(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】サンプル注入用ダイヤフラムバルブ、サンプル注入用ダイヤフラムバルブのためのプランジャアセンブリおよびサンプル注入用ダイヤフラムバルブを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
F16K 7/14 20060101AFI20231228BHJP
G01N 30/20 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F16K7/14 Z
G01N30/20 G
(21)【出願番号】P 2021569582
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 CA2019050158
(87)【国際公開番号】W WO2020160634
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】521353573
【氏名又は名称】エイ・ピィ・エヌ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APN INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルムラン,シモン
(72)【発明者】
【氏名】ルサール,ジョエル
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0152481(US,A1)
【文献】実公昭48-026180(JP,Y1)
【文献】特開2004-144243(JP,A)
【文献】特表2015-507159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/14
G01N 30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体を通すためのサンプル注入用ダイヤフラムバルブであって、
バルブヘッドを備え、前記バルブヘッドは内部に延在する複数の処理導管を備え、前記処理導管の各々は処理ポートにおいて終端をなしており、前記サンプル注入用ダイヤフラムバルブはさらに、
前記バルブヘッドに面するバルブ本体を備え、前記バルブ本体は凹部を備えた本体中間面を備え、前記バルブ本体はまた、内部に延在するプランジャ通路を備え、前記プランジャ通路は前記凹部上に開口しており、前記サンプル注入用ダイヤフラムバルブはさらに、
前記バルブヘッドと前記バルブ本体との間に位置決めされたダイヤフラムを備え、前記ダイヤフラムは、前記バルブ本体の前記凹部に設けられているとともに内部で流体を循環させるための処理溝を有し、前記サンプル注入用ダイヤフラムバルブはさらに、
前記バルブ本体内に設けられた常閉プランジャアセンブリおよび常開プランジャアセンブリを備え、各アセンブリは、前記バルブ本体の前記プランジャ通路に摺動可能に嵌合されるプランジャを備え、各プランジャは、前記プランジャが前記ダイヤフラムを変形させて前記処理ポートのうち2つの処理ポート間の流体循環を遮断する閉位置と、前記プランジャが前記ダイヤフラムから遠ざかるように後退して流体の循環を可能にする開位置との間で移動可能であり、前記プランジャは頂面を備えたヘッドを有し、前記頂面は、前記頂面上に突出するとともに前記頂面にわたって延在する線形リップを備え、前記線形リップの少なくとも一部は、前記プランジャが前記閉位置にあるときに前記ダイヤフラムを押圧し、
各プランジャの前記頂面は、2つの半円形領域および突出した前記線形リップ上に1つの矩形領域を備え、前記矩形領域は前記2つの半円形領域から隆起して離間しており、前記
矩形領域の表面積は
前記2つの半円形領域の表面積の合計値より小さい、サンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記プランジャはプランジャ本体およびプランジャヘッドを備え、前記プランジャヘッドは前記プランジャ本体から延在しており、前記プランジャ本体および前記プランジャヘッドはともに実質的に円筒形であり、前記プランジャヘッドが有する直径は前記プランジャ本体の直径よりも狭い、請求項1に記載のサンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
各プランジャは、前記プランジャ本体と前記プランジャの前記ヘッドとの間に第1の円形肩部と、前記プランジャの前記ヘッドの前記頂面と突出した前記線形リップの対向する側壁との間に第2の肩部および第3の肩部とを含む、請求項2に記載のサンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
前記処理溝は、溝幅を有する環状処理溝であり、前記プランジャの上に延在する突出した前記線形リップは、前記処理溝の幅に対応する長さを有する、請求項1に記載のサンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項5】
前記閉位置では、各プランジャの突出した前記線形リップは、前記ダイヤフラムの底面上の接触面を押圧することで、前記ダイヤフラムのうち前記接触面の両側の領域が、前記プランジャの前記ヘッドの前記頂面の凹んだ領域に沿って、突出した前記線形リップの両側に延在するように前記ダイヤフラムを変形させる、請求項1に記載のサンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項6】
前記閉位置では、前記プランジャと前記ダイヤフラムの底面との間に形成される接触面が、前記バルブの中心軸に対して直線的かつ径方向に延在する、請求項1に記載のサンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項7】
前記常閉プランジャアセンブリおよび前記常開プランジャアセンブリはともにディスクプレートを備え、前記アセンブリのうちの所与のアセンブリの前記プランジャは、対応する前記ディスクプレートから延在する、請求項1に記載のサンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項8】
前記ディスクプレートは、前記バルブ本体において積層され、前記常閉プランジャアセンブリおよび前記常開プランジャアセンブリのうち一方が有するディスクプレートには、前記ディスクプレート内に延在するとともに前記常閉プランジャアセンブリおよび前記常開プランジャアセンブリのうちの他方のプランジャを通らせるためのプランジャ孔が設けられている、請求項
7に記載のサンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項9】
各プランジャの前記線形リップは、前記閉位置にあるとき、2つの隣接する処理ポートの間に単一のゲートを形成し、前記ゲートまたは側壁は前記バルブの中心軸に対して径方向に延在する、請求項1に記載のサンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項10】
各プランジャの前記線形リップは、前記閉位置にあるとき、前記ダイヤフラムの底面との接触面を形成し、前記接触面は前記プランジャの前記ヘッドに対応する領域よりも狭い、請求項1に記載のサンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項11】
前記線形リップは平坦なダイヤフラム接触面を有する、請求項1に記載のサンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項12】
前記線形リップは、凹形状、凸形状または二重壁形状のうちの1つの形状を有する、請求項1に記載のサンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項13】
前記バルブは空気圧で作動させられ、前記バルブはバルブ底部キャップを備えることで、作動ガスのための閉チャンバをもたらす、請求項1に記載のサンプル注入用ダイヤフラムバルブ。
【請求項14】
サンプル注入用ダイヤフラムバルブのためのプランジャアセンブリであって、前記バルブはバルブヘッドおよびバルブ本体を有し、前記バルブ本体は内部に延在する複数のプランジャ通路を備え、前記複数のプランジャ通路は前記バルブ本体の凹部上で開口しており、前記バルブは、前記バルブヘッドと前記バルブ本体との間に位置決めされたダイヤフラムを含み、前記ダイヤフラムは前記バルブ本体の前記凹部に設けられているとともに内部で流体を循環させるための処理溝を有し、前記プランジャアセンブリは、
前記バルブ本体の前記プランジャ通路に摺動可能に嵌合するためのプランジャを備え、使用時に、各プランジャは、前記プランジャが前記ダイヤフラムを変形させて処理ポートのうち2つの処理ポート間の流体循環を遮断する閉位置と、前記プランジャが前記ダイヤフラムから遠ざかるように後退して流体の循環を可能にする開位置との間で移動可能であり、前記プランジャは頂面を備えたヘッドを有し、前記頂面は、前記頂面上に突出するとともに前記頂面にわたって延在する線形リップを備え、前記線形リップは、前記プランジャが前記閉位置にあるときに前記ダイヤフラムを押圧し、
各プランジャの前記頂面は、2つの半円形領域および突出した前記線形リップ上に1つの矩形領域を備え、前記矩形領域は前記2つの半円形領域から隆起して離間しており、前記
矩形領域の表面積は
前記2つの半円形領域の表面積の合計値より小さい、プランジャアセンブリ。
【請求項15】
前記プランジャアセンブリは常閉プランジャアセンブリおよび常開プランジャアセンブリのうちの1つであり、前記アセンブリはディスクプレートを含み、前記プランジャは前記ディスクプレートから延在している、請求項
14に記載のプランジャアセンブリ。
【請求項16】
各プランジャは本体を備え、前記プランジャの前記ヘッドは前記本体から延在しており、前記本体および前記ヘッドはともに実質的に円筒形であり、前記ヘッドが有する直径は前記プランジャの本体の直径よりも狭い、請求項
14に記載のプランジャアセンブリ。
【請求項17】
前記プランジャの本体と前記プランジャの前記ヘッドとの間に第1の円形肩部と、ヘッド部分と突出した前記線形リップとの対向する側の間に第2の肩部および第3の肩部とを備える、請求項
14に記載のプランジャアセンブリ。
【請求項18】
サンプル注入用ダイヤフラムバルブを動作させる方法であって、
a)前記バルブを設けるステップを含み、前記バルブは、
バルブヘッドを備え、前記バルブヘッドは内部に延在する複数の処理導管を備え、前記処理導管の各々は処理ポートにおいて終端をなしており、前記バルブはさらに、
前記バルブヘッドに面するバルブ本体を備え、前記バルブ本体は凹部を備えた本体中間面を備え、前記バルブ本体はまた、内部に延在するプランジャ通路を備え、前記プランジャ通路は前記凹部上に開口しており、前記バルブはさらに、
前記バルブヘッドと前記バルブ本体との間に位置決めされたダイヤフラムを備え、前記ダイヤフラムは、前記バルブ本体の前記凹部に設けられているとともに内部で流体を循環させるための処理溝を有し、前記処理溝は溝幅を有し、前記バルブはさらに、
前記バルブ本体内に設けられた常閉プランジャアセンブリおよび常開プランジャアセンブリを備え、各アセンブリは、前記バルブ本体の前記プランジャ通路に摺動可能に嵌合されるプランジャを備え、各プランジャは、前記プランジャが前記ダイヤフラムを変形させて前記処理ポートのうち2つの処理ポート間の流体循環を遮断する閉位置と、前記プランジャが前記ダイヤフラムから遠ざかるように後退して流体の循環を可能にする開位置との間で移動可能であり、前記プランジャは頂面を備えたヘッドを有し、前記頂面は、前記頂面上に突出するとともに前記頂面にわたって延在する線形リップを備え、前記線形リップの少なくとも一部は、前記プランジャが前記閉位置にあるときに前記ダイヤフラムを押圧し、
各プランジャの前記頂面は、2つの半円形領域および突出した前記線形リップ上に1つの矩形領域を備え、前記矩形領域は前記2つの半円形領域から隆起して離間しており、前記
矩形領域の表面積は
前記2つの半円形領域の表面積の合計値より小さく、前記方法はさらに、
b)前記常閉プランジャアセンブリを開構成へと移動させるとともに、同時に、前記常開プランジャアセンブリを閉構成へと移動させることによって前記バルブを作動させるステップを含み、前記常開プランジャアセンブリの前記プランジャは、実質的に線形であるとともに前記溝幅にわたって延在するそれぞれの接触領域に沿って前記ダイヤフラムをキャップバルブに当てて圧縮する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、ガスクロマトグラフィおよびサンプル分析に関し、より特定的には、ダイヤフラムバルブの改善に向けられている。
【背景技術】
【0002】
背景
クロマトグラフィシステムは、バルブを用いて、再生可能サンプルの注入およびさまざまなカラムスイッチング方式を可能にすることに依拠している。このようなシステムでは、一般にダイヤフラム封止型バルブが用いられている。典型的なダイヤフラム封止バルブは、中間面に開口する複数のポートを有するバルブヘッドを含む。各ポートはバルブヘッド内の通路に連結されており、当該通路には、さまざまな分析用の備品および管類が接続され得る。ダイヤフラムバルブはまた、バルブヘッドの中間面とは反対側に中間面を有するバルブ本体を含む。一般にポリマー材料で作られているダイヤフラムは、バルブ本体とバルブヘッドとの対向する中間面の間で圧縮される。通常、バルブ本体の中間面には、ダイヤフラムにおける対応する凹部に位置する主凹部が設けられており、これにより、隣接するポート間で流体を循環させるためのいくらかの隙間を可能にする。このポート間の連通は、バルブ本体に摺動可能に装着されたプランジャを用いることによって阻止することができる。各プランジャは、2つの隣接するポート間においてダイヤフラムを押圧することができ、これにより、当該ポート間の流体連通を妨げることができる。
【0003】
ガスクロマトグラフィのための先行技術のダイヤフラムバルブに関する1つの問題点は、プランジャがダイヤフラムを適切に押圧しない場合、2つのポート間の経路が完全に閉じられず、ポート間に流体漏れをもたらし、サンプル分析結果に影響を及ぼしてしまう点である。別の一般的な問題点は、流体を循環させるバルブへとつながっている経路に沿って不所望な流体制限が起こる点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、従来技術の欠点のうち少なくともいくつかを軽減させるダイヤフラム封止型バルブが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
第1の局面に従うと、流体を通すためのサンプル注入用ダイヤフラムバルブが提供される。当該バルブは、好ましくは、バルブヘッドと、バルブ本体と、ダイヤフラムと、任意にはバルブ底部キャップとを含む。当該バルブヘッドは内部に延在する複数の処理導管を備える。当該処理導管の各々は処理ポートにおいて終端をなしている。当該バルブ本体は当該バルブヘッドに面している。当該バルブ本体は凹部を備えた本体中間面を備える。当該バルブ本体はまた、内部に延在するプランジャ通路を備え、当該プランジャ通路は当該凹部上に開口している。当該ダイヤフラムは、当該バルブヘッドと当該バルブ本体との間に位置決めされており、当該バルブ本体の当該凹部に設けられているとともに内部で流体を循環させるための処理溝を有する。常閉プランジャアセンブリおよび常開プランジャアセンブリが当該バルブ本体内に設けられており、各アセンブリは、当該バルブ本体の当該プランジャ通路に摺動可能に嵌合されるプランジャを備える。各プランジャは、当該プランジャが当該ダイヤフラムを変形させて当該処理ポートのうち2つの処理ポート間の流体循環を遮断する閉位置と、当該プランジャが当該ダイヤフラムから遠ざかるように後退して流体の循環を可能にする開位置との間で移動可能である。
【0006】
実現可能な実施形態では、当該プランジャはそれらのヘッドの頂面を有する。当該頂面は、当該頂面上に突出するとともに当該頂面にわたって延在する線形リップまたはゲートを備える。当該線形リップの少なくとも一部は、当該プランジャが閉位置にあるときに当該ダイヤフラムを押圧し、好ましくは、閉位置にあるとき、当該線形リップまたはゲートのみが当該ダイヤフラムに接触する。
【0007】
実現可能な実施形態では、当該プランジャはプランジャ本体およびプランジャヘッドを備え、当該プランジャヘッドは当該プランジャ本体から延在している。当該プランジャ本体および当該プランジャヘッドはともに実質的に円筒形であり、当該プランジャヘッドが有する直径は当該プランジャ本体の直径よりも狭い。
【0008】
実現可能な実施形態では、当該プランジャは、当該本体と当該プランジャの当該ヘッドとの間に形成された第1の円形肩部と、当該プランジャの当該ヘッドの当該頂面と当該突出した線形リップの対向する側壁との間に形成された第2の肩部および第3の肩部とを有する。実現可能な一実現例では、各プランジャの当該頂面は、当該突出した線形リップ上に2つの半円形領域および1つの矩形領域を備え、当該矩形領域は当該2つの半円形領域から隆起して離間しているとともに、ダイヤフラム接触領域に対応している。
【0009】
当該ダイアフラムに形成される処理溝は、好ましくは環状または円形であり、溝幅を有する。当該プランジャの上に延在する当該突出した線形リップは、当該処理溝の幅に対応する長さを有し得る。他の実現例では、当該リップが有する長さは、当該溝の幅よりも短くてもよく、または長くてもよい。
【0010】
好ましくは、閉位置では、各プランジャの当該突出した線形リップは、当該ダイヤフラムの底面上の接触面を押圧するとともに、当該ダイヤフラムのうち当該接触面の各側の領域が当該プランジャヘッドの頂面の凹んだ領域に沿って、または当該凹んだ領域に面して、当該突出したリップの両側に延在するように当該ダイヤフラムを変形させる。さらに好ましくは、閉位置では、当該プランジャと当該ダイヤフラムの底面との間に形成された接触面は、当該バルブの中心軸に対して直線的かつ径方向に延在する。さらに好ましくは、各プランジャの当該線形リップは、閉位置にあるとき、2つの隣接する処理ポートの間に単一のゲートまたは側壁を形成する。当該ゲートまたは側壁は当該バルブの中心軸に対して径方向に延在している。各プランジャの当該線形リップは、閉位置にあるとき、好ましくは、当該ダイヤフラムの底面との接触面を形成する。当該接触面は、当該プランジャの当該ヘッドに対応する断面積よりも狭い。実現可能な実施形態では、当該線形リップは平坦なダイヤフラム接触面を有するが、他の実施形態では、当該線形リップは凹形状、凸形状または二重壁形状を有してもよい。
【0011】
本発明の別の局面に従うと、サンプル注入用ダイヤフラムバルブのためのプランジャアセンブリが提供される。当該プランジャアセンブリは、サンプル注入用ダイヤフラム封止バルブのプランジャ通路に摺動可能に嵌合するような大きさおよび構成にされたプランジャを含む。使用時、各プランジャは、当該プランジャがダイヤフラムを変形させて処理ポートのうちの2つの処理ポート間の流体循環を遮断する閉位置と、当該プランジャが当該ダイヤフラムから遠ざかるように後退して流体の循環を可能にする開位置との間で移動可能である。好ましくは、当該アセンブリの当該プランジャは各々、頂面を有し、当該頂面は、当該頂面上に突出するとともに当該プランジャにわたって延在する線形リップを備える。当該線形リップは、当該プランジャが当該閉位置にあるとき当該ダイヤフラムを押圧する。当該プランジャアセンブリは常閉プランジャアセンブリおよび常開プランジャアセンブリのうちの1つであり得る。当該アセンブリはディスクプレートを含み得る。当該プランジャが当該ディスクプレートから延在している。
【0012】
いくつかの実施形態では、当該ディスクプレートおよび対応するプランジャは単一の構成要素として一体的に形成することができ、当該プランジャヘッドは平面的で平坦な頂面を有していてもよい。
【0013】
好ましくは、プランジャアセンブリのいくつかの実現例では、各プランジャの頂面上に、プランジャヘッドの周辺領域よりも小さいダイヤフラム接触面としてリップが形成される。
【0014】
別の局面に従うと、サンプル注入用ダイヤフラムバルブを動作させる方法が提供される。当該方法は、上述のバルブを設けるステップと、当該常閉プランジャアセンブリを開構成へと移動させるとともに、同時に、当該常開プランジャアセンブリを閉構成へと移動させることによって当該バルブを作動させるステップを含み、当該常開プランジャアセンブリの当該プランジャは、実質的に線形であるとともに当該溝幅にわたって延在するそれぞれの接触領域に沿って、当該ダイヤフラムを当該キャップバルブに当てて圧縮する。当該方法は、当該ダイヤフラムの当該処理溝における少なくとも1つの処理導管から当該処理導管のうち少なくとも別の処理導管に向かって流体を循環させるステップと、当該バルブを作動停止させるステップとを含み、当該常閉プランジャアセンブリが当該閉構成に戻り、当該常開プランジャアセンブリが当該開構成に戻る。当該常閉プランジャの当該プランジャが、実質的に線形であるとともに当該溝幅にわたって延在するそれぞれの接触領域に沿って当該ダイヤフラムを当該キャップバルブに当てて圧縮する。好ましくは、当該プランジャは、当該ダイヤフラムのうち当該接触面の各側の領域が下方に延在して当該プランジャのヘッドの頂面の凹んだ領域に面するように当該ダイヤフラムを変形させる。当該プランジャと当該ダイヤフラムの底面との間に形成される接触領域は、当該バルブの中心軸に対して直線的かつ径方向に延在する。
【0015】
本発明の実施形態の他の特徴および利点は、添付の図面を参照してその好ましい実施形態を読むことによってよりよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実現可能な実施形態に従ったサンプル注入用ダイヤフラムバルブを示す上面斜視図である。
【
図3A】ダイヤフラムの上面に開口する2つのポートを示す、
図3の線3A-3Aに沿ったバルブの断面図である。
【
図4A】
図4の線4A-4Aに沿った
図1のバルブを非作動の状態で、常閉プランジャおよび常開プランジャとともに示す別の断面図である。
【
図4B】常閉プランジャが下降しているとともに常開プランジャがダイヤフラムを押圧している、作動中の
図4のバルブを示す断面図である。
【
図5A】開位置にあるプランジャのヘッドを
図5の線5A-5Aに沿って示す概略拡大断面図である。
【
図5B】2つのポート間の連通経路を閉じるためにダイヤフラムを押圧している
図4Aのプランジャを示す概略拡大断面図である。
【
図6A】開位置にあるプランジャのヘッドを
図6の線6A-6Aに沿って示す概略拡大断面図である。
【
図6B】2つのポート間の連通経路を閉じるためにダイヤフラムを押圧している
図6Aのプランジャを示す概略拡大断面図である。
【
図7】実現可能な実施形態に従った、常開プランジャアセンブリを示す斜視図である。
【
図7D】
図7Cの線7D-7Dに沿ったアセンブリを示す断面図である。
【
図7E】アセンブリのプランジャのヘッドを示す拡大図である。
【
図8】実現可能な一実施形態に従った常閉プランジャアセンブリを示す斜視図である。
【
図8D】
図8Cの線8D-8Dに沿ったアセンブリを示す断面図である。
【
図8E】アセンブリのプランジャのヘッドを示す拡大図である。
【
図9】別の実現可能な実施形態に従った常開プランジャアセンブリを示す斜視図である。
【
図10】別の実現可能な実施形態に従った常閉プランジャアセンブリを示す斜視図である。
【
図10B】面取りされた端縁を有する、
図10Aのプランジャのヘッドを示す拡大図である。
【
図11A】他の実現可能な実施形態に従ったプランジャヘッドを示す拡大図である。
【
図11B】他の実現可能な実施形態に従ったプランジャヘッドを示す拡大図である。
【
図11C】他の実現可能な実施形態に従ったプランジャヘッドを示す拡大図である。
【
図12A】別の実現可能な実施形態に従った常開プランジャアセンブリを示す側面図である。
【
図13A】別の実現可能な実施形態に従った常閉プランジャアセンブリを示す側面図である。
【
図13C】実現可能な一実施形態に従ったプランジャヘッドを示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面が本発明の例示的な実施形態のみを示しており、したがって、本発明が他の等しく有効な実施形態を可能にし得るようにその範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0018】
好ましい実施形態の説明
本発明は、概して、ダイヤフラム封止バルブ、たとえば、ガスクロマトグラフィに適したバルブ、のためのプランジャおよびプランジャアセンブリに関する。
【0019】
以下の説明では、異なる実施形態における同様の特徴には同様の参照番号を付している。簡潔および明瞭にするために、すなわち、図に不要な参照番号を必要以上に付さないようにするために、すべての図はすべての構成要素および特徴を参照するわけではない。いくつかの構成要素および特徴が1つの図のみに参照されている可能性もあり、そこから、他の図に示される本開示の構成要素および特徴を容易に推測することができる。本明細書全体を通じて、特に明記されない限り、「上部」および「底部」などの位置の記述は、図についての文脈で解釈されるべきであり、限定的なものと見なされるべきではない。
【0020】
図1、
図2、
図3、
図3A、
図4、
図4Aおよび
図4Bを参照すると、例示的なサンプル注入用ダイヤフラムバルブ10が示されている。バルブ10は、バルブヘッド20と、バルブ本体30と、バルブ底部キャップ35と、バルブ装着用カラー37と、バルブヘッド20とバルブ本体30との間で圧縮されるダイヤフラム40と、プランジャアセンブリ50、60とを含む。サンプル注入用ダイヤフラムバルブの他の実施形態は、より多くの構成要素またはより少ない構成要素を含んでいてもよい。たとえば、底部キャップ35および装着用カラー37は、プランジャアセンブリ50、60をバルブ本体30に保持する他の同等の構造と置換えることができる。ねじ、ばね、シール、ピストンなどの他の構成要素がバルブに設けられてもよい。図示した実施形態では、バルブは空気圧で作動させられるとともに、作動ガスのための閉チャンバを形成するためにバルブ底部キャップ35を備える。しかしながら、他の実現例では、プランジャを電気により作動させることが可能であり、そのような場合、バルブ底部キャップは不要となり得る。
【0021】
図2~
図4Bを参照すると、バルブヘッド20は、中間面206と、バルブヘッド20を通って延在する複数の処理導管202とを有する。図示した実施形態では、バルブは10個の処理導管を含むが、バルブの他の実施形態は、用途に応じて異なる数の導管を含み得る。バルブヘッド中間面206は平坦で滑らかであり、バルブが組立てられるとダイヤフラム40と接触する。各々の処理導管202は、バルブヘッド中間面206で開口する処理ポート204において終端をなしている。処理ポート204は、好ましくは、バルブヘッド中間面上に円形に配置される。
図3Aに最もよく示されるように、処理導管202の各々は、好ましくは、管類接続部を収容するためのより大きなねじ穴と、処理ポート204において終端するより小さい流体通路とによって形成されている。この実施形態では、バルブヘッド20は円筒形であり、単なる一例として、電解研磨されたステンレス鋼でできている。合わせピン82によって、バルブヘッド20とバルブ本体30とが確実に位置合わせされる。当然、バルブヘッド20をバルブ本体30に保持するための他の構成を検討することもできる。他の材料、たとえばセラミックまたは多種多様なポリマーがバルブヘッド20のための材料として用いられてもよい。円筒形以外の形状が検討されてもよい。当然、バルブヘッドの他の実施形態は、4個、8個、10個、12個または他の任意の好都合な数の処理ポートを含んでもよい。
【0022】
さらに
図2~
図4Bを参照すると、バルブ本体30はまた、バルブ10が組立てられたときにバルブヘッド中間面206に面する中間面302を有する。バルブ本体中間面302は、好ましくは円形の輪郭を有する主凹部304を備える。
図3Aに最も良く示されているように、バルブ要素が組立てられたときにバルブヘッド20の処理ポート204が凹部304に沿って一直線になると、バルブが使用できるようになる。バルブ本体30はまた、複数のプランジャ通路306を含んでおり、このうち2つが
図4Aおよび
図4Bに示されている。各々のプランジャ通路306は、バルブ本体30内に延在しているとともに、処理ポート202のうちの2つの処理ポート202の間において凹部304内の一端で開口している。通路306の他端は、プランジャアセンブリを収容するバルブ本体空隙内で開口している。バルブ本体はまた、バルブ本体をバルブヘッドに保持するソケットヘッドキャップねじを収容するためのねじ穴の第1のセットと、バルブ本体30を底部キャップ35に保持するソケットヘッドキャップねじを収容するためのねじ穴の第2のセットとを備える。当然、バルブ本体30をバルブヘッド20およびバルブ底部キャップ35に取付けるための他の構成が検討されてもよい。
【0023】
図2を参照すると、ダイヤフラム40の実現可能な一実施形態が示されている。ダイヤフラム40は、バルブヘッド20の底部中間面206に面する第1の表面と、上部中間面バルブ本体30に面する第2の表面とを有する。ダイヤフラム40は、バルブが組立てられて使用準備が整うと、バルブヘッドとバルブ本体との中間面の間に配置される。ダイヤフラムは、予形成された変形溝または加工溝402をバルブ本体30の主凹部304内に有する。ダイヤフラム40の頂面は、バルブヘッド20の中間面206と共に、処理ポート204間の連通チャネルを規定する。
【0024】
図1~
図8に示す実施形態は、10個のプランジャ付きバルブを示しており、そのうち2個が
図4Aおよび
図4Bに示されている。当然、異なる数のプランジャを有するダイヤフラム封止バルブに本発明を適用してもよい。たとえば、
図9および
図10に示すプランジャアセンブリは、各々、6個のプランジャ付きバルブを形成するように3つのプランジャを備えている。「プランジャ」という語は、機械力もしくは流体圧力によって駆動されるかまたは機械力もしくは流体圧力に抗して駆動される機械的構成要素を意味するものと理解される。以下、本発明の実施形態に従ったプランジャ70の構成についてさらに説明する。各プランジャ70は、バルブ本体30の対応する通路306において摺動可能である。好ましくは、通路306の直径は、対応するプランジャ70の直径よりも僅かに大きい。
【0025】
図4Aに示されるように、プランジャ70は、好ましくは、「常閉」(normally closed:NC)および「常開」(normally open:NO)と称される2つのタイプである。典型的なクロマトグラフィ用途では、所与のタイプの複数のプランジャ70は、それらが全て閉位置となるかまたは全て開位置となるように一緒に作動させられる。それらの名称が示しているように、常閉プランジャは閉位置に向かって付勢されるのに対して、常開プランジャは開位置に向かって付勢される。図示した実施形態では、NOプランジャおよびNCプランジャは常開プランジャアセンブリ50および常閉プランジャアセンブリ60の一部である。各アセンブリ50、60はディスクプレート52、62を含み、当該ディスクプレート52、62からプランジャが突出/延在している。図示した実施形態では、ディスクプレート52、62および対応するプランジャは単一の構成要素として一体的に形成されているが、他の実施形態では、プランジャおよびディスクプレートは他の構成をとることができ、1つ以上の部品で形成することができる。プランジャは、たとえば、ディスクプレートにねじ込むことができ、追加のプッシュプレートと相互に作用することができる。
【0026】
さらに
図4Aを参照すると、この特定の実施形態では、常閉プランジャ70NCの長さは、常開プランジャ70NOの長さとは異なっている。プランジャ作動機構は、好ましくは、バルブ本体30内でダイヤフラム40に対して平行に延在するとともにダイヤフラム40に対して横方向に移動可能である閉ピストン66を含む。常閉プランジャ70NCは、常閉ピストン66に動作可能に接続される。
図2に最もよく示されるように、下方ピストン66は、アセンブリ50を貫通してアセンブリ60のディスクプレート62に接続する中央突起部として機能する。プランジャ作動機構32はさらに、上方ピストンを含み、この場合、上方ピストンは常開プランジャアセンブリ50のディスクプレート52に対応している。複数のプランジャ孔64がアセンブリ60のディスク62にわたって延在しており、常開プランジャがその内部を通ることを可能にする。他の実施形態では、当然、常閉アセンブリ60が常開アセンブリ50の下に位置するようにアセンブリ50、60の積層順序を逆にすることを検討することもできる。この場合、これに応じてばね/付勢手段を再構成する必要があるだろう。
【0027】
図示した実施形態では、ベルビル(Belleville)ワッシャスタックおよびプレートを含むベルビルアセンブリ84が下方ピストン66と協働する。ベルビルアセンブリ66に対する力は、好ましくは、予荷重調整止めねじ86によって制御される。ベルビルアセンブリ66は、標準的なばねまたはポリマーブッシングなどの他の任意の付勢手段と置換えられてもよい。
【0028】
上方ピストン52は適切な手段によって下方に付勢される。図示した実施形態では、波形ばね80が、バルブ本体30内から上方ピストンまたはディスクプレート52上にわたって延在し、逆方向の力が作用していないときにそこに下向きの力を加える。したがって、常開プランジャ70NOは開位置に向かって付勢される。上方ピストン52の上方向へのストロークは、バルブ本体30において機械加工された肩部によって制限される。
【0029】
作動機構は、両方のタイプのプランジャ70をそれらの開位置と閉位置との間で作動させるように動作可能である。これは、本実施形態では、上方ピストン52と下方ピストン66との間の距離を制御することによって達成することができる。
図4Aに示されるように、非作動時、2つのピストン52および66は、ベルビルアセンブリ84および波ばね80によって互いに向かって押込まれると互いに接触する。作動機構は、好ましくは、作動ガス供給口アダプタ88を介して上方ピストン52と下方ピストン66との間に加圧ガスを供給するための空気圧アクチュエータを含む。バルブを作動させると、ガスが上方ピストン52を上方に押し、これにより常開プランジャ70NOを閉位置に向かって摺動させ、次いで下方ピストン66を下方に押し、これによりディスクプレート62を下方に引張って、常閉プランジャ70NCを開位置へと後退させることによって、両方のピストン52および66の付勢を相殺させることとなる。加圧ガスを除去すると、ベルビルアセンブリ84および波ばね80の付勢効果により逆の結果が得られるだろう。
【0030】
サンプル注入用ダイヤフラムバルブに関して起こり得る1つの問題は、ダイヤフラムが処理ポート間で流体経路をふさいだままになっているときに生じる。流体連通経路412は、バルブヘッド中間面206とダイヤフラム40における処理溝402の頂面との間に規定される容積であり、そこを流れるガスは2つのポート間を循環する。流体連通経路412においてダイヤフラムが意図されないのに変形したり膨らんだりすると、プランジャが開位置にあるダイヤフラムから後退して処理溝内にガスを流入させたときにバルブが制限されてしまう。2つのポート間の連通を遮断するためにダイヤフラムが閉プランジャによって変形した後、プランジャがダイヤフラムから後戻りしたときにこのダイヤフラムがその元の形状にもどらない場合、流量の制限または損失が起こる。バルブヘッド中間面とダイヤフラム処理溝402の底面との間の距離は、たとえば50μm未満、典型的には25μmから12μmなどと比較的小さく、流体連通経路におけるダイヤフラムの膨らみは、たとえば5μmなどのようにわずか数μmであったとしても、許容可能な規格値を超える流量制限をもたらすのに十分であり得る。たとえば、許容可能な規格値は、75ml/分の流体流量に対して、10kPA~20kPA以下、典型的には15kPA以下とすることができる。
【0031】
2つの処理ポート間の連通経路を遮断するとき、典型的なプランジャは、典型的にはディスク形状/円形である頂面領域全体でダイヤフラムに接触して押圧する。いくつかのバルブにおいては、複数のプランジャは、それらの周囲に沿ってのみダイヤフラムを押圧する。しかしながら、いずれの場合も、閉位置で流体を遮断するように変形させたダイヤフラムの領域は、プランジャのヘッドの領域に実質的に対応している。本出願人は、プランジャとダイヤフラムとの間の接触面積を小さくすることにより、数千回の作動サイクル後でも、漏出率を安定させたままでバルブにおける流量制限を限定できることを発見した。
図7から
図11に示されるように、プランジャの頂面上にリップまたはストリップ706を形成することにより、結果として、プランジャがそれらの開位置に向かって後退するときにダイヤフラムが膨らむのを抑制すると考えられているものが得られることとなる。驚くべきことに、プランジャとダイヤフラムとの間の封止/接触領域が「直線的」または「径方向」の接触面にまで小さくなっても、当該接触領域は、プランジャが閉位置にあるときに流体経路を適切に遮断するのに十分である。加えて、プランジャリップが小さい領域に作動圧力を集中させても、当初考えられていたようにプランジャリップがダイヤフラム底面を変化または破損させないことが分かった。プランジャヘッドのディスク領域よりも小さいかまたはプランジャ頂部の周辺領域よりも小さい表面または領域を有するダイヤフラム接触面を備えたリップをプランジャの上に形成することにより、円形または環状の接触面を有するプランジャを用いた場合と比べて、バルブにおける流量制限を抑制することが可能となる。
【0032】
図7~
図10を参照すると、常閉プランジャアセンブリ50および常開プランジャアセンブリ60のさまざまな実施形態が示されている。さまざまなプランジャアセンブリのプランジャ70の各々は、プランジャ本体708と、頂面704を有するプランジャヘッド702とを有し、頂面704にはその上に突出するリップ706が設けられている。「ゲート」または「突起」とも称され得るリップ706は好ましくは線形であり、ダイヤフラムの処理溝にわたって径方向に延在する。これらの例示的な実施形態では、
図5、
図5A~
図5B、
図6、
図6Aおよび
図6Bを参照してより詳細に説明されるように、プランジャが閉位置にあるときにリップ706がダイヤフラムを押圧するように、当該リップ706が頂面704にわたって延在している。好ましくは、線形リップ706は、プランジャのうち、閉位置にあるときにダイヤフラムに接触して当該ダイヤフラムを押圧する唯一の部分であって、プランジャ70の最上面がダイヤフラム接触面724に対応している。リップには、
図8Eのように90度の角部を形成することができるか、または
図10Bのように面取りされた角部を形成することができる。図示された実施形態では、プランジャは単一の一体型部品で作られているが、プランジャを別の副次的部品から形成することを検討することもできる。たとえば、プランジャ本体およびプランジャヘッドは、一体的に形成することができるか、または、互いに直接的または間接的に接続された2つの別々の部分で構成することができる。
【0033】
図示される例示的な実施形態では、プランジャヘッド702はプランジャ本体708から延在しており、プランジャ本体708およびプランジャヘッド702はともに実質的に円筒形である。プランジャヘッド704は、
図7Dに示されるように、プランジャ本体708の直径D
BODYよりも狭い直径D
HEADを有する。
【0034】
ここで
図7Dおよび
図7Eならびに
図8、
図8Aおよび
図8Eを参照すると、各プランジャ70は、本体とプランジャのヘッドとの間に第1の円形肩部710と、プランジャのヘッドの頂面704と突出した線形リップ706の対向する側壁716、718との間に第2の肩部712および第3の肩部714とを含む。これらの例示的な実施形態では、各プランジャ70の頂面704は、2つの半円形領域720、722と、当該突出した線形リップ706上の1つの矩形領域724とを備える。当該矩形領域は、この場合、ダイヤフラム接触面724に対応しており、2つの半円形領域720、722から隆起して離間している。
【0035】
ここで
図5Aおよび
図5Bを参照すると、閉位置および開位置にあるプランジャの拡大断面図が示されている。
図5Aおよび
図5Bは、
図5の線5A-5Aに沿った、すなわちリップ706の長さに沿った、プランジャの断面図である。
図6Aおよび
図6Bは、同じプランジャの拡大断面図を、
図5の断面に対して90度だけ角度を変えて示している。図示した実施形態では、処理溝402は、溝幅W
gを有する環状の処理溝である。好ましくは、プランジャ70の上に延在する突出した線形リップ706は、処理溝の幅W
gに実質的に対応する長さL
lipを有する。図示した実施形態では、プランジャヘッドおよびリップの直径は、(
図5Aにおけるように)溝の幅W
gよりも大きいが、他の実施形態では、リップの長さ(L
lip)は溝の幅W
g以下であり得る。
【0036】
閉位置では、
図5Bおよび
図6Bのように、プランジャ70の突出した線形リップ706が、ダイヤフラム40の底面404上の接触面406を押圧することで、ダイヤフラムのうち接触面406の両側にある領域408、410がプランジャヘッド702の頂面の凹んだ領域720、722に沿うとともに当該凹んだ領域720、722に面した状態で当該突出したリップ706の両側に延在するように、ダイヤフラムを変形させる。プランジャとダイヤフラムの底面との間に形成されるとともに参照符号406および724が付された領域に対応するダイヤフラムとリップ706との接触面はバルブの中心軸に対して直線的かつ径方向に延在する。このため、プランジャのリップ706は、閉位置にあるとき、2つの隣接する処理ポート間に単一のゲートを形成する。このゲートは、バルブの中心軸に対して径方向に延在するリップによって形成される。認識され得るように、プランジャのリップ上のダイヤフラムの底面404との接触面724は、プランジャのヘッドに対応する領域よりも狭い。このため、ダイヤフラム上のプランジャの跡が既存のプランジャと比べて小さくなり、これにより、プランジャが開位置に向かって後退したときにバルブ内の流量制限が小さくなる。
【0037】
図7および
図8に示される実施形態のように突出したリップを有するプランジャを備えたサンプル注入用バルブの性能が、円形接触面を有するプランジャよりも改善されていることを実証するために実験を行なった。この実験は、上述で定義したような線形リップを備えたプランジャ付きの常閉アセンブリと、プランジャの頂端の周囲に沿って円形接触面を有する標準的なプランジャ付きの常開アセンブリとを配置することによって行なわれた。バルブ内を通るガスの流量を75scc/分で一定に保ち、作動圧力を63psiに設定した。作動サイクル数は数千サイクルであり、閉プランジャによって連通される2つの隣接するポート間を循環する流体について流量を測定した。操作温度は120°Cであった。ここで、1v10などの各カラムごとに、2つの隣接するポート間で流量を測定した。2つのポート間のプランジャのタイプを「ゲート」および「標準」と示す。得られた結果が示すように、本発明のプランジャが用いられる場合、2つの閉ポート間でkPaで測定される流動制限は、標準的なプランジャが用いられる場合に測定される制限と比べて実質的に低減されている。
【0038】
【0039】
表1:NCアセンブリを備えたバルブにおいて測定された流量制限。この場合、プランジャは線形リップを備えており、NOアセンブリは円形ダイヤフラム接触面を有する従来技術のプランジャを備えている。
【0040】
ポート間の交差汚染をもたらす恐れのある漏れの試験も行なった。この現象は、ダイヤフラムがプランジャによって適切に閉じられず、流体が閉プランジャによって完全に遮断されないときに発生する。漏れ速度が両方のタイプのプランジャで同様であることが分かった。押圧領域を小さくしても、予想されたのとは逆に、バルブでの漏れは増加しない。
【0041】
図7~
図10に示す実施形態では、最上面/ダイヤフラム接触面は平坦であるが、
図11A~
図11Cに示すように、凹形状、凸形状または二重壁形状に形成されたリップを有するとみなすことができる。
【0042】
図12A~
図12Bおよび
図13A~
図13Cを参照すると、NCプランジャアセンブリ50およびNOプランジャアセンブリ60の他の実施形態が提供される。図示のとおり、常閉プランジャアセンブリ50および常開プランジャアセンブリ60のプランジャ70は、これらプランジャが必ずしも線形リップを含まなくても、ディスクまたはプレート52、62と一体的に形成されることが可能である。プランジャ70およびディスクプレート52または62を単一の部品または構成要素として形成する場合、プランジャの頂面704が同じ平面Pに沿って延在し、所与のアセンブリ(NCまたはNO)のすべてのプランジャ70が同じ高さを有するように当該プランジャの頂面704を機械加工することで、一方のプランジャから他方のプランジャに対するより均一な封止特性を提供しながらもバルブの組立を促進できることが判明した。したがって、実現可能な実施形態に従うと、サンプル注入用ダイヤフラムバルブのためのプランジャアセンブリ50または60が提供される。プランジャアセンブリは、ディスクプレート52または62と、当該ディスクプレート52または62から突出するプランジャ70とを備え、ディスクプレート52または62および複数のプランジャ70は単一の部品として一体的に形成されている。プランジャ70は、サンプル注入用バルブの本体のプランジャ通路に摺動可能に嵌合するような大きさおよび構成にされており、各プランジャは、プランジャがダイヤフラムを変形させて処理ポートのうち2つの処理ポート間の流体循環を遮断する閉位置と、プランジャがダイヤフラムから遠ざかるように後退して流体の循環を可能にする開位置との間で移動可能である。各プランジャは、頂面704を備えたプランジャヘッド702を有し、当該頂面は、プランジャが閉位置にあるときにダイヤフラムに押当てるためのダイヤフラム接触面を備える。NCプランジャアセンブリおよびNOプランジャアセンブリがそれぞれ単一構成要素として形成されているこのような実施形態では、ダイヤフラム接触面724は、たとえば、
図11Dおよび
図11Eに示されるように線形または円形であってもよく、ダイヤフラム接触面は、
図12Aおよび
図12Bに示されるように平坦であってもよく、または
図13A~
図13Cに示されるように環形状を有していてもよい。
【0043】
図1から
図11Cを参照すると、動作時、たとえば、作動ガスを下方ピストン66と上方ピストン52との間に注入することによってバルブを作動させたとき、これにより、常閉プランジャアセンブリ60を開構成に向かって移動させるとともに、同時に常開プランジャアセンブリ50を閉構成に向かって移動させる。常開プランジャアセンブリ50のプランジャは、実質的に線形であるとともに溝幅Wgにわたって延在するそれぞれの接触領域724に沿って、ダイヤフラム40をバルブヘッド20に押し当てて圧縮する。
【0044】
流体は、ダイヤフラムの処理溝402内で複数の処理導管のうち1つの処理導管から他の処理導管に向かって循環させることができる。作動ガス注入を停止すると、常閉プランジャアセンブリ60が閉構成に戻り、常開プランジャアセンブリ50が開構成に戻ることによって、バルブが停止する/非作動となる。この状態において、常閉プランジャアセンブリ60のプランジャ70は、実質的に線形であるとともに溝幅にわたって延在するそれぞれの接触領域724に沿って、ダイヤフラム40をバルブヘッド20に押し当てて圧縮する。
【0045】
本発明の好ましい実施形態をこの明細書中に詳細に説明するとともに添付の図面において例示してきたが、本発明がこれらの的確な実施形態に限定されないこと、かつ、本発明から逸脱することなくさまざまな変更および変形が実施され得ることが理解されるはずである。