(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】金属錯体、中間体、その製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
C07F 19/00 20060101AFI20231228BHJP
C07F 9/6571 20060101ALI20231228BHJP
C07F 15/00 20060101ALI20231228BHJP
C07C 233/05 20060101ALI20231228BHJP
C07C 231/12 20060101ALI20231228BHJP
C07C 233/06 20060101ALI20231228BHJP
B01J 31/24 20060101ALI20231228BHJP
C07B 53/00 20060101ALN20231228BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
C07F19/00 CSP
C07F9/6571
C07F15/00 B
C07C233/05
C07C231/12
C07C233/06
B01J31/24 Z
C07B53/00 B
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021520313
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 CN2019110401
(87)【国際公開番号】W WO2020073962
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】201811178107.X
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512198659
【氏名又は名称】中国科学院上海有机化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】湯文軍
(72)【発明者】
【氏名】徐斯尭
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-509012(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105859783(CN,A)
【文献】特表2013-510154(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103087105(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
B01J
CAplus/REGISTRY/MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
で表される金属錯体
(ただし、R
1およびR
2は、それぞれ独立に水素、C
1~C
10アルキル、ハロゲン、C
3~C
8シクロアルキルまたはC
6アリールであり
;
*を付された炭素は、全てS配置のキラル炭素であるか、または全てR配置のキラル炭素であり;
*を付されたPは、全てS配置のキラルPであるか、または全てR配置のキラルPである)
であって、
以下の化合物:
のいずれか1つである
、式Iで表される金属錯体。
【請求項2】
請求項
1に記載の式Iで表される金属錯体の製造方法であって、不活性ガスの雰囲気において、第一の有機溶媒中、式IIIで表される遷移金属前駆体と式IIで表される配位子化合物とを以下で示される配位結合反応:
(ただし、
遷移金属イオンM
n+
はRh
+
であり;アニオンR
n
-
は、BF
4
-
であり;R
1、R
2、nおよび*の定義は、請求項
1に記載される)
に供し、式Iで表される前記金属錯体を得る工程を含む、方法。
【請求項3】
不斉触媒水素化反応における請求項
1に記載の式Iで表される金属錯体の使用であって、有機溶媒中、水素雰囲気および式Iで表される前記金属錯体の存在下で、
の構造を含む化合物Aを不斉触媒水素化還元反応に供し、対応化合物Bを得る工程を含み、
ここで、式Iで表される前記金属錯体が
である場合、前記化合物Bの主な構成は、
の構造を含み、
前記式Iで表される金属錯体が
である場合、前記化合物Bの主な構成は、
の構造を含み、
ただし、
遷移金属イオンM
n+
はRh
+
であり;アニオンR
n
-
は、BF
4
-
であり;R
1、R
2およびnの定義は、請求項
1に記載される、
使用。
【請求項4】
の構造を含む前記化合物Aは、式A-1:
(ただし、破線は、環を形成していない又は形成していることを表し;
R
a、R
bおよびR
cは、それぞれ独立に、H、-COOH、-OH、-CN、任意に置換されてもよいアルキル-オキシ、任意に置換されてもよいアルキル-オキシ-カルボニル、任意に置換されてもよいアルキル-カルボニル-オキシ、任意に置換されてもよいアルキルまたはシクロアルキル、任意に置換されてもよいヘテロシクロアルキル、任意に置換されてもよいアリールまたは任意に置換されてもよいヘテロアリールであり;
または、R
aおよびR
bは、それらが結合した炭素原子とともに任意に置換されてもよいシクロアルケンまたは任意に置換されてもよいヘテロシクロアルケンを形成し;
R
dは、独立に、任意に置換されてもよいアルキルもしくはシクロアルキル、任意に置換されてもよいヘテロシクロアルキル、任意に置換されてもよいアリールまたは任意に置換されてもよいヘテロアリールであり;
「任意に置換されてもよい」とは置換されていない、またはハロゲン、ハロアルキル、-OH、-CN、アルキル-オキシ、アルキル-S-、カルボキシル、エステル基、カルボニル、アミド、任意に置換されてもよいアミノスルホニルもしくは任意に置換されてもよいフェニルで置換されていることであり;「置換」の数は限定され
ず;任意に置換されてもよいシクロアルケニルもしくは任意に置換されてもよいヘテロシクロアルケニル、任意に置換されてもよいシクロアルキル、任意に置換されてもよいヘテロシクロアルキル、任意に置換されてもよいアリールまたは任意に置換されてもよいヘテロアリールの場合、「置換」は、シクロアルケン
、ヘテロシクロアルケ
ン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール
との縮合環を形成していることを示す、
請求項
3に記載の使用。
【請求項5】
R
a、R
bまたはR
cが任意に置換されてもよいアルキルである場合、前記任意に置換されてもよいアルキルは、C
1~C
10アルキルであり;
かつ/または、R
a、R
bまたはR
cが任意に置換されてもよいアルキル-オキシ-カルボニルである場合、前記任意に置換されてもよいアルキル-オキシ-カルボニルは、C
1~C
6アルキル-オキシ-カルボニルであり;
かつ/または、R
a、R
bまたはR
cが任意に置換されてもよいアリールである場合、前記任意に置換されてもよいアリールは、フェニルまたはハロゲンで置換されたフェニルであり;
かつ/または、「R
aおよびR
bは、それらが連結した炭素原子とともに任意に置換されてもよいシクロアルケンを形成している」場合、前記「任意に置換されてもよいシクロアルケン」は、ベンゾシクロヘキセンまたはシクロヘキセンであり;
かつ/または、R
dが任意に置換されてもよいアルキルである場合、前記任意に置換されてもよいアルキルは、C
1~C
6アルキルである、
請求項
4に記載の使用。
【請求項6】
前記化合物Aおよ
び対応化合物B-1は、以下の化合物:
から選択され、
前記化合物Aおよび対応化合物B-2は、以下の化合物:
から選択される、
請求項
5に記載の使用。
【請求項7】
以下のいずれかの構造:
を有する化合物II。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は出願日が2018/10/10の中国特許出願201811178107Xの優先権を要求する。本願は上記中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明は、金属錯体、中間体、その製造方法および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
1968年にKnowlesが初めてキラルホスフィン配位子を遷移金属によって触媒される不斉水素化反応に使用して以来、不斉水素化の分野では大きな発展が得られた。1972年に、Kaganが初めてのエナミドに対する不斉水素化を報告し(H. B. Kagan, T. P. Dang, J. Am. Chem
. Soc. 1972, 94, 6429.)、それから、エナミドは重要な水素化基質として幅広く研究され、一連の非常に重要な成果が得られた。
【0004】
四置換のβ-アリール環状エナミドの不斉水素化は、現在、多く研究され、かつ成功した四置換環状エナミドの不斉水素化である。1999年に、張緒穆教授((a) Z. Zhang, G. Zhu, Q. Jiang, D. Xiao, X. Zhang, J. Org. Chem. 1999, 64, 1774-1775; (b) W. Tang, Y. Chi, X. Zhang, Org. Lett. 2002, 4, 1695-1698.)がRhとMe-Pennphosの触媒系で環状エナミドを不斉水素化させる反応において、初めて、四置換環状エナミドの不斉水素化を実現させ、73%~98%のee値(収率80~99%)が得られたが、基質の範囲は非常に限られる。その後、Bruneauら(P. Dupau, C. Bruneau, P. H. Dixneuf, Adv. Synth. Catal. 2001, 343, 331-334.)もRuとMe-DuPhosまたはMe-BPE配位子の触媒系で四置換環状エナミド基質の不斉水素化を試みたが、中等の収率(60%~95%)とエナンチオ選択性(73%~98%)しか得られなかった。
【0005】
最近、Rieraが(E. Salomo, S. Orgue, A. Riera, X. Verdaguer, Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 7988-7992.)Ir-MAXPHOX系で触媒する不斉水素化反応を報告したが、同じくRhまたはRuに似た触媒効果が得られた(下記図のように)。
【0006】
しかし、四置換のα、β-アルキル環状エナミドの不斉水素化について、現在、まだ文献が報告されていない。(下記図において、R
1、R
2、R
3基はいずれもアルキル基である)
【0007】
上記研究の進展から、エナミド系化合物の不斉水素化はある程度の進展が得られたが、満足できる収率またはエナンチオ選択性が得られない、挑戦的な水素化基質はまだ存在し、突破すべき困難がまだあり、挑戦する意義のある課題であることがわかる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の解決しようとする技術課題は、既存のエナミドを触媒水素化してキラルアミドを合成する触媒が少なく、かつ効率が低いなどの欠陥のため、金属錯体、中間体、その製造方法および使用を提供することである。本発明は、キラルホスフィン配位子と遷移金属の配位結合で製造される金属錯体は、不斉触媒水素化反応の触媒として有用で、効率的に触媒して一連の高光学純度(ee値>99%)のキラルβ-アリールアミドを合成すること、特に四置換エナミド系化合物を不斉触媒水素化させ、高光学純度(ee値が60%以上に達する)でキラルアミドを合成することができ、配位子の担持量(s/c)が100,000に達し、既存技術よりも遥かに高く、高い経済的実用性を有する。
【0009】
本発明は下記技術方案によって上記技術課題を解決する。
【0010】
本発明は、式(I)で表される金属錯体を提供する。
(ただし、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素、C
1~C
10アルキル基、C
1~C
4アルコキシ基、C
3~C
30シクロアルキル基、ハロゲンまたはC
6~C
30アリール基である。
【0011】
Mn+は遷移金属イオンである。nは1、2または3で、前記の遷移金属Mの相応するイオン価数によって決まる。
【0012】
*で表記された炭素はいずれもS配置のキラル炭素か、いずれもR配置のキラル炭素である。
【0013】
*で表記されたP(リン原子)はいずれもS配置のキラルPか、いずれもR配置のキラルPである。)
【0014】
一つの技術方案において、前記の式Iで表される金属錯体の一部の基の定義は以下の通りで、定義されていない基は前記任意の方案に記載の通りである:
R1またはR2がそれぞれ独立にC1~C10アルキル基である場合、前記C1~C10アルキル基はC1~C6アルキル基で、前記C1~C6アルキル基は好ましくはそれぞれ独立にメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、またはn-ヘキシル基で、より好ましくはC1~C4アルキル基(たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基またはt-ブチル基)である。
【0015】
一つの技術方案において、前記の式Iで表される金属錯体の一部の基の定義は以下の通りで、定義されていない基は前記任意の方案に記載の通りである:
R1またはR2がそれぞれ独立にC1~C4アルコキシ基である場合、前記のC1~C4アルコキシ基はメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基またはt-ブトキシ基である。
【0016】
一つの技術方案において、前記の式Iで表される金属錯体の一部の基の定義は以下の通りで、定義されていない基は前記任意の方案に記載の通りである:
R1またはR2がそれぞれ独立にC3~C30シクロアルキル基である場合、前記のC3~C30シクロアルキル基はC3~C8シクロアルキル基(たとえばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基またはシクロオクチル基)である。
【0017】
一つの技術方案において、前記の式Iで表される金属錯体の一部の基の定義は以下の通りで、定義されていない基は前記任意の方案に記載の通りである:
R1またはR2がそれぞれ独立にC6~C30アリール基である場合、前記のC6~C30アリール基はC6~C14アリール基(たとえばフェニル基またはナフチル基)である。
【0018】
一つの技術方案において、前記の式Iで表される金属錯体の一部の基の定義は以下の通りで、定義されていない基は前記任意の方案に記載の通りである:
R1またはR2がそれぞれ独立にハロゲンである場合、前記のハロゲンはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
【0019】
一つの技術方案において、前記の式Iで表される金属錯体の一部の基の定義は以下の通りで、定義されていない基は前記任意の方案に記載の通りである:
R1とR2が同様である。
【0020】
一つの技術方案において、前記の式Iで表される金属錯体の一部の基の定義は以下の通りで、定義されていない基は前記任意の方案に記載の通りである:
前記の遷移金属イオンMn+は好ましくはRh+、Ru2+、Ni2+、Ir2+、Pd2+、Cu2+、Pt2+、Co2+またはAu3+、より好ましくはRu2+またはRh+である。
【0021】
一つの技術方案において、前記の式Iで表される金属錯体の一部の基の定義は以下の通りで、定義されていない基は前記任意の方案に記載の通りである:
前記のアニオンR-は本分野の通常のアニオンで、たとえばBF4
-、SbF6
-、TfO-、B(C6H5)4
-、B[3,5-(CF3)2C6H3]4
-、またはPF6
-、好ましくはBF4
-またはPF6
-である。
【0022】
一つの技術方案において、前記の式Iで表される金属錯体の一部の基の定義は以下の通りで、定義されていない基は前記任意の方案に記載の通りである:
前記の式Iで表される金属錯体は
である。
【0023】
前記の式Iで表される金属錯体の一部の基の定義は以下の通りで、定義されていない基は前記任意の方案に記載の通りである:
前記の式Iで表される金属錯体は
である。
【0024】
一つの技術方案において、前記の式Iで表される金属錯体は
である。
【0025】
一つの技術方案において、前記の式Iで表される金属錯体は
である。
【0026】
また、本発明は、前記の式Iで表される金属錯体の製造方法であって、不活性ガスの雰囲気において、第一有機溶媒で、式IIIで表される遷移金属前駆体と式IIで表される配位子化合物に以下で示される配位結合反応をさせ、前記の式Iで表される金属錯体を得る工程を含む方法を提供する。
(ただし、R
1、R
2、M
n+、R
-、nおよび「*」の定義はいずれも上記の通りである。)
【0027】
前記の式Iで表される金属錯体の製造方法において、前記の配位結合反応の操作および条件は本分野の通常の操作および条件でもよい。
【0028】
ここで、前記の不活性ガスは本分野の当該反応における通常の不活性ガス、たとえばアルゴンガスおよび/または窒素ガスでもよい。
【0029】
ここで、前記の第一有機溶媒は本分野の当該反応における通常の有機溶媒、たとえばエーテル系溶媒(たとえばテトラヒドロフラン、エチルエーテルおよびメチル-t-ブチルエーテルMTBEのうちの1つまたは複数)、ニトリル系溶媒(たとえばアセトニトリル)、ハロアルカン系溶媒(たとえばジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンおよびクロロホルムのうちの1つまたは複数)、スルホキシド系溶媒(たとえばジメチルスルホキシドDMSO)およびアミド系溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミドDMF)のうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくはテトラヒドロフランである。
【0030】
前記の第一有機溶媒の使用量は本分野の当該反応における通常の使用量でもよく、反応に影響を与えなければよい。
【0031】
ここで、前記の式IIIで表される遷移金属前駆体IIIと前記の式IIで表される配位子化合物の顔本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記の式IIIで表される遷移金属前駆体と前記の式IIで表される配位子化合物のモル比は好ましくは1:1.0~1:1.3(たとえば1:1.1)である。
【0032】
ここで、前記配位結合反応の温度は本分野の当該反応における通常の温度、たとえば-15~30℃(たとえば0℃~25℃)でもよい。
【0033】
ここで、前記配位結合反応の進行はTLCまたはHPLCによってモニタリングすることができるが、一般的に、一般式IIIで表される遷移金属前駆体または式IIで表される配位子化合物がなくなった時点が反応の終点とされる。前記反応の時間は0.1~1時間(たとえば0.1~0.5時間)でもよい。
【0034】
ここで、前記の反応は、さらに、後処理の工程を含んでもよく、前記後処理の工程は、濃縮、洗浄、溶媒の除去という操作を含んでもよい。前記濃縮は回転蒸発で行われてもよく、前記洗浄はエチルエーテルで行われてよいが、たとえば1回洗浄する。固体が析出した後、洗浄の溶媒を直接注ぎ出し、残りの溶媒をオイルポンプで吸引乾燥するか、あるいは直接ろ過すればよい。
【0035】
前記の式Iで表される金属錯体の製造方法は、さらに、不活性ガスの雰囲気において、第二有機溶媒で、式IVで表される化合物と還元剤に以下で示される還元反応をさせ、前記の化合物IIを得る工程を含んでもよい。
(ただし、R
1、R
2および「*」の定義はいずれも上記の通りである。)
【0036】
前記の還元反応の操作および条件は本分野の通常の操作および条件でもよいが、本発明では、特別に下記条件が選ばれる。
【0037】
前記の還元反応において、前記の不活性ガスは本分野の当該反応における通常の不活性ガス、たとえばアルゴンガスおよび/または窒素ガスでもよい。
【0038】
前記の還元反応において、前記の第二有機溶媒は本分野の当該反応における通常の有機溶媒、たとえばエーテル系溶媒(たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテルおよびメチル-t-ブチルエーテルMTBEのうちの1つまたは複数)、芳香族系溶媒(たとえばトルエンおよび/またはベンゼン)、ニトリル系溶媒(たとえばアセトニトリル)、ハロアルカン系溶媒(たとえばジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンおよびクロロホルムのうちの1つまたは複数)、スルホキシド系溶媒(たとえばジメチルスルホキシドDMSO)およびアミド系溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミドDMF)のうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくはトルエンおよび/またはテトラヒドロフランである。
【0039】
前記の第二有機溶媒の使用量は本分野の当該反応における通常の使用量でもよく、反応に影響を与えなければよい。
【0040】
前記の還元反応において、前記の還元剤は本分野の当該反応における通常の還元剤、たとえばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ-n-ブチルアミンおよび1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンのうちの1つまたは複数でもよく、好ましくはトリエチルアミンおよび/または1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。
【0041】
前記の還元反応において、前記の還元剤と前記の化合物IVのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記の還元剤と前記の化合物IVのモル比は好ましくは10:1~1:1(たとえば3:1)である。
【0042】
前記の還元反応において、前記反応の温度は本分野の当該反応における通常の温度、たとえば20℃~100℃(たとえば60℃~80℃)でもよい。
【0043】
前記の還元反応において、前記反応の進行はTLCまたはHPLCによってモニタリングすることができるが、一般的に、式IVで表される化合物がなくなった時点が反応の終点とされる。前記反応の時間は4~24時間(たとえば12~16時間)でもよい。
【0044】
前記の式Iで表される金属錯体の製造方法は、さらに、不活性ガスの雰囲気において、第三有機溶媒で、塩基、配位子および金属酸化剤の存在下で、式Vで表される化合物と式V'で表される化合物に以下で示される二量化カップリング反応をさせ、前記の化合物IVを得る工程を含んでもよい。
(ただし、R
1およびR
2の定義はいずれも上記の通りである。*で表記された炭素はいずれもS配置のキラル炭素か、いずれもR配置のキラル炭素である。*で表記された2つのPはいずれもS配置のキラルPまたはR配置のキラルPである。)
【0045】
前記のカップリング反応の操作および条件は本分野の通常の操作および条件でもよいが、本発明では、特別に下記条件が選ばれる。
【0046】
前記のカップリング反応において、前記の不活性ガスは本分野の当該反応における通常の不活性ガス、たとえばアルゴンガスおよび/または窒素ガスでもよい。
【0047】
前記のカップリング反応において、前記の第三有機溶媒は本分野の当該反応における通常の有機溶媒、たとえばエーテル系溶媒(たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテルおよびメチル-t-ブチルエーテルMTBEのうちの1つまたは複数)、芳香族系溶媒(たとえばトルエンおよび/またはベンゼン)、ニトリル系溶媒(たとえばアセトニトリル)、ハロアルカン系溶媒(たとえばジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンおよびクロロホルムのうちの1つまたは複数)、スルホキシド系溶媒(たとえばジメチルスルホキシドDMSO)およびアミド系溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミドDMF)のうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくはテトラヒドロフランである。
【0048】
前記の第三有機溶媒の使用量は本分野の当該反応における通常の使用量でもよく、反応に影響を与えなければよい。
【0049】
前記のカップリング反応において、前記の塩基は本分野の当該反応における通常の塩基、たとえばn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドおよびジイソプロピルアミドマグネシウムクロリド-リチウムクロリド錯体のうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくはリチウムジイソプロピルアミドおよび/またはt-ブチルリチウムである。
【0050】
前記のカップリング反応において、前記の配位子は本分野の当該反応における通常の配位子、たとえばテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、テトラヒドロフラン(THF)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)および1,4-ジアザビシクロ[2,2.2]オクタン(DABCO)のうちの1つまたは複数でもよく、好ましくはテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)である。
【0051】
前記のカップリング反応において、前記の金属酸化剤は本分野の当該反応における通常の金属酸化剤、たとえば塩化銅(II)、塩化鉄(III)、ピバリン酸銅(II)およびイソ酪酸銅(II)のうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくは塩化銅(II)である。
【0052】
前記のカップリング反応において、前記の塩基と前記の化合物Vのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記の塩基と前記の化合物Vのモル比は好ましくは10:1~1:1(たとえば1.5:1)である。
【0053】
前記のカップリング反応において、前記の配位子と前記の化合物Vのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記の配位子と前記の化合物Vのモル比は好ましくは10:1~1:1(たとえば1.5:1)である。
【0054】
前記のカップリング反応において、前記の金属酸化剤と前記の化合物Vのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、たとえば前記の金属酸化剤と前記の化合物Vのモル比は10:1~1:1(たとえば3:1)である。
【0055】
前記のカップリング反応において、前記反応の温度は本分野の当該反応における通常の温度、たとえば-78℃~30℃でもよい。
【0056】
前記のカップリング反応において、前記反応の進行はTLCまたはHPLCによってモニタリングすることができるが、一般的に、式Vで表される化合物がなくなった時点が反応の終点とされる。
【0057】
前記の式Iで表される金属錯体の製造方法は、さらに、不活性ガスの雰囲気において、第四有機溶媒で、還元試薬およびボランの存在下で、式VIで表される化合物に以下で示される還元-酸化反応をさせ、前記の化合物Vを得る工程を含んでもよい。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。*で表記されたPはS配置のキラルPまたはR配置のキラルPである。)
【0058】
前記の還元-酸化反応の操作および条件は本分野の通常の操作および条件でもよいが、本発明では、特別に下記条件が選ばれる。
【0059】
前記の還元-酸化反応において、前記の不活性ガスは本分野の当該反応における通常の不活性ガス、たとえばアルゴンガスおよび/または窒素ガスでもよい。
【0060】
前記の還元-酸化反応において、前記の第四有機溶媒は本分野の当該反応における通常の有機溶媒、たとえばエーテル系溶媒(たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテルおよびメチル-t-ブチルエーテルMTBEのうちの1つまたは複数)、芳香族系溶媒(たとえばトルエンおよび/またはベンゼン)、ニトリル系溶媒(たとえばアセトニトリル)、ハロアルカン系溶媒(たとえばジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンおよびクロロホルムのうちの1つまたは複数)、スルホキシド系溶媒(たとえばジメチルスルホキシドDMSO)およびアミド系溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミドDMF)のうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくはテトラヒドロフランおよび/またはジオキサンである。
【0061】
前記の還元-酸化反応において、前記の第四有機溶媒の使用量は本分野の当該反応における通常の使用量でもよく、反応に影響を与えなければよい。
【0062】
前記の還元-酸化反応において、前記の還元試薬は本分野の当該反応における通常の還元試薬、たとえば「トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンおよびトリ-n-ブチルアミンのうちの1つまたは複数」、トリクロロシランおよびテトライソプロポキシチタン、あるいはポリメトキシヒドロシランおよびテトライソプロポキシチタンでもよく、好ましくはポリメトキシヒドロシランおよびテトライソプロポキシチタンである。
【0063】
前記の還元-酸化反応において、前記の還元試薬と前記の化合物VIのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記の還元試薬と前記の化合物VIのモル比は好ましくは10:1~1:1(たとえば2.5:1~1.3:1)である。
【0064】
前記の還元-酸化反応において、前記のボランは本分野の当該反応における通常のブランでもよいが、好ましくはボランのテトラヒドロフラン溶液(たとえば1Mのテトラヒドロフラン溶液)である。
【0065】
前記の還元-酸化反応において、前記のボランと前記の化合物VIのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記のボランと前記の化合物VIのモル比は好ましくは10:1~1:1(たとえば2.5:1~1.2:1)である。
【0066】
前記の還元-酸化反応において、前記還元反応の温度は本分野の当該反応における通常の温度、たとえば20~80℃(たとえば55~70℃)でもよい。
【0067】
前記の還元-酸化反応において、前記酸化反応の温度は本分野の当該反応における通常の温度、たとえば10~70℃(たとえば15~40℃)でもよい。
【0068】
前記の還元反応において、前記反応の進行はTLCまたはHPLCによってモニタリングすることができるが、一般的に、式VIで表される化合物がなくなり、還元産物Vが生成した時点が反応の終点とされる。還元反応の時間は2~24時間(たとえば4~24時間)である。酸化反応の時間は1~24時間(たとえば2~24時間)である。
【0069】
前記の化合物V'は上記のような化合物Vの製造方法によって製造される。
【0070】
前記の式Iで表される金属錯体の製造方法は、さらに、溶媒で、酸化試薬の存在下で、式VIIで表される化合物に以下で示される酸化反応をさせ、前記の化合物VIを得る工程を含んでもよい。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。*で表記されたPはS配置のキラルPまたはR配置のキラルPである。)
【0071】
前記の酸化反応の操作および条件は本分野の通常の操作および条件でもよいが、本発明では、特別に下記条件が選ばれる。
【0072】
前記の酸化反応において、前記の溶媒は本分野の当該反応における通常の溶媒、たとえば水、アルコール系溶媒(たとえばメタノール)、エーテル系溶媒(たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテルおよびメチル-t-ブチルエーテルMTBEのうちの1つまたは複数)、芳香族系溶媒(たとえばトルエンおよび/またはベンゼン)、ニトリル系溶媒(たとえばアセトニトリル)、ハロアルカン系溶媒(たとえばジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンおよびクロロホルムのうちの1つまたは複数)、スルホキシド系溶媒(たとえばジメチルスルホキシドDMSO)およびアミド系溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミドDMF)のうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくは水およびメタノールである。
【0073】
前記の溶媒の使用量は本分野の当該反応における通常の使用量でもよく、反応に影響を与えなければよい。
【0074】
前記の酸化反応において、前記の酸化試薬は本分野の当該反応における通常の酸化試薬、たとえば過酸化水および/またはm-クロロ過安息香酸でもよいが、好ましくは過酸化水である。
【0075】
前記の酸化反応において、前記の酸化試薬と前記の化合物VIIのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記の酸化試薬と前記の化合物VIIのモル比は好ましくは1:30~1:1(たとえば1:2~1:1.87)である。
【0076】
前記の酸化反応において、前記反応の温度は本分野の当該反応における通常の温度、たとえば0~80℃でもよいが、好ましくは15~40℃(たとえば30℃)である。
前記の酸化反応において、前記反応の進行はTLCまたはHPLCによってモニタリングすることができるが、一般的に、式VIIで表される化合物がなくなった時点が反応の終点とされる。
【0077】
前記の式Iで表される金属錯体の製造方法は、さらに、化合物VII'をキラル分離し、前記の化合物VIIを得る工程を含んでもよい。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。化合物VIIにおける*で表記されたPはS配置のキラルPまたはR配置のキラルPである。)
【0078】
前記のキラル分離の操作および条件は本分野の通常の操作および条件でもよい。
本発明において、好ましくは分取カラム型番:CHIRALPAK AD-H,粒径:5 μm,寸法:4.6 mm×250 mm、移動相:イソプロパノール/n-ヘキサン=5/95、流速:1 mL/min、検出波長:210 nmである。
【0079】
前記の式Iで表される金属錯体の製造方法は、さらに、不活性ガスの雰囲気において、第五有機溶媒で、還元試薬、硫黄の存在下で、式VI'で表される化合物に以下で示される還元-硫化反応をさせ、前記の化合物VII'を得る工程を含んでもよい。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。)
【0080】
前記の還元-硫化反応の操作および条件は本分野の通常の操作および条件でもよいが、本発明では、特別に下記条件が選ばれる。
【0081】
前記の還元-硫化反応において、前記の不活性ガスは本分野の当該反応における通常の不活性ガス、たとえばアルゴンガスおよび/または窒素ガスでもよい。
【0082】
前記の還元-硫化反応において、前記の第五有機溶媒は本分野の当該反応における通常の有機溶媒、たとえばエーテル系溶媒(たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテルおよびメチル-t-ブチルエーテルMTBEのうちの1つまたは複数)、芳香族系溶媒(たとえばトルエンおよび/またはベンゼン)、ニトリル系溶媒(たとえばアセトニトリル)、ハロアルカン系溶媒(たとえばジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンおよびクロロホルムのうちの1つまたは複数)、スルホキシド系溶媒(たとえばジメチルスルホキシドDMSO)およびアミド系溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミドDMF)のうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくはテトラヒドロフランおよび/またはジオキサンである。
【0083】
前記の第五有機溶媒の使用量は本分野の当該反応における通常の使用量でもよく、反応に影響を与えなければよい。
【0084】
前記の還元-硫化反応において、前記の還元試薬は本分野の当該反応における通常の還元試薬、たとえば「トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンおよびトリ-n-ブチルアミンのうちの1つまたは複数」、トリクロロシランおよびテトライソプロポキシチタン、あるいはポリメトキシハイドロシランおよびテトライソプロポキシチタンでもよく、好ましくはポリメトキシハイドロシランおよびテトライソプロポキシチタンである。
【0085】
前記の還元-硫化反応において、前記の還元試薬と前記の化合物VI'のモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記の還元試薬と前記の化合物VI'のモル比は好ましくは10:1~1:1(たとえば2.5:1~1.4:1)である。
【0086】
前記の還元-硫化反応において、前記の硫黄は本分野の当該反応における通常の硫黄、たとえば硫黄粉でもよい。
【0087】
前記の還元-硫化反応において、前記の硫黄と前記の化合物VI'のモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記の硫黄と前記の化合物VI'のモル比は好ましくは10:1~2:1(たとえば2.5:1)である。
【0088】
前記の還元-硫化反応において、前記還元反応の温度は本分野の当該反応における通常の温度、たとえば20~80℃(たとえば55~70℃)でもよい。
【0089】
前記の還元-硫化反応において、前記反応の進行はTLCまたはHPLCによってモニタリングすることができるが、一般的に、式VI'で表される化合物がなくなった時点が反応の終点とされる。還元反応の時間は2~24時間(たとえば4~24時間)である。
【0090】
前記の式Iで表される金属錯体の製造方法は、さらに、第六有機溶媒で、還元試薬の存在下で、式VIIIで表される化合物に以下で示される還元水素化反応をさせ、前記の化合物VI'を得る工程を含んでもよい。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。)
【0091】
前記の還元反応の操作および条件は本分野の通常の操作および条件でもよいが、本発明では、特別に下記条件が選ばれる。
【0092】
前記の還元反応において、前記の第六有機溶媒は本分野の当該反応における通常の有機溶媒、たとえばエステル系溶媒(たとえば酢酸エチル)、エーテル系溶媒(たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテルおよびメチル-t-ブチルエーテルMTBEのうちの1つまたは複数)、芳香族系溶媒(たとえばトルエンおよび/またはベンゼン)、ニトリル系溶媒(たとえばアセトニトリル)、ハロアルカン系溶媒(たとえばジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンおよびクロロホルムのうちの1つまたは複数)、スルホキシド系溶媒(たとえばジメチルスルホキシドDMSO)およびアミド系溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミドDMF)のうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくは酢酸エチルである。
【0093】
前記の第六有機溶媒の使用量は本分野の当該反応における通常の使用量でもよく、反応に影響を与えなければよい。
【0094】
前記の還元反応において、前記の還元試薬は本分野の当該反応における通常の還元試薬、たとえばパラジウム触媒および水素ガスでもよいが、前記パラジウムはたとえばパラジウム炭素および/または水酸化パラジウム炭素(たとえば10%パラジウム炭素)である。
前記の還元反応において、前記の水素ガスの圧力は本分野の当該反応における通常の圧力、たとえば15~750 psi(たとえば30~500 psi)でもよい。
【0095】
前記の還元反応において、前記還元反応の温度は本分野の当該反応における通常の温度、たとえば40℃でもよい。
【0096】
前記の還元反応において、前記反応の進行はTLCまたはHPLCによってモニタリングすることができるが、一般的に、式VIIIで表される化合物がなくなった時点が反応の終点とされる。
【0097】
前記の式Iで表される金属錯体の製造方法は、さらに、第七有機溶媒で、臭化試薬、塩基の存在下で、式IXで表される化合物に以下で示される臭化-環化反応をさせ、前記の化合物VIIIを得る工程を含んでもよい。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。)
【0098】
前記の臭化-環化反応の操作および条件は本分野の通常の操作および条件でもよいが、本発明では、特別に下記条件が選ばれる。
【0099】
前記の臭化-環化反応において、前記の第七有機溶媒は本分野の当該反応における通常の有機溶媒、たとえばエーテル系溶媒(たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテルおよびメチル-t-ブチルエーテルMTBEのうちの1つまたは複数)、芳香族系溶媒(たとえばトルエンおよび/またはベンゼン)、ニトリル系溶媒(たとえばアセトニトリル)、ハロアルカン系溶媒(たとえばジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンおよびクロロホルムのうちの1つまたは複数)、スルホキシド系溶媒(たとえばジメチルスルホキシドDMSO)およびアミド系溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミドDMF)のうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくは四塩化炭素およびテトラヒドロフランである。
【0100】
前記の第七有機溶媒の使用量は本分野の当該反応における通常の使用量でもよく、反応に影響を与えなければよい。
【0101】
前記の臭化-環化反応において、前記の臭化試薬は本分野の当該反応における通常の臭化試薬、たとえば液体臭素でもよい。
【0102】
前記の臭化-環化反応において、前記の臭化試薬と前記の化合物IXのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記の臭化試薬と前記の化合物IXのモル比は好ましくは10:1~1:1(たとえば2:1)である。
【0103】
前記の臭化-環化反応において、前記の塩基は本分野の当該反応における通常の塩基、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウム-t-ブトキシドおよびリチウム-t-ブトキシドのうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくはナトリウム-t-ブトキシドである。
【0104】
前記の臭化-環化反応において、前記の塩基と前記の化合物IXのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記の塩基と前記の化合物IXのモル比は好ましくは10:1~2:1(たとえば2:1)である。
【0105】
前記の臭化-環化反応において、前記臭化反応の温度は本分野の当該反応における通常の温度、たとえば0~30℃でもよい。
【0106】
前記の臭化-環化反応において、前記環化反応の温度は本分野の当該反応における通常の温度、たとえば0~30℃でもよい。
【0107】
前記の臭化-環化反応において、前記反応の進行はTLCまたはHPLCによってモニタリングすることができるが、一般的に、式IXで表される化合物がなくなった時点が反応の終点とされる。反応の時間は2~24時間(たとえば4~24時間)である。
【0108】
前記の式Iで表される金属錯体の製造方法は、さらに、以下の工程を含んでもよい:
工程1)第八有機溶媒で、三塩化リンとMgR
1Cl、ビニルマグネシウムブロミドにアルキル化反応をさせる;
工程2)水を工程1)の反応系と反応させる;
工程3)塩基およびホルムアルデヒドを工程2)の反応系と反応させ、前記の化合物IXを得る。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。)
【0109】
前記の反応の操作および条件は本分野の通常の操作および条件でもよいが、本発明では、特別に下記条件が選ばれる。
【0110】
ここで、前記の第八有機溶媒は本分野の当該反応における通常の有機溶媒、たとえばエーテル系溶媒(たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテルおよびメチル-t-ブチルエーテルMTBEのうちの1つまたは複数)、芳香族系溶媒(たとえばトルエンおよび/またはベンゼン)、ニトリル系溶媒(たとえばアセトニトリル)、ハロアルカン系溶媒(たとえばジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンおよびクロロホルムのうちの1つまたは複数)、スルホキシド系溶媒(たとえばジメチルスルホキシドDMSO)およびアミド系溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミドDMF)のうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくはテトラヒドロフランおよび/またはジオキサンである。
【0111】
前記の第八有機溶媒の使用量は本分野の当該反応における通常の使用量でもよく、反応に影響を与えなければよい。
【0112】
ここで、前記のMgR1Clと前記の三塩化リンのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記のMgR1Clと前記の三塩化リンのモル比は好ましくは1.2:1~0.8:1(たとえば1:1)である。
【0113】
ここで、前記のビニルマグネシウムブロミドと前記の三塩化リンのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記のビニルマグネシウムブロミドと前記の三塩化リンのモル比は好ましくは1.2:1~0.8:1(たとえば1:1)である。
【0114】
ここで、前記の水と前記の三塩化リンのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記の水と前記の三塩化リンのモル比は好ましくは10:1~3:1(たとえば7.6:1)である。
【0115】
ここで、前記のホルムアルデヒドと前記の三塩化リンのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、前記のホルムアルデヒドと前記の三塩化リンのモル比は好ましくは10:1~3:1(たとえば2:1)である。
【0116】
ここで、前記の塩基は本分野の当該反応における通常の塩基、たとえば水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムでもよい。
【0117】
ここで、前記の塩基と前記の三塩化リンのモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、たとえば前記の塩基と前記の三塩化リンのモル比は好ましくは10:1~1:1(たとえば2:1)である。
【0118】
ここで、前記反応の温度は本分野の当該反応における通常の温度、たとえば-50℃~60℃(たとえば15~45℃)でもよい。
【0119】
ここで、前記反応の進行はTLC、HPLCまたは31P-NMR検出によってモニタリングすることができる。
【0120】
また、本発明は、式IIで表される化合物を提供する。
(ただし、R
1、R
2および「*」の定義はいずれも上記の通りである。)
【0121】
本発明の一つの技術方案において、前記の式IIで表される化合物は以下のいずれかの構造である。
【0122】
また、本発明は、式IVで表される化合物を提供する。
(ただし、R
1、R
2および「*」の定義はいずれも上記の通りである。)
【0123】
本発明の一つの技術方案において、前記の式IVで表される化合物は以下のいずれかの構造である。
【0124】
また、本発明は、式Vで表される化合物を提供する。
(ただし、R
1および「*」の定義はいずれも上記の通りである。)
【0125】
本発明の一つの技術方案において、前記の式Vで表される化合物は以下のいずれかの構造である。
【0126】
また、本発明は、式VIで表される化合物を提供する。
(ただし、R
1および「*」の定義はいずれも上記の通りである。)
【0127】
本発明の一つの技術方案において、前記の式VIで表される化合物は以下のいずれかの構造である。
【0128】
また、本発明は、式VIIで表される化合物を提供する。
(ただし、R
1および「*」の定義はいずれも上記の通りである。)
【0129】
本発明の一つの技術方案において、前記の式VIIで表される化合物は以下のいずれかの構造である。
【0130】
また、本発明は、式VII'で表される化合物を提供する。
(ただし、R
1の定義はいずれも上記の通りである。)
【0131】
本発明の一つの技術方案において、前記の式VII'で表される化合物は以下のいずれかの構造である。
【0132】
また、本発明は、式VI'で表される化合物を提供する。
(ただし、R
1の定義はいずれも上記の通りである。)
【0133】
本発明の一つの技術方案において、前記の式VI'で表される化合物は以下のいずれかの構造である。
【0134】
また、本発明は、式VIIIで表される化合物を提供する。
(ただし、R
1の定義はいずれも上記の通りである。)
【0135】
本発明の一つの技術方案において、前記の式VIIIで表される化合物は以下のいずれかの構造である。
【0136】
また、本発明は、式IXで表される化合物を提供する。
(ただし、R
1の定義はいずれも上記の通りである。)
【0137】
本発明の一つの技術方案において、前記の式IXで表される化合物は以下のいずれかの構造である。
【0138】
本発明は、化合物IIの製造方法であって、不活性ガスの雰囲気において、第二有機溶媒で、式IVで表される化合物と還元剤に以下で示される還元反応をさせ、前記の化合物IIを得る工程を含む方法を提供する。
(ただし、R
1、R
2および「*」の定義はいずれも上記の通りである。)
【0139】
前記の化合物IIの製造方法において、反応の操作および条件はいずれも前記の通りである。
【0140】
本発明は、化合物IVの製造方法であって、不活性ガスの雰囲気において、第三有機溶媒で、塩基、配位子および金属酸化剤の存在下で、式Vで表される化合物に以下で示される二量化カップリング反応をさせ、前記の化合物IVを得る工程を含む方法を提供する。
(ただし、R
1およびR
2の定義はいずれも上記の通りで、かつR
1とR
2は同様である。*で表記された炭素はいずれもS配置のキラル炭素か、いずれもR配置のキラル炭素である。*で表記された2つのPはいずれもS配置のキラルPまたはR配置のキラルPである。)
【0141】
前記の化合物IVの製造方法において、反応の操作および条件はいずれも前記の通りである。
【0142】
本発明は、化合物Vの製造方法であって、不活性ガスの雰囲気において、第四有機溶媒で、還元試薬およびボランの存在下で、式VIで表される化合物に以下で示される還元-酸化反応をさせ、前記の化合物Vを得る工程を含む方法を提供する。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。*で表記されたPはS配置のキラルPまたはR配置のキラルPである。)
【0143】
前記の化合物Vの製造方法において、反応の操作および条件はいずれも前記の通りである。
【0144】
本発明は、化合物VIの製造方法であって、溶媒で、酸化試薬の存在下で、式VIIで表される化合物に以下で示される酸化反応をさせ、前記の化合物VIを得る工程を含む方法を提供する。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。*で表記されたPはS配置のキラルPまたはR配置のキラルPである。)
【0145】
前記の化合物VIの製造方法において、反応の操作および条件はいずれも前記の通りである。
【0146】
本発明は、化合物VIIの製造方法であって、化合物VII'をキラル分離し、前記の化合物VIIを得る工程を含む方法を提供する。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。化合物VIIにおける*で表記されたPはS配置のキラルPまたはR配置のキラルPである。)
【0147】
前記の化合物VIIの製造方法において、反応の操作および条件はいずれも前記の通りである。
【0148】
本発明は、化合物VII'の製造方法であって、不活性ガスの雰囲気において、第五有機溶媒で、還元試薬、硫黄の存在下で、式VI'で表される化合物に以下で示される還元-硫化反応をさせ、前記の化合物VII'を得る工程を含む方法を提供する。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。)
【0149】
前記の化合物VII'の製造方法において、反応の操作および条件はいずれも前記の通りである。
【0150】
本発明は、化合物VI'の製造方法であって、第六有機溶媒で、還元試薬の存在下で、式VIIIで表される化合物に以下で示される還元水素化反応をさせ、前記の化合物VI'を得る工程を含む方法を提供する。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。)
【0151】
前記の化合物VI'の製造方法において、反応の操作および条件はいずれも前記の通りである。
【0152】
本発明は、化合物VIIIの製造方法であって、第七有機溶媒で、臭化試薬、塩基の存在下で、式IXで表される化合物に以下で示される臭化-環化反応をさせ、前記の化合物VIIIを得る工程を含む方法を提供する。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。)
【0153】
前記の化合物VIIIの製造方法において、反応の操作および条件はいずれも前記の通りである。
【0154】
本発明は、化合物IXの製造方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
工程1)第八有機溶媒で、三塩化リンとMgR
1Cl、ビニルマグネシウムブロミドに反応をさせる;
工程2)水を工程1)の反応系と反応させる;
工程3)塩基およびホルムアルデヒドを工程2)の反応系と反応させ、前記の化合物IXを得る。
(ただし、R
1の定義は上記の通りである。)
【0155】
前記の化合物IXの製造方法において、反応の操作および条件はいずれも前記の通りである。
【0156】
本発明は、不斉触媒水素化反応における前記の式Iで表される金属錯体の使用であって、有機溶媒において、水素ガスの雰囲気および前記の式Iで表される金属錯体の存在下で、
構造を含む化合物Aに不斉水素化還元反応をさせ、相応する化合物Bを得る工程を含み、
ここで、前記の式Iで表される金属錯体が
である場合、前記化合物Bの優勢な配置は
構造を含み、
前記の式Iで表される金属錯体が
である場合、前記化合物Bの優勢な配置は
構造を含む
(ただし、R
1、R
2およびnの定義はいずれも上記の通りである。)
使用を提供する。
【0157】
前記の使用において、前記の式Iで表される金属錯体は触媒である。
【0158】
前記の使用において、前記の式Iで表される金属錯体は前記の式IIIで表される遷移金属前駆体と式IIで表される配位子化合物からインサイチュ(in situ)で生成してもよい。
【0159】
一つの技術方案において、前記の優勢な配置のee値は>65%、好ましくは>95%、より好ましくは>99%である。
【0160】
一つの技術方案において、前記の
構造を含む化合物Aは、好ましくは式A-1:
で表される。
(ただし、破線はなしか、環を構成していることを表す。
【0161】
前記のRa、RbおよびRcはそれぞれ独立にH、-COOH、-OH、-CN、任意に置換されてもよいアルキル-オキシ基、任意に置換されてもよいアルキル-オキシ-カルボニル基、任意に置換されてもよいアルキル-カルボニル-オキシ基、任意に置換されてもよいアルキル基またはシクロアルキル基、任意に置換されてもよいヘテロ環状炭化水素基、任意に置換されてもよいアリール基または任意に置換されてもよいヘテロアリール基である。
【0162】
あるいは、RaおよびRbはそれと連結した炭素原子とともに任意に置換されてもよい環状オレフィンまたはヘテロ環状オレフィンを形成している。
【0163】
前記のRdは独立に任意に置換されてもよいアルキル基またはシクロアルキル基、任意に置換されてもよいヘテロ環状炭化水素基、任意に置換されてもよいアリール基または任意に置換されてもよいヘテロアリール基である。
【0164】
ここで、前記の「任意に置換されてもよい」とは無置換、あるいは反応に影響しない範囲で、本分野の通常の置換基、たとえばハロゲン(たとえばF、Cl、BrまたはI)、ハロアルキル基、-OH、-CN、アルキル-オキシ基、アルキル-S-、カルボキシ基、エステル基、カルボニル基、アミド基、任意に置換されてもよいアミノスルホニル基または任意に置換されてもよいフェニル基のような基で置換されることでもよい。前記の「置換」の数は限定されない。置換されてもよい環状オレフィン、置換されてもよいヘテロ環状オレフィン、任意に置換されてもよいシクロアルキル基、任意に置換されてもよいヘテロ環状炭化水素基、任意に置換されてもよいアリール基または任意に置換されてもよいヘテロアリール基の場合、前記の「置換」は前記環状オレフィン、ヘテロ環状オレフィン、シクロアルキル基、ヘテロ環状炭化水素基、アリール基またはヘテロアリール基と縮合環を形成してもよい。)
【0165】
一つの技術方案において、前記の化合物Aでは、前記のアルキル基はC1~C10アルキル基(たとえばC1~C6アルキル基、さらにたとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、またはヘキシル基)である。
【0166】
一つの技術方案において、前記の化合物Aでは、前記のアルキル-オキシ基、アルキル-オキシ-カルボニル基およびアルキル-カルボニル-オキシ基における、前記のアルキル基はそれぞれ独立に上記で定義されたアルキル基である。
【0167】
一つの技術方案において、前記の化合物Aでは、前記のシクロアルキル基はC3~C30アルキル基(たとえばC3~C8シクロアルキル基、さらにたとえばシクロペンチル基またはシクロヘキシル基)である。
【0168】
一つの技術方案において、前記の化合物Aでは、前記のヘテロ環状炭化水素基は「ヘテロ原子がN、OおよびSから選ばれる1つまたは複数で、ヘテロ原子数が1~3個の4~7員ヘテロシクロアルキル基」(たとえば「ヘテロ原子がNおよび/またはOから選ばれ、ヘテロ原子数が1~2個の5~6員ヘテロシクロアルキル基」)である。
【0169】
一つの技術方案において、前記の化合物Aでは、前記のアリール基はC6~C14アリール基(たとえばフェニル基)である。
【0170】
一つの技術方案において、前記の化合物Aでは、前記のヘテロアリール基は「ヘテロ原子がN、OおよびSから選ばれる1つまたは複数で、ヘテロ原子数が1~4個のC1~C10ヘテロアリール基」(たとえば「ヘテロ原子がNから選ばれ、ヘテロ原子数が1~2個のC3~C9ヘテロアリール基」)である。
【0171】
一つの技術方案において、前記の化合物Aでは、前記の環状オレフィンはC5~C7オレフィン(たとえばシクロペンテンまたはシクロヘキセン)である。
【0172】
一つの技術方案において、前記の化合物Aでは、前記のヘテロ環状オレフィンは「ヘテロ原子がN、OおよびSから選ばれる1つまたは複数で、ヘテロ原子数が1~2個の5~7員ヘテロ環状オレフィン」である。
【0173】
一つの技術方案において、前記の化合物Aの一部の基の定義について、前記のRa、RbまたはRcが任意に置換されてもよいアルキル基である場合、前記の任意に置換されてもよいアルキル基はC1~C6アルキル基、たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、またはヘキシル基、さらにたとえばメチル基で、定義されていない基は前記のいずれかの方案に記載の通りである。
【0174】
一つの技術方案において、前記の化合物Aの一部の基の定義について、前記のRa、RbまたはRcは-COOHまたは任意に置換されてもよいアルキル-オキシ-カルボニル基で、前記の任意に置換されてもよいアルキル-オキシ-カルボキシ基は好ましくはC1~C6アルキル-オキシ-カルボニル基(たとえばメチル-オキシ-カルボニル基)で、定義されていない基は前記のいずれかの方案に記載の通りである。
【0175】
一つの技術方案において、前記の化合物Aの一部の基の定義について、前記のR
a、R
bまたはR
cが任意に置換されてもよいアリール基である場合、前記の任意に置換されてもよいアリール基はフェニル基またはハロゲンで置換されたフェニル基(たとえばブロモフェニル基<
>)で、定義されていない基は前記のいずれかの方案に記載の通りである。
【0176】
一つの技術方案において、前記の化合物Aの一部の基の定義について、前記の「R
aおよびR
bはそれと連結した炭素原子とともに任意に置換されてもよい環状オレフィンを形成している」場合、前記の「任意に置換されてもよい環状オレフィン」はベンゾヘキセン(たとえば
)またはシクロヘキセンで、定義されていない基は前記のいずれかの方案に記載の通りである。
【0177】
一つの技術方案において、前記の化合物Aの一部の基の定義について、前記のRdが任意に置換されてもよいアルキル基である場合、前記の任意に置換されてもよいアルキル基はC1~C6アルキル基(たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、またはヘキシル基、さらにたとえばメチル基)で、定義されていない基は前記のいずれかの方案に記載の通りである。
【0178】
一つの技術方案において、前記の化合物Aの一部の基の定義について、R
dはC
1~C
10アルキル基(たとえばC
1~C
6アルキル基、さらにたとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、またはヘキシル基、好ましくはメチル基)で、かつR
bは任意に置換されてもよいアリール基で、すなわちα-アリールアミド系化合物、たとえば
で、定義されていない基は前記のいずれかの方案に記載の通りである。
【0179】
一つの技術方案において、前記の化合物Aの一部の基の定義について、R
dは独立にC
1~C
10アルキル基(たとえばC
1~C
6アルキル基、さらにたとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、またはヘキシル基、好ましくはメチル基)で、かつR
bは任意に置換されてもよいアルキル-オキシ-カルボニル基で、すなわちα-脱水素アミノ酸
誘導体、たとえば
で、定義されていない基は前記のいずれかの方案に記載の通りである。
【0180】
一つの技術方案において、前記の化合物Aの一部の基の定義について、R
dは独立にC
1~C
10アルキル基(たとえばC
1~C
6アルキル基、さらにたとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、またはヘキシル基、好ましくはメチル基)で、R
aまたはR
cはそれぞれ独立に任意に置換されてもよいアルキル-オキシ-カルボニル基で、すなわちβ-(アセチルアミノ)アクリレート、たとえば
で、定義されていない基は前記のいずれかの方案に記載の通りである。
【0181】
触媒水素化における前記の式Iで表される金属錯体の使用において、前記の化合物Aおよび相応する化合物B-1は以下の化合物から選ばれてもよい。
【0182】
前記の化合物Aおよび相応する化合物B-2は以下の化合物から選ばれてもよい:
【0183】
触媒水素化における前記の式Iで表される金属錯体の使用において、前記の有機溶媒は本分野の当該反応における通常の溶媒、たとえばエステル系溶媒(たとえば酢酸エチル)、エーテル系溶媒(たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテルおよびメチル-t-ブチルエーテルMTBEのうちの1つまたは複数)、芳香族系溶媒(たとえばトルエンおよび/またはベンゼン)、ニトリル系溶媒(たとえばアセトニトリル)、ハロアルカン系溶媒(たとえばジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンおよびクロロホルムのうちの1つまたは複数)、スルホキシド系溶媒(たとえばジメチルスルホキシドDMSO)およびアミド系溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミドDMF)のうちの1つまたは複数でもよいが、好ましくは酢酸エチルである。
【0184】
前記の有機溶媒の使用量は本分野の当該反応における通常の使用量でもよく、反応に影響を与えなければよい。
【0185】
ここで、前記の化合物Aと前記の式Iで表される金属錯体のモル比は本分野の当該反応における通常のモル比でもよいが、本発明において、好ましくは100:1~100,000:1(たとえば200:1)である。
【0186】
ここで、前記の水素ガスの圧力は本分野の当該反応における通常の圧力、たとえば750 psiでもよい。
【0187】
ここで、前記還元反応の温度は本分野の当該反応における通常の温度、たとえば20~100℃(たとえば20~80℃、さらにたとえば50℃)でもよい。
【0188】
ここで、前記反応の進行はTLC、HPLC、LC-MSまたはGC-MSによってモニタリングすることができるが、一般的に、基質がなくなった時点が反応の終点とされる。反応の時間は4~24時間(たとえば12~18時間)でもよい。
【0189】
前記の使用において、前記の還元反応終了後、さらに、後処理の工程を含んでもよく、前記後処理の工程は、水素ガスの除去、ろ過、洗浄、濃縮、溶媒の除去という操作を含んでもよい。前記ろ過はミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去してもよく、前記洗浄は水および飽和塩化ナトリウムで順に行ってもよく、前記濃縮は回転蒸発で行ってもよく、前記溶媒の除去はオイルポンプで吸引乾燥する方法で行ってもよい。
【0190】
本発明において、前記室温は本分野の通常の室温の定義でもよいが、好ましくは5~30℃である。
【0191】
基の定義
本発明において、「C1~C10アルキル基」は、直鎖または分岐鎖の10個以下の炭素原子を含有する飽和脂肪族炭化水素基を表し、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基やイソオクチル基がある。
【0192】
本発明において、用語「C
1~C
6アルキル基」は好ましくはそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基で、ここで、プロピル基はC
3アルキル基(異性体、たとえばn-プロピル基またはイソプロピル基を含む)で、ブチル基はC
4アルキル基(異性体、たとえばn-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基またはt-ブチル基を含む)で、ペンチル基はC
5アルキル基(異性体、たとえばn-ペンチル基<たとえば
>、イソペンチル基<たとえば
>またはネオペンチル基<たとえば
>を含む)で、ヘキシル基はC
6アルキル基(異性体、たとえばn-ヘキシルを含む)である。
本発明において、用語「C
1~C
4アルキル基」は好ましくはそれぞれ独立にメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基またはt-ブチル基である。
【0193】
同じように、「C1~C10のアルコキシ基」または「C1~C10アルキル-オキシ基」は酸素原子を介して連結する以上で定義されるアルキル基を表し、たとえばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基またはt-ブトキシ基などがある。
【0194】
本発明において、ハロゲンはF、Cl、BrまたはIを含む。
【0195】
本発明において、「アリール基」は芳香族環構造の性質を有する置換基を表し、たとえばC6~C30アリール基で、本発明で使用できるアリール基はフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基を含むが、これらに限定されない。本発明において、アリール基は無置換または置換されたアリール基を含むが、ここで、置換とは基における1つまたは複数の水素原子が、C1~C4アルキル基、C3~C10シクロアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アシル基、アミン基、-NR3R4からなる群から選ばれる置換基で置換されることで、ここで、R3およびR4はそれぞれHまたはC1~C4アルキル基またはC1~C4ハロアルキル基である。代表的なアリール基は、電子供与性および/または電子求引性置換基を有するアリール基を含み、たとえばp-トリル基、p-メトキシフェニル基、p-クロロフェニル基などがある。同じように、「アリールアルキル基」はアリール基とアルキル基が連結した置換基を表し、たとえばフェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などがある。アリール基が置換基における置換基である場合、さらに置換されることがない。
【0196】
同じように、「ヘテロアリール」はN、OまたはSから選ばれる1つまたは複数のヘテロ原子を含有するアリール基を表す。具体的な実施形態において、本発明における「ヘテロアリール基」は6~30個の炭素原子を含有し、かつN、OまたはSから選ばれる1~3個のヘテロ原子を含有する5~8員複素環を有する。
【0197】
本発明において、用語「置換」の数は1つまたは複数<たとえば2つ、3つ、4つまたは5つ>でもよく、複数の「置換」が存在する場合、前記「置換」は同様か異なる。
【0198】
本発明において、用語「置換」の位置は、特別に説明しない限り、位置が任意でもよい。
【0199】
当業者にもわかるように、本分野で使用される慣例から、本願の基を記述する構造式で使用される「
」とは、相応する基が当該部位を介して化合物におけるほかの断片、基と連結することである。
【0200】
本分野の常識に反しないことを前提に、上記各好適な条件を任意に組み合わせれば、本発明の各好適な実例が得られる。
【0201】
本発明で使用される試薬および原料はいずれも市販品として得られる。
【0202】
本発明の積極的な進歩効果は以下の点にある:1.本発明のキラルホスフィン配位子と遷移金属の配位結合で製造される式Iで表される金属錯体は不斉触媒水素化反応の触媒として有用である;
2.本発明の式Iで表される金属錯体は、効率的に触媒して一連の高光学純度(ee値>99%)のキラルβ-アリールアミドを合成すること、特に四置換エナミド系化合物を不斉触媒水素化させ、高光学純度(ee値が60%以上に達する)でキラルアミドを合成することができ、配位子の担持量(s/c)が100,000に達し、既存技術よりも遥かに高く、高い経済的実用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【
図1】
図1は、化合物h-1の単結晶X線回折である。
【
図2】
図2は、化合物h-3の単結晶X線回折である。
【0204】
単結晶は単独で保護されるはずであるが、そちらは保護されると主張する場合、そちらの指示に従う。
【0205】
具体的な実施形態
以下、実施例の形によってさらに本発明を説明するが、これによって本発明を記載された実施例の範囲内に限定するわけではない。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常の方法および条件、あるいは商品の説明書に従って選ばれた。
【0206】
実施例1
本実施例では、(2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)(1)およびその金属錯体{(ノルボルナジエン)[ (2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)]}テトラフルオロホウ酸ロジウム、すなわち、Rh(nbd)(1)BF
4の製造(その反応経路は以下に示される)を例として本発明のキラルジホスフィン配位子およびその金属ロジウム錯体の製造方法を詳しく説明するが、反応経路は以下に示される通りである。
【0207】
1.t-ブチル(ヒドロキシメチル)(ビニル)ホスフィンオキシド(a)の製造
1000 mLの四口フラスコを取り、ヒートガンでフラスコを加熱乾燥し、窒素ガスで保護し、一つの口に温度計アダプターおよび低温温度計を挿入し、一つの口に機械撹拌装置を挿入し、一つの口に恒圧滴下漏斗を取り付け、窒素ガスで3~5回置換した。シリンダーに慎重に10 mLのPCl
3を吸引し、分析天秤で20 g(145.6 mmol、1当量)と表示されるまで、ナシフラスコに1滴ずつ滴下し、取り出し、窒素ガスで保護し、40 mLのナトリウム糸で3時間還流したTHFを入れて溶解させた後、四口フラスコに注ぎ、そして15 mLのテトラヒドロフランでナシフラスコを洗って四口フラスコに移し、計3回行った。
【0208】
装置を-50℃の氷浴内に置き、シリンダーで176.9 mL(176.9 mmol、1当量)のn-ブチルマグネシウムクロリドを吸引し、恒圧滴下漏斗に注射し、ゆっくり滴下した。滴下終了後、氷浴装置を撤去し、室温に戻した。温度が安定すると、2 h反応させた。31P-NMRで反応を検出し、反応が完了すると分離せずにそのまま次の工程に投入した。
【0209】
装置を-50℃の氷浴内に置き、シリンダーで154.9 mL(154.9 mmol、1.1当量)のビニルマグネシウムブロミドを吸引し、恒圧滴下漏斗に注射し、ゆっくり滴下した。滴下終了後、氷浴装置を撤去し、室温に戻した。温度が安定すると、2 h反応させた。31P-NMRで反応を検出し、反応が完了すると分離せずにそのまま次の工程に投入した。
【0210】
一定量の脱イオン水を容器内に取った後、容器を密封し、容器内に窒素ガスを注入して水に溶解した微量の酸素を除去した。シリンダーで20 mLの酸素が除去された脱イオン水を吸引し、恒圧滴下漏斗に注射し、ゆっくり滴下した。滴下完了後、装置を45℃の油浴鍋内に入れて3 h反応させ(あるいは室温で20 h反応させ)、31P-NMRで反応を検出し、反応が完了すると分離せずにそのまま次の工程に投入した。
【0211】
29 gのNaOH(725 mmol、5当量)を含有し、かつ酸素が除去された脱イオン水で調製された、部分的に窒素ガスが導入された飽和水酸化ナトリウム溶液を容器内に取り、窒素ガスで保護し、シリンダーで100 mLのホルムアルデヒド溶液(1233 mmol、10当量)および新しく調製されたNaOH溶液を吸引して恒圧滴下漏斗に注射し、-20℃の氷浴にゆっくり滴下した。滴下完了後、室温に戻し、さらに装置を50℃の油浴鍋内に入れて3 h反応させ、TLC(ビヒクル:酢酸エチルとメタノールの体積比10:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると後処理を行った。
【0212】
装置を室温に冷却した後、2 mol/LのHCl溶液で反応系をpHが1になるように調整した。酢酸エチルおよび水で数回抽出し、有機相を濃縮した。有機相を飽和食塩水および無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を回転乾燥した。有機相にシリカゲル粉(200~300メッシュ)を入れてサンプルを調製し、純酢酸エチルでカラムに充填し、乾式でサンプルを仕込み、酢酸エチルとメタノールの体積比20:1の溶離剤でカラムクロマトグラフィーを行い、産物を収集し、黄色の粘稠液体を得たが、収量が5.502 gで、収率が27.5%であった。
a:1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 6.46-6.15 (m, 3H), 4.15-4.10 (d, J=14.4 Hz,1H), 4.01-3.96 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 1.19 (d, J = 14.5 Hz, 9H);13C NMR (126 MHz, クロロホルム-d) δ 136.99, 125.79, 57.71, 31.53, 24.35 ;31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 45.59 ;ESI-MS: m/z 163.00 [M+H]+.
【0213】
2.3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホレン-3-オキシド(b)の製造
窒素ガスの保護下で、10 g(25 mmol、1当量)のt-ブチル(ヒドロキシメチル)(ビニル)ホスフィンオキシドを加熱乾燥されたシュレンク管に入れ、8 g(2.7 mL)の液体臭素(50 mmol、2当量)および50 mLの四塩化炭素を入れ、0℃の外温で、まず約0.5 h磁気撹拌した後、室温に戻し、さらに3 h反応させた。TLC(ビヒクル:酢酸エチルとメタノールの体積比20:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると後処理を行った。反応完了後、撹拌子を取り出し、橙赤色がなくなるまで、飽和亜硫酸ナトリウム溶液を少しずつ滴下した。その後、分液して有機相を取り、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、回転乾燥し、次の工程に投入した。
【0214】
4.8 gのナトリウムt-ブトキシド(50 mmol、2当量)を入れて50 mLのテトラヒドロフランと40 min反応させた。TLC(ビヒクル:酢酸エチルとメタノールの体積比20:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると後処理を行った。反応完了後、撹拌子を取り出し、適量のシリカゲル粉を入れ、乾式でサンプルを仕込み、酢酸エチルでカラムを充填し、酢酸エチルとメタノールの体積比80:1の溶離剤でカラムクロマトグラフィーを行い、産物を収集し、濃縮して回転乾燥し、産物として黄色の油状液体を得たが、収量が7.5 gで、収率が75%であった。
b:1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ7.24-7.19 (dd, J = 25.4, 4.7 Hz, 1H), 5.34-5.31 (dd, J = 16.75, 4.7 Hz, 1H), 4.25 (dd, J = 14.4, 3.9 Hz, 1H), 4.16 (dd, J = 14.4, 10.2 Hz, 1H), 1.16 (d, fJ = 16.0 Hz, 9H);13C NMR (126 MHz, クロロホルム-d) δ 163.89 (d, J = 10.4 Hz), 91.75 , 91.05 , 64.39 , 63.93, 32.25 (d, J = 75.4 Hz), 24.37;31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 72.56 . ESI-MS: m/z 161.0 [M+H]+.
【0215】
3.3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-オキシド(c)の製造
1 g(6.2473 mmol、1当量)の3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホレン-3-オキシドをシュレンク管に入れ、5 mLの酢酸エチルおよび0.1 gのパラジウム炭素(10%)を入れ、1大気圧で水素ガスで3回置換した後、40℃の外温で、約6 h磁気撹拌した後、室温に戻した。TLC(ビヒクル:酢酸エチルとメタノールの体積比20:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると後処理を行った。反応完了後、撹拌子を取り出し、適量のシリカゲル粉を入れ、乾式でサンプルを仕込み、酢酸エチルでカラムを充填し、酢酸エチルとメタノールの体積比20:1の溶離剤でカラムクロマトグラフィーを行い、産物を収集し、濃縮して回転乾燥し、産物として黄色の油状液体を得たが、収量が0.8904 gで、収率が89%であった。
c:
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.27 (s, 0H), 4.19 (ddd, J = 19.2, 9.5, 6.8 Hz, 1H), 4.12 (dd, J = 13.2, 2.6 Hz, 1H), 4.04 (tt, J = 10.0, 6.5 Hz, 1H), 3.59 (dd, J = 13.2, 6.7 Hz, 1H), 1.23 (d, J = 15.1 Hz, 9H);
13C NMR (126 MHz, クロロホルム-d) δ 68.11 , 64.19 , 63.71 , 31.79 , 31.28 , 24.27 ;
31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 48.63, 48.35, 48.01, 47.73. ESI-MS: m/z 163.05 [M+H]
+
.
【0216】
4.3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-スルフィド(d)の製造
窒素ガスの保護下で、10 g(62.473 mmol、1当量)の3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-オキシドをシュレンク管に入れ、100 mLのテトラヒドロフラン、60.8 mLのポリメチルヒドロシロキサンおよび25.2 mLのテトライソプロピルチタネート(87.462 mmol、1.4当量)を入れ、70℃の外温で4 h反応させた。TLC(ビヒクル:酢酸エチルとメタノールの体積比10:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると次の工程を行った。反応完了後、反応系を0℃に低下させ、ゆっくり3 gの硫黄粉(93.7 mmol、1.5当量)を滴下し、0℃の外温で1 h反応させた。TLC(ビヒクル:石油エーテルと酢酸エチルの体積比2:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると、水を入れて反応をクエンチングした。ジクロロメタンおよび水で抽出し、分液し、有機相を乾燥した。有機相に適量のシリカゲル粉を入れ、乾式でサンプルを仕込み、石油エーテルでカラムを充填し、石油エーテルと酢酸エチルの体積比20:1の溶離剤でカラムクロマトグラフィーを行い、産物を収集し、濃縮して回転乾燥し、産物として白色の固体を得たが、収量が9.4 gで、収率が86%であった。
d:
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 4.47 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 4.37 - 4.25 (m, 1H), 4.01 - 3.94 (m, 1H), 3.63 (dd, J = 12.4, 1.0 Hz, 1H), 2.43 (d, J = 10.3 Hz, 1H), 2.05 (d, J = 6.1 Hz, 1H), 1.28 (d, J = 16.7 Hz, 9H);
13C NMR (126 MHz, クロロホルム-d) δ 77.27, 77.02, 76.76, 70.80, 70.44, 69.02, 33.54, 33.19, 30.12, 29.70, 24.98, 24.96;
31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 76.17. ESI-MS: m/z 179.04 [M+H]
+
.
【0217】
5.R-3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-スルフィド(e-1)の製造
キラル分取カラムのAD-Hカラムによって分離した。具体的な方法は以下の通りである。
分取カラム型番:CHIRALPAK AD-H,粒径:5 μm,寸法:4.6 mm×250 mm、
移動相:イソプロパノール/n-ヘキサン=5/95、流速:1 mL/min、検出波長:210 nm。保持時間:t
1=7.1 min(S配置)、t
2=12.3 min(R配置)。
【0218】
6.R-3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-オキシド(f-1)の製造
1 g(5.6 mmol、1当量)のR-3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-スルフィドをシュレンク管に入れ、5 mLのメタノールおよび0.3 mLの過酸化水(30%)を入れ、30℃の外温で、約6 h磁気撹拌した。TLC(ビヒクル:酢酸エチルとメタノールの体積比20:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると後処理を行った。反応完了後、撹拌子を取り出し、適量のシリカゲル粉を入れ、乾式でサンプルを仕込み、酢酸エチルでカラムを充填し、酢酸エチルとメタノールの体積比20:1の溶離剤でカラムクロマトグラフィーを行い、産物を収集し、濃縮して回転乾燥し、産物として黄色の油状液体を得たが、収量が0.86 gで、収率が95%であった。
f-1:
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 4.24-4.10 (m, 2H), 4.12 (dd, J = 13.2, 2.6 Hz, 1H), 4.08-4.01 (m, 1H), 3.59-3.57 (dd, J = 13.2, 6.7 Hz, 1H), 2.10-1.86 (m,2H), 1.24-1.21 (d, J = 15.1 Hz, 9H);
13C NMR (126 MHz, クロロホルム-d) δ 68.11 , 64.19 , 63.71 , 31.79 , 31.28 , 24.27;
31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 48.63, 48.35, 48.01, 47.73. ESI-MS: m/z 163.05 [M+H]
+
.
【0219】
7.S-3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-ボラン(g)の製造
窒素ガスの保護下で、5 g(30.8 mmol、1当量)のS-3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-オキシドをそれに入れ、50 mLのTHF、10 mLのポリメチルヒドロシロキサンおよび11.6 mLのテトライソプロピルチタネート(40 mmol、1.3当量)を入れ、70℃の外温で4 h反応させた。TLC(ビヒクル:酢酸エチルとメタノールの体積比10:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると次の工程を行った。反応完了後、反応系を0℃に低下させ、ゆっくり36.9 mLの1Mボランテトラヒドロフラン四溶液(36.9 mmol、1.2当量)を滴下し、0℃の外温で1 h反応させた。TLC(ビヒクル:石油エーテルと酢酸エチルの体積比6:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると、飽和水酸化ナトリウム水溶液を入れて反応をクエンチングした。ジクロロメタンで抽出し、分液し、有機相を乾燥した。有機相に適量のシリカゲル粉を入れ、乾式でサンプルを仕込み、石油エーテルでカラムを充填し、石油エーテルと酢酸エチルの体積比50:1の溶離剤でカラムクロマトグラフィーを行い、産物を収集し、濃縮して回転乾燥し、産物として白色の固体を得たが、収量が4.5 gで、収率が90%であった。
g-1:
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 4.43 (dd, J = 12.3, 3.2 Hz, 1H), 4.27-4.19 (m, 1H), 3.73-3.66 (m, 2H), 2.10-2.01 (m, 2H), 1.21-1.18 (d, J = 15), 0.9-0.21 (m, 3H);
13C NMR (126 MHz, クロロホルム-d) δ 69.32, 69.29, 65.55, 65.34, 27.39, 27.18, 25.55, 25.53, 22.65, 22.38;
31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 48.18 (dd, J = 100.6, 45.4 Hz). ESI-MS: m/z 163.1 [M+H]
+
.
【0220】
8.(2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)-3,3'-ジボラン(h-1)の製造
窒素ガスの保護下で、2 g(12.3 mmol、1当量)のS-3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-ボランをシュレンク管に入れ、10 mLのTHF、1.4 mLのTMEDA(18.5 mmol、1.5当量)を入れた。-78℃の外温で、2 d/sの速度で10.9 mLの1.7M t-ブチルリチウム(18.5 mmol、1.5当量)を滴下して約15 min磁気撹拌し、終了後、-78℃の外温を維持しながら4.1 gの塩化銅(30.8 mmol、2.5当量)を入れた後、室温に戻して45 min反応させた。TLC(ビヒクル:石油エーテルと酢酸エチルの体積比6:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると後処理を行った。反応完了後、酢酸エチルおよび10%の水酸化ナトリウム水溶液で抽出し、分液し、有機相を乾燥した。有機相に適量のシリカゲル粉を入れ、乾式でサンプルを仕込み、石油エーテルでカラムを充填し、石油エーテルと酢酸エチルの体積比100:1の溶離剤でカラムクロマトグラフィーを行い、産物を収集し、濃縮して回転乾燥し、産物として白色の固体を得たが、収量が0.6 gで、収率が30.6%であった。
h-1:
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 4.39-4.37 (dd, 2H), 4.27-4.24 (m, 2H), 3.74 (m, 2H), 2.21-2.20 (m, 2H), 2.08-2.07 (m, 2H), 1.25 (d, J = 13.9 Hz, 18H), 0.81-0.25(m, 6H);
13C NMR (101 MHz, クロロホルム-d) δ 73.67, 70.12, 28.34, 28.08, 25.71, 22.58, 22.26.;
31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 59.04 . ESI-MS: m/z 321.21 [M+H]
+
.
【0221】
その単結晶のX線回折:空間群がP 21 21 2で、格子定数がa=10.2841(4) Å、b= 11.1975(5) Å、c=8.5616(3) Å、α=90°、β=90°、γ=90°で、格子体積が985.92(7) Å3であった。
【0222】
産物h-3は(2R,2'S,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)-3,3'-ジボランである:1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 4.39-4.37 (dd, 1H), 4.34-4.31 (m, 1H), 4.23-4.17 (m, 2H), 4.02-3.95 (m, 1H), 3.74-3.68 (m, 1H), 2.24-2.06 (m, 4H), 1.29-1.23 (dd, 18H), 0.90-0.21(m, 6H);31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 60.78, 50.14 . ESI-MS: m/z 321.21 [M+H]+.
【0223】
その単結晶のX線回折:空間群がP 21で、格子定数がa=7.4199(7) Å、b= 24.550(3) Å、c=11.3537(12) Å、α=90°、β=107.131(3)°、γ=90°で、格子体積が1976.4(4) Å3であった。
【0224】
9.(2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)(1)の製造
窒素ガスの保護下で、100 mg(0.31 mmol、1当量)の(2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)-3,3'-ジボランをシュレンク管に入れ、6 mLのトルエン、105 mgの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(0.94 mmol、3当量)を入れた。60℃の外温で約2 h磁気撹拌した。真空ポンプで減圧で大半のトルエン溶媒を除去した。残留物に慎重に脱気された水(5 mL)を入れた。室温で、混合系に脱気されたエチルエーテル(5 mL)を入れ、60℃で0.5時間撹拌した後、分離して有機相を得、硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、無水無酸素中性酸化アルミニウムクロマトグラフィー(石油エーテル/エチルエーテル = 3: 1)によって無色油状の目的の配位子である(2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)を得た(68 mg、75%)。
1:
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ4.79-4.77 (d, J=3.72, 2H), 4.20-4.17 (m, 4H), 2.16(m, 4H), 1.24-1.19 (d, J=15);
31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 2.51. ESI-MS: m/z 291.21 [M+H]
+
.
【0225】
10.金属錯体{(ノルボルナジエン)[ (2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)]}テトラフルオロホウ酸ロジウム、すなわち、Rh(nbd)(1)BF
4の製造
窒素ガスの保護下で、ビス(ノルボルナジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボラート(18.7 mg、0.05 mmol、1当量)をテトラヒドロフラン(0.5 mL)に溶解させ、0℃で撹拌しながら、配位子である(2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)(1、16 mg、0.055 mmol、1.1当量)のテトラヒドロフラン(0.5 mL)溶液を入れた。反応系を室温で0.5時間撹拌した後、真空ポンプで減圧で濃縮して大半の溶媒を除去した。脱気されたエチルエーテル(10 mL)を入れ、10分間撹拌した後、窒素ガスの保護下でろ過して赤色固体状の目的化合物である{(ノルボルナジエン)[ (2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)]}テトラフルオロホウ酸ロジウム、すなわち、Rh(nbd)(1)BF
4(43.4 mg、0.0425 mmol、85%)を得た。
Rh(nbd)(1)BF
4:
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.98 (br s, 2H), 5.26 (s, 2H), 4.58-4.50 (m, 2H), 4.40-4.38 (d, J=10 Hz, 2H), 2.35 (br s, 2H), 2.17 (br s, 2H), 1.23-1.21 (d, J = 10 Hz, 18H);
31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ 92.3-91.3, (d, 2J RhP= 160 Hz).
【0226】
実施例2
(2S,2S,3R,3'R)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)(2)およびその金属錯体{(ノルボルナジエン)[ (2S,2S,3R,3'R)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)]}テトラフルオロホウ酸ロジウム、すなわち、Rh(nbd)(2)BF
4の製造(その反応経路は以下に示される)
実施例1における工程(5)のキラルカラムによって製造して分離された化合物e-2は、実施例1における操作および条件によって製造された。
【0227】
S-3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-オキシドの製造
1 g(5.6 mmol、1当量)のS-3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-スルフィドをシュレンク管に入れ、5 mLのメタノールおよび0.3 mLの過酸化水(30%)を入れ、30℃の外温で、約6 h磁気撹拌した。TLC(ビヒクル:酢酸エチルとメタノールの体積比20:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると後処理を行った。反応完了後、撹拌子を取り出し、適量のシリカゲル粉を入れ、乾式でサンプルを仕込み、酢酸エチルでカラムを充填し、酢酸エチルとメタノールの体積比20:1の溶離剤でカラムクロマトグラフィーを行い、産物を収集し、濃縮して回転乾燥し、産物として黄色の油状液体を得たが、収量が0.86 gで、収率が95%であった。
f-2:1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 4.24-4.10 (m, 2H), 4.12 (dd, J = 13.2, 2.6 Hz, 1H), 4.08-4.01 (m, 1H), 3.59-3.57 (dd, J = 13.2, 6.7 Hz, 1H), 2.10-1.86 (m,2H), 1.24-1.21 (d, J = 15.1 Hz, 9H);13C NMR (126 MHz, クロロホルム-d) δ 68.11 , 64.19 , 63.71 , 31.79 , 31.28 , 24.27;31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 48.63, 48.35, 48.01, 47.73. ESI-MS: m/z 163.05 [M+H]+
.
【0228】
R-3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-ボランの製造
窒素ガスの保護下で、5 g(30.8 mmol、1当量)のS-3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-オキシドをそれに入れ、50 mLのTHF、10 mLのポリメチルヒドロシロキサンおよび11.6 mLのテトライソプロピルチタネート(40 mmol、1.3当量)を入れ、70℃の外温で4 h反応させた。TLC(ビヒクル:酢酸エチルとメタノールの体積比10:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると次の工程を行った。反応完了後、反応系を0℃に低下させ、ゆっくり36.9 mLの1Mボランテトラヒドロフラン四溶液(36.9 mmol、1.2当量)を滴下し、0℃の外温で1 h反応させた。TLC(ビヒクル:石油エーテルと酢酸エチルの体積比6:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると、飽和水酸化ナトリウム水溶液を入れて反応をクエンチングした。ジクロロメタンで抽出し、分液し、有機相を乾燥した。有機相に適量のシリカゲル粉を入れ、乾式でサンプルを仕込み、石油エーテルでカラムを充填し、石油エーテルと酢酸エチルの体積比50:1の溶離剤でカラムクロマトグラフィーを行い、産物を収集し、濃縮して回転乾燥し、産物として白色の固体を得たが、収量が4.5 gで、収率が90%であった。
g-2:1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 4.43 (dd, J = 12.3, 3.2 Hz, 1H), 4.27-4.19 (m, 1H), 3.73-3.66 (m, 2H), 2.10-2.01 (m, 2H), 1.21-1.18 (d, J = 15), 0.9-0.21 (m, 3H);13C NMR (126 MHz, クロロホルム-d) δ 69.32, 69.29, 65.55, 65.34, 27.39, 27.18, 25.55, 25.53, 22.65, 22.38;31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 48.18 (dd, J = 100.6, 45.4 Hz). ESI-MS: m/z 163.1 [M+H]+
.
【0229】
(2S,2'S,3R,3'R)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)-3,3'-ジボランの製造
窒素ガスの保護下で、2 g(12.3 mmol、1当量)のR-3-(t-ブチル)-2-ヒドロ-1,3-オキサホスホール-3-ボランをシュレンク管に入れ、10 mLのTHF、1.4 mLのTMEDA(18.5 mmol、1.5当量)を入れた。-78℃の外温で、2 d/sの速度で10.9 mLの1.7M t-ブチルリチウム(18.5 mmol、1.5当量)を滴下して約15 min磁気撹拌し、終了後、-78℃の外温を維持しながら4.1 gの塩化銅(30.8 mmol、2.5当量)を入れた後、室温に戻して45 min反応させた。TLC(ビヒクル:石油エーテルと酢酸エチルの体積比6:1で、過マンガン酸カリウム呈色剤で呈色される)によって反応を検出し、反応が完了すると後処理を行った。反応完了後、酢酸エチルおよび10%の水酸化ナトリウム水溶液で抽出し、分液し、有機相を乾燥した。有機相に適量のシリカゲル粉を入れ、乾式でサンプルを仕込み、石油エーテルでカラムを充填し、石油エーテルと酢酸エチルの体積比100:1の溶離剤でカラムクロマトグラフィーを行い、産物を収集し、濃縮して回転乾燥し、産物として白色の固体を得たが、収量が0.6 gで、収率が30.6%であった。
h-2:1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 4.39-4.37 (dd, 2H), 4.27-4.24 (m, 2H), 3.74 (m, 2H), 2.21-2.20 (m, 2H), 2.08-2.07 (m, 2H), 1.25 (d, J = 13.9 Hz, 18H), 0.81-0.25(m, 6H);13C NMR (101 MHz, クロロホルム-d) δ 73.67, 70.12, 28.34, 28.08, 25.71, 22.58, 22.26.;31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 59.04 . ESI-MS: m/z 321.21 [M+H]+
.
【0230】
(2S,2'S,3R,3'R)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)(2)の製造
窒素ガスの保護下で、100 mg(0.31 mmol、1当量)の(2S,2'S,3R,3'R)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)-3,3'-ジボランをシュレンク管に入れ、6 mLのトルエン、105 mgの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(0.94 mmol、3当量)を入れた。60℃の外温で約2 h磁気撹拌した。真空ポンプで減圧で大半のトルエン溶媒を除去した。残留物に慎重に脱気された水(5 mL)を入れた。室温で、混合系に脱気されたエチルエーテル(5 mL)を入れ、60℃で0.5時間撹拌した後、分離して有機相を得、硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、無水無酸素中性酸化アルミニウムクロマトグラフィー(石油エーテル/エチルエーテル = 3: 1)によって無色油状の目的の配位子である(2S,2'S,3R,3'R)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)を得た(68 mg、75%)。
2:1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ4.79-4.77 (d, J=3.72, 2H), 4.20-4.17 (m, 4H), 2.16(m, 4H), 1.24-1.19 (d, J=15); 31P NMR (162 MHz, クロロホルム-d) δ 2.51. ESI-MS: m/z 291.21 [M+H]+
.
【0231】
金属錯体{(ノルボルナジエン)[ (2S,2'S,3R,3'R)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)]}テトラフルオロホウ酸ロジウム、すなわち、Rh(nbd)(2)BF4の製造
窒素ガスの保護下で、ビス(ノルボルナジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボラート(18.7 mg、0.05 mmol、1当量)をテトラヒドロフラン(0.5 mL)に溶解させ、0℃で撹拌しながら、配位子である(2S,2'S,3R,3'R)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)(1、16 mg、0.055 mmol、1.1当量)のテトラヒドロフラン(0.5 mL)溶液を入れた。反応系を室温で0.5時間撹拌した後、真空ポンプで減圧で濃縮して大半の溶媒を除去した。脱気されたエチルエーテル(10 mL)を入れ、10分間撹拌した後、窒素ガスの保護下でろ過して赤色固体として{(ノルボルナジエン)[ (2S,2'S,3R,3'R)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)]}テトラフルオロホウ酸ロジウム、すなわち、Rh(nbd)(2)BF4(43.4 mg、0.0425 mmol、85%)を得た。
Rh(nbd)(2)BF4: 1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.98 (br s, 2H), 5.26 (s, 2H), 4.58-4.50 (m, 2H), 4.40-4.38 (d, J=10 Hz, 2H), 2.35 (br s, 2H), 2.17 (br s, 2H), 1.23-1.21 (d, J = 10 Hz, 18H); 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ 92.3-91.3, (d, 2J RhP= 160 Hz).
【0232】
実施例3
(Z)-2-アセチルアミノ-3-フェニルアクリル酸メチルを水素化基質とし、キラル金属ロジウム錯体Rh(nbd)(1)BF
4を触媒とし、光学活性のN-アセチル-L-フェニルアラニンメチルエステル(S)を製造した。
【0233】
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で(Z)-2-アセチルアミノ-3-フェニルアクリル酸メチル(22 mg、0.1 mmol)、Rh(nbd)(1)BF4(0.24 mg、0.5 μmol)、0.5 mLの無水ジクロロメタンを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを750 psiまで導入し、50℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物であるN-アセチル-L-フェニルアラニンメチルエステルのee値が97%であった。
N-アセチル-L-フェニルアラニンメチルエステル[(S)-3a]:白色固体(収率>99%);97% ee。
【0234】
ee値はキラル高圧液体クロマトグラフィーによって測定されたが、高圧液体クロマトグラフィーの条件は、キラルAD-Hカラム、25℃、流速: 1 mL/min、n-ヘキサン/イソプロパノール:95/5、210 nm、t1=15.2 min (R)、t2=21.8 min (S)であった。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.35,-7.25 (m, 3H), 7.10-7.08 (d, J=10.45, 2H) , 4.91- 4.88 (dd, 2H), 3.74 (s, 1H), 3.13 (m, 2H), 1.99 (s, 1H).
【0235】
実施例4
(Z)-2-アセチルアミノ-3-フェニルアクリル酸を水素化基質とし、キラル金属ロジウム錯体Rh(nbd)(1)BF
4を触媒とし、光学活性のN-アセチル-L-フェニルアラニン(S)-3bを製造した。
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で(Z)-2-アセチルアミノ-3-フェニルアクリル酸(20.5 mg、0.1 mmol)、Rh(nbd)(1)BF
4(0.24 mg、0.5 μmol)、0.5 mLの無水ジクロロメタンを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを750 psiまで導入し、50℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物であるN-アセチル-L-フェニルアラニンのee値が97%であった。
N-アセチル-L-フェニルアラニン[(S)-3b]:白色固体(収率>99%);98% ee。
【0236】
ee値はキラル高圧液体クロマトグラフィーによって測定された。N-アセチル-L-フェニルアラニンはまずトリメチルシリルジアゾメタンの存在下で反応させてN-アセチル-L-フェニルアラニンメチルエステルを生成させた。高圧液体クロマトグラフィーの条件は、キラルAD-Hカラム、25℃、流速: 1 mL/min、n-ヘキサン/イソプロパノール:95/5、210 nm、t1=15.2 min (S)、t2=21.8 min (R)であった。1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.31-7.15(m, 5H), 4.67- 4.62 (dd, J=9.12, 4.98 Hz, 1H), 3.34 (d, J=0.63 Hz, 1H) 3.22-3.16 (dd, J=13.89, 5.04 Hz, 1H), 2.96-2.89 (dd, J=13.8, 9.2 Hz, 1H), 1.89 (s, 1H)
【0237】
実施例5
N-(2-メチル-3,4-ヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミドを水素化基質とし、キラル金属ロジウム錯体Rh(nbd)(1)BF
4を触媒とし、光学活性のキラルアミド(1S,2S)-3fを製造した。
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中でN-(2-メチル-3,4-ヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド(20.1 mg、0.1 mmol)、Rh(nbd)(1)BF
4(0.24 mg、0.5 μmol)、0.5 mLの無水ジクロロメタンを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを750 psiまで導入し、50℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物であるN-((1S,2S)-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミドのee値が70%であった。
N-((1S,2S)-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド:白色固体(収率>99%);70% ee。
【0238】
ee値はキラル高圧液体クロマトグラフィーによって測定された。高圧液体クロマトグラフィーの条件は、キラルAD-Hカラム、25℃、流速: 1 mL/min、n-ヘキサン/イソプロパノール:95/5、210 nm、t1=8.7 min (S)、t2=11.8 min (R)であった。1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.24-7.00(m, 4H), 5.60- 5.42 (br s, 1H), 5.27-5.22 (dd, J=9.45, 4.2 Hz, 1H), 2.87-2.75 (m, 2H), 2.01 (s, 3H), 1.86-1.45 (m, 3H), 1.03-1.01 (d, J=6.8 Hz, 3H)
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.24-7.00 (m, 4H) , 6.11 (d, 1H, J=9.3 Hz), 5.20-5.18 (dd, 1H, J=9.7, 4.7 Hz), 2.87-2.75 (m, 2H), 2.01-1.95 (m, 1H), 1.92 (s, 3H), 1.71-1.60 (m, 1H), 1.55-1.40 (m, 1H), 0.98 (d, 3H, J=6.9 Hz)
【0239】
実施例6
1-(アセチルアミノ)-1-スチレンを水素化基質とし、キラル金属ロジウム錯体Rh(nbd)(1)BF
4を触媒とし、光学活性のキラル(S)-N-(1-フェニルエチル)アセトアミド[(S)-3h]を製造した。
【0240】
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で1-(アセチルアミノ)-1-スチレン(16 mg、0.1 mmol)、Rh(nbd)(1)BF4(0.24 mg、0.5 μmol)、0.5 mLの無水ジクロロメタンを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを750 psiまで導入し、50℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物である(S)-N-(1-フェニルエチル)アセトアミド[(S)-3h]のee値が99%であった。
(S)-N-(1-フェニルエチル)アセトアミド:白色固体(収率>99%);99% ee。
【0241】
ee値はキラル高圧液体クロマトグラフィーによって測定されたが、高圧液体クロマトグラフィーの条件は、キラルAD-Hカラム、25℃、流速: 1 mL/min、n-ヘキサン/イソプロパノール:95/5、210 nm、t1=10.1min (S)、t2=12.8 min (R)であった。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.30-7.27 (m, 5H) , 6.09 (br, 1H), 5.16-5.04 (m, 1H) , 1.94(s, 3H), 1.46 (d, J = 6.8 Hz, 3H).
【0242】
実施例7
1-(アセチルアミノ)-1-スチレンを水素化基質とし、(2S,2S,3R,3'R)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)をキラルホスフィン配位子とし、Rh(nbd)
2BF
4を金属触媒とし、光学活性のキラル(R)-N-(1-フェニルエチル)アセトアミド[(R)-3h]を製造した。
【0243】
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で1-(アセチルアミノ)-1-スチレン(16 mg、0.1 mmol)、Rh(nbd)2BF4(0.24 mg、0.5 μmol)、(2S,2S,3R,3'R)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)(0.15 mg、0.2 μmol)、0.5 mLの無水ジクロロメタンを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを750 psiまで導入し、50℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物である(S)-N-(1-フェニルエチル)アセトアミド[(R)-3h]のee値が99%であった。
(S)-N-(1-フェニルエチル)アセトアミド:白色固体(収率>99%);99% ee。
【0244】
ee値はキラル高圧液体クロマトグラフィーによって測定されたが、高圧液体クロマトグラフィーの条件は、キラルAD-Hカラム、25℃、流速: 1 mL/min、n-ヘキサン/イソプロパノール:95/5、210 nm、t1=10.1min (S)、t2=12.8 min (R)であった。 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.36-7.20 (m, 5H) , 6.02 (br s, 1H), 5.16-5.04 (m, 1H) , 1.94(s, 1H), 1.47-1.44 (d, J = 11.4 Hz, 3H).
【0245】
実施例8
1-(4-ブロモフェニル)-2-アセチルアミノプロペンを水素化基質とし、(2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)を配位子とし、Rh(nbd)
2BF
4を触媒とし、光学活性のキラル(S)-1-(4-ブロモフェニル)-2-アセチルアミノプロパンを製造した。
【0246】
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で(E)-1-(4-ブロモフェニル)-2-アセチルアミノプロペン(4 g、16.6 mmol)、Rh(nbd)2BF4(0.03 mg、0.1 μmol)、(2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)(0.03 mg、0.1 μmol)、24 mLの無水メタノールを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを300 psiまで導入し、25℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物である(S)-1-(4-ブロモフェニル)-2-アセチルアミノプロパンのee値が98%であった。
(S)-1-(4-ブロモフェニル)-2-アセチルアミノプロパン:白色固体(収率>99%);98% ee。
【0247】
ee値はキラル高圧液体クロマトグラフィーによって測定されたが、高圧液体クロマトグラフィーの条件は、キラルAD-Hカラム、25℃、流速: 1 mL/min、n-ヘキサン/イソプロパノール:95/5、210 nm、t1=13.4 min (S)、t2=17.9 min (R)であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.47 (d, J = 8 Hz, 2H) , 7.21 (d, J = 8 Hz, 2H), 5.84 (s, br, 1H), 5.05-5.12 (m, 1H), 2.00 (s, 3H),1.47 (d, J = 4 Hz, 3H).
【0248】
実施例9
2-メチルシクロヘキセニル-1-アセトアミドを水素化基質とし、(2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)を配位子とし、Rh(nbd)
2BF
4を触媒とし、光学活性のキラル(1S,2R)-2-メチルシクロヘキシル-1-アセトアミドを製造した。
【0249】
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で2-メチルシクロヘキセニル-1-アセトアミド(0.5 g、3.2 mmol)、Rh(nbd)2BF4(1 mg、2.4 μmol)、(2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)(0.8 mg、2.4 μmol)、5 mLの無水メタノールを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを300 psiまで導入し、25℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物である(1S,2R)-2-メチルシクロヘキシル-1-アセトアミドのee値が68%であった。
(1S,2R)-2-メチルシクロヘキシル-1-アセトアミド:白色固体(収率>99%);68% ee。
【0250】
ee値はキラル高圧液体クロマトグラフィーによって測定されたが、高圧液体クロマトグラフィーの条件は、キラルAD-Hカラム、25℃、流速: 0.7 mL/min、n-ヘキサン/イソプロパノール:95/5、210 nm、t1=11.2 min (1R,2S)、t2=12.1 min (1S,2R)であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 5.53 (s, 1H) , 4.02-4.07 (m, 1H), 1.99 (s, 3H), 1.84 (m, 1H), 1.17-1.65 (m, 8H),0.86 (d, J = 7 Hz, 3H).
【0251】
実施例10
1,1-ジメチル-2-アセチルアミノプロペンを水素化基質とし、(2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)を配位子とし、Rh(nbd)
2BF
4を触媒とし、光学活性のキラル(S)-1,1-ジメチル-2-アセチルアミノプロパンを製造した。
【0252】
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で1,1-ジメチル-2-アセチルアミノプロペン(0.3 g、2.4 mmol)、Rh(nbd)2BF4(0.7 mg、2.4 μmol)、(2R,2'R,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)(0.7 mg、2.4 μmol)、5 mLの無水メタノールを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを300 psiまで導入し、25℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、酢酸エチルで希釈した後、そのままキラルGC-MSカラムで転換率を測定し、産物である(S)-1,1-ジメチル-2-アセチルアミノプロパンのee値が60%であった。
(S)-1-(4-ブロモフェニル)-2-アセチルアミノプロパン:白色固体(収率>99%);98% ee。
【0253】
ee値はキラルGC-MSカラムで測定されたが、キラルGC-MSの条件は、石英ガラスキャピラリーカラム(FUSED SILICA Capillary Column)、Beta DEXTM225、30 m×0.25 mm×0.25 μM膜厚さ、t1(S)=11.18 min、t2(R)=11.45 minであった。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 5.38 (s, 1H), 3.82-3.89 (m, 1H), 1.97 (s, 3H), 1.63-1.72 (m, 1H), 1.06 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.89 (d, J = 5.4 Hz, 3H), 0.88 (d, J = 6.2 Hz, 3H).
【0254】
実施例11
1-(アセチルアミノ)-1-スチレンを水素化基質とし、キラル金属ロジウム錯体Rh(nbd)(1)BF
4を触媒とし、光学活性のキラル(S)-N-(1-フェニルエチル)アセトアミド[(S)-3h]を製造した。
【0255】
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で1-(アセチルアミノ)-1-スチレン(11 g、68.2 mmol)、Rh(nbd)(1)BF4(0.4 mg、0.68 μmol)、110 mLの無水ジクロロメタンを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを750 psiまで導入し、50℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物である(S)-N-(1-フェニルエチル)アセトアミド[(S)-3h]のee値が99%であった。
(S)-N-(1-フェニルエチル)アセトアミド:白色固体(収率>99%);99% ee。
【0256】
ee値はキラル高圧液体クロマトグラフィーによって測定されたが、高圧液体クロマトグラフィーの条件は、キラルAD-Hカラム、25℃、流速: 1 mL/min、n-ヘキサン/イソプロパノール:95/5、210 nm、t1=10.1 min (S)、t2=12.8 min (R)であった。
【0257】
比較実施例1
(Z)-2-アセチルアミノ-3-フェニルアクリル酸を水素化基質とし、(2R,2S,3S,3'S)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)(化合物h-3)をキラルホスフィン配位子とし、Rh(nbd)
2BF
4を金属触媒とし、光学活性のキラルアミド(S)-3bを製造した。
【0258】
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で(Z)-2-アセチルアミノ-3-フェニルアクリル酸(20.5 mg、0.1 mmol)、Rh(nbd)2BF4(0.19 mg、0.5 μmol)、(2S,2S,3R,3'R)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2'-ジ(1,3-オキサホスホール)(0.15 mg、0.5 μmol)、0.5 mLの無水ジクロロメタンを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを750 psiまで導入し、50℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物であるN-アセチル-L-フェニルアラニンのee値が58%であった。
N-アセチル-L-フェニルアラニン[(S)-3b]:白色固体(収率>99%);58% ee。
【0259】
ee値はキラル高圧液体クロマトグラフィーによって測定された。N-アセチル-L-フェニルアラニンはまずトリメチルシリルジアゾメタンの存在下で反応させてN-アセチル-L-フェニルアラニンメチルエステルを生成させた。高圧液体クロマトグラフィーの条件は、キラルAD-Hカラム、25℃、流速: 1 mL/min、n-ヘキサン/イソプロパノール:95/5、210 nm、t1=15.2 min (S)、t2=21.8 min (R)であった。1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.31-7.15(m, 5H), 4.67- 4.62 (dd, J=9.12, 4.98 Hz, 1H), 3.34 (d, J=0.63 Hz, 1H) 3.22-3.16 (dd, J=13.89, 5.04 Hz, 1H), 2.96-2.89 (dd, J=13.8, 9.2 Hz, 1H), 1.89 (s, 1H)。
【0260】
比較実施例2
(E)-1-(4-ブロモフェニル)-2-アセチルアミノプロペンを水素化基質とし、(2R,2'R,3R,3'R)-4,4-ジ(9-メトキシ)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2',3,3'-テトラヒドロ-2,2'-ジベンゾ[d][1,3]オキサホスホールを配位子とし、Rh(nbd)
2BF
4を触媒とし、光学活性のキラル(S)-1-(4-ブロモフェニル)-2-アセチルアミノプロパンを製造した。
【0261】
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で1-(4-ブロモフェニル)-2-アセチルアミノプロペン(4 g、16.6 mmol)、Rh(nbd)2BF4(0.03 mg、0.1 μmol)、(2R,2'R,3R,3'R)-4,4-ジ(9-メトキシ)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2',3,3'-テトラヒドロ-2,2'-ジベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(0.04 mg、0.1 μmol)、24 mLの無水メタノールを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを300 psiまで導入し、25℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物である(S)-1-(4-ブロモフェニル)-2-アセチルアミノプロパンのee値が91%であった。
(S)-1-(4-ブロモフェニル)-2-アセチルアミノプロパン:白色固体(収率>99%);91% ee。
【0262】
ee値はキラル高圧液体クロマトグラフィーによって測定されたが、高圧液体クロマトグラフィーの条件は、キラルAD-Hカラム、25℃、流速: 1 mL/min、n-ヘキサン/イソプロパノール:95/5、210 nm、t1=13.4 min (S)、t2=17.9 min (R)であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.47 (d, J = 4 Hz, 3H), 2.00 (s, 3H), 5.05?5.12 (m, 1H), 5.84 (s, br, 1H), 7.21 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.47 (d, J = 8 Hz, 2H).
【0263】
比較実施例3
2-メチルシクロヘキセニル-1-アセトアミドを水素化基質とし、金属錯体{(ノルボルナジエン)[(2S,2'S,3S,3'S)-4,4'-ジ(9-アントリル)-3,3'-t-ブチル-2,2',3,3'-テトラヒドロ-2,2'-ジベンゾ[d][1,3]オキサホスホール}テトラフルオロホウ酸ロジウムを配位子とし、光学活性のキラル(1R,2S)-2-メチルシクロヘキシル-1-アセトアミドを製造した。
【0264】
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で2-メチルシクロヘキセニル-1-アセトアミド(0.5 g、3.2 mmol)、金属錯体{(ノルボルナジエン)[(2S,2'S,3S,3'S)-4,4'-ジ(9-アントリル)-3,3'-t-ブチル-2,2',3,3'-テトラヒドロ-2,2'-ジベンゾ[d][1,3]オキサホスホール}テトラフルオロホウ酸ロジウム(2.2 mg、2.4 μmol)、5 mLの無水メタノールを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを300 psiまで導入し、25℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物である(1R,2S)-2-メチルシクロヘキシル-1-アセトアミドのee値が20%であった。
(1S,2R)-2-メチルシクロヘキシル-1-アセトアミド:白色固体(収率>99%);20% ee。
【0265】
ee値はキラル高圧液体クロマトグラフィーによって測定されたが、高圧液体クロマトグラフィーの条件は、キラルAD-Hカラム、25℃、流速: 0.7 mL/min、n-ヘキサン/イソプロパノール:95/5、210 nm、t1=11.2 min (1R,2S)、t2=12.1 min (1S,2R)であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 5.53 (s, 1H) , 4.02-4.07 (m, 1H), 1.99 (s, 3H), 1.84 (m, 1H), 1.17-1.65 (m, 8H),0.86 (d, J = 7 Hz, 3H).
【0266】
比較実施例4
1,1-ジメチル-2-アセチルアミノプロペンを水素化基質とし、(2R,2'R,3R,3'R)-4,4-ジ(9-メトキシ)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2',3,3'-テトラヒドロ-2,2'-ジベンゾ[d][1,3]オキサホスホールを配位子とし、Rh(nbd)
2BF
4を触媒とし、光学活性のキラル(S)-1,1-ジメチル-2-アセチルアミノプロパンを製造した。
【0267】
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で1,1-ジメチル-2-アセチルアミノプロペン(0.1 g、0.8 mmol)、Rh(nbd)2BF4(2 mg、6 μmol)、(2R,2'R,3R,3'R)-4,4-ジ(9-メトキシ)-3,3'-ジ-t-ブチル-2,2',3,3'-テトラヒドロ-2,2'-ジベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(4 mg、9 μmol)、5 mLの無水メタノールを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを300 psiまで導入し、25℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物である(S)-1-(4-ブロモフェニル)-2-アセチルアミノプロパンのee値が98%で、産物の収率が8%であった。
【0268】
比較実施例5
2-メチルシクロヘキセニル-1-アセトアミドを水素化基質とし、金属錯体{(ノルボルナジエン)[(2S,2'S,3R,3'R)-Tangphos]}テトラフルオロホウ酸ロジウムを配位子とし、光学活性のキラル(1R,2S)-2-メチルシクロヘキシル-1-アセトアミドを製造した。
【0269】
反応は以下の通りである。窒素ガスの雰囲気において、グローブボックスの中で2-メチルシクロヘキセニル-1-アセトアミド(0.5 g、3.2 mmol)、金属錯体{(ノルボルナジエン)[(2S,2'S,3R,3'R)-Tangphos]}テトラフルオロホウ酸ロジウム(1.4 mg、2.4 μmol)、5 mLの無水メタノールを水素化瓶に入れ、水素化瓶をオートクレーブに移した。オートクレーブを封じた後、水素ガスで3回置換し、水素ガスを300 psiまで導入し、25℃で12時間反応させた後、室温に冷却した。水素ガスをパージし、オートクレーブを開け、反応粗製物溶液をミクロポアフィルターでろ過して金属イオンを除去し、イソプロパノールで希釈した後、そのままキラルAD-Hカラムで高速液体クロマトグラフィーによって転換率を測定し、産物である(1R,2S)-2-メチルシクロヘキシル-1-アセトアミドのee値が53%であった。
(1R,2S)-2-メチルシクロヘキシル-1-アセトアミド:白色固体(収率:11%);53% ee。
ee値はキラル高圧液体クロマトグラフィーによって測定されたが、高圧液体クロマトグラフィーの条件は、キラルAD-Hカラム、25℃、流速: 0.7 mL/min、n-ヘキサン/イソプロパノール:95/5、210 nm、t1=11.2 min (1R,2S)、t2=12.1 min (1S,2R)であった。