(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】排泄信号事前検出装置
(51)【国際特許分類】
A61F 5/44 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A61F5/44 Z
(21)【出願番号】P 2022075720
(22)【出願日】2022-05-02
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】513262908
【氏名又は名称】田中 文藏
(72)【発明者】
【氏名】田中 文藏
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-084000(JP,A)
【文献】特表2011-522582(JP,A)
【文献】特開平07-209069(JP,A)
【文献】特開2020-058526(JP,A)
【文献】特開2021-186347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
コントローラー(3)は、予め
削除記録設定回数を設定し、排泄予報が出力されたにも関わらず、設定時間が経過しても排泄検出器
(4)が排泄物を検出しない回数が
削除記録設定回数を越した場合、対応する排泄予報位置を削除することを特徴とする請求項1に記載の排泄信号事前検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者、要介護人、身体事情により、自力排泄、及びその処理(ふき取り)の困難な人達の排泄を安易にする排泄装置への排泄信号、排泄介護補助作業の要求に対する、排泄信号事前検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来要介護人の排泄については、自力での排泄行為に対して本人の排泄自覚が乏しく、排泄介護のタイミングは事前に察知が困難であったため、要介護人の身体汚染が激しく又、周囲環境への汚染も生じ、排泄介護作業を困難にしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-189615号公報
【文献】特開2005-602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術には次のような改善点があった。
【0005】
排泄センサーとして肛門部括約筋の静電容量、湿度、温度等の測定と体位センサー検出による複数の測定信号を基に排泄センサー信号としているが、排泄は歩行中にもあり、又、身体を全く動かせない人にもあり、肛門部からのガス(オナラ)排出時にも括約筋は動き便排出との動作検出は全く同じ肛門部括約筋の動作状態は同様と考えられ、肛門部括約筋での排泄信号のみの実働検出はその区別が困難である事、又、静電容量での検出は、歩行中の人体動態時の測定を排泄信号とするのは困難であること。
【0006】
肛門括約筋の動作検出のため、直接人体肛門に近接して設置する必要があり、排泄による汚染は避けられない形態を成している。
【0007】
一日に複数回の排泄には、すでに初回の排泄時に汚染されたセンサーを、直接人体の肌に接することは、不快感を避けられない。
【0008】
排泄は秒速で排泄され、湿度の検出時にはすでに排泄開始後の状態を検出するに等しい事で、湿度の検出や、肛門括約筋の動作検出は、事前の排泄事前信号出力には、役に立たない。
【0009】
収集したデータの中から検査収集して算術演算装置によってパターン記憶するとしているが、排泄時のトリガーが無く、排泄に至るまでのパターとしての、収集データの切り分けは例えば乳幼児や、体の動かせない人や、そのことを理解できないユーザーにはデータのパターンセンシングの決定実行タイミングは困難である事。
【0010】
採取したデータの中から検査収集して算術演算装置において演算するとしているが演算の内容や、その基本的方法が公開されていないことで、原理、数式のない演算は意味がない。
【0011】
データの測定は、各適当なセンサーによって測定されるが、排泄に関連したデータの特定には、当該装置の使用者に一任され、データと、排泄との関係性が明らかではない。
特許文献2に開示された技術には次のような改善点があった。
【0012】
排泄検出には、排泄後のオムツの濡れ具合いの水分検出であって、排泄事前信号とは目的が異なっている、排泄後のオムツ交換を促すための装置である事。
【課題を解決するための手段】
【0013】
排泄物を大腸内で移行させるために、大腸は蠕動運動を繰り返す、その蠕動運動時に起こる大腸の、排泄物をとどめた部分の大腸は、蠕動音を発しながら排泄物移行させている、その音を、腹部側、背面側の何れかに収音装置を備え、蠕動音を発している部分の大腸部の音源位置(蠕動音発生位置)を特定しながら連続追跡記録する、次に、肛門外部に備えた排泄物検出器によって排泄物を検出し、検出をトリガーとして、任意に設定した排泄事前信号の設定時間での排泄物位置データ(排泄予報位置)を排泄実行毎に別途連続記録する。大腸部分は複数個所あるが、本発明の目的である、排泄時刻の予報に必要な排泄物位置データは、排泄予報に必要な時間帯での排泄物移動位置データであり、以後同様の位置データの発生に合わせて排泄時刻予報を出力する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大腸蠕動音を収音して蠕動音発生位置を計算することにより、排泄の時期を容易かつ精度よく予測することが可能となることで、例えば介護対象者の事前トイレ案内や、排泄後のオムツ交換準備や、携帯型排泄介護装置、特許6550552号と、股間開閉装置、特許6890907号との動作のトリガーとした連携動作により、排泄による汚染を防止し携帯型排泄介護装置への新しいオムツの供給時期も明らかとできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】収音装置配置、図(A)は人体正面方向図、図(B)は人体側面方向図である。
【
図4】設置位置毎の収音器収集音振幅と、波形との図(A)と、位相差の図(B)である。
【
図6】人体正面下腹部解剖図(A)と、直腸部拡大断面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
左右の肩の方向をX座標方向、頭部から足元方向をY座標方向、腹部側から背面側方向をZ座標方向とする。
尚、各部は模式的に示すものであって、本発明は図示また形態(形状、数量等)に限定するものではない。
【0017】
排泄物を大腸内で移行させるために、大腸は蠕動運動を繰り返す、その蠕動運動時に起こる大腸の、排泄物をとどめた部分の大腸は、蠕動音を発しながら排泄物移行させている、その音を、腹部側、背面側の何れかに収音装置(20)を備えて収音し、蠕動音を発している部分の大腸部の音源位置X,Y,Z方向の座標位置(蠕動音発生位置)と、収音器(1)と、音源との距離を特定しながら連続追跡記録する、次に、肛門外部に備えた排泄物検出器(4)によって排泄物を検出し、検出をトリガーとして、任意に設定した排泄事前信号の設定時間での排泄物蠕動音発生位置X,Y,Z方向の座標位置データ(排泄予報位置)と、距離とを、排泄実行毎に別途連続記録する。大腸部分は複数個所あるが、本発明の目的である、排泄時刻の予報に必要な排泄物音源位置X,Y,Z方向の排泄予報位置データ(排泄予報位置)と、距離とは、排泄予報に必要な時間帯での排泄物移動音源位置X,Y,Z方向のデータ(蠕動音発生位置)であり、距離である、以後同様の位置データと、距離のデータに合わせて、排泄時刻予報を出力することができる。
【0018】
図2,
図6に示す、測定対象人体の体表面に複数の集音器(1)を排泄開始位置と想定される直腸部を中心として複数一定の距離を定めて収音装置(20)として設置する
【0019】
広範囲な大腸の蠕動音と、その他の体内音を、各複数に設置された収音器(1)でそれぞれ同時に収集する。
【0020】
図1に示すフローの一連の動作に関して、説明する。
S1、電源スイイチ(3a)をONし電源を通電する、S2、通信ワイヤー(1a)、又は無線、
通信規格の「BLuetooth」等の手段において、複数個の収音器(1)と、コントローラー(3)と接続して体内音を収集する、S3、全ての収音器(1)から収集した音を周波数毎に分離する、S4,収集した周波数から大腸蠕動音の周波数を特定する、S5,収音器(1)毎の振幅値と、位相差を求める、S6、各収音器(1)から、蠕動音発生位置までの距離を計算する、計算方式には(数1)と、(数2)の二つの方式がある、S7,排泄物検出器(4)の信号で全ての収音器(1)の振幅、位相差、音源までの距離のデータ、または、音源の座標、X,Y,Z、の値を音源毎に
記録する、S8、設定時刻での排泄物検出が出来ない場合は、設定時刻での演算データを削除準備として、S9、削除記録設定回数に加算する、S10,全ての収音器(1)の振幅、位相差、距離のデータを記録する、S10‘、指定時刻の振幅、位相差、距離のデータを記録する、S11、S10’で記録したデータと同様のデータを検出すると、設定時刻での排泄前信号として出力する。
【0021】
図6(B)に示す収音器設置位置a(10)、収音器設置位置b(11)、収音器設置位置c(12)の3個をそれぞれ一定間隔mに収音器(1)を設置し、収音器設置位置a(10)に設置の収音器(1)で収集された振幅値データと、収音器設置位置b(11)に設置された収音器(1)で収集された振幅値データとの振幅値の差は、収音器設置位置a(10)と、収音器設置位置b(11)との間隔mを表すので、同様に収音器設置位置aと、音源までの距離アは、m*α/収音器設置位置a(10)の振幅値となり、その他の収音器設置位置から音源までの距離も同様に計算する。
次に計算した距離を、
図5に示す収音器設置位置a(10)、収音器設置位置b(11)、収音器設置位置c(12)をそれぞれ中心とし、それぞれの距離を半径として円を画いたとき、三つの円の円周上に交点が形成される、その交点が音源の座標位置である。
【0022】
本計算法に必要な収音器(1)の数量は最小収音器(1)を3個以上必要とする、又、蠕動音発生位置交点の座標計算は三角形の定理から計算可能である。
【0023】
(数1)では、
図2(A)に示す、収音器(1)の最小必要数量5個以上を必要とし、以下の数式によって、各収音器(1)から蠕動音発生位置の距離と、蠕動音発生位置の座標X,Y,Z方向について計算する。
又、(数1)は、(数1-1)と、(数1-2)と、(数1-3)とで説明します。
【数1-1】
とすると、音源から収音器出の距離は、音波の移動距離に等しい事から以下の式が成り立つ。
【数1-2】
以下同様として
【数1-3】
すると音源位置と波発生時刻は以下の式で求められる。
【0024】
図4に示す、それぞれの収音器(1)で収集した体内音データを全てデジタル化し、時系列に沿って収集音振幅と、位相差を切り分けて収集音の波形を形成して音源の波形種類を切り分ける。
【0025】
切り分けた大腸蠕動音の音源毎に排泄物のX,Y,Z方向の位置座標、又は、収音器(1)から音源までの距離を、一定の間隔時間において演算して特定し、音源の数毎の分、排泄物位置のX,Y,Z方向の位置座標、又は、収音器(1)から音源までの距離のデジタルデータをそれぞれ連続時刻に合わせて記録する。
【0026】
排泄物検出器(4)を肛門部に設置し、排泄毎に排泄開始信号としてコントローラー内に取り込み、その排泄物検出器(4)の検出信号を排泄トリガーとして排泄物の設定時刻での音源の数毎の分、排泄物位置のX,Y,Z方向の位置座標、又は、収音器(1)から音源までの距離のデジタルデータを設定時刻時のデータとして記録する。
【0027】
収集した蠕動音発生位置のX,Y,Zデジタルデータは、24時間毎にリセットされる、但し排泄物検出トリガーとして排泄物の設定時刻での位置データは連続して記録保持し、24時間毎にリセットされることはない。
【0028】
使用目的に合わせ、排泄前信号出力設定時刻の変更,又、利用者の変更時には過去の記録データは不要となるため、コントローラ(3)に備えた記録排泄前演算データ削除スイッチ(3c)の操作によって、全ての記録データの削除が出来る。
【0029】
又、同時に記録するデータの数は、収音装置(1)毎、複数個所それぞれの排泄物蠕動音発生位置数である。
【0030】
排泄事前信号の設定時刻とは、排泄トリガー以前の時刻の事で、設定時刻時の排泄物蠕動音発生位置X,Y,Z方向の位置データをトリガー毎に連続記録する。
【0031】
排泄事前信号の設定時刻は目的に合わせて設定する。
【0032】
排泄事前信号の設定時刻の目的とは、例えば排泄移動不可能な人へのトイレへの案内に必要な時間である。
【0033】
排泄事前信号の出力タイミングは、24時間連続記録の間、演算する排泄物位置データ収集中に、「段落[0017]」内の記録と比較して一定の同一性ある排泄物位置データが演算されたとき、設定時刻の排泄予報として出力する。
【0034】
排泄物蠕動音発生位置X,Y,Z方向の位置検出データを排泄毎に連続記録するタイミングは、排泄検出着器(4)によらず、人の動作でのスイッチ、排泄物手動検出器(5)等において、測定データを記録するタイミングとしても良い。
【0035】
本排泄信号事前検出装置は、基本的には特許「5810456」、「6484770」「6550552」、「6547092」、等の排泄介護装置と、特許「6890907」自動股間開閉装置の起動トリガーとして取り込むことにより、各排泄介護装置を使用中に連続して排泄前信号の基となるデータ収集することもできる。
【0036】
過去に取り込まれた設定時刻での記録された正しい位置データであって、実際の、設定時刻での位置データであっても設定時刻での排泄物検出トリガーの作動が無ければ、その時のデータを回数カウントして設定削除カウント数として記録し、設定回数値での削除が可能となり、排泄信号事前検出の精度を向上することができる。
【0037】
連続、繰り返しでの排泄前信号の基となるX,Y,Z方向の座標と、蠕動音発生位置から、収音器(1)までの距離とのデータを収集することにより、排泄前信号の正確性、又はある程度任意な時間帯の排泄前信号を正確に設定できる。
【0038】
ある程度任意な時間帯の排泄前信号を設定できることにより、要介護者への介護開始に要する移動時間に合わせた排泄前信号を設定できる。
【0039】
類似のデータ頻度が少ないと認められたるデータは、外部設定によりその頻度回数について設定して置くことにより、自動的に削除できる。
【0040】
体内の臓器は全て、発生音、周波数、臓器形状による固有振動数によっての差を利用して各臓器の位置を特定できる。
【0041】
前記(0021)~(0023)記載のデータ演算によって、おおよその臓器の場所が音発生源として特定されることによって、各体内臓器の位置の想定が可能となる。
【0042】
体内臓器の場所と、音を各データに収集できることによって、将来の体内治療に貢献できる。
【0043】
収音装置(20)をあらかじめ任意の位置に設置するとき、人体内部のおおよその各臓器の位置が人体構造を参考として想定して設置し、測定データと、その演算によって参考人体臓器配置の位置関係と突き合わせることにより、さらに精度の高い臓器位置と臓器音発生位置を想定できる。
【0044】
複数個設置する収音器(1)のそれぞれの接地間距離をあらかじめ正確に設置することにより、各収音装置の収集データの位相差の時間や、同じ周波数の音源の収集振幅の高さの差等を利用して、設置距離の関係から音源と、収音装置からの距離を演算(数1)、(数2)できる。
【0045】
収音装置(20)は人体の内部各臓器の位置構成を参考にして、音源ターゲット臓器の平面を囲うように設置する。
例えば、排泄前信号出力の目的時には、
図5に示す直腸(7)部を中心として定間隔に複数個の収音器(1)を配置する。
【0046】
収音装置(20)の動作用電源は、使用する場所や、使用条件に合わせて家庭用電源や、移動時にはバッテリー方式としても良い。
【0047】
収音器(1)は一般的なマイクとしても良く、あるいは医療用電子聴診器としても良い。
【0048】
排泄物検出器(4)は、光、臭い、湿度、超音波、空気圧差で排泄物を検出できる検出器で良い。
【符号の説明】
【0049】
1 収音器
1a通信ワイヤー
2 専用の衣服等
2a固定帯
3 コントローラー
3a電源スイッチ
3b排泄前信号出力設定時間
3c記録排泄前演算データ削除スイッチ
4 排泄物検出器
5 排泄物手動検出器
6 大腸
7 直腸
8 肛門
9 体表面
10収音器設置位置a
11収音器設置位置b
12収音器設置位置c
20収音装置