(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】逆推力段階を促進するための空気取入口を有するナセルを備えるターボジェット
(51)【国際特許分類】
B64D 29/00 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
B64D29/00
(21)【出願番号】P 2021559410
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020060035
(87)【国際公開番号】W WO2020212226
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-22
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミンク ダニエル-チプリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラリア マシュー パトリック ジャン-ルイ
(72)【発明者】
【氏名】シルビン ニコラス ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォロティンスカ ヤゴダ アリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ダウトレッペ フレデリック
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203457(JP,A)
【文献】特表2001-520149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部において内側気流(F-INT)が推力段階中に上流から下流まで循環し、逆気流(F-INV)が推力逆転段階中に下流から上流まで循環する、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在する航空機のターボジェットエンジン(1)であって、
前記ターボジェットエンジン(1)は、逆推力を提供するためのファン(11)と、空気取入口(2)を備えるナセルと、を備え、
前記空気取入口(2)は、軸線X周りに周方向に延在し、そして、軸線Xに面して前記内側気流(F-INT)及び前記逆気流(F-INV)を誘導するように構成された内壁(21)と、前記内壁(21)の反対側にあって外側気流(F-EXT)を誘導するように構成された外壁(22)と、を備え、
前記内壁(21)と前記外壁(22)とは、空気取入口リップ(23)によって互いに接続されて環状空洞(20)を形成し、
前記空気取入口(2)は、一方で前記空気取入口リップ(23)において、他方で前記内壁(21)及び/又は前記外壁(22)において開いていることにより推力逆転段階を促進する、前記環状空洞(20)内の少なくとも1つの循環導管(3、4、5)を備え、
前記空気取入口(2)は、少なくとも1つのカバー部材(31、41、51、32、42、52-1、52-2)を備え、
前記カバー部材(31、41、51、32、42、52-1、52-2)は、前記カバー部材(31、41、51、32、42、52-1、52-2)が前記空気取入口リップ(23)において前記循環導管(3、4、5)を閉じているカバーされた位置(C1)と、前記カバー部材(31、41、51、32、42、52-1、52-2)が前記空気取入口リップ(23)において前記循環導管(3、4、5)を開いているカバーされない位置(C2)と、の間で可動に装着されている、航空機ターボジェットエンジン(1)。
【請求項2】
軸線X周りに前記空気取入口(2)の周囲に分布した複数の前記循環導管(3、4、5)を備える、請求項1に記載のターボジェットエンジン(1)。
【請求項3】
軸線X周りに周方向に延在する単一の前記循環導管(3、4、5)を備える、請求項1に記載のターボジェットエンジン(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの上流側カバー部材(31、41、51)を備え、
前記上流側カバー部材(31、41、51)は、前記上流側カバー部材(31、41、51)が前記空気取入口リップ(23)において前記循環導管(3、4、5)を閉じているカバーされた位置(C1)と、前記上流側カバー部材(31、41、51)が前記空気取入口リップ(23)において前記循環導管(3、4、5)を開いているカバーされない位置(C2)と、の間で可動に装着されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のターボジェットエンジン(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの下流側カバー部材(32、42、52-1、52-2)を備え、前記下流側カバー部材(32、42、52-1、52-2)は、前記下流側カバー部材(32、42、52-1、52-2)が前記内壁(21)又は前記外壁(22)において前記循環導管(3、4、5)を閉じているカバーされた位置(C1)と、前記下流側カバー部材(32、42、52-1、52-2)が前記内壁(21)又は前記外壁(22)において前記循環導管(3、4、5)を開いているカバーされない位置(C2)と、の間で可動に装着されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のターボジェットエンジン(1)。
【請求項6】
少なくとも1つのカバー部材(31、41、32、42、51、52-1、52-2)を前記カバーされた位置(C1)から前記カバーされない位置(C2)まで動かすための少なくとも1つの制御可能な移動式部材(33、34、43、44)を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のターボジェットエンジン(1)。
【請求項7】
前記ターボジェットエンジン(1)の推力逆転段階中に、前記推力逆転段階を促進するために、前記循環導管(3、4、5)内の気流を前記内壁(21)及び/又は前記外壁(22)から前記空気取入口リップ(23)まで循環させるステップを備える、請求項1~6のいずれか1項に記載のターボジェットエンジンを操作する方法。
【請求項8】
前記カバー部材(31、41、51、32、42、52-1、52-2)は、前記ターボジェットエンジン(1)の推力段階中、前記カバーされた位置(C1)にあり、それにより、前記空気取入口(2)は、前記内側気流(F-INT)を前記内壁(21)上に誘導するような空気力学プロファイルを有し、前記方法は、前記ターボジェットエンジン(1)の推力逆転段階中に、前記推力逆転段階を促進するために、前記カバー部材(31、41、51、32、42、52-1、52-2)を前記カバーされない位置(C2)まで動かすステップを備える、請求項7に記載のターボジェットエンジンを操作する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機ターボジェットエンジンの分野に関し、より具体的には、航空機ターボジェットエンジンナセルの空気取入口を対象にする。
【背景技術】
【0002】
既知の方法において、航空機は、ターボジェットエンジン内で上流から下流まで循環する気流の加速によってそれの推進を可能にするための1つ又は複数のターボジェットエンジンを備えている。
【0003】
図1を参照すると、ターボジェットエンジン100は、軸線X沿いに延在し、そして、外側シェル102内に軸線X周りに回転可能に装着されたファン101を備えることにより、ターボジェットエンジン100の推力段階中に、内側気流F-INTと呼ばれる、ターボジェットエンジン100内で上流から下流まで循環する気流を加速する。以下に、用語「上流」及び「下流」は、内側気流F-INTの循環について定義される。
【0004】
既知の方法において、ターボジェットエンジン100はナセルを備え、該ナセルは、それの上流側端部に、軸線Xに面する内壁201と、内壁201の反対側の外壁202と、を備える空気取入口200を備えている。内壁201と外壁202とは、前縁部を備える空気取入口リップ203によって一緒に接続されて環状空洞220を形成する。空気取入口200は、内壁201によって誘導された内側気流F-INTと、外壁202によって誘導された外側気流F-EXTとの間で上流側気流Fを分離するための空気力学プロファイルを有する。以下では、用語「内側」及び「外側」は、ターボジェットエンジン100の軸線Xに対して半径方向に規定される。
【0005】
特に着陸中に、航空機の制動距離を低減するために、推力逆転システムをナセル内に統合することが知られており、該推力逆転システムは、排気において気流の向きを修正して推力逆転段階を実行することを可能にする。既知の方法において、推力逆転段階は、ストレートナの下流の2次流れ内でフラップ/グリルを開いて、気流を半径方向外向き又は上流に導くことによって達成される。
【0006】
高バイパス比ターボジェットについて、ナセルは、大きい直径を有し、それで、従来の推力逆転システムを統合することは、これがターボジェットエンジンの重量、全体寸法、及び抗力にとってかなり不利なので望ましくない。
【0007】
推力逆転段階を可能にするための別の解決策は、可変ピッチファン又はVPFを提供して、ターボジェットエンジンの2次流れ内の気流循環が逆転され、それで、航空機が着陸中又は別のいずれかの操縦中に減速されることを可能にする逆推力を生成することを可能にすることにある。
【0008】
図2を参照すると、推力逆転段階中に、逆気流F-INVが、ターボジェットエンジン100内で下流から上流まで、すなわち、
図1の内側気流F-INTに対して逆に循環する。より具体的には、逆気流F-INVは、外側シェル102の付近で循環する。逆気流F-INVは、軸線Xに対して実質的に軸線方向に内壁201によって上流に誘導される。この逆気流F-INVは、次いで上流側気流Fに対抗し、これが推力逆転段階を可能にする。
【0009】
実際には、
図2に示すように、逆気流F-INVの部分が、実質的に半径方向に空気取入口200の空気力学プロファイルをバイパスし、これが空気取入口リップ203の付近に局所減圧Pの領域の出現をもたらす。かかる局所減圧Pは、上流側吸引、すなわち、推力逆転に対抗する力を発生させる。実際には、この現象は、かなり有意に推力逆転段階の性能を低下させる。
【0010】
それで、本発明の目標は、この現象を低減させて、推力段階中の航空機の性能に影響を及ぼすことなく、推力逆転段階中のターボジェットエンジンの性能を向上させることである。
【0011】
特許文献1、特許文献2、及び特許文献3からの先行技術において、内部に又は外部に旋回する、あるいは上流に動く上流側部分を有する空気取入口が公知である。かかる上流側部分は、一方で上側表面(外壁)において、他方で下側表面(内壁)において開いているいくつかの環状導管を作成することにより、特に離陸中の好ましくない状態の下での又は斜めの風による、内壁からの内側気流の分離を回避する。かかる可動上流側部分は、推力逆転段階を促進しない。
【0012】
特許文献4、特許文献5、及び特許文献6から、フラップによって閉じられる、内壁と外壁との間で端から端まで貫いた開口を有する空気取入口が、また公知であり、該空気取入口は、推力段階中のいくつかの操作状態の下で開かれて、雑音を低減させるか、又は給気を改善する。特許文献7を介して、空気取入口が、また公知であり、該空気取入口は、推力段階において供給される気流の分離を制限するために特に上流に開いている1つ又は複数の流体制御通路を有する。グリッドが、推力段階において送気を可能にしながら、異物の取込みを回避するために設置されてもよい。かかる空気取入口は、推力逆転段階を促進しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第3618876号明細書
【文献】米国特許第3222863号明細書
【文献】米国特許第3664612号明細書
【文献】米国特許第3446223号明細書
【文献】米国特許第3662556号明細書
【文献】英国特許第1228806号明細書
【文献】国際公開第2015130384号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在する航空機ターボジェットエンジンナセルの空気取入口に関し、該空気取入口において、内側気流が推力段階中に上流から下流まで循環し、逆気流が推力逆転段階中に下流から上流まで循環し、空気取入口は、軸線X周りに周方向に延在し、そして、軸線Xに面して内側気流及び逆気流を誘導するように構成された内壁と、内壁の反対側にあって外側気流を誘導するように構成された外壁と、を備え、内壁と外壁とは、空気取入口リップによって一緒に接続されて、環状空洞を形成している。
【0015】
本発明は、空気取入口が、環状空洞内に少なくとも1つの循環導管を備え、該環状導管は、一方で空気取入口リップにおいて、他方で内壁及び/又は外壁において開いていることにより、推力逆転段階を促進することが注目に値する。
【0016】
本発明によって、逆気流が、空気取入口リップにおいて偏向させられ、及び/又は空気取入口リップにおける局所減圧が、低減され、これにより、気流が、先行技術の場合のような、逆推力に対抗する力の発生を防止可能にする。
【0017】
好ましい一態様によると、空気取入口は、軸線X周りに空気取入口の周囲に分布した複数の循環導管を備えている。一態様によると、導管の全てが一緒に用いられて、制動中などのいくつかの操作状態の下で好ましい、空気取入口の周囲にわたって均一な推力逆転段階を可能にしてもよい。別の一態様によると、導管は、空気取入口の周囲にわたって別の操作状態の下で好ましい不均一な推力逆転段階を可能にするための様々な程度まで開いていることにより、逆気流の再循環を制御してもよい。
【0018】
好ましい別の一態様によると、空気取入口は、軸線X周りに周方向に延在する単一の循環導管を備えることにより、空気取入口の周囲全体にわたって逆推力段階を最適化する。
【0019】
好ましくは、空気取入口は、少なくとも1つのカバー部材を備え、該カバー部材は、カバー部材が空気取入口リップにおいて循環導管を閉じているカバーされた位置と、カバー部材が空気取入口リップにおいて循環導管を開いているカバーされない位置と、の間で可動に装着されている。推力段階中のターボジェットエンジンの性能は、それ故に低下されない。
【0020】
好ましくは、空気取入口は、少なくとも1つの上流側カバー部材を備え、該上流側カバー部材は、上流側カバー部材が空気取入口リップにおいて循環導管を閉じているカバーされた位置と、上流側カバー部材が空気取入口リップにおいて循環導管を開けているカバーされない位置と、の間で可動に装着されている。推力段階中のターボジェットエンジンの性能は、それ故に低下されない。
【0021】
好ましくは、空気取入口は、少なくとも1つの下流側カバー部材を備え、該下流側カバー部材は、下流側カバー部材が内壁又は外壁において循環導管を閉じているカバーされた位置と、下流側カバー部材が内壁又は外壁において循環導管を開いているカバーされない位置と、の間で可動に装着されている。それ故、推力段階中のターボジェットエンジンの性能は、低下されない。
【0022】
好ましくは、空気取入口は、少なくとも1つの制御可能な移動式部材を備えることにより、少なくとも1つのカバー部材(上流及び/又は下流の)をカバーされた位置からカバーされない位置まで動かす。
【0023】
好ましくは、制御可能な移動式部材は、少なくとも1つの上流側カバー部材及び/又は少なくとも1つの下流側カバー部材を、カバーされない位置からカバーされた位置まで動かすことを可能にする。
【0024】
好ましくは、上流側及び/又は下流側カバー部材は、気流の作用の下で、カバーされた位置からカバーされない位置まで動かされるように構成されて、更なるパワーが航空機によって供給されることを必要としない。
【0025】
好ましくは、上流側及び/又は下流側カバー部材は、気流の作用の下で、カバーされない位置からカバーされた位置まで動かされるように構成されて、更なるパワーサプライが航空機によって供給されることを必要としない。
【0026】
本発明は、また、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在する航空機ターボジェットエンジンに関し、該航空機ターボジェットエンジンにおいて、内側気流が推力段階中に上流から下流まで循環し、逆気流が推力逆転段階中に下流から上流まで循環し、ターボジェットエンジンは、逆推力を提供するようなファンと、逆推力段階を促進するような、上記のような空気取入口を備えるナセルと、を備えている。
【0027】
本発明は、上記のように空気取入口を操作する方法に更に関し、該方法は、上記ターボジェットエンジンの推力逆転段階中に、推力逆転段階を促進するために、循環導管内の気流を内壁及び/又は外壁から空気取入口リップまで循環させるステップを備えている。内側気流の循環は、有利なことに、分離が空気取入口リップにおいて生成されることを可能にし、これが、先行技術の場合のようないずれの減圧も回避する。外側気流の循環は、圧力を空気取入口リップにおいて釣り合わせることを可能にし、それによって、先行技術の場合のようないずれの減圧も回避する。
【0028】
好ましくは、カバー部材は、ターボジェットの推力段階中にカバーされた位置にあり、それにより、空気取入口は、内側気流を内壁上に誘導するような空気力学プロファイルを有する。本方法は、上記ターボジェットエンジンの推力逆転段階中に、推力逆転段階を促進するためにカバー部材をカバーされない位置まで動かすステップを備える。
【0029】
好ましくは、上流側カバー部材は、ターボジェットエンジンの推力段階中にカバーされた位置にあり、それにより、空気取入口は、内側気流を内壁上に誘導するような空気力学プロファイルを有する。本方法は、上記ターボジェットエンジンの推力逆転段階中に、推力逆転段階を促進するために、カバーされない位置まで上流側カバー部材を動かすステップを備えている。
【0030】
好ましくは、下流側カバー部材は、ターボジェットエンジンの推力段階中にカバーされた位置にあり、それにより、空気取入口は、内側気流を内壁上に又は外側気流を外壁上に誘導するような空気力学プロファイルを有する。本方法は、上記ターボジェットエンジンの推力逆転段階中に、推力逆転段階を促進するために下流側カバー部材をカバーされない位置まで動かすステップを備えている。
【0031】
本発明は、単に例として与えられた以下の説明を読み、同一の参照符号が類似の対象に与えられている、非限定的な例として与えられた以下の添付図面を参照すると、よりよく理解されるであろう。
【0032】
留意すべきは、図面は本発明を実施するために詳細に本発明について開示し、もちろん、必要に応じてよりよく本発明を規定することに役立ち得ることである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】推力段階内にある先行技術に従うターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図2】推力逆転段階内にある先行技術に従うターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図3】内壁上に開いている循環導管を有する本発明の第1実施形態に従うターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図4】1列の循環導管を備える空気取入口についての横断面図の略図である。
【
図5】2列の循環導管を備える空気取入口についての横断面図の略図である。
【
図6】周方向の循環導管を備える空気取入口についての横断面図の略図である。
【
図7A】カバーされた位置における制御可能な移動式部材を備える第1実施形態に従う空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図7B】カバーされない位置における制御可能な移動式部材を備える第1実施形態に従う空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図7C】カバーされない位置における制御可能な移動式部材を備える第1実施形態に従う空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図7D】カバーされない位置における制御可能な移動式部材を備える第1実施形態に従う空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図7E】カバーされない位置における制御可能な移動式部材を備える第1実施形態に従う空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図8】外壁上に開いているいくつかの循環導管を有する本発明の第2実施形態に従うターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図9A】カバーされた位置における制御可能な移動式部材を備える第2実施形態に従う空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図9B】カバーされない位置における制御可能な移動式部材を備える第2実施形態に従う空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図10A】内壁上に開いている循環導管を有する第3実施形態に従う空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図10B】外壁上に開いている循環導管を有する第3実施形態に従う空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図11A】本発明に従う、逆気流の不均一な再循環を可能にするターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図11B】本発明に従う、逆気流の不均一な再循環を可能にする空気取入口についての横断面図の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図3を参照すると、本発明に従うターボジェットエンジン1が表されており、該ターボジェットエンジンは、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在し、空気流れを画定する外側シェル12内に軸線X周りに回転可能に装着されたファン11を備えている。既知の方法において、ファン11は、推力段階中に、内側気流として知られた、ターボジェットエンジン1内で上流から下流に循環する気流を加速し、推力逆転段階中に、逆気流F-INVとして知られた、ターボジェットエンジン1内で下流から上流に循環する気流を加速するように構成されている。
【0035】
実際には、
図3に示すように、逆気流F-INVは、空気流れの半径方向外側部分内で、特に空気流れ半径の1/3にわたって、下流から上流に循環する。内側気流F-INTは、空気流れの半径方向内側部分内で、特に空気流れ半径の2/3にわたって、上流から下流に常に循環する。内側気流F-INTは、十分な流速を保証することにより、ターボジェットエンジンのいかなるポンピング現象も回避する。
【0036】
図3に示すように、ターボジェットエンジン1は、ナセルを備え、該ナセルは、それの上流側端部に空気取入口2を備え、該空気取入口は、軸線X周りに周方向に延在し、そして、軸線Xに面して内側気流F-INT及び逆気流F-INVを誘導するように構成された内壁21と、内壁21の反対側にあって上流から下流まで循環する外側気流F-EXTを誘導するように構成された外壁22と、を備えている。内壁21と外壁22とは、前縁部を備える空気取入口リップ23によって互いに接続されている。内壁21と外壁22と空気取入口リップ23とは、環状空洞20を形成し、該環状空洞内に、消音デバイス又は防氷デバイスが特に装着されてもよい。環状空洞20は、軸線Xに平行な長手方向X20沿いに延在している。
【0037】
この例では、ターボジェットエンジン1は、推力逆転手段、特に、可変ピッチファン11又はVPFを備えることにより、ターボジェットエンジン1内で循環する気流を逆転させ、それで、着陸中、又はいずれか別の操縦中の航空機の減速を可能にする逆推力を生成することを可能にする。
【0038】
本発明に従うと、空気取入口2は、環状空洞20内の少なくとも1つの循環導管を備え、該循環導管は、一方で、空気取入口リップ23において、他方で、内壁21及び/又は外壁22において開いていることにより、逆推力段階を促進する。
【0039】
以下において、第1実施形態に従って、内壁21内に開いている導管が、次いで、第2実施形態に従って、外壁22内に開いている導管が、そして、第3実施形態に従って、内壁21及び外壁22内に開いている導管が述べられる。
【0040】
本発明の第1実施形態に従って、
図3を参照すると、空気取入口2は、環状空洞20内に位置する複数の循環導管3を備え、該循環導管は、一方で、空気取入口リップ23において、他方で、内壁21において開いている。それぞれの循環導管3は、その2つの端部のうちの一方から他方に気流を循環させるように構成されている。
【0041】
図4及び5に示すように、循環導管3は、
図4の例においては軸線Xに関して一列に、
図5の例においては互いに関して千鳥状の2列に、軸線X周りに空気取入口2の周囲に分布している。もちろん、循環導管3は、異なる数の列に分布してもよい。これらの例では、循環導管3は、軸線Xから同じ半径方向距離のところにある、言い換えると、列は円形である。しかし、いうまでもなく、循環導管3は、また、例えば空気取入口2の周囲の部分だけにわたって又は不均一に、空気取入口2の周囲に異なるように分布してもよい。
【0042】
図6の例では、空気取入口2は、軸線X周りに空気取入口2の周囲にわたって延在する単一の循環導管3を備えている。この例では、循環導管3は、横断面内で空気取入口2の周囲にわたって円形に延在する。これらの構成(
図4~6)のそれぞれは、有利なことに、若干の気流が循環することを可能にする。気流の量は、循環導管L3の半径方向厚さ、好ましくは、空気取入口L2の半径方向厚さの約20%に依存する。
図4及び5の場合、それは、また、方位長さ、及び2つの循環導管3を分離する方位距離に依存する。留意されるべきは、これらの2つのパラメータは、制動中などのいくつかの操作状態において有利である、空気取入口2の周囲にわたって不均一な逆推力を発生させる目的で、1つの循環導管と別のものとで変化してもよい。好ましくは、循環導管3は、循環導管3内部の流れのより良好な誘導のための形状は、円形である。しかし、言うまでもなく、循環導管は、
図4及び5の例における長方形等のいずれかの形状である。
【0043】
好ましくは、
図7Aに示すように、循環導管3は、長手方向X20に対して上流側角度α3を有する上流方向X31沿いに空気取入口リップ23において開いている上流側端部を備え、上流側角度α3は、好ましくは-45°と45°との間にある。好ましくは、循環導管3は、長手方向X20に対して下流側角度β3を有する下流方向X32沿いに底壁21において開いている下流側端部を備え、下流側角度β3は、好ましくは0°と60°との間にある。
【0044】
後述するように、これは、有利なことに、推力逆転段階中に逆気流循環を生成して、空気取入口リップ23における先行技術の場合のような減圧の発生を制限することを可能にする。
【0045】
この例では、
図7A及び7Bを参照すると、空気取入口2は、上流側カバー部材31と下流側カバー部材32と、を更に含み、該カバー部材は、それぞれ、循環導管3の上流側端部及び下流側端部に可動に装着されている。言うまでもなく、複数の循環導管3の場合、空気取入口2は、複数の上流側31及び下流側32カバー部材を備える。同様に、言うまでもなく、循環導管3は、1つだけの上流側カバー部材31、1つだけの下流側カバー部材32を備えているか、又はいずれも備えていなくてもよい。
【0046】
好ましくは、カバー部材31、32は、回転可能に装着されている(
図7A及び7B)けれども、言うまでもなく、これらのカバー部材31、32は、例えば並進運動等のいずれかの動作について可動に装着されてもよい。好ましくは、上流側カバー部材31は、
図7A及び7Bに表すように、循環導管3の上流側端部の半径方向外側縁部に装着されている。もちろん、しかしながら、上流側カバー部材31は、上流側端部の半径方向内側縁部に装着されてもよい。同様に、好ましくは、下流側カバー部材32は、
図7A及び7Bに表すように、循環導管3の下流側端部の上流側縁部に装着されている。しかし、下流側カバー部材32は、下流側端部の下流側縁部に装着されていてもよいことがわかる。
【0047】
本発明の一態様に従って、
図7A及び7Bを参照すると、上流側カバー部材31は、
-上流側カバー部材31が空気取入口リップ23において循環導管3を閉じていることにより推力段階を促進するカバーされた位置C1(
図7A)と、
一上流側カバー部材31が空気取入口リップ23において循環導管3を開いていることにより推力逆転段階を促進するカバーされない位置C2(
図7B)と、の間で可動に装着されている。
【0048】
同様に、下流カバー部材32は、
-下流側カバー部材32が内壁21において循環導管3を閉じていることにより推力段階を促進するカバーされた位置C1と、
-下流側カバー部材32が内壁21において循環導管3を開いていることにより推力逆転段階を促進するカバーされない位置C2と、の間で可動に装着される。
【0049】
好ましくは、上流側カバー部材31と下流側カバー部材32とは、同じカバーされた又はカバーされない位置をとることにより、推力段階及び推力逆転段階を促進する。このように、空気取入口2は、推力段階中及び逆推力段階中の2つの異なる役割を可能にする。
図7Aに示すように、カバーされた位置C1において、上流側31及び下流側32カバー部材は、循環導管3の両端部をカバーし、このことが、空気力学プロファイルを有する空気取入口2の空気力学性能に影響を及ぼさないことを可能にする。言い換えると、上流側気流Fは、従来技術に類似した方法で、空気取入口リップ23において内側気流F-INTと外側気流F-EXTとに分離する。このようにして、推力段階は最適化される。
【0050】
図7Bに示すように、カバーされない位置C2において、上流側カバー部材31及び下流側カバー部材32は、逆気流F-INVの一部分、すなわち補助逆気流F-INV1が循環導管3内で循環して、逆気流F-INVの別の部分、すなわち主要逆気流F-INV2の分離を発生させることを可能にする。言い換えると、逆気流F-INVは、空気取入口リップ23沿いに走行するそれの軌跡から外れて、推力逆転段階において低下を起こす。推力逆転段階は、それ故に改善される。
【0051】
好ましくは、上流側31及び下流側32カバー部材は、小さい厚さのフラップの形状をしていることにより、最小の全体寸法を生じさせる。好ましくは、上流側カバー部材31及び下流側カバー部材32は、それぞれ、空気取入口リップ23及び内壁21の空気力学プロファイルに類似したものを有するようにわずかに湾曲したプロファイルを有する。好ましくは、上流側31及び下流側32のカバー部材の材料は、空気取入口リップ23及び内壁21のものと同一である、すなわち関係する空気力学の力に耐性がある。
【0052】
本発明の1つの好ましい態様に従うと、
図7Bに示すように、カバーされない位置C2において、上流側カバー部材31及び下流側カバー部材32は、それぞれ、循環導管3に対して外側に延在することにより、補助逆気流F-INV1を循環導管3に向かって及びそれから離れる方に誘導する。本発明の別の態様に従って、
図7Cに示すように、カバーされない位置C2において、上流側31及び下流側32カバー部材は、循環導管3に対して内側に延在して、最小の全体寸法を生じさせて空気力学を低下させない。本発明の別の態様に従って、
図7D及び7Eに示すように、カバーされない位置C2において、カバー部材31、32のうちの1つの部分は、内側に延在し、一方、別の部分は、外側に延在する。
【0053】
本発明の一態様に従って、
図7A、7B、7C、及び7Dを参照すると、空気取入口2は、それぞれ、上流側カバー部材31及び下流側カバー部材32をカバーされた位置C1からカバーされない位置C2まで動かすための2つの制御可能な移動式部材33、34を備えている。好ましくは、制御可能な移動式部材33、34は、また、カバー部材31、32をカバーされない位置C2からカバーされた位置C1まで動かすことを可能にする。言うまでもなく、同じ制御可能な移動式部材33、34が、いくつかのカバー部材31、32を動かしてもよい。また、言うまでもなく、制御可能な移動式部材33、34の数は、任意である。例として、制御可能な移動式部材33、34は、空圧、油圧、電気、又は別の作動装置の形式のものであることにより、計算機からの制御コマンドを受け取る結果としての動作を可能にする。
【0054】
本発明の別の態様に従って、
図7Eを参照すると、上流側カバー部材31及び下流側カバー部材32は、関係する空気力学の力によって動かされるように構成されている。より具体的には、カバー部材31、32は、補助逆気流F-INV1によって、カバーされた位置C1からカバーされない位置C2まで動かされるように構成されている。好ましくは、カバー部材31、32は、上流側気流Fによって、カバーされない位置C2からカバーされた位置C1まで動かされるように構成されている。本発明のこの態様は、空気の運動エネルギをうまく利用し、追加のエネルギ入力を必要としないという長所がある。言うまでもなく、カバー部材31、32の1つの部分は、制御可能な移動式部材33、34によって動かされてもよく、別の部分は、関係する空気力学の力によって動かされてもよい。
【0055】
本発明の第2実施形態に従って、
図8を参照すると、一方で空気取入口リップ23において、他方で外壁22において開いている循環導管4が、表されている。
図9Aに示すように、循環導管4の上流側端部は、長手方向X20とともに上流側角度α4を形成する上流方向X41沿いに向いており、角度α4は、好ましくは-60°と+60°との間にある。同様に、循環導管4の下流側端部は、長手方向X20とともに下流側角度β4を形成する下流方向X42沿いに向いており、角度β4は、好ましくは45°と170°との間にある。
【0056】
明瞭及び簡潔のために、第1実施形態の要素についての説明は、第2実施形態に対して繰り返されないが、機能上及び構造上の相違だけが述べられる。
【0057】
本発明の一態様に従うと、
図9A及び9Bに示すように、上流側カバー部材41は、第1実施形態に類似した方法で可動に装着されている。下流側カバー部材42は、他方で、
-下流側カバー部材42が外壁22において循環導管3を閉じていることにより推力段階を促進するカバーされた位置C1(
図9A)と、
-下流側カバー部材42が外壁22において循環導管3を開いていることにより推力逆転段階を促進するカバーされない位置C2(
図9B)と、の間で可動に装着されている。
【0058】
好ましくは、この第2実施形態に従って、上流側カバー部材41は、好ましくは、
図9A及び9Bに表されるように、循環導管4の上流側端部の半径方向内側縁部に装着されている。もちろん、しかしながら、上流側カバー部材41は、上流側端部の半径方向外側縁部に装着されていてもよい。同様に、好ましくは、下流側カバー部材42は、
図9A及び9Bに表されるように、循環導管4の下流側端部の下流側縁部に装着されている。しかし、下流側カバー部材42は、下流側端部の上流側縁部に装着されてもよいことがわかる。
【0059】
本発明の好ましい一態様に従って、
図9Bに示すように、カバーされない位置C2において、上流側カバー部材41及び下流側カバー部材42は、それぞれ、循環導管4に対して外側に延在していることにより、補助外側気流F-EXT1を循環導管3内へ及びそれから外に誘導する。しかしながら、言うまでもなく、カバー部材41、42のうちの少なくとも1つの部分は、循環導管4に対して内側に延在してもよい。
【0060】
それで、
図9Bに示すように、カバーされない位置C2において、上流側及び下流側カバー部材41及び42は、補助外側気流F-EXT1と称される外側気流F-EXTの一部分が、循環導管4内部で循環することを可能にし、併せて、主要外側気流F-EXT2と称される外側気流F-EXTの別の部分が、外壁22沿いに流れることを可能にする。循環導管4内部での補助外側気流F-EXT1の循環は、外壁22における下流側圧力P2を空気取入口リップ23における上流側圧力P1と釣り合わせることを可能にする。言い換えると、先行技術において低い上流側圧力P1(局所減圧Pの存在)は、補助外側気流F-EXT1の吸引によって下流側圧力P2と等しくされる。推力逆転段階は、それ故に改善される。
【0061】
図9A及び9Bの例では、カバー部材41、42は、制御可能な移動式部材43、44によって動かされるけれども、いうまでもなく、第1実施形態で述べたように、動作が異なって実行されてもよい。
【0062】
本発明によると、いかなる実施形態も、空気取入口リップ23における上流側圧力P1が増加させられ、及び/又は空気取入口2から出力される気流が内壁21から分離され、それによって、逆推力段階における航空機の性能をうまく向上させる。更に、本発明は、可動に装着されているカバー部材31、32、41、42によって、推力段階における航空機の性能を低下させない。更に、本発明は、低減された質量及び外形寸法を有し、そして、特にカバー部材31、32、41、42が、関係する空気力学の力によって動かされる場合に、エネルギ消費が小さい。
【0063】
前述のように、第2実施形態に従う循環導管4は、軸線Xに対して放射状の列又は2つの千鳥状で放射状の列をなして、軸線X周りに空気取入口2の周囲にわたって分布している。もちろん、循環導管4は、異なる数の列をなして分布してもよい。循環導管4は、また、空気取入口2の周囲において異なって、例えば、空気取入口2の周囲の部分にわたって分布してもよい。その代替として、空気取入口2は、軸線X周りに空気取入口2の周囲にわたって延在する単一の循環導管4を備えている。
【0064】
本発明の第3実施形態に従って、
図10A及び10Bを参照すると、循環導管5が表されており、該循環導管は、一方で空気取入口リップ23において、他方で内壁21及び外壁22において、開いている。この第3実施形態では、循環導管5は、内壁21からの補助逆気流F-INV1を循環させるように構成された循環導管3に相似した第1導管区画と、補助外側気流F-EXT1を循環させるように構成された循環導管4に相似した第2導管区画と、を備え、その両方は、補助逆気流F-INV1及び補助外側気流F-EXT1を空気取入口リップ23まで循環させるための共通導管区画内へと開いている。
【0065】
好ましくは、
図10A及び10Bに示すように、循環導管5は、第2実施形態に類似した方法で可動に装着された、上流側カバー部材51と、第1下流側カバー部材52-1と、を備えている。循環導管5は、第1実施形態に類似した方法で可動に装着された第2下流側カバー部材52-2を更に備えている。
【0066】
有利なことに、
図10Bに示すように、カバーされない位置C2において、上流側カバー部材51及び第1下流側カバー部材52-1は、補助外側気流F-EXT1が循環し、それによって、空気取入口リップ23において下流側圧力P2を上流側圧力P1と釣り合わせることを可能にする。相補的な態様において、上流側カバー部材51及び第2下流側カバー部材52-2は、補助逆気流F-INV1が循環し、それによって逆気流F-INV2を分離することを可能にする。逆推力段階は、それ故、第1実施形態と第2実施形態との長所を結合することによって最適化される。
【0067】
特に、説明された3つの実施形態は、空気取入口2の周囲沿いに均一に逆気流F-INVを偏向させるための循環導管3、4、5を有する。しかし、いくつかの操作状態下において、この逆気流F-INVを不均一に偏向させることは、興味深い場合がある。したがって、逆気流F-INVを不均一な態様で偏向させるための2つの例が、
図11A及び11Bを参照して以下で説明される。
【0068】
図11Aに示すように、上流側端部31、41、51は、空気取入口2の周囲において異なる方向沿いに向いていることにより、所定の軸線AD沿いに向いた空気取入口リップを形成してもよい。同じことが、下流側端部32、42、52-1、52-2に当てはまる。その代替として、
図11Bを参照すると、循環導管3、4、5は、軸線Xに垂直な平面内で、空気取入口2の周囲にわたって楕円形形状、特に卵形形状の列を形成してもよい。単一の循環導管3、4、5の場合、これは、軸線Xに垂直な平面内で楕円形形状を呈してもよい。不均一な偏向は、逆気流が空気取入口2の環境を考慮して誘導されることを有利に可能にする。
【0069】
上記の本発明に従う空気取入口2を操作する方法が、以下で説明される。明瞭のために、単一のカバー部材31、32、41、42、51、52-1、52-2の動作が述べられるけれども、言うまでもなく、複数の上流側カバー部材31、41、51及び/又は下流側カバー部材32、42、52-1、52-2が、付随して又は連続して動かされてもよい。
【0070】
推力段階中に、ファン11は、推力段階を促進する空気力学プロファイルを有する空気取入口2によって導かれる内側気流F-INTを上流から下流まで加速する。それぞれのカバー部材31、32、41、42、51、52-1、52-2は、ターボジェットエンジン1の推力段階中、カバーされた位置C1にあり、その結果、空気取入口2は、気流を誘導するための空気力学プロファイルを有する。
【0071】
上記ターボジェットエンジン1の推力逆転段階中に、特に、ファンベーン11のピッチの修正に続いて、カバー部材31、32、41、42、51、52-1、52-2が、カバーされない位置C2へと動かされることにより、循環導管3を開いて、上流側圧力P1と下流側圧力P2とを釣り合わせる気流を循環させる、及び/又は内壁21からの逆気流F-INVの分離Dを発生させて、推力逆転段階を促進する。
【0072】
本発明の一態様に従うと、動作ステップは、制御可能な移動式部材33、34、43、44によって簡易的及び効率的な方法で実行される。本発明の別の一態様に従うと、カバー部材31、32、41、42、51、52-1、52-2を動かすものは、関係する空気力学の力であり、これが、エネルギ消費がより小さいという長所を有する。
【0073】
有利なことに、かかる操作方法は、内側気流F-INTが内壁21によってファン11に向かって誘導される推力段階、及び、逆気流F-INVが内壁21沿いに走行するそれの軌跡から逸脱されて局所減圧を発生させる推力逆転段階の両方において、航空機に良好な性能を提供する。
【0074】
本発明の一態様に従うと、複数の循環導管3、4、5の場合、循環導管3、4、5の一部分だけが、カバー部材31、32、41、42、51、52-1、52-2によって開かれていることにより、空気取入口2の周囲にわたって不均一である逆推力段階を生じさせ、これは、制動等のいくつかの操作状態について有利である。
【0075】
本発明の一態様に従うと、循環導管3、4、5は、いくつかのレベルのカバーされた位置C1を備え、該レベルは、上流側角度α3、α4及び/又は下流側角度β3、β4の値によって規定される。複数の循環導管3、4、5の場合、カバー部材31、32、41、42、51、52-1、52-2は、それ故、互いに異なるレベルのカバーされた位置C1に従って有利に用いられてもよい。空気取入口の周囲にわたる不均一な推力逆転段階が、それ故に生じさせられてもよく、これは、制動中などのいくつかの操作状態について有利である。