は、好ましくは動的光散乱法により、好ましくはCoulter(商標)計数装置を用いて求められる。
【0023】
一般に、本発明の銅又は銅化合物は、これらに限定されるものではないが、以下に示すものから調製される:金属銅、酸化銅(I)(銅(I)イオンの供給源)、酸化銅(II)(銅(II)イオンの供給源)、水酸化銅、炭酸銅、塩基性炭酸銅、オキシ塩化銅、8-ヒドロキシキノリン銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅、銅オマジン、ホウ酸銅又は塩基性ホウ酸銅、銅残留物(金属銅副生成物)、又は任意の好適な銅供給源。本発明に開示する銅化合物は、銅微粒子分散体又は可溶性銅溶液のいずれかとすることができる。銅微粒子分散体の場合、銅化合物は高分子分散剤を利用して分散させる。可溶性銅溶液の場合、銅化合物はそれらを可溶化剤と接触させることによって可溶化することができる。可溶化剤の例としては、これらに限定されるものではないが、例えば、モノエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、及びアンモニアが挙げられる。一実施形態において、銅化合物は、微粉化された分散体に調製される。
【0024】
他の実施形態において、粒子の重量の少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は75%がこれら銅化合物のいずれかで構成される。最も好ましい銅化合物は、水酸化銅及び塩基性炭酸銅である。
【0025】
特定の実施形態において、水性木材保存剤組成物は、1種又は複数種の銅化合物及びペンフルフェンを含み、銅化合物は微粉化されているか又はアミンで可溶化されているかのいずれかとすることができる。一実施形態において、水性木材保存剤組成物は、可溶化された銅化合物及び乳化されたペンフルフェンを含む。他の実施形態において、水性木材保存剤組成物は、微粉化された銅化合物及び乳化されたペンフルフェンを含む。他の実施形態において、水性木材保存剤組成物は、微粉化された銅化合物及び微粉化されたペンフルフェンの両方を含む。好ましい実施形態において、微粉化された銅化合物及び/又は微粉化されたペンフルフェンの粒子径は5~5000ナノメートルである。他の実施形態において、木材又は木材製品には、本発明の殺生物剤組成物を含む、1種又は複数種の銅化合物の分散粒子及びペンフルフェンの分散粒子が含浸されている。
【0026】
一実施形態において、本発明の木材保存剤組成物に使用される分散剤としては、これらに限定されるものではないが、カチオン性、非イオン性、又はアニオン性分散剤、アクリル系共重合体、顔料親和性基を有する共重合体の水溶液、ポリカルボン酸エーテル(polycarboxylate ether)、変性ポリアクリル酸エステル、アクリル系重合体エマルジョン、変性アクリル系重合体、ポリカルボン酸重合体及びその塩、変性ポリカルボン酸重合体及びその塩、脂肪酸変性ポリエステル、脂肪族ポリエーテル又は変性脂肪族ポリエーテル、ポリエーテルリン酸エステル、ポリカルボン酸エーテルの溶液、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、顔料親和性基を有する変性ポリエーテル又はポリエステル、脂肪酸誘導体、ウレタン共重合体又は変性ウレタン共重合体、アクリル酸/マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン又は変性ポリビニルピロリドン、変性無水マレイン酸/スチレン共重合体、リグニン等が挙げられる。
【0027】
好ましくは、本発明の木材保存剤組成物に使用される分散剤は、高分子分散剤である。一実施形態において、高分子分散剤は、固体粒子に結合することができる少なくとも1個の顔料親和性基を含む。他の実施形態において、高分子分散剤は、固体粒子を安定化させる。好ましくは、本発明の木材保存剤組成物に使用されている高分子分散剤は、変性ポリカルボン酸エーテル、変性ポリカルボン酸重合体及びその塩、ポリカルボン酸エーテルの溶液、並びに顔料親和性基を有する変性ポリエーテル又はポリエステルである。
【0028】
本発明の第1の実施形態において、分散剤は非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤は、水性媒体中に溶解又は懸濁させてもはっきりとした(discrete)変化を示さない物質である。この界面活性剤の親水性は、水分子との水素結合により付与される。酸素原子及びヒドロキシル基は速やかに強力な水素結合を形成する。このような水素結合が、中性又はアルカリ性媒体中で殺菌剤に分散性(懸濁性)又は可溶性を付与することができる。本発明に有用な非イオン性材料としては、更に、ポリアルキレンオキシドブロック共重合体が挙げられる。この種のブロック共重合体は、通常、-(AO)-を含む少なくとも1種のブロックセグメントを含み、ここでAOはオキシアルキレン部分を表し、xは約1~約100の数である。好ましくは、AOは、エチレンオキシド部分又はプロピレンオキシド部分のいずれかである。-(AO)-ブロックは、親水性(又は疎水性)が異なる官能基に結合していなければならない。
【0029】
例示的な界面活性剤/分散剤としては、ヒマシ油のエトキシ化物(エチレンオキシド重合度30 60(エトキシ部分));トリデシルアルコールのエトキシ化物(エチレンオキシド重合度4 20);C10 C14アルコールのエトキシ化物(エチレンオキシド重合度4 20);ノニルフェノールのエトキシ化物(エチレンオキシド重合度6 50);脂肪族アルコールのエトキシ化物(エチレンオキシド重合度3 20);ソルビトールエステルのエトキシ化物(エチレンオキシド重合度10 40);ソルビタントール酸エステルのエトキシ化物(エチレンオキシド重合度10 40);トリスチルフェノール(tristyrphenol)のエトキシ化物(エチレンオキシド重合度3 20);イソデシルアルコールのエトキシ化物(エチレンオキシド重合度3 10);イソドデシルアルコールのエトキシ化物(エチレンオキシド重合度3 10)、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
本発明に関連して有用な非イオン性界面活性剤の群として、モノマーとしてアルキレングリコールを含む重縮合物が挙げられる。例示的な化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はエチレングリコール及びプロピレングリコールのブロック重合体が挙げられる。これらの化合物の重合度は、好ましくは、約5~約1,000の範囲にあり、より好ましくは、約10~約500の範囲にある。
【0031】
非イオン性分散剤としては、更にポリアルキレンオキシドブロック共重合体が挙げられる。この種のブロック共重合体は、通常、-(AO)-を含む少なくとも1種のブロックセグメントを有し、ここでAOはオキシアルキレン部分を表し、xは約1~約100の数である。好ましくは、AOは、エチレンオキシド部分又はプロピレンオキシド部分のいずれかを表す。-(AO)-ブロックは、親水性(又は疎水性)が異なる官能基に結合していなければならない。この種の共重合体は、高級アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等から誘導されたものとすることができる。この種のブロック共重合体は、通常、比較的親水性の高いポリエチレンオキシドブロックに、結果として界面活性を生じさせる、通常疎水性である他のポリアルキレンオキシドブロックを組み合わせたものを含む。他の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック共重合体界面活性剤が挙げられる。ポリオキシプロピレン単位(PO)の中央ブロックを含み、中央POブロックの両側にポリオキシエチレン(EO)単位のブロックを有するこの種の界面活性剤は、本発明においては、特に平均分子量が約900~14,000の範囲にあり、EOの重量パーセントが約10~80の範囲にある場合に一般に有用である。このような種類の界面活性剤は「Pluronics」として市販されている。
【0032】
本発明に関連して有用な、第2の好ましい非イオン性界面活性剤の群には、第1群の化合物及び脂肪族アルコールのエーテル化物が含まれる。このようにすることで、比較的親水性の高いポリエチレンオキシドブロックを、通常疎水性である長鎖アルキル部位、例えば、C~C30と組み合わせることで界面活性が生じた分散剤を得ることができる。例示的な化合物としては、ポリエチレングリコールオレイルエーテル(エチレンオキシド重合度4~50)、ポリエチレングリコールセチルエーテル(エチレンオキシド重合度4~50)、ポリエチレングリコールステアリルエーテル(エチレンオキシド重合度4~50)、ポリエチレングリコールラウリルエーテル(エチレンオキシド重合度4~50)、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル(エチレンオキシド重合度4~50)、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(エチレンオキシド重合度4~50)、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(エチレンオキシド重合度4~50)等が挙げられる。この分類に属する化合物の好ましい重合度は4~20の範囲にあり、例えば約6~約12である。
【0033】
化合物の下位群が、上述の群の化合物及び高級脂肪酸のエーテル化物である。例示的な化合物としては、ポリエチレングリコールモノラウレート(エチレンオキシド重合度2~50)、ポリエチレングリコールモノステアレート(エチレンオキシド重合度2~50)、ポリエチレングリコールモノオレエート(エチレンオキシド重合度2~50)等が挙げられる。
【0034】
他の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック共重合体界面活性剤が挙げられる。ポリオキシプロピレン単位(PO)の中央ブロックを含み、中央POブロックの両側にポリオキシエチレン(EO)単位のブロックを有するこれらの界面活性剤は、本発明においては、特に、平均分子量が約900~14,000の範囲にあり、EOの重量パーセントが約10~80の範囲にある場合に一般に有用である。
【0035】
加えて、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ベンジル等の変性基(R)が末端のオキシアルキレン基を末端封止していてもよい、疎水化変性されたpluronic界面活性剤;例えば、R-(EO)-(PO)-(EO)-Rを使用することができる。
【0036】
例示的な分散剤としては、直鎖アルコールアルコキシル化物、例えば、直鎖アルコールエトキシ化物又はエトキシル化/プロポキシル化ブロックが挙げられる。所望により、アルコールアルコキシル化物は、低級アルキル基で好適に末端封止される。この種の製品はPOLY-TERGENTSLF-18界面活性剤として市販されており、BASF Corporationから入手可能である。他の有用なアニオン性界面活性剤は、ポリカルボキシル化アルコールアルコキシル化物、好ましくは、次に示す酸又は有機若しくは無機塩からなる群から選択されるものである:ポリカルボキシル化直鎖アルコールアルコキシル化物、ポリカルボキシル化分岐アルコールアルコキシル化物、ポリカルボキシル化環状アルコールアルコキシル化物、及びこれらの組合せ。非イオン性界面活性剤としては、例えば:アルキルフェノールエトキシ化物、例えば、フェノール1モル当たりエチレンオキシドを約1~約20モル又はそれを超えるモル数で含む、エトキシ化ノニルフェノール、アルキルフェノールエトキシル化物、又はノニルフェノールエトキシル化物が挙げられる。
【0037】
好ましい化合物の群としては、上述の化合物のいずれかの群のリン酸(さほど好ましくはないが、硫酸又はスルホン酸)エステルが挙げられる。例示的な化合物としては、ポリエチレングリコールオレイルエーテルリン酸エステル(エチレンオキシド重合度4~50)、ポリエチレングリコールセチルエーテルリン酸エステル(エチレンオキシド重合度4~50)、ポリエチレングリコールステアリルエーテルリン酸エステル(エチレンオキシド重合度4~50)、ポリエチレングリコールラウリルエーテルリン酸エステル(エチレンオキシド重合度4~50)、ポリエチレングリコールトリデシルエーテルリン酸エステル(エチレンオキシド重合度4~50)、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルリン酸エステル(エチレンオキシド重合度4~50)、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルリン酸エステル(エチレンオキシド重合度4~50)等が挙げられる。
【0038】
特定の実施形態において、銅及び/又はペンフルフェンに対する分散剤の比は、約1:500~約1000:1の間で変化する。好ましい分散剤対銅及び/又はペンフルフェンの比は、約1:100~約10:1であり、最も好ましい比は約5:100~1:1である。
【0039】
溶脱は、材料の粒子径及び溶解性によって決まる。径がより大きな粒子は溶脱速度がより遅く、一方、1~10ナノメートルの径を有する粒子の溶脱速度は、特定の状況下においては、注入及び乾燥後の銅塩溶液の溶脱速度と大きく変わらないであろう。本発明の好ましい実施形態において、d50は少なくとも0.04ミクロンであり、これは微粒子の少なくとも50重量%の径が40ナノメートルを超えることを意味する。より好ましい実施形態において、d50は0.10ミクロン以上である。好ましい一実施形態において、微粒子の少なくとも80重量%の径は0.05ミクロン~1.0ミクロンの間にある。
【0040】
材料を木材から流出させ得る機構は溶脱のみではない。材料が微粒子形態にあるため、微粒子は、最終減圧プロセスの最中に木材から流出する可能性がある。非常に小さい実質的に球状のナノ粒子、即ち、5~20ナノメートルの径を有する球状粒子は、木材基材内部で自由に移動できることを示唆する証拠がある。しかしながら、前記粒子は注入が容易である一方、木材内部で容易に移送されることも明らかであり、減圧/加圧含浸プロセスの最終減圧段階の最中に木材から容易に流出するであろう。したがって、本発明の好ましい実施形態において、本発明の材料は、粒子の直径は、約20ナノメートル未満、特に15ナノメートル未満である実質的に球状の微粒子を実質的に含まない。実質的に含まないとは、本発明者らによれば、d20が0.02ミクロンを超えることを意味する。
【0041】
本発明の他の重要な態様は、木材に注入可能であり、それによって微粒子木材保存剤として作用する、利用可能な様々な殺生物微粒子スラリー組成物を製造することにある。粉砕された粒子に見られるであろう、実質的に球形の、例えば、一方向の直径が異なる方向で測定される直径の2倍以内にある粒子の、木材への注入性に関する要件は:
1)d96が、約1ミクロン以下であるが、好ましくは約0.7ミクロン以下、より好ましくは約0.5ミクロン以下、例えば約0.3ミクロン以下、又は約0.2ミクロン以下であり;
2)d99が、約2ミクロン以下、好ましくは1.5ミクロン以下、より好ましくは約1ミクロン以下であり;
3)d50が、0.5ミクロン未満、好ましくは0.4ミクロン未満であり、及びd50が0.02ミクロンを超え、より好ましくは0.05ミクロンを超える;ことにあり、例えば、d50が約0.1ミクロン~約0.3ミクロンの間にあるスラリー組成物である。本発明者らは、第1の基準は、主として孔口(pore throat)の架橋及びそれに続く閉塞現象に対処するものであり、第2の基準は、濾過ケークが形成される現象に対処するものであり、第3の基準は、処理を行うことにより、許容可能な生物活性及び寿命を確保するのに最適な径を有する微粒子を木材内に配置するという課題に対処するものであると考えている。一旦孔口の一部が閉塞してしまうと、一般に、続いて完全な閉塞及び望ましくない堆積が速やかに起こる。
【0042】
但し、木材処理に好ましい微粒子の最小直径があり、これは、微粒子中の化合物にある程度依存する。銅化合物の溶解性が高い場合、表面対質量比が高い、非常に細かい微粒子を用いると銅イオン濃度が高くなり過ぎて、本発明の好ましい実施形態と比較して、銅の溶脱が速くなり過ぎるであろう。一般に、微粒子銅化合物は、d20が直径0.01ミクロンを超え、好ましくは0.03ミクロンを超え、例えば、直径0.06ミクロンを超えることが好ましい。ペンフルフェン粒子は、一般に、水への溶解性が銅化合物よりも低いので、これらの化合物をより小さくすることができるが、やはり微粒子銅化合物及び微粒子ペンフルフェンの混合物の好ましい最小d20は0.01ミクロンである。
【0043】
好ましい粒子は、水酸化銅、酸化銅(I)、塩基性炭酸銅、炭酸銅、オキシ塩化銅、塩基性リン酸銅、塩基性ホスホ硫酸銅(basic copper phosphosulfate)、三塩基性硫酸銅、アルカリ性硝酸銅、塩基性ホウ酸銅、ケイ酸銅、又はこれらの混合物を全体で少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、例えば、約80重量%~約98重量%含む。木材保存剤中の様々な粒子は、異なる殺生物剤、それどころか異なる銅化合物さえ含むことができる。例えば、ホウ酸銅を含むか、又はホウ酸銅と水酸化銅及び/又は塩基性銅塩、特に塩基性炭酸銅との組合せを含む粒子、塩基性炭酸銅を含む他の粒子、任意選択で塩基性リン酸銅を含む粒子、それどころか酸化銅を含む他の粒子さえ含むことができる。異なる相を有する粒子は、好ましい実施形態において、存在する銅材料に応じて異なる径を有することができる。
【0044】
一実施形態において、例示的な木材保存剤のd50は、0.5μm以下、0.25μm以下、0.2μm以下、又は0.15μm以下である。有利には、d96、好ましくはd99は、d50の3倍以内であり、非常に好ましくは1.2ミクロン未満である。一実施形態において、d50は少なくとも25ナノメートル、例えば、少なくとも50ナノメートルである。
【0045】
銅含有「ナノ粒子」を製造する方法は多くの参考文献に記載されている。これらの参考文献を利用すると、一般に、所望のコストで微粒子を製造することはできない。特に費用対効果が良くない1つの方法は、エマルジョンの特定の相中で小粒子を成長させるエマルジョン析出技法又はエマルジョン晶析技法を利用するものであり、粒子の最終径はエマルジョンの小滴の成分の量により制限される。このようにして無機塩及び有機殺生物微粒子の両方を形成することができるが、この種の材料が作物への葉面散布や木材防腐に有用となるであろうコストでは製造できない。
【0046】
米国特許第4,808,406号(その開示を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)には、嵩密度の低い微粉化された安定な水酸化銅(II)組成物を製造するための有用な方法であって、アルカリ金属炭酸塩又は炭酸水素塩の溶液及び銅塩を接触させることと、塩基性炭酸銅-塩基性硫酸銅を5超~約6の範囲にある最低pHで析出させることと、この析出物をアルカリ金属水酸化物と接触させることと、塩基性硫酸銅を水酸化銅(II)に変換することと、を含む方法が記載されている。銅化合物の他の製造方法が米国特許第4,404,169号に記載されている(その開示を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)。この特許には、水相中にオキシ塩化銅を懸濁させた懸濁物にリン酸イオンを添加する、保存安定性が付与された水酸化銅(II)を製造するプロセスが記載されている。オキシ塩化銅を、次いで、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物と反応させ、懸濁させた結果として析出した水酸化銅(II)を洗浄した後、再び懸濁させ、次いでpH値を7.5~9に調整するように酸性(acid)リン酸塩を加えることにより安定化させる。懸濁しているオキシ塩化銅を、好ましくは、懸濁物1リットル当たり1~4グラムの量のリン酸イオンの存在下に20℃~25℃の温度で反応させ、結果として得られた水酸化銅(II)をリン酸イオンで安定化させる。
【0047】
規定の特徴を有する粉砕メディアを用いた湿式ボールミル粉砕は、有利には、銅化合物や、粉砕抵抗性が高いことが知られているクロロタロニル及びペンフルフェン等の固体有機殺生物剤さえも、当該化合物が木材に容易に注入可能となる径まで粒子径及び形態を調整することが可能である。驚くべきことに、密度が3グラム/cmを超える、例えば3.8グラム/cm以上の、0.3~0.7mmの粉砕メディア等(セリウム及び/又はイットリウム及び/又はマグネシア等の1種又は複数種の添加剤を安定化量で含むことができる酸化ジルコニウムの0.5mmの粉砕ビーズにより得られる、好ましくは、5.5グラム/cmを超える直径0.5mmのケイ酸ジルコニウム等)の粉砕材料を用いて湿式粉砕することによって、有機微粒子及び無機微粒子の両方が、注入可能な材料に容易に粉砕できることを見出した。加えて、供給原料の粒子径に関わらず、粒子を数分間から最大でも数時間以内に注入可能なサイズまで破砕することができる。有利には、木材処理用の注入可能な製剤は全て、「平均粒子径」が木材に注入可能であると見なされる範囲内に十分収まっていてさえも、湿式粉砕すべきである。
【0048】
摩砕メディア又は粉砕ビーズとも称される粉砕メディアは本発明の中心である。粉砕メディアの選択が定型的な作業ではないことは明らかである。このメディアを使用することにより、当該技術分野において過去に得ることができなかった平均粒子径及び狭い粒子径分布を得ることが可能となり、本発明者らは、先行技術の結果からは予期できなかった、予期せぬ結果を得ることができた。本発明は、d50が約1ミクロン以下である微粒子殺生物剤製品の調製方法であって:1)固体無機又は有機殺生物剤と、界面活性剤を含む液体とをミルに供給するステップと;直径が0.01mm~0.8mm、好ましくは約0.1mm~約0.7mm、より好ましくは約0.1mm~約0.5mmである有効量の粉砕ビーズを含む粉砕メディアを供給するステップであって、これらの粉砕ビーズは、密度が約2.5グラム/cmを超え、好ましくは3.5グラム/cm以上、より好ましくは3.8グラム/cm以上、最も好ましくは5.5グラム/cm以上、例えば、密度が約6グラム/cmのジルコニアビーズである、ステップと;2)材料を、高速、例えば300~6000rpm、より好ましくは1000~4000rpm、例えば約2000~3600rpmで湿式粉砕することであって、粉砕速度が、実験室規模のボールミルの場合、平均体積粒子径が約1ミクロン以下の生成物を得るのに十分な時間、例えば約5分間~300分間、好ましくは約10分間~約240分間、最も好ましくは約15分間~約60分間供与される、ステップと、を含む方法に主に貢献する。一部の材料の粉砕には、好ましい規定範囲内の粉砕メディアは5体積%という少量でよいが、粉砕材料の10重量%超、好ましくは25重量%超、例えば40%~100重量%が好ましい規定範囲内にある場合に、より良好な結果が得られる。粉砕材料が好ましい規定値から外れている場合、有利には、この材料は、密度が3グラム/cmを超え、直径は4mm未満であり、例えば、1又は2mmのジルコニア又はケイ酸ジルコニウム粉砕ビーズである。
【0049】
粉砕メディアは、有利には、ジルコニウム系材料を含むか又はジルコニウム系材料から基本的になる。好ましいメディアはジルコニア(密度約6g/cm)であり、好ましい変形形態、例えば、イットリアで安定化された正方晶酸化ジルコニウム、マグネシアで安定化された酸化ジルコニウム、及びセリウム添加酸化ジルコニウムが含まれる。一部の殺生物剤には、ケイ酸ジルコニウム(密度約3.8g/cm)が有用である。しかしながら、クロロタロニル等の一部の殺生物剤の場合、ケイ酸ジルコニウムでは、本発明の幾つかの好ましい実施形態におけるサブミクロン範囲の狭い粒子径を得るために必要な、要求される作用が達成されないであろう。代替的な実施形態において、粉砕メディアの少なくとも一部は、金属材料、例えば、鋼を含むか又は鋼から基本的になる。粉砕メディアは、密度が約2.5を超え、好ましくは少なくとも約3.8、より好ましくは約5.5を超え、例えば少なくとも約6g/cmの材料である。
【0050】
本発明者らは、密度及び粒子径が粉砕メディアの最も重要な2つのパラメータであると考えている。好ましくは、粉砕メディアは、径(size)(直径(diameter))が約0.01mm~約0.8mm、好ましくは約0.1mm~約0.7mm、例えば、約0.1mm~0.5mmである粒子を含むか又はそれらから基本的になる。同じく好ましくは、粉砕メディアは、密度が約3.5g/cmを超え、好ましくは約5.5g/cmを超え、より好ましくは約6g/cmを超える。本発明に有用なジルコニウム系粉砕メディアは、直径(この語が当該技術分野において使用されているため)約0.1mm~約0.8mm、好ましくは約0.1mm~約0.7mm、例えば約0.1mm~0.5mmを有する粒子を含むか又はそれらから基本的になることができる。
【0051】
粉砕メディアが全て好ましい材料であること、例えば、好ましい直径である0.1mm~0.8mm、好ましくは0.1mm~0.7mm、より好ましくは0.1mm~0.5mmを有し、好ましい密度である3.5グラム/cm以上、好ましくは5.5グラム/cm以上、より好ましくは6グラム/cm以上を有する必要はない。実際は、このメディアのわずか10%が効果的な摩砕を行うであろう。ミル内のメディアの総重量を基準とする、好ましい粉砕メディアの量は、5%~100%とすることができ、有利には10%~100%、好ましくは25%~90%、例えば約40%~80%である。好ましい範疇から外れるメディアは、幾分大きいもの、即ち、直径1mm~4mm、好ましくは直径1mm~2mmとすることができ、同じく有利には、密度は3.5グラム/cm以上である。
【0052】
本発明の第1の態様は、微粉化された殺生物剤製品、例えば、ペンフルフェンの調製方法であって:1)粒子形態にある固体殺生物剤をボールミルに供給し、ミルに液体を供給し、粉砕メディアをミルに供給するステップであって、粉砕メディアは、粒子の直径が0.1~0.8mm、好ましくは0.1~0.5mm、密度が3.5g/cm以上、好ましくは5.5g/cm以上である粉砕メディアを少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも25重量%含む、ステップと;2)材料を、平均体積粒子直径d50が約1ミクロン以下の生成物を得るのに十分な時間粉砕するステップと、を含む。粉砕速度は、有利には高速、例えば1000rpm~約4000rpmであり、粉砕時間は、好ましくは10分間~240分間である。
【0053】
一般に、より密度の低い粉砕メディアを用いることにより得られるd50は比較的大きくなることとなり、これは葉面散布に有用となり得る。より密度の高い粉砕メディア、例えば、密度が5.5g/cmを超えるメディアを用いると、得られるd50はより小さくなる。驚くべきことに、粉砕時間を変化させてもd50への影響は非常に小さい。好ましい高密度粉砕メディアはジルコニア又はセリウム添加ジルコニアである。酸化ジルコニウムは、任意の安定剤及び/又は当該技術分野において知られているドーパント、例えば、セリウム、イットリウム、及びマグネシウム等を含むことができる。代替的な有用な高密度粉砕材料は鋼である。一般に、注入可能な微粒子銅化合物を確実に得るためには、粉砕メディアの少なくとも25重量%は3.8を超える密度及び0.1~0.7mmの直径を有していなければならない。
【0054】
実質的に不溶な有機殺生物剤粒子、例えば、ペンフルフェンの注入可能な固体の製造は、有利には、1)ペンフルフェンと、界面活性剤を含む液体とをミルに供給し、2)密度が2.5グラム/cmを超える粉砕メディア、例えば、直径が約0.01mm~約0.5mmであり、好ましくは密度が3.5g/cmを超える酸化ジルコニウムを含む粉砕ビーズで材料を粉砕することにより、実施することができる。本発明はまた、d50が約1ミクロン未満、通常約0.5ミクロン未満、好ましくは0.1~0.3ミクロンであり、有利には、それと同時に、d50がd98の3倍を下回り、好ましくはd98の約2倍を下回る、微粒子状有機殺生物剤製品、例えば、ペンフルフェン製品も包含する。
【0055】
一般に、d50が0.5ミクロン未満であり、d98がd50の3倍未満であることの両方が求められる、注入可能な径を達成したことは、驚くべき発展であった。銅化合物を2mmの粉砕メディアで数日間粉砕しても、必要とされる粒子径分布は、例え供給原料のd50が0.3ミクロン未満であってさえも得ることができなかった。ペンフルフェン等の粉砕抵抗性を示す有機殺生物剤を1mmのジルコニアで粉砕すると、d50が2~3ミクロンであるペンフルフェン製品が得られた。一層驚くべきことに、これらをそれぞれ、好ましい粉砕メディア、例えば、直径が0.4~0.5mmであるジルコニア系粉砕ビーズで粉砕すると、数時間、多くの場合30分未満で、それぞれの生成物が注入可能なサブミクロンのスラリーとして得られた。
【0056】
有利には、液体は、1種又は複数種の分散剤及び/又は安定剤を含む。これらが存在することにより、微粒子の凝集(agglomeration)が妨げられるため、より小さいd50及びより狭い粒子径分布の生成が促進される。このような分散固体を得るための水性分散剤は当業者に知られており、これらに限定されるものではないが、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニル共重合体等の非イオン性界面活性剤、アクリル系グラフト共重合体等の高分子非イオン性界面活性剤;ポリアクリル酸エステル、リグノスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、無水マレイン酸-メチルビニルエーテル共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のアニオン性界面活性剤、トリスチレン化フェノールエトキシル化物リン酸エステル等のリン酸エステル界面活性剤、無水マレイン酸-ジイソブチレン共重合体、アニオン変性されたポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニル共重合体、及び対応するアルコキシル化非イオン性界面活性剤から誘導されたエーテル硫酸エステル塩界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両イオン性界面活性剤;等が挙げられる。
【0057】
本発明に使用されるペンフルフェンは様々な方法で調製することができる。例えば、1種又は複数種の有機溶媒中の溶液として、乳化剤を利用して化合物を水中で乳化することによるエマルジョン、又はホモジナイザー若しくは高速攪拌若しくは粉砕/摩砕プロセスを用いて分散させることによる微粒子形態の分散体として、又はポリマー基材に埋め込む封入、又は他の任意の化学的及び物理的手段。一実施形態において、ペンフルフェンは、エマルジョン濃縮物として調製される。エマルジョン又は乳化可能な濃縮物として調製される場合、ペンフルフェンは、溶媒及び乳化剤又は界面活性剤の混合物に溶解される。溶媒の非限定的な例として、鉱油、ホワイトスピリット、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、及び2-プロパノール等のアルコール、エチレングリコール及びプロピレングリコール等のグリコール、エーテル、エステル、ポリグリコール、ポリエーテル、アミド、塩化メチレン、アセトン、クロロホルム、N,N-ジメチルオクタンアミド、N,N-ジメチルデカンアミド、N-メチル2-ピロリドン、n-(n-オクチル)-2-ピロリドン、及び上述したものの組合せが挙げられる。乳化剤は、アニオン性、カチオン性、若しくは非イオン性、又はその組合せとすることができる。乳化剤の例としては、これらに限定されるものではないが、エトキシル化アルキルフェノール、又はアミン、又はアミド、又はアリールフェノール、又は脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及び誘導体、エトキシ化アルコール及び誘導体、スルホン化アミン、又はアミド及び誘導体、カルボキシル化アルコール、又はアルキルフェノールエトキシ化物及び誘導体、グリコールエーテル又はエステルが挙げられる。乳化剤の更なる例が、McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents, 2016に記載されている。他の実施形態において、ペンフルフェンは、マイクロカプセル化された粒子として調製される。ペンフルフェンのマイクロカプセル化には、溶液を調製するステップ、均質化ステップ、及び溶媒を蒸発させるステップが含まれる。マイクロカプセル化として調製を行う場合、ペンフルフェンをまず最初に溶媒に溶解した後、ポリマー又は乳化剤を加える。次いで混合物を高剪断混合により均質化し、次いで混合物中に残存している溶媒を蒸発させ、最終的なマイクロカプセル化が行われる。より好ましい実施形態において、ペンフルフェンは粉砕プロセスにより微粉化された分散体として調製される。
【0058】
有機殺生物剤の粉砕は、有利には、界面活性剤及び/又は分散剤を含む水性媒体、例えば当該技術分野において知られているものなどの存在下に行われる。他の媒体、例えば、アルコール等の極性有機溶媒等を使用すると、一般に、溶媒を用いる粉砕のコスト及び関連する危険性を十分に上回る追加の利点が得られない。本発明を用いることにより、当該技術分野において過去に知られていたものよりも小さい粒子径及びより狭い粒子径分布を達成することがここに可能となったので、安定剤及び/又は分散剤の数及び量の重要性はより低くなる。本明細書において用いられる「界面活性剤」という語は、単数形及び複数形の両方を含み、一般に、安定剤及び分散剤の両方を包含する。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両イオン性、若しくは非イオン性、又はこれらの組合せとすることができる。一般に、粉砕時に存在する界面活性剤の濃度がより高いと、結果として得られる粒子径はより小さくなる。
【0059】
他の好適な界面活性剤の種類の例として、これらに限定されるものではないが、アニオン性界面活性剤、例えば、アルカリ金属オレイン酸塩及びステアリン酸塩等のアルカリ金属脂肪酸塩;アルカリ金属ラウリル硫酸塩;ジイソオクチルスルホコハク酸のアルカリ金属塩;アルキルアリール硫酸塩又はスルホン酸塩、リグノスルホン酸塩、アルカリ金属アルキルベンゼンスルホン酸塩、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルカリ金属石鹸、アルキルアリールスルホン酸の油溶性(例えば、カルシウム、アンモニウム等)塩、硫酸化ポリグリコールエーテルの油溶性塩、スルホコハク酸のエーテルの塩、及びその非イオン性界面活性剤とのハーフエステル、並びにリン酸化ポリグリコールエーテルの適切な塩;カチオン性界面活性剤、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等の長鎖アルキル4級アンモニウム界面活性剤に加えて、脂肪族アミン;非イオン性界面活性剤、例えば、脂肪族アルコールのエトキシ化誘導体、アルキルフェノール、ポリアルキレングリコールエーテル、及びアルキルフェノール、アミン、脂肪酸、脂肪酸エステル、モノ-、ジ-、又はトリグリセリドの縮合物、エチレンオキシド/プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドから誘導された様々なブロック共重合体系界面活性剤(例えば、非イオン性PEO-PPO共重合体界面活性剤に分類されるBASFから市販されているPLURONIC(商標))、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを有する脂肪族アミン又は脂肪酸、例えば、エトキシ化アルキルフェノール又はエトキシ化アリール若しくはポリアリールフェノール、ポリオールで可溶化されたカルボン酸エステル、又はポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(AGRIMER(商標)及びGANEX(商標)の商品名で販売されているもの等)、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシメチルセルロース(Dow Chemical CompanyからMETHOCEL(商標)として市販されているもの等)、及びアクリル酸グラフト共重合体;両イオン性界面活性剤;及びこれらに類するもの;並びにこれらの混合物、反応生成物、及び/又は共重合体が挙げられる。
【0060】
追加的に又は代替的に、界面活性剤として、これらに限定されるものではないが、低分子量ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、トリスチリルエトキシ化リン酸又は塩、メチルビニルエーテル-マレイン酸ハーフエステル(少なくとも一部が中和されている)、ミツロウ、少なくとも10%のアクリル酸/塩を含む水溶性ポリアクリル酸エステル等、又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0061】
追加的に又は代替的に、界面活性剤として、これらに限定されるものではないが、GANEX(商標)及び/又はAGRIMER(商標)AL若しくはWPシリーズとして市販されているアルキルグラフトPVP共重合体、AGRIMER(商標)VAシリーズとして市販されているPVP-酢酸ビニル共重合体、REAX 85Aとして市販されているリグニンスルホン酸塩(例えば、分子量約10,000のもの)、SOPROPHOR(商標)3D33として市販されているトリスチリルフェニルエトキシ化リン酸/塩、GEROPON(商標)SS075、NINATE(商標)401Aとして市販されているドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、IGEPAL(商標)CO630、他のオリゴマー/ポリマー型スルホン化界面活性剤、例えば、Polyfon H(分子量約4300、スルホン化度(sulfonation index)約0.7、塩含有量約4%)、Polyfon T(分子量約2900、スルホン化指数約2.0、塩含有量約8.6%)、Polyfon O(分子量約2400、スルホン化指数約1.2、塩含有量約5%)、Polyfon F(分子量約2900、スルホン化指数約3.3、塩含有量約12.7%)、Reax 88B(分子量約3100、スルホン化指数約2.9、塩含有量約8.6%)、Reax 100M(分子量約2000、スルホン化指数約3.4、塩含有量約6.5%)、及びReax 825E(分子量約3700、スルホン化指数約3.4、塩含有量約5.4%)等を挙げることができる。
【0062】
他の特筆すべき界面活性剤として、ポリアルキレングリコール及び/又はポリオールを(ポリ)カルボン酸又は無水物と反応させることにより調製される非イオン性ポリアルキレングリコールアルキド化合物;A-B-Aブロック型界面活性剤、例えば、ポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)をポリアルキレングリコールでエステル化することにより生成するもの;天然植物油の高分子量エステル、例えば、オレイン酸のアルキルエステル及び多官能性アルコールのポリエステル;ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の高分子量(MW>2000)塩、例えば、Nufarmより入手可能なGALORYL(商標)DT 120L;Akzo Nobelより入手可能なMORWET EFW(商標);International Specialties Inc.より入手可能な各種Agrimer(商標)分散剤;並びに、PLURONIC(商標)としてBASFから市販されている非イオン性PEO-PPO-PEOトリブロック共重合体界面活性剤を挙げることができる。
【0063】
市販の界面活性剤の他の例として、Atlox 4991及び4913界面活性剤(Uniqema)、Morwet D425界面活性剤(Witco)、Pluronic P105界面活性剤(BASF)、Iconol TDA-6界面活性剤(BASF)、Kraftsperse 25M界面活性剤(Westvaco)、Nipol 2782界面活性剤(Stepan)、Soprophor FL界面活性剤(Rhone-Poulenc)、Empicol LX28界面活性剤(Albright & Wilson)、Pluronic F108(BASF)が挙げられる。
【0064】
一実施形態において、例示的な好適な安定化成分として、分子量が約250~約10、好ましくは約400~約10、より好ましくは約400~約10であるポリマー又はオリゴマーが挙げられ、例えば、“Polymer Handbook,” 3rd Edition, edited by J. Brandrup and E. H. Immergutに記載されている単独重合体又は共重合体を挙げることができる。
【0065】
他の実施形態において、例示的な好適な安定化成分として、ポリオレフィン、例えば、ポリアレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(置換ブタジエン)、例えば、ポリ(2-t-ブチル-1,3-ブタジエン)、ポリ(2-クロロブタジエン)、ポリ(2-クロロメチルブタジエン)、ポリフェニルアセチレン、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリブチレンオキシド、ポリブチレンオキシドとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドとの共重合体、ポリシクロペンチルエチレン、ポリシクロールヘキシイエチレン(polycyclolhexyiethylene)、ポリアクリル酸アルキル及びポリアクリル酸アリール等のポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アルキル及びポリメタクリル酸アリール等のポリメタクリル酸エステル、ポリ二置換エステル、例えば、ポリ(イタコン酸ジ-n-ブチル)、ポリ(フマル酸アミル)、ポリビニルエーテル、例えば、ポリ(ブトキシエチレン)及びポリ(ベンジルオキシエチレン)、ポリ(メチルイソプロペニルケトン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカルボン酸ビニルエステル、例えば、ポリプロピオン酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリカプリル酸ビニル、ポリラウリン酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリスチレン、ポリ-t-ブチルスチレン、ポリ(置換スチレン)、ポリ(ビフェニルエチレン)、ポリ(1,3-シクロヘキサジエン)、ポリシクロペンタジエン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリカーボネート、例えば、ポリ(オキシカルボニルオキシヘキサメチレン)、ポリシロキサン、特に、ポリジメチルシクロシロキサン、及び有機可溶性(organo-soluble)置換ポリジメチルシロキサン、例えば、アルキル、アルコキシ、又はエステル置換ポリジメチルシロキサン、液体ポリスルフィド、天然ゴム及び塩酸ゴム、エチル-、ブチル-、及びベンジルセルロース、セルロースエステル、例えば、セルローストリブチレート、セルローストリカプリレート、及びセルローストリステアレート、天然樹脂、例えば、コロホニー、コーパル、及びセラック等、並びにこれらの組合せ又は共重合体が挙げられる。
【0066】
更なる他の実施形態において、例示的な好適な安定化成分として、スチレン、アルキルスチレン、イソプレン、ブテン、ブタジエン、アクリロニトリル、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、低級カルボン酸のビニルエステル、並びにα、β-エチレン性不飽和カルボン酸及びそのエステル、共重合体(3種以上のモノマー種を含む共重合体を含む)、並びにこれらの組合せ及び共重合体が挙げられる。
【0067】
更なる他の実施形態において、例示的な好適な安定化成分としては、ポリスチレン、ポリブテン、例えば、ポリイソブテン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、オレイン酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、例えば、ポリアクリル酸イソブチル又はポリメタクリル酸オクタデシル、ポリビニルエステル、例えば、ポリステアリン酸ビニル、ポリスチレン/アクリル酸エチルヘキシル共重合体、及びポリ塩化ビニル、ポリジメチルシクロシロキサン、有機物可溶性置換ポリジメチルシロキサン、例えば、アルキル、アルコキシ、又はエステル置換ポリジメチルシロキサン、並びにプライブチレン(plybutylene)オキシド、又はポリブチレンオキシドとプロピレン及び/又はエチレンオキシドとの共重合体が挙げられる。一実施形態において、界面活性剤は、例えば、米国特許第5,145,684号に従い殺生物剤粒子の表面上に吸着させることができる。
【0068】
本発明の他の態様は、微粉化された有機殺生物剤(例えば、ペンフルフェン)製品の調製方法であって:1)有機殺生物剤をミルに供給するステップと、2)密度が約2.5を超え、直径が約0.01mm~約0.7mmの間にある粉砕メディアで材料を粉砕するステップと、を含む、方法にある。粉砕メディア、特に、径が0.1~0.5mmの範囲にある粉砕メディアの密度は、有利には約3.5を超え、例えば約4を超え、好ましくは約5.5を超え、例えば、1立方センチメートル当たり約6グラム以上である。セラミックス粉砕メディアが金属粉砕メディアよりも好ましい。
【0069】
各実施形態において、ミルの充填率(milling load)は、好ましくはミルの容積の約50%以上であるが、充填率が40%~90%であると効率が高くなる。各実施形態において、有利には、水及び界面活性剤又は分散剤は、製品の粉砕前又は粉砕中に添加される。各実施形態において、製品は安定なスラリーとして、湿潤可能な粉末として、又は水と混合すると崩壊して生成物を放出する顆粒として移送することができる。
【0070】
湿式粉砕は、例えば、直径0.5mmの部分安定化ジルコニアビーズを装入したサンドグラインダー内で行うことができる。或いは、湿式粉砕は、直径0.5mmの部分安定化ジルコニアビーズを装入した回転式(rotary)サンドグラインダー内で、例えば1000rpmで攪拌しながら行うか;又は湿式ボールミル、アトライター(例えば、Mitsui Mining Ltd.製)、パールミル(例えば、Ashizawa Ltd.製)等を使用して行う。上述のプロセスの修正も当業者の技術範囲内であり、この種の修正は本明細書には記載しない。
【0071】
粉砕プロセスに0.5mmの高密度ケイ酸ジルコニウム、より好ましくは0.5mmのジルコニア磨砕メディアを使用すると、特に、ペンフルフェンの粗砕材料中の約1ミクロンを超える粒子を除去する場合に、摩滅が更に効果的に起こる。この湿式粉砕プロセスは費用が安く、析出物は全て注入可能な銅含有微粒子による木材処理に使用することができる。粉砕材(milling agent)は、例えば、ジルコニア、部分安定化ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、及びイットリウム/酸化ジルコニウムとすることができ、例えば、より高密度の材料を用いると粒子径の低下がより速くなることが認められている。粉砕材料の径及び密度は、商業的に利用可能なプロセスを達成するために重要であり、決定的な要素でさえあると考えられている。直径2mm以上の粉砕材(milling agent material)は数時間及び数日間かけても効果がなく、直径1mmの粉砕材料は先行技術の時間、例えば10分間~1時間では効果がなく、一方、直径0.5mmの粉砕材は、通常、粉砕の15分後には効果が認められる。
【0072】
代替的又は追加的に、粉砕された注入可能な固体有機殺生物剤微粒子に有機殺生物剤を含有させることができる。一般に、有機殺生物剤のd50が、有利には、銅化合物のd50の約0.2~約0.8倍となる少量の有機殺生物剤が求められる。
【0073】
一実施形態において、微粒子の粒子径分布は、微粒子の少なくとも約50重量%の平均直径又は平均粒子径が約0.02ミクロン~約1.0ミクロンとなるものであり、又は好ましくは、微粒子の少なくとも約50重量%の平均直径が約0.05ミクロン~約0.5ミクロンとなるものである。
【0074】
本発明の他の実施形態において、微粒子を基体とする(particulate-based)殺生物剤組成物は、アルカノールアミンを実質的に含まず、例えば、この組成物は、アルカノールアミンを5%未満、好ましくはアルカノールアミンを1.0%未満含むか、又はアルカノールアミンを全く含まない。
【0075】
本発明の好ましい実施形態において、微粒子を基体とする殺生物剤組成物は、アンモニウム化合物(例えば、水酸化アンモニウム)を実質的に含まず、例えば、この組成物は、アンモニアを5%未満含み、好ましくはアンモニアを1%未満含み、又はアンモニウム化合物を全く含まない。但し、その主な作用が有機殺生物剤としてであるアンモニウム化合物は除く。
【0076】
本発明の好ましい実施形態において、殺生物剤組成物は有機溶媒を実質的に含まず、例えば、スラリーは有機溶媒を1%未満含み、好ましくは有機溶媒を0.1%未満含み、又は有機溶媒を全く含まない。
【0077】
殺生物剤組成物の担持量は、木材中の所望の銅及び/又はペンフルフェン担持量、木材の多孔性、並びに木材の乾燥度を含む様々な要素に依存するであろう。銅をベースとする組成物の量の算出は当業者の技術範囲内にある。一般に、木材中の所望の銅担持量は、0.0025~約0.5ポンド銅毎立方フィート木材(pcf)である。一般に、ペンフルフェンの木材中の所望の担持量は、約4~約200g/m、好ましくは約8~約80g/mである。特定の実施形態において、本発明は、銅化合物及びペンフルフェンを、銅:ペンフルフェン比が約1:1~約500:1となるように含む。他の好ましい実施形態において、本組成物は、更に、他の公知の保存剤である化学物質、ホウ素系保存剤、例えば、ホウ酸、ホウ酸のナトリウム塩;トリアゾール化合物、ペンタクロロフェノール、及びフッ化ナトリウム等と組み合わせて使用することができる。本発明の木材保存剤製剤のトリアゾールとしては、これらに限定されるものではないが、エポキシコナゾール、トリアジメノール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、メトコナゾール、シプロコナゾール、テブコナゾール、フルシラゾール、パクロブトラゾール、フルコナゾール、イソブコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、プラミコナゾール、ラブコナゾール、及びポサコナゾールが挙げられる。
【0078】
一実施形態において、殺生物剤組成物は、1種又は複数種のスケール析出抑制剤又は腐食抑制剤、特に亜硝酸塩化合物及び有機ホスホン酸塩を50~800ppm含む。亜硝酸塩化合物としては、これらに限定されるものではないが、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カルシウム、又は亜硝酸カリウムが挙げられる。代替的に又は追加的に、本組成物は、1種又は複数種のキレート剤を約50~約2000ppm含むことができる。これらの添加剤はいずれも、炭酸カルシウム等の塩の析出を抑制する意味があり、カルシウム源はスラリーに補給する水に由来する可能性がある。好ましい抑制剤は、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、及び/又は2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBTC)である。保存剤が濃縮物形態にある場合、組成物は、HEDPを10mmol~100mmol/L又はPBTC若しくはDTPMPを30mmol及び170mmol/L含む。抑制剤の混合物は、濃縮物が、その中に容易に溶解する抑制剤を超える抑制剤を含むことができるため、好ましい。保存剤が固体形態にある場合、保存剤は、HEDPを約0.1~約1mol毎kg微粒子、又はPBTC及び/又はDTPMPを約0.17~約2mol毎kg微粒子で含む。
【0079】
殺生物剤組成物は、湿潤を促す1種又は複数種の添加剤、例えば界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は溶液形態とすることができる。或いは、界面活性剤は表面に結合させることもでき、その場合、これは表面活性剤であり、安定剤又は分散剤として作用することができる。好ましい分散剤としては、銅含有粒子と相互作用することができる表面活性部分と、銅をベースとする粒子の可逆な凝集を阻害するように作用する、第2の、好ましくは異なる部分とを含む。例えば、ポリアクリル酸エステル分散剤は、銅含有粒子と、例えば静電的に、会合することができる少なくとも1個のカルボキシル基と、銅含有粒子の永久的な凝集を抑制するように作用することができる第2の疎水性部分とを含むことができる。例示的な分散剤としては、少なくとも1種の界面活性剤、ポリアクリル酸エステル、多糖類、ポリアスパラギン酸、ポリシロキサン、及び両イオン性化合物挙げることができる。分散剤として有用な例示的な化合物を粉砕に関連する項で説明する。微粒子を基体とする殺生物剤組成物は、好ましくは、乳化剤及び界面活性剤を含まない。
【0080】
本発明の一実施形態において、微粒子銅化合物は、ポリマー又は高分子分散剤(総称してポリマー)を含むことができる。この実施形態において、粒子中に存在する銅の重量対粒子中に存在するポリマーの比は、少なくとも約100対1、例えば、少なくとも約2対1、4対1、5対1、7対1、又は少なくとも約10対1とすることができる。例えば、粒子中に存在する銅の重量対粒子中に存在するポリマーの重量の比が少なくとも約2対1である場合、粒子は、ポリマーの重量の少なくとも約2倍の重量の銅を含む。本発明の他の態様は、木材又は木材製品に有用な保存剤に関し、保存剤は、好ましくは、微粒子銅化合物及び微粒子ペンフルフェンの好ましくは水性懸濁物を含む。高分子分散剤が懸濁物中に存在する場合、懸濁物の銅をベースとする粒子中に存在する銅の重量対懸濁物中に存在する分散剤の重量の比は、少なくとも約1対1、例えば、少なくとも約5対1、10対1、15対1、20対1、又は少なくとも約30対1とすることができる。
【0081】
分散剤は、微粒子の分散を促すと共に、微粒子の凝結(aggregate)を阻止する。サブミクロンサイズの微粒子は、より大きな凝結体を形成する傾向がある。本明細書において用いられる凝結体とは、類似のサイズを有する複数個の粒子が、多くの場合、ファンデルワールス力又は静電力で一緒になった物理的な結合体である。凝結体が形成されると、これらは多くの場合、熟成して、機械的攪拌、例えば、スラリーを激しくかき混ぜても容易に破壊することができない安定な凝結体になる可能性がある。この種の凝結体は、凝結体が容易に注入できないサイズに成長する可能性があるか、又は凝結体が視認できるサイズとなり、したがって、望ましくない色を呈するようになる可能性がある。本発明の好ましい実施形態において、スラリー組成物中の実質的に結晶性の微粒子銅化合物の少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも90重量%は単分散している(mono-disbursed)、例えば、凝結していない。更に、粒子は、有利には、木材に注入しても凝集する傾向がない。微粒子の凝集を防ぐために、濃縮スラリー又はペーストは、ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレングリコール、及びポリアクリル酸エステルを、微粒子の重量を基準として0.1~20重量%の量で含むことができる。
【0082】
ここに述べた殺生物剤組成物は、それ自体知られている方法で、例えば、活性化合物を、分散剤及び/又は結合剤若しくは固着剤、並びに他の加工助剤を含有する液体担体と混合することにより、調製することができる。微粒子は、高濃度スラリー中で、非常に高濃度のペースト中で、乾燥微粒子として、被覆された乾燥微粒子として、乾燥プレミックスの一部として、又はこれらの任意の組合せで提供することができる。
【0083】
一実施形態において、本発明の組成物は濃縮物として調製される。木材処理剤を湿潤形態で製造、保管、又は輸送しなければならない場合、これは有利には、体積及び水を取り扱う費用を最小限にするために、濃縮形態にある。好ましくは、(出荷及び保管用の高濃度スラリー又はペーストは、例えば、微粒子銅化合物及び/又はペンフルフェンを、5重量%~80重量%、例えば約15重量%~40重量%含み、高濃度スラリー又はペーストの残部は、有利には、流体担体である。高濃度スラリー又はペーストは、1種又は複数種の有機殺生物剤の担体である固体微粒子と、腐食抑制剤を含む固体微粒子とを更に含むことができる。水性担体は、有利には、スラリーに関し検討した、酸化防止剤、分散剤(disbursing agent)、他の殺生物塩及び化合物、キレート剤、腐食抑制剤、例えば、リン酸塩及び/又はホウ酸塩、アルカリ金属水酸化物及び/又は炭酸塩、凍結防止剤等の1種又は複数種の添加剤を含む。これらの添加剤の濃度は、木材の種類に適した担持量の銅を有する商業的に有用な注入可能な微粒子を基体とする殺生物組成物を生成するために、組成物が希釈されると予想される度合いにある程度依存するであろう。
【0084】
一実施形態において、材料は、A)微粒子銅化合物及び微粒子ペンフルフェンの混合物を約30%~70重量%、例えば、水酸化銅を、例えば、約35%~65%、例えば微粒子形態の銅化合物を約38%~約61%と;B)少なくとも1種の分散剤、例えば、リグノスルホン酸塩又はポリアクリル酸エステルを約10重量%~35重量%、例えば約15%~約30%と;C)少なくとも1種の湿潤剤、例えば、界面活性剤、例えば、Barton Solvents,Incから入手可能なMorwet EPを約2.5重量%~20重量%、例えば約5%~15%と;D)少なくとも1種の希釈剤、例えば、可溶性及び不溶性希釈剤、例えば、農業製品に使用されているもの、例えば、粘土、例えば、アタパルジャイト粘土、又は有機殺生物剤を含む微粒子状担体粒子を約5重量%~約25重量%、例えば約10%~20%と;E)少なくとも1種の消泡剤を約0.05重量%~7.5重量%、例えば約0.1%~約5%と;任意選択で、F)水を約2.5%~約25%、或いは約7.5%未満、例えば約5重量%未満と;を含む。
【0085】
本発明の他の態様は、木材又は木材製品の防腐方法であって、本発明の1種又は複数種の微粒子殺生物剤組成物を、木材に注入するか、又は木材製品内に分散させることを含む、方法に関する。本発明の材料は木材に有用であり、木材製品、例えば、複合木材にも有用である。例示的な木材製品としては、配向性ストランドボード、パーティクルボード、中密度繊維板、合板、単板積層材、LSL(laminated strand lumber)、硬質繊維板等が挙げられる。好ましい複合木材の防腐方法は、本発明の保存剤を結合前の木材材料若しくは繊維と混合するか、又は、より好ましくは、木材材料若しくは繊維に注入した後に結合させるかのいずれかを必要とする。
【0086】
一実施形態において、木材又は木材製品は、表面、厚み、幅、及び長さを有する。好ましくは、木材又は木材製品は、微粉化された銅化合物及び微粉化されたペンフルフェンの分布が均一である。一実施形態において、表面から5cmの、好ましくは木材又は木材製品内部全体に亘る銅をベースとする粒子の体積数密度は、表面から1cmの銅をベースとする粒子の体積数密度の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約、60%、70%、又は75%である。
【0087】
本発明の木材保存剤組成物は、浸漬、刷毛塗り、噴霧、又は減圧/加圧処理により木材に適用することができる。本発明による銅化合物及びペンフルフェンを含む木材又は木材製品は、本発明の組成物を木材に減圧及び/又は加圧プロセスを介して曝露することにより作製することができる。好ましい実施形態において、減圧及び/又は加圧技法としては、本発明に従い木材に含侵させるために使用され、「空細胞」法、「改良充細胞(Modified Full Cell)」法、及び「充細胞」法、並びに当業者に知られている他の任意の減圧及び/又は加圧法等の標準的なプロセスが挙げられる。他の実施形態において、処理液は、マイクロ波又は高周波処理プロセスにより適用することができる。このプロセスにおいて、木材基材はまず最初に高周波又はマイクロ波エネルギーを用いて加熱される。加熱された標的区域の温度は40℃~300℃まで、より好ましくは80℃~100℃まで変化する可能性がある。加熱直後に、ピラゾール及びイソチアゾリノンを含む液体製剤を基材と接触させる。液体製剤の温度は、組成物が適用される時点の加熱された標的区域の温度よりも低く、組成物及び加熱された標的帯域の温度差は、組成物を適用した後に基材の圧力を低下させるのに十分なものである。様々な周波数の高周波又はマイクロ波エネルギーを使用することができる。高周波又はマイクロ波エネルギーの周波数は0.1MHz~100MHz、好ましくは10~50MHz、より好ましくは20~40MHzで変化させることができる。当業者は、この範囲外の適切な波長をすぐに理解することができる。処理流体を、木材にマイクロ波法で適用することもできる。本発明の組成物はまた、稼働中の木材、例えば、電柱及び枕木の補足的又は治療的処理に使用することもできる。治療的防腐目的で使用される場合、組成物は、所望によりペースト状又はグリース状形態の製剤とすることができ、そうすることにより、製剤は付着性を有するため、所望の位置に容易に塗布される。ペースト状又はグリース状の製剤を製造する場合、0.5%~約30%の無機粘土増粘剤、又はこの種の増粘剤の混合物が使用されることが多い。無機粘土増粘剤としては、アタパルジャイト粘土及びセピオライト粘土等の繊維状構造型、アロフォン(allophone)等の非結晶構造型、並びにモンモリロナイト及びカオリナイト等の混合層構造型、並びに上述の層構造型が挙げられる。無機粘土鉱物の例として、これらに限定されるものではないが:アタパルジャイト、ディッカイト、サポナイト、モンモリロナイト、ナクライト、カオリナイト、灰長石、ハロイサイト、メタハロイサイト、クリソタイル、リザード石、蛇紋石、板温石、バイデライト、ステベンサイト、ヘクトナイト(hectonite)、スメクナイト(smecnite)、ナクライト、及びセピオライト、モンモリロナイト、ソーコナイト、ステベンサイト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バーミキュライト、スメクナイト(smecnite)、セピオライト、ナクル石、イライト、絹雲母、海緑石-モンモリロナイト、ローズ石-モンモリロナイト、Bentone 38(ヘクトライト)及びBentone 34(ベントナイト)、緑泥石-バーミキュライト、イライト-モンモリロナイト、ハロイサイト-モンモリロナイト、カオリナイト-モンモリロナイトが挙げられる。本発明の組成物に使用される粘土鉱物はまた、これらに限定されるものではないが、アルミニウムイオン、プロトン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、リチウムイオン等の交換可能な陽イオンも含む。無機粘土鉱物の中でも、アタパルジャイト、ヘクトライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ソーコナイト、スメクナイト(smecnite)、ステベンサイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バーミキュライト、ナクライト、及びセピオライトが特に本発明に好ましい。この実施形態において、本発明の組成物は外面被覆処理により木材表面に適用することができる。
【実施例
【0088】
実施例
次に示す実施例は単に本発明の性質を示すのみであって、本発明の範囲及び特許請求の範囲をいかなる形においても制限するものと見なすべきではない。
【0089】
実施例1-相乗性
相乗性を、Kullらにより記載された改変法(Applied Microbiology, 1961 (9): 538-541)を用いて決定した。以下に改変法を説明する:
/Q + Q/Q = SI
ここで:
=物質A単独で特定の腐朽菌を抑制する濃度
=物質B単独で特定の腐朽菌を抑制する濃度
=特定の腐朽菌を抑制するA及びBの混合物の濃度における物質Aの濃度
=特定の腐朽菌を抑制するA及びBの混合物の濃度における物質Bの濃度
SI=1は相加性を意味する
SI>1は拮抗性を意味する
SI<1は相乗性を意味する
【0090】
実施例2-様々な木材腐朽性褐色腐朽菌に対する銅殺菌剤及びペンフルフェンの組合せの相乗活性
サザンパインの辺材部から寸法19mm×19mm×19mmの立方体の試験体を作製した。1組目の木材立方体試験体は、ペンフルフェン殺菌剤を含む一連の処理液を用いて加圧処理した。第2組の木材立方体試験体は、銅殺菌剤を含む処理液で加圧処理した。第3組の木材立方体試験体は、銅及びペンフルフェンの混合物を含む処理液で加圧処理した。処理された木材試験体を、米国木材保存協会規格E10-2015に記載されている手順に従い、様々な真菌に曝露することによる実験室耐朽性試験を実施した。真菌に曝露する前後に木材試験体の重量を測定し、重量減少率を求めた。重量減少がないことは、真菌の攻撃を完全に抑制したことを意味する。結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
実施例3-アミン銅及びペンフルフェンで処理した木杭の野外効力試験
寸法19mm×19mm×450mmの木杭をサザンパインの辺材部から作製した。木杭を銅エタノールアミン溶液及びペンフルフェンエマルジョンを、銅:ペンフルフェンを5:1~200:1の異なる比で変化させた処理液で処理した。処理された木杭を、フロリダ州ゲインズビル(Gainesville, FL)及びハワイ州マウナウィリ(Maunawili, HI)等の野外試験地に設置した。両試験地は深刻な腐朽害をもたらすことが認められている。野外の杭を腐朽菌及びシロアリに対する効力に関し1年に1回検査した。試験は米国木材保存協会規格E7に記載されている手順に従い実施した。申告した(filed)両地点の1年に1回の検査結果から、銅及びペンフルフェンで処理した木杭は腐朽及びシロアリの攻撃に耐性を有することが示された。
【0093】
実施例4-微粉化された銅及びペンフルフェンで処理された木杭の野外効力試験
寸法19mm×19mm×450mmの木杭をサザンパインの辺材部から作製した。木杭を微粉化された銅殺菌剤及びペンフルフェンを含む処理液で、銅:ペンフルフェンを5:1~200:1の異なる比で変化させて処理した。フロリダ州ゲインズビル(Gainesville, FL)及びハワイ州マウナウィリ(Maunawili, HI)等の野外試験地に設置した。両試験地は深刻な腐朽害をもたらすことが認められている。野外の杭を腐朽菌及びシロアリに対する効力に関し1年に1回検査した。試験は米国木材保存協会規格E7に記載されている手順に従い実施した。申告した両地点の1年に1回の検査結果から、銅及びペンフルフェンで処理した木杭は腐朽及びシロアリの攻撃に耐性を有することが示された。
【0094】
実施例5-微粉化されたペンフルフェンで処理された木杭の野外効力試験
サザンパイン木材試験体を、微粉化されたペンフルフェンを含む異なる処理液で、担持量を10~250グラム毎立方メートルの間で変化させて木材を処理した。処理された木杭をフロリダ州ゲインズビル(Gainesville, FL)及びハワイ州マウナウィリ(Maunawili, HI)等の野外試験地に設置した。両試験地は深刻な腐朽害をもたらすことが認められている。野外の杭を腐朽菌及びシロアリに対する効力に関し1年に1回検査した。試験は米国木材保存協会規格E16に記載されている手順に従い実施した。申告した両地点の1年に1回の検査結果から、微粉化されたペンフルフェンで処理した木杭は腐朽及びシロアリの攻撃に耐性を示すことが示された。
【0095】
実施例6-微粉化されたペンフルフェンの調製
ペンフルフェンを水媒体中で分散剤と混合した。混合物のスラリーを約10分間かき混ぜた後、本発明によるジルコニア摩砕メディアを含むボールミルに移した。スラリーを約2時間摩砕し、安定な微粉化されたペンフルフェン分散体を得た。ペンフルフェン分散体の粒子径を、その粒子径を測定することにより監視した。結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
実施例7-微粉化された銅及び微粉化されたペンフルフェンの混合物の調製
塩基性炭酸銅のスラリーを粉砕することにより微粉化された銅を調製し、固体ペンフルフェンを粉砕することにより微粉化されたペンフルフェンを調製した。最終的な微粉化された銅及び微粉化されたペンフルフェンを様々な比で混合し、最終混合物の粒子径を監視した。結果を表3~5に報告する。混合物中の銅及びペンフルフェンの量も、銅含有量及びペンフルフェン含有量を化学的に分析することにより監視した。結果を表6に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】
実施例8-木材腐朽菌に対する分散したペンフルフェンの生物効力
サザンパイン辺材部から19mm×19mm×19mmの寸法を有する木材立方体試験体を作製した。木材立方体を微粉化されたペンフルフェンを含む処理液で加圧処理した。処理された木材試験体を、米国木材保存協会規格E10-2015に記載されている手順に従い、様々な真菌に曝露することによる実験室耐朽性試験を実施した。真菌に曝露する前後に木材試験体の重量を測定し、重量減少率を求めた。試験結果を表7に示す。
【0103】
【表7】
【0104】
実施例9-微粉化された銅及びペンフルフェン活性物質を含む木材保存剤処理液の調製
微粉化された銅の濃縮物及びペンフルフェン濃縮物を水と一緒に混合することにより一連の木材保存剤処理液を調製した。或いは、微粉化された銅+ペンフルフェンの濃縮物を水で希釈することにより木材保存剤処理液を調製することができる。防黴剤、撥水剤、及び/又は顔料等の他の添加剤も処理液に添加することができる。ペンフルフェンをエマルジョン濃縮物(EC)又は懸濁物/分散体濃縮物(SC)又はサスポエマルジョン濃縮物(SEC)の組合せ又は可溶化液(soluble solution)濃縮物のいずれかとして調製することができる。処理液を調製した後、活性物質である銅及びペンフルフェンの両方の濃度を監視し、周囲条件下で16週間の期間に亘り測定を行った。結果を表8に示すが、銅及びペンフルフェンの活性物質濃度の変化は最小限であるか又は無視できる程度であったことが示された。この結果は更に、本願出願に開示した銅/ペンフルフェン組成物の組合せが木材処理に実用可能な製剤であることを示唆している。
【0105】
【表8】