(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ゴム混合物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20231228BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/548
(21)【出願番号】P 2021507801
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2019071109
(87)【国際公開番号】W WO2020035353
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】102018213774.9
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ヴェーマイアー
(72)【発明者】
【氏名】カーレン レーベン
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ エアハート
(72)【発明者】
【氏名】ユリア ヘアメーケ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ モーザー
(72)【発明者】
【氏名】エリーザベト バウアー
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ローゼンシュティングル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー マイアー
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-501833(JP,A)
【文献】特開2013-129696(JP,A)
【文献】特開2012-082325(JP,A)
【文献】特開平08-259739(JP,A)
【文献】特開昭50-084534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム混合物において、少なくとも1種のゴム、一般式I
R
1
3Si-R
2-S-R
3 I
の少なくとも1種のメルカプトシラン、および式II
R
1
3Si-R
2S
xR
2-SiR
1
3 II
のポリスルファン(上記式中、
R
1は、同じであるか、または異なっており、アルキルポリエーテル基-O-(R
4-O)
m-R
5、C1~C12-アルキル基またはR
6O-基であり、
R
2は、同じであるか、または異なっており、かつ分岐した、または非分岐の、飽和または不飽和の、脂肪族、芳香族または脂肪族と芳香族とが混合された、二価のC1~C30-炭化水素基であり、
R
3は、H、CN、または(C=O)-R
7であり、
R
4は、同じであるか、または異なっており、分岐した、または非分岐の、脂肪族の二価のC1~C30-炭化水素基であり、
mは、1~30であり、
R
5は、少なくとも1個の炭素原子から構成されており、かつ非置換の、または置換された、分岐した、または非分岐の、一価のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基であり、
R
6は、H、C1~C30の分岐した、または非分岐の、一価のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基であり、
R
7は、C1~C30の分岐した、または非分岐の、一価のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基であり、かつ
xは、2~10の整数であり、x=2のポリスルファンの割合は、x=2~10であるポリスルファンの全量に対して、少なくとも90質量%の値である)の少なくとも1つの混合物を含有
し、
一般式Iのメルカプトシランが、使用されるゴム100質量部に対して、0.1~8質量部の量で含まれており、かつ式IIのポリスルファンの混合物が、使用されるゴム100質量部に対して、0.1~8質量部の量で含有されていることを特徴とする、ゴム混合物。
【請求項2】
R
1が、同じであるか、または異なっており、メトキシ基、エトキシ基、またはアルキルポリエーテル基-O-(R
4-O)
m-R
5であり、かつ一般式Iのメルカプトシランの少なくとも1つのR
1は、アルキルポリエーテル基-O-(R
4-O)
m-R
5であり、R
2は、CH
2CH
2CH
2であり、R
3は、Hである、請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項3】
R
1は、同じであるか、または異なっており、かつエトキシ基またはアルキルポリエーテル基-O-(R
4-O)
m-R
5であり、かつ一般式Iのメルカプトシランの少なくとも1つのR
1基は、アルキルポリエーテル基-O-(R
4-O)
m-R
5であり、かつ一般式IIのポリスルファンのR
1基は、エトキシ基である、請求項2に記載のゴム混合物。
【請求項4】
一般式Iのメルカプトシランは、(C
13H
27-(OCH
2CH
2)
5-O-)
3Si-(CH
2)
3-SH、(C
13H
27-(OCH
2CH
2)
5-O-)
2(CH
3CH
2O-)Si-(CH
2)
3-SH、(C
13H
27-(OCH
2CH
2)
5-O-)(CH
3CH
2O-)
2Si-(CH
2)
3-SHまたは(CH
3CH
2O-)
3Si-(CH
2)
3-SHである、請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項5】
一般式IIのポリスルファンは、(CH
3CH
2O)
3Si-(CH
2)
3-S
x-(CH
2)
3-Si(OCH
2CH
3)
3である、請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項6】
充填剤および任意で他のゴム助剤を含有する、請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項7】
請求項1に記載のゴム混合物の製造方法において、少なくとも1種のゴム、一般式Iの少なくとも1種のメルカプトシラン、および式IIのポリスルファンの少なくとも1つの混合物を混合することを特徴とする、ゴム混合物の製造方法。
【請求項8】
成形体を製造するための、請求項1に記載のゴム混合物の使用。
【請求項9】
空気タイヤ、タイヤトレッド、ゴムを含有するタイヤ構成部品、ケーブルジャケット、ホース、駆動ベルト、コンベアベルト、ローラーのライニング、タイヤ、靴底、シーリングリング、または緩衝部材を製造するための、請求項1に記載のゴム混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム混合物、その製造方法ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願第1285926号明細書(EP1285926)、第1683801号明細書(EP1683801)および第1829922号明細書(EP1829922)からは、ポリエーテル基を有するメルカプトシランもしくはポリスルフィドシランが公知である。
【0003】
さらに、「VP Si363(R)用の加工助剤としてのSi266(R)(“Si 266(R) as processing aid for VP Si 363(R)”)」から、Si266(R)を添加することにより、ムーニー粘度およびムーニースコーチ特性を改善できることが公知である(http://automotive.evonik.com/product/automotive/en/innovations/fuel-savings-emission-reduction/Pages/si363.aspx)。
【0004】
シラン混合物を含有している公知のゴム混合物の欠点は、動的特性が劣ること、および耐摩耗性が低いことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願第1285926号明細書
【文献】欧州特許出願第1683801号明細書
【文献】欧州特許出願第1829922号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、シラン混合物を含有するゴム混合物であって、動的特性が改善され、かつ耐摩耗性が改善されたゴム混合物を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対象は、少なくとも1種のゴム、一般式I
R1
3Si-R2-S-R3 I
の少なくとも1種のメルカプトシラン、および式II
R1
3Si-R2SxR2-SiR1
3 II
のポリスルファン
(上記式中、
R1は、同じであるか、または異なっており、アルキルポリエーテル基-O-(R4-O)m-R5、C1~C12-アルキル基またはR6O-基であり、有利には一般式Iのメルカプトシランの少なくとも1つのR1基は、アルキルポリエーテル基-O-(R4-O)m-R5であってよく、
R2は、分岐した、または非分岐の、飽和または不飽和の、脂肪族、芳香族または脂肪族と芳香族とが混合された、二価のC1~C30-炭化水素基であり、有利には(CH2)3-基であり、かつ
R3は、H、CN、または(C=O)-R7であり、
R4は、同じであるか、または異なっており、分岐した、または非分岐の、脂肪族の二価のC1~C30-炭化水素基であり、有利には、C2~C3、特に有利にはCH2CH2であり、
mは、1~30であり、有利には2~10、特に有利には5であり、
R5は、少なくとも1個の炭素原子から構成されており、かつ非置換の、または置換された、分岐した、または非分岐の、一価のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基であり、有利にはC1~C15-アルキル基、特に有利にはC7~C15-アルキル基であり、特に有利にはC13H27-アルキル基であり、
R6は、H、C1~C30の、分岐した、または非分岐の、一価のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基であり、前記アルキル基は、有利にはメチル基、エチル基もしくはプロピル基、特に有利にはエチル基であり、
R7は、C1~C30の、分岐した、または非分岐の、一価のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基であり、前記アルキル基は、有利にはメチル基、エチル基、プロピル基、ヘプチル基もしくはオクチル基であり、かつ
xは、2~10の整数であり、x=2のポリスルファンの割合は、x=2~10であるポリスルファンの全量に対して、少なくとも90質量%、有利には92~98質量%、特に有利には93~98質量%の値である)の少なくとも1つの混合物を含有することを特徴とする、ゴム混合物である。
【0008】
式IIのポリスルファンの混合物は、x=3のポリスルファンの割合が、x=2~10のポリスルファンの全量に対して、10質量%以下、有利には8質量%以下の値であってもよい。
【0009】
前記ゴムは、有利にはジエンゴムであってもよい。
【0010】
一般式Iのシランは、
(C13H27-(OCH2CH2)5-O-)3Si-(CH2)3-SH、
(C13H27-(OCH2CH2)5-O-)2(CH3CH2O-)Si-(CH2)3-SH、(C13H27-(OCH2CH2)5-O-)(CH3CH2O-)2Si-(CH2)3-SH、(CH3CH2O-)3Si-(CH2)3-SH、
(CH3O-)3 Si-(CH2)3-SHまたは
一般式Iの前記のシランの混合物であってもよい。一般式Iのメルカプトシランは、一般式Iのメルカプトシランのオリゴマーまたはポリマーを含有していてもよい。
【0011】
一般式IIのポリスルファンは、(CH3CH2O)3Si-(CH2)3-Sx-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3または(CH3O)3Si-(CH2)3-Sx-(CH2)3-Si(OCH3)3であってもよい。一般式IIのポリスルファンは、一般式IIのポリスルファンのオリゴマーまたはポリマーを含有していてもよい。
【0012】
有利な1実施態様では、式Iのメルカプトシランは、(C13H27-(OCH2CH2)5-O-)3Si-(CH2)3-SH、(C13H27-(OCH2CH2)5-O-)2(CH3CH2O-)Si-(CH2)3-SH、(C13H27-(OCH2CH2)5-O-)(CH3CH2O-)2Si-(CH2)3-SH、または前記のシランの混合物、または一般式IIのポリスルファン (CH3CH2O)3Si-(CH2)3-Sx-(CH2)3-Si(OCH2CH3)3であってもよい。
【0013】
ゴム混合物は、一般式Iのシランを、使用されるゴム100質量部に対して、0.1~8質量部の量で含有していてもよく、かつ式IIのポリスルファンの混合物を、使用されるゴムに対して、0.1~8質量部の量で含有していてもよい。
【0014】
ゴム混合物は、少なくとも1種の充填剤を含有していてもよい。
【0015】
本発明によるゴム混合物のための充填剤として、以下の充填剤を使用することができる:
- カーボンブラック:このために使用されるカーボンブラックは、フレームブラック法、ファーネスブラック法、ガスブラック法またはサーマルブラック法により製造することができる。これらのカーボンブラックは、20~200m2/gのBET表面積を有していてもよい。カーボンブラックは任意でドープされていてもよく、たとえばSiによりドープされていてもよい。
- 非晶質シリカ、有利には沈降シリカまたは熱分解法シリカ。これらの非晶質シリカは、5~1000m2/g、有利には20~400m2/gの比表面積(BET表面積)と、10~400nmの一次粒径を有していてもよい。これらのシリカは、任意で他の金属酸化物、たとえばAl、Mg、Ca、Ba、Znおよびチタンの酸化物との混合酸化物として存在していてもよい。
- 合成ケイ酸塩、たとえばケイ酸アルミニウムまたはアルカリ土類金属のケイ酸塩、たとえばケイ酸マグネシウムまたはケイ酸カルシウム。これらの合成ケイ酸塩は、20~400m2/gのBET表面積と、10~400nmの一次粒子径を有していてもよい。
- 合成または天然の酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウム、
- 天然のケイ酸塩、たとえばカオリンおよびその他の天然由来のケイ酸。
- ガラス繊維およびガラス繊維製品(マット、バー)またはマイクロガラスビーズ。
【0016】
有利には、非晶質シリカ、特に有利には沈降シリカまたはケイ酸塩、特に有利には20~400m2/gのBET表面積を有する沈降シリカを、ゴム100質量部に対して、5~180質量部の量で使用することができる。
【0017】
本発明によるゴム混合物は、天然ゴムおよび/または合成ゴムを含有していてよい。有利な合成ゴムは、たとえばW.Hofmann著の「ゴム技術(Kautschuktechnologie)」(Genter Verlag、シュトゥットガルト、1980年発行)に記載されている。このようなゴムは、特に以下のものを含有する:
- ポリブタジエン(BR)、
- ポリイソプレン(IR)、
- スチレン/ブタジエン-コポリマー、たとえば乳化重合型SBR(E-SBR)または溶液重合型SBR(L-SBR)、有利にはコポリマー全量に対して、1~60質量%、特に有利には2~50質量%のスチレン含有率を有するスチレン/ブタジエン-コポリマー、
- クロロプレン(CR)、
- イソブチレン/イソプレンコポリマー(IIR)、
- ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、有利にはコポリマー(NBR)の全量に対して、5~60質量%、好ましくは10~50質量%のアクリロニトリル含有率を有するブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、
- 部分水素化または完全に水素化されたNBRゴム(HNBR)、
- エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー(EPDM)または
- 上記のゴムであって、さらに官能基、たとえばカルボキシ基、シラノール基もしくはエポキシ基を有するもの、たとえばエポキシ化NR、カルボキシ官能化NBRまたはシラノール官能化(-SiOH)もしくはシロキシ官能化(-Si-OR)されたもの、アミノ官能化、エポキシ官能化、メルカプト官能化、ヒドロキシ官能化されたSBR、
ならびにこれらのゴムの混合物。乗用車のタイヤトレッドを製造するためには、特にアニオン重合され、-50℃以上のガラス転移温度を有するL-SBRゴム(溶液重合型SBR)、ならびにL-SBRゴムとジエンゴムとの混合物が興味深い。
【0018】
メルカプト変性されたS-SBRおよび一般式IIのポリスルファンを含有するゴム混合物は、一般式Iのシランを添加しなくても、加工性の改善につながる。
【0019】
本発明によるゴム混合物は、ゴム工業で公知の他のゴム助剤、たとえば反応促進剤、老化防止剤、熱安定化剤、光保護剤、オゾン保護剤、加工助剤、軟化剤もしくは可塑剤、樹脂、増粘剤、発泡剤、着色剤、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、遅延剤、金属酸化物ならびに活性化剤、たとえばジフェニルグアニジン、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、アルコキシ末端ポリエチレングリコールであるアルキル-O-(CH2-CH2-O)yI-H(式中、y1=2~25、有利にはy1=2~15、特に有利にはy1=3~10、とりわけ有利にはy1=3~6)、またはヘキサントリオールを含有していてもよい。
【0020】
ゴム助剤は、特に使用目的に向けた公知の量で使用することができる。通常の量は、たとえばゴム100質量部に対して、0.1~50質量部の量である。架橋剤として、過酸化物、硫黄、または硫黄のドナーとなる物質を使用することができる。本発明によるゴム混合物は、さらに、加硫促進剤を含有していてもよい。適切な加硫促進剤の例は、メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバメート、チオ尿素およびチオカルバメートであってもよい。加硫促進剤および硫黄は、ゴム100質量部に対して、0.1~10質量部、有利には0.1~5質量部の量であってもよい。
【0021】
本発明のもう1つの対象は、本発明によるゴム混合物の製造方法であり、この方法は、少なくとも1種のゴム、一般式I
R1
3Si-R2-S-R3 I
の少なくとも1種のメルカプトシラン、および式II
R1
3Si-R2-Sx-R2-SiR1
3 II
のポリスルファン(式中で、R1、R2、R3およびxは、上記の意味を表す)の少なくとも1つの混合物を混合することを特徴とする。
【0022】
一般式Iのメルカプトシランおよび式IIのポリスルファン混合物の添加、ならびに充填剤の添加は、物質温度が100~200℃の際に行うことができる。しかしこの温度は、たとえば40~100℃の、もっと低い温度であってもよく、他のゴム助剤と共に、限定されるものではない。
【0023】
一般式Iのメルカプトシランおよび式IIのポリスルファン混合物は、別々に、または予め混合してから、ゴム混合物に添加することができる。
【0024】
式Iのメルカプトシランは、純粋な形でも、不活性の有機もしくは無機担体に担持した形でもよいし、有機もしくは無機担体と予め反応させて、混合工程に添加してもよい。
【0025】
式IIのポリスルファンの混合は、純粋な形でも、不活性の有機もしくは無機担体に担持した形でもよいし、有機もしくは無機担体と予め反応させて、混合工程に添加してもよい。
【0026】
有利な担体材料は、沈降シリカまたは熱分解法シリカ、ワックス、熱可塑性樹脂、天然もしくは合成のケイ酸塩、天然もしくは合成の酸化物、有利には酸化アルミニウム、またはカーボンブラックであってもよい。さらに、シランは、使用される充填剤と予め反応させてから、混合工程に添加してもよい。
【0027】
本発明によるゴム混合物は、100~200℃、好ましくは120~180℃で、場合により10~200バールの圧力下で加硫することができる。
【0028】
ゴムと充填剤、任意でゴム助剤およびシランとの混合は、公知の混合装置、たとえばローラー、インターナルミキサー、および混合押出機で実施することができる。
【0029】
本発明によるゴム混合物は、成形体を製造するために、たとえば空気タイヤ、タイヤトレッド、ケーブルジャケット、ホース、駆動ベルト、コンベアベルト、ローラーライニング、タイヤ、靴底、シーリングリングおよび緩衝部材を製造するために使用することができる。
【0030】
本発明によるゴム混合物は、グアニジンを添加しなくても製造することができる。有利な1実施態様では、ゴム混合物は、グアニジン誘導体、有利にはジフェニルグアニジンを含んでいない。
【0031】
本発明によるゴム混合物は、改善された動的特性および耐摩耗性を有しているという利点を有する。
【実施例】
【0032】
硫黄鎖分布/硫黄鎖長の決定
硫黄化合物の分析分離および硫黄鎖長の決定は、Agilent Technologies社のHPLC分析装置1260シリーズのInfinity IIを用いて実施した。
【0033】
カラム:Bakerbond C18 (RP)、5μm、4.6×250mm、流速1.50ml/分、λ=254nm、カラム温度30℃、移動相:テトラブチルアンモニウムブロミド溶液(テトラブチルアンモニウムブロミド400mgと脱塩水1リットルから製造)180ml、エタノール450mlおよびメタノール1370mlの混合物。
【0034】
例1:ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドの製造
炭酸ナトリウム(46.0g、1.15当量)、硫化水素ナトリウム(30.9g、1.04当量、純度71%)、および脱塩水(170g)を、72℃に加熱する。反応混合物を72℃で10分間撹拌する。引き続き、硫黄(12.1g、1.01当量)を添加し、反応混合物を72℃で45分間撹拌する。引き続き、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロミド(3.07g、0.01当量、水中50%)および(3-クロロプロピル)トリエトキシシラン(181g、2.00当量)を順次、反応混合物に添加し、完全に反応するまで75℃で撹拌する。反応終了後に、脱塩水を添加し、相分離を実施する。MgSO4で有機相を乾燥させ、生成物が淡黄色の液体(η=90%)として単離される。
【0035】
S2含有率:93.6質量%、S3含有率:6.1質量%、S4含有率:0.2質量%、S5含有率:0.0質量%、S6含有率:0.0質量%、S7含有率:0.0質量%、S8含有率:0.0質量%、S9含有率:0.0質量%、S10含有率:0.0質量%、平均硫黄鎖長は2.06である。
【0036】
例2:ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドの製造
ナトリウム(41.0g、2.1当量)を、室温で窒素雰囲気下に少量ずつ、圧力反応器中のエタノール(634g、16.2当量)に添加する。反応混合物を室温で19時間撹拌する。その後、温度45~60℃および圧力0.5~1.5バールで、硫化水素(40.6g、1.4当量)を計量供給し、反応混合物を30分間撹拌する。引き続き、硫黄(27.3g、1.0当量)を60℃で添加する。60℃で30分間撹拌した後に、60~75℃の温度および0.5~0.8バールの圧力で、(3-クロロプロピル)トリエトキシシラン(409g、2.00当量)を計量供給する。完全に反応するまで、懸濁液を80℃および0.8~2.0バールでさらに撹拌する。その後、反応混合物を室温まで冷却させ、懸濁液を濾過し、濾液を減圧下で濃縮させ、生成物を真空下で乾燥させる。生成物が淡黄色の液体(η=88%)として単離される。
【0037】
S2含有率:93.4質量%、S3含有率:6.4質量%、S4含有率:0.2質量%、S5含有率:0.0質量%、S6含有率:0.0質量%、S7含有率:0.0質量%、S8含有率:0.0質量%、S9含有率:0.0質量%、S10含有率:0.0質量%、平均硫黄鎖長は2.06である。
【0038】
例3:ゴム技術的試験
ゴム混合物のために使用した処方は、以下の第1表に記載されている。この表において、単位phrは、使用される原料ゴム100部に対する質量割合を意味している。
【0039】
【0040】
使用した物質:
a)Buna VSL 4526-2:Buna(R)VSL 4526-2 HMは、TDAEオイル37.5phrで希釈される溶液重合型スチレン・ブタジエンゴムである。Mooney(1+4@100℃):ARLANXEO Deutschland GmbH社の62ME、ビニル:44.5%、スチレン:26%。
b)Buna CB 24:Buna(R)CB 24(シス-1,4>96%)、ネオジムで触媒されたブタジエンゴム、Mooney(1+4@100℃):ARLANXEO Deutschland GmbH社の44ME。
c)シリカ:Evonik Resource Efficiency GmbH社のULTRASIL(R)7000 GR(わずかに分散性の沈降シリカ、BET表面積=170m2/g、CTAB表面積=160m2/g)。
d)Si 266(R):Evonik Resource Efficiency GmbH社のビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、S2含有率:84.5質量%、S3含有率:14.4質量%、S4含有率:1.1質量%、S5含有率:0.1質量%、S6含有率:0.0質量%、S7含有率:0.0質量%、S8含有率:0.0質量%、S9含有率:0.0質量%、S10含有率:0.0質量%、平均硫黄鎖長は2.16。
e)4-((3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコシル)オキシ)-4-エトキシ-5,8,11,14,17,20-ヘキサオキサ-4-シラトリトリアコンタン-1-チオール、たとえばSi363TM:Evonik Resource Efficiency GmbH社のメルカプトシラン
f)Corax(R)N 330: Orion Engineered Carbons GmbH社のカーボンブラック
g)ZnO:Arnsperger Chemikalien GmbH社の酸化亜鉛ZnO RS RAL 844 C
h)EDENOR ST1 GS、Caldic Deutschland GmbH社のステアリン酸
i)Vivatec 500: H&R GmbH Co. KGaA 社のTDAE
j)Vulkanox(R)4020/LG:LANXESS Deutschland GmbH社のN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)
k)Vulkanox(R)HS/LG:LANXESS Deutschland GmbH社の2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)ポリマー
l)Protektor G 3109:Paramelt B.V. Niederlande社のワックス
m)Richon TBZTD-OP:Weber & Schaer GmbH & Co. KG社(製造元:Dalian Richon)のテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)
n)Vulkacit(R)CZ/EG-C:LANXESS Deutschland GmbH社のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド
o)硫黄80/90:Azelis Deutschland GmbH社の硫黄粉末80/90°
【0041】
混合物は、1.5Lのインターナルミキサー中で、第2表に記載されている混合プロトコルに従って3段階で製造する。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
加硫は、一般的な加硫プレス機中、温度165℃および保持圧力120バールで行う。必要とされる加硫時間は予め、Moving Die Rheometer(回転子のない加硫試験機Vulkameter)により、ISO 6502(セクション3.2 「加硫試験機」)に従って165℃で決定した(第4表を参照のこと)。
【0046】
ゴム技術的試験は、第3表に記載の試験法に従って行う。
【0047】
【0048】
第4表には、原料混合物および加硫物に関するゴム技術的なデータが記載されている。
【0049】
【0050】
ジスルフィドシラン、たとえばSi266(R)が、メルカプトシランSi363TMの加工性を改善できることは公知である。
【0051】
このことは、Si26(R)を含有するゴム混合物2が、Si363TMを含有するゴム混合物1に比べて、混合段階1~3でムーニー粘度の低下によって示されている。ムーニースコーチ値もまた、有利に延長されており、これはMDRにおける時間tの10%の延長によって確認することができる。
【0052】
これらの利点は、式中でx=2が少なくとも90質量%の値となっている式IIのポリスルファンの混合物(本発明によるゴム混合物3)を使用する場合にも達成することができる。この混合物では、時間tの10%が意外にも、さらにもう一度延長されている。
【0053】
ゴム混合物2は、ゴム混合物1に比べて、同等の強化指数(応力値300%/応力値100%)を有している一方で、この比率は、本発明によるゴム混合物に関しては改善されている。極限引張強さもまた、ゴム混合物2に比べて向上することができる。
【0054】
ゴム混合物2の場合には、加工性における利点が、動的負荷の際のヒステリシス損における損失を伴う一方で、これらの特性は、本発明によるゴム混合物3では、様々な種類の負荷(ボールリバウンドによる反発弾性(エネルギーを制御した測定)、ピンチ(Zwick)(力を制御した測定)およびRPA(逆方向に制御した測定))を用いた、互いに独立した3つの動的試験において、ふたたびほぼゴム混合物1のレベルに達する。このことにより、転がり抵抗、ひいてはタイヤトレッドのコンパウンドとして本発明によるゴム混合物が使用されているタイヤを備えた自動車の燃料消費を明らかに低減することができる。
【0055】
意外なことに、ゴム混合物2によりすでに達成された、ゴム混合物1に対して改善されたウェットグリップ性能に加えて、実験室用摩耗試験機LAT(System Grosch)を用いて耐摩耗性の明らかな改善も見られる。
【0056】
従って、本発明によるゴム混合物により、加工および最も重要なゴム技術上の特性において、両方の参照用混合物に比べて明らかに向上された、総合的なパフォーマンスを達成することができる。