(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】測距撮像装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/894 20200101AFI20231228BHJP
G01S 7/487 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G01S17/894
G01S7/487
(21)【出願番号】P 2021527466
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019300
(87)【国際公開番号】W WO2020255598
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-05-11
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】和久 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 純一
(72)【発明者】
【氏名】高野 遥
(72)【発明者】
【氏名】永田 太一
(72)【発明者】
【氏名】森 圭一
(72)【発明者】
【氏名】桝山 雅之
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/169782(WO,A1)
【文献】特開2015-175752(JP,A)
【文献】特開2017-102598(JP,A)
【文献】特開2018-036102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0134598(US,A1)
【文献】特開2020-106444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/06
G06T 1/00
G06T 7/521
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光を照射して対象物体からの反射光を受光することによって、対象物体までの距離を測定する測距撮像装置であって、
前記パルス光の発光を指示する発光制御信号、および、前記反射光の露光を指示する露光制御信号を出力する駆動制御部と、
複数の画素を有し、前記露光制御信号のタイミングで露光した画素毎の露光信号を出力する撮像部と、
前記露光信号に対して重み係数を用いて隣り合う複数の画素の露光信号を合成する画素フィルタによって合成信号を生成する画素演算部と、
前記合成信号に基づいて距離画像を生成するTOF演算部と、を備え、
前記画素演算部は、互いに異なる合成倍率をもつ少なくとも2つの画素フィルタを有し、前記少なくとも2つの画素フィルタの中から何れか1つを、前記画素フィルタとして選択する
測距撮像装置。
【請求項2】
さらに、前記対象物体の想定距離、前記撮像部の温度、前記露光信号に含まれるノイズ量、および、動作モードのうちの少なくとも1つに基づいて撮像環境または撮像用途を判定し、判定結果に応じて画素フィルタの選択を制御するための判定信号を出力する判定部を備え、
前記画素演算部は、前記判定信号に基づいて画素フィルタを選択する
請求項1に記載の測距撮像装置。
【請求項3】
前記撮像部は、第1タイプのフレームと第2タイプのフレームとを含む複数のフレームを生成し、
前記第1タイプのフレームは、K1(K1は2以上の整数)回の発光および露光に基づいて生成され、
前記第2タイプのフレームは、K2(K2はK1より大きい整数)回の発光および露光に基づいて生成され、
前記
判定部は、前記撮像部により生成されたフレームが第1タイプであるか第2タイプであるかに応じてフレーム毎に画素演算部における画素フィルタの選択を制御する
請求項2に記載の測距撮像装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの画素フィルタは、第1の画素フィルタと、第2の画素フィルタとを含み、
前記第1の画素フィルタの合成倍率は、前記第2の画素フィルタの合成倍率よりも大きく、
前記画素演算部は、前記第1タイプのフレームを構成する露光信号に対して第1の画素フィルタを選択し、前記第2タイプのフレームを構成する露光信号に対して第2の画素フィルタを選択する
請求項3に記載の測距撮像装置。
【請求項5】
前記測距撮像装置は、更に、前記測距撮像装置の内部および外部の少なくとも一方の温度を測定する温度センサ部を備え、
前記画素演算部は、前記温度に基づいて前記画素フィルタを選択する
請求項1または2に記載の測距撮像装置。
【請求項6】
前記画素演算部は、前記温度が高いほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択する
請求項5に記載の測距撮像装置。
【請求項7】
前記画素演算部は、前記露光信号に含まれるノイズ成分の大きさに基づいて前記画素フィルタを選択する
請求項1または2に記載の測距撮像装置。
【請求項8】
前記画素演算部は、前記ノイズ成分が大きいほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択する
請求項7に記載の測距撮像装置。
【請求項9】
前記判定部は、1フレームに期間内の前記発光制御信号のパルス数、および、前記露光制御信号のパルス数の少なくとも一方を判定し、判定したパルス数に応じた合成倍率の画素フィルタを選択するように制御する前記判定信号を出力する
請求項2に記載の測距撮像装置。
【請求項10】
前記画素演算部は、前記パルス数が少ないほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択する
請求項9に記載の測距撮像装置。
【請求項11】
前記判定部は、前記露光信号の比で示される反射光の飛行時間を判定し、前記飛行時間に応じた画素フィルタを選択するように制御する前記判定信号を出力する
請求項2に記載の測距撮像装置。
【請求項12】
前記画素演算部は、前記飛行時間が短いほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択する
請求項11に記載の測距撮像装置。
【請求項13】
前記少なくとも2つの画素フィルタは、前記露光信号と閾値とを比較し、前記露光信号が閾値よりも小さい場合にゼロを合成信号として出力し、前記露光信号が閾値以上である場合に当該露光信号を合成信号として出力する閾値フィルタを含む
請求項1~12のいずれか一項に記載の測距撮像装置。
【請求項14】
さらに、前記撮像部の温度、前記露光信号に含まれるノイズ量、および、動作モードのうちの少なくとも1つに基づいて撮像環境または撮像用途を判定し、判定結果に応じて閾値を選択し、選択した閾値を前記閾値フィルタに設定する閾値設定部を備える
請求項13に記載の測距撮像装置。
【請求項15】
前記TOF演算部は、前記第1タイプのフレームに対応する前記距離画像の解像度を低下させる
請求項3に記載の測距撮像装置。
【請求項16】
前記駆動制御部と、前記撮像部と、前記判定部と、前記画素演算部と、前記TOF演算部とは、同じ半導体基板上に備えられる
請求項2~4、9~12のいずれか一項に記載の測距撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物体までの距離を測定する測距撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス光を照射して対象物体からの反射光を受光するまでのパルス光のTOF(飛行時間)を測定することによって、対象物体までの距離を測定する測距撮像装置が知られている。例えば、特許文献1~6は、イメージセンサを用いて距離を示す深さマップを生成する測距撮像装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9134114号明細書
【文献】特開2013-117969号公報
【文献】米国特許第9784822号明細書
【文献】米国特許第10116883号明細書
【文献】米国特許第10132626号明細書
【文献】米国特許第8953021号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の測距撮像装置に対して、測距レンジを拡大することが望ましい。
【0005】
本開示は、測距レンジを容易に拡大可能な測距撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る測距撮像装置は、パルス光を照射して対象物体からの反射光を受光することによって、対象物体までの距離を測定する測距撮像装置であって、前記パルス光の発光を指示する発光制御信号、および、前記反射光の露光を指示する露光制御信号を出力する駆動制御部と、複数の画素を有し、前記露光制御信号のタイミングで露光した画素毎の露光信号を出力する撮像部と、前記露光信号に対して重み係数を用いて隣り合う複数の画素の露光信号を合成する画素フィルタによって合成信号を生成する画素演算部と、前記合成信号に基づいて距離画像を生成するTOF演算部と、を備え、前記画素演算部は、互いに異なる合成倍率をもつ少なくとも2つの画素フィルタを有し、前記少なくとも2つの画素フィルタの中から何れか1つを、前記画素フィルタとして選択する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の測距撮像装置によれば、測距レンジを容易に拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、実施の形態に係る測距撮像装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図1B】
図1Bは、実施の形態に係る画素演算部の詳細な第1の構成例を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、実施の形態に係る画素演算部の詳細な第2の構成例を示す図である。
【
図1D】
図1Dは、実施の形態に係る画素演算部の詳細な第3の構成例を示す図である。
【
図1E】
図1Eは、実施の形態に係る判定テーブルの第1例を示す図である。
【
図1F】
図1Fは、実施の形態に係る判定テーブルの第2例を示す図である。
【
図1G】
図1Gは、実施の形態に係る判定テーブルの第3例を示す図である。
【
図1H】
図1Hは、実施の形態に係る判定テーブルの第4例を示す図である。
【
図1I】
図1Iは、実施の形態に係る判定テーブルの第5例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る撮像部で生成されるフレーム構成例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る露光タイミングを示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る測距撮像装置の構成の別の一例を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る画素毎の露光回数制御による画素フィルタ機能を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の測距撮像装置について、図面を参照しながら説明する。但し、詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、各図は必ずしも厳密に図示したものではない。これらは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0010】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、当業者が本開示を十分に理解するためのものであって、請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
(実施の形態)
以下、実施の形態に係る測距撮像装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0012】
[測距撮像装置10の構成例]
図1Aは、本開示の実施形態に係る測距撮像装置10の構成の一例を示す機能ブロック図である。同図では、測距撮像装置10以外に測距の対象物体も図示してある。
【0013】
本開示の実施の形態に係る測距撮像装置10は、光源部1と、撮像部2と、駆動制御部3と、画素演算部4と、TOF演算部5と、判定部6と、フレーム制御部7により構成される。
【0014】
光源部1は、駆動制御部3からの発光制御信号のタイミングで照射光(一例として、パルス光)を照射する。光源部1は、例えば、赤外光を照射するLED、レーザーダイオードで構成される。
【0015】
撮像部2は、複数の画素を有するイメージセンサであり、駆動制御部3からの露光制御信号のタイミングで露光した画素毎の露光信号を出力する。具体的には、撮像部2は、第1タイプのフレームと第2タイプのフレームとを含む複数のフレームを生成する。第1タイプのフレームは、K1回の発光および露光に基づいて生成される。第2タイプのフレームは、K2回の発光および露光に基づいて生成される。ここで、K1は2以上の整数である。また、K2はK1より大きい整数である。例えば、K1は数十程度であり、K2は数百程度である。それゆえ、第1タイプのフレームは、比較的近い距離の対象物体の測定用である。また、第2タイプのフレームは、比較的遠い距離の対象物体の測定用である。なお、撮像部2の画素数は、例えば640×480のVGA(Video Graphics Array)でもよい。
【0016】
駆動制御部3は、パルス光の発光を指示する発光制御信号、および、反射光の露光を指示する露光制御信号を出力する。
【0017】
画素演算部4は、各画素の露光信号に対して重み係数を用いて隣り合う複数の画素の露光信号を合成する画素フィルタによって合成信号を生成する。画素演算部4は、互いに異なる合成倍率をもつ少なくとも2つの画素フィルタを有し、少なくとも2つの画素フィルタの中から何れか1つを、前記画素フィルタとして判定部6からの判定信号に従って例えばフレーム毎に選択する。画素フィルタは、重み係数の値によって露光信号量を何倍にも増加させることができる。対象物体が遠くにある場合、および、対象物体が近くにあるが反射率が小さい場合には、背景光等のノイズ成分に対して十分な露光信号量を得るのが困難になる。このような場合に露光信号量を増加させるために画素フィルタを利用可能である。以下では、画素フィルタの対象となる画素の露光信号量と、画素フィルタ適用後の合成信号量との比率を合成倍率と呼ぶ。合成倍率は、画素フィルタの重み係数に依存し、0倍から数十倍程度である。
【0018】
TOF演算部5は、画素演算部4により生成される合成信号に基づいて距離画像を生成する。
【0019】
判定部6は、対象物体の想定距離、撮像部2の温度、露光信号に含まれるノイズ量、および、動作モードのうちの少なくとも1つに基づいて撮像環境または撮像用途を判定し、判定結果に応じて画素フィルタの選択を制御するための判定信号を出力する。
【0020】
フレーム制御部7は、フレームの種別を示すフレーム識別信号を生成する。例えば、フレーム識別信号は、第1タイプのフレームであるか第2タイプのフレームであるかを示す。
【0021】
次に、本実施形態の測距撮像装置10の基本動作について簡単に説明する。
【0022】
図2は、実施の形態に係る撮像部2で生成されるフレーム構成例を示す説明図である。
図2の(a)は、撮像部2で生成される時系列の複数フレームを示し、近距離用フレームAと遠距離用フレームBとが交互に生成される。駆動制御部3は、
図2の(b)および(c)に示すように発光制御信号と露光制御信号を出力する。光源部1は、発光制御信号がHの時に照射光を出力し、撮像部2は、VGAの画素数を持つエリアセンサで、照射光が対象物体に反射した光である反射光に対して、露光制御信号がHの期間のみ露光を行い、H期間の露光量の総和を、撮像部で光電変換を行い、画素毎で露光信号として出力する。近距離用のフレームAは、K1=25のときの第1タイプのフレームに相当する。遠距離用のフレームBは、K2=200のときの第2タイプのフレームに相当する。
【0023】
図3は、実施の形態に係る露光タイミングを示す説明図である。
図3は、3種類の露光信号A0~A2を詳細に示したものである。露光タイミングA~Cにおける発光制御信号のパルス幅および露光制御信号のパルス幅は全て同じである。
【0024】
露光タイミングAでは、発光タイミングと露光タイミングとが同じである。つまり、発光開始タイミングと露光開始タイミングとが同じであり、発光終了タイミングと露光終了タイミングとが同じである。露光タイミングBでは、発光制御信号のパルス幅と露光制御信号のパルス幅も同じであるが、発光タイミングと露光タイミングとが異なる。発光終了タイミングと露光開始タイミングとが同じである。
【0025】
露光タイミングCでは、発光することなく、露光のみを行う。これにより光源部1の照射したパルス光の反射光ではなく背景光のみ露光する。
【0026】
図3に示すように、3パターンの発光制御信号、露光制御信号の位相関係で発光・露光を行い、撮像部2は、各画素で露光信号A0、露光信号A1、露光信号A2を出力する。次の(式1)の露光信号の比は、光源部1の照射光が対象物体で反射して帰ってくるまでの飛行時間にほぼ比例する。
【0027】
露光信号の比=(A1-A2)/(A0+A1-2*A2)・・(式1)
【0028】
なお、
図2の(b)および(c)では、
図3の露光タイミングAの露光制御信号と発光制御信号とを図示してあり、タイミングB、Cの露光制御信号と発光制御信号とは省略されている。
【0029】
[画素演算部4の第1の構成例]
図1Bは、実施の形態に係る画素演算部4の詳細な第1の構成例を示す図である。
【0030】
同図のように画素演算部4は、画素フィルタ4A、画素フィルタ4B、および選択部41を備える。
【0031】
画素フィルタ4A内の3×3の行列は、処理対象となる画素とその周囲の8画素とを合わせた9画素に対する重み係数を示している。9画素のうち、処理対象となる中心の画素と、その上下左右の4つの画素の重み係数が1である。また、処理対象となる中心の画素の斜め方向の4つの画素の重み係数が0である。これにより、重み係数が1の5画素の露光信号が重み付け加算され、合成信号として出力される。この場合、合成信号の元の露光信号量に対する合成倍率は約5倍になる。
【0032】
一方、画素フィルタ4B内の行列では、9画素のうち、処理対象となる中心の画素の重み係数のみが1であり、他の8画素の重み係数が0である。これにより、重み係数が1の唯一の画素の露光信号がそのまま合成信号として出力される。この場合、合成倍率は1倍(等倍)になる。
【0033】
判定信号は、
図2の近距離用フレームAつまり第1タイプのフレームの期間ではL(つまりローレベル)になり、
図2の遠距離用フレームBつまり第2タイプのフレームの期間ではH(つまりハイレベル)になる。画素演算部4は、
図1Bに示すように判定部6から出力される判定信号がLの期間は画素フィルタAを選択し、判定信号がHの時は画素フィルタBを選択する。撮像部2から画素演算部4に入力される露光信号A0、A1、A2はそれぞれ、1フレーム単位、つまり、近距離用フレームAでは25回の積算値、遠距離用フレームBでは200回の積算値であるものとする。入力された露光信号A0、A1、A2と選択された画素フィルタとで畳み込み演算を行い、合成信号A0’、A1’、A2’を出力する。ここで畳み込み演算は、1フレームを構成する全画素に対して画素位置を1画素ずつずらしながら、重み係数による露光信号の加算を行っていくことをいう。
【0034】
同図の画素群d0は、1フレーム中の5×5画素分の露光信号A0、A1またはA2の値を示す。画素群d0は、例えば、対象物体の左斜め下方向の稜線を示している。
【0035】
画素群d1は、画素群d0が画素フィルタ4Aで処理された後の画素群を示す。画素群d1は、画素群d0と比べて、最大5倍の合成信号が得られている。これによりダイナミックレンジが拡大する。
【0036】
画素群d2は、画素群d0が画素フィルタ4Bで処理された後の画素群を示す。画素フィルタ4Bは、入力された露光信号をそのまま出力するので、画素群d2は画素群d0と同じである。
【0037】
判定部6は、フレーム識別信号がLの時にLを、フレーム識別信号がHの時にHを、判定信号として出力する。
【0038】
TOF演算部5は、合成信号A0’、A1’、A2’から各画素で距離を算出し、距離画像信号を出力する。
【0039】
フレーム制御部7は、1画像単位でH、Lの切替えを行い、フレーム識別信号として出力する。
【0040】
駆動制御部3は、フレーム識別信号がLの時、発光制御信号・露光制御信号のパルス数を、25回程度に設定し、フレーム識別信号がHの時、発光制御信号・露光制御信号のパルス数を200回程度に設定する。
【0041】
図1Bでは、例えば、第1タイプのフレームは比較的強い反射光を返す近距離の対象物体に適しており、第2タイプのフレームは比較的弱い反射光を返す遠距離の対象物に適している。第1タイプのフレームの露光信号に対して合成倍率が比較的大きい画素フィルタを選択すれば、近距離の対象物体の反射率が小さい場合でも、ダイナミックレンジひいては測距レンジを拡大することができる。また、第2タイプのフレームの露光信号に対して合成倍率が比較的大きい画素フィルタを選択すれば、遠距離の対象物の反射率が小さい場合でも、ダイナミックレンジひいては測距レンジを拡大することができる。
【0042】
[画素演算部4の第2の構成例]
次に、画素演算部4の第2の構成例について説明する。
【0043】
図1Cは、実施の形態に係る画素演算部4の詳細な第2の構成例を示す図である。
図1Cの画素演算部4は、
図1Bと比べて、画素フィルタ4Cおよび画素フィルタ4Dが追加された点と、選択部41が2入力から4入力に変更された点とが異なっている。以下、
図1Bと同じ点は説明の重複を避けて、異なる点を中心に説明する。
【0044】
画素フィルタ4Cは、約9倍の合成倍率を有する。
【0045】
画素フィルタ4Dは、約16倍の合成倍率を有する。
【0046】
選択部41は、4つの画素フィルタ4A~4Dから1つを判定信号に従って選択する。
【0047】
判定信号は、ここでは2ビットの信号であり、フレーム識別信号と、他の要因とを組み合わせて判定することができる。他の要因としては、背景光レベルつまりノイズレベルがある。例えば、近距離用の第1タイプのフレームであり、かつ、背景光が強いほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択してもよい。
【0048】
[画素演算部4の第3の構成例]
次に、画素演算部4の第3の構成例について説明する。
【0049】
図1Dは、実施の形態に係る画素演算部4の詳細な第3の構成例を示す図である。
図1Dの画素演算部4は、
図1Cと比べて、画素フィルタ4Eおよび閾値設定部42が追加された点が異なっている。以下、
図1Cと同じ点は説明の重複を避けて、異なる点を中心に説明する。なお、画素フィルタ4Eは、閾値フィルタと呼ぶ。
【0050】
画素フィルタ4Eは、入力される露光信号と閾値とを比較し、露光信号が閾値よりも小さい場合にゼロを合成信号として出力し、露光信号が閾値以上である場合に当該露光信号を合成信号として出力する。
【0051】
閾値設定部42は、前記撮像部2の温度、前記露光信号に含まれるノイズ量、および、動作モードのうちの少なくとも1つに基づいて撮像環境または撮像用途を判定し、判定結果に応じて閾値を選択し、選択した閾値を画素フィルタ4Eに設定する。具体的には、閾値設定部42は、判定部6からの判定信号に応じて閾値を選択し、選択した閾値を画素フィルタ4Eに設定する。
【0052】
これによれば、撮像環境または撮像用途に応じて閾値を設定するので、近距離から遠距離まで、および、反射率の大きい対象物から反射率の小さい対象物まで幅広く適切な閾値を設定し、ノイズを多く含む露光信号を抑制することができる。
【0053】
[判定テーブルの第1例~第5例]
次に、判定テーブルを用いた判定部6の判定例について説明する。
【0054】
図4は、実施の形態に係る測距撮像装置10の構成の別の一例を示す機能ブロック図である。同図は、
図1Aと比べて温度センサ部8が追加された点と、判定部6に入力される情報が増えている点とが異なる。以下、
図1Aと同じ点は説明の重複を避けて、異なる点を中心に説明する。
【0055】
温度センサ部8は、測距撮像装置10の内部および外部の少なくとも一方の温度を測定し、測定した温度を示す温度信号を出力する。
【0056】
判定部6は、
図1Aと比べて、フレーム識別信号だけでなく、発光制御信号、露光制御信号、露光信号、および温度信号が入力され、これらの信号の少なくとも1つを用いて撮像環境または撮像用途を判定し、判定結果に応じて画素フィルタの選択を制御するための判定信号を出力する。例えば、判定部6は、これらの信号の値と判定信号とを対応付けた判定テーブルを有し、判定テーブルに従って判定信号を出力する。
【0057】
図1Eは、実施の形態に係る判定テーブルの第1例を示す図である。
図1Eでは、フレーム識別信号が示す距離と判定信号とが対応付けられている。例えば、
図1Eの判定テーブルは、距離が近いほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択する判定信号に対応付けられる。距離D1~D4は、それぞれ距離範囲でもよいし、距離範囲の境界でもよい。
【0058】
フレーム識別信号は、例えば、第1距離用フレーム、第2距離用フレーム、第3距離用フレーム、第4距離用フレームの4種類のフレームを識別する信号である。この場合、フレーム識別信号は、4種類のフレームのうちどれを撮像するかを示す動作モードを示す信号でもある。
【0059】
上記の第1距離~第4距離は、例えば、この順に近い距離から遠い距離に対応するものとする。この場合、第1~第4距離用フレームのそれぞれの露光回数をM1~M4とすれば、M1<M2<M3<M4を満たす。例えば、M1、M2、M3、M4は、25、100、200、400でもよい。
図1Eの判定テーブルは、距離が近いほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択するよう対応付けることができる。この場合、上記の第1~第4距離用フレームを、
図1Eの距離D1、D2、D4、D3を対応させればよい。
【0060】
なお、
図1Eの判定テーブルにおいて、「距離」を「飛行時間」と読み替えてもよい。「飛行時間」は、TOF演算部5により(式1)から得られ、実際の撮像したフレーム中の対象物体の距離に相当する。実際の撮像したフレーム中に対象物体が複数ある場合には、フレームの中央部分にある対象物体までの「飛行時間」であってもよいし、最も近い対象物体までの「飛行時間」であってもよいし、個々の対象物体までの「飛行時間」であってもよい。また、「飛行時間」は、当該フレームの直前のフレームで得られた「飛行時間」を利用してもよい。そうすれば、
図1Eの判定テーブルは、飛行時間が短いほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択する判定信号と対応付ける。
【0061】
図1Fは、実施の形態に係る判定テーブルの第2例を示す図である。
図1Fでは、温度センサ部8からの温度信号が示す温度と判定信号とが対応付けられている。温度T1~T4は、それぞれ温度範囲でもよいし、温度範囲の境界でもよい。
図1Fの判定テーブルは、温度が高いほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択する判定信号に対応付けられる。撮像部2の温度が高いほど露光信号のばらつきが大きくなり、SN比が劣化する。
図1Fの判定テーブルでは、温度特性によるSN比の劣化を抑制することができる。
【0062】
図1Gは、実施の形態に係る判定テーブルの第3例を示す図である。
図1Gでは、露光信号中のノイズ量と判定信号とが対応付けられている。ノイズ量N1~N4は、それぞれノイズ量の範囲でもよいし、ノイズ量の範囲の境界でもよい。ここでいうノイズ量は、例えば、
図3に示した露光信号A2つまり背景光のことである。
図1Gの判定テーブルは、ノイズ量が大きいほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択する判定信号に対応付けられる。背景光が多いほど露光信号A0、A1のSN比が劣化する。
図1Gの判定テーブルでは、背景光によるSN比の劣化を抑制することができる。
【0063】
図1Hは、実施の形態に係る判定テーブルの第4例を示す図である。
図1Hでは、露光信号比と判定信号とが対応付けられている。ここでいう露光信号比は、(式1)に示したものであり、「飛行時間」および「距離」に比例する。露光信号比R1~R4は、それぞれ露光信号比の範囲でもよいし、露光信号比の範囲の境界でもよい。
図1Hの判定テーブルは、露光信号比が小さいほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択する判定信号に対応付けられる。
【0064】
図1Iは、実施の形態に係る判定テーブルの第5例を示す図である。
図1Iでは、露光パルス数と判定信号とが対応付けられている。ここでいう露光パルス数は、1フレーム期間内の露光制御信号に含まれるパルス数をいう。露光パルス数P1~P4は、それぞれ露光パルス
数の範囲でもよいし、露光パルス
数の範囲の境界でもよい。なお、露光パルス数の代わりに発光パルス数を用いてもよい。例えば、
図1Iの判定テーブルは、露光パルス数が多いほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択する判定信号に対応付けられる。
【0065】
なお、判定部6は、
図1E~
図1Iの判定テーブルから選択された2つ以上を組み合わせた判定テーブルを用いてもよい。
【0066】
[露光回数制御による画素フィルタ機能]
次に、画素フィルタを重み付け加算ではなく、露光回数制御によって構成する例について説明する。
【0067】
図5は、実施の形態に係る画素毎の露光回数制御による画素フィルタ機能を示す説明図である。同図では、撮像部2の複数の画素は、画素A~画素Dの4画素単位の集合で構成されるものとする。
【0068】
図5の例では、画素Aは、1フレーム当たりの露光回数を100回に制御される。画素Bおよび画素Cは、1フレーム当たりの露光回数を200回に制御される。画素Dは、1フレーム当たりの露光回数を400回に制御される。この場合、露光制御信号は、画素A、画素B、C、画素Dに個別に接続する必要はなく、全画素に共通に400回の露光パルスを供給する。撮像部2は、画素Aの400回の露光信号のうち300回分を破棄し、残り100回分を蓄積することにより、1フレームの露光信号を生成する。撮像部2は、画素Bおよび画素Cの400回の露光信号のうち200回分を破棄し、残り200回分を蓄積することにより、1フレームの露光信号とする。同様に、撮像部2は、画素Dの400回の露光信号のうち、破棄することなく400回分を蓄積することにより、1フレームの露光信号とする。
【0069】
さらに、
図5では、合成倍率が約9倍の画素フィルタを通した後に、4画素加算して画素数を1/4に減らしたフレーム、つまり320×240の画素数をもつQVGAとして出力する。
【0070】
このQVGA出力は、
図5下段の等価な画素フィルタを通してQVGAに変換することと同等である。
【0071】
このように、画素毎の露光回数を制御、つまり、破棄回数と蓄積回数とを制御することにより、重みづけ加算と等価な画素フィルタを機能させることができる。
【0072】
以上のように、本開示の実施の形態に係る測距撮像装置10は、照射光を照射して対象物体からの反射光を受光することによって、対象物までの距離を測定する測距撮像装置10であって、発光制御信号、露光制御信号を出力する駆動制御部3と、上述の発光制御信号のタイミングで光の照射を行う光源部1と、照射された光の対象物体からの反射光を、上述の露光制御信号のタイミングで露光した露光信号を出力する撮像部2と、判定信号を出力する判定部6と、上述の露光信号を入力として、上述の露光信号に対して画素フィルタに応じた合成を行い、合成信号として出力する画素演算部4と、を備え、画素演算部4は、少なくとも2つ以上の画素フィルタを有し、上述の判定信号に基づいて画素フィルタを切り替える。
【0073】
また、測距撮像装置10は、更に、上述の合成データを入力として距離画像を出力するTOF演算部5を備える。
【0074】
また、TOF演算部5は、フレーム識別信号に基づいて、上述の距離画像の解像度を切り替えて出力する。
【0075】
また、駆動制御部3と、撮像部2と、判定部6と、画素演算部4と、TOF演算部5は、同じ半導体基板上に備える。
【0076】
また、測距撮像装置10は、更に、フレーム制御部7を備え、当該フレーム制御部7はフレーム単位でフレーム識別信号を出力し、駆動制御部3は、上述のフレーム識別信号に基づいて上述の発光制御信号及び上述の露光制御信号の少なくとも一方のパルス数を変更し、判定部6は、上述のフレーム識別信号に基づいて上述の判定信号を出力する。
【0077】
また、測距撮像装置10は、更に、温度センサ8を備え、温度センサ8は、測距撮像装置10の内部あるいは外部の少なくともどちらか一方の温度に基づいて温度信号を出力する。
【0078】
また、判定部6は、上述の温度信号に基づいて上述の判定信号を出力する。
【0079】
また、判定部6は、上述の露光信号の大きさに基づいて上述の判定信号を出力する。
【0080】
また、判定部6は、上述の発光制御信号のパルス数、露光制御信号のパルス数の少なくともどちらか一方の大きさに基づいて上述の判定信号を出力する。
【0081】
また、判定部6は、上述の露光信号の比に基づいて上述の判定信号を出力する。
【0082】
これによって、本開示の実施形態に係る測距撮像装置は、遠距離用フレームの解像度を保持しつつ、測距離レンジを拡大することが可能となる。
【0083】
また、近距離は対象物体が大きく撮像されるため、解像度低下の影響を少なく抑えることができる。
【0084】
なお、露光信号は、
図3に示すように画素毎で複数の露光タイミング毎で、A0、A1、A2を持ち、
(A1-A2)/(A0+A1-2*A2)<1/4であれば、判定信号をL、
(A1-A2)/(A0+A1-2*A2)≧1/4であれば、判定信号をH
のように、露光信号の比によって判定信号を制御しても良い。
【0085】
なお、画素演算部4は、
図1Cに示すように3個以上フィルタを切り替えても良い。
【0086】
なお、TOF演算部5は、フレーム識別信号がHの時は、VGAで距離画像を出力するが、フレーム識別信号がLの時は、VGAより低解像度(例えば、QVGA)の距離画像を出力しても良い。
【0087】
なお、
図4のように構成し、判定部6は、露光信号の量と判
定テーブルとの比較結果から、判定信号を出力しても良い。
【0088】
なお、
図4のように、温度センサ部8を搭載し、温度センサ部8は周囲温度を入力とし温度信号を出力し、判定部6は、温度信号と判定信号のテーブルとの比較結果から、判定信号を出力しても良い。
【0089】
なお、
図5のように、撮像部2は画素毎に露光回数を変更することを可能として、画素A用露光制御信号:100回程度とし、画素B,C用露光制御信号:200回程度とし、画素D用露光制御回数:400回程度とし、画素演算部4は、露光回数比による画素フィルタとしても良い。
【0090】
以上説明してきたように実施の形態の一態様に係る測距撮像装置10は、パルス光を照射して対象物体からの反射光を受光することによって、対象物体までの距離を測定する測距撮像装置10であって、前記パルス光の発光を指示する発光制御信号、および、前記反射光の露光を指示する露光制御信号を出力する駆動制御部3と、複数の画素を有し、前記露光制御信号のタイミングで露光した画素毎の露光信号を出力する撮像部2と、前記露光信号に対して重み係数を用いて隣り合う複数の画素の露光信号を合成する画素フィルタによって合成信号を生成する画素演算部4と、前記合成信号に基づいて距離画像を生成するTOF演算部5と、を備え、前記画素演算部4は、互いに異なる合成倍率をもつ少なくとも2つの画素フィルタ4A~4Eを有し、前記少なくとも2つの画素フィルタの中から何れか1つを、前記画素フィルタとして選択する。
【0091】
これによれば、露光信号量が少ない場合であっても画素フィルタによる合成によって露光信号量を増加させるのでダイナミックレンジを容易に拡大できるという効果がある。ダイナミックレンジの拡大は、すなわち、測距レンジの拡大を意味する。また、少なくとも2つの画素フィルタから画素フィルタを選択可能なので、例えば、撮像環境または撮像用途に応じて測距レンジを拡大できるという効果がある。
【0092】
ここで、測距撮像装置10は、さらに、前記対象物体の想定距離、前記撮像部2の温度、前記露光信号に含まれるノイズ量、および、動作モードのうちの少なくとも1つに基づいて撮像環境または撮像用途を判定し、判定結果に応じて画素フィルタの選択を制御するための判定信号を出力する判定部6を備え、前記画素演算部4は、前記判定信号に基づいて画素フィルタを選択してもよい。
【0093】
これによれば、撮像環境または撮像用途に応じて画素フィルタを選択するので、適応的に測距レンジを拡大することができる。
【0094】
ここで、前記撮像部2は、第1タイプのフレームと第2タイプのフレームとを含む複数のフレームを生成し、前記第1タイプのフレームは、K1(K1は2以上の整数)回の発光および露光に基づいて生成され、前記第2タイプのフレームは、K2(K2はK1より大きい整数)回の発光および露光に基づいて生成され、前記判定信号は、前記撮像部2により生成されたフレームが第1タイプであるか第2タイプであるかに応じてフレーム毎に画素演算部4における画素フィルタの選択を制御してもよい。
【0095】
これよれば、例えば、第1タイプのフレームは比較的強い反射光を返す近距離の対象物に適しており、第2タイプのフレームは比較的弱い反射光を返す遠距離の対象物に適している。第1タイプのフレームの露光信号に対して合成倍率が比較的大きい画素フィルタを選択すれば、近距離の対象物の反射率が小さい場合でも、ダイナミックレンジひいては測距レンジを拡大することができる。また、第2タイプのフレームの露光信号に対して合成倍率が比較的大きい画素フィルタを選択すれば、遠距離の対象物の反射率が小さい場合でも、ダイナミックレンジひいては測距レンジを拡大することができる。
【0096】
ここで、前記少なくとも2つの画素フィルタは、第1の画素フィルタと、第2の画素フィルタとを含み、前記第1の画素フィルタの合成倍率は、前記第2の画素フィルタの合成倍率よりも大きく、前記画素演算部4は、第1タイプのフレームを構成する露光信号に対して第1の画素フィルタを選択し、前記第2タイプのフレームを構成する露光信号に対して第2の画素フィルタを選択してもよい。
【0097】
これによれば、例えば、合成倍率の大きい第1の画素フィルタを適用するので、近距離にある対象物の反射率が小さい場合であっても、近距離用の第1フレームのダイナミックレンジひいては測距レンジを拡大することができる。
【0098】
ここで、前記測距撮像装置10は、更に、前記測距撮像装置10の内部および外部の少なくとも一方の温度を測定する温度センサ部を備え、前記画素演算部4は、前記温度に基づいて前記画素フィルタを選択してもよい。
【0099】
これによれば、温度に応じて画素フィルタを選択するので、測距精度の温度依存性を抑制することができる。
【0100】
ここで、前記画素演算部4は、前記温度が高いほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択してもよい。
【0101】
これによれば、温度が高いほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択するので、温度依存で発生するばらつきの影響を抑制することができる。
【0102】
ここで、画素演算部4は、前記露光信号に含まれるノイズ成分の大きさに基づいて前記画素フィルタを選択してもよい。
【0103】
これによれば、例えば背景光としてのノイズ成分に応じて画素フィルタを選択するので、背景光のよる精度劣化を抑制することができる。
【0104】
ここで、前記画素演算部4は、前記ノイズ成分が大きいほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択してもよい。
【0105】
これによれば、ノイズ成分が大きいほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択するので、ノイズ成分による精度劣化等の影響を抑制することができる。
【0106】
ここで、前記判定部は、1フレームに期間内の前記発光制御信号のパルス数、および、前記露光制御信号のパルス数の少なくとも一方を判定し、判定したパルス数に応じた合成倍率の画素フィルタを選択するように制御する前記判定信号を出力してもよい。
【0107】
これによれば、パルス数に応じて画素フィルタを選択するので、距離に依存する露光信号量の過不足を補償することができる。
【0108】
ここで、前記画素演算部4は、前記パルス数が少ないほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択してもよい。
【0109】
これによれば、パルス数が少ないほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択するので、例えば、反射率が小さい対象物による露光信号量の不足を補償することができる。
【0110】
ここで、前記判定部6は、前記露光信号の比で示される反射光の飛行時間を判定し、前記飛行時間に応じた画素フィルタを選択するように制御する前記判定信号を出力してもよい。
【0111】
これによれば、飛行時間に応じて画素フィルタを選択するので、距離に依存する露光信号量の過不足を補償することができる。
【0112】
ここで、前記画素演算部4は、前記飛行時間が短いほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択してもよい。
【0113】
これによれば、前記飛行時間が短いほど合成倍率の大きい画素フィルタを選択するので、例えば、反射率が小さい対象物による露光信号量の不足を補償することができる。
【0114】
ここで、前記少なくとも2つの画素フィルタは、前記露光信号と閾値とを比較し、前記露光信号が閾値よりも小さい場合にゼロを合成信号として出力し、前記露光信号が閾値以上である場合に当該露光信号を合成信号として出力する閾値フィルタを含んでいてもよい。
【0115】
これによれば、閾値フィルタにより閾値以下の露光信号をゼロとみなすので、ノイズを多く含む露光信号を抑制することができる。
【0116】
ここで、さらに、前記撮像部2の温度、前記露光信号に含まれるノイズ量、および、動作モードのうちの少なくとも1つに基づいて撮像環境または撮像用途を判定し、判定結果に応じて閾値を選択し、選択した閾値を閾値フィルタに設定する閾値設定部を備えてもよい。
【0117】
これによれば、撮像環境または撮像用途に応じて閾値を設定するので、近距離から遠距離まで、および、反射率の大きい対象物から反射率の小さい対象物まで幅広く適切な閾値を設定し、ノイズを多く含む露光信号を抑制することができる。
【0118】
ここで、前記TOF演算部5は、前記第1タイプのフレームに対応する前記距離画像の解像度を低下させてもよい。
【0119】
これによれば、近距離用の第1タイプのフレームの画総数が低下し解像度が劣化するが、近距離の物体には解像度の劣化はさほど問題にならないし、ダイナミックレンジおよび測距レンジを拡大することができる。
【0120】
ここで、前記駆動制御部3と、前記撮像部2と、前記判定部6と、前記画素演算部4と、前記TOF演算部5とは、同じ半導体基板上に備えられてもよい。
【0121】
これによれば、測距撮像装置10を小型化することができる。
【0122】
以上、開示する技術を例示するため、実施の形態として、図面および詳細な説明を提供した。
【0123】
したがって、図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0124】
なお、本開示における技術は、これらに限定されるものではなく、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、本開示における技術の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を施したものや、複数の実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示における技術の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本開示は、対象物までの距離を測定する測距撮像装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 光源部
2 撮像部
3 駆動制御部
4 画素演算部
5 TOF演算部
6 判定部
7 フレーム制御部
8 温度センサ部
10 測距撮像装置
41、43、45 選択部
42 閾値設定部
4A~4E、46、47 画素フィルタ