(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20231228BHJP
H01R 13/625 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01R13/52 301B
H01R13/625
(21)【出願番号】P 2022054113
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591004146
【氏名又は名称】平河ヒューテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長島 淳一
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-122598(JP,A)
【文献】実開昭59-039883(JP,U)
【文献】特開2010-165624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 13/625
H01R 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状の凸状先端部品を有し、前記凸状先端部品の円柱表面にシール部材を有する第1コネクタと、
前記凸状先端部品が挿入されて嵌合し、前記シール部材を介して、前記凸状先端部品と密閉状態で連結する凹状先端部品を有する第2コネクタと、を有し、
前記第1コネクタは、前記シール部材より外周側において前記凸状先端部品の円柱周りに回転及びスライド可能であって、前記第2コネクタとの連結状態をロックする円筒形状のロック部品を有
し、
前記シール部材は、前記凸状先端部品の先端部から遠い奥側の位置であって前記凸状先端部品の円柱軸方向の少なくとも2カ所に配置され、
前記少なくとも2カ所に配置されたシール部材のそれぞれは、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの連結状態では前記凹状先端部品の円筒内面に当接し、
前記少なくとも2カ所に配置されたシール部材のうち前記第2コネクタ側に配置される前記シール部材は、前記ロック部品が非ロック状態で前記第1コネクタの先端部と反対側のスライド端に位置する状態において、前記ロック部品から前記円柱軸方向の前記第2コネクタ側に露出している、
コネクタ装置。
【請求項2】
前記第1コネクタは雌コネクタであり、前記第2コネクタは雄コネクタである、請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記シール部材は、Oリングである、請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記凹状先端部品は、前記ロック部品の突起部を前記回転及びスライド時に誘導する誘導溝を有し、前記誘導溝には、途中においてテーパ部が形成されている、請求項1から
3のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【請求項5】
前記凸状先端部品は、互いに異形のキーを備えた複数の嵌合部を有する第1嵌合部を有し、
前記凹状先端部品は、互いに異形のキーを備えた複数の嵌合部を有する第2嵌合部を有し、
前記凸状先端部品と前記凹状先端部品は、前記第1コネクタと前記第2コネクタが連結する際に、特定の位置関係でのみ嵌合する、請求項1から
3のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ装置に係り、特に、雄コネクタと雌コネクタの連結部において防水機能を有するコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタ装置として、バヨネット式で雄コネクタと雌コネクタを連結し、連結部において防水機能を有するコネクタ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のコネクタ装置は、第1コネクタとして、プラグ(雄コネクタ)と、プラグに嵌合する第2コネクタとしてのレセプタクル(雌コネクタ)とを有して構成されている。プラグは、レセプタクルに挿入する凸状の嵌合部と、連続部でロックリングが外装されるフランジ状の本体部と、壁部に挿入されて取り付けられる雄ネジ部とを有する。レセプタクルには、プラグの凸状の嵌合部が差し込まれて嵌合する凹状の被嵌合部(凹状先端部品)が設けられている。レセプタクルの被嵌合部内には、被嵌合部の内周壁から離間する外周面を有する挿入突部が設けられ、この挿入突部に、レセプタクル側コンタクトが配置されている。この被嵌合部内に、プラグの嵌合部が挿入されて嵌め合うことで、プラグのプラグ側コンタクトと電気的に接続される。
【0004】
また、レセプタクルには、被嵌合部の外周に、ロックリングが取り付けられている。ロックリングは、被嵌合部の開口方向に移動自在であり、プラグとレセプタクルとを嵌め合わせた際に、この嵌め合わせ部分を覆う位置にコネクタ装置の軸方向(接続方向)に沿ってスライド移動される。ロックリングは、嵌め合わせ部分上で周回りに回転することで、プラグとレセプタクルとが接続状態でロックされる。
【0005】
プラグは、プラグハウジングと、その外周に設けられ、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどの防水性を有する弾性被覆部とを有する。弾性被覆部の嵌合被覆部で被覆されることで、レセプタクルにおける凹状の被嵌合部に挿入される凸状の嵌合部が構成されている。これにより、嵌合部と被嵌合部とは嵌合被覆部を介して気密状態で嵌合する。よって、プラグとレセプタクルとの嵌合部分に防水処理を施すことができるとされている。
【0006】
しかし、雄コネクタと雌コネクタは、嵌合被覆部を介して気密状態で嵌合しながら連結操作がされるので、連結する際に気密空間の圧縮率が増加して挿入力が増加するいう問題があった。
【0007】
また、雄プラグ部と雌連結部がOリングで防水されるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2のプラグコネクタは、プラグコネクタは、雄プラグ部及び雌連結部を含み、雄プラグ部分は外周面に固定突出部が備えられており、雌連結部にはバヨネット式プラグ接続の形成のための固定溝穴が備えられている。ここで、雄プラグ部の外周の上にて固定突出部に前置されて、または、雌連結部の内周の上にて固定突出部へ後置されて、シールリングが配置されている。シールリングは、プラグ接続が締められるときに、密閉するように雄連結部の外周と雌連結部の内周との間に接する。シールリングは、Oリングである。
【0008】
雄プラグ部と雌連結部の連結においては、約90°の回転のみを行えばよく、他方では、固定突出部が回転の終りにおいて、固定溝穴の前置された端部の中に係止するので、このバヨネット式プラグコネクタは、迅速かつ確実な接続及び分離を可能にし、安定したロック状態を可能にするとされている。
【0009】
しかし、雄プラグ部と雌連結部をロックするためのロックリングは備えられていない。このため、雄プラグ部の側に電線が接続されたコネクタ装置に適用すれば、雄コネクタと雌コネクタを連結する際に、電線が約90°回転してねじれてしまうという問題が生じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2014-235873号公報
【文献】特開2019-40889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、雄コネクタと雌コネクタを連結する際の連結操作性が優れ、防水機能を有するコネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]上記目的を達成するために、本発明は、円柱形状の凸状先端部品を有し、前記凸状先端部品の円柱表面にシール部材を有する第1コネクタと、
前記凸状先端部品が挿入されて嵌合し、前記シール部材を介して、前記凸状先端部品と密閉状態で連結する凹状先端部品を有する第2コネクタと、を有し、
前記第1コネクタは、前記シール部材より外周側において前記凸状先端部品の円柱周りに回転及びスライド可能であって、前記第2コネクタとの連結状態をロックする円筒形状のロック部品を有し、
前記シール部材は、前記凸状先端部品の先端部から遠い奥側の位置であって前記凸状先端部品の円柱軸方向の少なくとも2カ所に配置され、
前記少なくとも2カ所に配置されたシール部材のそれぞれは、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの連結状態では前記凹状先端部品の円筒内面に当接し、
前記少なくとも2カ所に配置されたシール部材のうち前記第2コネクタ側に配置される前記シール部材は、前記ロック部品が非ロック状態で前記第1コネクタの先端部と反対側のスライド端に位置する状態において、前記ロック部品から前記円柱軸方向の前記第2コネクタ側に露出している、
コネクタ装置を提供する。
【0014】
[2]また、本発明に係るコネクタ装置において、前記第1コネクタは雌コネクタであり、前記第2コネクタは雄コネクタである、上記[1]に記載のコネクタ装置であってもよい。
【0015】
[3]また、本発明に係るコネクタ装置において、前記シール部材は、Oリングである、上記[1]又は[2]に記載のコネクタ装置であってもよい。
【0016】
[4]また、本発明に係るコネクタ装置において、前記凹状先端部品は、前記ロック部品の突起部を前記回転及びスライド時に誘導する誘導溝を有し、前記誘導溝には、途中においてテーパ部が形成されている、上記[1]から[3]のいずれかに記載のコネクタ装置であってもよい。
【0017】
[5]また、本発明に係るコネクタ装置において、前記凸状先端部品は、互いに異形のキーを備えた複数の嵌合部を有する第1嵌合部を有し、前記凹状先端部品は、互いに異形のキーを備えた複数の嵌合部を有する第2嵌合部を有し、前記凸状先端部品と前記凹状先端部品は、前記第1コネクタと前記第2コネクタが連結する際に、特定の位置関係でのみ嵌合する、上記[1]から[3]のいずれかに記載のコネクタ装置であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、雄コネクタと雌コネクタを連結する際の連結操作性が優れ、防水機能を有するコネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係るコネクタ装置の一例を説明する図であって、第1コネクタとしての雌コネクタと、第2コネクタとしての雄コネクタのそれぞれの外観斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の実施の形態に係る雌コネクタの凸状先端部品の先端部側から見た外観斜視図であり、
図2(b)は、雌コネクタの凸状先端部品の先端部側から見た正面図であり、
図2(c)は、雄コネクタの凹状先端部品の先端部側から見た外観斜視図であり、
図2(d)は、雄コネクタの凹状先端部品の先端部側から見た正面図である。
【
図3】
図3(a)は、本実施の形態に係る雌コネクタの円柱の中心軸を含む断面図であり、
図3(b)は、本実施の形態に係る雄コネクタの円柱の中心軸を含む断面図である。
【
図4】
図4(a)は、本実施の形態に係る雌コネクタと雄コネクタの嵌合前の状態を示す外観斜視図であり、
図4(b)は、雌コネクタと雄コネクタの嵌合時におけるロック操作を説明する外観斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、本実施の形態に係る雌コネクタと雄コネクタの嵌合前の状態を示す雌コネクタの円柱の中心軸を含む断面図であり、
図5(b)は、嵌合途中の状態を示す雌コネクタの断面図であり、
図5(c)は、嵌合完了時の状態を示す雌コネクタの断面図である。
【
図6】
図6(a)は、本実施の形態に係る雄コネクタの凹状先端部品の先端部側から見た外観斜視図であり、
図6(b)は、誘導溝が見える上平面図であり、
図6(c)は、比較例としての雄コネクタの凹状先端部品の先端部側から見た外観斜視図であり、
図6(d)は、
図6(c)の上平面図である。
【
図7】
図7は、本実施の形態に係る雌コネクタの凸状先端部品とロック部品の意匠部分を実線で示し、その他の部分を一点鎖線で示した斜視図である。
【
図12】
図12は、本実施の形態に係る雄コネクタの凸状先端部品の意匠部分を実線で示し、その他の部分を一点鎖線で示した斜視図である。
【
図17】
図17は、雌コネクタと雄コネクタの嵌合状態を示す参考正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(コネクタ装置1の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るコネクタ装置の一例を説明する図であって、第1コネクタとしての雌コネクタと、第2コネクタとしての雄コネクタのそれぞれの外観斜視図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るコネクタ装置1は、雌コネクタ100と雄コネクタ200とで構成される。雌コネクタ100と雄コネクタ200は、互いに嵌合して連結されることにより、電気的な接続がされて電気コネクタとして機能する。また、雌コネクタ100と雄コネクタ200が連結された状態では、連結部、嵌合部は水密とされ、これにより、コネクタ内部の導線が外部から防水される。
【0021】
(雌コネクタ100の構成)
図2(a)は、本発明の実施の形態に係る雌コネクタの凸状先端部品の先端部側から見た外観斜視図である。また、
図3(a)は、本実施の形態に係る雌コネクタの円柱の中心軸を含む断面図である。第1コネクタとしての雌コネクタ100は、円柱形状の凸状先端部品110を有し、凸状先端部品110の円柱表面111にシール部材としてのOリング121、122を有して構成されている。Oリングは凸状先端部品110の円柱軸方向CLの少なくとも2カ所に配置されるが、本実施の形態では、2カ所に配置される構成としている。また、雌コネクタ100は、Oリング121、122より外周側において凸状先端部品110の円柱周りに回転R及びスライドS可能であって、雄コネクタ200との連結状態をロックする円筒形状のロック部品130を有する。
【0022】
雌コネクタ100は、
図3(a)に示すような断面構成とされており、以下に、その製造順序に従って、詳細な構造を説明する。電線140の導線141の先端領域141aは、絶縁被覆142、143が剥離された状態で端子150にカシメ等により電気的に接続されて固定されている。端子150は、凸状先端部品110の端子穴112に挿入されている。端子150が挿入された凸状先端部品110と電線140の絶縁被覆部144は、下成型部160で一体に成型されている。
【0023】
さらに、凸状先端部品110のシール溝113には、シールリング165が嵌められて連結部品170が被せられ、防水収縮チューブ175が被せられ、また、カシメリング180が電線140にカシメられている。上記の部品(凸状先端部品110、電線140、絶縁被覆部144、端子150、下成型部160、シールリング165、連結部品170、防水収縮チューブ175)は一体とされている。
【0024】
上記のように一体化されたアッシィーに、ロック部品130が移動可能(回転R及びスライドS可能)な状態で、挿入されている。この状態で、上成型部185により一体成型されている。ここで、ロック部品130は、端部131aが上成型部185の端部185aに当接する位置から、内径端部131bが凸状先端部品110のストッパ部110aに当接する位置までの間において、連結部品170の円筒部170aに沿ってスライドS可能である。また、ロック部品130は、内径部131cが連結部品170の円筒部170aの周りに回転R可能である。
【0025】
上記のように組み立て、製造されたものに、Oリング121、122を組み込む。シール部材としてのOリングは、凸状先端部品110の円柱軸方向CLの2カ所に配置され、雄コネクタ200側に位置するOリング121は、ロック部品130が非ロック状態で凸状先端部品110の先端部116
と反対側
のスライド端に位置する状態において、ロック部品130から円柱軸方向CLの雄コネクタ200側に露出している。すなわち、
図3(a)に示すように、ロック部品130の端部131aが上成型部185の端部185aに当接する位置において、Oリング121はロック部品130から円柱軸方向CLの雄コネクタ200側に露出している。
【0026】
一方、Oリング122は、Oリング121よりも先端部116から見て奥側に配置されている。なお、Oリング121、122は、それぞれ、凸状先端部品110の円柱表面111に形成された溝部114、115に嵌め込まれる。これにより、
図1、
図2(a)、
図3(a)に示した雌コネクタ100が完成する。
【0027】
なお、凸状先端部品110、ロック部品130、連結部品170は、一例として、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)等の樹脂、また、下成型部160、上成型部185は、一例として、PVC(ポリ塩化ビニル)等の樹脂が使用できる。また、Oリング121、122は、ニトリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム等のゴムが使用できる。
【0028】
上記示したOリング121、122の組み込みにおいて、
図3(a)に示すように、ロック部品130の端部131aが上成型部185の端部185aに当接する位置において、Oリング122は、円柱軸方向CLにおいて、ロック部品130に覆われた溝部115に嵌め込む。一方、Oリング121は、円柱軸方向CLにおいて、ロック部品130に覆われていない溝部114に嵌め込む。これにより、Oリング121、122を凸状先端部品110の先端部116から遠い奥側に位置に配置し、かつ、Oリング121は、円柱軸方向CLにおいて、ロック部品130に覆われていない溝部114に容易に嵌め込むことができる。このことは、後述する雌コネクタ100と雄コネクタ200の連結操作における挿入力を低減させることと、組み立て容易性の両方を満たすための構成に寄与する。
【0029】
(雄コネクタ200の構成)
図2(c)は、雄コネクタの凹状先端部品の先端部側から見た外観斜視図である。また、
図3(b)は、本実施の形態に係る雄コネクタの円柱の中心軸を含む断面図である。第2コネクタとしての雄コネクタ200は、雌コネクタ100の凸状先端部品110が挿入されて嵌合し、シール部材としてのOリング121、122を介して、凸状先端部品110と密閉状態で連結する凹状先端部品210を有する。
【0030】
雄コネクタ200は、
図3(b)に示すような断面構成とされており、以下に、雌コネクタ100と同様に、その製造順序に従って、詳細な構造を説明する。電線240の導線241の先端領域241aは、絶縁被覆242、243が剥離された状態で端子250にカシメ等により電気的に接続されて固定されている。端子250は、凹状先端部品210の端子穴212に挿入されている。端子250が挿入された凹状先端部品210と電線240の絶縁被覆部244は、下成型部260で一体に成型されている。
【0031】
さらに、凹状先端部品210のシール溝213には、シールリング265が嵌められて連結部品270が被せられ、防水収縮チューブ275が被せられ、また、カシメリング280が電線240にカシメられている。上記の部品(凹状先端部品210、電線240、絶縁被覆部244、端子250、下成型部260、シールリング265、連結部品170、防水収縮チューブ275)は一体とされて、上成型部285により一体成型されている。
【0032】
なお、凹状先端部品210、連結部品270は、一例として、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)等の樹脂、また、下成型部260、上成型部285は、一例として、PVC(ポリ塩化ビニル)等の樹脂が使用できる。
【0033】
図2(b)は、雌コネクタの凸状先端部品の先端部側から見た正面図である。また、
図2(d)は、雄コネクタの凹状先端部品の先端部側から見た正面図である。
図2(b)に示すように、凸状先端部品110は、互いに異形のキーを備えた複数の嵌合部を有する第1嵌合部を有する。また、凹状先端部品は、互いに異形のキーを備えた複数の嵌合部を有する第2嵌合部を有し、凸状先端部品と凹状先端部品は、雌コネクタ100と雄コネクタ200が連結する際に、特定の位置関係でのみ嵌合する。すなわち、特定の位置関係とは、雌コネクタ100側の異形のキー190と雄コネクタ200の異形のキー290が、
図2(b)、(d)の紙面内の上下左右位置及び回転方向で合致する位置関係である。
【0034】
図2(b)に示すように、雌コネクタ100は、互いに形状が異なる3カ所の異形のキー191a、191b、191cを備えている。キー191a、191b、191cはそれぞれ凹部として形成され、それぞれのキーは、スリット195で放射状に繋がって形成されている。
【0035】
一方、
図2(d)に示すように、雄コネクタ200は、互いに形状が異なる3カ所の異形のキー291a、291b、291cを備えている。キー291a、291b、291cはそれぞれ凸部として形成され、それぞれのキーは、隔壁295で放射状に繋がって形成されている。なお、雌コネクタ100の異形のキー191a、191b、191cと雄コネクタ200の異形のキー291a、291b、291cとは、互いに向かい合わせの状態で形状が一致する、鏡面で対称な鏡像対称な関係にある。
【0036】
雌コネクタ100と雄コネクタ200が連結されるときには、雌コネクタ100側のキー191aと雄コネクタ200側のキー291a、同様に、キー191bとキー291b、キー191cとキー291cのすべての位置関係が合致しなければならない。キー191a、191b、191cとキー291a、291b、291cの位置関係がすべて合致した場合は、キー291a、291b、291と隔壁295がキー191a、191b、191cとスリット195にすべて挿入できる。これにより、雌コネクタ100と雄コネクタ200の連結操作が可能となる。
【0037】
図2(b)に示すように、雌コネクタ100側のロック部品130の円筒内壁132には、ロック用の突起部133が設けられている。本実施の形態では、180°対向して2か所設けられている。
【0038】
一方、
図2(c)、(d)に示すように、雄コネクタ200側の凹状先端部品210の円筒面232の表面には、ロック用の突起部133が挿入可能な誘導溝233が形成されている。
図2(d)に示すように、誘導溝233は、雌コネクタ100が雄コネクタ200に挿入される方向に挿入溝233aが形成され、これに連続して、ロック方向(円周方向)にロック溝233bが形成されている。ロック溝233bの終端部には、ロック用の突起部133をロックするための節度山233cが形成されている。また、挿入溝233aとロック溝233bの間には、テーパ部を備えたテーパ溝233dが形成されている。これにより、ロック部品130が雄コネクタ200に十分にスライドされて挿入されていない場合でも、ロック部品130を回転させてロック動作に移行することが可能となる。
【0039】
(雌コネクタ100と雄コネクタ200の連結操作)
図4(a)は、本実施の形態に係る雌コネクタと雄コネクタの嵌合前の状態を示す外観斜視図であり、
図4(b)は、雌コネクタと雄コネクタの嵌合時におけるロック操作を説明する外観斜視図である。また、
図5(a)は、本実施の形態に係る雌コネクタと雄コネクタの嵌合前の状態を示す雌コネクタの円柱の中心軸を含む断面図であり、
図5(b)は、嵌合途中の状態を示す雌コネクタの断面図であり、
図5(c)は、嵌合完了時の状態を示す雌コネクタの断面図である。
【0040】
図4(a)、
図5(a)に示すように、雌コネクタ100と雄コネクタ200を対向させる。このとき、
図2(b)、(d)で示した雌コネクタ100側の異形のキー190と雄コネクタ200の異形のキー290が、
図2(b)、(d)の紙面内の上下左右位置及び回転方向で合致する位置関係になるようにする。この状態で、
図4(a)で示す挿入方向Sへ雌コネクタ100を移動させる。
【0041】
図5(b)に示すように、雌コネクタ100の凸状先端部品110を雄コネクタ200の凹状先端部品210に挿入させる。凸状先端部品110の円柱表面111と凹状先端部品210の円筒内面211は嵌合しながら挿入される。円筒内面211は、Oリング121と当接を開始する。また、端子150と端子250も嵌合を開始する。このとき、
図4(a)で示したロック部品130のマーク130mと凹状先端部品210のマーク230mとを概略合わせておく。
【0042】
円筒内面211とOリング121が当接しながら挿入されるので雌コネクタ100と雄コネクタ200の内部は外部から密閉状態となる。さらなる挿入においては、雌コネクタ100と雄コネクタ200で密閉された内部空間300は、空気が圧縮されて挿入力が上昇する。
【0043】
図5(b)から
図5(c)に示す挿入途中では、ロック部品130の円筒内壁132と凹状先端部品210の円筒面232が嵌合する。また、2つのOリング121、122は、円筒内面211に当接する。この挿入途中段階において、ロック部品130の突起部133は、挿入溝233aに誘導されてS方向にスライドする。
【0044】
挿入途中段階において、
図4(b)に示すように、ロック部品130をR方向に回転させることにより、突起部133はテーパ溝233dに誘導されてロック溝233bに進みながら、雌コネクタ100の凸状先端部品110を雄コネクタ200の凹状先端部品210に挿入することができる。
【0045】
図5(c)に示すように、雌コネクタ100の凸状先端部品110が雄コネクタ200の凹状先端部品210に完全に挿入され、ロック部品130の突起部133は節度山233cを乗り越えて、ロック動作が完了する。この状態で、端子150と端子250は電気的に接続されて、雌コネクタ100と雄コネクタ200が連結される。これにより、雌コネクタ100の電線140と雄コネクタ200の電線240は、電気的に接続される。
【0046】
上記示した雌コネクタ100と雄コネクタ200が連結された状態では、凹状先端部品210に装着された2つのOリング121、122が、円筒内面211に当接して嵌合しているので、雌コネクタ100と雄コネクタ200の内部は外部から密閉状態(気密状態、水密状態)となっている。これにより、防水機能を有するバヨネット式のコネクタ装置1が提供される。
【0047】
(本実施の形態の効果1)
図6(a)は、本実施の形態に係る雄コネクタの凹状先端部品の先端部側から見た外観斜視図であり、
図6(b)は、誘導溝が見える上平面図であり、
図6(c)は、比較例としての雄コネクタの凹状先端部品の先端部側から見た外観斜視図であり、
図6(d)は、
図6(c)の上平面図である。
【0048】
図6(c)、(d)の比較例に示すように、凹状先端部品210にテーパ溝233dがない場合は、ロック部品130の突起部133を挿入溝233aに完全に挿入させてからロック溝233bまで移動させることになる。すなわち、ロック部品130を完全にスライドさせて押し込んだ後に、ロック部品130を回転させてロック状態を完成させる必要がある。挿入溝233aとロック溝233bが直角の形状の為、雌コネクタ100と雄コネクタ200を完全に奥まで挿入してからロック部品130を回す必要があり、バヨネットロック操作が難しいという問題があった。
【0049】
本実施の形態では、
図6(a)、(b)に示すように、挿入溝233aとロック溝233bの途中にテーパ溝233dを有するので、雌コネクタ100と雄コネクタ200の挿入が完全でない状態からでもロック部品130を回転させることができる。ロック回転と挿入を同時にできるので、雌コネクタ100と雄コネクタ200の連結におけるバヨネットロックの操作性の向上が図られる。
【0050】
(本実施の形態の効果2)
背景技術で述べたように、雄コネクタと雌コネクタは、嵌合被覆部を介して気密状態で嵌合しながら連結操作がされるので、連結する際に気密空間の圧縮率が増加して挿入力が増加するという問題があった。
【0051】
すなわち、雌コネクタ100に配置されたOリングの位置が凸状先端部品110の先端部116付近に配置された場合は、嵌合開始時点からコネクタ内部の空気を多く圧縮する必要があり挿入力が高すぎて挿入し難い。水密性、気密性を確保するために、雌コネクタ100と雄コネクタ200が嵌合した内部空間は、外部に通じる穴等がないからである。
【0052】
本実施の形態では、Oリング121、122を凸状先端部品110の先端部116から遠い奥側に位置に配置することで、空気の圧縮率を減らすことができ、挿入力の低減ができた。例えば、Oリングの位置を凸状先端部品110の先端部116付近に配置した場合の挿入力は85Nであったが、遠い奥側に位置に配置することで、挿入力を51Nに低減できた。雌コネクタ100と雄コネクタ200の連結操作において挿入力が軽減されることにより、適正な挿入力となって操作性の向上が図られる。
【0053】
(本実施の形態の効果3)
雌コネクタと雄コネクタに誤挿入防止のキーを1箇所設けている場合には、雌コネクタ100と雄コネクタ200の連結操作において、廻しながら正しい挿入位置を探す際にキーを設けていない隔壁がスリットに引っ掛かり、スムーズに正しい挿入位置への誘導ができないという問題があった。
【0054】
本実施の形態では、雌コネクタ100の異形のキー191a、191b、191cと雄コネクタ200の異形のキー291a、291b、291cとは、互いに向かい合わせの状態で形状が一致する、鏡面で対称な鏡像対称な関係に設定される。これにより、隔壁がスリットに引っ掛かることなくスムーズに正しい挿入位置に誘導することができる。比較検証を行なうと、キー形状が同じ場合よりも、異形3箇所のキー形状の方が、嵌合誘導のし易さが向上して、誤挿入防止に効果があった。
【0055】
以上から、雄コネクタと雌コネクタを連結する際の連結操作性が優れ、防水機能を有するコネクタ装置、バヨネットコネクタを提供することができる。
【0056】
以上の説明からも明らかなように、本発明に係る代表的な実施の形態、実施例、変形例、及び図示例を例示したが、上記実施の形態、実施例、変形例、及び図示例は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
【0057】
例えば、雌コネクタ100と雄コネクタ200との嵌合に必要な凸状先端部品110と凹状先端部品210、端子150と端子250、キー190とキー290等の凹部形状と凸部形状は、嵌合可能な条件の下で、入れ替え可能である。
【0058】
また、上記実施の形態、実施例、変形例、及び図示例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0059】
1…コネクタ装置
100…雌コネクタ、110…凸状先端部品、110a…ストッパ部、111…円柱表面、112…端子穴、113…シール溝、114…溝部、115…溝部、116…先端部、121…Oリング、122…Oリング、130…ロック部品、130m…マーク、131a…端部、131b…内径端部、131c…内径部、132…円筒内壁、133…突起部、140…電線、141…導線、141a先端領域、142…絶縁被覆、143…絶縁被覆、144…絶縁被覆部、150…端子、160…下成型部、165…シールリング、170…連結部品、170a…円筒部、175…防水収縮チューブ、180…カシメリング、185…上成型部、185a…端部、190、191a、191b、191c…キー、195…スリット
200…雄コネクタ、210…凹状先端部品、211…円筒内面、212…端子穴、213…シール溝、230mマーク、232…円筒面、233…誘導溝、233a…挿入溝、233b…ロック溝、233c…節度山、233d…テーパ溝、240…電線、241…導線、241a…先端領域、242…絶縁被覆、243…絶縁被覆、244…絶縁被覆部、250…端子、260…下成型部、265…シールリング、270…連結部品、275…防水収縮チューブ、280…カシメリング、285…上成型部、290…キー、291、291a、291b、291c…キー、295…隔壁
300…内部空間
CL…円柱軸方向
R…回転方向
S…スライド方向、挿入方向