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特許7411684ライダー支援システム、及び、ライダー支援システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ライダー支援システム、及び、ライダー支援システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62J 6/24 20200101AFI20231228BHJP
   B62J 27/00 20200101ALI20231228BHJP
   B62J 45/415 20200101ALI20231228BHJP
   B62J 3/10 20200101ALI20231228BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20231228BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B62J6/24
B62J27/00
B62J45/415
B62J3/10
G08B21/02
B60T7/12 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021562195
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 IB2020060810
(87)【国際公開番号】W WO2021111224
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2019220993
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】井苅 佳秀
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-522865(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0285658(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012201802(DE,A1)
【文献】特開2017-095089(JP,A)
【文献】特開2018-118716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 6/24
B62J 27/00
B62J 45/415
B62J 3/10
G08B 21/02
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両(100)のライダーの運転を支援するライダー支援システム(1)であって、
前記鞍乗型車両(100)に搭載され、インフラ設備又は該鞍乗型車両(100)と異なる車両から出力された情報を無線で受信する通信装置(15)と、
前記ライダー支援システム(1)の動作を司る制御装置(50)と、
を備えており、
前記制御装置(50)は、
前記通信装置(15)の出力に基づいて、前記鞍乗型車両(100)の側方に近づく物体を特定する物体特定部(51)と、
旋回走行中の前記鞍乗型車両(100)における前記ライダーの身体の一部分である取得対象部(P1)の位置情報を取得する身体位置情報取得部(52)と、
前記身体位置情報取得部(52)で取得された前記位置情報に基づいて、前記物体特定部(51)で特定された前記物体と前記取得対象部(P1)との相対的な位置関係を取得して、該物体への前記ライダーの衝突可能性を判定する衝突可能性判定部(53)と、
前記衝突可能性判定部(53)で前記衝突可能性が高いと判定された場合に、前記ライダー支援システム(1)に安全動作を実行させる安全動作実行部(54)と、
を備えている、
ライダー支援システム。
【請求項2】
前記物体特定部(51)は、前記鞍乗型車両(100)が走行するレーンに隣接するレーンにおいて、該鞍乗型車両(100)と反対方向に走行する車両を前記物体として特定する、
請求項1に記載のライダー支援システム。
【請求項3】
前記物体特定部(51)は、前記鞍乗型車両(100)が走行するレーンに隣接するレーンにおいて、該鞍乗型車両(100)と同一方向に走行する車両を前記物体として特定する、
請求項1又は2に記載のライダー支援システム。
【請求項4】
前記物体特定部(51)は、前記鞍乗型車両(100)が走行するレーンの外側にある障害物を前記物体として特定する、
請求項1~3の何れか一項に記載のライダー支援システム。
【請求項5】
前記身体位置情報取得部(52)は、前記鞍乗型車両(100)の走行位置情報と、該鞍乗型車両(100)に生じているロール角情報と、に基づいて、前記取得対象部(P1)の前記位置情報を取得する、
請求項1~4の何れか一項に記載のライダー支援システム。
【請求項6】
前記鞍乗型車両(100)に搭載され、該鞍乗型車両(100)の姿勢を検出する姿勢検出装置(30)を備えており、
前記身体位置情報取得部(52)は、前記姿勢検出装置(30)の出力に基づいて、前記ロール角情報を取得する、
請求項5に記載のライダー支援システム。
【請求項7】
前記鞍乗型車両(100)に搭載され、該鞍乗型車両(100)の挙動を検出する挙動検出装置(40)を備えており、
前記身体位置情報取得部(52)は、前記挙動検出装置(40)の出力に基づいて取得された前記鞍乗型車両(100)の車体速度情報と、該鞍乗型車両(100)が走行するレーンの曲がり度情報と、に基づいて、前記ロール角情報を取得する、
請求項5に記載のライダー支援システム。
【請求項8】
前記身体位置情報取得部(52)は、更に前記ライダーの体格情報に基づいて、前記取得対象部(P1)の前記位置情報を取得する、
請求項5~7の何れか一項に記載のライダー支援システム。
【請求項9】
前記ライダーによる設定操作を受け付ける入力装置(20)を備えており、
前記身体位置情報取得部(52)は、前記入力装置(20)における前記設定操作に基づいて、前記体格情報を取得する、
請求項8に記載のライダー支援システム。
【請求項10】
前記体格情報は、固定値として設定された想定情報である、
請求項8に記載のライダー支援システム。
【請求項11】
前記ライダーの着用物(110)の位置を検出する着用物位置検出装置(90)を備えており、
前記身体位置情報取得部(52)は、前記着用物位置検出装置(90)の出力に基づいて、前記取得対象部(P1)の前記位置情報を取得する、
請求項1~4の何れか一項に記載のライダー支援システム。
【請求項12】
前記安全動作実行部(54)は、前記安全動作として、前記ライダーへの警告動作を実行する、
請求項1~11の何れか一項に記載のライダー支援システム。
【請求項13】
前記安全動作実行部(54)は、前記安全動作として、前記鞍乗型車両(100)の前輪のみに制動力を自動で生じさせる制動動作、又は、該前輪に制動力を自動で生じさせるとともに該鞍乗型車両(100)の後輪に該前輪に生じさせる制動力よりも小さな制動力を自動で生じさせる制動動作を実行する、
請求項1~12の何れか一項に記載のライダー支援システム。
【請求項14】
前記安全動作実行部(54)は、前記安全動作として、前記鞍乗型車両(100)のステアリングの操舵角を自動で変化させる操舵動作を実行する、
請求項1~13の何れか一項に記載のライダー支援システム。
【請求項15】
鞍乗型車両(100)のライダーの運転を支援するライダー支援システム(1)の制御方法であって、
前記ライダー支援システム(1)は、
前記鞍乗型車両(100)に搭載され、インフラ設備又は該鞍乗型車両(100)と異なる車両から出力された情報を無線で受信する通信装置(15)と、
前記ライダー支援システム(1)の動作を司る制御装置(50)と、
を備えており、
前記制御方法は、
前記制御装置(50)の物体特定部(51)が、前記通信装置(15)の出力に基づいて、前記鞍乗型車両(100)の側方に近づく物体を特定する物体特定ステップ(S101)と、
前記制御装置(50)の身体位置情報取得部(52)が、旋回走行中の前記鞍乗型車両(100)における前記ライダーの身体の一部分である取得対象部(P1)の位置情報を取得する身体位置情報取得ステップ(S102)と、
前記制御装置(50)の衝突可能性判定部(53)が、前記身体位置情報取得ステップ(S102)で取得された前記位置情報に基づいて、前記物体特定ステップ(S101)で特定された前記物体と前記取得対象部(P1)との相対的な位置関係を取得して、該物体への前記ライダーの衝突可能性を判定する衝突可能性判定ステップ(S103)と、
前記制御装置(50)の安全動作実行部(54)が、前記衝突可能性判定ステップ(S103)で前記衝突可能性が高いと判定された場合に、前記ライダー支援システム(1)に安全動作を実行させる安全動作実行ステップ(S104)と、
を備えている、
ライダー支援システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のライダーの運転を支援するライダー支援システムと、その制御方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のライダー支援システムとして、鞍乗型車両が旋回走行している際に、その鞍乗型車両に搭載された周囲環境検出装置の出力に基づいて、ライダーの身体がその鞍乗型車両が走行するレーンからはみ出しているか否かが判定され、ライダーの身体がはみ出していると判定された場合に、制御装置が安全動作を実行するものが知られている。周囲環境検出装置は、鞍乗型車両の周囲環境を検出するものである(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-522865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のライダー支援システムでは、鞍乗型車両のライダーが、危険の有無を判断した上で、意図的に、その鞍乗型車両が走行するレーンから身体の少なくとも一部がはみ出るような旋回走行を行う場合であっても、安全動作が実行される。そのため、ライダーによっては、安全動作によって不必要に運転が妨げられると感じる場合が生じかねない。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、鞍乗型車両のライダーの快適性と旋回走行での安全性の両立が可能なライダー支援システムと、そのようなライダー支援システムの制御方法と、を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るライダー支援システムは、鞍乗型車両のライダーの運転を支援するライダー支援システムであって、前記鞍乗型車両に搭載され、インフラ設備又は該鞍乗型車両と異なる車両から出力された情報を無線で受信する通信装置と、前記ライダー支援システムの動作を司る制御装置と、を備えており、前記制御装置は、前記通信装置の出力に基づいて、前記鞍乗型車両の側方に近づく物体を特定する物体特定部と、旋回走行中の前記鞍乗型車両における前記ライダーの身体の少なくとも一部分の位置情報を取得する身体位置情報取得部と、前記身体位置情報取得部で取得された前記位置情報に基づいて、前記物体特定部で特定された前記物体への前記ライダーの衝突可能性を判定する衝突可能性判定部と、前記衝突可能性判定部で前記衝突可能性が高いと判定された場合に、前記ライダー支援システムに安全動作を実行させる安全動作実行部と、を備えている。
【0007】
また、本発明に係るライダー支援システムの制御方法は、鞍乗型車両のライダーの運転を支援するライダー支援システムの制御方法であって、前記ライダー支援システムは、前記鞍乗型車両に搭載され、インフラ設備又は該鞍乗型車両と異なる車両から出力された情報を無線で受信する通信装置と、前記ライダー支援システムの動作を司る制御装置と、を備えており、前記制御方法は、前記制御装置の物体特定部が、前記通信装置の出力に基づいて、前記鞍乗型車両の側方に近づく物体を特定する物体特定ステップと、前記制御装置の身体位置情報取得部が、旋回走行中の前記鞍乗型車両における前記ライダーの身体の少なくとも一部分の位置情報を取得する身体位置情報取得ステップと、前記制御装置の衝突可能性判定部が、前記身体位置情報取得ステップで取得された前記位置情報に基づいて、前記物体特定ステップで特定された前記物体への前記ライダーの衝突可能性を判定する衝突可能性判定ステップと、前記制御装置の安全動作実行部が、前記衝突可能性判定ステップで前記衝突可能性が高いと判定された場合に、前記ライダー支援システムに安全動作を実行させる安全動作実行ステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るライダー支援システム、及び、ライダー支援システムの制御方法では、制御装置の物体特定部が、鞍乗型車両の側方に近づく物体を特定し、制御装置の身体位置情報取得部が、旋回走行中の鞍乗型車両におけるライダーの身体の少なくとも一部分の位置情報を取得し、制御装置の衝突可能性判定部が、その位置情報に基づいて、特定された物体へのライダーの衝突可能性を判定し、制御装置の安全動作実行部が、衝突可能性が高いと判定された場合に、ライダー支援システムに安全動作を実行させる。そのため、危険の有無が判断された上で安全動作が実行されることとなって、ライダーの快適性と旋回走行での安全性の両立が可能となる。更に、制御装置の物体特定部は、インフラ設備又は他車両から出力された情報を受信する通信装置の出力に基づいて、鞍乗型車両の側方に近づく物体を特定する。そのように構成されることで、周囲環境検出装置で検出できないような位置に存在する物体に対しても衝突可能性を判定することが可能となって、旋回走行での安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係るライダー支援システムの、鞍乗型車両への搭載状態を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るライダー支援システムの、システム構成を説明するための図である。
図3】本発明の実施の形態1に係るライダー支援システムの、身体位置情報取得部の処理を説明するための図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るライダー支援システムの、制御装置における制御フローの一例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態2に係るライダー支援システムの、鞍乗型車両への搭載状態を示す図である。
図6】本発明の実施の形態2に係るライダー支援システムの、システム構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るライダー支援システム、及び、ライダー支援システムの制御方法について、図面を用いて説明する。
【0011】
なお、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係るライダー支援システム、及び、ライダー支援システムの制御方法は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。
【0012】
例えば、以下では、本発明に係るライダー支援システムが、自動二輪車に用いられる場合を説明しているが、本発明に係るライダー支援システムが、自動二輪車以外の他の鞍乗型車両に用いられてもよい。鞍乗型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味する。鞍乗型車両には、例えば、モータサイクル(自動二輪車、自動三輪車)、自転車等が含まれる。モータサイクルには、エンジンを推進源とする自動二輪車又は自動三輪車、モータを推進源とする自動二輪車又は自動三輪車等が含まれ、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な車両を意味する。自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。
【0013】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0014】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係るライダー支援システムを説明する。
【0015】
<ライダー支援システムの構成>
実施の形態1に係るライダー支援システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係るライダー支援システムの、鞍乗型車両への搭載状態を示す図である。図2は、本発明の実施の形態1に係るライダー支援システムの、システム構成を説明するための図である。図3は、本発明の実施の形態1に係るライダー支援システムの、身体位置情報取得部の処理を説明するための図である。
【0016】
図1及び図2に示されるように、ライダー支援システム1は、鞍乗型車両100に搭載される。ライダー支援システム1は、周囲環境検出装置10と、通信装置15と、入力装置20と、姿勢検出装置30と、挙動検出装置40と、制御装置50と、を含む。
【0017】
ライダー支援システム1では、通信装置15を用いて、鞍乗型車両100の周囲に位置する対象(例えば、対向車、並走車、先行車、後続車、障害物、レーン、標識等)が認識され、ライダーの運転を支援する機能を実現するための各種装置(例えば、警告装置60、制動装置70、ステアリング駆動装置80等)の動作を制御するために、その認識された対象の情報が制御装置50に供給される。ライダー支援システム1の各部は、ライダー支援システム1に専ら用いられるものであってもよく、また、他のシステムと共用されるものであってもよい。
【0018】
周囲環境検出装置10は、鞍乗型車両100の周囲環境を監視し、鞍乗型車両100の周囲環境の各種情報を検出する。周囲環境検出装置10は、例えば、鞍乗型車両100の前方、後方、側方等を撮像するカメラ、鞍乗型車両100から鞍乗型車両100の前方、後方、側方等に存在する対象までの距離を検出可能な測距センサ等である。周囲環境検出装置10の検出結果は、制御装置50に出力される。
【0019】
通信装置15は、インフラ設備又は鞍乗型車両100の周囲に位置する他車両から出力された情報を無線で受信する。通信装置15は、インフラ設備又は他車両からその情報を直接取得してもよく、また、中継機器を介してその情報を間接的に取得してもよい。その情報は、少なくとも鞍乗型車両100の周囲に位置する物体の位置情報を含む。その位置情報には、必要に応じて、その物体の移動軌跡の情報が含まれる。例えば、その位置情報は、インフラ設備の記憶装置に記憶された物体位置(例えば、道路に付設された物の位置等)の情報であってもよく、また、インフラ設備の検出装置によって取得された物体位置(例えば、後述される衝突可能性の判定対象となる車両の位置、道路に付設された物の位置、通行人の位置)の情報であってもよく、また、後述される衝突可能性の判定対象となる車両の検出装置によって取得される物体位置(例えば、その車両の位置等)の情報であってもよく、また、後述される衝突可能性の判定対象となる車両以外の車両の検出装置によって取得される物体位置(例えば、後述される衝突可能性の判定対象となる車両の位置、道路に付設された物の位置、通行人の位置等)の情報であってもよい。
【0020】
入力装置20は、ライダーによる設定操作(例えば、選択操作、入力操作等)を受け付けて、その情報を制御装置50に出力する。ここで、鞍乗型車両100では、後述されるように、制御装置50によってライダー支援動作が実行可能である。ライダーは、入力装置20を用いて、ライダー支援動作に関連する設定操作を行うことができる。入力装置20としては、例えば、レバー、ボタン又はタッチパネル等が用いられる。入力装置20は、例えば、ハンドル周辺に設けられる。入力装置20が、その設定操作に必要な情報を表示するための表示画面を含んでいるとよい。
【0021】
姿勢検出装置30は、鞍乗型車両100の姿勢を検出する。姿勢検出装置30で検出された姿勢情報は、制御装置50に出力される。姿勢検出装置30は、例えば、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサを備えた慣性計測装置である。姿勢検出装置30は、少なくとも、鞍乗型車両100のロール角情報を出力する。図3に示されるように、ロール角Rは、鞍乗型車両100の直立状態を基準とする車幅方向への倒れ角と定義される。姿勢検出装置30は、ロール角情報として、ロール角R自体を出力してもよく、また、ロール角Rに実質的に換算可能な他の物理量を出力してもよい。
【0022】
挙動検出装置40は、鞍乗型車両100の挙動を検出する。挙動検出装置40で検出された挙動情報は、制御装置50に出力される。挙動検出装置40は、例えば、前輪回転速度センサ、後輪回転速度センサ等を含む。挙動検出装置40は、少なくとも、鞍乗型車両100の車体速度情報を出力する。挙動検出装置40は、車体速度情報として、車体速度自体を出力してもよく、また、車体速度に実質的に換算可能な他の物理量を出力してもよい。
【0023】
制御装置50は、ライダー支援システム1の動作を司る。制御装置50の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されていてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュールであってもよい。制御装置50は、例えば、1つにまとめられていてもよく、また、複数に分かれていてもよい。
【0024】
制御装置50は、図2に示されるように、物体特定部51と、身体位置情報取得部52と、衝突可能性判定部53と、安全動作実行部54と、を備える。
【0025】
物体特定部51は、通信装置15から出力される情報に基づいて、鞍乗型車両100の側方に近づく物体を特定する。例えば、物体特定部51は、周囲環境検出装置10から出力される情報、鞍乗型車両100に搭載されたGPSの位置信号等に基づいて、鞍乗型車両100が走行するレーンに隣接するレーンを特定し、そのレーンにおいて鞍乗型車両100と反対方向に走行していて、且つ、鞍乗型車両100に近づいて来ている車両、つまり対向車が有る場合に、その車両を鞍乗型車両100の側方に近づく物体として特定する。また、例えば、物体特定部51は、周囲環境検出装置10から出力される情報、鞍乗型車両100に搭載されたGPSの位置信号等に基づいて、鞍乗型車両100が走行するレーンに隣接するレーンを特定し、そのレーンにおいて鞍乗型車両100と同一方向に走行していて、且つ、鞍乗型車両100に近づいて来ている車両、つまり並走車が有る場合に、その車両を鞍乗型車両100の側方に近づく物体として特定する。また、例えば、物体特定部51は、周囲環境検出装置10から出力される情報、鞍乗型車両100に搭載されたGPSの位置信号等に基づいて、鞍乗型車両100が走行するレーンを特定し、鞍乗型車両100の進行方向におけるその鞍乗型車両100が走行するレーンの外側に障害物(例えば、道路に付設された物、通行人等)がある場合に、その障害物を鞍乗型車両100の側方に近づく物体として特定する。なお、物体特定部51が、レーンと物体との関係性を認識することなく、つまり、鞍乗型車両100の車幅方向における予め設定された距離範囲内に侵入する物体を、鞍乗型車両100の側方に近づく物体として特定してもよい。また、側方に近づく物体には、鞍乗型車両100の側方に向かって自ら移動している物体と、鞍乗型車両100が移動することによって鞍乗型車両100の側方までの距離が短くなる物体と、が含まれる。
【0026】
身体位置情報取得部52は、旋回走行中の鞍乗型車両100におけるライダーの少なくとも一部分の位置情報を取得する。その位置情報は、ライダーの頭部(例えば、頭頂部、頭部の中心位置等)の位置情報であってもよく、また、ライダーの肩の位置情報であってもよく、また、ライダーの足の位置情報であってもよく、また、ライダーの手の位置情報であってもよく、また、それらの組み合わせであってもよい。以下では、身体位置情報取得部52による位置情報の取得の対象となるライダーの身体の部分を「取得対象部P1」と称する場合がある。
【0027】
身体位置情報取得部52は、鞍乗型車両100が走行するレーンの幅方向での、基準位置(例えば、レーンの境界等)からライダーの取得対象部P1までの距離を位置情報として取得してもよく、また、ライダーの取得対象部P1の位置しているレーンを位置情報として取得してもよく、また、ライダーの取得対象部P1が、鞍乗型車両100が走行するレーン内に位置しているか否かを位置情報として取得してもよい。
【0028】
一例として、身体位置情報取得部52は、鞍乗型車両100の走行位置情報を取得する。走行位置情報は、例えば、周囲環境検出装置10から出力される情報、鞍乗型車両100に搭載されたGPSの位置信号等に基づいて取得される。例えば、図3に示されるように、走行位置情報は、周囲環境検出装置10又はGPSの取付位置P0の、鞍乗型車両100が走行するレーンの幅方向での位置を表す情報である。また、身体位置情報取得部52は、姿勢検出装置30の出力に基づいて、鞍乗型車両100に生じているロール角情報を取得する。また、身体位置情報取得部52は、ライダーの体格情報を取得する。体格情報は、入力装置20を用いてライダーが設定するものであってもよく、また、固定値として予め設定されている想定情報であってもよい。例えば、身体位置情報取得部52が、ライダーの頭部の位置情報を取得する場合、想定情報は、ライダーの身長又は座高が最も高い場合を想定したものであるとよい。また、入力装置20を用いてライダーが体格情報を設定する場合には、その体格情報は、ライダーの身長又は座高の高低の区分の情報であってもよく、また、実際の身長又は座高の値であってもよい。身体位置情報取得部52は、体格情報を用いて、取付位置P0からライダーの取得対象部P1までの距離ΔHを推定する。そして、身体位置情報取得部52は、ロール角Rを用いてずれ量Sを算出して、ライダーの取得対象部P1の、鞍乗型車両100が走行するレーンの幅方向での位置を表す情報を位置情報として取得する。
【0029】
他の一例として、身体位置情報取得部52は、鞍乗型車両100の走行位置情報を取得する。走行位置情報は、例えば、周囲環境検出装置10から出力される情報、鞍乗型車両100に搭載されたGPSの位置信号等に基づいて取得される。例えば、図3に示されるように、走行位置情報は、周囲環境検出装置10又はGPSの取付位置P0の、鞍乗型車両100が走行するレーンの幅方向での位置を表す情報である。また、身体位置情報取得部52は、挙動検出装置40の出力に基づいて、鞍乗型車両100に生じている速度情報を取得し、その速度情報と鞍乗型車両100が走行するレーンの曲がり度情報を用いて、鞍乗型車両100に生じているロール角情報を推定する。身体位置情報取得部52は、周囲環境検出装置10の出力に基づいてレーンの曲がり度情報を取得してもよく、また、地図情報を用いてレーンの曲がり度情報を取得してもよい。また、身体位置情報取得部52は、ライダーの体格情報を取得する。体格情報は、入力装置20を用いてライダーが設定するものであってもよく、また、固定値として予め設定されている想定情報であってもよい。例えば、身体位置情報取得部52が、ライダーの頭部の位置情報を取得する場合、想定情報は、ライダーの身長又は座高が最も高い場合を想定したものであるとよい。また、入力装置20を用いてライダーが体格情報を設定する場合には、その体格情報は、ライダーの身長又は座高の高低の区分の情報であってもよく、また、実際の身長又は座高の値であってもよい。身体位置情報取得部52は、体格情報を用いて、取付位置P0からライダーの取得対象部P1までの距離ΔHを推定する。そして、身体位置情報取得部52は、ロール角Rを用いてずれ量Sを算出して、ライダーの取得対象部P1の、鞍乗型車両100が走行するレーンの幅方向での位置を表す情報を位置情報として取得する。
【0030】
なお、上述の2つの例において、身体位置情報取得部52が、体格情報を取得することなく、鞍乗型車両100の走行位置情報とロール角情報のみを用いて、ライダーの取得対象部P1の位置情報を取得してもよい。例えば、取付位置P0が、鞍乗型車両100が走行するレーンの境界に近接しており、且つ、鞍乗型車両100にその境界の方向への大きなロール角Rが生じている場合に、身体位置情報取得部52が、体格情報を参照することなく、ライダーの取得対象部P1が、鞍乗型車両100が走行するレーンに隣接するレーンに位置しているとの位置情報を取得してもよく、また、鞍乗型車両100が走行するレーンの外側に位置しているとの位置情報を取得してもよい。
【0031】
また、以上では、身体位置情報取得部52が、旋回走行中の鞍乗型車両100におけるライダーの姿勢が、直立状態で走行中の鞍乗型車両100における標準的なライダーの姿勢と同じであるとの前提のもとに、体格情報のみを用いて取得対象部P1の位置を推定する場合を説明したが、身体位置情報取得部52が、旋回走行中の鞍乗型車両100における標準的なライダーの姿勢に基づいて、体格情報のみを用いて推定された取得対象部P1の位置を補正し、その補正された位置を位置情報として取得してもよい。その補正は、鞍乗型車両100に生じているロール角Rに応じたものであるとよい。また、身体位置情報取得部52が、取付位置P0からライダーの取得対象部P1までの距離ΔHの実測値を取得してもよい。その実測は、例えば、鞍乗型車両100に取付位置P0からライダーの取得対象部P1までの方向及び距離を検出可能なカメラ、測距センサ等を設けることにより実現される。
【0032】
衝突可能性判定部53は、身体位置情報取得部52で取得された位置情報に基づいて、物体特定部51で特定された物体へのライダーの衝突可能性を判定する。
【0033】
一例として、衝突可能性判定部53は、身体位置情報取得部52で取得された位置情報が、鞍乗型車両100が走行するレーンに隣接するレーンにライダーの取得対象部P1が位置していることを表す情報であり、且つ、物体特定部51で、その隣接するレーンを鞍乗型車両100に近づくように走行する車両が特定されている場合に、ライダーの衝突可能性が高いと判定する。
【0034】
他の一例として、衝突可能性判定部53は、身体位置情報取得部52で取得された位置情報が、鞍乗型車両100が走行するレーンの外側にライダーの取得対象部P1が位置していることを表す情報であり、且つ、物体特定部51で、そのレーンのライダーの取得対象部P1に近い側の境界の近くに位置している障害物が特定されている場合に、ライダーの衝突可能性が高いと判定する。
【0035】
他の一例として、衝突可能性判定部53は、物体特定部51で特定された車両の移動軌跡を予測し、ライダーの取得対象部P1がその軌跡上に位置している場合に、ライダーの衝突可能性が高いと判定する。
【0036】
他の一例として、衝突可能性判定部53は、鞍乗型車両100の走行によるライダーの取得対象部P1の移動軌跡を予測し、物体特定部51で特定された障害物がその軌跡上に位置している場合に、ライダーの衝突可能性が高いと判定する。
【0037】
安全動作実行部54は、衝突可能性判定部53でライダーの衝突可能性が高いと判定された場合に、鞍乗型車両100に搭載されている各装置の動作を制御することによって、ライダー支援システム1に安全動作を実行させる。
【0038】
一例として、安全動作実行部54は、警告装置60を用いて、ライダーへの警告動作を実行する。警告装置60は、音(つまり、聴覚器が感覚器として用いられる知覚)によってライダーに警告するものであってもよく、また、表示(つまり、視覚器が感覚器として用いられる知覚)によってライダーに警告するものであってもよく、また、振動(つまり、触覚器が感覚器として用いられる知覚)によってライダーに警告するものであってもよく、また、それらの組み合わせによって警告するものであってもよい。また、警告装置60は、鞍乗型車両100に設けられていてもよく、また、ライダーの着用物(例えば、ヘルメット等)110等の鞍乗型車両100に付随する装備に設けられていてもよい。また、警告装置60は、1つの出力器で構成されていてもよく、また、複数の同一種類又は異なる種類の出力器で構成されていてもよい。その複数の出力器は、一体的に設けられていてもよく、また、別体的に設けられていてもよい。また、警告装置60が他の装置によって代用されていてもよい。例えば、制動装置70によって、自動で小刻みに制動力が増減されることで、ライダーへの振動による警告が行われてもよい。
【0039】
他の一例として、安全動作実行部54は、制動装置70を用いて、鞍乗型車両100の少なくとも前輪に自動で制動力を生じさせる制動動作を実行する。安全動作実行部54は、鞍乗型車両100の前輪のみに制動力を生じさせてもよく、また、前輪に制動力を生じさせるとともに、後輪にその制動力よりも小さい制動力を生じさせてもよい。そのような動作により、鞍乗型車両100に生じているロール角Rが減少する。
【0040】
他の一例として、安全動作実行部54は、ステアリング駆動装置80を用いて、鞍乗型車両100のステアリングの操舵角を自動で変化させる操舵動作を実行する。安全動作実行部54は、鞍乗型車両100の進行方向が物体から逸れる方向に、操舵角を変化させる。
【0041】
<ライダー支援システムの動作>
実施の形態1に係るライダー支援システムの動作について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1に係るライダー支援システムの、制御装置における制御フローの一例を示す図である。
【0042】
制御装置50は、ライダー支援動作が有効になっており、且つ、鞍乗型車両100が旋回走行している間において、図4に示される制御フローを繰り返し実行する。ここで、旋回走行には、鞍乗型車両100が曲がっている走行レーンに沿って走行することで生じる旋回走行と、鞍乗型車両100がレーンを変更することで生じる旋回走行と、鞍乗型車両100が走行しているレーン内で走行位置を変更することで生じる旋回走行と、が含まれる。
【0043】
(物体特定ステップ)
ステップS101において、制御装置50の物体特定部51は、通信装置15から出力される情報に基づいて、鞍乗型車両100の側方に近づく物体を特定する。
【0044】
(身体位置情報取得ステップ)
ステップS102において、制御装置50の身体位置情報取得部52は、鞍乗型車両100のライダーの取得対象部P1の位置情報を取得する。
【0045】
(衝突可能性判定ステップ)
ステップS103において、制御装置50の衝突可能性判定部53は、身体位置情報取得部52で取得された位置情報に基づいて、物体特定部51で特定された物体へのライダーの衝突可能性が高いか否かを判定する。衝突可能性判定部53が、衝突可能性が高いと判定すると、ステップS104に進み、そうではない場合には、S101に戻る。
【0046】
(安全動作実行ステップ)
ステップS104において、制御装置50の安全動作実行部54は、鞍乗型車両100に搭載されている各装置(例えば、警告装置60、制動装置70、ステアリング駆動装置80等)の動作を制御することによって、ライダー支援システム1に安全動作を実行させる。
【0047】
<ライダー支援システムの効果>
実施の形態1に係るライダー支援システムの効果について説明する。
【0048】
ライダー支援システム1では、制御装置50が、鞍乗型車両100の側方に近づく物体を特定する物体特定部51と、旋回走行中の鞍乗型車両100におけるライダーの身体の少なくとも一部分(取得対象部P1)の位置情報を取得する身体位置情報取得部52と、身体位置情報取得部52で取得されたその位置情報に基づいて、物体特定部51で特定された物体へのライダーの衝突可能性を判定する衝突可能性判定部53と、衝突可能性判定部53で衝突可能性が高いと判定された場合に、ライダー支援システム1に安全動作を実行させる安全動作実行部54と、を備えている。そのため、危険の有無が判断された上で安全動作が実行されることとなって、ライダーの快適性と旋回走行での安全性の両立が可能となる。更に、物体特定部51は、インフラ設備又は他車両から出力された情報を受信する通信装置15の出力に基づいて、鞍乗型車両100の側方に近づく物体を特定する。そのように構成されることで、周囲環境検出装置10で検出できないような位置に存在する物体に対しても衝突可能性を判定することが可能となって、旋回走行での安全性が向上する。なお、鞍乗型車両100に周囲環境検出装置10が設けられていなくてもよい。
【0049】
好ましくは、物体特定部51は、鞍乗型車両100が走行するレーンに隣接するレーンにおいて、鞍乗型車両100と反対方向に走行する車両を物体として特定する。そのように構成されることで、例えば、旋回走行中のライダーに車両が正面から衝突することを適切に抑制することが可能となる。
【0050】
好ましくは、物体特定部51は、鞍乗型車両100が走行するレーンに隣接するレーンにおいて、鞍乗型車両100と同一方向に走行する車両を物体として特定する。そのように構成されることで、例えば、旋回走行中のライダーに車両が後方から衝突することを適切に抑制することが可能となる。
【0051】
好ましくは、物体特定部51は、鞍乗型車両100が走行するレーンの外側にある障害物を物体として特定する。そのように構成されることで、例えば、旋回走行中のライダーに障害物が正面から衝突することを適切に抑制することが可能となる。
【0052】
好ましくは、身体位置情報取得部52は、鞍乗型車両100の走行位置情報と、鞍乗型車両100に生じているロール角情報と、に基づいてライダーの身体の少なくとも一部分の位置情報を取得する。そのように構成されることで、精度の高い位置情報を用いて衝突可能性を判定することが可能となって、旋回走行での安全性が向上される。
【0053】
特に、身体位置情報取得部52が、姿勢検出装置30の出力に基づいて、ロール角情報を取得するとよい。また、身体位置情報取得部52が、挙動検出装置40の出力に基づいて取得された鞍乗型車両100の車体速度情報と、鞍乗型車両100が走行するレーンの曲がり度情報と、に基づいて、ロール角情報を取得するとよい。それらのように構成されることで、精度の高い位置情報を用いて衝突可能性を判定することが可能となって、旋回走行での安全性が向上される。
【0054】
特に、身体位置情報取得部52が、更にライダーの体格情報に基づいて、ライダーの身体の少なくとも一部分の位置情報を取得するとよい。そのように構成されることで、ライダーの個人差が加味された精度の高い位置情報を取得することが可能となって、旋回走行での安全性が向上される。
【0055】
好ましくは、安全動作実行部54は、安全動作として、ライダーへの警告動作を実行する。そのように構成されることで、旋回走行中のライダーの危険の認知を適切に支援することが可能となる。
【0056】
好ましくは、安全動作実行部54は、安全動作として、鞍乗型車両100の前輪のみに制動力を自動で生じさせる制動動作、又は、前輪に制動力を自動で生じさせるとともに鞍乗型車両100の後輪に前輪に生じさせる制動力よりも小さな制動力を自動で生じさせる制動動作を実行する。そのように構成されることで、旋回走行中の鞍乗型車両100を起き上がらせて、衝突を自動で回避することが可能となって、旋回走行中のライダーを安全化することが可能となる。
【0057】
好ましくは、安全動作実行部54は、安全動作として、鞍乗型車両100のステアリングの操舵角を自動で変化させる操舵動作を実行する。そのように構成されることで、旋回走行中の鞍乗型車両100を起き上がらせて、衝突を自動で回避することが可能となって、旋回走行中のライダーを安全化することが可能となる。
【0058】
実施の形態2.
以下に、実施の形態2に係るライダー支援システムについて説明する。
【0059】
<ライダー支援システムの構成及び動作>
実施の形態2に係るライダー支援システムの構成及び動作について説明する。
図5は、本発明の実施の形態2に係るライダー支援システムの、鞍乗型車両への搭載状態を示す図である。図6は、本発明の実施の形態2に係るライダー支援システムの、システム構成を説明するための図である。
【0060】
図5及び図6に示されるように、ライダー支援システム1は、周囲環境検出装置10と、入力装置20と、着用物位置検出装置90と、制御装置50と、を含む。なお、着用物位置検出装置90、及び、制御装置50の身体位置情報取得部52以外は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0061】
着用物位置検出装置90は、ライダーの着用物(例えば、ヘルメット、肩あて、ブーツ、膝あて、グローブ等)110の位置を検出する。例えば、着用物位置検出装置90は、鞍乗型車両100に搭載され、鞍乗型車両100から着用物110までの方向及び距離を検出可能なカメラ、測距センサ等である。着用物110が、その検出を有利にする構成(例えば、マーカ、反射体、発信機等)を備えているとよい。また、例えば、着用物位置検出装置90は、着用物110に搭載されたGPSの位置信号を受信する受信機である。つまり、着用物位置検出装置90は、着用物110の、鞍乗型車両100に対する相対的な位置を検出するものであってもよく、また、世界座標系での位置を検出するものであってもよい。
【0062】
身体位置情報取得部52は、鞍乗型車両100のライダーの取得対象部P1の位置情報として、ライダーの着用物110の位置情報を取得する。着用物位置検出装置90が、着用物110の鞍乗型車両100に対する相対的な位置を検出するものである場合には、身体位置情報取得部52は、鞍乗型車両100の走行位置情報を取得し、その走行位置情報と、着用物位置検出装置90の出力と、に基づいて、着用物110の、鞍乗型車両100が走行するレーンの幅方向での位置を表す情報を取得対象部P1の位置情報として取得する。また、着用物位置検出装置90が、着用物110の世界座標系での位置を検出するものである場合には、着用物位置検出装置90の出力に基づいて、着用物110の、鞍乗型車両100が走行するレーンの幅方向での位置を表す情報を取得対象部P1の位置情報として取得する。
【0063】
<ライダー支援システムの効果>
実施の形態2に係るライダー支援システムの効果について説明する。
【0064】
ライダー支援システム1では、制御装置50が、鞍乗型車両100の側方に近づく物体を特定する物体特定部51と、旋回走行中の鞍乗型車両100におけるライダーの身体の少なくとも一部分(取得対象部P1)の位置情報を取得する身体位置情報取得部52と、身体位置情報取得部52で取得されたその位置情報に基づいて、物体特定部51で特定された物体へのライダーの衝突可能性を判定する衝突可能性判定部53と、衝突可能性判定部53で衝突可能性が高いと判定された場合に、ライダー支援システム1に安全動作を実行させる安全動作実行部54と、を備えている。そのため、危険の有無が判断された上で安全動作が実行されることとなって、ライダーの快適性と旋回走行での安全性の両立が可能となる。更に、物体特定部51は、インフラ設備又は他車両から出力された情報を受信する通信装置15の出力に基づいて、鞍乗型車両100の側方に近づく物体を特定する。そのように構成されることで、周囲環境検出装置10で検出できないような位置に存在する物体に対しても衝突可能性を判定することが可能となって、旋回走行での安全性が向上する。なお、鞍乗型車両100に周囲環境検出装置10が設けられていなくてもよい。
【0065】
好ましくは、身体位置情報取得部52は、着用物位置検出装置90の出力に基づいて、位置情報を取得する。そのように構成されることで、精度の高い位置情報を用いて衝突可能性を判定することが可能となって、旋回走行での安全性が向上される。
【0066】
以上、実施の形態1及び実施の形態2について説明したが、本発明は各実施の形態の説明に限定されない。例えば、各実施の形態の一部のみが実施されてもよく、また、各実施の形態の全て又は一部が組み合わされてもよい。また、例えば、図4に示される制御フローにおいて、ステップS101とステップS102の順序が入れ替えられてもよい。また、図4に示される制御フローに、他のステップが加えられてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ライダー支援システム、10 周囲環境検出装置、15 通信装置、20 入力装置、30 姿勢検出装置、40 挙動検出装置、50 制御装置、51 物体特定部、52 身体位置情報取得部、53 衝突可能性判定部、54 安全動作実行部、60 警告装置、70 制動装置、80 ステアリング駆動装置、90 着用物位置検出装置、100 鞍乗型車両、110 着用物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6