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特許7411677離型剤を中空ワークピースに導入するための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】離型剤を中空ワークピースに導入するための装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20231228BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20231228BHJP
   B23K 26/14 20140101ALI20231228BHJP
【FI】
B23K26/38 B
B23K26/70
B23K26/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021556681
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2020056677
(87)【国際公開番号】W WO2020187693
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】102019106847.9
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン エス・エー プルス コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Werkzeugmaschinen SE + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Str. 2, 71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ヤーシュ
(72)【発明者】
【氏名】カーステン リュッツ
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011015493(DE,A1)
【文献】特開2010-110775(JP,A)
【文献】米国特許第05073694(US,A)
【文献】特開2007-075878(JP,A)
【文献】特開平08-090351(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0232120(US,A1)
【文献】西独国実用新案公開第07531621(DE,U)
【文献】米国特許第02520397(US,A)
【文献】特開平06-071472(JP,A)
【文献】国際公開第2009/059776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B05B 12/00 - 12/14、
13/00 - 13/06
B05B 1/00 - 3/18、
7/00 - 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空ワークピース(24)を保管し、レーザ処理機械(12)に前記中空ワークピース(24)を投入するために前記中空ワークピース(24)を供給デバイス(22)に供給する把持デバイス(84)を備える投入ステーション(26)であって、
機械フレーム(89)と、軸方向に移動可能なスライドゲージ(78)と、前記中空ワークピース(24)が前記レーザ処理機械(12)によって処理される前に離型剤(58)を前記中空ワークピース(24)に導入するための装置(48)とを備え、
前記装置(48)は、導入セクション(49)を備え、前記導入セクション(49)は、離型剤(58)を分配するためのノズル(52)と、前記導入セクション(49)に配置され、前記中空ワークピース(24)内で前記導入セクション(49)を中心に置くように機能するセンタリング要素(62)とを備え、
前記導入セクション(49)が、その自由端に前記ノズル(52)が配置されたガイドロッド(50)を備え、前記センタリング要素(62)が前記ガイドロッド(50)に配置されており、
前記ノズル(52)とは反対側の前記ガイドロッド(50)の端部がエネルギーチェーン(54)に隣接し、
前記エネルギーチェーン(54)を巻き上げるためのチェーンドラム(86)を備え、
前記導入セクション(49)を前記中空ワークピース(24)に導入するための駆動手段(98)を備えた導入デバイス(82)を備え、
前記チェーンドラム(86)は位置的に固定された方法で前記機械フレーム(89)に配置され、前記導入デバイス(82)は前記スライドゲージ(78)に配置される、投入ステーション(26)。
【請求項2】
中空ワークピース(24)を保管し、レーザ処理機械(12)に前記中空ワークピース(24)を投入するために前記中空ワークピース(24)を供給デバイス(22)に供給する把持デバイス(84)を備える投入ステーション(26)であって、
軸方向に移動可能なスライドゲージ(78)と、前記中空ワークピース(24)が前記レーザ処理機械(12)によって処理される前に離型剤(58)を前記中空ワークピース(24)に導入するための装置(48)とを備え、
前記装置(48)は、導入セクション(49)を備え、前記導入セクション(49)は、離型剤(58)を分配するためのノズル(52)と、前記導入セクション(49)に配置され、前記中空ワークピース(24)内で前記導入セクション(49)を中心に置くように機能するセンタリング要素(62)とを備え、
前記導入セクション(49)が、その自由端に前記ノズル(52)が配置されたガイドロッド(50)を備え、前記センタリング要素(62)が前記ガイドロッド(50)に配置されており、
前記ノズル(52)とは反対側の前記ガイドロッド(50)の端部がエネルギーチェーン(54)に隣接し、
前記エネルギーチェーン(54)を巻き上げるためのチェーンドラム(86)を備え、
前記導入セクション(49)を前記中空ワークピース(24)に導入するための駆動手段(98)を備えた導入デバイス(82)を備え、
前記チェーンドラム(86)及び前記導入デバイス(82)は前記スライドゲージ(78)に配置される、投入ステーション(26)。
【請求項3】
中空ワークピース(24)を保管し、レーザ処理機械(12)に前記中空ワークピース(24)を投入するために前記中空ワークピース(24)を供給デバイス(22)に供給する把持デバイス(84)を備える投入ステーション(26)であって、
機械フレーム(89)と、前記中空ワークピース(24)が前記レーザ処理機械(12)によって処理される前に離型剤(58)を前記中空ワークピース(24)に導入するための装置(48)とを備え、
前記装置(48)は、導入セクション(49)を備え、前記導入セクション(49)は、離型剤(58)を分配するためのノズル(52)と、前記導入セクション(49)に配置され、前記中空ワークピース(24)内で前記導入セクション(49)を中心に置くように機能するセンタリング要素(62)とを備え、
前記導入セクション(49)が、その自由端に前記ノズル(52)が配置されたガイドロッド(50)を備え、前記センタリング要素(62)が前記ガイドロッド(50)に配置されており、
前記ノズル(52)とは反対側の前記ガイドロッド(50)の端部がエネルギーチェーン(54)に隣接し、
前記エネルギーチェーン(54)を巻き上げるためのチェーンドラム(86)を備え、
前記導入セクション(49)を前記中空ワークピース(24)に導入するための駆動手段(98)を備えた導入デバイス(82)を備え、
前記チェーンドラム(86)は軸方向に移動可能な方法で前記機械フレーム(89)に配置され、前記導入デバイス(82)は、動きの点で前記チェーンドラム(86)に結合されたアーム(104)に配置される、投入ステーション(26)。
【請求項4】
前記センタリング要素(62)が多数のセンタリングブラシ繊維(66)を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の投入ステーション(26)。
【請求項5】
前記ガイドロッド(50)に、前記センタリング要素(62)に加えて、前記ワークピース(24)内で前記ガイドロッド(50)が傾くことを防止するために安定化要素(68)が提供される、請求項1~4のいずれか一項に記載の投入ステーション(26)。
【請求項6】
前記装置(48)は、前記離型剤(58)を分配するためのノズルを備えた導入ホース(92)をさらに備え、
前記導入ホース(92)は前記導入セクション(49)の代わりに前記中空ワークピース(24)に導入することができる、請求項1~5のいずれか一項に記載の投入ステーション(26)。
【請求項7】
中空ワークピース(24)を処理するためのシステム(10)であって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の投入ステーション(26)と、前記ワークピース(24)をレーザ処理するためのレーザ処理機械(12)とを備えるシステム(10)。
【請求項8】
中空ワークピース(24)がレーザ処理機械(12)によって処理される前に、請求項1~6のいずれか一項に記載の投入ステーション(26)によって、前記中空ワークピース(24)に離型剤(58)を導入するための方法であって、
a.前記離型剤(58)を分配するための前記導入セクション(49)を中空ワークピース(24)に導入するステップであって、この際前記センタリング要素(62)が前記導入セクション(49)を前記ワークピース(24)内の中心に置く、導入するステップ、及び
b.前記ノズル(52)を介して前記ワークピース(24)内に前記離型剤(58)を分配するステップ、
を含む方法。
【請求項9】
請求項7に記載のシステム(10)を使用する請求項8に記載の方法であって、
c.前記離型剤(58)で濡れた前記ワークピース(24)を、前記レーザ処理機械(12)によってレーザ処理するステップ、
をさらに含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空ワークピースがレーザ処理機械によって処理される前又は間に、中空ワークピースに離型剤を導入するための装置に関する。本発明はさらに、関連する投入ステーション、関連するシステム及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空ワークピースの、例えばパイプのレーザ処理、特にレーザ切断の間、処理作業中に生成される切断時破片が、ワークピースの内側、特にパイプの内側に蓄積する。ワークピースの内側のこれらの混入物質は、後続のクリーニングによって、比較的難しく、面倒で高価な方法でのみ、除去することができる。
【0003】
離型剤の使用により、切断時破片の付着を低減することができ、より簡単で、より速くそしてより安価なワークピースの後続のクリーニングを可能にすることができる。しかしながら、従来の「手による」離型剤の導入は時間がかかり、レーザ処理機械はさらに大幅に汚れる可能性がある。ここで、離型剤は一般に、手によって、吹付け装置を使用して、レーザ処理機械に予めクランプされたワークピースに導入される。ここで、十分な離型剤が塗布されることを確実にするために、かなり多量の離型剤が導入されるのが一般的である。ここで、余分な離型剤は部分的にワークピースからレーザ処理機械に流れ出る可能性がある、又は吸引抜き取り装置によって吸引によって抜き取られる。ここで、吸引抜き取り装置、廃棄物処理デバイス及びフィードステーションなどのレーザ処理機械の部分は、離型剤によって汚される可能性がある。この汚れは、かなりの結果的損害をもたらす可能性がある。さらに、ワークピースの処理の場合、離型剤は処理作業中、複数回導入することが一般に必要である。離型剤の導入のために、レーザ処理機械は停止する必要があり、保護キャビンを開く必要がある。これにより生産性が失われ、レーザ処理機械の汚れ及び損傷のリスクが広がる。
【0004】
(特許文献1)は、離型剤をワークピースに導入するための最初の提案を正式に行った。しかしながら、この提案は経済的に使用することができず、前記文書に開示されている離型剤を分配するための装置のノズルをワークピース内に配置することは技術的に面倒であり、困難である。この点において、レーザ処理作業前に離型剤を手動でワークピースに導入するケースも、現在、依然として残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2009/059776 A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
まとめると、本発明は、従来技術の既知の欠点を修正するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的は請求項1の特徴を有する装置によって最初に達成される。
【0008】
したがって、提案されるのは、中空ワークピースがレーザ処理機械によって処理される前又は間に、中空ワークピースに離型剤を導入するための装置である。ここで、装置は、導入セクションを備え、導入セクションは、離型剤を分配するためのノズルと、導入セクションに配置され、中空ワークピース内で導入セクションを中心に置くように機能するセンタリング要素とを備える。
【0009】
センタリング要素は、特に、導入セクションを、中空ワークピースの中心領域に所定の方法で保持するように機能する。したがって、ワークピースの内側を確実に均一に濡らすことができる。離型剤は的を絞った方法で、特に離型剤の最小限必要な量で、ワークピースに導入することができる。したがって、レーザ処理機械が汚れるのを実質的に又は完全に回避することができる。ここで、特に、離型剤を、レーザ処理作業前にワークピースに導入することが可能である。したがって、導入プロセスは特に、レーザ処理機械の初期処理時外に実行することができ、その結果、まとめると、レーザ処理機械の生産性は影響を受けず、又はわずかに影響を受けるだけである。センタリング要素は、特に、以下のように構成することができる、すなわち、円形のパイプだけでなく、例えば他の形状の中空ワークピース、例えば長方形のパイプも、離型剤で濡らすことができ、その際、センタリング要素が導入セクション、特に導入セクションのノズルを、それぞれのワークピースの中心に保持するように構成することができる。ここで、ノズルは特に環状ジェットノズルの形態であり得、その結果、圧縮空気によって、離型剤を均一にそして細かく霧状にされた形態でワークピースの内側に吹き付けることができる。ここで、ノズルによって、特に、霧化及び/又は体積流量の程度を、ワークピースの形状及び他の要件に従って適合させることが可能である。
【0010】
本発明の1つの有利な改良は、センタリング要素が多数のセンタリングブラシ繊維を備えることを提供する。そのようなセンタリングブラシ繊維の使用により、特に、幅広い種類の異なるワークピース内側形状の場合に、導入セクション、又は特に導入セクションのノズルが中心に保持されることを実現することが可能である。例えば、異なる直径の円形及び長方形のパイプの場合に、センタリングを実現することができる。センタリングブラシ繊維が特に弾性的に変形可能な形態のものであり得るという事実により、それらは異なるワークピース形状、特に異なるワークピース内側直径に適合することができる。ここで、センタリングブラシ繊維は、ブラシ本体に配置することができる。次に、ブラシ本体は導入方向においてノズルの前で導入セクションに配置することができる。ここで、センタリングブラシ繊維は、導入セクションの外周上に配置することができる。例えば、互いに120°の間隔で3つのセンタリングブラシ繊維束を配置することが考えられ得る。しかしながら、例えば、互いに90°の間隔で配置された4つのセンタリング繊維束を提供することも考えられ得る。3つのセンタリング繊維束の配置は、特に円筒ワークピース内側形状の場合に有利であることが証明されている一方、4つのセンタリング繊維束の提供は、特に正方形又は長方形ワークピース内側形状の場合に有利であることが証明されている。
【0011】
センタリング繊維束の代わりに、センタリング要素は、センタリング繊維束と同様のセンタリング作用を提供できる限り、他の構造、形状及び/又は材料も備え得る。
【0012】
本発明のさらに有利な構造は、導入セクションが、その自由端にノズルが配置されたガイドロッドを備え、センタリング要素がガイドロッドに配置されることを提供する。ここで、ガイドロッドは、特に、導入セクションをワークピースへ確実に導入するように機能する。ここで、特に、センタリング要素を、ガイドロッドの外側に配置することが考えられる。導入セクションにより、特に、圧縮空気及び離型剤をノズルへ搬送することが可能であり、ノズルで離型剤は圧縮空気によって解放され得る。ノズルを制御するための制御空気を、導入セクションを介してさらに導くことが考えられる。特に、その結果、2つ~3つの流体ラインを、導入セクションを介してノズルにつなげることが可能である。
【0013】
ガイドロッドに、センタリング要素に加えて、ワークピース内でガイドロッドが傾くことを防止するために安定化要素が提供される場合も有利である。ここで、安定化要素は、導入方向において、センタリング要素の前に、センタリング要素から離間されるように配置することができる。このようにして、ワークピース内でガイドロッドが傾くことを防止することができ、かくしてノズルの特に正確な位置決めを実現することができる。ここで、安定化要素は、構造の点でセンタリング要素の構造に対応し得、したがって、特に、ブラシ繊維又はブラシ繊維束を有し得る。
【0014】
離型剤を分配するためのノズルを備えた導入ホースがさらに提供される場合、特に好ましく、ここで導入ホースを導入セクションの代わりに中空ワークピースに導入することができる。かくして、特に柔軟な方法で使用できる装置が提供される。特に、ワークピースの内側の小さい直径の場合、したがって、回転できないホースを導入セクションの代わりにワークピースに押し込むことが特に簡単な方法で可能である。例えば、20mm~70mmのパイプ径の場合、導入ホースを導入セクションの代わりにワークピースに導入することができる。そのような小さい直径の場合、センタリング要素が提供されていない状態でさえ、ホースを導入することができ、それにもかかわらず、離型剤の十分に正確で節約型の導入が可能であることが分かっている。この点で、特に柔軟な方法で使用できる装置が提供され、この場合、センタリング要素を備えた導入セクション、又は導入ホースのどちらかを、ワークピースの直径に依存して導入することができる。
【0015】
ここで、ノズルとは反対側のガイドロッドの端部がエネルギーチェーンに隣接する場合、特に好ましい。エネルギーチェーンはノズルへの媒体の供給を安定化し案内することができる。ここで、特に比較的長いパイプの場合、エネルギーチェーンがワークピースの内側に接触するまで、エネルギーチェーンがワークピース内で曲がることが考えられる。しかしながら、センタリング要素が導入セクションに提供されるという事実により、それにもかかわらず、ノズルをワークピース内の中心に置くこと、かくしてワークピースの内側を離型剤で特に均一に濡らすことが可能である。
【0016】
エネルギーチェーンを巻き上げるためのチェーンドラムが提供される場合、さらに特に好ましい。ここで、チェーンドラムは、特に、エネルギーチェーンの(例えばばね要素による)パッシブな巻き上げのために設計することができる。
【0017】
導入セクションをワークピースに導入するための駆動手段を備えた導入デバイスが有利に提供される。ここで、導入デバイスは、特に、導入方向においてワークピースの前に配置することができる。ここで、駆動手段は、特に(電気)モータの形態であり得、導入セクションをワークピースに導入するために駆動ローラを駆動し得る。ここで、信頼できる駆動動作を提供するために、少なくとも1つの押さえローラが駆動ローラの上に提供され得る。導入方向における押さえローラ又は駆動ローラの前に、所定の方法で導入セクションをワークピースに案内するための少なくとも1つのガイドローラが提供され得る。
【0018】
導入部に記載した目的はまた、中空ワークピースを保管し、レーザ処理機械にワークピースを投入するための投入ステーションによって達成される。ここで、投入ステーションは、中空ワークピースがレーザ処理機械によって処理される前に離型剤を中空ワークピースに導入するための本発明による装置を備える。その結果、ワークピースがレーザ処理機械によって処理される前に、離型剤の導入を投入ステーションで実行することができ、その結果、レーザ処理機械の生産性は損なわれない。
【0019】
投入ステーションは好ましくは、機械フレームと、軸方向に移動可能なスライドゲージとを有し、チェーンドラムは位置的に固定された方法で機械フレームに配置され、導入デバイスはスライドゲージに配置される。ここで、機械フレームは、ワークピースをレーザ処理作業前に保管できる結束マガジンを有し得る。その後、分離されたワークピースをスライドゲージによって所定の位置に移動することができ、ワークピースの長さを決定することができる。スライドゲージはその結果、分離されたワークピースを所定の位置へ、特にストッパまで移動し、ワークピースの長さを測定する機能を有する。導入デバイスは、スライドゲージ上に配置することができる一方、チェーンドラムは位置的に固定された方法で機械フレームに配置することができる。スライドゲージが移動されると、その結果エネルギーチェーンはチェーンドラムから巻き出され、導入デバイスに固定された導入セクションはワークピースの方に移動される。その後導入セクションは、導入デバイスによって、ノズルと共にワークピースに導入することができる。
【0020】
投入ステーションが軸方向に移動可能なスライドゲージを有し、チェーンドラム及び導入デバイスがスライドゲージに配置されることも考えられ得る。この場合、チェーンドラム及び導入デバイスはその結果、移動可能な方法でスライドゲージに配置される。
【0021】
投入ステーションが機械フレームを有し、チェーンドラムが軸方向に移動可能な方法で機械フレームに配置され、導入デバイスは、動きの点でチェーンドラムに結合されたアームに配置されることもさらに考えられ得る。その結果、この場合、チェーンドラム及び導入デバイスは、スライドゲージに配置されない。むしろ、チェーンドラムは機械フレームに軸方向に配置される。導入デバイスは、導入セクションをワークピースに導入するために、特に垂直に移動可能なアームに提供することができる。
【0022】
さらに、導入部に記載した目的はまた、中空ワークピースを処理するためのシステムによって達成され、このシステムは本発明による投入ステーションと、ワークピースをレーザ処理するためのレーザ処理機械とを備える。その結果、離型剤による濡らしがレーザ処理作業前に実行され、その結果、レーザ処理機械の生産性が悪影響を受けない、又はわずかしか悪影響を受けないシステムを提供することができる。
【0023】
最後に、導入部に記載した目的はまた、中空ワークピースがレーザ処理機械によって処理される前又は間に、中空ワークピースに離型剤を導入するための方法によって達成される。この方法は、本発明による装置によって実行され、以下のステップを含む:
a.離型剤を分配するための導入セクションを中空ワークピースに導入するステップであって、この際センタリング要素が導入セクションをワークピース内の中心に置く、導入するステップ、及び
b.ノズルを介してワークピース内に離型剤を分配するステップ。
【0024】
その結果、離型剤を所定の方法で導入することができる。ここで、特に、離型剤の必要量だけをワークピースに導入することを保証することができ、その結果、汚れ、特にレーザ処理機械の汚れを実質的に回避することができる。
【0025】
この方法は本発明によるシステムを用いて有利に実行され、ここで方法は以下のさらなるステップを含む:
c.離型剤で濡れたワークピースを、レーザ処理機械によってレーザ処理するステップ。
【0026】
離型剤で濡れたワークピースは、その結果、レーザ処理に供することができる。レーザ処理作業自体の間、結果として、特に、さらなる離型剤を導入するために中断する必要はなく、その結果、特に効率的なレーザ処理作業を実現することができる。
【0027】
本発明のさらなる詳細及び有利な構成は、以下の記載から明らかになり、以下の記載に基づいて、図に示される本発明の実施形態がより詳細に記載及び考察される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】中空ワークピースを処理するためのシステムの非常に概略的で模式的な図である。
図2】中空ワークピースの概略断面図を示し、ワークピースに離型剤を導入するための装置の導入セクションがそこに導入されている。
図3a】導入セクションが導入された管状ワークピースの概略平面図を示す。
図3b】導入セクションが導入された正方形ワークピースの概略平面図を示す。
図3c】導入セクションが導入された長方形ワークピースの概略平面図を示す。
図4a】第1の実施形態による離型剤を導入するための装置を備える投入ステーションの概略図である。
図4b図4a)に示される実施形態の概略断面図である。
図4c図4a)による投入ステーションの装置の導入デバイスの概略図である。
図5a】第2の実施形態による離型剤を導入するための装置を備える投入ステーションの概略図である。
図5b図5a)による投入ステーションの概略断面図である。
図6a】第3の実施形態による離型剤を導入するための装置を有する投入ステーションの概略図である。
図6b図6a)による投入ステーションの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、概略的に簡略化された形式で、中空ワークピースを処理するためのシステムを示し、このシステムは全体的に参照記号10で示される。
【0030】
システム10は最初にレーザ処理機械12を備える。レーザ処理機械12は、レーザビーム16を生成するためのレーザビーム源14と、レーザ切断ヘッド18と、レーザビーム16をレーザビーム源14からレーザ切断ヘッド18へ案内するビームガイド20とを備える。
【0031】
システム10はさらに、生成されたレーザビーム16を用いてレーザ処理機械12によって処理される、特に切断されるワークピース24を横方向に供給するための供給デバイス22を備える。供給デバイス22は、ワークピース24をレーザ切断に供することができるようにワークピース24を保持して移動するための保持デバイス28を備える。保持デバイス28は、モータ駆動式であり、フィード方向(X方向)30に前後に移動可能である。供給デバイス22はさらに、保持デバイス28が移動可能に配置されるガイドレール34を備えた機械床32を備える。保持デバイス28は、さらに、クランプジョー38を備えたクランプチャック36を有する。クランプチャック36は、ワークピース24を保持するように機能する。ここで、クランプチャック36は、クランプされたワークピース24を回転するために、両頭矢印40で示されるように回転可能である。供給デバイス22はさらに、機械床32に配置され且つワークピース24を支持するように機能するワークピース支持体42を備える。最後に、供給デバイス22は、それを通してワークピース24がレーザ処理機械12に供給されるプッシュスルー式チャック44を備える。プッシュスルー式チャック44は、クランプジョーを同様に有する。
【0032】
システム10はさらに、レーザ処理機械12によって処理されたワークピース部分を放出するために、取り出しデバイス46を備える。
【0033】
システム10はさらに、中空ワークピース24を保管し、これらを分離して供給デバイス22に案内するための投入ステーション26を備える。投入ステーション26の実施形態については、図4~6に基づいて以下でさらに詳細に記載する。
【0034】
図2は、離型剤を中空ワークピース24に導入するための装置の一部を、参照記号48で示す。装置48は、ガイドロッド50を備える導入セクション49を備える。その自由端に、ガイドロッド50は、環状ジェットノズルの形態のノズル52を有する。ガイドロッド50の反対側の端部で、ガイドロッド50は、エネルギーチェーン54に隣接する。圧縮空気及び離型剤58は、エネルギーチェーン54を介して別個のラインでノズル52まで導くことができる。ノズル52を制御するための制御空気の第3のラインを提供することも考えられる。ガイドロッド50は、両頭矢印56によって示されるように、ワークピース24内を導入方向55及び反対方向57に軸方向に移動可能であり、それにより、参照記号59によって示される領域によって概略的に示されるように、ワークピース24の内側60に離型剤58を分配する。離型剤58を分配するために、ガイドロッド50は最初にワークピース24に導入される。
【0035】
ワークピース24が供給デバイス22に配置されると、装置48を2つのワークピース端部の一方からワークピース24に導入することが考えられ得る。しかしながら、特に、装置48を、投入ステーション26の領域においてワークピース24に導入することが考えられ得る。装置48を運搬装置に取り付け、例えば投入ステーション26の結束マガジン内でワークピース24まで移動し、それによりワークピース24を離型剤58で濡らすことが考えられ得る。ここで、ワークピース24はまた、投入ステーション26の外側で、マウント上で又は準備ステーションにおいて、離型剤58で濡らすこともできる。しかしながら、特に、装置48を、図4~6に基づいて以下でより詳細に提示されるように、投入ステーション26に配置し、したがって投入ステーション26の一部にすることが考えられ得る。
【0036】
センタリング要素62が導入方向55においてノズル52の前でガイドロッド50に配置される。センタリング要素62は、多数のセンタリングブラシ繊維66が配置されるブラシ本体64を備える。
【0037】
センタリング要素62から離間されるように、導入方向55においてセンタリング要素62の前に配置されるのは、安定化要素68であり、これはセンタリング要素62と同じ構造設計であり、その結果、安定化本体70と、それに配置された安定化ブラシ繊維72とを備える。ここで、センタリング要素62は、ガイドロッド50、特にガイドロッド50のノズル52を、ワークピース24内の中心に置くように機能し、その結果、ノズル52は、実質的に中空ワークピース24の中間で中心に保持される(図3a)~3c)参照)。ワークピースに導入する間、センタリングブラシ繊維66は、弾性的に変形することができ、その結果、センタリングが生じることができる。弾性変形のおかげで、幅広いワークピース直径の場合に、センタリングを実現することができる。安定化要素68は、ガイドロッド50がワークピース24内で傾かないことを保証し、その結果、ワークピース24内のノズル52の特に有利に安定化されたセンタリングを実現することができる。ここで、また、安定化ブラシ繊維72は、ワークピース24に導入される間、弾性的に変形することができる。
【0038】
図3a)はセンタリング要素62の実施形態を示している。ここで、互いに120°の間隔で配置された3つのセンタリングブラシ繊維束74が、ワークピース24内の中心にノズル52を保持するためにセンタリング本体64に提供されている。ワークピース24は、円筒形である。センタリングブラシ繊維66は、ワークピース24に導入する間に弾性的に変形することができ、したがって、幅広いワークピース直径(この場合パイプ径)dの場合に、ノズル52をワークピース24の中心に置くことができる。
【0039】
図3b)は、互いに90°の間隔で配置された4つのブラシ繊維束74を示し、ワークピース24はこの場合、正方形の輪郭を有する。ここでも、センタリングブラシ繊維66の弾性変形性のために、ワークピース24の幅広い直径dの場合に、センタリングを実現することができる。最後に、図3c)は、長方形ワークピース24に導入された、図3b)に従うセンタリング要素62を示し、ここで中間における中心に置かれた安定化をこの場合においても実現することができる。
【0040】
次に、装置48の特定の実践を、図4~6による3つの実施形態に基づいて提示する。
【0041】
図4a)及び4b)は、システム10の投入ステーション26を示している。ここで、投入ステーション26は、図示されていない結束マガジンからワークピース24を分離するための分離デバイス76を備える。ワークピース24は異なるパイプ長さを有するので、ワークピース24は軸方向56に移動することができる。これは、結果としてワークピース24を移動するように設計されたスライドゲージ78によって実行される。ここで、スライドゲージ78は、ワークピース24がストッパ80に当接するまで、ワークピース24を移動する。次に、ワークピース24の長さを決定することができる。スライドゲージ78上に配置されているのは、導入デバイス82であり、これについては、図4c)に基づいて以下でさらに詳述する。投入ステーション26はさらに、分離されたワークピース24をシステム10の供給デバイス22に供給するための把持デバイス84を備える(図1を参照)。投入ステーション26は、装置48を備える。ここで、図4a)に示される投入ステーション26の左上端領域には、エネルギーチェーン54を巻き上げるためのチェーンドラム86が、投入ステーション26の機械フレーム89に配置されている。さらに、ワークピース24の長さに応じてエネルギーチェーン54を支持するために、いくつかの支持要素88が提供される。図4b)に見られるように、ホースドラム90がまた、チェーンドラム86に隣接して配置される。導入ホース92は、前記ホースドラムに巻き上げることができる。
【0042】
図4c)に見られるように、導入デバイス82は、最初に、ガイドロッド50をワークピース24に供給するための2つのガイドローラ94を備える。さらに、ガイドロッド50を駆動ローラ98に押し付けるために、押さえローラ96が提供される。駆動ローラ98は、ガイドロッド50をワークピース24に導入するために、図4b)に示されるモータ100によって駆動される。さらに、スライドゲージ78上に、導入ホース92をワークピース24に代わりに導入するためのモータ102を見ることも可能であり、モータ102は図4b)で見ることができる。
【0043】
まとめると、システム10は以下のように機能する:
【0044】
ワークピース24がレーザ処理機械12に供給される前、離型剤58が投入ステーション26においてワークピース24の内側60に塗布され、プロセス中に形成される切断時破片のワークピース24の内側60への付着を低減するようにする。このために、ガイドロッド50が導入デバイス82によってノズル52と共にワークピース24に挿入される(図2参照)。ここで、センタリングブラシ繊維66及び安定化ブラシ繊維72は、ガイドロッド50をワークピース24内で中心に保持するために、弾性的に変形することができる。次いで離型剤58をワークピース24の内側60に沿って分配することができる。ここで、ノズル52を、例えば、一方のワークピース端部から他方のワークピース端部まで引出し方向57に移動し、かくして、ワークピースの内側60の全体を離型剤で徐々に濡らすことができる。
【0045】
ここで、ガイドロッド50の導入のために、ワークピース24がストッパ80に到達するまで、スライドゲージ78が移動される。プロセス中、エネルギーチェーン54はチェーンドラム86から巻き出される。次いで、スライドゲージ78がワークピース24をストッパ80まで移動するとすぐに、ガイドロッド50を導入ユニット82によってワークピース24に導入することができる。
【0046】
ワークピース24の内側60が離型剤58で濡れた後、ワークピースを、把持デバイス84によって、レーザ処理のために、特にレーザ切断のために、レーザ処理機械12に供給することができる。
【0047】
例えば20mm~70mmの小さなパイプ径の場合、ガイドロッド50の代わりに導入ホース92をワークピース24に導入することも可能である。その結果、パイプ径に依存して、一方でガイドロッド50を導入することが可能であり、この際、センタリング要素62及び安定化要素68がガイドロッド50をワークピース24内で中心に保持する。対照的に、比較的小さいパイプ径の場合、さらなるセンタリング要素も安定化要素も必要とせずに、導入ホース92を導入することも可能であり、この際、それにもかかわらず、十分な質の離型剤58による濡れを達成することができる。
【0048】
図5a)及び5b)による実施形態は、代替実施形態を示している。ここで、チェーンドラム86は、スライドゲージ78に固定され、それと一緒に移動される。この場合、特にエネルギーチェーン54を支持するための支持デバイス88を省略することが可能である。
【0049】
図6はさらなる代替実施形態を示している。ここで、チェーンドラム86は、投入ステーション26の機械フレーム89上を軸方向に移動可能である。垂直に延びるアーム104が動きの点でチェーンドラム86に結合される。ここで、アームは垂直方向105に移動可能である。モータ100は、導入デバイス82(これ以上詳細に示されない)と一緒に、ガイドロッド50をワークピース24に導入するために垂直アーム104の下端部に提供される。ホースドラム90は同様に軸方向に移動できるように配置されてもよい。最後に、ホースを導入するためのモータ102は同様にアーム104に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 システム
12 レーザ処理機械
14 レーザビーム源
16 レーザビーム
18 レーザ切断ヘッド
20 ビームガイド
22 供給デバイス
24 ワークピース
26 投入ステーション
28 保持デバイス
30 フィード方向
32 機械床
34 ガイドレール
36 クランプチャック
38 クランプジョー
40 両頭矢印
42 ワークピース支持体
44 プッシュスルー式チャック
46 取り出しデバイス
48 装置
49 導入セクション
50 ガイドロッド
52 ノズル
54 エネルギーチェーン
55 導入方向
56 両頭矢印
57 反対方向
58 離型剤
59 領域
60 内側
62 センタリング要素
64 ブラシ本体
66 センタリングブラシ繊維
68 安定化要素
70 安定化本体
72 安定化ブラシ繊維
74 センタリングブラシ繊維束
76 分離デバイス
78 スライドゲージ
80 ストッパ
82 導入デバイス
84 把持デバイス
86 チェーンドラム
88 支持要素
89 機械フレーム
90 ホースドラム
92 導入ホース
100 モータ
102 モータ
104 アーム
105 垂直方向
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6a
図6b