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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】排気ガスセンサの診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20231228BHJP
【FI】
G01R31/52
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021557166
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020058052
(87)【国際公開番号】W WO2020193496
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】102019204219.8
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート レーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】クラウディウス ベヴォト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン クレマー
(72)【発明者】
【氏名】オメル カヤ
(72)【発明者】
【氏名】ダンカ ディトマー-ゴベリッチ
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-242385(JP,A)
【文献】特開平5-223776(JP,A)
【文献】特開2018-49726(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010000663(DE,A1)
【文献】特表2011-520112(JP,A)
【文献】特開平5-107299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0219984(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
G01N 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの電気的な線路(201,202,203,204)を有している広帯域ラムダゾンデ(200)の動作のための評価及び制御ユニットであって、
前記評価及び制御ユニット(100)は、前記広帯域ラムダゾンデ(200)の前記電気的な線路(201,202,203,204)との電気的な接続のために、少なくとも2つの電気的な端子(RE,IPE,APE,MES)を有しており、
各前記電気的な端子(RE,IPE,APE,MES)にはそれぞれ1つの電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が割り当てられており、前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)を介して各前記端子(RE,IPE,APE,MES)が少なくとも1つの規定された電位(GND,VSET1,VSET2)と個別に接続可能である、評価及び制御ユニットにおいて、
各前記スイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)の耐電圧は、障害の場合に各前記端子(RE,IPE,APE,MES)において予期される最大短絡電圧(USC)以上であり、
各前記スイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)と前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)との間に分圧器(140)が設けられており、前記分圧器(140)によって、障害の場合に、前記評価及び制御ユニット(100)の測定システム(150)の測定範囲内にある、予期される前記最大短絡電圧の部分電圧を測定可能である、
ことを特徴とする評価及び制御ユニット。
【請求項2】
前記測定システム(150)は、ADC(150)である、請求項1に記載の評価及び制御ユニット。
【請求項3】
前記評価及び制御ユニット全体に関して、前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)と前記スイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)との間に、単一の分圧器(140)が設けられている、請求項2に記載の評価及び制御ユニット。
【請求項4】
前記分圧器(140)は、2つのオーム抵抗(RPROTN,RMEAS)から構成されている、請求項2又は3に記載の評価及び制御ユニット。
【請求項5】
前記分圧器(140)を構成する前記2つのオーム抵抗(RPROTN,RMEAS)のうち、前記スイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)に直接接続される前記オーム抵抗(RPROTN)の耐電圧は、故障の場合に前記端子(RE,IPE,APE,MES)において予期される前記最大短絡電圧(USC)以上である、請求項4に記載の評価及び制御ユニット。
【請求項6】
前記評価及び制御ユニット全体に関して、前記規定された電位(GND,V SET1 ,V SET2 )と前記スイッチ(Swt RE ,Swt IPE ,Swt APE ,Swt MES )との間に、単一の分圧器(140)が設けられており、
前記分圧器(140)は、2つのオーム抵抗(R PROTN ,R MEAS )から構成されており、
前記広帯域ラムダゾンデ(200)を故障の場合に保護するために、前記端子(RE,IPE,APE,MES)は、前記スイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)を介して互いに短絡可能であり、
さらに、前記2つのオーム抵抗(R PROTN ,R MEAS )のうち前記規定された電位(GND,V SET1 ,V SET2 )と接続される側のオーム抵抗(R MEAS と前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)との間にさらなるスイッチが配置されていて、故障の場合に、前記広帯域ラムダゾンデ(200)を通じて、前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)に電流が流れることが阻止可能である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の評価及び制御ユニット。
【請求項7】
前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)は、2つの異なる規定された値を取り得る、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の評価及び制御ユニット。
【請求項8】
前記評価及び制御ユニット(100)は、ASICとして構成されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の評価及び制御ユニット。
【請求項9】
広帯域ラムダゾンデ(200)の電気的な線路(201,202,203,204)の診断方法であって、
前記広帯域ラムダゾンデ(200)の前記電気的な線路(201,202,203,204)はそれぞれ、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の評価及び制御ユニット(100)の端子(RE,IPE,APE,MES)と接続されており、
前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)を1つずつ順次閉成し、各前記電気的な端子(RE,IPE,APE,MES)を通って流れる電流(I)を求めた後、
・短絡が前記電気的な線路(201,202,203,204)のうちの1つの線路に発生していることが既に知られている場合に、最も高い電流(I)が求められた前記端子(RE,IPE,APE,MES)と接続されている前記線路(201,202,203,204)に前記短絡を割り当て、及び/又は、
・前記最も高い電流(I)の値を、所定の閾値と比較し、前記最も高い電流(I)の値が前記閾値を上回る場合に、短絡が発生していることを推測し、最も高い電流(I)が求められた前記端子(RE,IPE,APE,MES)と接続されている前記線路(201,202,203,204)に前記短絡を割り当てる、
診断方法。
【請求項10】
前記最も高い電流(I)が、2番目に高い電流(I)から、所定の最低差分だけ異なっているというさらなる条件の下においてのみ、短絡を線路(201,202,203,204)に割り当て、前記所定の最低差分は、発生する他の総ての許容誤差が含められた測定システムの電流測定精度によって決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電気的な線路(201,202,203,204)の1つの線路に短絡が発生しており、さらに、前記最も高い電流(I)が、前記2番目に高い電流(I)から、所定の最低差分だけ異なっていないために、線路(201,202,203,204)への前記短絡の前記割り当てが不可能であることが推測される場合、前記方法を、前記広帯域ラムダゾンデを冷却するために使用される待機時間の後に繰り返す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)を介して各前記電気的な端子(RE,IPE,APE,MES)が少なくとも1つの規定された電位(GND,VSET1,VSET2)と個別に接続可能であり、
前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)は、2つの異なる規定された値を取ることが可能であり、
各線路(201,202,203,204)に対して、前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)が第1の値を有する間に第1の電流(I)を測定し、前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)が第2の値を有する間に第2の電流(I)を測定し、
前記第1の電流(I)は、前記最も高い電流(I)及び前記2番目に高い電流(I)の一方であり、前記第2の電流(I)は、前記最も高い電流(I)及び前記2番目に高い電流(I)の他方である、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
各線路(201,202,203,204)に対して、前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)が第1の値を有する間に、前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が閉成されている場合の前記第1の電流(I)と前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が開放されている場合の第1の電流(I01)とを測定し、
各線路(201,202,203,204)に対して、前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)が第2の値を有する間に、前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が閉成されている場合の前記第2の電流(I)と前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が開放されている場合の第2の電流(I02)とを測定し、
前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)の前記第1の値及び前記第2の値と、前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が閉成されている場合の前記第1の電流(I)の値及び前記第2の電流(I)の値と、前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が開放されている場合の前記第1の電流(I01)及び前記第2の電流(I02)とから、前記ラムダゾンデ(200)の前記電気的な線路(201,202,203,204)が互いに高抵抗であるという想定に基づいて、各線路(201,202,203,204)に対して短絡抵抗(RSC)を決定する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各線路(201,202,203,204)に対して、前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)が第1の値を有する間に、前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が閉成されている場合の前記第1の電流(I)と前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が開放されている場合の第1の電流(I01)とを測定し、
各線路(201,202,203,204)に対して、前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)が第2の値を有する間に、前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が閉成されている場合の前記第2の電流(I)と前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が開放されている場合の第2の電流(I02)とを測定し、
前記規定された電位(GND,VSET1,VSET2)の前記第1の値及び前記第2の値と、前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が閉成されている場合の前記第1の電流(I)の値及び前記第2の電流(I)の値と、前記電気的なスイッチ(SwtRE,SwtIPE,SwtAPE,SwtMES)が開放されている場合の前記第1の電流(I01)及び前記第2の電流(I02)とから、前記ラムダゾンデの前記電気的な線路(201,202,203,204)が互いに高抵抗であるという想定に基づいて、各線路(201,202,203,204)に対して前記最大短絡電圧(USC)を決定する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記最も高い電流(I)が求められた前記端子(RE,IPE,APE,MES)と接続されている前記線路(201,202,203,204)に前記短絡を割り当てる代わりに、求められた少なくとも1つの短絡抵抗(RSC)が所定の閾値を下回った場合に短絡を推測し、前記短絡を、最も低い短絡抵抗が発生している前記端子(RE,IPE,APE,MES)と接続されている前記線路(201,202,203,204)に割り当てる、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記評価及び制御ユニット(100)のエラーメモリ、及び/又は、前記評価及び制御ユニット(100)と接続されている制御装置のエラーメモリは、不揮発性データメモリであり、短絡の存在に関する情報、前記短絡が割り当てられた前記線路(201,202,203,204)に関する情報を、前記不揮発性データメモリに格納する、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記評価及び制御ユニット(100)のエラーメモリ、及び/又は、前記評価及び制御ユニット(100)と接続されている制御装置のエラーメモリは、不揮発性データメモリであり、短絡の存在に関する情報、前記短絡が割り当てられた前記線路(201,202,203,204)に関する情報、前記最大短絡電圧(USC)に関する情報、及び/又は、前記短絡抵抗(RSC)に関する情報を、前記不揮発性データメモリに格納する、請求項14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
独国特許出願公開第102010000663号明細書から、ASICとして構成されている評価及び制御ユニットが既に知られている。評価及び制御ユニットは、電気的な線路を有している広帯域ラムダゾンデの動作のために使用される。ここで、評価及び制御ユニットは、広帯域ラムダゾンデの電気的な線路との電気的な接続のために、電気的な端子を有しており、これらの電気的な端子にはそれぞれ1つの電気的なスイッチが割り当てられており、この電気的なスイッチを介して各端子がアースと接続可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【文献】独国特許出願公開第102010000663号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の利点
本発明は、上述の従来技術から基本的に既に知られているスイッチが、障害の場合に高い電気的負荷にさらされる可能性があるという発明者の考察に基づいている。例えば、供給電圧におけるラムダゾンデの線路の短絡が発生した場合、スイッチは、全供給電圧とその結果発生する電流とにさらされる可能性がある。障害の場合に各端子において予期される最大短絡電圧は、このようなケースにおいては、供給電圧によって定められ得る。
【0004】
障害の場合に各端子において予期される最大短絡電圧は、例えば、16V、36V、さらには、48V以上になり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
追加のハードウェア保護メカニズム又はソフトウェア保護メカニズムを用いずに、広帯域ラムダゾンデの線路におけるそのような障害の場合に、評価及び制御ユニットに損傷が発生しないことを保証し、また、障害の場合にも、広帯域ラムダゾンデの電気的な線路の診断方法を可能にするために、特に、各スイッチが、障害の場合に各端子において予期される最大短絡電圧に対して耐電圧性であることが設定されている。
【0006】
電圧に対する、ある構成部分の耐電圧性とは、損傷することなく、長時間、例えば数秒間、そのような電圧にさらされ得る、この構成部分の特性であると理解される。特に高度な小型化の場合、例えば、構成部分が、ASICとして構成されている評価及び制御ユニットの一部として構成されている場合には、これは、十分な絶縁及び/又はシールド等の、対応する建設的な措置を前提にする。
【0007】
障害の場合に所望の診断を実行し得るようにするために、有利には、各スイッチは、低抵抗スイッチとして構成されており、即ち、閉成された状態において、特に、動作温度時に広帯域ラムダゾンデの電気化学セルの内部抵抗以下の体積抵抗を上回らない体積抵抗、及び/又は、特に100Ohmを上回らない体積抵抗を有している。
【0008】
本発明に対応して設定された、少なくとも1つの規定された電位は、接地電位、例えば0Vであるものとしてよく、又は、他の電位にある仮想のアースであるものとしてよい。規定された電位が2つ以上の異なる規定された値を取り得るように、対応する電圧源及び/又は対応する分圧器によって種々の電位が提供されるように設定されるものとしてもよい。
【0009】
特に、各スイッチと規定された電位との間に分圧器が設けられているように設定されており、この分圧器によって、障害の場合に、評価及び制御ユニットの測定システム、例えばADCの測定範囲内にある、予期される最大短絡電圧の部分電圧を測定可能である。このようにして、障害の場合に、広帯域ラムダゾンデの所期の診断を実行することができる。
【0010】
評価及び制御ユニットの測定システム、例えばADCの測定範囲は、例えば、0V~3.6V、又は、例えば、-5V~+5Vであり得る。
【0011】
即ち、分圧器は、例えば、予期される最大短絡電圧を、測定システムの測定範囲の上限まで下がるように、分圧することができる。即ち、予期される最大短絡電圧が36Vであり、測定システムの測定範囲の上限が3.6Vである場合には、例えば、印加電圧を9対1の比率により分圧する分圧器を設けることができる。
【0012】
有利には、総てのスイッチと接続されている単一の分圧器を設けることができる。選択的に、各スイッチに、個別の分圧器が割り当てられるものとしてよい。
【0013】
端子がスイッチを介して互いに接続可能であり、特に短絡可能であることは、有利である。この場合には、広帯域ラムダゾンデの線路を共通の電位にすることができ、これによって、特に、スイッチが診断目的においてのみ開放され、それ以外の場合は閉成されたままの場合に、広帯域ラムダゾンデが保護される。
【0014】
さらに、スイッチと規定された電位との間にさらなるスイッチが配置されている場合には、このスイッチを障害の場合に開放することができ、これによって、広帯域ラムダゾンデを通じて、規定された電位に電流が流れることが阻止される。
【0015】
分圧器を実現するために、各スイッチと規定された電位との間に2つのオーム抵抗が直列接続されていることが設定されるものとしてよい。この場合には、これらのオーム抵抗の抵抗値の比率によって、分圧器に印加される電圧が分圧される比率が決まる。即ち、規定された電位に対する予期される最大短絡電圧が36Vであり、規定された電位に対する測定システムの測定範囲の上限が3.6Vである場合において、最大で10mAが流れる場合には、例えば、3.24kOhmのオーム抵抗と360Ohmのオーム抵抗とが選択され得る。
【0016】
本発明の極めて有利な発展形態においては、スイッチに属する、分圧器のオーム抵抗も、故障の場合に端子において予期される最大短絡電圧に対して耐電圧性であることが設定されている。
【0017】
ここで、スイッチから離反する、分圧器のオーム抵抗の耐電圧性が、測定システムの耐電圧性を超えないことが設定されるものとしてよい。
【0018】
本発明の対象はまた、広帯域ラムダゾンデの電気的な線路の診断方法であり、これによって、広帯域ラムダゾンデの電気的な線路の1つの線路に短絡が存在している場合に、短絡が発生している線路を明瞭に確定することができる(特定)。このような方法においては、特に、上述の評価及び制御ユニットが使用され、電気的なスイッチが正確に1つずつ順次閉成され、各電気的な端子に割り当てられている電流又はこのような電流を表す変数が求められることが設定されている。
【0019】
この際に、第1の可能性においては、本発明に係る方法によって、短絡の存在が既に知られていることが前提とされ得る。これは、例えば、評価及び制御ユニットの1つの端子、複数の端子又は総ての端子が、予期される動作範囲外の電位にあることが事前に確定されている場合である。このような場合には、値的に最も高い電流が求められた端子と接続されている線路に短絡が割り当てられることが設定されている。
【0020】
第2の可能性においては、短絡が存在していることがこの方法自体によって初めて確定される。上述の手法に加えて、最も高い電流の値が、固定された所定の閾値又は広帯域ラムダゾンデの温度に関連して決定される閾値以上であることを検証することによって、これを行うことができる。この場合には、値的に最も高い電流が求められた端子と接続されている線路に短絡が割り当てられる。
【0021】
この方法の明瞭性を保証するために、次のことが設定されるものとしてよい。即ち、値的に最も高い電流が、値的に2番目に高い電流から、所定の最低限度だけ異なっているというさらなる条件の下においてのみ、短絡が線路に割り当てられることが設定されるものとしてよい。最低限度は、最低差分又は最低ファクタであるものとしてよい。最低差分は、例えば、発生する他の総ての許容誤差が含められた測定システムの測定精度によって決定されるものとしてよく、例えば100μAであり得る。
【0022】
発展形態においては、電気的な線路の1つの線路に短絡が発生していることが知られている場合、又は、短絡が発生しており、さらに、値的に最も高い電流が、値的に2番目に高い電流から、所定の最低限度だけ異なっていないために、線路への短絡の割り当てが不可能であることが推測される場合、この方法が、広帯域ラムダゾンデを冷却するために使用される待機時間の後に繰り返されることが設定されるものとしてよい。広帯域ラムダゾンデが冷却されると、その内部抵抗が増加し、短絡が存在していない線路を流れる電流が減少することが予期され得る。ここで、いずれの線路に短絡が存在しているのかを明瞭に特定することができる。
【0023】
この方法のさらなる発展形態は、有利には評価及び制御ユニットによって行われ、ここでは、規定された電位が2つの異なる規定された値を取り得る。ここで、各接続線路に対して、規定された電位が第1の値を有する間に第1の電流が測定され、規定された電位が第2の値を有する間に第2の電流が測定されることが設定されている。
【0024】
規定された電位の、これらの異なる規定された値は、例えば、調整可能な分圧器を介して生成可能である。
【0025】
ラムダゾンデの電気的な接続が互いに高抵抗であるという仮定に従って、この計算は、次の式に従って実行される:
SC=[Rref*(I-I-I0,1+I0,2)+VSET1-VSET2]/(I-I-I0,2+I0,1
ここで、
SC:短絡抵抗
ref:規定された電位とスイッチとの間の総抵抗
,I:スイッチが閉成されている場合の第1又は第2の電位の印加時の、端子に割り当てられている電流
01,I02:スイッチが開放されている場合の第1又は第2の電位の印加時の、端子に割り当てられている電流
SET1,VSET2:第1又は第2の電位
である。
【0026】
ラムダゾンデの電気的な線路が互いに高抵抗であるという仮定のもと、この計算は、次の式に従って実行される:
SC=1/2*[RSC*(I+I+I0,1+I0,2)+Rref*(I+I)+VSET1+VSET2
ここで、
SC:短絡電圧
である。
【0027】
基本的に、短絡抵抗と短絡電圧とは、各接続線路に対して計算によって特定可能である。ラムダゾンデの電気的な線路が互いに高抵抗ではないが、ラムダゾンデの内部抵抗が知られている場合、又は、特定の値が想定される場合、短絡抵抗の計算及び短絡電圧の計算が、生じている線形方程式系を解くことによって行われる。
【0028】
有利には、求められた少なくとも1つの短絡抵抗が所定の閾値を下回った場合に短絡が推測され、この短絡が、最も低い短絡抵抗が発生している端子と接続されている線路に割り当てられることが設定されている。
【0029】
最も低い短絡抵抗が、2番目に低い短絡抵抗から、加法閾値又は乗法閾値を超えて異なっていない場合、この測定が、広帯域ラムダゾンデが冷却される待機時間の後に繰り返されることが設定されるものとしてよい。この冷却によって、短絡が存在してない線路の短絡抵抗が増加することが予期され得る。ここで、いずれの線路に短絡が実際に存在しているのかを明瞭に特定することができる。
【0030】
判明している診断結果から適当な技術的措置を導出することができる。例えば、短絡の存在に関する情報、特に、短絡の事実自体、短絡が確定された線路、短絡電位及び/又は短絡抵抗が不揮発性データメモリに格納されることが設定されるものとしてよい。これは、例えば、評価及び制御ユニットのエラーメモリ、及び/又は、評価及び制御ユニットと接続されている制御装置のエラーメモリへの書き込みによって行われる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】広帯域ラムダゾンデの動作のための評価及び制御ユニットの第1の実施例を示す図である。
図2図1に示された評価及び制御ユニットによる診断方法のフローチャートを示す図である。
図3】広帯域ラムダゾンデの動作のための評価及び制御ユニットの第2の実施例を示す図である。
図4図3に示された評価及び制御ユニットによる診断方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施例の説明
図1aは、広帯域ラムダゾンデ200の動作のための評価及び制御ユニット100の第1の実施例を示している。評価及び制御ユニット100は、4つの端子RE、IPE、APE、MESを介して、広帯域ラムダゾンデ200の電気的な線路201、202、203、204と接続されている。これらの線路は、広帯域ラムダゾンデ200の電気化学セル210、211へと連通している。広帯域ラムダゾンデ200の、可能性のある詳細は、例えば、独国特許出願公開第102011007068号明細書に示されている。
【0033】
評価及び制御ユニット100は、本発明を理解するために必要な範囲においてのみ示されている。評価及び制御ユニット100の、可能性のある詳細は、例えば、特許文献である欧州特許第2277035号明細書に示されている。
【0034】
この例においては、評価及び制御ユニット100は、アースGNDで端子を有しており、これと、端子RE、IPE、APE、MESのそれぞれは、それぞれ耐電圧スイッチSwtRE、SwtIPE、SwtAPE、SwtMESを介して、さらに、共通の分圧器140を介して、個別に接続されている。
【0035】
この例においては、共通の分圧器140は、直列接続された2つのオーム抵抗RPROTN及びRMEASから構成されている。このような例においては、それらの抵抗値は、RPROTN=3.24kOhm及びRMEAS=360Ohmである。
【0036】
抵抗RMEASにわたって降下する電圧Uは、評価及び制御ユニット100のADC150によって測定可能である。RMEASで除算することによって、分圧器140を通って流れる電流Iが得られる。
【0037】
例えば、抵抗RMEASとGNDとの間にさらなるスイッチが設けられるものとしてよい(図1aには示されていない)。障害の場合にこのスイッチが開放されると、これによって、広帯域ラムダゾンデ200を通じて、GNDに電流が流れることが阻止される。
【0038】
図1bにおいては、36Vの供給電圧における線路201の低抵抗短絡の障害の場合が示されており、ここでは、広帯域ラムダゾンデ200の線路201を介して、評価及び制御ユニット100の端子REにおいて、短絡抵抗RSC=0Ohmにわたった短絡電圧USC=36Vが示されている。
【0039】
図1cにおいては、端子REに割り当てられている低抵抗スイッチSwtRE(内部抵抗RSwtRE=100Ohm)が閉成されているので、9.7mAの電流Iが、線路201から端子RE及び分圧器140を介してアースGNDへと流れる。その結果、測定抵抗RMEASにおいて、ADC150によってデジタル化される3.502Vの電圧が降下する。
【0040】
図1dにおいては、端子REに割り当てられている低抵抗スイッチSwtREが開放されており、その代わりに、端子IPEに割り当てられている低抵抗スイッチSwtIPE(内部抵抗RSwtIPE=100Ohm)が閉成されている。高温状態の線路201と202との間の広帯域ラムダゾンデの内部抵抗はRi=300Ohmであるので、ここで9mAである電流Iが、分圧器140を介してアースGNDへと流れる。これに対応して、測定抵抗RMEASにおいて、ADC150によってデジタル化される3.240Vの電圧が降下する。
【0041】
スイッチSwtIPEの代わりにスイッチSwtAPEが閉成される場合、又は、スイッチSwtMESが閉成される場合、同様の電流及び電圧が発生する。
【0042】
端子REに対しては、明瞭に、最も高い電流Iが求められた。36Vのこの端子に、許容し得ないほど高い電位が印加されていることが事前に知られていたので、即ち、基本的に短絡が存在することが知られていたので、端子REと接続されている、広帯域ラムダゾンデ200の線路201に短絡が存在することが推測される。
【0043】
図1を参照して説明した装置に従った例示的な方法が、フローチャートとして図2に示されている。
・ステップS1:スイッチSwtREを閉成する
・ステップS2:以下において分圧器140を通じてアースGNDに流れる電流IREを測定する
・ステップS3:スイッチSwtREを開放し、スイッチSwtIPEを閉成する
・ステップS4:以下において分圧器140を通じてアースGNDに流れる電流IIPEを測定する
・ステップS5:電流IRE、IIPEのどちらが大きいかを確定する
・ステップS6:より大きい電流が流れている端子REと接続されている線路201に短絡を割り当てる
・ステップS7:線路201に短絡が存在しているという、得られた情報を、評価及び制御ユニット100と接続されている制御装置のエラーメモリに格納する
【0044】
図3aは、広帯域ラムダゾンデ200の動作のための評価及び制御ユニット100の第2の実施例を示している。評価及び制御ユニット100は、4つの端子RE、IPE、APE、MESを介して、広帯域ラムダゾンデ200の電気的な線路201、202、203、204と接続されている。これは低温であるため、線路201、202、203、204のうちのそれぞれ2つの線路の間に、例えば1MOhmの極めて高い内部抵抗Riが発生する。これらの線路は、広帯域ラムダゾンデ200の電気化学セル210、211へと連通している。広帯域ラムダゾンデ200の、可能性のある詳細は、例えば、独国特許出願公開第102011007068号明細書に示されている。
【0045】
評価及び制御ユニット100は、ここで、本発明を理解するために必要な範囲においてのみ示されている。評価及び制御ユニット100の、可能性のある詳細は、例えば、特許文献である欧州特許第2277035号明細書に示されている。
【0046】
この例においては、評価及び制御ユニット100は、値VSET1=2V及びVSET2=10Vを取り得る規定された電位における端子を有している。このような規定された電位と、端子RE、IPE、APE、MESのそれぞれとは、それぞれ、耐電圧スイッチSwtRE、SwtIPE、SwtAPE、SwtMES及び共通の基準抵抗RRef=100Ohmを介して個別に接続可能である。さらに、スイッチSwtRE、SwtIPE、SwtAPE、SwtMESの、端子RE、IPE、APE、MESに離反する側に、電流源SRを接続して加えることができる。しかし、この例においては、開放されているスイッチによって、この電流源SRが分離されている。
【0047】
図3bにおいては、供給電圧における線路201の低抵抗短絡の障害の場合が示されており、ここでは、広帯域ラムダゾンデ200の線路201を介して、評価及び制御ユニット100の端子REにおいて、短絡抵抗RSCにわたった短絡電圧USCが示されている。
【0048】
規定された電位VSET1=2Vの場合には、スイッチSwtREが閉成される前に、RRefを通る0mAの電流I0,1が確定され、スイッチSwtREが閉成された後に、RRefを通る100mAの電流lが確定される。
【0049】
規定された電位VSET2=10Vの場合には、スイッチSwtREが閉成される前に、RRefを通る0mAの電流I0,2が確定され、スイッチSwtREが閉成された後に、RRefを通る20mAの電流lが確定される。
【0050】

SC=[Rref*(I-I-I0,1+I0,2)+VSET1-VSET2]/(I-I-I0,2+I0,1)、
SC=1/2*[RSC*(I+I+I0,1+I0,2)+Rref*(I+I)+VSET1+VSET2
を適用することによって、RSC=0Ohm、VSC=12Vが得られる。
【0051】
図3cにおいては、端子REに割り当てられている低抵抗スイッチSwtREが開放されており、その代わりに、端子IPEに割り当てられている低抵抗スイッチSwtIPEが閉成されている。スイッチSwtIPEが開放されているか閉成されているかに関係なく、かつ、規定されている電位VSET1、VSET2の値に関係なく、0mAの電流が抵抗RRefを通って流れる。
【0052】
上述の式を適用することによって、線路202に関して、「短絡抵抗」RSCが極めて低いという情報が得られる。
【0053】
全体として、このような例においては、12Vの短絡電圧に対して、線路201の極めて低抵抗の短絡が存在していることが推測可能である。
【0054】
図3を参照して説明した装置に従った例示的な方法が、フローチャートとして図4に示されている。
【0055】
SET1の場合:
・ステップS10:スイッチSwtRE、SwtIPE、SwtAPE、SwtMESを開放する
・ステップS11:基準抵抗RRefを通じて、規定された電位に流れる電流I01を測定する
・ステップS12:スイッチSwtREを閉成する
・ステップS14:基準抵抗RRefを通じて、規定された電位に流れる電流Iを測定する
【0056】
SET2の場合:
・ステップS10‘:スイッチSwtRE、SwtIPE、SwtAPE、SwtMESを開放する
・ステップS11‘:基準抵抗RRefを通じて、規定された電位に流れる電流I01を測定する
・ステップS12‘:スイッチSwtREを閉成する
・ステップS14‘:基準抵抗RRefを通じて、規定された電位に流れる電流Iを測定する
【0057】
・ステップS15:端子REにおける、広帯域ラムダゾンデの線路に対する、短絡抵抗RSCと短絡電圧USCとを計算する
【0058】
他の端子IPN、APN及びMESに対して、ステップS10乃至S14及びS10‘乃至S14‘及びS15を繰り返す(ステップS10IPN乃至S14IPN及びS10‘IPN乃至S14‘IPN及びS15IPN;S10APN乃至S14APN及びS10‘APN乃至S14‘APN及びS15APN;S10MES乃至S14MES及びS10‘MES乃至S14‘MES及びS15MES
【0059】
・ステップS16:最低の短絡抵抗RSCが求められた端子REと接続されている線路201に短絡を割り当てる
・ステップS17:線路201に短絡が存在しているという、得られた情報を、評価及び制御ユニット100と接続されている制御装置のエラーメモリに格納する
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3a
図3b
図3c
図4