(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】内燃機関のプレイグニッションを低減する方法
(51)【国際特許分類】
F02D 41/40 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
F02D41/40
(21)【出願番号】P 2021548256
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 US2019050734
(87)【国際公開番号】W WO2020171848
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-09-09
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(73)【特許権者】
【識別番号】518139742
【氏名又は名称】キング アブドゥッラー ユニヴァーシティー オブ サイエンス アンド テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KING ABDULLAH UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】シン,エシャン
(72)【発明者】
【氏名】モルガンティ,カイ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ディブル,ロバート ダブリュ
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-186260(JP,A)
【文献】特表2016-531994(JP,A)
【文献】特開2017-020355(JP,A)
【文献】特開2008-202559(JP,A)
【文献】特開2007-224753(JP,A)
【文献】特開2002-161831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関であって、
シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を含むエンジンシリンダと、
前記エンジンシリンダ内で往復運動するピストンであって、前記ピストン、前記シリンダヘッド、および前記シリンダ側壁が燃焼チャンバを少なくとも部分的に画定する、ピストンと、
前記燃焼チャンバ内に燃料を導入するように位置付けられた1つ以上の燃料噴射装置と、
前記1つ以上の燃料噴射装置と電子通信するエンジン制御モジュールであって、前記エンジン制御モジュールが、プロセッサと、実行されたときに、前記プロセッサに、
前記内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある状態で動作しているかどうかを決定することであって、前記スーパーノック状態が発生する可能性のある状態が、3000rpm未満のエンジン速度および12バール(1.2MPa)を超える図示平均有効シリンダ圧力を含むことと、
前記機関が前記スーパーノック状態が発生する可能性のある状態で動作していると決定したことに応答して、前記1つ以上の燃料噴射装置に、前記1つ以上の燃料噴射装置が、
少なくとも300μsにわたる一次噴射パルスで前記燃焼チャンバ内に燃料を噴射することと、
前記一次噴射パルスよりも遅く発生する
、少なくとも300μsにわたる二次噴射パルスで前記燃焼チャンバ内に燃料を噴射することであって、前記二次噴射パルス
の燃料量が、前記燃焼チャンバ内に噴射される燃料の総量の20%以下
である、分割噴射モードで動作するように命令することと、
前記内燃機関が前記スーパーノック状態が発生する可能性が低い状態で動作していると決定したことに応答して、前記1つ以上の燃料噴射装置に、単一パルス噴射で前記燃焼チャンバ内に前記燃料を噴射するように命令することと、を行わせる、コンピュータ可読命令セットを記憶するメモリと、を備える、エンジン制御モジュールと、
を備える、
内燃機関。
【請求項2】
前記分割噴射モードにおいて、前記1つ以上の燃料噴射装置が、前記二次噴射パルスよりも遅く発生する三次噴射パルスで前記燃焼チャンバ内に燃料を噴射
し、
前記三次噴射パルスは、少なくとも300μsの間保持されるする、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記燃焼チャンバと選択的に流体連絡している吸気マニホルド内の空気の圧力を増加させる圧縮機をさらに備える、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記1つ以上の燃料噴射装置に前記分割噴射モードで動作するように命令することが、前記燃焼チャンバ内の空燃比を化学量論比の3%以内に維持することを含む、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記二次噴射パルスが、上死点前の120度より後のクランク角で開始する、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記1つ以上の燃料噴射装置が、少なくとも100バール(10MPa)の圧力で前記燃料を噴射する、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項7】
内燃機関を動作させる方法であって、
内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある状態で動作しているかどうかを決定することであって、前記スーパーノック状態が発生する可能性のある状態が、3000rpm未満のエンジン速度および12バール(1.2MPa)を超える図示平均有効シリンダ圧力を含むことと、
前記機関が前記スーパーノック状態が発生する可能性のある状態で動作していることを決定したことに応答して、燃料噴射装置を使用して、シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を備えるエンジンシリンダと、前記エンジンシリンダ内で往復運動するピストンとにより少なくとも一部が画定された燃焼チャンバ内に燃料を直接噴射することであって、前記燃焼チャンバ内に燃料を噴射することが、燃料が少なくとも一次噴射パルスおよび前記一次噴射パルスよりも遅く発生する二次噴射パルスで前記燃焼チャンバ内に噴射される、分割噴射モードで前記燃料を噴射することを含み、前記二次噴射パルス
の燃料量が、前記燃焼チャンバ内に噴射される燃料の総量の20%以下
であって、前記一次噴射パルスおよび前記二次噴射パルスが、各々、少なくとも300μsにわたり、
前記内燃機関が前記スーパーノック状態が発生する可能性が低い状態で動作していることを決定したことに応答して、単一パルス噴射で前記燃焼チャンバに前記燃料を噴射することと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記燃焼チャンバ内の空燃比を化学量論比の3%以内に維持することをさらに含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記分割噴射モードで前記燃料を噴射することが、前記二次噴射パルスよりも遅く発生する燃料の三次噴射パルスを噴射することをさらに含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記燃料を噴射することが、少なくとも100バール(10MPa)の圧力で前記燃料を噴射することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
内燃機関であって、
シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を含むエンジンシリンダと、
前記エンジンシリンダ内で往復運動するピストンであって、前記ピストン、前記シリンダヘッド、および前記シリンダ側壁が燃焼チャンバを少なくとも部分的に画定する、ピストンと、
前記燃焼チャンバ内に燃料を導入するように位置付けられた燃料噴射装置と、
前記燃料噴射装置と電子通信するエンジン制御モジュールであって、前記エンジン制御モジュールが、プロセッサと、実行されたときに、前記プロセッサに、
前記内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある状態で動作しているかどうかを決定することであって、前記スーパーノック状態が発生する可能性のある状態が、3000rpm未満のエンジン速度および12バール(1.2MPa)を超える図示平均有効シリンダ圧力を含むことと、
前記機関が前記スーパーノック状態が発生する可能性のある状態で動作していると決定したことに応答して、前記燃料噴射装置に、前記燃料噴射装置が、
少なくとも300μsにわたる一次噴射パルスで前記燃焼チャンバ内に燃料を噴射することと、
前記燃焼チャンバ内の空燃比を化学量論比の3%以内に維持しながら、前記一次噴射パルスよりも遅く発生する
、少なくとも300μsにわたる二次噴射パルスで前記燃焼チャンバ内に燃料を噴射する、分割噴射モードで動作するように命令することと、
前記機関が前記スーパーノック状態が発生する可能性が低い状態で動作していると決定したことに応答して、前記燃料噴射装置に、単一パルス噴射で前記燃焼チャンバ内に前記燃料を噴射するように命令することと、を行わせる、コンピュータ可読命令セットを記憶する、メモリと、を備える、エンジン制御モジュールと、
を備える、内燃機関。
【請求項12】
前記分割噴射モードにおいて、前記燃料噴射装置が、前記二次噴射パルスで前記燃焼チャンバ内に燃料を噴射し、前記燃焼チャンバ内の前記空燃比を化学量論比の1%以内に維持する、請求項
11に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年2月20日に出願された「Internal Combustion Engines Having Pre-Ignition Mitigation Controls and Methods for Their Operation」と題された米国特許出願第16/280,526号の優先権を主張し、その内容はその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、内燃機関に関するものであり、より具体的には、プレイグニッション低減制御を有する内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0003】
過給機内燃機関は、吸気行程中に燃焼チャンバに入る空気の量を増加させるために吸気マニホルドを加圧するスーパーチャージャーまたはターボチャージャーを含む。特定の動作状態では、このようなエンジンはスーパーノックを発生する傾向があり、スーパーノックは、燃焼チャンバ内の混合気が事前に点火し、これによりシリンダ圧力が高くなり、エンジン部品が損傷する可能性がある状態である。したがって、プレイグニッション緩和制御を含む内燃機関が望まれる場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示されるように、内燃機関は、混合気のプレイグニッションの状態がいつ発生する可能性が高いかを検出し、吸気行程および圧縮行程中に複数のパルスで燃焼チャンバ内に燃料を噴射する分割噴射モードで燃料噴射装置を動作させるプレイグニッション軽減制御を含むことができる。例えば、燃料の噴射は、2つ、3つ、またはそれ以上の別個のパルス(本明細書では一次、二次、および三次パルスと呼ばれることもある)で行われ得る。空燃比は、一酸化炭素、未燃炭化水素、および窒素酸化物の触媒変換などの高い触媒変換効率を維持するために、化学量論比またはその近くに維持することができる。圧縮行程の後半の燃料の噴射により、燃焼チャンバ内に存在する混合気の温度が低下する可能性があり、これにより、混合気がプレイグニッションを開始する傾向が低下する可能性がある。圧縮行程の後半の燃料の追加により、燃焼チャンバが急冷されて、本来発生していた可能性のあるプレイグニッションが減少または排除される可能性もある。燃料噴射装置を分割噴射モードで動作させることにより、混合気のプレイグニッションを防ぎ、スーパーノック状態の形成を妨げることができる。燃料噴射のタイミング、圧力、および継続時間を管理することを通じて、分割噴射モードで燃料を噴射すると、エンジン出力、ノイズ、および燃料消費への悪影響を最小限に抑えることができる。
【0005】
1つ以上の実施形態では、内燃機関は、シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を含むエンジンシリンダと、エンジンシリンダ内で往復運動するピストンであって、ピストン、シリンダヘッド、およびシリンダ側壁が燃焼チャンバを少なくとも部分的に画定する、ピストンと、燃焼チャンバ内に燃料を導入するように位置付けられた1つ以上の燃料噴射装置と、1つ以上の燃料噴射装置と電子通信するエンジン制御モジュールと、を備えてもよい。エンジン制御モジュールは、プロセッサと、プロセッサによって実行されたときに、内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある状態で動作しているかどうかを決定することと、燃料噴射装置に、燃料が少なくとも一次噴射パルスおよび一次噴射パルスよりも遅く発生する二次噴射パルスで燃焼チャンバ内に噴射される分割噴射モードで動作するように命令することと、を行うコンピュータ可読命令セットを記憶するメモリと、を備えてもよい。
【0006】
1つ以上の追加の実施形態では、内燃機関を動作させる方法は、エンジン制御モジュールを使用して、内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある場合に対応する状態で動作しているかどうかを決定することと、燃料噴射装置を使用して、シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を備えるエンジンシリンダと、エンジンシリンダ内で往復運動するピストンと、を備える燃焼チャンバ内に燃料を直接噴射することと、を含む。燃料は、燃料が少なくとも一次噴射パルスおよび一次噴射パルスよりも遅く発生する二次噴射パルスで燃焼チャンバ内に噴射される、分割噴射モードで燃焼チャンバ内に噴射されてもよい。
【0007】
1つ以上の追加の実施形態では、エンジンシリンダは、シリンダヘッドおよびシリンダ側壁と、エンジンシリンダ内で往復運動するピストンであって、ピストン、シリンダヘッド、およびシリンダ側壁が燃焼チャンバを少なくとも部分的に画定する、ピストンと、燃焼チャンバ内に燃料を導入するように位置付けられた燃料噴射装置と、燃料噴射装置と電子通信するエンジン制御モジュールと、を備えてもよい。エンジン制御モジュールは、プロセッサと、プロセッサによって実行されたときに、内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある状態で動作しているかどうかを決定することと、燃料噴射装置に、燃料が少なくとも一次噴射パルスおよび一次噴射パルスよりも遅く発生する二次噴射パルスで燃焼チャンバ内に噴射される分割噴射モードで動作するように命令することであって、エンジン制御モジュールが、燃焼チャンバ内の空燃比を理論空燃比の3%以内、好ましくは化学量論比の1%以内に維持する、命令することと、を行うコンピュータ可読命令セットを記憶する、メモリと、を備える。
【0008】
本開示において開示された技術のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、部分的に、説明から当業者に容易に明らかになるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む、本開示に記載される技術を実践することによって認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示されている以下の図面と併せて読むと、最もよく理解することができる。
【0010】
【
図1】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、内燃機関のエンジンシリンダの一部分の断面図を概略的に描く。
【
図2】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、一次噴射パルスを有する燃料供給スケジュールを概略的に描く。
【
図3】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、一次噴射パルスおよび二次噴射パルスを有する燃料供給スケジュールを概略的に描く。
【
図4】本明細書に記載する1つ以上の実施形態による、一次噴射パルス、二次噴射パルス、および三次噴射パルスを有する燃料供給スケジュールを概略的に描く。
【0011】
ここで、様々な実施形態をより詳細に参照し、そのいくつかの実施形態が添付の図面に示される。可能な限り、図面全体を通して同じ参照番号を使用して、同じまたは類似の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に記載するのは、スーパーノック軽減制御を有する内燃機関およびその動作のための方法である。エンジンは、エンジンがスーパーノック状態が形成される可能性のあるエンジン状態で動作しているかどうかを決定し得るエンジン制御モジュールを含み得、そのようなエンジン動作状態の検出時に、エンジン制御モジュールは、燃料が複数の個別のパルス(例えば、2つ、3つ、またはそれ以上の個別のパルス)で燃焼チャンバに噴射される分割噴射モードで、燃料噴射装置を動作させる燃料スケジュールを選択する。後半のパルスは、従来の単一パルス噴射と比較して、エンジンタイミングが遅くなる可能性がある。圧縮行程の後半で燃料の一部分を燃焼チャンバ内に噴射すると、スーパーノック状態の形成が中断される可能性がある。
【0013】
本明細書に記載するように、火花点火式内燃機関のスーパーノックは、燃焼がプレイグニッションによって開始される燃焼チャンバ内での混合気の不規則な燃焼の発生を指す。「プレイグニッション」は、スパークタイミングの前に火花以外の「ホットスポット」によってトリガーされた混合気の燃焼を表す。ただし、プレイグニッションのタイミングおよび燃焼チャンバ内のプレイグニッションの位置に応じて、プレイグニッションは、ノッキング以外の燃焼を含む、様々な燃焼現象を引き起こす可能性がある。スーパーノックにつながる可能性のあるプレイグニッションは、低速および高負荷のエンジン動作状態で発生することがよくある。
【0014】
スーパーノック状態は、エンジンをサイクルごとに評価するときに散発的に発生するように見えるため、スーパーノック状態が発生するかどうかの正確な予測は、エンジンの動作状態のみと直接相関しない場合がある。したがって、一部のサイクルでは、プレイグニッションおよびスーパーノック状態の形成に対応するエンジン動作条件でスーパーノックが発生しない場合がある。しかしながら、本明細書に記載するように、内燃機関は、スーパーノック状態が形成されることが知られているエンジン動作状態でスーパーノック状態を制御するように選択され得る。プレイグニッションとその結果生じるスーパーノック状態は、そのようなエンジン動作状態で形成される可能性が高くなる。
【0015】
スーパーノックは、従来のエンジンノックとは異なり、火炎伝播が燃焼チャンバ内のエンドガスを消費する前に、混合気のエンドガスが自動点火することに起因する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「図示平均有効圧力」(IMEP)は、完全なエンジンサイクルにわたって平均されたエンジンシリンダ内の測定された圧力を指す。IMEPは、エンジンの正の仕事の測定値である。エンジンシリンダ内の圧力は、シリンダ内圧力検知機器を使用して測定することができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「変動係数」(CoV)は、内燃機関のサイクルごとの変動性の測定値である。CoVは、サンプリングされたサイクルの数にわたって測定されたIMEPの標準偏差を、サンプリングされたサイクルの数にわたるIMEPの平均で割ることによって計算することができる。
【0018】
次に
図1を参照すると、内燃機関100の一部分の概略図が描かれている。具体的には、
図1は、内燃機関100の単一のエンジンシリンダ110を描いている。しかしながら、当業者によって理解されるように、内燃機関100は、エンジンシリンダ110などの多数のエンジンシリンダを備えてもよく、これらは、
図1に描かれているクランクシャフト180などの1つ以上のクランクシャフトの長さに沿って様々な構成で配置されていてもよい。
【0019】
内燃機関100は、少なくとも機関シリンダ110、吸気ポート171、排気ポート173、およびピストン120を含むことができる。吸気ポート171は、吸気マニホルド140でエンジンシリンダ110に接続する吸気ポート171を選択的に開閉するように位置付けられた吸気弁172によって調整される。同様に、排気ポート173は、排気マニホルド150でエンジンシリンダ110に接続する排気ポート173を選択的に開閉するように位置付けられた排気弁174によって調整される。
【0020】
機関シリンダ110によって上部および側部に画定され、ピストン120によって下部に画定された容積は、燃焼チャンバ122と呼ばれる。吸気ポート171および排気ポート173は、空気、混合気、および/または燃焼生成物が、エンジンサイクル中の様々な時点で燃焼チャンバ122に出入りすることを可能にする。スパークプラグ118は、燃焼チャンバ122に位置付けられた電極を含み、タイミング調整される電気バーストで燃焼開始を提供する。いくつかの実施形態では、スパークプラグ118は、燃焼チャンバ122の中心またはその近くに(例えば、円筒形のエンジンシリンダ110の壁に対して半径方向の中心またはその近くに)位置付けることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、吸気弁172および/または排気弁174は、吸気弁172および/または排気弁174を選択的に開閉する役割を果たし得る1つ以上のカムまたはカムシャフト(
図1には描かれていない)に接続されており、それによって、エンジン動作に合わせてそれぞれの吸気ポート171および排気ポート173の選択的な開閉が維持される。ピストン120は、接続ロッド182を接続することによってクランクシャフト180に連結することができる。機関シリンダ110は、シリンダヘッド114およびシリンダ側壁112を含むことができる。吸気ポート171および排気ポート173は、シリンダヘッド114上に配置することができる。さらに、燃料噴射装置116およびスパークプラグ118は、シリンダヘッド114に位置付けられ、燃料噴射装置116およびスパークプラグ118が燃焼チャンバ122内に存在する空気および/または混合気に作用することができるように、燃焼チャンバ122内に延びていてもよい。スパークプラグ118は、点火システム119に電子的に結合することができ、点火システム119は、スパークプラグ118を介して充電し、次に放電する。
【0022】
内燃機関100は、圧縮および膨張行程中に燃焼チャンバ122内に存在する混合気の繰り返し燃焼によって動作することができる。混合気の燃焼により、燃焼チャンバ122が加圧され、これにより、ピストン120がシリンダヘッド114から離れるように並進する。ピストン120の並進は、クランクシャフト180を回転させる。ピストン120がシリンダヘッド114から離れる方向に並進するとき、混合気の燃焼による燃焼チャンバ122内の圧力上昇は、クランクシャフト180の回転に向けられる。クランクシャフト180は、上死点位置(シリンダヘッド114に対するピストン120の最も近い位置に対応する)および下死点位置(シリンダヘッド114に対するピストン120の最も遠い位置に対応する)を通じて回転してもよい。1つ以上の実施形態では、内燃機関100は、4行程エンジンとして動作してもよいが、他のエンジン構成も企図されている。そのような実施形態では、吸気、圧縮、出力、および排気の行程は、規則的かつ連続的な方法で循環する。吸気行程では、ピストンは、下方に移動し、空気および/または燃料は、吸気ポート171を通って燃焼チャンバ122に入ることができる。圧縮行程では、ピストン120がシリンダヘッド114に向かって移動することで、空気および/または燃料が圧縮される。燃料はまた、吸気および/または圧縮行程中に燃焼チャンバ122内に噴射される。出力行程では、ピストンは、燃焼された混合気によってシリンダヘッド114から押しのけられ、この混合気は、混合気の燃焼に起因して高温および高圧になっている。排気行程では、ピストン120はシリンダヘッド114に向かって移動し、排気ガス(燃焼反応の生成物)を排気ポート173を通して燃焼チャンバ122から押し出す。
【0023】
内燃機関100はまた、吸気マニホルド140に近接して位置付けられた圧縮機90も含み得る。圧縮機90は、吸気マニホルド140内にある空気の圧力を増加させるので、吸気行程中に、より大きな質量の空気を燃焼チャンバ122に向けることができる。圧縮機90は、排気マニホルド150内に位置付けられたタービン(図示せず)に結合することができる。タービンは、燃焼生成物からエネルギーを抽出し、そのエネルギーを使用して、吸気マニホルド140に向けられた空気を加圧する。このような圧縮機90およびタービンシステムは、「ターボチャージャー」と呼ばれる。他の実施形態では、圧縮機90は、内燃機関100の回転ハードウェア、例えば、クランクシャフト180に結合することができる。このような回転結合圧縮機90は、「スーパーチャージャー」と呼ばれる。
【0024】
内燃機関100はまた、エンジン制御モジュール80も含み得る。エンジン制御モジュール80は、コンピュータ可読命令セットを記憶するプロセッサ82およびメモリ84を含み得る。エンジン制御モジュール80は、燃料噴射装置116、スパークプラグ118と電子通信している点火システム119、様々なエンジンセンサ、例えば、スロットル位置センサ(図示せず)、吸気マニホルド圧力および温度センサ(図示せず)、ならびにクランクシャフト180の回転範囲全体の角度方向を検出するクランク角センサ181を含む、内燃機関100の様々な構成要素と電子通信している。エンジン制御モジュール80は、様々なエンジンセンサを評価して、エンジンの動作状態およびオペレータからの出力需要を決定することができる。エンジン制御モジュール80は、燃料噴射装置116を制御することによって燃焼チャンバ122に供給される燃料のタイミングおよび量を変更することができ、また、スパークプラグ118の排出のタイミングを変更することができる。エンジン制御モジュール80は、燃料供給スケジュールおよびスパークタイミングスケジュールを使用してプログラムされ、これにより、内燃機関100は、出力供給、燃料消費、および排出目標を満たす事前定義された特性に従って動作することができる。
【0025】
図1に描かれるように、内燃機関100は、燃焼チャンバ122内への燃料の直接噴射で動作することができる。燃料噴射装置116は、燃料を燃焼チャンバ122に直接噴射するように位置付けられているので、燃料噴射装置116は、内燃機関100の吸気および/または圧縮行程中に燃料を燃焼チャンバ122内に噴射することができる。燃焼チャンバ122に向けられた燃料は、燃焼チャンバ122内の空気と混合され、混合気は加熱され、圧縮行程中の燃焼のために準備される。一般に、吸気行程中に燃焼チャンバ122に燃料を早期に導入すると、十分に混合された均質な混合気が得られる。混合が不十分な混合気は、燃焼効率の低さを示す可能性があり、特定の物質の排出量、炭化水素の排出量、一酸化炭素の排出量、またはこれらの組み合わせのレベルが高くなる可能性がある。
【0026】
しかしながら、吸気行程における燃焼チャンバ122への燃料の導入は、混合気がシリンダ側壁112、シリンダヘッド114、およびピストン120によって加熱されることを可能にし得る。より高温の混合気は、より低温の混合気よりも混合気を点火しやすい。混合気を加熱すると、冷却された混合気と比較して、点火時から混合気が完全に燃焼するのにかかる時間が短縮される可能性がある。しかしながら、スーパーノック状態が発生する可能性が高いエンジン状態では、混合気の加熱は、混合気のプレイグニッションの可能性を高める可能性がある。本明細書で上述したように、混合気のプレイグニッションは、燃焼チャンバ内122内のスーパーノック状態の発生と相関している。
【0027】
追加の実施形態では、ポート燃料噴射は、直接噴射とともに利用され得る。例えば、一次噴射はポート燃料噴射を利用し、後の噴射(例えば、二次および三次噴射)は直接噴射を利用することができる。したがって、1つ以上の実施形態では、複数の噴射装置(直接およびポート)を同じエンジンで利用することができる。
【0028】
1つ以上の実施形態では、本開示は、燃焼チャンバ内への燃料の直接噴射を有する内燃機関100、およびそのような内燃機関100を動作させる方法に関する。内燃機関100は、他のエンジン要素の中でもとりわけ、燃料噴射装置116の動作を制御するエンジン制御モジュール80と、スパークプラグ118の排出を制御する点火システム119と、を含むことができる。エンジン制御モジュール80は、エンジン制御モジュール80が吸気および圧縮行程中に複数の離散的なパルスで燃焼チャンバ122内に燃料を噴射するように燃料噴射装置116に命令する、分割噴射モードで内燃機関100を選択的に動作させる。
【0029】
ここで
図2を参照すると、直接噴射燃料供給スケジュールの一例が描かれている。描かれた実施形態では、燃料は、吸気行程中に単一パルスで燃料噴射装置116によって燃焼チャンバ122内に供給される。パルスは、スパークプラグが排出されるときに燃焼チャンバ内に噴射される燃料が十分に混合されるようにタイミング調整される。よく混合された混合気は、燃焼チャンバ全体に安定した高速の火炎伝播を促進する。
【0030】
図2に描かれる燃料供給スケジュールは、スーパーノックが発生する可能性が低いエンジン動作状態に適切である可能性がある。そのような状態では、エンジン制御モジュールは、単一パルス噴射で燃料を噴射することができる。スーパーノックが発生する可能性が低いそのようなエンジン状態は、一般に、高速および/または低負荷エンジン状態を含む。そのような燃料供給スケジュールは、スーパーノック状態が発生する可能性がある、または発生する可能性が高いことさえある低速および/または高負荷エンジン状態での混合気のプレイグニッションをもたらす可能性がある。
【0031】
燃料の単一パルスの燃焼チャンバへの噴射タイミングを遅らせると、プレイグニッション成分の発生率が低下する可能性がある。ただし、IMEPの低下が示すように、燃料噴射のタイミングを遅らせると、エンジン出力が低下する可能性がある。燃料噴射のタイミングを遅らせると、また、サイクル全体のCoVが増加し、内燃機関の騒音、振動、およびハーシュネス特性が損なわれる可能性もあり、また炭化水素および一酸化炭素の排出量が増加する可能性もある。
【0032】
本開示による実施形態は、内燃機関の動作状態に基づいて選択される複数の燃料供給スケジュールを含むエンジン制御モジュールを含み得る。例えば、内燃機関が低速高出力状態で動作する場合、圧縮行程中にプレイグニッション生成物を形成する可能性が高くなり、スーパーノック状態が発生する可能性があり、または発生する可能性が高いことさえある。そのような状態で、エンジン制御モジュールは、複数の個別のパルスで燃焼チャンバに内に燃料が噴射される分割噴射モードに対応する燃料供給スケジュールの動作を選択することができる。そのような燃料供給スケジュールの例が
図3に示されている。燃料供給スケジュールは、吸気および/または圧縮行程と一致するようにタイミング調整される一次噴射パルス、および一次噴射パルスよりも遅く発生するようにタイミング調整される二次噴射パルスで、燃料を噴射するように指示することができる。いくつかの実施形態では、二次噴射パルスは、吸気行程で開始される。いくつかの実施形態では、二次噴射パルスは、圧縮行程で開始される。
【0033】
ここで
図4を参照すると、別の実施形態では、燃料供給スケジュールは、吸気および/または圧縮行程と一致するようにタイミング調整される一次噴射パルス、一次注入パルスよりも後で発生するようにタイミング調整される二次噴射パルス、二次噴射パルスよりも遅く発生するようにタイミングが調整される三次噴射パルスで、燃料を噴射するように指示することができる。いくつかの実施形態では、二次噴射パルスは吸気行程で開始され、三次噴射パルスは圧縮行程で開始される。いくつかの実施形態では、二次噴射パルスおよび三次噴射パルスは、圧縮行程で開始される。
【0034】
いくつかの実施形態では、一次噴射パルスと二次噴射パルスの間、および一次、二次、および三次噴射パルスの間で供給される燃料の量を選択して、燃焼チャンバ内で所望の燃焼を提供することができる。一実施形態では、燃焼チャンバ内に噴射される燃料は、一次噴射パルスと二次噴射パルスとの間、または一次、二次、および三次噴射パルスの間で均等に分割される。いくつかの実施形態では、燃焼チャンバ内に噴射される燃料は不均一に分割される。そのような実施形態では、燃焼チャンバ内に噴射される燃料は、二次噴射パルスよりも一次噴射パルスでより大きな割合で、または三次噴射パルスよりも一次噴射パルスでより大きな割合で供給される(3つの噴射パルスが利用される場合)、または二次噴射パルスと三次噴射パルスとの組み合わせよりも一次噴射パルスの方が大きな割合で供給される。
【0035】
一実施形態では、二次または三次噴射パルスで噴射される燃料は、燃焼チャンバに噴射される全燃料の50%以下、例えば、40%以下、例えば、33%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば10%以下である。一実施形態では、二次噴射パルスで噴射される燃料は、燃焼チャンバに噴射される全燃料の50%以下、例えば、40%以下、例えば、33%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下である(2、3、またはそれ以上の噴射パルスが利用される実施形態において)。
【0036】
様々な燃料供給スケジュールは、例えば、化学量論比の約5%以内、例えば、化学量論比の約3%以内、例えば、化学量論比の約2%以内、例えば、化学量論比の約1%以内の、化学量論比に近い混合気を燃焼チャンバに提供するように較正されてもよい。化学量論比に近い混合気で内燃機関を動作させることで、燃焼効率を維持することができ、NOx、一酸化炭素、および/または未燃炭化水素(燃料残渣)の排出を低減するために、排気ポート150の下流に配置された三元触媒コンバータを使用できるようになる。
【0037】
二次噴射パルスおよび/または三次噴射パルスで一次噴射パルスよりも遅く噴射される燃料は、燃焼チャンバ内に存在する混合気を冷却する可能性がある。いくつかの実施形態では、二次噴射パルスおよび/または三次噴射パルスで噴射される燃料は、燃焼チャンバ内の熱を使用して燃料を気化させることによって、混合気を冷却することができる。いくつかの実施形態では、二次噴射パルスおよび/または三次噴射パルスで混合気を冷却することで、事前に点火された混合気を消火することができる。いくつかの実施形態では、二次噴射パルスおよび/または三次噴射パルスで混合気を冷却しても、事前に点火された混合気を消火することはできないが、残りの未燃混合気を十分に冷却して、未燃混合気が内燃機関でスーパーノック状態を形成するのを防ぐことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、第2の(または三次)噴射パルスは、上死点の前の120度よりも後、例えば上死点の前の90度よりも遅く、例えば上死点の前の60度よりも後、例えば上死点の前の30度よりも後で、燃料の噴射を開始してもよい。圧縮行程の後半に燃料を導入することで、混合気が冷却され、混合気に発生していたプレイグニッションが消滅し、これによりスーパーノック状態の発生を抑制することができる。
【0039】
燃料は、燃料噴射装置によって高圧で燃焼チャンバ内に噴射されて、燃焼チャンバに存在する空気中の燃料の噴霧化を促進することができる。燃料の噴霧化は、内燃機関の燃焼効率を高め、混合気が燃焼するときに特定の物質の排出、ならびにNOxおよび一酸化炭素の形成を減少させ、エンジンを出る未反応の炭化水素の量を減少させることがある。いくつかの実施形態では、高圧で燃料を噴射することにより、空気と燃料の混合気が燃焼される時に、空気と燃料の混合気を良好に混合することができるように、燃焼チャンバ内の比較的遠い距離に燃料を噴射することができる場合がある。いくつかの実施形態では、燃料は、少なくとも約100バール、例えば、少なくとも約120バール、例えば、少なくとも約140バール、例えば、少なくとも約160バール、例えば、少なくとも約180バール、例えば、少なくとも約200バールの圧力で噴射されてもよい。いくつかの実施形態では、燃料は、さらに高い圧力、例えば、少なくとも約500バール、例えば、少なくとも約750バール、例えば、少なくとも約1000バールで噴射されてもよい。高圧で燃料を噴射すると、燃焼チャンバ内の燃料の噴霧化が改善される場合がある。ただし、高圧で燃料を噴射すると、燃料が燃焼チャンバ内を移動する距離が短くなる可能性がある。したがって、燃料は、シリンダヘッドに近接して位置付けられているピストンに対応するタイミングで高圧で噴射されてもよい。燃焼チャンバ内での燃料の良好な噴霧化および混合は、エンジンの動力供給の改善(IMEPで測定される)、CoVの改善、排出量の改善、またはこれらの組み合わせとして示される場合がある。
【0040】
いくつかの実施形態では、燃料噴射装置は、長時間パルスを発するように制御することができる。いくつかの実施形態では、一次、二次、および/または三次噴射パルスは、少なくとも約300μs、例えば、少なくとも約400μs、例えば、少なくとも約500μs、例えば、少なくとも約600μs、例えば、少なくとも約700μsの間保持されてもよい。一次、二次、および/または三次噴射パルスを長時間開いたままにすると、燃焼チャンバ内で燃料と空気をよりよく混合できるようになり、これは、エンジンの改善された出力供給(IMEPによって測定される)、改善されたCoV、またはその両方として示されることがある。
【0041】
様々な実施形態では、本開示による内燃機関は、低速および高負荷状態において分割噴射モードを命令する燃料供給スケジュールで動作した場合に、単一パルス噴射モードで運転された同等のエンジンの出力供給および燃料消費率と同様の、エンジンの動力供給(IMEPによって測定される)および燃料消費率を引き続き示す。現在説明されているように、低速は、例えば、3000rpmまたは2000rpm未満のエンジン速度に対応し得る。高負荷状態は、12バールを超える、15バールを超える、またはさらには17バールを超える圧力に対応し得、17バールを超える負荷ではプレイグニッションの可能性が高くなる。しかしながら、当業者によって理解されるように、現在記載されている分割噴射技術は、他のエンジン状態でプレイグニッションを起こしやすいエンジンで利用することができる。分割噴射モードで動作するときに同等の出力供給および燃料消費率を提供することにより、内燃機関は、混合気のプレイグニッションを最小限に抑え、燃焼チャンバ内で形成されるスーパーノック状態に寄与する状態の形成を最小限に抑えながら、目標の性能を提供することができる。さらに、分割噴射モードで内燃機関を動作させた場合の燃料消費量は、単一パルス噴射モードで動作させた場合と同じであるため、エンジン制御モジュールは、混合気のプレイグニッションおよびスーパーノック状態の形成の可能性が高いエンジン状態において、分割噴射モードを有する燃料供給スケジュールを選択し、出力供給または燃料消費に悪影響を及ぼすことなく、その燃料供給スケジュールに従って内燃機関を動作させることができる。
【0042】
本開示による内燃機関は、シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を有するエンジンシリンダと、エンジンシリンダ内で往復運動するピストンとを含み得ることが理解されるべきである。ピストン、シリンダヘッド、およびシリンダ側壁は、燃焼チャンバを少なくとも部分的に画定することができる。内燃機関はまた、燃焼チャンバに燃料を直接噴射するように位置付けられた燃料噴射装置も含み得る。内燃機関は、燃料噴射装置と電子通信しているエンジン制御モジュールをさらに含み得る。エンジン制御モジュールは、内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性の増加に対応する状態で動作しているかどうかを決定し、燃料噴射装置に、少なくとも一次噴射パルス、および一次噴射パルスよりも遅く発生する二次噴射パルスとで燃料を燃焼チャンバに噴射する分割噴射モードで動作するように命令する。
【0043】
本開示の様々な態様は、以下の番号を付した態様で説明することができる。
【0044】
第1の態様A1は、内燃機関であって、シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を含むエンジンシリンダと、エンジンシリンダ内で往復運動するピストンであって、ピストン、シリンダヘッド、および前記シリンダ側壁が燃焼チャンバを少なくとも部分的に画定する、ピストンと、燃焼チャンバ内に燃料を導入するように位置付けられた1つ以上の燃料噴射装置と、1つ以上の燃料噴射装置と電子通信するエンジン制御モジュールであって、エンジン制御モジュールが、プロセッサと、プロセッサによって実行されたときに、内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある状態で動作しているかどうかを決定することと、燃料噴射装置に、燃料が少なくとも一次噴射パルスおよび一次噴射パルスよりも遅く発生する二次噴射パルスで燃焼チャンバ内に噴射される分割噴射モードで動作するように命令することと、を行うコンピュータ可読命令セットを記憶するメモリと、を備える、エンジン制御モジュールと、を備える、内燃機関を含む。
【0045】
第2の態様A2は、態様A1の内燃機関を含み、分割噴射モードは、二次噴射パルスよりも遅く発生する三次噴射パルスをさらに含む。
【0046】
第3の態様A3は、態様A1またはA2のいずれかに記載の内燃機関を含み、二次噴射パルスは、燃焼チャンバ内に燃料の20%以下を噴射する。
【0047】
第4の態様A4は、態様A1~A3のいずれか1つに記載の内燃機関を含み、一次噴射パルスにおいて、二次噴射パルスよりも大量の燃料が噴射される。
【0048】
第5の態様A5は、態様A4の内燃機関を含み、二次噴射パルスは、燃焼チャンバ内に燃料の20%以下を噴射する。
【0049】
第6の態様A6は、態様A1~A5のいずれか1つに記載の内燃機関を含み、燃焼チャンバと選択的に流体連絡している吸気マニホルドを加圧するように位置付けられた圧縮機をさらに備える。
【0050】
第7の態様A7は、態様A1~A6のいずれか1つに記載の内燃機関を含み、エンジン制御モジュールは、燃焼チャンバ内の空燃比を化学量論比の3%以内に維持する。
【0051】
第8の態様A8は、態様A1~A7のいずれか1つに記載の内燃機関を含み、二次噴射パルスは、上死点の前の120度より後のクランク角で燃焼チャンバ内に燃料を噴射する。
【0052】
第9の態様A9は、態様A1~A8のいずれか1つに記載の内燃機関を含み、エンジン制御モジュールは、内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性が低い状態で動作しているかどうかをさらに決定し、単一パルス噴射で燃焼チャンバ内に燃料を噴射する。
【0053】
第10の態様A10は、内燃機関を動作させる方法であって、エンジン制御モジュールを使用して、内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある場合に対応する状態で動作しているかどうかを決定することと、燃料噴射装置を使用して、シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を備えるエンジンシリンダと、エンジンシリンダ内で往復運動するピストンと、を備える燃焼チャンバ内に燃料を直接噴射することと、を含み、燃料が、燃料が少なくとも一次噴射パルスおよび一次噴射パルスよりも遅く発生する二次噴射パルスで燃焼チャンバ内に噴射される、分割噴射モードで前記燃焼チャンバ内に噴射される、方法を含む。
【0054】
第11の態様A11は、態様A10に記載の方法を含み、エンジン制御モジュールが燃焼チャンバ内の空燃比を化学量論比の3%以内に維持する。
【0055】
第12の態様A12は、態様A10またはA11のいずれかに記載の方法を含み、エンジン制御モジュールを使用して、内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性が低い状態で動作しているかどうかを決定し、単一パルス噴射で燃焼チャンバ内に燃料を注入することをさらに含む。
【0056】
第13の態様A13は、態様A10~A12のいずれか1つに記載の方法を含み、二次噴射パルスが燃焼チャンバ内に燃料の20%以下を噴射する。
【0057】
第14の態様A14は、態様A10~A13のいずれか1つに記載の方法を含み、分割噴射モードでの燃料の噴射が、二次噴射パルスよりも遅く発生する三次噴射パルスをさらに含み、二次噴射パルスが、燃焼チャンバ内の燃料の20%以下を噴射する。
【0058】
第15の態様A15は、内燃機関であって、シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を含むエンジンシリンダと、エンジンシリンダ内で往復運動するピストンであって、ピストン、シリンダヘッド、および前記シリンダ側壁が燃焼チャンバを少なくとも部分的に画定する、ピストンと、燃焼チャンバ内に燃料を導入するように位置付けられた燃料噴射装置と、燃料噴射装置と電子通信するエンジン制御モジュールであって、エンジン制御モジュールが、プロセッサと、プロセッサによって実行されたときに、内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある状態で動作しているかどうかを決定することと、燃料噴射装置に、燃料が少なくとも一次噴射パルスおよび一次噴射パルスよりも遅く発生する二次噴射パルスで燃焼チャンバ内に噴射される分割噴射モードで動作するように命令することであって、エンジン制御モジュールが、燃焼チャンバ内の空燃比を化学量論比の3%以内に維持する、命令することと、を行うコンピュータ可読命令セットを記憶する、メモリと、を備える、エンジン制御モジュールと、を備える、内燃機関を含む。
【0059】
当業者には、特許請求される主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に対してさまざまな修正および変更がなされ得ることが明らかであろう。したがって、本明細書は、本明細書に記載される様々な実施形態の修正および変更を包含することが意図されるが、そのような修正および変更が、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に入ることを条件とする。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
内燃機関であって、
シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を含むエンジンシリンダと、
前記エンジンシリンダ内で往復運動するピストンであって、前記ピストン、前記シリンダヘッド、および前記シリンダ側壁が燃焼チャンバを少なくとも部分的に画定する、ピストンと、
前記燃焼チャンバ内に燃料を導入するように位置付けられた1つ以上の燃料噴射装置と、
前記1つ以上の燃料噴射装置と電子通信するエンジン制御モジュールであって、前記エンジン制御モジュールが、プロセッサと、前記プロセッサによって実行されたときに、
前記内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある状態で動作しているかどうかを決定することと、
前記燃料噴射装置に、燃料が少なくとも一次噴射パルスおよび前記一次噴射パルスよりも遅く発生する二次噴射パルスで燃焼チャンバ内に噴射される分割噴射モードで動作するように命令することと、を行うコンピュータ可読命令セットを記憶するメモリと、を備える、エンジン制御モジュールと、
を備える、内燃機関。
実施形態2
前記分割噴射モードが、前記二次噴射パルスよりも遅く発生する三次噴射パルスをさらに含む、実施形態1に記載の内燃機関。
実施形態3
前記二次噴射パルスが、燃焼チャンバ内に前記燃料の20%以下を噴射する、実施形態1または2のいずれかに記載の内燃機関。
実施形態4
前記一次噴射パルスにおいて、前記二次噴射パルスよりも大量の燃料が噴射される、実施形態1~3のいずれか一つに記載の内燃機関。
実施形態5
前記二次噴射パルスが、燃焼チャンバ内に燃料の20%以下を噴射する、実施形態4に記載の内燃機関。
実施形態6
前記燃焼チャンバと選択的に流体連絡している吸気マニホルドを加圧するように位置付けられた圧縮機をさらに備える、実施形態1~5のいずれか一つに記載の内燃機関。
実施形態7
前記エンジン制御モジュールが、前記燃焼チャンバ内の空燃比を化学量論比の3%以内に維持する、実施形態1~6のいずれか一つに記載の内燃機関。
実施形態8
前記二次噴射パルスが、上死点の前の120度より後のクランク角で前記燃焼チャンバ内に燃料を噴射する、実施形態1~7のいずれか一つに記載の内燃機関。
実施形態9
前記エンジン制御モジュールが、
前記内燃機関が前記スーパーノック状態が発生する可能性が低い状態で動作しているかどうかを決定することと、
単一パルス噴射で前記燃焼チャンバ内に前記燃料を噴射することと、
をさらに行う、実施形態1~8のいずれか一つに記載の内燃機関。
実施形態10
内燃機関を動作させる方法であって、
エンジン制御モジュールを使用して、内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある場合に対応する状態で動作しているかどうかを決定することと、
燃料噴射装置を使用して、シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を備えるエンジンシリンダと、前記エンジンシリンダ内で往復運動するピストンと、を備える燃焼チャンバ内に燃料を直接噴射することと、
を含み、
前記燃料が、前記燃料が少なくとも一次噴射パルスおよび前記一次噴射パルスよりも遅く発生する二次噴射パルスで前記燃焼チャンバ内に噴射される、分割噴射モードで前記燃焼チャンバ内に噴射される、方法。
実施形態11
前記エンジン制御モジュールが、前記燃焼チャンバ内の空燃比を化学量論比の3%以内に維持する、実施形態10に記載の方法。
実施形態12
前記エンジン制御モジュールを使用して、前記内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性が低い状態で動作しているかどうかを決定することと、単一パルス噴射で前記燃焼チャンバ内に前記燃料を噴射することと、をさらに含む、実施形態10または11のいずれかに記載の方法。
実施形態13
前記二次噴射パルスが燃焼チャンバ内に前記燃料の20%以下を噴射する、実施形態10~12のいずれか一つに記載の方法。
実施形態14
前記分割噴射モードでの前記燃料の前記噴射が、前記二次噴射パルスよりも遅く発生する三次噴射パルスをさらに含み、前記二次噴射パルスが、燃焼チャンバ内の燃料の20%以下を噴射する、実施形態10~13のいずれか一つに記載の方法。
実施形態15
内燃機関であって、
シリンダヘッドおよびシリンダ側壁を含むエンジンシリンダと、
前記エンジンシリンダ内で往復運動するピストンであって、前記ピストン、前記シリンダヘッド、および前記シリンダ側壁が燃焼チャンバを少なくとも部分的に画定する、ピストンと、
前記燃焼チャンバ内に燃料を導入するように位置付けられた燃料噴射装置と、
前記燃料噴射装置と電子通信するエンジン制御モジュールであって、前記エンジン制御モジュールが、プロセッサと、実行されたときに前記プロセッサに、
前記内燃機関がスーパーノック状態が発生する可能性のある状態で動作しているかどうかを決定することと、
前記燃料噴射装置に、燃料が少なくとも一次噴射パルスおよび前記一次噴射パルスよりも遅く発生する二次噴射パルスで燃焼チャンバ内に噴射される分割噴射モードで動作するように命令することであって、前記エンジン制御モジュールが、前記燃焼チャンバ内の空燃比を化学量論比の3%以内に維持する、命令することと、を行うコンピュータ可読命令セットを記憶する、メモリと、を備える、エンジン制御モジュールと、
を備える、内燃機関。