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  • 特許-光拡散性熱硬化型シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】光拡散性熱硬化型シート
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20231228BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231228BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20231228BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20231228BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20231228BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231228BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231228BHJP
   H10K 50/80 20230101ALI20231228BHJP
   H10K 50/84 20230101ALI20231228BHJP
   H10K 50/842 20230101ALI20231228BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20231228BHJP
   H10K 50/85 20230101ALI20231228BHJP
   H10K 50/854 20230101ALI20231228BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20231228BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231228BHJP
   H10K 59/40 20230101ALI20231228BHJP
   H10K 59/80 20230101ALI20231228BHJP
   H10K 59/95 20230101ALI20231228BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20231228BHJP
   H10K 85/40 20230101ALI20231228BHJP
【FI】
G02B5/02 B
H05B33/14 A
H05B33/04
H05B33/02
C08K9/04
C08L63/00 C
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
H10K50/10
H10K50/80
H10K50/84
H10K50/842
H10K50/844
H10K50/85
H10K50/854
H10K59/00
H10K59/10
H10K59/40
H10K59/80
H10K59/95
H10K77/10
H10K85/40
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021563904
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2020045026
(87)【国際公開番号】W WO2021117597
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2019223083
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020108078
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】高木 正利
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-189509(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235824(WO,A1)
【文献】特開2008-137854(JP,A)
【文献】国際公開第2011/049121(WO,A1)
【文献】特開2008-248214(JP,A)
【文献】特開2001-188109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
C08J 5/18
C08K 3/36
C08K 9/04- 9/06
C08L63/00
C08L101/00
H05B33/00-33/28
H05B44/00
H05B45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化型樹脂および表面修飾シリカ粒子を含む熱硬化型樹脂組成物を含み、
前記表面修飾シリカ粒子の平均一次粒子径は、0.1μm以上1.5μm以下であり、かつ、前記表面修飾シリカ粒子は、シランカップリング剤で表面修飾されたシリカ粒子であり、
前記熱硬化型樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂および脂環骨格含有エポキシ樹脂を含むことを特徴とする、光拡散性熱硬化型シート。
【請求項2】
前記シリカ粒子は、無孔質であることを特徴とする、請求項1に記載の光拡散性熱硬化型シート。
【請求項3】
前記表面修飾シリカ粒子の含有割合は、前記熱硬化型樹脂100重量部に対して、5質量部以上50質量部以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光拡散性熱硬化型シート。
【請求項4】
前記熱硬化型樹脂組成物は、前記熱硬化型樹脂組成物を厚み15μmのシート状に形成して熱硬化した場合において、ヘイズ値が35%以上であり、全光線透過率が80%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の光拡散性熱硬化型シート。
【請求項5】
前記熱硬化型樹脂組成物は、顔料粒子をさらに含み、
前記顔料粒子の平均一次粒子径は、100nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光拡散性熱硬化型シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性熱硬化型シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置が備える光学素子を、大気中の水分などにより劣化することを抑制するために、封止材で封止することが知られている。
【0003】
そのような封止材として、例えば、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂と、脂環骨格含有エポキシ樹脂とを含有する画像表示装置封止材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
そして、そのような画像表示装置封止材は、光学素子が埋め込まれた後、硬化することにより、光学素子を封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/235824号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1に記載の画像表示装置封止材を種々の用途に利用することが検討されており、特許文献1に記載の画像表示装置封止材に各用途に応じた性能を付与することが望まれている。
【0007】
例えば、特許文献1に記載の画像表示装置封止材を、一般建築物の窓ガラス、車輌用の窓ガラス、看板、照明具、表示灯などの照明カバー、液晶用バックライト拡散板、表示パネルなどに利用する場合、光源から発せられる光を一様な明るさに拡散透過させ、かつ、直線透過光を減少させることによりランプなどの光源の像を見えなくする性能が求められる。
【0008】
本発明は、ヘイズ値の向上を図ることができながら、外観が良好な光拡散性熱硬化型シートであって、各種製品に優れた光拡散性を付与することができる光拡散性熱硬化型シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、熱硬化型樹脂および表面修飾シリカ粒子を含む熱硬化型樹脂組成物を含み、前記表面修飾シリカ粒子の平均一次粒子径は、0.1μm以上1.5μm以下であり、かつ、前記表面修飾シリカ粒子は、シランカップリング剤で表面修飾されたシリカ粒子である、光拡散性熱硬化型シートを含む。
【0010】
本発明[2]は、前記熱硬化型樹脂は、エポキシ樹脂を含む、上記[1]に記載の光拡散性熱硬化型シートを含む。
【0011】
本発明[3]は、前記シリカ粒子は、無孔質である、上記[1]または[2]に記載の光拡散性熱硬化型シートを含む。
【0012】
本発明[4]は、前記表面修飾シリカ粒子の含有割合は、前記熱硬化型樹脂100重量部に対して、5質量部以上50質量部以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の光拡散性熱硬化型シートを含む。
【0013】
本発明[5]は、前記熱硬化型樹脂組成物は、前記熱硬化型樹脂組成物を厚み15μmのシート状に形成して熱硬化した場合において、ヘイズ値が35%以上であり、全光線透過率が80%以上である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の光拡散性熱硬化型シートを含む。
【0014】
本発明[6]は、前記熱硬化型樹脂組成物は、顔料粒子をさらに含み、前記顔料粒子の平均一次粒子径は、100nm以下である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の光拡散性熱硬化型シートを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光拡散性熱硬化型シートによれば、熱硬化型樹脂組成物が熱硬化型樹脂および表面修飾シリカ粒子を含むので、熱硬化型樹脂組成物の硬化物において、ヘイズ値の向上を図ることができながら、外観の向上を図ることができる。その結果、熱硬化型樹脂組成物の硬化物を含む各種製品に優れた光拡散性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の光拡散性熱硬化型シートの一実施形態としての封止シートの側断面図である。
図2図2は、図1に示す封止層から形成されるシール部材を備える画像表示装置の一実施形態(インセル構造またはオンセル構造を有する態様)としてのタッチセンサ付き有機ELディスプレイの側断面図である。
図3図3は、画像表示装置の他の実施形態(アウトセル構造を有する態様)としてのタッチセンサ付き有機ELディスプレイの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<光拡散性熱硬化型シート>
本発明の光拡散性熱硬化型シートの第1実施形態としての光拡散性熱硬化型封止シート(以下、封止シートともいう。)は、熱硬化型樹脂組成物を含む。熱硬化型樹脂組成物は、熱硬化型樹脂と、表面修飾シリカ粒子とを含有する。
【0018】
<熱硬化型樹脂>
熱硬化型樹脂として、例えば、エポキシ樹脂などが挙げられる。言い換えれば、熱硬化型樹脂は、例えば、エポキシ樹脂を含み、好ましくは、エポキシ樹脂からなる。
【0019】
エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールE型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAD型、それらの混合型など)、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、ビスフェノールノボラック型、ナフトールノボラック型、トリスフェノールノボラック型、ジシクロペンタジエンノボラック型など)、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチル型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂(例えば、トリフェノールメタン型、トリフェノールエタン型、トリフェノールプロパン型など)、脂環骨格含有エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0020】
エポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0021】
エポキシ樹脂のなかでは、好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂および脂環骨格含有エポキシ樹脂が挙げられ、より好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂および脂環骨格含有エポキシ樹脂の併用が挙げられる。
【0022】
言い換えれば、エポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂および脂環骨格含有エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、より好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂および脂環骨格含有エポキシ樹脂を含み、さらに好ましくは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂および脂環骨格含有エポキシ樹脂からなる。
【0023】
エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂および脂環骨格含有エポキシ樹脂を含むと、後述するシール部材の全光線透過率の向上を確実に図ることができる。
【0024】
ビスフェノール型エポキシ樹脂は、常温固形であってもよく、常温液状であってもよいが、好ましくは、常温固形である。なお、「常温固形」とは、常温(23℃)において、流動性を有さない固体状態であることを示し、「常温液状」とは、常温(23℃)において、流動性を有する液体状態であることを示す(以下同様)。
【0025】
言い換えれば、ビスフェノール型エポキシ樹脂は、好ましくは、常温固形のビスフェノール型エポキシ樹脂を含み、より好ましくは、常温固形のビスフェノール型エポキシ樹脂からなる。ビスフェノール型エポキシ樹脂が常温固形のビスフェノール型エポキシ樹脂を含むと、熱硬化型樹脂組成物のシート成形性の向上を図ることができ、かつ、後述するシール部材の透湿性の低減を図ることができる。
【0026】
このようなビスフェノール型エポキシ樹脂のなかでは、好ましくは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられ、より好ましくは、常温固形のビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0027】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば、100以上、好ましくは、1,000以上、より好ましくは、5,000以上、さらに好ましくは、10,000以上、とりわけ好ましくは、20,000以上、特に好ましくは、30,000以上であり、例えば、100,000以下、好ましくは、90,000以下である。重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる(以下同様)。
【0028】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の重量平均分子量が上記下限以上であれば、熱硬化性樹脂組成物の硬化物におけるバリア性および耐屈曲性の向上を図ることができる。
【0029】
ビスフェノール型エポキシ樹脂におけるエポキシ当量は、例えば、100g/eq.以上、好ましくは、500g/eq.以上、より好ましくは、2,000g/eq.以上、さらに好ましくは、4,000g/eq.以上、とりわけ好ましくは、7,000g/eq.以上、例えば、20,000g/eq.以下、好ましくは、16,000g/eq.以下である。エポキシ当量は、JIS K7236:2001に準拠して測定できる(以下同様)。
【0030】
熱硬化型樹脂において、ビスフェノール型エポキシ樹脂の含有割合は、例えば、0質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上、例えば、100質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、50質量%以下である。
【0031】
ビフェニル型エポキシ樹脂は、常温固形であってもよく、常温液状であってもよいが、好ましくは、常温固形である。
【0032】
言い換えれば、ビフェニル型エポキシ樹脂は、好ましくは、常温固形のビフェニル型エポキシ樹脂を含み、さらに好ましくは、常温固形のビフェニル型エポキシ樹脂からなる。ビフェニル型エポキシ樹脂が常温固形のビフェニル型エポキシ樹脂を含むと、熱硬化型樹脂組成物のシート成形性の向上を確実に図ることができ、かつ、後述するシール部材の透湿性の低減を確実に図ることができる。
【0033】
ビフェニル型エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば、100以上、好ましくは、1,000以上、より好ましくは、5,000以上、さらに好ましくは、10,000以上、とりわけ好ましくは、20,000以上、特に好ましくは、30,000以上であり、例えば、100,000以下、好ましくは、90,000以下である。
【0034】
ビフェニル型エポキシ樹脂の重量平均分子量が上記下限以上であると、熱硬化性樹脂組成物の硬化物におけるバリア性および耐屈曲性の向上を図ることができる。
【0035】
ビフェニル型エポキシ樹脂におけるエポキシ当量は、例えば、100g/eq.以上、好ましくは、500g/eq.以上、より好ましくは、2,000g/eq.以上、さらに好ましくは、4,000g/eq.以上、とりわけ好ましくは、7,000g/eq.以上、例えば、20,000g/eq.以下、好ましくは、16,000g/eq.以下である。
【0036】
熱硬化型樹脂において、ビフェニル型エポキシ樹脂の含有割合は、例えば、0質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上、例えば、100質量%以下、好ましくは、70質量%以下、さらに好ましくは、50質量%以下である。
【0037】
脂環骨格含有エポキシ樹脂は、エポキシ基と、脂肪族環(脂環骨格)とを少なくとも有するエポキシ樹脂である。
【0038】
脂環骨格含有エポキシ樹脂は、常温固形であってもよく、常温液状であってもよいが、好ましくは、常温液状である。
【0039】
言い換えれば、脂環骨格含有エポキシ樹脂は、好ましくは、常温液状の脂環骨格含有エポキシ樹脂を含み、より好ましくは、常温液状の脂環骨格含有エポキシ樹脂からなる。脂環骨格含有エポキシ樹脂が常温液状の脂環骨格含有エポキシ樹脂を含むと、後述するシール部材の透明性の向上をより一層図ることができ、かつ、シール部材の透湿性の低減をより確実に図ることができる。
【0040】
脂環骨格含有エポキシ樹脂として、例えば、シクロアルケンオキサイド構造を有する脂環式エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(以下、DCPD型エポキシ樹脂とする。)、水添エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0041】
シクロアルケンオキサイド構造を有する脂環式エポキシ化合物として、例えば、下記式(1)に示されるエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ化合物(以下、ECH構造含有エポキシ化合物とする。)や、その変性物などが挙げられる。
式(1)
【0042】
【化1】
【0043】
[式(1)中において、Xは、単結合または連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示す。シクロヘキサン環を構成する炭素原子には、アルキル基などの置換基が結合していてもよいし、結合していなくてもよい。]
上記式(1)においてXで示される連結基として、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、カーボネート基、アミド基、および、これらが連結した基が挙げられる。
【0044】
2価の炭化水素基として、例えば、炭素数1~18の直鎖または分岐鎖状のアルキレン基(例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基など)、シクロアルキレン基(例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基など)、シクロアルキリデン基(例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基など)などが挙げられる。
【0045】
上記式(1)においてXで示される連結基のなかでは、後述するシール部材の接着性の観点から好ましくは、酸素原子を含む連結基が挙げられ、より好ましくは、カルボニル基、エーテル基、エステル基、カーボネート基が挙げられ、さらに好ましくは、エステル基が挙げられる。
【0046】
上記式(1)に示されるECH構造含有エポキシ化合物として、例えば、(3,3’,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどが挙げられる。
【0047】
上記式(1)に示されるECH構造含有エポキシ化合物は、市販品を用いることもできる。市販品として、例えば、ダイセル社製のセロキサイド8000、セロキサイド2021P、セロキサイド2081などが挙げられる。
【0048】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(以下、DCPD型エポキシ樹脂とする。)は、下記式(2)に示される。
【0049】
【化2】
【0050】
[式(2)中において、ジシクロペンタジエンに由来する脂肪族環を構成する炭素原子には、アルキル基などの置換基が結合していてもよいし、結合していなくてもよい。]
上記式(2)に示されるDCPD型エポキシ樹脂は、市販品を用いることもできる。上記式(2)に示されるDCPD型エポキシ樹脂の市販品として、例えば、ADEKA社製のEP-4088S(エポキシ当量170g/eq.)、ADEKA社製のEP-4088L(エポキシ当量165g/eq.)などが挙げられる。
【0051】
水添エポキシ樹脂は、上記したエポキシ樹脂のうち、芳香環を有するエポキシ樹脂を水添することにより得られるエポキシ樹脂であって、具体的には、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビフェニル型エポキシ樹脂などが挙げられ、好ましくは、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0052】
水添ビスフェノール型エポキシ樹脂として、具体的には、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0053】
水添ビスフェノール型エポキシ樹脂は、市販品を用いることもできる。
【0054】
水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品として、例えば、三菱化学社製のYL-6753などが挙げられる。水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品として、例えば、三菱化学社製のYX-8000およびYX-8034、DIC社製のEXA-7015、新日鉄住金化学社製のST-3000、新日本理化社製のリカレジンHBE-100、ナガセケムテックス社製のEX-252などが挙げられる。
【0055】
このような脂環骨格含有エポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0056】
脂環骨格含有エポキシ樹脂のなかでは、好ましくは、水添エポキシ樹脂、および、ECH構造含有エポキシ化合物が挙げられる。
【0057】
言い換えれば、脂環骨格含有エポキシ樹脂は、好ましくは、水添エポキシ樹脂、および/または、ECH構造含有エポキシ化合物を含み、より好ましくは、水添エポキシ樹脂、または、ECH構造含有エポキシ化合物を含み、さらに好ましくは、水添エポキシ樹脂、または、ECH構造含有エポキシ化合物からなる。
【0058】
水添エポキシ樹脂のなかでは、好ましくは、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。ECH構造含有エポキシ化合物のなかでは、好ましくは、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートが挙げられる。
【0059】
このような脂環骨格含有エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば、100以上、好ましくは、180以上であり、例えば、1,000以下、好ましくは、790以下、より好ましくは、500以下である。
【0060】
脂環骨格含有エポキシ樹脂におけるエポキシ当量は、例えば、90g/eq.以上、好ましくは、100g/eq.以上、例えば、300g/eq.以下、好ましくは、200g/eq.以下である。
【0061】
熱硬化型樹脂において、脂環骨格含有エポキシ樹脂の含有割合は、例えば、0質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、例えば、100質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下、さらに好ましくは、35質量%以下である。
【0062】
熱硬化型樹脂組成物における熱硬化型樹脂の含有割合は、例えば、60質量%以上、好ましくは、70質量%以上、例えば、95質量%以下、好ましくは、92質量%以下、より好ましくは、90質量%以下である。
【0063】
<表面修飾シリカ粒子>
表面修飾シリカ粒子は、シランカップリング剤で表面修飾されたシリカ粒子である。
【0064】
シリカ粒子は、好ましくは、球状を有する。シリカ粒子は、真球度が高いことがより好ましい。シリカ粒子は、例えば、乾式法(燃焼法またはアーク法)により調製できる。
【0065】
シリカ粒子は、多孔質であってもよく、無孔質であってもよい。多孔質シリカ粒子は、無孔質シリカ粒子よりも、吸湿性およびガスの吸着性が高い。従って、多孔質シリカ粒子と無孔質シリカ粒子とは、封止シートの用途に応じて使い分けられる。
【0066】
例えば、封止シートが、有機ELなどの画像表示素子用封止シートとして用いられる場合、シリカ粒子は、シリカ粒子に吸着した成分の放出の観点から好ましくは、無孔質である。
【0067】
なお、ここで言うシリカ粒子の定義として多孔質シリカ粒子の比表面積は、300m2/g以上であり、無孔質シリカ粒子の比表面積は、30m2/g以下である。
【0068】
シランカップリング剤として、例えば、エポキシ基含有シランカップリング剤(例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなど)、アミノ基含有シランカップリング剤(例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなど)、メタクリロイル基含有シランカップリング剤(例えば、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなど)などが挙げられる。
【0069】
シランカップリング剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0070】
シランカップリング剤のなかでは、好ましくは、エポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0071】
このような表面修飾シリカ粒子を調製するには、上記したシリカ粒子の表面を、上記したシランカップリング剤により処理する。
【0072】
シランカップリング剤による表面処理方法として、例えば、シランカップリング剤を水に加えて加水分解させた後、アルコールと酢酸などの触媒とを加え、水に溶解させて水溶液を調製し、この水溶液にシリカ粒子を浸漬させて表面処理する方法などが挙げられる。また、シランカップリング剤による表面処理方法として、例えば、シリカ粒子からなる被処理粉体を処理容器に収容し、被処理粉体を攪拌しながら気化させたシランカップリング剤と反応させる方法も挙げられる。
【0073】
表面修飾シリカ粒子の平均一次粒子径は、0.1μm以上、好ましくは、0.2μm以上であり、より好ましくは、0.4μm以上、1.5μm以下、好ましくは、1.3μm以下である。平均一次粒子径は、レーザー回析/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA LA-750など)により測定できる(以下同様)。なお、本開示における平均一次粒子径は、小径側からの体積累積50%に対応する粒子径とする。
【0074】
表面修飾シリカ粒子の平均一次粒子径が上記下限以上であれば、後述するシール部材に本発明範囲のヘイズ値を付与できる。表面修飾シリカ粒子の平均一次粒子径が上記上限以下であれば、後述する熱硬化型樹脂組成物のワニスにおける表面修飾シリカ粒子の沈降を抑制できる。
【0075】
表面修飾シリカ粒子は、市販品を用いることもできる。表面修飾シリカ粒子の市販品として、例えば、アドマテックス社製のSE1050-SEO、SC-2050MB、10SE-CM1などが挙げられる。
【0076】
表面修飾シリカ粒子の含有割合は、熱硬化型樹脂100重量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましく、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、35質量部以下である。
【0077】
熱硬化型樹脂組成物における表面修飾シリカ粒子の含有割合は、例えば、3質量%以上、好ましくは、4質量%以上、より好ましくは、8質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下である。
【0078】
表面修飾シリカ粒子の含有割合が上記下限以上であれば、後述するシール部材のヘイズ値の向上を確実に図ることができ、シール部材の光拡散性の向上を図ることができる。表面修飾シリカ粒子の含有割合が上記上限以下であれば、後述するシール部材の全光線透過率の向上を確実に図ることができる。
【0079】
<熱硬化剤>
熱硬化型樹脂組成物は、好ましくは、熱硬化剤をさらに含む。
【0080】
熱硬化剤として、例えば、熱によって熱硬化型樹脂の硬化反応を開始する熱カチオン系硬化剤、熱アニオン系硬化剤などを挙げることができる。
【0081】
熱カチオン系硬化剤は、加熱により酸(カチオン)を発生する熱酸発生剤である。
【0082】
熱カチオン系硬化剤として、公知の熱カチオン重合開始剤を用いることができる。熱カチオン重合開始剤として、例えば、AsF6 -、SbF6 -、PF6 -、BF4 -、B(C654 -、CF3SO3 -などを対アニオンとする、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。
【0083】
熱アニオン系硬化剤は、熱によって溶解する塩基性化合物または熱によって結合が乖離して塩基性化合物となる化合物である。
【0084】
熱アニオン系硬化剤として、例えば、常温固体のイミダゾール化合物、アミン-エポキシアダクト系化合物(アミン化合物とエポキシ化合物との反応生成物)、アミン-イソシアネート系化合物(アミン化合物とイソシアネート化合物との反応生成物)などが挙げられる。
【0085】
熱硬化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0086】
熱硬化剤のなかでは、好ましくは、熱カチオン系硬化剤が挙げられ、より好ましくは、4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0087】
熱硬化剤の含有割合は、熱硬化型樹脂100質量部に対して、例えば、0.3質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0088】
熱硬化型樹脂組成物における熱硬化剤の含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
【0089】
<顔料>
また、後述するシール部材の用途に応じて、シール部材に所望の色を付与することが望まれる場合がある。この場合、熱硬化型樹脂組成物は、好ましくは、顔料粒子を含む。
【0090】
熱硬化型樹脂組成物が表面修飾シリカ粒子および顔料粒子を含有すると、後述するシール部材において、所望の色を付与できながら、ヘイズ値と全光透過率とをバランスよく調整できる。
【0091】
顔料粒子は、溶媒に分散可能な溶剤分散型顔料であって、粒子状を有する。
【0092】
顔料粒子の平均一次粒子径は、例えば、10nm以上、好ましくは、30nm以上、例えば、100nm以下、好ましくは、70nm以下である。
【0093】
顔料粒子の平均一次粒子径が上記下限以上であると、後述する顔料粒子の含有割合の低減を図ることができる。顔料粒子の平均一次粒子径が上記上限以下であると、後述するシール部材において透明性を確保することができる。
【0094】
顔料粒子として、例えば、無機顔料粒子が挙げられ、より具体的には、カーボンブラックなどの黒色顔料粒子、酸化物系顔料、水酸化物系顔料などが挙げられる。顔料粒子は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0095】
顔料粒子のなかでは、好ましくは、無機顔料粒子が挙げられ、より好ましくは、黒色顔料粒子が挙げられ、さらに好ましくは、カーボンブラックが挙げられる。
【0096】
顔料粒子の含有割合は、熱硬化型樹脂100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、2質量部以下である。
【0097】
熱硬化型樹脂組成物における顔料粒子の含有割合は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、例えば、15質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下である。
【0098】
顔料粒子の含有割合が上記下限以上であれば、後述するシール部材に所望の色を付与できる。顔料粒子の含有割合が上記上限以下であれば、後述するシール部材において、所望の色を付与できながら、全光透過率を十分に確保できる。
【0099】
<他の成分>
熱硬化型樹脂組成物は、必要に応じて上記以外の他の成分を適宜の割合で含有してもよい。他の成分として、熱可塑性樹脂、カップリング剤、レベリング剤、重合開始助剤、老化防止剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0100】
<光拡散性熱硬化型シート>
次に、図1を参照して、本発明の光拡散性熱硬化型シートの一実施形態としての封止シート1について説明する。
【0101】
図1に示すように、封止シート1は、上記した熱硬化型樹脂組成物からなる封止層2と、ベースフィルム3と、離型フィルム4とを備える。
【0102】
封止層2に異物が付着することなどを防ぐため、封止シート1の保管時には、ベースフィルム3と、離型フィルム4とで封止層2が保護されていることが好ましい。なお、封止シート1の使用時には、ベースフィルム3と、離型フィルム4とは剥離される。
【0103】
封止層2は、上記した熱硬化型樹脂組成物の乾燥物であって、シート形状(平板形状)を有する。具体的には、封止層2は、所定の厚みを有し、前記厚み方向と直交する所定方向に延び、平坦な表面および平坦な裏面を有している。
【0104】
封止層2では、上記した熱硬化型樹脂は反応(硬化)しておらず、封止層2は、それら熱硬化型樹脂を未硬化の状態で含有する。
【0105】
封止層2の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、例えば、100μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0106】
また、厚みが15μmである封止層2を硬化させた場合(つまり、熱硬化型樹脂組成物を厚み15μmのシート状に形成して熱硬化した場合)において、封止層2の硬化物のヘイズ値は、例えば、30%以上、好ましくは、35%以上、より好ましくは、40%以上、とりわけ好ましくは、50%以上、特に好ましくは、80%以上、例えば、100%以下、好ましくは、95%以下である。なお、ヘイズ値は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。
【0107】
封止層2の硬化物のヘイズ値が上記下限以上であると、ヘイズ値を大きく上昇させることなく封止層を厚くすることができる。封止層2の硬化物のヘイズ値が上記上限以下であると、ヘイズ値を大きく低下させることなく封止層を薄くすることができる。
【0108】
また、厚みが15μmである封止層2を硬化させた場合において、封止層2の硬化物の全光線透過率は、例えば、10%以上、好ましくは、20%以上、より好ましくは、50%以上、さらに好ましくは、70%以上、とりわけ好ましくは、80%以上、特に好ましくは、85%以上、最も好ましくは、90%以上、例えば、100%以下、好ましくは、98%以下である。なお、全光線透過率は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。
【0109】
封止層2の硬化物の全光線透過率が上記下限以上であると、光源の取り出し損失を少なくできる。封止層2の硬化物の全光線透過率が上記上限以下であると、光源の取り出し損失を無くすことができる。
【0110】
また、封止層2の硬化物のヘイズ値が上記下限以上であり、かつ、全光線透過率が上記下限以上であると、封止層2の硬化物の光拡散性の向上を確実に図ることができる。
【0111】
ベースフィルム3は、封止シート1がシール部材の形成に用いられるまでの間、封止層2を支持および保護するために、封止層2の裏面に剥離可能に貼着されている。つまり、ベースフィルム3は、封止シート1の出荷・搬送・保管時において、封止層2の裏面を被覆するように、封止層2の裏面に積層され、封止シート1の使用直前において、封止層2の裏面から略U字状に湾曲するように引き剥がすことができる可撓性フィルムである。
【0112】
ベースフィルム3は、平板形状を有し、具体的には、所定の厚みを有し、前記厚み方向と直交する所定方向に延び、平坦な表面および平坦な裏面を有している。ベースフィルム3の貼着面(表面)は、必要により剥離処理されている。
【0113】
ベースフィルム3の材料として、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)などの樹脂材料が挙げられる。
【0114】
ベースフィルム3のなかでは、好ましくは、水分バリア性あるいはガスバリア性を有するフィルムが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが挙げられる。ベースフィルム3の厚みは、フィルムの材質にもより適宜選択されるが、表示素子などの被封止材への追従性を有する点などから、例えば、25μm以上150μm以下とすることができる。
【0115】
離型フィルム4は、封止シート1がシール部材の形成に用いられるまでの間、封止層2を保護するために、封止層2の表面に剥離可能に貼着されている。つまり、離型フィルム4は、封止シート1の出荷・搬送・保管時において、封止層2の表面を被覆するように、封止層2の表面に積層され、封止シート1の使用直前において、封止層2の表面から略U字状に湾曲するように引き剥がすことができる可撓性フィルムである。
【0116】
離型フィルム4は、平板形状を有し、具体的には、所定の厚みを有し、前記厚み方向と直交する所定方向に延び、平坦な表面および平坦な裏面を有している。また、離型フィルム4の貼着面(裏面)は、必要により剥離処理されている。離型フィルム4の材料として、例えば、ベースフィルム3と同様の樹脂材料が挙げられる。離型フィルム4の厚みは、フィルムの材質にもより適宜選択されるが、表示素子などの被封止材への追従性を有する点などから、例えば、25μm以上150μm以下とすることができる。
【0117】
<封止シートの製造方法>
次に、封止シート1の製造方法について説明する。
【0118】
封止シート1を製造するには、まず、上記した熱硬化型樹脂組成物を準備する。
【0119】
熱硬化型樹脂組成物は、上記した熱硬化型樹脂と、上記した表面修飾シリカ粒子と、必要に応じて、上記した熱硬化剤と、上記した顔料粒子と、上記した他の成分とを混合することにより準備される。また、封止シート1の製造において、熱硬化型樹脂組成物は、好ましくは、有機溶媒に希釈され、熱硬化型樹脂組成物のワニスが調製される。
【0120】
有機溶媒は、熱硬化型樹脂および表面修飾シリカ粒子を均一に分散または溶解できれば特に制限されない。有機溶媒として、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル類(例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノールなど)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸2-メトキシメチルエチルなど)、含窒素化合物類(例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルホルムアルデヒドなど)などが挙げられる。有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0121】
有機溶媒のなかでは、好ましくは、ケトン類が挙げられ、より好ましくは、メチルエチルケトンが挙げられる。
【0122】
有機溶媒の添加有割合は、熱硬化型樹脂組成物100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、80質量部以上、例えば、200質量部以下、好ましくは、150質量部以下である。
【0123】
また、上記した成分(熱硬化型樹脂、表面修飾シリカ粒子、熱硬化剤、顔料粒子、他の成分および有機溶媒)の混合方法として、例えば、ボールミルによる分散混合、フラスコに装入しての攪拌、三本ロールによる混練などが挙げられる。
【0124】
また、上記した成分を一括して混合しもよく、上記した成分の一部を予め上記した有機溶媒に分散または溶解し、その分散液または溶解液と、残りの成分とを混合してもよい。例えば、表面修飾シリカ粒子を予め有機溶媒中に超音波などで均一に分散した後、その分散液と残りの成分(熱硬化型樹脂など)とを混合してもよい。また、顔料粒子を予め有機溶媒(好ましくは、エステル類)中に均一に分散した後、その分散液と残りの成分(熱硬化型樹脂など)とを混合することもできる。
【0125】
次いで、熱硬化型樹脂組成物をベースフィルム3の表面に公知の方法により塗工する。
【0126】
熱硬化型樹脂組成物の塗工方法として、例えば、スクリーン印刷、ディスペンサー、塗布ロールなどが挙げられる。
【0127】
次いで、熱硬化型樹脂組成物を乾燥して、必要に応じて有機溶媒を揮発させることで、塗膜を形成する。
【0128】
加熱温度は、熱硬化型樹脂が硬化することなく乾燥する温度であって、例えば、20℃以上、好ましくは、90℃以上、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃未満である。加熱時間は、例えば、1分以上、好ましくは、2分以上、例えば、30分以下、好ましくは、15分以下である。
【0129】
これにより、塗膜が乾燥して、熱硬化型樹脂組成物から形成される封止層2が調製される。次いで、封止層2の表面に、離型フィルム4を貼り付ける。
【0130】
以上によって、封止シート1が製造される。
【0131】
このような封止シート1は、例えば、画像表示装置、照明カバー、窓ガラスなどの光拡散性が要求される用途に適用可能である。封止シート1を各種用途に適用する場合、封止層2に、被封止材(例えば、光源など)を埋め込んだ後、封止層2を、例えば、80℃以上120℃以下、0.5時間以上3時間以下加熱して、硬化させる。
【0132】
<画像表示装置の製造>
封止シート1は、例えば、画像表示装置の光源(表示素子、光学素子)の封止に好適に利用される。図2を参照して、画像表示装置の一実施形態としてのタッチセンサ付き有機ELディスプレイ(以下、有機ELディスプレイ10とする。)について説明する。
【0133】
なお、本実施形態では、画像表示装置としてタッチセンサ付き有機ELディスプレイを挙げるが、画像表示装置は、特に制限されない。画像表示装置として、例えば、液晶ディスプレイ(タッチセンサ付き液晶ディスプレイを含む)、有機ELディスプレイ(タッチセンサ付き有機ELディスプレイを含む)、マイクロLEDディスプレイなどが挙げられる。
【0134】
有機ELディスプレイ10は、素子搭載ユニット11と、シール部材14と、カバーガラスまたはバリアフィルム15とを備える。
【0135】
素子搭載ユニット11は、基板13と、有機EL素子12と、バリア層16と、電極(図示せず)とを備える。
【0136】
基板13は、有機EL素子12を支持している。基板13は、好ましくは、可撓性を有する。
【0137】
有機EL素子12は、公知の有機EL素子であり、基板13に搭載されている。有機EL素子12は、図示しないが、カソード反射電極と、有機EL層と、アノード透明電極とを備えている。
【0138】
バリア層16は、有機EL素子12を被覆しており、大気中の水分が有機EL素子12に接触することを抑制する。バリア層16は、第1無機バリア層17と、平坦化層19と、第2無機バリア層18とを備える。
【0139】
第1無機バリア層17は、有機EL素子12を囲むように、有機EL素子12の上面および側面に配置されている。第1無機バリア層17の材料として、例えば、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化銅など)、金属窒化物(例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素など)などが挙げられる。第1無機バリア層17の材料は、単独使用または2種以上併用することができる。第1無機バリア層17の材料のなかでは、好ましくは、金属窒化物、より好ましくは、窒化ケイ素が挙げられる。
【0140】
平坦化層19は、第1無機バリア層17の上面に配置されている。平坦化層19の材料として、公知の樹脂材料が挙げられる。
【0141】
第2無機バリア層18は、平坦化層19を囲むように、平坦化層19の上面および側面に配置されている。第2無機バリア層18の材料として、例えば、第1無機バリア層17と同様の材料が挙げられる。
【0142】
電極(図示せず)は、タッチセンサ付き有機ELディスプレイのセンサを構成する。電極(図示せず)は、基板13からシール部材14の間に位置する。例えば、電極(図示せず)は、基板13内に位置してもよく、有機EL素子12上に位置してもよい。
【0143】
シール部材14は、封止層2(封止シート)の硬化物であって、バリア層16に被覆された有機EL素子12を封止している。シール部材14は、ベースフィルム3および離型フィルム4が剥離された封止層2から形成される。具体的には、ベースフィルム3および離型フィルム4が剥離された封止層2が、バリア層16に被覆された有機EL素子12を埋め込むように基板13に貼り付けられた後、封止層2の上面にカバーガラスまたはバリアフィルム15が貼り付けられ、その後、封止層2を硬化させる。これにより、シール部材14が形成される。
【0144】
シール部材14の透湿度は、例えば、20g/m2・24h以上、例えば、45g/m2・24h未満である。なお、透湿度は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。
【0145】
シール部材14の透湿度が上記上限以下であれば、シール部材14が封止する光学素子の劣化を抑制することができる。
【0146】
カバーガラスまたはバリアフィルム15は、シール部材14の上面に配置されている。カバーガラスまたはバリアフィルム15は、図示しないが、ガラス板と、ガラス板の下面に設けられ、タッチセンサ付き有機ELディスプレイのセンサを構成する電極を備えている。
【0147】
このような有機ELディスプレイ10は、有機EL素子12がセンサを構成する2つの電極の間に配置されるインセル構造、または、センサを構成する2つの電極のうち1つが有機EL素子12上に配置されるオンセル構造を有している。
【0148】
<作用効果>
上記した光拡散性熱硬化型シートでは、熱硬化型樹脂組成物が熱硬化型樹脂を含んでいる。そのため、熱硬化型樹脂組成物は、被封止材(例えば、光源など)を埋め込んだ後、硬化することにより、被封止材を封止することができる。
【0149】
しかし、エポキシ樹脂などの熱硬化型樹脂にフィラーを大量に添加すると、一般的にはヘイズ値の向上を図ることができ、光拡散性が改良されるものの、全光線透過率が低下する傾向がある。そのため、ヘイズ値の向上と、優れた全光線透過率とを両立することは困難である。
【0150】
また、フィラーは一般的に有機溶媒中で凝集しやすく、エポキシ樹脂などの熱硬化型樹脂との分散性が不良である。そのため、フィラーを大量に添加した熱硬化型樹脂組成物のワニスを塗工すると、凝集したフィラーに起因して塗膜の表面が粗くなる場合や、フィラー濃度にむらが出る場合などがある。
【0151】
これに対して、上記した光拡散性熱硬化型シートでは、熱硬化型樹脂組成物が表面修飾シリカ粒子を含んでいる。そのため、熱硬化型樹脂組成物の硬化物において、ヘイズ値の向上を図ることができながら、優れた全光線透過率を確保することができる。その結果、熱硬化型樹脂組成物の硬化物は、十分なヘイズ値と優れた全光線透過率とを両立でき、優れた光拡散性を確保することができる。
【0152】
また、表面修飾シリカ粒子では、シランカップリング剤でシリカ粒子の表面が修飾されているので、熱硬化型樹脂に対する表面修飾シリカ粒子の密着性の向上を図ることができ、熱硬化型樹脂組成物(とりわけ、熱硬化型樹脂組成物のワニス)の長期保存において、表面修飾シリカ粒子の沈降を抑制でき、熱硬化型樹脂組成物の保存特性の向上を図ることができる。この理由は、シリカ粒子表面にシランカップリング剤が存在することによって、表面修飾シリカ粒子同士の凝集が妨げられることによるものと考えられる。
【0153】
また、シール部材の用途に応じて、シール部材に所望の色および光拡散性を付与することが望まれる場合がある。この場合、熱硬化型樹脂組成物は、好ましくは、表面修飾シリカ粒子に加えて、顔料粒子を含有する。熱硬化型樹脂組成物が表面修飾シリカ粒子および顔料粒子を含有すると、シール部材に所望の色を付与できながら、シール部材におけるヘイズ値と全光透過率とをバランスよく調整でき、光拡散性を確保できる。
【0154】
<変形例>
変形例において、上記の実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0155】
図1に示すように、封止シート1は、封止層2と、ベースフィルム3と、離型フィルム4とを備えるが、封止シートは、これに限定されない。封止シートは、封止層2を備えていれば、ベースフィルム3および/または離型フィルム4を備えなくてもよい。つまり、封止シートは、封止層2のみから構成されてもよく、また、封止層2と、ベースフィルム3および離型フィルム4のいずれか一方とを備えてもよい。
【0156】
図2に示すように、有機ELディスプレイ10は、バリア層16を備えるが、これに限定されない。有機ELディスプレイ10は、バリア層16を備えなくてもよい。
【0157】
また、有機ELディスプレイ10は、有機EL素子12が、センサを構成する2つの電極の間に配置されるインセル構造、または、2つの電極のうちの1つが、有機EL素子12上に配置されるオンセル構造を有するが、これに限定されない。
【0158】
例えば、図3に示すように、有機ELディスプレイ20は、センサを構成する2つの電極がシール部材14よりも上側に配置されるアウトセル構造を有してもよい。有機ELディスプレイ20は、上記した素子搭載ユニット11と、上記したシール部材14と、センサユニット25とを備える。
【0159】
センサユニット25は、シール部材14上に配置される。センサユニット25は、タッチセンサ付き有機ELディスプレイのセンサを構成する電極を備えている。なお、有機ELディスプレイ20では、基板13は、電極を備えていない。
【0160】
また、図2および図3において、シール部材14は、バリア層16に被覆された有機EL素子12を封止するが、シール部材14を別の位置に設けてもよい。
【0161】
また、上記の実施形態において、封止シート1は、被封止材との接触時あるいは接触後に熱硬化して、被封止材を封止するが、本発明の光拡散性熱硬化型シートは、封止材に限定されない。例えば、光拡散性熱硬化型シートを予め熱硬化させた後、他の接着剤および/または他の粘着剤感圧接着剤を用いて、光拡散性熱硬化型シートの硬化物を、光拡散性を付与する対象物に貼り合わせてもよい。
【0162】
上記した各変形例についても、上記した実施形態と同様の作用効果を奏する。上記した実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
【実施例
【0163】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0164】
<原料>
実施例および比較例で用いる原料を以下に示す。
【0165】
脂環骨格含有エポキシ樹脂A:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、分子量252.3、エポキシ当量128~145g/eq.商品名セロキサイド2021P(CEL2021P)、ダイセル社製、
脂環骨格含有エポキシ樹脂B:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量352、エポキシ当量205g/eq.、商品名YX8000、三菱ケミカル社製、
脂環骨格含有エポキシ樹脂C:DCPD型エポキシ樹脂、重量平均分子量340、エポキシ当量165g/eq.、商品名EP-4088L、ADEKA社製、
ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂A:常温液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂、重量平均分子量398、エポキシ当量165g/eq.、商品名YL983U、三菱ケミカル社製、
ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂B:常温固形のビスフェノールF型エポキシ樹脂、重量平均分子量7582、エポキシ当量10,000g/eq.、商品名jER4005P、三菱ケミカル社製、
ビスフェノール混合型固形エポキシ樹脂C:常温固形のビスフェノールA/ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂、重量平均分子量58,287、エポキシ当量8,400g/eq.、商品名jER4275、三菱ケミカル社製、
ビフェニル型エポキシ樹脂A:常温固形のビフェニル型エポキシ樹脂、重量平均分子量36,691、エポキシ当量10,000g/eq.、商品名XY-6954B35、三菱ケミカル社製、
ビフェニル型エポキシ樹脂Aのメチルエチルケトン(MEK)溶液:ビフェニル型エポキシ樹脂AをMEKに溶解して調製。ビフェニル型エポキシ樹脂Aの濃度35質量%、
無孔質表面修飾球状シリカ粒子A:平均一次粒子径0.3μm、エポキシ基含有シランカップリング剤処理、商品名SE1050-SEO、アドマテックス社製、
無孔質表面修飾球状シリカ粒子B:平均一次粒子径0.5μm、エポキシ基含有シランカップリング剤処理、商品名SC-2050MB、アドマテックス社製、スラリー品(MEK30質量%含有)、
無孔質表面修飾球状シリカ粒子C:平均一次粒子径1.3μm、エポキシ基含有シランカップリング剤処理、商品名10SE-CM1、アドマテックス社製、スラリー品(MEK25質量%含有)、
無孔質表面修飾球状シリカ粒子AのMEK分散液:無孔質表面修飾球状シリカ粒子AをMEKに、30分間超音波により分散して調製。無孔質表面修飾球状シリカ粒子の濃度60質量%、
多孔質球状シリカ粒子D:平均一次粒子径1.0μm、表面修飾なし、商品名ハイプレシカFQ、宇部エクシモ社製、
多孔質球状シリカ粒子DのMEK分散液:多孔質球状シリカ粒子DをMEKに、30分間超音波により分散して調製。多孔質球状シリカ粒子の濃度60質量%、
シリコーンレジンパウダー球状粒子A:平均一次粒子径2.0μm、商品名KMP-590、信越シリコーン社製、
シリコーンレジンパウダー球状粒子AのMEK分散液:シリコーンレジンパウダー球状粒子AをMEKに、30分間超音波により分散して調製。シリコーンレジンパウダー球状粒子の濃度60質量%、
シリコーンゴム複合パウダー球状粒子B:平均一次粒子径2.0μm、商品名KMP-605、信越シリコーン社製、
シリコーンゴム複合パウダー球状粒子BのMEK分散液:シリコーンゴム複合パウダー球状粒子BをMEKに、30分間超音波により分散して調製。シリコーンゴム複合パウダー球状粒子の濃度60質量%、
顔料粒子の分散液:顔料粒子(カーボンブラック、平均一次粒子径50nm)が、酢酸2-メトキシメチルエチル/酢酸エチル/酢酸ブチルの混合溶媒に分散された溶剤系カーボンブラック分散液、顔料濃度12質量%、商品名TSBK-105、大成化工社製、
熱カチオン硬化剤:商品名CXC-1612、King Industries社製、
熱アニオン硬化剤:2-エチル-4-メチルイミダゾール、商品名2E4MZ、四国化成工業社製、
カップリング剤:商品名KBM-403、信越化学工業社製、
有機溶媒:メチルエチルケトン(MEK)
<実施例1>
脂環骨格含有エポキシ樹脂Bと、ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂Bと、ビフェニル型エポキシ樹脂AのMEK溶液と、無孔質表面修飾球状シリカ粒子Aと、熱カチオン硬化剤と、カップリング剤と、有機溶媒とを、表1に示す処方で混合して、熱硬化型樹脂組成物のワニスを調製した。
【0166】
次いで、塗工機によりPETフィルム(離型処理されたPETフィルム(商品名:ピューレックスA53、帝人デュポンフィルム社製、厚さ:38μm、ベースフィルム)上にワニスを塗工した後、窒素パージオーブンにて、90℃で3分間乾燥させて、厚さ15μmの封止層を形成した。
【0167】
次いで、封止層に、熱ラミネーターによりPETフィルム(離型処理されたPETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム社製、厚さ:38μm、離型フィルム)を80℃で貼り合せた。
【0168】
以上によって、封止層と、ベースフィルムと、離型フィルムとを備える封止シートを調製した。
【0169】
<実施例2~、比較例1~6、9、10
各原料の処方を表1および表2のそれぞれに示す処方に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、熱硬化型樹脂組成物のワニスおよび封止シートを調製した。
【0170】
<実施例11>
脂環骨格含有エポキシ樹脂Bと、ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂Bと、ビフェニル型エポキシ樹脂AのMEK溶液と、顔料粒子の分散液と、無孔質表面修飾球状シリカ粒子Bと、熱カチオン硬化剤と、カップリング剤とを、表3に示す処方で混合して、熱硬化型樹脂組成物のワニスを調製した。
【0171】
次いで、塗工機によりPETフィルム(離型処理されたPETフィルム(商品名:ピューレックスA53、帝人デュポンフィルム社製、厚さ:38μm、ベースフィルム)上に、ワニスを、表3に示す塗工膜厚となるように塗工した後、窒素パージオーブンにて、90℃で3分間乾燥させて、封止層を形成した。
【0172】
次いで、封止層に、熱ラミネーターによりPETフィルム(離型処理されたPETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム社製、厚さ:38μm、離型フィルム)を80℃で貼り合せた。
【0173】
以上によって、封止層と、ベースフィルムと、離型フィルムとを備える封止シートを調製した。
【0174】
<実施例12~18、比較例7および8>
各原料の処方を表3に示す処方に変更したこと以外は、実施例11と同様にして、熱硬化型樹脂組成物のワニスおよび封止シートを調製した。
【0175】
<評価>
[粒子沈降性]
表1および表2に示す各実施例および各比較例で調整したワニス30gを50mlのスクリュー管に(直径35mm)に入れて、常温(23℃)で24時間静置後、目視で沈降物の有無を確認した。そして、粒子沈降性を下記の基準で評価した。その結果を表1および表2に示す。
沈降物なし:○
沈降物あり:×
[90°ピール強度]
アルミ-PET複合フィルム(アルミ面)/樹脂/アルカリガラス ばね式天秤(1kg秤量用)を準備した。表1および表2に示す各実施例および各比較例の封止シートの離型フィルムを封止層から剥離した後、アルミ-PET複合フィルムのアルミ面に、封止層を貼り付けた。その後、封止層を100℃で1時間硬化させた。(比較例9、10および比較例3では、100℃で2時間硬化させた。)
次いで、アルミ面と封止層の硬化物との90度剥離強度を測定した。実施例1~および比較例1~6、9、10では、この90度剥離強度を接着強度とした。その結果を表1および表2に示す。
【0176】
[透湿度]
表1および表2に示す各実施例および各比較例の封止シートの離型フィルムを封止層から剥離した後、封止層を100℃で1時間硬化させた。(比較例9、10および比較例3では、100℃で2時間硬化させた。)
次いで、ベースフィルムを、硬化後の封止層から剥離して測定用サンプルを得た。得られたサンプルの透湿度(透湿量)を、JIS Z0208に準拠して、60℃90%RH条件で測定した。その後、測定に使用したサンプルの膜厚から、サンプルの厚みが100μmである場合の値に換算した。その結果を表1および表2に示す。
【0177】
[ヘイズ値、全光線透過率(TT)]
表1~表3に示す各実施例および各比較例の封止シートの離型フィルムを封止層から剥離した後、封止層を100℃で1時間硬化させた。(比較例9、10および比較例3では、100℃で2時間硬化させた。)
次いで、ベースフィルムを、硬化後の封止層から剥離して測定用サンプルを得た。得られたサンプルのヘイズ値と全光線透過率とを、日本電色工業社製のヘーズメーターNDH2000を用いて測定した。その結果を表1~表3に示す。とりわけ、80%以上のヘイズ値と、90%以上の全光線透過率とを両立させることにより、優れた光拡散性を奏することが確認された。また、熱硬化型樹脂組成物に顔料粒子を添加することにより、封止層の硬化物に所望の色を付与できながら、封止層の硬化物においてヘイズ値と全光線透過率とをバランスよく調整できることが確認された。
【0178】
[封止層の外観]
表1~表3に示す各実施例および各比較例の封止シートの離型フィルムを封止層から剥離した後、封止層を100℃で1時間硬化させた。(比較例9、10および比較例3では、100℃で2時間硬化させた。)
硬化後の封止層を目視で観察し、表面が平滑なものを○、表面が粗いものを×として、評価した。その結果を表1~表3に示す。
【0179】
[L*値(黒色度)]
表3に示す各実施例および各比較例の封止シートの離型フィルムを封止層から剥離した後、封止層を100℃で1時間硬化させた。
【0180】
次いで、ベースフィルムを、硬化後の封止層から剥離して測定用サンプルを得た。得られたサンプルのL*値(黒色度)を、KONICA MINOLTA社製の色彩色差計CR-200を用いて測定した。その結果を表3に示す。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
【0183】
【表3】
【0184】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明の光拡散性熱硬化型シートは、例えば、一般建築物の窓ガラス;車輌用の窓ガラス;グレージング材料;看板、照明具、表示灯などの保護カバー;画像表示装置(有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、マイクロLEDディスプレイなど)に適用可能である。
図1
図2
図3