(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】光学系、及び光学系を製造する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20231228BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20231228BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B3/00 A
G02B5/00 C
(21)【出願番号】P 2021502944
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2019069453
(87)【国際公開番号】W WO2020016391
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-05-18
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513257535
【氏名又は名称】イソルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ,ウィルフリッド
(72)【発明者】
【氏名】シャーブル,クウェンティン
(72)【発明者】
【氏名】プシュカ,アガーテ
(72)【発明者】
【氏名】ブティノン,ベンジャミン
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-526993(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0061861(US,A1)
【文献】特開2002-350981(JP,A)
【文献】特開2011-203792(JP,A)
【文献】特開2015-138180(JP,A)
【文献】特開2004-260798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0019306(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016109193(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 3/00
G02B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全に又は部分的に開いている孔を有してマイクロメートルサイズの光学素子のアレイで覆われた層と、第1の放射線を受ける表面とを有する光学系を製造する方法であって、
前記層の材料と同一の材料又は前記層の材料とは異なる材料で形成された膜を、前記マイクロメートルサイズの光学素子のアレイを通して第2の放射線に露出し、
前記第2の放射線に露出した膜の部分又は前記第2の放射線に露出しなかった膜の部分を除去して、前記層を完全に又は部分的に横切る孔を画定し、
前記材料は、前記第2の放射線に対して感光性を有するか又は前記第2の放射線
の作用下で分解し得る材料であり、
前記膜を前記第2の放射線に露出する際、前記マイクロメートルサイズの光学素子の屈折率とは異なる屈折率を有する、空気とは異なる材料を、前記マイクロメートルサイズの光学素子のアレイと接触させて一時的に置
き、前記光学素子の焦点距離を変更することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記膜を前記第2の放射線に対して感光性を有するレジストで形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜を前記第2の放射線に対して感光性を有するポジ型レジストで形成し、前記膜の除去部分は前記第2の放射線に露出した部分であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記膜を前記第2の放射線に対して感光性を有するネガ型レジストで形成し、前記膜の除去部分は前記第2の放射線に露出しなかった部分であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記層をレーザビームによって加工することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光学系は、少なくとも第1の入射角範囲の、前記表面に直交する方向に対する入射角を有する前記第1の放射線の光線を遮断し、前記少なくとも第1の入射角範囲とは異なる少なくとも第2の入射角範囲の、前記表面に直交する方向に対する入射角を有する前記第1の放射線の光線を通すように構成された角度フィルタを形成することを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記第1の放射線は前記第2の放射線とは異なることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記第1の放射線は可視域及び/又は赤外域の放射線であることを特徴とする請求項2~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記第2の放射線は可視域及び/又は紫外域の放射線であることを特徴とする請求項2~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記光学系を製造する際、ロールツーロールで行うことを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記孔を形成した後、前記孔を接合材料で充填し、前記孔を有する層を前記接合材料によってデバイスに接合することを特徴とする請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記第2の放射線を平行にすることを特徴とする請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記第2の放射線は1°より大きい拡がり角を有することを特徴とする請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学系及び光学系を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学系は、光線の軌道又は光の特性の変更を可能にするミラー、レンズ、回折格子のような光学素子の集合体である。光学系の適用例として、光学系が画像センサの高感度部分と撮像対象との間に配置されて、撮像対象の鮮明な画像を画像センサの高感度部分に形成することができる画像取得システムがある。別の適用例として、光学系をフォトダイオードのような1つの光検出器に連結して、光検出器によって集められる光を制御することがある。別の適用例として、光学系が光源、例えばディスプレイスクリーンを覆って、光源によって放射される放射線を変更し、例えば夫々の表示画素によって放射される放射線を平行にすることを可能にするディスプレイ又は投影システムがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ある場合には、従来の光学系を使用することが不可能である。例えば、画像取得システムの場合、従来の光学系を画像センサの高感度部分と撮像対象との間に配置することができない場合がある。画像センサが1平方センチメートルより大きい有効表面積を占め、撮像対象と画像センサの高感度部分との距離が1センチメートルより小さい場合、この問題が特に当てはまる。
【0004】
画像センサの高感度部分に形成する画像が十分鮮明であるように、撮像対象を画像センサに最も近い場所に置く必要がある。しかしながら、撮像対象と画像センサとの間に距離がある場合があるため、画像センサの高感度部分に形成する画像の鮮明さが、ある用途、例えば指紋の取り込みには不十分な場合がある。
【0005】
複雑な光学系がない状態で画像取得システムの画像センサによって取得される画像の鮮明さを高めるために、一可能性として、角度フィルタの機能を果たして開口部が横切る不透明層を有し、不透明層の開口部と夫々関連付けられているマイクロメートルサイズの光学素子のアレイ、例えばマイクロメートルサイズのレンズ若しくはマイクロレンズのアレイ、マイクロメートルサイズの屈折率分布型マイクロレンズのアレイ、又はマイクロメートルサイズの回折格子のアレイで覆われた単純な構造の光学系で画像センサを覆うことがある。
【0006】
このような光学系を製造する方法の例では、開口部を有する層を製造して、マイクロメートルサイズの光学素子を製造し、開口部を有する層に対してマイクロメートルサイズの光学素子を置く。開口部を有する層に対してマイクロメートルサイズの光学素子を置く工程は、位置合わせツールの使用を必要とする。このような位置合わせツールはあるが、これらの光学系を製造するために多大な費用を発生させ、とりわけ、これらの光学系を非常に大規模に製造することができない。更に、有機材料を使用するため、開口部を有する層及び/又はマイクロメートルサイズの光学素子が、熱的影響及び/又は機械的影響に起因して変形する場合があり、そのため、マイクロメートルサイズの各光学素子と複数の開口部を有する層の対応する開口部との正確な位置合わせが全てのマイクロメートルサイズの光学素子に関して不可能な場合がある。
【0007】
実施形態の目的は、開口部を有する層とマイクロメートルサイズの光学素子のアレイとを備えている光学系の製造、及び前述した製造方法による制約を完全に又は部分的に克服することである。
【0008】
実施形態の目的は、マイクロメートルサイズの光学素子を複数の開口部を有する層の開口部に対して十分な精度で置くことを可能にすることである。
【0009】
実施形態の別の目的は、光学系の製造方法を工業規模で実施可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、実施形態は、完全に又は部分的に開いている孔を有してマイクロメートルサイズの光学素子のアレイで覆われた層を備えた光学系を製造する方法を提供する。前記光学系は、第1の放射線を受ける表面を有する。前記方法では、前記層の材料と同一の材料又は前記層の材料とは異なる材料で形成された膜を、前記マイクロメートルサイズの光学素子のアレイを通して第2の放射線に露出し、前記第2の放射線に露出した膜の部分又は前記第2の放射線に露出しなかった膜の部分を除去して、前記層を完全に又は部分的に横切る孔を画定し、前記材料は、前記第2の放射線に対して感光性を有するか又は前記第2の放射線によって機械加工可能である。
【0011】
実施形態によれば、前記膜を前記第2の放射線に対して感光性を有するレジストで形成する。
【0012】
実施形態によれば、前記膜を前記第2の放射線に対して感光性を有するポジ型レジストで形成し、前記膜の除去部分は前記第2の放射線に露出した部分である。
【0013】
実施形態によれば、前記膜を前記第2の放射線に対して感光性を有するネガ型レジストで形成し、前記膜の除去部分は前記第2の放射線に露出しなかった部分である。
【0014】
実施形態によれば、前記層をレーザビームによって機械加工する。
【0015】
実施形態によれば、前記光学系は、少なくとも第1の入射角範囲の、前記表面に直交する方向に対する入射角を有する前記第1の放射線の光線を遮断し、前記少なくとも第1の入射角範囲とは異なる少なくとも第2の入射角範囲の、前記表面に直交する方向に対する入射角を有する前記第1の放射線の光線を通すように構成された角度フィルタを形成する。
【0016】
実施形態によれば、前記第1の放射線は前記第2の放射線とは異なる。
【0017】
実施形態によれば、前記第1の放射線は可視域及び/又は赤外域の放射線である。
【0018】
実施形態によれば、前記第2の放射線は可視域及び/又は紫外域の放射線である。
【0019】
実施形態によれば、露出する際、前記マイクロメートルサイズの光学素子の屈折率とは異なる屈折率を有する、空気とは異なる材料と、前記マイクロメートルサイズの光学素子のアレイを接触させて置く。
【0020】
実施形態によれば、前記光学系を製造する際、ロールツーロールで行う。
【0021】
実施形態によれば、前記孔を形成した後、前記孔を接合材料で充填し、前記孔を有する層を前記接合材料によってデバイスに接合する。
【0022】
実施形態によれば、前記第2の放射線を平行にする。
【0023】
実施形態によれば、前記第2の放射線は1°より大きい拡がり角を有する。
【0024】
実施形態は、第1の放射線を受ける表面と、完全に又は部分的に開いている孔を有してマイクロメートルサイズの光学素子のアレイで覆われた層とを備えている光学系を更に提供する。前記層は、第2の放射線に対して感光性を有するか若しくは前記第2の放射線によって機械加工可能な材料で形成されているか、又は前記孔は前記材料で充填されている。
【0025】
実施形態によれば、前記層は前記第1の放射線を通さず、前記光学系は、少なくとも第1の入射角範囲の、前記表面に直交する方向に対する入射角を有する前記第1の放射線の光線を遮断し、前記少なくとも第1の入射角範囲とは異なる少なくとも第2の入射角範囲の、前記表面に直交する方向に対する入射角を有する前記第1の放射線の光線を通すように構成されている。
【0026】
実施形態によれば、前記材料は、前記第2の放射線に対して感光性を有するレジストである。
【0027】
実施形態によれば、前記光学系は、前記孔の数と同数のマイクロメートルサイズの光学素子を備えており、前記マイクロメートルサイズの光学素子間のピッチが、前記孔間のピッチと同一である。
【0028】
実施形態によれば、前記表面に垂直に測定された前記孔の高さ対前記表面と平行に測定された前記孔の幅の比が、前記孔毎に1~10の範囲内である。
【0029】
実施形態によれば、前記孔は行及び列に配置されており、同一の行又は同一の列の隣り合う孔間のピッチが1μm~100 μmの範囲内である。
【0030】
実施形態によれば、前記表面に直交する方向に沿って測定された各孔の高さが、1μm~800 μmの範囲内であり、特には10μm~800 μmの範囲内又は1μm~100 μmの範囲内である。
【0031】
実施形態によれば、前記表面と平行に測定された各孔の幅は、0.1 μm~100 μmの範囲内である。
【0032】
実施形態によれば、前記光学系は、前記完全に又は部分的に開いている孔を有する前記層と、前記孔と整列した完全に又は部分的に開いている追加の孔を有する追加の層との積層体を備えている。
【0033】
実施形態は、画像センサと、前記画像センサを覆って角度フィルタを形成する既に定義されているような光学系とを備えていることを特徴とする画像取得システムを更に提供する。
【0034】
実施形態によれば、前記画像センサは光検出器のアレイを有しており、前記光検出器間のピッチが、前記孔間のピッチと等しい、前記孔間のピッチより大きい、又は前記孔間のピッチより小さい。
【0035】
実施形態によれば、前記光学系は、前記画像センサの保護層の機能を果たす補助層を有している。
【0036】
実施形態によれば、前記画像センサは有機材料で少なくとも部分的に形成されており、前記光学系は水密性及び/又は酸素気密性の膜を有している。
【0037】
実施形態は、光源と、前記光源を覆う既に定義されているような光学系とを備えていることを特徴とする照明システム又は表示システムを更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
前述及び他の特徴及び利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0039】
【
図1】マイクロレンズのアレイで覆われた開口部を有する層を備えた光学系の実施形態を示す部分的な断面略図である。
【
図2】
図1に示されている光学系の、開口部を有する層を示す平面図である。
【
図3】
図1に示されている光学系の変形例を示す部分的な断面略図である。
【
図4】
図1に示されている光学系の別の変形例を示す部分的な断面略図である。
【
図5】画像取得システムの実施形態を示す部分的な断面略図である。
【
図6】照明システム又は投影システムの実施形態を示す部分的な断面略図である。
【
図7】照明システムの別の実施形態を示す部分的な断面略図である。
【
図8】
図1及び
図2に示されている光学系を製造する方法の実施形態の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【
図9】
図1及び
図2に示されている光学系を製造する方法の実施形態の別の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【
図10】
図1及び
図2に示されている光学系を製造する方法の実施形態の別の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【
図11】
図1及び
図2に示されている光学系を製造する方法の実施形態の別の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【
図12】
図1及び
図2に示されている光学系を製造する方法の実施形態の別の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【
図13】
図1及び
図2に示されている光学系を製造する方法の別の実施形態の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【
図14】
図1及び
図2に示されている光学系を製造する方法の別の実施形態の別の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
同様の特徴が、様々な図面で同様の参照符号によって示されている。特に、様々な実施形態で共通の構造的特徴及び/又は機能的特徴は同一の参照符号を有する場合があり、同一の構造特性、寸法特性及び材料特性を有する場合がある。
【0041】
明瞭化のために、本明細書に記載されている実施形態の理解に有用な工程及び要素のみが図示され、詳細に記載されている。特に、画像センサの構造は当業者に広く知られており、以下に詳細に記載されない。
【0042】
以下の記載では、「前」、「後ろ」、「最上部」、「底部」、「左」、「右」などの絶対位置、若しくは「上方」、「下方」、「上側」、「下側」などの相対位置を表す用語、又は「水平方向」、「垂直方向」などの方向を表す用語を参照するとき、特に指定されていない場合、この用語は図面の向き又は通常の使用位置での光学系を指す。
【0043】
「約」、「略」、「実質的に」及び「程度」という表現は、特に指定されていない場合、該当する値の10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を表す。
【0044】
以下の記載では、層又は膜を通る放射線の透過率が10%未満であるとき、その層又は膜は放射線を通さないとする。以下の記載では、層又は膜を通る放射線の透過率が10%を超えるとき、その層又は膜は放射線を通すとする。実施形態によれば、同一の光学系に関して、放射線を通さない光学系の全ての要素の透過率は、前記放射線を通す光学系の要素の最も低い透過率の半分より低く、好ましくは5分の1より低く、より好ましくは10分の1より低い。本開示の残りでは、「有用な放射線」という表現は、動作中に光学系を横切る電磁放射線を表す。以下の記載では、「マイクロメートルサイズの光学素子」という表現は、支持体の表面と平行に測定された最大寸法が1μmより大きく1mmより小さい前記表面に形成された光学素子を表す。以下の記載では、40℃での酸素に対する膜又は層の透過率が1.10-1cm3/(m2・day)より低いとき、その膜又は層は酸素気密性とする。酸素に対する透過率を、「Standard Test Method for Oxygen Gas Transmission Rate Through Plastic Film and Sheeting Using a Coulometric Sensor」というASTM D3985法に従って測定してもよい。以下の記載では、40℃での水に対する膜又は層の透過率が1.10-1g/(m2・day)より低いとき、その膜又は層は水密性とする。水に対する透過率を、「Standard Test Method for Water Vapor Transmission Rate Through Plastic Film and Sheeting Using a Modulated Infrared Sensor」というASTM F1249法に従って測定してもよい。
【0045】
マイクロメートルサイズの光学素子がマイクロメートルサイズのレンズ又はマイクロレンズに夫々相当する場合のマイクロメートルサイズの光学素子のアレイを備えた光学系に関して、光学系の実施形態を述べる。しかしながら、マイクロメートルサイズの光学素子がマイクロメートルサイズのフレネルレンズ、マイクロメートルサイズの屈折率分布型レンズ又はマイクロメートルサイズの回折格子に夫々相当してもよい、他のタイプのマイクロメートルサイズの光学素子を用いてこれらの実施形態が実施されてもよいことは明らかなはずである。
【0046】
図1は、光学系5 の実施形態を示す部分的な断面略図である。光学系5 は、
図1の下から上に、
- 開口部を有する層10と、
- 開口部を有する層10を覆う中間層12(中間層12は省略されてもよい)と、
- 中間層12を覆うマイクロメートルサイズの光学素子14のアレイ、例えばマイクロレンズ14のアレイ(中間層12及びマイクロレンズアレイ14はモノリシック型構造に相当してもよい)と、
- マイクロレンズアレイ14を覆い、例えば複数の層、例えば2つの層18, 20の積層体を有して上面22を有する被覆体16(被覆体16は省略されてもよく、その場合、上面22はマイクロレンズアレイ14の上面に相当する)と
を備えている。
【0047】
図2は、
図1に示されている開口部を有する層10を示す平面図である。本実施形態では、開口部を有する層10は、開口部とも称される孔26が横切る不透明層24を有している。好ましくは、孔26が不透明層24の厚さ全体に亘って延びているので、孔26は貫通孔である。別の実施形態によれば、孔26は不透明層24の厚さの一部のみ延びて、不透明層24の残り部分が孔26の底部に残存してもよい。しかしながら、この場合、場合によっては充填された孔26を有する集合体では孔26の底部の不透明層24の残り部分の厚さは十分小さく、孔26の底部の不透明層24の残り部分は、有用な放射線を通すとみなされ得る。不透明層24の厚さを「h」と称する。不透明層24は放射線42のスペクトルの全て又は一部を通さない。不透明層24は、動作中に使用される有用な放射線を通さなくてもよく、例えば有用な放射線を吸収及び/又は反射してもよい。実施形態によれば、不透明層24は、可視域若しくは可視域の一部の放射線及び/又は近赤外線及び/又は赤外線を吸収する。
【0048】
図2では、孔26が円形の断面で示されている。一般に、孔26は、使用される製造方法に応じて平面視であらゆる断面を有してもよく、例えば円形、楕円形又は多角形、特に三角形、正方形若しくは矩形の断面を有してもよい。更に
図1では、孔26は不透明層24の厚さ全体に亘って一定の断面で示されている。しかしながら、各孔26が不透明層24の厚さに亘って異なる断面を有してもよい。孔26がフォトリソグラフィ工程を有する方法によって形成される場合、孔の形状は、照射量及び現像時間のような方法のパラメータ並びにマイクロレンズの形状によって調節されてもよい。
【0049】
実施形態によれば、孔26は行及び列に配置されている。孔26の大きさは実質的に同一であってもよい。行方向又は列方向に沿って測定される孔26の幅を「w」と称する。孔の断面が円形である場合、幅wは孔26の直径に相当する。実施形態によれば、孔26は行及び列に沿って規則的に配置されている。孔26のピッチ、つまり、行又は列の2つの連続する孔26の中心間の平面視での距離を「p」と称する。
【0050】
開口部を有する層10は、開口部を有する層10の上面に対する入射角が、以下の関係式(1)によって定められる最大入射角αより小さい有用な入射放射線の光線のみを通す。
tanα=w/h (1)
【0051】
h/wの比は1~10の範囲内であってもよく、10を超えてもよい。ピッチpは1μm~100 μmの範囲内であってもよく、例えば約15μmであってもよい。高さhは、0.1 μm~1mm、特に1μm~800 μm、好ましくは10μm~130 μm又は1μm~100 μmの範囲内であってもよい。幅wは0.1 μm~100 μmの範囲内であってもよく、例えば約2μmであってもよい。全ての孔26の幅wは同一であってもよい。変形例として、孔26の幅wは異なってもよい。
【0052】
図3は、
図1に示されている光学系5 の変形例を示す断面図であり、この変形例では、被覆体16は、マイクロレンズアレイ14に当接する膜に相当する層18のみを有している。この場合、層18とマイクロレンズ14との接触領域は減少してもよく、例えばマイクロレンズ14の最上部に限定されてもよい。
【0053】
図4は、
図1に示されている光学系5 の別の変形例を示す断面図であり、この別の変形例では、開口部を有する層10は、マイクロレンズ14と反対の不透明層24の側で不透明層24を覆う追加の不透明層28を有しており、孔26と一列に配置された孔30がこの追加の不透明層28を横切る。有用な放射線を通す中間層が不透明層24と不透明層28との間に配置されてもよい。一般に、開口部を有する層10は、孔が夫々横切る3以上の不透明層の積層体を有してもよく、隣り合う不透明層の夫々の対の不透明層は一若しくは複数の透明層によって間隔を置いて配置されてもよく又は間隔を置いて配置されなくてもよい。
【0054】
実施形態によれば、層24全体が、少なくとも有用な放射線の角度的にフィルタ処理される波長を吸収及び/又は反射する材料で形成されている。
【0055】
実施形態によれば、層24はポジ型レジストで形成されており、すなわち、放射線に露出するレジスト層の部分が現像剤に可溶性になり、放射線に露出しないレジスト層の部分が現像剤に不溶性のままであるレジストで形成されている。不透明層24は、着色樹脂、例えば着色又は黒色のDNQ-Novolack樹脂又はDUV (深紫外)レジストで形成されてもよい。DNQ-Novolack樹脂は、ジアゾナフトキノン(DNQ )及びノボラック樹脂(フェノールホルムアルデヒド樹脂)の混合物に基づいている。DUV レジストは、ポリヒドロキシスチレンに基づくポリマーを含んでもよい。
【0056】
別の実施形態によれば、層24はネガ型レジストで形成されており、すなわち、放射線に露出するレジスト層の部分が現像剤に不溶性になり、放射線に露出しないレジスト層の部分が現像剤に可溶性のままであるレジストで形成されている。ネガ型レジストの例として、エポキシポリマー樹脂、例えばSU-8の名称で商品化されている樹脂、アクリル樹脂、及び非化学量論的チオール-エン(OSTE)ポリマーがある。
【0057】
別の実施形態によれば、層24は、レーザで機械加工可能な材料、すなわちレーザ照射の作用下で分解し得る材料で形成されている。レーザで機械加工可能な材料の例として、グラファイト、プラスチック材料、例えばポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS) 、又は着色されたプラスチックフィルム、例えばポリエチレンテレフタレート(PET) 、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN) 、シクロオレフィンポリマー(COP) 及びポリイミド(PI)がある。
【0058】
更に例として、不透明層24は、可視域及び/又は近赤外域の放射線を吸収する黒色樹脂で形成されてもよい。別の例によれば、不透明層24は更に、所与の色の可視光線、例えば青色、緑色又はシアン色の光を吸収する着色樹脂で形成されてもよい。これは、光学系5 が所与の色の光のみを感知可能な画像センサと共に使用される場合であってもよい。これは更に、光学系5 が可視光線を感知可能な画像センサと共に使用されて、所与の色のフィルタが画像センサと検出対象との間、例えば開口部を有する層10と中間層12との間に配置されている場合であってもよい。
【0059】
開口部を有する層10が少なくとも2つの不透明層24, 28の積層体で形成されている場合、各不透明層は前述した材料の内の1つで形成されてもよく、不透明層は異なる材料で形成されてもよい。
【0060】
孔26, 30に空気が充填されてもよく、又は有用な放射線を少なくとも部分的に通す材料、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)が充填されてもよい。変形例として、有用な放射線の光線の波長をフィルタ処理すべく部分的に吸収する材料が孔26, 30に充填されてもよい。そのため、光学系5 は波長フィルタの機能を更に果たしてもよい。このため、光学系5 とは異なる色フィルタが設けられる場合に対して光学系5 の厚さを減少させることが可能になる。部分的に吸収する充填材料は、PDMSのような着色樹脂又は着色されたプラスチック材料であってもよい。
【0061】
孔26, 30の充填材料は、開口部を有する層10と接する中間層12と屈折率を適合させるため、又は構造を堅くして開口部を有する層10の機械抵抗を高めるために選択されてもよい。更に充填材料は、光学系5 を別のデバイス、例えば画像センサに組み立てることを可能にする液体又は固体の接着材料であってもよい。充填材料は、中間層12が封止膜であることを考慮すると、光学系が表面に載置されているデバイス、例えば画像センサの封止のために使用されるエポキシ樹脂又はアクリル系接着剤であってもよい。この場合、接着剤が孔26に充填され、画像センサの表面と接する。接着剤によって、光学系を画像センサ上に積層することが更に可能になる。
【0062】
省略してもよい中間層12は有用な放射線を少なくとも部分的に通す。中間層12は、透明なポリマー、特にPET 、PMMA、COP 、PEN 、ポリイミド、誘電性高分子若しくは無機高分子(SiN, SiO2) の層又は薄いガラス層で形成されてもよい。既に示したように、中間層12及びマイクロレンズアレイ14はモノリシック型構造に相当してもよい。更に中間層12は、光学系5 が取り付けられるデバイス、例えば画像センサの保護層に相当してもよい。画像センサが有機材料で形成される場合、中間層12は、有機材料を保護する水密性及び酸素気密性のバリア膜に相当してもよい。例として、この保護層は、開口部を有する層10と接するPET 膜、PEN 膜、COP 膜及び/又はPI膜の表面上の1μm程度のSiN 堆積物に相当してもよい。
【0063】
実施形態によれば、孔26の数と同数のマイクロレンズ14が設けられている。マイクロレンズ14の配置は孔26の配置と同一であることが好ましい。特に、隣り合うマイクロレンズ14の光学的中心間のピッチは孔26の前述したピッチpと同一である。
【0064】
別の実施形態によれば、マイクロレンズ14は、平面視で多角形の基部、特に正方形、矩形、五角形又は六角形の基部を有してもよい。マイクロレンズ14は平面視で実質的に互いに接触することが好ましい。別の実施形態によれば、マイクロレンズ14は平面視で円形又は楕円形の基部を有してもよい。
【0065】
マイクロレンズ14の焦点面は同一化されていることが好ましい。マイクロレンズ14の焦点面は、実質的に不透明層24の厚さ分を越えて又は不透明層24から離れて配置されてもよい。実施形態によれば、全てのマイクロレンズ14は同一の形状を有する。別の実施形態によれば、マイクロレンズ14は異なる形状を有する。マイクロレンズ14は、シリカ、PMMA、ポジ型レジスト、PET 、PEN 、COP 、PDMS/シリコーン又はエポキシ樹脂で形成されてもよい。マイクロレンズ14は、レジストブロックのクリープにより形成されてもよい。マイクロレンズ14は更に、PET 、PEN 、COP 、PDMS/シリコーン又はエポキシ樹脂の層の成型により形成されてもよい。
【0066】
被覆体16は、有用な放射線を少なくとも部分的に通す。被覆体16の最大の厚さは0.1 μm~10mmの範囲内であってもよい。上面22は実質的に平面であってもよく、又は湾曲した形状であってもよい。
【0067】
実施形態によれば、層18はマイクロレンズ14の形状に沿う層である。層18は、光学透明接着剤(OCA) 、特に液状光学透明接着剤(LOCA)、又は低屈折率の材料、又はエポキシ樹脂/アクリル系接着剤、又はガス若しくはガス状混合物、例えば空気の膜から形成されてもよい。層18がマイクロレンズ14の形状に沿う場合、層18は、マイクロレンズ14の材料の屈折率より低い低屈折率の材料で形成されていることが好ましい。層18は、非粘着性の透明な材料である充填材料で形成されてもよい。別の実施形態によれば、層18は、マイクロレンズアレイ14に当接する膜、例えばOCA 膜に相当する。この場合、層18とマイクロレンズ14との接触領域は減少してもよく、例えばマイクロレンズの最上部に限定されてもよい。そのため、層18は、層18がマイクロレンズ14の形状に沿う場合より高い屈折率の材料で形成されてもよい。実施形態によれば、層20は、層18に関して既に示された材料の内の1つで形成されてもよい。層20は省略されてもよい。層20の厚さは1μm~100 μmの範囲内である。
【0068】
光学系の適用例を、画像取得システムの角度フィルタに関して述べる。
【0069】
図5は、放射線42を受ける画像取得システム40の実施形態を示す部分的な断面略図である。画像取得システム40は、
図5の下から上に、
- 上面46を有する画像センサ44と、
- 角度フィルタを形成して上面46を覆う光学系5 と
を備えている。
【0070】
画像センサ44は、支持体47と、支持体47及び光学系5 間に配置された光検出器とも称される光子センサ48のアレイとを有している。光検出器48は、不図示の透明な保護被覆体で覆われてもよい。画像センサ44は、導電性トラックと、光検出器48の選択を可能にする不図示のスイッチング素子、特にトランジスタとを更に有している。
図5には、光検出器が、実質的に一定のピッチで間隔を空けて示されている。光検出器48は有機材料で形成されてもよい。光検出器48は、CMOSトランジスタのアレイに関連付けられた有機フォトダイオード(OPD) 、有機フォトレジスタ又はアモルファスシリコンフォトダイオードに相当してもよい。光学系5 に対向して光検出器48を有する画像センサ44の表面積は1cm
2 より大きく、好ましくは5cm
2 より大きく、より好ましくは10cm
2 より大きく、特には20cm
2 より大きい。画像センサ44の上面46は実質的に平面であってもよい。
【0071】
実施形態によれば、各光検出器48は、400 nm~1,100 nmの波長領域の電磁放射線を検出することができる。全ての光検出器48は、同一の波長領域の電磁放射線を検出可能であってもよい。変形例として、光検出器48は、異なる波長領域の電磁放射線を検出可能であってもよい。
【0072】
画像取得システム40は、例えばマイクロプロセッサを有する、画像センサ44によって出力される信号を処理するための手段(不図示)を更に備えている。
【0073】
特に各光検出器48が、45°未満、好ましくは30°未満、より好ましくは20°未満、更により好ましくは10°未満の最大入射角より小さい、上面22に垂直な軸芯に対する入射角を有する光線のみを受けるように、画像センサ44を覆う角度フィルタ5 は、上面22に対する入射放射線42の入射角に応じて入射放射線42をフィルタ処理することができる。角度フィルタ5 は、上面22に垂直な軸芯に対する入射角が最大入射角より大きい入射放射線の光線を遮断することができる。
【0074】
実施形態によれば、光検出器48は行及び列に分散してもよい。
図5では、光検出器48のピッチは孔26のピッチと同一である。そのため、各孔26が光検出器48に対向して配置されるように、開口部を有する層10が画像センサ44と整列していることが好ましい。別の実施形態によれば、孔26のピッチpは画像センサ44の光検出器48のピッチより小さい。この場合、複数の孔26が光検出器48に対向して配置されてもよい。別の実施形態によれば、孔26のピッチpは画像センサ44の光検出器48のピッチより大きい。この場合、複数の光検出器48が孔26に対向して配置されてもよい。
【0075】
光学系5 の別の適用例を、照明システム又は表示システムのコリメーションデバイスに関して述べる。
【0076】
図6は、平行にされた光を出力する照明システム50の実施形態を示す部分的な断面略図である。照明システム50は、
図6の下から上に、
- 平行にされていない放射線54を放射する光源52と、
- 光源52を覆って光源52によって放射される放射線54を受ける、前述したような光学系5 と
を備えており、
図6では被覆体16は存在せず、開口部を有する層10は光源52とマイクロレンズアレイ14との間に配置されている。
【0077】
光源52の放射面は光学系5 の焦点面に近いことが好ましい。更に、構想される用途に応じて、所与のマイクロレンズ14に対向する開口部26から出る光線が隣り合うマイクロレンズを横切らないために、層10の孔26の形状係数(高さ対幅、又はアスペクト比)が十分高いべきである。実際、この場合、出力光線を平行にしない。前述したように、開口部26のアスペクト比により層10の開き角を調節してもよい。
【0078】
本実施形態では、光学系5 は、光源52によって出力される放射線54を平行にすることを可能にするコリメーションデバイスの機能を果たす。
図6では、光源52は実質的に平面の放射面で示されている。変形例として、光源52の放射面は湾曲してもよい。
【0079】
光学系5 の別の適用例を、デバイスを遮蔽する照明システムに関して述べる。
【0080】
図7は、照明システム60の実施形態を示す部分的な断面略図である。照明システム60は、
図7の下から上に、
- 放射線を放射する光源62と、
- 光源62を覆って光源62によって放射される放射線を受ける、前述したような光学系5 と
を備えており、
図7では被覆体16は存在せず、マイクロレンズアレイ14は光源62と開口部を有する層10との間に配置されている。
【0081】
本実施形態では、開口部を有する層10は不透明なパッド64を有しており、各パッド64はマイクロレンズ14に対向して配置され孔26に囲まれており、孔26は互いに連通している。本実施形態では、光学系5 は、光源62の放射面に対して実質的に垂直な、光源62によって放射される光線66を遮断し、光源62の放射面に対して傾いた光線を通すように構成されている遮蔽体の機能を果たす。このような照明システム60は、拡散した照明が望ましい場合がある顕微鏡検査で特に使用されてもよい。
【0082】
光学系5 の別の適用例として、光学系5 をフォトリソグラフィ法でマスクとして使用することがある。
【0083】
図8~12は、
図1及び
図2に示されている光学系5 を製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【0084】
図8は、マイクロレンズアレイ14を中間層12上に形成した後に得られた構造を示す。変形例として、マイクロレンズアレイ14を中間層12とは異なる支持体上に形成してもよく、中間層12が存在する場合には中間層12を形成する前又は中間層12が存在しない場合には開口部を有する層10を形成する前、この支持体を除去する。実施形態によれば、マイクロレンズ14を製造する際、マイクロレンズ14を形成する材料の層を中間層12又は別の支持体上に形成し、この層を、例えば型を用いて変形してマイクロレンズを形成する。別の実施形態によれば、マイクロレンズ14を成型によって形成する。
【0085】
図9は、被覆体16が存在する場合に被覆体16をマイクロレンズアレイ14上に形成した後に得られた構造を示す。被覆体16が存在しない場合、
図8に関連して前述した工程の後、
図10に関連して以下に記載される工程を直接行ってもよい。実施形態によれば、被覆体16を形成する工程は、
- 層18を形成する材料の液体層又は粘性層をマイクロレンズアレイ14上に堆積させる工程(従って、液体層はマイクロレンズ14の形状に沿う。この層は、好ましくは自己平坦化する。すなわち、この層は実質的に平面の自由表面を自動的に形成する)、
- 液体層を硬化させて層18を形成する工程(この工程は、層18を形成する材料を、特に熱架橋及び/又は紫外線ビームによる照射によって架橋結合する工程を含んでもよい)、並びに
- 例えば層18上に膜を積層することにより、層18上に又は層18が存在しない場合にはマイクロレンズ層14と接して層20を形成する工程
を有してもよい。
【0086】
図10は、マイクロレンズアレイ14と反対側に不透明層24を中間層12上に形成した後に得られた構造を示す。不透明層24を液相成長法、カソードスパッタリング法又は蒸着法によって堆積させてもよい。スピンコーティング、スプレーコーティング、ヘリオグラフィ、スロットダイコーティング、ブレードコーティング、フレキソ印刷又はシルクスクリーンのような方法を特に使用してもよい。実施される堆積法に応じて、堆積材料を乾燥させる工程を有してもよい。
【0087】
図11は、マイクロレンズ14を横切る放射線70に不透明層24の一部72を孔26の所望の位置で露出する工程中に得られた構造を示す。不透明層24を露出するために使用される放射線は、使用されるレジストに応じて決められる。例として、放射線70は、DNQ-Novolack樹脂の場合には略300 nm~450 nmの範囲内の波長を有する放射線であり、DUV レジストでは紫外線である。不透明層24を放射線70に露出する継続時間は、特に使用されるポジ型レジストのタイプに応じて決められ、不透明層24の露出部分72が不透明層24の厚さ全体を横切って延びるのに十分である。
【0088】
不透明層24の露出を、マイクロレンズ14を通して行う。そのため、不透明層24は、好ましくはマイクロレンズ14の焦点面に又はマイクロレンズ14の焦点面の近くに配置される。実施形態によれば、マイクロレンズ14に達する入射放射線70は、実質的に不透明層24のレベルで又は不透明層24の近くで各マイクロレンズ14によって焦点が合わされるように実質的に平行にされた放射線である。マイクロレンズ14を通して不透明層24を放射線70に露出するときに所望の大きさのスポットを不透明層24上に得るために、不透明層24はマイクロレンズ14の焦点面に対して偏移されてもよい。上面22に対する放射線70の傾斜が、画像取得システム40の通常使用中に光検出器48によって取り込まれる放射線6 と上面22とによって形成される平均傾斜に実質的に相当することが好ましい。実施形態によれば、放射線70は実質的に層24に垂直である。別の実施形態によれば、放射線70は層24に垂直な方向に対して傾いているため、マイクロレンズに対して偏移した孔26を得ることが可能になる。
図11では、孔26は円筒状であり、すなわち、孔26の断面積は一定である。しかしながら、前述したように、孔26の断面積は一定でなくてもよい。例として、孔26の形状がテーパ状であってもよい。別の実施形態によれば、入射放射線70は、例えば1°より大きい拡がり角の拡がりを示し、そのため、マイクロレンズ14に達する入射放射線70の拡がり角は調節されて、層24に形成される孔26の幅を調整する。
【0089】
別の実施形態によれば、特に被覆体16が存在しない場合、適宜の屈折率を有する材料の層を露出工程中にマイクロレンズアレイ14上に一時的に配置して、露出部分72が所望の大きさを有するようにマイクロレンズ14の焦点距離を変更してもよい。
【0090】
実施形態によれば、露出放射線70を放射する光源は、孔26の所望の形状に応じて露出工程中にマイクロレンズアレイ14に対して移動してもよい。例として、露出放射線70を放射する光源はループ状に移動してもよいため、環状の断面の孔26を得ることができる。このような孔の形状によって、少なくとも第1の入射角範囲の、上面22に直交する方向に対する入射角を有する光線の通過を妨げて、前記少なくとも第1の入射角範囲とは異なる少なくとも第2の入射角範囲の、上面22に直交する方向に対する入射角を有する光線を通す帯域通過角度フィルタを形成することが特に可能になる。
【0091】
実施形態によれば、マイクロレンズ14は、露出放射線70の波長に応じて異なる焦点を有してもよい。レジスト層24はこれらの異なる波長に感応してもよい。変形例として、開口部を有する層10が複数の感光層の積層体を含む場合、各感光層は特定の波長の放射線に感応してもよい。そのため、露出工程は、所望の形状の孔26を得るために一又は複数の感光層をこれらの異なる波長の放射線に露出する工程を有してもよい。
【0092】
図12は、入射放射線70に露出した不透明層24の部分72を現像剤に溶解させて孔26を形成する、不透明層24の現像工程中に得られた構造を示す。このようにして開口部を有する層10が得られる。現像剤の組成は、使用されたポジ型レジストの性質に応じて決められる。
【0093】
この方法は、孔26を充填材料で充填し、このようにして得られた光学系5 を画像センサ44に接合する工程を含むその後の工程を有してもよい。
【0094】
図13及び
図14は、
図1及び
図2に示されている光学系5 を製造する方法の別の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【0095】
本製造方法の実施モードの最初の工程は、層24が、開口部を有する層10の孔26を充填するための材料の層と取り替えられて、更に有用な放射線を通すネガ型レジストで形成されている点を除いて、
図8~11に関連して前述した工程を有する。
【0096】
図13は、露出工程中に使用された放射線70に露出しなかったネガ型レジスト層の部分を現像剤に溶解させる、ネガ型レジストの現像工程中に得られた構造を示す。従って、露出工程で露出したネガ型レジスト層の部分はパッド80を形成する。現像剤の組成は、使用されたネガ型レジストの性質に応じて決められる。
【0097】
図14は、例えばスピンコーティング、スプレーコーティング、ヘリオグラフィ、スロットダイコーティング、ブレードコーティング、フレキソ印刷又はシルクスクリーンによって、不透明層24をパッド80間に形成した後に得られた構造を示す。このようにして、パッド80は孔26を不透明層24に画定する。従って、開口部を有する層10が得られる。
【0098】
図1及び
図2に示されている光学系5 を製造する方法の別の実施形態は、特に放射線70がレーザ放射線に相当する場合に層24が放射線70の作用下で分解し得る材料で形成されている点を除いて、
図8~11に関連して前述した工程を有する。このレーザ放射線の照射は、マイクロメートルサイズの光学素子14のアレイの損傷を回避するために十分低く、部分72のレベルで層24を分解するためにマイクロメートルサイズの光学素子14のアレイによって平行にした後に十分高い。
図11に関連して前述した露出工程で放射線70に露出した部分72は、この放射線によって破壊されるので孔26を直接形成する。従って、開口部を有する層10が得られる。
【0099】
実施形態によれば、光学系を製造する方法はロールツーロール法に相当してもよい。別の実施形態によれば、光学系の製造方法はシートツーシート法に相当してもよい。
【0100】
開口部を有する層10が、
図4に示されているように孔26, 30を夫々有する少なくとも2つの層24, 28の積層体を含む場合、前述した実施形態の製造方法のいずれかに応じて、孔26を有する第1の層24を最初に形成し、第1の層24の存在を考慮して孔30を有する第2の層28を後で形成する。透明な中間層が第1の層24と第2の層28との間に設けられてもよい。
【0101】
マイクロレンズ14に対する孔26の位置合わせを、孔26を形成する方法自体によって自動的に行うことが有利である。更に、開口部を有する層10が、孔を夫々有する少なくとも第1及び第2の不透明層の積層体を含む場合、第1の不透明層の孔に対する第2の不透明層の孔の位置合わせを、第2の不透明層の孔を形成する方法自体によって自動的に行う。
【0102】
様々な実施形態及び変形例が述べられている。当業者は、これらの実施形態のある特徴を組み合わせることができると理解し、他の変形例が当業者に容易に想起される。
【0103】
最後に、本明細書に記載されている実施形態及び変形例の実際の実施は、上記に与えられる機能的な表示に基づく当業者の技能の範囲内である。
【0104】
本特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれている仏国特許出願第18/56709 号明細書の優先権を主張している。